2022/7/24 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、野鳥と山登りが大好きなイラストレーター「piro piro piccolo(ピロピロピッコロ)」さんです。
「piro piro piccolo」さんは1989年、東京都出身。多摩美術大学卒業。現在は、野鳥をテーマにイラストや小物を制作されています。
小学生の頃にブンチョウを飼っていたこともあり、鳥好きだったpiro piro piccoloさんは大学卒業後に、友人からバードウォッチングに誘われ、公園でカルガモやカイツブリの子育てを観察、可愛いヒナを見て、一気にバードウォッチングにのめり込んだそうです。
そして、初めての山登りが奥多摩、運動が苦手で、それでも汗だくになって登った山で、野鳥のさえずりに包まれ、こんな世界があったのかと感動されたそうです。
そんな「piro piro piccolo」さんが先頃『なつのやまのとり』という本を出されたということで番組にお迎えすることになりました。
今回は、夏山で見られる可愛い鳥たちの個性豊かな生態や、夏鳥たちを観察するおすすめの方法などうかがいます。
☆イラストレーション:piro piro piccolo
夏山で見やすい鳥たち
※それでは、さっそくお話をうかがっていきましょう。
●まずは、お名前のpiro piro piccoloさん、響きもすごく可愛いなあって思ったんですけど、なにか意味があるんですか?
「イタリア語で、イソシギっていう鳥の名前なんです」
●イソシギっていうのは、どんな鳥なんですか?
「水辺にいる小さなシギの仲間で、尾を上下にフリフリとする動きがすごく可愛い鳥なんです。見た目も可愛くって、磯にもいるんですけど、どちらかというと内陸の川にいるようなイメージで身近な存在です」
●イタリア語の名前は、なにか図鑑とかを見てお知りになったんですか?
「はい、イタリアに鳥を見に行った時に図鑑を買ったんですけど、それをパラパラと見ていたら、ピロピロピッコロって書いてあって、その語感がふざけていて可愛いから、作家名に選んでしまいました」
●確かに可愛いですよね! ピロピロピッコロって(笑)
「ありがとうございます!(笑)」
●そんなpiro piro piccoloさんが先頃『なつのやまのとり』という本を出されました。私も読ませていただきました。野鳥たちの可愛いイラストが満載で、とってもほっこりして癒されました。野鳥の生態とか特徴も一目でわかるので、すごく興味深く拝見しました。
この本には46種の野鳥が載っていますが、これが全部、夏の山で見られる鳥なんですか?
「そうですね。夏の山で見やすい鳥をピックアップしてるんですけど、この本では私が東京に住んでいるので、関東甲信越で見やすい鳥に絞っています」
●夏の山の鳥に絞ったのは、どうしてなんですか?
「夏山って鳥のさえずりがすごくて、ちょうど繁殖期なのでパートナーを作るために、そして縄張りを守るために、よくさえずっています。特に初夏がおすすめなんですけど、山を登っている途中に絶えず、なにかしらの鳥が歌っているという感じですね」
●掲載されている46種の野鳥は、図鑑だったら普通は、あいうえお順になっているとか、そういったことが多いですけれども、この本はそうなっていないですよね。何かこだわりがあるんですか?
「はい、麓から登っている間に、会える順番をイメージして描かせていただきました。大体なんですけれども、似た種類の鳥でも標高によって違ったりして、堅苦しくなく親近感がわくように、図鑑とはまた違う観点で描かせてもらいました」
●麓から登っている途中に見られる順っていうことは、標高順に下から上ってことですよね?
「そうですね」
●夏の山にいる野鳥は、一年中いるわけではないんですよね?
「はい、なかにはずっといる鳥もいるんですけど、基本的には繁殖するために来ている鳥たちです。餌が少なくなってくると、冬は平地に降りて行ったりとか、南の暖かい国に海を渡って行ったりします」
鳴き真似をするとモテる!?
※本に載っている野鳥の中から、いくつかピックアップしてお話をうかがっていきたいと思います。「キビタキ」という野鳥は、鳴き真似をすると書かれていますが、そうなんですか?
「あ、はい! すごくよくします。あのツクツクホウシとか、コジュケイっていう鳥がいるんですけど、その鳴き声とか真似します」
●この本にもピッピホイピーとか、周りの声からもいろいろ真似している、学んでいると書いてありましたけど、真似できるんですね。
「たくさん真似することで、メスにアピールしているんです。これくらい俺はできるんだぞ!って。だからモテるために鳴き真似していますね」
●鳴き真似するとモテるんですか?(笑)
「そうなんです(笑)。歌のレパートリーが多いことを自慢しているような感じだと思うんですけど・・・」
●へぇ〜、鳥の世界では鳴き真似できるほうがモテるんですね〜(笑)。
「そうですね〜(笑)」
●ほかにも鳴き真似する鳥はいますか?
「クロツグミとかオオルリとか、コサメビタキっていう小鳥も、けっこう鳴き真似をしています」
●じゃあモテるんですね!(笑)
「そうだと思います!(笑)」
●日本三鳴鳥(さんめいちょう)というのがあると書かれていましたけれども、これはどんな野鳥が鳴鳥なんですか?
「日本の鳥の中でもさえずりが美しいとされる、オオルリ、コマドリ、ウグイスの3種になります」
●鳴く鳥はたくさんいると思うんですけど、その中でもトップ3というか・・・。
「そうですね。個人的にはあまり納得できないんですけど、ほかにも綺麗な鳴き声の鳥たちがいるので・・・ただ昔は、野鳥を飼って鳴き声を楽しむ文化がありまして、その中でも捕まえやすいとか、飼いやすい点を踏まえて、この3種が選ばれたそうです」
●ちなみにpiro piro piccoloさんが三鳴鳥を選ぶとしたら、どんな鳥になりますか?
「すごく難しいんですけど、イカルっていう鳥が含まれていないのが、個人的には納得できなくて・・・何て言えばいいんだろう、牧歌的な綺麗な声でさえずるんですよ。高原にいるような・・・だからその子は入れてあげたいんですね」
●どんな声で鳴くんですか?
「イカルは、地域によって差があるらしいんですけど、私がよく聴くのは”キーコキー”って綺麗な声で鳴きます。あとは、ウグイスは唯一無二の鳴き方なので、そのままでいいなあって思っています。もう一羽入れるとしたら、悩みどころなんですけど、オオヨシキリっていう山にはいない鳥で、鳴き方がすごく変わっていて、個性的なので(三鳴鳥に)入れてあげたいなあって思います」
●どう個性的なんですか?
「”ギョシギョシ ギョギョシギョギョシ”って鳴くんです。その声がすごくうるさい(笑)っていうか、やかましい感じなんですけど、鳴いているだけで、その子がいるなあって気づけるので、とても存在感のある鳥です。それが面白いので入れてあげたいです」
多夫多妻、子育て共同、イワヒバリ
※実は、人をあまり恐れない野鳥も意外といるようで、中でも「イワヒバリ」という鳥はpiro piro piccoloさんのお気に入りみたいですね。どのあたりにいる、どんな鳥なんですか?
「標高2500メートルくらいの高山の岩場に棲む、スズメくらいな小鳥なんですけど、背中が岩みたいな色で、すごく地味な鳥です」
●気づくと足元にいて、こちらが驚くと、本には書かれていましたけど、それぐらい人懐っこいってことですか?
「人懐っこいっていうか、あまり人を気にしない性格なんでしょうね(笑)」
●どんな生態なんですか。イワヒバリって?
「イワヒバリは、子育ての方法がすごく面白くって、まず多夫多妻制で、しかもヒナを共同で育てます。グループで行動しているんですけど、そんな鳥はほかにはいなくって、高山の厳しい環境だからこそ、そういうふうに子育てしないと、確実に子供を育てあげられないんでしょうね。そんな進化の仕方をしたみたいですね」
●みんなで協力しあって育てているんですね! で、岩にいるんですか?
「あ、そうですね。名前の通り、岩場に棲む鳥です。ヒバリって名前がつくように、すごく鳴き声も綺麗で、よく歌いながら歩いている姿を見かけますね」
●そうなんですね〜。
※イワヒバリ以外に特に心惹かれた鳥っていますか?
「あとは、好きな鳥なんですけど、ホシガラスです」
●カラスの仲間なんですか?
「そうなんです。カラスの仲間なんですけど、全身に星模様があって、綺麗な鳥なんです。森林限界って呼ばれる、あまり木が生えない、環境の厳しいところに棲んでいます」
●カラスと言えば、真っ黒いイメージがありますけど、模様があるんですね?
「それが名前の由来になっています」
●(本に掲載されているイラストを見て)ホシガラス、綺麗ですね〜。
「この子が面白くって、その子もあまり人を気にしないタイプの鳥なんです。登山道に出てきて、ハイマツっていうそのあたりに生えている松の仲間の実をくわえて、目の前でほじくり出して、中身を集めるんですね」
●へぇ〜すごいですね〜。
「それを喉いっぱいに溜めて、やっとどこかに運んでいくっていう姿が見られます」
●喉を見るのもなんか楽しいですね。膨らんでいるわけですね。
「けっこう膨らんでいます」
早朝のさえずりのシャワー
※夏山シーズン真っ盛りですが・・・piro piro piccoloさん、野鳥観察に行くのに
これはあったほうがいいという持ち物はありますか?
「絶対に双眼鏡だと思っています」
●双眼鏡!
「双眼鏡さえあれば、荷物になるし、ほかの道具はいらないといっても過言ではないんですけれど、だんだん欲が出てきて、カメラとか録音用の機材とか欲しくなっちゃいますね」
●確かにこの本『なつのやまのとり』にも、PCMレコーダーを持ち歩くって書かれていましたけれども、これは野鳥の鳴き声を録音する機材ってことですよね?
「まさにその通りです。鳴き声を聴いても、鳥の種類が分からないことって多々あるんですね。録音しておくと、家に帰ってから聴き返してネットで検索したりとか、鳴き声のCDが付いている図鑑で調べたりとかして、それでやっと野鳥の種類がわかるっていう、勉強の仕方をしています」
●鳴き声を覚えるのには、やっぱり役立ちますね。
「そうなんですよ。鳴き声って、例えば”ホーホケキョ”とかだったら馴染みのあるので・・・”聞きなし”っていうんですけど、人間の言葉に置き換える方法が難しくって、例えばコサメビタキがどんな声だったかって言われると、ぜんぜん表現できないので、今はそうやって録音することが重要だと思っています」
●野鳥たちは、早朝によく鳴くイメージがあるんですけれども、piro piro piccoloさんは、明け方に山に行ってるんですか?
「はい」
●だいたい何時くらいに?
「夜明け前がベストですね。夏になると(午前)3時くらいに着かないと、朝のさえずりの、始まる時間が楽しめないので、気合いで朝早く山に向かうようにしています」
●なかなかハードなんじゃないですか?
「ハードですよ(苦笑)。私も朝は得意ではないので、きついところはあるんですけど、一度さえずりのシャワーを経験してしまうと、それを聴けないのは損だな〜と思えるようになってしまって、気合いで行くようにしています。
泊まりのパターンもよくありますね。そのほうが楽ではあります。テントに泊まったりすると、鳥の声も近く感じられるし、早朝の第一声を聴くことができるのでおすすめです」
●テントに泊まって、朝を待ってという感じなんですね。
「そうですね」
●夜に野鳥は鳴いたりするんですか?
「実は夜も鳴くんです。フクロウとかヨタカとか、夜行性の鳥はまだわかるんですけれど、特にホトトギスっていう鳥がすごくて、昼も鳴いているのに夜も鳴きながら飛び回っているっていう変わった鳥です」
●テントに泊まるのも楽しそうですね。
「そうですね。たぶん人によっては、うるさくて眠れないっていう人、けっこういらっしゃるかもしれないです」
一生懸命さに心洗われて
※野鳥たちを観察するときに心がけていることはありますか?
「自分は彼らにとって邪魔かもしれないって、常に心に思っておくことですね。鳥の気持ちになって考えたら、双眼鏡で覗かれてるって、絶対気持ちよくないものだと思うので、長居はせずに今こうして覗かせてくださいまして、ありがとうございます! っていう、そんな気持ちで(山に)いさせてもらっています」
●なるほど、敬意を持っているわけですね。山で野鳥たちを観察していてどんなことを感じますか?
「みんな頑張って一生懸命生きているなあって思うことばっかりですね。登りで鳴いていたオオルリが、帰りも同じ谷で一生懸命鳴いていたりするんです。そのさえずりのペースも朝よりは下がっていて、それだけずっと鳴いていたんだ〜って、疲れを感じさせたりとか・・・あとヒナがかえるとまた必死さがすごくて、登山道に出てきてまで餌を集めたりとか、そういう姿を見せてもらえるので、みんなすごいな〜って心が洗われる感じです」
●最後にこの本『なつのやまのとり』に込めた思いをぜひ聞かせてください。
「見やすい鳥に絞って46種類載せているんですけれど、こんなにもたくさんの鳥がまさにこの時期に一生懸命、山で子育てをしているんです。なので、山頂を目指さなくていいし、ゆっくり登れば、運動が苦手な私でもなんとかなったので、ぜひみなさん頑張って登って、実物を見に行ってほしいなと、そういう思いで描かせていただきました」
INFORMATION
夏山で見かける野鳥を46種、麓の登山口から頂上に向かうイメージで順番に紹介。野鳥の姿はもちろん、鳴き声や面白い特徴を、きれいで可愛いイラストで解説してあります。ページをめくるたびに、可愛い野鳥たちの虜になると思います。なにより、piro piro piccoloさんの鳥たちへの愛情を感じますよ。ぜひご覧ください。
山と渓谷社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎山と渓谷社HP:https://www.yamakei.co.jp/products/2822590530.html
piro piro piccoloさんのオフィシャルサイトも見てくださいね。
◎piro piro piccoloさんHP:https://iirotorii.tumblr.com/