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心で感じる日本のふるさと 〜能登を旅する〜

2020/6/13 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、写真家の「宮澤正明(みやざわ・まさあき)」さんです。

宮澤正明さん

<今週は貴重なフォトブックをプレゼント! 応募方法はこのページのいちばん下に>

 宮澤さんは1960年、東京生まれ。日本大学・芸術学部・写真学科卒業。85年に赤外線フィルムを使った処女作で賞を受賞。近年は、日本の神社仏閣を撮影。特に2005年からは伊勢神宮のオフィシャル・カメラマンとして、9年もの歳月をかけて行なわれた一大行事「式年遷宮」を記録し、6万点にも及ぶ作品を奉納、写真集も数多く出版されています。

 また、映像作家として、伊勢神宮の森をテーマにしたドキュメンタリー映画『うみやまあひだ』を初監督。2015年のマドリード国際映画祭の外国語ドキュメンタリー部門で最優秀作品賞を受賞しています。

 そんな宮澤さんが先頃、能登半島の自然景観や伝統的な行事を収めたフォトブック『能登日記』を発表されました。きょうは能登の、時空を超えたような旅や日本の神社仏閣の撮影を通して感じたことなどうかがいます。

☆写真提供:宮澤正明

心のふるさと

※まずは、フォトブック『能登日記』に掲載されている写真のお話から。

●まず開いてすぐ「アイ・ラブ・ノト」って書かれていて、写真は白米千枚田!

「はい、もうここは有名ですね」

●海に向かって急斜面に何段もの田んぼが広がっていて、本当に美しいですね。風にそよぐ緑の稲に感動しました! 

「これちょうど初夏の頃に行ったんですけども、だいぶ稲が育っていて、海風がすごく爽やかで。夕方になると緑の絨毯が(風に)なびいて、本当に美しい綺麗な風景でした」

●この写真からもすごく動きが見えてきそうな感じですよね。

「はい、ありがとうございます」

写真提供:宮澤正明

●このフォトブックに”能登は日本のふるさと”と書いてありましたけれども、やはりそういう場所なんでしょうか?  

「そうですね、どうなんでしょう。日本のふるさとっていうのは日本各地にいろいろと点在はしていると思うんですけども、ただ能登に関していうと、そういう日本のふるさとが凝縮しているっていうんですかね。今の日本で、かなり文明や文化が発達しちゃって、こういう素朴な土着的な風景ってなかなか見られないと思うんですよね。

 具体的にいうとすごく人情とか、心の温かさのような、やっぱり自然の厳しさの中で、自然と共に生きてきた方々が、人と土地とが一緒くたになっていて、なんかすごくそれがしみじみと伝わってくる。
  例えば、東京から行ったりするとすごく非日常的だと思うんですけども、我々日本人が持っている、例えば“心のふるさと”っていうDNA は多分みなさん持っていると思うんですよ。そういうものをちょっと思い出させるような、デジャブ的な風景にたくさん出会うことができるので、そういう部分では本当に今おっしゃられた通り、日本のふるさとっていっても本当に過言ではないかなと思います 」

神様をもてなす儀式

写真提供:宮澤正明

※宮澤さんは写真家として、能登のどんなところに魅力を感じているのでしょうか。

「人々の暮らしは、人間ってやっぱり太古の昔から衣食住みたいなのが必ず毎日のように、そして自然と共にあるわけじゃないですか。そういう四季折々を通じて自然との関わりというか、共存共栄をものすごく大切にしているのを、自然に見られるのが能登のいいところだなっていう風には感じましたね」

●いちばん印象に残っている場所を挙げるとしたらどこですか? 

「例えば、今いった暮らしの原点となる、”あえのこと”っていう古式と厳格さを留める奥能登の農耕儀式があるんですよ。1年に1回の収穫を感謝したり、五穀豊穣を祈る伝承行事で、これはユネスコ無形文化遺産にも登録されているんですけども、それはまたまたすごくてですね。

 各農家で代々伝わる方法であたかも神様が存在するかのように、まず稲刈りが終わった田んぼの真ん中に松の木を立てて、そこが神様の地であって、そこに神様をお迎えに行くんですよ。そして、榊を2本、男性と女性の榊を持って自分の家に招いて、まるで神様が実在するかのようにお風呂に入れたり、食事を出してもてなしをしたりっていう、要は1年の五穀豊穣を本当に感謝するっていうことを、農耕儀式っていうのかな、本当に古来からそういうのが伝わっているんですね。

写真提供:宮澤正明

 それを目の当たりした時にやっぱり、いろんな神事を僕は撮っていますけれども、すごく日本の神事の原点っていうんですかね。もちろん神社とか仏閣でものすごく雄大で壮大で格式高い儀式もたくさんありますけども、すごく分かりやすくほっとできる、ぼくらもそうだよね、いいことに恵まれたら感謝するよね、みたいなものがしみじみ出てくるような儀式でした。

 もちろん能登にはもっとたくさんお祭りだとか、いろんな食べ物も含めて、たくさん良い土地があるんですけども、なんか僕はこの”あえのこと”っていう農耕儀式に出会った時に、ものすごくこの能登の方々の生きている意味っていうのを感じられたので、そこがすごく自分の心に残っていますね」

<農耕儀式「あえのこと」>

 宮澤さんが取材で出会い、感銘を受けたという農耕儀礼「あえのこと」、これは奥能登の各農家に伝わる風習で、「あえ」はもてなし、「こと」は祭りを意味します。つまり「もてなしの祭り」なんですね。

 稲作を守る田の神様に1年の収穫を感謝し、五穀豊穣を祈るために行なわれる奥能登の代表的な民俗行事で、1976年に国指定重要無形民俗文化財に指定され、2009年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。

 年末の12月5日と、春の2月9日の2回行なわれるのが一般的で、年末の「あえのこと」では家の主人が田んぼに神様を迎えに行き、家に招き入れて、お風呂で背中を洗い流す所作をしたあと、奥座敷に案内して海の幸、山の幸のごちそうでもてなします。

 そして神様はそのまま家にとどまって年を越し、春の「あえのこと」で再びごちそうでもてなしたあと、神様を田んぼに送り、その年の豊作を祈るんです。

 代表的なお供え物は、コシヒカリの小豆ご飯と、たら汁、大根とたらの酢の物、鱈の子(たらのこ)をまぶしたお刺身などで、田の神様は夫婦とされているため、すべて2組ずつ用意するのが大切な決まりとなっています。

 各農家で代々受け継がれてきたため、それぞれの家で独自のしきたりが生まれ、ほかの家の人がそれを見ることはない、というくらい厳かな行事だったのですが、近年は行なわない家も多くなりました。

 一方でこの伝統を後世に伝えようと行事の様子をインターネットで発信したり、希望者が行事を見学できるようにするなど、様々な取り組みが行なわれています。機会があれば、ぜひ現地で見学してみたいですね。

お祭り半島!? 

写真提供:宮澤正明

※能登では7月から10月にかけて、毎週どこかでお祭りがあるそうなんですが、特に印象的だったお祭りについてお話しいただきました。

「昨年の夏に撮影した時に、石崎奉燈祭っていう七尾湾のところと、奥能登にある宝立七夕キリコまつり、そのふたつを撮影したんですよ。これはまた両方ともすごい!

 キリコ(*)って、すごく巨大な、大きいもので15メートル以上あるのかな。そんなキリコを男の人が運んでいくっていうお祭りなんですけども、それは勇ましいというか、海の男達とかね、自然と共に生きてきた人たちがそこで夏の祭りをするんですね。

 もちろん漁業中心でしたら大漁を祀ったり、農家が近かったら、さっきいったように五穀豊穣を祈ったり、そういうのが能登中にありまして、それがキリコ。縦状のすごく大きくて引くものなんですけどね、そういうものがあります」
 (*キリコ=灯籠)

●お祭り半島ともいわれているんですね。

「とにかくあちこちでお祭りがありますね」

●そうなんですねー、すごく迫力もありそうですしね! 

「ものすごく迫力ありますね。例えば宝立七夕キリコまつりは、海の中の火に向かってみんなで海に入っていくんですよ。その松明の周りをみんなで回るんです。陸から海に入っていって、さらに担いで回ったりとかね、そういうすごい光景がたくさん見られます!」

●伝統が継承されていくっていうのもいいですよね。

「そうですね。本当にそういう部分ではいろんな伝統と歴史と文化が凝縮していて、未だにそういうものが継承されていて、それが人々の心と心を繋いでいるっていうんですかね。だから必ずその石崎奉燈祭は日本国中に散らばった若者たちがその時は必ず集まって帰ってくる。そういう部分はものすごくいいですよね。なにかそこに求心力があるというんですか、必ず誰もが夏だけはあそこに帰るんだみたいな、ひとつの指針があるっていう部分では素晴らしいなと思います」

●まさにふるさとですね!

「はい、本当にそうですね」

心の拠り所

能登日記

※神様をまつる行事「神事」は、自然と密接につながっているのでしょうか。

「そうですね。先ほどの”あえのこと”でもそうですけども、伊勢神宮の祭りも、原型には衣食住を中心に、特に日本人の主食であるお米の収穫を感謝するということが、儀式の原点になっているんですよ。

 すごく日本人は自然との関係を特に大切に生きてきた民族で、日本の神事は自然への感謝と畏敬の念が生きている証っていうか、神様と人との契りっていうんですか、その中で生まれた祈りなんじゃないかなっていう風に思っていて。それは伊勢でも能登でも日本人全体が点と点で繋がるような感じなんじゃないですかね」

● そうですよね。私たち日本人は忙しい日々の中でも、神社やお寺に行くと心が落ち着くような感じもしますけれども、やっぱり心の拠り所としているのがそういった神社仏閣っていうところもあるんでしょうね。

「そうだと思いますね。日本中の神社仏閣って、その土地その土地の人々の拠り所とかね、あとは集いの場だったり出会いの場だったり、ひとつのコミューンを形成していると思うんですよ。だからそういった部分では、喜怒哀楽を共に感じて共感できる大切な場所だったし、その土地その土地で、人々がすごく大切だった存在が神社仏閣だったような気がするんですね。

 僕も能登のいろんな神社仏閣に行きましたけども、日本国中(の神社仏閣に)行っていますけども、いろんなところに行ってもやっぱり心の支えになったり癒しになったり、すごくそういう場所は多いですよね」

●パワーもらえますよね! 

「そうですね。まずはほっとできるし、日常の忙しい中からひとつ俯瞰して自分を見られるっていうのかな。冷静に自分を見られる場所になるっていうのは非常にいいなと思いますね」

●このフォトブック『能登日記』にもお寺や神社の写真がたくさん載っています。今は自由に旅ができない状況ですけれども、どんなことを感じ取ってもらいたいですか? 

「そうですね。やっぱり能登の時空を超えた美しい幻想的な風景や、厳かな静けさの中に佇む美しい神社仏閣、こういった感性とかですね。魂のレベルにおいて大切なのは、僕はあんまり距離じゃないと思うんですよ、距離感かなと思うんですよね。

 例えば今は自由に旅ができないじゃないですか。でもそういうのは多分、近所の森や自然、神社仏閣などから、日本人の心のふるさとっていう DNA さえあれば、その距離感で感じ取ることができる。そのために例えばこのフォトブックを見ていただいて、少しでもみなさんのイマジネーションにお役立てできればいいかなと思ってこのフォトブックを、まぁタイミングは非常に微妙なんですけども(苦笑)、すごくそういう部分ではいい部分もあったかなと思っています 」

☆過去の宮澤正明さんのトークはこちらをご覧下さい


INFORMATION

宮澤正明さん情報

能登日記〜写人 宮澤正明と旅人 立川直樹の能登紀行

フォトブック『能登日記〜写人 宮澤正明と旅人 立川直樹の能登紀行』


 フォトブック『能登日記』には海、田園、景勝地、お寺、お祭りなどの写真が掲載されていて、能登のディープな魅力を感じます。じっくり見ていると、能登の風が吹いて来るような錯覚を覚えますよ。また、音や匂いをも感じるような素晴らしい写真ばかりです。立川直樹さんの旅をしているようなエッセイも素敵です。

 『能登日記』は「ほっと石川旅ネット」にアクセスして、PDFで入手できるほか、道の駅や観光案内所ほか、石川県内の施設で手に入ります。

●ほっと石川旅ねっとのHP:https://www.hot-ishikawa.jp

●宮澤正明さんのHP:https://masaakimiyazawa.jp

<プレゼントの応募方法>

 今回、非売品の『能登日記』を特別に抽選で3名の方にプレゼントいたします。ご希望の方は「能登日記、希望」と書いて、メールでご応募ください。

メールアドレスは、flint(フリント)@bayfm.co.jp です。

あなたの住所、氏名、年齢、電話番号をお忘れなく。番組を聴いた感想なども書いてくださると嬉しいです。応募の締め切りは、6月17日到着分まで。当選者の発表は発送を持って替えさせていただきます。たくさんのご応募、お待ちしています。

このページの上部にある「メッセージを送る」からも応募できます。

応募は締め切られました。たくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。

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