2024/11/24 UP!
◎落合晋作(鹿児島市にある平川動物公園のコアラ飼育員)
『コアラはすごい!〜来日40年! 飼育頭数日本一! 平川動物公園の飼育担当に聞く』(2024.11.24)
◎北村俊平(石川県立大学・生物資源環境学部の准教授)
『動物がタネをまく!? 植物と動物の不思議でディープな関係』(2024.11.17)
◎『シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第22弾! スポーツ編!〜廃棄されるボールを新たなグッズへ』(2024.11.10)
◎井原愛子(秩父でメープルシロップを製造・販売する「TAP & SAP」の代表)
『秩父の森・カエデの恵み「メープルシロップ」〜人間が関わっていける森づくり』(2024.11.3)
2024/11/24 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、鹿児島市にある平川動物公園のコアラ飼育員「落合晋作(おちあい・しんさく)」さんです。
落合さんはもともと生き物好きで、子供ころから釣りに明け暮れ、九州の大学で魚の勉強をしたあと、水族館に勤務。その後、ご両親が鹿児島に暮らしていることもあって、平川動物公園に転職。ゾウやカワウソなどの飼育を7年ほど担当したあとにコアラの飼育担当になっています。
コアラを5年ほど担当されている落合さんは、日々コアラに接する中で、可愛いという感情より、コアラはすごいぞ!と思うことが多く、そんな思いが込められた本『すごいコアラ! 〜飼育頭数日本一の平川動物公園が教えてくれる 不思議とカワイイのひみつ』が先頃出版されました。
きょうはコアラの知られざる生態や、赤ちゃんの秘密、そしてエサになるユーカリ栽培への取り組みなどうかがいます。
©新潮社 写真協力:鹿児島市平川動物公園
コアラは北方系と南方系!?
※コアラが日本に来たのが1984年10月25日、今年で来日40年! ちなみに10月25日は初来日を記念して「コアラの日」となっています。
日本では現在、7つの施設で飼育されています。首都圏では東京都日野市の「多摩動物公園」「埼玉県こども自然動物公園」そして横浜市の「金沢動物園」の3つの施設で見ることができますが、コアラの飼育頭数で日本一を誇るのが、鹿児島市にある「平川動物公園」。現在はオス8頭、メス10頭、合わせて18頭を飼育。コアラの初来日から飼育が始まり、通算105頭の飼育実績があるそうです。
2021年には新しいコアラ館がオープン! ガラスなど遮るものがなく、高さがおよそ8メートルある館内のガラス窓からは日の光が降り注ぎ、またユーカリも植えられていて、より自然な感じでコアラを見ることができる、ということで、とても人気なんだそうです。
●まずはコアラがどんな動物なのか、基本的なことをいろいろうかがっていきます。コアラはオーストラリアの固有種ですが、どのあたりに多くいるんですか?
「オーストラリアという国は、だいたい日本の21倍の面積があるんですね。おそらくコアラはオーストラリアのどの地域にもいると思われているかたが多いと思うんですけど、オーストラリアの地図を正面から見た時に、右の海岸線のふち側・・・ケアンズがあって、下にシドニーやメルボルンがあるんですけれども、このふちの辺りの森とか林があるところにいるんです。
言ってみれば、国土の20分の1ぐらいのところにしか生息していないんですよね。そういうところにいる動物ですね」
●何種類かいるんですか?
「みなさん、コアラ、コアラとおっしゃっていますけど、コアラという動物は1種類なんです。厳密に言うとふたつの系統、グループに分かれています。シドニーの少し下ぐらいからを境に、北のほうにいる北方系のコアラ、ちょっと小柄でグレーの色が強いコアラですね。
南半球なので、南のほうに行けば行くほど寒い国ですから、寒いところにいるのが南方系のコアラ、通称『ビクトリア・コアラ』って言われているんですけど、これがちょっと大きくて濃い色をしていますね。
見た目は2種類を並べると全然違うコアラということになりますね。当園では北方系、ちっちゃいほうのコアラ、あったかいところにいるコアラを飼っています」
●サイズ感も色も違うんですね〜。
「そうですね。オスの体重で言うと1.5倍ぐらい違います。北方系がだいたい8キロから9キロ、南方系が最大で15キロぐらいになりますから、すごく大きいですよね」
●へ〜! 体全体は灰色ですよね?
「そうですね。頭から背中にかけて灰色、お腹側、お尻が若干白く見えますよね」
●そういう毛の色にも何か意味ってあるんですか?
「はい、みなさん、コアラの餌っておそらくユーカリっていうのを知っているかたは多いと思うんです。ユーカリは、ホームセンターとかお花屋さんに行くと売っていますよね。で、だいたいグレーがかったシルバー色したユーカリが多いと思うんですね。
で、ユーカリってだいたい1000種類ぐらいあるって言われているんですけど、ユーカリの森はグレーの葉っぱがあったり、木の樹皮が白っぽいんですよね。そういったところにグレーの色の動物が木に乗っかっていると、いわゆる擬態、周りの風景と溶け込んで見えるので、こういう色をしていると言われています」
●意味があるんですね、色にも!
「そうですね。で、お腹側が白いのは木の下から上を眺めたときに、白っぽいと太陽の光とかと同化しちゃうんですよね。こういう動物、魚も多いんですけど、こういうことを彼らは生きていく中で獲得した、ありのままの彼らが暮らしやすい姿、色になっていると思います」
(編集部注:落合さんによると、基本的に野生のコアラは単独で生活していて、一頭のテリトリーは狭くて100メートル四方、広いとなんと10キロ四方。
オスは自分のテリトリーにほかのオスが侵入すると、食べ物のユーカリやメスを奪われまいと、可愛い姿からは想像できない猛獣のような声「テリトリー・コール」をして威嚇するそうです。
*コアラの鳴き声は、平川動物公園のサイトで聴くことができますよ。
https://hirakawazoo.jp/wp/wp-content/uploads/2022/09/koala1.wav
また、マーキングをするオスは、胸にある「臭腺(しゅうせん)」からとても臭い液を出して木にこすり付けます。そのため、オスの胸のあたりはいつも汚れているそうですよ)
鋭い爪、大きな耳と鼻
※コアラの体の特徴でいうと、木の上で生活していますから、手や足のツメが鋭かったり、筋力が強かったりして、可愛いコアラのイメージとは違いますよね?
「そうですね。よくお客様にもコアラってどうですか? って聞くと、可愛いっておっしゃるんですね。で、可愛くないところってあるのかなっていう話をするんですけど、その代表的なところはやっぱり爪なんですね。
指の本数は我々人間と一緒です。前も後ろも5本指なんですけど、本当に爪が長くて、鎌のように曲がっていて先が尖っています。爪が1本でも木に引っかかっていれば、落ちることはないですね。その爪を立てながらひょいひょい登っていくんですよ。
当然握る力もやっぱり強いです。で、ラジオ番組なのでお見せできないんですけど、私の腕は本当にコアラの爪の跡、服を着ていても服の上から爪が刺さっちゃうので、もう傷だらけです」
●鋭いんですね〜! 耳とか鼻も大きいですよね?
「そうですね。耳は特徴的な可愛らしい大きな耳をしています。先ほど縄張りの話をしましたけど、コアラって鳴くんですよね。寝てばっかりのイメージですけど、結構大きな声で鳴くんですよ。猛獣のような鳴き声、本の中には”ゲップ”とか”ゴゴゴ〜”とか、そういう音で表現しているんですけど、すごく大きな声で鳴いて、数キロ先まで届くって言われているんですね。ほかのコアラがいるかいないかを、臭い以外、音でも聴かないといけないので、やっぱり大きな耳をしているんですね。
で、もうひとつの特徴として大きな鼻がありますよね。体重は8キロ前後とお伝えしましたけど、鼻の大きさで言うと我々人間と変わらないです。で、やっぱりこの鼻も非常に重要で、ほかのコアラの臭いを嗅ぐにしてもすごく大事なんですけど、いちばんは彼らが食べているユーカリの葉っぱの好き嫌い、選り好み、どれが美味しいのか美味しくないのか、食べられるのか食べられないのかも鼻ですべて感知していると思います」
長い睡眠時間には理由がある
※コアラは木の上でじーっと動かないイメージがあるんですけど、寝ている時間が長いということですよね?
「こればっかりは、もう本当に(睡眠時間が)すごく長くて、ほとんど動かないんです。だいたい20時間から22時間ぐらい、睡眠・休息に費やしていると言われていますね。本当に動かないです」
●なんでそんなに寝るんですか?
「なまけているんじゃないのとよく言われるんですけど、実はそうではなくて、寝るにはちゃんと理由があるんですね。先ほどからコアラの餌はユーカリと何度もお伝えしていますけど、このユーカリって植物が実はポイントになっています。
葉っぱは、新芽と言われる柔らかいところ以外は硬くて繊維が多いんですね。こういったものを食べると、消化にすごく時間かかるんですよ。で、極めつけは毒が入っているんですね。この毒の分解にも時間がかかります。
ただでさえ栄養価の少ない葉っぱを食べていて、極めつけに毒も入っているってことなので、一生懸命動いてしまうと、お腹を動かすためのエネルギーもなくなるんですね。動けば動くだけどんどん痩せます。ですから、じーっと動かないようにしてユーカリの消化吸収に全力を注いでいると思ってください。そういうふうに進化してしまったので、寝ざるを得ない動物になってしまいました」
●木から降りて地面を歩き回ったりすることもあるんですよね?
「もちろん歩くんですよ。で、地面っていうか地上にはやっぱりコアラの外敵となる動物もいたりしますから、基本的に木から木へはジャンプして移動することが多いんですけど、どうしても移動できない距離だと地面に降りて歩くんですね。でもそんなに走ったりすることは、できるんですけど、そこまで長続きしないっていうか、やっぱり歩いているときは危機感を感じてるような気がしますね。早く木に登らないとっていう、そういう仕草を見せてくれます」
妊娠期間は35日!
※平川動物公園でのコアラの繁殖に関してうかがいたんですけど、発情期は一年に何回かあるんでしょうか?
「野生の動物ってだいたい年に1回とかが多いんですけど、コアラの場合は、基本的に通年発情はするんですよ。ただメスがオスを受け入れるタイミングってだいたい春と秋が多いんですよね。この時期に我々もコアラの様子を見ながらペアリング、繁殖させるようにはしています」
●平川動物公園では積極的にペアリングに取り組んでらっしゃるそうですね。相性とか発情期間とか、いろいろ見極めるのも大変なんじゃないかなって思うんですけど・・・アプローチするのはオスなんですか?
「そうですね、基本的に・・・。メスは結構受け身が多いんですけど、言ってみれば発情してないのにオスとペアリングしても、オスもメスにあまり向かわなかったり、メスは当然受け入れないんですよね。
その発情の見極めってすごく大事で、しかも個体によって差があるんですよね。人と一緒で性格があるので、ガツガツしている女の子は、言ったら肉食系の女の子はすごく積極的にオスにもアプローチするんですよ。
逆にオスがそれを受け止めきれない(笑)、草食系って言ったらおかしいんですけど、ちょっとガツガツしている女の子は、苦手だなっていうオスもいたりするので・・・。本当にガツガツしている女の子でも、ちょっと大人しそうなタイミングで、草食系の男の子と一緒にしてペアリングしてみたりとか、ガツガツしている女の子でも大丈夫な男の子をペアリングにあてがったりとか、相性を見ながら繁殖っていうかペアリングさせていますね。
ここは長年の経験とか勘がだいぶ頼りになってくるので、本当に飼育の醍醐味でもありますよね。今だったらいけるんじゃないかとか、そういったのを日々見極めながら見ていますね」
●ペアリングが見事うまくいってメスが妊娠すると、出産はどれぐらいあとになるんですか?
「我々人間の妊娠期間は10ヶ月程度って言われていますけど、コアラの妊娠期間はわずか35日なんですよ」
●え~っ!
「担当者の目の前で交尾させますから、そのあと35日後に生まれてきます。ずれても1日ぐらいなんですよ。この間、コアラの様子を見ながら出産するかしないかを見極めたりするんですよね。ただストレスを与えることはできないので、出産のタイミングに立ち会うことはほぼありません。っていうか、できないですね、なかなかできないです、これは」
赤ちゃんは一円玉!?
※生まれてくる赤ちゃんの大きさは、どれくらいなんですか?
「例えるなら、大きさは1円玉です」
●え~っ!
「1グラム1センチって表現するんですけど、本当に1円玉の大きさです。ただ形は、実はコアラの形をしていなくて、夏休みにカブトムシを飼うお子さんもいらっしゃると思うんですけど、カブトムシの幼虫とよく似た形です。本当にちっちゃくて一見すると何の動物かもわからない、そういう赤ちゃんが生まれてきます」
●そういう状態の赤ちゃんが、いわゆるコアラの形になるにはどれぐらい時間がかかるんですか?
「はい、まず生まれてすぐ、そのままだと毛も生えていませんし、目も見えてないので、すぐ干からびて死んじゃうんですよね。ですから、生まれた赤ちゃんは5分から10分かけてお母さんのポケットに移動するんですよ。
ポケットは後ろ足の付け根についています。そのポケットに自分の力だけで這いつくばって進んでいきます。先ほど紹介した通り、爪が鋭いので、お母さんがつまむと赤ちゃんは亡くなっちゃうわけですよね。ですから、お母さんもじっと我慢しているんですね。
ポケットの中に入ると、中におっぱい、乳房がふたつついていますから、この乳に吸いついてどんどん大きくなっていきます。で、コアラっぽくなるにはだいたい4か月ぐらいかかります。4ヶ月経ってもまだ毛は生え揃ってないので、なんとなくこれコアラの赤ちゃんじゃないの? っていう感じになるんですね。
だいぶ時間はかかりますね。おっぱいに吸いついて簡単に離れてしまうと、また乳房を探さないといけないので、お母さんの乳房に子供がくっつくと抜けなくなるんですよ、取れなくなるんですよ。これがだいたい3〜4か月取れない時期が続いて、そこからは自分のタイミングで(ミルクを)飲めるようになるんですね。それがだいたい4か月ぐらいから始まるって感じですね」
(編集部注:落合さんによると、コアラの赤ちゃんは半年ほどで、お母さんのお腹側にある「育児のう」と言われるポケットから出てくるんですが、子育ては1年くらいは続くそうですよ。
赤ちゃんにとって、ポケットから出るタイミングで、その後、生きていくために必ずやらなければいけないことがあるんです。それはお母さんのフンを食べること。フンに含まれている腸内細菌を獲得し、繊維が多くて毒のあるユーカリを消化できる体を作るためで、落合さんは、コアラの世界では当たりことだとおっしゃっていました。なんでもコアラのコロコロとしてフンはユーカリの匂いがするそうですよ)
ユーカリは1日100キロ、年間34トン!?
※野生のコアラはユーカリしか食べないそうですが、平川動物公園では何種類のユーカリを与えているんですか?
「ユーカリはたくさん種類があるんですけど、コアラが食べているのってだいたい80種とか90種ぐらいって言われているんですね。登園ではそのうちの13種類から14種類ぐらい栽培していますかね」
●本に、平川動物公園で飼育しているコアラ18頭が、年間に消費するユーカリの量がおよそ34トンと書かれていましたけれど(笑)、本当なんですか?
「そうですね。だいたいイメージとしては毎日100キロのユーカリの枝と葉っぱを使っています」
●凄い! 「ユーカリを制するものはコアラ飼育を制す!」と、本にも書かれていましたけど、大事なんですね!
「そうですね。もうこれしか食べませんから、ユーカリの供給が滞ると(コアラの)食べ物がなくなってしまうことになるので、ユーカリの栽培と供給態勢にはすごく気を遣っていますね。
八百屋さんとかで(ユーカリが)売っていればいいんですけど、売ってないんですよね。だからコアラを飼っている動物園はすべて、コアラのユーカリは栽培して供給できる態勢にしています。ないと終わってしまいますからね、すごく大事にしています、ここは」
●敷地内にユーカリ畑があるんですか?
「動物園の中にもユーカリの畑は何か所かあるんですけど、実は賄い切れないんですよ、動物園の畑だけだと・・・。当園では2万本ぐらいのユーカリを管理していまして、畑の数が40か所ぐらいあるんですよね。当然、動物園だけじゃなくて、遠くは鹿児島のロケットの発射基地がある種子島にあったり、温泉で有名な指宿にもあったりします」
●分散させているんですね。
「そうですね。これには理由があって、ひとつは台風が来た時にユーカリの葉っぱが飛んでしまったり、枝が折れてしまったりするんですよね。1か所にすべて植えていると、その畑が集中的に被害に遭ってしまうと、(コアラに)あげるユーカリがなくなってしまうので、リスク分散も込めて、たくさんの所、住宅地の中にある畑もあれば、山の中にある畑もあって、風の当たり方が違ったりするので、リスク分散で分けているっていうのもあるんです。
あと、今からどんどん寒くなりますよね。やっぱり温暖な場所を好むユーカリを栽培していますので、いくら鹿児島と言えども、たまに雪が降ったり霜が降りたりするんですよ。そうなるとやっぱりいい状態の葉っぱが手に入らないので、あったかい種子島や指宿といった、あったかい地域にもユーカリを植えています」
(編集部注:落合さんいわく、コアラの飼育でいちばん気を使うのは、健康管理。寝ている時間が長いコアラは体調の変化がわかりにくいため、寝ている姿勢やユーカリの食べ方、そしてフンの観察など注意深く見て、ちょっとしたことでも「疑って」かかるそうです)
尊いコアラに学ぶ
※日本では、コアラの繁殖のためにどんな取り組みがありますか?
「コアラっていう動物は、やっぱりユーカリの管理とか供給がすごく大変というか、ほかの動物と違うので、どこの動物園でも飼える動物ではないんですよね。今(国内では)7つの動物園で飼育しているんですけど、ひとつの血統だけ残してしまうと、仮にその血統が病気に弱かったりとか、小型な血統だったりすると、本来のコアラっていう動物を残せなくなるんですよね。
ですから、いろんな血統、血筋、遺伝子を取り込みながら増やしていきたいなと思っているんです。それには実を言うと100頭ぐらいの個体がいたほうが、20年30年先を見据えると、それぐらいいたほうがいいよねっていう話になっているんですね。
そうなってくるとやっぱりある程度、ほかの動物園さんと協力しながら、いきなり100頭は無理なんですけど、現状54頭ぐらい国内にいるので、これがまずは70頭ぐらいに増やして、そこから先はいろんな飼育園とか飼育施設を拡充して、コアラという動物を安定的に未来に向かって残していけるような態勢を協力して残していけたらなとは思っていますね」
●コアラの飼育を担当されて5年ということですけれども、日々コアラと接して何かコアラから教えてもらったみたいなことってありますか?
「毎日コアラを見ていて、彼らって、可愛いイメージが先行していますけど、やっぱり生きることにすごく貪欲なんですよね。ユーカリひとつ食べる仕草にしてもそうですし、繁殖する時のオスの猛々しい鳴き声とか、そういった姿を見ていると、挑戦しているじゃないですけど、彼らってやっぱり日々当たり前のように必死になって生きているっていうのが感じるんですよね。
で、可愛いんですけど、そのひとつひとつの仕草が非常に尊いというか尊敬できるなと思うんですよね。そういった仕草とか、コアラっていう動物を日々見ながら、(私たちも)一生懸命生きていかないといけないっていうわけじゃないんですけど、もっと挑戦的、チャレンジしていかないといけないのかなっていうのは、本当に感じるかな、っていうか、感じていますね」
●将来の夢があったらぜひ教えてください。
「今、動物園でコアラを多くのかたにご覧いただいているんですけど、当園の特徴としてコアラがいる空間に入っていける施設があるんですね。ガラスがなくてそのままの空間でコアラをご覧いただけるんですよ。
そこには、コアラが暮らしている現地の植物を植えていたりとか、当然ユーカリも植えているんですけど、動物園に来てコアラが暮らしている現地の森を、来園者のみなさんに体験してもらえるような施設にできたらなと今思っているんです。
まだまだその時点には達してないんですけど、そういった空間でコアラを見てもらって、野生のコアラを少しでも感じていただけるような場所にできたらなと思っています」
(編集部注:オーストラリアの固有種コアラは現在「国際自然保護連合IUCN」の絶滅危惧種に指定されています。減っているおもな原因は、気候変動や森林火災による生息地の減少で、市街地にまで進出し、交通事故で命を落とすコアラも数多くいるとのことです。
落合さんは以前、オーストラリアの施設を視察したことがあって、その時に感じたのは、平川動物公園の飼育態勢は、晴らしいといえるレベルにある。やってきたことは間違っていなかったと自信にもつながったそうです。平川動物公園のコアラ館、ぜひ行って見学したいですね)
INFORMATION
『すごいコアラ! 〜飼育頭数日本一の平川動物公園が教えてくれる 不思議とカワイイのひみつ』
動物園のアイドル的なコアラの可愛い写真が満載。一頭一頭、名前がついているのでそれを見て、コアラ館に行くと、推しが見つかるかも知れません。コアラの生態がわかりやすく解説されているほか、なにより、飼育員のみなさんの奮闘ぶりやコアラへの想いを感じる一冊です。
新潮社から絶賛発売中! 詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎新潮社:https://www.shinchosha.co.jp/book/355861/
鹿児島市にある平川動物公園のサイトもぜひ見てください。
◎平川動物公園:https://hirakawazoo.jp
2024/11/24 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. KOALA / GALANTIS
M2. XANADU / OLIVIA NEWTON-JOHN
M3. SLEEPING BEAUTY / BILLIE MYERS
M4. ISN’T SHE LOVELY ? / STEVIE WONDER
M5. Collection / 大原櫻子
M6. DOWN UNDER / MEN AT WORK
M7. DREAMS / THE CRANBERRIES
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2024/11/17 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、石川県立大学・生物資源環境学部の准教授「北村俊平(きたむら・しゅんぺい)」さんです。
北村さんのご専門は植物生態学で、植物と動物のつながりを「種子散布」の視点で研究。調査のメイン・フィールドはタイの熱帯の森で、果実と動物たちのつながり、おもにクチバシの大きな「サイチョウ」という鳥が植物のタネまきに、どんな役割を果たしているのかを調べていらっしゃいます。
そして先頃、『タネまく動物〜体長150センチメートルのクマから1センチメートルのワラジムシまで』という本を出されました。
この本は、ツキノワグマの研究で知られている東京農工大学大学院の教授「小池伸介(こいけ・しんすけ)」さんと北村さんのおふたりが中心となって編集・執筆。
おもに今後の研究を担う学生のために「種子散布」の最新研究や知見がまとめられています。原稿を寄せているのは、北村さん、小池さんを含め、その道の研究者、総勢18名。
このように説明すると、難しい本なのかなと思われるかも知れませんが、タネをまく哺乳類、鳥、そして昆虫などの小さな生き物、その3つのカテゴリーに分けて、それぞれの最新研究などをわかりやすく解説してあるので、手軽に読めますよ。
また、以前この番組にご出演いただいたイラストレイター「きのしたちひろ」さんの、可愛くて親しみやすいイラストが添えられていて、そのページで伝えたい内容がひと目でわかるようになっているのも特徴です。
きょうは北村さんに「種子散布」の最新研究を含め、植物と動物のディープな関係についてうかがいます。
☆写真協力:北村俊平、イラスト協力:文一総合出版
種子散布〜「動物散布」
※この本では種子散布でも、いろんなタイプがあると書かれています。改めて、教えていただけますか?
「今回、本で特に取り上げているのは、動物の助けを借りてタネをまくグループで、それをまとめて『動物散布』と呼んでいます。で、大きく3つグループがありまして、『被食散布』『貯食散布』、それから『付着散布』に分けられます。
順番に説明すると、最初の被食散布は、タネの周りを例えば甘い果肉なんかで覆って、タネを運んでもらう報酬として、魅力的な食べ物を動物に提供するような仕組みになります。私たちが普段、果物として食べている果実をイメージしていただけるといいかなと思います。これがひとつ目です。
ふたつ目の貯食散布は、哺乳類だとネズミやリスの仲間、鳥だとカケスとかホシガラスっていう鳥が含まれるんですが、タネを食べ物として利用する動物の行動を利用した仕組みになります。
ネズミやリスはあとで食べるために、食べ物を蓄える行動をとるんですが、隠したものを全部食べるわけではなくて、一部のタネが食べ残されるようなこともあります。この食べ忘れたタネから発芽することによって、タネまきを成功させるような仕組みになります。
最後の付着散布は、ちょうどこの時期だと、みなさん野山を歩くとズボンとか靴下に植物のタネがいっぱいくっつく経験をしたことがあると思いますが、こういった動物が気がつかないうちにタネをその動物の体にくっつけて、要はただ乗りしてしまうような仕組みを持ったものになります。
で、最初に紹介した被食散布と2番目の貯食散布は、動物にとっても植物にとってもメリットがある、ウィンウィンの関係になるわけですが、最後の付着散布は動物側はただタネを運ぶだけなので、そういったメリットはないです。
今説明したのは動物が絡む話なんですが、もうひとつ動物の助けを借りないグループもあって、ひとつは風の力を利用してタネを飛ばすようなグループで、多くのタネは風に乗るわけで、ちっちゃくて軽い特徴があります。
風を捉える仕組みとして、タンポポの仲間みたいに綿毛が発達しているものだったり、モミジの仲間みたいにタネに翼がついたものとか・・・あとはランの仲間はすごく小さいタネを作るので、何も仕組みがなくてもふわふわっと風で飛ぶようなものになっています。
あとは水の力を利用するようなグループもあって、例えば雨粒が当たった衝撃でタネをばらまくようなものだったり、川の水の流れとか、ヤシの実のように海の流れ、海流によって運ばれるようなものもあります。
最後にホウセンカっていう植物がいるんですけど、ああいう植物では果実がぱっと割れる時に、その時の勢いでタネが弾き飛ばされる、『自動散布』と呼ばれるような仕組みなんかもあります」
タネまく動物の代表、ツキノワグマ
※大きな動物というと、日本にはツキノワグマがいますよね。クマはやはり「種子散布」に貢献しているんですよね?
「そうですね。日本の森でタネをまく動物の代表選手で、この本の編集者でもある小池さんが長年にわたって研究しています。
クマというと、肉を食べている肉食動物のイメージを持っている人が多いんじゃないかなと思うんですが、実際は食べているものの大部分は植物です。特に夏以降になると果実がほとんどを占めていて、それらの果実のタネをまくことが知られています」
●冬眠前にたくさん食べるイメージがあるんですけど、主食は何になるんですか?
「今の時期、ちょうどこれくらいの季節になってくると、やっぱりドングリが主食と言われていて、ツキノワグマは冬眠前にたくさん脂肪を蓄える必要があるんですが、秋にはそのドングリをおもに食べているようです」
●ドングリ以外だと、どんなものを食べるんですか?
「クマは多分ドングリをいちばん食べたいんですが、実はドングリの仲間は、年によってたくさん実る年とそうじゃない年、よい年と悪い年があることが知られていますね。ドングリの実りのよい年にはドングリを食べまくっているんですが、実りが悪いと、本当はドングリ食べたいんですけど、ドングリがないので、ほかの果実をたくさん食べるようなことになります。
ドングリの実りのよい年に、クマのフンを拾ったりすると、中にはクマに噛み割られたたくさんのドングリが入っているんですが、今年はたまたま私のいる石川県では、ツキノワグマの主食になるブナのドングリの実りが、あまりよくない年になります。
で、数日前にも調査地のイチョウの木の下に(フンが)いくつかあったんですけど、それを見てみるとドングリは全く入ってなくて、イチョウの木の下で多分イチョウ(の実を)食べたんでしょうね。たくさんの銀杏ですよね。
それからあと、山の中にキウイフルーツの仲間でサルナシっていう植物が、ちっちゃいキウイフルーツみたいなものなんですけど、その小さいタネがたくさん入っていました」
●クマの種子散布で特徴なことっていうと、どんなことになるんでしょうか?
「ひとつは、クマってやっぱり大きな生き物ですので、大きな体を維持するためにたくさん食べるっていうことがあります。で、野生のサクラの仲間だと一度に数千個、人間が食べるサクランボほど大きくはないですけど、野生のサクラの仲間も小さなサクランボみたいな実を付けます。そういうのを数千個、一度に食べたりします。
野生のサクラの果実ってクマだけではなくて、ニホンザルとかヒヨドリみたいな鳥も食べたりしますけど、植物からするとクマがやってくると、実らせた果実を非常にたくさん食べてくれる、だからクマが来てくれるかどうかで、たくさんのタネが運ばれるかどうかが決まってくるので、結構大事な存在になりそうですね」
(編集部注:北村さんによると、クマの糞に含まれている数百から数千のタネは、ネズミにとってはとても魅力的で、ほとんどネズミが食べてしまうそうですよ)
※ニホンザルも森の世代交代に関係しているそうですね。このあたり、ご説明いただけますか?
「リスとかネズミは、先ほど貯食散布っていう、タネを隠したりすることでタネまきに貢献している話を少ししたんですが、ニホンザルも実はいろんな果実、果実が非常に好きな動物のひとつですね。先ほど紹介したツキノワグマと比べると、やっぱり1頭あたりの大きさはずっと小さいわけですけど、サルはクマと違って群れで行動する生き物です。
30頭から50頭くらい、きっとそれぐらいの数がひと群れになって移動しているわけです。サル1頭自体が食べてタネをまく数はクマと比べれば、ずっと少ないんですけど、群れ全体にするとそれが 30倍とか50倍っていうことになるので、一度にたくさんの個体がやってきて、結果的にたくさんの果実を食べてタネをまく点では、ツキノワグマに匹敵、もしくはそれ以上の果実を食べてタネをまくようなことになっているのかもしれません」
「日本中でタネをまく」ヒヨドリ
※鳥がタネを運ぶことは知られていると思いますが、都会の公園や住宅地でもよく見るヒヨドリ、この本では「日本中でタネをまく」と書かれていました。そうなんですか?
「ちょっとオーバーな表現でもあるんですけど、ヒヨドリは多分みなさんどこかで姿を見たことがあるだろうし、今ちょうど外でもヒヨドリが鳴いているんですけど・・・ひとつの特徴としては、日本国内で木があるところだったら大体どこにでもいて、そこの自然環境を利用していて、そこに生えている植物の、非常に多くの植物のタネをまいている点がひとつの特徴だと思います。
ヒヨドリが実際、どれぐらいの数の植物のタネをまいているのかを調べた研究があるんですけど、少なくとも200種類以上の果実を食べていて、そのタネをまいていることが知られています。
でももっと狭い範囲、大学のキャンパス内とか、そういった狭い範囲で見ても少なくとも50種から80種ぐらいの果実を食べていることが知られていますので、一種類の生き物が食べる種数としては、すごく多い種類の果実を食べています」
●植物側からしたらヒヨドリって、やっぱりありがたい存在っていうことなんですか?
「そうですね。すごくいろんな果実を食べている理由としては、ひとつはヒヨドリは1年中日本にいる鳥で、春から冬までずっといるので、年間を通して果実を食べている、それからヒヨドリは果実をすごくよく食べるんですけど、日本で果実を食べる鳥の中では比較的大型のほうになります。
鳥の場合は、先ほど話したクマとかニホンザルみたいに、手を使って果実を食べることができずに、くちばしでついばんで、それをぐっと飲み込むしかないんですね。だから口の大きさがすごく大事になってきて、大きな鳥のほうがいろんな大きさの果実を食べることができるっていう点がひとつ特徴です。
飛び方もヒヨドリってすごく器用で、“ホバリング”って言って少し羽ばたいて空中で止まるような飛び方もできるので、普通の鳥だと枝先でつかめないような果実までしっかり利用することができたりします。
多分ヒヨドリは日本にいる鳥の中で、いちばん果実が好きな鳥なんじゃないかなと思います。ちょっとしか実ってないような果実でも、”それを食べに行くんだ!” っていうような形でやってきて、しっかり食べていくこともあります。
今の時期、秋から冬にかけて、森の中はすごくいろんな植物が果実を実らせているわけなんですけど、地面の近くの、すごく小さな木だったりすると、数個しか果実が実っていないような場合があるんです。そういった果実でも、自動撮影カメラを設置しておいて、どんな動物が食べに来るのかなって調べてみると、ずっと誰も来ないなと思っていたら、ある日突然ヒヨドリがやってきて、残っていた果実を全部食べて飛んでいく姿が写ったりします。
住宅地の庭なんかにも、お正月の縁起物で使われる、赤い実をつけるマンリョウとかオモトっていう植物があるんですけど、そういった果実にも、カメラ置いといてみると、やっぱりヒヨドリがやってきて果実を食べて、タネを運んでいたりするような姿が撮影されたりしています」
(編集部注:ヒヨドリのほかにも、身近な鳥としてメジロやカラスも果実を食べ、結果的に種子散布に協力していることになるそうです。
植物にとって、空を飛べる鳥は遠くまでタネを運んでくれる、ありがたい存在だと思いますが、アホウドリやカツオドリなどの海鳥も、陸地に降りた時に羽毛にタネがつくことがあるので島から島へタネを運ぶ、これも「付着散布」になるんですね)
カタクリのタネを運ぶアリ
※昆虫と植物の関係でいうと、この番組のスタッフからアリがカタクリのタネを運ぶという話を聞きました。アリには何かメリットはあるんですか?
「アリは基本的には雑食性で虫を食べたり、ほかの生き物を捕まえて食べたりするんですけど、花の蜜に来たり果物の果肉も食べたりするのと同じような形で、地面に落ちているタネも食べ物として巣に運ぶことがあります。
その場合はタネそのものを食べてしまうので、ほとんどアリに食べられてしまって、あまり植物にとってはいいことはないんですけど、今話に出てきたカタクリは、実はちょっと変わった植物です。カタクリみたいな植物、一部の植物なんですが、小さなタネに“エライオソーム”って呼ばれている、お弁当みたいなものがついているんですね。
そのエライオソームの成分を調べてみると、動物性の脂肪分みたいなものが入っていて、アリにとっての栄養分になると同時に、なぜかわからないんですけど、アリがそのタネを運びたくなるような成分が入っているみたいです。
たからアリさんは、エライオソームに惹かれてタネを持って巣まで運んでいって、このエライオソームだけを食べて、残ったタネの部分は巣の中とか巣の外のゴミ捨て場みたいなところに捨てられることで、タネまきが完了するような仕組みになっています。
エライオソームを実際食べることができたアリと、できなかったアリを比べると、アリの巣で生まれてくるアリの数がどうも増えたような事例もあるみたいですので、栄養として十分そのアリにとっても役立っているみたいです」
●メリットはあるんですね~。
「そうですね~。アリがちゃんと食べることでアリ側も増えているんだよっていうことがわかっている、こういう例はすごく珍しいですね。動物側が果肉を食べてどれぐらいメリットがあるのかは、実はよくわからないことが多いんですけど、アリの例ではそういうふうな形で、ちゃんとアリの数が増えていることが示されているようです」
●この本に、カタツムリとかナメクジもタネを運ぶって書かれていましたけれども、本当なんですか?
「一見するとそんな感じはしないんですよね。もともと研究が進んでいるヨーロッパの事例になるんです。先ほどアリがタネを運ぶ事例で紹介した、エライオソームがついた植物のタネ、それを大型のナメクジ、10センチぐらいあるナメクジの仲間がタネとエライオソームを食べて、タネだけ排出するっていうふうな形でタネをまいているそうです。
で、私、日本でもそういう事例ないかなと思って調べていて、日本の事例だと、うちの近所に“ノトマイマイ”っていう大型のカタツムリがいるんですが、その一種がヘビイチゴとか、ヤブヘビイチゴっていう植物のタネを、どうも運んでいる可能性はありそうです」
(編集部注:北村さんによると、研究室での実験では、カタツムリがヘビイチゴのタネを食べ、糞として出されたタネをまくと発芽したそうです。実験的にはタネを運んでいる可能性はあるだろうとのことでした)
温暖化でタイミングがずれる!?
※今年の夏も、酷暑といえるような日が続きましたね。地球温暖化は当然、植物にも影響を与えていると思いますが、種子散布にも影響は出ていますか?
「今年の夏とても暑くて、その影響がどういった形でこの種子散布に影響するのかっていうのは、すぐにはわからないんですが、少なくとも地球温暖化で平均気温は徐々に上がっているのは間違いないわけです。
例えばその結果として、日本だと秋とか冬にたくさん果実が実るようなことになっているんですが、そういった秋に実る果実の数とか、あと果実が熟すタイミング、気温によって早く熟したり、遅く熟したり、もしくは気温が下がらないと熟さないパターンがあったりするんですけど、そういったタイミングが変わってくることは予想されます。
そうなるとその果実をたくさん食べていた鳥たち、渡り鳥、今ちょうど夏鳥は南に帰って、冬鳥が北からやってくるような時期になるんですけど、そういった渡り鳥の移動パターンとか、そもそも通っていた所が変わったり、タイミングも変わってくるんじゃないかってことは考えられます。
今まで秋の果実と渡り鳥の間で見られていたつながりが変化していくことは考えられるんですが、じゃあどう変わるの? って言われると、なかなかすぐには予測ができないのが今のところの現状です」
●今回この本のおもなテーマになっている「動物散布」で、世界の研究者が注目していることってどんなことなんでしょうか?
「ひとつは、先ほどもあったような地球温暖化との関係で、温暖化することによって、そのスピードについていける速さで、自ら動くことのできない植物が移動することができるのか? だから動物がタネを運んでくれるのか? っていうことになります。
植物は動けないので、今までよりも生息環境の気温が上がると、より涼しい場所、例えば標高の高いところとか、あと日本であれば、より北のほう、そういった方向に向かって移動する必要があるんですけど、地球規模の環境変動に植物側なり、そのタネを運んでいる動物が対応していくことができるのかっていうところになると思います。
もうひとつは、私がタイでやっている研究とも少し関係するんですけど、タネを運ぶ動物がいなくなってしまうことで、生態系にどういった影響が及ぶのかっていうことの評価になります。具体的にいうと、タネをまく動物が絶滅していなくなると、その動物にタネまきを依存していた植物にも影響が及ぶんじゃないかっていうことが心配されています。
私が研究していたサイチョウっていう大きな鳥もそうなんですけど、大型の動物は私たち人間の、例えば狩猟対象になったり、あと森林伐採みたいな生息環境が破壊されることで絶滅しやすいグループになります。
こういった動物がおもにタネをまいていた植物は絶滅せずに、残っている動物が絶滅した動物と同じようにタネをまくことができるのか。それともやっぱりタネをまくことができずに、その植物が絶滅していくのか・・・で、そういった植物がいなくなると、結局その場所の植物の種類も多分変わっていくことになると思うんですけど、そういったことが起きていくのかが、多分興味を持たれているところじゃないかなと思います」
(編集部注:植物と動物の関係を、種子散布の視点で20数年研究している北村さんですが、それでもわからないことが多い、だからこそ、やりがいのあるテーマだとおっしゃっていましたよ。今後は今までタネをまく動物と考えられてこなかった生き物たち、例えばカメやトカゲなどの爬虫類、ナメクジやカマドウマなどの無脊椎動物などを調べてみたいそうです。
最新の研究では、ワラジムシやダンゴムシもタネをまいていることがわかってきているそうですよ。植物と動物の関係を明らかにすると、生物の多様性を理解するのにもつながる、そうおっしゃっていました。今後の研究に期待したいと思います)
INFORMATION
『タネまく動物〜体長150センチメートルのクマから1センチメートルのワラジムシまで』
植物がタネをまく「種子散布」の中から、おもに「動物散布」に焦点を当てた一冊。原稿を寄せているのは北村さん、小池伸介さんを含め、その道の研究者、総勢18名。タネをまく哺乳類、鳥、そして昆虫などの小さな生き物、その3つのカテゴリーに分けて、それぞれの最新研究や知見をわかりやすく解説してあるので手軽に読めますよ。イラストレイター「きのしたちひろ」さんの、可愛くて親しみやすいイラストにも注目です。ぜひ読んでください。
文一総合出版から絶賛発売中! 詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎文一総合出版:
https://www.bun-ichi.co.jp/tabid/57/pdid/978-4-8299-7255-7/Default.aspx
2024/11/17 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. ANIMALS / MAROON5
M2. FIELDS OF GOLD / STING
M3. THE BEAR NECESSITIES / PHIL HARRIS & BRUCE REITHERMAN
M4. BIRDS / PAUL WELLER
M5. エンドレス / TOMOO
M6. CARRY YOU HOME / JAMES BLUNT
M7. HEAVEN IS A PLACE ON EARTH / BELINDA CARLISLE
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2024/11/10 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第22弾! 今回はスポーツ編として、ふたつのプロジェクトをクローズアップ!
まずは、廃棄されるゴルフボールをマーカーやピアスなどにアップサイクルする「NEP!! GOLF」、そして、役目を終えて捨てられるバスケットやバレーのボールを加工してポーチやコインケースなどに生まれ変わらせる「RE:BALL PROJECT」をご紹介します。
☆写真協力:NEP!! GOLF、八橋装院
「NEP!! GOLF」〜ロストボールをサップサイクル!
※まず、ご紹介するのは、廃棄されるゴルフボールをアップサイクルする「NEP!! GOLF」。これは、広告代理業務などを行なう会社「6G」が進めているプロジェクトです。
代表の「村岡光太郎」さんによると、ゴルフ場で発生するロストボールは回収され、半分は再販売されるそうですが、残りの半分は、汚れや傷があると売り物にならないため、廃棄されます。その方法は燃やすか埋めるか、当然、処理費用がかかります。
そこで村岡さんたちは、その課題に取り組み、3年ほど前から廃棄されるロストボールのアップサイクルを進めていらっしゃいます。
●プロジェクト名「NEP!! GOLF」のNEPには、どんな意味があるのでしょう?
「これは“Nude Earth Project”を訳して「NEP(ネップ)!!」にしています。(NEPの)後ろにドッキリマークがふたつありますが、これはヘルプみたいな、“助けて”の意味で、ドッキリマークをふたつ付けているんです」
●なるほど・・・。
「“Nude Earth Project”ってどういうことかっていうと、“裸の地球”っていうのをより人っぽくしたくて・・・裸の地球っていうと正しくは、“Naked Earth”って言い方をするみたいなんですけど・・・。
僕がイメージしたのは、地球自体は人間が何もしなければ、自然にずっと継続していけるものなのかな〜と、勝手にそう思っています。でもゴミを捨てる、二酸化炭素を出す、木を伐採して森をなくしていくとか、いろいろやると、それだけで地球ってころころ違う運命をたどっていくじゃないですか。
“裸の地球”って要は、地球自体は何もしてないよ、僕らがなんかしているから、結果が変わっていっているんだよって考えて、Nude Earthは“裸の赤ちゃんの地球”みたいなイメージで考えています。それにドッキリマークをつけて、“助けて!”っていう意味で、裸の地球を助けたいよね、だからなんとか、もとに戻していく方法はないだろうかっていうプロジェクトです。
“GOLF”に関しては、今回はゴルフボールっていうテーマでアップサイクルをして、ゴミを減らしていこうって思ったので「NEP!! GOLF」なんですけど、これが違うアイテムが見つかれば、“NEP!!OOOO”に変えてやっていこうとは思っています」
●なるほど、いろんな意味が込められているんですね~。サイトを拝見したんですけど、年間再販できないロストボールが国内だけで約7500万球も出るって書かれていて、そんなに多いんですね。驚いちゃったんですけど・・・。
「そうですね~。一応、ゴルフ人口の話があると思うんですけれど、どこからこの数が出ているかっていうと、一般社団法人『日本ゴルフ場経営者協会』っていうところが毎月のラウンド数を出しているんですよ。どれぐらいラウンドがあったかっていう・・・。
たとえば先月だと800万ラウンドぐらい、(国内の)ゴルフ場は2170か所あるんですけど、800万ラウンドありましたよと。1年間、平均すると、あんまりやってない日もあるので、トータルすると2021年の時は大体7500万ラウンドぐらいだったんですよ。
7500万ラウンドあるってことは、僕なんかはこの間(ゴルフ)デビューした時に、ボールを12球ロストしたんですけど、みなさんも1球2球はなくすと思うんですよね」
●失くしちゃいます。
「そうすると、すごく少なく見積もっているんですけど、大体年間7500万ラウンドから8000万ラウンドあると、ひとりが2球OBした場合、(ロストボールが)1億6000万球出ますと。(回収する)ボール屋さんが、1億6000万球の中で “半分くらいはロストボールとして出せるよ!”っておっしゃっていたんで、半分は出せない、っていうことは捨てるものなんですね。で、当然(ゴルフ場内で)見つかってないボールもあるので、これ以上あることは間違いないんです。
ゴルフ場内で出ているロストボールは、多分2億球とか言ってもおかしくないんですけど、そのうちの1億球ぐらいは、再販できないからゴミになるか、そのままゴルフ場の中で土に埋もれていくかっていうような状態になっているところから7500万球っていう・・・」
●確かに売られているロストボールもありますけれども、再販できないロストボールの場合は現状捨てられちゃっているっていうことなんですね。
「そうですね」
(編集部注:村岡さんによると、ゴルフボールの素材は外側はウレタン、内側は合成プラスチックで、メーカーによって材質が違うため、粉砕したとしても、それをそのまま再利用することは難しいそうです)
端材も再利用、無駄なく使う
●アップサイクルして商品化されたアイテムって本当にどれも可愛いですね。
「ありがとうございます」
●きょうはスタジオにたくさんお持ちいただきました。ありがとうございます! たとえばサボテンのポットですけど、ゴルフボールの上を削って、中をくり抜いてあるんですね?
「そうですね。少しだけくり抜いています」
●つまり、このサボテンの鉢がゴルフボールってなっているってわけですよね。これ(中に)土を入れているんですか?
「これは挽き終ったコーヒー(のカス)ですね」
●コーヒー! え~っ!
「近所のちょっと有名なコーヒー屋さんで乾燥してもらって、それをいただいています。捨てるものなんで・・・」
●そこにもちゃんとエコというこだわりがあるんですね!
「そうですね」
●この土台となっている黒い丸い部分は何ですか?
「これは靴修理会社さんの、かかとの修理とかに使うソールの部分なんですね。大きな正方形からソールも切り抜くんですけど、その時にやっぱり四隅に端材が出るんですね。それを捨てているっていう話だったので、じゃあそれを土台にさせてもらおうっていうことで、くり抜いてもらってます」
●すごい! じゃあこの製品はすべてに無駄がないということですね。
「そうそう! 上のもの以外は!(笑)」
●ピアスとかもあるんですね。ゴルフボールの表面の素材をそのまんま小さくカットしたものですけど、ゴルフ女子にはたまらないですね~、可愛い!!
「ぜひ使ってほしいです!」
●それから、グリーン上で使うマーカーもゴルフボールの表面がそのまんまで、くり抜いてありますけれども、どれも可愛いですね~。
「ありがとうございます!」
●商品化するときのアイデアとかデザインは、みんなで話し合って決めるんですか?
「はい! もちろんみんなで考えるんですけど、うちの会社自体が男しかいないんです」
●はいはい(笑)
「なので、なかなかそういう可愛らしいものを考える時に、どうしたらいいかな? っていうのはあったんですけど、まず最初はキーホルダーから始まりました。
キーホルダーって付けてはくれるんですけど、“それ以外になんかないの?”って聞かれることが多くて、買ってくれたかたたちからアイデアを貰いながら、できそうな商品を作っていくという形になっていますね」
●お客さんからの声も反映されているんですね。
「そうですね」
(編集部注:村岡さんによると、現在、カラーボールを使った新商品を開発中で、緑を増やすための、寄付につながる仕組みを検討しているそうです)
※ゴルフボールをカットするなどの作業は社内で行なっているそうですね。その時に出た端材などは、どうされているんですか?
「その端材を集めて、最初はバイオ燃料がいいんじゃないかってことで、いろいろプラントを作って燃やすと、燃焼効率がすごくいいって思ったんですけど、二酸化炭素とかいろんなこと考えると、燃やさないでそのまま活かしたほうがいいんじゃないかっていう考えがあって・・・。
で、(きょうはスタジオに)靴のソールを持ってきているんですけど、靴のメーカーさんと相談して、(ゴルフボールの)削りかすを7パーセント混ぜているソールなんですね。たまたま先ほど言った、土台になっている靴の・・・これですね」
●サボテンの土台になっている?
「サボテンの土台を作っている靴屋さんがソールも作られているって話だったんで、ちょっと(ソールに)混ぜてもらえません? って言って作っているソールなんです」
●ちょっと触ってみてもいいですか? 弾力があってフカフカですね。ベージュが基本となっていて、中に小っちゃな、ピンクとか白とかオレンジとかありますけど、これが・・・?
「ゴルフボールの中の“コア”って言われるゴムの部分ですね。(ソールは)白とか黒のゴムでも作れるんですけど、そうすると見えなくなってしまうので、あえてこのラバーのそのままで作っているんですね」
●端材もちゃんと次の商品につながっているってことですね。
「そうですね。次の商品、何かに使えないかっていうのは日々考えています。むしろ、聴いているかたで誰か教えていただければ・・・協力してもらえるとありがたいんですけどね」
ゴルファーの意識
※ロストボール問題は、やはりゴルファーひとりひとりの意識が大事だと思います。その辺はいかがでしょうか?
「むしろ、みなさんがどう思っているかですよね。ゴルフボールのことを考えたことはありますか? って思わないですか。僕なんかはゴルフやったばっかりですけど、ボールのことなんて考えてないですもんね。自分が打った後にOBしちゃった、“いいから早く次、打ってよ!”って言われて打つじゃないですか。その時にロストボールのことって考えないですよね。
だからそういうことを考えると・・・(ロスとボールが)ずーっと発見されなかったら、土に還らないんで置きっぱなしなんですよね。それってゴミじゃないですか。今、廃タイヤとかいろんなゴミが問題になっていますけど、スポーツの中で、球技の中で、ボールのゴミって多分圧倒的にゴルフボールが多いと思うんですよ。
そこを意識しろって言っても、これまでの期間、そういうことがなかったので、なかなか意識するのは難しいと思うんです。ただ現状それがよく思われてないことは、みんなうっすら、ご年配のかたたちは知っていて、山が汚れているよねとか・・・イメージ的にですよ。
だから僕らは、それをちょっと気づいてもらえるようになればいいかなと思って、この事業やっているんですね。だからこのラジオを聴いていただいたかたが、 “ロストボールで再販できないものもあるんだ!”って知ってもらって、そのままゴミになって、そのゴミが有害なんだなとか、そういうゴミって減らしたいなって思ってくれたら、ちょっと嬉しいなっていうふうに思っています」
(編集部注:「NEP!! GOLF」で販売しているマーカーやピアス、キーホルダーなどの商品はオンラインで購入できます。やはりゴルファーに大人気で、コンペの賞品やお父さんへのプレゼントなどに利用されているケースが多いそうですよ。商品のラインナップなど、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください)
「RE:BALL PROJECT」〜思い出のボールをアップサイクル !
前半では、ゴルフボールのアップサイクル・プロジェクト「NEP!! GOLF」をクローズアップしましたが、後半は役目を終えて捨てられるバスケットやバレーのボールを加工して、新たなグッズに生まれ変わらせる「RE:BALL PROJECT」をご紹介します。
これは、広島市にある衣服の縫製会社「八橋装院」が進めているプロジェクトです。1959年に創業された八橋装院は現在、国内有名DCブランドの縫製を手掛けるなど、長年、日本のファッション産業を陰で支え続けています。
2013年には自社ブランド「FUKUNARY」を立ち上げ、人工皮革やレザー、帆布などを使ったお洒落なバッグや財布などを製造・販売。さらに、競技用のボールを主力商品とする地元の企業「MIKASA」とコラボして、ボールの生地を素材に、軽くて耐久性のあるバッグなどのファッション・アイテムを開発、「FUKUNARY feat. MIKASA」として展開されています。
そんな中、この番組が注目したのが、八橋装院が取り組んでいる「RE:BALL PRO-JECT」です。
※それでは、そのプロジェクトを立ち上げた八橋装院の社長「高橋伸英」さんにお話をうかがいます。
●「RE:BALL PROJECT」のサイトを見ると、使い古されたバスケットボールやバレーボールの素材をそのまま裁断して作った、ポーチやコインケースが載っていました。ボールのキズなども活かされていて、メモリアルなグッズになっているな〜と思ったんですが、どうなんでしょうか?
「『RE:BALL PROJECT』に関しては、使い古したボールを使うことがマストです。私たちがターゲットにしている、想定しているところはやっぱり部活動だったりするんですね。だから学生時代に、中学校、高校、大学でプレイしていた人が・・・ボールには寿命があるので一定数廃棄されます・・・その廃棄されるものを活かして、その人たちの思い出作りに寄与できたらいいなっていうビジネスなんですね。当然、古いボールを活かす以上はキズが残っていたりとか、チームの名前が入っていたりとかっていうのもありますよね。
但し(ボールから生地を)取る位置が、ある程度決まっているので、(チームの)名前が入る入らないは指定はできないんですけど、使った証(あかし)というか、キズがついたところはいくらかは入るというか、全体的にキズがあれば入ってしまうんですね。
それがペンケースだったり、眼鏡を入れるケースだったり、コインケースになって、自分のバッグの中に入っている、手元にある、それを見ることで、昔、頑張った自分を思い起こして、私はこれで頑張っていた、俺はこれで頑張っていたんだって、社会に出た時にまた力を与えてもらえるものになればいいなっていう思いで、この『RE:BALL PROJECT』をやっています」
●夢中に、がむしゃらに頑張って部活をやっていた、その時の思い出がポーチなどになって身近にあるっていうのは、すごく嬉しいことですよね!
「そうですね。プレイヤーにとってみたら嬉しいと思います。だから後輩だったり父兄さんだったりが依頼してくることが多いんです。ほとんどが送り出すほうのかたからの依頼ですね」
(編集部注:高橋さんによると、バスケットやバレーのボールは中にゴムがあるので、商品づくりがとても大変で手間がかかるそうです。
衣服の縫製とは違って、相手はボールですから、職人さんの優れた技術やノウハウがあって、やっとできあがるんでしょうね。)
もっと広めたい「RE:BALL PROJECT」
●この番組のリスナーさんが、自分が持っている思い出のボールからグッズを作って欲しいと思ったら、どうすればいいですか?
「作れるものには制約がありまして、先ほども言いましたペンケースであったりコインケースが主軸にはなるんですけども、弊社ホームページに注文サイトがあります。そちらに必要事項を書いてメールをいただきたいですね。あとはそこに注意事項がありますので、よく読んでいただいて注文していただけたらと思っています」
●今後、何か新たに取り組みたいこととか、今後の「RE:BALL PROJECT」の展開はありますか?
「SDGsに関わる『RE:BALL PROJECT』がなかなかできていないっていうのがありますね。これがもうちょっとみなさまに認知いただいて、いいサイクルをもたらしていると感じてもらって、日本だけではなく世界中に広められるような形になれば嬉しいですけど・・・まあ、理想です! 日本から出すっていうと、なかなかハードルが高いので、今のところ、国内でもうちょっと広まって、認知されたらいいな~っていうところですね。で、捨てられるボールが少しでも減れば嬉しいかなと思います」
INFORMATION
今週は、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第22弾!スポーツ編。「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「つくる責任 つかう責任」ということで、廃棄されるゴルフボールをアップサイクルするプロジェクト「NEP!! GOLF」、そして役目を終えて捨てられるバスケットやバレーのボールを、新たな商品に生まれ変わらせる「RE:BALL PROJECT」をご紹介しました。
「NEP!! GOLF」そして「RE:BALL PROJECT」について、詳しくはそれぞれのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「NEP!! GOLF」:https://www.nep-golf.com
◎「RE:BALL PROJECT」:https://yahashisouin.com/reball/
◎八橋装院 :https://yahashisouin.com
2024/11/10 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. BEAUTIFUL DAY / U2
M2. BABY / JUSTIN BIEBER
M3. BREAKAWAY / KELLY CLARKSON
M4. STUCK WITH YOU / HUEY LEWIS & THE NEWS
M5. Days of Love / 竹内まりや
M6. MY GIFT TO YOU / ALEXANDER O’NEAL
M7. UNCHAINED MELODY / THE RIGHTEOUS BROTHERS
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2024/11/3 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、秩父でメープルシロップを製造・販売する「TAP & SAP(タップ・アンド・サップ)」という会社の代表「井原愛子(いはら・あいこ)」さんです。
井原さんは地元秩父の豊かな自然に魅せられ、会社を起こし、現在はメープルシロップ作りのほか、いろいろなプロジェクトに取り組んでいらっしゃいます。
きょうはそんな井原さんに秩父のカエデの森や、秩父産メープルシロップの特徴のほか、森づくりやエコツアーのお話などうかがいます。
メープル農家さんを訪ね、本場カナダへ!
※秩父には、もともと20種ほどのカエデが自生していて、地域活性化の事業として、その樹液を採取し、商品を作る取り組みが20年ほど前から行なわれていたそうです。
●井原さんは、秩父のご出身だそうですが、どんな経緯でメープルシロップを作って、販売することになったのでしょうか。
「私が社会人になって、一度、地元を出て横浜で働いていたんですね。そんな時、地元で自生しているカエデの樹液を採取して、メープルシロップとかに商品化しているっていう動きがあるのを知って、その活動に関わっているNPO団体の活動に参加したんです。
ただの面白い取り組みをしているっていうことだけではなくて、将来の森づくりをしているっていうところに感銘を受けて、私も森づくりをすることで地域を活性化していったりとか、森の恵みをみなさんに届けることで、こういう活動を多くのかたに知っていただきたいと思って、思い切って会社を辞めて(秩父に)Uターンしました」
●メープルシロップを作りたい! って思ったとしても、秩父産メープルシロップの製造・販売の拠点作りには資金とかノウハウが必要ですよね?
「そうですね。実は私、最初(秩父産の)メープルをより多くの人に知ってもらいたいって思ったんですが、自分が(メープルシロップを)作るっていうふうには、実は思ってなかったんです。メープルシロップは知ってはいたけど、そこまでメープルシロップが好きというわけではなかったんです。
正直、秩父のみなさんと一緒に活動していくには、やっぱり本場を知らなければと思ったので、まだその時は会社に所属していたんですが、有給を使ってカナダに渡って、現地のメープル農家さんを訪ねる旅をしたりしたんですね。
そこで出会ったのが、今は(秩父に)『MAPLE BASE』がありますけれど、“シュガーハウス”という、カナダのカエデの森の中に小屋がありまして、そこに集めてきた樹液を持ってきて、煮詰めてメープルシロップを作る場所、小屋になりますね」
●本場カナダでは、どんなことを勉強されて、どんなこと体験されたんですか?
「カナダは(メープルシロップの)一大産地ですので、秩父とは本当に次元が違う形になっています。森の中にはパイプラインが張りめぐらされていまして、ポンプで全部集約して小屋まで(樹液を)持って来るっていう(仕組みです)。(煮詰めるのに)ちょっと旧式なんですが、薪を(専用の機械に)くべて湯気が立ち昇る様子が真冬の極寒のカナダで風物詩になっています。
たとえば(メープルシロップ作りの)様子を、スクールバスが乗り付けて、子供たちに見学してもらえるようになっていたりとか、あとはお気に入りのメープル農家さんに、できたてのメープルシロップを買いに行くのが習慣であったりとか、メープル・フェスティバルが各地で開催されていたりとか、地域に根づいている様子でありました。
そういうことを見て、秩父もせっかくメープルを作っているのだから、ただ商品を売ることだけではなくて、そこに来れば、メープルのことを知ったり食べたりしてもらえる、そういう場所作りが必要なんじゃないかなと思うようになりました」
(編集部注:井原さんが参加したのは、NPO法人「秩父百年の森」が主催するエコツアーで、その時、自然の豊かさに驚き、もっと森の恵を届けたいと思い、会社を辞めて地元に戻った井原さんなんですが、周りの人たちは、無謀ともいえる決断にびっくり! NPOの活動では食べてはいけないよと心配されたそうです。
それでも井原さんの本気と熱い思いに応えようと、地元の組合などが協力、地域活性化の事業のひとつとして進み始めます。そして、秩父ミューズパークにあった空き家のログハウスを改装し、2016年に日本初のシュガーハウス「MAPLE BASE」をオープン。本場カナダから輸入した、樹液を煮詰める機械を使って、秩父産のメープルシロップを製造するなど、「MAPLE BASE」を拠点に秩父の森の豊かさを発信されています)
50分の1? 66〜67度?
●井原さんの会社「TAP & SAP」で販売されているメープルシロップと樹液、私も取り寄せて試食、試飲させていただいたんですけれども、樹液はほのかな甘さで、水のようなとっても爽やかな感じがしました。一方、メープルシロップは濃厚でコクのある甘さがあって、鼻に抜ける香りもすごく甘くて美味しかったです!
「はい、ありがとうございます!」
●改めて、カエデから採取した樹液がメープルシロップになるまでの工程を教えていただけますか?
「みなさん、樹液という名前を聞くと、どうしてもクヌギとか、カブトムシが食べるようなペトペトしたような甘いものを想像するかと思うんですね。カエデの樹液は、春先の大体2月が最盛期になるんですが、カエデの木が芽吹くための準備として、根から地中の水分をどんどん吸い上げて、枝葉のほうに行き渡らせようとする栄養の水になります。
もともとは水分なので、そこに甘みはないんですけれども、やはり極寒の冬の秩父は、マイナス十数度っていうのはざらにあります。通常それぐらい木の中に水分があると凍ってしまいますよね。 ただの水だと結構、膨張してしまうかと思うんですが、樹液の成分のデンプン質を糖に変えて甘くすることで、よくシャーベットとかだと膨張はせずに、ちょっとシャリシャリしたシャーベット状になるかと思います。
カエデの木の内部は、ちょっとシャーベット状のようになって、その時期にカエデの木に少し穴を開けるとポタポタその樹液が滴り落ちてきます。春に向けてどんどん気温が上がっていく中で、内部のシャーベット状のものが溶け出して樹液として外に出てくる、私たちはその一部をいただいています」
●樹液の段階では、ほんのり甘いぐらいですけれども、それがメープルシロップになるとすごく濃厚な甘さになるっていう、それもすごく不思議だったんですが・・・。
「そうですね。カエデの樹液自体は糖度が大体1.5度から2度ぐらいという、本当に薄っすら甘いぐらいなんですけれども、それを煮詰めていくことで、大体(糖度が)66度から67度になります」
●何時間ぐらい煮詰めるんですか?
「そうですね・・・半日ぐらいはかけて煮詰めていくんですね。メープルシロップを作るまでに工程的には3日間とか、準備まで含めると4日間とか、本当に時間をかけて作っていて、大変手間のかかるものとなっています」
●たとえば、瓶1本のメープルシロップ作るには、どれぐらいの量の樹液が必要になってくるんですか?
「その時の樹液の糖度次第で高ければ少なくて済みますし、糖度が低いとたくさん必要になってくるんですね。今私たちが販売しているメープルシロップが60グラムなので、大体50分の1ぐらいまで煮詰めて作っています。樹液としては3キロぐらいですかね。なので、たくさん樹液が採れて、たくさん作れるぞと思っても、50分の1ぐらいの量になってしまうので、本当に少なくなってしまいます」
まるで黒糖!? 和の味?
※秩父産メープルシロップはカナダ産と比べて、どんな特徴がありますか?
「カナダのメープルの木は、シュガーメープル『サトウカエデ』というんですけれども、私たちは『イタヤカエデ』っていう日本の固有のカエデであったり、モミジと呼ばれるものなど、様々な木を使っています。
味わいの特徴としては、ちょっと黒糖のようなコクのある、和な味がするってよく言われます。そして秩父の土地柄もあるとは思うんですが、カリウムやカルシウムなどのミネラル成分が、カナダのものと比べても多いっていうことがわかっています」
●樹齢何年ぐらいのカエデから樹液を採取するんですか?
「私たちは木の直径が20センチ以上25センチとか、ある程度大きく成長した木からしか採らないというルールを設けています。あまり小さい木からは採らないので、樹齢としては50年〜100年以上というか、本当に立派な木からも採っています」
●そういう木から、どうやって樹液を採取するんですか?
「木に少しだけ穴を開けて、そこに管を通してポリタンクに貯めて、それでポリタンクを順次回収していくっていう形ですね」
●樹液を集めて運ぶだけでも重労働ですよね?
「そうですね。今私たちが(樹液を)採っているカエデは自生しているカエデなんです。やはり私たちがアクセスしやすいような場所にある木は、ほとんどがスギやヒノキなんですね。逆にカエデの木はとても根を張るので、たとえば、ここの木を切ったら崖が崩れるとか、ある意味ハードな場所にカエデの木たちは残っています。正直、私たちが採取する時もちょっと崖をまず降りて、川を渡って対岸の急な斜面を登りながら採っていったりとか、場所もバラバラだったりするので、大変手間暇がかかります」
●継続的に樹液を採取するためには、カエデの手入れだったりとか植林だったりとか、森づくりがやっぱり大事になってきますよね?
「そうですね。私たちの特徴としては、ただ採るということではなくて、やっぱり植林することを大事にしています。NPO法人『 秩父百年の森』という団体が、カエデを苗から畑で育てて、ある程度大きくしてから山に返すという、かなり手間暇のかかる作業を行なっています」
新しいハチミツ!? 「第3のみつ」!?
※井原さんが2015年に立ち上げた会社「TAP & SAP」という名前には、どんな思いが込められているんでしょうか?
「まずTAPは、スマホをタップするとか・・・ “タップ・ザ・ツリー”で、実は樹液を取る時に木に穴を開けて、とんとんとんってするのがその由来なんですね。で、SAPが樹液なので、どちらも言葉としてはカエデの樹液とか、カエデの木にまつわるものになっているんです。そういった恵みをより多くの人に届けて、食べてもらって、森づくりにつなげていきたいっていう気持ちを込めて、この名前をつけました」
●メープルシロップの製造・販売のほかに、どんなプロジェクトを進めていらっしゃるんですか?
「この活動や、食べてもらったりするのも大事なんですが、やはり現地を見ていただいたりですとか、そういったこともやっていきたいなと思いまして、エコツアーの開催、コロナ禍でここ数年できてない状態だったんですけれども、そういった活動でみなさんと交流をしたり、現地を見ていただいたりっていうことも行なっています」
●エコツアーは、具体的にはどんなツアーなんですか?
「樹液を採っている場所が私有地になるので、誰でもいつでも入っていいよっていうものではないんです。そういったところにご案内して、実際、樹液が出ている様子を見ていただいたりとか・・・。あとはMAPLE BASEで、いろいろランチを食べたり、樹液からシロップってどうやって作っているの? とか、いろんなワークショップを開催したり、結構盛りだくさんの1日で、参加されたかたには好評となっております」
●井原さんご自身がガイドをされたりするんですか?
「そうですね。私もそうなんですが、あとは森づくりをしているNPOのメンバーたちにもガイドをしてもらいながら、一緒に冬の森を歩くことも行なっています」
●あと、プロジェクトのひとつ「第3のみつ」についても教えていただきたいんですが・・・。
「はい、メープルシロップも天然の甘味料として有名ですが、もうひとつはハチミツで、実は私たちの活動からちょっと珍しいものが生まれました。それが『第3のみつ』になるんです。実はメープルシロップは春先に近づけば近づくほど、その樹液で作ったメープルシロップって甘いんですけど、エグみがどうしても出てしまうんですね。
まず、最初のきっかけは、このプロジェクトに関わった地元の高校生が、ちょっとエグさがあるメープルシロップを、ハチにあげたら食べるんじゃないかっていうところで実験したところ、ハチさんがエグみのあるメープルシロップを食べて、それで蜜を作ったんですね。
その蜜を埼玉大学の先生に分析をしていただいたら、ハチミツなんですけれども、メープルシロップの成分がきちんと入っている蜜ができたと・・・。なので、これはちょっと新しいハチミツなんじゃないかっていうところで盛り上がったんですけど、厳密にはハチさんに餌をあげて作る蜜は、ハチミツと呼んで売ることができないんです。
それで、その製造等で特許も取りまして・・・メープルシロップは今なかなかたくさん採れるわけではないので、果実とか野菜とか、一般の生のもので販売できないのを、よくジュースにしてしまうと思うんです。そういったものを無駄なく使えるということで、そのジュースをハチに与えることで、そこからできた蜜を! というので、いろんな野菜、果物で実験したところ、ハチさんがいちばんよく食べるのがリンゴジュースだったんですね。
リンゴジュースをハチに与えてできた蜜っていうことで『第3のみつ』の商品化ができるようになりました」
(編集部注:「第3のみつ」商品名は「秘密」の「秘」に 蜂蜜の「蜜」で『秘蜜(ひみつ)』なんです。どんな味がするのか、気になりますよね。「TAP & SAP」のオフィシャルサイト(https://tapandsap.shop-pro.jp)から購入できますよ)
人間が関わる森づくり
●2013年に井原さんが、秩父のカエデの森を歩くエコツアーに参加されたことが、まさにターニングポイントとなって、劇的に井原さんの人生が変わったと言っても過言ではないと思うんですけれども、その時に抱いていた思いは今も変わらずにありますか?
「そうですね〜生まれ育った地元で暮らしていた時には、なかなか感じなかった、自然の豊かさとか森の気持ちよさとか、そういうものは実はもともと自然にあったということではなくて、いろいろな人が気持ちいい森にするために手入れをしていたんですね。
このメープルシロップも目を向けなければ、誰にも気づかれず、日が当たらずにいたものが、みなさんが苦労して頑張ってきたことで、地域の特産となって、今に至っていると思うんです。
そういうことを続けていかないと、結局途絶えてしまうものだと思うので、森づくりもそうなんですが、より若い世代を巻き込みながら続けていけるような、そういう形で今後も活動していきたいと思います」
●メープルシロップは秩父のカエデの恵みだと思いますけれども、30年後、50年後の秩父の森にどんなビジョンをお持ちですか?
「今、秩父のみならず日本全体がそうかと思うんですが・・・半分が人工林のスギやヒノキで、そのほかの半分は広葉樹なんですが、どんな木があるかっていうのはほとんどの地域で知られてないかと思います。私たちが一度関わってしまった森は放置していたら、いつかはもとに戻るかもしれないんですが、それはかなり長い時間を要するんですね。
私たちが今やっているのは、人間が関わっていける森づくりをしたいっていうことで、そのひとつとして、カエデの木を育てて植樹をして、そのカエデの森から将来的にもっとたくさんメープルシロップを作れたり・・・私たちが関わり合い続ける森づくりを一緒にしていきたいと思って活動しています。ですので、森づくりをより多くの方と協力しながら行なっていければと思っています」
INFORMATION
秩父ミューズパーク内にある日本初のシュガーハウス「MAPLE BASE」では、本場カナダから輸入したメープルシロップを製造する機械を見学できるほか、パンケーキなどを食べられるカフェや、メープルシロップなどの商品を購入できるショップもありますよ。
11月23日(土・祝日)には「MAPLE BASE」の芝生エリアで「秩父の森ジャンボリー」を開催、大人も子供も楽しめる催しを予定しているそうですよ。ぜひお出かけください。詳しくは「MAPLE BASE」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎MAPLE BASE:https://tapandsap.jp/maplebase/
井原さんが取り組んでいる「第3のみつ」やエコツアーなどのプロジェクトについては「TAP & SAP」のサイトを見てください。オンラインで樹液やメープルシロップなどの商品を購入できます。
◎TAP & SAP:https://tapandsap.jp
2024/11/3 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. MY HAPPY ENDING / AVRIL LAVIGNE
M2. BECAUSE YOU LOVED ME / CELINE DION
M3. WHATEVER MAKES YOU HAPPY / LUTRICIA McNEAL
M4. MAPLE SYRUP / THE BACKSEAT LOVER
M5. Smiling Days / 竹内まりや
M6. APPLETREE / ERYKAH BADU
M7. KEEP GOING UP / TIMBALAND、NELLY FURTADO&JUSTIN TIMBER-LAKE
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」