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5万5千キロ! 世界一周ヨットレースへの挑戦!〜30年間、抱いてきた夢を追い求めて

2022/6/19 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、地球を一周する外洋ヨットレース「GLOBE 40(グローブ・フォーティ)」に挑むセーリング・チーム「MILAI」のスキッパー「鈴木晶友(すずき・まさとも)」さんです。

 6月26日にスタートする「GLOBE 40」は、約5万5千キロを9ヶ月かけて走破するまさに地球規模の壮大なレースです。

 鈴木さんは1985年生まれ、千葉県出身。小学2年生の時に、稲毛ヨットハーバーのジュニアヨット教室に参加し、ヨットの楽しさに目覚めます。その後もヨットを続け、高校入学後に本格的に競技ヨットを始め、大学生の頃には、大会で優勝するなどの成績をおさめます。社会人になってもヨットへの情熱は燃え続け、ついには会社を辞め、2019年に大西洋横断レース「ミニトランザット」に挑戦し、完走を果たします。

 きょうはそんな鈴木さんに「GLOBE 40」にかける思いなどうかがいます。

☆写真協力:MILAI AROUND THE WORLD

鈴木晶友さん

チーム名「MILAI」に込めた思い

※鈴木さんが挑む外洋ヨットレース「GLOBE 40」のお話の前に、「MILAI」というセーリング・チームについてうかがいましょう。このチームはいつ頃発足し、メンバーは何人いるんですか?

「私たちは2020年から、今年スタートする『GLOBE 40』を目指して活動を始めました。2020年にMILAIを発足して、最初は私と日本人のスキッパー中川紘司とふたりだったんですけれども、今はチームにセーラーが5人いて、その5人で世界一周をやろうということで活動しています」

●壮大なプロジェクトだと思うんですけれども、メンバーを集めたのは鈴木さんなんですか? 

「はい、そうですね。今回の世界一周ヨットレースの前に、2019年に大西洋横断ヨットレース『ミニトランザット』というヨットレースに出場したんですね。その後に世界一周をやろうということで、2020年から活動をすることになったんですが、当時、ミニトランザットで知り合ったセーラーに声をかけて、一緒に世界一周をやらないかということで、みんなに声かけあって、今5人のセーラーで活動しています」

●実際にヨットに乗るメンバー以外に、船の整備をするメカニックですとか、レースを支えるサポート・メンバーもいらっしゃるんですよね? 

「そうです。セーリングをする前に船の準備、あとは陸上でのいろんなサポートが必要になるんですけれども、多くのフランス人、あと日本人のスタッフに支えられながら、今全部で総勢5名ぐらいの陸上スタッフがいます。なので、約10名ぐらいのチームとして活動しています」

●チーム名のMILAIには、どんな思いが込められてるんですか? 

「MILAIの意味は日本語の、過去未来の未来で、というのも私たち外洋セーリング(のチーム)は今、フランスで活動しているんですけれど、なかなか日本人のセーラー、そもそも日本ってあまりヨットが盛んじゃないんですね。

 しかも、セーリングという競技の中で外洋に行くかたって少なくて、若手がなかなか育たないというような状況なんです。なので、私たちのチームMILAIの活動が次の若手のセーラーに、同じようなことやりたいと思ってもらえるようなきっかけになればと思って、MILAIという名前をつけて活動しています」

(編集部注: チーム「MILAI」に所属するセーラーは鈴木さんと中川さんのほかに、フランス人のアンさんと、エステルさんの女性ふたり、そしてイタリア人のアンドレアさんという 国際的なチームなんです)

風の力だけで世界一周!

※今回、鈴木さんたちが挑む外洋ヨットレース「GLOBE 40」、この「GLOBE」とは「地球」、「40」とはヨットの大きさを表わすそうですが、いったい、どんなレースなのか、教えていただけますか。

写真協力:MILAI AROUND THE WORLD

「GLOBE 40は全長40フィート、メートルにすると12メートルのヨットで、ふたり乗りで世界一周するヨットレースです。モロッコのタンジェというところをスタートして、世界8カ所に寄港しながら来年3月、9ヶ月間かけて世界を一周するヨットレースです」

●今回のGLOBE 40は何カ国から何艇のヨットが出場するんですか? 

「国数でいうと、8カ国のセーラーが集まっています。出場数が実は8艇程度と少ないんですけれども、これはコロナウィルスの影響で、大会が1年間延期されたことがひとつ大きな原因としてあるんですね。

 それとGLOBE 40は今回が初回の大会となります。これから4年に1回ずつこのGLOBE 40は開催されていくので、いつかは大きなヨットレースになって、1回目に日本人が出たんだねっていうような、ヨットレースになるんじゃないのかなと思っています」

●どんなコースで地球を一周するんですか?

「長いですよ(笑)。スタート地がモロッコのタンジェで、最初にカーボベルデ(共和国)に寄港します。その後、南アフリカのケープタウン沖を通った後に、モーリシャスを経由し、モーリシャスから次がニュージーランド、ニュージーランドからタヒチに一度北上します。

 その後、南米(アルゼンチン)のウシュアイア、その後、北上を始めて、ブラジルのレシフェを経由し、カリブ海のグレナダ、そして来年の3月にフランスのロリアンに戻ってくる、全部で3万マイル、約5万5千キロのセーリング・ヨットレースなりますね」

写真協力:MILAI AROUND THE WORLD

●すごいですね。ヨットで世界の海をセーリングするんですよね。

「風の力だけですよ」

●ということは、風がないと進まないっていうことですよね? 

「そうです。本当に風の力だけで走るのがヨットです。これはヨットレースなので、エンジンがついているんですけれども、レース中はスクリューを回して動力として使っちゃいけないんですね。
 風がない時は船は止まりますし、逆に嵐の時はもうそんな速く走らなくていいよっていうくらいに速く走るので、本当に自然の力を十分に受けるダイナミックなスポーツになります」

●風が吹かない海域っていうのはあるんですか?

「いちばん風が吹かない海域で有名なのは、赤道無風地帯というところで、その無風地帯にハマってしまうと、3日間から4日間、そこからまったく動けないということもありえるみたいですね」

●鈴木さん的にはどのあたりが、今回のレースを左右する地点だとお考えですか?

「ケープタウンを越すところと、あとは南米のケープホーン、この2カ所がいちばん難しいと言われているんですね。低気圧がどんどん来るところで、風速が40メートルにもなるような海域なので、そこを無事に突破できるかが勝負の分かれ目になるじゃないのかなと思っています」

奥さんにありがとう!

※ヨットで世界を一周してみたいという思いはいつ頃、芽生えたんですか?

「もともと世界一周をしてみたいなっていうのは、小学生の頃からうっすら描いていたものはあったんです。ただ、2019年に初めて大西洋横断ヨットレースに出場した後に、急に世界の海はどんな海なんだろうなっていうのを、より強く感じるようになったんですね。なので、大西洋を横断した後から、次は世界一周だっていうのを目指して、この2〜3年、世界に向けて頑張ってきました」

●地球一周のヨットレースに参戦している日本人と言えば、この番組にも何度もご出演いただいている海洋冒険家の白石康次郎さんがいらっしゃいますけれども、やはり白石さんの影響というのは大きかったですか?

「大きいですね。白石さんには大変お世話になっています。というのも、私が今フランスのロリアンっていうところで活動しているんですけど、このロリアンは外洋セーリングの中心地と言われていて、多くの大西洋横断ヨットレースだったり、世界一周ヨットレースだったり、そういう(レースに出場する)ヨットがみんな集まっているような基地になるんです。

 そのロリアンに白石康次郎さんもベースを置いているので、ヨットのことだったり、フランスの生活のことであったり・・・例えば、困った時に誰を頼ったらいいのかなど、たくさんのサポートを白石康次郎さんからいただいて、今こうやって活動を続けられています。本当に感謝しています」

写真協力:MILAI AROUND THE WORLD

●ロリアンという街には、あまり知り合いもいらっしゃらなかったっていうことですか? 

「2018年に初めて行った時は、知り合いがまったくいませんでした。フランスのかたは、英語を話さないかたが多いですね。私はフランス語をまったく、今でも話せないんですけど、まずはフランス語ではなくて、英語が話せる人を探すところから始めたのがもう4年前ですね。本当にいい思い出です。

 今となってはたくさん仲間ができて、多くの友達もいるので、すごく心地がいいんですけれど、初めてロリアンに行った時は、なんでこんなところ来ちゃったんだろうぐらいの(笑)、完全に地の果てに来てしまったなというような感じでした」

●どうやって地元で人脈を作っていったんですか? 

「最初は本当に知り合いもいなくて、ヨット(レースの活動)を2018年に始めた時はお金もなかったので、まず自転車を買おうと思って自転車を買って、いろんなお店に行きました。そこでまず、あなたは英語を話せますか? こんなことで困っているんだけど、助けてください、っていうところから少しずつ始めたんですね。

 そうしたら、変わった日本人がいるぞって、ちょこちょこ噂が広まっていくんですよね(笑)。ある日突然、逆になんか困ったことがあったら言ってくれよっていうのを、フランスの現地のかたから声をかけてもらえるようになりました。そういう流れで、今となっては本当にたくさんの仲間たちに囲まれながらフランスで生活しています」

写真協力:MILAI AROUND THE WORLD

●もともと鈴木さんは会社員だったんですよね?

「そうです」

●会社を辞めて3年ほど前、単身フランスに渡られたというということですけれども、奥様のご理解あってこそですよね?

「ええ、ありがたい、ほんとうにこの場を借りて、奥さんにありがとう! って叫びたいぐらいなんですけど(笑)」

●普通はなかなか理解できないと思いますよ!

「もともと社会人、それからサラリーマンをしていた時も、ヨットは競技としてやっていたので、ヨットをやる旦那だっていうことを理解はしてもらっていたんですけど、まさか旦那が大西洋を渡ったり、世界一周に挑戦するなんて思ってもいなかった! とは今でもよく言われるんですね。ただこのヨットレースに参加するっていうのはある意味、ひとつの安全を確保するということでもあるんですね。

 ヨットレースに出場するには、数々の資格が必要だったり、予選レースがあったりとか、ある程度ボーダーを越えないとヨットレースに出られないというラインがあるので、僕はこのヨットレースで横断するんだよ、このヨットレースで世界一周するんだよ、だから僕は大丈夫だよっていうことで、ある意味、妻は納得してくれたというような感じです(笑)」
 
●そうなんですね〜(笑) 

「ただ、妻は日本で生活をしていて、私は日本に帰るのが、半年に一回くらいなので、毎回日本に帰るたびに、玄関のカギ、変わっていないでくれよ! って思いながら帰っています。今のところは家のカギは変わらずに生活しています(笑)」

●素晴らしい奥様ですね!

「ありがたいですね」

イルカの声、満天の星空

※6月26日に始まる本番のレースに向けて、大西洋横断レース「ミニトランザット」にも出場されました。レースとはいえ、ヨットの上で生活もしなくちゃいけませんよね。食事とかはどうされるんですか?

写真協力:MILAI AROUND THE WORLD

「何を食べているの!? って思いますよね。僕らの船ってヨットレース用なので、海の上でお湯しか沸かせないんですよ。日本人なので私はお米が食べたくなるので、アルファ米といわれる乾燥したお米をお湯で戻して食べたり、あとは日本のレトルト食品を持っていったりとか・・・。基本的には日本だと防災用に使われているような食料を海の上で食べることが多いですね。

 あとは、トイレがないんですよ。なので、船のデッキの上にバケツを置いて、そこで用を足して、という形です。用を足している時にイルカたちが来ると、今は来ないでくれ〜って(笑)思うような・・・イルカと会話をしながらの青空トイレです!」

●そうか! イルカやクジラにも遭遇する可能性もあるっていうことですよね。

「ほんとにこんなにもイルカやクジラって海にいるんだなって思うくらい、毎日のように遭遇します」

写真協力:MILAI AROUND THE WORLD

●すごいですね〜。

「船の中で寝ていると、イルカの声が聴こえるんですよ。”キュルルルル”っていう音が、水中から伝わってくるので、自分が船に乗って大海原を走っているんだなぁっていうのをすごく感じますね」

●すごいことをされているんですね、鈴木さん! 壮大だな〜。

「自分の力で太平洋を横断したい! 世界一周したい! っていうのを叶えられるのは、ヨットしかないので、ヨットで自分の力で走っているという感じですね」

●ふたりで乗っているっていうことですけれども、ということは、睡眠は交代交代で取るっていうことになるんですか?

「そうですね! 基本的にはひとりがオンで、ひとりがオフになるので、僕らは2時間交代制でヨットを走らせているんですね。基本的には2時間、実際は(ネットで)天気を見たりとか、例えばレポートを書いたりしないといけないので、1時間半くらいは1回の睡眠で取ることができます」

写真協力:MILAI AROUND THE WORLD

●1時間半ごとっていうと、ずっと仮眠状態という感じですね。

「そうですね。小刻み小刻みに1時間半ごとに、24時間ずーっと交代交代に回ってくるんですけれど、3週間とか4週間、海の上にいると、ヨットレースが終わった後に、家に帰っても2時間で起きちゃうんですよ。もうそういう体になっているんですよね」

●そうなんですね〜。鈴木さんは外洋に出られて、これまでにいちばん印象に残っている景色ってありますか?

「海の上は周りにまったく光がないので、月がない夜に空を見上げると、ほんと満天の星空が広がっているんですよ。陸の上で星空を見た時に、オリオン座があそこにあるなぁ〜とか思うんですけど、海の上で満天の星空を見ると、オリオン座がどこにあるか分からないくらい星が綺麗なんですね。
 その星空の下でセイリングをしていると、本当に自分が今、地球の上を走っているんだなっていうのを感じますね」

(編集部注:先ほど、ヨットの中で寝ていると、イルカの声が聴こえるというお話がありましたが、イルカやクジラ、そして海鳥など、生き物たちと出会えるのも楽しみのひとつだそうです。海鳥は羽を休めるために一晩中、ヨットにいたこともあるそうですよ)

写真協力:MILAI AROUND THE WORLD

30年間、抱いてきた夢

※いよいよ6月26日から地球一周の外洋ヨットレース「GLOBE 40」が始まります。ずばり、目標は?

「まずは無事に、船を壊さずに世界一周を遂げることが、私たちの目標です。船を壊さずにしっかり世界一周を遂げれば、それなりの成績がついてくるので、(何位になるかは)私も分かりませんけれども、なるべく上位を目指して、無事にフランスに帰ってきたいなと思っています」

●改めてこのレースを通じて、どんなことを伝えたいですか?

「私はずーっと子供の頃からヨットを続けていて、今回初めて世界一周に挑戦できるんですけども、この夢はずっと30年間、抱いてきた夢なんですね。ずっと抱いてきた夢を諦めずにいたからこそ、今回挑戦できているので、ぜひ次の世代の子たちには夢を諦めずに、何かしらの挑戦を続けてもらいたいなというのを、私の活動を通してお伝えできたらいいなと感じています」

写真協力:MILAI AROUND THE WORLD

●レース中にネットで、リアルにつながることはできるんでしょうか?

「はい、できます! 実は、今はインターネットが海の上でもつながる時代なので、テレビ電話がなんとできちゃうんですね! 海の上からまたお電話できたら嬉しいです」

●レースに参加している気持ちで応援できるっていうことですね!

「そうです! リアルタイムでつながります。海の上で私たちは24時間、2時間交代で寝起きしているので、いつでもご連絡いただければ、お話できるかなと思います」

●鈴木さん、頑張ってください! 番組でも応援しています!

「ありがとうございます! ぜひよろしくお願いいたします」

●ぜひまたお話し聞かせてくださいね!

「ありがとうございました!」


INFORMATION

 今年初開催の「GLOBE 40」は6月26日に、ジブラルタル海峡に面したモロッコのタンジェという港町からスタート、その後、8カ所の港に寄り、およそ9ヶ月かけて、2023年3月にフランスのロリアンに戻る予定です。総距離はおよそ5万5千キロ! 9つの区間(レグ)を鈴木さんは全部乗り、レグごとに相棒を代えて臨むことになっています。

 そんなチーム「MILAI」は、活動資金をクラウドファンディングで募っています。世界を巡るヨットレースは、船のメンテナンスやレースの継続などに費用がかかります。ぜひ鈴木さんたちの「夢」と共にご支援していただければと思います。

 チームやレースの詳細、そしてクラウドファンディングについては「MILAI」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「MILAI」オフィシャルサイト:https://milai-sailing.com

◎「MILAI 」クラウドファンディング:https://milai-sailing.com/crowdfunding.html

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