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まちなか 植物観察のすすめ~植物観察家・鈴木 純「まちの植物はともだち」

2023/7/23 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、植物観察家の「鈴木 純」さんです。

 鈴木さんは1986年、東京都生まれ。子供の頃、親御さんが小笠原に連れて行ってくれたり、夏休みには、自然の中に身を置く旅にいざなってくれたりということもあって、野山が大好きな少年だったそうです。そして東京農業大学で造園学を学び、その後、青年海外協力隊に参加し、中国で砂漠の緑化活動を行ない、帰国後、国内外のフィールドを巡り、植物への造詣を深めます。

 そんな鈴木さんは、友達に植物の面白さを伝えたいと思い、野山での観察会を企画したところ、人が集まらなかったそうです。野山に行くにはウエアやシューズ、持ち物などそれなりの準備が必要で、それがハードルになることに気づき、それなら気軽に集まれる街中だ!と思い、まずは友達向けの観察会をスタート。

 そして2018年からフリーの植物ガイドとして、街中での植物観察会を行なっていらっしゃいます。また、植物生態写真家としても活躍。

 そんな鈴木さんが『まちなか 植物観察のススメ』という本を出されました。きょうは、街中で植物観察をするときのコツや、植物を見分けるポイントなどうかがいます。道端に咲いている花や樹木のことをちょっとでも知るといつもの道がきっと楽しくなると思いますよ。

☆写真協力:鈴木 純

鈴木 純さん

木の葉っぱ、鋸歯を覚える!

※植物の名前をなかなか覚えられない、そんなかたは多いと思います。植物のどこに注目するのがいいのか、ポイントがあるんですよね。

「そうですね。とにかく植物は多分全部そうなんだと思いますけど、形を見ることがすごく大事なポイントになるので、まず初めは漠然と見ないで、形を見るんだっていう意識をちゃんと自分につけることです。慣れてくれば、そんなことを考えなくていいんですけど、初めは形に注目、意識するっていうことがすごく大事だと思います」

●この本には植物の名前を覚えたいなら、まず木がおすすめっていうふうに書かれていました。でもなんだか草花のほうがわかりやすいかなって思ったんですけど、木がおすすめっていうのはどうしてなんですか?

「これは僕が木から覚えたっていうのもあるんです。草と木の違いは、僕なりに思っているところがあって、草は結構短命なんですね。1年で枯れちゃったりするので、そういう短命な生き方は、植物にとって多少環境が悪くても、小さいまま花を咲かせたりとかするわけですよ。
 そうすると環境がいいところでは、大きく育っていた植物が、こっちでは小さい形で生きているとかっていう感じで、草は形が結構不揃いになるんですね。ただ、花の形は同じなんですけど、この話は後でまたしますね。

 見るべきポイントが葉っぱだとすれば、草は葉っぱを見るといろいろ混乱しちゃうけど、木の場合は長生きなので、長生きな植物は結構形が安定しているんですね。なので、葉っぱとかをヒントに植物の名前を調べるのであれば、そういう比較的形が安定している木から始めるほうが、意外と始めやすいんじゃないかなと思いますね」

●木の葉っぱは、どこに注目するのがいいんですか?

「僕がおすすめなのは、まず言葉を覚えるっていうところで、たとえば葉っぱをよく見ると、葉っぱの縁のところにギザギザが付いていたりするんです。そのギザギザには実は呼び方があって、これを”鋸歯(きょし)”って言うんですね。まずこの鋸歯って言葉を覚える! これを僕はおすすめしています。

 というのは、葉っぱの縁にギザギザがあるなって思っていると、このギザギザに鋸歯って言葉があるんだって思うと、僕は学生の時にギザギザに鋸歯があるって聞いた時にすごく感動したんですよね。鋸歯っていう言葉があったのか! って感動しまして、そうしたら葉っぱのギザギザがよく見えてくるようになっちゃったんですよ。

 なので、まずこのギザギザは鋸歯だっていうことをまず覚える! 自分で鋸歯っていう言葉を発してみる、これが大事ですね。何気にどこの葉っぱでもいいので見ながら、鋸歯があるな、鋸歯があるな、鋸歯があるなって、ひたすら鋸歯っていう言葉を発してみる。そうするとどんどん鋸歯が気になってくる、そういうことをまずやっていくのが僕のおすすめです」

(写真左)アオキ 荒い鋸歯(写真右)マンリョウ 丸い鋸歯
(写真左)アオキ 荒い鋸歯
(写真右)マンリョウ 丸い鋸歯

葉っぱの付き方~互生、対生

※街中の公園などでよく見る木で、この木の葉っぱを見ると面白い、というのはありますか?

「僕ね、葉っぱを見るのは簡単だと思いながら、難しいと思っていることもあって・・・っていうのは、今僕がたとえば、エノキの葉っぱ面白いんですよって言ったところで、まずはいろんな葉っぱの比較をしておかないと、どの葉っぱが面白いかっていうことがわからないんですよね。
 なので、たとえばエノキだったら、鋸歯が葉っぱの根元の部分、半分は鋸歯がないんですよ。その半分より先に鋸歯があるっていう形をしていて、僕にとってはすごく面白いけど、果たしてそれを面白いって思う人がどれくらいいるのかというところなんですよね。

 これは植物の葉っぱを、いろんな種類を見ていると、どんどん面白くなっていくっていう、そういうタイプの楽しみなんですよ。なので、なんというか、あまりどの葉っぱが面白いですかっていうのはなくて、言っちゃえば全部面白いんですよ。なぜなら全ての葉っぱが、どの葉っぱとも違う形をしているから・・・なんだけど、この面白さを伝えるには、まずひとつひとつの葉っぱを知る必要があるんだよね。急に楽しめないっていう、そこが僕は奥深いなと思っているところなんですよね 」

●葉っぱの付き方にも、いろいろあるんですよね?

「ありますね。これも面白いですよ! これもやっぱり言葉遣いがあって、たとえばいちばん多いのが”互生(ごせい)”って言って、これは枝に葉っぱが右、左、右、左って交互に付いているパターン、これを互生って言うんですね。

ケヤキ
ケヤキ

 で、これはよくあるパターン、互生はよくあるやつなんです。だから互生の木が出てきても、そんなにテンションが上がんないわけですね。互生か!って感じだけど・・・テンションが上がる葉っぱの付き方は、”対生(たいせい)”ってやつで、枝の一箇所から2枚出てくる、対になって出てくるっていうやつですね。対生の木はちょっと互生よりは少ないんですよ。なので、名前を知るためのヒントにはしやすいものになるんですね。

 種類によって、互生の木があったり、対生の木があったりする、葉っぱの付き方に違いがあるなんて、全く思わないわけじゃないですか、普通は。だけど意外とよく見ると違いがあるっていうところに面白みがあって、かつ対生であれば、互生よりも対生の樹木のほうが少ないことがわかっていれば、図鑑も引きやすくなるんですね。結構葉っぱの付き方を見るのは、大事というか面白いし、役に立つものですね」

クチナシ
クチナシ

(編集部注:鈴木さんによると、対生の樹木で、街中でよく見られるのは、クチナシ、キンモクセイなど。アドバイスとして、花が咲いているときに葉っぱをよ〜く見ておくと、花がないときでもすぐにわかるようになるそうです。
 ほかにも、蜜が出る葉っぱの代表的なものとして、ソメイヨシノを教えてくださいました。詳しくは鈴木さんの新しい本をぜひ見てくださいね)

草は花を見る

※続いては、草を見るときのポイントです。草の名前を覚えるには、花に注目するのがいいそうですが、それはどうしてなんですか?

「これは、草は短命で環境に合わせて、すごく小っちゃいまま、花を咲かせたりとかしちゃうから、葉っぱの形とかがあんまり信用できなかったりするんだけど、面白いことに花の形は整っているんですよ。なので、花の形は信じられる。

 これは、本当は木も一緒なんですね。木も一緒なんだけど、木の花は結構高いところに咲いていたりとか、意外と小っちゃかったりとかして、結構観察するのが難しいんですよ。でもその点、草は自分の背丈もないですよね。足もとに咲いているので、かがめば見られるっていうものなので、そういう意味で形が安定していることと、観察しやすいっていう意味で、花を観察するのがいいかな」

●この7月、8月にかけて咲く花で、この花を観察すると面白いよっていうのはありますか?

「いろいろあるんですが、ひとつテーマとしておすすめなのが・・・夏って暑いですよね。そうすると植物も昼間はあまり咲いてないんですよね。いつ咲いているかっていうと、早朝か夕方以降に咲いているんですよ。夏は結構、開花する時刻が決まっている植物が多いんです。
 ツユクサだったら、自分たちが起きてくる時間にはもう咲いていますし、オシロイバナは夕方4時から咲き始めます。夕方6時ぐらいからカラスウリの白い花が咲き始めたりするので、この開花の時刻をテーマに観察すると、面白いものが夏はいっぱいあるかなと思いますね」

『まちなか 植物観察のススメ』

オオバコの時間差戦略!?

※鈴木さんの新しい本に、めしべとおしべを時間差で出すオオバコという草の話が載っていました。なぜ時間差で出すのか、教えてください。

「オオバコって夏に見ると花茎(かけい)が伸びているんですよ。シュッと縦に伸びて、その軸をよく見るといろんなものが付いているんですね。
 そもそも知っておかないといけないのは、オオバコってひとつの花の軸に花がひとつだけ咲いているんじゃなくて、小っちゃい花がいっぱい付いている、その軸のところにぷつぷつって大量に・・・だから花の集合体なんですよね、そもそもオオバコってね。

 その花の集合体がどう振る舞うかが面白くて、まずつぼみの状態のオオバコがあったとしたら、小っちゃいつぼみがいっぱいあるっていう意味ですね、要するに。そのつぼみが下のほうから咲き始めるんですよ。下のほうから咲き始める時に最初はめしべだけを出すんですね。めしべだけ下のほうからバーっと上に向かってどんどん出していくわけです。

 めしべだけを出すってことはメスの状態ですよね。1回目のメスの状態になる。そうしたら今度はまた下からおしべがどんどん出てくる。メスの状態がだんだんメスとオスが一緒にいる状態になって、最終的にオスだけの状態に変わっていくっていう、オスとメスのタイミングをずらすっていう方法があるんです。

写真協力:鈴木 純

 これはすごく巧妙で、オオバコは風に花粉を運ばせるタイプの植物なんですけど、もしも同じ花の中で、おしべとめしべを同じタイミングで出しちゃったら、自分のおしべから出る花粉が、自分のめしべにくっ付いちゃう可能性があるわけです。

 植物も結構、実はほかの株と受粉したいと思っているわけですよ。メスとオスのタイミングがずれていれば、たとえば初めは、めしべだけが出てきてメスの状態になっていれば、ほかの花から花粉が飛んでくるのを受け取るだけになるわけですね。そうすれば、自分の株の中では受粉しないですよね。

 次におしべが出てくると、オスの状態になりますよね。この時は自分の花粉をほかの株に運ぶだけの状態になるってわけなので、そのオスとメスの熟すタイミングをずらすことのメリットがそこにあるわけですね」

(編集部注:ほかにおしべとめしべを時間差で出す植物で、夏に観察しやすいのはキキョウだそうです。最初はおしべが出て、それがぺた〜となったら、次にめしべが出てくるそうですよ。花の中心だけが変わるのが面白いと、鈴木さんはおっしゃっていました)

写真協力:鈴木 純

夏は「つる性」植物が面白い

※新しい本に森の環境に欠かせないのが「つる性」の植物と書いてありました。それはどうしてなんですか?

「つる植物って基本的に自分では自立しないわけですよね。自分の力では立てない。だからほかの植物に寄りかかったり、絡みついたりして伸びていくわけですけど、そういう生き方をするってことは、森があった時に森のいちばん端っこを覆っていくように成長していくっていう意味なんですよ、自然界の中ではね。

 そうすると、よく『森のカーテン』なんて言うんですけど、森の端っこをつる植物が覆ってくれると、そのつる植物によって強風が吹いても森の中に風が入ってこなかったりとか、林内の環境が安定するって言われているんですよね。温度も湿度も適当な状況に保たれるというところで、林内の環境を安定させるために役立っていると言われています」

●つる性と言ってもいろんな巻き方があるんですよね。

「あります! 夏以降はとにかく、つる植物を観察するのがおすすめですね。街中だったらフェンスを見ればいいので、フェンスをひたすら見る。そうすると自分のつる本体が巻きついていくっていう方法もあれば、自分のつるの本体から別の巻きひげってやつをぴろぴろって出して、その巻きひげでペタペタとしがみつきながら登っていく、なんかロック・クライミングしているみたいな感じですよね。

 そういう感じで登っていくつる植物もあるし、あるいは巻きつかないで、巻きひげの先を吸盤みたいにして、その吸盤で壁にペタペタ張り付いて伸びていくっていうのがあったりとかして、これも様々なんですよ」

ヘクソカズラ
ヘクソカズラ

植物の魅力は、動かないこと!?

※初歩的な質問で恐縮なんですが、植物はなぜ「緑色」なんでしょう?

「これは植物は光合成して生きていく・・・これ、極めて大事な話なんですけど、私たちは移動しますよね。何かほかのものを食べたりするわけですよ。そういう生き方をしているわけですけど、植物は移動しない! その場所で生きていかないといけないっていうところで、太陽光を集めて、そこから生きるエネルギーを作り出せるっていう、そういう生き方をしているわけですよね。

 なので、とにかく光合成をすることが非常に大事な行為になるわけですけど、光を吸収する必要があるわけです。その時に役立つのが葉緑素、クロロフィルってやつですね。それが要するに緑色をしているということです。あの色は植物が光合成をしているんだなっていう色なので、葉っぱって緑色じゃないですか。だから葉っぱで光合成しているんだなって思えるわけですよね。

 そう思うと草の茎とかって緑色をしているじゃないですか。ああいうところにも実は葉緑素が入っていて、茎も光合成していると言われているです。なので、植物のどこが緑色なのかを見ると面白いかもしれないですね。意外といろんな発見があるかもしれない」

●鈴木さんをこんなに虜にしている植物の、いちばんの魅力ってなんでしょう?

「やっぱり(植物は)移動しないっていうところが、本当に面白いなって思っていますね。とにかく僕たちとは全く違うんですよね、生き方が。移動しないって僕たちからすると、非常にデメリットに感じるじゃないですか。今ここで生きてろって言われても困っちゃいますよね。だけど、植物は別にそれでいいんですよね。

 だから移動しないためのいろんな工夫があって・・・たとえば、移動しないで誰かに食べられちゃったら、どうするのかなって・・・植物には芽っていうのがあるんですよ。もし体の一部が食べられても、芽が残っていれば、芽からまた新しい葉っぱが出てくるんですよ。

 そもそも移動しなくても生きていられるようになっているから、そういうのを見ていると、僕たちはつい植物は移動できないから、みたいなことを言うけど、逆に植物側からするとお前たちはなんで移動してるんだと・・・大変じゃないか、移動するのは、っていうふうに思われても、しょうがないよねって思うわけですね。

 そうすると自分はどういう生き物なんだろうとか、そういう視点が出てくるわけですよ。常に僕は植物を見ているけど、植物側から何かを投げかけられているっていうような気がするわけですね。そこに僕は魅力を感じているんですよね」


INFORMATION

『まちなか 植物観察のススメ』

『まちなか 植物観察のススメ』

 鈴木さんが主催する大人気の観察会を漫画で再現してあるので、参加者になったような感覚で楽しく読めますよ。きょう教えてくださった葉っぱや花のことなどもわかりやすく解説。さらに街中で見られる樹木や草の図鑑も載っています。この本を持って、街中の植物観察に出かけましょう!
 小学館から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎小学館:https://www.shogakukan.co.jp/books/09311536

写真協力:鈴木 純

 鈴木さんが主催している街中での植物観察会は現在、年間講座のみとなっています。駅前でも30種ほどの植物を観察できるし、基本的には同じルートを巡って、季節によって変化する植物たちを観察するそうです。植物の変化に気づくと人生がより楽しくなるともおっしゃっていましたよ。
 鈴木さんの活動については、オフィシャルサイト「まちの植物はともだち」をご覧ください。

◎まちの植物はともだち:https://beyond-ecophobia.com

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