2021/5/30 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、茨城県那珂市(なかし)地域おこし協力隊の「入江紫織(いりえ・しおり)」さんです。
入江さんは地元の農家さんや飲食店、農業関係者のみなさんと一緒に、コロナ禍で販路を失った農産物を、マルシェを開催して販売するなど、農業の活性化に力を入れていらっしゃいます。
きょうはそんな入江さんに地元の農家さんの支援活動や、農業への想いなどうかがいます。
☆写真協力:入江紫織
自然に溶け込んで農業がある那珂市
※それではさっそくお話をうかがっていきましょう。
●入江さんは茨城県那珂市の、地域おこし協力隊のメンバーとしてご活躍されていますけれども、まず、この地域おこし協力隊とはどういったものなんでしょうか?
「地域おこし協力隊は総務省が主体となって実施している事業です。全国47都道府県に地域を盛り上げるっていうことをしたい方が、たくさん隊員として派遣されているんですけれども、皆さんそれぞれ、自分たちの得意分野を活かしながら、町おこしの活動を3年間限定でするっていう事業ですね」
●何人ぐらいメンバーっていらっしゃるんですか?
「メンバーは、今は全国で5500人ぐらいが活躍されていますね」
●そうなんですね。全国色々な地域おこし協力隊があって、入江さんは那珂市の地域おこし協力隊ということなんですね。茨城県の那珂市のご出身でいらっしゃるんですか?
「あ、全然出身じゃないですね」
●あれ? じゃあどうして那珂市の地域おこし協力隊に応募されたんですか?
「私の前職が日本農業新聞という新聞社に勤めておりまして、その時は農家さんに農業の最新情報を発信する立場だったんですけれども、それとはまた別に、一般の消費者の方に農業の魅力をお伝えすることにすごく興味を持ち始めて、それをちょうど募集されていたのが那珂市だったので、エントリーして、ご縁をいただいて採用いただきました」
●今は那珂市に移住されているということですか?
「そうですね」
●那珂市ってどんなところですか? 行ったことないんですけれども。
「那珂市はすごく景色が豊かで、例えば白鳥が冬になったらシベリアから飛来してきて、色んな湖に白鳥がいたりとかして、あとは、干し芋の大産地なので、季節になると色んな所で農家さんが干し芋を干している風景が見られたりですとか。お蕎麦も花がすごく真っ白で綺麗なので、そういう景色が見られたりですとか、すごく自然に溶け込んで農業があるっていう地域ですね」
●たくさんの農産物が作られている場所なんですね。入江さんのご実家も農家さんでいらっしゃるんですか?
「そうですね。農業関係者で実家が京都市なんですけれども、九条ネギの卸売の仕事を実家がしておりまして」
●じゃあもう昔から農業に対する思いというのは強かったわけなんですね。
「そうですね。生まれた頃からそんな感じですね」
ドライブスルー形式でセット販売!?
※具体的にどんな活動をされているのか、教えてください。
「地元にフェルミエ那珂というチームがあるんです。だいたい40人ぐらいがいらっしゃるんですけれども、地元の農家さんですとか、あと飲食店ですとか、JAさんが集まって農業を盛り上げようというので色んな活動しています。私はその団体のPRですとか、マルシェのお手伝いですとか、それを通した農産物の販売促進等をさせていただいています」
●具体的にどんなことをされているんですか?
「具体的には月に1回マルシェを開催したりですとか、あとは法人化をしたので、これから色々積極的にPRしていきたいっていう方のブランディングをお手伝いさせてもらったりしています」
●マルシェってどういう形で開催されているんですか?
「1箱のダンボールに野菜を10品目程度入れて、2000円で販売させてもらっております」
●どれぐらい用意されているんですか?
「だいたいいつも50箱用意させてもらっています」
●次のマルシェの開催は、どのように皆さん把握されるんですか?
「公式のインスタグラムを作っておりまして、そこで最新情報を更新しております」
●なるほど!
「マルシェは地元の農産物直売所の、ふれあいファーム芳野っていうところがあるんですけれども、そこの駐車場をお借りして開催しています」
●先ほどの、PRっていうのは農家さんのPRっていうことなんですか?
「そうですね! 主にインスタグラムを通して情報を発信させてもらっていますね」
●今はインスタグラムを使って色々PRされているわけですね〜。例えばどんな風にPRされるんですか?
「例えば今月入るお野菜の、このトマトを作っている農家さんはこういう方ですよとか、こういうところにこだわりを持って普段栽培されていますっていうのを、野菜と農家さんの顔写真とセットで紹介したりですとか、そういう取り組みをさせてもらっています」
●ドライブスルー形式で農作物の販売も以前されていたんですよね?
「そうですね。私が着任したのが去年の4月1日だったので、ちょうどコロナってなんだろうみたいな、みんなが分からない時期だったんですね。農家さんたちもマルシェを中止されていたので、何かいい方法ないかなと思って、ドライブスルー形式でダンボールに野菜を詰め合わせて、セット販売するっていう方法を提案して、それが少しずつ形を変えて、今ではテイクアウト形式(マルシェ)で野菜を販売するっていうのをさせてもらっています」
●珍しいですよね! ドライブスルーで販売っていうのは。お客さんたちの反応はいかがですか?
「やっぱり当時はなかなかイベントもないし、ずっと家にいがちで、スーパーにもやっぱり買い物に行くの怖いわっていう方が多かったと思うんですけれども、こうやってちょっと外に出て行くきっかけが出来てよかったですとか、那珂市ってこんなに新鮮な野菜をたくさん作っている農家さんがいるんだねとか、色々お声がけをいただいて、農家さんのことを紹介できていたのかなっていう風にその話を聞いて嬉しかったですね」
フードロスと、脱プラへの取り組み
※入江さんは活動の一環としてフードロスを減らす取り組みもされていますよね?
「そうですね。これは茨城県のイチゴ農家さんで梅原農園さんっていらっしゃるんですけれども、その農家さんの捨ててしまっていたイチゴを、地元の生パスタ専門店で生パスタに加工してもらって販売したいっていうのを、地元の水戸農業高校の生徒さんが企画されていたんですね。ただ販売先がないっていう相談を受けて、それだったら是非マルシェで販売してくださいってお話をして、先月初めて販売させてもらいました」
●高校生たちとコラボっていうのもいいですね! 地域全体で盛り上がっていく感じがしますよね。あと「粉活プロジェクト」というのもちょっと気になったんですけれども、これは何でしょう?
「これもやっぱり廃棄される野菜ですとか、質はいいけれど、まだ食べられるのに捨ててしまわないといけないっていう野菜が結構日本にはたくさんあると思うんですけれども、そういう野菜を買い取って粉末化します。粉末化するとやっぱり栄養分がすごく高まったりとかするので、それを日々、スープに入れたり、お味噌汁に入れたりして、手軽に栄養補給しましょうっていうプロジェクトを始めました」
●新しい発想ですね! パウダー状にするっていうのは。そういうことをしながらフードロスを減らしていこうという取り組みなんですね。地元の農家さんたちと脱プラスチックの取り組みも始められたということですけれども。
「本当につい最近始めて、まだ色々打ち合わせ中なんですけれども、農業の現状っていうのが、例えばトマトを作る時に、大きなハウスを建てるのにたくさんのプラスチックを使わなきゃいけなくて、ビニールハウスなのでそれを止めることって、やっぱりどうしてもできないんですね。
ほかで何かプラスチックを捨てずに取り組むことができないかなっていうので、皆さんも多分スーパーとかで袋に入った野菜を見たことあると思うんですけれども、あの袋を少し再利用したものにできないかなとか。あとはあれを半分だけでも紙にできないかなとか、少しずつなんですけれども、打ち合わせを進めているところです」
●農家さんご自身も皆さん変わろうという努力をされているわけなんですね!
「そうですね!」
高齢化で毎年、栽培面積が増える!?
※入江さんは、以前、日本農業新聞の記者として、全国の農家さんを取材されていたということですが、現在、多くの農家さんが抱えている問題はなんでしょうか。
「やっぱりいちばん大きいのは、もう皆さん多分もうご存知かと思うんですけれども、高齢化がどんどん進んできていて、これから農業を始めようとか、まだ農業できるっていう農家さんに、耕してほしいっていう農地がどんどん集まってきているのが結構問題で、やっぱり毎年毎年、栽培面積を増やさなきゃいけないっていう農家さんが出てきていますね」
●どうして栽培面積って増えていっちゃうんですか?
「毎年高齢化してきて、今年からもう畑を耕すのをやめるっていう農家さんがいるので、そういう方の農地を引き受ける農家さんや、これから営農するっていう農家さんの使命みたいな形になっていますね」
●そのまま放置するっていうのは出来ないっていうことですか?
「放置すると隣の畑に影響を及ぼして、草がぼうぼうだと隣の畑も同じような影響を受けたりするので、耕し続けないといけないっていうのがありますね」
●新しい農業の形っていうのは生まれてきているものなんでしょうか?
「少しずつ農業もデジタル化ですとか、農業DXと言って、どんどん国も推進している事業があるんです。例えば栽培管理を、昔ながらの天候を見て、野菜の葉っぱの様子を見て、勘で分かるっていう風な栽培は結構もう難しくなってきています。
それをデータ化して見える化するとか、あとは最近ドローンを使って農業を始めたいっていう農家さんも増えてきていて、ドローンが実際に動いてるところを見ましょうかってことで、ドローン飛ばしてくれるメーカーさんに見学会を開いていただいたりしました。これから那珂市の農業もどんどんDX化していくのかなっていう風に思っています」
●入江さんご自身も農園を借りて野菜を育てていらっしゃるとうかがったんですけれども、どんなものを育てているんですか?
「去年はサツマイモを植えて、地元の子供たちの収穫体験として使わせてもらったり、あとはトマトとかナスとかオクラを栽培したりしましたね」
●実際育ててみていかがですか? 畑にいる時ってどんなことを感じますか?
「やっぱり安定して野菜をいつも収穫して出荷している農家さんってすごいなって思いますね。大雨が降ったあとに天候がよくなると、すごく草がぼうぼうになったりするんですけれども、毎日栽培管理を丁寧にしているから、私たちって食べ物を安定して食べられるんだなって。栽培して失敗することすごく多いので、それを体験しているからこそ余計に食べ物を大切にしなきゃいけないなと思う気持ちが強くなっていきましたね」
農家さんの思いも一緒に
※最後に、入江さんが「地域おこし協力隊」の活動で、特に心がけていることを教えていただけますか。
「特に心掛けているのは、農家さんの思いと共に農産物を届けたいなっていつも思っているので、農業を始めたきっかけや、どういうところにこだわって日々農作業をしているのかを、きちんと情報として自分も入れておくことと、最近どういうこと困っていますかとか、そういうことはいつも頭の中に入れて活動していますね」
●じゃあ結構頻繁にコミュニケーションを取られているんですね。
「そうですね」
●これまでの活動でいちばん喜びを感じた時ってどんな時ですか?
「初めてドライブスルー・マルシェって開いた時に、消費者のお客様から、”那珂市に新しい風を吹かせてくれてありがとう”って言っていただいたのがすごく嬉しくって。やっぱり県民性なのか市民性なのか分からないんですけれども、どうしてもPR下手だったりとか、すごく魅力があるのにそれを露出するのが苦手な方がすごく多くて、それをうまく出せた瞬間なのかなと思って、それがすごく嬉しかったですね」
●日本全国の方に那珂市の魅力をもっともっと知ってもらいたいですよね!
「そうですね!」
●改めて、この番組を聴いてくださっているリスナーさんに伝えたいことがあれば、是非お願いします!
「多分この番組を聴いている方も、地域おこし協力隊と付き合う機会っていうのも多分あると思うんです。皆さん色々思いを持って、首都圏からはるばるその地域に根付こうと思って活動している方なので、是非優しく接していただきたいと思います。
あとは日本の農業って結構マイナスに言われることもすごく多いんですけれども、個々の農家さんはすごく努力して日々農産物を作っていらっしゃるので、是非スーパーとか直売所に行かれた時には、なかなか難しいかもしれないけど、その思いと共に一緒に購入して、家で料理していただきたいなって思います!」
INFORMATION
入江さんの活動については那珂市「地域おこし協力隊」のサイトをご覧ください。
◎那珂市「地域おこし協力隊」HP:https://www.city.naka.lg.jp/iinakakurashi/page/dir000068.html
個人的な活動として入江さんは、仲間と一緒に一般社団法人「ベジタブル漢方協会」を設立。不足している栄養素を野菜などの粉末で、毎日の食事に効果的に取り入れましょうということで、「ベジタブル漢方アドバイザー」を養成する講座を立ち上げました。
詳しくは「ベジタブル漢方協会」のオフィシャルサイトを見てください。
◎「ベジタブル漢方協会」HP:https://vegekanpo.com/
「粉活プロジェクト」については以下のサイトをご覧ください。
◎「粉活プロジェクト推進委員会」HP:https://kona-project.jp/