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Every Sun. 20:00~20:54

カナダ北部の小さな町チャーチルで、シロクマを追う〜海が凍るのを待つシロクマたちの未来は・・・

2024/2/18 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、自然写真家の「丹葉暁弥(たんば・あきや)」さんです。

 丹葉さんは北海道・釧路市出身。1998年にカナダ北部で野生のシロクマに遭遇、
それ以来、シロクマの撮影のために、毎年のようにカナダに通うようになったそうです。これまでに、大好きなシロクマの写真集を6冊発表、中でもシロクマが犬を抱っこしている写真が話題になりました。

 そして今月2月27日の「*国際ホッキョクグマの日」に新しい写真集『SOON〜氷の橋を目指すシロクマ』を発表されます。

 きょうはそんな丹葉さんをお迎えし、撮影のために4年ぶりに訪れたカナダ北部のシロクマの実態や、極寒の中でも生きていけるシロクマの秘密に迫ります。

そしてきょうは丹葉さんの最新の写真集のプレゼントもありますよ。応募方法はこちらから!

(*編集部注:ホッキョクグマが置かれている現状を広く伝えるために、カナダを本拠地とする国際的なホッキョクグマの保護団体POLAR BEARS INTERNATION-ALが制定)

☆写真協力:丹葉暁弥

写真協力:丹葉暁弥

いちばん最初に凍る場所

※丹葉さんの撮影のメイン・フィールドは、カナダ北部のどのあたりなんですか?

「私がシロクマたちに会いに行っているのが、カナダにあるマニトバ州、ちょうどカナダの真ん中にある州なんですけれども、そこの上のほうですね。北極圏までは入らないんですが、かなり北極に近いところにあるチャーチルという小さい町があるんですね。そこがメインの取材場所になっております」

●そこにシロクマたちがたくさん生息しているっていうことですか?

「そうなんですよ。地球上にシロクマは2万5000頭ぐらいいるって言われているんですけれども、そのうち、カナダに生息しているシロクマの数がとても多いんですね。中でもチャーチルの周辺には、だいたい2500頭前後が生息すると言われているんですね」

●どうしてその場所に集まるんでしょうか?

「シロクマの生態についても、ちょっと話すことになるんですけれども、シロクマは、海が凍ると凍った海の上でアザラシが子供を産む、そのアザラシを主食として猟に出かけるんですね。私が通っているマニトバ州のチャーチル周辺は、アメリカ大陸の上のほうにあるハドソン湾という大きな海、その海の南西部になるんですけれども、いちばん最初にその海が凍り始めるところと言われているんですね。

 シロクマたちはお腹が空いているので、早く食べに行きたいということで、いちばん最初に凍るところ、つまりアザラシたちが最初に出てくるようなところにたくさん集まるようになったと言われています」

●集まりやすい時期はあるんですか?

「10月の終わりぐらい、10月の最終の週から11月の1週目から2週目と言われています」

●その時期を目掛けて、いつも丹葉さんはチャーチルに行って撮影されているっていうことですか?

「はい、そうなります。その時期になると海が凍り始めるんですね。海が凍ってしまうとシロクマたちは海の彼方に、氷の上に乗ってずっと旅に出てしまうので、出会うことができないんですね。その海が凍る ギリギリのシーズン、それを狙っていくと、たくさんのシロクマたちに会えるわけです」

シロクマが集まる町

写真協力:丹葉暁弥

※シロクマたちが集まるエリアにあるカナダ北部のチャーチルは、どんな町なんですか?

「これがとてもとても小さい町で、カナダの内陸から道がつながっていないんですね。なので、そこに行くには飛行機で行くか、もしくはカナダを走っている鉄道で行かなくてはいけないんです。一応、カナダの鉄道のいちばん最北端の駅がチャーチルという町になるわけです」

●観光名所とかではなく、自然豊かな場所という感じになっているんでしょうか?

「ところが、この場所は日本では最近、結構有名にはなってきているんです。欧米のみなさんは、30年以上前からこの場所にシロクマたちが集まってくるのを知っていまして、一般のかたがたが野生のシロクマを見に行くツアーというのがあるんですね。

 もともとは人間よりも先にシロクマたちが棲んでいたというのが、もちろんあるんですけど、そのチャーチルの町はシロクマたちが、海が凍ると向かっていくと言われる北極、北の方角に町があるんですね。ですから、シロクマたちの通り道ということがあって、シロクマたちがたまに町の中を歩くことがあるんですね」

●人間との軋轢みたいなものはないんですか?

「確かにあります。シロクマたちは約半年間、絶食をしていて、お腹がペコペコなんですね。実は人間たちのお家ですとか、ゴミとかの食べ物の匂いを嗅いで、何か食べ物があると思って町の中に入ってくると・・・。で、そこに人間がいたら、最悪の場合は襲われてしまうということも起こっているんですね」

小さな町チャーチルの変化

※コロナ禍もあって、去年11月に4年ぶりにチャーチルに行かれたそうですね。久しぶりに行って、どうでしたか?

「基本的には人口1000人ぐらいの小さい小さい町なので、大きな変わり方はしないんですけれども、やはりコロナ禍が終わって行ってみると、観光に関してちょっと変化というのが見受けられました」

●例えば、どんな変化があったんですか?

「最近、日本でもいろんなところで耳にすると思うんですが、オーバーツーリズムってありますよね。これがカナダ北方の小さな小さな町にも現れていました。要はシロクマたちに会いに来る、シロクマたちの写真を撮りに来る人たちがとても増えてまして、そのために、そういうカメラマンたちを連れていくツアーみたいな車がたくさん走っているのに驚きました」

●そうなんですね~。地球温暖化の影響を日本でも感じることが多くなってきましたけれども、シロクマを取り巻く環境はいかがですか? 現地で何か変化を感じたりしましたか?

「はい、これは毎年行くたびに感じることなんですけれども、まず最初にはっきり言えることがシロクマの数が、私が最初に言った25年前に比べると確実に少なくなっているということですね。

 私はだいたい現地で車を借りて、シロクマたちを撮影しているんですけれども、昔はそんなに苦労して探すことなく、毎日シロクマたちに会うことができていたんですね。最近は探さないと見つからない、探しても出てきてくれないということが非常に多くなってきました。
 昨年も、それと同じようにシロクマたちがたくさん出てくるというのが、非常に少なくなっているなって感じました」

(編集部注:動物園や水族館で会えるシロクマは、子供は真っ白で愛くるしくて、大人のシロクマはプールに飛び込んだりと、活発に動いているイメージがあります。丹葉さんいわく、野生のシロクマもいろんな表情を見せてくれるそうですよ。

 シロクマの和名は「ホッキョクグマ」、英語名は「ポーラーベア」。体の大きさは、オスで2メートルから2メートル50センチくらい、体重は400キロから500キロくらいで、メスはオスよりも、ひとまわりほど小さいサイズ感です。

 繁殖期は3月から6月くらいまでで、その年の11月から翌年1月頃にかけて1頭から4頭の子供を生むとされているそうですが、丹葉さんが目撃するのは平均的に2頭だそうです。

 子育てはメスだけで行ない、2年から2年半くらいは子供と一緒に行動するとのこと。そんなメスと子供たちの天敵は、なんと、ほかのオスのシロクマだそうですよ。これも自然界の摂理なのかも知れませんね)

写真協力:丹葉暁弥

シロクマの毛の秘密

※シロクマはマイナス何十度にもなる気候の中で生きていますが、体になにか秘密があるのでしょうか?

「寒さ対策ということがいちばんだと思うんですね。シロクマたちはいちばん寒い時には、マイナス60度以下のところでも旅をしなくてはいけないわけなんですね。そのためには、やはり我々人間と同じ哺乳類ですから、どうにもならないところがあります。それを体の構造によって補っているんですね。そのひとつが“毛”にあるわけです。

 シロクマの毛が白だと、みなさん思われていると思うんですけれども、実はよ~く顕微鏡とかで1本1本を観察すると、毛の色は透明なんですね。透明の上にその細~い毛の中に空洞がありまして、そこに1本1本空気が閉じ込められているんですね。それによって空気が太陽の光によって温められて、保温効果があるということになるんですね。

 あとは、毛が二重構造になっています。皮膚に近いところは、だいたい5センチぐらいの長さの細かいふわふわした、ふさふさした短い毛がびっしりと生えているんです。それの上を15センチぐらいのちょっと硬い長い毛が覆っているので、我々人間が防寒下着を着て、ダウンコートを身にまとっているような、そういう構造になっているんですね」

写真協力:丹葉暁弥

●シロクマは、そうやって寒さ対策を体でやっているからいいですけど、丹葉さんはどんな格好でいつも撮影されているんですか?

「これはですね(笑)、基本的には車の中から写すようにはしています。というのが、まずは自分の身を守ることから始めています。これには理由があるんです。もし人間を傷つけてしまったシロクマがいた場合、人間を傷つけたということで、保護局とかのシロクマを捕獲する施設に入れられてしまったり、そういうことが起こってしまい、最悪な場合は殺されてしまうこともあるんですね 。

 自分はシロクマが好きで、野生のシロクマたちに会いに行っているので、シロクマたちが傷つけられる原因が、自分にあったりしたら、本当に本末転倒になってしまいます。ですから、まず自分の体を守るということで、車の中から写すんですね。
 ただし、窓を全部開けてエンジンを切って、外気温と同じ環境で、長い時には3時間4時間ぐらい動かないで、じーっとシロクマたちを見ています。外気温がマイナス20度とか30度になることもあるので、とても寒いですね。

 なので、防寒下着は必要最低限でございまして、その上にフリースですとか着込んだ上に極地用のダウンジャケットを着て、モコモコになって写しています」

最新の写真集『SOON』に込めた思い

※2月27日が「国際ホッキョクグマの日」ということで、それに合わせて、写真集を出されるそうですね。なんというタイトルなんですか?

「今回の写真集のタイトルは『SOON』というタイトルですね。日本語で言うと『もうすぐ』ですとか、そういうイメージがあるとは思うんですね。サブタイトルには『きっともうすぐ氷の橋があるから大丈夫』というような意味もちょっと込めています」

●どんな思いを込めて、このタイトルにされたんですか?

「やはり我々人間もこれから自然環境ですとか地球環境の悪化によって、住みづらい世の中になっていくと考えているんですね。白クマたちもだんだん地球環境の悪化によって絶滅に瀕し、危機が訪れているわけなんですね。それをシロクマと人間たちを重ね合わせて、希望を捨てないで、のんびりなんとかやっていこうというような思いを込めています」

写真協力:丹葉暁弥

●では最後に長年、野生のシロクマを撮影されてきて、今どんな思いがありますか。

「毎年毎年、地球環境が非常に悪くなってきている中で、自分も非常にショックを受けているんです。シロクマを守るために動物を守るために地球を守るために、何をしたらいいですか? という質問をよく受けることがあります。それで無理なことを最初にやってもしょうがないと思うので、まずは自分ができることからは始めればいいかなと思っているんですね。

 そのひとつが、たとえばトイレに行くときにテレビをバチッと消すとか、隣の部屋に行くときに電気を消すとか、それが一瞬でも5秒でも10秒でもやればプラスになるわけですね。やらなければ、ゼロのままじゃないですか。ですから、そうやって自分のできることからやっていくことによって、野生のシロクマたちがなるべく長生きして、これからも地球で我々と一緒に過ごせるようになればいいなと思っています」

☆この他の丹葉暁弥さんのトークもご覧ください


INFORMATION

『SOON〜氷の橋を目指すシロクマ』

『SOON〜氷の橋を目指すシロクマ』

 丹葉さんの最新の写真集をぜひチェックしてください。今回の写真集には未発表作や、昨年カナダで撮ってきた新作も掲載されているそうです。発売は2月27日、トゥーヴァージンズから。詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎トゥーヴァージンズ :https://www.twovirgins.jp/book/soon/

 写真集の発売を記念して、写真展が開催されます。会場は東京タワーギャラリー、会期は2月23日から3月25日まで。ぜひお出かけください。詳しくは、丹葉さんのSNSをご覧ください。

◎Instagram:http://www.instagram.com/akiya.tamba
◎X(旧Twitter):http://twitter.com/AkiyaTamba
◎Facebook:http://www.facebook.com/akiya.tamba
◎Facebookpage:https://www.facebook.com/photographer.tamba

 2月27日の「国際ホッキョクグマの日」を記念して、よこはま動物園ズーラシアでは現在「知ろうくまフェスタ!」が開催されています。シロクマが置かれている環境や、私たちができることを紹介したパネル展示ほか、2月24日と25日には、餌を与えながらの特別ガイドや、ワークショップが行なわれます。

 ほかにも丹葉暁弥さんと、飼育員のかたによる「知ろうくまトーク」も予定されていますが、このトークイベントは定員いっぱいだそうです。詳しくは、よこはま動物園ズーラシアのオフィシャルサイトをご覧ください。

◎よこはま動物園ズーラシア:https://www.hama-midorinokyokai.or.jp/zoo/zoorasia/

<プレゼントの応募方法>

丹葉さんの最新の写真集『SOON』を抽選で2名のかたにプレゼントいたします。
応募はメールでお願いします。
件名に「プレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。

  メールアドレスはflint@bayfm.co.jp
flintのスペルは「エフ・エル・アイ・エヌ・ティー」
flint@bayfm.co.jp です。

あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。
番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。

応募の締め切りは2月23日(金)
当選発表は発送をもって代えさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。

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