2023/3/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、イラストレーターで防災士の「鈴木みき」さんです。
鈴木さんは東京都生まれ。24歳の頃に1年間、過ごしたカナダ生活をきっかけに山に目覚め、山雑誌の読者モデルや、山小屋などのアルバイトを経て、イラストレーターに。そして、登山初心者に向けた本を多数出版、登山ツアーの企画もされています。その後、東京から山梨県北杜市に移り、現在は札幌を拠点に活動中。
2018年に北海道胆振(いぶり)東部地震で被災、その際、山登りやアウトドアで培ったスキルを活かし、在宅で避難生活を送り、その経験から防災士の資格を取得されています。
そんな鈴木さんが先頃、おうちで防災をテーマにした本『キャンプ気分ではじめるおうち防災チャレンジBOOK』を出されたということで、再び番組にお迎えすることになりました。
きょうは、日頃から取り組むおうちで防災のヒントやアドバイスをいただきます。
☆写真&イラスト協力:鈴木みき、エクスナレッジ
鈴木式おうち防災チャレンジ
●新しい本には「2日間でできる鈴木式おうち防災チャレンジ」ということで、ヒントやアドバイスが本当にたくさん載っています。
いくつか具体的にご紹介していきたいんですが、冷蔵庫のお掃除という項目もありましたよね。冷蔵庫の中身をすべて出して、賞味期限をチェックしながら食材を入れ戻しましょうということで、日頃から生鮮食品を買い溜めないとか、消費期限を守るということも立派な防災なんですね。
「そうですね。日常で節約するっていうか、実は生活の中でのちょっとしたことでも防災になっているっていうことなんですね。保存食とかも消費期限が切れてないかをチェックするチャレンジもあるんです。それをチェックすることで、あるから買わないでおこうっていうことになりますよね。
あとは食品の期限が切れる前に食べなきゃいけないなって思って、消費するっていうこともあるので、食品ロスも減らせたりするのもいいかなっていうか、それが実は防災になっているっていう気づきになればいいなと思っています」
●あとポリ袋で炊飯という項目もありましたね。
「これは停電で炊飯器が使えなくなった時に、湯煎でお米が炊けるっていうものなんですけど、これ一度やってみてほしいんです! 本当に簡単だし!」
●ざっくり言うと、どんなやり方をすればいいでしょうか?
「耐熱のポリ袋、ビニール袋みたいな耐熱仕様のものを使っていただきたいんですけど、そこに直に白米を入れて、お水を入れて、それを湯煎(ゆせん)して炊くっていうものなんですね。簡単なんです。言われた通りやってもらえれば、ほとんど失敗なくちゃんと美味しく炊けるので、これ覚えておくといいと思うんです」
●すごいですよね。温かいご飯がポリ袋で炊けるんですね!
「意外でしょ。ビニール袋に入れて!? 湯煎で・・・!? っていうのを、私も信じられなかったんですけど、やってみたらすごく簡単でした。
もちろんガスが止まっていたりとかする時のために、カセットコンロも用意しておいてほしいんですね。例えばガスでやるとなると、お鍋で炊飯することがまず浮かぶと思うんですけれど、それだとやり慣れてないと、失敗することもすごく多いと思うんですよね。ポリ袋炊飯は多分誰がやっても、美味しく炊けると思います(笑)」
●これ覚えておくといいですね!
「アウトドアでも本当に役に立つと思うので、(防災とアウトドア)両方ですよね」
寝室と避難場所、チェック!
●寝室の模様替えという項目もありました。自分に倒れてこなくても、倒れたら出口を塞いでしまう家具がないか確認しようということで、そこはちょっと盲点でした。自分に被さらなければ、いいやとしか考えてなかったので反省しました。
「小尾さん家の寝室がどうなっているか、ちょっと見てみたいですけど(笑)」
●出口にも気を付けなきゃいけないんですね?
「そうなんです。地震を想定してのチャレンジではあるんですけど、寝ている時の突然の地震、これまでもみなさん何度も経験があると思うんですけど、意外と寝ぼけていますよね? 揺れてもとっさに何かできるってことはなかなかないので、倒れてくるものがあったり、出口を塞ぐものがないか、一度ベッドに寝転がって目を開けて見てほしいんですよね」
●そうですね〜。あと避難場所までお散歩しようということで、ひとつの避難場所に対して、複数の経路があるといいですよと書かれていましたが、これは確かに大事なことですね。
「最短の道が安全だとは限らないんですよね。例えば、いろんな災害があって、地震だったら洪水だったらとか、いろんなバージョンがあると思うんですけど、それが起こった時に、この経路が果たして安全なのかどうかを、そういう視点で散歩すると、普段の散歩もちょっと違ってくると思います」
●ゲーム感覚というか楽しみながら体験するというのがいいですね!
「防災とか避難訓練ってなっちゃうと、なんかちょっと構えちゃう、やらなくなっちゃうってこともあるし、なんか面白くなさそうじゃないですか(笑)。なので、ゲーム性みたいなものがあると、楽しんでやってもらえるのかなと思って、チャレンジ式っていう感じで本を作ってみたんですよね」
●やっぱり体験しておくと、何が必要で何がいらないかっていうのも確認できますね。
「確かにそうですね。やってみないと分からないことはたくさんあって、だから毎年、避難訓練みたいなものはあると思うんですけど、なかなか自分ごとにはなりづらいですよね。
本当の災害とか避難生活は、誰でもぶっつけ本番でできるほど、甘くはないと思うんですね。ご自宅でできるんであれば、身近なものでやるので自分ごとにしやすいし・・・なので、この本にあるチャレンジを通して、楽しく在宅避難の類似体験みたいな感じでやってもらえたらいいかなと思います」
水、携帯トイレ、モバイルバッテリー
※防災グッズでこれは特に用意しておいたほうがいいと思うものがあれば、教えてください。
「自分の避難した時の経験からも強く伝えたいですし、あとは多くの避難経験者も言っていることなんですけど、水と携帯トイレですね。私がすごく(備えておきたいと)思ったのはモバイルバッテリー。この3つは意外と意識してないと、その量を備えていないものだなと思いました」
●具体的にはどれくらいの量を準備しておけば、よろしいですか?
「水に関しては、1日ひとり3リットルが防災のセオリーとしてよく言われることなんですね。ご家族がいれば、結構大量にはなるんですけど、自分の家にどれだけ必要なのかっていうマイ備蓄量みたいなものも、このチャレンジの中で見つけられると思うので、参考にしてほしいなと思います。だいたい1日3リットルとすると、3日分くらいは最低でも用意しておくといいと思います」
●モバイルバッテリーや携帯トイレは、大体どれくらいになりますか?
「モバイルバッテリーは多分みなさん、スマホとか使っていらっしゃるから持っていると思うんですが、1回分の充電っていうよりはもうちょっと大容量のもの、4〜5回できるぐらいの大きなもの、ご家族がいる家だとポータブルバッテリーと言って、スマホの充電以外にも電気をつけたりとか、ちょっとした家電が使えるようなものも今は買いやすくなっていると思うので・・・。最低限スマホの充電ができるバッテリーを、ひとり1個は必ず持っておくといいですね。
携帯トイレについては、その人が1日何度用を足すかとか、そういうことにも関係してくるんですけど、ひとり1日3つあれば十分だと思います。ひとり暮らしであれば、ひとつの携帯トイレに何回か用を足すこともできたりするので・・・。ちなみに私はですけど、被災後にこれは携帯トイレを備えとかなきゃ! って思って、手作り用いうか個々に揃えて50セット備えてます。
業務用のものを買ったから50セットっていう感じにはなってしまったんですけど、多い分にはお互い様なので、災害時にご近所にも配れるし、いいかな思って、ちょっと多めに備えていますね」
(編集部注:在宅避難の大前提として、災害の規模にもよると思いますが、自宅で安全に過ごせるか、備えはあるかなどの状況が許せばということです。そして、定期的に情報を得ること、孤立しないようにすること。そして特にひとり暮らしのかたは、近所に助けを求めることが大事だそうです。
それから、自分が住んでいる街のハザードマップや防災マップを日頃から確認しておくこと。私もネットで調べたら、すぐ出てきました。ハザードマップには、避難所や給水所など、知りたいことが書いてあります)
自分のことは自分で
※ここまでは「おうちで防災」というテーマで、在宅避難のお話をうかがってきましたが、在宅での避難が難しい場合も当然あると思います。避難所に行くときに最低限、持っていったほうがいいものはなんでしょう?
「いろいろあれば、安心だったり便利でもあるんですけど、最低限って言われたら自分の命、それだけを持って行ってもらえればいいと思います。
それ以外ということで言えば、私もそうだったんですけど、避難所に行けば誰かがなんとかしてくれるって、勘違いしている人が結構多いのかなと思うんですね。災害の規模や自治体にもよるんですけど、被災したことがないとか避難したことがない方が想像しているような、誰かがなんとかしてくれるまでは、時間がかかることが多いんですね。
それまでは自分でいろいろ備蓄品を使って、自分でやらなきゃいけないとか、そういうことのほうがほとんどなので、備蓄品があるにしても自分で1泊2日ぐらいなんとかできる用意を持って行くと、食べ物とか、安心じゃないかなって思います。飲料水であるとか、さっき言ったモバイルバッテリーの容量であるとか・・・あとは季節にもよりますけど、寒い季節であれば、防寒着であるとか・・・。
最低限の備蓄品は避難所にあると思ってもらっても構わないんですけど、それが全員に行き渡るかはわからないですね。
なので、自分が持っていれば自分で持って行って、余ったものは誰かに使ってもらうこともできるので、そのくらいの準備をしておいたほうがいいですね。体育館などで寝ることが多いと思うので、そういうのを想定して、考えてもらえればいいのかなと思います」
●そんな避難所から自宅に戻れることになった時に注意することはありますか?
「これはまず被災状況の確認と言われています。建物に何か異常がないかとか、インフラも急に使わずに確認のステップみたいなものもあるんですね。もし何か異常があった場合は必ず写真や動画に収める、これがあとで保険などを請求する際の罹災(りさい)証明を取る時に必要になってくるので、必ず触らずに、最初その状況を収めておくのが大事になってくるみたいですね」
平時に防災チャレンジ!
※山好きでアウトドア経験も豊富な鈴木さんが、2018年に札幌で大きな地震に見舞われ、実際に被災されていちばん役にたったアウトドアのスキルはなんですか?
「いちばんは危険に対する心構えですね。もうひとつあげてもよければ、電力とかインフラがない環境で過ごす経験かなと思います。そこにある危険を想定して備えて出かけるのがアウトドアの基本ですからね」
●防災力を日頃から上げるために、何かやっておくことってありますか?
「それはもうアウトドアに行ってもらうことですね! 体も動かすし、避難行動や避難生活に必要な体力や気力も養えて、一石二鳥というか、それも防災につながっていると思います」
●そうですね。やっぱり普段から家族とか友人たちと、もしもの時の話をするのも大事ですよね。あと体験しておくことも。
「はい、そう思います。平時でしか練習はできないんですよね。避難訓練もそうですけど、災害が起きてからでは本番になってしまうので、ぜひ平時に、この本にある17個のチャレンジを読むだけじゃなくて、実際にご家族やご友人と楽しくやってもらえたら嬉しいです」
☆この他の鈴木みきさんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
鈴木さんの新しい本をぜひ読んでください。おうちでキャンプの予行演習をしながら、楽しく気軽に防災力をあげられます。チェックリストも載っていて、役立ちますよ。一家に一冊、ぜひ! エクスナレッジから絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎エクスナレッジ:https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767830865
鈴木さんの近況についてはオフィシャルブログ「鈴木みきの とりあえず裏日記」を見てください。
◎鈴木みきさんオフィシャルブログ:https://ameblo.jp/suzukimiki/