毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。

生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
幅広く取り上げご紹介しています。

~2020年3月放送分までのサイトはこちら

Every Sun. 20:00~20:54

自宅に「湿地帯ビオトープ」を作ろう!〜生物多様性につながる水辺づくり

2023/6/11 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、水生生物の研究者「中島淳(なかじま・じゅん)」さんです。

 中島さんは1977年、静岡県生まれ、東京育ち。幼少の頃から、生き物全般が好きで、特に淡水に棲む魚と昆虫に興味を持っていたそうです。

 その後、九州大学に進学し、大学院を経て、現在は、福岡県保健環境研究所の専門研究員でいらっしゃいます。専門は淡水魚と水生昆虫の、生態学と分類学。これまでに新種としてドジョウ類12種、そして水生昆虫4種に名前をつけたそうですよ。

 研究の傍ら、生き物の観察会や講演会の講師としても活動。また、ネット上では「オイカワ丸」という名前でも活動されていて、淡水魚が好きな人には、お馴染みのかたかも知れません。

 きょうはそんな中島さんが先頃出された本『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』をもとにいろいろお話をうかがっていきます。

☆写真協力:中島 淳

中島淳さん

湿地帯と生物多様性

※まずは「ビオトープ」とはなにか、改めてご説明しておきましょう。
 ビオトープはドイツ語なんですが、もともとはギリシャ語で「命のある場所」、つまり「生き物が生息している場所」のこと。森や川、海岸など、生き物が生息している場所はすべてビオトープになります。そういう意味では地球そのものも、巨大なビオトープと言えますね。

 中島さん曰く、湿地帯ビオトープには4つの大事なキーワードがあるそうです。その4つとは、湿地帯、生物多様性、外来種、そしてエコトーン。

 それではひとつずつ詳しくうかがっていきましょう。まずは湿地帯なんですが、水辺全般を湿地帯と呼んでもいいのでしょうか。

「そうですね。大きな意味では、海は除くんですけれども、だいたい水深6メートルより浅い沿岸域、だから潮の満ち引きの影響があるところ、そこから陸域にかけてですね。河川とか、ため池とか湖とか田んぼ、あと地下水、こういったものは湿地帯と定義されます」

●やっぱり、かなり重要な場所なんですよね?

「はい、そもそも人間は水、淡水を飲まないと生きられません。その淡水の主要な供給源がこの湿地帯になるわけです。また湿地帯で生きている生き物は、例えばアサリとかでもそうですけれども、食べ物として非常に重要ですね。本当に大事なビオトープ、生息場のひとつというのが湿地帯だと私は思っています」

●湿地帯ビオトープを作ると、それは生物多様性を守ることにつながっていくんですか?

「そうですね。森にも砂浜にもビオトープはあるんですね。それぞれ特有の生き物が暮らしているので、どこの環境も非常に貴重なんですけれども、特に日本では湿地帯、身近な水辺の環境がかなり破壊されています。

 そういうところに暮らす生き物の多くが絶滅したり、絶滅危惧種になってしまっているということで、そういった湿地帯を想定したビオトープ、生物の生息場所を増やしていくというのは、生物多様性に大きく(貢献し)、特に日本で広くつながると考えています」

●生物多様性が失われてしまうと、私たちの生活に具体的にはどんな影響が出てきてしまうんでしょうか?

「いちばんわかりやすいのは、握り寿司ですね。お寿司とか好きかなと思いますけれども、種類がいろいろあるのが、お寿司の楽しみのひとつだと思うんです。これがまさに生物多様性の恵みそのものですね。生物多様性が失われると、寿司ネタが一品ずつ減っていくというようなことになります」

『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』

外来種とエコトーン

※大事なキーワードの続き、外来種とエコトーンについて。湿地帯ビオトープを作るときに、もっとも注意しなければいけないのは、外来種を育ててしまうことなんですか?

「育てることが問題ということではないですね。どちらかというと、育てた外来種が野外に出て行って、それがそこに、もともといた生き物とか生態系に悪影響を与える、これが問題だということですね。

 外来種というのは、人が持ち込んだものという定義ですけれども、その定義で言えば、稲とかカボチャとか、野菜の多くは外来種ですね。それが問題だというわけではないということですね。それがコントロール不能になって野外に出て行って、生物多様性を破壊してしまうことがあるわけですね。そういうことにならないようにすることが重要だということです」

●エコトーンという言葉を、私は初めて知ったんですけれども、詳しく教えていただけますか。

「エコトーンは端的に言えば、異なるふたつの環境です。それが少しずつ変化しながら接する場所という意味で、水辺に関して言えば、陸と池・・・その陸と水の間、陸から徐々に水の中に入っていくような・・・一見、陸だと思って踏み込んだら、ズブズブと足が沈んでしまうような、そういった場所がエコトーンということになります」

●ちょうど狭間のようなものっていうことですね。エコトーンこそ湿地帯ビオトープの要と言えるんですか?

「そうですね。ビオトープという言葉は古くからある言葉ですけれども、あえてタイトルに“湿地帯”を付けたのも、そういった概念として、連続的に変化するような環境を含めて、ビオトープ化して楽しむことができないかなと思って付けたものです。
 そういう意味で湿地帯というのは、エコトーンを含むような意味合いとして、湿地帯ビオドープという一連の言葉は、これは造語だと思いますけれども、それで今回、本の名前として付けたものになります」

●エコトーンで暮らしている生き物って、どんな生き物がいるんですか?

「身近でよく知られているもので言えば、ドジョウという魚ですね。あるいはサンショウウオとかトノサマガエルみたいな両生類ですね。こういったものはエコトーンを重要な生息場にしている、田んぼとかでよく見られるような生き物ですね。

 こういったものは、完全に干上がらない川とかは好きじゃないんですけれども、陸もダメで、陸と水の間のときどき干上がったりはするけれども、割と常に水があるような環境、そういった場所じゃないとうまく繁殖できなかったり、生きられなかったりするような生き物になりますね」

写真協力:中島 淳

湿地帯ビオトープの作り方

※中島さんの本によると、実際に自宅に湿地帯ビオトープを作るには、水と陸、そしてその境であるエコトーンを作ることがポイント。用意するのは、水を貯めておくための防水シート、プラスチックのコンテナ、そして小型の睡蓮鉢など。小型のコンテナや睡蓮鉢は手軽なのでマンションのベランダでも活用できるそうです。容器に入れる土は、ホームセンターなどで売っている赤玉土など。

 湿地帯ビオトープの作り方について、詳しくは中島さんの本をご覧いただきたいのですが、小さなビオトープだったら、数時間で作れるそうですよ。

写真協力:中島 淳

 さあ、生き物たちが暮らせる場所が整ったところで、育てる水生生物や植物はどうすれば、いいのか、中島さんにお聞きしました。

「植物についても本の中でいくつか詳しいことを書きました。外来種の話を本の中でも解説しているんですけれども、ビオトープから外来種が出ていって、野外に行ってしまうという構造の場合は、やっぱり変な外来種の植物は入れないほうがいいわけですよね。

 ただそうじゃなくて(外に)出にくいような構造であれば、ある程度自由に、売られているものを入れてもいいかなと思いますが、真に生物の保全につなげるためには、できれば住んでいる家の、まずはビオトープを置く場所の、周囲の川から取ってきたものを中心に入れるのが、いちばんいいかなと思います。

 それから動物、魚なんかは、メダカであれば、買ってきて入れるということも、やむを得ない場合もあるかなと思いますが、そんな場合もメダカが逃げ出さないように、逃げ出すとそれが外来種になってしまいますので、そういった点には注意する必要があります。

 あとは水生の昆虫類なんかは、実はゲンゴロウとかトンボとか、いろんな種類が日夜、我々の頭上を飛び回っているんですね。なので、いい水辺があれば、棲みつくようになります。 いろんな昆虫が突然現れたりするので、それを楽しむというのがいちばんいいかなと思います」

写真協力:中島 淳

●本には何も入れない湿地帯ビオトープっていう説明もありましたけれども、何も入れなくても、いずれは生き物たちが暮らすビオトープになるっていうことなんですか?

「はい、実は水草というか水生植物の中でも、タネが空を飛んでいるような種類は結構多いんですね。タネがうまく発芽するようなエコトーン、これがあれば、実は何らかの植物は、意外と生えてくるものですね。場を作って粘り強く待つという楽しみ方もひとつあります」

●場所だけ作っておいて、何も入れなくても、生き物たちってやってくるものなんですね。

「そうですね。周辺の環境にもよりますけれども、粘れば何かしらくるのは、日本の場合は間違いないだろうと思います」

(編集部注:先ほど、近くの川から植物や生き物などを持ってくるというお話がありましたが、なんでも持ってきていいという話ではありません。中島さんによれば、魚などは各都道府県が定める規則に従わなくてはいけないとのこと。また、植物や土、石は河川法という法律によって、個人が自由に採取することは禁じられているそうです。

 とはいえ、採取する量が極めて少ない、または常識の範囲内であれば、問題にはならないそうですが、個人での判断が難しいときは行政の担当部署に問い合わせてくださいとのことです。詳しくは中島さんの本に載っていますので、ご確認いただけければと思います)

人間は自然を再生できる

写真協力:中島 淳

※中島さんのご自宅の庭には、10年ほど前に作った湿地帯ビオトープがあります。現在はメインのビオトープのほかに、埋めるタイプのコンテナ・ビオトープが5つ、睡蓮鉢ビオトープが2つ、それらを管理しているとのことです。

 勝手に飛んできたトンボ類やアメンボなどの水生昆虫がどんどん増えているそうですよ。どんな湿地帯ビオトープなのか、これも本に載っているので、ぜひご覧ください。

 お休みの日にご自宅の湿地帯ビオトープにいると、どんなことを感じますか?

「植えた植物もあるんですが、勝手に(池に)やってきた昆虫はやっぱり嬉しいですよね。場を作ってその生き物に選んでもらえたというところですね。この池がなければ、その虫はここで増えることはなかったわけですから、そういう意味では生物の保全にもつながる新しい場作りができたし、そういったのを呆然と眺めているのは楽しいですね」

写真協力:中島 淳

●首都圏でおすすめのビオトープってありますか?

「生息場として、いい湿地帯はたくさんあるんですけども、本でも紹介しましたが、エコトーンに注目するのであれば、やはり東京の井の頭池ですね。あそこはかなり意識的にエコトーンを再生するということをしています。

 エコトーンというものをこの本でちょっと読んで、どんなものかなと脳内にイメージを置いて、改めて井の頭池だけ見てみると、あ〜こういうことをしているのかというのがよくわかってきます。

 実際あそこは生き物も多いので、私も何度も行きましたが、そういう知識があると解像度が上がると言いますか、あ~なるほどというので全く見え方が違ってきて、面白いんじゃないかなと思いますね。町の真ん中にありますので、そういう中でもこういった場を作ると、これだけ生き物が棲めるようになるんだということがよくわかって、東京都周辺では井の頭池はおすすめポイントですね」

●では最後に、この本『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』 を通して、いちばん伝えたいことを教えてください。

「伝えたいことはたくさんあるんですけれども、そうですね・・・場を作ることですね。人間は自然を再生することができるっていうことに気付いてほしいなというところがあります。

 家にエコトーンを含む湿地帯を作ってみて、それを維持したり管理したり開発したりする、そういった経験を持った上で、今度は野外の池とか川とかを見て、その実態を見る、解像度というか見る目、それが上がっていく、そういった経験を楽しんでもらえるといいなと思います」

(編集部注:お話にあったおすすめの井の頭池は、都立井の頭恩賜公園の中にあります)


INFORMATION

『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』

『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』

 自宅の庭やベランダに湿地帯ビオトープを作るためのノウハウが、写真やイラストとともにわかりやすく解説。また、湿地帯ビオトープの生き物図鑑ほか、入れてはいけない外来種も写真入りで掲載されています。大和書房から絶賛発売中です。
 詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎大和書房HP:https://www.daiwashobo.co.jp/book/b618603.html

 中島さんのオフィシャルサイトもぜひ見てくださいね。

◎中島淳さんHP:http://kuromushiya.com/koushiki/top.html

<全国砂浜ムーブメント2023>

 以前番組でもご紹介しましたが、日本自然保護協会のキャンペーン「全国砂浜ムーブメント」が今年も始まりました。海や砂浜のことを楽しく学べる特製の「砂浜ノート」や専用のアプリを使って砂浜を守る3つのアクションにぜひご参加ください。砂浜にいる生き物調査や、ゴミ拾い活動を多くの人たちと共有します。
 詳しくは「日本自然保護協会」のホームページをご覧ください。

◎日本自然保護協会HP:https://www.nacsj.or.jp

<オンライン講座「身の回りのマイクロプラスチックと、私たちにできること」>

 現在、マイクロプラスチックがどのような問題を引き起こしているのか、環境ジャーナリストの「栗岡理子(くりおか・りこ)」さんが解説します。開催日時は6月29日(木)午後7時から8時10分まで。Zoomを使用、参加費は無料、定員は先着300名です。
 詳しくは「日本野鳥の会」のホームページのお知らせをチェックしてください。

◎日本野鳥の会HP:https://www.wbsj.org

<#リユースでラブアース>

 国際環境NGOグリーンピース・ジャパンのリユースを広めるSNS投稿キャンペーン。マイタンブラーやマイ容器の写真を、ハッシュタグ「#リユースでラブアース」をつけ、メッセージを添えて、インスタグラムに投稿してください。期間は6月30日まで。集まった画像はメッセージとともにカフェや企業に届けることになっています。
 詳しくはグリーンピース・ジャパンのホームページをご覧ください。

◎グリーンピース・ジャパンHP:https://www.greenpeace.org/japan/

前の記事
次の記事
サイトTOPへ戻る
WHAT’s NEW
  • 番組のシンボル、風間深志さんが登場!「生きている限り、青春だ!」

     今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、記念すべき第1回目の出演者、冒険ライダー、そして地球元気村の大村長「風間深志」さんです。  風間さんは1950年生まれ、山梨市出身。1……

    2024/4/7
  • オンエア・ソング 4月7日(日)

    オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」 M1. 地球は元気 / 地球元気村の仲間たちM2. PEACEFUL EASY FEEL……

    2024/4/7
  • 今後の放送予定

    4月14日 ゲスト:自転車の旅人、モデルの「山下晃和(やました・あきかず)」さん  東南アジアや中南米の“いきあたりばったり”自転車旅のお話ほか、自転車とキャンプを楽しむイベントについて……

    2024/4/7
  • イベント&ゲスト最新情報

    <風間深志さん情報> 2024年4月7日放送  山梨市の地球元気村ファーム「天空のはたけ」では5月中旬にサツマイモの植え付けが予定されています。また、地球元気村が運営している山梨県山中湖……

    2024/4/7