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シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第12弾〜お花のロスレスブーケ、カラーコスメをアップサイクルしたクレヨン〜

2023/4/23 UP!

 SDGsという言葉、ここ数年で随分浸透してきたように思いますが、いかがでしょうか。SDGsはご存知の通り「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。

 これからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って資源を大切にしながら経済活動をしていく、そのための約束がSDGs。2015年の国連サミットで採択され、全部で17の目標=ゴールが設定されています。

 この番組、ベイエフエム / ザ・フリントストーンでは「SDGs〜私たちの未来」というシリーズ企画を立ち上げ、これまでにSDGsに取り組んでいる事例をいろいろご紹介してきました。

 今週は、そんなシリーズの第12弾! SDGsの17の目標=ゴールから「つくる責任 つかう責任」ということで、「ロスを減らす、なくす」をテーマにお花の「ロスレスブーケ」、そしてカラーコスメをアップサイクルしたクレヨン「ハロヨン」をクローズアップ! 

 今までにないシステムを作り、イノベーションを起こした、ふたりの女性起業家、「FLOWER」の小室美佳(こむろ・みか)さん、「COSME no IPPO」の大澤美保(おおさわ・みほ)さんにご登場いただきます。

そしてきょうは素敵なアイテム「ハロヨン」を抽選で3名のかたにプレゼント! 応募方法はこちらから!

☆写真協力:FLOWER、COSME no IPPO

可愛くてお得!

写真協力:FLOWER

※まず、ご紹介するのは「FLOWER」という会社が提供している「ロスレスブーケ」です。このサービスはいろんな種類のお花の、可愛くてヴォリュームのあるブーケがお手頃な価格で利用できる、とても優れたサービスです。

 それでは、このサービスを企画し、展開している「FLOWER」の小室美佳さんにお話をうかがっていきます。

 この「ロスレスブーケ」というネーミング、ポイントは「ロスレス」なんですよね。そのことも含め、どんなサービスなのか、ご説明いただけますか。

「ロスレスブーケは、私たちが作った新しいワードなんですけども、端的に言いますと、数量限定で売り切り販売をすることで、そもそも破棄とかロスになる花を生み出さずに販売するサービスです。なので、ロスゼロブーケでもいいんですけど、ゼロに近づける努力をするっていう意味でも、ロスレスブーケと名付けております。

 一般的にはお花屋さんは、やはり(お花は)生物ですし、仕入れた時に花の状態も個体差、人間と同じで生き物なので、個体差がありますし、すべてが売り切れる前提で販売はしていないのが当たり前の業界なんですね。

 いちばん(お花が)綺麗な状態でお客様に届けるって意味でも、仕入れたお花の中でも綺麗なものを選ぶし、かつ売り切れなかった場合に関しては、その分も考慮して売価にちょっと転換させて、お花を売るのが業界の、そういうものだよねっていう考え方があったんです。

 もっと手軽に、もっと新鮮に、もっと可愛いものを人に届けるにはどうしたらいいのかなっていうところを、私たち含めて改めて考えた時に、じゃあ仕入れた分を数量限定で売り切っちゃって販売をすることで、何か新しい仕組みにならないかなって考えた上で、このロスレスブーケが誕生しました」

●確かにサイトに載っている、ロスレスブーケのいろんな種類のお花を見ると、残りわずかっていう表示が出ていますよね。

「そうですね」

●いちばんのセールスポイントは、どんなところにあるんですか?

「いちばんのセールスポイントは、やはり可愛いっていうところなんですけど、もうひとつ・・・いちばんがふたつあるんですけど(笑)、お得っていうところです。可愛いブーケがお得に手に入るっていうのがセールスポイントです」

(編集部注:気になる販売価格は、10本前後のお花のブーケが送料込みで2,200円くらいから。ほかで購入すると3,500円から4,000円ほどのお値段になるブーケだそうです)

お得だけじゃダメ!?

写真協力:FLOWER

※もともとお花の業界とは無縁だった小室さんが、なぜこのサービスを始めるに至ったのか、それは以前、在籍していた会社の仕事が多忙を極め、深夜、家に帰って寝るだけという生活を送っていた頃、ある時、友人の結婚式でお花をいただき、持ち帰って部屋に飾ったところ、そのお花に癒され、「自分の時間」を取り戻すことにつながったそうです。

 そこで「小室」さんは、お花のある暮らしを多くのかたに、手軽にリーズナブルに提供できないかと考え、試行錯誤のすえ、1年半ほど前に「ロスレスブーケ」のサービスを始めたそうです。

●小室さんは、お花の仕入れにも関わっているんですか?

「はい、そうです。もともと定期便(*)も含めて、別の会社のフローリストさんにも入ってもらったりしたんですけど、今回のロスレスブーケってお得だけじゃダメなんですよね。やっぱり可愛くてお得! それを私がなんとなく抱いている、可愛いみたいなものを言語化して、実際に売るところを別の方にやってもらった時期もあったんです。

 でも、うまく伝わらなかったり、やっぱり(花は)生き物なので、実際に思うようにいかなかったりしたこともありましたね。
 私も割とぱっと行動しちゃいたい人間なので、私やってみるか、みたいな感じで・・・経験はなかったんですが、それまでもずっと毎日、花のことを考えているような人だったので、気づいたら知識とかも増えていたこともありまして(やるようになりました)。

 私が仕入れとあと、当日の撮影ですとか、実際に(お客様に)アプリを見てもらう時に、ブーケの(写真に添える)タイトルにも、とてもこだわっているんですけど、そういう編集まわりも含めてやっています」

(編集部注:小室さんの会社「FLOWER」では「ロスレスブーケ」のほかに「ポストに届く定期便」(*)というサービスも行なっています。「ロスレスブーケ」に関しては、毎週90種ほどの新作が登場しているそうですよ)

お花のある暮らし

「ロスレスブーケ」

※部屋にお花があるだけで、ぱ〜っと明るくなるというか気持ちまで晴れやかになりますよね。

「いちばん気軽に自分のテンションを高めてくれるというか、花が目に入った瞬間、風速早く、可愛い! ってなるのって、実は花しかないんじゃないかなと思っています。花か私だったら自分の子供か、みたいな・・・ケーキとかコスメとかも含めて、私のまわりは可愛いものに溢れているんですけど、手軽にかつ可愛いキュン! って思うものは、もしかすると花の力なのかなって最近思っています」

●リスナーさんたちがロスレスブーケが欲しいと思ったら、どのようにしたらよろしいですか?

「嬉しいお言葉です。その場合は、今『FLOWER』というアプリをiOSとandroidでダウンロードできるようになっていますので、検索していただいてアプリをダウンロードいただくか、あとは最近WEBでも注文ができるようになりましたので、まずはちょっとWEBからやってみようかなという、そういう方に関してはインターネットで検索していただいて、そこからご注文いただけます」

●ロスレスブーケのサービスを通して、いちばん伝えたいことを教えてください。

「いちばん伝えたいこと・・・いっぱいあるんですけど(苦笑)、やっぱり私、1ユーザーとして思うのは、花がきっかけで、花のある暮らしを続けることで、自分の時間が好きになるというか、今の私いいじゃん! じゃないですけど、自分の暮らしが好きになるなと思っています。

 それのいちばん手軽な存在で、かつロスレスブーケの場合はお得っていうところもあるので、ハードル低く、自分の理想的な状態を実現できる素敵なツールだと思っています。

 みなさんがなんとなく抱いているお花のある暮らしっていいよね! っていうものを続けることが、もし『FLOWER』で出来るのであれば、すごく素敵な時間を毎日生活の中で続けられるんじゃないかなって、今信じてやっているので、そういう時間がみなさんに増えたら嬉しいなと思っています」


<食品ロスの現状>

 私たちの生活を見てみると、「食品ロス」も大きな課題ですよね。農林水産省のホームページによると、日本では1年間におよそ612万トンもの食料が捨てられているそうです。これは東京ドーム5杯分とほぼ同じ量で、国民ひとりあたりに換算すると、毎日お茶碗一杯分の食料を捨てていることになるとか。

 一方、世界では、まだ食べられる食料が年間およそ13億トンも廃棄されているそうです。

 日本での食品ロスの原因は、大きく分けてふたつ。ひとつはスーパーマーケットやコンビニなど、小売店の売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外品などの事業系食品ロスが328万トン。

 もうひとつは、家での料理の作りすぎや、買ったのに使わずに捨ててしまうなど、家庭系食品ロスが284万トンとなっています。

 環境への影響や、世界的な人口の増加による食糧危機を考えると、食品ロスの削減は緊急な課題といっても過言ではありませんね。

 そんな中、日本でも自治体や企業での取り組みが広がりつつありますが、私たちにもすぐできることがあります。例えば、買い物に行く前に冷蔵庫の中やストックしている食材を確認し、無駄な買い物をしない。

 それから、お腹が空いている時やイライラしている時に買い物に行くと、買う予定になかったスイーツやお惣菜など、余分な物を買ってしまうので買い物に行くタイミングを見計らうのも大事かもしれません。

 ほかにもご家庭で、そしてひとりひとりが出来ること、たくさんありますよね。ひとりの小さなことでも、1000人が、10000人が続ければ、大きな削減につながるはずです。


カラーコスメをアップサイクル!

写真協力:COSME no IPPO

※ここからは、カラーコスメをアップサイクルしたクレヨン「ハロヨン」をご紹介します。この「ハロヨン」は、大澤美保さんが進めているプロジェクト「COSME no IPPO」から生まれたアイテムで、使われなくなったカラーコスメを回収し、クレヨンに生まれ変わらせた画期的な商品なんです。

 一箱に5色入っていて、持つと手に馴染む独特なフォルム、そして、箱ごとにクレヨンの色が違うのも特徴なんです。見た目も可愛いし、発色もいいし、中にはラメが入っているクレヨンもあるんです。さらに一般的なクレヨンは1本1本を紙で巻いていますが、「ハロヨン」は巻紙がないのでゴミにならないのもいいな〜と思いました。

大澤美保さん

 そんな「ハロヨン」を開発した大澤さんにお電話でお話をうかがいました。まずは「ハロヨン」というネーミングに、どんな思いが込められているのか、お聞きしました。

「大好きなコスメをアップサイクルして、クレヨンという新しい価値に変えていくっていうことで、その新しいクレヨンに、こんにちは、っていうような意味で、ハロー、それにクレヨンをくっつけた造語です」

●ハローとクレヨンで、ハロヨンなんですね〜。

「はい! そうなんです」

●改めてCOSME no IPPOとは、どんなプロジェクトなのか教えていただけますか?

「美容業界のゴミゼロを目指して活動しているんですけれども、具体的にはお役目を終えた、もう使わなくなったアイシャドウとかチークとか口紅などのカラーコスメを、クレヨンにアップサイクルしてお届けしているというプロジェクトになります」

ワクワクの循環

※カラーコスメをクレヨンにするという発想が素晴らしいなと思っているんですが、そのアイデアはどこからきたのか、お話しいただきました。

「私自身、すごくコスメが大好きなんですけども、やっぱりカラーコスメは何にワクワクするかっていうと、色や発色だったりすると思うので、それを捨ててしまって、さよなら! にしてしまうのではなくて、何かに活かしたいなと思ったんですね。

 (私には)娘がふたりいるんですけれども、娘たちが絵を描いていることとか、世の中を見渡してもアートという業界が盛り上がっていることなどもあって、絵を描くものに変えたいなと考えまして、そこからいろいろ試行錯誤した結果、あの形になっています」

●コスメは、例えばアイシャドウとか最後の最後まで使い切ることって、私自身はなかなかなくって、かといって捨てるのもっていう感じで、どんどん溜まっていってしまうんですけど、悩ましいですよね〜。

「そうなんです。ワクワクして買ったものをワクワクした形に変換するという『ワクワクの循環』というふうに呼んでいるんですけれども、喜んでくださるお客様も多くいらっしゃるので、まだまだもっと多くの方に知っていただきたいなと思って活動しているところです」

写真協力:COSME no IPPO

(編集部注: カラーコスメの回収方法なんですが、「COSME no IPPO」の公式インスタグラムからコンタクトしていただくか、百貨店のイベントでも回収しているそうです。

 「ハロヨン」はプレゼントとして、とても人気で、お子さんだけでなく、大人の女性も使っているそうですよ。大澤さんは今後「ハロヨン」で描いた絵の展覧会を開催したいとおっしゃっていました)

「ハロヨン」

INFORMATION

<「ロスレスブーケ」「ハロヨン」情報>

 「ロスレスブーケ」を取り寄せてみたいと思われたかたは専用のアプリ、またはサイトからご注文いただけます。お値段はブーケによって異なりますが、送料込みで2,200円ほどから購入できます。詳しくは「FLOWER」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「FLOWER」:https://flowr.is

 「ハロヨン」は一箱5色入り、箱ごとにクレヨンの色が違うのでどんな色が入っているか、開けるときのワクワク感もあります。価格は一箱税込で1,980円。ご注文は「COSME no IPPO」のオフィシャルサイトから、どうぞ。

◎「COSME no IPPO」:https://cosmenoippo.official.ec

<「ハロヨン」プレゼントの応募方法>

「ハロヨン」
「ハロヨン」を抽選で3名のかたにプレゼントいたします。
応募はメールでお願いします。
件名に「プレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。

   メールアドレスはflint@bayfm.co.jp

あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。
番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。

応募の締め切りは4月28日(金)
当選発表は発送をもって代えさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第11弾!〜「ピープルツリー 」みんなが幸せになるフェアトレード・チョコレート〜

2023/2/5 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第11弾!バレンタインデーを前に環境や人にも配慮したチョコレートをクローズアップ! 

 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「貧困をなくそう」「働きがいも経済成長も」そして「人や国の不平等をなくそう」ということで、フェアトレード専門ブランド「ピープルツリー」の活動をご紹介したいと思います。

 先日、ピープルツリーの自由が丘店にお邪魔して、広報・啓発担当の「鈴木啓美(すずき・ひろみ)」さんにおすすめのオーガニック・チョコや、フェアトレードの取り組みなど、いろいろお話をうかがってきました。

広報・啓発担当の「鈴木啓美」さん

「ピープルツリー」に込めた思い

 ピープルツリーは、1991年に発足したNGO「グローバル・ヴィレッジ」を母体に、フェアトレード専門ブランドとして、誕生。ものづくりに関して「森を壊さない」「水を汚さない」「空気を汚さない」「人と命を守る」「無駄にしない」という5つの環境ポリシーを掲げ、活動。フェアトレード・アイテムのお買い物を提案しています。

 そんなピープルツリーの広報・啓発担当の鈴木さんは、もともとはピープルツリーの商品が大好きな、いちファンだったそうですが、もっとみんなに知って欲しい、そんな熱い思いが募り、スタッフとして働くようになったそうです。

写真協力:ピープルツリー

※まずは、ピープルツリー というネーミングにどんな思いが込められているのか、お話しいただきました。

「そのままズバリなんですけど、ピープルは人、ツリーは木。でもそれだけじゃなくて、地球環境とか動物とか、生きとし生けるものという括りで考えていただけたら、人も地球もみんなが幸せに暮らせるように、そんな思いを込めて作られたブランドです」

●改めて「フェアトレード」とは、どういうことなのか説明していただいてもよろしいですか?

「フェアなトレード、直訳すると公正な貿易とか、公平な取引と訳すことができるんですけれども、簡単に説明する時は、人と地球に優しい取り組みです、とお伝えしています。

 今、フェアなトレードでないことがありますので、どうやったら関わる人たちがみんな幸せになれるのかを考えて活動しているんですね。なので、貧困問題と環境問題を、ビジネスの仕組みによって解決したいという取り組みが、フェアトレードだと考えています。

 例えば問題は、たくさんの解決策があったほうが早く解決するので、解決方法、手段はいっぱいあっていいと思うんですよね。だからビジネスじゃなくて、例えば寄付とかボランティアとか、そういうことで解決したいっていう取り組みがあってもいいし、あったほうがいい。フェアトレードは物を作って販売するビジネスの中で、貧困問題と環境問題を解決したい取り組みになっています」

●フェアトレードで大事にしていることだったり、実践していることはありますか?

「やはり人を大切にすることですね。環境も大事なんですけれども、働く人たちがちゃんと生活ができて、幸せに希望を持って生きていけることがすごく大事ですので、フェアであること、公平であること、公正であることが、人と人との関係性も作って物作りをしていくこと、そのためにも自然がないと続けることができませんから環境も大事にしていく・・・」

●まさにピープルツリーですね!

「そうですね!」

写真協力:ピープルツリー

手仕事で作られたこだわりの商品

※続いて、自由が丘店で販売している商品について。現在、どんなファッションや雑貨のアイテムを扱っているのか、教えていただきました。

「今この寒い冬のシーズンですので、イチオシは手編みのニットですね。あとはオーガニック・コットンの肌に心地いいウエアですとか、雑貨もザルもあったりカゴもあったりしますし、可愛い動物のモチーフのアイテムがあったりとか、バッグとかアクセサリーとかいろいろあります」

●楽しいですね。いろんな商品があって・・・。主にどこから輸入された商品が多いんですか?

「今ピープルツリーでは18カ国145の団体と、いろいろやり取りをしながら物作りをしています」

●18カ国、例えばどんな国がありますか?

「主にお洋服だとインド、バングラデシュで作っていただいていて、あと編み物だとネパールですね」

●こだわりはやはり自然素材?

「そうですね。環境を大切にするっていうところで自然の素材を、なるべくオーガニックの素材を、としているんですけれども、大事なのはやっぱり入手しやすこともあると思うんですよね。

 流通するのにいろいろ負担がかかるわけですから、入手しづらいと生産が滞ってしまうので、現地で手に入りやすくて、あとは例えば成長が早いとか、環境への負荷がかからないとか、そういう要素も入れて、その土地土地で手に入りやすい天然素材を使っています」

写真協力:ピープルツリー

●一点一点、手で作られているんですよね?

「そうなんです。手仕事をやはり大事にしています」

●判子のようなもので押して作ったウエアもありましたけれども・・・。

「はい、ブロックプリントという手法なんですね。柄を作り出すのに判子でポンポン押すように模様を作っていくんですけど、あれも1色につき、ひとつの判が必要なので、多色刷りする時にはその木の判がいくつも必要になる、本当に手間がかかっていますね」

●すごいですね〜! あとスカーフも手で描かれているんですよね?

「そうなんです。職人さんがアーティストのように筆運びをしてくださって、素敵な絵を描いてくださっていますね」

●味がありますよね〜! 唯一無二ですよね。

「そうですね。手仕事の場合、途上国で物を作っていただいているんですね。フェアトレードでは途上国に住んでいる経済的に立場の弱い方が、ちゃんと自立して生活できるように、仕事の機会を提供することも大事にしています。そういう方々が住んでいる地域は、例えば電気が通ってないとか社会的なインフラが整ってないケースがあるんですよね。

 そんな中ですぐに仕事になる、手を生かすことが大事。手編みだったりとか手刺繍だったりとか、そういうことなんですね。だから大規模な設備投資をしなくても大きな工場を作らなくても、すぐ現金収入が得られる仕事を作り出すためにも、手仕事を大事にしています」

●手仕事だからこそ、ファストファッションとは違った味わいみたいなものがありますよね。

「そう言っていただけると本当に嬉しいです。やっぱり作って、物として販売している以上、素敵だなと思っていただかないと手に取っていただけないので、そこはやっぱり欲しくなる魅力的なものを作る、そこもとても大事、それがピープルツリーの役目でもありますね」

大人気! ピープルツリーのチョコレート

※もうすぐ「バレンタインデー」ということで、ピープルツリーで販売しているフェアトレード・チョコレートをご紹介したいと思います。

 いつ頃からチョコレートの販売を始めたのか、お聞きしました。

「(販売を始めたのが)1994年から1995年にかけてなので、もう30年近くもなります」

●そうだったんですか! きっと見たことあるっていう方も多いと思うんですけれども、何種類くらい販売されているんですか? 

「業務用のチョコチャンクも含めて、今25種類販売をしております」

写真協力:ピープルツリー

●見た目もパッケージも可愛くて、食べ比べしたいな〜なんて思うんですけれども、それぞれどんな特徴があるのか教えてください。

「わかりました。オーガニックでフェアトレードの素材を使っているのは、もちろん全部共通する特徴になっています。そして美味しさの秘密はココアバターですね。口に入れるとすぐとろけるココアバターを贅沢に使っているので、とてもなめらかな口どけを楽しんでいただけます。

 それぞれにフレーバーがあって、フレーバーによって黒糖と砂糖を使い分けたりしているので、味わいを楽しんでいただけます。作っているのはスイスなんですけれども、ミルクチョコレートとか、すごいクオリティなんですね。
 材料は世界中からやってきていて、黒糖はフィリピン、砂糖はパラグアイ、カカオはボリビアやペルーといったところからやってきます」

●さまざまな国から材料を集めているわけですね。どんな味があるんですか? 

「定番のミルク、これは本当に30年前のスタートからあります。ミルクベースのチョコレートでもオレンジ・フレーバーだったり、ヘーゼルナッツやレーズン&カシューがあったりとか・・・あとはカラメル・クリスプ、キャラメルじゃなくて、わざわざカラメル、カリカリしているんですよ。その食感も楽しんでいただけます。

 ミルクを使わないビター・ベースのものもありますし、あとはレモンピールが入っていたりですとか、アーモンドが入っていたり、ザクロのゼリーが入っている甘酸っぱいのもありますよ。ビターは58%カカオのものと、75%のハイカカオのものもあります。珍しいところでは牛乳は使ってないんですけれども、ヘーゼルナッツのミルクを使った植物性のミルク・ベースのチョコレートもありますよ」

●見た目も可愛いからギフトにもピッタリですよね。

「ありがとうございます。フェアトレードのチョコレートだと知らなくても、可愛いって手に取っていただけたり、可愛いから友達にあげるっていうふうにして広まっていくので、ピープルツリーの名刺代わりのチョコレートだと思っております」

チョコレート試食レポ!

写真協力:ピープルツリー

●ではなにか試食させていただいてもよろしいでしょうか?

「ぜひ! 何か気になるフレーバーはおありですか?」

●なんだろう・・・おすすめをいただいてもいいですか。ビターだとハイカカオが気になりました。

「ぜひ食べていただこうと思うんですけれども、普通(カカオ)75っていうと、かなりハイカカオなので、苦いぞって思われると思うんです」

●そんなイメージがありますけど・・・。

「ピープルツリーのカカオは、その中ではマイルドな味わいになっているので、ぜひ食べていただきたいです」

●板チョコのような感じなんですね、長方形で・・・では、いただきます。

「いかがですか?」

●苦みはあるんですけど、でも苦すぎないっていうか、ちゃんとまろやかで美味しい〜!

「嬉しいです!」

●これ、ハイカカオですよね! もっとすごく、うわっ、苦い! っていう感じなのかと思っていました。

「マイルドに作られております」

●ビターじゃないものもいただいてみてもいいですか?

「定番のミルクを」

●牛さん(のイラスト)がパッケージにありますね。それぞれイラストが描かれていて本当にパッケージが可愛いですね。

「何が入っているのか、中のフレーバーがわかるようなイラストを描いていただいています」

●ではミルクですね。

「ダントツのいちばん人気です」

●そうなんですね(チョコレートを割る音があって)

「お〜〜、いい音です(笑)」

●いただきます。う〜ん、甘い! ほっとする味ですね。

「まさにそのほっとするっていうのが、人気の秘密だと思うんです。 いっぱいフレーバーがあって、中身にナッツだったりとかレーズンだったり、いろいろ入っているものもあって、つい私もいっぱい入っているほうがお得感があるわって、そっちばっかり選んでしまった時期もあるんですけど、やっぱり王道のミルクに戻ってくる・・・黒糖のコク! 美味しいですよね」

●甘いです!

「甘いんだけど、余韻はあるんだけれども、嫌な甘さじゃないですよね」

●そうなんです。すっきりしていて・・・。

「これを食べて、コーヒーを飲んでほっとするのが、私はこの寒い冬の待ち遠しい時間ですね(笑)」

●本当に癒されます〜。

写真協力:ピープルツリー

(編集部注:鈴木さんによると、72時間練り上げるスイスの伝統技法により、 ココアバターやカカオなど、チョコの材料が均質に混ざり合うので滑らかさを味わえるし、香りもよくなるとのことでした。

 そしてもうひとつ「ホワイトアーモンド」というホワイトチョコも試食させていただきました。鈴木さんからは、ココアバターの品質がストレートに出てくるので、ホワイトチョコはまずなめて、ココアバターが溶ける感触を味わってから食べるといいですよ、というアドバイスをいただきましたよ)

「カカオ・ポイント」農家支援

※ピープルツリーでは「カカオ・ポイント」というプロジェクトを進めています。どんなプロジェクトなのか、ご説明いただきました。

「もともとスタートしたのは、ボリビアでカカオの木の病気が蔓延したことが理由なんです。病気なので、ほかのカカオにうつっちゃうんですよ。だから伐採して焼却処分しなきゃいけなくなっちゃうんですね。そうすると1割とか2割しか育たなくなって、カカオの収穫がどんどん減ってしまったっていうことが、2012年ぐらいに起きました。

 それで産地をサポートするために始めたのがカカオ・ポイント、板チョコ1枚につき1ポイントにして、10ポイント集めてピープルツリーに送っていただいたら、1本苗木を産地に送るプロジェクトとしてスタートしました。

 で、何年も続けて、今は やっと落ち着いたかなと・・その時に植えたカカオの木がすくすくと育っているので、今度は違うプロジェクトにしようということで、今はコスタリカのカカオ農家を支援するような取り組みにしています。

 ピープルツリーのチョコレートは、すべてオーガニックな素材を使っているんですけれども、 オーガニックにするには様々な条件があるんですよね。 今まで普通の作り方をしていたのを、ちゃんとオーガニックの作り方にしようって切り替えることがやっぱり必要になってくるので、どうやったらちゃんとオーガニックで育てられるのかとか、そういうこと学びながら(カカオの木を)育ててもらうので、その支援をするようにしています」

(編集部注:ピープルツリーのチョコの購入は、ピープルツリーの通販サイトをご利用くださいとのことです。ちなみに千葉県内でも扱っているお店はありますので、いずれも詳しくは、ピープルツリーのオフィシャルサイトを見て、チェックしていただければと思います)

エシカルウエディング!?

写真協力:ピープルツリー

●ほかにもピープルツリーでは、エシカルウエディングも提案されています。お店に白いドレスが飾られていて、私も新婚なので気になったんですけれども・・・。

「気になりますよね」

●これはどんなことなんですか? エシカルウエディングというのは?

「はい、結婚式はやっぱり人生の中でも最大級に幸せなことだと思うんですよね。だから幸せのお裾分けではないんですけれども、作ってくれた人も幸せなアイテムを使ってほしいなと思います。

 式の会場に来てくださった方も、結婚されるおふたりの幸せももちろんのこと、それに関わる人たちを広げてみると、ウエディング・ドレスであったりとか、いろんな小物とか、そういうものを作ってくれた人がちゃんと幸せになれる、そんなアイテムを使っていただきたいなっていうのが、エシカルウエディングですね」

●ドレスだけじゃなくて、引き出物とか・・・。

「はい、カードとか手すき紙の、味のあるカードがありますので、そういうのを使っていただいたりとか・・・。あとは例えば食材として、ピープルツリーのココアパウダーとかコーヒーとかチョコレートとかを使っていただいて、それを式の時に出してくださるカップルの方もいたりとか・・・。最後にプチギフトを出口でお渡ししたりしますよね。そういうのにチョコレートを使っていただいたりしています」

●いいですね〜!

フェアトレードは1枚のチョコレートから

※では最後に、環境や経済、人権など幅広い分野にかかわるフェアトレードに関して、私たちはどんなことを心がければいいのか、お話しいただきました。

「まずはそういうことを知ったら、なにかアクションに起こしてほしいと思っています。 例えば今回のフェアトレード・チョコレートも、フェアトレードを知ったらまず食べてみる、フェアトレードのチョコってどんななんだろう、誰が作ってくれたんだろう、どんなふうに作られたんだろう、そういうことに思いを馳せるところからスタートしていただけたら嬉しいなと思います。

 社会的な課題は続けていくのがしんどくなっちゃうというか、自分ひとり何ができるんだろうとか、自分ひとりが頑張っても意味がないんじゃないか、みたいな無力感を感じることがもしかしたらあるかもしれないんですけれども、やっぱりひとりひとりの力ってすごいものがあると思うので、続けるっていうのも大事ですよね。
 そのためには自分自身も楽しいっていうことがすごく大事だと思うので、美味しいとか可愛いとかおしゃれとか、そういうところから始まって、生活の中に取り入れていただけたらいいかなって思っています。

●フェアトレードの商品は、お値段的にちょっと高いんじゃないかって思う方もいらっしゃると思うんですけれども、そんな方にはどんなお声がけをされますか?

「そうですね。高いというのが何と比べて高いのかって言った時に、安すぎるものと比べて高いと思っていないかってことをまずお伝えしたいなって思います。

 安く売ることができる背景に、例えば作っている人たちが生活できないような搾取をされているんじゃないかとか、安全面とか健康面とかでの配慮がされてないんじゃないかっていう、そういう可能性もあるわけですよね。だからどうしてこの値段で成り立つんだろうって、ちょっと疑問を持っていただきたいなっていうふうにも思います。

 いきなりすべてをフェアトレードのものにっていうのはなかなか無理だし、すべてのアイテムを賄えているわけではないので、それだと息が詰まっちゃうと思うんですね。ぜひご自身の関心のあるところからスタートしていただくのがいいのかなと。
 1枚、本当に味わえるチョコレートを食べてみる、そうなると物との付き合い方が変わってくると・・・自分の生活も、チョコレートの枚数は減ったかもしれないけど、豊かさは増すかもしれないですよね。そういうふうにして工夫するといいのかなって思います」

写真協力:ピープルツリー

INFORMATION

 ピープルツリーは、発展途上国の生産者=パートナーのスキルアップや資金、さらには現地の学校運営など様々な支援をしている「世界フェアトレード連盟」に加入しています。

 フェアトレードの商品かどうかを見極めるポイントとしては「世界フェアトレード連盟」の認証マークがあるか、ないかがお買い物をするときのひとつの目安になるとのことです。ほかにも、認証マークがなくても、フェアトレードの商品が販売されているケースもありますので、鈴木さんのアドバイスとしては、確かめる意味でもお店の人に、どこでだれが作った商品かを尋ね、そのストーリーを知ると、大事にしたい気持ちが生まれてくるのでは、ということでした。

 ピープルツリーでは、フェアトレードをひとりでも多くのかたに広めるために、「フェアトレードの学校」というプログラムを実施しています。今月2月は26日の開校予定です。

 ピープルツリーで販売されているオーガニックチョコはチョコレートのほんとうの美味しさを味わえますし、パッケージが可愛いので、プレゼントにぴったり! おすすめですよ。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎ピープルツリーHP:https://www.peopletree.co.jp/

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第10弾〜相模原市藤野地区の市民活動「藤野電力」にフォーカス!

2022/12/25 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第10弾!「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「住み続けられる まちづくりを」そして「気候変動に具体的な対策を」、ということで神奈川県相模原市藤野地区の「藤野電力」の活動をクローズアップ!

 プロジェクト・リーダー鈴木俊太郎さんにミニ太陽光発電システムを作る防災ワークショップや、自給自足的な暮らしについてうかがいます。

☆写真協力:鈴木俊太郎(藤野電力)

鈴木俊太郎さん

始まりは、東日本大震災

※藤野電力というと、電力会社なのかと思ってしまうかも知れませんが、企業でもNPOでもない、地域住民が行なっている市民活動です。そのリーダーの鈴木さんは藤野から東京に通うサラリーマンだったそうですが、暗いうちに家を出て、暗くなってから家に帰る生活に疑問を感じ、独立。現在は整体師を本業に、藤野電力の活動にも取り組んでいらっしゃいます。

●藤野電力はいつ頃、どんなきっかけで始まったんですか?

「2011年の東日本大震災ですね。その時の停電から始まった活動なんですけれども、ちょうどその時、私は相模原市内のほうに仕事に出ていまして、そこで地震があって、(近隣は)大停電で翌朝までずっと停電していたんですね。

 ちょうど夕方、日が落ちてきた頃、信号も住宅や店舗も電気は消えているし、街灯も消えていて、本当に真っ暗闇の中を家まで帰ってきた時に、多分うちだけはなんとかなっているかなって、ちょっと思っていました。
 それは今、藤野電力のワークショップでやっているような、小規模の自家発電の仕組みがあったから、おそらくその灯りがついているだろうと思いながら帰ってきたんですよ。

 で、実際にうちだけ、灯りが灯っていたっていうのを見て、やっぱりこれはすごく大事なことだろうなと思って、仲間内に声をかけたんですよ。うちはいつもと変わらない暮らしができましたよっていうようなことをね」

●ご近所の方々は、みんな停電になっている中で、鈴木さんのお宅だけ、灯りがついていたんですよね?

「そうなんですよ」

●まわりのみなさんは、なんでなんで!? ってなりそうですよね。

「そうですよね。翌日聞いたら、みんな寝るしかなかったから、寝ていたらしいです」

●まわりの方にこういうことやっているんだよとか、電気を自分で作っているんだよっていうのを、どんどんお伝えしていったっていう感じなんですか?

「そうですね。グループ活動がいくつかあって、その仲間にまずは声をかけて、そしたらぜひその仕組みを教えてほしいとか、勉強会を開いてほしいっていうようなことがあがってきたので、じゃあやってみようかっていうことで始めたんです。

 それはその時の単発ですけど、その中から改めて『藤野電力』っていう活動をやりたいですっていう声が地域からあがってきたんですね。最初、関わったこともあるので、私もちょっと参加してみようかなっていうことで始まりました。私が主として始めたわけではなくて、みんなの中にちょっとわかっている人が入ったっていうような、それがきっかけですね」

写真協力:鈴木俊太郎(藤野電力)

 

●活動のモデルというか、何か参考にしている活動はあるんですか?

「トランジション活動っていうのはその前からあります。トランジション活動自体はイギリスの市民活動として始まったんですけど、簡単にいうといろんなものに、例えば石油に頼る暮らしじゃなくて、自分たちで何かを編み出すような、そういうちょっと前の日本みたいな暮らしにしていこうっていうような提案で始まったんですね。たまたまそれをイギリス留学中に勉強していた人が藤野に越してきまして、ぜひ日本でもやってみたいっていう声があがったんですよね。

 それが最初にトランジション活動として始まって、藤野電力はそのトランジション活動の中のエネルギーを考えてみようっていうグループなので、藤野電力っていうようなスタンスの見本は何もないんですけれども、ベースになっているのはトランジション活動っていうことですね」

(編集部注:鈴木さんによれば、藤野地区は昔から芸術家など外部の人を積極的に受け入れてきた地域で、現在もミュージシャンや俳優、カメラマンやライターなど、自立した方々が住んでいて、住民同士のつながりが密なエリアだそうですよ。藤野電力のほかにもグループ活動があるということですから、もともと市民活動が生まれやすい土壌だったと言えるかも知れませんね)

幼稚園児の頃から憧れていた!?

※藤野電力の具体的な活動についてお聞きする前に、鈴木さんご自身のことをうかがっていきたいと思います。鈴木さんはご自宅のログハウスをご自分で建てたと、ネットの記事で見たんですけど、そうなんですか?

「そうなんですよ。全部じゃなくて大工さんも入っているし、友達もいっぱい来て、みんなで作ったって感じなんですけど・・・」

写真協力:鈴木俊太郎(藤野電力)

●必要なものは自分で作っちゃう自給自足的な志向っていうことですか?

「そうですね」

●ご自身で作るのがお好き?

「好きですね」

●昔からですか? 何かきっかけがあったとか・・・。

「物作りが好きっていうのは子供の頃からだったので、純粋にそういうものに興味がありましたね。例えば時計があったら分解して、どういう仕組みになっているのかとか、中学生ぐらいだと自転車に乗っているので、自転車を改造したりとか、そういうことはずっと子供の頃からやっていたんですけれども、いわゆる自給自足的な暮らし、今みたいな暮らしにシフトしたいと思ったのは、実は幼稚園ぐらいの頃からですね(笑)。

 両親が山に登っていたこともあって、山小屋に泊まることがあったんですよね。そうすると木でできた建物で、薄暗い感じで、薪ストーブが炊かれていてっていうのを小さい頃から体験していたので、すごくそういう空間が自分に合っているなって小っちゃいながらに思っていましたね。

 決定打になったのは小学生ですね・・・9歳だったかな。その時に『アドベンチャー・ファミリー』っていう映画が放映されまして、カナディアンロッキーで暮らすファミリーの物語なんですけど、それを見て、そういう暮らしを絶対実現しようと・・・変わらず今もやってますけどね」

●鈴木さんのお宅は、生活に必要なエネルギーは全部ご自身でまかなっているですか? どんなお家なんですか?

「20年以上前に家を建てたので、当時はこういう自家発電、今はオフグリッドっていう言葉で一般的に言われていますけど、自家発電、オフグリッドっていうような考え方はもちろんなかったし、そういう機材も一般的には出回ってなかったので、普通に電力会社の電気を入れてましたね。

 藤野電力が始まったきっかけで、自分の家もそういうふうにシフトしていこうっていうことで、部分的にちょっとずつちょっとずつ増やしていって、今現在はメインで使うところは、ほぼ自家発電でまかなっていて、特に夏は大丈夫ですね。冬はどうしても山の中に暮らしているので、日が当たらないからちょっと厳しいんですけど・・・」

●寒いですよね?

「(寒い)ですけど、暖房に関しては薪ストーブで済んじゃうし、あと冷蔵庫や洗濯機、照明とか最低限のところは、冬でもなんとかまかなえますので、ある意味使う電気は自家発電でまかなえていますね。

 暖房は薪ストーブがあるし、料理は田舎なんでプロパンガスですけど、冬に関しては薪ストーブがあるから、なるべく薪ストーブで料理したり、お湯を沸かしたりってことをしています。あと水に関しては、よく羨ましいって言われるんですけど、井戸水なんですよ。だから水も自分の土地から吸い上げていて、水道代はかからないです」

●え〜! じゃあ電気とかガスとか契約してないっていうことですか?

「ガスだけはプロパンなんで契約していますけど、電気に関しては本当に最低限の契約だけして、足りない時だけ手動で切り替える仕組みを作っているので、そういうふうに切り替えてやったりとか・・・」

(編集部注:鈴木さんが藤野地区に引っ越してきたのは20年以上前で、自然暮らしをしたくて、土地を探してみたものの、田舎暮らしブームの前だったこともあり、なかなか思うような土地が見つからなかったそうです。そんな中、たまたま見つけたのが今住んでいる場所、つまり藤野地区に転居してきたのは偶然だったそうですよ)

写真協力:鈴木俊太郎(藤野電力)

ミニ太陽光発電システムを作る

※現在、藤野電力で行なっている主な活動について教えてください。

「まずはワークショップですね。これが毎月1回、藤野に事務所があるんですけど、そちらのほうで開催しています。それ以外も出張で依頼があれば、全国どこでもうかがってワークショップをしているんですね。

 ワークショップ自体は基本的な機材を組んで、発電の仕組みを作るっていうことと、電気に関するいろんなお話はさせていただくんですけど、なかなかそれだけだとその先進めない方も多いので、ちゃんとそれを使えるように家に設置してあげようっていうのも同時進行で始まったんです。

 これも実はちょっと逸話がありまして・・・うち(森氣庵)にずっと通っていた患者さんが、311の震災の時に計画停電がありましたけど、その時にも実は予約が入っていたんです。普通ならみんな来ないだろうと思っていたんですけど、いらっしゃったんですよ。

 その人は鈴木さん家だったら、絶対何があっても普通にやっているよっていうふうに家族に言って出てきたっていうことでした。その時にまわりは停電しているけど、(うちだけ)オフグリッドの電気で部屋が明るかったり、薪ストーブがあったりっていうのを見て、家を建てる時にはこういう暮らしがしたいって言っていたんですよ。その1年後ぐらいに実際、家を建てる時に設計士さんに言ったことが『鈴木さん家みたいな暮らしぶりがしたいので』って(笑)。

 その方が実は、藤野電力のオフグリッドの仕組みを家に設置してほしいって、最初に言ってくださった方なんです。それまで小さな仕組みをみなさんに伝えるっていうのはやっていましたけど、家に付けるとなるとちょっと違ってくるんで、じゃあうちで実験してみようとか、そういったことが始まって、そのきっかけから今現在も住宅施工と言ってますけど、そこに設置するっていうのもずっとやっています。 そのふたつがいちばん大きいですね」

●太陽光発電システムを自分で作るっていう発想がなかったんですけど、素人でも作れるものなんですか?

「はい、大丈夫ですよ。もともと私が始めた時には電気の知識は全くなくて、最初は2001年、震災より遥か前の話です。実は車のバッテリーがしょっちゅうあがってしまうのを、なんとかしたいっていうことから始まっています。

 たまたまちょうど夏だったんですけど、車が熱くて触れないぐらいに日差しを浴びて停まっているのを見た時に、太陽をなんとかできないか!? ってすごく思ったんですよ。それで調べてみたらソーラーパネルっていうのがあるっていうことがわかって、これならいけるかもしれないって始まったのが実は最初でした。なので電気の知識は全くないんですよ」

●それでもシステムを考案したのは鈴木さんってことですか?

「そうですね。使う機材自体は簡単にいうと、キャンピングカーに入っている仕組みなので、ソーラーパネル、バッテリー、コントローラー、インパーターっていう4つの機械を使うんですね。それ自体はキャンピングカーとかで流通はしていたけど、一般的なものじゃなかったんです。

写真協力:鈴木俊太郎(藤野電力)

 知識がなかったのでいろいろ調べたりして、これを組み合わせれば、車のバッテリーの充電ができるなっていうところから始まりました。車のバッテリーは12ボルトなんですけど、それすら知らなかったし、ケーブルの太さはどうすればいいか全然わかんないわけですよ。

 そういう状態でとりあえず組み上げたものを実際使ってみたら、すごく便利で面白くて・・・。なので全然知らない状態で私が始めているので、知らない方がワークショップに参加しても全く問題ないですね」

(編集部注:鈴木さんは本業のほか、地域の人たちのお困りごと、例えば、破裂した水道管や、雨漏りのする屋根の修理ほか、藤野地区に引っ越してきた移住者の方の相談にのったりと、忙しい日々を送っていらっしゃるそうですが、ストレスはないと、にこやかにおっしゃっていました)

藤野は相模原のSDGs!?

※鈴木さんが藤野電力の活動を本格的に始めて、11年ほど経ちました。今どんなことを感じていますか?

「今はSDGsってよく言われるようになりましたよね。実は相模原市からも藤野は相模原のSDGsだっていうふうに言われてしまうぐらい、ずっと前からそういう活動を続けてきたっていう地域になっています。

 当時ソーラーパネルを使って電気を作るのは、一般的には売電って言われていて、屋根の上にパネルを設置して電気を作って売るっていうやつですよね。メガソーラーなんかは今いろいろ問題が出ていますけど、ソーラーパネル=電気を作って売る、いわゆる投資目的のものだったんです。
 その時代にそうではなくて、暮らしに使うための電気を自分で作るっていう、いわゆる自給自足的な発想を持って始めたのは全然いなかったわけですよね。

 絶対そっちのほうが面白いし、意味があるって思って始めているので、ずっとその路線で来たんですけど、10年経ってみたらSDGsっていうような言葉が出てきて、売電ではそんなに儲けられるものでもないから、蓄電して自分の家の電気として使いましょう! っていうような、まさにオフグリッドっていう発想に世の中がガラって変わってきたので、やっとこっちの時代に来たかっていう、間違ってなかったなっていう確信をすごく今は持っていますね」

●地球温暖化の影響もあって、国内でも世界でも今までにないような災害が起きています。普段から備える防災意識がすごく大事になってくるんじゃないかなって思うんですけれども、そのあたりいかがですか?

「そうですね。災害用とか非常用に藤野電力の仕組みが欲しいっていうことを言われる方もいらっしゃったり、例えば外灯、夜中つけっぱなしにするので、電気代がもったいないから、使いたいっていうことをおっしゃる方もいるんですけど、我々はそういうものに使うんじゃなくて、日々の暮らしの中で使う電気をまかなうという発想でやっているんですよ。非常用じゃないんですよってことをずっと言っているんです。

 非常用、例えば防災袋なんていうのもありますけど、1回買って20年も30年も経って、災害がなければそのままなわけですよ。邪魔だからどっか押し入れの奥のほうに入っちゃって、いざって時には使えない。そういうものでは意味がないので、日常用でなおかつ非常時には持っていけるような、そういう暮らしに変えていかないとダメなんですよっていうことをずっと伝えています。

 防災の関連のお話会とかワークショップも頼まれて行くことがあります。そういう時にも普段、常にカバンの中に入っていて、何かあった時にはそれでなんとかなるっていう最低限のものも入れてあるんですね。

 どっかに避難しなくちゃいけないっていう時には、(必要なものを)持っていかなくちゃいけないから、ある程度のサイズでギリギリなんとかなるものは、こういう中身でとか、なんかあった時の専用っていうよりは普段の生活の中で、こことここを持って出れば、それでなんとかなるっていうふうに変えていかないと、実際何の意味もないからっていうことを常に伝えているんです」

自分の手でなんとかする

※藤野電力の活動は、持続可能な暮らしにつながると思うんですが、都会で暮らしている方に向けて、アドバイスがあれば、ぜひお願いします。

「ワークショップに参加される方は、東京とか街中の方もたくさんいらっしゃって、ほとんどの方がマンションなんですね。 マンションのベランダで日差しは入るんですけども、その日差しが蓄電できるレベルかっていうギャップが結構あります。

写真協力:鈴木俊太郎(藤野電力)

 (ミニ太陽光発電システムを)持って帰ったんだけど、どうもうまくつかないっていうことで見に行くと、ほんの一瞬太陽が横切る程度だったりとか。それから夏と冬で太陽の角度が違うので、(日差しが)全然パネルに当たってなかったりっていうことがありますね。

 マンションでやりたい方は、あまり大きなもの持って行っても設置場所もないですから、小さい仕組みを移動しながら、どこにどう置けば太陽の光がちゃんと当たるかを考えながらやっていただきたいっていうのもありますね。
 それでは現実的じゃないからやめますっていう人もいらっしゃるんですけど、やめちゃうと意味がないから、うまくいかないのをどう改善するかをぜひ都会に住んでいる方にはねチャレンジしてほしいって思いますね。

 田舎だと自分で何かをしなくちゃいけないとかって普通のことなんですけど、街中に住んでいると、お金を払って業者の人に来てもらうっていうような、お金とのやり取りが基本になってしまって、自分でなんとかしようっていう発想になかなかいかないんですよね。
 だからこそ、こういうちょっとした仕組みを暮らしに取り入れることで、ここはダメだからこっちにしてみようとか、ちょっと使いすぎちゃったから、みんなで使わないようにしてみようみたいに、自分たちの手を動かしながら、そこから学んでいただくっていうことをぜひやってほしいなと思います」


INFORMATION

写真協力:鈴木俊太郎(藤野電力)

 鈴木さんのお話を聴いて「藤野電力」で行なっている、ミニ太陽光発電システムを作る「防災ワークショプ」に参加したいと思った方、1月も開催されますが、実は大変人気で、すでに定員に達しています。2月は12日(日)に開催予定となっています。

 体験コースと持ち帰りコースがあり、持ち帰りのほうは50ワットと160ワットのふたつのコースがあります。参加費など含め、詳しくは「藤野電力」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎藤野電力HP:https://fujino.pw

 鈴木さんの本業、整体師のサイト「森氣庵(しんきあん)」もぜひ見てください。

◎森氣庵HP:https://www.sinkian.com

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第9弾!〜海をきれいにするアパレルブランド「マリブシャツ」

2022/10/9 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、海洋ごみ由来の再生ポリエステルで作ったウエアを展開するアパレルブランド「マリブシャツ」のブランドマネージャー「菅井章弘(すがい・あきひろ)」さんです。

 2004年にアメリカ・カリフォルニアのマリブビーチで誕生したマリブシャツ。創業者はグラフィック・デザイナーで広告デザイン事務所を経営していたデニー・ムーアさん。

 若い頃から海とサーフィンを愛し、アンティークな広告アートやサーフシーンの写真をコレクションしていたデニーさんが、Tシャツに、集めたアートや写真をプリントして販売したのがきっかけで、マリブシャツというブランドが生まれたそうです。その特徴はビンテージライクでシンプルなデザイン、ラインナップはTシャツやパーカーがメインとなっています。

 日本版のマリブシャツは2021年から販売がスタート。オリジナルのマリブシャツがコットン製なのに対して、日本版は海洋ごみ由来の再生ポリエステルを使っているのが大きな特徴です。

 これは菅井さんをはじめとする日本側のスタッフが、ビーチやサーフシーンで愛されているマリブシャツであるならば、ブランドとして自然環境になにか貢献できないか、そんな思いから「海への恩返し」というコンセプトが生まれ、海洋ごみを原料とする再生素材のブランド「マリブシャツ・ジャパン」が誕生しました。キャッチコピーは「このウエアは海をきれいにする」となっています。

 菅井さんにお話をうかがう前に、海洋ごみの現状について。
 プラごみは、年間におよそ800万トンもの量が世界の海に流れ出ているとされていて、これはごみの収集車に換算すると、1分に1台分のプラごみを海に捨てているのと同じだそうです。このまま増え続けると、世界の海に流れ出ているプラごみは2050年には魚の量を超えると言われています。

 海洋ごみの問題にどう取り組んでいくのか、いま私たちの覚悟と行動が問われています。
 そこで今週は、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第9弾! 「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「海の豊かさを守ろう」!

☆写真協力:マリブシャツ

菅井章弘さん

シンプルでお洒落! 水陸両用!?

※それでは、ブランドマネージャーの菅井章弘さんに商品の特徴について具体的にお話をうかがっていきます。

写真協力:マリブシャツ

●きょうはマリブシャツの商品をたくさんスタジオにお持ちいただきました。ありがとうございます。それぞれ商品の説明をお願いします。これはショートパンツですか?

「これは我々がラッシュガードと呼ぶ素材、あだ名なんですけど、その素材を使用しております。要は海でも街中でもプールでも着用できる、そういうものです」

●すごくシンプルでワンポイントのロゴがあって、これはいいですね。女性も男性も着やすいというか・・・いま菅井さんが着てらっしゃるのもそうですか?

「同じ素材のTシャツです。そもそもこの素材でTシャツを販売していたんですね。で、お客様のリクエストで、この素材でパンツができないですかという声をいくつか聞くようになったのと、あとは今の流行りですけど、セットアップできるとかっこいいので、それでパンツも作ってみたという次第です」

写真協力:マリブシャツ

●シンプルですごくお洒落、モダンでかっこいいですね。ほかにもTシャツ、パーカー、ロング Tシャツ、トレーナーなど、いろんな商品をお持ちいただきましたけれども、ひとつずつご紹介いただけますか。 

「まず、今おっしゃっていただいたような商品群というかアイテムを作っている理由なんですけど、これも本国のマリブシャツ、彼らも同じようにTシャツやパーカーばかりを作っているんですね。彼らはそのことでカリフォルニアであるとか、ハワイとかの海辺のライフスタイル、これを提案しているんです。

 僕らの場合はビーチサイドというよりは、ベイエリアって感じで都市部も含んだ、でも海を感じられるようなリラックスしたライフスタイルの提案をしたいということで、トレーナーやパーカー、Tシャツなどに商品を絞っております。

写真協力:マリブシャツ

 僕たちの特徴としては、先ほどからお話している海洋ごみからリサイクルされたポリエステルを原料にして商品を作ろうということを決めてやっております。ただポリエステル100%にしてしまうと、作れる商品の幅が狭くなってしまいますので、ポリエステルと綿のミックスのグループであるとか・・・」

●気持ちいいですね、肌触りも・・・。

「これはすごく手をかけて作っております。あとは先ほどのショートパンツや、僕が着ているT シャツに機能を持たせるために、敢えてポリエステル100%で作っている商品のグループもあります」

●撥水加工というか・・・?

「撥水というより、濡れても全然いいっていう状態ですね。これを販売されているアパレル様にも僕ら卸しているんですが、水陸両用なんて言って販売されたりしています」

ONE OCEAN、未来につなぐ

※マリブシャツの素材になっている再生ポリエステルの原料は、どこで作っているんですか?

「北米にある再生原料を主に作っているプラント、企業がございます。そちらから原料を購入して、僕たちが糸から作って生地にして、洋服にしているという流れです。
 ここにその見本があるんですが、その北米の企業は大型の船を出して、例えば太平洋でごみを回収するんですね。その回収したごみを自分たちのプラントに持ち込んで、洗浄して砕いたものがこの状態です。ガラスの破片みたいな、これを溶かして、ティペットっていうんですけど、このつぶ状のものがポリエステルの原料です」

写真協力:マリブシャツ

●ガラスの破片みたいなものからビーズのような形状になりましたね。

「この状態にすると移動ができるんですね。この状態から様々な、例えばこういうペットボトルも作られます。この状態のものを、彼らが原料を供給する工場が中国にあるんですが、その工場に持ち込んで、この綿の状態にまで彼らがしてくれます」

●ビーズのような状態から綿に・・・?

「溶かして小さなノズルから吹き出すことで、この繊維状のものができるんです。ただこの綿だと洋服にはならないんですね。ここから綿とミックスしたり、いろいろな手法で、僕たちが糸を作るんです。この糸を編んで生地にして洋服になっています」

●なるほど〜、そういう経緯なんですね。海洋ごみ由来のエコ素材の名前が「ONE OCEAN」って言うんですよね?

「マリブシャツを始めるにあたって、立ち上げたというより、そもそも我々が開発を進めていた素材になります。マリブシャツ・ジャパンとしてマリブシャツ・チームとして、今はマリブシャツのためにこのONE OCEANという素材グループを使っております。

 ONE OCEANというのは、海洋ごみからリサイクルしたポリエステルを原料にした素材のグループです。その中にこのような、ボクらがTCと呼ぶ、綿と混紡した素材であるとか、ポリエステル100%の素材であるとか様々あります。

 我々がONE OCEANっていう名前をこのグループに付けたのは、やはり海はひとつしかない、これに尽きます。しかも未来につなぐのにもひとつしかないから、そのひとつを守ろうという意味でONE OCEANという名前をつけました」

使ったプラごみの量を表示!?

※商品に「ONE OCEAN」のカードが付けられていて、その裏にペットボトルの絵が表示されていますが、これは何ですか?

写真協力:マリブシャツ

「これはそのものずばりこの商品に含まれている、海で回収されたごみの量を1.5リットルのペットボトルに換算して表しております」

●このパーカーは8本分くらいですね。

「8.3本ですかね。大きなペットボトル8.3本分の、海のプラごみがなくなって、ここに入っているという、その証です」

●そうなんですね〜。地球にいいことしているなっていうことを、着ながら感じられますね。

「そう思っていただきたく・・・」

●ブランド「マリブシャツ」のデザイン的な特徴っていうのは、どんなところなんですか?

「やっぱり僕たち、せっかく海洋ごみを再生して洋服にしたのに、すぐ飽きられて捨てられてしまうようなものを作りたくなかったので、そのことがあって、定番っていうものにこだわりました。

 それと本国のマリブシャツも同じ考え方で、カジュアルな定番のお洋服、でもリラックスした生活を提供するっていうのが僕たちの狙いなんで、デザインのこだわりはもうとにかく定番の商品を作ること。

 ここには私たちマリブシャツ・チームのメンバーの葛藤もあるんですけど、定番というのはなかなか難しくて、どこまでシンプルにするか、でもこれはデザインのポイントとして入れたい、みたいなことを話し合って、その中からシンプルで長く着られて、様々なコーディネートに取り入れやすいものを狙って作っております」

写真協力:マリブシャツ

●シンプルなのに地味すぎないっていうのが、すごいなって思います。お洒落です。 アーティストとのコラボ商品もあるんですよね? 

「これが、無地にこだわっている理由なんですが、本国のマリブシャツは、デニーさんが集めたアートをあしらって販売しております。我々もそれを考えたんですが、僕たちだけで洋服を完成させきらず、着てくださるかたとか、外の人たちと何かをすることによって完成する余白を残したいっていうのもあって、僕らは無地がメインになっているんですね。なので、時折アーティストのかたとコラボレーションをして、そのかたのアートをプリントして販売しております。

 その中で国内だと、中西伶さんや小泉遼さんの絵をプリントしてっていうことをしております。アーティストさんとのコラボは、いま名前を挙げた画家のかた、あとはカメラマンさんとか・・・アーティストという意味では、フラワーアレンジメントのとても著名というか若いかたなんですけど、元気に活動されているかたがいます。そのかたとも共感した時に、アレンジした花をカメラマンさんに撮っていただいて、コラージュしてっていう形でのコラボもあります。

 コラボレーションする時の考え方は、そのかたとシンパシーがあった時とか、アーティストのかたも、マリブシャツが海洋ごみから再生して上質なものを作っている、そういうことに共鳴して(一緒に)やろうって言ってくださったり・・・そういう時にコラボレーションしております」

(編集部注:マリブシャツはアーティストとのコラボのほか、BEAMSのB:MINGやSNIDELといったアパレルブランドともコラボレーションしたことがあるそうです)

マニラ麻やバナナでエコ素材を開発!?

※マリブシャツは、アパレル関連の事業を行なっている「MNインターファッション」という会社のブランドですが、このMNインターファッションでは、マリブシャツで使っている海洋ごみ由来の素材のほかにも、エコ素材を開発しているそうです。どんな素材があるんですか?

「素材では”ブリコ”という素材のブランドを持っております。特徴としては、インドの工場にいらなくなった廃棄衣料を持ち込んで、反毛(はんもう)っていうんですけど、砕くんです。そして綿状にして、ここからまた糸を再生して生地を作る、そういうリサイクルの生地のブランドがあります。

 あとは、エコ素材で”ワクロス”あるいは”バナナクロス”という、これも商標をとっている我々の生地ブランドなんですが、綿=コットンは栽培するために水を大量に使う、あるいは土地を痩せさせてしまうことがあるんですね。

 なので、綿よりももっと効率的に成長してくれて繊維が取れるもの、ということで、ワクロスには成長の早いマニラ麻を使っています。これはひとつの畑で1年間に何度でも採れるんですね。水を使わずに土地も傷めずにどんどん成長してくれます。このマニラ麻を紙にして、この紙を繊維状にしたものがワクロスです。紙にすると抗菌性とかいろいろな機能がつくので、役に立つ素晴らしい素材になるんです。

 あとはちょっと面白いんですけど、バナナクロスはバナナの幹の部分を使っているんですよ。栽培されているバナナは、実を採る時に幹ごと切っちゃうんですよね。実を採ったあとの廃棄される幹はすごい量になるから、これを再利用しようと・・・植物なので幹から繊維が採れますから、その繊維を生地にしたり・・・このような素材があります」

海のごみをなくしたい!

※国連が主導する「持続可能な開発目標=SDGs」もそうですけど、環境に配慮しない企業は今後、生き残れないと思うんですが、菅井さんはどう思いますか?

「これは本当にそう思います。企業にだけその責任を負わせるのではなく、我々も生活の中で、そのことを考えるべきだなってものすごく思います。

 そこがそもそもマリブシャツをやろうなんて言い出したところでもあるんですけど、我々マリブシャツ・ジャパンのメンバーはアウトドアとかサーフィンをやるメンバーが多くて、常に自分が触れている自然が汚れているとか、海が汚れているとかって気になるんです。
 ほんとに目に見えて分かることだから、まずはそういうこともあるし、あとはカーボンニュートラルのこともそうですけど、とにかく、僕たちが安全に生きるためには、どうしても化学的に作ったケミカルなものも必要だと思うんです。

 ただ、やりすぎ、使いすぎで、地球がおかしくなるようなところには行ってはいけないし、行きつつあるから、今おっしゃられたようなサステナブルな目標はいろいろ項目がありますけれども、ちゃんと考えて、それを抑えてやっていく活動がなかったら、もう地球が持たないと思うので必要なことだと思います」

●そうですね。先ほどマリブシャツ・ジャパンのメンバーにはアウトドア好きが多いとおっしゃっていましたけど、菅井さんもサーフィンをされるんですよね。

「恥ずかしながら。もう引退してしまったんですけど・・・」

●引退・・・?

「もう僕は50を越しているので、ちょっと今は行っていないんですけど、40ちょっとまで・・・20代前半ぐらいから20年間ぐらいはサーフィンをやっておりました」

●わ〜〜、どの辺りで?

「僕、生まれが茨城県なのですが、阿字ヶ浦とか大洗とかでガンガンにやっていました」

●かっこいいですねー!

「全然(笑)カッコよくないです。ちょっとここでサーフィンの話を挟みたいんですけど、僕ら茨城勢から見ると湘南のサーファーとかすごくカッコよくて、ウエットスーツとかも綺麗だし、持っているボードのブランドとかも! 千葉もそうですよね、お洒落! だけど茨城のサーファーは今は違うんでしょうけど、僕がやっていた頃はウエットスーツはみんな黒一色だし、あまりカッコよくなかったです」

●え〜〜、そうなんですか(笑)。マリブシャツの創業者デニー・ムーアさんもサーファーなんですよね?

「デニーさんもサーファーです。彼はマリブビーチってところで生まれたから、小さい頃から海に触れ合っていて・・・あとはご両親の趣味なんでしょうね。デニーさんから聞いたんですが、小さい頃からハワイによく連れて行かれていて、日本でいう沖縄旅行みたいなものですよね」

●菅井さんもデニーさんもサーファーということですから、お互いにシンパシーみたいなものを感じたんじゃないですか?

「お互いにルックス的には元サーファーですね。現サーファーって感じじゃないですね(笑)」

※では最後に、ブランド・マネージャーとして、マリブシャツというブランドを、どんな風に育てていきたいですか?

「やっぱり最初に立てた志というか、本当に海洋ごみはすごいことになっていて、これを取り除くためには、ただ取り除いてくださいって言っても、誰も手を出せない。でも取ってくれば、このように原料になって再利用して洋服が作れる。だからこれをどんどんとにかく続けていきたいですよね。そして海のゴミをなくしたい。これが僕たちの今強い思いになっているので、それを続けていくというのが願いですね」

菅井章弘さん

INFORMATION

アパレルブランド「マリブシャツ」

写真協力:マリブシャツ

 マリブシャツの Tシャツやパーカーは、本当にシンプルなデザインで、カラーの基本は黒と白。素材の質感が素晴らしく、生地もしっかりしているので、長く着られる、まさに定番ウエア、おすすめです。ぜひお試しください。

 お買い求めは「マリブシャツ」のECサイトから、どうぞ。

◎「マリブシャツ」HP: https://malibushirtsjapan.com/concept

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第8弾!「目指せ! プラスチックフリーのライフスタイル!」

2022/9/4 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第8弾!「目指せ! プラスチックフリーのライフスタイル!」。

 ゲストは、情報サイト「プラなし生活」を運営されている「中嶋亮太(なかじま・りょうた)」さんと「古賀陽子(こが・ようこ)」さんです。

 中嶋さんは実は、国立研究開発法人「海洋研究開発機構」JAMSTECの研究員で、海洋プラスチックの調査・研究をされていて、2年ほど前にもこの番組にご出演いただきました

 古賀さんは、プラなし生活を実践している主婦として、主婦目線で見つけたプラごみを減らすアイデアや優れものの生活雑貨などの情報を発信されています。

 きょうはおふたりが先頃出された本『暮らしの図鑑 エコな毎日』をもとにお話をうかがっていきますが、今回は国連サミットで採択された「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「つくる責任 つかう責任」そして「海の豊かさを守ろう」について考えていきましょう。

そして今週はプレゼントがありますよ。先頃、おふたりが出された本『暮らしの図鑑 エコな毎日』を、抽選で3名のかたにプレゼント! 応募方法はこちら

『暮らしの図鑑 エコな毎日』

 お話をうかがう前に、プラスチックフリーの生活を目指すための基礎知識。

 あなたのおうちにプラスチックで作られたもの、たくさんありますよね。実は、毎年作られるプラスチックの4割近くは、食品トレーやポリ袋などの容器包装、いわゆる「使い捨てプラスチック」なんだそうです。

 日本は、ひとりあたりが消費する容器包装プラスチックの量は、世界第2位。確かにスーパーに行けば、ほとんどの食材がプラスチックで包まれていますよね。

 でも、プラごみを捨てるときは、リサイクルのために、ちゃんと分別しているから、問題はないと思っていたんですが、日本ではプラごみのおよそ70%は焼やしていて、日本国内でリサイクルされているのは、わずか8%ほどだそうです。

 世界の海に流れ出ているプラごみは2050年には魚の量を超えるとも言われています。自然環境では分解されることがほとんどないプラごみ、少しでも減らさないと、近い将来、地球は「ごみの星」になってしまうかも知れませんね。

☆写真協力:中嶋亮太、古賀陽子、プラなし生活、海洋研究開発機構

おうちですぐ減らせるプラごみ

※それでは中嶋さんと古賀さんにお話をうかがいます。本に掲載されているアイデアやヒントの中から・・・まずは、生ごみを、ポリ袋ではなく、新聞紙で作ったごみ袋にためて処分することを提案されていますが、新聞紙のごみ袋はすぐ作れそうですね

中嶋亮太さん・古賀陽子さん

古賀さん「そうですね。慣れたらひとつ20秒くらいで作れるんですよ。新聞紙にはすごくメリットがあって、ポリ袋だと通気性がないので悪臭がして、虫が寄って来やすくなるんですけど、新聞紙だとそういうことがほとんどなくて、ものすごく快適に生ゴミの処理ができますね。

 あとは新聞紙って自然に乾いていくので、焼却する時のエネルギーも少なくて済みます。生ごみの80%が水分って言われているので、少しでも省エネに役立つんじゃないかなと思っています」

●本にはイラストで作り方が載っていました。必要なものは新聞紙1枚、大きなサイズでも新聞紙が2枚あれば作れる、本当に簡単なものですよね。

古賀さん「そうですね。新聞紙を持っているかたは、ぜひ作ってみていただきたいなと思っています」

写真協力:中嶋亮太、古賀陽子、プラなし生活、海洋研究開発機構

●あと台所でもお風呂でも、固形の石鹸を使うことを推奨されていましたけれども、固形を使うメリットは、どんなところにあるんでしょうか? 

古賀さん「液体の洗剤だと、ボトルとか詰め替えパックがプラスチックのごみになるんですけど、固形の場合は紙包装のものもあるし、仮にプラスチック包装だとしても、すごく小さなごみだけで済みますよね。

 あと成分的にも優れていて、石鹸の成分が凝縮されているので洗浄力は高いですし、液体に比べて、刺激の強い成分とか保存料なんかもほとんど入っていないので、洗浄力は高いのに肌に優しいっていうのがすごくいい点です」

●油汚れが落ちにくいイメージだったんですけど、そんなことはないんですね。

古賀さん「そうですね。使い方にちょっとコツがあるんですけど、最初にギトギトした油汚れは、あらかじめいらない布とかで拭き取って洗ってもらうと、すごく綺麗になりますね。

 石鹸で洗ったあとも水を張ったタライにつけないほうがいいです。なんでかって言うと、泡の中に閉じ込めた油がタライの水の中に広がっちゃうんですよね。それでほかの食器が汚れちゃったりするので、ためすすぎはせずに一個一個洗っていったほうが綺麗になりやすいです」

●食器洗い用のスポンジは、プラスチック製のものだとダメなんでしょうか?

中嶋さん「プラスチック製のスポンジやタワシは、だいたい使っているうちに小さくなってきたりするんですけど、あれってプラスチックが削れて、微小なマイクロプラスチックになって下水に流れているんですよね。だから使っていくうちにどんどん環境を汚染していくことになるんですよ。なのでプラスチック製のスポンジやタワシを、天然素材に代えることがとってもおすすめなんです」

写真協力:中嶋亮太、古賀陽子、プラなし生活、海洋研究開発機構

●例えば、どんなものがいいんでしょうか?

中嶋さん「例えば木綿で作られたガラ紡のふきん、よく『びわこふきん』って名前でも売っているんですけど、これがとってもよく落ちるんですよね。
 あとは、ちょっと焦げ付きのものとかであったら、白のタワシ、天然素材でできたタワシもよく落ちます。それだけあれば、まったく困ることないですね」

(編集部注:先ほど、固形洗剤のお話がありましたが、古賀さんによると髪の毛がさらさらになる美容成分の入った固形シャンプーがあるそうですよ。
 また、食品用にたくさん使ってしまうラップ、これもすぐごみになってしまいますよね。『暮らしの図鑑 エコな毎日』には、みつろうラップなどで代用するアイデアが載っていますので、ぜひ参考になさってください)

洗濯バサミをステンレス製に

※本ではステンレスの洗濯バサミやハンガーが紹介されていました。プラスチックより、ステンレスのほうがいいということなんですね?

写真協力:中嶋亮太、古賀陽子、プラなし生活、海洋研究開発機構

中嶋さん「小尾さんの家に多分、プラスチック製の洗濯バサミがあるかもしれないんですけど、使っているうちに割れますよね。あれ、実はプラスチックが劣化して割れて、そのうちマイクロプラスチックになって、一部が飛んでいって、その割れた小さなプラスチックの破片はずっと消えずに環境に残るんですよ。

 どうしてもプラスチックって劣化していく、特に外に置いてある洗濯バサミは青い洗濯バサミが多いですよね。なんでかって言うと、青いと劣化の要因となる紫外線をちょっとはね返すことができるんですよ。だから劣化を少しでも遅らせるために洗濯バサミを青くするんですね。

 洗濯バサミだけじゃなくて、外に置いてあるバケツも青いですよね。外に置いてあるコンテナとかも青いですよね。ごみ箱も青いと思います。それはみんな劣化を遅らせるためなんですけれども、やっぱりどうしても、使っているうちに白っぽくなっていきますよね。あれは色が抜けていって、それで劣化して割れてしまうんです。
 なので、そういった心配がないステンレス製に代えていく、洗濯バサミもステンレス製に代えれば、ずっと劣化することなく使えますので、とってもおすすめですよ」

●毎日使うものですよね。あとトイレットペーパーを箱買いするというアイデアも載っていました。これはどんなメリットがあるんでしょうか?

古賀さん「小分けで売られているトイレットペーパーもプラスチック包装されていて、消耗品なのでよく買うし、その度にかさばるごみが出てしまいますよね。
 いろいろ探してみると業務用のトイレットペーパーを見つけまして、ダンボールに40個ぐらい入っていて、ひとつひとつの包装、紙包装も何もないんですよ。そのままきっちり入っていて、売られているんですね。

写真協力:中嶋亮太、古賀陽子、プラなし生活、海洋研究開発機構

 そういったものを買って(トイレットペーパーを)一度にまとめ買いしちゃって、たくさんあるのでティッシュペーパーの代わりにもなるんですよ。例えば鼻をかんだりとか、油汚れを拭く時に使ったりもできますね。使う分だけちぎって使えるので無駄がないですし、あとは災害時とか緊急事態の時の備蓄にもなるので安心感もありますね」

●お掃除用の洗剤の代わりに、重曹やクエン酸が大活躍とも書かれていましたね。

古賀さん「はい、以前は私もいくつも専用の洗剤を買っていました。いろんな種類があるから、収納も結構大変なことになってたんですけど、家の汚れって、実はそんなに大したものがなくて、重曹とかクエン酸で十分綺麗になるんですよね。

 例えば、台所の油汚れも重曹を溶かしたスプレーをかけておいたら落ちますし、焦げなんかも、重曹は研磨剤の代わりにもなるんで、それを振りかけて擦れば綺麗になりますし、本当にいろんなところに使えますね」

長く続けることが大事

※プラスチックをなるべく使わない生活をしようと思っても、私たちの身のまわりには、プラやビニールがあふれていますよね。やっぱり無理! と思ってしまうかたにアドバイスするとしたら、どんなことがありますか?

古賀さん「確かに自分ひとりではどうにもならないことってたくさんあって、社会が変わらないといけない面もほんとにたくさんあると思います。でもだからといって、何もできないってことはないと思うんですよね。

 まずは自分の生活を振り返ってみて、変えられるところから始めてみてほしいんですよ。でも完璧にやるっていうことよりも、長く続けることのほうが大事なので、ほんとに小さなことでも長く続けていけば、大きな成果になっていくと思います。

 あとは企業とか、お住まいの地域の自治体に対しても、もっとこういうものがあったらいいなとか、こんな仕組みができたらいいのにっていう要望を伝えていくってことも大事になってきますね」

●主婦のかたですと自分ひとりが気をつけていても、ちょっと主人がとか、息子がとか、いろいろなことがあると思うんですけど、家族みんなで意識を変えるいい方法はありますか? 

古賀さん「私も最初は結構突っ走って(笑)、理屈っぽくなったり押し付けみたいな感じになってしまった時がありましたね。でもいくら正論を言ったところで、分かっているけど、ついていけないみたいな感じ、反感をかってしまうことがあるので、そういうのは一切やめましたね。

 今は、私はこういうことが気になっているとか、私はこういうことが好きっていうのをさりげなく言ったりしています。なので、ふとした時に周りが、家族が気をつけてくれることが、ちょっとずつ増えてきたような感じがしますね。

 あとは家族が興味のあることにリンクさせていくといいかなと思います。例えば、可愛いものが好きなら、海のプラごみで作った綺麗なアクセサリーの話をしたりとか、何か欲しいものがあるんだったら、エシカルな商品を一緒に見たりとか、そこから話題が広がっていったりもしますね」

中嶋さん「さっき話していた新聞紙で作るごみ袋は、子供のお小遣い稼ぎにとっても良くて、1枚作ったら10円とか。そうすると子供たちは楽しみながら作って、その時になんでこうやって(新聞紙のごみ袋を)作らなきゃいけないのっていう話をしたりすると、どうして問題なのかを自然に分かってくれたりしますよね。子供ってとっても敏感なのですぐ理解してくれたりします」

●確かに楽しみながら学べるのは素晴らしいですよね。おふたりはプラなし生活をしてみて、どんなことが喜びとして感じますか?

古賀さん「私は普段使うものに愛着がわくようになりましたね。しっかりひとつひとつ選んで、質のいいものを長く使うことに気をつけていると、ひとつひとつのものに愛着がわいてきて、そういったものを使いこなせていることにも自信がつきますね。なので、使い捨てのものをちょいちょい買う無駄もなくなったっていうのがよかったなって思っています」

中嶋さん「私の場合は、間違い探しでもなくてパズルでもないですけど、“あ! こんなところもプラスチックが使われている”っていうのを見つけて、“これはこれに代えられるじゃん”っていうのを見つけた時の喜びは、僕も古賀さんもとっても大きいですね」

●エコな商品は価格がちょっと高いイメージがあるんですけれども、購入をためらうかたに声をかけるとしたら、どんな声をかけますか?

古賀さん「無理に高いものを買う必要はないですし、一気に買い換える必要はないと思うんですね。今、家にあるプラスチック製品で、まだ使えるものは大事に使い続ければいいと思いますし、新しく買い換える時にひとつずつじっくり選んで欲しいですね。
 今は価格が高くても購入者が増えると、ロット数も増えて価格が下がることもあるので、長い目で見て計画的に切り替えてもらうと無理がないかなと思います」

日本近海は、ごみの溜まり場!?

※海洋研究開発機構JAMSTECで海洋プラスチックを調査・研究されている中嶋さんにお話をうかがいます。2年ほど前にご出演いただいたあと、なにか新たな発見などありましたか?

写真協力:中嶋亮太、古賀陽子、プラなし生活、海洋研究開発機構

中嶋さん「はい、前回小尾さんと話した時は、深海の水深約6000メートルの海底に行った時の話をしましたよね。なぜあの調査をしたかというと、プラスチックごみが行方不明になっているのが問題だったんですね。

 ひとことで言うと、海にはたくさんのプラスチックごみが流れ込んでいるんですけど、実は海面にぷかぷか浮かんでいるごみって、全体の1%くらいしかなくって、残り99%はどこかに行っちゃっている、行方不明になっているというのが問題だったんです。

 おそらくほとんど深海に沈んでいるんじゃないかってことで、深海の調査を開始したわけです。前回小尾さんにお話しした時は、水深約6000メートルの海底のごみの調査をした時のお話しをしたんですけども、新たに分かったことは、前回調査した房総半島から500キロメートルぐらい離れた、陸からすごく離れているところの海底に落ちていたごみが、世界でもトップクラスに多かったっていうことがわかったんですよ」

写真協力:中嶋亮太、古賀陽子、プラなし生活、海洋研究開発機構

●えぇ〜! 世界でトップクラスですか?

中嶋さん「はい、世界の同じような水深帯で比べたら、間違いなく世界一という、ほかの陸から近いようなところと比べても、やっぱり多かったんですね」

●そんなに!?

中嶋さん「つまり、どういうことかと言うと、やっぱり日本の近海の深海底は、ごみの溜まり場になっていることを意味しているんです。今後は、今年の冬も来年も調査は続けていくんですけど、日本の周辺でもっとごみが溜まっている深海があると予想されているので、そういったところをどんどん明らかにしていく予定です」

●今後、解き明かしたいことと言うと・・・? 

中嶋さん「今後解き明かしたいことはやっぱり、日本の近海の海底に沈んでいるプラごみの量を見えるようにすることです。ちょっと難しく言うと可視化するってことなんですけど・・・。

 深海に沈んでいるごみって見えないじゃないですか。海に浮いていたら見えるけど、深海にいっていたらまず見えないので、そこにたくさんのごみがあることがだんだん分かってきましたから、日本の周辺のどこの深海にどれだけごみが溜まっているのか、どのように溜まっていくのか、そういったことを知ることが、今後プラごみを減らすための対策を打ち立てていくうえで、とっても重要な情報になるんですね。なので、まずは見えるようにすることが目標です」

写真協力:中嶋亮太、古賀陽子、プラなし生活、海洋研究開発機構

●コロナ禍で何か海洋ごみに影響はあったんですか?

中嶋さん「コロナになって、まずはマスクのごみと手袋のごみが世界中で増えたんです。マスクなんて毎月、世界中で数千億枚とか使われていますので、非常にたくさんごみになって環境に漏れ出ていますよね。やっぱり落ちているのを見たことありますよね」

●あります〜。

中嶋さん「ああいうことが世界中で起きていて、それがやっぱり海にも入っていますし、あとコロナ禍になって、使い捨てのプラスチックの消費量が圧倒的に増えました。どうしてもテイクアウトするようになりますし、なんでも使い捨てのほうが安心っていうのもあって、やっぱり使い捨てが増えたのは否めないですね」

目指せ! プラなし生活

※ところでいま、おふたりがいちばん減ったらいいなと思うプラごみは、なんでしょうか。まずは古賀さんからお願いします。

古賀さん「私は個人的にはポリ袋ですね。スーパーでお買い物をした時に、お肉とかお魚を小さなポリ袋に入れて渡されることがよくあるんですけど、毎回レジに行く前に、ポリ袋はいりませんって言わないといけないっていうのがあって・・・。汚れないようにするために、そうしていただいているのは分かるんですけど、せめてレジ袋みたいに、いるいらないを選択できたらいいなって思っています」

●確かにそうですね〜。これ、ポリ袋に入れましょうか? っていうのを聞かれる前にもう入れられていますよね、中嶋さんはいかがですか?

中嶋さん「いろいろありますけど、特に思うのは使い捨てのお手拭きですね。日本ってレストランに行ってもフードコートに行ってもどこに行っても、お手拭きを出されますよね。お弁当の中にも入っていることありますし、こんなにお手拭きを配っている国は日本しかないですよ。

 ファミリーレストランでも、お手拭きを何気なく渡されて、当たり前のように開けて手を拭いて、(テーブルに)置いておきますよね。見た目がめちゃめちゃ汚いんですよ。ご飯を食べ終わったあとにトイレに行って戻ってきて(テーブルを見ると)袋とお手拭きがすごく散乱していますよね。

 見た目も良くないし、お手拭きの袋もプラスチックでしょ。お手拭き自体もプラスチックでできているんですよ。あれは不織布ですよね。不織布ってプラスチックを混ぜて作りますので、あれは使い捨てプラスチックなんですね。とにかくこれをなるべく出さないようにするには、みんな手を洗えばいいんですよ。
 そういうふうにちょっと習慣を変えていくだけでも、ごみの量は大きく減るんじゃないかなと思っています」

●確かに当たり前とみんなが思ってしまっていますよね。
 では最後におふたりにお聞きします。プラなし生活を実践してきて、ご自身の中で何が自分でいちばん変わりましたか?

古賀さん「私は使い捨てを見直すようになって、本当に必要かどうかをすごく考えるようになりましたね。新しく買うときもすごく慎重になっていて、ごみになったらどうやって捨てるのかなとかいろいろ考えるようになりました。

 あとは買わずに、あるものでどうにかできないかとか、自分で作ることも増えましたね。それによって好奇心みたいなものが満たされて、クリエイティヴなことが増えていくのがすごく楽しいですね」

●中嶋さんはいかがでしょう?

中嶋さん「私はやっぱり研究者なので、こういったプラスチックが健康に影響するかもしれないというのを見つけることにやりがいを感じるようになりましたね。

 この問題を解決するのは私たちの世代だけじゃなくて、今の若い世代、あるいは子供たち、未来を担う時代の主役たちに問題を伝えていかなくちゃいけないんだっていう意識が、どんどん高まってきましたね。プラなし生活を通じて、なぜこれは問題なのかっていうことをどんどん広めていって、さらに知ることでアクションにつながるので、そういった活動をもっともっと広げたいなって強く思うようになってきました」

(編集部注: SDGsの目標「つくる責任 つかう責任」そして「海の豊かさを守ろう」は、あまりにもプラスチックに依存している、私たちのライフスタイルを見直すためにある目標なのかも知れません)


INFORMATION

『暮らしの図鑑 エコな毎日〜プラスチックを減らすアイデア75×基礎知識×環境にやさしいモノ選びと暮らし方』

『暮らしの図鑑 エコな毎日』

 おふたりの新しい本をぜひ参考になさってください。プラスチックを減らすためのアイデアや情報、基礎知識が満載です。写真を豊富に使ってわかりやすく解説、プラなし生活を目指すための、まさに参考書です。おすすめです。

 「翔泳社」から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎「翔泳社」HP:https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798173580

 情報サイト「プラなし生活」もぜひご覧ください。

◎「プラなし生活」HP:https://lessplasticlife.com/

◎国立研究開発法人「海洋研究開発機構」JAMSTECのオフィシャルサイト:https://www.jamstec.go.jp/j/

<プレゼントの応募方法>

『暮らしの図鑑〜エコな毎日』を抽選で3名のかたにプレゼントいたします。
応募はメールでお願いします。
件名に「本のプレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
メールアドレスは flint@bayfm.co.jp

あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。
番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。

応募の締め切りは 9月9日(金)。
当選発表は発送をもって代えさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第7弾!〜畑の上で太陽光発電「ソーラーシェアリング」

2022/3/20 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第7弾! ゲストは「市民エネルギーちば」の代表「東 光弘(ひがし・みつひろ)」さんです。

 「SDGs=持続可能な開発目標」は、2015年の国連サミットで採択され、2030年までに達成しようという目標=ゴールが全部で17設定。きょうはその中から、ゴール7の「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、そして、ゴール13の「気候変動に 具体的な対策を」について。

 東さんは1965年、東京生まれの千葉育ち。20年ほど、有機農産物などの流通を通して、環境問題に取り組み、2014年に「市民エネルギーちば株式会社」を設立、現在は代表取締役として活躍中。千葉県匝瑳市(そうさし)で行なっている事業「ソーラーシェアリング」は、令和3年度に環境省「気候変動アクション 環境大臣表彰」で大賞を受賞、いま大変注目されています。

 実は「東」さんは「アースデイ千葉」実行委員会の発起人で、2005年にこの番組に出ていただいていたんです

 きょうはそんな「東」さんに、ソーラーシェアリングとはいったいどんな事業なのか、そしてその事業を進めることで、どんな効果があるのか、いろいろお話をうかがっていきます。

☆写真協力:市民エネルギーちば株式会社

写真協力:市民エネルギーちば株式会社

発電すればいい、ってことじゃない

●それでは、そんな東さんが千葉県匝瑳市で行なっている、耕されなくなった畑「耕作放棄地(こうさくほうきち)」を活用したソーラーシェアリングや「市民エネルギーちば」について、お話をうかがっていきましょう。まずは、初歩的な質問になりますが、このソーラーシェアリングとは、どんな事業なのか、教えてください。

 「ソーラーシェアリングはざっくり言うと、畑の上で太陽光発電をやりますよっていう事業で、山を壊しちゃったりとか、そういうことはしません。
 (太陽光パネルの)高さがだいたい3メートルぐらいなんですけど、その下ではトラクターも通りますし、コンバインも通って、普通に農業やれる、そういうような仕組みなんです。

 特徴的なのは、たたみ一畳ぐらいの大きな太陽光パネルは使わないで、幅が35センチ、長さが2メートルの細長い太陽光パネルが、空間が2あったら太陽光パネルが1、2対1で隙間だらけの、そういう太陽光発電のことをソーラーシェアリングって言います」

写真協力:市民エネルギーちば株式会社

●ソーラーパネルの下が畑なんですね。会社名に”市民”と付いているのは何か意味があるんですか? 

「2011年に東日本大震災があって、原子力発電所の事故がありました。僕はその前まで20年ぐらい、有機農産物の流通をやっていたんですが、これからは食べ物だけじゃなくて、エネルギーのことを市民も考えていかなきゃいけないなって考えました。

 そこで千葉県内の9つの環境団体の理事とか代表クラスが集まって、ひとり10万円ずつ出し合って、本当に小さな90万円の合同会社を作ったのがスタートです。市民っていう名前は、市民のエネルギーなんだよ、しかも千葉から始めるんだよってことで、市民エネルギーちばっていう名前にしました」

●会社を起こすきっかけは、東日本大震災が大きかったんですね。

「いちばん大きかったですね」

●匝瑳市で行なっているソーラーシェアリングは、どんなことを大事に進めている事業なんですか? 

「ただ発電すればいいよってことではなくて、だいたい4つのことを大事にしています。ひとつは自然環境を大事にしようねっていうことです。
 いくら再生可能エネルギーでエネルギーを再生したとしても、山を壊しちゃったりとか生態系を壊しちゃったりしたら、元の木阿弥というか、本末転倒なんで、エネルギーのことだけじゃなくて、その他の環境問題のことも大事にしようね、これがひとつですね。

 それと(太陽光パネルの)下で農業やらせていただいてるんですけれども、やっぱり農業と太陽光発電だったらどっちが大事なの? って言った時には、迷わず農業のほうが大事なんだよっていう、これをすごく大事にしています。

 あとは地域コミュニティ、これもすごく大事にしています。自然エネルギーって広い土地や空が必要なので、その地域の恩恵を都会の、電気をたくさん使うところに分けていただくってお仕事だと思っているので、地域コミュニティが大事、そういうことを考えています。

 もうひとつは、社会的に僕たちは、普段”シンク・グローバリー、 アクト・ローカリー”ということで、地元で小さく活動しているんですけども、その思いが世界中に繋がっていくような社会性、そこにも寄与していきたいなってことで、この4つのテーマを大事に活動しています」

東 光弘さん

ソーラーシェアリングの師匠

※ソーラーシェアリングは、太陽の光を「発電」と「農業」でシェアするという取り組みですが、このシステムを開発したのは東さんなんですか?

「いえいえ、僕ではなくて、 僕の師匠に当たります、長島彬(ながしま・あきら)先生っていうかたがいらっしゃいます。長島先生は2010年にこのソーラーシェアリングという技術を特許申請しまして、特許を取れたんですね。でも自分がそれを独り占めすることはなくて、誰でも使っていいよってことで公開しています。

 全国で3000件以上のソーラーシェアリングがあるんですけれども、もしも長島さんがひとつあたり5万円とかお金を取っていたら、何億円も儲かっちゃっていたんですね。長島さんは全ては世界中の子供たちのためにっていうコンセプトを持っているので、自分が儲けるよりも、みんなが真似してくれて、どんどん広まってほしいっていう、そういう人徳者のかたなんですね」

●長島さんとの出会いは? 

「最初にお伝えした、自分もこれから自然エネルギーを広めたいなと思った時に、山を壊すような太陽光発電はやりたくなかったので、ちょっと悶々としているところに、畑の上の太陽光発電っていうのがあるよって知り合いから教えてもらいました。

 最初は自分もずっと有機農業の流通の仕事をしていたので、畑の上で太陽光発電をやるのは、けしからんなって感じで、ちょっと文句でも言いに行こうかなと思って(長島さんのところへ)行ったんです。行ってみたら、僕も全国の色んな畑を周るお仕事だったので、そこの野菜たちがすごくたおやかというか、僕たちは幸せだよみたいな、すごくふわふわっとした、いい雰囲気の中で作物が育っていたんですね。

 この技術は研究してみる価値があるなっていうことで、長島先生に色んなことを教えてもらいながら、実際に自分でそこで堆肥も作って、色んなお野菜を育ててみたんですね。どれもすごく元気に育つものですから、これはもう自分の仕事として全国に広めていきたいな、そう思ったのがきっかけです」

写真協力:市民エネルギーちば株式会社

パネルの下でもすくすく育つ

※先ほど、細長いソーラーパネルを使っているというお話でしたが、東さん、細長いパネルを使うメリットってなんでしょうか?

「できるだけ、自然の木漏れ日に近いような状態にしたいなと思っています。自然の中では、野菜たちって背が低いので、果樹も背が低くて、ちょっと大きい木が側にあると、その枝の隙間から来る、そこはかとない木漏れ日で、みんな元気に育っています。それに近い状態を作ってあげたいなっていうことです。

 大きいパネルを使っちゃうと、雨だれという雨の雫がすごくたくさん下に落っこっちゃって、その下の野菜の育ちが悪くなっちゃうんですね。(パネルが)細いと雨だれの量が大したことないので、作物にとってとても優しいっていうことですね」

●だから、ソーラーパネルの下の畑でもすくすくと育っていくわけですね。ちなみにどんな作物を育てているんですか? 

「現在は大豆と麦を育てています。今まで50種類以上の野菜を育ててみて、どれも元気に育つんですけども、私たちのところは土地がとても痩せているので、まず大豆を育てて空気中の窒素を固定化する。

 そして麦を育てると、麦はすごく根っこが深く延びるので土の中に空気が入っていく。空気が入っていくと微生物もよく育つ。麦と大豆を輪作していくと土がだんだんよくなるので、有機農業ではよくやる手法なんですね」

●耕作放棄地は農家さんから借りているんですか? 

「そうですね。借りる場合が多くて、あとは買っちゃったりもして、そこを有機JASということで、全部オーガニックにしてやっています。僕たちは太陽光パネルでCO2が出るのを減らしたいってことと、その下で植物が育つので、光合成によっても空気中の炭素を固定化していこうというのがひとつあります。

 有機栽培をやると土の中の炭素がどんどん増えていくし、化学肥料とか農薬はすごく化石燃料を使って作るものなので、それを使わないと、よりエコだっていうことで、トラクターもBDFっていうバイオディーゼルの燃料を使っていたりします」

●農家さんたちの反応はいかがでした? 

「わりと僕たちの農業をやってくれている仲間たちは若くて、もともと有機栽培をやっている人たちなんですね。そういう農家さんは知的好奇心が高いので、やっぱり気持ちよく、農業をただお仕事でやるんじゃなくて、それが自分たちの仕事だとプライドが持てて、社会に自分たちの農業が貢献しているんだっていう意識があると思います。

 だからその上で自然エネルギーを生み出すってことは、すごくポジティブに捉えてくれているし、今パタゴニアさんとかと協力してやっている不耕起栽培の実験にも、すごく積極的に自分ごととして参加してくれているんですよね」

●そのパタゴニアさんとのコラボってどんなものなんですか? 

「色々やっているんですけど、そのうちの大きいプロジェクトが、耕さないで農業をやってみること。今アメリカとかヨーロッパでどんどん盛んになってきているんですね。

 さっき言った有機栽培に加えて耕さないと、土の中の”団粒構造”っていう、微生物たちがネバネバした液体みたいなのを出して、土がポップコーンみたいに粒々コロコロになっていくんですね。そうすると他の微生物がもっと育つようになってきて、どんどん微生物の死骸が溜まったりして、土の中の炭素量が増えていくんです。

 僕たちの活動はその太陽光パネルでCO2が出る量を減らしていて、その下で作物を育てて光合成によって炭素を固定しているんですけれども、耕さない農業をやると土の中にさらに炭素が入っていくので、そういったことをパタゴニアさんと協力して、今実行しているところなんですね」

(編集部注:東さんによれば、千葉県匝瑳市では農地の4分の1ほどが耕作放棄地になっているそうです。そこを再生させる意味でもソーラーシェアリングに可能性を感じます)

東 光弘さん

都市部でもソーラーシェアリング

※ソーラーシェアリングの課題はありますか?

「今、うちのエリアではすごく成功しているんですけれども、まだ社会的に、例えば農家さんの高齢化が進んでいたりとか(農業)従事者人数が減っていたりとか、耕作放棄地が増えているっていうことがあります。
 農業の面からもソーラーシェアリングは期待されているし、世界的にはRE100(*)だったりとかで、自然エネルギーをもっと増やしてほしいっていうニーズがあるんですね。ニーズがあるにもかかわらず、爆発的に広まっていません。

 これはひとつは、20年間は最低やらなければいけないので、20年農業をやってくれる農家さんを探すのが大変だったりとか、先ほど最初にお伝えした通り、(太陽光パネルが)高いところにあったり、細長いちょっと特殊なパネルを使うので、コストがまだ高い。このふたつを解決していくのが今いちばん大きな課題になっています」

●ソーラーパネルのメンテナンスは結構大変なものなんですか?

「意外と簡単です。汚れにしても、だいたい30度くらいの角度がついているので、例えば、鳥の糞とかカラスの糞がついちゃっても、ちょっとしっかりした雨が降れば、すぐ綺麗に落ちたりとか・・・。

 あとは、仕組みとしては意外とシンプルなので、メンテナンスは意外と簡単です。特に僕たちの場合はその下で農業をやっているので、定期的に人が入ります。山奥のメガソーラーと違って、週に1回ぐらいは誰かがちょっと見たりとかしているので、ケーブルがたれちゃっているねって言えば、ささっと直せますね」

●そうなんですね〜。じゃあ扱いやすいですね。

「そうですね。自然エネルギーの中では、素人でもメンテナンスしやすい技術だと思います」

●ソーラーシェアリングを都市部でも展開しようとされていますけれども、都会となると、使う土地って畑ではないですよね?

「色々考えられるんですけど、いちばん簡単なのは公園かなって思ってますね。ちょっとパーゴラみたい、藤棚みたいな感じで、木陰代わりにソーラーシェアリングになっていて、そこから例えば、外灯とか色々電気をとっておいて、災害時にはみんながそこでスマートフォンを充電出来るような空間にしたりとか。それとあと大きなビルの屋上もすごく狙っています」

●いいですね!

「ふたつのことを考えていて、屋上緑化されているビルについては、そのまま畑と同じようなソーラーシェアリングをやって、あとはビルの上ってGoogleアースとかで見ていただけるとよく分かるんですけれども、結構クーラーの室外機とかでデコボコなっているんですね。

 ソーラーシェアリングの場合だと逆に脚があるので、室外機とかをオーバーハング、上に跨いでいくような形で設置ができますね。TOKYO OASISってうブランドで、そういうことも考えています。

 クーラーの室外機って本体が35度以上になると、すごく消費電力が上がっちゃうんですけど、ソーラーシェアリングで日陰にするとすごく消費電力も下がるので、二重にお得かな! そんなことも考えています」

(*編集部注:東さんのお話にあった「RE(アールイー) 100」とは、「RENEWABLE ENERGY(リニューアブル・エナジー) 100%」の略で、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的な取り組みのこと。国内外の超有名企業が数多く参加しています)

災害時に電気を供給

※2019年に千葉県でも大きな台風被害があって、停電が長引いたことがありました。その時に「市民エネルギーちば」では充電のためのステーションを開設したそうですね。どんな試みだったんですか?

「私たちのエリアでもやっぱり2週間くらい停電がずっと続いて、僕自身も初めて被災者っていう立場になって、メンタル的にすごく削られていくっていうのがよく分かったんですね。

 自分たちに出来ることはないかなっていうことで、とりあえずメンバーが各自、自分たちの発電所に行ってパワーコンディショナーっていう機械を開けて、そこから100ボルトの電気がそれなりに取れたので、それを地元のかたたちに10日間くらい解放しました。

 そこに炊飯器を持って来れば、そこでお米も炊けるし、EVカー持って来れば、充電もできるってことを数設備分やったんです。それですごく地元のかたの信頼が上がったっていうか、電気はただエネルギーってことじゃなくて、人と人が繋がる、コミュニケーションになるんだなっていうのが分かりました。

 そのあと、匝瑳市と連携して、今度は全部の設備から電気が取れるように協定を結んだところなんですね」

●それはどういった協定なんですか?

「僕ら(のメンバー)は数人しかいないので、設備が20個あっても全部使えないから、匝瑳市の地元のかたに講習会を開いて、カギを預けておいて、もし停電になったら、みんな自分の係の発電所を開けて電気を取り出せますよ。匝瑳市の人だったら誰でも電気をタダで貰えますよっていう協定書を、覚書を作ったんですね。

 現在はそれがさらに発展して、ENEOSさんと共同申請をして”マイクログリッド”という仕組みの調査を昨年実施したところです」

●「地域マイクログリット構築プラン作成事業」!

「そう、難しい言葉! おっしゃる通りです。経産省が主導で、全国でそれに挑戦してみるところありませんか? っていうことで、私たちの地域で応募して採択されて、今調査が終わったところです」

●改めて、このマイクログリッドっていうのは、なんですか?

「普段のこの辺ですと、東京電力さんが大きなグリッド、送電網っていうものを管理していただいているわけですけれども、災害があった時には停電が起きちゃうよと。そういう時に千葉県ですと、睦沢町(むつざわまち)というところで、すでにマイクログリッドが実証されているんですね。そのエリア、決して広くはないんですけども、前々回の台風15号の時も19号の時にも、そこの町だけは停電が起きなかったんですよ。

 すごく素敵で、僕らもそれをぜひやってみよう! ってことで、近くの”ふれあいパーク”っていう道の駅のようなところがあるんですが、そこに大きな蓄電池を入れて、普段は溜めておいて、もし停電になったら、ソーラーシェアリングの電気をそこに繋いで、数百件のお宅と、あとは学校とか、そこのエリアだけは停電しないようにってそういう実証実験をやっているところで、今年からいよいよ建設が予定されているところです」

写真協力:市民エネルギーちば株式会社

※東さん、最後に「市民エネルギーちば」の代表として、ソーラーシェアリングも含め、伝えたいことがあれば、お願いします。

「本当に大事な時期に生きているなと、お互い思っていて、僕は56歳なんですけど、最近若い人もたちもどんどん訪ねて来てくれています。
 自分が普段、環境活動をやっている上で気をつけていることが3つあって、ひとつはさっき言ったような、Googleアースから見た視点、距離的に高いところから見て俯瞰してものを見る。

 それと環境問題って自分が今いいことだなって思っていても、人間が考えることなので、間違えちゃうことも多いから、時間軸を何十年とか何百年とか、時間も俯瞰して見るっていうこと。

 ソーラーシェアリングは、空中では太陽光発電をやって地面では農業をやろうってことで、階層、レイヤーを俯瞰して見る。色んな組み合わせ、車はもともと人が移動したりとか、物を運ぶための道具なんですけど、それを今度はエネルギーを運ぶっていう異なるレイヤーのことを、再度ハイブリッドに組み合わせてみると、色んな可能性がある。だから距離的な俯瞰、時間的な俯瞰、レイヤーの俯瞰をしていくと。

 これから大変な時代だって、ついみんな思いがちで、僕もそういう時あるんですけど、無限に解決していく可能性があると思っています。それはエコロジーに従事していくと、すごく自分の世界観を広げながらやっていけることだと思うので、そういうことを来ていただいた若い人には、今お伝えするようにしています」


INFORMATION

 太陽の光を「発電」と「農業」でシェアするソーラーシェアリングは、クリーンなエネルギーを得られること、作物の収穫、そして耕作放棄地の再生、さらにエネルギーの自給自足は災害時の備えにもなる素晴らしい事業です。ぜひ「市民エネルギーちば」の活動にご注目ください。

 「市民エネルギーちば」について、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎市民エネルギーちば HP:https://www.energy-chiba.com

「SDGs〜私たちの未来」エコな暮らしを楽しくお洒落に〜ゼロウェイスト「ミニマルリビングトーキョー」

2022/2/13 UP!

 今週はシリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第6弾! ゲストは、ゼロウェイスト・セレクトショップ「ミニマルリビングトーキョー」の赤井エリさんです。

 オンラインショップの「ミニマルリビングトーキョー」では、環境や健康に徹底的にこだわった商品を販売、特に子育て世代のママや、エコ意識の高い女性に大好評なんです。

 そんなショップの共同代表、赤井さんにお話をうかがいながら、エコな暮らしを、お洒落に楽しく続けていくにはどんなことが大事なのか、一緒に考えていきたいと思います。また、おすすめのエコな生活用品やコスメなど、耳寄りな情報もお届けします。

☆写真協力:ミニマルリビングトーキョー

キャプ:共同代表の赤井エリさん(右)と同じく千葉エリナさん
キャプ:共同代表の赤井エリさん(右)と同じく千葉エリナさん

「つくる責任 つかう責任」

 赤井さんにお話をうかがう前に、少しだけ「SDGs」のおさらいです。SDGsは「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。

 2015年の国連サミットで採択され、2030年までに達成しようという目標=ゴールが全部で17設定されています。その範囲は飢餓や貧困、環境問題、経済成長、そしてジェンダーに関することまで、いろいろな課題が入っています。
きょうは17設定されているゴールの中から「つくる責任 つかう責任」について考えていきましょう。

 きょうのゲスト、赤井さんは、2019年6月に共同代表の千葉サイナさんとふたりで、ゼロウェイストにこだわったショップ「ミニマルリビングトーキョー」を立ち上げ、子育てをしながら、日々奮闘されています。販売している商品は、キッチンやバスルーム用品から、エコバッグやコスメなど、およそ70種類。どれもお洒落で素敵なんです。

写真協力:ミニマルリビングトーキョー

お店、やっちゃおう!

※それでは赤井さんにお話をうかがっていきましょう。まずはショップのコンセプト「ゼロウェイスト」について。改めて、どんな意味があるのか、教えてください。

「ゼロウェイストの本当の意味というのが、まずゼロは数字のゼロ、何もない状態を表していて、ウェイストは英語でゴミのことを表しています。ゼロウェイストって造語なんですけど、ゴミがない状態を表しているんですね。

 私たちが普段生活している中でゴミってどうしても出てしまって、それはしょうがないことなんですけど、ゼロウェイストのコンセプトを基にしていると、そもそも最終的にゴミになってしまうようなものを、自分の手に持たないっていうことなんですね。

 だから例えば、何かものをひとつ買う時に、これって最終的にどういったものになるんだろうって考えて、ずっと使えるのかな、それともいずれゴミになってしまうのかなって考える。で、ゴミにならないようなものを使う、もしくは生産する。生産者側にも言えることなんですけど、それを全部まとめてゼロウェイストっていう言葉の意味になっています」

●ゼロウェイストをコンセプトにしたセレクトショップを始めようと思ったきっかけは何だったんですか? 

「いろんな人に聞かれて、必ず私もパートナーのサイナも、”ノリだったんだよ”って話をよくするんですけど、そもそも私たちは学生時代に留学先のカナダで知り合っているんですね。
 その時に普通に友達として仲良くしていて、お互いにもともと、例えばサイナは大学でアグリカルチャーやオーガニック農法を専攻していたので、そういうことにすごく詳しかったのと、私も環境問題にちょっと関わるような授業を受けていたり、卒業後もそういう仕事に少し就いたりしていたので、もともと興味があったんですね。

 私たちが住んでいたバンクーバーは、2010年に(冬季)オリンピックを開催した都市で、世界で最もグリーンな都市って言われているんですよね。
当たり前のようにダウンタウンのビルの上がルーフガーデンになっていたり、当たり前のように野菜が、オーガニックのものや裸売りのものが買えたり、あとは量り売りも当たり前にあったりっていう中で暮らしていたので、ふたりとも日本に帰国したあとに、すごく逆カルチャーショックみたいなのを受けてしまって・・・。

 今まで当たり前に買えていたものが何も買えないよねってなって。かつお互いにひとり目の子供が生まれ、子育てをする中でも、やっぱり何か良いものって手に入れづらいね。その良いものっていうのは、高くて良いものではなくて、本当に体に良いものとか、環境に良いものは手に入りづらいよね。

 でもきっと、こういう思いしている人って、私たちだけじゃないよねっていう話をしていて、“じゃあ、お店やっちゃう!?”みたいな感じで(笑)。だってお店があったら困ることなく必要なものが全部そこで買えるし、自分たちの問題も解決するよねみたいな感じで、“やっちゃおう!”って言って、1週間後に会社を立ち上げていました」

(編集部注:ショップをノリで始めたとおっしゃっていましたが、勢いと熱意を維持しながらも、ビジネスとして継続させるために、販売する商品のリサーチやセレクトには、ものすごく時間をかけたそうです。ショップのサイトを見ると、そのこだわりが伝わってきますよ)

写真協力:ミニマルリビングトーキョー

環境アクションのきっかけに

※ショップの名前「ミニマルリビングトーキョー」には、どんな思いが込められているんですか?

「これも結構悩んだんですよ。 すごく名前がシンプルで悩む余地もないんじゃないかって感じなんですけど・・・それこそシンプルリビングがいいかな〜、オーガニックリビングがいいかな〜、それともゼロウェイストがいいかなとか、すごく色々考えて、日本人でも分かる英語、かつ覚えやすい名前にしようと。

 実は”トーキョー”を付けたことにすごく意味があって、私たちの事務所が今、東京ベースなんですけど、東京ってすごく都会っていうイメージがあって、みんなが忙しなく働いていて、環境に対する意識とか、何かを頑張ろうっていうのもすごく大変な感じがするんですよ。

 都会に住んでいるとゴミが出ちゃうとか、何かそういったイメージを覆して、東京という世界屈指の大都市に住んでいるからこそ出来るサステナブルなアクションがあるよっていうことを発信したかったので、トーキョーって名前を最後に付けて、ミニマルリビングトーキョーにしました」

●へ〜〜、そういった思いが込められているんですね! 販売しているエコな商品に赤井さんと千葉さんのメッセージも込められているんですよね? 

「そうですね。もちろん会社のミッションとしてもあるんですけど、私たちのいちばんの目的は、私たちが取り扱っているものを通して、ひとりひとりの人が、環境アクションってこんなに簡単なんだとか、めちゃくちゃ楽しんで出来るんだ、みたいなきっかけや気付きを持ってほしいっていうところがいちばんなんです。

 そこからそれぞれの人が考える力が出てきて、色んなことへのマインドがちょっと環境に優しいものだったりにシフトしていく、そういうことが出来るようになるんですよね。

 何かひとつでも環境に配慮したものを自分の生活の中に取り入れることで、そういった考えに変わっていく人がどんどん増えていくことで、日本が変わっていくとか、世界が変わっていくとか、本当にそういうことに繋がるから、そんなマインドシフトのきっかけになりたくて、こういうショップを運営したいねっていうことにもなりました」

(編集部注:「ミニマルリビングトーキョー」では、国産も販売していますが、主なものはアメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、そして台湾などから輸入した商品だそうです)

商品選びの妥協のないこだわり

※販売する商品を選ぶときのポイントというか、こだわっているのはどんなところですか?

「ここはすごくこだわっているので、かなり基準が高いんです。まず、もちろんプラスチックフリー。使い捨てプラスチックや石油ベースの原料を使っていないものを中心に取り扱っているんですね。

 だから例えば、中身の原材料がすごく良いものでも、結局使い捨てのプラボトルに入っていて、そのプラスチックの原料がバージンプラスチック、リサイクルされているものでもなくて、本当に石油から作られた新しい製品だったりしたら、もうそこでブッブーってなっちゃうんです。

 あとは例えば、製品を使い終わったあとに土に返せるかどうかもすごくポイントが高くて、コンポストできるかどうかってことですよね。容器とか製品自体を土に埋めた時に最終的に堆肥にできるかも高いポイント。もちろん小物雑貨が多いので、耐久性と実用性は必須で、これエコな商品だから、使いづらいけど、しょうがないよねっていうのはないようにしているんですね。

 だから初めて使った人が、それがエコな製品かどうかを分からないぐらい、従来のものと変わらない、もしくはそれ以上の実用性と耐久性があるものを探していて、この辺がやっぱり製品の特徴なんですね。

 あとは日本に既にあるかどうか、珍しいもの、話題性があるものかどうか。結局、最終的に使っていて気分が上がるかどうかなので、見た目が可愛いとか、かっこいい、お洒落とかもすごく大事です。やっぱりそれって続けられるポイントにもなるし、色んな人の目に留まることにもなるっていうポイントもあるので、それもすごく大事ですね」

●ご自身で使われて、試してみてっていうこともあるんですか? 

「そうですね。大体サンプルを取り寄せて、ものによってですけど、コスメだとやっぱりお肌とかにつけるものなので、数ヶ月間試してみて、かつ自分たちだけじゃなくて違った肌質の人とか、違った生活態度をしている人とか、色んな人に試してもらってどうかなっていうのがありますね。
 それで結局やっぱり駄目だったねっていうものももちろんあるし、これならいけるねっていうものが、今オンラインのストアに並んでいるものですね」

ベストセラーは固形の食器用洗剤

写真協力:ミニマルリビングトーキョー

※特にどんな商品が売れていますか? その特徴も含めて教えてください。

「今いちばん人気は固形の食器用洗剤なんですけど、こちらはリピーター率がとても高いっていう意味で、すごく人気の高い商品です。
 やっぱり液体から固形にスイッチするって結構チャレンジングなことなんですよね。いきなり固形!? みたいな・・・でもみんなちょっと試してみて、そうしたら、すごくびっくりした! っていう感想をよく聞いていて、みんなすごく使いやすいと言って使ってくれているのが食器用の固形洗剤です。毎日使うものだし、本当に使えるものじゃないと意味がないので・・・あと最近だと、若い女性の層でも環境に対する意識がすごく高まっているのもあって、メイク用品がすごく人気ですね」

●固形の洗剤ですけど、手を洗う時の固形の石鹸ではなくて、食器用の洗剤が固形ってことですよね? 

「そうなんです。普通にボトルの洗剤をスポンジに付けていたように、固形の洗剤にスポンジを擦り当てるだけで泡立って、そのままお皿が洗えるっていう使いかたですね」

●やっぱり容器も今まではゴミになってしまいましたよね。

「プラボトルがやっぱりネックで、多くのものが実は再利用されていない、リサイクルされていないっていう現状ももちろんありますね。日本はすごくプラスチックのリサイクル率も低いので、根本からそういうところも変えていくのにすごくいいアクションかなと思います」

●コスメ用品でいうと、特に売れている商品はありますか?

写真協力:ミニマルリビングトーキョー

「今人気が急上昇しているのが、今年に入ってから入荷した新製品なんですけど、アイシャドーパレット。3色のパレットになっていて、それが3種類あるんです。容器がワインのコルクをリサイクルして、それをアップサイクルして、その容器にアイシャドーを入れていて、箱も再生紙で出来ているんですね。そのコスメが、要はチークとかシャドーとか全体的に使えるもので、かつ動物性の原料を一切使ってないヴィーガンのメイク用品なんですね。

 もちろん製造過程で動物実験をしていない。環境を汚染するような原料、例えばパームオイルとかそういったものを使っていない。人工的な着色料や香料も一切入っていないものなので、すごくクリーンなメイク用品っていう感じで、発色がすごく綺麗なんですよ! ぜひサイトで見てもらいたいんですけど、メイクにこだわるかたでも気に入ってもらえて、今それが人気急上昇中ですね」

※ほかに今、特におすすめの商品はありますか?

写真協力:ミニマルリビングトーキョー

「例えばスキンケアにすごく興味があるかたとか、化粧水、乳液だなんだって色々使っていて、もう大変みたいな感じの人におすすめなのが固形のセラムバーです。セラムって美容液なんですね。

 もともと高級美容液として知られているもので、皮膚を活性化させて、お肌を蘇らせる機能があるんですけど、結構な確率ですごく立派な瓶に入っていたりとか、キャップもすごく重めのプラスチックで、中身はちょっとだけ。それでも、ものすごく高いのが割とセラムなんです。うちのオンラインストアでもそのセラムは扱っていて、ただこれは固形なんですよね。

 水分を省いて凝縮した固形のバーで、それを直接肌に当てて塗っていくんですね。先ほど言ったように、例えばヴィーガンであったりとか、動物実験を一切していない、オーガニック成分を使っている、天然オイルがベースだったりするなど、色々こだわりの過程を経て出来上がったセラムバーで、これを使っていると化粧水とか乳液とか全部いらないんですよね。

 だから自分の普段の生活がこの3センチ×3センチぐらいの小さい缶に収まるぐらいのスキンケアで済むっていう、すごくミニマリストであり、シンプルであり、でもお肌の状態をよく保ってくれます。

 私たち結構これを気に入っていて、私も割とアウトドア派でキャンプに行ったりとかするので、そういう時にさっと持っていけてっていうのもすごく便利で、詰め替えとかもあるので、ゴミが増えない、容器をずっと繰り返し使えるっていうところもすごくいいポイントですね」

(編集部注:当番組のパーソナリティ小尾さんがショップのサイトを見て、特に気になったというのが「キューボトル」と「バンブーシリコンの綿棒」。

写真協力:ミニマルリビングトーキョー

「キューボトル」はプラスチックフリーの水筒で、飲み終わったら、半分の大きさに縮めることができるんです。「バンブーシリコンの綿棒」は、使い終わったら、洗って何度も使えます。ぜひチェックしてください)

やろうよ、みんな一緒に!

※今やエコバッグやマイボトルは当たり前になってきたと思いますが、エコなことや、ゼロウェイストな活動は、ちょっと面倒だったりすることもあるかな〜と思います。長続きさせるコツがあれば、教えてください。

「本当に色んなことが凄くシンプルなので、そんなに難しく捉えないでほしいんですよね。私がこれをやらなきゃ地球が壊れる!とか、そうやって思っている人はもちろん全然いいんですけど、そういうプレッシャーを感じるよりかは、まず楽しむことがいちばんだと思うんです。自分が気に入ったやりかたとか、これだったら無理せず出来るなっていうものを取り入れるのが、本当にいちばん大事なことだと思うんですよね。

 やっぱりエコなアクションとか、ゼロウェイストって考えると、ちょっと引き気味になってしまったりとか、ちょっと面倒くさいかな〜って思ったりすると思うんですね。

 面倒くさいって思うか、それを便利と思うか、今私たちの心理自体に問いかける必要があって、当たり前に毎日消費しているものとか、自分のとっている行動、そのひとつひとつが環境や自分の子供たちの未来に、どういう風に影響するかなって真剣に考えた時に、同じ選択って多分出来ないと思うんですよね。

 だから自分の当たり前を何かひとつでも覆すことで、新しい扉も開くし、新しい自分にも出会えるし、きっとそういうことで生活が多分変わっていくと思うんですよね。

 ゲーム感覚でいいんですよ、ひとつひとつ・・・”きょうマイボトル、クリア!”とか、”今週ビニール袋を1枚ももらわなかった、クリア!”とか。特に小さい子供がいるご家庭だったら、そういう感じで子供とも楽しめるし、自分にとってもいいリマインドにもなるし、とにかくなんでもいいからやってください! っていうのはいつも言ってますね。

 やるかやらないかって、誰でもやれるっていう選択肢があるから、やらないっていう理由はないんですよね。だからなんでもいいからやろうよ! みんな一緒に! っていう感じで出来たらいいですよね」

 今回はSDGsのゴールの中から「つくる責任 つかう責任」について考えてきましたが、プラスチック・フリーな生活は「海の豊かさを守ろう」にもつながりますし、パームオイルを使ってない商品を選ぶことは「陸の豊かさも守ろう」にもつながると思います。私たち消費者の日々の選択と本物を見極める目が大事だなと改めて思いました。あなたはどう思いますか。


INFORMATION

 「ミニマルリビングトーキョー」では環境や健康に徹底的にこだわって選んだ商品が販売されています。ぜひオフィシャルサイトをご覧ください。

 「ミニマルリビングトーキョー」はオンラインでの販売がメインですが、ユーザーさんと直接やりとりができるイベントなどに、月一回程度で出店しています。今月2月は16日から22日まで、新宿伊勢丹本館1階で開催される「マザーチャレンジ」に出店。3月は横浜・日出町で開催されるマルシェにも出店する予定となっています。
 なお、新型コロナウィルス感染拡大に伴い、延期または中止になることもありますので、お出かけ前にチェックしてくださいね。

◎「ミニマルリビングトーキョー」HP:https://minimal-living-tokyo.com

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第5弾! 生物多様性を守ろう!〜アプリ「バイオーム」の可能性!

2021/10/3 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第5弾! 今回は「サステナブル ・ディベロップメント・ゴールズ」=「持続可能な開発目標」の17のゴール中から、ゴール15の「陸の豊かさも守ろう」ということで「生物多様性」について考えていきたいと思います。

 ゲストは、いま大人気のいきものコレクションアプリ「バイオーム」の開発責任者「藤木庄五郎(ふじき・しょうごろう)」さんです。

 藤木さんは1988年生まれ、大阪府出身。京都大学大学院を経て、2017年5月に大学院の仲間と株式会社バイオームを創業し、CEOに就任されています。在学中にボルネオ島で長期にわたり、キャンプ生活をしながら、熱帯雨林の、特に樹木を調べ、その調査結果をもとに、人工衛星の画像解析などをもちい、多様性を可視化する技術を開発されています。

 人工知能AIが生き物の名前を判定してくれる「バイオーム」は、生き物好きなユーザーだけでなく、企業や自治体も注目しています。

 きょうは藤木さんに「バイオーム」が持つ機能と、その可能性、そして制作の原点となったボルネオ島での体験についてうかがいます。

☆写真協力:株式会社バイオーム

写真協力:株式会社バイオーム

ワクワクを伝えたい!

※それではまず、藤木さんに「バイオーム」の基礎知識として、どんなアプリなのか、お話しいただきました。

「生き物の名前を判定できるっていうのは、面白い機能かなと思うんですけど、生き物の写真を撮って、それをAIが判定してくれて、どんな生き物なのか名前が分かる機能があるんです。それだけじゃなくって、見つけて写真を撮った生き物をどんどん図鑑に登録していく、コレクションしていくことができるっていうような、そういうアプリになっています。

 その際にどんどん投稿してもらうと、レベルが上がったりとか、ポイントが貰えてバッチが貰えるとか、ゲーム感覚で生き物を楽しみながら見つける、そういう体験を生み出したいっていう思いで作っています」

●確かに、私も使わせていただいたんですけれども、次のレベルまで何ポイントとか出ると、どんどん投稿したくなるような・・・ワクワクしますね! 

「そうですね。そのワクワクを伝えたいなと。生き物好きな人って、こういうアプリがなくてもワクワクしながら、生き物を探して見つけることをやっているんですけど、それをみんなにも伝えていきたいなっていうことを考えています」

●ほかの人が投稿した写真も見ることができますよね。

「そうですね。みんなで共有していって、生物多様性、生き物の豊かさの情報をみんなで集めていこうっていうのが裏コンセプトになっています。そういう形でみんなの情報が、地図上や図鑑で見られたり、色んな形で見られるように工夫しています」

●綺麗なお花とか綺麗な蝶々とか、この生き物はこういう名前なんだ!とか、ほかの人の投稿を見て学ぶこともできるっていうのは面白いなと感じました。

「僕も(バイオームを)使っていると、何だこれ!? みたいなものが、いっぱい投稿されていてめちゃくちゃ面白いですね(笑)」

藤木庄五郎さん

●ユーザーのかたがたが投稿した写真などのデータが、将来的には膨大な生物のデータベースになっていくっていうことなんですか? 

「はい、おっしゃる通りです。このアプリでは写真を登録する時に位置情報を使ってまして、どこにどんな生き物がいるのかっていう基礎的な生物の情報を、どんどんみんなで集めていくっていうところで、そういうデータベースを作るのがひとつの目的になっています」

●いまユーザー数ってどのくらいいらっしゃるんですか?

「 ユーザー数でいうと、いま32万人ぐらいのかたが使ってくださっています」

●ということは、どんどんデータベースも増えていきますよね。

「そうですね。人数がとにかくいっぱいいるので、もう既に(バイオームを)リリースしてから2年ちょっとくらいですけど、200万個体ぐらいの登録はされている状況です」

●本当にゲーム的要素もたくさんあって、すごく楽しみながらできるなって感じるんですけれども、やはりゲーム的要素を取り入れようというのは心掛けているところなんですか? 

「生物多様性のデータベースを作るぞって言って、それに賛同してくれてやってくれるかたって、もちろんいっぱいいると思うんですけど、そうじゃなくって、別にそこは興味ないけど楽しいからやるんだって言ってくれるような、そういう参加の仕方っていうのもあるんじゃないかなと思っています。楽しいからやってくれるようなアプリを目指すためにも、ゲーム要素、ゲーミフィケーションみたいなものが必要なんじゃないかっていうことは考えて作りました」

※バイオームの制作にあたっては、当初は創業メンバーだけで生物の情報を独学で打ち込んでいたそうですが、自分たちだけでは限界があると思い、大学の先生や研究機関に協力してもらい、作っていったそうです。

写真協力:株式会社バイオーム

原点はボルネオ島!?

※藤木さんは京都大学在学中に、およそ2年半にわたって東南アジアのボルネオ島で植物の調査を行ない、それが「バイオーム」の開発につながったということなんですが、いったいなぜ、ボルネオ島だったのでしょうか。

「僕自身、元々そういう生態系とか生物多様性を保全していくことにめちゃくちゃ興味がありました。というか“やらなきゃヤバイな”っていう思いがありましたので、そういうことができる研究室で、そういう研究をしたいなっていう思いで大学に入ったんです。

 その中で色々調べていくと、生物多様性がまだ残っていて、それがすごく急速に失われている場所が、ボルネオ島がトップ級に、世界でも有数の環境破壊の最前線みたいな場所だということを聞いて、是非とも行ってみたいということで、志願して行かせてもらった経緯があります」

写真協力:株式会社バイオーム

●具体的に現地ではどんな研究調査をされていたんですか? 

「すごく過酷な調査ではあったんですけど、リュックを背負ってキャンプをしながら毎日歩き続けて、熱帯雨林のジャングルの中の特に樹木ですね。木を1本1本調べて、どんな木が生えているのかを調査して、転々と色んな場所に移動することをずっと繰り返していました」

●過酷ですね! 

「そうですね(笑)。すごく大変でしたね」

●アウトドアスキルも問われそうな感じですね。でも1本1本、樹木を調べるのはすごく時間もかかるようなことなんじゃないですか? 地道かつ過酷というイメージですけれども。

「はい、おっしゃる通りだと思います(笑)。ものすごく時間もかかりますし、なので2年半、向こうにいたんですね。本当に過酷で大変なので、現地のかたを雇って手伝ってもらってやっていたんです。最初は10人ぐらい雇って行くんですけど、過酷過ぎてみんな途中で逃げ出しちゃって、最後は半分以下になって、4人くらいで作業をやったりして大変でした(笑)」

●そんな過酷な日々の中で何が楽しみでした? 

「どうですかね・・・あんまり楽しめていなかったんですけど、現地のかたの入れてくれるコーヒーがめちゃくちゃ楽しみでしたね。毎朝入れてくれるんですけど、あれだけが楽しみで(笑)」

写真協力:株式会社バイオーム

●そんな過酷な中、大変な思いをしながら取った調査データは、どんな研究成果に結びつくんですか?

「僕の場合は樹木を通して、その森林の生物多様性を数字で評価することをテーマで研究しておりました。現地で集めた現場データみたいなものと、衛星から撮影された広い面積の森林画像データを組み合わせて、点で集めたデータをすごく広いエリアに面的に評価し直すことで、例えば、東京都1個分ぐらいの非常に広いエリアの森林の状態を、一斉に一気に調査というか観測する技術を開発して、生物多様性の状況をかなり広いエリアで知ることができるようになったっていうような、そういう成果を出すことができました」

スマホを生物の観測拠点に

※ボルネオ島での調査で生物多様性について、一定の成果を出すことができた藤木さんなんですが、そのまま研究者の道に進まず、アプリを作る会社を起業したのは、どうしてなんでしょうか。

「色んな理由があるんですけど、ひとつは生物多様性を守るっていうことをやろうと思った時に、どうやったら守れるのかなって、すごくずっと考えていたんですけど、やっぱり突き詰めていくと結局、経済の問題、お金の問題がやっぱり原因っていうかドライバーになっているんじゃないかなっていうことを感じるようになって、生物を守るっていうことは経済と切り離せないなっていう、そういう感触を強く持ちました。

 こういう研究活動ももちろん大事なんですけど、そうじゃなくって、ちゃんと会社として経済の中で生物多様性を保全するっていう活動をしないと、この問題って解決に向かっていかないんじゃないかっていうことを考えるようになったんです。なので、研究をやめて、会社としてこの活動を継続していこうと決めたという経緯があります」

●確かに昔からエコロジーとエコノミーはどちらかを優先すれば、どちらかがダメになるって言われてきましたよね。でも藤木さんがやろうとしている生物多様性の保全と経済活動の両立っていうのは上手くいくものなんですか? 

「上手くいかないと、どうにもならないのが環境問題だと思うので、なんとか達成したいなって思ってずっとやっています。最近は社会の流れもだいぶよくなってきたなっていうのを感じていまして、企業さんは環境保全に力を入れることが、最近は普通になってきたので、だいぶ状況はよくなってきたなという風には感じています」

●藤木さんが起業するにあたって、どうしてアプリだったんですか? 

「僕自身ボルネオ島で、ずっと現場で自分の足を使って調査していたんですけど、自分だけで集められる現地のデータって本当に限りがあって、限界があるなっていうのを2年半続けて分かったっていうのがあります。なので、上手く現地のデータを収集していく、観測していく仕組みを作らないといけないなっていうことを考えるようになったんです。

 その時に世界各地にちゃんと散らばっていて、使える電子媒体が絶対いるなっていうことを考えるようになったんですけど、それを考えている時に、ボルネオ島のジャングルの奥地の、現地住民のかたがたって、みんなスマホは持っているんですよね。

 テレビもないし冷蔵庫もないし、電化製品とかほとんどないんですけど、スマホだけは持っていて、それをみんな楽しみながらSNSとかやって使っているんです。それを見て、スマホがさっき言っていた世界中に散らばっている電子媒体として、めちゃくちゃ有用なんじゃないかなっていうことを考えるようになりました。

 このスマホを通して生物を観察する、スマホを生物の観測拠点にすることができるんじゃないかなっていうことを現地で考えるようになりまして、スマホを使うことで、アプリを作って、そこからデータを登録してもらえるような仕組みを作れば、世界中の生物のデータを集められるんじゃないかなと考えるようになったっていうのが、元々のきっかけになります」

アプリというよりプラットフォーム

※実はアプリ「バイオーム」は無料で利用できるんです。ではいったい、株式会社バイオームとして、会社を維持するためにどうやって収益をあげているんでしょうか。

「うちのアプリはおっしゃる通り完全に無料で、課金もなくて広告もつかないというなんか不思議なアプリなんです。アプリの中で色んなイベントを開催したりとかしていて、うちのアプリでは“クエスト”と呼んだりしているんですけど、ユーザーさんにミッションを出します。例えば、外来生物の”ヌートリア”っていうねずみの仲間がいるんですけど、ヌートリアを探してみよう、みたいなミッションを出して、ユーザーさんがそれに参加して、ヌートリアのデータが集まるみたいな仕組みを作っています。

写真協力:株式会社バイオーム

 その仕組みを色んな企業さんとか省庁さんとか、自治体さんみたいな行政さんに、実際に使っていただき、そこで費用をいただくっていう構図を作っています。なので、企業とか行政というところから費用をいただいて、運営できているのがこのアプリの特徴になりますね」

●どういった企業に、そういうデータを使ってもらうというか、必要になっていくのですか? 

「本当に色々ありますね。例えば教育のことをされているような企業さんは、教育のためのイベントをしたいので、アプリを使いたいという話があったりしました。
 ちょっと変わったところでいうと、鉄道会社さんが自分たちの管理している鉄道の沿線の、駅周辺の生物の状態を知って、この駅は生き物が豊かですごくいい場所だ、みたいなことをちゃんと知っておきたいという話があって、鉄道会社さんからご依頼を受けて、生物の観測イベントをやったりっていうような、色んなパターンがありますね」

●膨大なデータベースってそういうところにも役に立つんですね。

「そうですね。企業さんが何らかの保全の取り組みをしていくにあたって、使っていただけるようにっていうのはかなり意識していますね」

●本当に、アプリというよりプラットフォームという感じですよね。

「おっしゃる通り、そこを目指しています。市民のかたも使えるし、企業のかたも参加できて、行政のかたも入れる、そういうプラットフォームになって、“産・官・学・民”みんなで連携して、生物のデータを集めて保全していこうっていうのが目標になっています」

写真協力:株式会社バイオーム

●先日まで行なわれていた環境省とのコラボ「気候変動いきもの大調査」、これもすごく反響があったんじゃないですか?

「そうですね。ものすごく反響がございまして、参加者も1万人以上、既に参加してもらっていますし、データもすごくいっぱい集まっています。先月まで”夏編”というのをやっていたんですけど、その前の年には”冬編”を実はやっていたんです。

 そこで集まったデータは既に解析も済んでいて、温暖化の影響を受けて、色んな生物が北に移動しているっていうことが、その結果からだいぶ分かってきました。かなり意義のあるデータが集まって、いい結果が出ているというのが、いいというのは微妙かもしれないですけど、温暖化の影響が生物に表れているという結果が、明確に出てきているという状況になっています」

海外版バイオーム

※生物の多様性を守るためには、地球規模での展開が必要だと思うんですけど、「バイオーム」の海外版は考えていないんですか?

「海外に関しては、もうアプリを作り始めた時から、海外に行くぞー! ということで考えています。なので、開発を少しずつですけど進めているという状況で、近いうちに”バイオーム世界編”みたいな形で、世界で使えるようなアプリにしていきたいなと思っています」

●それこそ、世界中のデータが集まったらすごいことになりますね!

「そうですね。特にやっぱり僕が行っていたボルネオ島みたいな、そういう環境破壊の最前線みたいな場所で、ちゃんとデータを集める仕組みを作らないといけないと思うので、熱帯とか、そういうところを中心にデータを集められると、ものすごく役に立つデータになるだろうなと思っています」

写真協力:株式会社バイオーム

●具体的に、世界のデータをこういう風に使いたいっていうのはあるんですか?

「そうですね。さっき出たような熱帯林の破壊の現状みたいなことですね。そこが実際どれくらい生物がいなくなっているのか、研究者の間でもよくわかっていない状況なので、そこをまずははっきりデータとして出していけるというような状態を作りたいなと思っています。

 あとは結局、熱帯林とか自然環境を破壊しているのが、その国の現地の人じゃなくて、先進国の大企業だったりすることって多いと思うので、そういう企業さんに、ちゃんとそういうデータを開示するように、(こちら側から)データを出していくみたいなことをして、ちゃんと産業の中で、そういうデータが活用されるような仕組みに繋げていきたいなと思っています」

●今後100年で地球に生息する生物の半分が絶滅するとも言われていますけれども、改めてバイオームというアプリで、どんなことを伝えていきたいですか?

「伝えたいというか、狙い自体は大きくふたつあると思っています。ひとつは、ユーザーのかた、使っていただいているかたに、生き物が豊かだっていうことはとっても楽しくて、自分の人生を豊かにしてくれるようなものだっていうことを肌で感じてほしいなと。そのためにアプリを使って、自分の周りにどんな生き物がいて、その生き物たちがどんなに面白いのかっていうことを、アプリを通して知ってほしいっていうのがひとつになります。

 もうひとつは、このアプリを通してユーザーさんが登録してくれた生物のデータを使って、すごく大量のビッグデータになると思うんですけど、そのデータを企業さん行政さん、あるいは市民団体さんとか大学さんみたいなところに、ちゃんと保全活動に使っていただけるように、データをどんどん提供していくことに繋げていくという、そのふたつを達成していきたいなと思っています」


INFORMATION

写真協力:株式会社バイオーム

 藤木さんたちが開発した「バイオーム」は生き物の写真を撮って投稿するだけ。
でもすぐになんという生き物か答えを教えるのではなく、ユーザーに考えさせるのがいいですね。そして投稿した生き物が珍しいとポイントが多くもらえるため、ゲーム感覚でどんどん投稿したくなりますよ。

 また、生き物に関するコラムもよく考えられています。
このコラムは「まねて学ぶ」をコンセプトに作られ、生き物に興味をもってもらい、保全につながるアクションにつなげるのが狙いだそうです。
 随所に工夫がちりばめられた優れたアプリ「バイオーム」をぜひ試してみてください。

 詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎株式会社バイオーム :https://biome.co.jp/

◎いきものコレクションアプリ「バイオーム」:https://biome.co.jp/app-biome/

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第4弾!〜徳島県「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」の挑戦〜

2021/9/26 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第4弾! 四国の小さな町が行なっている、ごみを大幅に減らす野心的な取り組みをご紹介します。

 今回の舞台は、徳島県の山間(やまあい)にある上勝町(かみかつちょう)。全国に先駆け、2003年に町から出るごみをゼロにする「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表。現在はなんと、ごみと資源の分別は45品目! リサイクル率はおよそ80%を達成していて、国内外から注目されています。

 お話をうかがうのは、去年5月に上勝町にオープンした複合型公共施設「ゼロ・ウェイストセンターWHY」を運営する会社の責任者「大塚桃奈(ももな)」さん。去年大学を卒業したばかりの期待のホープなんです。「大塚」さんの肩書はCEO、でも「最高経営責任者」ではなく、CEOの「E」は環境的という意味の「エンヴァイロメンタル」で「最高環境責任者」なんです。

 さて、SDGsとは「サステナブル ・ディベロップメント・ゴールズ」の略。「持続可能な開発目標」ということで、17のゴールが設定されています。今回はゴール11の「住み続けられる まちづくりを」、そしてゴール12の「つくる責任 つかう責任」について考えていきたいと思います。

 徳島県上勝町のごみをゼロにする野心的な取り組みをご紹介する前に、今回お話をうかがう「大塚桃奈」さんのプロフィールに触れておきましょう。

 「大塚」さんは1997年生まれ、湘南育ち。子供の頃からファッション・デザイナーに憧れ、高校生の時にファッションの勉強のためにロンドンに留学。自分が学んだことをどうやって社会に活かすかを考えている時に、ある映画を見て、愕然とします。

 その映画とはファスト・ファッションの裏側を捉えたドキュメンタリー『ザ・トゥルー・コスト』。劣悪な環境で働かぜるえない発展途上国の人々、環境汚染、そして大量に廃棄されるウエアの現状を知って、社会や環境に目を向けるようになったそうです。

 そんな大塚さんが働く「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」はいったいどんな施設なんでしょうか。このあと、じっくりお話をうかがいます。

☆写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY

大塚桃奈さん

ごみを見つめ直す

※まずは大塚さんに、上勝町の出会いについてお話しいただきました。

「大学生の時になるんですけれども、映画(『ザ・トゥルー・コスト』)を観て、服を取り巻くそういった社会問題に、どうやって自分なりに向き合っていこうか考えている中で、安い服が日本に入ってくることによって、日本の繊維産業が衰退していることが分かってきました。

 繊維工場は地方に多くて、少子高齢化と結びついているということも、ひとつの要因としてある中で、ローカルの中でのものづくりとか、そこから派生して服だけではなくて、暮らしであったり、それを取り巻くコミュニティっていうところに興味を持ち始めたんです。

 その時にたまたまこの上勝町に『RISE & WIN』というブルワリーが大学生の時にオープンしたんですけど、その建築に携わっている中村拓志さんがたまたま知り合いだったことをきっかけに、上勝町という町が徳島県にある、そして日本で初めて”ゼロ・ウェイスト”を宣言した町だということを知って、これは自分の目で見てみたいなということで、大学2年生の冬休みに初めて訪れたことがいちばん最初のきっかけでした」

●実際に大学生の時に上勝町に見学に行かれて、どんなことを感じましたか? 

「いちばん最初に感じたのは、すごく緑で山の中にある町。私は徳島市内にある空港からバスを3つ乗り継いで上勝町までひとりで行ったんですけれども、半日かかってようやく上勝町に着いたという感じでした。山の中の道をくねくね辿っていって、やっと着いた町っていうのが最初の印象だったんです。

 小さな町の中で、町のかたが共に支え合って暮らしているっていうことも感じましたね。農家民宿にその時は泊まって、色々町の中を案内してくださって、畑であったり町に住む人であったり、山犬嶽(やまいぬだけ)という苔がすごく綺麗な山があるんですけれども、そこに連れて行ってくださったりとか、すごく温かいおもてなしをしてくださったのを今でも覚えています。

写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY

 上勝の町内に唯一あるごみステーションを見学させていただいて、すごくきっちりとごみを資源ごとに分けていることを目の当たりにした時に、自分が何気なくポイポイと捨てていたごみが、実は見えない部分に隠されているというか、見えなくても暮らしていたんだっていうことを改めて知ることになって、ごみを見つめ直すことが自分の生活を見つめ直すことにも繋がってくるんだっていうことを実感した経験でした」

※大塚さんは国際基督教大学・在学中に交換留学でスウェーデンの大学へ。滞在した「ベクショー」という町はヨーロッパいち環境に配慮したクリーンな町だそうで、たくさんのインスピレーションをもらったそうです。

 実は大塚さん、スウェーデンに行く前に上勝町でインターンとして活動、また、スウェーデン留学中に、上勝町のスタッフに頼まれ、サーキュラー・エコノミーに取り組んでいるアムステルダム、ベルリン、ブリュッセルなどの視察をコーディネイト、一緒に見てまわり、とても貴重な経験になったそうですよ。

「?」の形の複合施設

※上勝町のスタッフに誘われて、大学卒業後、すぐにセンターで働くようになった大塚さんは、いまはもちろん上勝町で暮らしていらっしゃいます。山間(やまあい)の町、上勝町は人口が1500人ほどで、65歳以上のかたが半数を超えているそうですが、最近は20代のかたや海外からの移住者が徐々にふえているそうですよ。 

写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY

 それでは「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」とは、どんな施設なのか、うかがっていきましょう。

●大塚さんが責任者を務める「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」。オフィシャルサイトを見させていただいたんですけど、施設を上から撮っている写真が載っていました。上空から見ると「?」の形になっているんですね? すごい! 

「はい、そうなんです(笑)。何故ごみを捨てるのか、という根本に迫るような問いを通じて、みんなと、何気なく捨てているごみから社会をよくするヒントを探っていきたいというような思いが込められています」

写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY

●具体的にどんな施設なのか教えていただけますか? 

「上勝町ゼロ・ウェイストセンターは複合型の公共施設になっておりまして、?の上の丸い部分が上勝町の住民が利用する、町唯一のごみステーションになっています。そこから続けて、くるくるショップという町の中古品が集まってくるリユースショップと交流ホール。ここはイベントが開催できたりとか、キッチンも付いていて、レンタル貸しも行なっているスペースで、セミナーとかワークショップが行なわれる場所。常時は解放していて誰でも自由に憩うことができます。

 で、コインランドリーと、あとラボラトリーというスペースはレンタルオフィスになっておりまして、上勝町をひとつの拠点として一緒にゼロ・ウェイストを考えてくださる企業様であったり、研究機関とか、リモートワークの場所として、ホテルと一緒にご利用いただけるようになっています。?の最後、丸い部分が体験宿泊施設ということで、HOTEL WHYという小さな宿になっています」

●この建物自体も廃材で作られているんですよね? 

「そうなんですよ。例えばですね、この建物全体に色んな建具が使われていて、大小形も異なる建具は町の人から集めた540枚もの建具になんです。ごみって不要なものと思われがちですけれども、廃材とか地域の中で使われなくなった材料をまた建物に、デザインという命を吹き込んで使用しています。

 ほかにもこの建物、木造建築なんですが、上勝町は元々林業で栄えていた町なので、地産地消ということもあって、上勝の杉の木材を活用しています。それもゼロ・ウェイストの考えに寄り添うような形で、建築家のチーム、NAP建築設計事務所がここも携わっているんですけれども、なるべく地域のものに価値をつけていこうということで活用されています。
 なんと今年の春には日本建築学会賞を受賞しておりまして、この取り組みが少しずつ周りの方にも伝わっているんだなっていうのを実感しています」

写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY

ごみの行く末を日常から意識

※現在、上勝町では45分別をして、ごみゼロに取り組んでいますが、そこに至った背景として、大塚さんの説明によると、まず、ごみを「再生できるか、できないか」の視点で分けたそうです。

 上勝町は小さな町なので、ごみ処理にコストをかけられない。一度、焼却炉を導入したそうですが、ダイオキシンに関する法律が施行され、たった2年で使えなくなったといいます。そこでごみを資源として分けて、生まれ変わらせるために、1997年に9つの分別からスタート、その後、徐々に増えて、現在の45分別になったそうですよ。 リユースにも積極的に取り組み、センター内ある「くるくるショップ」では住民のかたが持ち寄った衣類や食器類などを、自由に持ち帰ってもらったり。また、生ゴミは各家庭にコンポストを設置して、おうちで循環させています。

写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY

 さて、気になる45分別、どれだけ細かいのか、大塚さんに説明していただきました。

「例えばですね、紙って燃えるごみとして回収されていると思うんですけれども、古紙とかは別にして、お菓子のパッケージとかトイレットペーパーの芯とか、燃えるごみとして回収されてしまいがちですが、それを上勝では9種類に分けています。この理由としては、紙ってきちんと分けたら再生紙になったりダンボールになったり、資源としてとっても価値があるものなので、それをお金をかけて焼却して消してしまうんではなくて、また分けて資源にしようと。

 分けるとどんなメリットがあるかというと、資源になるだけではなくて、価値があるので、リサイクル業者さんがお金を払ってくれるんですね。1キロ数円でそれぞれ買い取ってくれるっていうこともあって、金銭的なメリットと環境的なメリットがあるということから9種類に分別しています。
 例えば、紙パックが内側が白のものと銀のもので分かれていたりとか、あとは雑誌、雑紙、新聞、チラシ、ダンボール、シュレッダー屑、硬い紙芯、紙カップというように細かく分かれています」

●実際に大塚さんは上勝町に移住されて、45分別やるようになって、体験してみていかがでした? 

「最初は戸惑うことも多くあったんですけれども、ゲーム感覚みたいな・・・このごみステーションの特徴として、それぞれがどこに行って何に生まれ変わるのか、そして1キロ当たりいくらの処理コストがかかっているのかということが記載されているので、捨てるのではなくて資源としてどこに行くのかっていうことを、日常の中から意識できるようなデザインがあるんだなという実感があります。

 一方では、コツコツと分別することも大事ですけれども、やはり日々自分が使っているものをどう長く使えるようにするかとか、自分が作る側にどう携わって一緒に変えていけるのかを改めてじっくり考える機会をいただいているなと思っています」

●町全体でやるっていうことに意味がありますよね。

「そうですね。上勝町唯一のごみステーションなので、町の中にはごみ収集所もなければ、ごみ収集車も走っていないんですね。なので、町の人がみんなここに集まってくるっていうのは、コミュニティのホットスポットにもなっているなと思います」

ごみの分別を体験するホテル

※「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」にはホテルもあるということでしたが、どんなホテルなんですか?

写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY

「このホテルは”ゼロ・ウェイストアクション”をコンセプトにしたホテルになっていて、いわゆる一般的なホテルとはちょっとイメージが変わってきます。そもそもごみ集積所、ごみステーションと併設しているっていうところからユニークではあるんですけれども、チェックインの際には、例えば施設の中をご案内してスタディーツアーという形で、上勝のゼロ・ウェイストの歴史であったり取り組みを、ひとりひとりのご宿泊のお客様にご案内をさせていただいていたりします。

 使い捨てアメニティをお部屋には一切置いていないので、よくある歯ブラシとかカミソリとかそういったものは置かずに、ご自身が普段使っているものを持ってきてもらうっていうところからスタートしています。ただ手を洗う石鹸と、あとお部屋でお飲みいただけるコーヒーやお茶はチェックインの時に量り分けでお渡しするっていうような、ちょっとずつコミュニケーションをとりながら考えるヒントをちりばめています。

 そのスタディーツアー終わったあとに、チェックアウトまでに必要な分をコーヒー1杯からお豆を挽いて瓶に入れてお渡しします。お部屋には湯沸かし器とコーヒードリッパー、ステンレスフィルターのものを置いてあるので、ご自身で入れてお飲みいただくっていうスローな時間と、あと上勝は水源地でもあるので、この施設全体は山水が流れているんですね。なので、タップウォーターもそのまま美味しくお飲みいただけるので、そういったところも感じていただきながら、そのようなスタイルでやっています」

●宿泊することで色んな気付きがありそうですね。

「さらには、チェックアウトの時にごみの分別体験っていうのも行なっています。客室にごみバスケットが2つ設置されているんですけれども、そこで滞在中に出たレシートとか、色んなごみをまずは6分別に分けていただいて、翌日には町のかたも利用している中で一緒にごみステーションに行って、45個にまた分けるというような、ちょっと変わったホテルです(笑)」

写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY

ポジティヴな感情をみんなで!

※「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」がオープンして、1年半が過ぎました。いまはどんなことを感じていますか?

「そうですね、。少しずつこのゼロ・ウェイストセンターWHYを通じて仲間が増えてきていますし、これからどんどん増やしていきたいなとも思っています。例えばホテルはどなたでもご利用いただけるんですけれども、この施設の中にあるラボラトリーではレンタルオフィスとして今、年間契約という形で企業のかたがたにご利用いただけるようなプランを用意しております。

 上勝町は2003年に日本で初めてゼロ・ウェイストを宣言して、2020年までにこの町から出る焼却埋め立てごみをゼロにしようという目標がある中で、住民のかたがコツコツと分別に取り組んできたりとか、量り売りを地域の商店が取り入れたりしてきたんですけれども、やはり日々使っているプロダクトが複合素材から出来ていて、分別が難しくて再生ができないようなデザインになってしまっているんですね。

 どんどん過疎が進んでいる中では、この小さな町だけではもうゼロ・ウェイストの取り組み、そもそも暮らしの持続性が問われている中で、上勝町と関わりながら一緒にこの町のありかたをサステナブルにしていかなければならないっていうフェーズに入ってきています。  そんな中、例えばゴム製品である靴が焼却になっているっていう課題がある中で、靴のメーカーさんと一緒にディスカッションを重ねるようになったりとか、少しずつではあるんですけれども、仲間を増やしていきたいなと思っていて、可能性を感じています」

写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY

●改めて「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」の責任者として、どんなことを大塚さんは発信していきたいですか? 

「ごみって聞いた時に、多分多くのかたは臭いとか汚いとかで、すごく見えないところに追いやってしまいがちだなと思っています。でもこのゼロ・ウェイストセンターはまずそもそも臭いがしないんですね。生ごみを集めていないということと、汚れているものを洗って乾かしてから町のかたが持ってきていて、すごく清潔になっています。

 そういった中から、このセンターはごみと言われているものを角度を変えて、所々で活用しているんですけれども、この上勝町からすごくワクワクとするようなポジティヴな感情を一緒に作ることによって、みんなが見えていなかったごみに一緒に向き合いながら楽しく解決していけるようなカルチャーであったり、プラットフォームを作っていきたいなと思っています」


INFORMATION

 上勝町はごみにしない! 資源にするということで45分別! リサイクル率はおよそ80%を達成。全国平均で20%ほどと言われているので驚異的な数字です。人口が1500人ほどの小さな町だからできることかもしれませんが、やればできるんですね。人の気持ち次第だと思いますね。また、ファッションの勉強もされていた「大塚」さんは、できる範囲内で衣服の「心のあるものづくり」にも携わっていきたいとおっしゃっていました

 ぜひ「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」、そして大塚さんの活動にご注目ください。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY:https://why-kamikatsu.jp/

新シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第3弾! 草ストローに注目!〜ひとりひとりがちょこっとできるエコな選択〜

2021/6/27 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、東京農業大学の学生で、ベトナムから草ストローを輸入し、販売する会社を起こした「大久保夏斗(おおくぼ・なつと)」さんです。

 「SDGs」は、「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。地球の資源を大切にしながら経済活動をしていくための約束で2030年までに達成しようという世界共通の目標=ゴールが全部で17設定されています。

 今週は17あるゴールの中から、主にゴール12の「つくる責任 つかう責任」、そしてゴール1の「貧困をなくそう」について。

 去年「HAYAMI」という会社を起こした大久保さんに、草ストローの普及活動を行なう思いなどうかがいます。

☆写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI
大久保夏斗さん

運命のいたずら!? 草ストローとの出会い

 大久保さんが草ストローを販売するようになったいきさつが、ミラクルなんです。

 高校生の頃にSNSで、ウミガメの鼻にストローが刺さった映像を見た大久保さんは、ショックを受け、環境のために何か自分にできることはないか、探していたそうです。そんな中、世界をバックパッキングで旅をしていたお兄さん、迅太(はやた)さんが、たまたま飛行機の隣の席だったベトナムの方から、ベトナムには草で作ったストローがあると教えてもらい、そのことを、帰国した際に、弟の夏斗さんに伝えます。

 東京農業大学の国際農業開発学科で学んでいる夏斗さんは、海洋プラスチックゴミの削減だけでなく、発展途上国の農業支援にもつながると考え、ベトナムの草ストローを日本に広めることを決意、会社を起業します。

 メンバーは大久保迅太さん、夏斗さん兄弟と、草ストローの存在を教えてくれたベトナム人のミンさんの3人。実はミンさんは2年間、日本に留学していたんです。そして去年の5月に、合同会社「HAYAMI」を創業し、草ストローの普及に邁進しています。

 “飛行機の座席がたまたま隣りだった”ことが、ミラクルを生んだ、まさに運命の出会いだったんですね。もしかしたら、神様が環境問題に関心の高い若者を引き合わせた、と言っていいかもしれませんね。

左から大久保迅太さん、ミンさん
左から大久保迅太さん、ミンさん

草ストローの3つの特徴

※それでは大久保夏斗さんにお話をうかがっていきましょう。プラスチック・ストローの代替品になる草ストロー、その特徴を教えてください。

「特徴としては3つあるんです。1つ目は環境保護。脱プラスチックの観点からもプラスチック・ストローではない草ストローを使うことで、環境保護に繋がっているだけでなく、完全生分解性、無農薬、無添加っていう特徴もあるので、使用後にゴミ削減のために、資源として活用するっていう特徴もあるかなと思っています。

 で、2つ目にベトナムの農村、ホーチミンという都市から離れた農村で栽培されているので、ベトナムの農村地帯の雇用も創出していて、発展途上国支援にも繋がっているかなという風に思っております。

 3つ目には、やはり紙ストローより耐久性に優れていて、紙ストローは長時間使用できなかったり、口に張り付いてしまうっていう感触があると思うんですけど、そういったことはなく、長時間使用していただけるところが草ストローの大きな特徴かなと思います」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

●見た目はどんな感じなんですか? 

「見た目は、本当に草の茎そのものです。何か草と聞くと葉っぱを丸めているイメージを持つ方が多いんですけど、草の茎をそのまま使っています。緑色で、自然のものなので多少、色や大きさにばらつきがあるんですけど、本当に自然本来の、草の茎そのままを使った製品になっています」

●じゃあ草ストローの素材は、茎を持つ植物っていうことなんですか? 

「そうですね。植物名でいうと、カヤツリグサ科のレピロニアという植物なんですけど、イネ科に近い植物ですね」

●そのレピロニアっていうのは、ベトナムで栽培されている植物なんですね? 

「そうですね」

●じゃあ珍しい植物ではないっていう感じですね。

「主に東南アジアの熱帯地域で栽培されていますね」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

●それが草ストローになるまでにはどんな工程があるんですか? 

「本当に草の茎をそのまま利用しているので、工程としてはシンプルです。洗浄して、あとはカットして殺菌してみたいな、本当にシンプルな過程で作ることができるので、そこで大型の機械を利用してCO2排出みたいなこともない製品です」

●製品化するまでに何か大変だったこととかありますか?

「やはりベトナムと日本の衛生基準っていうのはどうしても異なるものがあったので、現地に向けてゼロから衛生マニュアルを作成してお送りしたり、あとは日本での残留農薬検査だったり、衛生基準の食品分析センターというところで衛生の検査を行ないました」

草ストローを資源にする!?

※草ストローは実際、どれくらいの耐久性がありますか?

「基本的には紙ストローよりは耐久性があります。草の茎を乾燥させているので、初めは潰すとパリッと割れてしまうこともあるんですけど、植物の茎なので(飲み物を)飲んでいるうちに茎が水分を含んで柔らかくなって、潰しても割れにくくなる、耐久性が増すといったような特徴があるんですね。本当にふやけたりすることはないので、長時間使用していただくことは可能です」

●洗えば何回でも使えるってことですか? 

「無添加なので基本的に使い捨てを推奨しています。防腐剤などは添加していないので、植物の劣化だったり衛生面の観点から使い捨てを推奨して販売しています」

●なるほど〜。廃棄処分する時は元々は植物ですから土に返したりとかするんですか? 

「現在、導入店舗から具体的な回収方法っていうのはまだ構築できていないんですけど、今後はその使用後のストローを資源として活用するために、家畜の飼料であるとか、農家の堆肥として活用できないかっていうことは現在検討しています」

●確かに草ストローを砕いていくと家畜のエサになったりもしそうですよね。

「そうですね 。やはり一度、人間の口に付けたものなので、それを動物に与えても大丈夫かっていうところだったり、あとはストローでコーラを飲んだものと、コーヒーを飲んだものを一緒にして、餌にしちゃっても動物に影響がないかっていうところは、ちゃんと考えないといけないなと思っています」

●確かに環境にもいいですけど、ベトナムで栽培したものを適正な価格で輸入したら、栽培農家さんの支援にもなりますね。実際ベトナムの皆さんからの反響とかはありますか?

「やはりコロナ禍で雇用だったり、経済が停滞している中で始めた事業だったので、日本で草ストローを売ることができて、助けられているっていう風には言ってもらえて、すごく嬉しいなと思います」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

草ストロー、評判は上々!

※大久保さんは草ストローを広めるために、学業の合間をぬって、主にメールや電話で営業活動を行なっているそうですが、いま全国で何店舗くらいのお店が草ストローを使っていますか?

「全国で現在、約160店舗で使っていただいております」

●あ、そうなんですね! 千葉でも使っているところはありますか? 

「千葉も何店舗かありまして、木更津にある”KURKKUFIELDS(クルックフィールズ)”さんだったり、佐倉市にある”笑みごはん”さんだったり、4店舗〜5店舗ほど、ホームページにも導入店舗リストっていう風にして記載させていただいてるんですけど、導入していただいております」

●じわじわと広がっている状況なんですね! お客さんの評判を聞かれることはありますか? 

「飲食店の方から言っていただける言葉でいうと、環境問題にお客さんが興味を持ってくれて、これ何のストロー? っていう質問をしてくれたっていう声だったり、珍しい見た目のストローでコミュニケーションのツールに繋がったであったりとか。あとは見た目もすごく自然で、紙ストローよりも長時間使えるっていうことで、環境に優しいっていうことがダイレクトに伝わって、いい商品だなという風に言っていただきました」

●小さなお子さんはお家でもストローを使う機会は多いですよね。

「そうですね。高齢者の方だったり小さなお子さんは、やっぱりストローを使う機会がどうしてもあると思うので、ストローを使わないっていう選択肢ももちろんありだと思うんですけど、それでも使っていただく必要があるお客様には、ぜひ草ストローを利用して欲しいなと思います」

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

<草ストローを使ってみた>

 実際に草ストローを使った、この番組のスタッフの感想としては、第一印象は見た目も手触りも素朴な感じで、これはいいな! と思ったそうです。植物の、空洞になった茎なので、色味も太さも微妙に異なりますが、ストローとしての機能は申し分ないとのこと。水分を含むと柔らかくなり、耐久性が増すことも確認。

 ただし、乾燥した状態のまま、指ではさんで押すと、パキッと割れてしまうので要注意! 特に幼児はストローを噛んでしまうので、事前に必ず水分を含ませ、柔らかくした草ストローを使うようにしたほうがいいと言ってました。草ストローの箱に使用上の注意が書いてありますので、事前に確認してから使ってくださいね。

サボテンの皮でサイフ!?

※草ストローのほかに何か新商品はありますか?

「今年の3月からサボテンの皮で作ったヴィーガンレザーのサイフの販売を開始しました」

●サボテンの皮からサイフができるんですか? ちょっと想像がつかないんですけれども、どういう風にどうなったらサイフになるんですか? 

「メキシコで有機栽培されているサボテンを使って、そのサボテンを皮にする技術を持ったメーカーがメキシコにあって、それを日本に輸入して、その皮から日本の長年続いている皮職人さんの手でサイフにしていただくっていったような工程で販売しています」

●サボテンで皮を作る技術やメーカーは、どういうところから情報を得るんですか? 

「インターネットなどで、サボテンから皮を作っているっていうのは、以前から知っていたんですけれども、日本にはなかなか普及していないっていうのもあって、ぜひサステナブルな生活の中の選択肢のひとつとして、日本に普及させたいなっていう風に思って販売を開始しました」

●サボテンの皮を使うことで、どうやってサステナブルになっていくわけですか? 

「まず、サボテンであれば水の量も少ないですし、そこまで豊かな土地でなくても育つっていうところがあるんですね。そこから本来、動物の皮で作られているものを植物性のもので作ることで、動物愛護だったり。
 あとは動物性の皮を作る時に、家畜もメタンガスを出していたり、その動物たちの飼料を育てる時に農業を大規模に行なわないといけないので、そういった観点から、サボテンから作ったレザーのサイフを長く使っていただくことで、環境にもいい影響があるのかなという風に思います」

●見た目はどんなおサイフなんですか?

「本当に皮は動物性の皮と同じような手触りで、耐久性もそこまで差異はないです。無駄のないシンプルなデザインで、今現在は黒の一色のみで男女両方に利用していただけるような形になっています」

ミッションは、エコな選択を提供すること

※それでは最後に大久保さんにうかがいます。去年、先行して始めた草ストローの輸入販売、今後はどのような展開を考えていますか?

「そうですね。今いちばん目指しているのは、やはり循環システムの構築ですね。草ストローを使ったあとに、ただゴミにするのではなく、それを資源として活用してゴミを出さないシステムを構築したいなと思っています。ただそこには、どうやってお店から草ストローを回収するのかっていう課題はまだまだあるので、そこもしっかり考えて、導入店舗を増やしつつやっていけたらなと思っています」

●大久保さんが思い描く理想の未来っていうのはどんな未来ですか?

「我々の活動ではひとつミッションのようなものを掲げています。それは”ひとりひとりがちょこっとできるエコな選択を提供し続けること”で、誰かひとりが100環境に優しいことをするんではなくて、ひとりひとりが少しずつ環境に優しいエコな選択をすることで、大きな環境問題を解決できるような未来になったらいいなと思っています」 


INFORMATION

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

 「HAYAMI」で輸入販売している草ストローは、完全生分解性・無農薬・無添加なので環境だけでなく人間にも優しく、日本の衛生検査も通過しています。

 販売価格は、20センチ20本入りで一箱400円、13センチ20本入りで一箱280円。「HAYAMI」のサイトから購入できます。ご家庭はもちろん、飲食店などを営まれているかた、プラスチックゴミを減らすために、ぜひ一度、草ストローを試してください。

 詳しくは「HAYAMI」のオフィシャルサイトをご覧ください。草ストローを導入している店舗のリストも載っていますよ。

◎「HAYAMI」オフィシャルサイト:https://www.hayamigrassstraw.com/

写真協力:大久保夏斗、HAYAMI

 大久保さんが草ストローとは別にこの3月から販売を開始した、サボテンの皮を使ったおサイフは「Re:nne(リンネ)」というブランドの新商品です。名前の由来は「輪廻転生(りんねてんしょう)」の「輪廻」で、「生まれ変わり続ける」がコンセプトになっています。

 動物の皮を使わずに作った製品で特に植物系の素材で作った「ヴィーガンレザー」は、サステナブルで動物愛護にもつながるエコ素材として、いまとても注目されています。原料は、木の皮のほか、キノコやパイナップルの葉っぱ、りんごの皮などでサボテンの皮を使っているのはとても珍しいそうです。

 「Re:nne」ではデザイン性、機能性、そしてサステナビリティを重視して、おサイフを開発。メキシコで製造されたサボテンレザーを輸入し、日本の熟練した皮職人さんがひとつひとつ丁寧に仕上げ、現在は黒の長ザイフと、ふたつ折りサイフの2種類を販売しています。

 詳しくは「Re:nne」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「Re:nne」のオフィシャルサイト:https://rennetokyo.thebase.in

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