2025/8/17 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、バックパッカー、そして紀行家の「シェルパ斉藤」さんです。
斉藤さんは1961年、長野県生まれ。本名は「斉藤政喜」。学生時代に中国の大河、揚子江(ようすこう)をゴムボートで下ったことがきっかけで、フリーランスの物書きになり、ペンネーム「シェルパ斉藤」で作家デビュー。
1990年に東海自然歩道を歩く紀行文を、アウトドア雑誌BE-PALに執筆。現在も同誌の人気ライターとして「シェルパ斉藤の旅の自由型」という連載を30数年、継続。また、1995年に八ヶ岳山麓に移住し、自分で建てたログハウスで、奥様と愛犬とともに自然暮らしを送っていらっしゃいます。
そんな斉藤さんがつい最近、自転車で日本縦断の旅をされました。今回は5月20日に山梨のご自宅を出発、22日に鹿児島県の志布志港という港から自転車を漕ぎ出し、北上。日本海側を、1日100キロを目安に走り、6月17日に北海道・苫小牧にゴールされたそうです。
自転車や荷物を息子や奥さんが車で運んでくれたり、フェリーを使ったりと、斉藤がおっしゃるには「楽な旅だった」と。また、季節的に日が長く、天気にも恵まれ、毎日、夕陽を見ながらビールを飲んで、テントで寝る旅だったそうですよ。
今回、私、難波遥は初めてインタビューさせていただくんですが、自転車で日本一周を経験した私としては、ものすごく楽しみにしていました。
きょうはそんな斉藤さんに、新しい本『シェルパ斉藤の還暦ヒッチハイク』のお話も交え、たっぷりお話をうかがいます。
☆写真提供:斉藤政喜

64歳、自転車で日本縦断!
※自転車による日本縦断は、初めてではないんですよね。
「3回目ですね」
●3回目! なぜ3回目をやろうと思い立ったんですか?
「最初にやったのが、24歳なんですよ」
●初めての挑戦が!?
「難波さんもその頃やったんでしょ?」
●そうです! ちょうど同じ歳くらいですね!
「その(24歳の)時に宗谷岬から本州の佐多岬まで行って、最後は沖縄まで行ったんですけど、その時に出会う大人たちによく言われたのが、“そういうことできるのは、若いうちだけだからよ~”とかね」
●あ~、私も言われた~~、言われました!
「あと“学生のうちだけだから”とか、“独身のうちだけだから”って言われて、すごくカチンと来たんですよ。で、反論したかったんだけど、全部当てはまっていたので、これは全部当てはまらない20年後にもう1回やろう!と・・・。
20年後だったら若くないし学生じゃないし、たぶん結婚しているんじゃないかなと思って、だから24の時には日本縦断しながら、もう1回20年後にやってやるぞ! やりたいからやるんだ! っていうのを証明できる気がして、それで44歳の時に日本縦断したんですよ、もう1回。
その時は24歳の自分を超えたかったので、海岸線とかじゃなくて、ど真ん中を行こうと思って・・・。それで北海道の礼文島から始まって、できるだけ海岸じゃなくて真ん中を通って・・・。
僕が山梨県に住んでいるので、1回を半分に分けたんですよ。まずは、(山梨の)家まで。後半は、山梨県ってほぼ真ん中なので、そこからまた真ん中を行くしかないから、ずっと沖縄まで、最後は与那国島まで走ろうと思って・・・。
若くない、結婚もして独身でもない、学生でもない僕は(2回目の日本縦断を)達成したんだけど、それから20年経って、今年ふと振り返ると、44歳ってまだ若造だなって急に思っちゃって、やっぱり64歳になってやんなきゃダメなんじゃないかっていう気になったら、やんなきゃいけなくなっちゃったというか、やりたくなっちゃったんですよ! それで20年ごとの日本縦断を今年64歳でやろうと!」
●毎回感じることは違ったと思うんですけど、それぞれのフェーズで、どういったことがいちばん記憶に残っていますか?
「24歳の時は何を見ても新鮮だったし・・・」
●新鮮な旅! っていう感じですよね?
「それまで僕はオートバイで旅していたんだけど、だんだん自力で行くのが面白いと思い始めた頃だったから、どこを見ても日本の風景はきれいだな~と思いながら・・・」
●確かに、そんな感じだったかもしれないです。
「44歳の時は、田舎暮らしをしたっていうのもあって、田舎を走っていると、風景がちょっと身近な感じに見えて、こういう生活があるんだっていうのが・・・。24歳の時は何を見ても新鮮で、へえ~へえ~だったのが、割と身近な風景として感じられて感情移入できるっていうか、それが44歳で・・・。
今年は64歳で、何が残っているかって、毎日新鮮というか楽しいんですよ! ただ前へ進むだけっていうのがこんなに面白かったのかっていう・・・なんだろうね・・・要するに頭を無にするというか、前に進むことだけを考えていればいいっていう一日を過ごせる」
●そうですよね~。
「それで日が暮れて寝る場所を探して、また翌日食べて走って寝て、食べて走って寝てっていうのを繰り返すっていうのが、人間、シンプルでいいなって。こんなんでいいんだっていうのを、この歳のほうが感じたかな~。改めて、日本を旅するってすごくいいな~と感じましたね」

風に乗って、北上!
※斉藤さんは今回の日本縦断で、24歳の頃と比べると、確かに体力的にはきつかったけれど、64歳なりの走り方に気がついたそうですよ。
「なんか知恵がついたのかな〜? 疲れない走り方っていうか・・・」
●へぇ~、教えて欲しい!
「いやいや、それは人それぞれ違うだろうし、もともと基礎体力があるかたはそう思わないかもしれないんだけど、ペダルを漕ぐ感覚じゃなくて、ペダルを回している感覚、力を入れないっていうか・・・(笑)、なんて言うんだろう、脱力系の漕ぎ方・・・?
なんかね、ふにゃーっと動いてればいいやっていう感じで、ただペダルを回せばいい・・・だから以前の感覚だとゆっくり走るんだったのに、ゆっくり歩く漕ぎ方で、それでもきついなと思ったら、ギアを変えて、より低いギアにしておけば、ただ足をぐるぐる回すってやっておくと、全然きつくない・・・それはきつくないわけじゃないけど(笑)」
●私も自転車で日本一周している時に、意識的にはそれはできなかったんですけど、何回か全然疲れてない、すーっと進んでいるなっていう感覚がたまにありました。その時は気持ちいいなって感じていたんですけど、意識的にはまだできていなかったです(笑)。
「今回、日本縦断でよかったなって思ったのは、今までのは全部、北海道から九州に行っていたんですよ。今回初めて九州から北海道へ北上、今まで南下コースだったのを北上(のコースで)やったんですよ。やってみて楽!」
●えっ~~!?
「なんでかって言うと、自転車でいちばん辛いのは、僕は向かい風なんですよ」
●本当にそう思います!
「坂は見えるから、ここを頑張れば越えられるっていうのがあるのに、例えば海辺を走っていて一生懸命漕いでいるんだけど、風を受けて思うようにスピードが出ないっていうのは本当に辛いんですよね。基本的に日本列島は西から東へ天気が変わっていくじゃないですか」
●そうですね~。
「だから風が全部そっちに吹いているんですよ。日本列島を北上するとは言いながらも、南西方向から北東方向へ行っているので割と追い風が多かった」
●うわっ! 本当にいいですね。
「追い風に入ると突然、自転車をやっているかたはたまに経験すると思うんだけど、自分が風の中に入る感じ・・・。それまでシューと音がしていたのが、風の速さと自分の速度がピッタリ合うと、耳に入る音が車輪(と道路)の接する音とチェーンが駆動する音だけで、風に入り込んだような気になって・・・かっこよく言うとなんだか自分が風に乗ったみたいな感じ・・・」
●うぁ~かっこいい!
「そういう感じになれたのがよかったので、今回はそういう意味では総合的によかったなと思っています」
●本当に向かい風だと平らな道でも全然進まないですよね。腹立ちますよね(笑)。
「進まない。ただただ腹立ってくる! 逆なら、なんて楽なんだろって!」
(編集部注:今回の自転車による日本縦断の旅でも、いろんな出来事があったそうです。中でも印象に残っているのが、徒歩で旅する若者との出会い。今回は残念ながら、この番組では時間の関係でご紹介できないんですが、この心温まるエピソードは、いずれBE-PALに書くとのことですので、お楽しみに)
還暦ヒッチハイク「いい人」!
※ここからは、斉藤さんが先頃出された本『シェルパ斉藤の還暦ヒッチハイク』をもとにお話をうかがっていきます。この本は還暦前後に行なったヒッチハイクや、以前行なったヒッチハイクから、特に思い出深い旅のお話などが載っています。

本を読んでいて思ったんですけど、斉藤さんを車に乗せてくれた人たちって、年齢や職種もバラバラで、みんな個性的ですよね?
「要はヒッチハイクって、例えばたくさん車が停まっていて、乗せてもらえませんか? っていう声を掛けるのもありかもしれないけど、僕はそういうのはあまりやってないんですよ。あくまで僕は受け身。だから僕を乗せたいと思ってくれたかたが停まってくれるのを待つ。
ですから、自分がもし選ぶ側だったならば、“この人だったらいいな”とか、“この人、乗せてくれそうだな”っていう人を僕が選ぶから、割と似た傾向になっちゃうかもしれないですよ」
●そういうことなんですね。
「そうじゃなくて、僕のやっているヒッチハイク、(自分で)声をかけたケースもありますけど、特に還暦を過ぎてからやっているヒッチハイクは、あくまで自分は受け身の立場。ですから、“あっ! こいつ乗っけてみたいな”って思うような人が停まってくれるので、そういう意味ではみんなバラバラになるんです。こっちではこういう人がいいっていうのを選べない。僕は選ばれる側なので・・・。
それで今回『還暦ヒッチハイク』って、ちょっとね・・・ヒッチハイクって言ったら、若者のイメージが強いんですけど(笑)」
●イメージがありますよね。
「だけど本当に年寄りでもできるんだっていうか、僕の頑張りようじゃなくて、向こうが勝手に選んでくれるんだから・・・。こんなおっさん、おじいさんになっちゃったけど(笑)、立っていれば、ちゃんと停まってくれる人がいるんだって考えていくと、そりゃバラバラになるよね」
●そうですね。
「こっちから選べないので、いちばん待って、1日待つこともありました。やっぱり若さにはかなわないので、全然ダメな場合もあって、ただひたすら待つっていうのをやっているんだけど、必ず停まってくれるんですよ」

●その待つっていうのは? 道の路肩で?
「道の路肩で」
●手を挙げたりはするんですね?
「手を挙げて」
●もう本当に待っている・・・?
「ただ待つ!っていう、だから本当に、僕のほうからは選べないから、いろんなかたが、それはお年寄りのかたも停まるし、同年代もいるし若者も停まるし、それから男性も女性も、職種もみんなバラバラですし、ただ言えるのはみんないい人」
●共通点はいい人!
「うん、いい人なんですよ!」
(編集部注:「いい人」との出会いは、まさに一期一会! 普段はなかなか出会うことのない人との出会いも、ヒッチハイクの醍醐味ですよね。珍しいところでは、セーリングの日本代表候補の若者ふたりと出会い、合宿先の和歌山まで行くということで、なんと神奈川県の海老名から大阪まで送ってもらったそうです。
また、斉藤さんがおっしゃるには、北海道と沖縄はヒッチハイク天国。旅人になれているせいか、すぐにとまってくれるそうです。沖縄では美女に乗せてもらって、横顔もとっても綺麗だったので、ずーっと見ていたとか)
犬連れヒッチハイク「いい子」!
※斉藤さんは愛犬との「犬連れヒッチハイク」をすることもありますよね。犬を連れてのヒッチハイクは、ハードルが一気に上がるような気がするんですけど、どうなんですか?
「いやそれが、そうでもないんですよ。そもそもなんで犬を連れてヒッチハイクするかっていうと、僕は結構いろんなトレイルっていうか、いろんな所を里道とか野道を歩くバックパッカーなんですが、犬を連れて歩くこともあるんですよね。
僕の連れている犬がラブラドール・レトリバーとかちょっと大きめの犬なので、例えば、ある地点まで車でその犬を連れて行って、次の1日か2日くらい歩くとしたら、その車のある場所まで戻るのに同じ道を歩くのが嫌なんですよ。じゃあバスや電車っていった場合に、うちの犬は大きいからゲージに入れていくのは現実的に不可能なんですよね。そうなるとバスにも乗っけられないし、何かって言ったらヒッチハイク」

●そういうことですね!
「それで犬を傍らに置いて路肩でヒッチハイクをするんですが・・・上手くいくんですよ!」
●へえ~〜。
「僕がひとりで(ヒッチハイクを)やっているよりも(車が)停まる確率は高いと思う」
●逆に? ええ~~!?
「なんでかって言うと、世の中、犬好きが多いんですよね。特に女性が停まってくれる、大体はね・・・。それから僕の犬って、普通そうですけど、1日とか歩くと疲れちゃうんですよ」
●そうですよね~。
「僕がヒッチハイクしている間、犬は道端でどて~んってなっているので、“ワンちゃん、どうかしたんですか?”って気にかけてくれる女性が多い」
●あ~そういうことですね。
「で、“車を停めてある所まで、バスとか乗れないので(ヒッチハイク)しているんです”って言うと、大体みんな乗っけてくれる。だからある意味、犬をダシにしてヒッチハイクしているっていう感じもありましたね、そういう時も・・・」
●なるほど(笑)。逆に犬側、愛犬たちはみんな旅に慣れているんですか? 初めましての人たちと(車に)乗ると思うんですけど・・・。
「それは(犬に)聞いてみないとわかんないけど(笑)、全然嫌がっているそぶりもないし・・・。それと犬の話になっちゃうんですけど、何日間か一緒に歩いて、テントを張ったりかって繰り返していると、なんかリズムが合うというか、だんだん気持ちが通じ合うところもあって・・・。
初めてヒッチハイクした時もそうなんですけど、僕の、飼い主の要望を全部わかってくれる。だからいきなり(車に)乗っても絶対シートには座らないし、足元にうずくまって、じ~っとしているっていう・・・なんか気持ちが通じ合う感じになっちゃう」
●すごいです!
「別にうちの犬が賢いとかそういうことじゃなくて、そういう感じなんですよね」
●それぞれの犬で、この犬はこうだったな~とか、犬ごとにここが違ったな~とか、そういうのってあったんですか?
「それがないから面白いかな」
●へえ~〜。
「大体どの犬も初めてのヒッチハイクでも、特に若い時はみんな元気なのに、他人の車の乗っけてもらっても、みんないい子にじっとしている。だからそれはたぶん、一緒に歩いて旅しているからだと思いますけどね」
ギヴ・アンド・テイクの関係!?
※本の巻末に「ヒッチハイク攻略マニュアル」があって、経験をもとにしたヒッチハイクのコツなどをまとめていらっしゃいます。どんなことがポイントになってきますか?
「ヒッチハイクって僕の考えで言うと、釣りなんですよね。釣りに似ているなと思っていて・・・だから目の前で車が流れていく道路は、言ってしまえば川だと・・・。川に竿を振って餌である僕を投げたと、どれか引っ掛かるだろうと・・・。
釣りの場合はやっぱり餌が美味しそう! と思われなければ、魚は食い付かないわけだから、ドライバーが“あっ! あいつ乗っけてもいいかな”って思うような服装。逆に言えばNGの服装で言うと汚い、見るからに嫌だなっていう、訳わかんない奇抜なやつがいればよろしくないので、僕の中では清潔感のあるような格好をして、ある程度目立つ色」
●そうですよね~。
「やっぱりドライバーから見た場合に、パッと見て“あっ、ヒッチハイクしているんだ”っていうのをわからせる意味でも服装は大事かな。
それと、割と脱ぎ着がしやすいとか・・・僕もきょうは軽くて薄いジャケットを羽織っているんだけど、例えば、夏に(ヒッチハイクを)やると、外はすごく暑いんだけど、乗せてもらったら(車の中は)やたら冷房が効いているとか。冬は逆でちょっと寒いのにいきなり(暖かくなる)、それを考えると、乗っけてもらった時にすぐ温度調節がしやすいっていうのもポイントかな」
●なるほど~。続いて場所選び、これもやっぱり重要かなと思うんですけれども、ポイントはありますか?
「これは乗せる側、つまりドライバーの立場で考えた時に、どこなら停まりやすいかって考えると、その場所を狙えばいいかなと・・・。
例えば、後ろにたくさん車がつながっているのに、ここじゃ停まれないよって所はまず無理ですね。ある程度、余裕のある所・・・。それから運転していて、ヒッチハイカーがいても“今、気分よく運転してんだよな~”っていう時に停まりたくないっていうのもあって・・・。
ですから、ちょっと具体的に言うと、道の駅とかサービスエリアとかで、これから走り始めようかなっていう時に、加速しようかなって迷うあたりにいると、停まってくれるかたって割と多いですね」
●今のお話を聞くと、場所選びは相当重要ですね。
「そうですね。やっぱりいちばん大事なのは、ちゃんと車が停車できるスペースがある所」
●そうですね!
「後続の車に迷惑がかかるってのは絶対ダメですね。余裕があって、しかもある程度遠くから、ちゃんと“あっ、ヒッチハイカーがいるんだ”ってわかって、“乗せようかな、どうしようかな”っていうのが数秒間考えられて、そこに到達するっていうのが理想かもしれませんね」
●そして時間帯、やっぱりこれも大事かなと思うんですけれども、これは昼間ってことですよね?
「これも一概には言えないんですけど、経験から言うと、例えば8時とか9時頃ってヒッチハイクしていると、仕事で急いでいるかたが割と多いんですよ」
●朝の8時から9時?
「朝の8時から9時頃って、”余裕がないから乗っけたいんだけど、ちょっとごめんね、忙しいから“っていうかたが割と多くて、僕の経験で言うと1時過ぎとかその頃、大体みんなお昼を食べて、ちょっと眠いな、話し相手が欲しいなって思う頃に、話し相手を乗せてみようかっていう感覚が多いかな」
※本に「ドライバーとヒッチハイカーは、ギヴ・アンド・テイクの関係」と書いていらっしゃいます。これはどういうことですか?
「あくまで僕は乗っけてもらった側なんだけども、乗せてよかったなって思えるようにしたいんですよ。だから乗せてもらった限りは、本当にしっかりサービスしようっていうくらいの気持ちで、“実はこんな旅をしていまして”とか、乗せてもらっている時間を、ちゃんとドライバーが楽しめて、停まってよかったな! みたいな感じで・・・。
そういうことを考えているので、変に卑屈ならずに、本当にありがとうございます! じゃなくて、乗っけてもらったからには、対等の立場でいたいなと。乗せてもらったからって卑屈になることなく、その分、楽しませますよっていうつもりでヒッチハイクしています」
●プロのヒッチハイカーとして、これは心掛けているということってあるんですか?
「心掛けているっていうかね・・・本当にやっぱりフィフティ・フィフティの関係でいたいっていうのもありますね。プロのヒッチハイカーってほど、立派なもんじゃないんだけれども(笑)、まずしちゃいけないこととしては居眠り」
●確かに!
「あとね、絶対に(放屁)ぶっ!ってしちゃいけないしとか(笑)。それから乗っけてもらったら(別れる時は)最後はずっと手を振り続けるっていうのもしています」
●車が見えなくなるまで?
「それは、別にしなきゃいけないとかじゃなくて、するとまたたぶん『ヒッチハイクの神様』が微笑んでくれるんじゃないかっていうような気がして・・・。そういう意味ではそれを心掛けているかな。
だからどっちかって言うとNGのほう、喋り過ぎない。喋り過ぎずに相手の話を聞きつつっていうことを僕も楽しんでいるかな。だから会話を楽しむようにしています」

歳を喰ったら、ヒッチハイク
※これからもヒッチハイクの旅は続けますか?
「うん・・・のつもりですね。やっぱり年に1回ぐらいは大きな旅をしたいな、ヒッチハイクの、って思っています」
●それはなぜなんでしょうか?
「それは本当に、さっきもちょっと話したけれども、若い人のほうが絶対ヒッチハイクに有利なんですよ。やっぱり乗っけたくなるから。だけど、歳を喰ったかたのほうが、僕はむしろヒッチハイクを楽しむべきだと思っていますね。
それは、ある程度経験を積んだりとか、人生をやって来ている人間だと、なんか感動が薄れがちなんですよ。ここに行けばこんな感じだろうなとか、だんだん先が読めちゃうのがあって、それを裏切ってくれるのがヒッチハイクなんですよね。
誰が停まるかわかんないし、いつ停まるかわかんないし、どこまで行けるかわからない。そういう予測不能な展開がたぶんドキドキするんですよ、歳喰っても。だから感動が薄れがちな年寄りだからこそやるべきだと・・・。
ある脳科学者が言っていたんですが、結末がわかるような物語を読んでも全然、前頭葉が刺激されないって。こんな結末があったのか! っていうほうが前頭葉が刺激されて脳が活性化してくると・・・。
ヒッチハイクもそうだなって思っているので、むしろ本当に年寄りのほうこそ、時間もあるし、いざとなればちょっとお金もあるし、そういう意味では体力もまだそこそこあるし、ヒッチハイクだから、当然若者にもやってもらいたいし、ヒッチハイクを気楽にやりたい人がいて、停まってくれる社会っていいなと思っているので、そのためにも頑張ろうかなと思っています」
●なるほど。64歳の次は、84歳。それぐらいまではヒッチハイクも日本縦断もやりますか。
「面白いですね(笑)。80を超えたじいさんがヒッチハイクしていたら、健全でいいんじゃないかなと思いますね」
●そうですね~!
「だからやっぱりみなさんに言いたいのは、ヒッチハイクって誰でもできるんですよ。才能いらないし、努力もいらないし、体力もいらない。ちょっとした勇気、なんか頑張ってみよう! っていう一歩を踏み出して、手を挙げてみると、誰が停まるかわからない。
僕はこの本にこういう旅がしたいんだよって書いたのは、それは僕だからできた旅なんですよね。僕がよかったとかじゃなくて、自分がすごいとかっていうことではなくて、その人が同じところで同じことやっても、ドラマは全部違うはずなんですね、停まるかたが当然違うから。
だから誰でもできて、その人しかできない旅があるのがヒッチハイクなので、絶対にみなさん、やったほうが楽しいと思います」
☆この他のシェルパ斉藤さんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
斉藤さんの新しい本には、キャリア40年以上の旅で出会った「いい人」のエピソードが満載です。斉藤さん流の「受け身」のヒッチハイクだからこそ、一期一会の出会いがある。どんな出会いがあったのか、ぜひ本で確かめてください。巻末にある「ヒッチハイク攻略マニュアル」を参考にあなたも旅に出てみませんか。
「わたしの旅ブックス」シリーズの一冊として、産業編集センターから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎産業編集センター:https://book.shc.co.jp/21762
斉藤さんのオフィシャルサイトもぜひ見てくださいね。
◎シェルパ斉藤:https://team-sherpa.wixsite.com/sherpa