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ブラックホールとは!? 宇宙人はいる!? 暗黒物質はありがたい!? 〜宇宙は謎だらけ! だから面白い!

2024/5/19 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ブラックホール研究の第一人者、「国立天文台 水沢VLBI観測所」の所長「本間希樹(ほんま・まれき)」さんです。

 本間さんは1971年、アメリカ・テキサス州生まれ、神奈川県育ち。東京大学大学院から国立天文台の研究員などを経て、2015年より、現職。そして国際的なプロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」の日本チームの代表としても活躍されています。

 そして、そのEHTプロジェクトの大きな成果として2019年4月に世界で初めて、ブラックホールの画像を公開し、大変話題になりました。その時も取材が殺到する中、お電話でこの番組にご出演いただき、お話をうかがっています

 きょうは、そんな本間さんが出された新しい本『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑〜宇宙のふしぎ、おもしろすぎて眠れない!』をもとにブラックホールや天の川の謎、そして果たして宇宙人はいるのかなど、宇宙や天文の、不思議や疑問をわかりやすく解説していただきます。

☆写真協力:講談社

本間希樹さん

宇宙でいちばん変な天体!?

※本間さんに、宇宙や天体の不思議や謎をうかがう前に本間さんが所長を務める「国立天文台 水沢VLBI観測所」について、少し説明しておきましょう。

 岩手県奥州市にある、この観測所は120年以上前に設立され、その後、国立天文台の一施設となったそうです。観測所の名前にある「VLBI」とは、電波望遠鏡を使って、特殊な観測をする方法や技術を表わす専門用語。宇宙から来る電波を、岩手のほか、鹿児島や小笠原の父島、沖縄の石垣島などにもある観測所の電波望遠鏡がとらえ、総合的に分析するそうです。

 本間さんいわく、複数の観測所を組み合わせることで「視力」があがり、遠くの小さな天体が見えるようになるそうです。このVLBIはもちろん、ブラックホールの研究にも使われています。

 それではまず、本間さんのご専門ブラックホールとは、いったいどんな天体なのか、改めて教えていただけますか。

「ブラックホールは本当に謎めいた天体です。宇宙でいちばん変な天体だと言って間違いないんじゃないかと思うんですけど、とにかく重力が強いんですね。重力が強いからこそ、なんでもかんでも吸い込んでしまって、二度と吐き出すことがない。光が入っても出てこないし、物が入っても二度と出てこない。何も出てこないってことは真っ暗になるっていうことですよね。ブラックホールは英語で”黒い穴”という意味ですけど、まさに真っ黒な球体のような、なかなか難しい天体で、本当に宇宙でいちばん変な天体です」

●どんなものでも飲み込んでしまうんですね?

「どんなものでも吸い込んでしまいますね。で、入ったものは絶対出てこない。ほんとに不思議な天体ですね」

●画像として公開されたブラックホールはどこにあって、どれくらいの大きさだったんですか?

「いちばん最初に撮ったブラックホールは天体でいうとM87っていう、銀河の真ん中にあったブラックホールなんですね。M87をいちばんわかりやすくいうと、ウルトラマンの故郷だって言えば、たぶんいちばん馴染みがあるんじゃないかと思うんですけど、太陽みたいな星が1兆個ぐらい集まったような、とんでもなく大きな天体なんですね。その真ん中に巨大なブラックホールがひとつあって、それを世界中が協力したVLBIで 、むちゃくちゃ視力を上げてみたらブラックホールが見えた! それが2019年の発表ですね」

●どういう感じだったんですか?

「ドーナツみたいな写真を見ていただいたと思うんですけど、穴が開いている状態ですよね。真ん中は真っ暗になっているんですけど、その真ん中の黒い部分、ドーナツの穴の部分がブラックホールの影なんです。だから、なんでもかんでも吸い込んでしまう。天体だからそれ自身の写真を撮ることは、実は不可能なんですね。でも周りに光とか電波が漂っているのを背景にして、影として映し出したのがこのドーナツの写真なんです」

(編集部注:2019年4月に、世界で初めて公開したブラックホールの画像は本間さんが日本チームの代表を務める国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ」が成し遂げた、天文学の歴史に残る大きな成果なんです。

 このプロジェクトには世界20カ国以上から、同じ夢を持った300人を超える研究者が集い、世界中の複数の電波望遠鏡を結合させて、地球を巨大な電波望遠鏡にするという、まさに地球規模の活動を行なっています)

写真協力:講談社

ブラックホールを画像から動画へ

※現在、この「イベント・ホライズン・テレスコープ」では、どんなことに挑んでいるのでしょうか?

「ブラックホールは今まで写真が2枚撮られているんですね。M87と、もうひとつは私たちの天の川の、巨大ブラックホール『射手座Aスター』って呼ばれている天体なんですけど、そのふたつが静止画として撮られている状況なんです。
 実は3つ目はないんです。地球と同じ大きさの電波望遠鏡を合成して、今見えそうなブラックホールはその2個しかないので、3つ目をやるっていう方向ではなくて、次は動きを見たいと、そういうことを考えていますね。

 というのは、ブラックホールはなんでもかんでも吸い込む。だからガスがぐるぐる回りながら落ちていく。光もぐるぐる巻きつきながら吸い込まれていく。一方で完全に吸い込みきれなかったものが、一部『ジェット』っていうもので外に飛んでいくんですね。水鉄砲の水がシューって飛ぶような、あんなイメージを持っていただくといいんですけど・・・。

 ということで、動きが非常に激しいはずなんですよ。なので、動きを見たいので、そうすると1枚の写真ではダメで、そのデータを積み重ねて何年もやって、あと解析も工夫すると、今度はガスの動きとかそういうものが見えてくるんじゃないかなっていうふうに期待しています」

●静止画だけでもすごく大変なことだったと思うんですけど、それで今度は動きとなると、またもっともっと大変なことになるんですよね・・・?

「大変ですよね。動画といってもみなさんが期待しているような、本当に綺麗な動画になるのは何年かかるかわからない。最初はコマ撮りで1コマ2コマ3コマって、ちょっと動いたかなっていうのが見えるかぐらいのところが当面目指していることですね」

●うわ~、でも動きで見られたらすごいですね!

「はい、それでちょうど、今年の1月に発表した成果として、2コマ目の写真が撮れたっていう・・・M87を2017年に観測した画像と、2018年に観測した画像、ようやく2枚目があって比べることができて・・・そうするとやっぱり1年でほんの少しだけ明るい場所が動いているんですね。これを見るとやっぱり動画にしたほうがいいよなっていうのが明らかになったので、あとは着実に頑張って続けていきたいなって、そんなふうに思っています」

●いや〜、なんか夢が広がりますね!

「子供の頃、教科書の端っこにパラパラ漫画とか描いたと思うんですけど、ようやく2個目が書き終わった、そんな状態ですね」

重力のない宇宙は、誰もいない宇宙!?

※ここからは、本間さんの新しい本『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑〜宇宙のふしぎ、おもしろすぎて眠れない!』をもとにお話をうかがっていきます。

 138億年前に誕生したとされる宇宙は謎だらけで、そんな宇宙の不思議を、一般のかたにわかりやすく解説してあるのが、本間さんの本です。まずはこんな話題から。

 本に「宇宙でいちばん大事な力は重力」と書いてありました。これはどういうことなんですか?

「重力がないと天体が存在しないんですね。天体はすべて重力で引っ張られて一箇所に固まっていますから、重力がない宇宙はまず銀河ができません。それから銀河の中で星ができません。だから太陽もできない。地球も重力で一箇所にまとまって球体になっているので、重力がなければ地球もできないということで、重力のない宇宙は誰もいない宇宙ですね。本当に何も存在できない世界なので、それはやっぱり困りますよね」

●とっても大事な力なんですね!

「だから重力が・・・普段はどっちかっていうと、たとえば階段を上がって疲れるとか、ああいうのは全部重力のせいで疲れちゃうわけですけど、重力に逆らって上がるので・・・。だから普段は厄介な存在だなって、みなさんは思うかもしれないですけど、重力がないと僕らは存在しないですね」

写真協力:講談社

●そうなんですね。天の川は本当に流れているというふうに、これも本に書かれてありましたけれども、どういうことなんですか?

「天の川、ご覧になったことはあります? 」

●いや〜ないですね〜。

「千葉だとこの辺は明るいから、なかなか見えないかもしれないですね。もっと暗いところに行って、月がない夜に夜空を見上げて、空のある部分が白くなっているんですけど、それは薄っぺらい、回転している銀河の中から見ているものなんです。

 どう言えばいいかな・・・どら焼きと言ったら、ちょっと極端なんですけど(笑)、ああいう平べったいものを想像していただいて、それを横から見ているようなイメージですね。天の川も含めて銀河は回転していますので、ある特定の方向に星が動いているんですね。

 もちろん僕たちの目では、それを見ることはできないんですけど、電波望遠鏡とか、先ほどのVLBIを使うと、たとえばきょうの星の位置と明日の星の位置は違って見えるので、みんなが天の川の向きに沿って、ある方向に動いていくんですね。

 だから、そういう意味でいうと、流れているんですけれど、望遠鏡で見ないとわからないですね。でも昔の人は天の川を、本当に”川”という文字を当ててるぐらいですから、やっぱり流れを想像しながら見ていたと思うんです。人間の想像力ってけっこう当たっているので、すごいなと思いますよね」

●この本には「ダークマター」という言葉もありました。日本語にすると「暗黒物質」ということで、映画『スターウォーズ』の世界だなって感じたんですけど・・・。

「そうですね。暗黒って出てくると、ちょっと悪いやつに見えちゃうんですけど(笑)、英語でいうと『ダークマター』ですけど、これも天文学あるいは宇宙にまつわる最大の謎のひとつですね。

 どういうことかっていうと、これは『見えない質量』。さきほど天の川の話をしましたけど、天の川はまず見上げると星が光って、白く光ったのは星で、その星の重さを全部足し上げたのと、天の川全体の重さを測ったのを比べると、星だけじゃ全然足りないんですね。どこかに見えない奴らがたくさんいるはずだっていうことで、その見えないもののほうが実は見えている星の重さよりずっと重いんです。

 その見えない質量のことを暗黒物質、あるいはダークマターで、もう100年近くあるということはわかっているんですけど、みんなそれがなんだろう? って知りたいと思っているんですが、これはまだ決着がついていないんですね」

●もう謎だらけですね〜。

「謎だらけですね! さきほど悪役みたいにおっしゃったんですけど、実はダークマターはすごくありがたい存在で、もし宇宙にダークマターが存在しなかったとすると、その宇宙にはやっぱり重力が足りないので 、星も銀河もできないですね。だから、なんだかよくわからない。しかも名前からするとちょっと悪役に見える暗黒物質、ダークマターですけど、これは宇宙に天体が誕生して、最終的には人類が誕生した最大の立役者のひとつ、そんなふうに言っていいんじゃないかと思いますね」

宇宙人はいる? いない?

※ズバリ、お聞きします。宇宙人はいると思いますか?

「はい、これもみなさん気になりますよね!」

●気になります!

「これは僕の個人的な見解ですけど、必ずいるでしょうね」

●必ずいる! その理由は?

「宇宙人が存在するっていうことは、もうこの地球で証明されているんです。僕らは宇宙人なんですよ。宇宙人の一種ですね」

●私たちも宇宙人・・・!?

「宇宙人の一種なので・・・だから宇宙では、ある条件が満たされれば・・・地球の場合ですけど、地球のように適度な温度があって、適度な環境があれば生命が誕生し、それが進化して少なくとも地球人レベルの文明を持ったわけですね。これはもう間違いない事実としてあるので、あとはそれが本当に地球だけなんですか? ほかでも起きるんですか? っていう確率の話になるわけですね。

 宇宙にはどれぐらい星があるかって考えると、天の川の話、私たちが住んでいる銀河でも、少なくとも太陽みたいな星が2000億個あると・・・。その周りに惑星もいっぱい見つかっているので、地球にしか生命がいないって考えるのはやっぱり変かなと・・・。しかも天の川の外に出ると今度はその天の川みたいな銀河が無数に、あと数千億とか、見える範囲だけでありますので、そこまで数えたら必ずどっかにいると・・・。

 問題は彼らに会えるかどうかですよね。それは別ですね。UFOに乗ってここに来ているかって言われれば、まあ来てないだろなと・・・(笑)」

写真協力:講談社

●なるほど! 宇宙開発がどんどん進んで地球以外の星に住めるようになったら、本間さんはどの星で暮らしたいですか?

「それもはっきりしていて、やっぱり地球ですね!」

●そうなんですね! どうしてですか?

「もちろん宇宙人が住んでいる星とか、生命がいる星はあると思うんですけど、たぶん地球人にとってはあまり住み心地がよくないんじゃないかと・・・。たとえば暑すぎたり寒すぎたり、あるいは全然違うシステムの生命がいたりして、やっぱり地球は僕らにとって素晴らしい環境であるのは、宇宙をくまなく見渡して探したとしてもこれほど住みやすい、僕らにとって住みやすいふるさとはないと思います」

●そうですね。地球がいちばん!

「(ほかの星でも)ちょっとどういうところか行ってみたり、様子をうかがってみたいなとは思いますけど、やっぱり自分の星がいちばん、それはもう間違いないと思いますね」

宇宙人、大発見!?

※本間さんがいま取り組んでいる研究はなんですか? やはりブラックホールでしょうか?

「そうですね。ブラックホールはもちろん! 一方で質問をいただいた宇宙人、これも科学としてやっぱり真面目にやりたいということで、宇宙人が何らかの理由で電波を出して、たとえば放送でラジオかテレビをやっていれば、電波が出てきますし、あるいはもっと積極的に地球人に気がついて、電波を送ってくれているかもしれないですよね、コンタクトを取ろうとして・・・。

 そういうものをキャッチすることが、宇宙人を見つけるいちばんの近道だというのが今、天文学者の間で言われています。そうすると電波望遠鏡でいろんな星を順番に探していく、そういうことをやる。僕ら観測所でも試験的にですけど、そういう観測を始めていますので、こればっかりはいつ見つかるかは全くわからないんです。宝くじを買うような部分もあるんですが、ぜひ宇宙人がいるかっていうことを研究としてさらに発展させたいなと・・・」

●ぜひ解き明かしていただきたいです!

「見つかったら見つかったで、もちろん大発見だし、見つかんなかったら見つかんなかったで、地球っていうのはやっぱり本当に貴重なんだっていうことがわかるので、たぶんどっちに転んでも地球人にとっては非常に意味のあることだと思いますね」
 
●なるほど・・・。本間さんが好きな星空で、この季節とかあるんですか?

「僕は天の川に関わる研究をずっとしてきたので、やっぱり天の川という天体、星空の一部ですけど、それが好きですね。天の川って非常に大きいので、何座とかそういう星座では言えないんですけど、暗いところに行って、たとえば私は仕事で沖縄の石垣島に行きますけど、そこで見る天の川が本当に素晴らしいです。何度見ても心が洗われるというか、素晴らしいですね。

 みなさんもちょっと暗いところ、街明かりから離れた場所に行くチャンスがあったら、ぜひ天の川を見てほしいですね。夏のほうが見やすいので、これから夏にかけて非常にいいシーズンになりますから」

●天文学を志す学生さんですとか、宇宙に携わる仕事がしたいと思っているかたに、ぜひアドバイスをお願いいたします。

「宇宙に関わる仕事をするときに、宇宙に対する思い、情熱だったり、あるいは愛情って言ったらちょっと変かもしれないですけど、やっぱり宇宙が好きで、その謎を解き明かしたり、あるいは宇宙に関わる何かを自分で開発したいってその思いですよね。
 最後はそれが決めるので、若い人に宇宙を目指したいんだったら、宇宙に対する熱い思いをまず磨いてほしい。いろんなことに興味を持ったり、やっぱりそれが大事だと思います。ぜひ宇宙に対する思い、憧れ、そういうものを毎日、少しずつ育ててほしいなって、そんなふうに思います」


INFORMATION

『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑〜宇宙のふしぎ、おもしろすぎて眠れない!』

『深すぎてヤバい 宇宙の図鑑〜宇宙のふしぎ、おもしろすぎて眠れない!』

 この本では宇宙と生命、太陽系、星と銀河などに関する不思議や謎がわかりやすく解説。好奇心をくすぐられる見出しとともに、写真やイラストを豊富に掲載。見開き2ページで完結するので、とても読みやすいし、興味のあるところから読めますよ。漢字にはふりがながふってあるので、お子さんにもおすすめです。
 講談社から絶賛発売中! 詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎講談社 :https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000379061

 本間さんが所長を務める「国立天文台 水沢VLBI観測所」のサイトも見てください。

◎国立天文台 水沢VLBI観測所 :https://www.miz.nao.ac.jp

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