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地球沸騰!? 2024年の夏も暑いのか!?〜地球規模の大気の循環を紐解く

2024/1/7 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サイエンスライターで気象予報士、そして、東京大学大学院の特任教授でもいらっしゃる「保坂直紀(ほさか・なおき)」さんです。

 保坂さんは、東京大学大学院で海洋物理学を専攻。その後、読売新聞社に入社し、長年、科学報道に携わります。そして1994年、気象予報士の第1回目の試験に合格。これまでに海洋や大気、地球温暖化などに関する本を数多く出版、そして先頃『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』という本を出されています。

 きょうは、そんな保坂さんに、去年と今年の気候についてうかがうほか、地球規模の大気の循環や、偏西風についてもお話しいただきます。

保坂直紀さん

春と秋がなくなる!?

※保坂さんは先頃『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』という本を出されています。そのお話をうかがう前に2024年最初の放送ということで、やはり気になっているのが地球温暖化の影響とされる異常気象が、今年も多く発生するのかどうかなんですけれども、まずは去年の状況を振り返っておきたいと思います。

「去年はとにかく暑い夏でしたよね」

●でしたよね〜。

「いつまでも、いつまでも暑くて、ちょっと昔は、夜の気温が25度以下に下がらない熱帯夜が何日続いたなんていうのが、10年ぐらい前でしょうか、ニュースになったけど、今は当たり前になっちゃっているので、もうニュースにすらならなかったですよね。暑い夏でした」

●本当に暑かったです。2022年11月から2023年10月までの12カ月が観測史上最も暑かったという分析結果を、アメリカの研究機関が発表したんですよね?

「そうですね。アメリカの研究機関もそうですし、あと世界気象機関というところなども、使っている元データが違うので、数字は少し違うんですけれども、いずれも一昨年から去年にかけて、その辺りは過去最高の気温だったということですね。日本の気温も去年の夏の気温、6、7、8月の気温は非常に高かったっていうのを気象庁が発表していますよね」

●夏も暑かったですけれど、先月12月も20度前後まで気温が上がったりっていう日もありましたよね。それはやっぱり地球温暖化の影響なんですか?

「ありましたよね〜。我々、地球温暖化の影響でしょうか? って聞きたくなりますよね。ですがこの問いに科学者が答えられるようになったのは、比較的最近のことで、ここ10年ぐらいのことなんですよね。 それまではそうかもしれないし、そうでもないかもしれませんって曖昧な答えしかできなかったんです。
 この本には書いたんですけれども、『イベント・アトリビューション』という新しい手法を使って、きちんと研究されているのは、例えば日本だと2018年の夏も暑かったんですよ。

 その2018年の夏は、もしも地球温暖化がなければ、あんなに暑い夏はまず来なかった、確率ゼロだったはずである。でも地球温暖化していると、あのくらいの夏は発生確率が20%・・・20%っていうのは5分の1ぐらいの確率で、ああいう夏が来ることもあるんですね。
 去年の暑い夏についてはまだはっきりしませんけれども、そもそもが5回に1回くらいは、5年おきというわけではないですけれども、5回に1回ぐらいの確率で、あのぐらい暑い夏が来る可能性があるということがわかってきています」

●もうそういう現状になっているっていうことなんですね。

「そうですね」

●気象予報士として、保坂さんが2023年の気象を振り返って、最も気になることってどんなことですか?

「やっぱり今お話しましたけれども、暑かった夏ですよね。 昔は暑い夏もあれば、冷夏もあるというふうに、たまたまなのかなと思ったけれども、今お話ししたように2018年の夏は暑かったですし、また去年もものすごく暑かったですよね。
 こういうふうに立て続けに来ると、やっぱり地球の気候のシステムが変わってきているんじゃないか・・・昔は地球温暖化っていうと、みなさん気温が高いことだけを考えていたかもしれないけれども、最近日本でも豪雨による災害は、毎年のように日本のどこかで起きていて、やっぱりこれは変だぞ! っていうことを、だんだん強く印象づけられてきたような、去年はそういう1年だったなって思います」

●そうですよね。日本は春夏秋冬、四季があって季節の移ろいを感じていましたけど、去年は秋がなかった感じがします。

「そうですね。一瞬で通り過ぎましたよね。去年の夏はしばらく9月になっても、私たちの住んでいる関東の辺りは暑くて、暑い暑いと思ったら、本当に1週間くらいの間にストンと気温が下がったような印象がありますよね。 地球温暖化が進むと夏の気温も上がるし、それから冬の気温も少し上がっていくだろうと、平均的にはそういうふうに言われています」

●今後益々、春と秋が短くなっていくこともあり得ますか?

「そうですね。去年の夏みたいに暑い夏があって、冬は少し暖かくなるんだけど、これは平均の話で、冬の寒さは上空を流れているジェット気流だとか、その流れ方にもよるので、それによっては相変わらず、ものすごく寒くて大雪が降る冬もあるわけですよね。そういうところで、今度は一気に気温の高い夏にいくと、春は一瞬のうちに過ぎて、夏がやってきて、秋も一瞬のうちに過ぎて、冬になるということは、大いに可能性としてはあるんじゃないかと思います」

保坂直紀さん

豪雨も増える可能性!?

※2024年の予測について、わかる範囲で構わないのですが、今年前半はどうなんでしょう?

「これは本当に気象って難しいんですよね。この先を予測するっていうのがね・・・。ちょっとした条件の変化が、その後に影響してくるという難しさがあるので、これはわからないんですけれども・・・。地球温暖化が進んできているということは確かなので、そうすると豪雨だとか、それから極端な暑さ、季節外れの暑さみたいなのが増えてくるっていう予測はあるんですね。やっぱりその方向で、今年の春あるいは夏がやってくるんじゃないかなと思いますけど・・・」

●今年の夏も異常に暑かったりっていう可能性はありますか?

「可能性はあります。今の地球温暖化の状況だと5分の1の確率で、ああいう夏がやってくるかもしれないですけど、あれほど暑いのはちょっとしんどいので、残り5分の4のほうをお願いしたいという感じはしますよね」

●『線状降水帯』という気象用語をよく聞くようになりましたけれども、今年2024年は発生する確率っていうのも増えそうですか?

「線状降水帯が(一般的に)使われるようになったのは、ごく最近の話で、実はまだ線状降水帯とは何かっていう定義もきちんと決まっていないんですよね。非常に激しい雨が降る地域が帯のように細長く、雨がしばらくの間降り続くものを線状降水帯って言うんですね。
 ですから、今一生懸命、気象庁なんかでも、どういう時に線状降水帯が発生するのかを研究していますが、まだはっきりしてないんですね。

 ただ注意しなきゃいけないのは、そもそも水蒸気の量が増えているので、ああいう豪雨は基本的に起きやすい状況にあるということ。それからもうひとつ注意しなきゃいけないのは、大雨が降って災害がもたらされるのは、線状降水帯だけではないということですね。

 今申し上げたように、帯のように細長い地域に雨が降り続くのを線状降水帯というので、例えば丸っぽい形のスポット上に豪雨が降り続くものは、線状降水帯とは言わないんですが、これも大きな災害を、土砂災害なんかを引き起こすので、そういうところにも注意しなきゃいけないということですね。そもそも大雨が降りやすい状況になっているということです」

(編集部注:保坂さんによると、気温が1度上がると、大気中の水蒸気の量が7%増える。つまり、大気中に雨のもとになる水蒸気がたくさん含まれるので、それがなにかのきっかけで雨になると、これまで以上に大量の雨が降ることになるそうです)

地球は「風の惑星」

※ここからは、保坂さんが先頃出された本『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』からお話をうかがっていきたいと思います。この本は、副題にもあるように「大気の大循環」という視点で気象を解説されています。この「大気の大循環」に目をつけたのは、どうしてなんですか?

「大循環っていうのは、地球を取り巻いている空気、大気は風として、規模の小さいものもあれば、大きいのもある、とにかく動いているわけです。その中で、例えば地球は、赤道の近くは暑くて、南極・北極は寒いですよね。なぜなんだろうと考えた時に、大規模な風の流れによって、そういうような地球上の気候が生まれてくるんですよ。

 ですから、私たちに馴染みのある熱帯とか温帯とか、こういうような地球上の気候がどうして生まれてくるんだろうって考えた時に、地球を取り巻いて流れるような大規模な風、それをここでは大循環と言いますけれども、その大循環について説明してみようかなと思って書いたのがこの本です」

●前書きに地球は『風の惑星』であると書かれていました。風が吹くのは、やっぱりこの大気の大循環に関係しているんですよね?

「そうですね。いろいろな理由があって風っていうのは・・・私たち普通、風っていう時には身近な、規模の小さいものを指すことが多いですよね。大循環のようなものも大気の流れですから、風と言えば風なんですけれども、その風とイメージを区別するつもりで大循環っていう言い方をしているんですね。

 それにしても地球の上に空気がある限り、小さな規模のものも大きな規模のものも流れる、そういう風が我々の生活に深く関係しているという意味でも、よく地球って『水の惑星』って言われますけれども、もうひとつ『風の惑星』でもあるんだよっていう気が私はします」

保坂直紀さん

偏西風は、大気の循環そのもの

※初歩的な質問なんですが、なぜ大気は流れるのでしょうか?

「これはですね・・・もうひとつ地球上には流れるものがあって、海も『海流』は流れますよね。大気と海の共通点は流れる物体、空気が流れる、水が流れる・・・で、どんなものでもそうですけれども、何かが動く時は何かの力が加わっているんですよね。力が加わって、その大気なり、水の場合は流れて、いろんなところで形を、姿を変えながら流れていくというものですよね。だから何らかの力が加わっているから、大気も流れるわけです」

●何らかの力っていうのは・・・?

「これはざっくり言うと、太陽から来る熱なんですよね。いちばん最初の地球の大気を動かす、おおもとになるものは太陽からの熱です。 例えば、やかんの中に水を入れて、そのままほっとくと水は動かないんですけれども、キャンプに行って焚火を炊いて、上にやかんを乗せるとその中の水が動くんですよね。
 下から熱せられて軽くなった水が上に行って、上の水が下のほうに回ってきて・・・こういう熱の伝わり方を対流って言いますけれども、これが現実に、地球でも熱帯のような熱いところでは、これと同じことが起きています」

●天気予報でもよく耳にする『偏西風』がありますけれども、これも大気の循環によるものですよね?

「よるものというか、その大気の循環そのものですよね。今申し上げたように熱帯の辺りでは、そのやかんの中でお湯が沸くような対流が、そういう熱の動き方をするんですけれども、私たちが住んでいる中緯度では、今度は地球の周りをぐるりと、例えば北緯40度なら北緯40度のところを、地球を一周するように西から東に向けて風が吹いていて、これを私たちは普通、偏西風と言うんですね。

 ですから、熱帯の辺りではそういう対流のような動き方をして、それで中緯度では偏西風のような帯状に地球を一周するような流れになる、そういう特徴があって、それぞれのところで大気の動きって・・・なんて言うんでしょうね・・・別々のパーツでできているみたいな印象でしょうかね」

●ジェット気流も偏西風ですか?

「そうです。この偏西風は西から東に吹く風という意味ですけれども、その中で特に流れの強い部分をジェット気流と言いますね」

※天気予報でも「偏西風が蛇行したことが原因で〜」という解説を聞くことがあります。どうして蛇行するのでしょうか? 

「それは本格的に説明するとなると結構難しくなります。ただ偏西風は、なぜああいうふうに地球をぐるりと一周して吹くかっていうと、詳しく細かい話はしませんけれども、ちょうど赤道側は暖かい空気、私たちが暮らす北半球で言えば、北極のほうは冷たい空気、その境目を流れているから西から東に一周するような流れになるんです。

 で、その時に蛇行するわけなんですけれども、蛇行するのは結論から言うと、地球は自転していて、それから球ですよね、球状ですよね。この両方の条件が重なると蛇行が生まれることはわかっているわけで、それがどうしてですかっていうのはちょっと難しいと思います」

●蛇行すると、どうなるんですか?

「偏西風は、南側の暖かい空気と、北側の冷たい空気との境目を流れているので、例えば日本の辺りで、冬に南のほうに蛇行したとしますよね。そうすると北側が日本に近づいてくるわけです、冷たい空気が・・・。
 そういう状態がそのまますぐに移動してくれればいいんだけれども、南への蛇行が日本の辺りで居座ったりすると、北側の冷たい空気が日本に近づいてきたのと同じことになるので、非常に冷たい寒い冬が続いたりすることになるわけです。
 だから気温に対しては、どこでどのくらい蛇行するのかが非常に大きな影響を与えるわけです」

式よりも言葉で伝える

※保坂さんの新しい本から、大気の循環と偏西風に絞ってお話をうかがいましたが、最後にこの本で伝えたいことをお聞かせください。

「この本はとても気象が好きなかたで、どうしても理屈を知りたいというかたに向けて書いた本なんですよね。だから、このレベルの本だと式を使って説明するのが普通なんですけれども、これは式は使わずに、全部言葉で説明してあるんですよね。
 日本の教育を考えると、私の周りの大人でも物理は大っ嫌い! いつも点が悪くて! っていう人がいるんだけれども、そういう人たちに話を聞くと結構物理的なものの考え方が得意な人っていっぱいいるんですよね。

 ですから、ちょっと計算間違いしたから、×(ばつ)になってひどい点を取っちゃったみたいな、そういうのは日本特有で、アメリカやヨーロッパの物理の教科書は、言葉でなぜそうなのかっていうのを説明してあるものが多いんです。

 ですから、私もそれに倣って、科学は細かいことは専門家に任せておけばいいので、我々としては要するにどういうことなのかを知れば、結構物理は面白いなって再認識してほしいなという思いも、この本の中には込めています」


INFORMATION

『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』

『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』

 この本では「大気の大循環」を構成する偏西風、貿易風、ブロッキング高気圧ほか、大循環に大きな影響を与えている、地球の自転によって起こる力などを解説。気象学の基礎を学べます。特に気象に興味のあるかたにおすすめです。
 講談社のブルーバックス・シリーズの一冊として絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎講談社 :https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000371643

◎東京大学大学院 保坂直紀:
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/people/k0001_02740.html

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