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新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第2弾!〜SDGsをお笑いにのせて、わかりやすく〜

2021/6/20 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、吉本興業所属の芸人さん「黒ラブ教授」です。

 「SDGs」とは、「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。地球の資源を大切にしながら経済活動をしていくための約束で2015年の国連サミットで採択され、2030年までに達成しようという世界共通の目標=ゴールが全部で17設定されています。その範囲は飢餓や貧困、環境問題、経済成長、そしてジェンダーに関することまで、いろいろな課題が入っています。

 きょうお話をうかがう黒ラブ教授は、東京大学大学院の研究員のほか、理系の大学講師、そして国立科学博物館認定のサイエンス・コミュニケーターとしても活躍していて、理系や科学系、そしてSDGsをネタにしたライヴで大人気の芸人さんなんです。いったいどんな活動をされているのでしょうか。後ほど、吉本興業のSDGsへの取り組みも含め、お話いただきます。

☆写真協力:黒ラブ教授

写真協力:黒ラブ教授

「世界をどんどんグッドにしたい!」

※それでは黒ラブ教授にお話をうかがっていきましょう。吉本興業のSDGsサイトのトップに、教授の講演会情報が載っていました。まずは、吉本興業がSDGsに取り組むようになったのはなにかきっかけがあったのでしょうか。

「もともと吉本興業って、“住みます芸人”とか、地域活性で都道府県に一芸人を置いて、色々と地域を盛り上げるみたいなことをやっていたんですよね。SDGsは基本的に地域活性の意味もあるので、当初からSDGsに関わってきていましたね。関わってきたというか、やっていたら(あとから)SDGsがきたみたいな感じですかね。

  それで『ジャパンSDGsアワード』っていう国の賞ですか、あれで特別賞をいただいたりとか、そうやって吉本興業はSDGsに関わってきているんですけど、黒ラブ教授自体はまた全然違うところからSDGsに関わってきていて」

●どういうことですか? 

「M1グランプリってあるじゃないですか、あれってお笑いで優勝するやつですよね。で、『サイエンスアゴラ』っていうイベントがあって、これは科学を分かりやすく伝える大会なんですね。そこで優勝させてもらったんです。

 僕がやっていることが、すごく難しい大学の科学を分かりやすく一般の人たちに伝えるみたいな芸風なので、それで優勝したので、国の組織から、SDGsって結構難しい内容なので、SDGsを伝えるのをやってくれないかって言われて、それならやりますって言って、それで僕の方は始まったんですよね、全然違うところから。
 で、たまたま吉本興業に所属しているので、“やろうよ! やろうよ!”ってなって、今に至るという、すごくわけの分からないストーリーでございました(笑)」

●普及活動っていうと黒ラブ教授は講演活動を主にされているっていうことですか? 

「そうですね。SDGsを笑って学べるようなイベントを今作っているんですけど、もともと科学のお笑いライブをやっていたんです。それよりも今SDGsの方が多く呼ばれるようになっているかもしれないですね。そのぐらいSDGsがメインになってきてはいますね」

●SDGsとお笑いってなかなか交わることのない2つの要素だと思うんですけれども、どうやって組み合わせているんですか? 

「SDGsって何の略か知ってる? って言った時に、結構多くの人が間違えていたので、間違えた例を紹介しますとか言いながら、例えば“スマブラ、ドラクエ、ガンダム、すげー、いや違うその略じゃないよ! SDGsってそういう略じゃないよ!”とか、

 “SDGsって何の略? そろそろお昼、どうする、ガストか、サイゼリア”とか、“いやいや女子高生の皆さんですか? 違う違う、世界の話だからね!”とか言って(笑)、

 そういう色んなところから、“サンマ、ダイコン、50%オフなら、即買い!”とか“よく言われるよね〜! 奥さんに言われたんだろうね〜”みたいな(笑)、“違うんだって! SDGsっていうのは〜”みたいな感じで、ボケとお笑いを混ぜながらしていて。

 その中でいいのを発見したんですよ、これは笑いではないですけどね。“SDGsって何の略? 世界をどんどんグッドにしたい!”、世界のS、どんどんのD、グッドがGで、したいがSなのでSDGs。“世界をどんどんグッドにしたい!”ってすごくいい、本物より分かりやすくないですか?」 

●分かりやすいです! 

「これはね、あ! と思っちゃいました(笑)」

写真協力:黒ラブ教授

誰でもできるSDGs。

※黒ラブ教授はSDGsをネタに講演会も数多く行なっていらっしゃいますが、なにか気をつけているってことありますか?

「誰でもSDGsって聞いちゃうとわけ分からなくなっちゃうので、これ誰でもできることだよ。例えば環境に気を使っているメーカーのお菓子を買うとか、そういう小っちゃなところから実はできるんだよとか。そこが実は相当な攻撃能力じゃないですけど、地球を動かすパワーになっていると思ってます。

 消費者が今SDGsに関していちばんパワーを持つ時代になってきていると思うので、そこら辺をお伝えすることと、あといかに、僕が環境系のことを喋っていると、なんか意識高い系の方なんだなぁみたいな、全然私と違うんだわと思われがちなので・・・僕がSDGsの講演とか逆に見ると、講演している方をそういう風に思えてしまうので、そうじゃないよみたいなことを伝えるのがメインかもしれませんね。自分が意識高いとかそういうような人間じゃないよ的な感じでやっていますね」

●みんなに関わってくることですよね。

「そうですね。みんなに関わってきて、みんながやらないと実は意味がないので。これまでの環境系の教育というか、運動ってどうしても意識高い系が出ちゃいますよね(笑)。なんかちょっと関係ないかなとか、そうやって随分、多分1987年ぐらいからサステイナブルっていう言葉は、持続可能なっていう言葉は作られているのにも関わらず、どんどん地球がやばいことになってきて、異常気象を起こしたり、結構やばいことになっているじゃないですか。でも環境活動は結構やっていたはずなんですよね、皆さん。やっている方はですけどね。

 それだとやっぱり進まないので、いかに全然普通というか、僕とかもそんな意識は高くないので、そういう人が実はやれるんだよとか。そういうところを目指したいので、わざと講演中、これよくないんですけど、ペットボトルを持っていきます、マイボトルじゃなくて(笑)。こいつ全然できてないじゃん! こいつ大丈夫か? って思わせるような、俺がやったほうがいいんじゃないか? というような感じに思わせたほうが多分やれると思う、印象深くなりますしね。

 SDGs講演っていうと真面目な話を今から聞かされるんだろうなって、思ってないかもしれないですけど、ちょっとあると思うんですよね。前ふりでインパクトや面白さも与えながら、こいつ全然ダメだな、みたいな(笑)結構意図的にやっていて。そんな人でも少しこういうこともできるんだ、みたいな。SDGsを全部守れって言ったらできなくなっちゃいますので、一部でもいいから、まずはそういうようなところを伝えられればいいなって思っていますね」

写真協力:黒ラブ教授

<「SDGs」の前身「MDGs」とは>

 さて、今回、黒ラブ教授から教えてもらったことがあります。それは「MDGs」。この「MDGs」は「MILLENNIUM DEVELOPMENT GORLS(ミレニアム・デベロップメント・ゴールズ)」の略で「ミレニアム開発目標」と呼ばれています。「SDGs」の前に定められた目標で、2000年に国連で採択され、2015年までに8つの目標を達成しようというものでした。

 その目標のなかで、貧困の撲滅や初等教育の普及などには大きな成果があったとされていますが、解決できなかった課題や、新たな環境問題などに対応するため、「SDGs」が誕生し、17の目標が設定されたということなんです。

 「MDGs」と「SDGs」の違いは、目標の数だけではありません。前身の「MDGs」は国連や国の政府が取り組みの主体だったのに対し、「SDGs」は国や自治体に加え、民間企業や一般の人々も取り組むことになっています。また、目的は「MDGs」が発展途上国の課題を解決することでしたが、「SDGs」は先進国の課題を解決することも含まれています。

 「SDGs」の17の目標=ゴールは2030年までに達成することになっています。私たちひとりひとりに、何ができるのか、「黒ラブ教授」もおっしゃっていましたが、お菓子を買うにしても環境のことを考えて作っているメーカーのお菓子を選ぶなど、消費者に出来ることってたくさんあるのではないでしょうか。

いかに続けるのかが、いちばん大事

※黒ラブ教授はSDGsの講演会で、こんなことを感じているそうです。

「講演をやりながらお客様からも学べるので。よく肥料を土に返すみたいな、生ゴミを肥料に返してみたいなのあるじゃないですか。そういうキットを売っていたりする地域があるんですけど、意識高い系の人ですら続かないんですって、大変で。それだとやっぱり一過性のものになって、SDGsムーブメント! みたいになるんだなっていうのを勉強して、やっぱりいかに続けるのかっていうのがいちばん。

 意識が高い人でもそういう行動が続かない人もいるんだから、そこをどうにか変えたいなと思ったりして、色々そういうことも言ったりしながら。結構裏のところをみんな言わないですよね、やっぱり恥ずかしいっていうか。 そういうありのままの声を聞けるのもやっぱり芸人の特質だろうなと、そういうところがありますね」

●17の目標の中で黒ラブ教授がいちばん気になっている目標っていうのはありますか? 

「これはですね〜何にしようかな(笑)。まぁ自分も貧困ちゃ貧困なので〜と思ったんですけど(笑)、いちばん大事なのは13番の気候だと思うんですよね。気候がダメになったら家も壊れたりとか、森も壊れたりとか、結構すごい力なので、そしたら貧困にもなりますし、台風とか異常気象とかで教育もできなくなる場合もありますし、なのでやっぱり13番、芸人としてはちょっとつまんない答えですね〜(笑)。

 なので! 気候をなおすには、多分住み続けられる街づくりをっていう11番があるんですけど。もともと僕たちは住み続けられちゃっているんですけど、そういう意味じゃないですけどね。すごく長い目で見た住み続けられる街づくりをなんですけど、それをしっかりできると多分気候もよくなると思うので、この住み続けられる街づくり、例えば小さな環境で世の中を回すというか地産地消というか、そういうようなところができると多分環境も汚さなくなると思うので、11番にします!」

写真協力:黒ラブ教授

難しい内容を分かりやすく

※教授は東京大学大学院の研究員、理系の大学講師、そして国立科学博物館認定のサイエンス・コミュニケーターの顔もありますが、なぜ芸人さんになろうと思ったんですか?

「昔から笑わせていた天才的な少年だったんですよ、まさかこんなに全然売れないとは思いませんでしたけど(笑)。じゃなくて、本当に昔から笑わせていたのは事実で、それでM1グランプリに行ったんですよね。その時まだ素人だったんですけど、たまたま新聞に載ったりして、やっぱりお笑いってすごいなって思ってやっていたんです。そのあと大学に行った時に、大学の授業すごくつまんなかったんですよ。大学の授業を見たら、すごくつまんなくさせる技術がてんこ盛りだったんですよね(笑)。

 ある意味すごく才能的な授業で、どんなに興味を持っていても眠くなるっていう魔法の性質があるんですよ、みんながみんなじゃないですけどね。で、お笑いもやっていたんで、いかに引きつけるか、笑わせるか、楽しくさせるかっていう技術も片一方で学んでいたので、もしかして難しい内容でも、こっちの面白い技術を入れればできるんじゃないかっていうのが、今の黒ラブ教授なんですよね。だからSDGsも実は難しい内容を話してるんですけど、おもしろおかしく簡単に見させるというか」

●東京大学の大学院では研究もされているっていうことですけど、それはどんな? 

「黒ラブ教授の活動が難しいものをどう分かりやすく伝えるかっていうことなんですけど、これって科学コミュニケーションっていう学問なんですね。研究は、黒ラブ教授自身をというか(笑)、それを論文にするというか、いかにみんなに伝えるか、他の方にもそのノウハウを伝えて、難しい内容でもいかに伝えるかとか。

 結構、科学コミュニケーターっていっぱいいるんですけど、多くが難しいものをわかりやすく伝えるには難しいものを省いちゃって、中身のない、へ〜だから何? っていうような説明になっちゃっていて、魅力がなくなっちゃうんですよね。その難しさに魅力があったりするところもあって、そこを加えながら、僕の場合、難しいことをうまく入れながらも分かりやすくするように努力するんですけど」

●そのバランスってちょっと難しそうですね? 

「もう本当それもさじ加減で、よく失敗もしますね。失敗するんかい!(笑)そんな感じですけど」

●サイエンスコミュニケーターっていう肩書きもありまして、すごいですよね。これも認定されるものですよね。

「そうなんですよ。これ国立科学博物館で、超勉強するんですよ(笑)。すごく時間がかかるんですよ。ずっと試験ばっかりあって、結構な難易度で、選りすぐりの人たちが集まってくるので」

●黒ラブ教授がこのサイエンスコミュニケーターってことは、すごいことなんですね。

「ちょっと自慢しておきました、ありがとうございます! 売れない芸人だからとりあえずそういうこと言っとかないと(笑)」

写真協力:黒ラブ教授

理系が地球を助ける!?

※最後に世界はまだまだコロナ禍のなかにいますが、2030年までにSDGsの17の目標を達成するためには、どんなことが大切だと思いますか。

「そうですね。職とかも失っている方が多くなってきちゃっていると思うので、まずはウイルスを抑えて、社会の混乱を減らすというか、完全にどうなるか分からないですけど、それがないと、余裕がないままだと人間ってやっぱり環境のことなんて気にしてられないですよね、正直言って。もう自分の環境が悪くなってきちゃっているので、まずはウイルスを抑える。まずそこが始まんないと多分SDGsが、今回コロナ禍になってプラスチックのゴミがすごく増えちゃったんですよね、ギュイーンって上がったんですよ」

●コロナ禍でどうしてプラスチックが? 

「梱包材が増えたじゃないですか、それですごいらしいんですよ、今、ゴミの業界に聞いたら。まずはそこら辺をもとに、巻き戻っているところが多いので。意外にロックダウンしても気候が少し直っただけで、やっぱり悪かったんですよね。
 少しだけしか直っていないというのは、ロックダウンしても駄目ってことは、じゃあどうするんだって話ですけど。相当社会の仕組みを変えなきゃいけないなっていうようなレベルになっているんですけど、ちょっとそう思いましたね」

●黒ラブ教授さんが思い描く未来像があれば是非教えてください。

「やばい、今のところ芸人なのに真面目なことしか喋ってない! やばいこれはやばいですよ!(笑)思い描く未来ですよね。やっぱり科学コミュニケーターで科学をやっている人間なので、科学っていい面もあるけども、やっぱり環境を壊した張本人のひとつでもあるんですよね、技術っていうのは。
 なのでやっぱり理系をもっと増やして、いい意味の理系の技術が少しでも上がって、今度は地球を助ける技術の発展を促したいので、そういう理系が増えればいいかなっていう、そういう未来を描いている真面目な黒ラブ教授でございます」


INFORMATION

 「黒ラブ教授」の活動についてはオフィシャルブログやTwitterをぜひご覧ください。
吉本興業が行なっているSDGsの活動にもご注目を!

◎「黒ラブ教授」オフィシャルブログHP:https://kurolovekyouzyu.web.fc2.com

◎吉本興業が行なっているSDGsの活動のHP:https://www.yoshimoto.co.jp/sdgs/

新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第1弾!〜ビニール傘をアップサイクル「プラスティシティ」〜

2021/6/13 UP!

 今週から番組放送30年特別企画として新シリーズがスタートします。シリーズ名は「SDGs〜私たちの未来」。この番組ではおもに「環境」や「自然」に関する項目にしぼって、SDGsについて、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。そして今月6月は「環境月間」ということで、3週にわたって新シリーズをお届けします。

 第1弾の今週は「SDGs」をひもときつつ、雨のシーズンということで、廃棄されるビニール傘を、トートバッグなどの製品にアップサイクルして販売するブランド「プラスティシティ」にフォーカス! ファウンダーでデザイナーの「齊藤明希(さいとう・あき)」さんにお話をうかがいます。

☆写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

齊藤明希さん

<SDGsとは?>

 きょうのゲスト、齊藤さんはバッグの専門学校在学中に「プラスティシティ」を設立、現在はトートバッグをメインにブランド展開、おもに自社のオンラインストアで販売しています。齊藤さんにお話をうかがう前に「SDGs」とはなにか、おさらいしておきましょう。

 SDGsは「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。

 私たちがこれからもこの星「地球」で暮らしていくために、世界共通の目標を作って、地球の資源を大切にしながら経済活動をしていこう、そのための約束がSDGsなんですね。

 2015年の国連サミットで採択され、2030年までに達成しようという目標=ゴールが全部で17設定されています。その範囲は飢餓や貧困、環境問題、経済成長、そしてジェンダーに関することまで、いろいろな課題が入っています。

 きょうはSDGsの、17設定されているゴールの中から「つくる責任 つかう責任」について考えていきましょう。

年間8000万本!?

●それでは齊藤さんにお話をうかがっていきましょう。ビニール傘のビニール部分をアップサイクルの素材に選んだのは、どうしてなんですか?

「もともとバッグの専門学校に入りたいって思ったのも、なるべく環境に優しい素材を使ってバッグを作ってみたいと思って専門学校に入ったんですね。だから何か素材をと思って、日頃から何が使えるかっていうのは探していて。東京の学校だったんですけど、通学している時にもよく雨の日には捨てられた傘を見ることも多かったですね。

 最初は例えばコルクとかも環境にいい素材だし、使えるかなって思ってちょっと試してみたり、ヴィーガン素材っていうのも市場に出始めてはいたので気になってはいたんですけど、そういうものを取り寄せて試すのがちょっとハードルが高く感じたっていうのもあったり、見たことある製品だったり、何かもうちょっと新しいものを探したいなとは思っていて。

 環境にいい素材って見る観点によってすごく意見が分かれるというか、難しいものだと思うので、どのみちゴミにされるものを再利用できるのが、いちばんのエコな素材なんじゃないかなっていう風に考え始めて、それから普段の生活で身近なところで何かないかなって探し始めました」

●国内で1年間に廃棄されるビニール傘がおよそ8000万本ということですけれども、それは齊藤さんはどのようにお考えですか?

「なんか想像つかない数だなって。私は最初こういう問題をテレビのニュースで知ったんですけど、でも8000万本って集まっているのを見たこともないし。ただブランドを始めて実際に回収した傘、3000枚のビニールが山積みにされているところを見た時に、私より背が高いくらい山積みにされていたんですけど、これでも3000枚なんだっていう、すごくそれは衝撃的ですよね」

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

試行錯誤を経て開発した「グラス・レイン」

●ビニール傘のビニール部分はどうやって集めているんですか?

「ビニールの部分は、専門学校の時は本当にゴミを回収している方に直接“譲っていただいてもいいですか?”って聞きに行ったり、確実にゴミにされているっていうのが分かる傘を1本1本回収してましたね。

 道ばたで見つける傘や置いてある傘は、明らかにゴミに見えても、一応。所有権が分からないものなので勝手に取ってはいけないらしくて、なのでもう本当にゴミとして回収されたものだけを集めていたんですけど、ブランドになってからは、商業施設や鉄道会社さんのほうで回収された傘を大量に買い取っています」

●大体、ひと月でどれぐらい集まるものなんですか? 

「毎月集めているっていうわけではなくて、まとめて最初3000本分を一気に買い取って。だから定期的に回収するっていう感じですね」

●一般の方々からもビニール傘を集めているんですよね? 

「はい。数ヶ月前に始めた企画なんですけど、直接メッセージでお客様から、家にある傘を回収していただくことは可能ですか? っていう連絡がいくつかあったり、そういったこともあったので始めたプロジェクトです。1枚ビニール部分をある程度洗浄していただいて、ポストで投函していただいて、1枚につきオンラインストアで使える100ポイントと交換するっていうようなシステムになっています」

●どのくらい集まっていますか? 

「まだ100枚はいってないかなって感じなんですけど、でも徐々に集まってきて、今はトートバッグ1つ分ぐらいは集まっています」

●ビニール傘は、家にあるっていう方きっと多いと思います。

「気づいたら溜まっているっていう方がすごく多いので、どんどん送っていただきたいです!」

●廃棄されるビニール傘のビニールの部分を、独自の技術を使って新たな素材に生まれ変わらせて、「グラス・レイン」という風に名付けられましたけれども、そこに辿り着くまでも色々な試行錯誤があったんじゃないですか? 

「そうですね。最初は1枚のビニールで縫製をしてみたり、異素材と縫い合わせたり、色々試したんですけど、何をしてもやっぱりビニール傘のチープさから抜け出せなくて。

 いい素材と組み合わせてバッグを作っても、他の素材に頼っていたら、もはやビニール傘を使う意味がなくなってしまうって思って、そのビニール部分だけで、単体でもっと価値をあげないといけないなっていう風に考え始めて、そこからこのビニールだけで何ができるかっていうのを色々と実験し始めました。

 色々と塗ってみたりとか、のりを塗って何枚か重ねたりとか、どうやったらもうちょっと強度を上げて、見た目もよくするかっていうので、色々試行錯誤はしました」

*補足:齊藤さんは素材になるビニールの強度をあげるために、何枚か重ねていろいろ試したそうです。そして熱すれば硬くなる性質に気づき、アイロンで圧着すれば、接着剤を使わなくてもくっつくことを発見。そして独自の技術を施して、新たな素材「グラス・レイン」を開発されました。

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

<傘をゴミにしないために>

 今週は新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第1弾! SDGsの17ある目標から「つくる責任 つかう責任」について。ということで、廃棄されるビニール傘をアップサイクルしているブランド「プラスティシティ」の取り組みをご紹介しています。

 さて、雨の季節、急に降られて、仕方なくビニール傘を買って家に帰ったことってありますよね。どのご家庭でも2〜3本をあるであろうビニール傘を一般家庭で廃棄する時は、多くの自治体では不燃ゴミとして回収しているようですが、持ち手の部分のプラスチック、金属の骨、そしてビニール部分があるので、とてもリサイクルしにくい、やっかいなゴミになってしまいます。

 では、傘をゴミにしないコツはないのでしょうか。

 まず、番組としてご提案したいのが、国産の良質な傘を購入して大事に使う。

 日本の、傘を作る技術は優れていますが、海外で生産された安い傘におされて国内のシェアは激減しているそうです。国産の傘を購入することで、傘を作っている会社や職人さんを守ることにもつながりますよね。

 そして、大事な傘がもし壊れたら、ホームセンターやショッピングモールにある修理屋さんで直してもらいましょう。愛着のある傘は修理して長く使いたいですよね。

 続いて、徐々に広がり始めている、傘のシェリングサービスを利用する。

 駅前、商業施設、コンビニなどにある傘スポットからレンタルし、使わなくなった傘は返却するシステムで、1日70円で借りられるとのこと。

 詳しくは「アイカサ」のサイトをチェック! https://www.i-kasa.com/

 そしてご家庭にある、いまは使わなくなった傘は捨てずにリユースしてもらう。

 地域によっては傘の貸し出しサービスを行なっているところもありますし、発展途上国の支援物資として受け入れている団体もありますので、そこに寄付するのはいかがでしょうか。

 そして、これは傘本体ではないんですが、雨の日に、百貨店やショッピングセンターなどの入り口に設置してある、濡れた傘を入れるビニール袋、これもゴミになっちゃいますよね。

 そこで提案したいのが、自分だけの傘カバー。

 くるくる丸めてコンパクトになるので持ち運びが苦にならないし、傘を収納して肩にかけたりできる、機能的な傘カバーが市販されています。一度チェックしてみてくださいね。

 傘をゴミにしない究極のコツは、やはり私たちの意識を変えること、ではないでしょうか。

 仕方なく買ってしまったビニール傘を処分するときには、齊藤さんのお話にもあった「プラスティシティ」の一般家庭向けリサイクル・プログラムをぜひご利用ください。ビニール部分1枚で100円分のポイントがつきます。ビニール傘からビニール部分を取り外す方法や、送り方などは「プラスティシティ」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎プラスティシティ:https://plasticity.co.jp/

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

便利さが無駄を生む!?

●実は齊藤さんは3年間、イギリスの大学に留学されていたそうですよ。イギリスでの生活が今の活動に何か影響を与えたことってあるのでしょうか?

「大学にいた頃は何も考えていなかったというか(笑)、今関心あるものを当時は感心が特になかったりしたんですけど、後々、変わったかなって思うのは、東京からイギリスのロンドンではなくてちょっと田舎の方に行ったんですけど、すごく色んなことが不便に感じてましたね。

 日本ってその便利さが、例えば何かが不便だったなって思ったら、それに対してのソリューションが製品っていう形であることが多いと思うんですけど、イギリスはそうではなくて、何か不便だなって感じたことは自分なりに受け入れないといけなくて。

 その時はめんどくさいなとか、何でもうちょっと東京みたいに進んでないだろうって思っちゃったりとかしたんですけど、でも逆に(日本に)帰ってきて、こんなに便利じゃなくてもいいんじゃないかなって。その便利さが結局色々な無駄を出している要因でもあるので、帰ってきてからやっと気付かされたことだと今は思います」

●具体的にイギリスで不便だったことって、どんなことなんですか? 

「それこそビニール傘はそんなに売っていないし、雨が降ったら、イギリスはよく雨が降るし、1日でもすごく変化が多いので、別に雨に打たれてもいいし(笑)、何かそういったことがあったり。

 あと傘とかは関係なく、例えば自動販売機があまりなかった町で、お店がすごく早く閉まってしまう、そういうのに不便さを感じたんですけど、お店が開いてる時に行けばいいし、自分がその環境に合わせて行動すればいいだけであって、何もかも今欲しいからっていう風に考えなくてもいいのかなって思いました。 お店が閉まっている分、そこで働いている人たちは早く家に帰って家族と過ごせているんだなとか、そういったことを考え始めました」

なくなるのが目標のブランド!?

●今週は新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第1弾! SDGsの17ある目標のなかから「つくる責任 つかう責任」。

「プラスティシティ」のスローガンに「10年後はなくなるべきブランド」とありますが、これにはどんな思いがありますか?

「それは色々な思いがあるんですけど、私たちがこんなに簡単にビニールの素材が手に入ってしまうっていうのは、きっといいことじゃないし、10年後にはこんなに簡単に手に入らない素材であってほしい、それがブランドとしての目標かなって思います」

●このブランドを初めて何か意識の変化みたいなものってありました? 

「購入してくださった方のコメントとかを読んでいて、意識の変化っていうか分からないんですけど、気付かされたことは、こんなにも共感してくれている人が多いんだっていうこと。自分が関心があったり、気になっていたことが、こうやってブランドっていう形でローンチした時に、みんなも同じことを感じているんだっていう風に思ったことですね。

 あとはお客様の中で、SNSで投稿してくださった方で、私たちの製品ってもともと廃棄されている傘なので、どうしても取れない汚れだったりもあるんですけど、私はむしろそのサビの汚れがかっこよくデザインになるなって思って、それも取り入れたいと思っていて。

 それはすごくお客様によって反応が色々で、好む方もいれば、もうちょっと白いものがほしいっていう方もいらっしゃるんですけど、買ってくださった方の中で、透明なものを想像していて、届いた製品を見たら、サビが付いていてショックを受けたって言っていたんですね。

 でもそのショックを受けた、何でも新品で何でも新しいものを期待してしまっている自分の考え方を、意識することができたっていう風にコメントしてくださって、私も想像していなかった反応だったので嬉しいなと思って」

●最後に、この番組のリスナーに伝えたいことをお話いただきました。

「私は個人的に物を買うときは、購入することは一種の投票と同じようなもので、貢献したい会社だったり、こういうプロダクトが増えてほしいなっていうものに対して、なるべくお金を使うようにはしています」

●その製品を購入するだけじゃなくて、その背景も知ってもらいたいっていうことですか? 

「そうですね。ちょっと意識するだけでなくせる無駄だったり、ゴミになるものをちょっとでも減らせるのかなって。だからきょうあすからでも始められることって、きっと気にしていないとできないけど、ちょっとでも意識するとすぐに変えられることとか、行動に移せることってあるのかなっていう風に思います」

写真協力:齊藤明希(プラスティシティ)

INFORMATION

 齊藤さんは、廃棄されるビニール傘をアップサイクルするブランド「プラスティシティ」を立ち上げました。これは「つくる責任」の一翼を担っていると思います。「10年後にはなくなるべきブランド」という思いにも共感しました。みなさんは、どう感じたでしょうか。

 「プラスティシティ」で販売しているトートバッグなどの製品情報や、一般家庭向けのビニール傘のリサイクル・プログラムについて、詳しくは「プラスティシティ」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎ 「プラスティシティ」HP:https://plasticity.co.jp

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