2022/11/20 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「無人島プロジェクト」の代表「梶 海斗(かじ・かいと)」さんです。
梶さんは1988年生まれ。京都出身。同志社大学卒業後、リクルートに入社。その後、無人島ツアーを企画し、2016年に株式会社ジョブライブを設立、代表取締役に。そして現在、無人島プロジェクトの事業を展開されています。
きょうはそんな梶さんに無人島体験ツアーや、島でのキャンプ生活がもたらす効果などお話しいただきます。
☆写真協力:無人島プロジェクト
生きるを学ぶ体験
※いったいどんなプロジェクトなのか、お話をうかがっていきましょう。まずは、無人島プロジェクトについて教えてください。
「はい、日本全国には6400近くの無人島があるんですけれども、そういった無人島にお客様をお連れして、『生きるを学ぶ』体験というのを提供しています」
●無人島プロジェクトのテーマが「生きるを学ぶ」なんですね。
「そうですね。まさに来ていただくお客様には『生きるを学ぶ』を大切にしていただきます。みなさん、日々色んなことをされていると思うんですね。仕事をしたりだとか趣味にいそしんだりだとか・・・・実はその生活の根底に、食べるとか水を飲むとかそういったところがありますよね。
無人島に行くと、さあご飯を食べようと思っても食料調達から始まりますし、調理しようと思うと火を起こさなくてはいけないところがあって、それが当たり前に今の日常では提供されていることに気付けたりもするんですよね。
無人島でしか気付けないことがたくさんあって、そういったことも含めて、生きるとは何なのか、生きることにどういうことが含まれているのかを、少し気付いていただくっていうようなことですね。生きるを学べるような価値があるかなと考えていまして、それがひとつテーマになっています。
一方で、無人島というくくりで言いますと、先ほども言いましたように日本全国に無人島は6400もあって、(有人島を含めると)日本には6800近くの島があるんですけれども、人が住んでいない島のほうが多いんですね。それをどう活用していくのかが、地域を盛り上げるためにも非常に重要になってきますので、そういう活用プロジェクトも、ひとつのテーマだと思います」
『十五少年漂流記』に憧れて
※梶さんが個人的に、初めて無人島に行ったのはいつ頃なんですか?
「初めては、私が19歳の頃ですので、2007年から2008年ぐらいじゃないですかね」
●どこの無人島に行かれたんですか?
「私は京都出身ですので、京都から近い島はどこにあるのかを、インターネットが(今ほど)発展していない中でなんとか調べて、たどり着いたのが瀬戸内海で・・・瀬戸内海の無人島に京都から行ったのが初めてでした」
●どうしてまた無人島に行ってみようと思われたんですか?
「無人島っていう言葉が冒険心をくすぐるというか、そういうのがあると思うんです。自分自身は小学生の時に、『十五少年漂流記』っていう小説を読んだんですね。ロビンソン・クルーソーみたいなやつなんですけど・・・15人の少年が、船が難破して、たどり着いたのが無人島で、そこで共同生活をしていくっていうストーリーなんです。
仲間と一緒に限られた環境で生き抜いて、絆ができていくっていうようなことに対して憧れがあって、いつか(無人島に)行ってみたいなっていうことを、ずっとなんとなく心のどこかに持っていました。それが大学生になった時に何か新しいことをしたい、キャンプで何かできないかなと思った時に無人島に行ってみようって、ふと思い立ったんですね。
行けるかどうかは全然わからないので、手探り状態だったんですけど、まずは人口が30人とか40人ぐらいしかいないような小さい有人離島にフェリーが出ていますので、そこに行って漁師さんに頼み込んでみたんですよ。そうすると無人島に渡してあげるというような話があって、今こうなるとは(その時は)思っていませんけど、そこが本当にいちばん最初の始まりでしたね」
●それを今度はビジネスにしようと思われたのは、いつ頃なんですか?
「思い立ったのは社会人2年目ですので、2013年から2014年ぐらいのタイミングだと思うんです。無人島に初めて行ってから毎年行くようになったんですよ。友達を連れて行くとすごく喜んでくれるんですね。
こんな体験できるところないし、誘ってくれる友達もなかなかいないから、自分が楽しんでいたのと同じように仲間も楽しんでくれていたんです。そういう人たちが増えていく・・・次は誰を連れて行きたいとか、将来子供できたら子供と行きたいよね、みたいな話とかをもらうようになって、なんとなく心の中に、需要はあるんだなって思っていたんだと思います。
で、いざ自分でビジネスを立ち上げようっていう気持ちになった時に、何をテーマにするのかを考えた時に、そのひとつとして無人島をやりたいなって思ったんですね」
(編集部注:梶さんは小学生の頃にYMCAのキャンプ教室に参加。そのとき、キャンプのスキルを身につけていたので、無人島に初めて行ったときでも、不安はなかったそうです。子供の頃からアウトドアや自然が大好きだったそうですよ)
個人から企業向けプランまで
※無人島プロジェクトでは現在、どんなツアーや事業を行なっているんですか?
「まずは、今までお話ししたような私のルーツである個人向けのツアーですね。日本全国、みなさん、無人島にほぼ行ったことない人ですし、キャンプも初めてという人が20%から30%ぐらいはいらっしゃるので、アウトドアにそんなに慣れていないかたでも無人島で2泊3日、初めて出会った仲間たちと冒険するツアーをやっているんです。
これがすごく人気で、今までで1500人近くのかたにお越しいただいています。1回あたり20人から30人で行きますので、それなりの回数になるんですけれども、みなさんすごく満足して、初めて出会ったと思えないぐらい仲良くなって、たくましくなって(無人島から)帰ってきてくれます。これが個人向けのツアーで、我々スタッフとかインストラクターが付いていくパターンです。
もうひとつが仲間たちだけで無人島を借り切って、自分たちでキャンプするプランもやっています。これが『無人島セレクト』っていう名前でやっているんですけど、島を選べるんですよ。島がいくつかあって、その中から(参加者が)この島いいな〜って思ったら、そこに行く船の手配だとかキャンプ道具の手配は我々でさせていただきます。
無人島で過ごす注意事項とかそういうガイダンスをさせていただいたうえで、みなさんで1泊2日楽しんでいただきます。もちろん、なにかあって連絡いただいたらすぐ助けに行くんですけど、助けに行くようなことはあまり起きないですね。そういう個人向けプランもあります。
あとは我々、日本全国の無人島、あちこちと提携していますので、そういったところをオーダーメイドで使わせていただいています。
例えば、無人島を借り切ってイベントをやりたいとか、子供向けの体験教室をやりたいとか、企業研修で新入社員にたくましくなる経験をしてほしいとか・・・やっぱり助け合わないと無人島では生きていけないので、難易度は会社によって様々なんですけど、こんな体験をしたいとか、そういったお話をうかがいながら、ゼロから一緒に作っていくオーダーメイド・プランがあって、これも人気ですね」
(編集部注:無人島プロジェクトでは現在およそ100の島と提携しているそうです)
ルールは敬語禁止!?
※先ほどお話にあった、アウトドア初心者のかたが多く参加する個人向けツアーで、20人から30人の参加者が2泊3日の無人島体験をする企画、これは「ベーシックキャンプ」というツアーなんですが、このツアーには、こんなルールがあるそうですよ。
「ルールは敬語が禁止(笑)。日常では社会的な立場とか年齢とか、いろいろあるけれども、 今からみんなは無人島に行って、無人島に漂着したんだと。だからひとりの人間として助け合わなきゃいけない。助け合って3日間、きちんと生き抜いて帰ってこようね。
もちろんスタッフはいて、そのためにサポートはするけど、みんなで生き抜くことが今までにない経験で楽しいことだから、それをサポートするガイドみたいなもんですよ。だからみんなで、スタッフも含めた30人で、3日間生きていきましょう! っていうガイダンスから始まるんですね」
●へぇ〜、面白いですね。
「もちろん敬語は、慣れなかったら、最初は出ちゃうんですけど、徐々にみんな慣れていきますね。何をするにも、火を起こすにも食料を調達するにもテント建てるにも、助け合わなきゃいけないので、固くなっちゃっているのが自然に取れていって、2日目の夜にはもう明日終わってしまうのが寂しいねとか、生き抜くことがどんなに大変なのかを一緒に理解し合えたねとか、ちょっと苦しいことを一緒に分かち合えた仲間たちになって帰ってきてくれるんですよ。
無人島を活用していろいろやらせていただいていますけど、私がこの無人島の企画をやりたいなって思えたのは、非日常体験を通じて人生の転機になり得るような、すごく濃い3日間を作れるところが、とても魅力的だなと思って始めたってことがあります。
初めましての人たちと、敬語禁止ルールとかがある中で、3日間一緒に助け合って生き抜くツアーにはなるんですけれども、ただ体験をするだけではない深さとか、そういったものも提供できているんじゃないかなって思っています」
(編集部注:無人島プロジェクトでは、ロケ撮影のコーディネイトも行なっています。例えば、ゴールデンボンバーの全国ツアーファイナルの無人島ライヴをサポートしたこともあるそうです。無人島からの配信ライヴで、その映像にはドローン撮影もあり、島の全景が映し出され、ロマンを感じたそうですよ)
「生きる」を全部やってみる
※無人島でのキャンプは、参加者のかたの意外な才能が発揮されたりすることもあるんじゃないですか?
「むちゃくちゃありますよ。本当にひとりひとりできることもそうだし、キャラクターも違うので、みんなの中心になって盛り上げることが上手な子もいますし、みんなが見てないところで、”これから暗くなると思って”と言って、大量の焚き木を持ってきてくれる子がいたり、誰も気づかなかったわ、それ! っていうような・・・。
魚を捕ってくる子もいれば・・・スキルっていう観点でいうと、料理が上手な子とか、歌を唄うのが上手とか踊れるとか泳げるとか、それぞれ人生があって、できることが違うので、それを生かしていただける環境があって、みんなの役に立つ、っていうような状態なので、本当にバラバラな個性があって楽しいですよね」
●サバイバルに近い状態ですから、積極的に自分たちで動かなきゃっていう気持ちにもなりますよね。
「そうですね」
●動かなきゃ始まらないですよね。
「それがいいところだとは思うんですけどね。何もしないってこともできるんですけど、何もしなかったら楽しくないですし・・・」
●そうですよね〜。
「みんな、無人島って環境は、着いちゃったんで諦めるんですよね(笑)。諦めた上で、いかにみんなで楽しい時間を過ごすのか、どうやって過ごせるのかっていうことに、自然とフォーカスしていけるので、初めて出会ったんだけど、ある意味ひとつの方向を向きやすいのが面白いところですね」
●参加されたかたに、価値観が変わったとか人生感が変わったとか、そんなかたもいらっしゃるんじゃないですか?
「ありがたいことに、そういうお話をいただくことも多いですね。100円持っていれば、わずか1〜2分でコンビニで肉まんが買えて、めちゃめちゃおいしいじゃないですか。それがどれだけ恵まれたことなのか、みたいな話とか・・・お布団ってすごいんだなみたいな、そんな話もありますね。
あとは、日常の日々の暮らしが、すごくありがたいことなんだと気づいて、違う場所に移住をすることを考えるかたがいたりとか、人々と助け合って生きていくことに、もっとフォーカスした生き方をしたいっていうので、都会からちょっと違うところに生活(の拠点)を変えたりだとか・・・。
逆に結婚の決意をされるかたとか、離婚を決意するかたとか・・・いろんな感情が溢れるんだと思うんです。ねらっているわけじゃないですけど、島で出会って結婚するかたがいたりもしますね」
●ここまで生きることを全力でするって、都会にいたらなかなかないですよね、そういう経験ってね。
「ないと思うんですよ。便利なものはいっぱいありますし、逆に言うとそれは人の力だと思うんですけど、ただ人生に一度ぐらいは、自分で自分の生きるを全部やってみるっていう体験があってもいいかなとは思いますね」
「やりたい」をかなえる
※無人島プロジェクトの、12月以降、または来年のツアーでおすすめはありますか?
「やっぱり無人島っていうと夏のイメージ強いじゃないですか。みんなヤシの木の生えた常夏の島を思い浮かべると思うんですね。暗い曇り空のゴツゴツした岩肌の、風が吹きすさぶ島には行きたくないっていうのが本音だと思いますので(笑)、我々のツアー自体はだいたい夏なんですよ。ゴールデンウィークとか7日から10日ぐらいの連休でやることが多いんです。
ただ、先ほどお伝えした少数のグループで、無人島を借り切って使っていただける『無人島セレクト』のプランだったりとか、あとはやりたいことに合わせた企画を提供するオーダーメイドのプランは年中やっていますので、そこはお問い合わせいただければと思います。
たまにすごい強者が、真冬の無人島サバイバル体験をやりたい、YouTubeで配信したいとか、そういったお話もいただくことがあるので、無人島でこれをやりたいっていうのをかなえるのが我々かなと思いますので、まずはお問い合わせいただければと思いますね」
●では、最後に梶さんにとって無人島とは?
「無人島だから人の温かみだったり、社会の温かみだったり、生きることに対する大切さを感じさせてくれる場所だなって思っています」
INFORMATION
無人島プロジェクト
無人島プロジェクトで実施しているツアーは以下の通り。
参加型の個人向けツアー、2泊3日の「ベーシックキャンプ」は現在、姫路と博多での開催となっています。
仲間と行く個人向けツアー「無人島セレクト」は、行きたい無人島を選べるプランです。
ほかにも研修や会社の行事を無人島で行ないたい法人向けのオーダーメイド・プランなどもあります。
詳しくは、無人島プロジェクトのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎無人島プロジェクトHP:https://mujinto.jp