2024/8/18 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「いきものデザイン研究所」を主宰するイラストレーター「一日一種(いちにち・いっしゅ)」さんです。
一日一種さんは、主宰するサイト「いきものデザイン研究所」に掲載する、生き物に関する4コマ漫画がとても人気です。また、日本自然保護協会NACS-Jの会報誌「自然保護」にも連載されています。
そんな一日一種さんには約3年前に、初心者向けのバードウォッチングの本を出された時にご出演いただいたんですが、今回は先頃、『いきものづきあいルールブック』という本を出されたということで改めて番組にお迎えすることになりました。
きょうは、海、川、山、そして公園などで、自然や生き物と関わるときに、知っておきたい法律やマナーについてわかりやすく解説していただきます。
☆協力:誠文堂新光社
楽しくライトに
※一日一種さんは、環境アセスメントなどを行なう会社に勤務し、野生生物などの調査員として活躍後、独立。現在はフリーのイラストレーターとして、マンガやイラストを通して野生生物の魅力を伝える活動を行なっていらっしゃいます。また、生き物に関する本も数多く出版されています。
そんな一日一種さんの新しい本が『街から山、川、海まで 知っておきたい 身近な自然の法律〜いきものづきあいルールブック』。
この本を出そうと思ったのは、良かれて思って野生動物を助けたのに、実はそれが法律を犯していた、そんなケースもあるので最低限、生き物や自然に関する法律は、知っておいたほうがいいのではないか、そんな思いがあったからだそうです。
法律やマナーというと、ちょっと難しいイメージがありますが、この本はマンガやイラストでわかりやすく解説。登場するキャラクターは、人間に化けて街中で暮らすキツネやタヌキ、そして架空の自治体の環境課に勤める、生き物好きの女性の課長というラインナップで、とても親しみやすくて、楽しく学べる本になっています。
●自然や生き物に関する法律などは、以前、一日一種さんがお勤めになっていた、環境アセスメントを行なう会社で、仕事の一環として学んだという感じなんですか?
「そうですね。仕事でもやっぱ調査業をやっていますと、動物を捕獲するために鳥獣保護管理法の許可が必要だったりとか、私有地に入って調査する時とかもあって、そういう時に許可が必要だったりとか、そういうことは確かにあって勉強にはなりましたね。ただ、本を見ていただくとわかるかもしれないですけど、網羅的に山から川、海までなんでも扱っている感じなので、結局新しく勉強したところが大きいですかね」
●この本を出すにあたって、いちばん苦心したのはどんなところですか?
「法律の解説は割と淡々と行なってはいるんですけれども、いちばん気を遣ったのはお説教みたいな感じにならないようにっていうところですかね。法律の本で、しかもマナーの話もするってなると、どうしてもお説教っぽくなってしまいがちだと思うんですね。
僕自身もそういう生き物警察みたいな絡み方はしたくないというか、そういうのが嫌なので、漫画を読んでいただくとわかるかもしれないですけど、できるだけ楽しくライトに、幅広い人に気軽に知ってもらえればな~っていう思いを込めて、なるべく説教臭くならないようにっていうところが、いちばん苦労したところかなって思いますね」
●本の最初にチェックするべき法律の内容は、大きく分けると「種」と「場所」そして「方法」の3種類があると書かれていました。どういうことなのか具体的に解説していただけますか?
「便宜的にそう分けるとわかりやすいかなと思って分けたんですけれども・・・というのは法律って結構たくさんあるじゃないですか。自然の法律もそうなんですけれども、いろんな法律があって、法律ごとにその目的とか規制している範囲っていうのがかなりまちまちなんですよね。
ある法律では種を対象に保護している、ある法律では面的に保護していると・・・。あと、ある法律では方法について、例えば漁業関係だったらこの用具を使って獲っちゃダメとか、これならいいとか。そういう方法についても規制している、それぞれの規制しているものが、種と場所と方法で分けるとわかりやすいかなって思って、そういうふうに分けましたね」
山は誰かのもの!? 海は密漁!?
※では本の中から、いくつか事例を挙げて、お聞きしていきたいと思います。
この本『いきものづきあいルールブック』ではフィールドを、例えば「街中と身近な自然」とか「山」「河川や湖」そして「海」など、いくつかに分けて解説されています。
夏休みということで、まずは「山」に関する事例から。初歩的な質問なんですが、山はどこでも入っていいんでしょうか?
「特に規制しているものがなければ、結構するっと入っていけちゃうし、入っていっていいと普通の人は思っているとは思うんですけれども、原則としてはそこは誰かのものではあるんですよね。国が持っているものにしろ、私有地にしろ・・・。
だから入ったことで即、法律違反とはならないんですけれども、例えば私有地だったら入っていった時に、そこで出てってくれって言われたら、もちろん出ていかないといけないですし、規制をしていたら、そこにロープとかで立ち入り禁止とかちゃんと表示がされていたら、それを乗り越えて入ることは不法侵入に確実にあたってしまいます。そういうところは注意しないといけないですね。
最近は“バリエーション・ルート”とか言って、いろんな場所を道なき道を行くような山歩きの楽しみ方とかもあるんですけれども、原則としてはそこは誰かの所有地であるので、歩くこと自体は基本的には問題ないけれども、いろいろと気を付けないといけないっていうのはあります」
●山は誰かのものなんだ! っていう意識を常に持っておかないといけないですね。
「はい、そうですね。それがないと歩いていって、そこの自然を傷つけちゃったりとか枝を折っちゃったりとか、勝手に何かを採っちゃったりとか、そういうことをしかねないので、どこを歩くにしろ、そこは誰かの所有地っていう意識があるとトラブルは少ないかなと思います」
(編集部注:山で見つけた山菜やキノコは原則としては採ってはいけないということです。個人で楽しむ程度なら、まだしも、大量に採って販売したりすると、「森林法」に触れて、森林窃盗になることもあるそうです)
※続いて「海」にいってみましょう。夏ということで、家族で磯遊びに行くかたも多いと思います。潮だまりにいろんな生き物がいて、観察するのも楽しいと思うんですけど、法律的に特に気をつけることはありますか?
「磯遊びとか、海辺で生き物を捕まえたりする時に気をつけたいのは、やっぱり漁業関係の法律ですかね。アワビの密漁とかアワビに限らず海産物ですね。ナマコだったりサザエだったりタコだったりとか、細かい種類はそこの地域地域によっても分かれていたりはするんですけれども、今言った海産物は、例えば自然観察のためにちょっと獲るぐらいでも、割とそれでアウトになってしまうこともありますので、基本的に気をつけたいですね。
持って帰るのはまず基本的にはやらないほうがいいっていうのがあるのと、あとはそこの海辺で特に厳しく規制されているものは何かっていうのは、事前に知っておいたほうがいいと思います。有名な磯遊び場だと看板がちゃんとあるので、それを見ておけば問題はないですね。「サザエ、タコ、アワビ 密漁ダメ!」みたいな看板が大抵あるので、それさえ気をつければ基本的には大丈夫ですね」
●釣り好きのかたは、夏に限らず海釣りに行くことも多いと思うんですけれども、特に守らなきゃいけないマナーとかって、どんなことがありますか?
「海釣りについて、よく問題視されているのは、立ち入り禁止の場所に勝手に入っちゃうっていうやつですね。川と違って、あんまり遊漁券とかないんで、割とどこでも自由に釣りができるっていう側面があるんですね。釣れる場所が堤防の先端のほうだったりして、そういう場所って大抵危険な場所なので、波に飲み込まれてしまったりとか、立ち入り禁止になっている場合が多いんですけれども、でも釣れるからって結構入っていっちゃう人が多いんですよね。
夏になるとニュースによく取り上げられて、“柵を乗り越えて勝手に侵入!”みたいなニュースになっていたりもするんですけれども、基本的に法律違反にはなってしまいます」
河川敷は自由に使える!?
※本に「河川敷は誰のもの?」とありました。これはどういうことなんでしょう?
「河川敷って割と誰でも自由に使える場所っていう認識があるかなって思って、そういうふうにタイトルをつけたんですけども、実際には法律もやっぱりちゃんとそこにあるし、やっちゃいけない行為もあるっていうのを知ってもらいたいなと思って、“誰のもの?”っていう言い方をしました」
●確かにジョギングしたりとかバーベキューしたりとか、河川敷って自由に使えるものだという印象もありましたけれども、そうではないってことですか?
「割とみんなのものっていうイメージもあって、自由にみんな使っているっていうのと、あと『自由使用の原則』っていうのが河川敷ではよく言われていて、誰でも自由にいろんなことができますよ! っていうのはあります。
その中でもやっちゃいけないことは河川法とか、そのほか生き物関係の法律とか、あと漁業関係の法律とかで規制されている部分はあるので、一般常識の範囲内であれば大丈夫と思っていただいて、今おっしゃったようなジョギングしたりとか運動したりとか、場所によってはバーベキューとかも許可が必要だったりするかもしれませんけれども、そういう細かいところは自分の住んでいる自治体の情報をチェックすれば大丈夫だと思います」
●河川での釣りはどうですか?
「川の釣りは大抵の場合は遊漁券が必要になっちゃいますね。なくてできる場所もあると思いますけども、大体釣りをやっている人は遊漁券を買って釣りをしています。
遊漁券っていうのは、全然釣りを知らない人には馴染みがないかもしれないですけども、生業としての釣りじゃなくて、遊びとしての釣りをやるための権利を漁業組合さんとか管理をしていらっしゃる人たちに一定のお金を払って、そこで釣りをさせていただくための権利っていうものですね。なので、河川で釣りをやる場合は一応法律に気をつけるべきっていうのは、あらかじめ知っておいたほうがいいと思います」
野鳥のヒナを見つけたら・・・
※街中でもいろんな生き物が暮らしています。以前、スタッフが公園で巣だったばかりのヒヨドリのヒナを見つけたことがあったそうです。親鳥と、はぐれたようだったということなんですが、そんな時はどうすればいいですか?
「結構ケース・バイ・ケースなところもあるんですね。原則としては見守るっていうのが大前提ではあるんですけれども、自然の摂理なので・・・。
まず、親とはぐれてしまったっていうことは、ほとんど人間にはわからないと思います。ヒナが落ちているとして、周辺に親がいないかを探してみて、見つかるっていうことはほぼないと思いますね。親鳥も人間に見つからないようにどこかに隠れていると思いますし、ちょっと距離をとっているかもしれないですし、それが親鳥ってわかるケースはほとんどないんじゃないかなと思います。親鳥は近くにいるだろうっていう前提で考えたほうがいいと思いますね。
あとはケガをしていたとしたら、それがなんでケガをしていたのかにもよって対応は変わると思いますね。人間のせいで交通事故にあってとかバードストライクにあってとか、人間活動が原因でケガをしていたのならば、自治体さんによってはそれを助けている、『傷病鳥獣救護』って言うんですけども、救護している場合もあります。そういう場合は自治体にまず連絡をしてみるっていう対応になりますね。
一方、野生動物同士の闘いとかでケガをしていたっていうのがあれば、かわいそうっていう人もいるんですけども、う~ん・・・自然の摂理ではあるので、基本的には、見守るだけ、何もしないっていうのが、いちばんいいんじゃないかなとは個人的に思いますね。
この本全体としても言っているんですけれども、野生動物にはむやみに人は関わらないっていうのが、まずいちばんの大前提になりますね。かわいそうだからとか、そういう理由で手を差し伸べてしまうと自然にとってよくないこともあるし、法律に触れてしまって自分自身の身も危ういこともあるので・・・まとめると、結構ケース・バイ・ケースであるんですけど、基本的には見守ろうっていうことですね」
(編集部注:公園でたまにハトにエサをやっているかたを目撃することがありますが、ハトの餌やりは、フンの害などもあって、大田区など、条例で禁止している自治体も増えているそうです。
そして、夏休みということで、近くの公園に出かけ、お子さんと一緒に昆虫採集をしている、そんなかたも多いと思いますが、禁止している看板などがなければ、基本的には大丈夫だそうです。ただし、東京都内の都市部の公園、新宿御苑や明治神宮の杜、国営昭和記念公園などは禁止です。お出かけになる前に昆虫採集が禁止されていないか、ホームページなどでチェックすることをお勧めします)
自分を守るためにも
※私たちが暮らしていく中で、最低限知っておいたほうがいい自然や生き物に関する法律はなんでしょう?
「やっぱり書籍の最初のほうに書いたやつがそうなんですけれども、普通に街で暮らしている人でも『鳥獣保護管理法』と『外来生物法』の、ざっくりした概要ぐらいは知っておいたほうがいいんじゃないかなって、個人的に思いますね。そのふたつだけは本当に生き物に興味なくても関わっちゃうことがありますし、特に外来生物法は最近結構、罰則が厳しいので、気をつけたほうがいいと思います」
●では最後に新しい本『いきものづきあいルールブック』で、いちばん伝えたいことはどんなことでしょうか?
「いろいろと厳しい法律はあるし、細かい法律をすべて覚える必要はないんですけれども、生き物を獲ったりとか、生き物に関わる場合はいろんな法律があって、自分が行動したことによって、割と重い罰則になってしまうこともあるっていう認識だけは、持っておいたほうがいいかなって思います。
自然を守るためというよりは、なんでしょうね・・・普通に優しい人が生き物に関わって、よかれと思ったことで(SNS で)炎上したりとか、本当に見ていて辛いので、そういうことがないように、生き物と関わる法律はいろいろあるんだよ! っていう認識だけは持っておいてほしいな~とは思います。それがいちばん伝えたいことですかね」
INFORMATION
『街から山、川、海まで 知っておきたい 身近な自然の法律 〜いきものづきあいルールブック』
一日一種さんの新しい本をぜひチェックしてください。生き物に関する法律やマナーがマンガとイラストでフィールド別にわかりやすく解説、生き物を飼うときのルールも載っていて、気になるところから読めますよ。誠文堂新光社から絶賛発売中です。詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎誠文堂新光社:https://www.seibundo-shinkosha.net/book/science/85729/
一日一種さんが主宰している「いきものデザイン研究所」のサイトもぜひ見てください。
◎いきものデザイン研究所:http://wildlife-d.xsrv.jp