2022/10/16 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、一般社団法人「森の演出家協会」の代表「土屋一昭(つちや・かずあき)」さんです。
土屋さんは1977年、東京都青梅市生まれ。2009年からネイチャーガイドとして活動、その後、森林セラピーガイドの資格を取得。そして2015年に森の演出家協会を設立、現在は青梅と奥多摩にある2軒の古民家を拠点に、森・人・食をつなぐ森の演出家として活動されています。
きょうは森林セラピーガイドの活動や、マッチング率抜群のアウトドア婚活イベントのお話などうかがいます。
☆写真協力:一般社団法人 森の演出家協会
東京最後の野生児!?
※土屋さんは「東京最後の野生児」と呼ばれていたそうですね。そう呼ばれるようになったのは、どうしてなんですか?
「僕が高校時代に、フジテレビの『晴れたらイイねッ!』っていう番組で、アナウンサーの益田由美さんが東京最後の野生児と名をつけてくださって、そこからですね、野生児として活動し始めたのは・・・」
●そもそもその番組には、どうして出演することになったんですか?
「その当時、高校の生物部に入っていまして、自分が野鳥と話ができたりとかしていて・・・たまたまテレビ局が来て、自分を出したいということで・・・」
●へぇ〜そうなんですね〜。東京都っていうと高層ビルのイメージすごく強いですけれども、東京の西のほうはそうではないんですね?
「そうですね。自然豊かで自分の住んでいる所は、普通にクマさんがいる場所なので、東京なのに」
●えっ! 青梅で、ですか?
「はい、青梅のちょっと山奥に行くと、今年は栗が豊作で、栗を採りに行っている時もなんか気配を感じて、近くにクマがいたりとかしますね」
●子供の頃の遊び場が地元の森や川だったんですね。
「そうですね。多摩川の、羽田からずっと上っている上流では食べられる、すごく美味しいお魚がいっぱいいます」
●子供の頃はどんな遊びをしていたんですか?
「遊びというか、狩りですね。天然のヤマメを素手で採るっていう、代々受け継がれているんですけど、二代続けてできますね」
●すごいですね。そういうのはお父様から教わるのですか?
「はい、そうです。父親から学んで」
●お父様からの教えで、今でも大切にしていることってありますか?
「やっぱり自然は危ないこともあれば、すごく楽しいこともあるっていうことですね。日々カラダで体験体感しているので、ちょっとでも雨が降ったりとかしたら、いちばん早く逃げるガイドですね。最初に自らカラダが(危険を)感じ取れる、そういうのを目的にずーっと五感で体験して体感していますね」
●確かに自然の中で遊ぶには危ないことも含めて、いろいろ知っておかないといけないことも多いと思うんですけれども、そういうことはすべてお父様から教わってきたんですか?
「はい、そうですね」
ガイドとしての危機察知能力
※先ほど森の中で、危険を感じ取れるとおっしゃっていましたが、具体的にはどうやって察知するんですか?
「例えば、僕は先ほど言ったように五感で体験体感しているので、いつも鼻が効いているんですね。ちょっと風が吹いてきてクマ臭がするとか、例えばこれはサルだなとか、あとイタチ臭、タヌキ臭、全部分かるんですね、ヘビも。
さっき逃げるって言ったのも、いちばん最初に自分が感じて、危ないぞっていうのをまずお客様に知らせたい・・・だけど、クマの場合は逃げちゃいけないんで、クマがいた時には違う対処をするんですけど、なるべくキャーキャー言わせないように、クマがいたと知らせながら、目を離さずに降りていくとか。
ガイドウォークの前にも安全対策として、リスクマネージメントをちゃんとお教えしてから行きますね」
●臭いで分かるものなんですね?
「はい、マーキングをしていて、クマが自分のところに寄ってくるなって臭いを出しているんですね。クマはどんな臭いってよく聞かれるんですけど、自分はよく動物園に行って、クマだったり色んな(動物の)臭いを嗅いできたんですね。わからなかったら動物園に行くのが早くて、クマ臭はそのクマの臭いがすごくわかるんですよ。イノシシも特徴的で、動物はみんな違う臭いがしますね」
●なるほど、それで感知するわけですね。
「はい、ヘビも危ないなって思った瞬間に一瞬で逃げないと、マムシとかってそのまま飛んできたりするので。
ガイドがなんで逃げているんだって言われるかもしれないですけど、いつも体験体感しているからこそ、自分がやられちゃったら、二次被害が起きてしまうかもしれないので、瞬間に自分がぱっと動作をすることによって、お客様に知らせる行動もしているんです」
●天気の急変とかはどうやって感じるんですか?
「それも、急に冷たい風になったりとか・・・あとは土の匂い、雨の匂いがわかってくるんですね。風が読めると、あと10分ぐらいで雨が降ってくるなとか、そういうのもわかってきますね」
●匂いで!?
「匂いと肌感覚で、風が来た時にちょっと冷たく感じたりとかですね。この頃、豪雨も多いので、小っちゃい落ち葉が流れてきた瞬間から、これは上流で(大雨が)降っているから離れましょうとか、そういう形でわかりますね」
鳥の鳴き真似、まるで本物!
※自然遊びの先生はお父さん、ということでしたが、お父さんから鳥の鳴き真似も習ったそうですね?
「そうですね。二代続けて小さい頃から鳥の鳴き声ができるように、歯笛(はぶえ)で・・・父親もちょっと歯に隙間があって、そこに息を吹き込んだりして鳴き真似をするんですね」
●レパートリーってどれぐらいあるんですか?
「だいたい10種類くらいの鳥を呼べますね」
●へぇ〜! 今(鳴き真似を)できたりしますか?
「やってみましょうか」
●やったぁー! お願いします。
「森に来たと思って聴いてみてください。何種類かやってみますね。[土屋さんの歯笛で鳴き真似♪] 聴こえましたか?」
●すごーい! 森ですね!
「森に来ましたか」
●森にいました!(笑)すごーい! 本当に鳥じゃないですか、土屋さん!
「そうですね。きのうもガイドウォークで鳥を呼んだら20羽ぐらいきて、みなさんびっくりしていましたね」
●ちなみに今やっていただいたのは、なんという鳥なんですか?
「シジュウカラっていう鳥と、あとはメジロですね」
●今は歯でやっていたんですよね。
「そうですね。歯の隙間で・・・」
●それで鳥を呼び寄せるわけですね。
「そうです。シジュウカラは何を言っているかがわかるようになってきて、それを研究しているかたもいますね。その鳴き声によって、逃げろーとか、ヘビが来たよーとか、求愛だったりとかですね」
●どうやって聴き分けるんですか?
「鳴き声のトーンがやっぱり違ったりするので・・・。さっきはメジロの高鳴っていうのをやっていて、これは求愛だったんですけど、”チュウチュウチュウチュウ”と上にあがって、ずーっと鳴いていくんですね」
●では、求愛じゃないバージョンもあるっていうことですね。
「はい、鳥をずーっと1年中、見ていると、ウグイスは春から夏にオスしか鳴かなくて、”ホーホケキョ”と。でもそれ以外は地鳴きと言って、”チャッチャ”っていう鳴き声だったりとか、実は1年中、ウグイスはいるんです」
●面白いですね〜。鳴き真似をいろいろ研究するっていうのもいいですね〜。
「そうですね。地方によってウグイスも鳴き方が違ったり、方言があったりとかして面白いですね」
●えーっ! 鳥にも方言があるんですか?
「はい。やっぱりそこにいる鳥の、いちばんかっこいいオスの鳴き真似をするんですね。鳥はそこが面白いんですね」
●鳥の世界にもカリスマがいるんですね!
「そうですね。かっこいい鳴き声がするほど、メスが寄ってくるという・・・」
※もう少し野鳥の鳴き真似を聴きたいと思って、土屋さんにお願いしました。続いては、シジュウカラの求愛です。
[土屋さんの歯笛♪]
●あともうひとつ、なにかあります?
「いちばんみなさんがわかるウグイスですかね。ウグイスの場合は歯笛じゃなくて口笛ですけど、ちょっとやってみましょうか。[土屋さん歯笛♪]」
五感メソッド〜12段の石積み
※森林セラピーガイドとして、一般のかたを森にいざなう活動を続けていく中で「五感メソッド」という手法が確立していったと聞いています。どんなメソッドなのか、教えていただけますか。
「自分の五感メソッドは、やっぱり鳥と会話ができるっていうのが強みですね。見る体験、聴く体験の、五感のうちの二感を自分ができるというのが・・・。
あと調理師(免許)を持っているので、地産地消じゃなくて自産自消ですね。自分が作ったものとか、あとそこにあるものをみなさんで採って食べる・・・食活って言うんですけど、嫌いなものも、お子さんでも自分で採ったものは食べられるっていう食育活動・・・そういうのもやっていますね。
森活と言って、森の活動もしていながら、森の中でゴミ拾いだったりとか、あと森の中に来てもらって、座感って言うんですけど、座って深呼吸してもらったりとか・・・。
普通のガイドウォークではなくて、石積みをするんですね。石も12段積むっていう、これも自分が考えたメソッドに入っているんですけど、5段6段は誰でもできちゃうんです。12段っていう壁がありまして、これは石と意思の疎通ができないと、自分の心と石が体験や体感して、本当に体が一体にならないと12段って結構難しいんですね」
●確かに。石を12段積み上げるんですよね。グラグラしちゃいそうですけれど。
「グラグラしている時は心も揺らいでいたりとか、それこそ本当に石と意思疎通・・・(笑)」
●すごく集中できそうですね。
「最初はみなさん、ちょっと疲れているかたとか、あんまりやりたくなかったりとかする中、それでもよくて、深呼吸をしながら・・・誰かがひとつ達成すると、私も! ってなるんですね。最後には本気で12段を積んで帰って行かれるんですね」
●みなさん、できるようにはなるんですか?
「はい、必ずみなさん、なっていますね。時間はかかりますけど」
(編集部注:土屋さんが森林セラピーガイドの資格を取ることにしたのは、新宿で調理師として働いていた頃、都会の空気や仕事のストレスで体に不調をきたした時に、森の中に座っているだけで体力や気力が蘇ってきたからだそうです。
そんな経験から森には癒しの効果があると確信、その理論や科学的な根拠を身につけるために、試験の3日前に申込み、猛勉強をして見事、合格したそうです)
森の中で婚活イベント
※土屋さんは、意外な活動として、アウトドアでのウェディングや婚活のプロデュースもされていますよね。
「そうですね。自分も装飾デザイナーとかフラワーデザインの資格を取りました。生け花とかもひと通り全部学んで、それもちゃんと勉強したんですけど、やっぱり自然を知っているので、先生たちはなにも教えることがないっていう、最初から基本を知っているというか、自然で僕は生まれているので、ほかの人よりは全然違うというふうに言われましたね」
●さすが野生児ですね!
「もう野生爺になってきましたけど(笑)」
●あははは。アウトドアでのウエディングですとか、婚活のプロデュースっていうのは、具体的にどんなことをされているんですか?
「婚活については、自分が手掛けたのは、森の中で、石のところに女性が座っていて、それで男性がそこに5分なら5分、最初から座ってもらって、リラックスしたアイスブレイクした状態から始まるんですね。だからやっていく回数ごとに結婚された方とかいらっしゃいますね」
●え〜っ! マッチング率が高いんですね。
「マッチング率、すごく高いですね」
●どういうパターンがいちばんマッチング率が高いなって感じましたか?
「やっぱり自然の中で体験や体感することですね。それこそヤマメを手で捕ってもらうとか、男女がキャーキャー言いながら捕って、それを塩焼きにして、みなさん同じ行動をして焼いて食べる、そのヤマメの美味しさと同時に婚活ができるみたいな・・・」
●面白いですね。確かに自然の中でやるっていうのがすごくリフレッシュ、リラックスして、素になれそうな感じもしますよね。
「そうなんです。最初からもう素で、お互いが素で、そこでバーベキューとかすると、所作が綺麗だったりとか、違うところが見えてくるじゃないですか、お互いに。この人、火を起こせてかっこいいって思ったりとか、そういうのが生身の人間なので、最初に飲み会とかではなくて、自分の場合はフィールドが森なので、森の中で演出しながら、森の婚活事業をやっています」
野生児を次世代に
※それでは「森の演出家」としての夢を教えてください。
「夢はやっぱり次世代に残したいなと思って、全国に森の演出家が、森プロがいっぱい増えればいいなと。結構これは難しいと思ってはいるんですけど、野生児を次世代に残さないといけないので、小さいお子さんもどんどんフィールドに行ってもらって、野生児を今増やしているところです」
●では最後に、東京最後の野生児として伝えたいことをお願いします。
「やっぱり野生児は森に生かされている、自然がなければ、森の活動ができないので、自然はやっぱりすごく大切なものですよね。
温暖化になってきましたけど、いろいろなものがやっぱり変わって、東京の奥多摩でも変わってきたり、温度が高くなっているとか・・・そういうことも小さいお子にも学んでもらう、そういう教室も始めていますので、次に繋がる森の演出家になりたいと思っています」
INFORMATION
土屋さんは、東京の青梅と奥多摩の古民家を拠点に森林浴ほか、森の中で鳥の声を聴いたり、多摩川の水に触れたり、森の恵みを食べたりと、五感を使った2時間のガイドウォークを実施。企業研修や免疫力アップなどにも活用されているそうです。
ほかにも森の演出家協会では新潟県長岡で、キャンプのノウハウを、実践を通して学ぶ「キャンプの楽校」なども実施されています。
詳しくは一般社団法人「森の演出家協会」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「森の演出家協会」HP:https://www.mori-pro.life/