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今年後半の天文現象、おすすめは「中秋の名月」「ダイヤモンド富士」「ふたご座流星群」!

2023/9/17 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、平塚市博物館の天文担当学芸員「塚田 健(つかだ・けん)」さんです。

 幼少の頃から星や宇宙に興味を持っていた塚田さんは、東京学芸大学大学院の修士論文も天文学で書くほどの天文好き。専門は太陽系小天体と太陽系外惑星など。現在は学芸員のほか、東京学芸大学の非常勤講師や、月刊『天文ガイド』に寄稿する天文ライターとしても活躍、天文や宇宙に関する本も出していらっしゃいます。

 そんな塚田さんが先頃出された本『天文現象のきほん』は、初心者でもわかりやすい内容で、日常的に起きている日の出・日の入りや、月の満ち欠けを身近な天文現象と捉え、解説してあるのも特徴なんです。

 きょうは、今年後半の注目の天文現象から、おもに「ダイヤモンド富士」や「中秋の名月」そして「ふたご座流星群」のポイントや見所などうかがいます。

☆写真協力:平塚市博物館/塚田 健

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

ダイヤモンド富士、10月23日、午後4時47分!

※太陽の現象でいうと「ダイヤモンド富士」が知られています。改めてどんな現象なのか、教えてください。

「ダイヤモンド富士というのは、富士山の頂上に太陽が沈んでいく、もしくは頂上から太陽が昇ってくるように見える、そういう現象です。富士山は頂上が平らじゃありません。火山なので凸凹している、その隙間から太陽の光が出てくる、それがすごく美しいのでダイヤモンド富士と呼ばれていますね」

●ベイエフエムのある海浜幕張からは、数日にわたって観察できるそうですね?

「ある一箇所からだと、だいたい年に2回見られることが多くて、おそらくベイエフエムさんのビルだと10月23日だと思います」

●次回のダイヤモンド富士が、そんなにすぐ見られるんですね!

「そうですね」

●ダイヤモンド富士を海浜幕張から見ようと思ったら、何時くらいから注目していればよろしいですか?

「これは計算できまして、太陽の中心が富士山の頂上に接するのが、およそ午後4時47分なんですね。その時は、富士山の上に半分ぐらい太陽が出ている状態になります。その2〜3分ぐらい前、午後4時45分ぐらいから見始めて、完全に隠れるのが48分過ぎっていう感じになりますので、午後4時45分から5分間ぐらい見ればいいのかなと思います」

●観察するときの注目ポイントはありますか?

「まずしっかりと時刻を把握しておかないと気がついたら、もう沈んでいるなんてことがあると悲しいですので・・・もちろん、30分〜40分前から待っていてもいいんですけれども、その瞬間を見逃さないためには時刻をしっかりと把握しておいてほしいかなと思うのと、やっぱり自分なりのビュースポットをあらかじめ探しておく、前の日の昼間とかでもいいので、探しておくっていうのがいいですね」

●どういう場所がいいんです?

「そうですね・・・やはり富士山が裾野まできれいに見えるところがいいのかなと思います。千葉県だと館山のほうで東京湾越しの富士山が見られます。海と富士山ってすごく綺麗なんですけれども、そういう自分が好きな風景と一緒に富士山が見える場所を探せるといいんじゃないかなと思いますね」

塚田 健さん

満月と富士山の共演! パール富士

※富士山の山頂から満月が昇ったり、沈んだりする「パール富士」という現象があることを塚田さんの本で知りました。この現象についても教えてください。

「月は白っぽく見えると思うんですけども、パール富士、パールって真珠ですよね。なので満月、ちょっとぐらい欠けてもいいんですけど、満月が富士山の頂上に沈んでいく、もしくは昇ってくる現象をパール富士と言います。これはダイヤモンド富士と違って結構珍しいですね」

●ダイヤモンド富士は1年に2回とおっしゃっていましたけれども、このパール富士はどれぐらいの頻度で見られるんですか?

「必ず年に何回とかそういう決まりが残念ながらないので、下手をすると年に1回も見えないこともありますし、運がよければ、年に2〜3回っていうこともあり得ます。月が富士山のほうに沈む時に、ちょうど満月になっていないといけないので・・・。

 そもそも満月は年に12回しかないですから、太陽はいつでも丸いまま毎日沈んでいきますけど、月はそうはいかないので、そういった意味ではパール富士は、場所を問わなくても、年に12〜13回しかチャンスがないんですよね」

●塚田さんの本に千葉の館山市で撮影されたパール富士の写真が載っていましたけれども、すごく神秘的ですね。

「そうなんです。太陽もすごくキラッとして眩しいくらいで綺麗なんですけれども、満月はすごく静かな感じがして、特に関東地方で見られるパール富士は必ず明け方ですから、月が沈む時に西の富士山に見えますので、周りも静かなんですよね、夕方と違って・・・。なので、そういった静かな、静のイベントっていう感じがします」

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

9月29日は「中秋の名月」

※満月といえば、今年(2023)は9月29日(金)が「中秋の名月」となっています。今年の見所はどんなところですか?

「まず中秋の名月は、必ずしも満月とはならないんですけれども、今年は満月なので、丸い月がきれいに見えると思いますし、9月の下旬ということで比較的空がいい感じに晴れるかなと思うんですよね。9月下旬から10月の中旬ぐらいが、空は非常に安定しますので、晴れれば、綺麗な月が見られると思います」

●「中秋の名月」は満月じゃない時もあるんですね。

「あるんですね。中秋の名月は十五夜とも言います。これは昔の、いわゆる旧暦で15日目ってことになるんですけれども、月が地球の周りを回っている軌道、道筋が円じゃなくて楕円なので、地球に近い時は早く回って、遠ざかると遅く回っていきます。

 同じ速さで回っているわけではないので、どこで満月になるかで早い時は、ちょっと日付が早まりますし、もうちょっとずれることも、遅くなることもあって、13日から17日ぐらいまで 結構幅があるんですね」

●満月の中でも、この時期の満月を「名月」と呼ぶのはどうしてなんですか?

「まず、高さがちょうどいいんだと思います。太陽もそうですけれども、季節によって満月の高さって変わるんですね。冬の満月はすごく高いんです。空高くて、空高いと地球の空気の影響をあまり受けないので、月が真っ白く、凍てつくようなと言いますか、すごく刺さるような明るさを持つんですよね。

 それはそれで神秘的だと思うんですけれども、ちょっときついかなというか、そういうイメージがあるのと、夏は逆に満月はすごく低いんですよ。そうするとなんか霞んで色もちょっと赤っぽくなってしまいますし、ぼやけた感じになってしまいますね。

 で、高さ的には春と秋がいいんですけれども、春は春で花粉であったり黄砂であったり、空がかすんでしまいがちで、朧月夜(おぼろづきよ)って言いますよね。そうなってしまうので、定期的にもよく晴れて、月がきれいに見えるのが秋なのかなと思います」

●だから名月なんですね。満月の模様は日本では、ウサギがお餅をついているように見えると言われていますけれども、それは海外でも言われているんですか?

「海外だと別の動物ですね」

●ウサギじゃないんですか?

「ウサギじゃないんです。カニだったりカエルだったり、あとは本を読んでいる人とかですね。ひとつ変わった例が、ウサギにしてもカニにしてもカエルにしても、土の中に見える黒っぽいところをその形に見るんですけど、ヨーロッパの一部では逆に白っぽいほうを女の人の横顔と言うとか、本当に文化によって様々です」

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

12月のふたご座流星群、好条件!

※今年(2023)10月以降の天文現象でおすすめはありますか?

「まず、なんといっても、 12月のふたご座流星群かなと思います」

●見どころはどんなところでしょう?

「まず、流れ星がたくさん流れるんですけれども、今年は月の条件がいいですね。流れ星がたくさん流れる時間帯に、月が残っていると明るくて、どうしても暗い流れ星が見えなくなっちゃうんですけれども、今年はその心配がないですね。

 あと、ふたご座流星群が全体的にそうなんですけれども、夜更かしをしなくても見られるんですね。ペルセウス座流星群って8月によく見える流星群であるんですけれども、ペルセウス座流星群は午前2時とか3時じゃないとたくさん流れてくれないんです。ふたご座流星群は夜の8時、9時でもまあまあ見えるので見やすいかなと・・・まあ寒いっていうのはあるんですけどね」

●1時間にどれぐらい出現しそうですか?

「空が暗いところであれば、50個60個は見えます」

●いいですね! 今年のふたご座流星群は観察しやすそうですね。

「そうですね。今年はおすすめです」

●同じ流れ星でも、光ながらも燃え尽きずに再び宇宙へ飛び出していく流れ星があると、塚田さんの本で知ったんですけれども、改めてそれはどんな流れ星なんでしょうか?

「流れ星は、そもそもの話をすると、小さな砂粒が地球に落ちてきて、地球の空気とぶつかって熱くなって光るんですね。地球は丸いですから、すれすれに(砂粒が)来ると、水切りと同じ要領で一回、地球の空気に入るんですけれども、そのまますっ〜と落ちずに飛んでいくっていうのがあるんです。地球の空気に入っている間だけ光ってそのまま去っていくので、見ていると入ってきて、また上がっていくっていうような不思議な感じがするんですね」

●それは実際に見ることはできるんですか?

「見ることはできるんですけれども、いつどこでっていうのは全く予想がつかないので、もう運次第です!  『アースグレイジング』と言って、流星群の時に見えることもあれば、そうではなく普段の日に何の前触れもなく見られることもあるんです」

●ものすごくレアなんですね!

「そうですね。なかなか機会はないですね」

(編集部注:お話にあった「アースグレージング流星」、「アース」は地球、「グレージング」には、かする、という意味があるそうです。塚田さんの本には2022年5月に観測された「アースグレージング流星」の写真が載っていますよ。ぜひご覧ください)

『天文現象のきほん』

星の色の違いは表面温度!?

※これから秋も深まり、冬になると空気が澄んできて、星空観察にはいい時期なりますよね。「冬の大三角形」や「冬のダイヤモンド」、そして「オリオン座」などが見頃だと思いますが、星空を見ていると、白だけじゃなくて、青い星だったり、赤く見える星もありますよね。星の色が違うのは、どうしてなんですか?

「星の色は、その星の表面の温度で変わるんです。イメージとちょっと反対かもしれませんけれども、青っぽい星のほうが温度が高く、赤い星のほうが温度が低くて、太陽はどちらかというとその真ん中へんの、遠くから見ると黄色っぽく見える星なんですけれども、大体6000度くらいですね。

 青白い星、冬の星で言いますと、オリオン座の『リゲル』っていう星がだいたい10000度とか20000度とかそれぐらいありますね。一方で3つ星を挟んでオリオン座の反対側にある 『ベテルギウス』っていう明るい赤い星があるんですけど、こちらは3000度くらいです。温度で色が決まっているんですね」

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

(編集部注:今年、秋から冬にかけての天文現象として、土星の輪っか「リング」のお話もありました。塚田さんによると、土星のリングは、地球から見ると毎年傾きが変わるので、来年以降は見えなくなるそうです。
 次に見えるのは2027年だそうで、土星のリングを見たいかたは今年がチャンスだとおっしゃっていましたよ。望遠鏡を持っているかた、ぜひ観察してみてください)

見あげてごらん、星空を

※塚田さんは、小惑星探査機「はやぶさ2」の記事も書かれたことがあるそうですが、いま注目している宇宙開発や宇宙探査はなんですか?

「打ち上げが来年度で、詳しい日付は決まってないんですけれども、『MMX』っていう探査機を日本が打ち上げることになっています。MMXのMは『Mars(マーズ)』、つまり火星なんですね。

 火星の衛星、火星の周りを回っているお月様に行って、『はやぶさ』の時のようにそこの砂を採ってきて、地球に帰ってくるっていうミッションなんですね。まだ火星の衛星から砂を持って帰ってくるっていうのは、どの国もやったことがないことなので、新しいチャレンジになりますので、ぜひ成功してほしいなと思いますね」

●塚田さんのお話を聞いて、星や宇宙に興味を抱いたかたに何をいちばんお伝えしたいですか?

「星や宇宙っていうと遠いというか、自分たちのいる世界とは、かけ離れた世界と思ってしまいがちなんですけれども・・・でも地球は宇宙の中にありますし、当然私たちは太陽の光を浴びて昼は暮らしていますし、夜には月や星が見えます。

 宇宙は、実はそんなに遠いものではなくて、距離は確かに遠いかもしれないですけれども、身近なものですし、何より私たち生き物は宇宙から生まれてきた、宇宙の星とかそういったものから生まれてきたので、本当に無関係どころか密接な関係があるんです。

 なかなかそれを見て感じるっていうのは難しいんですけれども、晴れれば誰でも見られるんですよね、星って。もちろん街中では明るい星しか見えないってこともありますけれども・・・でも誰にでも、頭の上に等しく星空は広がっているので、ぜひ日頃から空を見上げてほしいなと思います」

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

INFORMATION

『天文現象のきほん』

『天文現象のきほん』

 塚田さんの新しい本をぜひ読んでください。副題は「今夜はどの星をみる? 空を見上げたくなる天文ショーと観察方法の話」。天文と星空に関する説明が、太陽、月、惑星、太陽系の小天体ほか、全部で6つのチャプターに分かれ、62の項目がそれぞれ見開き2ページで完結、チェックポイントと楽しみ方が写真や図でわかりやすく解説されています。特に初心者におすすめですよ。
 誠文堂新光社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎誠文堂新光社:https://www.seibundo-shinkosha.net/book/astronomy/81383/

写真協力:平塚市博物館/塚田 健

 塚田さんが解説されているプラネタリウムの投影プログラムについては、平塚市博物館のサイトをご覧ください。

◎平塚市博物館:https://hirahaku.jp/

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