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白石康次郎、世界一過酷なレース「ヴァンデ・グローブ」に再挑戦!

2023/4/9 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、海洋冒険家の「白石康次郎」さんです。

 世界一過酷なヨットレースと言われている「ヴァンデ・グローブ」は、第1回大会は1989年から1990年にかけて行なわれ、その後、4年に一回開催されています。スタートとゴールはフランスのレ・サーブル・ドロンヌという海辺の町。コースは南半球を一周、およそ4万8千キロ! 速いヨットで80日間ほどで走破!

 世界一過酷と言われる由縁は、単独・無寄港・無補給! つまり、たったひとりで、どこの港にも寄らず、補給も受けないという条件のもとで実施されるからなんです。

 そんなヨットレースの前回大会に参戦し、見事、アジア人として初めて完走したのが、海洋冒険家の白石康次郎さん。白石さんは、これまでにヨットによる世界一周をなんと4回も成し遂げている、日本が世界に誇るトップセーラーなんです。

 そんな白石さんが来年、再び「DMG MORIグローバル・ワン」のスキッパーとして「ヴァンデ・グローブ」に挑戦します。ということで、きょうは「白石」さんをお迎えし、再挑戦する熱い思いに迫ります。

☆写真協力:DMG MORI SAILING TEAM

(c)DMG MORI SAILING TEAM

水平線の向こうに

●今週のゲストは海洋冒険家、白石康次郎さんです。初めまして、小尾渚沙と申します。3年ほど前からこの番組「ザ・フリントストーン」を担当しております。よろしくお願いいたします。
 最初から私事で恐縮なんですけれども、白石さんはTUBEの前田亘輝さんとも親しいんですよね?

「そうなんですよ。兄貴と呼ばせていただいて、何曲かヨットの歌を作っていただいているんですよ」

●実は私もゆかりがあって、私が生まれた当時、父がレコード会社に勤めていて、担当していたのがTUBEだったんですね。

「あ、そうなんですか!?」

●そうなんです! で、女の子が生まれたら「渚沙」にしようって、前田さんが名付けてくださったんです。

「そうなの! ソニー(ミュージック)の!?」

●そうです、そうです!

「そうでしたか! それで渚沙なんですね。名付け親なんですね(笑)。それは素晴らしいね!」

●男の子だったら、忠犬ハチ公の「忠」に武士の「武」で、「忠武(ちゅうぶ)」だったんです(笑)。

「へぇ〜、女の子でよかったんじゃないんでしょうかね〜(苦笑)」

●(女の子で)よかったです(苦笑)

「今度、前田さんに会った時にちょっと言おうかな」

●ぜひぜひ! 白石さんにこの番組に初めてご出演いただいたのが、1994年の10月だとスタッフから聞いているんですけれども、もう30年近くこの番組にお付き合いいただいているっていうことですよね。

「いや〜、こちらこそ! 最初に世界一周したあとですね。つっぱっている頃だったので、本当にお声がけいただいて、ザ・フリントストーンさんとは、なんていうかな、成功も失敗も共に歩んできましたね」

●嬉しいです。94年に世界一周の最年少記録を樹立されたんですよね。

「そう、最初の世界一周でしたね」

●この世界一周は、レースというわけではないんですよね?

「そうです。僕、世界一周したいっていうのは、子供の頃からの夢で、やるんだったらひとりで、つっぱっている頃なんでね(笑)。世界一周してやろうということで、やったのが最初でしたね。で、2回失敗してね。もう、コテンパンにやられて、3回目でやっと成功してね」

●何度も聞かれていると思うんですけど、そもそもどうしてひとりで、ヨットで世界一周しようって思われたんですか?

「これは好奇心です。好奇心です、はっきり言って。僕、子供の頃、鎌倉で育ったんですよ。海岸に立った時に、みんな海を見て何を思うんだろうなって・・・。

 僕は水平線の彼方に思いを馳せて、当時、外国旅行なんかまだまだできない時代で、とにかく好奇心だね! この水平線の向こうには、何があるんだろうっていうのが動機で、飛行機とかいろんな方法あるんだろうけど、僕は船で世界一周したい! というのが夢だったんです」

白石康次郎さん

船が飛ぶ!?

●今年の1月には、来年の「ヴァンデ・グローブ」出場と、その先のチームの目標について発表されたということで、来年も「ヴァンデ・グローブ」に「DMG MORIグローバル・ワン」のスキッパーとして出場されるんですよね。どんなお気持ちですか?

「今回5回目のチャレンジで、チームを立ち上げて2回目になるんですけれども、前回の2020年はセイルを破ってしまって、うまいこと走れなかったので、今回はもうちょっとうまく走りたいかな。船ともコミュニケーションが取れてきたので、もう少し前回よりうまく走れるんではないかと思っていますね」

●前回2020年は、白石さんにとっては初めての新艇で、しかもオーダーメイドだったんですよね?

「そうです、そうです。フォイル艇で、今は船が飛ぶんですよ、半分」

●船が飛ぶ!?

「水中翼船みたいに、風の力で」

●羽があるってことですか?

「そうなんですよ、羽があるんですよ。今の船は特殊で、本当にレース艇ですね。それに初めて乗りました。僕にとっては初めての新艇だったのね。それで出場して完走して、次はそれを改造して、さらにもうちょっと上の順位で回れればなと思っていますね。
 さらに2028年はまた新しい船を作ると・・・僕らのチームは長期計画なので、それに向かって一歩一歩前進していきたいと思っていますね」

●すごいですね〜、夢がありますよね。羽が生えている船は具体的にどれぐらいの大きさなんですか? 

「船の長さは18メートル60フィート、大きいです。マストの高さが28メートルだから(建物でいうと)7階建てぐらい。一般にみなさんが思うヨットよりも大きいですね。そのヨットをひとりで、世界一周すると非常にスピードも出ます」

●もうすでに、共に荒波を乗り越えてきたわけですよね。

「そうです、そうです」

●もちろん愛着もすごくありますよね?

「そうですね! いい船ですよ「グローバル・ワン」は」

(c)DMG MORI SAILING TEAM

自然に敬意を

 白石さんが所属する「DMG MORIセーリング・チーム」はスキッパーが女性を含めて5人、ほかにエンジニアなどのスタッフが10数名、総勢20人ほどの国際的なチームだそうです。

 ベースはフランスのロリアンという港町にあり、そのロリアンには、世界中のトップチームが集結しているそうです。白石さんがおっしゃるには、フランスはヨットが盛んでフランスの国技といってもいいそうですよ。

●ヨットや海から学ぶことも多いんじゃないですか?

「多いです。今SDGsで、持続可能なっていうことをやっていますよね。あれ何かって言ったら、やっぱり人間は自然との関わりなくして生きられないんだよね。簡単にいうと海、山、川ってあるでしょ。これは人間が創り出したものじゃないでしょ、海も山も川もね。だからそこにやっぱり敬意を持っていないと、人間はどんどん苦しくなってくるんだよね。

 それがちょうど今、変革期で、僕なんかの時代は物がなくて、作ろう作ろうという時代だったんだけど、これからはもっと地球とコミュニケーションを取って、我々は地球の外では生きられないので、もう少し地球と共にという考え方がやっと芽生えてきたんじゃないでしょうかね。江戸時代は、そういうのはあったんですよ」

●江戸時代!?

「そうそう、そのものがSDGsだったから、持続可能なものだったんだけど、そうだな〜、産業革命があって石油が掘り出されて、それからちょっと変わってきたかな。今振り返ってみると、ゴミは多いよねとか、僕なんかの時代そうだったのね、公害時代だから・・・。

 でも今やっぱり綺麗のほうがいいよね、多少不便でも。おいしい空気の方がいいよねとか、綺麗な海の方がいいよね、ということで、多分どうでしょうかね・・・みなさんの時代の方が意識は高いんじゃないかな。みなさん今若い人たちは、ファッションもすごくシンプルでしょ」

●そうですね。

「そうそう、ミニマリストみたいに。何も物のない時代で育った人は、物があって幸せになんだよ。で、みなさんみたいに物がある時代に育った人は、別に物があっても驚かないんだよね」

●当たり前だったわけですよね。

「それより大人しく綺麗に生きようっていう、ちょうど今、時代の変わり目、風が変わってきたね。いいことだと思いますよ」

世界一周は日常!?

●「ヴァンデ・グローブ」は、ひとりでどこにも寄らずに長時間レースをしているわけじゃないですか。その間に寂しいなとか、感じたことはないですか?

「僕を見て寂しいと思いますか?」

●まったく思わないです(笑)

「思わないですよね! このまんまですね!」

●でもずっとおひとりなわけじゃないですか、夜も。

「ひとりは面白いよ! あの満天な星を独り占めです、最高だねぇ〜。だから海にたったひとり、地球という最大の星で、地球の最小単位のひとりでいるわけよ。これが素晴らしいわけです」

●ほんとに独り占めですね。

「独り占めでしょ! でね、連絡はなかなかできないので、今、都会でいちばん難しいことができるんだよ。自分と会話、自分との向き合い方が長いね」

●どんなこと考えるんですか?

「何も考えてないです(笑)。早く帰りたいな、ぐらいしか考えたことないんだけど・・・そうそうだから、考えない時間を作るっていうのは、いいね」

●贅沢かもしれませんね。

「今はもう(みなさん)考えすぎ!」

●考えすぎていますね、みんな確かに。

「情報過多、外からの情報が多いんだよね、今の人はひとりでいると。だからみなさんは情報処理が得意なんだよね。携帯電話もなんでもそうでしょ。僕の場合はうちから外へ出す情報発信が多いんですよ。そこがヨットでひとりの魅力かな。寂しいことは何にもないです」

●そうなんですね。でも、聞くところによると、随分昔、レース中に海の上から奥様に何度か電話されたそうですね。

「いやいやいや(電話が)かかってくるのよ!」

●あれぇ〜(笑)

「去年は1回だけかかってきました。僕からかけることほとんどないんだよ。1回なんかね、電話かかってきたわけ。何? って聞いたら”銀行のパスワード教えて”。それから前回の大会は”あんた車検どうすんの?”っていうのが1回かかってきたね。

 その前の大会は”引っ越ししたから”って(世界一周の間に)引っ越しされました! そういう電話が大体、世界一周で1回かかってくるんですよ。来年はなんだろうね(笑)」

●面白い〜(笑)。来年「ヴァンデ・グローブ」に挑戦することを知って、奥様はなんとおっしゃっていたんですか?

「え、何も・・・うちら家族、娘もいるんだけど、娘が生まれてからもう3回世界一周しているかな。だから世界一周が日常なんですね」

●わぁ〜かっこいいですね。すごいことですよね。

「お父さんは世界一周して帰ってくる人なので・・・」

●ずっと家にいるのは、もう考えられないっていうことなんですかね。

「はい、だから世界一周して帰ってきても(娘は)携帯電話を見ながら”おかえり!”、それだけですね、以上ですね」

(編集部注:白石さんのご家庭では、ヨットレースの話は出ないそうですよ。きっとそれは奥様の心遣いだと思いますが、白石さんがヨットレースに夢中になれるのは、やはりご家族の存在が大きいのではないでしょうか。今後、できるなら、奥様やお嬢さんにもお話をうかがってみたいですね)

世界一周は「確かめること」

※白石さんは、世界一周を果たしたあとに、何を学びましたか?と、よく聞かれるそうです。そんなとき、白石さんはこう答えるそうです。

「確かめたんですと、これでいいんだと。世界一周は確かめることなんです、学ぶことではないんですね。だから人生はよく学びだっていう人がいるんだけど、僕はちょっと違った考え方で、学びは知らないことを知ることじゃない? 僕は自分は何者であるか、確かめるのが人生ですよ! って言っているんですよ。

 (それぞれ)すべてを持っていて、すべてがあるんだよね。それを確かめることで、学ぶことではないんですよ。自分以外にはなれないってことを覚えといて、自分らしくないと苦しいんです」

●人と比べてしまったりとか・・・。

「そう、そうすると孤独を感じるんです。だから海の上でも(僕が)孤独を感じないのは合っているんだよね。合っているんですよ、それでいいんですよ」

●やっぱり夢の力っていうのも大きいですよね?

「大きい大きい。だから苦しいことをやっているわけではないんです。苦しいことをやった先に何があるかっていうと、もっと苦しむんだよ。みんな勘違いしちゃダメよ。苦しさの先に楽があるんじゃないんだよ。楽しさの先に楽があるんだよ。

 だから間違って苦しんでいる人はすごく多くて、苦しいでしょ。何を言っているかって、それ違いますよってサインなんだよ、苦しいってことは。違っているのに、さらに頑張って苦しくなっちゃうんだよね」

●白石さんは厳しいレース中も、心身ともに楽しいってことですか? 

「そうそう、要するに(ひとりで世界一周は)大変ですよ。たったひとりで眠る時間もないし寒いしね。でもやりがいがあるんだよね。で(自分に)合っているから乗り越えられるんで、これは人に頼まれたわけではないんですよ」

●やりたいと思っているからってことですよね。

「人に頼まれたら、まず乗り越えられないです、苦しくて。たったひとりで海が楽しいと思う人と、孤独って思う人がいるんだよね。これ解釈なの。たったひとりでも人によって違ってくるんだよ。ここがポイントなんだよね。あんまり無理しないで自分らしくあるってことかな」

●26歳で初めて世界一周を果たした白石さんは、今でもヨットや海に対する思いはまったく変わらないですか?

「変わらないですね。まだ幼稚園を卒園してないですよ。何も変わらないですね。おもちゃの大きさだけです、変わったのは。おもちゃがどんどん大きくなっただけで、それだけですね」

●では、最後に来年も世界一過酷なヨットレースと言われる「ヴァンデ・グローブ」に出場する白石さんにとって、最高のレースとはどんなレースでしょうか?

「前回は、結構トラブルが多かったので、なんていうかな・・・気持ちよく走りたいね。気持ちよく走るのが最高のレースじゃないかな。みんな楽しく、思いっきり「ヴァンデ・グローブ」を楽しみたいなと思いますね。次は何が待っているんだろうね。

 僕がトラブれば、トラブルほど、まわりが喜ぶんだ、またこれが! 喜ばせたくないね! つまんないって言わせたいの! 僕の夢はまわりに”白石さん、つまんなくなりましたね!”って言わせたいね(笑)」

●またお話を聞かせてください。期待しています!

(編集部注:今後、白石さんは予選会のようなレースに出場しながら、ヨットを調整、来年11月10日スタート予定の「ヴァンデ・グローブ」に備えることになっています。今後の動向に目が離せません)


INFORMATION

 白石さんが所属する「DMG MORIセーリング・チーム」ではセーリング・アカデミーを開設、外洋セーリング界で活躍できる人材発掘と育成を目的に若手の登竜門といわれている大西洋横断レース「ミニトランザット2027」への出場・完走を目指す研修生を募集しています。

 募集人員は4名、応募の締め切りは4月30日。年齢、性別は問わないとのことですので、ヨットレースにチャレンジしたいというかた、ぜひご応募ください。

◎「DMG MORIセーリング・チーム」HP:
https://en.dmgmori.com/company/dmg-mori-sailing-team-jp

 白石さんの最新情報含め、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎白石康次郎オフィシャルサイト:
https://kojiro.jp

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