2025/10/10 UP!
今回は千葉の芸術の秋。今年、新たに始動したアートプロジェクト「千葉国際芸術祭」についてご紹介します。
今年千葉市でスタートした「千葉国際芸術祭」。2026年に迎える「千葉開府900年」記念事業のひとつとして、11月24日月曜日まで、千葉市内各地を舞台に開催されています。テーマは「ちから、ひらく」。「まちの中の思わぬ場所が拠点になり、手をあげた人から活動が生まれ、アーティストも生活者も来訪者も対話しながら一緒につくる」、新たな参加型アートプロジェクトの祭典で、今回は全ての展示を無料で観賞できるのも大きな特徴のひとつ。まずは芸術家であり、東京藝術大学の教授で千葉国際芸術祭の総合ディレクターを務めている中村政人さんに開催の想い、コンセプトを伺いました。

中村さん:芸術祭では「どんな人でも、どんな場所でも、その場所が創造的になれるんだよ。創造的になることによって、その場自体が開いていく、、力開いていく」というテーマにも込めてるんですが、その創造的になること自体が、別にね、国籍だろうが、年齢だろうが、障がいがあるない関係なしに。当然ですけど、それは誰しもが獲得できるものだと思うので。そのことをアーティストがまあ1つのスイッチを作ったとすると、スイッチを押す役割が市民の人なんですね。スイッチを押した途端に、その市民の人に、「わ、こんなワクワクすることが、こんな楽しいことが起こるんだ」と。それは、その街に根付くことも、もちろん大事なんですが、その市民の人の意識がちょっと変わり、ちょっと行動が一歩踏み出せるような勇気、それを与えてくれるものになってほしいんですね。
芸術というと、美術館に行って鑑賞するみたいなイメージがあるけど、市民が作品に参加するのでしょうか?とてもアクティブに聞こえてくるんですが?
「千葉国際芸術祭」では、千葉市内で37のアートプロジェクトが展開されまして、例えば、千葉都市モノレール県庁前駅の現在使われていないホームでの展示や、西千葉駅の高架下に「ガード下神殿」が出現して、身長18メートルの女神像が置かれたり。あるプロジェクトでは、街中にあるマンホールの蓋や切り株、古い地図などを活用したシティゲームの舞台が展開していたり、と、奇想天外なものが多いんです。それぞれのアートにはさまざまな形で市民が参加していて、特徴もさまざまなんですが、そこには共通した3つのポイントがあるそうなんです。

中村さん:アートとしての3つのポイントっていうの僕にとって「純粋」「切実」「逸脱」っていうのが3つのチェックポイントなんですよ。そのアーティストなり、プログラムがどういう「純粋」な状態を作れるかものすごく戦略的に考え、これを売れるようにやるっていうことではなくて。また、そのもの自体に生きていく価値、または何か、そのことを本当に作りたいっていう「切実」な課題感。で、3つ目は、作られたもの体験が、今までにない価値観を得られるかどうか。この3つのポイントがあって。例えば、地面に穴を掘るワークショップで、本当にどんどんどんどん掘っていくと、土がこういろいろ出てくるんじゃないですか。そこで粘土層を見つける。で、粘土層を見つけたら、その粘土で、こうこねて焼き物をする。焼き物をするときに、野焼きといって、外でこう火をたいて野焼きをする。千葉市の土を探し、一緒に穴を掘って、一緒に造形して、一緒に火をたいて、そこで焼き物を作るというワークショップもあります。
「純粋」「切実」そして「逸脱」ね。土を掘りおこすところから粘土を見つけて、焼き物まで作ることも「アート」と捉えるんですね。
今までのお話だけでも「美術館や博物館」で鑑賞する「アート」とは違う感じがしますよね。この千葉国際芸術祭は、今後3年ごとに開催されていく「トリエンナーレ」となっています。
11月24日月曜日まで千葉市内各地で展開されている「千葉国際芸術祭」。国内外のアーティストたちが繰り広げる、想像の枠を超えて楽しくワクワクする展示が行われています。市民が参加できるものもあり、例えば、こちらは募集は締め切られていますが、こんな形で市民がアートに参加しているんです。
中村さん:アリーナさんというアメリカの作家さんのプロジェクトなんですが、ご家庭の夕食にご招待してくれたら、お礼にアリーナさんの絵をプレゼントする。夕食と絵を交換するっていうようなプロジェクトがあります。ですので、初めて千葉に来て、千葉市のごくごく普通の家庭の中の夕食で、一緒にご飯を食べるというプロジェクトです。その中には、やはり言葉の問題もありますけれども、ご飯のその食材から味付けから、いろんな文化がそこに通っているので、そういうことも、総合的にその食事という場所、夕食をし、一緒に対話をするということの中で、人間の本質的な、こう、交流を生み出す創造的な節々を生み出すということですね。で、アリーナさんの狙いはやっぱり対話なので、この対立が大きくなってきている時代に、人と人が向き合う、その会話をする切実さを大切にしたい。最終的に絵がプレゼントされるっていう。そこで初めて絵が出てくるんですね。いや、アートですね。

対話をするために、晩御飯ご馳走してくださいってことなんですね?市内のあちこちで展開されている千葉国際芸術祭は一般市民の家の中まで入ってきちゃう?
ベラルーシ出身のアリーナさんとモルドバ出身のジェフさんはニューヨーク在住で2人の創作には常に「内と外」「境界と中心」「他者と規範」といった関係性への問いを含んでいて、この展示ではいま、世界のあちこちで起こっている対立や戦争に対し、コミュニケーションがどれだけ大事なのかということをテーマとしているそうです。今までに、ドイツや中国、アメリカ、イスラエルなど62箇所を訪れて夕食をともにし、絵をプレゼントし、対話してきたそうで、今回はそれを千葉の一般家庭で行っています。
食事して時間を共にすることで向き合っていく。その全体が彼らにとってはアートなんですね。
さて、千葉国際芸術祭は、今後3年ごとに開催が計画されています。なぜ3年ごとなのか、その思いを中村さんはこんな風に話してくださいました。
中村さん:そうですね。あの芸術祭自体、3年に一度、2回やると6年、3回やるともう9年ですよね。そうすると小学校に入った人がもう高校生ぐらいになっていたりすると。心が開いていく瞬間を、どんどんどんどん作り出す。まあ、意識変容から行動変容に生まれ、最終的には芸術祭を3回やったら、これだけ社会変容が起こったよ、っていうように言えるような芸術祭になってほしいですね。で、自分がこれ面白いなあと思ったら、ぜひそのプログラムに参加して、自分自身がまず心を開いてみるそのきっかけを作ってみると、そこから先に芸術というような高尚の言い方じゃなくても、自分の好きなものとか、あ、これをやりたかったんだっていうように、ちょっと気づきが生まれるかもしれないですねこの新しい気づきを得るために、ぜひ芸術祭を、、、まあ、スタンプラリーもやるようなんで、あちこち巡っていただけると幸いです。

3回芸術祭に参加している間に世の中や自分がこれだけ変わったということに気づいてもらうということなんですね。芸術を見たり、参加することで心が開いていく実感を得られたら次の開催がさらに楽しみになってきますね。
今回この時間ではご紹介しきれないほどさまざまな表情をもつ「千葉国際芸術祭」たくさんのアートが千葉市内で展開されています。どこでいつ、どんなことが行われているのか?詳しくは千葉国際芸術祭のサイトをご覧ください。まずはひとつ気になるものを見つけてお出かけになってみてはいかがでしょうか。
https://artstriennale.city.chiba.jp




