2021/10/24 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、太陽のお祭り男、シンガー・ソングライターの「ナオト ・インティライミ」さんです。
先月、デビュー10周年記念のベスト・アルバムをリリースし、現在ツアー! そんな忙しい合間をぬって、この番組に来てくださいました。ナオトさんといえば、旅好き、それも世界を66カ国も巡った旅人としても知られていますよね。
きょうはそんなナオトさんに旅への思いや、あのヒット曲に隠された切なく暖かいエピソードなどをたっぷり語っていただきます。
アフリカのディープな旅
※ナオトさんと言えばやっぱり旅! ということで、今回は旅にまつわるお話を色々とおうかがいしたいなと思うんですけれども、いちばん最近の旅というと、いつになるんですか?
「そうか、旅しばりね。最近はね、旅っていうよりは世界の活動をするために、LA、マイアミ、メキシコに行くことが多いんですよ。それは旅とは呼んでいないというか」
●活動というのはどういう?
「向こうでデビュー(*)をしまして、向こうで歌っているという、これは旅カウントじゃないので、旅でいくと2017年の19ヵ国、旅したやつでしょうかね」
(*2019年に世界三大レーベルのひとつ「ユニバーサルミュージック ラテン」から世界デビュー!)
●19ヵ国! 例えばどの辺りを旅されたんですか?
「モザンビーク、タンザニア、ジンバブエ、ボツアナ、ザンビア、マダガスカル、南アフリカ・・・西に飛び、ダカール、セネガル、カーボベルデ、ギニアビサウ、ガーナ、トーゴ、べナン、ルーマニア、スウェーデンを旅しましたね」
●すごい!
「今これ、手で地図を描きながら答えてるっていう(笑)」
●旅人っぽかったです! この旅はどんな思いで19ヵ国を周わられたんですか?
「これは本当に久しぶりの長旅で、1年半日本の活動を止めさせていただいて、もうスタッフと何度も話をしてそうなるんですけど、世界の挑戦も始めていきたい・・・ただその前に、もう1回最後の長旅に出たいということでしたね」
●原点に戻るための旅って感じですか?
「そうですね。本当にありがたく、デビューして6年間、2010年にデビューして2016年までの6年間、ファンのかたが応援してくださった、スタッフのかたが支えてくださったおかげで、色んな景色を見せてくださって。ただそこから、ちょっとアウトプットが増えていて、インプットすることが必要だろうと、そういうことでしたね」
●19ヵ国のインプット、すごかったんじゃないですか?
「すごかった! すごかったね〜。特にアフリカはかなりディープな旅になりましたね。しかも行く国も決めず、本当にその時その時の相変わらずの放浪っぷりで、ここで何か起きそうだから、もうちょっと長くいるとか、ここは何も感じないから次に行こうとかっていうのは、感じたままにやっていましたね」
●特に印象に残っている国ってありますか?
「そうだなぁ・・・タンザニアのザンジバル島っていう、アフリカなんだけど、イスラムとか東南アジアの影響や、インドの影響もすごく受けているような、クイーンのフレディ・マーキュリーが育ったと言われている島があるんだけど、そこで『サウティ・ザ・ブサラ』っていう、アフリカ中の200組以上のバンドやアーティストが参加するフェスが4日間行なわれて、あれはくらったな〜。何かもう色んなアフリカ(の音楽)がそこで奏でられていて、すごかったね〜、トランシーでしたね」
サッカーは100の情報を飛び越える!
※旅に出る前に、事前に現地でどこに行こうかなど、計画を立てていかないそうですね。それはどうしてなんですか?
「だって決めちゃうと、何かここから起こりそうなのにその場を立ち去らなきゃいけないわけじゃん」
●確かにそうですね。
「旅人としては何か起きそうだったら、それに従おうよ、直感にっていう」
●見知らぬ国で不安みたいなのはないんですか?
「あるさ〜! 相田みつを、人間だもの、あるけどね! もちろんだから身の危険とか、ここからこう行ったら、ちょっと危ないだろうなとか、崖の感じとか、自分の命に何か危険があるようなことは絶対しないし、そこのアンテナはすごく立てているよね。
人に対しては、これはちょっと難しくて、甘えちゃいけないんだけど、ちょっと飛び込んでみるっていうのが結構大事で・・・男性女性でまた危険な度合いが違うからおすすめってわけじゃなくて、僕の場合の話だけでいうと、例えば現地の人と仲良くなって何かに誘われたと、全部断っていたら面白くない、全部乗っかっていたら騙されると。
ここのさじ加減というか、警戒しながらちょっと乗っかっていって、そいつが本当にいいやつかどうかとか、“ん〜?”って思ったらすぐそこから立ち去るとか、常に危険察知をしながら。でも、その現地の文化を体感するためにはちょっと飛び込んでみるっていう・・・だからもう3秒とかで、いいやつか悪いやつかを見抜くスカウターが付いているんでしょうね(笑)」
●そうなんですね(笑)。そういった力がもう身に付いているんですね!
「だって生きなきゃ! 生きてこそ!」
●そうですよね。でも言葉はどうされているんですか?
「言葉は、できる限りやっぱり寄り添ったほうがいいんだわ。覚えたほうがより深く現地の人と話せるし、より深くその国やその町の文化や歴史に触れられるっていうのはあるから、頑張って覚える。頑張って覚えて、すぐ忘れるっていう。でもまた行くとスッと、次はリロードすればいいだけというか、もうインストールされているものをもう1回入れ直す作業というか・・・」
●へ〜! 先ほどもフェスっていうお話がありましたけれども、やっぱり音楽が言語の壁を壊してくれるみたいなのはあるんですか?
「これはあるね〜。音楽とスポーツ、これはやっぱり言葉のいらない2大コミュニケーション・ツールだなと思っていて、しかもスポーツの中でも世界中で人口が多かったりとか、すぐそこでやっているのってサッカーだよね。ここはやっぱり千葉・柏レイソル・ジュニアユース出身としては、こんな強い武器、ありがとうレイソル!(笑)。それだけでやっぱりすぐ打ち解ける、一緒にボールを蹴るだけで100の情報を飛び越えるね。
肌の色も宗教も、社長さんなのか平社員なのかどうでもいいと。そういうことじゃないっていう、100の情報を飛び越えられるのがサッカーだし、音楽も然りで、あっという間に心の距離が縮まる。その共通言語がふたつ、もうすでに備わった時点での旅だから、これはもうありがたいなって本当に素直に思います」
「今のキミを忘れない」に込められた思い
※ナオトさんは世界を巡る旅で、体験を通していろいろなものを吸収していると思うんですけど、曲作りをするうえで、旅はどんな影響を与えていますか?
「迫るねぇ〜! ティライミの奥のほうをくすぐるね! 旅と作り手としての関係性ね〜?」
●はい!
「これはですね、何か嬉しい〜、なかなか人にこういうことを話さないような、質問で奥の引き出しを開けてくれて、何か嬉しい! 喜びがすごいね。
あのね、ナオト・インティライミ、世界中を旅している割にめっちゃJポップじゃねぇ〜!? っていう(かたもいるんです)。別に僕は中傷とは思っていないですよ。それはそれでJポッパーとして嬉しいわけですよ、めっちゃJポップじゃねぇ〜!? って。でもちょっと悪口なんですよ。あんな旅しているのにめっちゃ普通のJポップじゃねぇ〜!? の言いかたなんです。
でも俺は嬉しいわけですよ。これは旅してきたことを、世界中の色んなジャンルやリズムが体内にはあるものの、ひけらかすつもりも別にないし・・・でもJポッパーとしてね、やっぱりそれはありがたく受け止めているんだけど。
でも自分の中のひとつ芯みたいなところでいうと、めっちゃJポップに昇華しているけど、その中に色んなエッセンスや色んなシーンが入っていて、例えばパッと今思い付くのが『今のキミを忘れない』っていう曲があって、”今キミを、今のキミを、いつまでも忘れないから”っていう歌詞がある・・・。
これも普通のJポップじゃねぇ〜!? なんだけど。でもこれって僕のシーンの中では、旅をしていて、例えば地球の裏側の南米で一緒にサッカーをして仲良くなった少年と、“ナオト、明日も来てね!”って、“来れたら来るぜ!”って。でも俺は明日違う町に行こうと思っていて、この子は名前は分かるけれど、住所は分からなくて、ラインやメールもつながっていないから、もう一生会わない可能性のほうが多いことを知っていると。だがら今[の]キミを、この[の]を入れたことにより、その瞬間を切り取ったんですよ。
この曲はもちろん恋人との別れの歌だったり、日本だったら卒業ソングとして使われたりとかもしてくださっている。でも何気ないことだけど、自分の中ではあの旅のあの瞬間を楽しんだけれども、二度と会えないかもしれないキミに捧げる歌でもあるというか・・・。
こういうところが実は色んな曲に散りばめられていて、そういう『今のキミを忘れない』だったりとか、だからその瞬間瞬間を、もう二度と会わないことを分かっている。だからこそ今[の]キミを、この時間を何気なくじゃなくて、本当に幸せな瞬間なんだっていうことを噛みしめたいっていうか・・・」
●グッと来ました。そういう背景があったんですね。
「そういう聴きかたで、もしかしてティライミ・ソングを今一度、10周年ベストを今の話を聞いたうえで聴いていくと、ただのJポップじゃねぇ〜!? でもちょっと違うかもねぇ〜!? っていう何か備考欄が付くのかなという・・・」
ザ・旅人ソング「Catch The Moment」
※ナオトさんは先月末にデビュー10周年記念のベスト・アルバム『The Best-10th Anniversary-』をリリースされました。このベストはCD2枚組で、DISC 1が「BEST」で20曲、DISC 2が「MUST」で22曲、全部で42曲! 新曲も収録された大ボリュームのアルバムになっていますが、ナオトさんご自身で曲を2枚にふり分けたんですか?
「これ、難しかったんですけど」
●ナオトさんが選曲されてるんですね?
「もう、大至急させていただきましたね」
●おお〜!
「ベストを出すと、色んなベストの形態がある中で、シングル曲をやっぱりベストで出すことが多いと思うんですよ。僕も5周年の時のアルバムはシングル集だったんです。
ただ、シングル曲はシングル曲で聴いて欲しいんだけど、それ以外のいわゆる”旅人ミュージック”だったりとか、色んなジャンルの音楽って、実はアルバムに入っていたりとかするので、そういったティライミの、誰も知らないようなアルバム収録曲やカップリング曲だけど、あるいは売れなかったけど、この曲は聴いて欲しいな〜の曲を『MUST』のほうで。他にもライヴでの定番曲とか、ファンのかたのアンケートをもとに選んだ曲とか。
ティライミのことを初めて知ってライヴに行きたいと思ったけど、コロナ禍で行けなくて、今度初めて行くよっていうかたもいらっしゃると思うんです。この『BEST』と『MUST』の42曲を聴いてくださると置いていかないよっていう、その予習にもなるというかね」
●へ〜〜いいですね!
「そんな2枚組になっておりますね」
●旅をイメージされたというのは例えば、どの曲になるんですか?
「そうだね・・・ちょこちょこ散りばめはられてはいるが、ザ・旅人ソングっていうのが1曲ありまして、こちらは、2枚目の『MUST』のほうの”Catch the Moment”という曲ですね!」
●世界中の言語が出てくるという曲ですね。
「そうなんです。”シェイシェイ、カムサハムニダ、コップンカップ、トゥリマカシー”みたいな、世界十数カ国の“ありがとう”がまず歌詞に入っていて、これもね、さっきの理論でいうと、『今のキミを忘れない』の話とつながるんですけど、サビで”シャララララ♫ シャララララ♫ ハロー、ナイス・トゥー・ミート・ユー、グッバイ、シー・ユー・アゲイン”っていう、ものすごく簡単な、中1で習うような英語が4つ並んでいるんです。これって旅人の中の、すごく切ない想いが詰まっていて、旅人ってやっぱり色んなかたに現地で会うでしょ?」
●ええ、そうですね。
「その時に、すれ違うだけの人もいるけど、その瞬間に目が合って”イェイ〜!”って。で、その人とはきっと二度と会わないんだけど、明らかに心が通じ合う瞬間があると。そのすれ違う3〜4秒の中に” ハロー、ナイス・トゥー・ミート・ユー、グッバイ、シー・ユー・アゲイン”っていうのが凝縮されているというか・・・それも全部出会いだなっていう。でも”シー・ユー・アゲイン”がないことも分かっているけど、そう呼ばせてっていうかね。なんか旅人のセンチな部分であり、でも”シャラララ♫”みんなで歌おうって。
『旅歌ダイアリー2』のドキュメンタリーにも収められているシーンなんだけど、線路沿いを歩いていたら、たまたま村にたどり着いて。線路沿いと言っても、日本では危ないですよ、みなさん。でもそのアフリカの、1日に1台(列車が)通るかわからないような、安全なというか、(そんな線路沿いを)気にしながら歩いていたら町に着いて、子供たちがぶわぁ〜っと30人くらい集まってきて取り囲まれて・・・日本人なんか来やしない、マダガスカルの奥地の村だから。
そこで、なんかわぁーっと囲まれて、じゃあ遊ぼうぜって。サッカーやったり、ギターを持ってるから、歌え歌えになるじゃない? じゃあ歌おう! って。どの曲を歌おうかなって、そんな時にこの曲は子供たちも歌えるんじゃないかと思って、”シャララララ♫”で一緒に歌ったんですね。
そのあと、またその村に戻った時に、その子供たちが覚えていてくれて、それを子供たちから歌ってくれるみたいな・・・自分にとってはやっぱこの”Catch The Moment”という曲は、旅人として一生歌い続けていくんだろうなという特別な曲です」
横一線で歩んで行く
※では最後に、デビュー10周年記念のベスト・アルバム『The Best-10th Anniversary-』を、どんな感じで聴いて欲しいですか?
「そうですね・・・あの〜CDは買わなくて大丈夫です。みなさん(笑)」
●あれ〜〜?(笑)
「CD高いですし・・・もちろん、家にCDプレイヤーがあるよと、CDが好きなのよというかたはぜひ! この時代だからこそ嬉しい形っていうのもありますから、お手に取っていただけたら嬉しいですし、CDがないよ! っていう家もございます。そして世代的にはもうサブスクで聴いているよっていう・・・いいんですよ! 逆にCD屋さんに行ってナオト・インティライミのCDを手に取って、家に帰って封を開けて聴く、それって結構好きじゃないと行なわない作業なんですよ。
でも、今だったら、この番組をたまたま、この夜に家族で、お父さんが運転していてね、ラジオでベイエフエムをかけて、ティライミが出てきて、こんな話を聞いたと。そしたらもう後ろの席で娘さん、あるいは息子さんは、サブスクでいいんですよ。アップル・ミュージックでもライン・ミュージックでもスポティファイでも何でもいいんですけど、ナオトで検索して、ベスト・アルバムに7秒後にはそこに辿り着けるという、これはこれでやっぱりありがたい時代なんですよ。今一度、これがきっかけになってナオト・インティライミの音楽に、改めて触れていただく機会にしていただけたらなと思います」
●コロナ禍はまだまだちょっと続きそうですけれども、ミュージシャンとして発信したいこととか、伝えたいことっていうのはありますか?
「そうだな〜、これは自分とファンの方の関係値もそうなんだけど、よっしゃ〜行くぞーっていう、先頭を切って、お前らついてこーい! みたいなリーダーではなくて、横一線になって、みんなで歩んで行くような感覚をずっとやっぱり思っていて・・・。
それはやっぱりコロナも、コロナじゃなくとも、生きていれば大変なこと、いいことばかりじゃない、むしろいいことじゃないほうが、嫌なことのほうが多いと思うんですよ。でも、あなたの人生に、どこかしらで、なにか一言でも、いちメロディでも、ナオト・インティライミの何かが横にいられたら、それは僕の作り手としての本望です」
INFORMATION
『The Best-10th Anniversary-』
(初回限定ファンクラブ盤:2CD+2DVD+BOOK)』
『The Best-10th Anniversary-』
(通常盤:2CD)』
先月末にリリースされたデビュー10周年記念のベスト・アルバム、CD2枚組の『The Best-10th Anniversary-』をぜひ聴いてください。ナオトさん自身が選曲したヒット曲や名曲が全部で42曲収録されています。
2017年の旅のドキュメンタリーはDVD『ナオト ・インティライミ冒険記:旅歌ダイアリー2』に納められています。
今月初めに千葉の松戸から始まった「10TH ANNIVERSARY LIVE TOUR 2021」。
11月11日は神奈川、11月20日は東京、12月2日は千葉の柏、そして最終は
12月10日の東京公演の予定となっています。ソールドアウトの公演も多くありますので詳しくは、ナオトさんのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「ナオト ・インティライミ」オフィシャルサイト:https://www.nananaoto.com