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福井から東京に恐竜がやってきた!〜「オダイバ恐竜博覧会2024」の見所 & 恐竜王国・福井の謎に迫る!

2024/4/21 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、現在開催中の「オダイバ恐竜博覧会2024」の監修を統括された「福井県立恐竜博物館」の主任研究員「柴田正輝(しばた・まさてる)」さんです。

 柴田さんは1975年、兵庫県生まれ。子供の頃からお城や古墳など、古いものに興味があり、特に幼稚園の頃に見た、小さな葉っぱの化石に感動! いまだに印象的な出来事として覚えているそうです。

 そして、地質の研究をしていた広島大学大学院時代に偶然にも恐竜の歯の化石を発見。これを機に、恐竜の研究をしたいと思うようになり、恐竜研究の先進国アメリカに留学。モンタナ州立大学ボーズマン校を経て、現職の福井県立恐竜博物館の主任研究員、そして福井県立大学・恐竜学研究所の教授として活躍されています。

 今週は、いま話題の「オダイバ恐竜博覧会2024」をクローズアップ! 恐竜博の見所ほか、なぜ福井で恐竜の化石が多く発掘されるのか、そして見つかった新種など、恐竜王国・福井の謎に迫ります。

「オダイバ恐竜博覧会2024」

なぜ福井で恐竜化石!?

※「オダイバ恐竜博覧会2024」のお話の前に、なぜ福井県で恐竜の化石が多く発見されるのか、そのあたりのお話から・・・どうして福井県で恐竜の化石がたくさん発掘されるのでしょうか?

「よく聞かれる質問のひとつではあるんですけど・・・現在、日本では実は北海道から鹿児島まで様々な場所で、恐竜化石は発掘されているんですね。

 恐竜化石を見つけたいとか見つけようと思った時に、恐竜化石が見つかるポイントが大きく3つあります。 まずひとつ目は、恐竜時代の地層があることなんですね。恐竜時代は時代名でいうと、三畳紀から白亜紀っていう時代なんですが、ざっくりいうと、だいたい2億3000万年前ぐらいから6600万年前ぐらいの地層なんです。やっぱり恐竜がいた時代の地層がないと、化石は見つからないんですね。それがあるってことがひとつの条件なんですね。

 もうひとつは、恐竜は、みなさんよく間違えちゃうんですけども、陸にいたその時代の大型の爬虫類なんですね。ですから、空を飛んでいる翼竜だとか、海にいた首長竜は、恐竜とは呼ばないんです。なので、陸の体積した地層、川とか湖で溜まった地層があるということ、これがふたつ目になります。

 ですので、恐竜時代の陸とか川とか湖で溜まった地層があれば、そこでは絶対に恐竜化石が見つかるんですね。それに加えて最後は、その地層が見えていないと化石を見つけることができないので、その地層が見えていることっていうポイントがあります。

 というのも、日本の山々を見ていただければわかるんですけども、恐竜で有名な、例えばアメリカや中国のそういう発掘現場をイメージしてみても、日本の山は木々で覆われていまして、地層がほとんど見えないんですよね。そこに今の条件のふたつを満たす地層があったとしても、やっぱり見えていなければ、見つけることはできない。その3つの条件さえ満たせば、日本のどこでも恐竜化石は発掘されます。

 現在、兵庫県や熊本県でも多くの恐竜化石が発見されているんですね。その中でなぜ福井県が日本でいちばん恐竜化石が多く発見されているのかというと・・・これがいちばん大きなポイントではあるんですけれども、継続的に発掘調査を行なっていると・・・。
 福井県の発掘調査は1989年から始まっていまして、そこから1年とか2年の休止時期はあるんですけれども、ほぼ継続的にここ30年以上発掘調査を行なっています。そこにほかの県、ほかの場所とは違うポイントがあるので、そういうところから福井県が、日本でいちばん恐竜化石を産出する場所になっていると言えると思います。

 福井県の場合は、私たちの発掘現場は勝山市というところにあるんですね。その隣の大野市でも恐竜化石は発見されているんですが、恐竜博物館が発掘調査を行なっているのはまさに、その勝山市のひとつの発掘現場のみ。その現場だけでずっと発掘調査をやっています。
 ですから、もちろん先ほど言った3つの条件も重要なんですけれども、我々の場合は、先人たちが恐竜の骨も含めたその当時の骨の化石、脊椎動物の化石が密集している地層を見つけてくれていますので、そこをずっと調査することによって多くの化石を発見することができています」

福井県立恐竜博物館・主任研究員 柴田正輝さん
福井県立恐竜博物館・主任研究員 柴田正輝さん

福井で発見された6種の新種

※勝山市北谷町の発掘現場で、これまで6種の新種が見つかったそうですね。どんな恐竜の化石が発掘されたんですか?

「全部説明するとたぶん1時間ぐらいかかるので、だいぶ割愛しないといけないんですが、特に重要なものとしては、日本の恐竜として名前が付けられた『フクイラプトル』という恐竜がいるんですね。これは肉食恐竜なんですが、福井の恐竜の代名詞みたいな感じで、よく使っている恐竜になるんです。鋭い前の爪を持つ全長4メートルほどの肉食恐竜、これが非常に代表的な恐竜のひとつです。

 そのほかに植物を食べる草食恐竜の『フクイサウルス』。これは日本で最初に全身骨格が復元された恐竜になるんです。そういった恐竜も発見されたり、全長10メートルほどの首と尻尾の長い『フクイティタン』という草食恐竜も発見されています。

 まだまだいるんですよ。最も新しいものとしては・・・論文になることによって、学名としてちゃんと恐竜に名前が付くんですけども、昨年の9月に名前が付いたばかりの『ティラノミムス』という新しい恐竜ですね。

 これはオルニトミモサウルス類という恐竜で、(映画)『ジュラシックパーク』をご覧になられたかただったら、ダチョウ型の恐竜が集団で走ったりするのを覚えていらっしゃるかたもいると思います。その恐竜のずっと祖先になるタイプにはなるんですけれども、このような恐竜が発見されているように、非常に多様な恐竜化石が発見されて、名前が付いているんです。今回のお台場恐竜博でも展示しています。

ティラノミムス・フクイエンシス
ティラノミムス・フクイエンシス

 『スピノサウルス』っていう、みなさんによく知られた恐竜がいるんですけども、その歯の化石も発見されています。それ自体はまだ骨の化石が発見されていないので、種類だとか新種なのかどうかっていうところも含めて、はっきりはわかってないんですね。歯の化石だけが発見されていますので、今知られている6種類に加えて、将来まだまだ新しい種類を発見することができるんじゃないかなというのが、私たちの発掘現場になります」

●その6種の中に、柴田さんが発掘された新種も含まれているんですか?

「私も2007年から発掘調査に参加していますので、私が調査に参加してから発見して名前が付いたものも半分ほど含まれています。やはりその中でも思い入れのある恐竜のひとつは、フクイティタンという首と尻尾の長い恐竜ですね。これはちょうど私がこの恐竜博物館で仕事を始めた次の年に発見できた恐竜ですので、非常に思い出のある恐竜のひとつになります」

世界に誇れる恐竜博物館

※柴田さんが所属する福井県立恐竜博物館は、規模や展示内容も含め、世界的にも評価されているそうですね。どのあたりがいちばんのアピールポイントなんですか?

福井県立恐竜博物館の全景
福井県立恐竜博物館の全景

「当館は恐竜博物館としては、やはり世界的にも展示標本数も展示の仕方も展示内容も、かなり誇れるレベルにあると、自画自賛ですけれども、私も海外の博物館を見てそのように思っています。

 私たちの博物館が目指してきたところのひとつとして、まずはアジアの恐竜を数多く展示して、当館に来れば、アジアの恐竜を様々たくさん見られる、そんなふうにしたいという、私たちの先輩がたの思いもあります。そういった中で、去年の7月にリニューアルしてから、恐竜の全身骨格が50体展示されているんですね。こんな博物館は日本にはどこにもなくて、世界的にも非常に少ないんですね。

 その中で、もちろん福井県の恐竜は当館でしか見られませんけれども、それ以外にも中国やタイ、そういったところで発見されている、当館でしか見られないユニークな恐竜化石を展示できているのが、ユニークなポイントのひとつですね。

 もうひとつは、やはり発掘現場を持っている博物館、世界的にもあるんですけど、発掘現場の近くにある博物館はなかなかないんですよね、世界的にも。で、発掘現場を持っていることと、発掘現場から15分しか離れていないという利点を利用して、博物館本体とは別に、発掘現場に『野外恐竜博物館』っていうちっちゃな博物館も持っています。

 もちろんここは非常に雪が多い地域ですので、雪が溶けた春から秋までしかオープンしてないんですけど、発掘現場を直接見ていただける、なおかつそこで私たちが発掘している岩石を直接割って、化石調査の体験もできるというような、ほかの博物館にはない特徴があるということが、たくさんのお客さんに来ていただいている理由になるんじゃないかなと思います」

(編集部注:実は福井県立恐竜博物館は世界三大恐竜博物館のひとつとされています)

福井県立恐竜博物館の近くにある発掘現場
福井県立恐竜博物館の近くにある発掘現場

※柴田さんは、どんな恐竜を専門に研究されているんですか?

「私は今、恐竜博物館では恐竜を研究していますが、恐竜といってもやはり恐竜博物館の研究員も複数人いますと、個々に研究する種類が分かれているんですね。
 私の場合は植物を食べる草食恐竜のイグアノドン類っていう種類で、それを専門的に研究しています。その軸となっているのが福井県で発見されているフクイサウルスという恐竜になります。このフクイサウルスという恐竜なんですが、ぱっと言ってしまうと、一般的に子供たちにはあまり人気がない恐竜の仲間なんですね」

●え、そうなんですか?

「というのも、なんていうかな・・・ツノも持たない、敵も襲わない、武器も持たない・・・見た目がツルッとしているって言ったらおかしいですけど、走って逃げるぐらいの恐竜なので、子供たちを魅了するような恐竜ではないですね。

 ですが、やっぱりその当時の恐竜の中では非常に重要で、どの発掘現場でも恐竜の中では比較的多く見つかる種類です。もちろん肉食恐竜の餌にはなっていたんですが、非常に多様に進化して世界的に広まる種類なので、その種類を調べることで、その当時の恐竜の移動みたいなことが議論できればなと思っています」

(編集部注:柴田さんは博物館のプロジェクトとして、中国やタイでの発掘を10年以上、行なっているそうです。特にタイでは福井と同じ時代の地層から、福井で発見された恐竜に近い化石が発掘されていて、その中から「シリントーナ」と命名された恐竜の発見があったそうです。
 名前の由来はタイのシリントーン王女で、古生物学の発展に寄与したことから王女の名前をとって「シリントーナ」と名付けられたそうですよ。この「シリントーナ」の骨格標本は福井県立恐竜博物館に展示されているそうです)

お台場を背景に泳ぐスピノサウルス

●柴田さんが監修を統括されました「オダイバ恐竜博覧会2024」を、私も先日見学させていただきました。第1会場から第3会場までどれも本当に楽しかったです。

「ありがとうございます」

●多くの家族連れのかたがいて、賑わっていました。お父さんお母さん、大人たちもみんな夢中になっている姿がすごく印象的だったんですね。今回の恐竜博覧会は福井県立恐竜博物館の特別協力ということで、福井からどれくらいの数の全身骨格ですとか標本などを持ってこられたんですか?

「ロボットと一部の実物以外は、ほぼ全部、福井県立恐竜博物館から持ってきたものを展示しております。全身骨格だと恐竜以外のものも含めて21体持ってきておりまして、そのほか細々なものを含めると、もう少し展示数が増えるんですが、その標本すべて恐竜博物館から持ってきております」

●恐竜の復元ロボットも迫力ありますね!

「今回展示しているロボットはすべて実物大です。実物大のスケールで、なおかつロボットを作っている会社さん自体が世界的に恐竜のロボットでは有名なところです。非常に作り込んだ、リアルに動く、非常に鮮やかな生き生きとしたロボットが展示できているのかなとは思います」

●今回の恐竜博覧会でいちばんのアピールポイントというと、やはり第3会場の展示ですか?

泳ぐスピノサウルス
泳ぐスピノサウルス

「第3会場の、やっぱり展示自体ですね。フジテレビ本社屋の“はちたま”という球体展望室、あそこで見られる景色と展示はここでしか見られないものになるんですね。
 当初この展示を作る時に、やはりスピノサウルスっていう恐竜にフォーカスするとなった時に・・・このスピノサウルスは、ぜひフジテレビで見ていただきたいんですけども・・・遊泳スタイル、水中で泳ぐような感じで復元されていることが一般的になってきて、その泳ぐスタイルでロボットを作るということになったんですね。

 そのロボットが“はちたま”から見た背景、東京の背景の中を泳いでいるようなイメージで、ロボットを配置できればという思いがあって、それが見事に表現されています。やはりここでしか見られないポイントとしては、“はちたま”でのスピノサウルス、第3会場のその展示かなとは思います」

(編集部注:第3会場に展示されているスピノサウルスは全長15メートル! 第1会場にあるティラノサウルスの12メートルよりも大きいんです。迫力がありますよ! そんなスピノサウルスには、ある仕掛けが・・・ぜひ会場で体感してください。

ティラノサウルス
ティラノサウルス

誰でも楽しめる恐竜博覧会

※福井県立恐竜博物館の研究員でいらっしゃる柴田さんとしては第2会場の「恐竜研究最前線!」に注目してほしいんじゃないですか?

「今回このように恐竜博物館の恐竜を研究している研究員の、それぞれの研究のトピックっていうか研究テーマみたいなものを、このように展示するのは初めてでした。どのようになるのかなと思ったのですが、各研究の個性も出たし、その研究員がどんなことをしているのかを、みなさんに知っていただく非常にいい機会になりましたね。

 また、その展示も我々研究員からすると、全体的にけっこうカタくなってしまうイメージなんですけれども、今回フジテレビさんでやらせていただくっていうことで、フジテレビさんがかなりポップで明るい雰囲気にしてくださったので・・・。なんていうのかな~、博物館はカタくてなかなか行きにくいって思っているかたがたにとっても、言い方はいいかどうかはよくわかりませんけども、ハードル低く、恐竜展示を見ていただいて、我々の研究を知っていただく、いい機会になったんじゃないかなとは思います」

●今回の展示で、特にこだわった点があったらぜひ教えてください。

「やっぱり我々の感性だけではできないところを、フジテレビさんの柔らかい、けっこう明るくカジュアルなところと、融合できたっていうのがいちばん大きいのかなと・・・。  
 先ほどもおっしゃっていただいたように、お父さんお母さんが来て、一緒に驚いていただけるっていうように、やはり第1会場と第3会場に関しては、一般のかたが恐竜を楽しんでもらえるような展示を含めているんですね。

 難しくならずに、“恐竜って、こんなんで、こんなんだったわ!”っていうような感じで楽しんでいただいて、第2会場では少し学術的なところをお勉強していただく、なおかつ福井県立恐竜博物館がどういう研究を行なっているのかを知っていただくという、ちょうどカタいところと、柔らかいところをミックスした、一般の人が受け入れやすい、来やすいような展示にできたというところが、今回の魅力になるんじゃないかなと思います」


INFORMATION

「オダイバ恐竜博覧会2024」

 現在開催中の「オダイバ恐竜博覧会2024」は第1会場では、全身およそ12メートルのティラノサウルス・ロボットがお出迎え! 第2会場の「恐竜研究最前線!」では、福井県勝山で発見された6種の新種のうち、3種の全身骨格を展示。中でも東京初展示が新種「ティラノミムス・フクイエンシス」! 

 第3会場には世界初展示となる、全長15メートル! 新作スピノサウルスのライフサイズロボット、そして実物のスピノサウルスの下顎と、同じく頭の骨の復元模型は日本初展示となります。

 「オダイバ恐竜博覧会2024」は5月6日まで、フジテレビの本社屋で開催。時間は午前10時から午後6時まで。チケットの料金など、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎オダイバ恐竜博覧会2024:https://www.odaiba-dino2024.jp

 日本が世界に誇る「福井県立恐竜博物館」にもぜひお出かけください。

◎福井県立恐竜博物館:https://www.dinosaur.pref.fukui.jp

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