2024/7/7 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、新潟県南魚沼市を拠点に山岳ガイドとして活躍するWakaこと「大島わかな」さんです。
大島さんは1995年、静岡県出身。子供の頃、たまに両親に連れられて、近くの山にハイキングに行く程度の山経験だった大島さん、会社勤めをしていた19歳の時に、当時通っていたスポーツジムの富士登山プロジェクトに参加、初めて本格的な山登りを体験します。その時、木が生えていないゴツゴツとした岩場を見て衝撃を受け、山のイメージが一新。標高の高い山にもっと登りたい、と思ったそうです。
それから毎週のように山に行くほど、のめり込み、いつしか山の仕事がしたいと思うようになったとのこと。でも、一時の気の迷いかもしれないと考え、とりあえず5年間、趣味として山登りをして様子を見ることにしたそうですが、益々、山への思いは強まり、ついには、ご両親に内緒で会社を辞め、山岳ガイドへの道に踏み出します。そして東京にいる頃から、着々と準備に取り組み、ブログで山登りの記録を発信するなど、PRにも力を入れていたそうです。
そんな大島さんにガイドとしての心得や初心者におすすめの山、そして古民家暮らしのお話などうかがいます。
☆写真協力:大島わかな
登山ガイドという資格
※大島さんは、いくつか登山ガイドの資格をお持ちですが、ひとくちに登山ガイドといっても、いろんな資格があるみたいですね?
「登山ガイドは国家資格じゃないので、それぞれ民間の団体がいろいろと・・・その山域に精通した認定資格とかもあるんですね。私が持っているのは2種類あって、日本でいちばん規模の大きい『日本山岳ガイド協会』の資格と、あと花が好きなので、尾瀬ヶ原の、『尾瀬の認定ガイド』っていう資格を持っています」
●どんなお勉強をされたんですか?
「やっぱり動植物とか、歴史とか山に関係するものは全部勉強しましたね。登山ガイドは、自然解説だけじゃなくて、お客さんの安全管理もとっても大事なので、お客さんをいかに安全に怪我させずに案内するかっていう、そういう実践的なことも本で勉強しました」
● 山での講習はあるんですか?
「結構ありますね。私が受けるのは雪山の雪崩講習ですね。もし雪崩にあった時にどうやってお客さんを助けるかとか、そもそも雪崩に合わないためには、どういうことに気をつければいいのかっていうのは専門的すぎて、自分では勉強できないので、やっぱりプロのかたにおうかがいして勉強しました」
●どんな試験を受けるんですか?
「私が受けたものは、筆記試験があって、花の名前ですとか歴史とかの知識を問われますね。あと天気のこととかですね。で、そのあとに実技試験があって、お客さんにどういうふうに解説しながら歩くのかとか、いざとなった時にどうやってお客さんを助けるのかとか、そういうことを実際に山に入って、試験として受けました」
(編集部注:大島さんは、いくつかの山小屋でのアルバイト経験もあります。接客にご飯の用意、掃除、登山道の整備、さらには食材などの荷物を山小屋に運ぶ「歩荷(ぼっか)」もやっていたそうですよ。繁忙期は目の回る忙しさだったようですが、山小屋のオーナーやみんなのために一生懸命がんばったとおっしゃっていました)
東京から新潟へ、夫が勝手に・・・
※大島さんは現在、新潟県南魚沼市にお住まいですが、いつ移住されたんですか?
「去年の3月に東京から引っ越ししました」
●南魚沼を選ばれたのはどうしてですか?
「全く縁もゆかりもないんですけど、今の夫も私も新潟の山がすごく大好きだったので、住むなら新潟に引っ越したいねっていう話をずっとしていたんですね。ちょうどその時に南魚沼市に住んでいる山仲間のかたが、”空き家があるんだけど、どう?”って聞かれて、(そこに)行ったんです。そうしたら、もともと旅館だったお家で、とても巨大な古民家だったので、うちの夫は乗り気だったんですけど、私は掃除が大変だからちょっとここは無理かなって言って、うーんってなっていたんですね。
で、東京に住んでいて、その時、登山ガイドの仕事もちょっとずつ増えてきたところだったので、今新潟に引っ越したら、その仕事が全部なくなっちゃうのも嫌だなって、ちょっと不安になっていたんですけど、私がガイド(の仕事)で家をあけている時に、うちの夫が勝手に新潟に住民票を移してしまって・・・。
(夫から)住民票を移しておいたよ〜、感謝してよね〜みたいなことを言われて(笑)、えっ!?ってなって・・・。東京と新潟の2拠点でやっていこうみたいなことを言っていたのに、結局、東京の家賃は高いから解約しようってなって、気づいたら新潟に引っ越しせざるをえなくなっていました(笑)」
●そうだったんですね〜! かなり勢いでっていうところもあったのかもしれませんね。現在暮らしているのはどんなエリアなんですか?
「南魚沼市の市街地からちょっと離れて、周りは畑とかが多い場所で、八海山というギザギザしていて、かっこいい山が近くに見える場所に住んでいます」
●2拠点生活にしようなんて話もあった中で、でもやっぱり新潟に移住して頑張っていこうと決まって、実際に住んでみてどうですか?
「意外といいなってなりましたね(笑)」
●どんなところがいいなって思っていますか?
「まずやっぱり田舎なので、みなさん優しくて・・・家が大きいので、近所に気を遣う必要がないって言いますか、東京に住んでいた頃はアパートだったので、騒音とかにすごく気を遣って暮らしていたんですね。新潟は家も広いし、大きい庭も畑もあって、本当にやりたいことをのびのびとできる環境なので、引っ越してよかったかなって思います」
(編集部注:ご主人が勝手に住民票を移したとおっしゃっていましたが、おそらくご主人は大島さんが絶対に気にいるという確信があったんでしょうね。事実、住めば都、いまは古民家暮らしを楽しんでいらっしゃいますよね。
広い畑もあるということで、ナス、トマト、メロン、カボチャ、ネギ、スナップエンドウ、ホウレンソウなどなど、いろんな野菜を育てているほか、鶏も飼っていて、とっても可愛いとおっしゃっていましたよ)
山スキーが大好き
※大島さんのオフィシャル・サイトを見ていたら、ハイキング、ボルダリング、フリークライミング、さらに、縦走、沢登り、そして山スキー、雪山などなど、山のことなら、なんでもやっているように感じました。
それは登山ガイドとして意識して、そうしているのか、それとも好きでやっているのか、どうなんでしょう?
「両方あるんですけど、やっぱりいちばんは自分が好きだから、行きたいからっていう気持ちで取り組んでいますね。でも登山ガイドとしても必要だなっていうのは思っていて、そう思わせたのはやっぱりお客さんたちですね。
みなさん、すごく熱心で毎週毎週、山登りに行かれているんですね。もし私が仕事の山しかやっていなかったら、多分お客さんに技術も体力もそのうち抜かされるんじゃないかって思っていて、それがひとつと・・・やっぱりガイドが、岩とか沢登りとか雪の上でも、どこでも安全に歩けないと、いざという時にお客さんを守れないので、お客さんを守るためにも、そういう登山はこれからも頑張っていこうかなっていうのはあります」
●それぞれに技術や装備、そして経験が必要になってきますよね?
「でも全部楽しいので、装備はあんまりお金は気にせず(笑)、ちょっといろいろかかっていますけど・・・」
●大島さんがいちばん好きというか得意とする山のアクティビティは、どんなことなんですか?
「いちばん好きなのは、山スキーっていうアクティビティです。新潟の山って雪が深いので、そのまま歩くと腰とかまで浸かっちゃうんですよね、雪の中に。で、全然山登りができないので、スキーを履いて山に登るんです。そうすると冬でも雪に(体が)沈まないから山登りを楽しめるんですよ。山スキーは雪があればどこでも歩けるので、やっぱり自由なところが好きで、私のいちばん好きなアクティビティです」
●植物も詳しいようですけれども、山で見る植物とかお花からどんなこと感じますか?
「やっぱりたくましいなって思います。山ってやっぱり気象条件が厳しいので、とっても植物が育つのには厳しい場所だと思うんですけど、そういうところでもちっちゃく、たくましく咲いているのを見て、私も頑張んなきゃなみたいな気持ちになります」
●気象のことも勉強されたんですよね?
「そうですね。もともと気象は好きなことでもあるので、意外と勉強はしていないんですけどね。今登山者には『ヤマテン』という会員制の天気予報サイトがあって、そこで山に詳しい気象予報士さんが予報文を出してくれているのと、あと高層天気図というちょっと専門的な天気図を見ることができるんです。
その高層天気図の見方も、ヤマテンですごく丁寧に解説してくれているので、その天気図をまず見て自分なりに天気予報を考えて、そのあとにその気象予報士さんの文章を読んで、答え合わせをするっていうのをやっていたら、結構自分で天気は読めるようになったかなってところはあります」
南魚沼周辺の山々
※現在お住まいの南魚沼市は、山がたくさんあると思うんですけど、周辺の山々の特徴を教えてください。
「登山者に人気の、日本アルプスや北アルプスとかは標高が高いんですよ。山脈が天高く隆起しているんですけれども、新潟の山はそこまで標高が高くなくて、広い範囲で小さい山がポコポコいっぱいあるんですね。だからちょっと山に登れば、すぐに町の景色がなくなって、もう山しかない、山深い景色が広がっているんですけど、それが新潟南魚沼周辺の山々の特徴かな・・・」
●私のような初心者におすすめの山はありますか?
「南魚沼市に坂戸山(さかどやま)っていう山がありまして、地元のかたにも愛されていて、大体往復で3時間半ぐらいで登ってこられる山なんですね。4月頃になると“スプリング・エフェメラル”っていう“春の妖精”って呼ばれている、雪解け後にお花がすごくたくさん咲いて、それを見に東京とか遠方の登山者もはるばる来られるんですけど、そこの山がやっぱりお花の時期に行くと素敵だなって思います。おすすめです。」
●大島さんに、私だけとか、私と家族だけ山に連れてってくださいとか、そういうプライベートなツアーをお願いするっていうのもできるんですか?
「はい、できます!」
●どんなツアーに今までご案内されたんですか?
「やっぱり新潟の地元の山も多いんですけど、日本アルプスですね・・・南アルプスの光岳(てかりだけ)っていう山があって、4泊5日、5日間で行くんですけれども、そういう山を個人的にお願いされたこともあります」
●女子だけ参加のガイドツアーとか、そういったこともあるんですか?
「1回やったんですけど、今はちょっとやってなくて・・・男性のお客さんに“俺もその山行きたかったよ”って悲しい顔をされたんで(笑)、ちょっと今は可哀想だからやめております」
自分の体力に見合った山に
※安全に山を楽しむためには、どんなことが大事になってきますか?
「いちばんはやっぱり体力かなって思っています。やっぱり自分の体力に見合った山に行かないと、すごく疲れて楽しいものも楽しくなくなってしまうので、体力に見合った山に行くってことと、もし行きたい山があったら頑張って体力作りをするのが大事かなって思っています」
●登山ガイドとして登山客を案内している時に、どんなことに注意を払っていますか?
「いちばんはやっぱりお客さんの体調にすごく気遣っています。意外とお客さんは、体調が悪かったり怪我していても言わないかたがいらっしゃるんですね。
以前私が失敗したのが(参加者の中の)ひとりのペースがちょっと遅いなって気になっていたんですけれど、(その時は)何も言わずに帰宅後に、“実は足首をひねって痛めていました”ってあとから連絡が来て、すごく反省したことがあります。
それ以降はやっぱりこまめに後ろを振り返って、お客さんが転んでないかなとか、あと(参加者の方に)言ってくださいって言ってもやっぱり言わないので、表情とか雰囲気とかをよく観察して、体調を悪くしてないかっていうのを見るようにしています」
●大島さんにとって山は仕事場だと思うんですけれども、大島さんにとって山とはなんでしょうか?
「そうですね・・・いろんな意味を込めて、人生を豊かにしてくれるものかなと思います」
(編集部注: 大島さんはプライベートでもご主人と新潟の山へ出かけるそうです。
それも4泊5日から6泊7日とわりと長めに山に入って、大好きな沢登りや山スキーを楽しむとか。大島さんいわく、山にはリスクもあるけれど、夫といるとなんとかなるし、がんばれるとおっしゃっていました。山という共通の趣味がある、仲むつまじいご夫婦、いいですね)
INFORMATION
大島さんは、新潟の山を始め、富士山、南アルプス、北アルプスなどなど、1泊2日から4泊5日ほどの、いろいろなガイドツアーを企画されています。
4人から6人くらいまでの少人数のツアーで、3ヶ月から4ヶ月先まで、すぐ定員に達するほど人気なので、大島さんのツアーに参加したいというかたは、早めにご予約されることをおすすめします。
また、大島さんにプライベートなツアーを頼みたい場合もオフィシャルサイトからお問い合わせくださいとのことです。
◎大島わかな:https://bigislandyamaguide.com