2022/10/23 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、青森県南部町に親子3人で暮らす田村余一さんと奥様のゆにさんです。
田村さんご夫妻は、水道・電気・ガスと契約せずに、必要なものは、なるべく自分たちで作る自給自足の生活を実践していて、テレビのニュース番組などでも取り上げられ、注目されているんです。
余一さんは1977年、南部町生まれ。大学卒業後は都会に出て、いろいろな仕事を経験。その後、ふるさと南部町に戻り、実家の土地を開墾し、2009年から廃材を使った家づくりを始め、試行錯誤しながら7年かけて完成させたそうです。
一方、奥様のゆにさんは1987年、北海道・札幌市生まれ。高校卒業後、東京でアルバイトをしながら歌手として活動、そして2016年、29歳の時にSNSで偶然見つけた余一さんの「お嫁さん募集」に応募。自然に寄り添った暮らしをしたいと思っていたこともあり、南部町に移り住み、その後、入籍。2018年にひとり息子の泰地(たいち)くんが生まれています。
田村さんファミリーが暮らす青森県南部町は、八戸市に隣接していて、余一さんいわく、冬は厳しいけれど、自然が豊かでリンゴや梨など、いろいろな果物が採れる「フルーツの町」だそうです。
今週はそんな南部町で、畑で野菜を育てたりしながら、自給自足の暮らしを実践されている田村さんご夫妻に暮らしぶりや、自然の中での子育てのお話などうかがいます。
☆写真協力:田村余一、田村ゆに、村川僚、仁木俊文
遠回りな気がした!?
●先頃出された、自給自足の生活や日常を綴った本『都会を出て田舎で0円生活はじめました』を、私も読ませていただきました。
余一さん&ゆにさん「ありがとうございます!」
●暮らしを変えれば人生が変わるということで、自由気ままに生きることを味わえると本に書かれていて、本当に日々全力で生きていらっしゃるなと感じました。大変そうではありますけれども、それがすごく楽しそうで、羨ましいなと思えるような内容でした。
そもそもなんですけれども、どうして自給自足の生活をしようと思われたんですか?
余一さん「まあ自給自足はひとことでいうと、自分のことは自分でやる、ここでオッケーだよっていうラインも自分で決めるっていうので、自分のものは自分で作って、それを糧にして生きていくというか、そういう意味だとは思うんですけどね。
世の中のシステムとしたら経済というものがあって、お金を稼いでそのお金でお家を買う、食べ物を買う、着る洋服を買う。あとは例えば、お子さんがいればお子さんをどこかに預けるとか、とにかく1回お金を稼いでそれで手に入れるとか、(お子さんを)誰かに預けるっていうことをするんですね。
僕もいわゆる社会人というものに一瞬だけなってみて、まあフリーターがほとんどでしたけど、そういう経験を通して、なんかすごくそれが遠回りな感じがしたんですよ。
なんで食べものを得るのに1回お金を稼がなきゃなんないんだろう・・・食べものを得るのに関係ないことをしなきゃなんないんだろう・・・というふうに思っていたんです。
うちの実家が兼業農家だったのもあって、お米を買ったことがない。お野菜や果物とかはほとんど買うことがなかったので、食べ物は自分で作れるなっていうのはあったんですよね。
うちの親父が大工だったのもあって、大工作業していたのを子供時代から見ていたので、家もまあ造れるんだよな〜っていうのもあり、これはいきなりそっちをやり始めたほうが早いなと思ったんですよね(笑)。なので、こっちのほうが早くてダイレクトでわかりやすいなと思いました。それで始めたようなものがありますかね(笑)」
●ゆにさんは余一さんと結婚して、自給自足の生活に入っていったわけですけど、不安とかはなかったですか?
ゆにさん「割と私は考える前に行動してみたいと思うほうなんですね。たぶんいろいろ考え始めれば、やったことない暮らしだし、不安というのは出てきてたと思うんですけど、とりあえずやってみようと思って、やりながら考えていったって感じです。
知らないことはすごく楽しかったし、実際にやってみて、地に足がついた暮らしとか、家庭菜園も自分の手で豊かにしていけるっていうのを実感できた時に、もう楽しみしかなかったですね。失敗はいろいろあるんですけど、でもそういうのも自分の学びになるし、こっちに来てから不安とか感じたことがあまりないですね」
電気・ガス・水道と契約しない生活
※今も電気やガス、水道と契約しないで暮らしていらっしゃるんですよね。
余一さん「そうですね」
●不自由はないんですか?
余一さん「不自由っていう感じじゃなくて・・・めんどくさいことはありますね。まあ自由なんですよ。
水をどういうふうに引っ張ってくるかとか、電気はどういうふうに使うかとか、どこからどういうふうに引っ張って配線するとか、そういうのは全然自由なので、不自由ではないんですけど、それを自分でやるので面倒ではあるよね、ちょっと(笑)」
ゆにさん「手間はかかるよね」
余一さん「手間はかかるので・・・あれ!? 水が出なくなった! っていうと、水源の近くまで行って確認して、枯葉が詰まっていたので取り除いたりっていうのは、なんか面倒ですよね(笑)」
●生きていくためにまず確保しないといけないのは水ですよね。
余一さん「水は大事ですよね」
●日々、水はどうしているんですか?
余一さん「うちの嫁さんがこっちに来て1〜2年の間、日々、畑の溝を切ってたんですよ。畑の周りをちょっとスコップで掘る作業があるんですね。それをやっていたら、どんどんぬかるみになって、だんだんドロドロ水になって、気がついたら、ちょろちょろって川みたいになって、水が湧いてきちゃったんですよ。
それをいろいろ年々工夫を凝らしながら、きれいなお水にして、ちゃんと溜めて使いたい時に一気に使えるようなタンクも接続して使っているよね」
ゆにさん「生活用水のほうはそうですね」
余一さん「生活用水として使っていますね。ちょっと残念ながら飲めないような水なので、飲むことはしていないんですけど、洗濯する、食器を洗う、お野菜の苗にお水をやるっていうのはその湧いた水でやっております」
●料理をしたりとか、お湯を沸かしたりするのはどうされているのですか?
余一さん「それは木を燃やします。木質燃料だね、ほんとにうちは。一般の家庭だと電気だったりガスだとは思うんですけど、うちは田舎でもありますし、今はお家がどんどん解体されて、出る廃材がただのゴミになるので、“すみません。それください”っていうと大体のところではもらえるんですよね。なので、そういう建築廃材なんかを燃やしていますね」
●ここでも廃材が活躍しているわけですね。
余一さん「そうですね。やっぱり廃材の中でも建築に活かせるものと、活かしにくいものがあるので、活かしにくいものからどんどん薪に変えていくような感じはあります」
●電気はソーラーパネルを利用されているんですよね?
余一さん「そうです。ソーラーパネルで発電してバッテリーに溜めて、それをちびちび使ったり・・・天気が続くと電気がすごくいっぱい溜まって余っちゃうので、そういう時は大判振る舞いで電動工具を動かして、どんどん薪を切ったりとか、あとはホームべーカリーとかそういう家電製品、ちょっと熱量を使うやつ、電気量を使うやつをその時に使ってみたりとか、そのようなことをしています」
(編集部注:実はトイレも別棟の小屋に、自作した便座を設置し、コンポスト方式で土に返すようにしているそうです。夏場はトイレットペーパーの代わりに、季節に応じて植物の葉っぱを使用、春はふきのとう、夏はキウイの葉っぱがいいとおっしゃっていましたよ)
男の子はたくましく
※ひとり息子のたいちくんは現在4歳、ということですが、子育てはどうですか?
ゆにさん「子供っていろいろ興味が変わっていくので、私たちが教えたいなと思っていることにたいちの興味が重なった時に、すかさずいろいろ教えてあげたりしてます。
この暮らしは私たち夫婦がやりたいなと思ってきたことなので、たいちに無理強いはせずに、彼は彼なりにいろんなことに興味とか好奇心があると思うので、彼がやりたい方向性を大事にしつつ、生活の知恵みたいなのを伝えていけたらいいなという考えで教育しています」
●YouTubeも拝見させていただいたんですけど、たいち君はすごくたくましいなと感じました。
余一さん「あ〜、それはよかった! やっぱりたくましく育ってほしいですね、男の子は。そこは意識していますね(笑)、僕は男としては・・・」
ゆにさん「ふふふ(笑)」
●たいち君は幼稚園には行ってないんですよね。
余一さん「はい、そうです。そこも自給自足なんですね。第三者にはお任せしないというか、自分の食べ物を自分で得る、自分の子供は自分で育てるっていう感じですね。ある一定の年齢になってくると親がうざくなってきたりもするので、そうなった時に小学校なり中学校がその先にあるわけなんで、その時はお預けしようかなと思っていますけどね。
とりあえず今は、お父さん、お母さんっていうか、うちらは『とと』『かか』って呼ばれているんですけど、『とと! かか!』って寄ってきてくれるんで、寄ってきてくれるうちは、ほんとに大事に可愛がってあげようっていうのはありますね。そのうち、やだーっていったら、じゃ〜バイバイですよね(笑)。とにかくこうやって僕ら、とと、かかを愛してくれているんなら、こっちもいっぱい愛情を注いでやりたいよね(笑)」
鶏の命をいただく
※先頃出された本に、鶏をさばいて、いただいたという話が載っていました。鶏の命をいただくと決めたのは、どうしてなんですか?
余一さん「うーんちょうどそれをした時が真冬だったんですけど、冬になるとお野菜が採れなくなって、おのずとスーパーに行って買う機会が増えて、お肉も買ったりするんですが、うちに鶏がいるのにスーパーに鶏肉を買いに行くっていうのも、これもまた遠回りだなって思ったんですね。
そもそも卵をいただいたり、お肉として(鶏を)いただこうっていう、結果というか着地点っていうのは決めた上で飼育していたので、このタイミングだよなって夫婦で会議して決めたよね」
ゆにさん「うんうん」
●さばいてみて、どんなことを感じました?
余一さん「なんでしょうね〜あれは・・・単純に言葉にすると命を絶つ行為をするんですけど、う〜ん、悲しいでもないしね。自分でやっているわけなんで、それを悲しいわけじゃないし、う〜ん、うまく言えないですよね。
ただ目があったんですよね。その目がすーっと閉じていったのを見た時に、ぶわっと涙が溢れてきてですね・・・でもそれって悲しいとかでもないし、なんだろうな・・・自分に対しての怒りとか嫌悪感でもないしね。ただなんか涙が出てきて、これはなんだろうなっていう・・・そこは消化しきれてないですね。
自分でもあまり無理に言語化しないようにはしているんですね。言葉にすることで急に陳腐になったりすることってあるので、無理にそういうことはしないようにしているんですけど、よくわからないっていうのが正直なところです」
ゆにさん「不思議なんですけど、野菜は栽培ができて、普通に収穫できた時に
一種の答えみたいなのが出て、すっきりする感じがあったんですよ、これまで。
でも鶏さんを食べるっていうことに関しては、こうやることによってすっきりっていうよりは、なんか疑問がすごく多くて、なんでこういうことをしないと人は生きられないんだろうみたいなところで、答えが出ずに終わるというか、モヤモヤした感じでその時期は終えていましたね」
●たいち君にはどんなお話をされたんですか?
ゆにさん「なんだろう・・・シンプルに今やっていること、感情的なことっていうよりも、今何をやっているっていうのをたんたんと説明していくようにしていました。たいち自身はほんとに、目の前で起きている事実をただありのまま受け止めていて、別に怖がるということもなかったし、その時に食肉用に加工した部位を広げて、ここはこれなんだよとか説明して・・・」
余一さん「どういうお肉の部分ね・・・ここは胸肉だよとか、もも肉だよっていうのを、なんとなく(たいちは)ふぅ〜んとか、へぇ〜っていう感じで聞いていたよね(笑)」
1日の幸せは晩ご飯
※自給自足と聞くと、不便とか、大変とか、そんなイメージを持つかたが多いと思うんですけど、おふたりのお話をうかがっていると、楽しそうだな〜と感じました。無理はしてないんですよね?
余一さん「そうですね。もちろん自然環境に負荷をかけないっていうのも大事なんですけど、それ以上に自分たちに負荷がかかると続かなくなるので、うちら今これは苦痛だよね、なんか大変よね、ってなったら、それは足るを知る自給自足の一部で、自分でオッケーなところで、しっくりくるところにまた別のポイントをずらしていくっていうのかな・・・。
今ここを目指したけど、これはきついから、やっぱりもうちょっと楽なこのラインでいこうとか、っていうふうに全部それを自分で決めているので、そこだね。なんかいちばん、自分のことを全部自分で決めていけるっていうのが、この生活の魅力かなって思います」
●田村さんご夫妻は『「うちみる」プロジェクト』を進めてらっしゃいますけど、これはどんなプロジェクトなんですか?
余一さん「これはですね、僕らもこの生活をすることで、人間にも自然環境にもひょっとしたら社会にも、すごくいい影響があるんじゃないかっていうのを感じていまして、それはやっぱり発信したいなと思って、インターネットやSNSで発信しているんですね。まあ単純にいうと、うちを見てください! って意味で、『うちみる』っていう感じでやらせてもらっていますね」
※ところで、1日の生活の中で、いちばん幸せを感じるのは、どんな時ですか?
余一さん「それはもう晩ご飯の時です(笑)。うちは1日1食にしているんですよ、ご飯を。そういうのでもいろいろ負荷が減るんですよね。内臓にかかる負荷も減りますし、単純に時間の節約もされるし、食材の節約にもなるので、そういうのもあるんですね。
朝起きて働いて、夜のご飯まで頑張る! っていう1日のご褒美が、嫁さんが作るご飯なので、そこに向かっていますね、毎日朝起きてから。さあっ、飯食えるからきょうも頑張ろうっていう(笑)」
●ゆにさんは、どんな時がいちばん幸せですか?
ゆにさん「私も食べることが好きなので、そのご飯の瞬間はとても幸せだなと思っています。本当に朝起きて、食べ物があれば、十分な睡眠をとって、十分な食料があれば、人って生きていけるんだなと思いますね。
最低限の食べるものを確保するために畑を耕してとか、最低限かかるお金を稼ぐために少し労働してみたいな、そういうのもあるけど、やっぱり”食”で満たされるために生きているなと今考えているところがあるので、毎日の晩ご飯の食卓につく時がいちばん幸せだなと思います」
(編集部注:田村家のひと月の生活費は4万円ほど。地域の便利屋さんとしてお困りごとなどを引き受けるお仕事をして稼いでいるそうですよ)
憧れで終わらせないで
※自給自足の生活に憧れているかたにアドバイスがあるとしたら、どんなことでしょう? まずは余一さんからお願いします。
「うーんとね、何事もやってみなきゃわかんなくてですね。よく言われるのが、”すごく憧れるんですけど、自分には無理です。でも応援してます”みたいな、最終的にはポジティブなご意見をよくいただくんですけど、やってもないのになんで自分では無理なんだろうって、自分の可能性をなんで信じないんだろうって、すごく思うんですよね。
だから(自給自足の生活に)憧れている人に対しては、ほんと憧れで終わらせないで! っていうのをとにかく言いたいです。
具体的にはちょっとノコギリで木を伐ってみるとか、伐った木を斧で割って、焚き火にして、お鍋でご飯を炊いてみるとか、そういうちっちゃなことからなんですよね。いきなりすべて、電気・ガス・水道を契約しない生活にぐるっと変えることって、たぶんうちらでも無理だったので、ちょっとずつなんですよね。
ちょっとずつ右肩上がりになりゃいいやっていうぐらいのやり方じゃないと、すごく負荷がかかると思うので・・・それかものすごくお金をかけなきゃだめですよね。急に土木工事を入れるとか、業者さんに頼んで一気に整えて、そこに入って頑張りますとかね。
でもそれはやっぱり違うと思うので、まずは手を動かして、土に触れるとか、木に触れる、そういうものにダイレクトに向かうことを、ちょっとずつでいいのでやってほしいと思います」
●ゆにさんはいかかですか?
ゆにさん「最近こうやって本を出させていただりとか、メディアに出させていただいて、6年経った時の、完成形というか、ある姿が今なんですね。最初はほんとに何もないところから始まっていて、まず暮らしに居心地の悪さ、不快なところを感じたりとか疑問を持ったりして、そこで自分なりにできることをやって、変えていくことで始まりましたね。
食べるものにいろいろこだわったりしたら、スーパーで買いたいものがないなって思ったら、自分で作ってみるとか・・それもプランターにタネをひとつ撒くところから始まっていくので、自分の暮らしに疑問を持ったところを少しずつ改善していけば、いつかその人なりの桃源郷を作っていけるかなと・・・。
今ある私たちは、私たちが住みたい場所を自分たちで作っているし、これをまんま誰かがやれば、その人が幸せな暮らしになるかっていうと、ちょっと違うと思うので、自分たちなりに疑問を持って、きょうからできること、改善していくことで、こういった暮らしににつながっていくのかなと思いますね」
INFORMATION
田村さんご夫妻の初めての本です。特に自給自足の生活に興味のあるかたには、気になること、知りたいことが満載です。無理せず仲良く暮らしていらっしゃる田村ファミリーのリアルな生活が綴られていて、楽しく読めます。サンクチュアリ出版から絶賛発売中です。
新しい展開として「むらコミュニティ」という、プロジェクトを進めるそうです。「うちみる」プロジェクトを含め、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎サンクチュアリ出版:
https://www.sanctuarybooks.jp/book-details/cate00054/book1351.html
◎うちみるプロジェクト:http://uchimill.naturebounds.com/
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