2025/3/2 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ネイチャーセラピストの「豊島大輝(とよしま・たいき)」さんです。
豊島さんは、房総半島のほぼ真ん中、君津市の里山にある亀山湖、その湖畔にある亀山温泉ホテルなどの施設で体験できる、リトリートのプロデュースや運営に携わっていて、「リトリートの達人」と呼ばれています。そして、先頃『しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術』という本を出されています。
きょうはそんな豊島さんに、その本も参考にしながら、亀山湖畔で行なっているレイクリトリートや、日々の暮らしの中でもすぐできる プチリトリートのヒントなどうかがいます。
☆写真協力:亀山温泉リトリート

「リトリート」とは?
※まずは「リトリート」について教えてください。アメリカやヨーロッパでは、新しい旅のスタイルとして流行っているそうですが・・・リトリートとは、どんなことなんでしょうか?
「日本語では”転地療法”とか”転地療養”と訳されているんですね。要は普段、街に住んでいる人であったら、街からしばし離れる、転地をする。そこでありのままの自分や新しい自分を見つける。自己啓発じゃないですけど、自分をリフレッシュして、かつパワーアップするような旅、それが『リトリート』ですね」
●豊島さんはリトリートを「人がヒトに戻る旅」と定義されています。その心は?
「転地をする、いつもいる日常から離れるというのは、私たちがありのままの人になる。私は『漢字の「人」がカタカナの「ヒト」に戻る』っていう表現をしています。これは学術的な定義ではないんですけど、私の自由表現の一環なんですね。漢字の“人”というのは、私だけじゃなくて、みなさんいろんな立場をお持ちで、いろんなことに日々責任を背負って生きていらっしゃる。
もちろん私もそのうちのひとりなんですけど、街の立場、漢字の“人”から自然にリトリートに出ることによって、生態系の一部だったり自然の一部だったり、社会の一部から自然の一部に戻る旅、それが私にとってリトリートで、これからどんどんそれをいろんなかたにお届けしたいなと思っているところです」
●鎧を脱ぎ捨てるみたいな感じですよね?
「そうですね。日常の鎧というのはそう簡単に脱げるものじゃなくて、特に今はスマホとかインターネットの普及で、どこに行っても簡単に連絡がつく。便利になった反面、自分の社会的な姿を手放しにくくなっているっていうのが、実際だと思うんですね。
外出先でも会社からメール一本で指示が入ってとか、家族のかたからもLINEでポン!と連絡が来て“何か買ってきて!”とか、便利な場合もあるんですけど、それが自らを縛ってしまう場合もある。それがやっぱりストレスになってくる。特に責任感が強ければ強いほど、どんどん縛られてがんじがらめになっていくと・・・。
私は自分がセラピストとして活動する中で、そういったかたを延べ何千人も見てきています。そういったかたには、日常からちょっと離れてリフレッシュする時間を取ったほうがいいんじゃないですかってことを提案してきて、20年以上こういったことをやっていると、時系列でどのように変化してきたか、そういうこともわかるわけですね。
“豊島さんにアドバイスをもらってやってみたら、なんとなく流れが変わった気がする“とか、そういったお声もいただいています。なので、”人がヒトに戻る“のが今、常時接続の社会だからこそ、すごく必要なことなんじゃないかなと感じております」
(編集部注:豊島さんがなぜ、セラピストとして活動するようになったのか、そのきっかけといえる体験が子供の頃にあったそうです。
1975年に大阪に生まれた豊島さんは、キャンプや釣りなどアウトドアが大好きなお父さんの影響で子供の頃から自然に親しみます。ところが転勤に伴い、責任が増えたお父さんは多忙を極め、ほとんど休めなくなり、ついには脳梗塞を発症、家庭環境が一変したそうです。
その時、豊島さんは子供心に、人は自然から離れると病気になってしまうと感じ、同じような境遇の人の支えになりたいと、ウェルネスの道を志すことに。そして健康運動指導士やセラピー関連の資格を複数取得。
その後、亀山温泉リトリートのブランドを立ち上げ、ホテルやグランピング施設などで、リトリートのプログラムを実施。そして先頃、そのノウハウやヒントをまとめた本『しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術』を出されています)

1分、目を閉じてリトリート
●本の中に労働者の疲労蓄積を数値化するチェックリストが載っていました。チェックリスト1は最近1ヵ月の自覚症状ということで、イライラするとかよく眠れないとか憂鬱とか、そういった項目が14あって、私もやってみたんですね。
私は6点だったので、疲労蓄積度は低いほうだなぁと思うんですが、この点数が多い人ほどリトリートが必要ってことですよね?
「う~ん、まぁそれも考え方のひとつなんですけど、点数を高めていかないためのリトリートって思っていただければ・・・なので15点になったらリトリートに出る。それは今までの、言ってみれば“疲れたら休む”っていう、ほんとにベーシックな考え方なんですけど、私は『アクティブレスト=積極的休養』、もう少し積極的に体を休めて、疲れきる前にとにかく休む!っていうことが大事なんです。
自分を疲れきるまで追い込まずに、“転ばぬ先の杖”をどんどん突いていくっていうんですかね・・・もっと早い段階でリトリートをやっていく、ライフスタイルに落とし込むまでやっていくことを提唱していますね」
●日本人は勤勉と言われていて、休むことに抵抗があるっていうかた、あと仕事柄とか立場的に休めない、そういったかたも多いと思うんですが、どうしたらいいんでしょうか?
「リトリートに出ていただくっていうお話をしたんですけど、それをハードルが高く感じるかたもいらっしゃると思うんです。やっぱりまとまった休みが取れないとか、あと仕事柄、責任もあってスマホをずっと持っていて、電源は絶対切っちゃいけないとか、みなさんそれぞれのご事情があると思うので、まず身近なところとしては、目を閉じて静かに瞑想する。“マインドフルネス”なんて言ったりもしますけど、私は自然とつながることで自分が整うってことをお話ししているんです。
よくよく考えたら、私たち人間も自然の一部ですから、それを私はカタカナの”ヒト”って表現しているんです。まず目を閉じて深い呼吸をして、自分の中にある静かな自然とつながる。それだったら1分、目を閉じても結構リラックスできます」
●そうですよね~。
「1分も時間を取れないってかたはそうはいないです。気持ちの問題です。“1分時間を取れませんか?”って言ったら、みなさん1分ぐらいは時間って取れるんですね」
●確かに、電車の中でもできますしね。
「そうです! ないないないって思っているから、そういうふうになっちゃっているだけで、あるあるあると思えば1分あるわけですよね。
その中でまず呼吸を整える。あわよくば、ちょっと姿勢を整える。ピーンと立つわけじゃなくて、少し胸を開いて堂々とした姿勢でいる。で、自分の心を整えていく。ヨガとか気功とかそういった瞑想でも当たり前に使われていまして、まぁその3つをちょっと整えていただく。まずは目を閉じて呼吸からだと思いますね。
今3つ言いましたけど、あれこれ言うとややこしくなって、わかりづらくなるので、まず目を閉じて静かに呼吸を意識してみてくださいと・・・1分目を閉じて、目を開けた時には1分前よりはちょっと穏やかな気持ちになっていますから」
レイクリトリート、ヨガに星空に焚き火
※では、ここからは忙しいかたに向けて、具体的なリトリートについてうかがっていきます。自然や環境がテーマのこの番組としては、本の第3章にある「自然とつながることで、ととのうリトリート」についてうかがっていきたいのですが、これはまさに豊島さんがプロデュースされている「亀山温泉リトリート」そのものですよね。
亀山温泉リトリートは、自然体験型リトリートのブランドということなんですが、コンセプトのようなものはありますか?
「これは、漢字の”人”がカタカナの“ヒト”に戻る場所、さっきお話した私の思うリトリートのコンセプトそのままを、施設のコンセプトにもしています」

●具体的にはどんなリトリート体験できるんでしょうか?
「まずベーシックなところでは“レイクリトリート”、亀山湖は湖ですから、湖周辺を自然ガイドの私と一緒にウォーキングします。ところどころに広場があったり、少し中に入ったら森もありますので、そこでヨガをしたり・・・あと私は気功とかそういった知識がもちろんありますので、ヨガだったり気功の呼吸法を行なったりとかして、そこで自然とつながる。つまり自然と一体化していくような感覚、それを得ていただくようなことをやっています」
●へぇ~〜。
「それが亀山湖での日中のプランなんですけど、夜は夜で焚き火をしたり、さらに星空がすごく綺麗な時は山頂まで星空を見に行ったりとかですね。
自然をテーマにはしているんですけど、自分自身の経験もありまして、焚き火でもただじっと焚き火を眺めてもらう・・・あえて“瞑想してください。マインドフルネスをしてください”って言うと、結構ハードルが上がるんですね。 “心を無にしなきゃ!”みたいな・・・。でもマシュマロを棒に刺して焦がさないように、焚き火でひたすら焼きマシュマロを炙る! その瞬間ってもう無になっているんですよね」
(編集部注:亀山温泉リトリートは、初日は参加者のかたに、ある程度タイム・スケジュールを決めて、プログラムを体験していただく方法をとっているそうです。その理由は、いきなり「さあ、好きなことを自由にやってください」と言ってもどうしていいのか戸惑ってしまう。それが返ってストレスになることもあるので、そういう方法をとることにしているそうです)

亀山湖畔、渡り鳥でリトリート!?
※春になると、亀山湖畔は見所がいっぱいあるんじゃないですか?
「桜を結構植えていますので、それが湖に映えて、反射してすごく綺麗になってきます。さらに早咲きの河津桜、あと陽光桜っていうちょっと珍しい早咲きの桜。で、染井吉野と・・・フラワーリレーって言うんですけどね。常に何かが咲いているようにリレーしていくんです。
一般的な観光であれば、それもお勧めしたいんですけど、リトリート的には実は亀山湖には渡り鳥が結構来ていまして、渡り鳥の観察は私のマニア視点が少し入っているんですけど(笑)、すごくいいですよ。
鴨の仲間の珍しい渡り鳥でも4月くらいには戻って行ってしまう。大陸から渡ってきていますので・・・。そういった時に、今年も“渡り鳥がやってきて、また戻って行っちゃったな~“とか、季節の移り変わりを、桜はわかりやすい季節の風情ですけど、さらに深めていくと渡り鳥でも風情を感じます。
実際4月にいつもいるところに渡り鳥がいなくなるとすごく寂しいです 。出勤の時に隣に釣り堀があるんですけど、冬の間棲みついちゃっている渡り鳥がいるので、いなくなるとすごく寂しいですね(笑)。
また逆に季節が巡って秋も深まって、いよいよ冬って時に(渡り鳥が)来てくれると、また今年も来たな!とかって・・・それもまさに自然とつながることのひとつだと思うんですね。何も地球の住人は人間だけじゃありませんから、いろんな動植物が棲んでいますから。
それらがいるってことを、通り過ぎている人みんな(渡り鳥を)見ているんですけど、ただなんか鳥がいるなくらいの感じでみんな通り過ぎていると思うんですね。そこを、無意識なのをちゃんと意識下に置けるのは、リトリートのいいところだと思いますね」

プチリトリート。日常を「新日常」に
※時間や費用のことなどあって、リトリートを宿泊して体験できない、そんなかたに日頃、職場や自宅でできることがあれば、ぜひ教えてください。
「私はそういうのを“プチリトリート”なんて言っているんですけど、それがリトリートの真骨頂です。要は転地をしますと・・・私の知人でも自己啓発系のセミナーが好きで、そういったところに参加するかたがいるんですね。それがいけないってわけじゃないですけど、戻ってくるとリバウンドしている時があるんですよね。現実に戻って来ちゃったみたいな・・・。
それはもったいないなと思って、完全なリトリートは“非日常”じゃなくて、私は“新日常”って表現をしているんですけど、自然とつながることで視野が広くなってくる。同じ日常なんだけれども、心の中でも小さな転地を繰り返すことによって、新しい発見がどんどんできるようになると。
例えば、通勤の(途中に)街路樹や植え込みがあったりしますよね。サツキとかツツジとかよく歩道の脇にありますよね。ああいったところを見ると、ナンテンの実がなっていたりとか、よくよく見るといろいろな植物が混じっている時があるんですね。
ナンテンって思っても植えたわけじゃないし・・・見上げるとヒヨドリ、鳥が飛んでいたりとかして、ヒヨドリがもしかしてナンテンの実を食べてフンをした、みたいな、いろいろと探っていくことができるわけですね。
だから都会の中でも小自然があって、会社と家の同じ往復だけじゃなくて、往復の中でいつもの自分から転地できる、心を転地できることがいっぱいあります。
今は街路樹のことを言いましたけど、例えば電車に乗った時、電車の中を見るとみなさんスマホばっかり、いじりすぎとかと思うんですね。もちろん連絡事項があれば、それはそれでいいんですけど、せっかく電車に乗ったら外を見てみる。外を見るといろんな変化があるわけです。
空だけでも、雲が秋の鱗雲と夏の入道雲では違うわけですね。ガタンゴトンガタンゴトンって川に差しかかると音が変わります。変わったときにその川はなんて(名前の)川だったか、みんな多分わからないと思うんです。川って結構看板が立っていますから、一級河川とか二級河川とかナントカ川とか、それをチェックすることがすごく大事。チェックして次の休みに行ってみる。そうするとどんどんキリがないくらい広がっていくわけですよ。
帰りはひとつ前の駅で降りて歩いて帰ってくるとか、ひとつ前の駅で降りることをタイムロスと思わないことがリトリート。寄り道はマイナスではないプラスなんだっていうことを強く言いたいですね。直線的にまっすぐなことやっているから選択肢がどんどん狭くなっていく。同じ通勤の中でもプチリトリートができる秘訣がたくさんあります」
(編集部注:プチリトリートについては、豊島さんの本『しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術』にヒントがたくさん載っていますので、自分に合ったプチリトリートをぜひ探してみてください)

リトリートはライフスタイル!?
※豊島さんは自然と人の関係について、こんな考えを持っていらっしゃいます。
「自然を学んでいくっていうのは、私にとっては漢字の”人”なんですね。かつての人は自分も自然だから、“自然から学ぶ”自然を学ぶっていう立ち位置じゃなくて、自然と対等な立場。
“自然から学ぶ”っていうとニュアンス的に何のこと? って思ったかたもいらっしゃるかもしれないんですけど、私はそういった意味では、自分も自然だし周りも自然なので、自然とは対等だと思っているんです。
その視点を持って自然に入ると、自然はいろんなメッセージを自分に届けてくれるんです。自分から自然とつながろうと思わなくても、一回つながって自然を意識下に置けば、もう向こうの方から自動的につながってきて、自分を励ましてくれたりとか元気にしてくれたりとか、季節の風情を与えてくれたりとか・・・ちょっと難しかったですか(苦笑)」
●いえいえ~! では改めてになりますが、最後にこの本『しつこい疲れがみるみるとれる! リトリート休養術』を通して、いちばん伝えたいことはどんなことでしょうか?
「最初、出版社から“ビジネス書としてビジネスコーナーに並びますよ”なんてうかがっていたんです。実際(本屋さんに)見に行ったら健康書のコーナーに置かれていたりとか、本屋さんによって様々だったみたいなんですけど、最初はビジネスコーナーに置かれることを前提で書いていったので、そこで詩集のようにヒント集にしたいなと思ったんです。
というのは、実践ありきってことですね。くどくど、“これがだからこうなって、これがリトリートなんです”って、“おーなるほど!”と思っても、実践しないと意味がないですよね。
本を読んでわかった気になっちゃったと、単に知識を満たすための本になってしまったと、それだとやっぱりもったいないと思っていて、あえてヒント集にして実践ベースにしています。最初から最後まで読む必要はなくて、最初の前書きと後書きさえ読んでいただければ・・・。
パラパラと詩集みたい読んでいただいて、気になるところが多分その時によって違うので、どんどん実践していただいて・・・。
リスナーのみなさんになっていただきたいのは、最初の通りカタカナの“ヒト”になってもらえたらいいですよね。ひとつひとつがつながってくる。つながってきて、リトリートが単に癒しの一環じゃなくて、自分の生き方の豊かさを広げる、ひとつの方法になってくると思うんですよね。もしもしかしたら方法じゃなくて、ライフスタイルそのものじゃないかなぁ~と」
INFORMATION
この本には忙しい日々から離れて、本来の自分に戻れるノウハウが満載です。この番組としては特に第3章の「自然とつながることで、ととのうリトリート」に注目していただければと思います。また、第4章の「1分から始める! 暮らしの中のプチ・リトリート」には通勤途中やオフィス、または家事をしながらでもすぐできるリトリートのヒントがたくさん載っています。ぜひ参考になさってください。
すばる社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎すばる舎:https://www.subarusya.jp/book/b653272.html

私もリトリートを体験したい、もっと知りたいと思ったかたは、亀山湖畔のホテルやグランピング施設などで行なっている豊島さんプロデュースの「亀山温泉リトリート」を体験されてみてはいかがでしょうか。参加方法など詳しくは「亀山温泉リトリート」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎亀山温泉リトリート:https://www.kameyamaonsen.jp/retreats/