毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。

生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
幅広く取り上げご紹介しています。

~2020年3月放送分までのサイトはこちら

Every Sun. 20:00~20:54

2023年8月のゲスト一覧

2023/8/27 UP!

◎木村悦子(ペンギン愛好家)
可愛いペンギンに会いに行こう! ~ 水中では高性能!?』(2023.08.27)

◎大西亜未(NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」の広報担当)
シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第14弾!〜小豆島から海をきれいに!「クリーン オーシャン アンサンブル」〜』(2023.08.20)

◎石河英作(苔クリエイター)
目立たない苔が癒しのインテリアに。苔テラリウムを始めよう!』(2023.08.13)

◎木下こづえ・さとみ(ユキヒョウ姉妹)
絶滅の危機にあるユキヒョウを守ってあげたい〜ユキヒョウ姉妹の奮闘記』(2023.08.06)

可愛いペンギンに会いに行こう! ~ 水中では高性能!?

2023/8/27 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ペンギン愛好家の「木村悦子(きむら・えつこ)」さんです。

 木村さんは上智大学卒業、複数の出版社に勤務後、編集事務所「ミトシロ書房」を開業。現在は雑誌、書籍、WEB記事などの編集・執筆、そして撮影も行なっていらっしゃいます。そして先頃『日本で会えるペンギン全12種パーフェクトBOOK』を出されました。

 水族館取材をきっかけに、すっかりペンギンにハマってしまった木村さんは、本を出すにあたってペンギンが飼育されている水族館や動物園、数十箇所を取材。中には年間パスを買って、週一で通っていた施設もあったそうです。

 きょうはそんな木村さんに、日本の水族館や動物園で会えるペンギンたちの、知っていそうで知らない生態や、ペンギン観察におすすめの水族館のお話などうかがいます。

☆写真協力:木村悦子

写真協力:木村悦子

可愛いのに体育会系!?

※日本では12種のペンギンに会えるということですが、いちばん多く飼育されている種は、どのペンギンなんですか?

「圧倒的にフンボルトペンギンが多いと言われています。この表紙にもあるんですけど、白黒で顔のくちばしのまわりに、ピンクの地肌がちょっと露出している可愛いペンギンちゃん、これだと思います」

●やっぱり多いっていうことは、飼育しやすいってことなんですか?

「はい、南米のチリやペルーの温帯に棲んでいるペンギンなので、日本の気候とそんなに変わらないっていう点と、長い飼育・繁殖の実績があるからなんですね。
 こういうことになったら、こうすれば卵が生まれるよね、こういうペアはいいよね、みたいなのが、飼育員のかたや獣医師のかたの間で蓄積があるので、やっぱり繁殖はうまくいくみたいで、年に2回繁殖可能になることもあるそうです」

●一方で飼育員のかたに人気なのが、ジェンツーペンギンと本に書かれていましたけれども・・・。

「小尾さん、ぜひジェンツーペンギンのページをじっくりご覧いただきたいんですけど、この顔、これは脊髄反射で可愛い! っていう反応が出ると思うんです。ジェンツーペンギンが動いていると、なんか猫っぽいっていうか、たまに気が向いたら、見ている人を追いかけてくるんですよ。これをされるとやっぱり動物好きはコロっといく!」

●興味津々というか好奇心旺盛なんですね! 可愛い!

「そうそう、人間好きだーみたいな感じで、この30ページ、飼育員を執拗に追いかけるペンギン! これもなかなかいい写真が撮れました!
 今(大阪の)海遊館で飼育員さんの掃除を邪魔するみたいな、邪魔になるから抱き抱えるみたいな、そういう面白いのが話題になっていますけど、ペンギンも哺乳動物、猫や犬みたいなじゃれかたをしてくるので、すごく見どころがあると思います」

●飼育員のかたのブラシとかホースにじゃれつくと、写真の説明にありますよね。可愛いですね〜。

「そうなんですよ〜。目がすごく、遊んで〜みたいな感じで言っているみたいで・・・」

●人懐っこいんですね〜。

「そうです。そんな感じがしますよ」

●でも泳いだりとか潜ったりする能力はすごいんですよね?

「そうなんです! これが自分の印象としては(ジェンツーペンギンは)美ペンギンって感じだったんですけど、取材に行けない所はプロのフォトグラファーにひとりで行ってもらって、写真だけ撮ってもらったんですけど、女性のフォトグラファーが“ジェンツー(ペンギン)は 体育会系だ!”みたいなことをコメントしてくれて、すごく本質をついていると思って、そういう気づきもありました」

●どれぐらい速く泳げて、潜れるんですか?

「最速35キロ、水深80メートルまで行けるっていう記録があるみたいですよね」

●いや〜すごいですね! 

「そうなんです! 山口県に『海響館』という水族館があって、そこにペンギンの遊泳能力、どんだけ早く泳げるの? どんだけ深く潜れるの? っていうところに着目した水槽があって、それをみなさんご覧になると、ペンギンの身体能力はすごすぎないか! っていうところに気づいてもらえるんじゃないかと・・・」

写真協力:木村悦子

世界最大のペンギン、デカっ!

※続いて、エンペラーペンギンのお話です。

●世界最大のペンギンも日本で見られるんですよね?

「『名古屋港水族館』と(和歌山の)『アドベンチャーワールド』にいます」

●写真を見ると、いわゆる白黒のペンギンの色ではなくて、胸元がオレンジ色だったりとか背中が灰色だったりとか、綺麗だなと思ったんですけれども・・・。

「本当に現物は写真よりもっと綺麗なんですけど、この黄みのところとか、ぜひ生体を見る時にじっくり見てほしいなと。光の加減でまたさらに綺麗な色になったりするので、これで異性の気を引いて、性的なアピールになるんじゃないかって言われています」

●サイズはどれぐらいなんですか?

「サイズは身長約120センチ、けっこう大きいですよね」

●そうですよね〜。

「これ、文字で120センチ、あ、そう!って感じで予習していくと、デカ!って感じで(笑)、あまりの大きさに、これは何かの間違いじゃないかっていうぐらいデカいです(笑)」

●圧倒的な存在感ですよね。

「よくそんなんで生き延びてきたなっていう、謎の感慨が・・・」

●生息地はどの辺りなんですか?

「生息地は南極圏内の海氷上と南極海ですね。繁殖期になると南極大陸周辺の海氷、浮氷上でコロニーを形成するという生態があるようです」

●飼育できる施設は限られているみたいですけど、それはどうしてなんですか?

「南極の水温と光を再現するために大変な光熱費がかかります」

(編集部注:世界最大のエンペラーペンギンに対し、世界最小のコガタペンギンも日本で飼育されています。その体長はおよそ35センチ、エンペラーペンギンの4分の1くらいでしょうか。妖精のようなので、フェアリーペンギンとも呼ばれるコガタペンギン、ほんとちっちゃくてキュートです。ぜひ木村さんの本でチェックしてください)

『日本で会えるペンギン全12種パーフェクトBOOK』

ふれあいペンギンビーチ!?

※木村さんの本にユニークな展示を行なっている施設が載っていました。「長崎ペンギン水族館」には9種類のペンギンが飼育されているそうですね。どんなペンギンが飼育されているんですか?

「これを読み上げますね。キングペンギン、ジェンツーペンギン、ヒゲペンギン、キタイワトビペンギンとミナミイワトビペンギン、フンボルトペンギン、マゼランペンギン、ケープペンギン、コガタペンギンです」

●9種類、多いですよね〜。

「そうなんですよ。水族館・動物園に行くと“ペンギン、展示しています”ってあっても、だいたい1種類なので、ああこれがフンボルトペンギンかぁ〜って散漫と見て、あんまり頭に残らないんですね。

 (長崎ペンギン水族館は)似たような3種、フンボルト、マゼラン、ケープが同じ・・・同じって一応、柵で区切ってあるんですけど、比べることによって、それぞれの特徴が際立ってくる、比べてわかるっていう点で、いろんな種類が同じ施設で見られるって意味では、すごく価値があるところだなと思います」

●1年を通じて実施されているイベントもあるんですよね?

「そうなんです。天然の海を区切ったプールがあって、ペンギン10羽ぐらいが、そこにみんなで歩いていて、決まった時間、天然の海で泳いで楽しく過ごすっていう『ふれあいペンギンビーチ』っていうのをやっておられて、これが素晴らしいです! 自分は見られなかったんですけど、羨ましいなと思っています」

●ふれあいペンギンビーチ!?

「そう、カラッと晴れた日にペンギンを見に行こうっていう贅沢ってあるなと思っていて、夏はおすすめという感じで2ページ書きました!」

●写真も豊富に載っていましたね。

「そうなんです」

●賞も受賞されたんですよね?

「はい、これはペンギンの幸せな暮らしを実現するため、飼育環境に工夫を加えて環境を豊かで充実したものにしようという試みが評価されて、『エンリッチメント大賞2013』の大賞を受賞したっていうお話を聞いています」

●すごいですよね〜。一方で北海道では旭山動物園が行動展示でも知られていますけれども、ペンギンの散歩も有名ですよね?

「旭山(動物園)に行かれたことありますか?」

●ないんです〜〜。

「なかなか遠いから〜」

●そうなんです、行きたいんですけど・・・。散歩するペンギンはどの種類なんですか?

「キングペンギンが登場します」

●これは通年開催されているんですか?

「寒いところのペンギンだから、暑い中で歩けないので、雪がないと実施できないんですね。なので、だいたい12月下旬ぐらいから、翌年の3月頃までっていうことで公表しているみたいですね。ただペンギンの体調とか、羽が生えかわって健康管理の面からやめようみたいなことがあるので、おすすめは1〜2月に行くのがいいですよっていうのを飼育員さんに聞いています」

(編集部注:水陸両用のペンギンたちが飼育されている施設では陸上の部分と、泳ぐためのプールが設置されていますが、プールの水は真水、それとも海水、どっちでしょうか? 答えは、どちらもあり、なんです。木村さんの本によれば、海に近い施設は海水を使ったり、また、人工海水を使うところもあれば、真水を使っている施設もあるそうです。

写真協力:木村悦子

ペンギンの優れた体の秘密

※ペンギンは進化の過程で飛ぶのをやめた鳥だと思うんですけど、水中を飛ぶように速く泳げるのは、どうしてなんでしょう?

「体の作りが泳ぐのに適しているというのがあると思うんですね。まず、骨の密度がすごく高くて、深く潜ることに適している。体が流線形で水中での抵抗がなくなって、ちょっとフリッパー(羽)をパタって動かすだけですっと進む、という体上の利点がある。さらに、すごく太い胸の筋肉で翼を動かせるので、陸上ではぎこちないヨチヨチ歩きでも、水中に入ったら強すぎる、早すぎる(笑)」

●ギャップがすごいですよね〜。

「本当におっしゃる通りだと思います」

●ペンギンが長く潜っていられるのは、何か秘密があるんですか?

「これもこの本の、今回のキモかなと思っているんですけど、『気嚢(きのう)』という肺から分岐した袋状の器官があって、これはほかの鳥にもあるんですけど、ペンギン(の気嚢)はすごく大きく発達しているという特徴があります。

 この中に空気を溜めたり、出したりすることによって、水中で呼吸の補助をしてくれるので、長時間息継ぎをしなくても泳げるということが確認されています。

 この気嚢が袋なので、死ぬとぴしゃって潰れちゃうらしいんですよ。だからペンギンをたくさん解剖したっていう先生でも、この気嚢がどんな姿をしているのかを現物では見られないんです。それを今回様々な大学の先生、獣医師さんの力を借りて、おそらく世界初だと思うんですけど、図解化に成功しているので、これをぜひみなさんに見ていただきたい。

 これはイラストがあまりにもよく出来すぎたということで、出版社でこの版権を買い取って、これをぜひ動物園や水族館に展示してほしいなっていう小さなプロジェクトもあるので、ご興味のあるかたは出版社にお問い合わせいただけるといいかなと思っています。無料でパネルを・・・。
 ペンギンの体の中はどうなっているのかって、夏の自由研究に最適のテーマじゃないかななんて・・・ちょっと地味ですけど、絶対いいと思います」

●体を覆っている羽毛にも秘密があるんですよね?

「そうですね。羽毛もやっぱり完全に水をはじく・・・動物園の昔の写真を見たんですけど、ペンギンに水がかかっていても、全部完全にはじいている写真を見て、あ〜やっぱりペンギンは高性能だなって思いました」

●防水性が!

「本当に体の細部に至るまで、すごく精緻な構造になっているんだなと思って圧倒されますね」

(編集部注:千葉県内でペンギンが見られる施設は、鴨川シーワールド。ここでは南米チリの沿岸を再現し、フンボルトペンギンを展示。ほかにもキングペンギンやジェンツーペンギンも見られます。そして、千葉市動物公園ではケープペンギンが飼育されていますよ。ペンギンたちに会いに、お出かけされてみてはいかがでしょうか)

絶滅危惧種のペンギンたち

※おすすめのペンギンの観察方法、ここを見て欲しいというのがあれば、ぜひ教えてください。

「ペンギンを見ていると、可愛い!ってみんないうから、可愛いをダイレクトに味わうのがすごく大事だなっていうのと、あと、体の中身はまだ全然わからないところがあるっていう不思議さ・・・どう観察するかってその人次第だなと思っていて、自分なりの視点を見つけるといいなって思っているんです。なので、まずは年パスを買って毎月行くのはどうかと提案したいですね」

●見続けるっていうことですね。

「そうです、そうです」

●絶滅危惧種に指定されている種も多いんですよね。

「そうですね。世界18種のうち10種が絶滅危惧種、日本だと君どこの水族館でもいるよねっていうレベルのフンボルトペンギンでも絶滅危惧種ということなので、けっこう深刻な事態じゃないかなと思っています。

 この本買ってくれる人はペンギン好き、動物好き、環境好きみたいな意識のかたがいると思うんで、やっぱりまず第一歩として寄付をするみたいなこととか、具体的に何をすればいいのか、可愛い! 守りたい! じゃあ何する? っていうところも書いているので、この黄色い巻末のページをぜひお読みいただければと思います」

●18種のうち10種って半分以上ですね。

「そうですね」

●では最後に、木村さんを虜にしているペンギンのいちばんの魅力を聞かせてください。

「これが難しいなと思ったんですけども、可愛い、面白い、見ていて飽きない、そんな感じですかね」

木村悦子さん

INFORMATION

『日本で会えるペンギン全12種パーフェクトBOOK』

『日本で会えるペンギン全12種パーフェクトBOOK』

 日本で飼育されている12種を網羅。一種一種を豊富な写真ともに詳しく解説。12種の卵やヒナも載っていますよ。さらに飼育員さんや獣医師さんのインタビューも掲載。そしてお話にもあったペンギン解剖図は必見! 驚きの体の秘密が分かります。なにより、可愛い写真だらけでペンギン好きにはたまらない一冊! グラフィック社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎グラフィック社:http://www.graphicsha.co.jp

 木村さんが開業した編集事務所

◎ミトシロ書房:https://mito-pub.mystrikingly.com

オンエア・ソング 8月27日(日)

2023/8/27 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. SWEET MEMORIES / 松田聖子
M2. DO THE FUNKY PENGUIN PART 1 / RUFUS THOMAS
M3. Penguin / 槇原敬之
M4. 空とぶペンギン / 松たか子
M5. 世界に一人のシンデレラ / Penguin feat.U
M6. ペンギン / Nokko & Go
M7. PENGUINS / ED SHEERAN

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第14弾!〜小豆島から海をきれいに!「クリーン オーシャン アンサンブル」〜

2023/8/20 UP!

 

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」の広報担当「大西亜未(おおにし・あみ)」さんです。

 SDGs「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)=持続可能な開発目標」の中から「つくる責任 つかう責任」、そして「海の豊かさを守ろう」ということで、NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」の活動をご紹介します。

 2020年12月に発足した「クリーン オーシャン アンサンブル」は海洋ごみゼロの世界を目指し、香川県小豆島で、おもに海洋ごみ回収装置の開発を行なっています。

 なぜ小豆島だったのか、回収装置とはどんなものなのか、広報担当、大西亜未さんにいろいろお話をうかがっていきます。

☆写真協力:NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」

写真協力:NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」

海洋ごみをなんとかしたい!

●「クリーン オーシャン アンサンブル」というネーミングには、どんな思いが込められているんでしょうか。

「クリーンはきれいな、オーシャンは海を、なんですけど、アンサンブル っていうのがフランス語で、『より多くの人と一緒に』っていう意味が込められています。代表の江川は英語とフランス語も喋れるので、英語とフランス語を掛け合わせた名前にしたと聞いています」

●代表理事の江川裕基(えがわ・ゆうき)さんは、以前はJICAの海外協力隊として活動されていたということですけれども、やはり海外での活動経験が「クリーン オーシャン アンサンブル」の原動力になっているんでしょうか?

「そうですね。代表の江川はアフリカのブルキナファソっていう国で、廃棄物を処理する仕事をしていたんですね。そこで、ごみをよく見ていたんですけど、本当にごみが道路に積み上がっているような状況をすごく目にしていたそうです。

 もともとバックパッカーとして、いろんな国をまわっていて、“あれ? 世界ってごみだらけだな〜、ちょっと壊れてきているな”って思ったみたいで、これは早急に何とかしなきゃいけないと思って、それが原動力になって発足した団体です」

大西亜未さん

●大西さんは去年から「クリーン オーシャン アンサンブル」で活動されているそうですが、参加する前は何をされていたんですか?

「小豆島にADDress(アドレス)っていう多拠点生活サービスがあるんですけど、そこの旅人さんを受け入れるお仕事をしていて、小豆島の拠点の管理人をしていました。
 小豆島に来てくれる人って、そもそも島の環境に興味がある人がすごく多くて、海洋ごみの話とかでも盛り上がるような方々で、そういう人をおつなぎするような感じで、『クリーン オーシャン アンサンブル』ともおつなぎしたりとか、そういうことを以前からしていたって感じですね」

●出身は小豆島なんですか?

「 私は横浜出身です」

●横浜からどうしてまた小豆島へ・・・?

「その時付き合っている、今も付き合っているパートナーがいるんですけど、一緒に移住先を探しておりまして、多拠点生活サービスADDressを利用して、小豆島に来たことがきっかけで移住を決めました」

●いろんな選択肢がある中で、どうして小豆島だったんですか?

「横浜の海がちょっと濁っている感じの海で、あまり海が好きじゃなかったんですね、正直。だけど、小豆島に来た時に臭いがしないっていうのと、こんなにも穏やかな海があることにすごく感動して、初めて海が好きだなって思ったんですね。

 この海のそばに住みたいと思って、小豆島に移住を決めました。歩いて30秒で海なんですね。疲れた時は海を眺めたりとか、(海に)ちゃぽっと足をつけて入ったりとかして、ストレスの発散ができて、幸せな毎日を過ごせています」

写真協力:NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」

●江川さんから何か影響を受けたことはありますか?

「(環境に)興味があるADDressの会員さんとおつなぎした時に、一緒にビーチクリーンをやったんですけど、そのビーチクリーンの内容が分別の徹底だったりとか、こんな行政の事情があってとか、最終処分場の事情があってとか・・・今までビーチクリーンやごみ拾いに参加させてもらったことが、ほかの県でもあったんですけど、ここまでガチな感じのビーチクリーンって初めてだったんですね。

 しかも小豆島は観光地なんですけど、移住するきっかけがやっぱり観光がすごく素敵だったからとか、友達がもともと移住していたとか、そういうかたが多い中で、代表の江川だけが海洋ごみを何とかしたいから移住したっていう、そんな理由で移住する人いる!? みたいな、その本気度に影響を受けて、参加したいなって思いましたね」

地元の漁師さんとタッグを組む

※代表の江川裕基さんがおもな活動エリアを香川県小豆島にしたのは、何か理由があったんですか?

「香川県にまず江川は着目しました。なぜかというと、香川県は香川県方式っていうものを作っています。漁師さんがお魚を獲る時にごみが網の中に入ってしまうので、漁師さんたちは自腹で(ごみを)処理していたんですが、香川だけは自治体が無償で処理するようになったんです。そういう画期的なシステムを構築したということで、まずは香川県にしようっていうことになったらしいんですね。

 小豆島っていう島は瀬戸内海にあって、ほかの県に囲まれた島なので、日本のごみだけが漂ってくることとか、波がすごく穏やかで、回収装置を作るにあたって壊れるリスクがすごく少ない、そんなことを掛け合わせて、小豆島がいいということになったと聞いています」

●「クリーン オーシャン アンサンブル」では海洋ごみの回収装置を作っていらっしゃいますよね。サイトに掲載されている写真を見ると、漁網のようにも見えるんですけれども、どんな装置なのか説明していただけますか。

「漁師さんが使う網をUの字に広げて(全長が)30メートル、下に垂れている部分が2〜3メートルになっています」

写真協力:NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」

●網を沈めておくと、勝手にごみが入ってくる感じなんですか?

「そうですね。浮きで浮かせている部分と、重りで沈んでいる部分があって、その網はずっと固定されているんですね。その固定されている網に向かって潮が流れてくるので、波の影響を受けて、ごみが自動的にキャッチできるようになっています」

●その回収装置を仕掛けるには、やはり地元の漁師さんの協力も必要になってきますよね?

「そうですね。小豆島を拠点にするっていう時に、江川が片っ端から漁業組合さんに電話をかけたらしいんですけど、やっぱりお断りされたりしたそうです。唯一、小豆島に森組合長さんという方がいるんですけど、その人だけ全面的に協力したいって言ってくれて、ここだったらやりやすいなと思ったそうです。海を使わせていただくということは漁師さんの協力が必須になってくるので、森組合長とタッグを組むということで、小豆島にしたって言ってましたね」

写真協力:NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」

香川大学と連携

●海洋ごみを回収すると言っても、海流とか波とか風とか、いろんな影響を受けて、そう簡単には回収できないようにも思うんですけれども、いかがですか、その辺りは?

「そうですね。ほんとうに波乱万丈な実験というか繰り返しだったんですけど、海洋ごみを回収する際に、どうやったら効率的に回収ができるかっていうことで、やっぱり潮の流れがキー・ポイントになってくるんですね。
 なので、香川大学さんと連携させてもらって、今回はそんなに捕れませんでしたとか、今回はすごく捕れましたっていうデータをすべて提出して分析してもらました。その中でごみが流れやすい時期があることがわかったので、その時期に合わせて設置するところから始めていきましたね」

●その時期とはいつ頃なんですか?

「小豆島は夏と冬で、ごみが溜まるエリアが変わってくるのがわかったので、今回私たちが活動しているところは、夏のほうが集まるので、夏に設置するようにしました」

●トライアンドエラーを繰り返しながら改良していったという感じだったんですね。

「そうですね。やっぱり1号機から4号機まで、結構大変だったですけど、ほんとうにビニールのかけら3つとか、そんなレベルでしか捕れなかったんで、すごく大変でしたね」

●今ではどれぐらいの量のごみを回収できるんですか?

「4号機目で初めて1.5キロ回収ができたんですよ! もうみんなで歓喜しました」

海岸に「豆管」がコロコロ!?

※そもそもなんですけど、海洋ごみの回収装置を作ることにしたのは、どうしてなんですか?

「海洋ごみは海に漂っている間と、打ち上げられたごみを比べると、打ち上げられたごみはかなり風化してしまい、紫外線とかでボロボロに細かくなりやすいんですよね。それこそそれが(海に)戻って魚が食べちゃうとか、あとは細かくなりすぎて、風で雑木林まで飛んでいっちゃうとか・・・。そうすると人間が取りに行けなくなっちゃうんですよね、奥にまで行ってしまうと。なので、その前の段階、海の中に漂っている段階で回収したほうが、やっぱり効率がいいんじゃないかっていうことで回収装置を作ることになりました」

●ビーチクリーンの活動も行なっていらっしゃるんですよね?

「そうですね。毎月一般向けにイベントをやらせていただいています」

写真協力:NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」

●どんな海洋ごみが目立ちますか?

「タバコとかペットボトルとか、そういうのはやっぱり当たり前にすごく多いんですけど、瀬戸内海には『豆菅(まめかん)』っていうのがあるんですけど、豆管ってご存知ですか?」

●なんでしょう?

「豆管っていう、お菓子のポテコみたいな、指にはめられるリングのようなもののプラスチックバージョンでありまして、その豆管が牡蠣の養殖でよく使われるんですね。それがコロコロと転がっているのがすごく目立ちますね」

●集めた海洋ごみをご覧になって、どんなことを感じますか?

「はい、やっぱり豆管とか細かいものはもちろんなんですけど、こないだ拾ったペットボトルが結構レトロなパッケージでして、いつのペットボトルか調べたら、なんと40年前のごみだったんですよ。40年前のごみが今漂っているってことは、40年間分のごみは絶対にあると・・・。海の中をずっと漂っているってことは、もっと前のもあるかもしれないし、ずっと蓄積しているんだなと思って、もっと問題視しなきゃいけないなって思いましたね」

(編集部注:先ほどお話に出てきた「豆管」、プラスチック製のパイプを、1.5センチくらいに切って、牡蠣を養殖する際に使うとのこと。嵐などで海が荒れると、たくさんの豆管が海岸に打ち上げられるそうです)

写真協力:NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」

海洋ごみゼロに向けて

※「クリーン オーシャン アンサンブル」では、学校や企業に向けて、環境教育の活動も行なっているそうですが、環境教育はやはり大事なことですか?

「そうですね。最近知ったんですけど、歴史の勉強の時に旧石器時代とか、縄文時代って言うじゃないですか。今の時代って『大プラスチック時代』らしいんですよ。そんなレベルというか、多分きっと教科書に載るべきもの、そういう時代になってきているっていうことで、やっぱり自分たちのためでもあるし、将来の子供のためにも今のこの問題を勉強してもらって、意識を持ってもらうのはすごく大事なことなんじゃないかなと・・・。やっぱりひとりひとりの意識が変えられるような環境教育は大事なんじゃないかなって思っています」

●大西さんのお話を聞いて「クリーンオーシャンアンサンブル」の活動を応援したいと思った方は、どのようにしたらよろしいでしょうか?

「私、SNSの広報部長をやっておりまして、なので今instagramにすごく力を入れているんです。instagramをぜひぜひフォローしてもらいたいですね。それで『クリーン オーシャン アンサンブル』の活動をシェアしてもらいたいなって思っています」

●では今後の目標を教えてください。

「はい、海洋ごみの回収装置を1号機から4号機まで作ってきたんですけど、流木とか自然物もすごく多く回収されたりもしました。今度の5号機目は(自然物ではない)海洋ごみを優先的に拾えるように改良して頑張っていくことを目標にしています」

●「クリーン オーシャン アンサンブル」が掲げているビジョン、海洋ごみゼロの世界が実現したら、私たちの暮らしはどうなっているんでしょうね?

「今なかなか想像がつかないんですけど、やっぱり物だらけの現代っていうことで、プラスチックのものだらけのところから、必要なものを繰り返し使う暮らしだったりとか、減ってしまったお魚が戻って、美味しいお魚が食べられて、世界中にきれいな海が取り戻せる、そんな素敵な暮らしに戻るんじゃないかなって思っています」

☆この他の「SDGs〜私たちの未来」シリーズもご覧ください。


INFORMATION

 海洋ごみの回収装置がどんなものなのか、ぜひ「クリーン オーシャン アンサンブル」のオフィシャルサイトを見てください。動画や写真が載っていますよ。

 そして活動をサポートしてくださるかたや、寄付も募っています。活動内容も含めて、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「クリーン オーシャン アンサンブル」:https://cleanoceanensemble.com

オンエア・ソング 8月20日(日)

2023/8/20 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. UNDER THE SEA / BENA LOBO
M2. LUCKY / JASON MRAZ & COLBIE CAILLAT
M3. KOKOMO / THE BEACH BOYS
M4. SITTING, WAITING, WISHING / JACK JOHNSON
M5. OCEAN / B’z
M6. DROP IN THE OCEAN / MICHELLE BRANCH
M7. BEYOND THE SEA / HALIE LOREN

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

目立たない苔が癒しのインテリアに。苔テラリウムを始めよう!

2023/8/13 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、苔クリエイターの「石河英作(いしこ・ひでさく)」さんです。

 石河さんは1977年、東京都生まれ。もともと植物好きだった石河さんは2013年に苔の専門ブランド「道草michikusa」を立ち上げ、ネットで苔テラリウムを販売しているほか、you tubeの道草チャンネルでその作り方や育て方などを発信されています。

 そして先頃、『はじめての苔インテリア〜苔テラリウムから苔玉、苔盆栽まで』という本を出されました。きょうはそんな石河さんに、初心者向けに見ているだけで癒される苔テラリウムの作り方などをうかがいます。

☆写真協力:石河英作

写真協力:石河英作

道端の苔に日の目を

※石河さんは、もともと植物に関係するお仕事をされていたそうですが、苔を専門にしようと思ったのは、どうしてなんですか?

「卒業してから贈答用の胡蝶蘭とか、ああいう蘭のお花を開発している会社に勤めていたんですよ。蘭のお花って華やかで、ギフトでもらってとか、そういうイメージがあるじゃないですか」

●存在感もありますしね。

「存在感もあるし、高級っていうような・・・そういうのはそういうので楽しくやっていたんですけど、あれは育てるっていうよりは、胡蝶蘭も開店祝いとかでいただいて、そこで一回終わってしまうみたいな感じがして・・・自分で何か植物の仕事を始めるなら、育てることをやりたかったんですよね。

 で、そういうふうに考えた時に、蘭の足元にも苔を使ったりとかっていうのがあるんですよ。それって苔が脇役っていうか添え役というか、蘭の日陰にちょっと使うだけっていう感じがするじゃないですか。でも苔って日本にいっぱい生えているし、国歌にも歌われているのを考えた時に、もっと日の目を当ててあげることができたら、みんな楽しめるのかなと思ったりとか・・・」

●確かに国歌にも出てきますね!

「出てきます。苔のむすまで、って・・・」

石河英作さん

●そうか、そうですね! 
 石河さんが立ち上げられた苔の専門ブランド『道草michikusa』、すごく素敵なネーミングだなと思ったんですけど、どんなコンセプトなんですか?

「ふたつの思いを込めています。ひとつは本当に道端の草、ありふれているものって、その辺にも生えるんで、強いじゃないですか。そんなに育てる対象にされてない、それを何か工夫してあげるとかっこよく見えたりとか。
 実は日の目を浴びてないんだけど、この器に入れてあげたら、すごく引き立つものって多分まだまだ溢れていて、そういったものに注目したい、道端に生えている草にも注目したいっていうのがひとつと・・・。

 あとは、都会で働いていて疲れちゃうみたいな、日々忙しくてっていうことがあるのを、育てるだけじゃなくて、道草するように植物に触れて・・・今メインでやっている、ガラスの中で育てるテラリウムも、自分で作って育てるみたいなのが楽しかったりするので、それって自分の生活の中で、すごくスローな時間だと思うんですよね。

 苔とかそういう小さい植物って、成長していくのもすごくゆっくりで、日々見ていても全然変化がなくて、1ヶ月2ヶ月ぐらいすると、ちょっと大きくなっていたぐらいのペースの成長の仕方なんですよ。それってこの都会の忙しさと時間軸が違うっていう感じがあって、そういう部分で道草するようにこの植物を愛でていただきたいなっていう、そういう思いとそのふたつが込められています」

(編集部注:小さな植物「苔」には、一般的な植物のように、水や栄養を吸い上げる根などがなく、葉っぱや茎から直接、細胞に取り込むそうです。根の代わりに「仮」の「根」と書く「仮根(かこん)」という器官があり、それを使って石や木に体を固定しているとか。
 そんな苔植物は「蘚類(せんるい)」「苔類(たいるい)」そして「ツノゴケ類」という3つのグループに分類され、園芸用に育てられているのは「蘚類」に属する種類だそうですよ)

石河英作さん

ジメジメ好き、カラカラ好き!?

※日本には何種類くらいの苔がいるんですか?

「日本に生えているものでも毎年(新種が)見つかるので、正確な数は言えないんですけど、現在1800種類超えぐらいな感じですね。世界を見ると18000種類ぐらいいるそうです」

●どれも同じように見えますけど、違うんですよね。

「プロの人が見ても、実は区別がつかないぐらいわずかな差だったりするんですよ」

●なのにたくさんの種類があるんですね。

「それも面白いですよね。種類を見るのにまずはルーペ、虫眼鏡を使って観察するのはマストですね。その先に細かい種類まで見ていこうと思うと、顕微鏡で葉っぱの形とかを見たりして、種類を特定していくっていう、すごく狭いジャンルですね」

●花は咲いたりしないと思うんですけれども、どんなふうに増えていくんですか?

「そうなんです。苔は花は咲かない植物で、胞子を使って基本は増えていきます。胞子っていうのは、苔には基本オス、メスみたいな、雄株と雌株・・・たまに合体している同種っていうのがいるんですけども・・・雄株と雌株があって、それが受精すると胞子体っていう球状のものがぴょこんと出てきて、その胞子体の中にはすごく細かい胞子って呼ばれるものが詰まっています。

 その胞子が風とかでパーッと飛ばされて、いろんな場所に行き着くんですよね。その場所がたまたま 苔にとって生えやすい居心地のいい場所だと、そこから胞子が発芽して新しく苔が増えていくというような増え方をしています」

●繁殖力は強いほうなんですか?

「どう言ったらいいんだろう・・・みるみるどんどん広がっていって、この敷地を埋め尽くすみたいな、空き地に雑草が生えるみたいな意味での繁殖力っていうのは、そんなに強い植物ではないんですね。逆にほかの大きい植物が生えないような場所、そういった場所にも適応できるっていうのは苔のすごさです。

 海浜幕張の駅からここに歩いてくるまでの間でも、道路脇とかをよく観察すると、日当たりがいいところにも生えていたりします。苔はすごくジメジメしたところだけってイメージがあるんですけど、日本に1800種類いる中には、ジメジメが好きなやつもいれば、カラカラが好きなやつもいたりします。

 大きい植物が生えるような草地とかにいっちゃうと、体が小さいので苔って負けちゃうんですよ。いろんな隙間隙間、ほかの植物が来ないところとか・・・で、苔同士の中でも争いがあるわけです。同じ石の上にいろんな苔の胞子が落ちた時に、誰がいちばん勝つのかみたいなところの争いがあって、その争いに勝つために、ほかの苔にはやれない場所に、俺はやれるぜみたいなところで居つけるというのが特徴ですね。

 だから繁殖力っていう意味でいうと、ほかの植物が行けないところに行けるので、すごく繁殖力があるみたいなイメージもあるんだけど、ほかの植物が居心地のいいところでは完全に負けるっていう・・・」

(編集部注:街中でよく見られる苔は、ジメジメしたところが好きな「ゼニゴケ」、そして道路脇など日当たりの良い場所を好み、乾くと銀色に見える「ギンゴケ」、その2種類だそうです)

<ウォードの箱>

 テラリウムの語源は、ラテン語で「テラ」は陸地、「リウム」は場所を意味する造語で、密閉された透明なガラスケースの中で、陸上の生き物を育てる方法のことを、テラリウムと言うそうです。

 その起源は19世紀のヨーロッパで発明されたガラスの容器、その名も「ウォードの箱」。当時、世界中の珍しい植物や、役に立つ植物を探し求めて、プラントハンターが中南米やアジアに渡っていました。移動手段は船だけだったので、長い船旅の間、満足に水やりもできず、また潮風にさらされることもあり、採取した植物を生きたまま持ち帰るのは、とても難しいことでした。

 それを解決したのが、イギリスの医師ウォードで、ガラス容器の中では水分が循環することを発見し、「ウォードの箱」を開発したそうです。テラリウムにはそんな歴史があったんですね。

初心者向け「苔テラリウム」の始め方

※石河さんが先頃出された本『はじめての苔インテリア〜苔テラリウムから苔玉、苔盆栽まで』には苔テラリウムの作り方などが載っています。初心者におすすめの苔や作り方を教えてください。まずは、どんなガラス容器を用意すれば、いいんでしょうか?

写真協力:石河英作

「蓋ができるガラス容器・・・初心者の方だとあんまり小さすぎると、ピンセットで植えるので、結構器用じゃないと大変なんですよ。雑貨屋さんだとか100円ショップでも、小さめ小瓶とか買えるんですけども・・・だいたい8センチから10センチぐらい直径がある、口が広い容器のほうが手も入るのでいいですね。それで蓋ができるもの。テラリウムは容器の中に湿気を保てるのがポイントになりますので、蓋ができるものを選んでください」

●道具はどんなものが必要ですか?

「道具は最低限、ピンセットとハサミと、水やりをするのに霧吹き、この3つがあれば大丈夫です」

●すごく手軽に始められそうですね。

「そうですね」

●初心者にはどんな苔がおすすめですか?

「苔の種類も本を見ていただくといっぱい出ているんですけど、種類によって育ちやすい育ちにくいが当然あります。初心者の方だと『ヒノキゴケ』っていう種類と『ホソバオキナゴケ』って種類、この2種類が特に丈夫なのでおすすめです。

 ホソバオキナゴケはちょっと背が低くて、テラリウムで芝生とか草原っぽいようなイメージで植えるのに向いているものですね。ヒノキゴケはちょっと背が高めの種類なので、(その2種類を)合わせると、草原の中に木が生えているみたいな景色を作ったりとかもできるので、このふたつをまず覚えてもらうといいと思います」

写真協力:石河英作
(左)ヒノキゴケ (右)ホソバオキナゴケ

●これは、販売されている苔を使うんですか?

「そうですね。今おすすめした2種類もそうなんですけど、テラリウムに使える育てやすい苔は、どちらかというと街中に生えている苔よりも森の中、常にしっとりした環境に生えているものが育ちやすいんですね。

 街の中って公園とかでも、じめっとした時間もあれば、結構ドライになる季節とかドライになる時間もあるじゃないですか。そういったところに適している苔が生えているので、瓶の中に安易に入れてしまうと、結構すぐダメになります。だから苔だからなんでも瓶の中に入れたらいいのかっていうと、そうでもないんですよね」

●なるほど〜! 日頃のお世話の点で注意すべきことってありますか?

「基本のお世話は、だいたい2週間に1回ぐらい霧吹きで、シュッシュぐらいじゃダメなので、よく湿るぐらい水をかけてあげる・・・苔を植える時に下にテラリウム用の土を敷くんですけれども、その土もしっかり湿らせるぐらいに水をあげるんですが、それも毎日あげる必要はなくて、2週間で忘れそうだったら、毎週1回は苔を観察する日 みたいなのを設けてもらって、苔の様子を見ながらシュッシュッシュって水やりをしてもらう・・・」

●湿っているかは、目で見てわかるものですか?

「慣れてくればわかります。土も乾いてくると湿った時と色合いが変わってきますので、それがわかるぐらい、できれば毎日見てもらいたいっていうのが本当の気持ちです」

(編集部注:石河さんによると、街中に生えている苔を持ってきて、ガラス容器の中に入れると、虫がわいてきたりするので、苔テラリウム用に販売されている苔を使ってくださいとのことです。
 また、ガラス容器内の苔はレースのカーテン越しの光や、LEDライトでも育つので、直射日光と暑さは禁物だそうですよ。

写真協力:石河英作

 石河さんの新しい本には、数種類の苔を使った寄せ植えの苔テラリウムも紹介されています。コツとしてはタイプの違う苔を組み合わせること。
 また、苔玉の作り方も掲載されていますが、石河さんがおっしゃるには、苔玉は苔テラリウムと違って、基本は屋外で育てるものだそうです。詳しくはぜひ本をご覧ください)

自然の景観をテラリウムで再現

※日本の苔テラリウムは、テラリウム発祥地ヨーロッパほか、アジア圏でも大人気だそうです。人気があるということはニーズがあるということで、自然界から勝手に苔を持ってきてしまう、そんな問題も起こっているとか。石河さんは苔を愛するひとりとして、こんな指摘をされています。

「苔ってその辺にもありふれているように見えるものじゃないですか・・・っていうのもあったりして、街中でも(苔を)安易に採ったり、あとは旅行先の山でも、いっぱい生えているんだから、ちょっとぐらいいいんじゃない、苔なんてただみたいなもんでしょ、みたいな感覚で採られてしまうのが、やっぱりここ数年特に苔の人気が出てきてから起こっていますね。

 当然のことながら、他人の敷地で採ったりだとか、山も国定公園、特に苔の景勝地っていうか自然な景観が守られているところって国定公園になっていたりするので、そういったところは苔を含む動植物を採取すること自体が、法律的にNGだったりするんですよ。

 そういったところで、わずかなひとつまみの苔であっても、そこの中に生態系があったりするので、安易に採るのは当然よくないことですし、大きい塊の一部を採ったことによって、綺麗に塊になっていた(苔の)一部から、なんて言うんですか・・・ここに小さい世界が作られているので、採られた一部がきっかけで、全体が枯れてくるみたいなことが苔ってあるんですよ。塊になっているから、ちょうどいい水加減を塊で保っているみたいなところがあります。

 安易な行動が、あとの人たちも見に行きたい景観を壊してしまったりみたいなことがあったりするので、できるだけ自然な中のことは目に焼き付けたり、写真に撮ったりして、その風景をあらためて家で、テラリウムとかを作って再現するみたいな楽しみ方をしていただきたいなと思います」

写真協力:石河英作

「東京苔展2」開催

※9月に苔のイベントを計画されているそうですね。どんなイベントなのか、教えてください。

「『東京苔展2』というイベントです。板橋区立熱帯環境植物館で、苔の企画展を予定しております」

●どんなイベントになりそうですか?

「苔が好きな人って、今でこそテラリウムは少しずつ認知されてきているんですけど、まだまだ“私、苔が好きなの!”ってカミングアウトしづらいようなところが、実は苔好きの中ではあるんですね。密かに通学途中とか通勤途中に苔が生えているの、いいよねって思っているんだけど、職場とか学校でも友達とかに言っても“何?”とかって言われちゃうんで、言えないっていう人が結構いるんですよ。

 そういう人たちが東京とかこの近郊にもいるんじゃないかなっていうので、そういった方々が“苔好きだよ!”って言える場所みたいなのを作りたくて、企画を始めたんですよ。

 そういう一般の方とか愛好家の方の投稿してくれた写真を展示したりだとか、あとはテラリウムの作品はプロのテラリウムの作家さんが作ったものだとか、そういったのを並べたり展示したりします。

 (会場の)植物園の中に温室がありまして、その中にもやっぱりちょこちょこと苔が生えているので、普段は大きい植物とかお花が、試作植物を飾ってある植物園なんですけども、そのお花とか木は見ないで、足元の苔だけを見て回りましょうっていう苔マップとか。あとはツアー動画も作りまして、その動画を見ながら足元を這いつくばって歩いてもらうっていう企画を考えていたりします」

●楽しそうですね〜! いいですね! 以前、苔役者の石倉良信さんに番組にご出演いただいたことがあるんですけれども、石倉さんも参加されますか?

「石倉さんも参加します。その観察動画は石倉さん出演です」

●そうなんですね! 石河さんは苔を通してどんなことを伝えていきたいですか?

「やっぱり出だしが(苔を)育ててもらいたいっていうところから始まっているので、苔って身近に生えていてすごく小さい植物なので、まだ植物を育てていない人でも気軽に置いてもらいやすい大きさだと思うんですよ。

 テラリウムだと2週間に1回ぐらい水やりすればいいっていうと、働いていて忙しい人でも始めやすいじゃないですか、っていうところで、部屋に植物はないんだけど、何か植物を置いてみたいなって言った時に、まず苔から始めてみようって思ってもらえたら嬉しいなと思います。
 で、その先に次のステップでいろいろな植物を育ててもらってもいいですし、そのきっかけが作れたらいちばん嬉しいですね」

●改めてになりますが、石河さんを虜にしている苔のいちばんの魅力とはなんでしょう?

「いちばんの魅力は、ぱっと見たら苔って緑の塊で、もう苔でしかないんだけど、ぐっと近づいてルーペとかを覗いた時に、種類が無数にあって、本当に小さな苔の森が広がっているように見えるんですよね。その違いを、遠目で見た時と近くで見た時の違いっていうのがすごく面白いので、ぜひ(苔に)近づいてみてもらいたいです」


INFORMATION

『はじめての苔インテリア〜苔テラリウムから苔玉、苔盆栽まで』

『はじめての苔インテリア〜苔テラリウムから苔玉、苔盆栽まで』

 初心者に向けて、苔テラリウムや苔玉などの作り方が豊富な写真でわかりやすく解説してあります。全編カラーなので、みずみずしいモスグリーンを見ているだけで癒されますよ。この本を参考にあなただけの「苔インテリア」を作ってみませんか。家の光協会から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎家の光協会:https://www.ienohikari.net/book/9784259567620

「東京苔展2」

 石河さんが立ち上げた苔の専門ブランド「道草michikusa」のサイトでは素敵な苔テラリウムも販売。また、9月12日から10月1日まで板橋区立熱帯環境植物館で開催される「東京苔展2」の案内も載っています。詳しくは「道草michikusa」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎道草michikusa :https://www.y-michikusa.com/blog/topics/7472/

オンエア・ソング 8月13日(日)

2023/8/13 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. GREEN LIGHT / JOHN LEGEND FEAT. ANDRE 3000
M2. I SAY A LITTLE PRAYER / ARETHA FRANKLIN
M3. BLOWIN’ IN THE WIND / STEVIE WONDER
M4. WATERFALLS / TLC
M5. Sync Of Summer / 山下達郎
M6. JUST FOR ME / AL GREEN
M7. GREEN, GREEN GRASS OF HOME / TOM JONES

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

絶滅の危機にあるユキヒョウを守ってあげたい〜ユキヒョウ姉妹の奮闘記

2023/8/6 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、絶滅の危機に瀕しているユキヒョウを守る活動をされている双子の姉妹、木下こづえさん、さとみさんです。

 おふたりは「ユキヒョウ姉妹」というユニット名で活動をスタート、2013年に任意団体「twinstrust」を設立、主に中央アジアでフィールドワークを行ない、ユキヒョウの保全活動に取り組んでいらっしゃいます。

 お姉さんのこづえさんは現在、京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科の准教授。専門は動物の保全・繁殖生理学。ユキヒョウの研究には2006年から取り組んでいらっしゃいます。

 そして妹さんのさとみさんは、九州大学大学院を経て、現在は電通でコピーライターそしてCMプランナーとして活躍されています。

 そんなおふたりが先頃『幻のユキヒョウ〜双子姉妹の標高4000m冒険記』という本を出されました。この本は、ユキヒョウを守る活動10年の奮闘ぶりがそれぞれの視点で書かれています。また、ユキヒョウを追い求めて訪れたモンゴルやラダック、ネパールやキルギスなど、辺境の旅の記録でもあるんです。

 きょうは、調査・研究からわかってきたユキヒョウの興味深い生態や、現地と日本をつなぐ活動のお話などうかがいます。

©twinstrust

ユキヒョウってどんな動物?

※まずは、動物の研究者でいらっしゃる、こづえさんにお聞きします。ユキヒョウとはどんな動物なのか、特徴も含めて教えてください。

こづえ「まず、ユキヒョウは大型のネコ科動物です。アジアの高山地帯、中国の西側をぐるっと囲むように、南はネパール、北はロシアというふうに12カ国にまたがって生息しています。

 大人の個体は3000頭ほどとされていて、多く見積もっても(全体で)8000頭ぐらいと言われているんです。基本的には高山の、人が足を踏み入れるのも難しいところに生息していますので、いったい何頭いるのか分かっていません。

  世界中のユキヒョウを、例えば阪神甲子園球場に連れてきたとしても、アルプススタンド片側分、高校野球でいうところの応援(スタンド)1個分ぐらいにしかならない頭数が12カ国に散らばっていると思っていただけたらいいのかなと思います。
 高山にいるので、岩山や雪山を駆け巡れるように毛が長くて、密度が高いんですけれども、足裏にもぎっしり毛が生えていて、尻尾が長いのが特徴です」

●そんなユキヒョウを研究するようになったきっかけは、何かあったんですか?

こづえ「もともと私が兵庫県出身で、神戸大学で繁殖学を学んでいたんですね。神戸大学の隣の駅には神戸市立王子動物園があるんですけど、その動物園がユキヒョウの繁殖に力を入れていたので、一緒に研究をしませんか と、動物園のほうからお声かけいただいたのが始まりでした」

(編集部注:ユキヒョウは現在、国内の9つの動物園で合わせて20頭が飼育されているそうです。首都圏では多摩動物公園で見られます。幻のユキヒョウが国内で見られるのは奇跡的なことかも知れませんね)

『幻のユキヒョウ〜双子姉妹の標高4000m冒険記』

●さとみさんは、コピーライターのお仕事をされていますが、伝えるプロとして、ユキヒョウのキャラクターや歌を作ったんですよね?

さとみ「たまたま会社の飲み会がありまして、そこに歌もののCMソングとかを作るのが得意な先輩がいらっしゃったんですね。その飲み会で、うちの姉はこんなことをしているんですと話したんです。
 毎日(動物園に通って)行動観察をしているけれども、通りすがる来園者のかたがユキヒョウを見て、チーターとかジャガーだ〜って、いやこれ、ユキヒョウなんですけど〜って、なんでユキヒョウって知られていないんだろう、悲しいなって話を(姉から)聞いて、それを話していたら(先輩から)自分でユキヒョウの歌を作ってみたらいいんじゃないって言われたんですね。

 君が歌詞を書いて、僕が歌を作るからって言ってくださったので、じゃあ歌詞を書いてみようかなということで、姉にユキヒョウの特徴を聞いて歌を作り上げました。まだ駆け出しの頃で自分の作品って言えるものがなかったので、何かひとつ形になったのはすごく嬉しかったですね」

(編集部注:さとみさんが作詞した歌のタイトルは「ユキヒョウのうた」、歌っているのはCMソング「まねきねこダックの歌」で知られる「たつや」くんです)

ユキヒョウ姉妹、ユキヒョウ親子を撮る!?

※おふたりが設立した任意団体「twinstrust」、これはさとみさんが作ろうと持ちかけたんですか?

さとみ「はっきりした記憶はないんですけど、団体って言っても私たちふたりが中心になって、ほぼふたりでやっているような形なんですね。

 せっかく歌が出来上がったので、それを野生のユキヒョウに還元したいね、つなげたいねっていう姉の思いもあり、ちょうど姉が大学に席を置くタイミングと一緒だったので、お世話になった動物園に挨拶回りをしていたところ、私も一緒について行ったんです。
 何かこの歌でできることはありませんかって、おうかがいしていた時に、ちょうど旭山動物園の坂東園長が野生と動物園をつなぐ活動されていたので、何かヒントがあるのではないかと感じていました。

 その時に坂東園長から、生活の中で意識を変えないと環境保全にはつながらないよって教えていただいて、会社員である私にも何かできるんじゃないかなというので、ふたりでタッグを組みました」

※最初の具体的な活動としては、調査・研究のためには赤外線カメラが必要だということを知り、クラウドファンディングを募り、集まった支援金でカメラ8台を購入。みんなで買ったカメラで撮れた写真を、支援してくれたかたに戻す、そんなコンセプトのもと、ふたりで初めて調査に向かったのが、2013年11月のモンゴル。このときは赤外線カメラをユキヒョウがいそうな山の数カ所に設置する作業がメインでした。

©twinstrust

●どこに設置するのかがポイントになってくると思うんですけど、何か目安のようなものはあったんですか?

こづえ「初めに動物園でずっと観察していたので、ユキヒョウが自分のテリトリーをアピールするために、尿や糞でマーキングをすることはわかっていました。(尿の)スプレーを吹き掛けたりしてマーキングをするんですけれども、そのマーキングを探して、そこに仕掛ければ、ユキヒョウの行動が撮れるんじゃないかなと思っていましたね。

 実際に(モンゴルの山に)行ってみると、動物園もそうなんですけれども、ちょっと岩場がハングしているところに尿スプレーをするので、その岩場を見つけて、実際にスプレーをした跡があったので、まずはそこに仕掛けてみようと思ったのが第1号の初めての赤外線(カメラの)トラップでした」

●さとみさんにとっては、この時が初めてのフィールドワークだったそうですけれども、実際やってみてどうでしたか?

さとみ「そうですね。私もいわゆる観光地にしか海外は行ったことがなかったんですけど、ほぼ同じ体、同じ 体力の姉がフィールドワークとして行なっているならば、私もできるんじゃないかなという思いで行きました。

©twinstrust

 あとは最初の土地がモンゴルだったということもあり、書籍でも触れているんですけど、私たちはユーミンが、松任谷由実さんが大好きで、13歳の多感な時期に見たユーミンのテレビ番組がちょうどモンゴルを訪れるという・・・都会的なユーミンじゃなく、野生的なユーミンの魅力に惹かれたきっかけの場所でもあったので、そこに行けるのかという冒険心のほうが勝っていましたね」

※ユーミンがいざなってくれたとさえ思えるモンゴル。その大地に連なる山に設置した、ユキヒョウ姉妹の思いがつまった赤外線カメラのデータは、現地の研究者から8ヶ月後にこづえさんのもとに届いたそうです。

●最初の調査で大きな成果があったんですよね?

こづえ「そうですね。先ほどのハングしていたところに仕掛けたカメラなんですけれども、私たちが仕掛けた数日後にユキヒョウがやってくるんです。1頭ではなくて親子連れで、ちょうど巣穴から出てきたぐらいの小さな子供のユキヒョウが写っていました。

 匂いを嗅いでフレーメンっていう行動をするんですけど、フレーメンはちょっと笑っているような、口角を上げて詳しく匂いを嗅ぐんですけれども、それを母親がやっている姿を真似て、子供が同じようにフレーメンをしているのが写っていました。で、小さい山なので、ユキヒョウはいないっていうふうに考えられていたんですけれども、繁殖する場所としても有用な場所なんだよってことがその1枚で分かりました」

©twinstrust

●さとみさんは、こづえさんから写真が撮れてたよって連絡を受けて、すぐに見に行かれました? どうでした? 

さとみ「SDカードでモンゴルから姉の元に届いたんですね。なので私はデータを送ってもらって見たんですけど、本当に誰も何もいない、生き物の気配すら感じないところだったので、本当にいるのかなと思っていたんです。

 自分が立っていた同じアングルで、数日後にユキヒョウが立っている写真が撮れているっていうのは、なんか不思議な感じがしました。本当にいたんだな、もしくは、どこかから見ていたんじゃないかなっていう気持ちになりましたね」

ユキヒョウとの共存共生

※モンゴルに続いておふたりは、2016年に、インド北部の山岳地帯ラダックに調査に行かれました。標高がおよそ3500メートルということで、体を慣らすのが大変だったそうです。そんなラダックでなんと、野生のユキヒョウに遭遇したんです。どんな状況だったんですか?

こづえ「一生に一度、研究者でも会えたらいいほうと思っていたので、会えないかなと思っていたんですけども、到着した時にユキヒョウが村の家畜を襲ったということが、現地の共同研究所に連絡が入ったので駆けつけました。

 山の中奥深くに(ユキヒョウが)いるのかなと思ったんですけども、いた場所はその村の民家の裏山で、民家のベランダから見えるぐらいのようなところに、ユキヒョウが崖からひょっこり顔を出していて、野生の猫っていうより里猫のような感じでいるのがかなり意外でした」

©twinstrust

●さとみさんはどうでした?

さとみ「あくびをしたり伸びをしたり、時より動物園で見せるような可愛らしい姿を見せてくるので、なんだかちょっと勘違いしそうにもなるんですけど、ただこちらを警戒しながらも家畜を襲いに来ている状況ではあったんですね。

 民家の家畜を狙っている状況で、少し時間が経ったあと、私たちは部屋に入って晩御飯を食べていたんですけど、その時に(ユキヒョウが)牧羊犬を狙いに来ました。その牧羊犬が襲われた時、断末魔のような叫ぶ声が聴こえてきた時に、私はなぜかポロポロと涙が出てきてしまったですね。

 家で犬を飼っているからなのかなと一瞬思ったんですけど、そうではなくて、生と死の重なりを目の当たりにしたと言いますか・・・ユキヒョウを守りに来ているのになんで泣いているんだろう・・・じゃあ何を守りに来ているんだろう、私は・・・みたいな複雑な気持ちで、初めて言葉にできない涙が流れた出来事だったなっていうふうには思います」

※村人にとっては家畜は財産なので、ユキヒョウに対する報復心は強いと、こづえさんは感じたそうです。
 現地では、ユキヒョウが人里に出てきたら、政府機関に通報し、麻酔を打って捕獲、遠くへ移送することにはなっているそうですが、ユキヒョウの獲物になるヤギの仲間アイベックスなどが民家の裏山にいたりするので、ユキヒョウにとっては狩り場になり、どうしても村人の生活空間と重なってしまうということだそうです。

©twinstrust

●ユキヒョウと人の共存・共生を目指す上で、どんなことが大事になりますか?

こづえ「人との共存共生って言った時に、私たちが日本にいてイメージするのは、おそらく野生動物とそこに暮らしている人たちっていうふうに、ちょっと遠いところの存在で捉えがちだと思うんですけれども、実はユキヒョウはアジアに生息していますし、生息しているいろんな国々と日本は密接な関係を持っている、同じアジアですので、より密接につながっています。

 この地球上に暮らしている以上、必ず何かの形で、遠くの野生動物、遠くの人々ともつながっています。やっぱり今私たちが手にしているもの、食べているものは、何かを享受して成り立っているので、それはいったいなんなんだろうっていうことを考えることが大事なのかなと思っています。

 自然から乖離(かいり)して暮らしている人ほど、都市部の人たちほど、遠くの自然を享受して生きていたりもするので、どこから来たんだろうっていうのを考えることが、いちばんのスタートになるのかなと思っています」

匂いのコミュニケーション

©twinstrust

※現在、調査の主なフィールドは、中央アジアの山岳国キルギス。首都のビシュケクは都会的な街並みで、ぐるりと4000メートル級の山々が囲み、街ゆく人たちの顔立ちは日本人によく似ていて、なんだか不思議な魅力に溢れている所だったそうです。

 キルギスでの調査で、同じ場所にいろんな野生動物がマーキングをすることがわかり、研究者のこづえさんは、彼らは匂いでコミュニケーションをとっている、そんな仮説を立てていらっしゃいます。これについて説明していただけますか。

こづえ「私たち人間も霊長類で、視覚的な見える世界に頼って、実は生きていて、嗅覚の能力はだいぶ弱っているんです。ネコ科動物は匂いの世界で生きているっていうのは私もわかっていて、繁殖を研究していたので、マーキングを使って密度の薄いところで、ぽつんと暮らすユキヒョウたちが、どうやってユキヒョウ間でコミュニケーションをとっているのかを興味を持って研究をしていたんですね。

 野生に行ってみて実際にカメラを仕掛けると、そのカメラはいろんなユキヒョウを写すことはほぼなくて、ユキヒョウはマーキングにやっては来るんですけれども、基本的にはオオカミだったりクマだったりキツネだったり、いろんなほかの動物たちがやってくることに気づかされて・・・。

 あっ、そうか! と。実際彼らはユキヒョウへのアピールも大事だと思うんですけれども、そこで生きていく以上、同じように肉食動物で狩りをしているオオカミに対してのアピールであったり、匂いを嗅ぐことで餌動物は、ここにユキヒョウが来たんだっていうことを知って、活動時間帯を変えたりとか・・・行ってみると何にも動物がいないような閑散とした場所なんですけれども、彼らは匂いですごくコミュニケーションをとりながら、そこで生きているんだっていうことに気付かされました」

©twinstrust

※「twinstrust」で行なっている「まもろうPROJECT ユキヒョウ」の一環として、キルギスでぬいぐるみ「ユキヒョウさん」を作っていますよね。どんな活動なのか教えてください。

さとみ「キルギスにいらっしゃるJICAのかたが運営している『一村一品プロジェクト』というのがあるんですが、その一村一品プロジェクトとコラボしてユキヒョウさんグッズを制作しています。

 その一村一品プロジェクトは、キルギスの伝統文化であるフェルトとかを使って、首都から遠く離れた村の女性たちが一針一針フェルトを作ってくださっています。田舎の村のほうで使われなくなった学校を改装して職場にして(フェルトを)作っていらっしゃいます。
 昔は女性は遠くに出稼ぎに行かないと、なかなか稼げないっていうことがあったんですけど、JICAのかたがその村で、家族と暮らしながら現金収入を得られる、女性の地位を高めるという意味での一村一品プロジェクトをされていました。

 去年、実際に私たちもその村を訪れたんですけど、本当に何もないところに急にポツンと学校が現れまして、中に入ると、あれだけ誰もいなかったのに学校の中には女性たちの賑やかな明るい声が溢れていて、こんなところから一針一針、手作業で作られて届いているんだなってことを感じました」

©twinstrust

●同じく新商品としてユキヒョウさんのスノーハニーというハチミツがありますけれども、これもキルギス産なんですよね?

さとみ「そうですね。白いハチミツもキルギスの遊牧民に長年愛されてきた伝統文化です。実際に私たちも去年その花畑を訪れたんですけど、遠くにユキヒョウが生息している山が見えるんですね。私たちが調査している山、あそこ! っていう感じに見えるんです。
 そこにいるミツバチたちが・・・高山植物のエスパルセットっていう植物が蜜元なんですけど、本当にその生態系の中で採れたハチミツだなということで、それを動物園だったり、雑貨屋さんで売っていただいています」

ユキヒョウは平和の親善大使

※「twinstrust」を立ち上げて、およそ10年が経ちました。こづえさんはユキヒョウの研究者として、今後明らかにしたいことはなんでしょう?

こづえ「まずやはり何かを守ろうって思った時には、人と人もそうだと思うんですけれども、守る相手を知らなければ、正しく守ることはできないと思うんです。そもそも私自身も生物学の研究者として、ユキヒョウの生態そのものをまだまだわかっていないので、彼ら自身を知りたいと思って、10年前(調査活動を)スタートはしたんですね。

 ユキヒョウが暮らすいろいろな国に行くと、ユキヒョウっていうのは人々の文化や宗教、時には紛争にも関わっていたりもして、そこに暮らす人々のことを知らなければ、ユキヒョウのこともわからないってことがわかってきたので、今はユキヒョウを通して人々の文化も明らかにしながら、動物を守るっていうことの実態を明らかにしていきたいなと思っています」

●さとみさんはこの『まもろうPROJECT ユキヒョウ』の活動で、今後やっていきたいことってありますか?

さとみ「具体的にこれっていうようなことではなく、曖昧ではあるんですけど、いろんなご縁をつないでいきたいなと思っています。
 最初、研究者の姉とコピーライターの私、全然違う職業のふたりがタッグを組むことで、予想もしなかった展開があったように、自分たちが面白がって双子でやっていると、いろいろ面白そうだねって、この指止まれ、じゃないんですけど、人が集まってくるので・・・今回のラジオもそうです。なんかそういった人との関わりとか、化学反応を楽しんでいきたいなと思っています」

●では、おふたりにとって、ユキヒョウとはどんな存在ですか?

こづえ「ユキヒョウは高山にいるので珍しいと思うんですけど、彼らは国境をノー・ボーダー、ノー・パスポートで縦横無尽に走り回っている、その姿がやはり魅力的だなって感じています。そのユキヒョウに出会えたおかげで、いろいろな国の人たちの文化を知ることができたので、私たちにとっては本当に平和の親善大使だなっていうふうに思っています」

●さとみさん、お願いします。

さとみ「ユキヒョウを好きになったことで、私もこんなにも世界が広がりました。自分でも歌詞に書いたんですけど、”好きな動物はなあに? 僕はユキヒョウ”っていう、好きな動物を好きになることは、本当に入り口で、好きになったら、その動物はどこに棲んでいるんだろうとか、どんな人との関わりがあるんだろう、自分にどう関わってきているんだろうと、どんどん見える景色が変わっていくので、好きになった動物、ただ好きで終わりではなくて、そこから広げていく面白さをユキヒョウは教えてくれたなと思います」

©twinstrust

(編集部注:ユキヒョウが減っている原因は、WWFジャパンのサイトによれば、特に山岳地帯で急速に進む地球温暖化の影響や、ユキヒョウの獲物である草食動物の減少。そして家畜を襲ったユキヒョウが人間によって殺処分されていること。ほかにも、違法取引のための密猟などもあって、毎年最大で450頭ほどのユキヒョウが犠牲になっているそうです。幻のユキヒョウが、本当に、幻にならないようにしたいですね)


INFORMATION

『幻のユキヒョウ〜双子姉妹の標高4000m冒険記』

幻のユキヒョウ〜双子姉妹の標高4000m冒険記

 ユキヒョウを守る活動10年の奮闘ぶりと、ユキヒョウを追い求めて訪れた辺境の地、モンゴルやラダック、ネパールやキルギスの旅、そして人々との出会いが、自然体の文章で書かれています。ぜひ読んでください。もちろん、野生のユキヒョウの貴重な写真も載っていますよ。
 扶桑社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎扶桑社:https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594094010

 手作りのぬいぐるみ「ユキヒョウさん」などのグッズは、以下の動物園で販売しています。

 旭川市旭山動物園/札幌市円山動物園/盛岡市動物公園ZOOMO/那須どうぶつ王国/いしかわ動物園(近日販売開始)/神戸どうぶつ王国/大牟田市ともだちや絵本美術館(大牟田市動物園内)*動物園によって、販売している商品は異なります。

 また、盛岡市動物公園ZOOMO、那須どうぶつ王国、神戸どうぶつ王国のネットショップでも購入できます。

 詳しくは「まもろうPROJECT ユキヒョウ」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎まもろうPROJECT ユキヒョウ:https://www.yukihyo.jp

オンエア・ソング 8月6日(日)

2023/8/6 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. SHANGRILAをめざせ / 松任谷由実
M2. ユキヒョウのうた / たつやくん
M3. SALAAM MOUSSON SALAAM AFRIQUE / 松任谷由実
M4. KATHMANDU / 松任谷由実
M5. やさしさに包まれたなら / 荒井由実
M6. 守ってあげたい / 松任谷由実

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

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