2023/8/20 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」の広報担当「大西亜未(おおにし・あみ)」さんです。
SDGs「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)=持続可能な開発目標」の中から「つくる責任 つかう責任」、そして「海の豊かさを守ろう」ということで、NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」の活動をご紹介します。
2020年12月に発足した「クリーン オーシャン アンサンブル」は海洋ごみゼロの世界を目指し、香川県小豆島で、おもに海洋ごみ回収装置の開発を行なっています。
なぜ小豆島だったのか、回収装置とはどんなものなのか、広報担当、大西亜未さんにいろいろお話をうかがっていきます。
☆写真協力:NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」
海洋ごみをなんとかしたい!
●「クリーン オーシャン アンサンブル」というネーミングには、どんな思いが込められているんでしょうか。
「クリーンはきれいな、オーシャンは海を、なんですけど、アンサンブル っていうのがフランス語で、『より多くの人と一緒に』っていう意味が込められています。代表の江川は英語とフランス語も喋れるので、英語とフランス語を掛け合わせた名前にしたと聞いています」
●代表理事の江川裕基(えがわ・ゆうき)さんは、以前はJICAの海外協力隊として活動されていたということですけれども、やはり海外での活動経験が「クリーン オーシャン アンサンブル」の原動力になっているんでしょうか?
「そうですね。代表の江川はアフリカのブルキナファソっていう国で、廃棄物を処理する仕事をしていたんですね。そこで、ごみをよく見ていたんですけど、本当にごみが道路に積み上がっているような状況をすごく目にしていたそうです。
もともとバックパッカーとして、いろんな国をまわっていて、“あれ? 世界ってごみだらけだな〜、ちょっと壊れてきているな”って思ったみたいで、これは早急に何とかしなきゃいけないと思って、それが原動力になって発足した団体です」
●大西さんは去年から「クリーン オーシャン アンサンブル」で活動されているそうですが、参加する前は何をされていたんですか?
「小豆島にADDress(アドレス)っていう多拠点生活サービスがあるんですけど、そこの旅人さんを受け入れるお仕事をしていて、小豆島の拠点の管理人をしていました。
小豆島に来てくれる人って、そもそも島の環境に興味がある人がすごく多くて、海洋ごみの話とかでも盛り上がるような方々で、そういう人をおつなぎするような感じで、『クリーン オーシャン アンサンブル』ともおつなぎしたりとか、そういうことを以前からしていたって感じですね」
●出身は小豆島なんですか?
「 私は横浜出身です」
●横浜からどうしてまた小豆島へ・・・?
「その時付き合っている、今も付き合っているパートナーがいるんですけど、一緒に移住先を探しておりまして、多拠点生活サービスADDressを利用して、小豆島に来たことがきっかけで移住を決めました」
●いろんな選択肢がある中で、どうして小豆島だったんですか?
「横浜の海がちょっと濁っている感じの海で、あまり海が好きじゃなかったんですね、正直。だけど、小豆島に来た時に臭いがしないっていうのと、こんなにも穏やかな海があることにすごく感動して、初めて海が好きだなって思ったんですね。
この海のそばに住みたいと思って、小豆島に移住を決めました。歩いて30秒で海なんですね。疲れた時は海を眺めたりとか、(海に)ちゃぽっと足をつけて入ったりとかして、ストレスの発散ができて、幸せな毎日を過ごせています」
●江川さんから何か影響を受けたことはありますか?
「(環境に)興味があるADDressの会員さんとおつなぎした時に、一緒にビーチクリーンをやったんですけど、そのビーチクリーンの内容が分別の徹底だったりとか、こんな行政の事情があってとか、最終処分場の事情があってとか・・・今までビーチクリーンやごみ拾いに参加させてもらったことが、ほかの県でもあったんですけど、ここまでガチな感じのビーチクリーンって初めてだったんですね。
しかも小豆島は観光地なんですけど、移住するきっかけがやっぱり観光がすごく素敵だったからとか、友達がもともと移住していたとか、そういうかたが多い中で、代表の江川だけが海洋ごみを何とかしたいから移住したっていう、そんな理由で移住する人いる!? みたいな、その本気度に影響を受けて、参加したいなって思いましたね」
地元の漁師さんとタッグを組む
※代表の江川裕基さんがおもな活動エリアを香川県小豆島にしたのは、何か理由があったんですか?
「香川県にまず江川は着目しました。なぜかというと、香川県は香川県方式っていうものを作っています。漁師さんがお魚を獲る時にごみが網の中に入ってしまうので、漁師さんたちは自腹で(ごみを)処理していたんですが、香川だけは自治体が無償で処理するようになったんです。そういう画期的なシステムを構築したということで、まずは香川県にしようっていうことになったらしいんですね。
小豆島っていう島は瀬戸内海にあって、ほかの県に囲まれた島なので、日本のごみだけが漂ってくることとか、波がすごく穏やかで、回収装置を作るにあたって壊れるリスクがすごく少ない、そんなことを掛け合わせて、小豆島がいいということになったと聞いています」
●「クリーン オーシャン アンサンブル」では海洋ごみの回収装置を作っていらっしゃいますよね。サイトに掲載されている写真を見ると、漁網のようにも見えるんですけれども、どんな装置なのか説明していただけますか。
「漁師さんが使う網をUの字に広げて(全長が)30メートル、下に垂れている部分が2〜3メートルになっています」
●網を沈めておくと、勝手にごみが入ってくる感じなんですか?
「そうですね。浮きで浮かせている部分と、重りで沈んでいる部分があって、その網はずっと固定されているんですね。その固定されている網に向かって潮が流れてくるので、波の影響を受けて、ごみが自動的にキャッチできるようになっています」
●その回収装置を仕掛けるには、やはり地元の漁師さんの協力も必要になってきますよね?
「そうですね。小豆島を拠点にするっていう時に、江川が片っ端から漁業組合さんに電話をかけたらしいんですけど、やっぱりお断りされたりしたそうです。唯一、小豆島に森組合長さんという方がいるんですけど、その人だけ全面的に協力したいって言ってくれて、ここだったらやりやすいなと思ったそうです。海を使わせていただくということは漁師さんの協力が必須になってくるので、森組合長とタッグを組むということで、小豆島にしたって言ってましたね」
香川大学と連携
●海洋ごみを回収すると言っても、海流とか波とか風とか、いろんな影響を受けて、そう簡単には回収できないようにも思うんですけれども、いかがですか、その辺りは?
「そうですね。ほんとうに波乱万丈な実験というか繰り返しだったんですけど、海洋ごみを回収する際に、どうやったら効率的に回収ができるかっていうことで、やっぱり潮の流れがキー・ポイントになってくるんですね。
なので、香川大学さんと連携させてもらって、今回はそんなに捕れませんでしたとか、今回はすごく捕れましたっていうデータをすべて提出して分析してもらました。その中でごみが流れやすい時期があることがわかったので、その時期に合わせて設置するところから始めていきましたね」
●その時期とはいつ頃なんですか?
「小豆島は夏と冬で、ごみが溜まるエリアが変わってくるのがわかったので、今回私たちが活動しているところは、夏のほうが集まるので、夏に設置するようにしました」
●トライアンドエラーを繰り返しながら改良していったという感じだったんですね。
「そうですね。やっぱり1号機から4号機まで、結構大変だったですけど、ほんとうにビニールのかけら3つとか、そんなレベルでしか捕れなかったんで、すごく大変でしたね」
●今ではどれぐらいの量のごみを回収できるんですか?
「4号機目で初めて1.5キロ回収ができたんですよ! もうみんなで歓喜しました」
海岸に「豆管」がコロコロ!?
※そもそもなんですけど、海洋ごみの回収装置を作ることにしたのは、どうしてなんですか?
「海洋ごみは海に漂っている間と、打ち上げられたごみを比べると、打ち上げられたごみはかなり風化してしまい、紫外線とかでボロボロに細かくなりやすいんですよね。それこそそれが(海に)戻って魚が食べちゃうとか、あとは細かくなりすぎて、風で雑木林まで飛んでいっちゃうとか・・・。そうすると人間が取りに行けなくなっちゃうんですよね、奥にまで行ってしまうと。なので、その前の段階、海の中に漂っている段階で回収したほうが、やっぱり効率がいいんじゃないかっていうことで回収装置を作ることになりました」
●ビーチクリーンの活動も行なっていらっしゃるんですよね?
「そうですね。毎月一般向けにイベントをやらせていただいています」
●どんな海洋ごみが目立ちますか?
「タバコとかペットボトルとか、そういうのはやっぱり当たり前にすごく多いんですけど、瀬戸内海には『豆菅(まめかん)』っていうのがあるんですけど、豆管ってご存知ですか?」
●なんでしょう?
「豆管っていう、お菓子のポテコみたいな、指にはめられるリングのようなもののプラスチックバージョンでありまして、その豆管が牡蠣の養殖でよく使われるんですね。それがコロコロと転がっているのがすごく目立ちますね」
●集めた海洋ごみをご覧になって、どんなことを感じますか?
「はい、やっぱり豆管とか細かいものはもちろんなんですけど、こないだ拾ったペットボトルが結構レトロなパッケージでして、いつのペットボトルか調べたら、なんと40年前のごみだったんですよ。40年前のごみが今漂っているってことは、40年間分のごみは絶対にあると・・・。海の中をずっと漂っているってことは、もっと前のもあるかもしれないし、ずっと蓄積しているんだなと思って、もっと問題視しなきゃいけないなって思いましたね」
(編集部注:先ほどお話に出てきた「豆管」、プラスチック製のパイプを、1.5センチくらいに切って、牡蠣を養殖する際に使うとのこと。嵐などで海が荒れると、たくさんの豆管が海岸に打ち上げられるそうです)
海洋ごみゼロに向けて
※「クリーン オーシャン アンサンブル」では、学校や企業に向けて、環境教育の活動も行なっているそうですが、環境教育はやはり大事なことですか?
「そうですね。最近知ったんですけど、歴史の勉強の時に旧石器時代とか、縄文時代って言うじゃないですか。今の時代って『大プラスチック時代』らしいんですよ。そんなレベルというか、多分きっと教科書に載るべきもの、そういう時代になってきているっていうことで、やっぱり自分たちのためでもあるし、将来の子供のためにも今のこの問題を勉強してもらって、意識を持ってもらうのはすごく大事なことなんじゃないかなと・・・。やっぱりひとりひとりの意識が変えられるような環境教育は大事なんじゃないかなって思っています」
●大西さんのお話を聞いて「クリーンオーシャンアンサンブル」の活動を応援したいと思った方は、どのようにしたらよろしいでしょうか?
「私、SNSの広報部長をやっておりまして、なので今instagramにすごく力を入れているんです。instagramをぜひぜひフォローしてもらいたいですね。それで『クリーン オーシャン アンサンブル』の活動をシェアしてもらいたいなって思っています」
●では今後の目標を教えてください。
「はい、海洋ごみの回収装置を1号機から4号機まで作ってきたんですけど、流木とか自然物もすごく多く回収されたりもしました。今度の5号機目は(自然物ではない)海洋ごみを優先的に拾えるように改良して頑張っていくことを目標にしています」
●「クリーン オーシャン アンサンブル」が掲げているビジョン、海洋ごみゼロの世界が実現したら、私たちの暮らしはどうなっているんでしょうね?
「今なかなか想像がつかないんですけど、やっぱり物だらけの現代っていうことで、プラスチックのものだらけのところから、必要なものを繰り返し使う暮らしだったりとか、減ってしまったお魚が戻って、美味しいお魚が食べられて、世界中にきれいな海が取り戻せる、そんな素敵な暮らしに戻るんじゃないかなって思っています」
☆この他の「SDGs〜私たちの未来」シリーズもご覧ください。
INFORMATION
海洋ごみの回収装置がどんなものなのか、ぜひ「クリーン オーシャン アンサンブル」のオフィシャルサイトを見てください。動画や写真が載っていますよ。
そして活動をサポートしてくださるかたや、寄付も募っています。活動内容も含めて、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「クリーン オーシャン アンサンブル」:https://cleanoceanensemble.com