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Jomonさんがやってきた!〜子供たちに伝えたい「命」のものづくり

2022/1/2 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、縄文大工の「雨宮国広(あめみや・くにひろ)」さんです。

 雨宮さんは1969年生まれ、山梨県出身。丸太の皮むきをするアルバイトをきっかけに大工の道へ。古民家や文化財の修復に関わり、先人の手仕事に感動し、伝統的な手法を研究。そして石の斧に出会い、能登半島にある真脇遺跡の縄文小屋の復元を手掛けました。

 この番組では、石の斧で作業をする大工、雨宮さんの存在を知り、2014年6月に山梨県甲州市にあるご自宅兼作業場を訪ね、お話をうかがい、その模様を放送したことがあります。その後、雨宮さんは国立科学博物館の人類進化学者、海部陽介さんが進める「3万年前の航海〜徹底再現プロジェクト」で、石の斧を使いこなす縄文大工として、丸木舟を造る重要な役割を担い、一躍注目を集める存在になりました。

 今回はそんな雨宮さんが、現在進めているプロジェクト「Jomonさんがやってきた! 三万年前のものづくり」をクローズアップ!  いったいどんなプロジェクトなのか、その全貌に迫ります。

☆写真協力:Jomonさんがやってきた!  三万年前のものづくり

2021 @kurokawa hiromi
2021 @kurokawa hiromi

求めていたものづくり

※改めて縄文大工を名乗るようになった理由や、石の斧との出会いについてお話しいただきました。

「縄文大工って、なんだそりゃ!? と思われるんだと思うんですけども、地球のためになる仕事をする人っていうことなんですね。そして今の仕事というのはほとんど人のためになる、もしくはお金を稼ぎやすい仕事が一般的なんですよね。これからの持続可能な暮らしを切り開いていく中で、やはり地球のためになる仕事を作り上げていきたい、そういう思いで縄文大工という名乗りかたをさせていただいています」

●石の斧との出会いというのは、どういった感じだったんですか? 

「私も、そもそも石斧っていうのは木工道具とは思わなくて、マンモスを狩るような狩猟の道具かなという程度だったんですね。もしくはただの石ころみたいな、そんなものは何の役にも立たない石ころだ、みたいな思いを抱いていたんですけども、2008年にその石斧と初めて出会う場面がありました。

 それから自分で石斧を作って、栗の木にひと振り石斧をコンと打ち付けた瞬間に、自分が求めていたものづくりはそこに全てあったみたいな、そこにもう引き込まれまして、以来研究を続けながら縄文大工としてやってきています」

●鉄の斧と比べて石の斧っていうのは、木を伐るにしても時間も手間もかかりますよね? 

「そうですね」

写真協力:Jomonさんがやってきた! 三万年前のものづくり

●でもそこが、あえて石を使いたいというか、石の斧がいいというか、そこが大事っていうことですよね。

「私も最初から石を使っていたわけじゃなくて、当然機械の道具、そして鉄の道具を使って効率よくものを作るっていう仕事をずっとしてきました。木という命あるものと向き合っているんですけども、それはただの木、命がないものとして、ものとして見ていたなっていうのがあったんですね。

 それはやっぱりその命と向き合う時間、ものと向き合う時間があまりにも目の前を一瞬で通り過ぎるというところで、感じることができなかったんだなと思うんですよね。石の斧を初めて手にして木と向き合った時に、その命を伐る時にもすごく時間を要するわけで、そしてその木を使って、家なり舟なり作るにしてもすごく時間がかかる。そういう中で、そのものが持っている本当の、脈打つ鼓動というか、そういうものを感じてくるんですよね。そういうところに惹かれましたね」

(編集部注:雨宮さんが使っている石の斧は全部自分で作っていて、用途によって使い分けるため、大きい斧から小さい斧まで、全部で100本くらいはあるそうですよ)

子供たちと丸木舟を作るプロジェクト

※雨宮さんは去年の夏に「Jomonさんがやってきた! 三万年前のものづくり」プロジェクトをスタートさせました。来年の10月まで続くということなんですが、どんなプロジェクトなのか、まずは概要を教えていただけますか。

「ひとことで言いますと、全国の子供たちと石斧を使って、ひとつの丸木舟を作り上げるというプロジェクトなんですね。そして昨年の夏に丸木舟になる材料となる杉の木の命を子供たちと一緒にいただいて、今は富士五湖のひとつ、西湖という湖のほとりで、全国ツアーを前にして削り込みの作業を今、しているところです。

写真協力:Jomonさんがやってきた! 三万年前のものづくり

 これから今年5月に北海道に向けてスタートして、北海道から47都道府県を順番にツアーをしながら、子供たちが少しずつ丸太を削りながら、沖縄で最終的に完成させてその舟に乗るという、そういうプロジェクトですね」

●参加者はみんな、お子さんたちなんですか? 

「はい、地元の子供が主体に参加する形ですね」

●子供たちと一緒に進めていくということに意味があるということなんですか? 

「そうですね。これからの未来を担っていく、作っていくっていう子供たちと進めます。この地球上にたくさん生き物がいる中で、道具を手にして、ものを作る生き物は人間だけなんですね。その人間として、どういうものづくりをしていかなきゃいけないかっていうことを、子供たちと一緒に丸木舟を作りながら向き合って考えていきたいなと思うんですね」

●まずは石の斧を作ることから始めたそうですね?

「子供が好きなものっていうと大体、棒とか石なんです。それを合わせたものが石斧になるわけですけども、本当に無我夢中になって楽しく石斧を作って、丸太をコンコン削る作業を、子供たちってがむしゃらに楽しくやるんですよね」

●そもそもこのプロジェクトを始めようと思ったきっかけっていうのは、何なんですか? 

「やっぱり命をいただくっていう行為をしっかりと受け止めて、その命を活かしたものづくりをしたいっていうことを思ったんですね。どうしても今、私たちのものづくりって本当にただのものとして見ていて、木にしても道具にしても、その命をいただくっていう行為になっていないと思うんですね。

 何故かっていうと、そのいただくって行為は相手に対して、あなたの命をいただいてもいいですかっていう対話をしなければいけないんですけども、その対話がなく一方通行で、力づくで、ある意味その命を奪い取ってしまっているというか、そういう形になっているんですよね」

巨木との対話

※雨宮さんが進めているプロジェクト「Jomonさんがやってきた! 三万年前のものづくり」はパート1が、去年の夏に愛知県北設楽郡東栄町の森の中で実施されました。

 丸木舟にするための大きな杉を、石の斧で伐り倒す作業を子供たちと一緒に、18日間かけて行なったということなんですが、その杉の巨木はなんと樹齢が約250年、高さは50メートル、いちばん太い部分の幹周りが1メートル40センチ。雨宮さんいわく「おそれ多い、神の宿る木」という印象だったそうですよ。

 雨宮さんはその木に常に話しかけ、こういう理由であなたの命をいただきたい、と語り、対話を続けていたといいます。その巨木にご自身の思いは伝わったと思いますか?

「おそらく、その思いが伝わらなければ、私の言っていることに、もし偽りがあれば、それは間違いなく命を差し出してくれることはしてくれないなと思ったんですね。本当に嘘ごまかしなく、本心をとにかく伝えました。 そして杉の木の根元に寝たというのは、何故そこに寝たかというと、私の命を向こうも奪うことが出来るんですよ。それは250年生きた木で、50メートルという高さになって、太い枝がいっぱい付いているんですけども、枯れたような枝もいっぱい付いているんですね。

写真協力:Jomonさんがやってきた! 三万年前のものづくり
写真協力:Jomonさんがやってきた! 三万年前のものづくり

 木はそういう枝は自然に落とすんですよね。神社なんかでも枯れた枝が落ちているのをよく目にすることがあると思いますけども、そういう風に、私がそこの根元に寝て、もしお前なんかに命を渡さない! そんな汚い心だったら渡さない! っていうことを杉の木が決めれば、寝ている間に私の上にその太い枝を落とすことが出来るんですよね。そういうことを私も分かっていてそこに寝るわけですよ、びくびくしながらね。

 だけども、本心を伝えているから、これでもし命がなくなったら、それはそれで伝わらなかったんだろうという覚悟のもとに寝たんですね。そういう中で、杉の女神が枕元に立ってくれればいいなと思ったんですけども、なかなか女神様は訪れませんでした。

 そうこうしている間に実際、石斧を入れて、斧入れ式をして、斧を入れ始めたんですけれども、実は斧を入れる前日の夜に私がそこにまた寝ようと思って、夜中に杉の根元に行って、木として最後の晩を共に過ごしたいなと思って行ったんですよ。
 そうしてその杉の木の前に行ったら、光る点滅するものが現れたんですよね、杉の木の根元に。何だろうって思って、一瞬その光るものが杉の心臓の鼓動みたいな感じに見えたんですけども、近づいたらみたら実は、それは“ホタル”だったんです」

●え〜〜〜っ! 

「でも、8月の中くらいですから、もうホタルなんていないんですよ、本来なら。大体(ホタルが飛ぶのは)6月頃ですからね。しかも広大な山の中に、たまたまその木の根元の所にいるわけですよ。その時私は本当に、あ! 杉の木が今まで私がそういう心を伝えたことによって、“明日、僕に斧を入れてもいいよ!”っていうことを言ってくれているのかなと、そういう風に思ったんですよね」

●すごい! 対話が出来ていますね! 

「そうですね。木は言葉が喋れないから、そんなことしたって無理だよとか、意味がないよとか、そういう風に言ったら、命をいただくってことが成り立たないですよね。たまたま人間の言葉が喋れないだけで、やっぱり全てのものは意思疎通が出来る、そういうもので繫がっていると思うんですよ。それが、生きること、他のものの命をいただくことだと思うんですね。そういうことをやっぱり子供たちに伝えたい」

(編集部注:去年の夏に丸木舟を作るために伐り倒した杉の巨木は、現在、富士五湖のひとつ、西湖のほとりのキャンプ場に保管。長さ11メートル 50センチで10トンの重さがあるそうですが、丸木舟作りを体験してもらう全国ツアーに出るために石の斧でくり抜く作業を続け、4トンくらいの重さにするとのこと。

写真協力:Jomonさんがやってきた! 三万年前のものづくり

 予定では今年5月に北海道を皮切りに南下し、1年かけて沖縄まで。その沖縄で、子供たちに丸木舟に乗る体験をしてもらったあとに「みんなの舟」ということで、瀬戸内の海や浜名湖、そして西湖でやはり体験をしてもらう予定だそうです。

 雨宮さんの夢はもっと膨らんでいて、丸木舟で与那国島から沖縄本島、そして九州から北海道まで日本一周、さらに太平洋を渡りサンフランシスコまで行きたいとおっしゃっていました)

木の命をいただく

※プロジェクトのイベントに参加した子供たちに接する時、どんなことを心がけていますか?

「本来であれば、昨年の夏に行なわれた(パート1の)“杉の木の命をいただく”イベントに、みんな参加していただきたかったですね。そこが本当にこのプロジェクトの肝なんですけども、残念ながら参加出来ていない人たちに、いかに私が木の命をいただくことを伝えられるか、どんな気持ちでその命をいただくのか、そしてそのいただいた命をどういう風に活かしていくのか、そのところをしっかりと伝えていきたいと思ってですね。

 私が今まで感じたことは、木をただのものと思っている、あと道具をただのものと思っている、だからどうしても扱い方が非常に乱暴になる傾向があるんです。それをなくしたい。

 自分の命を守ってくれる舟、これは当たり前ですね。海というある意味、宇宙的な空間に出れば、その舟が沈没すれば、自分も生きられないわけで、壊れれば生きられない。自分の命を守ってくれる舟、それと心を通わす、思いを込める。

 そして、その舟を造るには、自分の手とか歯とか、体では造れない。道具を通して初めて造れる。で、その道具に感謝して、道具を通して木と一体となり、全てのものと仲よく、舟を造る心を通わせる、そういうものづくりを目指したいと思っています」

●木があることが当たり前ではないんだよっていうことは、日々生活している上でなかなか感じないですよね。

「そうですね。なかなか命をいただくって行為が、しっかりと出来ていない現代社会なので・・・奪い取るんではなくて、やはり対話をしていただくことで、そのいただいた命をしっかりと次の未来のために活かすことが、生きる、食べる、いただくってことなんですね」

写真協力:Jomonさんがやってきた! 三万年前のものづくり

丸木舟は地球船

※子供たちは純粋ですから、伝えたいことをすべて吸収してくれそうですね。

「そうですね。子供は本当に素直に聞き入れて、理解力抜群ですね。大人はどうしても、しがらみとか、この矛盾しきったものが分かっているんだけれども、今を成り立たせなければ、生きられないことを、どうしても優先して考えちゃうので、思考がちょっと止まっちゃうところがあるんです。でも子供は本当に普遍的なものをしっかりと理解するんですね。

 どんな時代になろうと、生きる! 人間らしく生きる! っていうことをちゃんと受け入れられる、それを目指そうとする。それを子供が、例えば大人になった時に、”縄文大工に僕はなりたい!”と言った時に、親が“いや、お前そんなものは金にならんからダメだ”と、”もっとお金になる仕事を探せ! やれ!”と言うんではなくて、やっぱり社会全体で地球のためになる仕事を応援してあげる。で、その子の夢が実現するように支えてあげる。そういう世界に変えていきたいなと思いますね、このプロジェクトを通してね」

●雨宮さんのプロジェクトに参加した子供たちの中には、将来“縄文大工さんになりたい”っていう子供もいたんじゃないですかね?

「そうですね。今の世界の目標が持続可能な暮らしですからね。やっぱり人間だけが幸せになる仕事ではなくて・・・地球の、いわゆる丸木舟って地球船そのものなんですよね! 実は」

●地球船!?

「丸木舟の中の全ての生きものが、楽しく仲良く面白く暮らせるものづくりって何かな? って考えたり、そういう風に出来るようにするにはどんな仕事があるのかなということを考えて、想像してもらいたいですね、これからの子供たちに」

●最後に改めて、このプロジェクトを通してどんなことを伝えたいですか?

「そうですね。やっぱりこの地球上に敵はいないってことなんですね。無敵っていうのは、敵を作らない、当然そもそも敵がいない、みんな仲間だっていうことですね。そういう意識を常に持つ。そうすると小さな丸木舟の中でもみんなで楽しく仲良く暮らせるんですね。みんな仲間ですから。同じ命です」

☆この他の雨宮国広さんのトークもご覧下さい


INFORMATION

写真協力:Jomonさんがやってきた! 三万年前のものづくり

 雨宮さんが進めているプロジェクト「Jomonさんがやってきた!  3万年前のものづくり」にぜひご注目ください。今年5月から1年かけて行なうパート2の「丸木舟作り全国ツアー」のあと、来年8月に沖縄で行なうパート3の「航海体験」まで続きます。

 現在、活動のための資金をクラウドファンディングで募っています。ぜひご支援いただければと思います。詳しくはクラウドファンディングのサイトを見てくださいね。

https://readyfor.jp/projects/Jomonsan

 プロジェクトの詳細と雨宮さんの活動についてはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎雨宮国広さん HP:https://jomonsan.com/

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