2026/8/9 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「国立科学博物館」動物研究部の研究員で「クジラの先生」として知られる「田島木綿子(たじま・ゆうこ)」さんです。
現在上野の国立科学博物館で開催されている「いきもの超ワールド展」、夏休みということもあって、お子さんを連れたご家族もたくさん来場され、賑わっているようです。
今回の特別展は、NHKの自然番組「ダーウィンが来た!」との共同企画で、国立科学博物館が所蔵する標本や資料などに加え、「ダーウィンが来た!」の迫力ある映像が見られます。
また、公式ナビゲーターに相葉雅紀さんが起用され、館内で聴ける音声ガイドにも登場、話題になっています。
きょうは、そんな「いきもの超ワールド展」の見どころのほか、田島さんのご専門、イルカやクジラが座礁するストランディングについてもうかがいます。
☆写真協力:いきもの超ワールド展 国立科学博物館×ダーウィンが来た!

いきものの生存戦略
※今回の特別展のテーマが「いきものの生存戦略」ということなんですが、改めて、どんな展示になっているのか、教えていただけますか?
「生き物の生き残り戦略は、みなさんご存知の通りたくさんあります。ただそれを展示に落とし込むとなると、すべてを語ることはとても無理なので、そこからお客様とか我々研究者、スタッフ一同が面白おかしく展開できるテーマを設定するのに少し時間がかかりましたが、それを通して彼らが地球上でどうやって生き残ってきて、これからどうやって生き残っていくのだろうということが、わかっていただけるといいなという展示になっています」
●今回の特別展では、田島さんを含め5人の研究者の方々が監修として携わっています。展示のテーマや内容についてアイデアを出し合いながら、みんなで進めていったという感じなんですか?
「そうですね。企画会議は3年前ぐらいからスタートしていますので、そこからだんだんと絞り込んでいったということですかね」
●それぞれにみなさん専門がありますから、お互いの刺激になるような話も多かったんじゃないですか?
「そうですね。結局テーマを決めた段階では、そのテーマに合う標本なり、トピックだったり、研究成果なりということをそれぞれ出し合って、逆にそっちがあるんだったら、こっちもそれに関係して、うちのほうも出せるよとか、テーマが決まってしまうと研究者あるあるですけど、面白おかしくどんどん進んでいったというのはありますかね」
●「ダーウィンが来た!」のスタッフのみなさんも参加してのミーティングですか?
「もちろん、もちろん」
●会場で上映している映像については、国立科学博物館側からのリクエストというのもあったんですか?
「う~ん、どうでしょう・・・あまりうちが“こうしてください!”というのはなくて、その企画会議の中で自ずと、どんなテーマでどんな標本、どんな生き物が出るというのはわかってきますので、ダーウィンのかたたちに任せて、“ここではこういうのを出そうね”というのは普通にわかってくるので、ほとんどお任せでしたね」
(編集部注:今回の展示は生き物たちの生存戦略を、6つのチャプターに分けて解説。その6つとは、「いきもので異なる五感」、「いきもので異なるエネルギー補給」、「いきものの挑戦“サイズ”適応術」、「いきもので異なる移動のかたち」、「いきものに学ぶ集団の意義」、そして「いきものが紡ぐ命のバトン」となっていて、それぞれのコーナーで、貴重な標本や資料の展示に加え、迫力のある映像を体験できます。詳しい展示内容については、ぜひオフィシャルサイトをご覧ください)
☆いきもの超ワールド展:https://ikimonoworld.jp

イルカやクジラの視覚、聴覚、嗅覚、味覚
※ここからは「クジラの先生」として知られる田島さんに、今回の特別展にちなんで、イルカやクジラの五感について、初歩的なことをうかがっていきます。イルカやクジラは、視力はどうなんでしょう? いいほうなんですか?
「“いいほう”という基準が難しいですが、海洋環境というのは全体のわずか2%しか太陽の光が届きません。視力というのはどうしても太陽の光がないと、ほとんどの生物は見るという行為ができません。
わずか2%にいる間は視力を使っていますが、光が届かないところだと使いたくても使えないとは思うので、難しいですが、まったく悪いわけではなくて、視力は哺乳類としては普通に使える機能や構造は持っています」
●いちばん発達している感覚とは何なのでしょうか?
「鯨類の場合は、大きく“ハクジラ”と“ヒゲクジラ”に分かれますけれども、ハクジラは特殊でいわゆる“エコロケーション”超音波を使って周囲を確認していますので、それは聴覚になるんですかね。エコロケーションだと聴覚になるので、彼らはほとんど聴覚という感覚ですかね。
ヒゲクジラの場合は難しいですけど、あまりどこがというのはなく、やはりその場その場の環境によって嗅覚だったり触覚だったり視覚、ただ鯨類の場合は嗅覚が発達していないと言われていて、ヒゲクジラの場合は逆に嗅覚はまだ使っているということなので、それぞれの分類群によって違います」
●匂いを感じる嗅覚はないということなんですか?
「ハクジラはないと言われていて、結局、解剖学的にその部位がないので使っていない、または進化の過程で退化してしまったのだろうと言われています」
●イルカやクジラは魚など、そしてシャチはほかのクジラなどを食べますよね? ということは肉食になるのかなと思いますけれども、舌で味を感じたりというのはあるんですか?
「う~ん、彼らはほとんど丸呑みなので・・・いわゆる味覚というのは人間社会だと味わったりグルメだったり、美味しい美味しくない、なんて言いますよね。生き残るための味覚ではなくて嗜好性に偏っていますが、クジラ含めた生き物にとっての味覚というのは、そういうふうに発達したわけではなくて、例えば毒成分なものを食べないようにとか、腐っているものを食べないように、またはうま味成分としては例えば糖質、グルタミン酸みたいなものを舌とかいろんな場所でかぎ分けてはいるそうですけど、いわゆる人間社会で言う、味わうという感覚ではないそうです」
●胃はひとつなんですか?
「胃はひとつですよ。ただそれが複数の部屋に分かれているという言い方をしますね」

プランクトン食のほうが大きくなれる!?
※続いて、イルカやクジラの体の大きさについてなんですが・・・世界最大の哺乳類は、シロナガスクジラですよね。
「地球上に生きている最大の動物という枕言葉がつくと、シロナガスクジラになります」
●どれくらいのサイズなんですか? 今まででいちばん大きかったのは?
「記録的には南半球に、シロナガスクジラが33メートルっていう記録があったんじゃなかったかな・・・」
●なんでそんなに大きくなるんですかね?
「ふふふ、知りません(笑)。それはシロナガスに聞かないと(笑)」
●大きいことのメリットとデメリットがあると思うんですけど・・・。
「まあ、そうですね。いろんなところでお話をしていますけれども、結局大きくなれるというのは条件次第なので、本人たちが大きくなりたいと思ってなれるわけではなくて、ある一定の条件が揃わないと・・・。
大きくなれる条件って、やはり水の中にいると浮力を獲得しますので、自分で自重を支えなくていいっていうのと、あとは消費エネルギーと獲得エネルギーをいつも天秤にかけていて、消費エネルギーより獲得エネルギーが多くないと、餌をとるたびに疲弊していたら、そのうち衰弱してしまいますよね。
なので、彼らはなるべく要領よく楽をして餌をとりたいわけですね。そうするとプランクトンみたいに小さなオキアミを食べている動物のほうが、実は大きくなれるわけですよ。
シャチとか、陸上で言うとチーターとか、あと恐竜で言うとティラノサウルスみたいな、いわゆるチェイシング、追いかけ型、スピード型の捕食者は、結局自分で走らなきゃいけない、自分で追いかけなきゃいけないと、それだけ消費エネルギーが莫大ですよね。
あと大きすぎるとドスドスドスドス、自分でその体を持て余してしまう。特に陸上だと重力っていう最大の問題がありますので、だから陸上動物のいわゆる捕食者、トッププレデターはそんなに大きくなれないわけですよ。なれたとしてもスピード型では食べられない。一方、水の中だと浮力を獲得しますので、陸上よりは大きくなれると・・・。
で、もうひとつ、オキアミを食べる、一回の口を開けてパクって取り込む消費エネルギーに対して、一個一個は小さいオキアミですけれども、それをひとつの大きな塊として考えた時には、獲得できるエネルギーがものすごくあるわけですね。
そうすると確実に消費エネルギーより獲得エネルギーが増えます。実はオキアミとか群生の小魚を食べる動物のほうが大きくなれるという条件になるので、陸上より海の中のほうに大きい動物が多いし、海の中でもプランクトン食のほうが大きくなれるという条件になります」
●「歌うクジラ」として知られているザトウクジラについてもうかがいたいんですけど、歌うのはオスだけなんですか?
「と、言われています。メスも歌えなくはないと思いますけど、コミュニケーションのためには音は出しています。
いわゆる求愛アピールとしての、みなさんがよくおっしゃるラヴ・ソングはオスからメスへの求愛行動なので、基本的にオスしか出さないっていうふうに言われています」
●ザトウクジラは、その時にクジラ・ミュージック界で流行っている歌を歌うっていうのを聞いたことがあるんですけど、本当なんですか?
「みたいですね。それも研究の成果みたいですけど、ある一頭がその年に今まで聴いたことがないソングを歌い出すと、みんなそれに同調するように同じように歌い出すっていうのが研究成果とか、いろんなところで情報が集められているので、今のところ、それがいいとザトウクジラ界では思われているのかな~と・・・」
イルカやクジラの座礁は人間社会の影響!?
※田島さんは、イルカやクジラが陸にあがってしまう「ストランディング」研究の専門家でいらっしゃいます。6年前にご出演いただいたときにも、そのお話はうかがったんですが・・・その後の調査・研究で、なぜストランディングしてしまうのか、以前は、病気のせいではないかとおっしゃっていましたが、新たにわかったことはありますか?
「あまり人間にとってよくない話かもしれませんけど、やっぱりどうしても人間社会の影響がものすごく深く入り込んでいる事例を多く経験します。
最近だとみなさんご存知の通り、海洋プラスチック問題というのは、私たちも避けて通れない問題になっています。その海洋プラスチックを食べたことで衰弱死してしまうものもいれば、そこに吸着しているいわゆる環境汚染物質というのも、新たな脅威として注目されているので、私たちも細く長く研究を続けています。
あと最近、日本でも起こってしまっているのは、大型タンカーと大型クジラの衝突事故というのが、前よりも結構な頻度で発見されています。
大阪湾にマッコウクジラが打ち上がって、その時“ヨドちゃん”という名前がついたりもしましたけど、いつもいないところに迷い込む個体も見えてくると、ああいう場合は本当にどうしてかな? と思うしかないんですけど・・それらを含めてもやはり人間社会がちょっと影響しちゃっているかな・・・温暖化もまさにそうだと思いますけど、相変わらず病気とかは見つけていますけど、う~ん」」
●そうなんですね。生きたままイルカがストランディングしてしまうというニュースもありますけど、集団で座礁してしまうというのは、リーダーが方向感覚を失うといったこともあるのですか?
「う~ん・・・と言われる論文とか、いろんな書籍もあるんですけど、リーダーというよりは(イルカは)社会性が強いので、なんとなくみんな同じ方向に向かって行って、気づいた時にはあら~という感じだったり、リーダーだけのせいとはちょっと思えないところもあったりしますかね。
あとは、冷たい海域にトラップされちゃったりとか・・・だいたい春先に暖かい海が好きな種が千葉とかで打ち上がることが多いので・・・。
あと別の理由だと、いわゆるこれも人間社会の影響ですが、軍事演習ソナーがクジラの耳を攻撃してしまうので、それで死んでしまうというのも世界中で知られていることですね。ちょっと怪しいなというのは、日本でもパラパラ見えますけど、それを因果関係として証明するのはすごく難しくて、もどかしい事例もありますけどね」
●日本でイルカとかクジラがストランディングするのは、年間何件ぐらいになるのですか?
「報告例という意味でいくと、年間300件前後は報告されています」
●千葉県は多いほうですか?
「千葉県はものすごく多いですよ。やはり房総半島という大きな半島がありますし、南からは黒潮が流れて、銚子の沖から岩手県あたりまで親潮が流れてきて、ちょうど暖水と冷水が交わるところなんですね。
だからとてもいい魚場だと言われている通り、そこに海に棲んでいる生き物たちが餌を探して向かうわけなので、本当に千葉県はそういう意味では通り道だったりするので(ストランディングは)非常に多いです」
(編集部注:全国の浜にイルカやクジラが上がったというストランディング情報は各地の大学や水族館、博物館などと連携しているのでケースバイケースではあるそうですが、田島さんのところに連絡が来るそうです。
千葉は県立中央博物館やNPO、マリン関係者のほか、以前この番組にご出演いただいた「銚子海洋研究所」の「宮内幸雄(みやうち・ゆきお)」さんもいらっしゃるので、千葉県はとても連携がとれているとおっしゃっていました。
研究者としての田島さんの仕事は、「科捜研の女」のクジラ・バージョン、ということで、解剖して死因を解明すること。また、骨はいろんなことを語ってくれるともおっしゃっていました。
もし、浜に打ち上がっているイルカやクジラを見つけたら、地元の警察や消防、市役所などの公的機関のほか、同じく地元の水族館や博物館、大学などの研究機関に一報を入れてくださいとのことでした。そうすると、田島さんに連絡が入る場合もあるそうです)
人間も「いきものワールド」の一員
※ストランディングしてしまった大きな個体を前にして、どんなことを思いますか?
「生き物なので必ず死にますし、命が尽きるのは当たり前のことなんですけど、最近(調査研究を)やっていて思うのは、やはり死ななくてもいい個体もいたな~とか思うんですね。
それがいわゆる大型船にひかれちゃうとか、海洋プラスチックがお腹の中にあるとか、それはある動物、いわゆる人間ですけど、ある動物がほかの動物にちょっと迷惑をかけているわけじゃないですか。
それをあまり一方的に迷惑ばっかりかけちゃっていると、全体の生態系はいいほうには進まないので、人間のせいにしたいわけじゃないんですけど、そういうことをちゃんとみなさんにメッセージとして伝えるためにも、一頭一頭、これはどういうふうに亡くなってしまったのか、その原因は何だったっていうのを整理して、やっぱり人間社会、ちょっとだけ遠慮しようよとか、そういうことを含めて根拠のあるコメントを言えるように、一頭一頭に向き合っていくということを常に感じますかね」
●クジラの骨格標本も展示されている、現在開催中の特別展『いきもの超ワールド展』、今夏休み中ですのでお子さんも多く来場されると思います。総合監修の田島さんから、ここは逃さず見て! というところがありましたら、ぜひ見どころを教えてください。

「見どころは、いろんな人に質問されて考えたんですけど、おそらく今回6つのテーマに分けたっていうことが最大の見どころで、会場に来てくれたかたたちは、“なんでこっちのテーマをピックアップしてくれなかったのか“とかいうかたもいると思うんですよ。
ただ今回は、私が総合監修をさせていただく時に、やはり昆虫から海の無脊椎動物、脊椎動物、大きなものから余すところなく生き物をたくさんご紹介したかったので、その動物たちに当てはまるテーマ決めっていうのがいちばん大変で、それで6つにしたんですけど・・・。
そうすると、その6つすべて実は人間も当てはまることがすごく多くて、人間は全然、別のところから彼らを見るのではなくて、まさに特別展の中の、生き物のワールドの一員として、特にお子さんたちは“自分たちは、どれが当てはまるかな”とか、“自分たちにはないけど、逆に自分たちにしかない“とか、そういう自分と付き合わせたり、比べたりしながら彼らのこと、そして自分たちのことを知るきっかけ作りにしていただけたら、すごく我々一同嬉しいですね」
INFORMATION

上野の国立科学博物館で開催されている「いきもの超ワールド展」にぜひお出かけください。いきものの生存戦略に改めて驚くと思いますよ。展示のひとつに、体全体を迫力のある映像に包まれる空間があって、自分がアフリカの大地や海の中にいるような錯覚を覚えますよ。ぜひ体験してみてください。公式ナビゲーター相葉雅紀さんの音声ガイドもお楽しみくださいね。

開催は10月12日まで。開館時間は朝9時から夕方の5時まで。入場は4時30分まで。入場料は一般・大学生 当日券2,300円。小・中・高校生 当日券600円。詳しくは、特別展のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎いきもの超ワールド展:https://ikimonoworld.jp
2026/8/2 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、筑波大学大学院の助教で、管理栄養士そして日本スポーツ協会公認のスポーツ栄養士でもいらっしゃる「清野 隼(せいの・じゅん)」さんです。
清野さんは山形県出身。スポーツ栄養士として、森永製菓のトレーニング・ラボで、トレーニングや商品開発に携わったあと、筑波大学でコーチング学の博士号を取得。その後、日本オリンピック委員会のハイパフォーマンス・ディレクターなどを歴任。
現在は、栄養を理論から実践に落とし込み、スポーツ選手から一般のかたまで幅広くコンディショニングを支援する活動をされています。
そんな清野さんが監修された新しい本が、登山を栄養学の視点で解説した『山に登るなら知っておきたい〜登山のための食事と栄養〜安全に山を楽しむための栄養学入門』。
きょうは登山の安全対策とも言える「食事と栄養」というテーマのもと、行動食や予備食、冷えや食欲がない時の対処法、熱中症対策、そして下山後のリカバリーについてもうかがいます。
☆写真協力:清野 隼

スポーツウエルネス学とは
※清野さんは筑波大学大学院で「スポーツウエルネス学」を研究されているんですよね。この「スポーツウエルネス学」とは、どんな学問なんですか?
「ひとことで言うと、スポーツを競技力とかパフォーマンスだけではなくて、人がよりよく生きるということに、どうつなげていくかということを考える学問になります。
健康ですとか地域、街づくりですとか、マネジメントとか、幅広く扱っておりまして、私はその中でもスポーツ栄養学やコーチング学を専門にしております」
●スポーツ栄養士のお仕事は、スポーツ選手の栄養管理を専門にされているということなんですか?
「そうですね。広く言えば、もっと一般のかたや健康増進をされているかたもサポートしたりはしていますけれども、主にはそういったスポーツ選手、アスリートを対象としています」
●選手のパフォーマンスにも影響してくる食事ですけれども、試合前と後では食事のメニューももちろん変わってきますよね。
「はい、目的が変わってきますので・・・例えば、試合前ですと力を出しやすい状態を作るために、糖質を中心にエネルギーを取りましょうとか、消化しやすく食べ慣れたものを食べましょう、そういったことが考えられます。
一方で試合後については、いかに消費されたものをリカバリーできるかとか、または水分や電解質などをしっかり早く補給できるかとか、そういった目的に応じてタイミングや食べるものも変わってきます」
●例えば、具体的な食べ物を食材で言うと、どんな感じなんですか? 試合前と試合後では・・・。
「日本人ならではで言えば、試合前も試合後もお米、主食ですね。非常に大事な食べ物になります。両方ともエネルギー源になります。または麺類ですとかパンなども大事になります。
一方でタンパク質源になりますと、終わってからなどは例えば、乳製品ですとか、または食べやすい肉など火を通したものですとか、そういったもので筋肉や疲労の除去、そういったところにつなげられるものを選んだりしています」
●清野さんが栄養士、しかもスポーツ分野の栄養士を目指そうと思ったきっかけというのは、何かあったんですか?
「もともと私も野球をやっていました。実際、肘をけがしたことがあって、リハビリテーションしていたんですけども、母親が非常にスポーツ栄養のことを考えて、台所にいろいろまとめたものを張り出していたんですね。
それを見て、とても興味を持って、支える側にもこういったスポーツの栄養の大切さっていうのがあるんだということを初めて知って、自分も目指してみたいなと思いました」
「食」は登山の安全対策

※ここからは清野さんが監修された本『山に登るなら知っておきたい〜登山のための食事と栄養〜安全に山を楽しむための栄養学入門』をもとにお話をうかがっていきます。
●改めてなんですが、この本のコンセプトを教えてください。
「登山の食を安全対策のひとつとして、準備できるようにするということが、いちばん大きなコンセプトです。
例えば、靴ですとかレインウェアなど、地図や天気予報もそうなんですが、よく準備して登山に臨まれていると思うんですけども、なかなか体の中のエネルギー量ですとか、栄養面といったところまでは見えてきていないのではないかなと思いました。
そういう意味では、空腹ですとか脱水ですとか、足を止めるだけではなくて、思考力を鈍らせるようなコンディション、そういったところもしっかり準備して臨めるように、登山で試せるようにまとめてみたものになります」
●登山の安全対策として、レインウエアとか、そういった装備の準備だったり、天気予報のチェックなどと同じぐらい食事も大事だよということなんですね。
「そうですね。なかなか体内のエネルギーですとか、水分というのは見えにくいもので、気づかないうちに減っているということがあります。そういう意味で行動しながら、計画的に使うという意味では、雨具や靴などとも一緒かなと思います」
●清野さんご自身も登山はされるんですか?
「私は何度か登山やトレイルなどは経験しています。子どもたちと100マイルを歩くような冒険旅を行なったりですとか、自分自身もトライアスロンをよくしたり、そういった野外でのスポーツなどは定期的に行なっています」
●トライアスロンもされるんですか?
「そうですね(笑)。年に1回から2回はレースに出ようと思って頑張っています」

●登山と、ほかのスポーツでは、運動という点でどんな違いがありますか?
「非常に難しいんですけども、やはり何時間も一定の力を出し続けて歩くという登山の特徴があるかなと思っています。
さらに環境面の変化というのは非常に大きいのが特徴かなと・・・。例えば、標高差ですとか気温の変化ですとか、もちろん荷物や足場や、上りと下りなど、かなり環境面に応じて変化する特徴があるかなと捉えています」
●登山も日頃の食事が大事だと思うんですけれども、山に行く前は、特にどんな食事を心がけたらいいんでしょうか?
「書籍の中でもかなり強く書いているんですけども、前日とか、なかなか直前に何か変えようとして、やってしまうというかたもいらっしゃると思うんですね。やはりそうではなくて、普段から三食を整えておくということは基本中の基本かと思っています。
その中で例えば、炭水化物という栄養素は歩くための主要なエネルギーになりますし、タンパク質という栄養素は筋肉や血液など体を作る材料にもなります。登山前というのは、そういった意味でご飯やパン、麺類などの炭水化物を中心に卵や魚や肉や乳製品など、タンパク質源も組み合わせるといいと思います」
(編集部注:先ほどお話に出てきた、子どもたちと100マイルを歩く冒険旅、というのは、実はこの番組にも出てくださった北極冒険家「荻田泰永(おぎた・やすなが)」さんが計画し、子どもたちと一緒に100マイル(160キロ)を踏破する冒険プロジェクトのこと。
2012年から毎年、国内で開催されているこの「100マイルズ・アドヴェンチャー」に、清野さんは2017年と2019年に参加し、栄養士の視点で、子どもたちや荻田さんのコンディションを見ていたそうですよ)

行動食と予備食
※山の専門誌などにも「行動食」、つまり歩きながら食べられる食材の話がよく載っています。やはり行動食って重要なんですか?
「はい、とても重要だと思っています。これも書籍でかなり強く触れているんですけども、行動食というのはおやつではなくて、歩き続けるための補給計画の一部になります。
空腹を感じてから食べると、やっぱりその時点で集中力や判断力も落ち始めていることがありますので、少量をこまめに、できれば時間を決めて摂るというのが基本になるかなと思います。
選ぶ条件なども実はいくつかポイントがあって、もちろん携帯しやすさとか劣化のしにくさとか、あとはエネルギー密度ですね。小さくてもエネルギーがしっかり摂れるような密度の高いもの、あとは本当に自分が食べられる、食べやすいようなもの、そういったものが行動食としては適しているかなと思います」
●夏だと、どんな行動食がおすすめですか?
「夏は非常に食材の劣化も進みますので、傷みにくくないようなそういったものが向いていると思います。暑くても口にしやすいような、例えばゼリー状の栄養食であったり、飴や羊羹やエネルギーバー、それからナッツ、溶けにくい焼きチョコなんかは適しているかなと思います。
一方でおにぎりやサンドイッチといった、いわゆる先ほど行動食のエネルギー源にもなるようなものというのは、非常に便利ではあるんですけれども、保管や消費期限といったところに少し難しいポイントかなというふうにも思います。お腹を壊さないようなものですとか、保管のしやすいようなもの、そういったことも心がけていただくといいかなと思います」
●本に行動食とは別に予備食を持っていくこともお勧めされていました。その理由と、どんな予備食がいいのか教えていただけますか。
「行動食は先ほどお話しした通り、計画的に普段から食べてほしいものではあるんです。予備食というものは予定通り行なわれなかったり、例えば、悪天候になってしまったり、想定外のことが起こった時に備えるものとして捉えていただければと思います。
私も登山をしているときに、けがをしてしまったりですとか、道に迷ってしまったり、そういったこともあって、どうしても行動時間が伸びる可能性があるかと思いますので、軽くて高エネルギーで劣化しにくいようなものを選んでいただければと思います。
例えば、すぐ食べられるようなバーですとか、それこそ羊羹やナッツ、そういった持ち運びしやすいものに加えて、お湯や調理環境などを使える行程であれば、フリーズドライの食品や味噌汁、棒ラーメンなんかも選択肢としてあるかなというふうに思います」
登山もリカバリーが大事
※ここ数年、スポーツ選手の試合後のコメントで、「リカバリー」という言葉がよく出てくるようになったと思います。登山も山小屋に到着したあととか、下山後のリカバリーは大事ですよね?
「はい、とても大切になります。本書では下山直後から段階的に回復させるような流れというのを示しております。まず5分から15分ほどで水分を補って、スポーツドリンクですとか、ゼリーですとか、バナナなどの糖質をまず補給するということをお伝えしています。
胃が落ち着いてきたら、例えば、おにぎりにヨーグルトや牛乳など、糖質とタンパク質を組み合わせて、その後に主食や主菜、汁物などの食事につなげていただくというリカバリーが大事になるかなと思います。
食事だけでなくて入浴して軽いストレッチで整えたり、寝る前に水分と少量のタンパク質をとったりして、山小屋に宿泊するのであれば、翌日の行動まで考えて補給していくっていうことが大事かなと思います」
●いきなり、おにぎりというよりも、徐々に段階を経てっていうほうがいいんですね?
「そうですね。段階的なリカバリーっていうのは、トップアスリートも実施していることです。ファースト・リカバリー、セカンド・リカバリー、サード・リカバリーっていう形で、少しずつ少しずつ、摂るもの飲むもの休むことっていう、そういったものを計画的にやっていくのがポイントかなと思います」
栄養や水分補給の予行演習
※清野さん監修の本の第2章「栄養学の実践的活用術」に山の標高による登山のポイントが載っています。
標高が1000メートル以下のから、3000メートルを超える山までそれぞれ必要な技術などが解説されているんですが、標高に合わせた、事前の、おすすめトレーニングも載っていますので、これから山に行こうと思っているかたは、参考にされてみてはいかがでしょうか。
●事前のトレーニングで、栄養や水分の補給を、どのタイミングで取るかなどの予行演習もやっておいたほうがいいですか?
「そうですね。非常にこれは歩く練習と同じくらい大切になると思います。本番で使う装備、靴やザックや食品、飲料とかそういったものを使って、補給と休憩と、それからペース歩行、そういったものをセットで試していくっていうのが大事かなと思います。
例えば、美味しくても動いた後になかなか食べにくいっていう物もありますし、普段は食べられるのに胃が重くなってしまって、受け付けないっていったものもあります。
できれば、何時にいつ何を食べて、どれくらい飲んだのかとか、そういったものを簡単に記録していくと、自分に合うパターンなんかを見つけられて、本番で初めて食べて、こんなものを食べられない、みたいなことを体験することはなくなるんじゃないかなと思います」
●夏でも標高が高くなれば、気温は下がります。冷えとか食欲がない時の対処法はどうしたらよいでしょうか?
「はい、これはまず、ウエアの重ね着は大事かなと思います。私も体験したことがあるんですけれども、外からの冷えを防ぐのが、まず前提ではあると思います。一方で食べ物や飲み物は、体の内側から温めてくれるものでもありますので、温かい飲み物や食べ物は非常に大切になります。
例えば、インスタントの味噌汁ですとかフリーズドライの食品ですとか、固形のスープや温かい麺などは軽くて使いやすいですので、そういったものをどのように食べることができるかというのを本書でも詳しく説明しています。
よくあるんですけれども、味噌に粉末出汁とかネギやワカメを合わせて、“味噌玉”を作って、それを持って行って、簡単に食べることもできたりしますので、参考にしてみていただけたらなと思います」
●この時期は熱中症にも注意しなければいけないですよね?
「これは難しいですね。気温が高くなったり低くなったりする、とても変化の起こりやすい気候になりますので、水を飲んでいれば安心だというふうに思われるかも知れませんけど、決してそうではなくて(登山の前に)朝食を食べてエネルギーと水分を身体の中に入れて出発することが、まず最低限のポイントになります。
暑い時間帯を避けて計画したり、無理のないペースで日陰で休憩したりですとか・・・。もちろん帽子やウエアや水分、電解質など大切なポイントっていうのは多々あるんですけども、その予防のひとつとして、動いた後に体重の減少をしっかり2パーセント以内に抑えましょうということを本書では訴求しています。
気づきにくい脱水が起こったりしていて、結果的に体重がどんどん落ちているということもあります。それも熱中症につながってしまいますから、こまめに水分をとりながら体重も動いた後、トレーニングした後に測っていくような習慣を作っていけるといいかなと思います。
熱中症予防の観点で体重減少2パーセント以内に抑えるってことですけれども、もちろん登山中に体重を計ることはできませんので、下山後にお風呂に入った後とか、または寝る前とかに体重をしっかり計って、普段の自分の体重との変化というのを比べてほしいなというふうに思います」
山に行く前に、日頃の食事と睡眠
※清野さん監修の新しい本では「栄養学の基礎知識」もわかりやすく解説されています。栄養にはどんなものがあって、どんなふうに体に吸収されるのか、とても参考になります。
●登山に限らず、普段の生活でも栄養の知識を身につけておくことって、大切ですよね?
「もちろん大切です。ただ、選手にもよく話をするんですけれども、毎食の栄養素を細かく計算することは難しいことです。炭水化物やタンパク質などの栄養素がどんな役割を持つかということを知ることが一歩目かなと思います。
そうすると、自分で選んだりとか、自分の状態と対話しながら食事内容を考えたりとか、そういったこともできると思いますので、選択肢を増やすための知識として捉えていただけたらいいのかなと思います」
●この夏、山に行こうと思っているかたに、食事と栄養の面からアドバイスをお願いします。
「山で何を食べるかということだけでなくて、日頃の食事と睡眠から考えてみていただきたいと思います。そして、朝食を食べることですとか、何時ごろ何を補給するのかとか、そういったことも計画して、予備食や下山後のリカバリーまで考えていただけるといいかなと思います。
そういう意味で山に登る時の“食”っていうのは、あくまでも自分の準備のひとつで、身体とそれから装備や環境と一緒にセットで考えていただくものだと思っていただければなと思います」
(編集部注:登山のあとに冷たいビールを飲みたくなるというかた、多いと思いますが、アルコールは利尿作用があるため、脱水症状を招く可能性があったり、睡眠にも影響が出たりするので山では控えたほうがいいということです。
下山後の飲酒もリカバリーを阻害したりと、マイナスの側面があるので、自分の体と対話し、体調を確認してからにしましょう)
INFORMATION
『山に登るなら知っておきたい〜登山のための食事と栄養〜安全に山を楽しむための栄養学入門』
これから山に行こうと思っているかた、清野さん監修のこの本をぜひ参考になさってみてください。「山登りのための栄養学」に始まり、実践的活用術、基礎知識、そして「登山に適した食事メニューとトレーニング」と、4つの章に分けて写真やイラスト、図などでわかりやすく解説されています。
登山の食事と栄養を、安全対策のひとつとして、考えていただければと思います。メイツ出版から絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
2026/7/26 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは麹の専門家、麹文化研究家の「なかじ」さんです。
「なかじ」さんは千葉県香取郡にある、350年以上の歴史を誇る酒蔵「寺田本家」で、「蔵人」として日本酒づくりに携わり、醸造の技術や麹づくりを習得。
2018年からは、家庭の麹づくりを広める「麹の学校」を運営するなど、麹のスペシャリストとして活躍されています。そして先頃、『発酵を考えるヒント』という本を出されました。
そんな「なかじ」さんに日本人の食生活や健康には欠かせないと言ってもいい「発酵」と「麹」について、いろいろお話をうかがいます。
☆写真協力:なかじ

お米に白い毛がふわふわふわ
※「なかじ」さんは1979年、大分県生まれ。学生の頃にバックパッカーとして海外へ。旅に出たのは、地平線が見えない地域で育ったので、地平線とそこに沈む夕陽を見たいという理由で、まずはモンゴルを目指し、その後、中国、東南アジア、ヨーロッパなどを、あしかけ2年かけて巡ったそうです。
そんな「なかじ」さんが、どうして千葉県の酒蔵「寺田本家」で酒づくりに従事することになったのか。そこには不思議な巡り合わせがあったんです。
旅に出る前から民謡や民俗芸能に関心があった「なかじ」さんは、特に日本の各地に残る伝統的な「仕事歌」が好きで、覚えては歌っていたりしたそうです。海外の旅から帰国後、知り合いに連れて行かれたのが、なぜか、寺田本家。
日本酒を造る時の仕事歌を知っていた「なかじ」さんは寺田本家の先代の前で、その歌を披露したところ、先代がいたく気に入り、その冬に始まる酒づくりに誘われ、アルバイト感覚で参加したら、それが仕事になったということなんですね。
当時「なかじ」さんを含めて、日本酒づくりに参加した5人は、なんと、みんな素人。そこでお酒づくりの責任者「杜氏(とうじ)」が作業の合間の休憩時間に日本酒づくりのイロハを、まるで大学の講義のように黒板に書いて教えてくれたそうですよ。
●まずは「なかじ」さんに日本酒づくりの工程を教えていただきました。
「まず、お米を洗って浸漬(しんせき)して、水を吸わせて、そして翌日蒸して、蒸し米ができたら、それを麹にする。3日間、麹にして、そこから酒房(しゅぼう)に発酵する素であったりとか仕込みだったり、大きなタンクに仕込んだりとかっていうふうに割り振っていくって感じですね」
●麹と向き合う日々で、どんな思いが芽生えましたか?
「最初は蒸し米に対して、麹のタネである種麹(たねこうじ)っていう、ふわふわっと目に見えない小さな胞子なんですけども、それを振りかけて3日間、温かい所に置いとくと、蒸し米の表面に白い毛がふわふわふわ~っと付くんですよね。
それを夜、麹室の蓋を開けて覗いてみると、お米の全面に白い毛のような感じがふわふわ~っと生えていて、それを見た瞬間、やっぱり感動しましたね。これが麹なのか! って・・・」
●そうなんですね。で、麹にどんどん魅了されていったという感じなんですか?
「そうですね。もちろん麹だけではなくて、お酒づくりの現場なので、お酒のもろみであったりとか、酵母菌や乳酸菌の活動とか、いろんな菌が働くんですね。今まで菌が働くとか発酵とか、その歳までは人生で意識したことなかったんです。
発酵の現場に入って、目の前で目に見えない菌が動いているのを直に見せられて、お米に白い毛が生えることであったりとか、お酒のもろみ発酵、タンクであれば、お米と水を入れていたものがポコポコって泡が立ってくるとか・・・。
泡が立ってくる現象と同時に良い香りがしたり、フルーツのような香りがしたりとか、舐めてみたら甘くなっていたりとか、五感に入ってくる微生物の命の活動がダイレクトに堪能できるっていうか・・・。
微生物って本当に目の前にいて、こうやって人間に影響を与えるほど生きているんだっていうのをそこで改めて見て、麹やお酒の微生物の活動に感動したっていうのがきっかけですね」
●普段は、なかなか目の当たりにできないですよね?
「そうですね」
●結局、何年ぐらい寺田本家にいらしたんですか?
「8年ぐらいいました」
●麹専門家の原点ですね。

ありがたい「ニホンコウジカビ」
※初歩的なことになりますが「発酵」とはなにか、教えてください。
「発酵って実はその定義は非常に曖昧だったりして、一義的には微生物が有機質を分解代謝して、それが人間にとって有効的であれば発酵、それが人間にとって害があれば、腐敗っていうふうな分け方がありますね」
●確かに発酵と腐敗の違いって曖昧な気もしますけど、有益かどうかっていう違いなんですか?
「いちばん大きな視点としては、まずそこがありますね。でもひとことに発酵と言っても、例えば日本人にとって豆が腐る納豆は発酵と見ていて、日本人が納豆を美味しく食べたり、納豆の香りも日本人は“いい香りだな~”って嗅ぐことができますけども、それが欧米系の人にとっては、大豆が腐るのは腐敗なわけであって、かつ納豆の匂いというものも、なんか嫌な匂いだったりとかするわけですね。
このように文化的な背景とか、あとは知識とか、その人の胃腸の強さとか、許容範囲とかでも違ったりします」
●なるほど。発酵する微生物で、人間に有益なものの代表が麹菌っていうことなんですか?
「そうです。麹もカビなんですよ。麹の和名としての正式名称が『ニホンコウジカビ』っていうんですね。なので、コウジカビであってカビの仲間ですね。カビの仲間なんですけども、日本人とは非常に歴史が長くて、人間にとって有益ないろいろな代謝物を作ってくれるカビです」
●麹菌は何種類ぐらいあるんですか?
「現場でよく使われるのは大きくは3種類ですね。お米を分解するのは『アスペルギルス・オリゼー』、お醤油を造る『アスペルギルス・ソーヤ』、あとは沖縄とか九州で焼酎を造る麹菌があって『アスペルギルス・リューチューエンシス』っていう、この3種類がよく使われていると思います」
●確かにお酒や醤油、味噌を造るのに欠かせないものですよね。用途によって使う麹菌が異なるっていうことなんですね?
「そうですね。麹によって、お米を食べたり大豆を食べたりするときに、まずはお米が好きな麹菌とか、大豆が好きな麹菌とか、その麹菌によって繁殖しやすい環境があったり・・・。繁殖しやすい環境プラス、麹菌のいちばんの特徴としては酵素っていうのを出すんですよ。
酵素は、人間で言うところの唾液とか腸液とか・・・人間もご飯を食べて唾液で溶かして飲み込んで、腸液でご飯のでんぷん質を溶かして、ブドウ糖にして細かい単位にして、腸の壁から吸収することで栄養にすることができるんですね。
いろんな食べ物、ご飯だったりお肉だったりを分解して細かくしてくれるものが、酵素っていうものなんですね。生物はみんな持っているんですよ、この代謝する酵素っていうのを・・・。人間の体外で微生物が分解してくれる時に使うのが菌の出す酵素。
やっぱり麹菌はこの酵素をたくさん持っていて、人間の生活圏で必要な酵素を、だいたいほぼすべて麹菌は持っているって言われています。なので、麹菌はこの酵素が非常に豊富で、量の多い菌のひとつなんですよね」

「麹」から作られたものが和食
※「麹」は、日本の国の菌「国菌」に認定されているそうですね。それほど、日本人には重要な菌なんですね?
「そうですね。日本の和食、日本人たるアイデンティティとして、まず和食があると思うんですけれども、この和食の基本調味料があるんですね。
食文化は、日本だったり中国だったり、イタリア、フランスとか、いろんな民族のいろんな地域にその民族特有の食文化があって、その食をずっと小さい頃から食べていて、それで自分たちはこういう国の人間なんだなって認識していくと思うんです。
和食の場合はその基本調味料に味噌、醤油、お酢、お酒、みりんがあると思います。この基本調味料が全部、麹から作られているんですよ」
●確かに、そうですね。
「ということは、和食は麹から作られているんですね。麹から作られた基本調味料、それを海の魚とか山のものとか野菜に使って調理したものが、“和食”って定義できるわけですよね。
それを食べているのが“日本人”なので、日本人は和食の基本調味料、味噌、醤油を通して、ずっと麹を摂取し続けてきた民族と言えるんですね」
●なるほど。海外はどうなんですか? 麴菌は?
「カビ食文化はあるんですけども、麹菌はいわゆる単菌で、一種類の菌アスペルギウス・オリゼーだけを使うことはあまりなくて・・・。
もちろんアジアにもカビ食文化っていうんがあるんです。それが朝鮮半島だったり中国だったり、あと東南アジアにも多様なカビを培養して、それで味噌のようなものとか、お醤油やお酒を造るっていうカビの文化圏はあります。もっといろんな違うカビだったり、雑多なカビを使ったりするんですね。
ヨーロッパに行くとそれが酢酸菌だったり、ピクルスとかザワークラウトの酢酸菌だったり、ヨーグルトを作る乳酸菌だったり、あとはエジプトにもあるようなビールの酵母菌だったり・・・。
その民族の収穫した穀物の種類とか、あとはそこに住んでいる地域の環境温度や湿度によって、どういう微生物が優位に繁殖しやすいのかが変わってきて、それで民族ごとに使っている穀物と微生物がだんだん決まってきます」
●麹の発酵は、日本人の知恵と言っていうことですよね?
「そうですね」
●すごいことですよね。日本人が麹菌の存在に気が付いて、それを発酵させて食べるものに生かすようになったのは、いつ頃だったんですか?
「史実で残っている範囲で奈良時代700年代ですね。600年後半から700年代って言われていて、奈良の平城京の周りの木簡からお酒を造っていた記述が出てきたりとか・・・。
あとは、いろんな地方の風土記、その国の風土を書き残した文献があるんですけれども、『播磨の国』風土記にもお米を蒸して潰して、お餅にしたものを神様にお供えして、そのお供えしたものに自然に生えてきたカビ、そのカビを壺に投げ入れて発酵させてお酒を造って、それをみんなで呑んで楽しく酔っぱらって騒いだっていう記述があるくらいなので、700年代頃にはすでに記述としてカビを使っていたっていうのが残っています」
日本の発酵文化、膨大な情報量

※ここからは「なかじ」さんの新しい本『発酵を考えるヒント』について、お話をうかがっていきます。まずは、どんなコンセプトで書かれた本なのか、教えてください。
「僕は麹がすごく好きで、麴のことをいろいろ勉強してきたんですけれども、麹のことを知りたいなって思って、日本のいろんな麹、味噌屋さんとか酒屋さんとかいろんなところを訪ねていくと、実は麹であったとしても、日本酒の酒屋さんが作るる麹と、味噌屋さんが作る味噌の麹、醤油屋さんが作る醤油麹、焼酎屋さんの焼酎麹とか、麹でもたくさんあるんですよね。
なので、麹の世界もすごく膨大で、僕は酒屋から入ったので米麹を作るんですけども、別の専門家では麦を作る麦麹の職人さんがいたりとか、大豆で作る豆麹の専門家がいたりとか、それぞれの職人さんがいます。
その職人さんは一生かけて、その技術を磨いているわけですよね。またそれを研究している研究者のかたもいます。
麹菌の研究をする研究者とか、醤油の研究者とか味噌の研究者のかたがいて、それぞれがずっとそのことを研究していて、新しい技術や発見を発信し続けているんですよ。
すると、麹のことに限っても僕ひとりですべての、日本の麹文化を把握することが無理な情報量が毎年のように発信されているんですね。なので、自分だけで勉強したいとか、自分だけで勉強したりとか、自分の経験だけで知ろうと思っても無理だなって思っています。
最近、発酵がメディアとかSNSとかで注目されてきて、日本の発酵文化も世界的に注目されているんですね。これを発酵っていうふうに広げてみても、日本の中にはいろんな発酵文化があって、いろんな発酵の分野、それこそさっき言ったように職人さんもいるし、専門家もいるし、研究者もいるし、その周りの発酵系のメディアのかたとか情報発信されているかたもいて、膨大な情報量が日本の発酵文化の中にはあると・・・。
日本の発酵文化って何だろう? って思った時に、その全体像に触れられる人がいない、それぞれがその分野の専門家ではあるんですけれども、全体像を把握出来ている人は誰もいないんですよ」
●なるほど。
「なので、この本を通して、まずそれぞれの専門家にその専門の道の発酵を聞いていきたいと・・・ひとりではわからなかった知見や情報を長年研究されてきたとか、長年携わってきた職人さんに、その視点でその人の分野の発酵を教えてもらおうと・・・。
その情報を一冊に集めることによって、日本の発酵文化の輪郭をまず知りたいっていうのが、この本のきっかけです」
(編集部注:「なかじ」さんの本に登場する専門家9名のかたの中には、以前この番組にご出演いただいた発酵デザイナーの「小倉ヒラク」さんや土の研究者として知られる「藤井一至」さんのほか、600年続く種麹メーカーの29代目当主「村井三左衛門」さん、腸内細菌研究の第一人者「内藤裕二」先生も登場。
各分野の専門家との対話に、日本人の知恵や食文化、そして発酵や微生物の奥深い世界を感じ取ることができますよ)
麹をポケットで作る!?
※本に「ポケットで仕込む麹の作り方」が載っていました。そんなことができるんだ! とちょっと驚いたんですけど・・・どんな作り方なのか、かいつまんで解説していただけますか。
「これは蒸米に先ほどいった麹菌のタネをふりかけて、それを食品用のビニール袋で包んで封をして、自分のポケットに入れるんですよ。そして自分の太ももで温めて3日から4日で麹を育てるという方法ですね」
●すごいですね。人の体温は麹を作る上で、適温ってことなんですか?
「実は麹菌が成長する最も適温が約35度なんですよ。人間の体温は36度から37度なので、人間の体温で温めていくと、麹菌にとっていちばんの成長適温になるんですね」
●ポケットの中で育つって面白いですよね。
「結構よく育つんです」
●寝る時も寝床に持って行くって、本にも書かれていましたけれども(笑)
「そうですね。一緒に寝ます(笑)」
●夏休みの自由研究とかにもいいですよね。
「そうですね。ラジオを聴いているかたに補足をしておくと、ビニール袋に入れて温めるだけだと、酸欠になって(麹菌が)死んでしまうので、基本的には人間と同じような環境だと思っていただいて、たまに(ビニール袋の)口を開けて、新鮮な酸素を補給してあげるってことを3日間続ける必要がありますね」
●詳しい作り方は、本で確認していただきたいと思います。「なかじ」さんは普段の生活でも麹とか発酵に向き合っていらっしゃるんですよね。具体的には何か考え方とか生活の基準に発酵があったりするんですか?
「そうですね。寺田本家の先代に教わったことってすごく大きくて、いちばん衝撃だったのは、酒屋さんの技術的な発酵っていうよりも、先代の社長が会社経営に発酵的な視点とか、街づくりを発酵的な視点で考えていらして・・・。
会社っていうと、いかにビジネスとして、うまくやっていくのかとか、成功するのかとか、お金儲けってことを考えがちってあると思うんですけど、寺戸本家はお金を儲けるとか、ビジネス的にうまくいくとかっていう視点じゃなくて、いかに発酵させるかみたいな価値観で運営されているんですね。
その時に結構、衝撃を受けて、発酵は食品だけじゃなくて、人間が生きる方向性としてうまく活かせるとか、成功するとかじゃなくて、発酵するっていう言葉で考えて、どっちの方向に行ったら発酵するかなとか、どの選択が発酵するかなっていう言葉で考えるとうまくいくんだ! みたいなのを、まざまざと見せつけられて、それがすごく自分の中で価値観が変わりましたね」
●この本『発酵を考えるヒント』や今後の活動を通して、どんなことを伝えていきたいですか?
「まず生活の中に発酵を取り入れるっていうこと。それを通して見えない命が自分たちを活かしているんだってことを体感してほしいなって・・・そのきっかけに発酵がなれたらな嬉しいなって思いますね」
●では最後に「なかじ」さんにとって発酵とは?
「生きる指針、ですね」
INFORMATION
「なかじ」さんの新しい本をぜひ読んでください。私たち日本人の食生活や暮らしに根付く「発酵」を、いろんな視点で見つめ、その歴史や不思議を紐解いた「発酵のエンサイクロペディア」とも言える本です。先ほどお話にあった「ポケットで仕込む麹の作り方」も載っていますよ。ご家庭に一冊、この『発酵を考えるヒント』はいかがでしょうか。
エクスナレッジから絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎エクスナレッジ:https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767835600
「なかじ」さんが運営されている、ご家庭に麹を広める「麹の学校」についても詳しくは、オフィシャルサイトを見ていただければと思います。
2026/7/19 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、番組の恒例企画! アウトドアズマン「清水国明」さんの定点観測です。
清水さんは、1970年代から80年代にフォークデュオ「あのねのね」、そして芸能界で大活躍! その後、オートバイのレースに挑戦、鈴鹿8時間耐久レースに出場し、完走。
90年代からは、アウトドア活動に夢中になり、河口湖に「森と湖の楽園」、瀬戸内海の無人島「ありが島」に自然体験施設を開設。ほかにも茨城県常総市にキャンプ場「くにあきの森」を整備するなど、実業家として、いろいろな事業を手がけていらっしゃいます。
清水さんには毎年ご出演いただき、その時、どんなことに夢中になっているのかをお聞きする定点観測をさせていただいているんですが、今回でなんと31回目! つまり、30年以上にわたって、この番組とお付き合いいただいているんです。
去年は私、小尾が産休に入っていたので、代わって、同じ事務所の難波遥ちゃんにインタビューしてもらいました。なので、2年ぶりにお話をうかがうことになるんです。
きょうは、瀬戸内の山口県周防大島で取り組んでいるウイスキーづくりや、去年設立した一般社団法人「つながり応援」の活動のことなどうかがいます。
☆写真協力:kuniaki.plus

瀬戸内アイランドウイスキー、ミズナラの樽
※それでは早速、お話をうかがっていきましょう。
●まずは、この話題からおうかがいしたいんですけれども、清水さんは今年の1月に「瀬戸内アイランドウイスキー株式会社」の代表取締役に就任されました。おめでとうございます!
「ついにお酒をつくることになりましてね。ウイスキーの会社、瀬戸内アイランドウイスキーというので・・・ただ、ウイスキーね、あんまり飲まないんですよね(笑)」
●え〜〜っ!(笑)
「美味しいとか美味しくないとかってわかります? ウイスキー。どれも似たようなもので、ピリッとくるし、キリッとくるしと思ってたんですけれども、周りにウイスキーの大好きな人がおって、やろうよ、やろうよと・・・そうするとすぐ首突っ込むというか、担ぎ上げられるというか、気がついたら、またそこもやることに・・・」
●また新しい事業を始められたということですね。
「そうですね。今お世話になっている周防大島町では、蒸留所というのは初めてだったんで、場所を借りたりするのも、結構みなさん協力的で、ありがたいです」

●山口県周防大島に蒸留所があるということですね?
「そうですね」
●ウイスキーっていうと北海道とか山梨とか、寒い地域で醸造されているのかなっていうイメージがあったんですけど、瀬戸内でも作れるんですね。
「ええ、瀬戸内でも、というか、瀬戸内だからこそ、いいというね。っていうのは、台湾のウイスキーが今、賞を総なめにしているんですね。コンビニにも置いてあるような手頃なやつとか、すげえ高いのがあったりする・・・そういう台湾での蒸留、それから熟成ですね。
熟成がやっぱり温暖な気候が合うという、っていうことは、周防大島も瀬戸内のハワイと言われているところですから、これはバッチリじゃないかということで・・・。

場所的には今、体育館をお借りして、でっかい体育館の中にポツンと蒸留機が ひとつ置いてあるんですけれども(笑)、今それに付随施設をどんどん作っているところなんですね」
●もともと清水さんは、周防大島とのつながりがありましたよね。
「もう10年くらいかな。だから町も大変期待してもらっていますし、協力してもらっています」
●「瀬戸内アイランドウイスキー」で醸造するウイスキーには、どんな特徴があるんですか?
「私が代わりで、初代の社長から代わって真っ先にやったのは、ウイスキーってのは樽が命なんですね。カスクというね。それでその樽は国産のミズナラという、これがいちばんいいらしいんですけども、そのミズナラを伐採するという作業からやりました。
私は社長として、まず北海道の旭川の山に登りまして、チェーンソーを持って行ってミズナラを伐って・・・で、それを乾燥させて、樽を組む。新樽ですね。それにウイスキーの原酒をどどどっと入れると、もう香ばしいというか奥ゆかしいというか、ミズナラのエキスが出るという、そんなことをやりましたですね」

カスクオーナー制度、こだわりの水
※「瀬戸内アイランドウイスキー」ではウイスキーを熟成させるための木の樽「カスク」をまるごと買っていただくという販売方法をとっているそうです。そのあたりの説明をしていただきました。
「カスクオーナー制度っていうのをやっていまして、一瓶二瓶じゃなくて、樽ごと買ってよってお願いして・・・そうしたらカスクオーナーになってくれる人たちが、私の周りの人ばっかりだから、結構著名なかたとか経済界のトップレベルの人がどんどん買っていただいて、もう12樽売れましたですね、本当に。
その樽から400本取れるんです。700ミリリットルって言うのかな、普通のボトルね。実は正確に言うと268本しか取れないんです。樽からね。それは63度っていう強い酒が出る。
そのままだったら喉が焼けますから、加水って、水を加える。その水はいい水を使いたいんで、そのオーナーのかたがいちばん勧める水、もしくは生誕地っていう、その人の生まれた地域の水を使う。そうするとその人、独自のお酒になるんですよ」
●すごい! 特別なお水を使われるんですね。
「そうですね。ご存知ないかもしれませんが、私、清水という名前なんでね」
●存じ上げております(笑)。
「福井県の山奥の湧水育ちだったんで、家の横の谷のところに、ポコポコポコってずっと出ている湧き水を台所まで引いてきて、ずーっと流しっぱなしなんです。その水がやっぱり、気が付きませんけど、それで育つとやっぱり美味しいんですよね。
たまに帰って飲んだりすると、本当にこれは美味しいなって・・・そのぐらい生まれたところの水がその人にとってはいちばん美味しいし、その水でウイスキーを薄めると言ったらなんですけど、加水して43度にする。それでボトリングして、そうすると400本取れるんです。一樽でね。はい、そんなことやっています」
●上質な水を使うというのもこだわりなんですね。
「そうですね。日本の国産のミズナラの樽で、上質のこだわりの水でつくる。そしてさらにその中に、例えば桜のチップを入れたりですね。3年間熟成するんで、その間に通って試飲しながら、もうちょっとこんな味にしようとかって言ったり・・・。
今おひとかた、宇治のお茶屋さん、抹茶とか作っている人がその抹茶を入れようという話で、抹茶ウイスキーっていうやつで、今ちょっと流行っているらしいね、抹茶がね」
●いいですね!
「そんな遊び心もいっぱいのウイスキー、しかしその人の独自のオンリーワンな400本。で、これはもう言ってもいいんですけど、HISの澤田さんっていう創業者の『澤田ウイスキー』ってやつなんですよ。
ほかに、井川さんというかたは『井川ウイスキー』とかね。そのウイスキーを飲みながら、その人のことについて語るという、そういうシリーズなんです、これは。
ですから、このウイスキーは、その方のウイスキーというふうに紐付けて、いわゆる『リメンバーミー・シリーズ』というウイスキーにしているんです」

(編集部注:清水さんによると、カスクオーナーになると、周防大島にある蒸留所の視察や、ウイスキーの熟成度を確かめる試飲のほか、リゾート・アイランド「ありが島」で釣りを楽しみ、釣った魚をさかなにウイスキーを味わうなどの特典があるそうです。
この9月から、カスクオーナーや関係者を招いたツアーをどんどん開催していく予定とのこと。世界のひとつだけのウイスキーを所有する特別な体験ができる「カスクオーナー倶楽部」へのご入会、ぜひご検討くださいとのことですよ。
詳しくは「瀬戸内アイランドウイスキー」のオフィシャルサイトをご覧ください)
☆瀬戸内アイランドウイスキー:https://setouchiwisky.com
周防大島、深く付き合うと、面白い!
※清水さんは周防大島とのつながりが、ますます太くなっていますよね?
「ご存じないかもしれませんが、私は芸能人だったころ(笑)、今でも多少、芸能人ですが、芸能人って、いかに全国ネットかっていうことで、浅く広くをテーマにしとるんですね。
ただ、なんか周防大島というところにつまずいてしまって、ひっかかってポテッと倒れて、その人たちに助けてもらって、深く深く付き合っていくとすっげぇ面白いですよ。上っ面だけで全国を走り回っていたのかな、もったいないな~と。
一か所に留まって深くすると、何が違うって、いろんな仕事を頼まれるんですよ。ここの草刈してくれとかね(笑)。
廃校になったから、そこをなんとか活性化したいっていうので、やりましょう! ということで、先ほどのウイスキー工場も廃校だし、『ワーケーションビレッジ』っていう、スタートアップする人たちを応援するのも、5Gを使って、どこにいても仕事ができるということで・・・。
そういうようなお仕事とかライフスタイルとか、健康寿命を延ばすというような取り組みがそこでだったらできる。この付き合い方をこれからは(やっていきたい)。今、常総市という所にもキャンプ場を作って、茨城ですけれども、その次はニセコに今拠点を持とうとしています」
●すごいですね。
「ニセコ面白いですよ。今そんなことをやっています。きっかけは周防大島で、どっぷり浸かってみると全然違った魅力が見えてくるし、まあ田舎やから、僕も田舎もんやから言うけど、田舎の独特のいやらしさもあるんですけどもね(笑)。でもそれに慣れてくると、こんな心地いい所はないですね」
●周防大島の魅力を知れば知るほど、発信したいという気持ちも強くなってくるんじゃないですか?
「確かに、僕らは外から行った人間だから、その魅力がすごく明確にわかるんですね。そこに住んでいると、(地元の人は)“こんなとこ”って、自分を卑下したりしますけれどもね。
“これ凄いですよ! この海の色は最高!”とか“ガードレールの色がいいですね”とか・・・周防大島は、ガードレールの色がミカン色なんですよ。そこまでやるか、とかいって・・・全国どこへ行ってもガードレールはオレンジだ! ってみんな思っているんですけどね。いや、そんなことない(笑)。
釣り人、漁業組合に僕も入れてもらって、そこの仲間といろいろ話ししていると、釣りの奥深さというのかね。海の中の岩のありかとか、そんなことを・・・面白いですね」
>つながり応援、ライフワーク
※清水さんは 去年、設立された一般社団法人「つながり応援」の理事長としても活動されています。この「つながり応援」は、どんな目的で設立されたんでしょう?
「これは、地域の発展に寄与するということで、SNSとかそういうITを使ってですね。スマホを使って自分の好きな施設であるとか、お店とかを発信してもらう。
つまり、地域の企業とかお店が元気にならないと、その地域は元気にならないので、上から、例えば、行政の人とかお偉いさんが、“みなさん頑張りましょう!”って言うよりも、地域のひとつひとつのお店とか、みんなの活動、施設を応援することによって、そこが盛り上がってくるんじゃないかという、思いつきの発想がありまして。
最初は沖縄をやりました。それから周防大島のある山口県もやりました。宮城をやって、今は愛知県をやっています。すごい数の“アンバサダー”という、そういう地域を見つけて発信する人たちが、地図にポイントがいっぱいあって、まっ赤っかになるくらい、今いろんなところを発信して紹介してもらっている。それが活動のメインなんですけど、いろんな所でイベントやったりライヴやったりしながら、やっています」
●去年、周防大島で開催された町をあげての大イベント『つながり祭り』も、その一環だったっていうことですか?
「そうなんですよ。ところが周防大島、どこでもそうですけれども、人口が減ってね。“こんなところでお祭りやったってね(集まる)人が30人くらいかな”って町の人が言っているんですよ、役場の人がね。
それが我々の『つながり応援』の仲間の力でもって、SNSとかでいろんな発信したら、その島始まって以来の1600人が集って・・・30人が1600人だからね」

●すごいですね!
「地域の人も“何が起こったんじゃぁ~”というくらい、駐車場もいっぱいで、漁業組合長とか町長が駐車場係をしてくれましたけどね(笑)。これはSNSの力っちゅうかね。
仲間の清水アキラとか、いろいろ演歌歌手の人もボランティアで来てくれて、全員ボランティアでやっているんです。この『つながり応援』自体が県や町からお金をいただいているわけではいっさいないです。
全員がボランティアですから、私もボランティアですから、もうたいへん、台所(事情)がほんとうに交通費も出ませんから・・・けど、やって、そこでのつながりがどんどんどんどん広がりますから、それでなんとか生きているというような感じです。
それと今までやってきた宮城からホタテをいっぱい提供してもらったりと、そういうお互いのつながりで・・・。
僕がやっている防災(活動)もやっぱりつながりによって支え合うという、自助、共助、公助っていうけれども、友助っていう友達を助けるっていう気持ちで、友達のつながりがあれば、見捨てないじゃないですか。そういう意味でそういうつながりというものは、やっぱりこれからもずっと未来にも必要じゃないかなと思ってやっているライフワークですね
離島のつながり応援、遠隔医療
※今年、一般社団法人「つながり応援」として特に力を入れていくのは、どんなことですか?
「これはやっぱりSNSでみなさんに発表すると同時に、集まっていただいて、みんなで“つながりって大事だな”とわかってもらえるようなライヴ活動をやっておるわけです。
去年は『つながり旅』という全国旅やりましたけれども、今年はこの『つながり応援』の中で、離島ですよね・・・日本には『国境離島』といって離島が国を守っているという考え方もあるらしくて、離島を回りながら、みなさんに“離島はいいところですね。頑張ってくださいね“っていうようなつながりをひとつの柱としても、やっていきないなと・・・。
これ、話がそれるかもしれませんが、離島にいても、東京とか大阪とかの大都会のお医者さんとダイレクトにつながれるような遠隔医療とかもやっているんですよ。また話が複雑になってきている・・・(笑)。
遠隔医療のインフラって言うのが日本ではいちばん遅れているんですよ。電気や通信、道路と、そういうのは行き渡っているけれども、お医者さんを離島に連れてきても、みなさん早く帰ろうとされるし、専門医じゃないから、結局無理があるわけですよ。
ところが8Kという映像と、私がやっている5GというのとAIというので、映像をバチッと撮って、瞬時に送ってAIで解析するという遠隔医療を、今この事業と同時に進めている。そうすると、どこに住んでいても最新の最高の医療が受けられる。
僕は田舎暮らしとか自然暮らしを勧めているんですけれども、歳をとってくるとやっぱり不安でみんな都会に戻ってしまうんですね。いや~もったいないな~と思うんですけど、不便なのは納得ずくって行ったんだから、不便でいいんやけど、医療だけはお医者さんだけは、不安なんやろうね。やっぱり足腰がだんだんきつくなってきて・・・。
でもそんな時に家に8K映像を映すものがあって、8Kというのはものすごい映像ですからね。それとAIによって解析するという、そういうことも、今、全国ツアー『つながり応援』をやりながら、ただ“頑張ってね”って言うだけではなくて、そういった施設でつながって、みんなに長生きしてもらって健康寿命を延ばす。
命の格差があるんです。場所によって、医療を受けられるか受けられないかっていうのは、これは結構重要な問題で、そんなことも取り組み始めているというところであります」
(編集部注:現在、複数の会社を経営されている清水さんなんですが、ほかにもゴルフ学校や介護用AIロボットなどの事業も検討されているそうです。
清水さんの原動力は「挑戦する」ことにあるんでしょうね。来年は「言っていることが違うかも知れないけどね」と笑っておっしゃっていましたが、次回、32回目の定点観測を楽しみに待っていたいと思います)
INFORMATION
「瀬戸内アイランドウイスキー」のカスクオーナー倶楽部ほか、リゾートアイランド「ありが島」や茨城県常総市にあるキャンプ場「くにあきの森」の最新情報、そして一般社団法人「つながり応援」の活動など詳しくはそれぞれのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎瀬戸内アイランドウイスキー:https://setouchiwisky.com
◎くにあきの森:https://www.kuniakinomori.com
◎一般社団法人「つながり応援」:https://www.tsunagari-ouen.jp
2026/7/12 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第28弾! 割り箸のアップサイクルにフォーカス! ゲストは「ChopValue Japan」の代表「山上剛史(やまがみ・たけし)」さんです。
今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から、「つくる責任 つかう責任」そして「陸の豊かさも守ろう」。
「ChopValue」はカナダ発の循環型製造企業で、使い捨ての割り箸を資源として回収し、家具やインテリアなどに生まれ変わらせる事業に取り組んでいます。
きょうは、廃棄物として扱われている使い捨ての割り箸を回収する仕組みづくりやアップサイクルさせる製造工程、そして製品の特徴などうかがいます。
☆写真協力:ChopValue Manufacturing Japan

創業者は木工職人
※ChopValue Japanは、使い捨て割り箸を資源として回収し、家具やインテリアなどにアップサイクルする事業を展開している循環型製造企業、ということなんですが、本社はカナダのバンクーバーにあるんですよね。
「そうですね。カナダで2016年に起業した会社になります」
●どなたが創業されたのですか?
「フェリックス・ボックといいまして、ドイツ人なんですけれども、カナダで仕事する縁がありました。もともと彼は木工職人だったので、『ChopValue』というビジネス・アイデアを考えて、で起業したという歴史になります」
●フェリックスさんがどんな思いで創業されたのか、ご存じですか?
「(フェリックスは)木工職人として木を専門に、大学まで卒業して、もともとはドイツの高級自動車メーカーの内装材の開発エンジニアとして活躍していたということです。
ひょんな縁でカナダに渡った時に、フードコートのレストランでお箸を使う機会があったそうです。自分はこの15分でこの箸を食事が終ったら捨てちゃうんだと・・・木を扱う職人として、これでいいのか? っていうところにいきついて、自分の技術を持ってすれば、この割り箸をアップサイクルし、素晴らしいものを提供できるのではないかと考えたのがきっかけだそうです」

●なるほど。その思いが反映されているのが社名のChopValueということで、“お箸には価値がある”ということなんですね。
「そうですね。職人なので、まさに製造の最初の工程からすべて立ち上げたのがフェリックスになります」
●日本食が世界的人気だと思うんですけど、カナダにもそういった割り箸の文化はあったんですね?
「カナダの状況を聞くと、多民族国家ということではなくて、いろいろな国のかたがカナダでお仕事をされていたり、お住まいになっているというところで、非常に興味を持って、実際にアジアン・レストランとかで割り箸を使う機会が多いということです」
●日本支社のChopValue Japanが設立されたのは、いつ頃なんですか?
「創業自体は2024年12月なんですが、工場がオープンしたのは2025年4月になります」
●ChopValueは、世界的に展開されているんですよね?
「そうですね。今はオフィスだけのものを入れれば、13か国で展開しております」
●拠点で言うと、何か所くらいになるんですか?
「今、工場が80ヶ所以上、できていますので、世界中に展開しているところです」
●すごいですね。やっぱり日本はお箸を使う文化がありますし、割り箸もたくさん使われていますから、日本に拠点を作るのはすごく理にかなっていますよね?
「おっしゃる通りなんです。ですから、フェリックスは早く日本にローンチしたかったのですが、先ほど言った海外ではゴミはゴミですから、勝手に持って行くのも “as you like”という感じでやれたものが、日本はどうしても“きれいな国、仕分け、リサイクル”が発達している所ですから、廃棄物及び清掃に関する法律、いわゆる『廃掃法』というものにかなり縛られます。
だからこそ、街はきれいなんですけれども、この法律があるからこそ、勝手に我々が(割り箸を)集めたりすることができなかったんですね。そういう難しい法律的な局面もあったので9カ国目になってしまった。割り箸の宝庫ではあるものの、日本へのアプローチができなかったっていうのが、フェリックスの本音だと聞いています」
●日本では、年間どれくらいの割り箸が廃棄されているんですか?
「年間で言うと200億膳というふうにも言われています。途方もない数字ですよね。みなさん15分くらいお箸で食事されたら捨てているんですね」
●使い捨ての割り箸は、現在は焼却されているっていうことですよね?
「そうです。家庭のゴミであれば、燃えるゴミで、みなさん捨てていらっしゃるでしょうし、事業、要はオフィスとかで出るゴミでしたら、一般廃棄物として、事業系ゴミとして持って行ってもらっていると思うんですね。各企業さんが事業廃棄物を処理する免許を持ったかたと契約して廃棄していると思われます」
(編集部注:山上さんのプロフィール的なことに少し触れておくと、山上さんは元航空自衛官で防衛省に勤務。世界を相手に仕事をされていたそうですが、家族の事情で退官。その後、起業し、いくつか会社を経営。
そんな中、どうしてChopValue日本支社の代表をやることになったのか・・・実は山上さんは、川崎市のお困りごとを解決するコンサルタントの仕事もやっていたそうで、ある時、川崎市から、こんな面白い企業があるよとChopValueを紹介され、コンサルの立場で事業がうまくいくように手伝っていたそうです。
そんな折り、創業者のフェリックスさんから日本支社の代表になってほしいと頼まれ、海外と仕事をしていた山上さんとしては、これはチャンスだと思い、引き受けたということなんですね。
ChopValue Japanの工場は山上さんとのご縁もある川崎市に開設。川崎市は脱炭素にも力を入れているということで、そんな自治体と一緒に事業を進めていきたいという、山上さんの思いもあって、川崎市に工場を作ったそうです)
「廃棄物」を「資源」に
※ここからは事業内容について、具体的にうかがっていきましょう。まずは、使い捨ての割り箸の回収についてなんですが・・・
廃棄される割り箸を資源にするためには、廃棄物を回収して処理する自治体への申請が必要だったりするんですよね。これはまず、川崎市に申請したってことですか?
「そうですね。川崎市もすぐには認められない。要は今までは廃棄物として分類していましたから、これを“資源です!”と我々がいくら言っても、認めていただけることにはならないので、川崎市としては、1年間『試験研究制度』っていうのを使って、実際に“これは廃棄物じゃありません”ということを証明するための取り組みを、市と一緒にやらせていただきました。
その試験研究制度において、実際に(割り箸を)回収してアップサイクルをして世の中に製品としてお戻しをするっていう、ChopValue社だけができる独自のフローがあると思うんですね。それが“廃棄物じゃないよ!“っていう証明をするのに、いろいろな条件があるんですけれども、技術的にそれができたとしても、世の中に認知されて戻っていかないと意味がないんですね。
例えば、我々が割り箸を集めたから、それをテーブルにしました。そのテーブルを誰も買ってくれなかったら、ただ単純に割り箸を集めているだけになってしまう。これは廃棄物の域を脱しないわけですね。
そこでこの一連のフローを試験研究制度を使って、実際に割り箸を集めさせていただけるレストランとか企業様があるか、それを加工して実際にそれが売れるかどうか、この一連の流れを試験研究でやった時に、今は約60店舗くらいの飲食店が、川崎市に協力してくださり、割り箸を提供してくれています」
●確かに飲食店の協力って欠かせないですよね。
「そうですね。割り箸がないと何も始まりませんので、そういう意味ではいちばん最初に入り口は(割り箸の)回収パートナーを見つけることです」

●60店舗ほどおっしゃっていましたけど、だいたい(集める)量はどれくらいになるんですか?
「現在、週で約250キロくらい集めていますね。ですから1ヶ月では1000キロ集めているんですけど、まだ2倍くらいまで集められるので、あと2倍にしたいなと思っています」
●ということは、店舗数を増やしていくっていうことになるんですか?
「そうなんですよ。先ほど言った200億膳というものが、例えば10%リサイクルできたとしても、ざっと簡単に試算すると、日本に100カ所くらい工場がないとアップサイクルが完成しないんですね。
ですから、川崎だけのキャパシティではとても追いつかないので、今はいろんなパートナー企業様も増えてきましたし、このコンセプトを一緒に取り組んでくださる企業様と2号店3号店を作るような話も計画しています」
環境に配慮した特殊な技術
※続いて、製造工程について、教えてください。ChopValueでは使い捨ての割り箸を原材料に、家具やインテリアなどを製造されていますが、どんな工程を経て製品になるのか、ざっとで構いませんので、その流れを説明していただけますか?

「まず、レストランから集めてきた割り箸をきれいに並べます。ラジオなので製品をみなさんにお見せできないのが残念なのですが、割り箸をきれいに縦に並べていくんですね。
割り箸も4種類くらい日本にはあって、みなさんがよくイベントとかで見るちょっと軽い、割れ方を間違えちゃうと、ささくれちゃうやつ。あれは“アスペン材”と呼ばれる木なんですけれども、日本特有のちょっと安いリーズナブルなお箸なんですね。
それと、今みなさんがコンビニでよく見る箸は竹なんです。きょう帰ったら割り箸を見てください。竹に代わりました。“あれ! そういえば確かに割り箸の種類、コンビニでは変わったな”と気づかれると思います。
竹って“破竹の勢い”という言葉がある通り、成長するのに約5年で成長しきるんですね。ですからリサイクル効率が良いということで、今、竹製品が見直しをされています。
割り箸も実は木材であるアスペン材を使うより、竹のほうがリサイクル効率がいいということで、今結構いろいろな割り箸を作る会社さん、使う会社さんも竹に代えてきているところなんですね。
あとはスギやヒノキといった高級なお箸は、例えば結婚式で使ったりとか神事で使ったりとか、そういったことのスギやヒノキの箸は一定程度(全体の)5%ぐらいはありますけれども、95%の割り箸は竹かアスペンなんですね。
我々が集めてきた(割り箸は)竹は竹、アスペンはアスペン・・・飲食店では基本的に一種類、同じ箸を使っていますから、その飲食店ごとに集めてきたものを並べて、特殊なレジンと呼ばれる接着剤、我々独自の接着剤に浸す。それを今度は乾燥工程を経て、高温乾燥を10時間くらい経て、あとは特殊なプレス機でプレスをして板材を作っていきます。

そのタイルを削ったりして組み合わせたりしてできるのが、テーブルだったり棚になっていくんですね。ぜひホームページをご覧いただければ、どんな製品ができているかご覧いただけるかと思います」
●衛生面がちょっと気になったんですけれども、そのあたりはどのようにされているのですか?
「これが日本人がいちばん気にするところなんですね。これを言うとちょっとがっかりされちゃうかもしれないんですけど、割り箸、洗わないんです。みなさんが食べたラーメンとかお蕎麦のお汁が付いたまんまやります。ただし特殊なレジンと特殊な乾燥工程を経ますから、汚れというものは取れてしまうんですね。
ただ日本人は非常に気にするので、環境衛生試験という神奈川県の試験機構にも出して、菌やウイルスの検出検査というのも実際に乗り越えているんです。食品工場にこの原材料が使われたとしても、問題ないレベルまで何も検出されないっていうことも証明しています」
●特殊な接着剤ということですけれど、化学物質とかは大丈夫なんですか?
「ChopValueは先ほど言った通り、フェリックスという創業者が徹底して環境への配慮を考えているので、先ほど気になっていた割り箸を洗わないっていうのは、水を使いたくないからなんですね。
水を使う、いわゆる洗剤を使う、これも環境によくないということで、そういった観念で作っていますから、水溶性のレジンで環境負荷に対しても全く問題がないものを使っていまして、これが特殊な技術になります。
いろんな技術があって、木の端材とかを固めたりして作るテーブルって、結構今ポピュラーなんですけど、だいたい他社さんのそういった端材とかを集めてテーブルにするのって、接着剤の割合が全体に対して約30%くらいの割合になってしまうのですが、我々の物は(接着剤が)6%~8%、ほぼ箸なんです」
(編集部注:製造工程については、ぜひChopValue Japanのサイトをご覧ください。写真入りでわかりやすく説明されています。
https://chopvalue.jp/ )
工場は「マイクロファクトリー」〜地消地産
※ChopValueの製品は、従来の木材から作った製品と比べて、環境への負荷はどうなんでしょう?
「もちろん普通にしていたら、ただ捨てられてしまっていたものですから、そういった意味ではある意味、役目を終えたものに命を吹き込むというところですね。
あと脱炭素の貢献で言えば、木を伐採して作って運んで、で言っていたら、捨てられてといったところから、新しいものに生まれ変わっていって、そういった意味でも二酸化炭素、脱炭素に貢献っていうのも計算ができますので、本当に新しい概念かなというふうに思っています」
●環境に優しいとはいえ、製品としての性能はすごく問われると思うんですけれども、強度だったり耐久性だったり、そのあたりはいかがなんですか?

「強度が、普通のテーブルで使われている、例えばメープル材とかオーク材、要は天然の木と比べても、それよりも硬い強度が出ていますので、 “割れちゃった”というクレームも来たこともありませんし、本当に硬い、ちょっと難を言えば重いテーブルに、重厚感があるテーブルに仕上がっています」
●やっぱり美しさも必要ですよね。
「そうですね。本当にお陰様で世界で認めていただいているChopValueのプロダクトは、一流のファイブスターホテルの共用部にも使っていただたり・・・見ていただければわかるとおり、本当に割り箸じゃないです! 言わなきゃ気づかないです」
●確かに・・・製品へのこだわりはどんなところなんですか?
「ちょっと日本人の悪いところというか、サステナビリティと言われて久しいですし、SDGsも2030年までっていう話ですけれども、どうしてもリサイクルという言葉が出てくると、ダウングレードするというか目線が下がっちゃうんですよね。
ですから我々もこの商品の説明をする時に、“これ、お箸からできているんです”と先に言いません。“これ、かっこよくないですか?”って言うと、“なんかすごくかっこいいですね!”から始まるんですね。その後に“実はこれ、お箸なんです!”と言うと、みなさんが本当に導入を検討されます」
●ChopValueのサイトを拝見すると「マイクロファクトリー」という言葉がよく出てくるんですけれども、これについてご説明いただけますか?

「“地産地消”という言葉があると思うんですけど、この逆で“地消地産”という言葉を使っていますね。“現地で使われた割り箸を新しいものに生まれ変わらせる”という意味で、地産地消をひっくり返して地消地産っていうんですけど、要はマイクロファクトリーというのは、非常に小さい100坪300平米ぐらいあればできちゃうんです。
そこに我々のスタッフで言えば、作る人間は5人ぐらいなんですよ。それで1週間で500キロぐらいの割り箸をアップサイクルできるんですけども、その小さな工場がいっぱい、ローカルエリアに1個ずつあればっていう意味で“マイクロファクトリー”って言っています。

今後大きく、例えば建材とかに応用がかなうとなると、もっといっぱいの割り箸をオートメーションさせてやっていかなければならないので、そうすると“マクロファクトリー”みたいなものができてくるかもしれません」
(編集部注:現在「ChopValue」の製品は、使用済みの割り箸を圧縮した高密度な複合素材を使って飲食店用のテーブルや椅子、壁面のパネルやインテリア、オフィスの机や、キッチンで使えるトレーなどの小物もあります。
山上さんがおっしゃるには、将来的に難燃・不燃の材料としての認定を受けられれば、建材や内装材として、もっと用途が広がるだろうということでした。
ちなみに去年開催された大阪・関西万博のカナダ館のVIPルームに7メートルのテーブルを設置。その後、在日カナダ大使館の図書館に移送され、いまも使われているとのことです)

日本中が「ChopValue」に
※「割り箸大国」ともいえる日本、言い換えれば、大量に資源がある国だと思います。今後の目標だったり、展開を教えてください。
「今は川崎に一拠点しかありませんけれども、近い未来には建材の応用とかがかなえば、日本全国に展開をしていきたいと思っています。これだけ割り箸を使っている国だからこそ、使う責任もあるし、作る責任もあると思っていますので、日本中にこのChopValue材が使われていくことを夢見ております」
●日本全国に拠点があったらいいですよね。
「ぜひ千葉にも置いていただきたいと思います」
●そうですよね。一般の人がChopValue Japanの製品を使ってみたいと思われたら、どうしたらいいですか?
「お問い合わせフォームがホームページにございますので、そちらからお問い合わせいただくこと可能です。そうしたらすぐにご連絡を差し上げますので、ぜひお問い合わせください!」
(編集部注:ChopValue Japanは今年、川崎市から『使用済み竹製割り箸の有価物認定』を取得。さらに、アスペン材の割り箸も認定の方向で進んでいるそうです。今後はほかの自治体にも働きかけていくとのことで、将来的に使用済みの割り箸はすべて「資源」になるかも知れませんね)です」
INFORMATION

ChopValue Japanの製品は大手デベロッパーのオフィスで採用されたり、ほかにもいろんな企業から引き合いがあるそうです。「割り箸が作る循環の未来」ということで、いろんな企業とそれぞれのストーリーを作って、サステナブルな社会になるように貢献していきたいと、山上さんはおっしゃっていました。
どんな製品があるのか、どんな工程でアップサイクルされるのかなど、ぜひオフィシャルサイトをご覧ください。
◎ChopValue Japan:https://chopvalue.jp/
2026/7/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、水中写真家の「峯水 亮(みねみず・りょう)」さんです。
峯水さんは1970年、大阪府枚方市生まれ。20歳の時に友人に誘われて、関東で人気のダイビングスポット、西伊豆大瀬崎で、初めてダイビングを体験。
真冬の一月、水温15度くらいの海にスウェットを着て潜ったら、カラフルな魚たちや大きなイソギンチャクなど、まるで水族館で見たような光景にすっかり魅了されたそうです。
その体験から、ダイビングを仕事したいと思い、西伊豆大瀬崎で7年間、ダイビングガイドとして活動。1年に300日ほど潜るというダイビング漬けの日々を送っていたとか。
そんな中、もっともっと多くのかたに海の素晴らしさを伝えたいと思うようになり、水中写真家に転身。1997年からフリーの写真家として活躍されています。
峯水さんは国内外の海で、大きなクジラから小さなプランクトンまで、様々な海洋生物や海辺の風景を写真や映像に収め、その作品で「日経ナショナルジオグラフィック写真賞」グランプリ賞を受賞されたこともある、世界的に注目されている写真家なんです。
そんな峯水さんの新しい本が「ときめく図鑑Pokke!」シリーズの一冊として出版された『ときめくクラゲ図鑑』。この本には、峯水さんが出会ったクラゲの中から特におすすめのクラゲが美しい写真とともに紹介されています。
きょうはその図鑑を参考に、不思議な浮遊生物「クラゲ」の魅力や知られざる生態のほか、峯水さんの専門とも言える夜の海に潜る「ブラックウォーターダイブ」の醍醐味などうかがいます。
☆写真協力:峯水 亮

クラゲはプランクトン!?
※改めてなんですが、クラゲがどういう生き物か、教えてください。
「生物の分類としては刺胞動物の仲間なんですね。サンゴとかイソギンチャクとかと同じ仲間です。分類で言うと刺胞動物なんですけど、プランクトンっていう括りに当てはまっています。
プランクトンは日本語で言うと浮遊生物なんですけど、自分の力で泳ぐというよりも、潮に流されながら漂ったりする、そういった生き物を表す言葉なんですね。
で、みなさんがイメージするクラゲはお椀型の傘があって、その下に足があってっていう感じのクラゲをイメージされるかもしれないですけど・・・。この本を見ていただくとわかるんですけど、実はそういう形だけじゃなくて、四角いクラゲだったり、すごく細長いクラゲだったり、いろんな形があって面白いです」

●クラゲの体ってほとんど透明ですよね。これはどうしてなんですか?
「クラゲってほとんどが水分なんですね。ゼラチン質で海水と似たような成分だから、透明だと言えるんですけど、それは外敵から見つかりにくくするためだと考えられます」
●体の構造って、どんなふうになっているんですか?
「みなさんがよくイメージする一般的なクラゲはとてもシンプルで、プルプルしたゼリー状の傘があって、その下に口があって長い触手がある。その傘をゆっくり動かして泳いで、この触手で小さなプランクトンなどを捕まえて食べたりしています」
●脳はあるんですか?
「人間の体の作りと同じような特定の場所を、脳と呼ぶような部位はないんですけど、そういう意味では体全体が脳だと言えます」
●クラゲって水中をふわふわ漂っているイメージがあるんですけれども、自分の意志で動いているわけではないんですよね?
「ただ流されているわけじゃなくて、傘をパクパク動かして、ある程度は自分で泳いでいると思うんです。ただし、魚みたいに力強く泳いで海流に逆らって進むことはできないので、大きな潮の流れに任せながら、少し向きを変えたり、上下に動いたりっていうイメージですね」

●クラゲが食べるのは、プランクトンだけなんですか?
「まあなんでも食べるんですけど、魚ももちろん食べたりしますし、中にはクラゲがクラゲを食べる、そういった種類もいます」
●え〜っ! クラゲは、どうやって増えていくんですか?
「クラゲは基本的にはオスとメスがいるんです。卵と精子で受精して小さな幼生になって、海に漂い海底にくっついて、ポリプっていう状態になるんですね。ポリプ自体は無性生殖で分裂しながらどんどん増えていって、このポリプ自体がまた赤ちゃんクラゲを生み出すんです。
なので、クラゲはふた通りの増え方があって、ポリプは無性生殖で増えて、クラゲ自体は有性生殖で増えるっていう増え方です」
●寿命はどれくらいなんですか?
「寿命自体は種類によっても違うんですけど、だいたい数ヶ月から1年くらいのものが多いですね」
(編集部注:夏の海水浴シーズンになると、クラゲに刺されたという話を聞きますが、そのことを峯水さんにお聞きしたら、クラゲは触手の中に「刺胞(しほう)」という小さな細胞があって、刺激に反応して毒針を発射するとか。クラゲが攻撃するというよりは、反射的に刺すんだそうです。海水浴に行って、クラゲを見つけても、不用意に触ったりしないようにしましょうね)
海の中の「宝石」に魅せられて
※峯水さんがクラゲに興味を持ち始めたのは、ダイビングを始めた頃で、すでに35年くらいは経っているそうです。クラゲのどんなところに惹かれたんですか?
「海の中でクラゲって、あまり注目されるような生き物じゃないんですけど、実際、写真を撮ってみるとすごく綺麗というか、海の中の宝石のような存在なんですよね。だから最初はそういう見た目が綺麗だなっていうところから興味を持ちました」

●本当に美しいですよね。今回の図鑑にはおよそ90種のクラゲが掲載されていますけれども、これまでに何種類くらいのクラゲを撮影されたんですか?
「おそらく400種ぐらいは撮ったかと・・・」
●え〜っ! 日本には何種類くらいのクラゲがいるんですか?
「日本にはだいたい600種ぐらいですね」
●そんなにいるんですね! 世界だと・・・?
「世界だと4000種近くいるって言われています」
●撮影した中でいちばん小さなクラゲは、どんなクラゲでしたか?
「小さなクラゲは実はすごく多くて、傘の大きさで1ミリぐらいしかないものがかなり多いですね。名前も『コツブクラゲ』とか・・・本当に1ミリくらいのクラゲがたくさんいます」
●逆に大きいクラゲもいるんですか?
「そうですね。大きいクラゲは、日本でも時々現れる有名な『エチゼンクラゲ』っていうのがいます。エチゼンクラゲとかはかなり重くて大きくて、(傘の)直径が2メートル近くあるものもいます」

●ええ〜っ! 大きいですね!
「クラゲの分類の中で『クダクラゲ』っていう種類は、よくある丸い傘のようなものはまったくなくて、食べるグミのような弾力のある、かくばったゼラチンのようなパーツがたくさん集まって構成されているようなものもいます」
●峯水さんが出会った中で、びっくりしたクラゲとかっていますか?
「最近、新種として発表した、沖縄の海で採取した種類で『シライトトンボダマクラゲ』っていうのがいるんですね。これは傘はあるんだけど、触手がないんですね。

で、触手がないってことは餌をどうやって捕まえているのかなって(笑)、でも口はあるんですよ。なので、どうやって餌を捕まえているのかっていうのが、未だに謎なんですけど、そういったクラゲも最近見つかっています」
光るクラゲ、若返るクラゲ!?
※光っているクラゲもいますよね。光るのは自ら光っているんですか?
「そうですね。発光するクラゲとして有名なのが『オワンクラゲ』というクラゲなんですね。そのほかにも『チョウクラゲ』というのが、発光する種類として知られています。
ちょっと難しい言葉なんですけど、『ルシフェラーゼ反応』っていう、酵素と酸素が反応して光る現象なんですね。これはクラゲの傘の中にそういう成分があって、それが周りの酸素と結合することによって、バッと化学反応として光るんですけど、こういった光るクラゲが知られています」
●自然界の中で、クラゲが果たしている役割みたいなものってありますか?
「そうですね・・・あらゆる生き物の隠れ場所だったり、あと餌を捕るための道具として使われていることもありますし、時には動物たちの餌となっていることもあります。
クラゲってよく栄養がないって言われるんですが、正確には水分が多いので、魚とかに比べるとカロリーは低いんですね。でもクラゲの体の中にはタンパク質とか脂質とかの栄養がちゃんと含まれていて、ウミガメとか甲殻類とかがクラゲを積極的に食べているんですね。
ある意味、クラゲってそんなに泳がないので、捕まえやすかったり消化しやすかったり・・・大量にいるので、彼らにとっては餌としては、すごく楽に捕まえられる重要な資源になっていますね」
●図鑑に、地球上でいちばん長生きするという「ベニクラゲ」、不老不死のクラゲとして注目されているっていうふうに書いてありましたけど・・・。
「自分たちは生まれてから、どんどんどんどん歳を取るだけだと思うんですけど、ベニクラゲの場合は、歳を取ってからまた赤ちゃんに戻ることができるんです(笑)」
●え〜〜っ、若返るんですか?
「若返るんですよ(笑)。なので、環境が悪くなってクラゲとして生きていけないなと思ったら、ちょっと前に戻って・・・要はポリプみたいな形で元に戻っちゃうんですよ。
だから、地球上で何か天変地異が起きたとしても、ベニクラゲとか、そういった不老不死のクラゲたちは、若返ってその状態でやり過ごして、また環境がよくなったら戻るというような、そういったことがおそらくできるんじゃないかなと思います」
●どうして若返ることができるんですか?
「実はそのベニクラゲだけじゃなくて、何種類かそうやって若返ることが知られているんですけど、面白いですよね」
●形も変わるっていうことですよね?
「そうですね。形もクラゲからポリプに戻ることができるんですよ」
●面白いですね。ほかにも図鑑に水中でチョウのように羽ばたく「チョウクラゲ」というのも載っていました。美しいですね。
「そうですね。このクラゲも先ほどちょっと話したんですけど、光るクラゲとして有名です」
●本当に形がチョウのような、羽ばたいているような感じですよね。
「そうですね」
●このままチョウのように、羽ばたくようにしながら泳いでいくんですか?
「はい、本当に“パタッパタッパタッ”という感じで羽ばたいています」
夜の海に潜る「ブラックウォーターダイブ」
※峯水さんのオフィシャルサイトに、一般参加者と行く「ブラックウォーターダイブ」というツアーが載っていました。このブラックウォーターダイブというのは、どんなダイビングなんですか?
「基本的に夜の海を潜るダイビングなんですけど、潜る場所が普通のダイビングで潜るような場所じゃなくて、外洋に出て潜るんですね。つまり夜の外洋を潜るダイビングです。
自分が今やっているのは、だいたい港から1時間ぐらい沖に出て行って、水深が1500~1600mぐらいの海の表層を潜っているんですね。なので、周りには何もない真っ暗な海だけがある、そういった場所です」
●ブラックウォーターダイブで潜っている時は、みなさんライトを持って潜るっていう感じなんですか?
「そうですね。基本的には真っ暗な海にライトを持って漂っているんですけど、実際はブイを浮かべていて、そこからロープが垂らされていて、そこに目印になるようなライトがついているんですね。
なので、ブイの周りは真っ暗じゃないんですけど、ダイバー自体はそのブイを目印にして、だいぶ離れたりして泳いでいるんで、実際にダイバーが泳いでいるところは完全に真っ暗なところですね」

●どこを見渡しても360度、真っ暗っていうことですね?
「そうですね」
●夜の海って怖いイメージがありますけれども、そんなことはないですか?
「真っ暗なんで、やっぱりなんとなく怖いイメージがありますけど、自分は慣れてしまっているので(笑)、それが当たり前というか、水中ライトを持って泳いでいるんで、そんなに怖くはないですね」
●しっかり準備をすれば、大丈夫っていうことなんですね?
「そうですね」
●昼間にはない魅力がたくさんありそうですけれども、具体的にどんなところがおすすめですか?
「特に出会う生物が、普通のダイビングではまず出会えないような生き物ばかりに出会います。例えば、深海魚の稚魚だったり、いわゆるみなさんが知っている魚たちの小さい時の時代ですね。
本当に潜るたびに新しい発見があるんですけど、そういったなかなか普段は出会えないような生き物にたくさん会えるのっていう、そういった魅力があります」
●被写体がライトに映し出されると、見え方も違いますよね?
「そうですね。透明な生き物が多いっていうのがあるんですけど、ライトに当たるとやっぱりキラッと宝石のように輝いて見えるんですよね」
海は「教科書」!?
※夜の海に限らず、海中での撮影は海流もあるので難しいと聞きます。なにかコツのようなものはありますか?
「自分が実際に潜っている場所は、外洋の潮の流れのある場所なんですね。実はそこに入ると自分自身も同じように潮と一緒に流れているので、特に潮に逆らって泳ぐことっていうのは全くないんですよ。
ただ単に海の中で(体が)浮いているだけなので、そんなに難しくはないですね。もちろん海底が見えないような場所にいるので、自分がどの水深にいるかっていうのは注意してないと、どんどん沈んでいったり、逆に浮いていったり、そういった水深がわかりづらいっていうのがあるんですけど、それをさえ注意していれば
大丈夫ですね」
●小さな生き物を撮影するのも、かなり大変じゃないですか? 難しそうですよね?
「そうですね。それはすごく難しいですね(苦笑)。(生き物を)見つけたとしてもカメラのファインダーを覗いている間に見失ってしまうこともたくさんあるので、難しいですね」

●ピントを合わせるのも大変そうですけど・・・。
「そうですね。本当にそれはすごく難しいです」
●ファインダー越しに、被写体の生き物と目が合ったりとかってあるんですか?
「常に相手の目がこっちとコンタクトできるような感じでアプローチしているんですけど、向こうが(自分を)見ているなっていうのを感じることがたまにあります」
●海の中に長い時間いると、どんな気持ちになりますか?
「僕にとっては海の中っていうのは、結構当たり前のような時間になってきていて、海と一緒に、その被写体と一緒に自分がまるでプランクトンになっているような感じで泳いでいるんです。生き物との境がないというか、自分も彼らと同じような気持ちになって海を漂っています」
●海との一体感っていう感じなんですね?
「そうですね」
●海中で撮影している時は、どんなこと考えているんですか?
「珍しい生き物とかに出会うことがあるんですけど、その時に“わっ!”と自分が興奮してしまうと、大抵その撮影は失敗してしまうんですね。だから、出会った瞬間とか冷静にして、とにかくこれを写真とか映像にちゃんと撮って、ほかの人に見てもらえるように撮ってから、何かじわじわと興奮が現れてくるというか・・・撮影している間はすごく冷静ですね」
●そうなんですね。何度も聞かれているかも知れないんですけれども、峯水さんにとっ「海」とは・・・?
「自分にとっては、本当にいろんなことを教えてくれる教科書のような存在です」
INFORMATION
「ときめく図鑑Pokke!」シリーズの一冊として出版された峯水さんの新しい本をぜひチェックしてください。峯水さんが魅了されている神秘的なクラゲ、およそ90種を掲載。それぞれのクラゲの生態や特徴の解説のほか、クラゲにまつわる歴史や文学なども紹介。浮遊感あふれる美しい写真にきっと癒されると思いますよ。
山と渓谷社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎山と渓谷社:https://www.yamakei.co.jp/products/2826050310.html
峯水さんのオフィシャルサイトでは、様々な海洋生物や海辺の風景など、素晴らしい写真を見ることができます。また、ブラックウォーターダイブの情報も載っていますよ。
◎峯水 亮オフィシャルサイト:https://www.ryo-minemizu.com
2026/6/28 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ネイチャー・ガイドの「ノダカズキ」さんです。
ノダさんは1997年生まれ、佐賀県出身。高校生の頃から、将来は自然の面白さや神秘を伝える仕事をしたいと思っていたそうです。そして愛媛大学農学部に進学。ところがなんと、1年で中退。その後は自然体験を求め、国内外を放浪。その間も自然を伝える仕事を模索し、東京で映像制作に携わったり、パリで香水をつくる修行したり・・・。
そんな中、東京で知り合った人が北海道にコネクションがあり、2020年に北海道白老町に国立アイヌ民族博物館ができるタイミングで移住。アイヌの文化や自然を伝える、地域おこし協力隊の活動を経て、現在はネイチャー・ガイドや自然教育、ワークショップのほか、ポッドキャスト番組などでも活躍されています。
そして先頃『自然はすごい〜いつもの道が美しく見える5つの視点』という本を出されました。きょうはそんなノダさんに都会生活でも視点を変えるだけで見えてくる自然や、白老町でのガイド・ツアーのお話などうかがいます。
☆写真協力:ノダカズキ

好奇心のおもむくままに
※ノダさんはやはり子供の頃から、自然とか生き物が好きだったんですか?
「そうですね。やっぱり自然のことを大人になってもやっている人は、だいたい家庭でそういう影響があるんですけど、僕の場合もそうで、父がよく魚釣りとかに連れて行ってくれていました。ただ、自然とか植物に本格的にハマったのは、北海道に来てからです」
●そうなんですか。大学は愛媛大学農学部に進学ということなんですけれども、愛媛大学を選ばれたのはどうしてなんですか?
「今は自然の面白さを伝えるということで活動をさせてもらっていますが、高校生の時は漠然と“地球すごい!”みたいな・・・地球って24時間、ずっと回転しているわけじゃないですか。宇宙の中に浮いてというか・・・その単純な事実にず~っと感動、今も感動をする感性を持っているんですが、ず~っと感動していたんですよね。
地球のことをもっと知りたいって思っていて、地球のことを理解するためには地球の表面積は水が7割、陸が3割なので7割の水を勉強したら、地球のことも7割くらいわかるんじゃないかっていうのを高校生の時に思っていました。
農学部の中でもお水を専門的に学べるのが愛媛大学にあるんですけど、そこに進めたらいいなということで愛媛大学に行きました」
●水を研究するために愛媛大学農学部に進学されたのですね?
「そうですね」
●目指した大学に入ったのに1年で中退されたということで、これはどうしてなんですか?
「勉強していく中で、水について知りたかったこともあるんですけど、水について勉強すると今度は土とかが気になりだすんですね。土のサイズによって植物の生え方が変わったりとか・・・。土とかに興味が出てくると、今度は石とかに興味が出てくるんです。
大学で座って1日何時間か勉強するんですけど、それは漠然としたもので、実際に体感して、実際に現地に行ってから学んだほうがいいっていうのが体質にあっていたのもあって、1年で中退して、実際に(フィールドを)まわって自分で体感して、本を読んでディスカッションして、みたいな学びのスタイルをとっていました」
●親御さんは理解してくれましたか?
「そうですね。結構まあ自由な親なんで、大丈夫だと思います(笑)」
●ご理解があったんですね。次から次へと興味がわくというか、気になることが溢れていたという感じだったんですね!
「そうですね。当時は数珠つなぎのように、自然界は虫と花の関係だったりとか、すごくつながっていくので、それをひたすら自分の好奇心のままに追いかけるっていう20代前半でしたね」
●時間と体力はたっぷりある感じですよね、その頃はね(笑)
「いやぁ~そうですよね。ほんとにマジで100%時間ありますからね。なかなかないですからね、そんな時間(笑)」
お寿司屋さんで自然観察!?

※ここからはノダさんの初めての本『自然はすごい〜いつもの道が美しく見える5つの視点』をもとにお話をうかがっていきます。この本は、都会にも日常にも自然の神秘が溢れている、それを伝えたいという思いで書かれたということで、キーワードが「視点」なんです。
ということで、番組でピックアップした面白い「視点」について解説していただきます。まずは、第1章の「暮らしは自然でできている」の中に「寿司屋は自然観察センター」という見出しのページがありました。これはどういうことですか?
「僕の趣味でお寿司屋さんに行くっていうのがあるんですね。これはただのお寿司屋さんじゃなくて、Google mapで面白い地形を見つけて(その場所にある)お寿司屋さんに行くのが趣味なんですけども、面白いとか入り組んだ地形には、入り組んだ地形にしか生息しない魚がいるんですよね」
●なるほど。
「真珠の養殖をしやすいような海だと、お寿司屋さんで真珠貝が串とかで出てきたりするんですよ。なので、お寿司を楽しむのはもちろん、味を楽しむっていうのもあるんですけど、その地形を解説しながら出してくるのが、その地域特有のお寿司屋さんなんですよねっていうので、お寿司屋さんに行くと実は海のこともわかるし、季節のこともわかるしっていう話を(本に)書かせていただきました」
●お寿司屋さんに行く時に、地形で選んだことはなかったです(笑)
「そうですよね」
●“知らない名前のお魚を頼むといい”とも書かれていましたけれども・・・。
「そうですね。それも例えば、カツオとかマグロとかってみんな知っているんですよ。沖縄の人も北海道の人も・・・。それは彼らが回遊魚だからなんですよね。日本列島の周りをぐるぐるぐるぐる、どこでも捕れる魚は大体みんなが目にしたことがあるので、標準語みたいな感じですよねっていうのは、聞いたことはあるんですけども、あまり移動しない魚もいるんですよね。
そういう移動しない魚、例えば、日本海の一部にしかいない魚は、東京とか北海道までもちろん来なくて、その地域だけで消費されている魚がいるんですよね。例えば、これは本には書いていないんですけども、僕の出身の佐賀県には、世界でいちばん潮の満ち引きが大きい干潟があるんですね、有明海っていう・・・。
なので、ムツゴロウとかワラスボとか、たぶんほかでは聞いたことないような魚が、実は佐賀の市場に並ぶんですね。それは実は有明海の干潟の周辺だけで食べられているような魚なので、知らない名前の魚を頼むと、その地域の伝統とか文化がわかるっていうのを書かせていただいているんですね」
●海藻にも注目したほうがいいんですよね?
「そうですね。これは僕の実体験なんですけど、北海道の網走っていう流氷がやってくるような(場所にある)お寿司屋さんに行ったことがあって、そこでは春の初めに行くと海藻を出してくれるところがあるんです。
なぜ海藻なのかって大将に聞いたら、流氷が溶けると太陽光が入ってくるんですよね。すると海藻が増えるんですよ。そのタイミングで(お店に)行くと、海藻のお通しを出してくれたことがあって・・・。だから流氷が今まさに溶けて春が始まったんだっていうことが、海藻を通してわかるっていう話を(本に)書かせてもらっています」
●そういった話は、お寿司屋さんの大将とか職人さんにいろいろお聞きになるんですか?
「そうですね。僕の中では大将は自然ガイドというか、魚を通して海の神秘とかをいろいろ教えてくれる人なので、なるべくひとりで行くようにして、お客さんが多くない、いちばん早い時間をひとりで予約して行っていますね(笑)」
(編集部注:ノダさんはお寿司にハマっている頃は、毎週土日にお寿司屋さんに行っていたそうで、なんと年収の半分をお寿司につぎ込んでいたとか。ノダさんがおっしゃるには、お寿司屋さんから、海と魚の解説を聞けて、さらにお寿司もついてくる。なので、1万円でも安いと思っていたそうですよ)
コンクリートを食べるカタツムリ!?
※続いて、第2章「街歩きで感じる自然」の中から「コンクリートという森に生きるカタツムリ」という見出しがありました。これの説明をお願いします。
「自然界においてカタツムリっていろんな所にいるんですけども、石灰岩と言われる地形のところにカタツムリって結構いるんですね。例えば、四国カルストのところとか、沖縄もサンゴで出来た島なので、結構カルシウムがいっぱい入っているようなところにカタツムリは多くて、動きも遅いので、その土地で固有化にしていくんですね。
いくんですけれども一方、都会を見てみると、都会というか街を見てみるとコンクリートが日本中に張りめぐらされているじゃないですか。コンクリートは石灰石を原料に使っていて、カルシウムがたくさん入っているんですよね。
カタツムリから見たら栄養の宝庫というか、カルシウムで殻を作らないといけないので、カタツムリから見ると、僕らが大都会だと思っているところって、割と栄養がたくさんある“森”ですよね。
カタツムリにとっては、森よりも栄養がたくさんある場所っていうふうにたぶん写っている場所なんですよねっていうので、こういう表現をさせてもらいました」
●コンクリートは、実はカルシウムの塊なんですね。
「そうですね。いっぱい入っていますね」
●どうやってカルシウムを取り込んでいるんですか?
「これはまだメカニズムとかは明らかになっていないところもあるんですけど、基本的にカタツムリって世界中でいちばん歯が多い生き物なんですよ。顕微鏡とかで見るとわかるんですけど、歯が2万本か3万本とか、そういうギザギザしたやつがいっぱいあるんです。
それで削って食べるんですけれども、カタツムリが通ったあとって、コンクリートに白く線がついていたりするんですね。削って食べたりとかしているみたいですね」
●第3章「家の中にひそむ自然」の中に、“ガラスという透明な革命”というのがあります。ガラスは人工物ですよね?
「そうですね。パソコンの画面はガラスですし・・・」
●自然と関係あるのかなと思っちゃうんですけれども・・・。
「普通、関係ないなって思うんですけど、ガラスも『珪砂(けいしゃ)』っていうか砂から作られているんですね。砂を作ったのは地球の地殻の運動だったりするので、結局ガラスも自然界から来ているよ、という話を書かせてもらっています」
北海道白老町、自然好きは飽きない!?

※ノダさんが暮らす北海道白老町は、どんなところなんですか?
「北海道は広いので、北海道の外の人はなかなか浮かばないと思いますけど、北海道の下側に位置する街で、太平洋に面しています。この街には湖も森もあって、海に面していて、温泉も近くて火山も近くにあるんですよね。川も結構流れていて、自然好きは一生飽きることがないフィールドではあると思います」
●季節的には、いつ頃がいちばんいいんですか?
「そうですね・・・僕がおすすめしているのは、やっぱり5月後半から6月と秋、紅葉の時期10月末ぐらいですね。北海道は平地でも紅葉しますし、その頃はちょうど海から鮭が川を埋めつくすくらいのぼってくるんですよ。
キノコも山に生えて、美しく美味しく感動的なのは秋なので、いちばんいいのは10月末ぐらいってお答えしています」
●白老町のどんなところが、特に気に入っていますか?
「白老ですか・・・国立アイヌ民族博物館があるので、それを学びに世界中から人がやってくるんですよね。アイヌの自然から生活を、身を立てていた民族を学びに、興味がある人が来るので、そういう人たちとの出会いは非常に多いですね。それは非常に面白いですね、日常が・・・」

(編集部注:ノダさんが毎年、秋に行なっているガイドツアーはキノコを採って、ノダさんの友人のカレー職人さんと「天然キノコカレーを作る会」というのをやっているそうです。ほかには、鮭の遡上を観察するツアーも実施しているとのことで、やはり秋がおすすめだそうですよ。
ノダさんのツアーに参加してみたいと思ったかたは、インスタグラムで定期的にツアー情報を発信しているということなので、チェックしてみてください。
https://www.instagram.com/yasou_king_ode/
ノダさんはアラスカも大好きで、氷河を見に行ったり、また、南米では野生化した馬を観察していたこともあるそうです。何事も自分の目で見て体験することを大事にされているんですね)
語らないネイチャー・ガイド!?
※ネイチャー・ガイドとして心がけていることは、どんなことですか?
「僕の師匠がいるのですけど、その師匠もネイチャー・ガイドなんですよね。これは深いんですけど、“どんなネイチャー・ガイドが、いいネイチャー・ガイドですか?“と聞いたら、”語らないネイチャー・ガイドがいちばんいい“って言っていて・・・」
●ええ~っ!
「僕の師匠に、今までいちばんよかったガイドを聞いたら、ほとんど一言もしゃべらなかったネイチャー・ガイド・ツアーがあったらしくて・・・参加者のお客さんたちが自ら気づいて、でも質問してくれたら、もちろんそれには答えるんですけど、“自分たちで発見してもらえるようなツアーのネイチャー・ガイドがいちばん素晴らしいんだ”と言われていて、本当にそうだなと思いました」
●ガイドって語ってくださるイメージがありますけどね・・・。
「そうですよね。でもやはり気づきをみなさんに持って帰ってもらうのが仕事っていう意味では、やっぱり語らないほうがいいっていうのはありますね」
●師匠は、どなたなんですか?
「師匠は、三木昇(みき・のぼる)さんっていう、北海道でたぶんいちばん最初に自然ガイドを生業として始められたかたがいらっしゃるんですね。最近はもうやっていないんですけど、三木昇さんも年に数回イベント的に(ツアーを)やられていて、もう結構なおじいちゃんなんですけど・・・」
●どうやって三木さんと出会ったんですか?
「僕が三木さんのツアーにというか、三木さんの講座に参加したんですよね。3時間くらいのツアーだったんですけど、そのツアーを受けての僕なりのネイチャー・ガイド像とか、(そのツアーで)言われたことを自分でさらに調べて勉強して、それをまとめて、10ページぐらい送ったんですよね、メールで・・・。
あまり教えてくれる人じゃないんですけど、結構厳しい人でもあるので・・・そうしたら意外と赤ペンで添削して、“今度、一緒に山に行こう”とか言ってくれて、それが最初で、そこからいろいろ教えてもらいましたね」

●では最後に、初めての本『自然はすごい〜いつもの道が美しく見える5つの視点』から、どういったことを感じ取ってくれたら著者としては嬉しいですか?
「自然は遠くに行かなくても、側にあるということに気づいてもらえたら嬉しいですね」
INFORMATION
ノダさんの初めての本をぜひ読んでください。「暮らし」「街歩き」「家の中」「食卓」そして「人間の歴史」と5つの章に「自然」を感じるたくさんの視点が溢れています。探究心のかたまりのようなノダさんの知識がそのまま本になったと言えるかもしれません。知的好奇心をくすぐる一冊、おすすめです。
ディスカヴァー・トゥエンティワンから絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎ディスカヴァー・トゥエンティワン:https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-3269-6
ノダさんのガイド・ツアー情報については、ノダさんのインスタグラムを見てくださいね。
◎ノダカズキInstagram:https://www.instagram.com/yasou_king_ode/
2026/6/21 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、スーパー登山部の「小田智之(おだ・ともゆき)」さん、HINAさん、そして「いしはま・ゆう」さんです。
山が好きで音楽を聴くのも好きというかたの間で今、注目されているバンドが6月に待望のファースト・アルバムをリリースした「スーパー登山部」! バンド名らしからぬネーミングですが、一度聴いたら忘れないインパクトがありますよね。
スーパー登山部は2023年に結成された5人組バンドで、愛知を中心に活動していて、なんと! 登山と音楽活動をメンバー全員でやるという前代未聞のバンドなんです。
今週はそんなスーパー登山部のメンバー3人に、なぜバンドとして山に登ることになったのか、そして重い楽器を背負って登った山小屋でのライヴのお話などうかがいます。
☆写真協力:スーパー登山部

初登山の木曽駒ヶ岳で体感した「厳しさと楽しさ」
●今週は、待望のファーストアルバムをリリースされました5人組バンド「スーパー登山部」からキーボードの小田智之さん、ヴォーカルのHINAさん、そしてギターのいしはまゆうさんをお迎えしました。よろしくお願いいたします!
小田さん、HINAさん いしはまさん「よろしくお願いします」
●自然や環境をテーマにしているこの番組なんですけれども、まずバンド名に強く惹かれたんですね。これはメンバーのみなさんで話し合われて、このバンド名になったんですか?
小田さん「そうですね。僕らがバンドを結成してから、どんな名前にしようかって話し合った時に、僕らのLINEグループ名が“スーパーバンド”っていうのと、僕、小田が登山が趣味で、ほかのみんなは(山に)登ったことなかったんですけど、そんな中でふと、ドラムの深谷さんが“スーパー登山部ってどう?”って、掛け合わせた名前をひらめいて、“あっ! いいじゃん!”ってなって決めました」

●登山好きを集めたってわけではなくて、小田さんだけが登山がお好きだったってことですか?
小田さん「はい、そうです!(笑)」
●「スーパー登山部」っていうバンド名が決まってから、“山と音楽”というテーマで登山とバンド活動を始められたっていうことなんですよね?
小田さん「そうですね。だんだんそうになっていったっていう感じです。このバンド名にするんだったら1回は登山しようよ! っていうのを、みんなに聞いた時に”登ってみたい!“って(メンバーが)言ってくれて・・・。でも、もしそれで山、無理かもってなったら、名前だけのバンドになっていたかもしれないですけど、なんか意外といいかも! っていう感じでした。
しかも、自分はもともと鍵盤ハーモニカを背負って登って、山の上で吹いていたんですけど、山で聴く音楽って、すごくいいなって感じたり、そう言ってもらえることも多くて、この活動って僕らにしかできない、すごく面白いものになるんじゃないかなって思って、今このコンセプトで活動しています」

●小田さん以外のメンバーは、登山の経験はまったくなかったんですよね?
HINAさん、いしはまさん「はい、なかったです」
●バンド活動をしたくて参加したのに“、えっ? 登山するの?”って話になりませんでしたか?(笑)
HINAさん「(笑)もしかしたら、そう思っているメンバーもいたのかもしれない。でも“登山をしていこう!”というよりは、“登山をしてみよう!”っていうので、一回(バンドの)名前がきっかけで登山っていう趣味とかアクティヴィティとしてやってみたい!があったんで、みんなで登ってみたんですね。
そこにちっちゃい楽器も持ってったんですよ。初めての登山の時に、山の上で演奏したら聴いてくれるお客さんとか、拍手が生まれたりして、自然と親しみながら音を奏でると楽しいな! みたいなのがあったので、そこから徐々に小田さんに引き寄せられてというか、沼に連れていかれたという(笑)」
●初めての登山でいきなり楽器を持って行かれたんですね?
HINAさん「シェイカーっていう音が出るやつとか、鍵盤ハーモニカだったり・・・」
いしはまさん「ウクレレとかね」
HINAさん「そういうものでやっていたんですけど・・・」
●どちらの山だったんですか?
HINAさん「中央アルプスの木曽駒ケ岳っていう山で、千畳敷カールがある珍しい地形の見られるところなんですけど、山頂まではすごく晴れていて天気がよくて・・・」
いしはまさん「いいスタートだったよね」
HINAさん「初登山としては、素晴らしいロケーションを見られたんですけど、帰りは、おやおや? っていう天気になってきて、雹と雷がダブルできたんですね。
私はその時、必要最低限というか、たぶんちょっと山を舐めてしまっていて、それがその天気を呼び起こしただろうなと思うんですけど・・・レインウエアではなくカッパを着たら、それで滑って転んじゃったりとか・・・雹が降るなんて思わないから、体に痛いとかがあって、山の厳しさと楽しさを両方知って、そこからそんな天気の時は登ることはもうなくなったので・・・」
●そうなんですね。山の厳しさを知っても、やっぱり楽しいが勝ったっていう感じですか?
HINAさん「そうですね。楽しさがずっとありますね」
●いしはまさんも初めての登山だったんですか?
いしはまさん「そうですね。僕も歩くこととか、自然や広い景色に触れることはすごく好きで、たぶん登山も好きだろうなって思っていて、富士山に登ってみたいんだけどっていう相談だけは、小田君にバンドを組む前にはしていたんですね。
でもずっと行けていなくて、いざ登ってみたら、やっぱり思っていたような楽しさもあるし、思っても見なかった登山の楽しさもあって、(登山を)始められてすごくよかったなと・・・」

(編集部注:これまでにバンドとして登った山の数は40後半くらいだそうですよ。一緒にいる時間が長いので、メンバー間の絆も強くなっているとか。
ちなみに小田さんの登山好きはお父さんの影響で、一歩ずつ登れば、いずれは頂きに辿り着く、というお父さんの教えは、登山以外のことでも活きているそうです。山好きが止まらない小田さんは、なんと、バンド結成後に登山学校に通い、座学と実技で、リスク回避や安全講習、ロープワークなどをみっちり学んだそうです)
CDジャケットのアートワークに込めた思い
※今月リリースした待望のファースト・アルバム、タイトルが『スーパー登山部』となっていますが、バンド名をアルバム・タイトルにしたのは、どうしてなんですか?
HINAさん「スーパー登山部のこれまでの道のりをすべて辿って、ひとつのアルバムにしようとなった時に、ここで『スーパー登山部』というアルバム名にするのか、もっと先にするのかというのは、結構悩んだんです。
ほかにいろんなアイデアもあったんですけど、スーパー登山部が始まってから今までの節目で、『スーパー登山部』っていう名前を付けるのは、すごくいいんじゃないかというところで付けた気がしています」

●ジャケットのアートワークも気になりました。メンバー5人が並んで正面を向いて立っているイラストなんですけれども、顔にそれぞれ山のシルエットが埋め込まれているような感じです。どんな意図があるんですか?
いしはまさん「僕、いしはまがそのデザインもやっているんですけど・・・」
●いしはまさんがデザインしているんですね。
「そうなんです。『スーパー登山部』というタイトルにする時に、スーパー登山部の音楽性ってどういうものかというのを考えた時に、インタビューとかでもよく答えていて、“5人が出す音、5人の身体性からなる音楽が、スーパー登山部を成り立たせているんじゃないか”というのがあったので、ひとまず5人が並んだ絵はひとつその表現になるなと思いつつ・・・。
ただ、スーパー登山部って5人全員で編曲をしたりする時があって、そういう時に出てくるアイデアとか、それから完成される音楽って、誰かのすごく強い意志っていうよりは、自然とか広いものからわき上がってくるものをもとに組み上がっている気がしていて・・・。
それこそ僕らは登山をして、インスピレーションを受けているところがあると思っているので、顔の表情よりは、山とか自然の質感のほうが近いかなと思って、主観と客観のバランスを取れるっていう意味で、顔に山をはめました」
●いしはまさんのアイデアだったんですね。
いしはまさん「はい、そうです」
HINAさん「自慢のいしはまです(笑)」
●素敵なアートワークです。顔にハメた山はそれぞれ(メンバーが)お好きな山を選んだっていう感じなんですか?
いしはまさん「いや、スーパー登山部が登ってきた山とか、今までの活動の雰囲気とか、収録されている曲にあるイメージから、なんとなくこういう山かなっていうのを想像しつつ具体的な山も参考にしつつって感じです」
風景や色、音を思い浮かべながら
※スーパー登山部の曲の歌詞には、空や風、森や太陽、道や光など、山の景色から感じるような言葉が散りばめられているように思いました。そこは意識しているんでしょうか?
小田さん「意識したつもりはなかったんですね」
●無意識に!?
いしはまさん「結果として、そうなっているのに近いですね」
小田さん「やっぱり自然に触れる機会も多いし、そういうところに心が動いているんだなっていうことも、僕もこのアルバムを通して気づいたところはありますね」

●スーパー登山部としてのバンド・サウンドに仕上げていく段階で、それぞれどんなことを大事にされていますか? 小田さんはいかがです?
小田さん「僕は風景が浮かぶことを意識していて、楽曲からどんな景色や感情がわき上がってくるんだろうっていうのを、ひとつの楽器とかじゃなくて、トータルで聴いた時の質感とか、あとは各楽器のアプローチとか、そういったものから、どんな景色とかインスピレーションを受けるかっていうのをイメージしながら創っています」
●HINAさんはいかがですか?
HINAさん「そうですね・・・う~ん難しい・・・私はその曲ごとになんとなくの色とか、それこそ景色もそうですけど、自分の経験の中から浮かぶものをたぶん無意識に浮かべて歌うことが多くて・・・それが登山を始めたことによって、自然とか山の景色が増えてきたっていうだけなので、街で自分が感じたことを書いている曲もあります。
ただそれもなんだろう・・・風で草がなびいているところとか、車の音とかがすごく鳴っていたところから、急に静かになった時に聴こえてくる自然の音みたいなのをキャッチして、そういうのを思い浮かべて歌っているんだろうなって思います」
●いしはまさんは?
いしはまさん「たぶんみんな同じなんですけど、風景とか景色とか思い浮かべながらフレーズを入れたり、編曲のアイデアを出したりっていうところが、みんなもあると思うので、ギターも同じくです」
●みんなでイメージやアイデアを出し合って創りあげていくんですね。
小田さん、HINAさん「そうですね」
●フレーズとか音色を決める時にイメージしたのって、どんなことだったりしますか?
小田さん「楽曲によって全然違うんですけど、『風を辿る』っていう曲だと冒頭に鍵盤が入って、次にドラムが入って・・・このドラムのバスドラと、ブラシでシャカシャカやっているスネアのイメージは、個人的には電車をイメージしていたんですね。
印象なんですけど、たぶんガタガタと線路を走る様子とか、(車窓の)景観の流れみたいなのがリンクしているなって思っていて・・・僕、エゴサーチがすごく好きで・・・(笑)」
HINAさん「唐突な!(笑)」
小田さん「エゴサしながら、みんなの(SNSとか)見ているですけど、“『風を辿る』のイントロから電車の風景が・・・“っていうのを書いてくれている人がいて、“あっ! 伝わっている!”って思って、そういう時にすごく嬉しくなります」
高所の白馬山荘ライヴ、酸欠!?

※スーパー登山部は去年、北アルプス白馬岳の標高2832メートルにある白馬山荘を会場に5日間のライヴを行ないました。今年も9月に予定されているんですが・・・きっかけは小田さんがプライベートで登って泊まった時に、置いてあった電子ピアノを弾いたら、その場に居合わせたお客さんと盛り上がり、とても楽しかったそうです。
これをバンドでやれたらいいなと思って、メンバーに相談したところ、白馬岳の難しさを考えず、誰もやったことがないならチャレンジしよう! ということになったそうです。
とはいえ、自分たちで楽器も運ばなくてはならず、背負って登ることに。ザックの重さは、HINAさんは約17キロ、いしはまさんが26キロ、小田さんに至っては30キロもあったそうですよ。おかげで白馬山荘に着くまでに10時間以上もかかったとか。

●そんな大変な思いをしてたどり着いた、白馬山荘でのライヴをいかがでしたか?
HINAさん「気持ちよかったですね」
小田さん「言葉にできないですね。僕らもそうですけれど、お客さんも同じ行程を登山してこないと行けない場所で、みんなが同じ道を歩いて、そこで感じてきたことをライヴの時間で一緒に共有するような、本当に特別な時間が流れて、もう思い出ですね」
●気持ちよかったって、HINAさんおっしゃっていましたけど・・・。
HINAさん「めちゃくちゃ気持ちよかったですね。窓がガラス張りになっているので遠くの山が見えたりとか、雲が下にあるので雲海が見える日もありました。
そういう景色と共にライヴができる機会は今まででもなかったし、この山に登らないと見られない景色っていうのもあったので、そういうのをお客さんと共有できているっていうことがすごく嬉しかったですね」
●いしはまさんはどうでした?
いしはまさん「(標高)2800mの位置でライヴをして、お客さんがライヴを見に来るって、なかなか現実味がないと思うんですけど・・・。確かにお客さんも疲れているし、僕らも疲れているっていうところで、やけに実感できるっていうか、本当に登ってきて、そこでライヴをしているんだなっていうのを体感できて、なかなか非日常な体験でした」

●標高が2800m超えている山小屋でのライヴって、ヴォーカルのHINAさんは声は大丈夫だったんですか?
HINAさん「もう、すごいですね・・・薄いので空気が・・・」
●息苦しいですよね?
HINAさん「はい、一日目がいちばんやっぱりしんどくて、高所順応みたいのをしてないので、(一曲)終わった後に息切れしちゃうみたいなのはあったんですね。
それこそ今年で白馬山荘ライヴが3年目になるので、去年は2年目だったんですけど、最初の年は本当に“なんでこんなに息が吸えないの?”っていうことに混乱して・・・そういう前例とか、ほかの人の話も聞いたことなかったので、 “大丈夫でしょう”って思っていたところもあって、実際行ってみたらすごく苦しかったんですね」
小田さん「酸素缶をずっとプシュプシュしていたよね」
HINAさん「ずっとプシュプシュして、酸素缶で息を吸っていて・・・」
●しかもそれが5日間となると・・・。
HINAさん「そうなんですよ」
●でも、だんだん慣れていくものなんですか?
HINAさん「そうなんですよ(笑)」
いしはまさん「初年度は(ライヴは)1日だけだったね」
HINAさん「そうなんです。初年度は1日だけだったので、あまり変化というのはなく・・・」
小田さん「苦しさを体験して(山から)下りてきたって感じでしたね」
HINAさん「それを踏まえて次の年に5日間やって、5日目とか本当に地上で歌ういつものパフォーマンスができるようになって・・・で、山で5日間ライヴしました、(山から)下りて地上でライヴした時に、ありえないぐらい歌がうまくなったような感じがして・・・」
小田さん「ロングトーンが2秒くらい伸びていたよね(笑)」
●え~っ! 高地トレーニングですね!
HINAさん「本当にアスリートの人って、これか~みたいな(笑)」
●すごい! そういった効果もあるんですね。
HINAさん「ありましたね(笑)」

●今年9月の白馬山荘でのライヴは、どんな感じになりそうでしょうか?
HINAさん「今年は去年、一昨年と比べて、すごくたくさんの人が楽しみにしてくれている体感があって、それこそ山を好きな人だけじゃなくて、本当に音楽からスーパー登山部を知ってくれた人が、山に登ってみたいという理由で、白馬山荘を目指して準備しているっていうのがあったりとか。
なんて言うんですかね・・・その日にどれだけの人が集まって、どんな人が来てくれるんだろうっていうのも楽しみもありますね。
今年は有料開催にさせていただくんですけど、去年のライヴは土曜日にパンパンになっちゃって、300人ぐらいの人がレストランの中にいて・・・(今年は)みんながすごくいい状態で、気持ちのいい状態で聴いてもらうためにも有料開催になっています。
それでもなお長野まで足を運んで、そこから10時間ぐらい登山をして、宿泊でお金もかけて見に来てくれる人が、どれぐらいいるんだろうなっていうのも楽しみだし、それにその人たちに向けて、自分たちもこの1年2年3年で築いてきた音を伝えられるように演奏できたらいいなって思っています」
スーパー登山部、鋸山に行く!
※改めて、山や登山の魅力はなんでしょう?
小田さん「これはですね・・・僕、自分自身もずっと変わっていっているんですけど、山に登っていくと(ほかの登山者と)すれ違う時に挨拶をするんですよ。“こんにちは”っていう、文化として挨拶をするんですけど、最近はその会話が楽しいです(笑)
なので、山に登りながら自然に触れて、ひとりで登るのも好きなんですけど、ひとりになって孤独になって、そういう時にたまたますれ違った人と、“こんにちは”っていう挨拶をするその瞬間が楽しいです。すごくピンポイントな魅力しか今言えなかったんで、HINAちゃんに渡します」
HINAさん「私はずっとデジタル・デトックスができることって言っていたんですけど、それと関係していることで、山にしかいない動物とか植物とか、あとはすごく整備されている道だけじゃなくて、登山道かどうかわからないようなところもあったりとか・・・。
最近はすごく保護されていたりとか、整備されていることが増えたんですけど、そういうものに触れる機会って街を歩いているとあんまりなくて・・・。これは雑草だろうって思うものが、実は大切にされてきたものだったりとかっていうのは、山とか自然ならではだなと思っていますね。
その知識も私はまだないんですけど、ないからこそ、いろいろなところに気を遣って気を付けよう! みたいな気持ちになるし、生きていることって素晴らしいな~みたいな、本当にいちばん最初の感情・・・。
自分の足でここまでたどり着いたんだなっていうこともそうだし、そこに見えている景色が当たり前ではないなっていうこととか、それこそビルだって人が建てているわけだし、人と自然の力で成り立っている世界なんだな~っていうのを感じられるのが、すごく魅力だなと思います」

●いしはまさんはどうですか? 山や登山の魅力・・・。
いしはまさん「僕も(HINAちゃんに)近くて、人と自然、登山道って通ってきた人がやっぱりいっぱいいるから、そこが道になっているとか、整備してくれる人がいるから、そこが登山道として成り立っているとか・・・。
歴史に触れるような感覚もあって、そこを守ってきた人たちの思いみたいなのを、明確に受け取るわけじゃないんですけど、大きな時間に触れられるような気がしています。
最近はそういう魅力があるなと思いながら登ったりもしますし、単純に広い風景、行って見ないと感じられない、五感を使って摂取できるものはやっぱりそこに行かないと得られないので、言葉ではうまく言えませんけど(山に)行くことで伝わる魅力かなとは思います」
●千葉県の山に登ったことはあります?
小田さん「あっ! 実は最近、鋸山に行って来ました!」
HINAさん「行って来ました」
●鋸山はどうでした? メンバーみなさんで?
小田さん「はい、海からスタートして山の頂へ、あそこはすごいですね」
HINAさん「すごいとこですね」
いしはまさん「すごいね。しかも海からスタートしたこともよかったね」
HINAさん「そう!」
小田さん「産業遺産にもなっている切り落ちた岩がほかの山では見られない、まさしくノコギリだなって!」
HINAさん「映画の世界にいるみたいな・・・」
●絶壁もね。あそこ、いいですよね!
いしはまさん「遺跡みたいな、歴史を感じられる場所でした」
ネイチャーポップ・バンド、スーパー登山部の頂きは!?

●では最後に、スーパー登山部というバンドとして、どういう頂きを目指しますか?
小田さん「そうですね・・・まだ見ぬ未踏峰を登頂していきたいですね」
HINAさん「広い意味でね(笑)。登山だけじゃなく、音楽としても」
小田さん「むしろ実在する山は登頂し尽くされてはいるんですけども、やっぱりこの『山×音楽』っていう掛け合わせの僕らの活動、これはいっぱいあるんですよ、未踏峰がたぶん」
いしはまさん「そうだね」
小田さん「僕ら音楽バンドとして、どんどん大きくなっていきたいですし、行きたい山もたくさんあるし、この活動の中でまだ見ぬ挑戦をしていけたらなと思っています」
●HINAさんどうですか?
HINAさん「そうですね・・・今の言ったこともそうですし、スーパー登山部だからといって、山だけが好きってわけじゃない(笑)。私は海も好きだし、川も好きだし、自然というものが好きなのは変わりないので、スーパー登山部って名前を聞いて、(山に)登っていないと好きになっちゃいけないんじゃないかとか、そういうハードルがないバンドを目指していきたい。
なおかつ、入ってみたら登山したくなって、山の上で聴くっていうのがベストだなと思っています。なので、いろいろなアクティヴィティ、そういう意味でも海とかでもライヴをやってみたいし・・・」
小田さん「スキーとか」
HINAさん「そうそうスキーとか、いろんな角度からいろんな人に好きになってもらえるように価値観というか、広くやっていきたいなと思っています」
●いしはまさんはどうですか?
いしはまさん「僕らは今回アルバムの説明とかでも、たまに解説しているんですけど、僕らの音楽のジャンルを“ネイチャーポップ”と表現しています。 それは自然とか有機的なものを感じられる音楽性に対して、名前を付けてみようっていうところから、“ネイチャーポップ”という名前を付けているんですけど、まさに“ネイチャーポップ”と言ったら、スーパー登山部だよねっていう源流として、頂きに立てたらなと思います」

INFORMATION
今月リリースされた待望のファースト・アルバム『スーパー登山部』には新曲含め、全部で14曲収録されています。山の景色や自然を感じるキャッチーでポップな楽曲満載! HINAさんの風のような優しい歌声に惹き込まれます。ぜひ聴いてください。通常盤のほかに、完全生産限定盤も発売。
そして今月はアルバムを携えてライヴツアー中。また、夏フェスにも参加予定です。そして9月1日から3日まで白馬山荘でライヴを行なう予定となっています。
アルバムやライヴ情報について、詳しくはスーパー登山部のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎スーパー登山部:https://superclimbingclub.com
ファンコミュニティ「超山荘」では部員を募集中! ぜひ入部してください。
https://superclimbingclub.com/contents/menu/89007
2026/6/14 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「逃避行動」の研究者、長崎大学大学院・総合生産科学研究科の准教授「河端雄毅(かわばた・ゆうき)」さんです。
河端さんは1983年、熊本生まれ、福岡育ち。子供の頃から生き物が好きで、通っていた幼稚園の隣りにあった川で、いつもカニを捕まえていたとか。幼稚園に行きたがらない時は、お母さんが「カニを捕まえに行こうね!」と誘っていたそうですよ。
そんな河端さん、中学・高校生の頃には生き物好きだったことは、すっかり忘れていて、研究者になろうなんて、まったく思っていなかったそうです。
ところが大学を選ぶ時に、生き物が好きだったことを思い出し、京都大学農学部に進学。大学院生の時に石垣島で魚の移動パターンなどを研究。当時、研究室の研究者たちが生き生きしていたことに影響を受けて、研究者の道へ。
生き物の逃げる行動「逃避行動」を研究するようになったのは、重要な行動なのに、ほとんど研究されていなかったからだそうですよ。

きょうはそんな河端さんに、カニはいつから横歩きをするようになったのか、逃避行動としての横歩きにはどんなメリットがあるのかなどうかがいます。
☆写真提供:河端雄毅研究室
カニの横歩き、珍しい行動
※河端さんの研究チームが、多くのカニに見られる「横歩き」がおよそ2億年前の共通祖先に由来する可能性が高いことを明らかにされました。そもそもなんですが、カニの横歩きは、生き物としては珍しい行動なんですか?
「めちゃくちゃ珍しい行動だと思います。みなさん、おそらくカニ以外に横歩きする動物って知らないんじゃないですかね」
●確かに想像つかないです!
「ほかに一応、横歩きする生き物として、ヨコバイっていう昆虫が・・・葉っぱの上にいて、敵が近づいたらシュッと横に動いて、葉っぱの裏に隠れるっていう昆虫がいるんですけど、それ以外、私も知らないです。なので、動物界を見渡してもかなり珍しい行動だと思います」
●前歩きするカニもいますよね?
「そうですね。前歩きするカニもいます。それもあって、今回の研究につながりはしたんですけど・・・」
●横歩きするカニと前歩きするカニって、どちらが多いんですか?
「横歩きと前歩きを調べた研究が・・・今回たくさんの種で調べたっていう研究が初めてなので、何割何割とは言えないんですけれども、一般的には横歩きするカニのほうが多いと思います」
●形の違いとかっていうのはあるんですか?
「形は横歩きするカニのほうが横長になっていて、前歩きをするカニのほうが縦長になるという傾向にはあるんですけれども、そのシンプルな形からだけでは、どっちかわからない種も結構いて、かなりオーバーラップする・・・中間的な形でこいつは前歩き、こいつは同じような形だけど横歩き、っていうふうに種によって違ったりします」
●そもそも素朴な疑問なんですけど、なんで横歩きするカニと前歩きするカニがいるんですかね?
「そうですね・・・これは私の今回の研究成果とも関わってくると思うんですけど、前歩きするカニは、祖先からずっともともと前歩きだったんですよ。カニはカニとヤドカリの仲間の共通の祖先がいて、そこはもともと前歩きだと考えられています。
カニっていうのが新たに初めて現れて、そこから進んだあとに横歩きっていうのが現れる・・・これは推定ではあるんですけど、2億年ほど前に現れただろうという推定になっています。
もともと祖先からずっと前歩きだった、一度も横歩きっていう進化を経験せずに前歩きだったっていうカニと、それと一度、横歩きに進化したんだけれども、もう一度先祖帰りというか、何らかの理由で前歩きに戻ったタイプと、この2タイプがいると思います」

横歩きのメリット? 左右に素早く!?
※カニの横歩きには、なにかメリットがあるんでしょうか?
「まだそのメリットっていうのは、実はあまりきちんと解明されてないというところではあるんですが、ひとつ研究者の間で言われているのは、速度が速いというデータがあります。横のほうが歩幅が大きくなって、素早く移動できるんじゃないかっていう、そんなことを言っている研究グループがあります」
●素早く動くのも、それこそ逃避行動ですよね?
「そうですね。さらに右・左に逃げることができるので、普通だと一方向なんですけど、素早く、さらに左右に行けるということで、非常に逃げる上ではメリットが大きいです」
●大きなカニって動きが鈍いように思うんですけれども、やっぱり体が小さいほうが素早く逃げられるということですか?
「意外と絶対的な速度は大きくなるほうが早いんですよね。なので、体重が重くなればなるほど早くなります。歩幅が大きくなるんで、早くなるんですけど、小さいほうがやっぱり小回りが効くんですよね。
車をイメージすると小さい車だと小回りが効くけど、大きい車だと速度が出るんだけど、小回りが効かないっていう、そういうことはあります。 なので、小さいほうが相手をかわすっていう意味では逃げることができると思うんですけど、速度だけで言うと大きいほうが速いです」
●素早く逃げるっていうのは、危険を察知する能力だと思うんですけど、カニってどうやって察知するんですか?
「カニは視覚で感知することもあります。カニにちょっと細かい毛がついているのってわかりますか。そこがセンサーになっていて、水の流れとか振動とか接触とかを感知することができるので・・・もちろん視覚がめちゃくちゃ重要なんですけれども、それだけじゃなくて、そういうセンサーも使っていると思います」
●察知する能力は高いって言えるっていうことですか?
「そうですね。もちろん種にもよるんですけれども、いろんなカニの種がいるので・・・(察知する能力が)高い種が多いと思います」

カニたちの家系図!?
※カニがなぜ横歩きをするようになったのか、その疑問に近づくような研究結果が、河端さんの研究チームが発表された「およそ2億年前の共通祖先に由来する可能性が高い」ということだと思うんですが・・・
「共通祖先」を明らかにする意味というか、そこに研究を絞ったのは、どうしてなんですか?
「私たちの研究グループは、どういうメリットがあるのかを並行して、今も研究を進めているんですけれども、その中でそもそも横歩きの種もいるし、前歩きの種もいるっていう、そういうところから、いったいどこから横歩きが始まったんだろう・・・
例えば、並行して何回も進化が起こっている場合もあるし、一回しか進化が起こってなくて、そこから広がった可能性とかもあるので、そういう研究も非常に面白いなと思って始めたという・・・
それに最近、遺伝子情報がすごく手に入りやすくなっていて、系統樹と言って、いろんなカニたちの家系図のような、そういうものが遺伝情報をもとに作られるようになってきたので、そこから一般の私みたいにそんなに遺伝情報とかに詳しくないそういう人でも、そういう研究ができるようになってきたっていうそんな背景があるわけです」
●この研究を始めたのは、いつ頃なんですか?
「2020年から一応開始はしたんですが、コロナ禍ということもあって、本格的に研究を開始できたのは2021年からになります」
●データもたくさん集めないといけないですよね?
「そうですね。そこはすごく大変だったところで、学生たちがすごく頑張ってくれました」
●どんなふうに集めていくんですか?
「自分たちで(カニを)捕りに行くことも、もちろんあるんですけれども、いっぱいデータを集めることができたのは、まずエビカニ水族館のかたの協力があって、そこに展示されているカニの行動をたくさん撮影させてもらいました」
●いろんな種類のカニっていうことですか?
「そうですね。今回使ったデータは50種なんですけれども、実際にはもうちょっと取っていて、家系図というものがなくて、実際に解析には使えなかった種とかも含めると100種近く集めています」
●ええ〜っ! そうなんですね。研究していたカニの中で横歩きと前歩きっていうのは、どれぐらいの割合だったんですか?
「今回使うことができたデータ50種のカニ、正確には49種のカニと1種のヤドカリなんですけど、その中では35種が横歩き、15種が前歩きに分類されます」
●研究用のカニを集めるだけでも本当に大変ですよね。
「そうですね。水族館にも協力してもらいましたし、さらにひとりの学生が台湾の大学に1年間留学していて、そこは実はすごくありがたいと言いますか・・・長崎大学と台湾の高雄科技大学が協定を結んでいて、1年間、留学がしやすいという状況にあって、さらにそこにカニの分類の専門家の先生がいました。
台湾は熱帯地方なので、カニの種類がすごく豊富なんですよね。そういうありがたい状況もあって、そこでもかなりの数のカニを集めることができました」
●海外の研究者のかたにも協力をお願いしてっていう感じだったんですね。
「そうですね。そのかたも共同研究者として、共著者として論文には入っているんですけど、すごく喜んでくれました」
●どんな方法で研究するんですか?
「すごくシンプルなんですけども、円形の水槽を作って、そこにカニを1匹入れて、そのカニが横に移動するのか、前に移動するのかっていうのをビデオで撮影して数値化してやるという、そんな方法です」

前期ジュラ紀に特別な進化!?
※「2億年前」にたどりつくためには、化石を調べたりしたんですか?
「私は化石は使っていないんですけど、化石データも家系図のようなもの・・・先ほど言ったのを作るには、化石の情報とかも使われていると思います。
私たちが今回やったのが・・・既に遺伝子情報から作ってくれているカニの家系図があるんですね。そこの末端の部分に、これが前だったか横だったかというのを入れてやる。
そうすると、家系図が近いカニ同士の共通祖先は前だったか横だったか。さらにもっと遡ると前だったか横だったかというのを、今生きている生物が前だったか横だったかというのから、過去をどんどんどんどん推定していく、そういうやり方なんです」
●2億年前には、カニはいたっていうことなんですよね
「そうですね。2億年前にカニがいたっていうのは、化石のデータからもわかっています。ただそこも分類的に、やっぱり化石ってどっちの分類になるかというのが非常に難しいらしいですね、2億年前ぐらいの化石だと・・・。実は形態的には前歩きしそうな、先ほど言ったような縦長っぽいカニがたくさん見つかっています」
●2億年前って恐竜の時代ということですか?
「そうですね。前期ジュラ紀という時代で恐竜も出てきますし、カニに関して言うなら、ちょうど浅い海がどんどん(できて)・・・カニは浅い海に棲んでいると思うんですけど、ちょうど大陸が分断される時期で、新しい浅い海がどんどん作られるような時期だったと思います」
●カニにとっては棲みやすい環境だったんですか?
「そうですね。棲みやすいというか、ちょうど(その時期は)ほかの生物があまり入っていないような、そこに侵入できるであろう環境が広がっているような、そんな時代だったと思います」
●そんな時代にカニが横歩きするようになったのは、何かそうせざるを得ないものがあったんですか?
「これは本当に難しいところで、非常に面白いところではあるんですが、どうしてそうなのかっていうのは、わからないとしか言いようがないんですね。
そういう新しい環境が広がった、そういう時はもしかすると、特殊な進化が起きやすかったのかもしれないですね。ただ進化は特別な、生まれてそれにメリットがあったら、すごく広がっていくんですけど、生み出すのは非常に・・・なんていうか、特に前移動から横移動は物凄く体の構造とか変わるわけなんですね。
そんな特殊なものが生まれる、そういう進化は本当になかなかないイベントですし、これがどういう状況で起こるかっていうのを理解するのは、非常に難しい問題です」
●でもそうやって一度横歩きに進化したのに、また前歩きに戻るみたいなカニもいるんですよね?
「そうですね。そこがまた面白いところで、おそらく横歩きにメリットがあるんだろうけども、それが必要なくなったり、前歩きのほうのメリットが高い場合、いろいろな状況に応じて、前歩きと横歩きは変わっていったりするのかなと・・・」

横歩きのメリット、デメリット
※今後もカニの横歩きについての研究は続けていくんですか?
「そうですね。これからもまだ、今やっている最中で、きょうはそこまでお話しできなかった“どんなメリットがあるのか?”っていう、そんな研究もやっています。逆に“どんなデメリットがありそうだ“っていうこともいくつか仮説があるので、そういう研究も進めていきたいと思います」
●現段階で言える範囲で、メリットやデメリットはありますか?
「先ほど言った速度が早いっていうのは、可能性として、ほかの研究者も言っていて、現在私たちもデータをとっている最中ですけど、そういう傾向がありそうだという結果は出ています」
●横歩きのデメリットはあるんですか?
「そうですね・・・横歩きのデメリット、これはちょっとまだお話をできる段階ではないんですけど、例えば、横歩きをする必要がない状況はあると思うんですね。
横歩きが、捕食者をかわすのに速度が早いというメリットがあるとして・・・だけど例えば、群れでいるとか、貝の中に入るカニとか、寄生するカニとか、そういうほかの逃げ方、捕食者を回避する方法をとっているようなグループで、頻繁に前歩きへの先祖帰りっていうのが起こっているので、もしかすると必要がない状況下になったら、前歩きに戻るっていうようなことも考えられるかもしれません」
INFORMATION
河端さんは、これまでの逃避行動の研究で、ほかにも大発見をされています。それはウナギの稚魚の逃避行動。それはほかの魚に捕食され、胃の中にまで取り込まれているのに、なんと! ウナギの稚魚は、胃から出てきて、エラの隙間から逃げ出したそうですよ。

生き物の逃避行動について、もっと知りたいと思ったかたは、ぜひ河端さんの研究室のサイトをご覧ください。
2026/6/7 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、山好きなイラストレーター「中村みつを」さんです。
中村さんは1953年、東京生まれ。山好きが講じて、ヒマラヤをはじめ、ヨーロッパアルプスや南米パタゴニアなどにも遠征。山好きなイラストレーターとして自然や旅のイラストやエッセイを多く手掛け、現在は山岳雑誌「岳人」の表紙を担当。また、「山の日アンバサダー」でもいらっしゃいます。
中村さんには5年前にもご出演いただき、東京の町中にも山がある、想像力をふくらませて楽しもうというお話をしていただいたんですが、そんな中村さんが先頃、新しい本『続 ・東京まちなか超低山てくてく縦走』を出されたということで、改めて番組にお迎えすることになりました。
今回は、町中にある超低山を「縦走」するルート設定の面白さのほか、六本木から始まる「大江戸トレイル」や「流山富士」など、まちなか縦走の楽しみ方などうかがいます。
☆写真&イラストレーション:中村みつを
協力:ぺりかん社

高低差50メートル以下
※今回の本の、まちなか縦走のお話をうかがう前に、改めて「超低山」の定義や東京の町中には、どんな山があるのか教えてください。
「改めて言うと、超低山っていうのは名前の通り低山を超えた低さ、いちばん低い山。東京だと高尾山とか、それから房総だと鋸山とかってありますよね。あれがいわゆる低山。それよりもずっと低くくて、町に寄り添った、これ、山かな? というのが超低山なんですよね。
で、定義はなかったんで僕なりに定義付けをしたのが、標高で言うと100メートル以下。登山口から山頂まで手を伸ばせば届くぐらいの小さな山ですけど、高低差が50メートル以下っていうふうに一応定義は付けているんですけど、標高って言っても大概の人はピンとこないんですよね。実際にそこに立った時は高低差で山の大きさを見ると実感できると思います。
例えば、ビルを見た時に、ビルの1階から屋上までを見上げた時に、それが高低差なんです。それを山だと見立てれば、よりわかりやすいと思います。それが50メートル以下っていうのが必要で、超低山っていうふうにしています」
●一般に売られている地図に超低山って載っているんですか?
「載っていませんね(笑)。載っていたらこんな苦労はないんですけど、神社の名前とか公園とか、そういう形で出ていますね。
例えば、公園がいちばん多いですけど、西郷隆盛の名前のついた目黒にある西郷山公園とか、北区の王子にある飛鳥山公園とか。あとは愛宕山だと愛宕神社っていう、愛宕神社という名前がついていますけど、愛宕山っていうふうにはついてないんですよね。
だからそれを探っていくことになるんです。あとは地名ですね。住所表示の地名、例えば目黒区の東山とか、駅だって代官山とかね 。なんとか山っていうのは地名とかで見ることはできますけどね」
(編集部注:中村さんによると、超低山のタイプは、大名屋敷内の庭園に造られた人工の山「築山(つきやま)」、江戸時代に「富士信仰」の影響でまちなかにたくさん造られた「富士塚(ふじづか)」、そして中村さんが超低山に注目するきっかけになった虎ノ門の「愛宕山」などの「天然の山」。
まとめると「築山」「富士塚」そして「天然の山」の3つになりますが、その3つのタイプに収まらない山として、崖のような場所を「見立ての山」と呼んでいるそうです)
町中の山を「縦走」!?
※先頃出された本が『続・ 東京まちなか超低山てくてく縦走』・・・この本は前作をもとに、今度は町中の山を「縦走する」という、そんなコンセプトで書いた本と言っていいんでしょうか?

「そうですね。ひとつひとつの山をこなしたら、もっとスケールアップして、例えば1日のうちの2〜3時間、山に浸りたいなっていうふうにだんだん思ってきたら、この縦走スタイルがあったら面白いなと思って、いろいろ考えたんですね。
で、そもそも町の中なので、本来の山とは全然違って建物ばっかりですよね。特に首都圏はね。そこに尾根道とか見えるわけじゃないですよね。普通に見る分にはね。
で、山の地形自体がなかなかつかみにくいと思うんですよね。だけど、普段歩いていると、ここに坂道があるなとか、ここは町の中でもすごく低地で、周りが高台に見えるなとかって、なんとなく視覚的に感じることがあると思うんですよね。
普段、通勤する時でも学校の行き帰りでもいいんですけど、“この坂やだな、こんなところ登るのやだな”とかって思う人もいるかもしれないし、それが地形なんですよね。
高いところは尾根筋と呼んで、下の低いところは谷筋になるんですけど、それで東京を例えて言えば、武蔵野台地っていうのが西のほうから東京湾に向かって枝を伸ばすように広がっているんですよ。その間に尾根筋と谷筋があるんですよね。
例えば、本郷だったら本郷台地っていうのがあって、高台で、その間にまた低いところがあって、そこは窪地ですよね。そういうところは、江戸時代だったら小川が流れているような、そういう地形になるんですけど、それ自体は今も昔も変わってないんですよね。
変わっているのは、そこに乗っかっているものだけなんです。建物とかそこにバスが走っているとか電車が走っているとか、それだけで地形自体は変わってないですよ。それを地形を読みながら1本の道を作るんですよね。
で、Aという山をまず最初に頭に入れて、Bという山、Cという山が地図上でこのあたりはこういうものがあるだろうと、ちょっと歴史も調べながら行くと、ここにはこういう人の屋敷があったとか、大概そういうことが多いんですよね。
で、小説でも映画の世界でもよくあるんですけど、高いところにはお金持ちが住んでいる。低いところには庶民が住んでいる。よくそういう例えがあるんですね。
時代的に言えば、お殿様は高いところ。例えば今で言えば、実業家とか、それからかつての華族とか、そういうお屋敷は高いところに持っているんですよね。で、下のほうに庶民がいる。そういう形があるんで、高いところが意外と残っているんですよ、今もね。そういう歴史的なものの関係で、それがとてもありがたかったってことで、そこを加えながら1本の道を作っていくんですよね」

余計なことをすると、1日楽しくなる!?
※今回の本『続 ・東京まちなか超低山てくてく縦走』でいちばんこだわったのは、どんなところですか?
「こだわったのは・・・机上登山を最初するんですよね。机の上にいろんな地図を広げたり、いろいろ頭の中で妄想したりして、多分ここはこうだろうとか思いながら、あらかじめルートを作るんですよね。
実際に行くわけなんですよ。行かないとわかんないんです。頭の中で想像だけだとね。で、行ってみて、それでドキドキするわけですよ。
本当に面白いかな、楽しいかな、なんかお節介かくようなことになるのかなとか、いろんなこと思いながら、まず最寄りの駅から歩き始めるんですけど、だいたい頭の中で描いてきたルートを辿ると、ピタッと符合することもよくあるんですよ。”間違いなかったな〜”そんなこと思いながら・・・。

基本的には大通りはなるべく避けて、小道を選んで行くんですけど、路地裏が多いんですね。小道もただ無駄に歩いても遠くなるだけなんで、そこは上手に歩くんですけど、そうすると昭和とか、そういう暮らしがまだ残っていたりする場所に触れたりもするんですよね。
それがまた道中楽しくなるんです。そうやって右左とか自分の気に入った道をとにかく選んで、それで下から上に登っていく。山は基本的に下から上に登るのと同じで、町の中でもそういうふうに考えるわけですよね。
それできょうは、この〇〇神社って名前がついた〇〇山に登りましょうと言って、登るわけですよね。で、見晴らしもいいなとか言いながら、まずはひとつは登ったぞと・・・次はどういうふうに行こうかと・・・。
というふうに、縦走というスタイルをいくつか作っていくわけなんです。初めはちょっと大げさかなと思うような、縦走ですからね・・・ただのお散歩だろって言われそうなんですけど(笑)、そこは気持ちが大事なんですよ。なんでも本気で遊ばないと面白くないんですよね」
●山から山へのルートをトレイルと捉えていらっしゃる、その発想も面白いなと思いました。大人の冒険みたいな感じで楽しいですね。
「みなさん、子供心に返ってもらっていいかなと思うんですよね。もう無邪気にね。道を迷うのも久しぶりに楽しいと思いますよ。
人は普段いかに物を見てないかっていうことに、意外と気づかされるんですよね。普段通っている道とか、それから車窓から見ている風景の中に、いっぱいこういうのがあるんですよね。
やっぱりみんな忙しいのと、あと目的地に行くのが最大の、その人の行動なんで余計な物を見ない。転ばないように歩くとか、人にぶつからないように歩くとかね。それが都会に暮らす人たちのスタイルだと思うんですよね 。そこを一回パッと切り離して余計なことをすると、こんなふうに見えてくると思います」
●確かに効率よく目的地に向かうには、どうしたらいいかっていうことしか考えてなかった気がします。寄り道したりとか、余計なことをするっていうのは大事ですね。
「それは発見とか感動したりとか、ものすごく頭の中にいろんなものが入ってくるんで1日楽しくなると、僕は思っているんですけど・・・」
ゴージャスな「大江戸トレイル」!?
※ここからは新しい本『続・東京まちなか超低山 てくてく縦走』に載っているコースの中から、いくつかおすすめのコースをお話しいただきたいと思います。
私が気になったのが「大江戸トレイル」という・・・名前もいいな~と思ったんです。六本木から皇居という、都心のど真ん中、“ザ 東京”という感じがするんですけれども、このあたりに山ってありましたっけ? っていう感じなんですが・・・。

「そうなんですよね。これも最初(山を)どうつなげていくかっていうのが、ものすごく知恵を使ったところなんですね。単体(の山)で見ると、確かにポツンポツンとあるっていうのは、もちろん自分の中でもわかっていたし、ただそれを美しく作りたかったんですよね、1本の道をね。東京にいること忘れちゃうくらいに、そういうふうに自分では作りたいなと思ったんですよ。
大江戸トレイルっていうぐらいなので、すごくゴージャスな名前なんですけど、東京の本当の中枢というか、ど真ん中というか、あらゆるものがここに、国会議事堂も含めて皇居もあれば、それからおしゃれな六本木とかね。
すべてがこの中にギュッと絞り込まれているところを、間に山を見つけていくって、なんとも豪快だなと思ったんですよね」
(編集部注:中村さんが知恵を絞ったという「大江戸トレイル」、六本木をスタートして、赤坂の氷川神社、日枝神社、そして霞ヶ関を抜けて、ゴールの皇居東御苑を目指すルート、およそ5.5キロのコースになっています。
いったいどこに山があるのかと、疑問に思ったかもしれませんが・・・あるんです、山が! ぜひ本でお確かめください)
流山に富士山!? 赤城山も!?
※続いて、本に千葉県流山市にある「流山富士と赤城山」というコースが載っていました。このコースはどんな特徴がありますか?
「これは僕もず~っと気になっていて、なかなかちょっと超低山と言えど、県を跨いで行くんで、後になってしまって、ようやくその時に出かけたわけですよね。
ここに行くひとつの楽しみの理由としては、流鉄流山線っていうローカル線にあるんですけど、流山駅が終点なんですけどね。子供の頃から鉄道好きだったんで、これに乗りたくて、おまけに山も登れたら、こんなに楽しい1日はないだろうというふうに考えて出かけたわけなんですね。

ここには“富士塚”という富士山を模した、言ってみれば小さな富士山ですよね。それと“赤城山”という、どっかで聞いたことのあるような名前だと思うんですけど、群馬県の赤城山、あれと同じ名前の赤城山が、この流山という町の中に存在しているんですよね」
●千葉の流山市にあるんですね。
「そうなんですよ。駅の周辺にあるという、今だいぶ周りが開発されてきて、新しいマンションができていたりするんですけど、この流山駅周辺っていうのは、明治時代の建物もたくさん残っていて、あと新撰組の近藤勇が最期にそこで官軍に捕えられたという、そういう歴史上の話があったりとか・・・。
それから料理に使う“みりん”ですよね。白みりんの発祥の地とも呼ばれていて、そういうのも実は山と関わりがあったりするとか、そういうすごく掘り下げていくと面白い町なんですよね」
●スタートは、流山駅からっていうことですよね?
「そうです。終点の流山駅でいろんなパンフレットとかも置いてあるんで、ちょっと探してみるといいかもしれないです」
※富士塚の「流山富士」から、流鉄流山線の隣の駅「平和台」方向に歩いていくと「赤城山」があるそうです。その赤城山について、こんなお話をしていただきました。

「緑の、何と言ったらいいんでしょうね。塊みたいなものが忽然と現れるんですよね。流山ってまっ平らなんですよ、土地が・・・。なんでこんなところにこんなこんもりとしたものがあるんだろう? って不思議に思うのが普通なんですよね。
それでいろんな伝承を読むと、群馬県の赤城山が噴火した時に、そこから流れ出た土砂が川の流れに乗って、この町にとまったって言うんですよね。大きな塊がね。それがこの山だって言うんですよ。
それでそのとまった場所を、流れてきた山なので、“流山”っていう地名につながっているっていう一説があるんですよね」
●そうなんですか!
「ものすごく、何て言うんでしょう、雄大なおとぎ話みたいな・・・これがまたすごく素敵だと思うんです。(赤城山は)実際に一周することができるんです。独立峰なんで、本当に流れてきたんゃないかと思うくらいです。山頂もすごく静かなんで、いい山です。おすすめです」
楽しみ方はいろいろ
※ヒマラヤやヨーロッパ・アルプスなどを旅されたということですが、標高の高い山の楽しみ方と、超低山の楽しみ方はまったく別物ですよね?
「もう全然一緒にすることもないんですよね。山の好きな人から“そんな低い山のどこが面白いの?“と聞かれたことあるんですよ。それは比較するからわからないんですよね。比べてはいけないんです。
楽しみをやっぱり比べちゃいけない。これはこういうものなんだと・・・高い山の面白さもあるし、雪山の面白さもあるようにね。岩壁を登る面白さもあって、みんな違うんですよね。
だからジャンルがそれぞれあって、それに合わせて自分の気持ちをそこに向けるっていうのがいちばん大事です」
●低い山だと、年齢とか体力とか関係なく、誰でも楽しめるレジャーなのかなって思うんですけど・・・。
「そうなんですよね。今、中高年のかたで山に登る人たくさんいますよね。エベレストにも登るぐらいですから。僕も2年前にはカラコルムっていうパキスタンの、ヒマラヤの隣の山なんかも行ったりしたんですけど、別に分ける必要はないんですよね。

高い山にも行く時は行くし、普段こういうところにも足を向ける。たくさんフィールドがあったほうがなんか得な気がするんですよね。いつでも楽しめるという、それで頑張らないっていう意味では、超低山はいちばんいいです。ず~っとお話しながら登れます」
●いいですね。
「だからお友達とか親子でもいいし登れるんですよね。振り返ってみると、江戸時代の人が実はそういうことを、もうすでに楽しんでいたスタイルなんですよね。
富士塚ももちろんそうだし、山をすべて見立てるっていう考え方が、その当時に生まれているんですね。富士山に見立てるとか、丹沢の大山に見立てるとか、そういうふうにして小さなものを愛でながら楽しむ・・・。
お弁当を持ってお花見登山するとか、それから紅葉だったら紅葉を見ながら江戸の山を楽しむっていう、当時からみんなやっていたんですよね。それを再現する意味で、ビルがたくさんある中でも、それを忘れさせるような山が今でもありますよ~ってことを伝えられたらいいなと思って書き始めたんですよね」
●では改めてになりますが、最後に超低山のいちばんの魅力を教えてください。
「う~ん・・・たくさんあるんで難しいですよね。やっぱりワクワクする気持ちっていうのが・・・知らない土地に行ったってワクワクしますけど・・・こんな身近に自分たちが暮らしている町の近くに、忘れられていたことに気がついた時の驚きとか発見っていうのは、いくつになっても味わえると思うので、ちょっとそういう意識を変えてみるといいんじゃないかなと思うんですけどね」

INFORMATION
この本を持って、お友達やご家族で、まちなか縦走を楽しんでみてはいかがでしょうか。きょうご紹介したほかにも「本郷トレイル」や「神楽坂凹凸(おうとつ)トレイル」「練馬大泉アルプス」などのほか、横浜・横須賀、埼玉、千葉のコースも掲載されています。
各コースにはアクセス方法や、参考のコースタイム、そしてアドバイスなども載っていますよ。なにより中村さんの親しみのある絵と文章が魅力的です。
ぺりかん社から絶賛発売中! 詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎ぺりかん社:http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001998











