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なんでこんな形!? 不思議でユニークな海の「ほねなし」たち

2024/6/23 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、つくば市を拠点とする自然科学教育普及団体「地球レーベル」の代表で、おもにヒトデの研究をされているサイエンス・コミュニケーター「ひとでちゃん」です。このニックネームは、あの「さかなクン」を意識して、つけたそうですよ。

 そんなひとでちゃんは1988年、栃木県生まれ。子供の頃から、生き物ならなんでも好きだった少女は、中学生のある日、テレビ番組で「タコクラゲ」というクラゲの存在を知り、衝撃を受けます。

 なんとそのタコクラゲは、光合成をする藻類を体の中に共生させて、日向ぼっこをするだけで生きているクラゲ。当時、いろんなことに窮屈さを感じていたひとでちゃんは、そののんびりとした生き方に感動し、一瞬にして虜になったそうです。

 そして新潟大学理学部を卒業後、東京大学大学院へ進学し、ヒトデの系統分類学に没頭。その後、公益財団法人「水産無脊椎動物研究所」を経て、現在は、ひとでちゃんとして、海の生き物の魅力を伝える活動を行なっていらっしゃいます。そして先頃『海のへんな生きもの事典〜ありえないほねなし』という本を出されました。
 この「ほねなし」とは無脊椎動物のことです。

 きょうは海にいる無脊椎動物の中から、ヒトデやウミウシ、フジツボやウミホタルなど、不思議で奇妙な生き物のお話などうかがいます。

☆写真協力:ひとでちゃん

ひとでちゃん

なんでこんな形になった!?

※ひとでちゃんによると、ヒトデはウニやナマコと同じグループで、日本には約350種、世界には2000種ほどもいるそうですよ。

ヒトデには潮だまりや海の底にいて、動かずにじーっとしているイメージがあるんですけど、移動しているんですよね?

「してます、してます!(笑)すっごくゆっくりだけど、しています! 」

●どうやって移動しているんですか?

「ヒトデは星みたいな形をしていて、出っ張っている部分が足だと思っている人が多いんですけれど、あれは一応、学問的には“腕”と呼ばれていて、実は足はひっくり返すと裏側にあるんですね。何百とびっしりチューブみたいな足がたくさん並んでいて、それを使ってゆっくり、もにょもにょもにょっと動きます(笑)」

●へ~!(ヒトデは)何を食べているんですか?

「これもヒトデによって、それぞれ違うんです。ヒトデは結構肉食のものが多くて、貝とかカニとかを食べたり・・・。でも草食のものもいるんで、一概には言えないんですね。ヒトデ自体の動きがゆっくりなので、肉食のものでもやっぱりゆっくりなもの、動かないものを食べていることが多いですね」

●例えばどんなものを?

「巻貝とか二枚貝とかサンゴとか海綿動物とか・・・結構なんでも食べます。死んだ魚とかも・・・」

●へ~!

「死んだ魚にすごく群がっていたりします」

●ひとでちゃんは、ヒトデのどんなところにいちばん魅力を感じていらっしゃるんですか?

「私はやっぱり形ですかね(笑)」

●形!?

「なんでこの形になった!? って思って(笑)」

ヒメヒトデ
ヒメヒトデ

●確かに気になります。どうしてなんですか? 人の手みたいな・・・。

「人の手みたいだし、星みたいだし・・・でも実はそれがまだわかっていなくて・・・というか、いくつか説があるけれど、はっきりとはわかってないっていう状態で、こんな生き物はほかにいないんですよね。

 海にはいろいろ変な生き物だらけなんですけれど、ヒトデは同じパーツが5つ並んで星型になっている、こういうのをちょっと専門的にいうと「五放射相称(ごほうしゃそうしょう)」、5個放射状に等しいものがくっついているって言うんですけど、こんな生き物はほかにいなくて(笑)、とても不思議な魅力的な生き物ですね」

●ヒトデがああいう形になったのは、いろんな説があるということですけれども、有力な説というと、どんなものがあるんでしょうか?

「ヒトデは進化の過程で、最初は「懸濁物食(けんだくぶつしょく)」と言って、海で流れてくるものをキャッチして食べる、動かないで手を広げるみたいに、流れに沿って手を広げて、キャッチして食べている生き物がヒトデの祖先というか、最初の頃に出てきた形だったと言われています。

 その時に流れてくるものをキャッチするのに、広げる手の数が5がちょうどよかったんじゃないかっていう、多すぎても手と手が重なってしまって効率が悪いし、少なすぎると全部すり抜けてしまう、そういった時に5というか5の倍数ですかね、その数が手を広げて効率よく食べ物をキャッチするのによかったんじゃないかっていう説が有力です」

「ほねなし」と呼んで親しみやすく

『海のへんな生きもの事典〜ありえないほねなし』

※ひとでちゃんは先頃『海のへんな生きもの事典〜ありえないほねなし』という本を出されています。この本では、無脊椎動物を「ほねなし」と表現されていて、おもに海にいる「ほねなし」の生き物を、姿形、生態、そして繁殖の方法に分けて、わかりやすく解説されています。

 改めてなんですが、無脊椎動物とはどんな生き物なんでしょう? 

「漢字で書くと、“無い” 脊椎の動物って書くんですけれども、脊椎は平たく言うと背骨のこと、背中の骨。私たち人間も背骨がまっすぐ1本通っていて、それでおもに体を支えている生き物なんですけれど、無脊椎なので背骨がない生き物の総称になります。

 ただ無脊椎動物ってちょっと言葉がお堅いというか、漢字にすると、どんどんどんどん漢字ーって、やっぱりとっつきにくい感じがずっとしていて、それをもうちょっとみんなに親しみ持ってもらえないかなと思って、『ほねなし』という言葉を最近よく使っています」

●ほねなし! すごく親近感がわきやすくなりますよね、無脊椎動物よりも!

「うんうん」

●海の生き物でいうと、ほねなしはイカとかタコとかクラゲとかですかね?

「はい、そうですね」

●陸上だとほねなし、無脊椎動物はカタツムリとかミミズとか、そういう生き物ですか?

「そうですよ! 素晴らしいですね! 実は昆虫もです。昆虫は私たち脊椎動物とは真逆、私たちって背骨は体の中にあって、内側から体を支えているので、内骨格とか言うんですけど、昆虫とかは外骨格と言って、外側の固い皮膚の表面を硬くして体を支えている、だから中身は全部柔らかいもの。骨はもちろんないし背骨もないし固いので・・・。ほねなしと言うと、カニとかエビとか昆虫はどうなの?って思われるかたもいるんですけど、立派なほねなしですね」

●無脊椎動物と脊椎動物は、地球上にはどちらのほうが多くいるんですか?

「もう圧倒的に無脊椎動物です!」

(編集部注:ひとでちゃんによると、分類学では、動物を基本的な体のつくりで、約34のグループに分け、人間のような背骨がある脊椎動物はその34のグループの中の、なんと! ひとつでしかなく、残りの33は無脊椎動物、ほねなし。その多くは海にいるんだそうです)

フジツボは貝じゃない!?

※ひとでちゃんの新しい本には、いろんな「ほねなし」の生き物がイラストや写真とともに紹介されています。ダイバーにも人気のあるウミウシも載っていて、ウミウシは、漢字にするとその名の通り、海の牛と書きますが、巻貝の仲間というのはほんとなんですか?

「ほんとです!(笑)」

アオウミウシ
アオウミウシ

●青い体に黄色のラインとか、すごくカラフルなイメージがありますけれども、とにかく目立ちますよね!

「そうですね~」

●カラー・バリエーションはいろいろあるんですか?

「ものすご~くバリエーションがあって、カラフルで綺麗なので、本当にダイバーさんとかにはとても人気ですね」

●天敵っているんですか?

「天敵・・・魚とかいろんなものに狙われはするんですけど、それこそなんでカラフルかって言うと、敵を寄せ付けないため。貝殻がなくなっちゃっているんで身を守りづらいんですね。貝殻がある巻貝はその殻の中に隠れれば、ある程度防御ができるんですけど、殻をなくしちゃったので、その代わりに体の中に毒を溜め込んでいるんです。

 なので、魚が食べてもまずい! つまんだけど、ぺっと吐き出されるみたいなことがよくあるんですよ。カラフルな色で“私は毒ですよ! まずいですよ!”っていうアピールをしているんです」

●なるほど・・・。

「だから逆に目立って、自分を食べないほうがいいよって」

●それで身を守っているわけですね!

「そうなんです!」

クロフジツボ
クロフジツボ

●海岸に行くと岩などに張り付いているフジツボ、貝の仲間だと思っていたんですけど、そうではないんですね?

「はい、そうなんです」

●固い殻で動かないっていうイメージですけど、貝の仲間じゃないということは、なんなんでしょう?

「これは実はエビやカニに近い仲間で、エビやカニってよく動くので、”動かないフジツボが?”って思われがちなんですけれど、固い殻の中にエビを、なんていうのかな・・・背中を下にして寝かせたみたいな生き物が入っていて、入口から足だけを出して餌を捕る、そうやって生きている生き物です」

ウミホタルはなぜ光る!?

※首都圏を走るドライバーさんにはお馴染みの、東京湾アクアラインのパーキングエリア「海ほたる」、その名前になっているウミホタルは、青白く光る生物として知られています。

改めてなぜ光るのか、教えてください。

「実は何のために光るかっていうのは、ちゃんとはわかってないんですね。なんですけど、ウミホタルの場合は、実は体が光るんじゃなくて、光る物質を海水中に噴射するんです。だから陸の蛍みたいに自分の体が光るわけじゃない、光る物質を噴射する、それでその光を目くらましにして敵から逃げているって言われていたり・・・。

 あとは海ホタル同士のコミュニケーションとか求愛行動として使われているとか、いろんな説はあるんですけれど、噴射するってところからも敵から逃げるっていうのが大きいのかなとは思います」

●カクレガニという生き物も紹介されていました。アサリのお味噌汁を食べると、アサリの貝の中にいたりして・・・。

「そうそうそう(笑)」

●カニの赤ちゃんではないって、本に書かれていて、あれっ!? と思って・・・。

「そうなんです! 」

●赤ちゃんではなくて?

「ではなくて、大人のカニです。あれは子供の頃にアサリの中に入って、もうそのまま一生(アサリの貝から)出ずに成長して、アサリに寄生して生きているカニです」

●あの小ささがもうマックスの大きさ?

「そうです! そうです! だからたまに卵を持っているのとかもいます。お腹に卵を抱えているやつとか」

●そうなんですね~。

「でも見つけると嬉しいですよね!」

●ミニミニの赤ちゃんサイズですけどね!

「ミニミニの赤ちゃんサイズ(笑)」

イトマキヒトデ
イトマキヒトデ

●やっぱりひとでちゃんには、ヒトデのことを聞かないといけないかなと思うんですけれども(笑)、ヒトデは目よりも鼻で世界を見ると本に載っていました。鼻で世界を見るっていうのはどういうことなんですか?

「ヒトデに限らないんですけどね。やっぱり陸は空気で満たされていて、視界、目で見る情報がとても大事な世界なんですけど、海は逆に視界はそんなによくない。水で満たされていて、いろんな物質が海水中に混ざっている。なので、そういう物質をキャッチするほうが生きていくのには有利というか、生きやすいっていうことで、そういうのが発達している生き物が多いです」

地球のことならなんでもあり!?

※ひとでちゃんが代表を務める自然科学教育普及団体「地球レーベル」は、地元のつくば市で知り合った、地球科学を大学で勉強されていたご夫婦と、2020年に立ち上げ、地球を丸ごと楽しもうというコンセプトのもと、子供たち向けの自然観察会などを実施されています。

 具体的にはどんな観察会をやっているんですか?

観察会の様子

「その観察会によりけりなんですけれど、私が講師の場合は海に行って海の生き物を観察したりとか・・・。山に行って“石と地衣類”っていう、またちょっと変わった生き物を見たりとか、星の観察会をやったりとか・・・なんでもありなんです。地球のことならなんでもありで、その講師がそれぞれ行きたいとこ、やりたいことをやるっていう(笑)で、みんながそれを手伝う感じの、とても自由な団体です」

●ひとでちゃんが磯の観察会で、参加者のかたに必ず紹介する生き物がいるということですけれども、どんな生き物なんですか?

「ヨロイイソギンチャクっていう生き物なんですけれど、イソギンチャクって形わかりますかね。お花が咲いているみたいな、あの形を想像する人が多いと思うんです。イソギンチャクは“巾着袋”から来ているんですけど、閉じるんですよね、お花の部分が。そうするとただの丸い物体になってしまうんですけど、ヨロイイソギンチャクは、そのお花を閉じた状態の時に体の表面に砂粒をたくさんつけているんです。

 それが、鎧をつけているみたいだから、ヨロイイソギンチャクって言うんですね。砂粒をつけるといいことがいくつかあって、まずは乾燥から身を守れる。ヨロイイソギンチャクって、潮の満ち引きが結構ある、海中に入ったり出たりする場所に棲んでいることが多いので、水の外に出ちゃう時もあるんですね。そういった時は閉じて砂の粒で(体を)守っておけば乾燥しないっていう・・・。

ヨロイイソギンチャク、開いている状態と、閉じている状態
ヨロイイソギンチャク、開いている状態と、閉じている状態

 もうひとつは敵から見つかりづらいっていうのがあって、まさに私たちからも最初は見つからない。知らないと本当にただの砂の塊にしか見えないので、知らない人には見つからない。ただ一回、これがヨロイイソギンチャクだよ!って教えてあげると、もうそこらじゅうにいるんです」

●そんなに多いんですか~。

「たくさんいます! すごくたくさんいます!」

●誰でも見つけられる、コツさえつかめば、という感じですか?

「コツさえつかめば、一回わかればいくらでも見つけられます」

本物を見に行こう!

※生きている本物を見ることは、子供たちにはいいことですよね?

アカエラミノウミウシ
アカエラミノウミウシ

「そうですね。本当にそこをいちばん大事にしていて、もちろん言葉とか本とかで伝えることも無駄ではないんですけれど、やっぱり本物を見てしまったほうが早いし、やっぱりその子にしか受け取れない感覚が必ずあると思っていて、それを大事にしてほしいですね。

 文章とかだとこっちの解釈が一回挟まっちゃうんですよね。そうじゃなくて、実物そのものから自分で感じたものを大事にしてほしいと思っているので、本当もう実物を見せちゃおう! 行こう!っていうのを大事にしています」

●では最後にヒトデの研究者、または自然科学教育普及団体「地球レーベル」の代表として、改めて伝えておきたいことなどありましたら教えてください。

「私たちこの地球っていう素晴らしい星にみんな生まれているので、本当に一歩でもいいので外に出て、ゆっくり自然とか生き物を眺める時間を作ってもらうと、ひとりひとりが日々豊かな生活を送れると思っているので、外に出ていってもらえたら嬉しいなと思います」


INFORMATION

『海のへんな生きもの事典〜ありえないほねなし』

『海のへんな生きもの事典〜ありえないほねなし』

 ひとでちゃんの新しい本、おすすめです。海にいる無脊椎動物「ほねなし」の生き物を、姿形、生態、そして繁殖の方法に分けて、イラストや写真とともにわかりやすく解説。ひとでちゃんが、海の生き物を研究するようになった、運命のタコクラゲや、磯の観察会で必ず紹介するというヨロイイソギンチャクも載っていますよ。

 この夏、この本を参考書に子供たちと一緒に海辺で生き物を観察されてみてはいかがでしょうか。山と渓谷社から絶賛発売中です。詳しくは、出版社のサイトをご覧ください。

◎山と渓谷社 :https://www.yamakei.co.jp/products/2823064030.html

 「地球レーベル」主催の観察会は、8月11日に「ペルセウス座流星群」を観る会や、8月25日には室内で「海のほねなし動物講座」としてヤドカリの観察などを行なう予定だそうです。また「地球レーベル」では月刊自然観察マガジン「地球らいぶ」を発行しています。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎地球レーベル :https://chikyulabel126014918.wordpress.com/

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