毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。

生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
幅広く取り上げご紹介しています。

~2020年3月放送分までのサイトはこちら

Every Sun. 20:00~20:54

2023年7月のゲスト一覧

2023/7/30 UP!

◎太田ゆか(南アフリカ政府公認サファリガイド)
南アフリカ政府公認サファリガイド「太田ゆか」~伝えたいのは「人間は自然の一部」』(2023.07.30)

◎鈴木 純(植物観察家)
まちなか 植物観察のすすめ~植物観察家・鈴木 純「まちの植物はともだち」』(2023.07.23)

◎富本龍徳(「幸海(さちうみ)ヒーローズ」の共同代表)
シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第13弾!~コンブは地球を救う! 幸海ヒーローズの挑戦!』(2023.07.16)

◎東田トモヒロ(旅とサーフィンをこよなく愛するシンガーソングライター)
旅、サーフィン、米づくり~自然とつながるシンガーソングライター東田トモヒロ』(2023.07.09)

◎山田奈美(薬膳・発酵料理研究家)
体が整う 薬膳×発酵の知恵~いつもの食材で健康に』(2023.07.02)

南アフリカ政府公認サファリガイド「太田ゆか」〜伝えたいのは「人間は自然の一部」

2023/7/30 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、南アフリカ政府公認のサファリガイド「太田ゆか」さんです。

 太田さんは1995年、アメリカ・ロサンゼルス生まれ、神奈川県育ち。小さい頃から動物が大好きで、将来の夢は獣医さんになること。そんな少女は、動物を守れるような仕事をしたいと思い、立教大学在学中に、環境保護に関わるボランティア活動を国内外で体験。

 そして、野生動物ならアフリカ! そんな思いから、アフリカ大陸南部・ボツワナ共和国でのサバンナ保全プロジェクトにボランティアとして参加。その時に人生を決定づけるガイドという仕事に出会い、現在は、南アフリカ政府公認のサファリガイドとして活躍されています。そんな太田さんが一時帰国されたときにお話をうかがうことができました。

 今回は新しい本『私の職場はサバンナです!』をもとに、クルーガー国立公園でのサファリツアーや野生動物の保護活動のお話などお届けします。

☆写真:日本人サファリガイド 太田ゆか

太田ゆかさん

サファリガイドの訓練学校

 クルーガー国立公園は、南北およそ350キロ、東西およそ65キロの広大なエリアには哺乳類、野鳥、爬虫類、両生類など多種多様な生き物が生息している、まさに動物の王国! 

 そんな国立公園内には、およそ2000キロ以上にわたり、道路が整備されていて、車でめぐるサファリツアーが大人気なんだそうです。ちなみにサファリとはスワヒリ語で「旅」を意味するそうですよ。

 広大なサバンナには、ライオンやハイエナ、アフリカゾウやサイ、キリンやインパラなどが暮らし、まさに「ライオン・キング」の世界が広がっているそうです。

写真:日本人サファリガイド 太田ゆか

 動物が大好きでも、そう簡単にはサファリガイドにはなれないと思うんですが、どんな道のりを経て、ガイドになったのか教えてください。資格も取得されているんですよね。

「そうですね。私の場合は・・・訓練学校が現地にあって、サファリガイドになりたい人たちのための学校みたいな環境になっていて、そこに入学して1年間、訓練を受けて、試験に受かると実習に進めるんですね。

 で、実習を無事に終えると、南アフリカ政府が公認しているサファリガイドの資格を取得できるっていうような感じなんです。資格の取得自体は試験にさえ受かっちゃえば、みなさんなれるんですが、実際に働ける場を見つけるのは、やっぱり外国人として、すごくハードルが高かったですね」

●太田さんは、そこをどのようにされたんですか?

「サファリガイドは、やっぱりコネクションがすごく大事な、すごく狭い業界なんですね。私が今滞在しているのはクルーガーなんですが、クルーガー国立公園の周辺エリアで、業界の人たちにたくさん会って、信頼関係を築いて、なんとか活動できる場を見つけられたっていうような感じです」

●そのクルーガーは南アフリカのどの辺りになるんですか?

「南アフリカがアフリカ大陸のいちばん南にあるんですが、その中でも結構、北のほうにリンポポ州っていう州があります。その州の中にクルーガー国立公園っていう国が持っている土地があって、その周りにもたくさんサバンナが広がっていて、そこは市営保護区になっています。
 その市営保護区も国立公園も柵なしで、どっちもつながっているので、南アフリカの中の、北のエリアには本当に広い生態系が広がっていて、その中に今私は住んでいます」

●衣食住を含めて、どんな暮らしをされているんですか?

「食べ物に関しては意外と結構普通で、もちろん住んでいるのはサバンナなので、毎回毎回、町まで1時間ぐらいかけて(車で)行って、買い物してみたいな感じです。飲み水だったりとか、食料は週に1回とか2週間に1回とか、1回の買い出しでまとめてゲットするみたいなイメージなんですけど、ゲットできるものは、あまり日本と変わらないかもしれないです。

 もちろん日本食はないですけど、普通にお野菜だったりお肉とか、そういうものも売っている田舎の街が、サバンナの近くにもあるような感じですね。でもやっぱり電力に関しては、サバンナっていうところもあって、南アフリカは停電がずっと続いていて、そこだけは今も結構苦労しています」

●治安とかはどうなんですか?

「治安は、大都市ヨハネスブルクとかケープタウンとかダーバンとか、そういう大きい都市になると、やっぱり治安がよくないところもあるのは事実なんですが、サバンナまで行ってしまえば、人もいないので治安はものすごくよくて(笑)、気をつけるのは動物だったりとか、それぐらいかなっていう感じで、すごく安全な場所になっています」

サファリドライブの醍醐味

写真:日本人サファリガイド 太田ゆか

※サファリガイドになって7年くらいだそうですが、具体的にはどんなことをされているのか、1日のスケジュールも含めて、教えてください。

「基本的には太陽と一緒に暮らしていくようなスケジュールになっていますね。太陽が出てきたら、その時間に合わせてサファリドライブをスタートして、サバンナに出て行って野生動物を探してっていう・・・サファリドライブは朝、行なっていますね。
 いちばん暑い昼間の時間帯になると、ずっとサバンナの中に出ているのも大変になってくるので、そうすると私が住んでいるロッヂ、家に戻ってきて、パソコン系の作業をしたりみたいな・・・。で、夕方サバンナの気温が下がってきたら、またサファリドライブに出かけて野生動物を探すのが、基本的な1日の動きにはなっています。

 でも、動物に合わせてスケジュールも変わっていくので、罠にかかっている動物が見つかったってなると、普段のお仕事は置いといて、急にそっちに出動することもあるので、結構違う毎日を過ごしています」

●ツアーのルートは、ある程度は決まっているんですか?

「国立公園とか市営保護区の中で、どういうふうに動いていくかは全く決まっていません。やっぱり野生動物は動物園と違ってどこにいるか、その時になるまでわからないので、広大なサバンナの中から探し出すってなると、その動物が残してくれる足跡だったり糞だったり、そういった痕跡をたどりながら、動物の場所を探していく、辿っていくような感じなので、毎回違うサファリの内容になります」

●同行するガイドは、基本は何人なんですか?

「同行するガイドは基本、私がオープンサファリカーを運転して、私ひとりでガイドさせていただいているんですが、時々私が担当していない保護区にツアーに行ったりもする時があって、そういった時はそこにもガイドさんがいるので、現地ガイドと私が二人三脚でガイドしたりしています」

●ツアー客のみなさんは、車の上から動物を観察するっていう感じなんですよね?

「そうですね。基本的にはサファリドライブは車に乗っての移動になるので、車に乗りながら動物を探して観察してっていう感じではあるんです。でもやっぱり(痕跡を)辿って、動物を探し出すのが、サファリドライブの楽しさでもあるので、いい感じのフレッシュなライオンの足跡とかがあったら、サファリカーを降りて実際にその足跡を見てみたり、手を並べてみて大きさ感じてみたりっていうことはやったりします。周りが安全であることを私たち(ガイド)が確認したあとではあるんですが・・・。

 あとは、サファリドライブは1回3時間とか4時間とかになったりするので、途中で1回車を降りて足を伸ばす休憩タイムをとります。そこでジントニックだったりワインを飲んだりとか、そんなドリンク休憩を挟むこともあります」

●そうなんですね〜! 太田さんがガイドする時に心がけていることってありますか?

「やっぱりいちばん感じてほしいのは、動物が可愛かった、すごかったで終わってしまうのではなくて、ここの動物はこんなふうにほかの動物と、生態系の中でつながっているんだとか、まさにこの番組(のテーマ)と同じように、人間も自然の一部だよねっていうのを感じて欲しいメッセージとして私も持っています。

 そういったことを実際にサファリドライブを通して、身をもって感じてもらえるような、人間もずっとここに暮らしていたんだ、動物たちと一緒に暮らしていたんだっていうのを感じてもらえるような、ガイドができたらなって思っています」

写真:日本人サファリガイド 太田ゆか

(編集部注:サファリカーにお客さんを乗せて案内するなかで、日々いろんな動物と遭遇している太田さんですが、やはり赤ちゃんに出会うと幸せな気持ちになるそうです。
 たとえば、ハイエナの赤ちゃんは好奇心が旺盛で、向こうから車に近づいてきてくれて、いろんな行動を見せてくれるので、見ていてまったく飽きないとか。また、ガイドになって間もない頃、大きなクロサイに遭遇、その影に小さく動くものを見つけたそうです。実はそれが生まれたばかりの赤ちゃん! 絶滅危惧種のクロサイが命をつないでいることに感動を覚えたそうですよ)

アフリカゾウはキーストーン種

※アフリカといえば、ゾウを思い浮かべるかたも多いと思うんですけど、アフリカゾウの数が一時期、激減したというニュースがありました。現状はどうなんでしょうか?

「そうですね。アフリカに生息しているゾウは、実は1種類ではなくて2種類いて、マルミミゾウと、いわゆる私たちの知っているアフリカゾウがいるんですけど、アフリカ大陸も広いので、地域によって全然状況は違います。

 それこそマルミミゾウは、中央アフリカとかそういった熱帯雨林のようなジャングルみたいなところに棲んでいるゾウさんなので、そこは結構今でも密猟の影響があったりして、数がなかなか増えていなくて、大変な状況にはなっているんですね。

 南アフリカとかボツワナとか南部アフリカのエリアでいうと、私たちのクルーガー国立公園は、特にアフリカゾウは今すごく増えていて、クルーガー国立公園全体が日本の四国と同じぐらいの大きさなんですけど、その中に2万頭が生息しているっていうふうに言われています。

 これは今のところ統計上、記録がとられ始めてからいちばん数が多いんですね。なので、生息地がどんどん減ってしまっているのに、その残された生息地の中でゾウは増え続けています。生息域がずっと広くあればよかったかもしれない数なんですけど、現状もう(ゾウが)行ける場所がないのに、その中で増えてしまっているのが今最大の問題になってしまっています」

『私の職場はサバンナです!』

●そういう現状なんですね。本にアフリカゾウはキーストーン種と書いてありましたけど、このキーストーン種とはどういったものなんでしょうか?

「キーストーン種は、生態系にもたらす影響が大きい種だったりとか、いろんな動物とつながって、その生態系の中ですごく重要な役割を果たしている動物のことを言うんです。特にゾウさんはサバンナの自然を形作っていると言われるぐらい、いろんな動物といろんなバランスの中で生息しています。

 たとえばゾウさんは、たくさん食べてたくさん移動するので、移動距離が多い分、ゾウさんが食べた植物の種子が遠くまで運ばれて、そこで(糞と一緒に)出てくると、それは植物に対して種子散布の役割を果たしていたりします。

 あとは、水溜まりの中に魚がたくさん卵を産んでいたりするんですけど、そういう卵をゾウさんが体にくっつけて移動して、違う所に行ったりすると、そのお魚(の卵)を運んでいたり・・・なので、実は哺乳類の中だけでなくて、魚類だったりとか植物だったり、いろんな動物とつながって、今のサバンナのバランスを保ってくれているのがゾウさんです」

●サバンナにとってゾウは大切な存在なんですね。

「そうなんです! 大切な存在なんですけど、やっぱりたくさん食べる分(ゾウが)いすぎても影響は大きいので、そこが難しいところではありますね」

深刻なサイの密猟

※アフリカでは密猟が横行しているというニュースを見たりすることがあります。やはり、そうなんですか?

「南アフリカでいうと、アフリカゾウの密猟は結構今は少ないんですけど、今いちばん問題になっているのは、サイの密猟です。かなり深刻で、毎年たくさんのサイが、そのツノのためだけに殺されてしまっているっていう現状が起きています」

●対策としては、どんなことをされているんですか?

「サイに関しては、ツノがそれこそ東南アジアとか中国とかでは漢方薬として使えるとか、病気が治るみたいないろんな迷信があって、実際は人間の髪の毛や爪と同じケラチンなので化学的効果はないんですけど、そういうふうに信じられて消費されているのですごく価値が高くなっています。お金儲けのためにサイのツノを密猟している、ツノのためだけにサイが殺されてしまっているっていう状況なんです。

 ツノは髪の毛と全く同じなので、別に切っても痛くないんですね。人間が爪とか髪を切っても痛くないのと同じように。なので、今なんとかこの密猟を食い止めるために、獣医さんと一緒に麻酔を打って眠っているサイのツノを短くして、密猟する動機をなくさせる・・・ツノがなければ、サイも殺される理由がなくなるので。なるべくそういうふうにして、本来の姿を変えてしまうっていう意味では理想ではないんですけど、もう今はほんとに一刻を争う事態なので、少しでも多くのサイが生き延びれるようにツノを短くしています」

(編集部注:サイのツノは、人間の爪や髪の毛と同じだということで、また生えてくるんですね。太田さんによれば、2〜3年でもとに戻るそうです)

写真:日本人サファリガイド 太田ゆか

ゾウにGPSを付けて追跡

※日本でも野生動物が街中に出てきたり、収穫前の作物を食べてしまうような食害の問題があったりします。人と野生動物の軋轢というか・・・その辺、南アフリカではどうですか?

「私たちが今行なっている活動のひとつで、ゾウさんでいうと、場所を求めて、保護区の国立公園のエリアから出てしまって、村に入ってしまったりとか、畑に入ってしまっているので、GPSをつけて彼らの動きをモニタリングできれば、ゾウさんがどういう動きをしているのか、どこの通り道を通っているのか、そういうことがだんだん分析できるようになってきて、ゾウさんが出て行ってしまうことを未然に防げるようになったりします。

 結構おっきい首輪なんですけど、それにGPSが付いていて、それをゾウさんの首に付けさせてもらうと、そのゾウさんが保護区を出てしまう前にわかるので、そうするとヘリコプターを飛ばして、(保護区の)中に追いやったりとか。
 やっぱり1回出てしまうと戻すのが大変なんですね。射殺されてしまったみたいなことになっちゃうんですけど、出るのを防げればどっちもハッピーでいられるので、このGPSを付けることによって、なんとかしようっていう活動を今行なっています。

 ただやっぱりヘリコプターを飛ばしたり、GPS自体もすごく費用が高いので、今それでクラウドファンディングを行なっていて、ゾウさんの保護活動を日本で応援してくださるみなさんと現地で実現しようとしています」

写真:日本人サファリガイド 太田ゆか

人間も自然の一部

※太田さんが暮らす南アフリカ・クルーガーエリアの大自然や野生の生き物たちから、どんなことを感じますか?

「これはやっぱり私がみなさんに感じてもらいたいことなんですけど、このクルーガーのエリアを歩いていたりとかガイドしていると、結構ゴロゴロと人間がそこに暮らしていたんだなっていう形跡が本当にたくさんあります。それこそ旧石器時代の人たちの石器の道具だったりとか、あとは岩場に残っている壁画だったりとか、本当に人がこうして動物と一緒に暮らしていたっていうことを、身をもって感じることのできるすごく貴重な自然だと思うんですね。

 やっぱりそういったところを感じてもらえると、私としてはすごく嬉しいし、それが環境保護だったり、みんなが長く平和に野生と共存できるような世界につながっていくのかなと思うので、なるべく多くの方にサファリツアーに来てもらって、人間が生態系の一部っていうのを、いちばん感じてもらいやすい環境で、みんなに感じてもらいたいと思っています」

写真:日本人サファリガイド 太田ゆか

●太田さんがサファリガイドとして、最も伝えたいことを教えてください。

「重ねてにはなってしまうんですが、人間がちゃんと自然の中で、生態系の中で役割を果たしていた時代が、過去にあったっていうのを踏まえて、今人間は結構(自然に対して)悪みたいな言い方だったり考え方になってしまうこともあると思うんですけど、でも本来は人間も生態系の一部としてずっと成り立ってきた存在だと思うんです。
 現在もアフリカの中にはそうやって暮らしている先住民の人たちってたくさんいるので、そういう人たちを目の当たりにすると、今の私たちも少しずつ工夫していくことで、少しでも彼らの生活の仕方に近づけるんじゃないかなって思うんですね。
 やっぱり伝えたいことってなると、人間も自然の一部っていう考えを、なんとか取り戻すことによって、みんなが少しずつ環境にいい暮らしに変化していくんじゃないかなっていうふうに思います」

●では最後に太田さんの夢を教えてください。

「長期的な夢でいうと、本当に死ぬまでサバンナにいるってことなんです。近くの短期間の夢でいうと、今日本のみなさんに応援していただいている、クラウドファンディングの支援金を使って、南アフリカで保護活動を成功させることですね。日本から応援したい、でもどうしていいかわからないっていう方たちが、意外といるんだなっていうのが最近わかってきて・・・。なので、そういった方たちと助けを必要としている現地の人たちをつなげるような存在になりたいなっていうふうに思っています。

 やっぱり直近の夢でいうと、そうやって応援してくれているみなさんの協力を得て、大きな保護活動を南アフリカだったり、ほか(の場所)でもいいんですけど、アフリカのサバンナの環境で、日本のみんなと現地の人たちをつないで、大きな保護活動を実現できたらいいなって思っています。

 まずはゾウさんにGPSを付ける保護活動を8月に予定しているので、それが大成功に終わるように頑張らなくてはいけないなと思いつつ、現地のNGOだったり研究者だったり、獣医さんと話しながら準備を進めています」

写真:日本人サファリガイド 太田ゆか

(編集部注:太田さん曰く、アフリカゾウの群れに囲まれても、彼らがリラックスしていると、とてもピースフルな雰囲気になるそうです。野生動物には不思議な力があって、癒されるそうですよ。
 太田さんは休みの日は、すっかりハマってしまった野鳥観察に出かけるそうですよ。これまでに400種以上の野鳥に出会ったとか。鳥を知るとサファリが倍楽しくなるとおっしゃていました)


INFORMATION

『私の職場はサバンナです!』

『私の職場はサバンナです!』

 サバンナに生息する野生動物の生態や、保護活動の最前線、そして人と野生動物が共生していくためのヒントなどが書かれています。大好きな動物を守りたいという太田さんの強い意志も感じる一冊。ぜひ読んでください。
 河出書房新社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎河出書房新社:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309617510/

 お話に出てきたクラウドファンディング、現在は、ナミビアの砂漠で生き抜く幻のライオンを保護するための支援を募っています。

 また、太田さんがガイドしてくださる魅力的なサファリツアーや、なんと、サファリガイドの訓練学校を体験できるサファリ・スタディーツアーも企画されています。詳しくは太田さんのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎太田ゆか:https://yukaonsafari.com

オンエア・ソング 7月30日(日)

2023/7/30 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. 世界でいちばん暑い夏 / プリンセス・プリンセス
M2. AFRICA / TOTO
M3. EVERYDAY IS A WINDING ROAD / SHERYL CROW
M4. ELEPHANT / A CAMP
M5. WAKA WAKA / SHAKIRA FEATURING FRESHLYGROUND
M6. SAVE YOURSELF / JAMES MORRISON
M7. WE BELONG TOGETHER / MARIAH CAREY

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

まちなか 植物観察のすすめ~植物観察家・鈴木 純「まちの植物はともだち」

2023/7/23 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、植物観察家の「鈴木 純」さんです。

 鈴木さんは1986年、東京都生まれ。子供の頃、親御さんが小笠原に連れて行ってくれたり、夏休みには、自然の中に身を置く旅にいざなってくれたりということもあって、野山が大好きな少年だったそうです。そして東京農業大学で造園学を学び、その後、青年海外協力隊に参加し、中国で砂漠の緑化活動を行ない、帰国後、国内外のフィールドを巡り、植物への造詣を深めます。

 そんな鈴木さんは、友達に植物の面白さを伝えたいと思い、野山での観察会を企画したところ、人が集まらなかったそうです。野山に行くにはウエアやシューズ、持ち物などそれなりの準備が必要で、それがハードルになることに気づき、それなら気軽に集まれる街中だ!と思い、まずは友達向けの観察会をスタート。

 そして2018年からフリーの植物ガイドとして、街中での植物観察会を行なっていらっしゃいます。また、植物生態写真家としても活躍。

 そんな鈴木さんが『まちなか 植物観察のススメ』という本を出されました。きょうは、街中で植物観察をするときのコツや、植物を見分けるポイントなどうかがいます。道端に咲いている花や樹木のことをちょっとでも知るといつもの道がきっと楽しくなると思いますよ。

☆写真協力:鈴木 純

鈴木 純さん

木の葉っぱ、鋸歯を覚える!

※植物の名前をなかなか覚えられない、そんなかたは多いと思います。植物のどこに注目するのがいいのか、ポイントがあるんですよね。

「そうですね。とにかく植物は多分全部そうなんだと思いますけど、形を見ることがすごく大事なポイントになるので、まず初めは漠然と見ないで、形を見るんだっていう意識をちゃんと自分につけることです。慣れてくれば、そんなことを考えなくていいんですけど、初めは形に注目、意識するっていうことがすごく大事だと思います」

●この本には植物の名前を覚えたいなら、まず木がおすすめっていうふうに書かれていました。でもなんだか草花のほうがわかりやすいかなって思ったんですけど、木がおすすめっていうのはどうしてなんですか?

「これは僕が木から覚えたっていうのもあるんです。草と木の違いは、僕なりに思っているところがあって、草は結構短命なんですね。1年で枯れちゃったりするので、そういう短命な生き方は、植物にとって多少環境が悪くても、小さいまま花を咲かせたりとかするわけですよ。
 そうすると環境がいいところでは、大きく育っていた植物が、こっちでは小さい形で生きているとかっていう感じで、草は形が結構不揃いになるんですね。ただ、花の形は同じなんですけど、この話は後でまたしますね。

 見るべきポイントが葉っぱだとすれば、草は葉っぱを見るといろいろ混乱しちゃうけど、木の場合は長生きなので、長生きな植物は結構形が安定しているんですね。なので、葉っぱとかをヒントに植物の名前を調べるのであれば、そういう比較的形が安定している木から始めるほうが、意外と始めやすいんじゃないかなと思いますね」

●木の葉っぱは、どこに注目するのがいいんですか?

「僕がおすすめなのは、まず言葉を覚えるっていうところで、たとえば葉っぱをよく見ると、葉っぱの縁のところにギザギザが付いていたりするんです。そのギザギザには実は呼び方があって、これを”鋸歯(きょし)”って言うんですね。まずこの鋸歯って言葉を覚える! これを僕はおすすめしています。

 というのは、葉っぱの縁にギザギザがあるなって思っていると、このギザギザに鋸歯って言葉があるんだって思うと、僕は学生の時にギザギザに鋸歯があるって聞いた時にすごく感動したんですよね。鋸歯っていう言葉があったのか! って感動しまして、そうしたら葉っぱのギザギザがよく見えてくるようになっちゃったんですよ。

 なので、まずこのギザギザは鋸歯だっていうことをまず覚える! 自分で鋸歯っていう言葉を発してみる、これが大事ですね。何気にどこの葉っぱでもいいので見ながら、鋸歯があるな、鋸歯があるな、鋸歯があるなって、ひたすら鋸歯っていう言葉を発してみる。そうするとどんどん鋸歯が気になってくる、そういうことをまずやっていくのが僕のおすすめです」

(写真左)アオキ 荒い鋸歯(写真右)マンリョウ 丸い鋸歯
(写真左)アオキ 荒い鋸歯
(写真右)マンリョウ 丸い鋸歯

葉っぱの付き方~互生、対生

※街中の公園などでよく見る木で、この木の葉っぱを見ると面白い、というのはありますか?

「僕ね、葉っぱを見るのは簡単だと思いながら、難しいと思っていることもあって・・・っていうのは、今僕がたとえば、エノキの葉っぱ面白いんですよって言ったところで、まずはいろんな葉っぱの比較をしておかないと、どの葉っぱが面白いかっていうことがわからないんですよね。
 なので、たとえばエノキだったら、鋸歯が葉っぱの根元の部分、半分は鋸歯がないんですよ。その半分より先に鋸歯があるっていう形をしていて、僕にとってはすごく面白いけど、果たしてそれを面白いって思う人がどれくらいいるのかというところなんですよね。

 これは植物の葉っぱを、いろんな種類を見ていると、どんどん面白くなっていくっていう、そういうタイプの楽しみなんですよ。なので、なんというか、あまりどの葉っぱが面白いですかっていうのはなくて、言っちゃえば全部面白いんですよ。なぜなら全ての葉っぱが、どの葉っぱとも違う形をしているから・・・なんだけど、この面白さを伝えるには、まずひとつひとつの葉っぱを知る必要があるんだよね。急に楽しめないっていう、そこが僕は奥深いなと思っているところなんですよね 」

●葉っぱの付き方にも、いろいろあるんですよね?

「ありますね。これも面白いですよ! これもやっぱり言葉遣いがあって、たとえばいちばん多いのが”互生(ごせい)”って言って、これは枝に葉っぱが右、左、右、左って交互に付いているパターン、これを互生って言うんですね。

ケヤキ
ケヤキ

 で、これはよくあるパターン、互生はよくあるやつなんです。だから互生の木が出てきても、そんなにテンションが上がんないわけですね。互生か!って感じだけど・・・テンションが上がる葉っぱの付き方は、”対生(たいせい)”ってやつで、枝の一箇所から2枚出てくる、対になって出てくるっていうやつですね。対生の木はちょっと互生よりは少ないんですよ。なので、名前を知るためのヒントにはしやすいものになるんですね。

 種類によって、互生の木があったり、対生の木があったりする、葉っぱの付き方に違いがあるなんて、全く思わないわけじゃないですか、普通は。だけど意外とよく見ると違いがあるっていうところに面白みがあって、かつ対生であれば、互生よりも対生の樹木のほうが少ないことがわかっていれば、図鑑も引きやすくなるんですね。結構葉っぱの付き方を見るのは、大事というか面白いし、役に立つものですね」

クチナシ
クチナシ

(編集部注:鈴木さんによると、対生の樹木で、街中でよく見られるのは、クチナシ、キンモクセイなど。アドバイスとして、花が咲いているときに葉っぱをよ〜く見ておくと、花がないときでもすぐにわかるようになるそうです。
 ほかにも、蜜が出る葉っぱの代表的なものとして、ソメイヨシノを教えてくださいました。詳しくは鈴木さんの新しい本をぜひ見てくださいね)

草は花を見る

※続いては、草を見るときのポイントです。草の名前を覚えるには、花に注目するのがいいそうですが、それはどうしてなんですか?

「これは、草は短命で環境に合わせて、すごく小っちゃいまま、花を咲かせたりとかしちゃうから、葉っぱの形とかがあんまり信用できなかったりするんだけど、面白いことに花の形は整っているんですよ。なので、花の形は信じられる。

 これは、本当は木も一緒なんですね。木も一緒なんだけど、木の花は結構高いところに咲いていたりとか、意外と小っちゃかったりとかして、結構観察するのが難しいんですよ。でもその点、草は自分の背丈もないですよね。足もとに咲いているので、かがめば見られるっていうものなので、そういう意味で形が安定していることと、観察しやすいっていう意味で、花を観察するのがいいかな」

●この7月、8月にかけて咲く花で、この花を観察すると面白いよっていうのはありますか?

「いろいろあるんですが、ひとつテーマとしておすすめなのが・・・夏って暑いですよね。そうすると植物も昼間はあまり咲いてないんですよね。いつ咲いているかっていうと、早朝か夕方以降に咲いているんですよ。夏は結構、開花する時刻が決まっている植物が多いんです。
 ツユクサだったら、自分たちが起きてくる時間にはもう咲いていますし、オシロイバナは夕方4時から咲き始めます。夕方6時ぐらいからカラスウリの白い花が咲き始めたりするので、この開花の時刻をテーマに観察すると、面白いものが夏はいっぱいあるかなと思いますね」

『まちなか 植物観察のススメ』

オオバコの時間差戦略!?

※鈴木さんの新しい本に、めしべとおしべを時間差で出すオオバコという草の話が載っていました。なぜ時間差で出すのか、教えてください。

「オオバコって夏に見ると花茎(かけい)が伸びているんですよ。シュッと縦に伸びて、その軸をよく見るといろんなものが付いているんですね。
 そもそも知っておかないといけないのは、オオバコってひとつの花の軸に花がひとつだけ咲いているんじゃなくて、小っちゃい花がいっぱい付いている、その軸のところにぷつぷつって大量に・・・だから花の集合体なんですよね、そもそもオオバコってね。

 その花の集合体がどう振る舞うかが面白くて、まずつぼみの状態のオオバコがあったとしたら、小っちゃいつぼみがいっぱいあるっていう意味ですね、要するに。そのつぼみが下のほうから咲き始めるんですよ。下のほうから咲き始める時に最初はめしべだけを出すんですね。めしべだけ下のほうからバーっと上に向かってどんどん出していくわけです。

 めしべだけを出すってことはメスの状態ですよね。1回目のメスの状態になる。そうしたら今度はまた下からおしべがどんどん出てくる。メスの状態がだんだんメスとオスが一緒にいる状態になって、最終的にオスだけの状態に変わっていくっていう、オスとメスのタイミングをずらすっていう方法があるんです。

写真協力:鈴木 純

 これはすごく巧妙で、オオバコは風に花粉を運ばせるタイプの植物なんですけど、もしも同じ花の中で、おしべとめしべを同じタイミングで出しちゃったら、自分のおしべから出る花粉が、自分のめしべにくっ付いちゃう可能性があるわけです。

 植物も結構、実はほかの株と受粉したいと思っているわけですよ。メスとオスのタイミングがずれていれば、たとえば初めは、めしべだけが出てきてメスの状態になっていれば、ほかの花から花粉が飛んでくるのを受け取るだけになるわけですね。そうすれば、自分の株の中では受粉しないですよね。

 次におしべが出てくると、オスの状態になりますよね。この時は自分の花粉をほかの株に運ぶだけの状態になるってわけなので、そのオスとメスの熟すタイミングをずらすことのメリットがそこにあるわけですね」

(編集部注:ほかにおしべとめしべを時間差で出す植物で、夏に観察しやすいのはキキョウだそうです。最初はおしべが出て、それがぺた〜となったら、次にめしべが出てくるそうですよ。花の中心だけが変わるのが面白いと、鈴木さんはおっしゃっていました)

写真協力:鈴木 純

夏は「つる性」植物が面白い

※新しい本に森の環境に欠かせないのが「つる性」の植物と書いてありました。それはどうしてなんですか?

「つる植物って基本的に自分では自立しないわけですよね。自分の力では立てない。だからほかの植物に寄りかかったり、絡みついたりして伸びていくわけですけど、そういう生き方をするってことは、森があった時に森のいちばん端っこを覆っていくように成長していくっていう意味なんですよ、自然界の中ではね。

 そうすると、よく『森のカーテン』なんて言うんですけど、森の端っこをつる植物が覆ってくれると、そのつる植物によって強風が吹いても森の中に風が入ってこなかったりとか、林内の環境が安定するって言われているんですよね。温度も湿度も適当な状況に保たれるというところで、林内の環境を安定させるために役立っていると言われています」

●つる性と言ってもいろんな巻き方があるんですよね。

「あります! 夏以降はとにかく、つる植物を観察するのがおすすめですね。街中だったらフェンスを見ればいいので、フェンスをひたすら見る。そうすると自分のつる本体が巻きついていくっていう方法もあれば、自分のつるの本体から別の巻きひげってやつをぴろぴろって出して、その巻きひげでペタペタとしがみつきながら登っていく、なんかロック・クライミングしているみたいな感じですよね。

 そういう感じで登っていくつる植物もあるし、あるいは巻きつかないで、巻きひげの先を吸盤みたいにして、その吸盤で壁にペタペタ張り付いて伸びていくっていうのがあったりとかして、これも様々なんですよ」

ヘクソカズラ
ヘクソカズラ

植物の魅力は、動かないこと!?

※初歩的な質問で恐縮なんですが、植物はなぜ「緑色」なんでしょう?

「これは植物は光合成して生きていく・・・これ、極めて大事な話なんですけど、私たちは移動しますよね。何かほかのものを食べたりするわけですよ。そういう生き方をしているわけですけど、植物は移動しない! その場所で生きていかないといけないっていうところで、太陽光を集めて、そこから生きるエネルギーを作り出せるっていう、そういう生き方をしているわけですよね。

 なので、とにかく光合成をすることが非常に大事な行為になるわけですけど、光を吸収する必要があるわけです。その時に役立つのが葉緑素、クロロフィルってやつですね。それが要するに緑色をしているということです。あの色は植物が光合成をしているんだなっていう色なので、葉っぱって緑色じゃないですか。だから葉っぱで光合成しているんだなって思えるわけですよね。

 そう思うと草の茎とかって緑色をしているじゃないですか。ああいうところにも実は葉緑素が入っていて、茎も光合成していると言われているです。なので、植物のどこが緑色なのかを見ると面白いかもしれないですね。意外といろんな発見があるかもしれない」

●鈴木さんをこんなに虜にしている植物の、いちばんの魅力ってなんでしょう?

「やっぱり(植物は)移動しないっていうところが、本当に面白いなって思っていますね。とにかく僕たちとは全く違うんですよね、生き方が。移動しないって僕たちからすると、非常にデメリットに感じるじゃないですか。今ここで生きてろって言われても困っちゃいますよね。だけど、植物は別にそれでいいんですよね。

 だから移動しないためのいろんな工夫があって・・・たとえば、移動しないで誰かに食べられちゃったら、どうするのかなって・・・植物には芽っていうのがあるんですよ。もし体の一部が食べられても、芽が残っていれば、芽からまた新しい葉っぱが出てくるんですよ。

 そもそも移動しなくても生きていられるようになっているから、そういうのを見ていると、僕たちはつい植物は移動できないから、みたいなことを言うけど、逆に植物側からするとお前たちはなんで移動してるんだと・・・大変じゃないか、移動するのは、っていうふうに思われても、しょうがないよねって思うわけですね。

 そうすると自分はどういう生き物なんだろうとか、そういう視点が出てくるわけですよ。常に僕は植物を見ているけど、植物側から何かを投げかけられているっていうような気がするわけですね。そこに僕は魅力を感じているんですよね」


INFORMATION

『まちなか 植物観察のススメ』

『まちなか 植物観察のススメ』

 鈴木さんが主催する大人気の観察会を漫画で再現してあるので、参加者になったような感覚で楽しく読めますよ。きょう教えてくださった葉っぱや花のことなどもわかりやすく解説。さらに街中で見られる樹木や草の図鑑も載っています。この本を持って、街中の植物観察に出かけましょう!
 小学館から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎小学館:https://www.shogakukan.co.jp/books/09311536

写真協力:鈴木 純

 鈴木さんが主催している街中での植物観察会は現在、年間講座のみとなっています。駅前でも30種ほどの植物を観察できるし、基本的には同じルートを巡って、季節によって変化する植物たちを観察するそうです。植物の変化に気づくと人生がより楽しくなるともおっしゃっていましたよ。
 鈴木さんの活動については、オフィシャルサイト「まちの植物はともだち」をご覧ください。

◎まちの植物はともだち:https://beyond-ecophobia.com

オンエア・ソング 7月23日(日)

2023/7/23 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. WILDFLOWERS / TOM PETTY
M2. 花の名 / BUMP OF CHICKEN
M3. 愛の花 / あいみょん
M4. FLOWERS IN THE WINDOW / TRAVIS
M5. ハイビスカス / bird
M6. A FOREST / NOUVELLE VAGUE
M7. FLOWERS / EMOTIONS

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第13弾!〜コンブは地球を救う! 幸海ヒーローズの挑戦!

2023/7/16 UP!

 

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「海の日」を前に、東京湾でコンブを養殖し、活用している「幸海(さちうみ)ヒーローズ」の共同代表「富本龍徳(とみもと・たつのり)」さんです。

 東京湾でコンブが育つの!? っと疑問に思ったかたもいらっしゃるかも知れませんが、実は立派に育つそうですよ。

 そんなコンブは水中で光合成を行ない、二酸化炭素を吸収。その吸収率は、なんと、杉の木のおよそ5倍の量だそうです。

 富本さんは、私たちが直面している地球温暖化などの環境問題にコンブが大きな役割を果たしてくれると期待しています。

 きょうは、地球を救うかもしれない、コンブの可能性に迫ります。

☆写真協力:幸海ヒーローズ

富本龍徳さん

横浜市金沢区でコンブ養殖

※SDGsはご存知の通り「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語にすると「持続可能な開発目標」。これからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って、資源を大切にしながら経済活動をしていく、そのための約束がSDGsです。2015年の国連サミットで採択され、全部で17の目標=ゴールが設定されています。

 今週は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「気候変動に具体的な対策を」、
そして「海の豊かさを守ろう」ということで、東京湾でコンブを養殖し、活用している富本龍徳さんの活動をご紹介します。

 富本さんは2016年にコンブの養殖に取り組み、2年ほど前に「幸海ヒーローズ」として活動を再スタートさせました。「幸海ヒーローズ」の「幸海」は、実は「里海」のミスプリントが発端になっているそうです。

 富本さんは「幸海」という響きに惹かれたのと、「海の幸」という言葉があるように、海は私たちに海産物という恵みを与えてくれる。その一方で「海にとっての幸せとは何だろう」、そんな思いもあって、「幸海ヒーローズ」と名付けたそうです。

●「幸海ヒーローズ」では、具体的にはどんな活動をされているんですか?

「ひとつはコンブ養殖を通して、温暖化対策とか生態系の保全ということで、神奈川県横浜市金沢区の漁師さんと一緒にコンブ養殖をしながら、作ったコンブを水揚げして、利活用するっていうところまでをやっている団体です。

 コンブが海の中にない期間は、たとえば環境教育っていう観点で、小学校中学校に行ってコンブとか海の話をしたり、コンブを取り扱いたいっていうレストランさんがいたら、そこにコンブの説明に行ったりとか、そんな感じですね」

●東京湾でコンブ養殖しようと思っても、そう簡単ではない気がするんですけど・・・。

「そうですね。いろいろ権利関係とか法律関係とか難しいこともあるんですけど、そもそも本当にコンブが東京湾で育つのか、みたいなところは、ずっとドキドキしていたんです。でも意外とすごく豊かに立派なコンブができるんですよね」

●もともとコンブがない場所で、コンブを養殖することに対しては、何かためらいみたいなものはなかったですか?

「もともとコンブの原種は横浜にあるわけではないので、北海道の方たちから、タネを分けていただいて養殖しているんですけど、だんだん年数を重ねていく上で、ほかの環境団体さんから「君たちのやっていること、大丈夫なのか?」とか「いいのか? それで」って厳しく言われた時期もありました。

 やっぱりそういう連絡がくると、葛藤っていうのはあるんです。そもそも水温が上がってくると、コンブ自体も海の中で枯れたり、溶けちゃうっていう表現をしているんですけど、枯れたりもしますし・・・。あとはコンブって赤ちゃんを胞子として出すんですけど、胞子が出る前に(コンブを)水揚げしているので、そこは今のところ問題にはなってないという状況ですね」

●自分たちを信じてやり続けてきたっていう感じなんですね

「そうですね」

写真協力:幸海ヒーローズ

●養殖しているエリアは、どれぐらいの広さなんですか?

「今やっているのが、僕たち畑とか柵とかって言い方をするんですけど、
今のところ20メートル×20メートルの柵を作って、それが2面分ですね」

●収穫量でいうと、どれぐらいですか?

「コンブの収穫量でいうと、だいたい6トン前後ぐらいが毎年の水揚げになりますね」

(編集部中:海の藻と書く「海藻(かいそう)」の仲間、コンブ。日本で採れるのは10種ほどで、その90%以上が北海道産だそうです。コンブには水溶性食物繊維、ミネラル、そして、うまみ成分のグルタミン酸など、栄養素が豊富に含まれています。さらに、番組の冒頭でもご紹介しましたが、光合成によって、樹木よりもたくさんの二酸化炭素を吸収してくれる特性にも注目が集まっています)

写真協力:幸海ヒーローズ

コンブに強い衝撃!?

※東京都出身の富本さんは食のコンサルティング会社を退職したあと、フリーランスとして、地方の産物を東京で販売する営業支援などを行なっていたそうです。

●そもそもなんですが、コンブとは、どうやって出会ったんですか?

「秋田県の三種町っていう町のイベントに参加した時に、東京で物産展をやった時に、たまたま三種町の隣町で、アワビの陸上養殖っていう技術でアワビを販売されていた会社さんがあって、お昼休みに“きょうの売り上げ、どうです?”みたいなそんな世間話をしていたんですね。

 その時にアワビがコンブとか海藻を食べるってことも知らなくて・・・(コンブは)アワビが食べるだけじゃなくて、環境にもすごくいいんだよっていうことを言われた時に、なんか雷が落ちてきたような強い衝撃があったんですよ。

 で、調べたらコンブって使い方が無限にあって、今自分が遠くの遠くの存在に感じている環境問題に対しても、こんな身近な素材でアプローチできるのかと思ったら、すごくスイッチが入っちゃって、そこからずっとやっていますね」

●具体的にコンブのどんなことがわかったんですか?

「もちろん人間が食べて健康にいい部分もありますし、ミネラルがたっぷりなので、たとえば畜産の牛とか豚とかの飼料にもなったり、肥料として作物にプラスになったりとか・・・。
 ほかには銭湯さんとコンブ湯っていう取り組みをやっているんですけど、肌にも良かったりとか、本当にいろんな汎用性があって、すごく面白い素材だなと日々思っています。」

●コンブはすごい! というのを感じたとしても、それに人生をかけようと思うのはなかなかないと思うんですけど、やってみようって思えたのはどうしてなんですか? 

「やっぱり今お伝えしたように、可能性がすごく無限にあるなっていうところに携われたら、きっといろんな方とコミュニケーションできて、そんなに楽しい仕事はないんじゃないかなと思って・・・」

●でもすごいですね~、コンブをいちからやってみようって思われたわけですね。で、今につながっているということですね。

「そうですね」

(編集部注:「幸海ヒーローズ」では「ぶんこのこんぶ」というブランド名で、商品展開。生のコンブほか、クッキーやアイスクリームなどを作っているそうです)

富本龍徳さん

コリコリ食感、香りと色味が若い!?

●コンブというと北海道の寒い地域の特産品っていうイメージがあるんですけど、横浜市の金沢漁港で養殖されているコンブには、どんな特徴があるんですか?

「いい質問ありがとうございます。実際、横浜のコンブは種類としては真コンブっていう出汁のよく出るブランド・コンブのタネで養殖しているんです。期間的に北海道のコンブと違うのは、北海道は海がずっと冷たいので2年ぐらい養殖できたりもして、10メートルぐらいの巨大な長さになって、厚みも出てくるんです。

 そうすると食物繊維だったりがぎゅっとしてくるので、それは乾燥コンブに適したコンブなんですけど、僕たちがやっているのは11月から12月ぐらいにタネ付けして、水温が上がってくる4月ぐらいには水揚げするので、どちらかというと薄いコンブなんです。

 それでも2〜3ミリの赤ちゃんコンブからスタートしたコンブが、4か月後には4メートルにも育つんですね。たとえば食感でいうと、すごくコリコリした歯ごたえのある食感で、若いコンブなんで香りが強かったり・・・あとは色味がとっても鮮やかなところが特徴になりますね」

写真協力:幸海ヒーローズ

●自然相手の作業じゃないですか。難しいなって感じることはないですか?

「それがですね、お陰さまでコンブの収穫量は結構安定しています。畑と違って海がコンブ育ててくれるので、草むしりする時間もいらないですし、肥料を与えることもないんですね。なので、ほとんど手がかからないっていう・・・」

●そうなんですね! コンブに人生かけてみようって思われて、初めて収穫した時はどんなお気持ちでした?

「やっぱりすごく嬉しかったですね、純粋に。それでこんなにも巨大な、生で見るのもその時が初めてだったんですけど、すごいフォルムというか、形には圧倒されました」

●どんな感じなんですか? 収穫の時のコンブって見たことがないので・・・。

「そうですよね。僕たちが多分一般的に見ているのは、スーパーに並んでいる緑色のワカメとかだと思うんですけど、まず(コンブの)色は茶色なんですよね。海の中に入っている間っていうか・・・その茶色の物体が目の前に現れた時には、本当になんかクマが目の前に現れたぐらいの衝撃でしたね」

コンブのお風呂!?

写真協力:幸海ヒーローズ

※都内の銭湯で「コンブ湯」というのを展開されているそうですね。これは、湯船にコンブが入っているんですか?

「まさしく、そういうことです。なので見方によっては、おでんの具材になったみたいとか(笑)、出汁の気分になったみたいっていうこともあるんですけど・・・」

●たしかに!(笑)

「いちばん最初にコンブ湯をやったきっかけは、ヨーロッパに行くと、タラソテラピーっていう海水とか海の泥とか海藻とかと人間とで、長いお風呂の歴史があるんですけど、日本でタラソテラピーをやろうと思ったら、多分高級ホテルのエステでとか、すごくお金も高いですよね。

 そういうことをもっともっと身近に感じられることはないかなと思って、スタートしたのがきっかけで、日本には公衆浴場の文化があると思って、それで(銭湯の)門を叩いたのがコンブ湯のきっかけですね」

●お湯加減とかってどういう感じなんですか?

「わかりやすくいうと、たとえば中華料理の、あんかけのチャーハンとか、あんかけのラーメンっていつまでも熱いじゃないですか」

●熱いです!

「それと一緒で、コンブのヌルヌルのとろみというか、ヌルヌル成分がお湯に溶けた時に、あんかけと一緒でお湯が冷めにくいというか、そんなこともあって保温効果があるんじゃないかと思います」

●そうなんですね~、みなさんの評判はどうでした?

「SNSを見ても、みなさん面白いリアクションをしてくださって、本当に出汁になったみたいとか、結構ポジティヴな反応があって、結構、常連さんもできてきたような企画になっています」

写真協力:幸海ヒーローズ

(編集部注:お風呂つながりでいうと、富本さんは繊維会社と一緒にコンブを練り込んだ繊維を開発、なんと「サウナハット」を作っちゃったんです。このサウナハット、吸水性と保湿性に優れているので、サウナ室で髪の毛をしっかり保護してくれるそうですよ)

コンブのバスボム!?

※ほかにも、海外のブランドとのコラボレーションが実現したそうですね?

「みなさんがわかりやすいブランドさんとコラボレーションさせていただいた、いい事例なんじゃないかなと思っているんですけど、イギリスの大手コスメ・ブランドのLUSHさん」

●あの入浴剤とかバスボムとかの? え~、私、使っています!

「使っていますか! 香りもすごくあっていいですよね! LUSHさんの入浴剤に今回コンブの原料を採用していただいています。LUSHさんもサステナブルの素材を探されていらっしゃる中で、僕たちの環境保全だったりっていうところの観点が共鳴したというか、そういったところもあって、今回使っていただいたんじゃないかと思いますね」

写真協力:幸海ヒーローズ

●そのバスボムもスタジオにも持ってきていただきましたけれども、とってもいい香りですね!

「本当に(お風呂に)入っているだけで、すごく心地良くなります。ここにもコンブが含まれていて、やっぱりお風呂に使っていただくと、ヌルっとしたような感触がありますね」

●とってもカラフルでこれがコンブというのは、全く見た目ではわからないですけれども、原料としてコンブが使われているということなんですね。

「はいそうですね」

コンブは地球を救う

※次のコンブの収穫はいつ頃なんですか?

「次は、また来年の4月に予定しています」

●一般の方が収穫に参加できたりするんですか?

「そうですね。みなさん北海道に行ったりしないと、コンブの収穫の時期も限られていますし、行かないと多分そういう体験とか見ることってできないと思います。それを逆に一般の方に、今海って大変な状況だよとかっていうことも伝えつつ、実際に採れたてのフレッシュなコンブを、しゃぶしゃぶにして一緒に食べたりとか、そういうことをしながら、ちょっと海について考えてみようっていう時間を設けて、一般の方に来てもらえるような、開けた収穫の場になっています」

●いいですね! 富本さんはコンブと出会って人生がガラリと変わりましたけれども、やっぱりコンブで世界は変わりますか?

「そうですね。本当にこのコンブの素晴らしさ、可能性に気づいてくれる人が増えて、一緒にコンブは面白いから何かやろう!っていう方が増えていけば、海の問題も解決していきますし、僕たちにとって健康的にもいいですし、地球がどんどん良くなっていくんじゃないかなと思います」

●コンブは地球を救ってくれますか?

「そうですね! コンブは地球を救うと思います」

富本龍徳さん

☆この他の「SDGs〜私たちの未来」シリーズもご覧ください。


INFORMATION

 富本さんが英国のナチュラル・コスメ・ブランドLUSHと開発したバスボム、一箱に3個入っていて、そのひとつに富本さんたちが養殖したコンブが使われています。商品名は「涼の一服」。販売価格は1,400円です。お買い求めはLUSHのサイトから、どうぞ。

◎LUSH:https://www.lush.com/jp/ja/p/ippuku-ryo-gift

 富本さんの活動については「幸海ヒーローズ」のサイトをご覧ください。

◎幸海ヒーローズ:https://sachiumi.com

オンエア・ソング 7月16日(日)

2023/7/16 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. THE TIDE IS HIGH / BLONDIE
M2. FIELDS OF GOLD / STING
M3. HEY, SOUL SISTER / TRAIN
M4. OCEAN EYES / BILLIE EILISH
M5. 伝えたいことがあるんだ / 小田和正
M6. SOMEONE LIKE YOU / ADELE
M7. ぼくが地球を救う〜Sounds of Spirit〜 / Skoop On Somebody

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

旅、サーフィン、米づくり〜自然とつながるシンガーソングライター東田トモヒロ

2023/7/9 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、旅とサーフィンをこよなく愛するシンガーソングライター「東田トモヒロ」さんです。

 東田さんは1972年生まれ、熊本市在住。2003年にメジャーデビュー。旅とサーフィン、スノーボーディングをこよなく愛し、自然に寄り添った暮らしや、旅をモチーフにして生まれる曲と、オーガニックなサウンドが多くのファンを魅了しています。

 そんな東田さんは、いち早くエネルギーと食べ物の自給自足に取り組んでいるほか、福島県相馬市の保育園にお米や野菜を届ける活動もされています。

 そして6月7日にデビュー20周年、通算16作目となるアルバム『Rough Morning』を発表されました。「ラフ・モーニング」というタイトルは、東田さん曰く、英語にはない言葉だそうですが、ある日、ライヴが終わって、海のそばに車を止め、ライヴの余韻や疲れもあって、そのまま寝てしまい、朝を迎えた時に、なんとなく車の中がちらかっていることがあったそうです。

 そして曲を作り始めたら、メロディとともに思いついた「ラフ・モーニング」というフレーズを口ずさんだところ、その言葉がしっくりきたので、残すことにしたそうです。

 そんな東田さんに熊本での暮らしぶりなどうかがうほか、デビュー20周年を記念するオリジナル・アルバム『Rough Morning』から旅をテーマにした新曲もお届けします。

☆写真協力:東田トモヒロ

東田トモヒロさん

曲のアイデアは旅先で

※東田さんは旅をモチーフに曲作りをすることも多いそうですが、今回の20周年記念アルバムに収録されている曲も、旅で出会った景色や人からインスピレーションを得て作ったとか、そんな感じなんですか?

「そうなんですよ。だいたい自分の場合、スタジオとか自宅でギターを持って、さあ曲を作ろうっていうんじゃなくて、ふとアイデアとして思い浮かぶんですね。それがどういう時が多いかっていうと、移動している時が多いんですよ。

 車で移動していて、走っている時になんとなくメロディを思いついて、それでボイスレコーダーで、そのアイデアを録っておいて、あとで聴き返す時にピアノの前に座ったり、ギターを持ったりして、あの時思いついたメロディにはどんなコードが合うんだろうとか、そうやって作っていくんですよね。

 だからツアーの途中で曲を作って、ひとつのツアーが終わったら、なんか1曲アイデアが残っていて、その結晶がアルバムっていうか・・・今回のアルバムもそうやって作りましたね」

●旅先で見た景色とか出会った人とか、そういったところからインスピレーションを得ていらっしゃるんですね。

「まさにその通りです。 『Traveling』っていう曲は・・・よく覚えているのが四国で信号待ちしている時にメロディを思いついて・・・あ、これいいぞと思って、ちょうど旅の途中だったから『Traveling』っていうテーマで書いてみようと思って、 四国を旅している間に作りましたね、歌詞まで全部。それをよく覚えていますね」

●ヘぇ〜! 四国だったんですね。

「愛媛でどこかの信号待ちしている時に・・・そうそう(笑)」

(*放送ではここで「Traveling」を聴いていただきました)

みんなで田植え、チャリティ米

※東田さんは地元熊本で農家さんから田んぼや畑を借りて、4家族でシェアし、役割分担しながら、お米や作物を育てているそうです。毎年育て方などを勉強し、10年ほど続けているそうですよ。今年も田植えを行なったそうですが、イネの苗は手植えなんですか?

写真協力:東田トモヒロ

「もう今ほとんど使われなくなったんだけど、手押しの田植え機っていうのがあって、それはもうほとんどの農家の方が使っていないので、余っているんですよね。だから安く譲ってくださったり、あるいはくれたりする場合があるんですけど、それを使っているのと、もうひとつ別の場所は(田植えをする時に)毎年呼びかけるんですよ、ワークショップとして。30人ぐらい集まってくださったりします。

 そこはなんでそういうふうにしているかっていうと、手植えでやるんですよね。手で植える体験を子供たちとか、大人もやったことない人たちを募って、総勢30人から40人ぐらいで手で田植えをしています。

 で、しかもそこの手で植えた田んぼで収穫したお米は、チャリティ米にして、福島の南相馬の保育園に送っているんですね。南相馬はまだ、飼料米しか作れないということで、給食のお手伝いをできたらなと思って、それも10年続けているんですけど、その手植えのゾーンはチャリティ田んぼにしていますね」

●九州の季節の野菜や果物とかも届けていらっしゃるんですよね? 

「それも一環で『チェンジ・ザ・ワールド』っていう活動をやっているんです」

●その保育園の子供たちに、お米や野菜を送ろうと思ったきっかけは、なにかあったんですか? 

「そこの保育園は原発の事故のあと、地域のものがほとんど食べられなくなって、僕らは安全な食べ物を食べられているんだけど、それで困っているというか必要とされているところに、なんか手伝いできたらなということで、東日本大震災のあと、1年後からそういう活動を始めたんですよね」

●そうだったんですね。

「そうそう、それを今でもお米という形で、毎年お米を作って送ることを続けています」

写真協力:東田トモヒロ

自然とつながる安心感

※今年、野菜は何を育てているんですか?

「もうね、野菜は諦めました(笑)」

●あれ!? どうしちゃったんですか?(笑)

「 あのね、野菜はやっぱり、毎日そばにいる人じゃないと無理かも・・・。だから、野菜はやめて果物とお米だけにしました! もう本当にね、大変ですね! 何でもかんでもやろうとすると・・・。やっぱり本業は音楽だから(笑)、無理しないでできることをやらなきゃなと思ったんですよ」

●果物とお米にしたんですね。

「果物とお米だったら、そんなに毎日見ていなくても大丈夫じゃん。オクラとか一回植えて、旅から帰ってくると、もうなんだろ、あれ・・・すっげえ巨大なハサミみたくでかくなって、もう固くて食べられないみたいになっちゃうから・・・」

●そうですね。お世話が大変ですよね(笑)。

「だから果物だったら、この時期! って決まっているじゃないですか。そこだけいれば、美味しく食べられるし、田植えも稲刈りもそんな毎日やるもんじゃないから・・・だから田んぼは意外とミュージシャン向きなんですよ、やったほうがいいと思う、ミュージシャンみんな」

写真協力:東田トモヒロ

●食べるものを自分で育てるとか、自給自足に近い生活を送るっていうのは、なにか理由があるんですか?

「いや、特に理由はないんですけど、単純に楽しいっていうのと、お米もそれまで長いこと食べてきたけど、どうやって作られているかって実際やってみるまで知らなかったから・・・。で、やってみたら、なかなか言葉では、ロジックでは説明しづらい、安心感っていうか、そういうものが得られるんですよね。

 自分が大地とつながって存在しているというか、それはすごくサーフィンと似ていて、海に入る時っていうのは本当に自分の身ひとつで、サーフボードはもちろんあるんですけど、すごくシンプルな形で自然とつながれるじゃないですか。

 太陽があって海があって砂浜があって、自分がこの地球というか自然の中に存在しているとすごく実感できるんですよ。田んぼとか、それこそ果樹を置いている山の一部、そういうところにいるだけで、自分がちゃんと自然とつながった存在としてあるっていう、それはすごく安心する要素なんですよね。

 自分を肯定できるというか、自分を確認できるし、あと静かに自分に自信が持てるというか、なんかそんな気がするんですよね。だからこれはやっぱり自分のために続けるべきだなというふうに思って、きっかけは些細な、ちょっとやってみたいなくらいのことだったんだけど、サーフィンと似ていて、気づけば自分のライフワークというか、欠かせない活動のひとつになっていますね」

(編集部注:東田さんが育てている果物は、この時期はプラムがたくさん成るそうですが、野鳥にも食べられてしまうので、どっちが先に採るか、鳥と格闘しているそうですよ。またこれからは、ブルーベリーの時期になるので、朝、実を採って食べる新鮮なブルーベリーの味は最高だとおっしゃっていました)

ソーラー発電は音がいい!?

※熊本のご自宅でソーラーによる自家発電を行なっているそうですが、なにかきっかけとかあったんですか?

写真協力:東田トモヒロ

「そういう暮らしを、オフグリッドっていう暮らしをしている人がいるっていうのは長年知っていたんですね。それこそ完全に自給自足しているというか、僕の友達にもいるんですよね。煮炊きは全部薪でやって、電気は僕と同じようにソーラー発電で蓄電して、電気をバッテリーから取って、それを使って山の水を引いて暮らしている、その人は完全にオフグリッドで阿蘇のほうに暮らしているんですけど、さすがに(僕は)そこまではできないなと思って・・・。

 でも自分の暮らしの中で、一部そういうスタイルでやれたらいいかもな、自分にはそのぐらいでいいかもなというか、それで電力の一部を自分で賄おうと思って、そういう暮らしをしている人にアドバイスをしてもらったんです。

写真協力:東田トモヒロ

 それを導入して、今自分が使っているスタジオが、小屋みたいなところがあって、そこにドラムセットとかアンプとかスタジオの機材を全部置いているんですが、そこの電気と、もうひと部屋ぐらいは全部ソーラーで賄っていて、スタジオは完全オフグリッドですね。

 なので、今回のアルバムも太陽の光でできた電力で作りましたね。6枚の(ソーラー)パネルがあって、バッテリーはゴルフ場のカートで使っているやつを4台置いていて、1200ワットは発電しているんですよ。十分にレコーディング機材はそれで動くんですよね」

●雨とか曇りの日はどうされているんですか?

「さすがです! そうなんです。だから曇りの日が3日続くと、さすがにバッテリーに負荷がかかっちゃうから、4日目はもう使わないようにしているんだけど、だいたい日本は4日目に晴れるんですよね~、いや〜わかんないけど、多分、多分ね(笑)」

写真協力:東田トモヒロ

●スタッフから聞いたんですけど、私がパーソナリティーになる前に、この番組にシアターブルックの佐藤タイジさんにご出演いただいた時に・・・

「あー、タイジさん!」

●ソーラー発電の電気で録音すると、音が良くなるっておっしゃっていたみたいなんですけど、それは東田さんもそう感じることはありますか?

「それはわかんないですけど(笑)、あ〜、タイジさん、多分メンタルから入っていると思う(笑)、これは音がいいぞ!って。でも確かに彼が言っていることも一理あって、バッテリーから割とロスがなく、発電した場所から距離がほとんどないから、そこでロスが生まれずっていうのは聞いたことはあります。

 だから(音が)ピュアだっていうふうに言っている人がいたのは覚えていますね。あとノイズが少ないとかね。そういう意味では、もしかしたらいいのかもしんないけど、エビデンスが(笑)、佐藤タイジの言っていることのソースとエビデンスがほしい(笑)」

スリランカでサーフ&ライヴ!

※東田さんのナチュラルなライフ・スタイルは、やはり音楽にも現れていると思います。その辺は意識されていますか?

「そこをなるべく意識しないように音楽に落とし込めたらいいなと思っているんですよね。意識しないでも、やっぱ出ちゃうでしょうね、音には。

 例えばジャック・ジョンソンとか、彼はそこまで意識せずとも、やっぱハワイの空気感って出ているじゃないですか。きっとノラ・ジョーンズだったらノラ・ジョーンズの暮らしの、ニューヨークなのかもわかんないけど、ちょっと都会的な雰囲気とかね。

 だから多分、自分も普段の暮らしとか、旅をしている時に感じていること、見聞きしていることっていうのは、やっぱり知らず知らずのうちに出るっていうのがいいんだろうなと思って・・・音楽と向き合う時はかえって意識しないようにしていますね。そしたらちょうどいい塩梅になるんじゃないかなというか・・・」

東田トモヒロさん

●デビュー20周年のアニヴァーサリー・イヤーの最後12月に、インド洋に浮かぶ美しい島、スリランカでライヴを行なうんですよね? なぜまたスリランカだったのですか?

「そうなんですよ。これね、スリランカでライヴをやります! っていうと、そういう名前のカレー屋さんでやるんですか? って言われる時もあるんですけど(笑)、本当にスリランカでやるんですよ!」

●あの、スリランカですよね?

「あのスリランカですね。これ、なんでかって言うと、一度行ったことあるんです、実は。プロモーション・ビデオの撮影で、『LIFE MUSIC』っていう曲の・・・それ今YouTubeにはもう(ビデオは)なくなっちゃっているんですけど、もう一回スリランカを旅する映像を撮りたいなっていうのがあるのと、どこかで(ライヴを)やりたいって思った時に、記念の年だし、そういう記念になるようなところ、例えば、憧れているライヴ会場とか、そういうのもいいなと思ったんだけど、なんかそれってありきたりだなと思って・・・。

 やっぱちょっと面白いことやりたいと思って、サーフポイントのすぐそばで(ライヴを)やりたいな~、しかも海外でやったら面白いんじゃないかなっていうのが(笑)、なぜって言われたら、たぶん面白そうだからとしか答えようがないですけど・・・」

●サーフトリップの聖地のひとつであるスリランカには、サーフィンをやりに行くんですか? ライヴをやりに行くんですか?(笑)

「両方ですね! だから日本から行きたいっていう方とは(スリランカに)一緒に行って、サーフィンをやったことない方がもしいらっしゃったら、僕も友達と一緒にサーフレッスンしようかなと思っているし・・・」

●えっ! すごい! 贅沢ですね~。

「ライヴは一回だけなので、あとは全部多分サーフィンしているんで、一緒に波乗りしましょうっていうツアーですね」

●もうサーフィンツアーですね(笑)

「ですね!」

(*ここで「Everything」を聴いていただきました)

☆この他の東田トモヒロさんのトークもご覧下さい


INFORMATION

『Rough Morning』

『Rough Morning』

 東田さんのデビュー20周年を記念するオリジナルアルバム『Rough Morning』にはきょうお届けした「Traveling」と「Everything」を含め、全部で7曲収録されています。ソーラー発電の電力を使って、自宅スタジオでレコーディングした曲はいい意味で力が抜けていて、聴いていると、とてもリラックスできます。旅気分満載のナチュラルなサウンドをぜひお楽しみください。お買い求めは東田さんのオフィシャルサイトから、どうぞ。

 また、東田さんは現在、『Rough Morning』リリース・ツアーを行なっていて、7月14日から北海道ツアーに突入します。

 そして、アニヴァーサリー・イヤーのファイナルとして12月6日にスリランカでライヴを行なうことが決まっています。

 12月5日から4泊6日のツアーが組まれていて、滞在は、ビーチとサーフィンで有名なスリランカの南海岸「ミリッサ」のホテルだそうです。旅行代金など含め、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎東田トモヒロ・オフィシャルサイト:http://live.higashidatomohiro.jp

オンエア・ソング 7月9日(日)

2023/7/9 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. OB-LA-DI, OB-LA-DA / THE BEATLES
M2. Traveling / 東田トモヒロ
M3. ROCKIN’ IN THE FREE WORLD / NEIL YOUNG
M4. IT AIN’T OVER TIL IT’S OVER / LENNY KRAVITZ
M5. THE LONG WAY HOME / NORA JONES
M6. キミを見てる / THEATRE BROOK
M7. Everything / 東田トモヒロ

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

体が整う 薬膳×発酵の知恵~いつもの食材で健康に

2023/7/2 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、薬膳・発酵料理研究家の「山田奈美(やまだなみ)」さんです。

 編集者、そしてライターとして活躍されていた山田さんは「東京薬膳研究所」の「武 凜子(たけ・りんこ)」さんと出会い、薬膳に共感し、武さんからマン・ツー・マンで基本を学びます。その後、北京中医薬大学の日本校で本格的に薬膳を勉強し、資格を取得。そして、おばあちゃんやお母さんから教えてもらった発酵食の知識と、薬膳を組み合わせた、体に優しい季節の食を伝える活動を行なっていて、幅広い世代から支持されています。

 また「食べごと研究所」を主宰され、神奈川県葉山町の古民家をアトリエに、和食薬膳教室や発酵教室などを開催されています。

 そんな山田さんが先頃、『いつもの食材と調味料で 体が整うごはん』という本を出されました。

 きょうは、その本をもとに、薬膳と発酵のふたつの知恵を組み合わせた、手軽で、なにより体にいいお料理や、夏野菜のおすすめレシピなどうかがいます。

☆写真協力:山田奈美、福井裕子、ナツメ社

写真協力:山田奈美、福井裕子、ナツメ社

薬膳のもと、陰陽五行理論

※この本には薬膳と発酵食品を組み合わせたレシピなどが載っています。改めてなんですが、薬膳とはなにか教えていただけますか。

「薬膳というとちょっと難しいイメージがあって、漢方薬の生薬を使ったようなお料理じゃないかっていうイメージがあると思うんですけど、実際は普段使っているような、身近な食材ひとつひとつにも働きがちゃんとあるので・・・全部覚えるのは難しいんですけど、体を温めるとか冷やすとか血の巡りをよくするとか、そういう働きをなんとなく踏まえて、毎日の食べ物で健康を維持するっていうようなものが薬膳になります。

 難しいことは何もないですね。体に入ってきて、影響を与えない食べ物はひとつもないので・・・やっぱり自分の体質を知るのが大事になってくるんですけどね。その体質とか季節に合った食べ方をしていくと、本当に病気を防ぐことができると思います」

写真協力:山田奈美、福井裕子、ナツメ社

●薬膳のもとになっている理論があるんですよね?

「そうですね。ちょっと難しいんですけど、陰陽五行理論(いんようごぎょうりろん)というものがあります。陰陽論と五行論が組み合わさったものなんですけれども、古代中国に生まれた哲学のようなものなんです。

 陰陽論は、ちょっと聞いたことがあるかもしれないんですね。陰がちょっと冷たいとか暗いとか水とか、下に下がるようなエネルギーとか、そういうものです。陽は明るいとか暖かいとか、太陽のような・・・そういうふたつの相反するエネルギーを、陰と陽とに分けているのが陰陽論ですね。すべての食べ物も、宇宙にあるすべてのものも、この陰と陽に分けているんですね。それが陰陽論になります。

 で、五行論。五行は、木火土金水(もくかどこんすい)って言うんですけど、木・火・土・金・水という5つ元素みたいなものを言います。そしてこの“行く”っていう字は、巡るとか循環するっていう意味なので、5つの元素が巡ることによって、あらゆるものが生まれたり、変化していくのが、五行論になります」

『いつもの食材と調味料で 体が整うごはん』

陰陽五行理論〜五味・五性

※食物も「五行」に分類されるということですが、本に、五つの味と書く「五味(ごみ)」のことが載っていました。体の中に入ってきたときの働きも含めて、ご説明いただけますか。

「五味というのは酸味・苦味・甘味・辛味、あと塩辛い味の鹹味(かんみ)と言うんですけど、その5つが五味と言います。それぞれ五臓と密接に関係していて、酸味のものは肝臓の働きを補うというか、整えるような働きを持っていて、苦味は心臓、甘みは脾胃(ひい)と言って胃腸ですね。

 で、辛味は肺とか大腸の働きにつながっています。鹹味、塩辛い味は腎臓とか膀胱につながっていると言われていますので、それぞれの味を食べることによって五臓を補うことができると考えるのが、五行論の五味ですね」

●つながっているんですね〜。5つの性質と書く「五性(ごせい)」というのも、
山田さんの本に載っていましたね。

「これは食べ物を5つの、温めるとか冷やすとかっていう性質に分けたものなんですね。五性は、熱・温・平・涼・寒と言って、熱性・温性・平性・涼性・寒性・・・平性というのは、温めも冷やしもしない中間の性質です。

 涼性はちょっと冷やす、寒性は寒いのでかなり冷やすという性質なんですけど、食べ物によって、冷やすものだったり、温めるものだったりというのがありますので、自分が例えば 冷え性だなと思ったら、できるだけ温めるものを摂っていくと、冷え体質も少しずつ改善されていくことになります」

消化を助ける発酵食品

写真協力:山田奈美、福井裕子、ナツメ社

※薬膳の知恵と、お味噌やお醤油などの発酵調味料を組み合わせることで、どんなメリットや効果が生まれるのでしょうか?

「発酵調味料のメリットとしては、消化がすごく良くなるってことが、まず第一にあげられますね。日本人は、基本的には消化力が弱い人がとても多いんですね、胃腸が弱い人がね。胃はどうしても湿度に弱い、水分に弱いんです。日本は海に囲まれていて、木も多いし、川も多いので、どうしても湿度が高い環境になって、そこに(日本人は)暮らしているので、胃が弱くなりやすいんですね。

 大陸の乾燥した所で育っている、中国とかアメリカの人たちと比べると、体温も低いですし、胃の働きがやっぱり弱いので・・・向こうの人たちは本当にガツガツ食べても大丈夫なんですが、日本人は割と胃を壊しやすいんですよね。ちょっと限度を超えるとね。
 胃腸が弱いので、それを補ってくれるのが発酵食品になります。発酵食品をちょっとプラスしてあげるだけで、消化を助けてくれるっていう感じになります」

●本当に日本人の体質に合っているんですね。

「そうですね。和食は本当に発酵調味料をいっぱい使うものが多いし、日本はもともと発酵文化なので、やっぱり日本人の胃腸の弱さを補うために、昔から使われてきたんじゃないかなと思いますね」

●そうだったんですね〜。薬膳の働きと発酵調味料を組み合わせる時の、なにかコツみたいなものはありますか?

「できれば、全部じゃなくてもいいんですけど、ちょっと事前に漬け込んでおくとより消化が良くなりますね。お肉類ですね・・・特にタンパク質は消化に時間がかかるものなので、お肉とかお魚もそうですけど、少し10分とか15分でもいいので、塩麹とか味噌に漬けるとかね。そういうのに漬けてから加熱してあげると、より消化は良くなります」

血を巡らす料理〜ナスを皮ごと!?

●山田さんの新しい本『いつもの食材と調味料で 体が整うごはん』に、こんな不調を感じている時は、全身が冷えているから体を温める料理がいいですよとか、疲れやすくて元気がない時は、気を補う料理がおすすめですよという、そんなページがありました。

「不調から見るあなたのタイプは?」というふうに、いろんな設問が載っているので、私もやってみたんです。私は手足が冷えやすいとか、目の下にクマができやすいとか、肩こりがあるということで、血を巡らす料理がいいですよ、と出ていたんですけれども、これからの季節、夏場ですと、どんなお料理がおすすめですか?

「そうですね。血を巡らすのはやっぱり女性にはすごく必要で、血の滞りやすい冷えている人が多いですね。そうすると血の巡りが悪くなりやすいので、そういう人には血を巡らす料理がとてもいいと思います。

 あと、温める料理もいいと思いますので、それをミックスしていくといいんです。例えば、夏の血を巡らす(食材)だと、意外かもしれないんですが、ナスはいいですね。血を巡らします。でもちょっと冷やすんですよ」

●冷やすイメージがありますよね。

「ナスはできるだけ皮ごと、皮の紫色のところに一応、血を巡らすような働きとかがありますので、皮ごと食べていただいて、プラス薬味をいっぱい入れてあげるといいですね。だから焼きナスにしたりとか、蒸しナスにしてショウガとかシソとかをたっぷりのっけて、しょうが醤油とかで食べてあげるとか・・・簡単ですがいいと思います」

●早速、ナスを買って帰ります(笑)。夏は外が暑いですけど、電車とかオフィスは寒いじゃないですか。冷房で体調を崩しちゃうこともあると思うんですけど、そういう時はどういうレシピがいいですか?

「やっぱり自律神経がバランスを崩しちゃうことが多いんですよね、寒暖差があると・・・。その時、自律神経は肝臓と考えるんですね、中医学(ちゅういがく)だと。肝が神経を、自律神経を担うので、肝臓にいいのは緑のものとか酸味のものがいいと言われています。

 例えば、緑のツルムラサキとか、夏だったらモロヘイヤとか、ゴーヤもいいですよね。そういう緑のものにちょっと酢の物の酸味をプラスしてあげると、自律神経を補う肝の働きを助けることができると思いますので、いいと思います」

和食の基本「さしすせそ」

小尾ちゃんが、山田さんの本に載っているレシピをもとに作った 「納豆と青梗菜、牛肉のオイスター炒め」。
小尾ちゃんが、山田さんの本に載っているレシピをもとに作った
「納豆と青梗菜、牛肉のオイスター炒め」。
ご主人がご飯をおかわりするほど、美味しくできたそうです。

※私は去年結婚して、毎日、夫のために献立を考えて夕飯を作るようになったんですけど、主婦の知恵として、この発酵調味料さえ使えば大丈夫、というようなコツがあれば、教えていただけますか。

「和食だと『さしすせそ』の基本の調味料がほとんど発酵食品になります。『さ』は昔は砂糖もみりんだったと言われていますので、みりん、酢、醤油、味噌ですよね。その基本の調味料を毎日使って、(みなさん毎日)だいたい使うと思うんですけど、そういうのを使っていれば、基本的には発酵調味料は摂れていると思います。あとそこにプラスして塩麹とか醤油麹とかがあると、より料理の幅が広がるっていう感じがしますね」

●山田さんの本を読んでいて、塩麹がいろんなレシピに使われているなっていう印象を持ったんですけど、やはり麹はいいですか?

「麹は日本の国菌(くにきん)って言われているぐらい日本ならではの菌だと思うので、(日本人の)体にも合っていると思いますね。なので、麹でいろんなものが作れるのでとてもいいと思います」

●具体的に麹を使った料理でいうと、なにかありますか?

「塩麴ですか? 塩麹ね・・・いろいろ使っているので・・・」

●塩麹をどう使うと美味しいよ、とか、おすすめだよ、とかあれば、ぜひ。

「鶏肉とかにちょっと塩麹をつけて、それで煮込んでもいいし、唐揚げとかにしちゃっても、とても柔らかくなって美味しいですね。煮物にするときは醤油麹にしてあげると、醤油系の煮物にはとても合いますので、いいと思いますね」

●やっぱり夏には夏の、秋には秋の、旬の食材をお料理に取り入れるのがいいですよね?

「基本そうですね」

●夏野菜でいうとおすすめは?

「おすすめは、そうですね・・・これから暑くなってくると、あまり使わない人も多いんですけど、冬瓜(とうがん)とかね。薬膳ではとてもいい食材だと考えられていて、(冬瓜は)水を出してくれるんですよね 。

 この時期、だんだん湿度が高くなると、体の中に水が溜まりやすいんだけど、水が溜まってくると冷えるし、肩こりになったり頭痛がしたりとか、いろんな不調につながっていくので、とにかく水は綺麗に出してあげるのが大事なので、その時に冬瓜とかトウモロコシとか、そういうのがとてもいいです。

写真協力:山田奈美、福井裕子、ナツメ社
冬瓜のエスニックスープ

 私の新しい本だと、冬瓜のエスニックスープが載っているんですけど、冬瓜も体を冷やすので、ちょっとエスニック風の黒酢とかナンプラーとかショウガとか、そういうものを入れて、温める食材をプラスして、スープにしてあげると、とてもいいと思います」

(編集部注:山田さんはご自宅でお醤油や米麹、納豆やオイスターソース、そしてお味噌などもご自分で作っていらっしゃいます。初心者でも作れる発酵調味料をお聞きしたら、塩麹と醤油麹を勧めてくださいました)

常に幸せを感じながら

※山田さんのお料理は「旬の食材をシンプルに調理」が基本なんですよね?

「そうですね。旬の食材で美味しい野菜だと、本当に何もしなくてもとても美味しいですね。ただ茹でただけとかでも美味しいので、できるだけ手をかけないっていうか、味を濃くしないで素材の味が出るようにすることを心がけています」

●無意識にあれ食べたいなって思う時があったら、それは体がそれを欲しているっていうことですか?

「そういうふうに感じていただけるといいと思います。あまりわからない人も多いんですけど、欲していることを感じられるのはすごくいいことですね。
 甘いものを食べたいなっていう時は、けっこう疲れている時だと思うので、それに従って、お砂糖の多いものじゃなくて、穀物とか芋類とか小豆とか、そういう甘みのものを摂っていくといいと思いますね。体の欲しているものを食べるのは、基本的にとてもいいことだと思います」

●体を整えるにはやっぱり体の声を聞いて、必要なものを摂っていくことが大事になりますか?

「そうですね。とても大事だと思います。あとは季節に合うものですね」

●旬のものとか?

「そうですね」

写真協力:山田奈美、福井裕子、ナツメ社

●山田さんは1日の中で、幸せだなって思う時は、どんな時ですか?

「なんかもう、常に幸せっていうかなぁ~(笑)。あまり嫌だなって思う瞬間がないので・・・」

●素晴らしいですね~!

「好きなことをやっているからかも知れないんですけど、基本的に日々毎日、常に幸せを感じられていると思っています(笑)」


INFORMATION

『いつもの食材と調味料で 体が整うごはん』

『いつもの食材と調味料で 体が整うごはん』

 山田さんの新しい本、おすすめです! お話にあった陰陽五行理論について、わかりやすく載っていますよ。そして、普段の食材と発酵食品を組み合わせた手軽で美味しいレシピが、おかず、汁物、ご飯と麺、そして保存食に分けられ、全部で84のレシピが、豊富な写真とともに紹介。どれも美味しいそうで、作りたくなっちゃいますよ。薬膳と発酵の力を知る一冊、ぜひあなたのおうちにも常備してください。ナツメ社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎ナツメ社:https://www.natsume.co.jp/books/18012

写真協力:山田奈美、福井裕子、ナツメ社

 山田さんが葉山のアトリエで行なっている「和食薬膳教室」は現在は、4月スタートの年間コースとなっているそうです。空きがあれば、体験で参加することもできるとのこと。ほかの教室のことなども含め、詳しくは「食べごと研究所」のオフィシャルサイトを見てください。

◎食べごと研究所:http://tabegoto.com

1 2
サイトTOPへ戻る
WHAT’s NEW