2024/11/10 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第22弾! 今回はスポーツ編として、ふたつのプロジェクトをクローズアップ!
まずは、廃棄されるゴルフボールをマーカーやピアスなどにアップサイクルする「NEP!! GOLF」、そして、役目を終えて捨てられるバスケットやバレーのボールを加工してポーチやコインケースなどに生まれ変わらせる「RE:BALL PROJECT」をご紹介します。
☆写真協力:NEP!! GOLF、八橋装院
「NEP!! GOLF」〜ロストボールをサップサイクル!
※まず、ご紹介するのは、廃棄されるゴルフボールをアップサイクルする「NEP!! GOLF」。これは、広告代理業務などを行なう会社「6G」が進めているプロジェクトです。
代表の「村岡光太郎」さんによると、ゴルフ場で発生するロストボールは回収され、半分は再販売されるそうですが、残りの半分は、汚れや傷があると売り物にならないため、廃棄されます。その方法は燃やすか埋めるか、当然、処理費用がかかります。
そこで村岡さんたちは、その課題に取り組み、3年ほど前から廃棄されるロストボールのアップサイクルを進めていらっしゃいます。
●プロジェクト名「NEP!! GOLF」のNEPには、どんな意味があるのでしょう?
「これは“Nude Earth Project”を訳して「NEP(ネップ)!!」にしています。(NEPの)後ろにドッキリマークがふたつありますが、これはヘルプみたいな、“助けて”の意味で、ドッキリマークをふたつ付けているんです」
●なるほど・・・。
「“Nude Earth Project”ってどういうことかっていうと、“裸の地球”っていうのをより人っぽくしたくて・・・裸の地球っていうと正しくは、“Naked Earth”って言い方をするみたいなんですけど・・・。
僕がイメージしたのは、地球自体は人間が何もしなければ、自然にずっと継続していけるものなのかな〜と、勝手にそう思っています。でもゴミを捨てる、二酸化炭素を出す、木を伐採して森をなくしていくとか、いろいろやると、それだけで地球ってころころ違う運命をたどっていくじゃないですか。
“裸の地球”って要は、地球自体は何もしてないよ、僕らがなんかしているから、結果が変わっていっているんだよって考えて、Nude Earthは“裸の赤ちゃんの地球”みたいなイメージで考えています。それにドッキリマークをつけて、“助けて!”っていう意味で、裸の地球を助けたいよね、だからなんとか、もとに戻していく方法はないだろうかっていうプロジェクトです。
“GOLF”に関しては、今回はゴルフボールっていうテーマでアップサイクルをして、ゴミを減らしていこうって思ったので「NEP!! GOLF」なんですけど、これが違うアイテムが見つかれば、“NEP!!OOOO”に変えてやっていこうとは思っています」
●なるほど、いろんな意味が込められているんですね~。サイトを拝見したんですけど、年間再販できないロストボールが国内だけで約7500万球も出るって書かれていて、そんなに多いんですね。驚いちゃったんですけど・・・。
「そうですね~。一応、ゴルフ人口の話があると思うんですけれど、どこからこの数が出ているかっていうと、一般社団法人『日本ゴルフ場経営者協会』っていうところが毎月のラウンド数を出しているんですよ。どれぐらいラウンドがあったかっていう・・・。
たとえば先月だと800万ラウンドぐらい、(国内の)ゴルフ場は2170か所あるんですけど、800万ラウンドありましたよと。1年間、平均すると、あんまりやってない日もあるので、トータルすると2021年の時は大体7500万ラウンドぐらいだったんですよ。
7500万ラウンドあるってことは、僕なんかはこの間(ゴルフ)デビューした時に、ボールを12球ロストしたんですけど、みなさんも1球2球はなくすと思うんですよね」
●失くしちゃいます。
「そうすると、すごく少なく見積もっているんですけど、大体年間7500万ラウンドから8000万ラウンドあると、ひとりが2球OBした場合、(ロストボールが)1億6000万球出ますと。(回収する)ボール屋さんが、1億6000万球の中で “半分くらいはロストボールとして出せるよ!”っておっしゃっていたんで、半分は出せない、っていうことは捨てるものなんですね。で、当然(ゴルフ場内で)見つかってないボールもあるので、これ以上あることは間違いないんです。
ゴルフ場内で出ているロストボールは、多分2億球とか言ってもおかしくないんですけど、そのうちの1億球ぐらいは、再販できないからゴミになるか、そのままゴルフ場の中で土に埋もれていくかっていうような状態になっているところから7500万球っていう・・・」
●確かに売られているロストボールもありますけれども、再販できないロストボールの場合は現状捨てられちゃっているっていうことなんですね。
「そうですね」
(編集部注:村岡さんによると、ゴルフボールの素材は外側はウレタン、内側は合成プラスチックで、メーカーによって材質が違うため、粉砕したとしても、それをそのまま再利用することは難しいそうです)
端材も再利用、無駄なく使う
●アップサイクルして商品化されたアイテムって本当にどれも可愛いですね。
「ありがとうございます」
●きょうはスタジオにたくさんお持ちいただきました。ありがとうございます! たとえばサボテンのポットですけど、ゴルフボールの上を削って、中をくり抜いてあるんですね?
「そうですね。少しだけくり抜いています」
●つまり、このサボテンの鉢がゴルフボールってなっているってわけですよね。これ(中に)土を入れているんですか?
「これは挽き終ったコーヒー(のカス)ですね」
●コーヒー! え~っ!
「近所のちょっと有名なコーヒー屋さんで乾燥してもらって、それをいただいています。捨てるものなんで・・・」
●そこにもちゃんとエコというこだわりがあるんですね!
「そうですね」
●この土台となっている黒い丸い部分は何ですか?
「これは靴修理会社さんの、かかとの修理とかに使うソールの部分なんですね。大きな正方形からソールも切り抜くんですけど、その時にやっぱり四隅に端材が出るんですね。それを捨てているっていう話だったので、じゃあそれを土台にさせてもらおうっていうことで、くり抜いてもらってます」
●すごい! じゃあこの製品はすべてに無駄がないということですね。
「そうそう! 上のもの以外は!(笑)」
●ピアスとかもあるんですね。ゴルフボールの表面の素材をそのまんま小さくカットしたものですけど、ゴルフ女子にはたまらないですね~、可愛い!!
「ぜひ使ってほしいです!」
●それから、グリーン上で使うマーカーもゴルフボールの表面がそのまんまで、くり抜いてありますけれども、どれも可愛いですね~。
「ありがとうございます!」
●商品化するときのアイデアとかデザインは、みんなで話し合って決めるんですか?
「はい! もちろんみんなで考えるんですけど、うちの会社自体が男しかいないんです」
●はいはい(笑)
「なので、なかなかそういう可愛らしいものを考える時に、どうしたらいいかな? っていうのはあったんですけど、まず最初はキーホルダーから始まりました。
キーホルダーって付けてはくれるんですけど、“それ以外になんかないの?”って聞かれることが多くて、買ってくれたかたたちからアイデアを貰いながら、できそうな商品を作っていくという形になっていますね」
●お客さんからの声も反映されているんですね。
「そうですね」
(編集部注:村岡さんによると、現在、カラーボールを使った新商品を開発中で、緑を増やすための、寄付につながる仕組みを検討しているそうです)
※ゴルフボールをカットするなどの作業は社内で行なっているそうですね。その時に出た端材などは、どうされているんですか?
「その端材を集めて、最初はバイオ燃料がいいんじゃないかってことで、いろいろプラントを作って燃やすと、燃焼効率がすごくいいって思ったんですけど、二酸化炭素とかいろんなこと考えると、燃やさないでそのまま活かしたほうがいいんじゃないかっていう考えがあって・・・。
で、(きょうはスタジオに)靴のソールを持ってきているんですけど、靴のメーカーさんと相談して、(ゴルフボールの)削りかすを7パーセント混ぜているソールなんですね。たまたま先ほど言った、土台になっている靴の・・・これですね」
●サボテンの土台になっている?
「サボテンの土台を作っている靴屋さんがソールも作られているって話だったんで、ちょっと(ソールに)混ぜてもらえません? って言って作っているソールなんです」
●ちょっと触ってみてもいいですか? 弾力があってフカフカですね。ベージュが基本となっていて、中に小っちゃな、ピンクとか白とかオレンジとかありますけど、これが・・・?
「ゴルフボールの中の“コア”って言われるゴムの部分ですね。(ソールは)白とか黒のゴムでも作れるんですけど、そうすると見えなくなってしまうので、あえてこのラバーのそのままで作っているんですね」
●端材もちゃんと次の商品につながっているってことですね。
「そうですね。次の商品、何かに使えないかっていうのは日々考えています。むしろ、聴いているかたで誰か教えていただければ・・・協力してもらえるとありがたいんですけどね」
ゴルファーの意識
※ロストボール問題は、やはりゴルファーひとりひとりの意識が大事だと思います。その辺はいかがでしょうか?
「むしろ、みなさんがどう思っているかですよね。ゴルフボールのことを考えたことはありますか? って思わないですか。僕なんかはゴルフやったばっかりですけど、ボールのことなんて考えてないですもんね。自分が打った後にOBしちゃった、“いいから早く次、打ってよ!”って言われて打つじゃないですか。その時にロストボールのことって考えないですよね。
だからそういうことを考えると・・・(ロスとボールが)ずーっと発見されなかったら、土に還らないんで置きっぱなしなんですよね。それってゴミじゃないですか。今、廃タイヤとかいろんなゴミが問題になっていますけど、スポーツの中で、球技の中で、ボールのゴミって多分圧倒的にゴルフボールが多いと思うんですよ。
そこを意識しろって言っても、これまでの期間、そういうことがなかったので、なかなか意識するのは難しいと思うんです。ただ現状それがよく思われてないことは、みんなうっすら、ご年配のかたたちは知っていて、山が汚れているよねとか・・・イメージ的にですよ。
だから僕らは、それをちょっと気づいてもらえるようになればいいかなと思って、この事業やっているんですね。だからこのラジオを聴いていただいたかたが、 “ロストボールで再販できないものもあるんだ!”って知ってもらって、そのままゴミになって、そのゴミが有害なんだなとか、そういうゴミって減らしたいなって思ってくれたら、ちょっと嬉しいなっていうふうに思っています」
(編集部注:「NEP!! GOLF」で販売しているマーカーやピアス、キーホルダーなどの商品はオンラインで購入できます。やはりゴルファーに大人気で、コンペの賞品やお父さんへのプレゼントなどに利用されているケースが多いそうですよ。商品のラインナップなど、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください)
「RE:BALL PROJECT」〜思い出のボールをアップサイクル !
前半では、ゴルフボールのアップサイクル・プロジェクト「NEP!! GOLF」をクローズアップしましたが、後半は役目を終えて捨てられるバスケットやバレーのボールを加工して、新たなグッズに生まれ変わらせる「RE:BALL PROJECT」をご紹介します。
これは、広島市にある衣服の縫製会社「八橋装院」が進めているプロジェクトです。1959年に創業された八橋装院は現在、国内有名DCブランドの縫製を手掛けるなど、長年、日本のファッション産業を陰で支え続けています。
2013年には自社ブランド「FUKUNARY」を立ち上げ、人工皮革やレザー、帆布などを使ったお洒落なバッグや財布などを製造・販売。さらに、競技用のボールを主力商品とする地元の企業「MIKASA」とコラボして、ボールの生地を素材に、軽くて耐久性のあるバッグなどのファッション・アイテムを開発、「FUKUNARY feat. MIKASA」として展開されています。
そんな中、この番組が注目したのが、八橋装院が取り組んでいる「RE:BALL PRO-JECT」です。
※それでは、そのプロジェクトを立ち上げた八橋装院の社長「高橋伸英」さんにお話をうかがいます。
●「RE:BALL PROJECT」のサイトを見ると、使い古されたバスケットボールやバレーボールの素材をそのまま裁断して作った、ポーチやコインケースが載っていました。ボールのキズなども活かされていて、メモリアルなグッズになっているな〜と思ったんですが、どうなんでしょうか?
「『RE:BALL PROJECT』に関しては、使い古したボールを使うことがマストです。私たちがターゲットにしている、想定しているところはやっぱり部活動だったりするんですね。だから学生時代に、中学校、高校、大学でプレイしていた人が・・・ボールには寿命があるので一定数廃棄されます・・・その廃棄されるものを活かして、その人たちの思い出作りに寄与できたらいいなっていうビジネスなんですね。当然、古いボールを活かす以上はキズが残っていたりとか、チームの名前が入っていたりとかっていうのもありますよね。
但し(ボールから生地を)取る位置が、ある程度決まっているので、(チームの)名前が入る入らないは指定はできないんですけど、使った証(あかし)というか、キズがついたところはいくらかは入るというか、全体的にキズがあれば入ってしまうんですね。
それがペンケースだったり、眼鏡を入れるケースだったり、コインケースになって、自分のバッグの中に入っている、手元にある、それを見ることで、昔、頑張った自分を思い起こして、私はこれで頑張っていた、俺はこれで頑張っていたんだって、社会に出た時にまた力を与えてもらえるものになればいいなっていう思いで、この『RE:BALL PROJECT』をやっています」
●夢中に、がむしゃらに頑張って部活をやっていた、その時の思い出がポーチなどになって身近にあるっていうのは、すごく嬉しいことですよね!
「そうですね。プレイヤーにとってみたら嬉しいと思います。だから後輩だったり父兄さんだったりが依頼してくることが多いんです。ほとんどが送り出すほうのかたからの依頼ですね」
(編集部注:高橋さんによると、バスケットやバレーのボールは中にゴムがあるので、商品づくりがとても大変で手間がかかるそうです。
衣服の縫製とは違って、相手はボールですから、職人さんの優れた技術やノウハウがあって、やっとできあがるんでしょうね。)
もっと広めたい「RE:BALL PROJECT」
●この番組のリスナーさんが、自分が持っている思い出のボールからグッズを作って欲しいと思ったら、どうすればいいですか?
「作れるものには制約がありまして、先ほども言いましたペンケースであったりコインケースが主軸にはなるんですけども、弊社ホームページに注文サイトがあります。そちらに必要事項を書いてメールをいただきたいですね。あとはそこに注意事項がありますので、よく読んでいただいて注文していただけたらと思っています」
●今後、何か新たに取り組みたいこととか、今後の「RE:BALL PROJECT」の展開はありますか?
「SDGsに関わる『RE:BALL PROJECT』がなかなかできていないっていうのがありますね。これがもうちょっとみなさまに認知いただいて、いいサイクルをもたらしていると感じてもらって、日本だけではなく世界中に広められるような形になれば嬉しいですけど・・・まあ、理想です! 日本から出すっていうと、なかなかハードルが高いので、今のところ、国内でもうちょっと広まって、認知されたらいいな~っていうところですね。で、捨てられるボールが少しでも減れば嬉しいかなと思います」
INFORMATION
今週は、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第22弾!スポーツ編。「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「つくる責任 つかう責任」ということで、廃棄されるゴルフボールをアップサイクルするプロジェクト「NEP!! GOLF」、そして役目を終えて捨てられるバスケットやバレーのボールを、新たな商品に生まれ変わらせる「RE:BALL PROJECT」をご紹介しました。
「NEP!! GOLF」そして「RE:BALL PROJECT」について、詳しくはそれぞれのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「NEP!! GOLF」:https://www.nep-golf.com
◎「RE:BALL PROJECT」:https://yahashisouin.com/reball/
◎八橋装院 :https://yahashisouin.com
2024/7/28 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第21弾:「コーヒーとサステナビリティ」。今回はSDGsの17のゴールの中から「つくる責任 つかう責任」、そして「働きがいも 経済成長も」。
お迎えするのは、スペシャルティ・コーヒーの専門店「ONIBUS COFFEE」を展開する株式会社ONIBUSの代表「坂尾篤史(さかお・あつし)」さんです。
坂尾さんは、コーヒー・ビジネスを軸に、サステナブルな取り組みや、コーヒー豆生産地の支援活動などを積極的に行なっていらっしゃいます。
ONIBUS COFFEEは、代表の坂尾さんが2012年1月に世田谷区奥沢に第1号店をオープン。開店当初は、なかなかスペシャルティ・コーヒーが浸透せず、苦戦していたそうですが、その後、しっかりと着実に店舗を増やし、現在は都内に6店舗、栃木県那須に1店舗。海外ではタイのバンコク、台湾のタイペイ、ベトナムのホーチミンにそれぞれ1店舗ずつ、展開されています。
そんな坂尾さんを先日、「ONIBUS COFFE」の自由が丘店に訪ね、サステナブルな活動のほか、コーヒー専門店を始めたきっかけや、豆と挿れ方のこだわりなど、いろいろお話をうかがってきました。その時の模様をお届けします。
☆写真協力:ONIBUS COFFEE
オーストラリア〜カフェが街の文化
※私たちが取材でうかがった自由が丘店は、自由が丘駅から徒歩4分ほどのところにあり、店内は白を基調にしたシンプルでウッディなしつらえになっていて、とても落ち着く空間でしたよ。
まずは、コーヒー専門店を始めようと思ったのは、どうしてなのか、お聞きしました。
「僕が若い頃って東京にカフェブームみたいのがあったんですよ。お洒落なカフェがあって、古民家カフェだったりとか、古いビルの上にルーフトップ・カフェみたいなのが流行っていて、漠然とカフェっていいなって思っていたのが、いちばん最初のきっかけですね」
●いいな〜と思っていて、それを自分でやってみようと思ったのは、どうしてなんですか?
「その当時は建築の仕事をしていたんですよ。ゼネコンで働いていて、父親は大工さんだったので、ゼネコンで働いたあとに、父と大工さんを一緒にやっていたことがあるんですね。その時に自分の仕事はこれでいいのかな〜みたいな、若い時なりに思っていて、まずはいろんな世界をもっと見てみようっていうので、バックパック(の旅)に1年間くらい行っていた時期があったんですね。
いちばん最初に訪れた国がオーストラリアだったんです。そのオーストラリアでカフェに行った時に、エスプレッソ・マシンが置いてあって、お洒落なバリスタがコーヒーをサーブしていて、お客さんとスモールトークをしていく中で、地域のコミュニティを作っていくみたいなのを見た時に、”あ、こういう世界ってあるんだ”みたいなことを感じたのが、コーヒーの仕事をしようって決めた時でしたね」
●それは、おいくつの時ですか?
「25歳だったと思います」
●オーストラリアのカフェの何が、そんなに魅力的だったんですか?
「まず、いちばんいいなと思ったのは、地域のコミュニティになっているんですよね。オーストラリアの人って毎日カフェに行くんですよ。朝必ずカフェに行って、ちょっとおしゃべりをして、たまたま隣に座った人ともちょっとお喋りをして、1日がスタートするみたいな・・・だからみんな顔見知りなんですよね」
●いいですね〜!
「そうやってカフェが街を作っている、カフェが街の文化になっているみたいなのを肌で感じた時に、すごく感動したっていうのがありますね」
●居心地よさそうですね〜。
「そうですね。なんて言うんですかね・・・自分の居場所みたいなのを、知らない街に行ったにも関わらず、顔見知りがそこでできていく感覚みたいなのは、本当に自分の居場所ができたなっていう、空間がただ居心地がいいだけではない、居心地の良さみたいなのがありましたね」
●バックパッカーとして最初に訪れたのがオーストラリアで、そこでカフェの魅力に気づき出会い、そのあともバックパッカーは続けられたんですか?
「そうです。そのあとはアジアを1年間くらいバックパックしていました」
●そのアジアの旅でもカフェにはよく行かれていたんですか?
「アジアはその当時2007年だったと思うんですけど、コーヒー屋さんって全然なかったんですよ。ただインドに行けばチャイを飲んだり、例えばバンコクに行ったらミルクティーを飲んだり、中国に行けばお茶を飲んだりっていう、その土地その土地のドリンクを飲みながら、カフェではないんですけど、お茶屋さんだったりとか、街角のチャイ屋だったりみたいなところに行ってましたね」
ONIBUSは「公共バス」!?
※「カフェ愛」が高まり、帰国した坂尾さんは、日本でカフェをやりたい! そのためにはまず修業だと考え、バリスタの世界チャピオンが手がけるコーヒーショップ「ポールバセット」で2009年から2年ほど本格的にコーヒーを勉強し、その後、独立されました。
ONIBUS COFFEEを創業したときは、どんなお店にしようと思ったんでしょうか?
「やっぱり自分のコーヒー店を始めようって思ったきっかけは、オーストラリアのカフェだったので、地域の人たちが来るような、地域のコミュニティの一端を担えるようなお店作りっていうのがいちばんの目標というか、そういうお店にしたいなっていうのがありましたね」
●暮らしの一部になるような・・・。
「そうですね。まさに本当にそうです」
●ONIBUS COFFEEには、どういう意味があるんですか?
「ONIBUS COFFEEのONIBUSがブラジルの、ポルトガル語なんです。公共バスっていう意味があって、ブラジルって国土がめっちゃ広いので、バスで12時間とか20時間とか、長い移動をする国なんですね。
そういうバス網が発達しているので、バス停が地域の起点になっていたりとか、経済の起点になっていたりとか、僕の名前のお店も地域の起点になれるような、人と人とが集ってまた次に進めるようなお店を目指して、ONIBUS COFFEEっていう名前にしています」
果実のような味わい
※ONIBUS COFFEEで出しているコーヒーの特徴についてお話しいただきました。
「僕らの扱っているコーヒーの特徴がすべてスペシャルティ・コーヒー豆を浅煎りで焙煎しているので、まず苦さがないっていうのがひとつ大きな特徴かなと思いますね」
●コーヒーと言えば、苦いというイメージがありますけど・・・。
「コクとか苦さみたいなのがあると思うんですけど、そういったものよりはコーヒー本来の、ひとつひとつコーヒチェリーって言われるような果実からできているので、味わいを楽しんでもらえるようなものをお出ししていますね」
●へ〜! では早速いただいてもよろしいですか? いろんな種類がありますけれども、今回は何を・・・?
「今回はホンジュラスとルワンダのお豆を、2種類ご用意しています」
●では早速、ホンジュラスからいただきます。見た目はいわゆる普通のコーヒーという色合いですけれども・・・。
「そうですね。ただ焙煎が浅いので深煎りのものと違って、濃い黒っていうよりは少し褐色的な色になっていますね」
●あ、そうですね! ではいただきます! う〜ん美味しいですね。確かに全く苦くないですね!
「そうですね。それよりも果実感だったりとか・・・」
●すごく優しい味がします〜。このホンジュラスのコーヒーには、どんな特徴があるんえすか?
「ホンジュラスは中米にある国で、甘さが特徴的ですね。僕らは、リンゴみたいな甘さだったりとか、果物の甘さに表現することが多いんですけど、ホンジュラスはまさに熟したリンゴのような甘さを持っているコーヒーだなと思います」
●美味しいです〜! で、こちらがルワンダですね。いただきます。あ、また違った柔らかさというか・・・。
「そうですね。ホンジュラスが中米なのに対して、ルワンダはアフリカの国で、アフリカって結構、酸味がぎゅっと凝縮したようなコーヒーになっていて、ベリー系の酸だったりとか、あとはシトラス系の酸みたいなのを感じるコーヒーとなっています」
●ちょっと紅茶みたいな感覚もありますね。
「そうですね。紅茶だったりとか、あとワインのような酸味を楽しんでもらえるようなものになっています」
●美味しいです! 挿れ方にもこだわりがあるんですか?
「そうですね。挿れ方はドリップコーヒーでお出ししているんですけど、例えばグラインダーだったりとかお湯の温度だったりとか、お湯の注ぐ量みたいなのを細かくレシピで決められていますね」
●この味の決め手っていうのは?
「味の決め手は・・・農作物なので、やっぱり農家さんたちがどういう環境でどういうふうに育てているのかみたいなのがいちばん大きく影響してきます」
(編集部注:コーヒー専門店などで販売されているコーヒー豆、私たちは「豆」と呼んでいますが、正しくは、アカネ科の植物「コーヒーノキ」の実の中に入っている種子、タネなんですね。この実は、さくらんぼのように赤く熟すので「コーヒーチェリー」と呼ばれています。
コーヒーの品種はたくさんありますが、飲むために栽培され、流通しているのは、「アラビカ種」と「カネフォラ種(通称ロブスタ)」のふたつだそうです。
コーヒーノキは、苗木から2〜3年かけて成長し、ジャスミンのような香りがする白い花が咲くそうです。そして実が8ヶ月ほどかけて、徐々に大きくなり、完熟した赤いコーヒーチェリーになります)
スペシャルティ・コーヒーとは?
※初歩的な質問なんですが、改めて「スペシャルティ・コーヒー」というのはどんなコーヒーなのか、教えていただけますか?
「認証とかがあるわけではないんですけれども、アメリカを中心としたスペシャルティ・コーヒーの協会と言われるようなところで、厳しく審査されて点数付けされたものですね。通常のコーヒーの10%くらいしか流通していないものになっています」
●とても稀有なものなんですね。
「稀有っていう表現が正しいかどうかはわからないんですけど、最近この5〜6年、お洒落なカフェが増えて、エスプレッソ・マシンが入っていてドリップコーヒーも出しているみたいなお店だと、スペシャルティ・コーヒーを使っている傾向が高いです」
●特別な地域と気候が生み出すコーヒーっていうことですよね。
「まさにそうですね。特別な気候が複雑な味わいを生み出すコーヒーって言われています」
●具体的にはそのスペシャルティ・コーヒーの生産地っていうと、どのあたりになるんですか?
「スペシャルティ・コーヒーも通常のコーヒーも生産地域は一緒になるんですけど、中米、南米、アフリカ、あとアジアでもインドネシアとかタイとかでは生産されていますね」
●スペシャルですね〜!
「そうですね。農家さんへの対価の還元だったりとか、自然環境と長く、持続可能な農業をしていこうみたいな考え方を反映しているコーヒーになるので、本当に稀有なコーヒーであることは間違いないかなとは思いますね」
コーヒー農園が鬱蒼とした森!?
※ONIBUS COFFEEでは、どの生産地のコーヒー豆を輸入するのかを決めているのは、坂尾さんなんですよね?
「焙煎をするチームがあるので、その焙煎チームと僕とで決めていますね」
●コーヒーを仕入れる農園は何ヶ所か、決めてあるんですか?
「やっぱり(コーヒー豆は)農作物なので、なるべく継続して買うみたいなのは結構大切になってきますね。もう10年ぐらい使っている農園もあったりとか、それプラス、新規で数件、毎年開拓しているっていうような形ですね」
●現地に行って買い付けをするみたいな・・・?
「そうですね。そういうロットも多く揃えています」
●現在だと具体的にどの生産地から仕入れているんですか?
「直近でいうと、6月にルワンダに行ってきたり、4月にグアテマラに行ったりしていましたね」
●ブログで拝見したんですけど、定期的にコーヒー豆の生産地に出かけていらっしゃるんですよね?
「そうですね。僕だけではなくて、社内のチームで担当の国みたいのがあるので、それぞれなるべく、できる限り生産地域を訪ねるようにしています」
●グアテマラのコーヒー農園に行った記事も載っていましたけれど、鬱蒼とした森みたいな感じでしたね。
「そうですね。僕らが(コーヒー豆を)買っているグアテマラの農園は特に、特にというか、ほかでは見ることがないぐらい森です!」
●森ですよね! コーヒー農園なんですよね?
「そうです、コーヒー農園です! たぶんみなさんコーヒー農園をイメージすると、ブラジルの広大な農園をイメージするかたが多いと思うんですね。僕らが買いつけているところは、グアテマラとメキシコの国境付近にあるんですけど、すごく切り立った石の山なんですよね。たぶん昔は海の底だったところが隆起してできた山になっているので、石がゴロゴロしていて、険しい山の合間にコーヒー(の樹木)が生えているっていうような感じですね」
●標高も高いんですか?
「そうですね。1800メートルから2000メートルぐらいの標高になっています」
●コーヒー栽培には適した場所っていうことなんですね?
「そうですね。クオリティの高いコーヒーを作るのには、適している場所になっていますね」
ルワンダ“堆肥”プロジェクト
※ONIBUS COFFEEでは、去年からアフリカ・ルワンダの生産地でプロジェクトに取り組んでいると、ブログにありました。これはどんなプロジェクトなんですか?
「ルワンダは森は全くないんですよ。アフリカだから自然いっぱいみたいなイメージだと思うんですけど、結構切り開かれていて、原生林みたいなのがなく多様性がないんですよね。
そうすると土の微生物の量だったりとか、落ち葉が堆肥になるみたいなのがなかなかなくて、優良な有機肥料を自分たちで作ることが難しいんですよね。それを日本の農家さんたちの知見をルワンダに持っていって、自分たちで優良なオーガニックな肥料、堆肥を作るプロジェクトを一緒にやっています」
●プロジェクトを始めてどれくらいになるんですか?
「始めてまだ2年ですね。1年目はトライアルで少しだけやって、去年から(本格的に)やり始めました」
●どうですか? 進捗具合は・・・。
「実際に(コーヒー豆の)クオリティに反映されているとか、例えばそこの土の微生物が増えたみたいなのって、まだまだわからないことなんです。今年から去年作った堆肥を使ったコーヒー豆ができ上がってきて、それが11月ぐらいに入ってくるんですけど、実際に販売できるっていうところまでは来ています」
●すごいですね~! 生産地の課題でいうと、今どんなことが挙げられますか?
「本当に国によって全然違うんですけど、ルワンダにおいては賃金の問題もありますし、教育ですね。コーヒーの教育っていうよりは全体的な教育の課題だったりとか・・・あと先ほどもお伝えした微生物の多様性の少なさっていうところですね」
(編集部注:農作物であるコーヒーは当然、環境の変化に影響を受けやすく、温暖化による気候変動が品質の低下や収穫量の減少につながり、このままいくと2050年頃には美味しいコーヒーが供給されなくなる恐れがあるそうです)
ONIBUS COFFEEとサステナビリティ
※ONIBUS COFFEEは、会社としての2023年の取り組みを「サステナビリティ・レポート」として、数字にしてブログで公開されていますよね。これにはどんな意図があるんですか?
「スペシャルティ・コーヒーを扱っていく上で、スペシャルティ・コーヒーの定義みたいなのがあるんですよ。その中に『サステナビリティ』と『トレサビリティ』の意識をもちましょう! みたいなのが書いてあるんですよね。
それって本質的なことだな~と思っていて、東京でこういうカフェを営んでいく中でも、自分たちが何ができるのかみたいなのを考えていく必要があるなと思っています。ただそれってなかなか伝えるのって難しいじゃないですか。なので数字に落とし込めるものは落とし込んで、レポートとしてあげようみたいなのを昨年から力を入れてやっています」
●具体的には会社でどんな取り組みをされているんですか?
「取引の価格を公表したりしていますね。例えば農家さんの『FOB』って言われる、コンテナに積む前の金額って、コーヒーの原価に関わることなので通常だとなかなか知ることがないんですけれども、そういうのも公表したりしていますね」
●社内にサステナブル担当っていうかたがいらっしゃるんですよね? サステナブル担当のかたとは結構頻繁にアイディアの交換とかされるのですか?
「そうですね。実際にいろんな農園に行ったりもするので、その時にいろんな話をしますね。今年出た話でいうと、実現するかはわからないんですけれど、焙煎機のある店舗を、例えばソーラーパネルを付けて自分たちで電気を作れるようにしたりとか・・・。
あと今、力を入れているのは“援農”ですね。農家さんのところに行って農業をお手伝いするっていうのを会社の中のひとつの仕事として、月に1回何人かで行って土に触れるみたいな機会を作ろう!みたいなのを提案して、実際に動いているっていうのをやっています。
ひとつは練馬のほうにある農家さんと、あとは東久留米にある農家さんですね。ブルーベリーを有機栽培で作っていたりとか、そこは自由が丘店で出た(食品廃棄物の)コンポストを肥料にしてもらって、カブにしてもらったりルッコラにしてもらったり、それをお店で出したり、みたいなのもしているので、そこにお手伝いしに行ったりしていますね」
●30年後のONIBUS COFFEEはどうなっていると思いますか?
「30年後・・・そうですね・・・たぶん今後もっと環境への意識はひとりひとりが高めていく必要があると思いますね。飲食店ってどうしても消費のカルチャーなので、そういったのをなるべく循環できるような仕組みを作りながら、ロールモデルになるようなお店作りをしてみたいなとは思いますね」
●改めて、坂尾さんはコーヒーを通してどんなことを伝えていきたいですか?
「そうですね・・コーヒーってめっちゃロマンがあるなと思うんですよ。きょう来ていただいている自由ヶ丘店のカフェで、いわゆるお客さんにサーブする、お客さんに提供するっていうところから、世界の裏側に行って買い付けてくる、その物流を自分たちでする、さらに土だったりとか、その土地の風土を理解するとかって、本当に多岐に渡るので、その全部をできる仕事ってなかなかないですよね。ひとことでは言えないですけど、本当にロマンがある仕事だなとは思いますね」
INFORMATION
ONIBUS COFFEEは奥沢店、自由が丘店、中目黒店、八雲店のほか、道玄坂と渋谷一丁目にそれぞれ1店舗、そして栃木県那須に1店舗と国内には7店舗あります。お近くにお出かけの際は、ぜひ立ち寄って、美味しいコーヒーを召し上がってみてください。
ONIBUS COFFEEでは、もちろんコーヒー豆の販売も行なっています。ルワンダ、エチオピア、ケニア、コロンビア、そしてホンジュラスなどから輸入した豆のほか、オリジナル・ブレンドや、ギフト用にドリップバッグなども販売。オンラインでも購入できますよ。
詳しくはONIBUS COFFEEのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎ONIBUS COFFEE :https://onibuscoffee.com
2024/6/9 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第20弾! SDGsの17の目標から「住み続けられるまちづくりを」ということで、「シモキタ園藝部」の活動をご紹介します。
下北沢駅周辺は再開発が進み、小田急線が地下に移ったことで、東北沢から世田谷代田あたりまでの約1.7キロの線路跡地に「下北線路街」ができて、そこが緑地になっています。
一般社団法人「シモキタ園藝部」は「まちの植物を守り育てていく」ことを目的として2020年4月に発足。それまでの経緯をかつまんでご説明すると・・・小田急線が地下に入るということで、地上の線路跡地をどうするかという話し合いが世田谷区と市民グループの間で始まり、区長が交代したことをきかっけに、小田急や京王の電鉄会社も参加し、さらに活発化。
そして、市民グループからの提案などをもとに、ランドスケープ専門会社がグランドデザインを作り、イメージを共有。植物を中心に活動したいというグループ「緑部会」から現在の「シモキタ園藝部」になったそうです。
同園藝部は「循環」をテーマに、植栽の管理に加え、コンポスト事業、養蜂、植物の知識を身につけるための園芸学校、世話ができなくなった植物を引き取り、手入れして、新しい持ち主へつなぐ「古樹屋(ふるぎや)」、ワイルドティーなどが飲める「ちゃや」、そして活動の拠点「こや」を運営するなど、幅広い活動を行なっています。
「のはら広場」は子供たちが作った!?
※取材にうかがった日は5月の半ば過ぎで時折、日が射す程度の、そんなに暑くもなく取材日和。小田急線下北沢駅の南西口を出てすぐに、緑あふれる小道が続き、ここが下北沢!? と思うほどでしたよ。待ち合わせ場所の「こや」までは、小道を歩いてすぐなんですが、流れている時間が違うような、そんな感覚にも包まれました。
●それではまず、シモキタ園藝部ができる前から、再開発に関わってこられた「前田道雄(まえだ・みちお)」さんにご登場いただきましょう。
「こや」のすぐそばにある「シモキタのはら広場」は公園の植栽とはちょっと違う印象なんですが、どんなふうに手入れをしているんでしょうか?
「ただ単に植物を愛でるというよりは、小田急線が地下に入り、実際に育っている緑を植栽管理っていう形でメンテナンスしながら、よくある公園の植栽管理だと、あっさり伐採しちゃうというのが多いんですけど、(シモキタのはら広場は)丁寧に見ながら管理をしていく・・・そうすると例えば、そこに生えてきた草を全部採るとかじゃなくて、選択的除草と言って、これは残しておこうとか、その場その場で判断をしながらやっているので、やっぱりその地にあるような植物が残っていくのかなと思います。
あとは月に一度ぐらいイベント的に集まって、細かく管理をするので、ほかよりも丁寧に目を光らせてやっているんだけれども、一律に管理するっていうことではなくて、その場その場に相応しいやり方をみんなで考えていくみたいな形でやっています。それがほかとはちょっと違う植栽の状況になっているのかなと思っています。一般的な公園と違うのは、やっぱり草が多いですよね。
普通は樹木を植えるのが、公園の植栽のデザインとしては多いと思うんですけれども、それよりももっと草とかそういったものを中心に仕立てられていて、最初作るときは芝生を敷いたところにタネを撒いているんですね。タネを撒いて草がいっぱい生えてきて、その草地を子供たちに走ってもらって、道がだんだんできていくみたいな感じの作られ方をしているので、誰がデザインとしたというよりも子供たちが走り回ってできた道なんです。
そこで今、草地として残っているところに生えた草をちょっとずつメンテナンスしながら、しかもタネを蒔いて出てきたものだけじゃなくて、そのうち勝手に生えてくるものもあるんですね。それもこれはいいよねっていうものは残すみたいな形でやっています。だから毎年、1年目2年目3年目と、原っぱの雰囲気がだいぶ違いますよね。生えている植物も違うので、私もわからないものがまた増えちゃうみたいな感じですかね」
(編集部注:水やりや手入れは曜日を決めて、参加できる部員みんなで行なうそうですよ)
みんなで作る
※前田さんは、おもにどんな活動をされているんですか?
「私は仕事が建築系なので、どちらかというと今使っている拠点、『こや』と呼んでいる建物があるんですけれども、そこのメンテナンスというかとDIYいうか、ちょっと手を入れたりとか、そういったことをおもにやっていますね。
それも私だけじゃなくて、いろんなかたにお手伝いいただきながら、例えば外にあるデッキをみんなで作ったりとか、2階のテラスにあるデッキをみんなで敷いたりとか、あとは棚をみんなで作ったりとか、そんなことをやる時に、ちょっと専門的な知見でこうするといいよね!とか、こうすると危なくないよね!みたいなことをアドバイスしながら、みんなで作っていくのをサポートしている感じですね」
●本業とこのシモキタ園藝部の活動と、ふたつが重なることによって、何か変化はありましたか?
「すごく直接的に何か変わったというわけではないんですけれども、やはり仕事の中で、植物を植えたりとか、そういったことを考えることも多いので、その時の細かさが変わったかなと思います。
建築という、もう少し大きなスケールで見ると、樹木を何本、こういうふうに植えましょうみたいな、そういうスケール感で見ていたものが、その下に生えている草とか、そういったところも見えながら全体を考えるみたいな・・・少し細かさが出てきたような気がしています」
(編集部注:現在、シモキタ園藝部の部員は200人くらいで、年齢も幅広く、いろんな仕事をしているかたがたが集まっているそうです。世田谷区に住んでいなくても、だれでも部員になれるとのことですよ。興味のあるかたは、ぜひオフィシャルサイトhttps://shimokita-engei.jpをご覧ください)
雑草は宝物、循環は面白い
※続いてご登場いただくのは、コンポスト事業を担当する「斉藤吉司(さいとう・よしじ)」さんです。斉藤さんは、こんな動機でコンポスト事業のリーダーになったそうですよ。
「自分の自宅でも家の周りに雑草が生えているじゃないですか。それを抜くって本当に嫌だったのが、堆肥にできるって知った瞬間に雑草が宝物に見えてきてんですね。それで自身もコンポストをやり始めていたので、園藝部でもそういうのができるなと思ったら、自分の活動が広がるような感じがして、ぜひ自分にリーダーをやらせてください! って言って始まりました」
●まさに循環を実践されている感じなんですね。
「そう、面白い! 循環は面白いです」
●コンポストの維持とか管理は、斎藤さんをはじめ、何人ぐらいのかたでされているんですか?
「メインで活動しているのがだいだい15名ぐらいで、いろいろな関係で50人ぐらいのかたに関わっていただいています」
●何か所にコンポストを設置されているんですか?
「コンポストは、さっき見ていただいたコンポストを含めて3か所ぐらいですかね。(下北線路街が)1.7キロあるので、それぞれ(コンポスト)工場のほうに持ってきたら大変なので、やっぱり近くにコンポストが必要っていうことになって、それぞれの場所に作り始めています。なので、先ほどお話しいただいた前田さんも東北沢で『竹のコンポスト』を設計されて、すごく素敵なコンポストを作られています」
●堆肥化する落ち葉とか雑草は、下北線路街の植栽から発生したものですよね?
「そうですね。それとプラスして街の、例えばコーヒーかすだったりとか、おそば屋さんのそば殻だったりとか、あと世田谷区はエコな活動しているお店がすごく多くて、例えば果物屋さんが果物の皮を捨てるのがもったいないから、乾燥しているので使ってくれないかっていう提案をいただいたりとか、あとクラフトビールを作っているところは、ビールかすを使ってもらえないかとか、いろんなことがあって、そういうものを集めて堆肥を作っています」
●飲食店から出る生ゴミとかも堆肥化されているんですね。
「自分たちは宝物っていうんですけど、宝物をいただいて、それをまたさらに宝物にするっていう活動をしています」
●現在、年間にどれぐらいの量の堆肥ができるんですか?
「だいたい1回の積み込みでリンゴ箱20個分なんです。あれは50リットル入るんですね。なので1回で1000リットル、それが4回なので、合計で(年間)4000リットルできますね」
●その堆肥は下北線路街の植栽に使っているということですか?
「そうですね。やっぱり線路街はちょっと土がよくなかったりするので、そこに土壌改良的に入れてもらっていたりとか、今は新しい取り組みとして『下北の土』としてちょっと堆肥に土を混ぜて、必要なかたにお分けするっていうことを、これからやろうとしています。あと古樹屋さんでも植え替えの時に土を使ってもらっているということです」
<シモキタ園藝部のコンポストあれこれ>
シモキタ園藝部のコンポスト事業では、ミミズコンポストも含めて、いろんなタイプのコンポストを試していて、そのひとつが「キエーロ」というネーミングのコンポスト。これは、神奈川県葉山にお住まいの「松本伸夫(まつもと・のぶお)」さんが開発したもので、その特徴は、風と太陽と土を利用すること。
木の箱に生ゴミと土を入れるだけの、至ってシンプルな構造で、肝心なのは、雨が当たらないように屋根があること。太陽の光を取り入れたいので、屋根を透明にすること。そして、風通しを良くするために密閉しないこと。この3つに注意するだけ。土の温度を上げることで、微生物の活動を活発にする狙いがあるんです。この「キエーロ」は、臭いがしない、土の量が増えない、そしてランニングコストがゼロと、いいことだらけ。
シモキタ園藝部では、ワークショップで参加者にりんご箱の「キエーロ」を作ってもらったりするそうです。作りかたなどは「キエーロ」のオフィシャルサイトhttps://kieroofficial.wixsite.com/kieroに載っていますので、参考にされてみてはいかがでしょうか。
また、取材でお邪魔した活動拠点「こや」の2階には、「うみまちコンポスト」が設置してありました。これはコンポストとテーブルを組み合わせた実験的な家具で、なんと椅子の部分が、ロックを外すと回転するコンポストなんです。こうすることで中の土がよくまざり、微生物が元気になるんですね。
ほかにもコンポスト事業部では「発電するコンポスト」の実証実験も行なっています。これは「ニソール」という会社が考案した仕組みを取り入れているもので、コンポストの土の中に電極を差し込み、微生物などが発するエネルギーを電気として利用しようというものなんです。実際にクリスマスのイルミネーションなどを「発電するコンポスト」の電気で灯したことがあるそうですよ。
下北沢線路街で養蜂に取り組む
※続いてご登場いただくのは、シモキタ園藝部で「養蜂」を担当されている「杉山直子(すぎやま・なおこ)」さんです。杉山さんは園藝部の活動のひとつとして、養蜂をやりましょうと提案されたかたなんです。
なぜ、養蜂だったのか、それは杉山さんの知り合いで、田舎でニホンミツバチを飼っていたかたと話す機会があって、そこで養蜂に出会い、その蜜の味に感動したそうです。
ところが、ニホンミツバチは野生の生き物で採れる蜜の量が少ないため、セイヨウミツバチの飼育をやってみないかという話になり、そのためには技術と知識が必要ということで、埼玉の養蜂場にお邪魔し、養蜂家に弟子入りを懇願。およそ2年にわたって毎週のように通い、師匠にセイヨウミツバチの飼育方法をみっちり学んだそうです。
そして現在はシモキタ園藝部の活動として、下北線路街の2カ所に、計10箱の巣箱を設置し、養蜂に取り組んでいらっしゃいます。
セイヨウミツバチは、天敵のスズメバチから身を守る方法を知らないのでスズメバチが巣箱に侵入しないように、ネットを張るなどの対策を行なっているそうですが・・・ほかに養蜂でいちばん気を使うのはどんなことですか?
「今まさにこの時期なんですけれども、分蜂(ぶんぽう)・・・分かれる蜂と書いて分蜂と読むんですけれども、今新しい女王蜂が生まれる、活発に作ろう作ろうと蜂たちがする時期で、古い女王がいる巣箱に新しい女王が生まれてしまうと、古い女王が嫌がって一家の半分を連れて外に逃げちゃう。
そうすると、ものすごい数の蜂がわーって集まって、変な話ですけど、電信柱だったり木の幹だったりに、蜂球(ほうきゅう)を作るんですね。
そうすると、知らないかたが見ると蜂がかたまりになっているって・・・つい先だっても大谷翔平のドジャースタジアムで話題になったんですけど・・・本当にそれと同じ現象です。
その分蜂する蜂たちは新しい家を探しに出て行くので、お腹の中にしっかり蜜を溜めています。本当はものすごく大人しいんですけど、知らない人が見ると蜂がたくさんいる、怖い〜ってなって、警察沙汰にもなりかねないので、いちばんそこは注意して管理をしなければいけないんですね。ちょっとこまめに、内見と言って(巣箱の)中の様子を見る作業を通常よりは増やして行なっています」
蜂蜜で「下北沢」を味わう
●巣箱のあるエリアに花が咲いていないと、養蜂は成り立たないですよね?
「そうですね。蜜蜂は半径2キロのところを飛ぶんですけれども、もちろん近いところに蜜源の植物があるほうが蜂たちにとったらストレスが軽くなります。お陰様で、園藝部さんの植栽管理の地域が非常に近いところにあるので、私たちの蜂は豊かな花々に恵まれていると思っていて、しかもその花々の質が高い。それがすべて味に反映されていると感じています」
●どんな味がするんですか?
「特にやっぱり4月は桜の花のあとで一斉に花々が開花するので、まずひとくち舐めると桜の味を感じて、そのあとにまた違う、口の中で転がしていくと、違う花の味も感じますね。それで飲み込んだあとは、最後がまたちょっと桜とは違うというか、まるで香水のトップノートとミドルノート、そういうような変わり方をする味わいだと私は思っています」
●先ほど3種類の蜂蜜をいただきました。4月26日、5月11日、それから5月21日に集めた蜜ということで、本当に時期によって全然味って変わるんですね!
「そうなんですね、本当に。地域の花々から集めた百花蜜なんですけれども、その花の移り変わりでどんどん味が変わっていく。今年で3年目に入るんですけれども、1年目2年目の同じ時期の味ともちょっとまた違うし・・・となると気候によっても微妙に変わってきますし、まるでワインのヴィンテージというか、テロワールっていうんですか、下北沢を味わっている感じがします。
園藝部の植栽もさることながら、(下北沢は)割と古い住宅街で、お庭があってお花を育てていらっしゃるお家が非常に多い。あとは近くの公園だったり緑道だったり、東大駒場キャンパスなどにも豊かな蜜源があるので、そういうところから本当に様々な雑味のない蜂蜜というか、すべての採蜜日が外れたことがないというか、私たちは、それがありがたいですね」
●3種類、どれも本当に美味しかったです!
「自信を持っておすすめします。全く混ざりものがない非加熱の蜂蜜なので、蜂蜜の本来持っている大事な酵素とかビタミン、ミネラルがすべて生きたまま入っています。体にとっても非常にいいんですよね」
(編集部注:杉山さんが愛情込めて世話をしている、蜜蜂たちが集めた蜜は「シモキタハニー」として販売されているほか、蜜蝋も活動拠点の「こや」や「ちゃや」の椅子やテーブルなどのワックスとして使っているほか、シモキタ園藝部のワークショップなどでも活用しているそうです)
まとまり、つながり、循環
※それでは最後に、シモキタ園藝部の良さは、どんなところにあるのか、前田道雄さん、斉藤吉司さん、そして杉山直子さんにお聞きしました。まずは前田さんです。
「誰かが中心になって全部やっているというよりは、いろんなかたがいろんな興味に応じて手を加えているので、すごく統一感のある世界というよりも、少しバラバラなんだけれども、なんとなくみんなの意識が共有されているようなまとまりができているように思いますね。
それが『のはら広場』の(植栽が)バラバラだとしながらもまとまっている、なんとなく雰囲気があるみたいな感じ・・・それと同じように園藝部自体もいろんな人たちが集まって、みんなちょっとずつ違うほうを見ているんだけれども、全体としてはまとまりがあるっていうのがとても魅力的かなと思っています」
※続いて斉藤さんです。
「コンポストを2年間やってきて、いろんなかたとゴミを介してお会いできるし、そういうつながりがあって、自分たちもその刺激を受けながら、なんか新しいことがどんどん広がってくっていうのがすごく楽しいことですね」
※では最後は、杉山さんです。
「埼玉の(養蜂家の)師匠に弟子入りしたと同時に、やっぱり地元の下北沢で養蜂をやってみたいという思いがさらに強くなって、その間、下北沢で養蜂ができる場所を探していたんですけど、園藝部の先ほどお話しされた前田さんと、割と早い時期から活動されていた男性が私の小中学校の同級生で、たまたま道でばったり会った時に私の思いを伝えたんですね。
そうしたら実はシモキタ園藝部というのがあって、養蜂もいいよねと話していて、だから君、まず園藝部に入りなさいって言われて、即入部して、そこからみんなに呆れられるほどプレゼンをして、なんとか屋上を貸してくださるかたを見つけるまでに至りました。
園藝部のかたがたから言われたんですよ。私たちの巣箱を埼玉から下北沢に移動して、丸1年間か2年目に入ったぐらいの時から、花の付きが段違いでよくなったっていうふうに言ってくださって・・・。
蜜蜂による受粉活動で街の緑が豊かになっていく。それは私が最初に園藝部さんにプレゼンする時の第一の売り文句でもあったので、それを実感してくださる人たちがいるということに非常に感謝しておりますし、植物が豊かになってくれば、より多くの花が咲くので、蜜蜂たちの蜜源もそこで増えていくから、非常によい“循環”が生まれてくると思っています」
INFORMATION
シモキタ園藝部は活動のテーマが「循環」ということで、その循環の輪の中で、植物も蜜蜂も人も調和しながら、まわっているように感じました。また自治体、地元企業、そして市民が参加する再開発のモデルケースで、まさに「住み続けられるまちづくりを」を形にしていると思います。
下北線路街は緑あふれる素敵なエリアです。お洒落なカフェやお店も点在しています。まずはぜひ訪れてみてください。
シモキタ園藝部ではワークショップなどのイベントも定期的に開催。また「ちゃや」では採れたての野花を使ったワイルドティーを楽しめますし、天然はちみつの「シモキタハニー」も販売しています。詳しくは、シモキタ園藝部のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎シモキタ園藝部 :https://shimokita-engei.jp
2024/2/25 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第19弾! 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「飢餓をゼロに」
そして「つくる責任 つかう責任」に関係する事例をご紹介します。
ゲストは、カブトムシの力で有機廃棄物を資源化し、世界の食糧不足にも貢献することを目指すスタートアップ企業、株式会社「TOMUSHI」の代表取締役CEO「石田陽佑(ようすけ)」さんです。
石田さんは物心ついたときから、ツノが生えたカブトムシが大好きで、双子のお兄さん建佑(けんすけ)さんと夜、近くの森によく、捕まえに行っていたそうです。ところが、なかなか捕れないので、カードゲーム「ムシキング」で知った憧れのヘラクレスオオカブトを、おじいちゃんやおばあちゃんにお金を借りて購入。そして飼育したら繁殖して増えたので、お兄さんと相談して、売ってみようということに。
そこで、またまた祖父母を説得して、起業のための資金を出してもらい、2019年に地元の秋田県大館市で、TOMUSHIをスタート。実は石田さん、以前、東京で別の事業を立ち上げたんですが、大失敗。TOMUSHIは、再起をかけての出発だったんです。
カブトムシを育てて販売する事業は当初、とてもうまくいき、絶好調! そこで、調子にのって、銀行から資金を調達し、たくさんカブトムシを育て、もっと儲けようとしたところ、大量に発生した害虫がカブトムシのエサを食べる事態が発生、大ピンチに。そんなときに、銀行から地元で出る廃棄物をエサの代わりにできないかと提案され、試してみたら、ビジネスモデルが大転換したそうです。
ちなみに社名の「TOMUSHI」を、株式会社の表記を省略し、「株」だけにして読むと「株 トムシ」になります。
きょうはカブトムシが大好きな石田さんが、双子のお兄さんと立ち上げたカブトムシ・ビジネスの可能性に迫ります。
☆写真協力:TOMUSHI
有機廃棄物をカブトムシのエサに
※TOMUSHIのオフィシャルサイトにもいろいろ説明が載っていますが、事業内容を、ひとことでご紹介すると「有機廃棄物を、カブトムシの力を使って、資源化する」ということですよね。有機廃棄物に目をつけて、最初からうまくいったんですか?
「最初は、とにかくエサをなんとかしなければいけないって必死だったですね。なんとなく昔から、カブトムシは腐葉土を食べるとか、腐ったものを食べるとかあったので、それだったら有廃廃棄物を食べるんじゃないのかなという期待をもとに、そこからいろいろ実験を始めたのがきっかけですよね」
●有機廃棄物といってもいろいろあると思うんですけれど、具体的にどんな廃棄物を
どこから集めてくるんですか?
「いちばん最初に紹介されたのは、いくつかあって、木材廃棄物ですね。それから農業残渣(のうぎょうざんさ)、メインなものでいうと、廃菌床(はいきんしょう)と呼ばれるキノコを育て終わったあとの土台になっている部分で、これも廃棄物になってしまっているので使えないかとか・・・。
あとは畜産糞尿、牛の糞とかそういったものが使えないかとか・・・こういうところから始まったんですけど、結果的にほとんどどれも(カブトムシは)食べられるんですね。最初こういうのがきっかけで、有機廃棄物の中でも廃菌床、畜産糞尿、それからの木質系の廃棄物に目をつけて始めましたね」
●たくさん量が必要だと思うんですけど、どうやって集めるんですか?
「これが、我々が想像していたよりも、はるかに事業者側のほうが量をたくさん排出してしまっていて、調達というところでは、そこまで苦労することなくできていましたね」
●それをカブトムシの幼虫が食べられるエサにする技術を開発されたっていうことなんですよね? どういう技術なんですか?
「カブトムシといえどもなんでも食べられるかというと、非常に難しいところがあって、カブトムシにとって毒性があったりとか、食べられない状態のものがあるんですね。我々食べさせる前にエサを一度発酵という過程を通すんです。
発酵というと、キムチとかを想像されるかもしれないですけれども、あれに近くて、大量に微生物が発生して、それによって熱が放出されて微生物が活発になるわけです。その活発になった微生物が、カブトムシの嫌がるものとかを食べてくれることがわかってきているんですね。
それで最終的には、ある程度熟成させた状態のものを与えると、カブトムシの成長がよりよくなるのがわかって、微生物の組み合わせだとか、カブトムシとの微生物の組み合わせを研究してきていますね」
カブトムシを品種改良!?
※TOMUSHIのもうひとつの特徴として、カブトムシを品種改良したそうですが、どんなカブトムシになったんですか?
「当初、カブトムシを品種改良しようとしたのは・・・いちばん最初、有機廃棄物を食べることがわかった時に、これはもしかしたら、 有機廃棄物をカブトムシが食べるということは、これがタンパク源になるんじゃないかと・・・。そうするとゴミがタンパク質になるんだったら、世界中の食料危機を救えるんじゃないかというのがきっかけですね。
そこの食料の部分に対して、カブトムシを品種改良というか生産効率を考えていた時に、一年でワンサイクルしかしないと、どうしても採れる量が少ないというところで、これの成長速度が速くならないかというのが最初のきっかけです。
いろいろ(カブトムシの)サンプリングをして調べていくと、地域によって成長速度が違ったんですね。簡単にいうと、寒い地域のカブトムシほど成長速度が速かったんです。これは冬眠があるから速いんですね。
冬眠がある期間は成長できないので、早く成長してしまってから冬眠をするという習性があって、この習性を利用できないかっていうので、それとゴミを食べることに特化したカブトムシを掛け合わせて品種改良を行なっていったんです。成長速度が速くて、なおかつゴミを食べられるカブトムシが誕生してきたというそういう背景がありますね」
●もともとのカブトムシ、つまり親はどこから持ってきたんですか?
「あ、これは日本各地のカブトムシを採取してきて、その子孫をとって、成長速度がどのぐらいなのかとか、どれだけ差があるのかとか、そういったものを測定してその中から選抜をして、これとこれを掛け合わせようっていうので、掛け合わせて残してきていますね」
●カブトムシ好きですから、そういう作業も楽しそうですね!
「楽しいですね! もうたまらないんですよ! 趣味の延長線みたいなもんですよね、もうこれは!」
●例えば、外国産のカブトムシが逃げ出して、日本のカブトムシと交雑するとか、自然界に影響を与えるというような心配事はないんですか?
「これは、非常によく聞かれる質問なんですね。基本的にこれも意外と知られてないんですけれども、外国産のカブトムシはそもそも日本の屋外で生活ができるかというと、ほとんどの種類は難しいんです。一部生活できる種類もいるんですけれども、そういったものは特定外来生物みたいなものになっていて、飼育することがそもそも禁止されていたりとか、そういうふうになっています。
ヘラクレスオオカブトとか、よく耳にするようなカブトムシは外に出てしまうと、おそらくすぐ鳥に食べられて死んでしまうんですね。万が一生き残ったとしても、冬が来てしまうとその段階で死んでしまいます。
そもそも種類的にいうと、日本のカブトムシと交雑してしまう可能性はないですね、全くないです。 一部の中国のカブトムシとかは可能性があるかもしれないですけれども、ほとんどのカブトムシは、まずそれは可能性としてはないものになります」
収益の3つの柱
※素朴な疑問なんですが、TOMUSHIはどうやって収益をあげているのか・・・カブトムシを販売しているんだろうな〜という想像をつくんですけど、どうなんでしょう?
「我々の収益の柱は大きく3つあるんですね。まずひとつめが単純にプラントとしての販売。カブトムシを育てて、ゴミを処理しながら育てるというゴミ処理機能をセットにしたような形のプラント、これを販売することがまずひとつ」
●廃棄物処理のプラント!?
「そういうことです。それを販売することがまずひとつで、もうひとつが単純にペットとしての販売の売り上げですね。そのプラントから育ってきたカブトムシを我々がすべて買い上げて販売をするんですけれども、ここでの販売の売り上げがもうひとつの大きいところですね。
もうひとつはイベント事業ですね。廃棄物を食べて育ったカブトムシは、結局高くてなかなか子供たちには手が届かないので、子供たちにも触れ合う機会を提供したいということで、夏の1か月間、夏休みに合わせてイベントをやっているんですね。昆虫展みたいなものです。
ただの昆虫展ではなくて学べる昆虫展っていうので、SDGsについてカブトムシを通して触れ合いながら学ぶというような、そういう事業をやっているんです。これもものすごくたくさんのかたがたにご来場をいただいて、売り上げの柱のひとつになっていますね」
●プラントの販売っていうのは、具体的にどういうことなんでしょうか? プラントそのものを提供する? それともノウハウを提供する? どういう感じなんでしょうか?
「はい、ありがとうございます。これはどちらもありますね。 プラントそのものももちろん提供するんですけれども、それだけでは運営できないので、そこのノウハウだとか、まさに入口から出口のところまで、ノウハウをすべて提供しながら運営をしていますね」
●現在全国で何か所ぐらいTOMUSHIが手がけたプラントが稼働しているんですか?
「全国で北は北海道から、南は沖縄まで大体30か所ぐらい、各地にあります」
●どのくらいの量の有機廃棄物を処理できるんですか?
「全体の量でいくと大体2000トン程度の量を年間処理していますね。個別にいうと年間10トンのものから、1か所で数百トン処理をしているような、規模の違いはそのぐらいありますね」
(編集部注)カブトムシを飼育しているかたは特に、いくらで販売しているのか、気になりますよね。石田さんによると、数千円から高いものでは数十万円もする貴重な外国産のカブトムシもいるそうですが、平均すると1万円前後での販売だそうです。詳しくはTOMUSHIの、外国産を多く扱っているECサイト「昆虫専門店ビーラボ」をご覧ください。
☆昆虫専門店ビーラボ: https://kabuto-mushi.com
カブトムシの魅力を世界に発信!
(編集部注)先ほど、カブトムシを品種改良したというお話がありましたが、石田さんによると、品種改良は研究の段階で、日本のカブトムシを中心に一部、外国産も含め、いろいろな種をかけあわせたそうです。
いまプラント販売で、メインで提供しているのは日本産のカブトムシだそうですが、エサにする有機廃棄物によって、使い分けているので、プラントを販売する際は、先に有機廃棄物のサンプルをもらって、どのタイプのカブトムシが適応するか、試験をして提供しているとのことです。
※世界の人口増加により、食糧不足が懸念されるなか、昆虫食に期待する声も高まっていると思うんですけど、カブトムシの場合、成虫よりも幼虫がタンパク源として活用できるような気がするんですけど、どうなんでしょう?
「タンパク質としては、どちらも近しいような数値にはなると思うんですけれども、生産の効率を考えると幼虫のほうがいいと思っていますね。昆虫食というところでいくと、原料として考えるとやっぱり効率を求められてしまうので、成虫まで育てるよりも幼虫で出荷をしたほうが、生産期間というか製造期間が短くなるので、幼虫のほうが効率がいいっていうことがありますね。
あと、昆虫食に関していうと、これはよく笑われてしまうんですけれども、カブトムシは甲殻類にあたるんですね。僕は甲殻類アレルギーがあってカブトムシもアレルギーで食べられないっていう、なんていうんですかね・・・共食いしないように生まれてきたんですかね(笑)」
●(笑)なるほどそうなんですね!
「そうなんですよね~」
●カブトムシをペットとして飼育する、文化みたいなものは海外にもあるんですか?
「海外にもあるにはあるんですけれども、日本ほどメジャーなものではないですね。日本だと男性のかただと、ほとんど一度は(カブトムシを)飼育したことがあると思うんですけれども、このレベルで飼育する国は世界各国見ても、おそらく日本だけだと思いますね」
●今後、有機廃棄物をカブトムシの力で資源化して、世界の食料不足に貢献するために世界に打って出ようみたいな、そういうお気持ちもあるんですか?
「もちろんです。資源を解決したいっていうよりも、より根本にあるのは・・・我々カブトムシ好きとして創業した当初、カブトムシってペットだけでしょ! って言われて、非常に悔しい思いをしてきているんです。それがようやく、原料としての可能性とか医薬品に使えそうだとか、様々なことがわかってきて、カブトムシはツノが生えてかっこいいだけじゃなくて、これだけ世の中に貢献ができるんだと・・・それが日本国内では、いろんなメディアにも出させていただいただいたおかげで、広く伝わってきて、”頑張ってるね”ってよく言っていただけるんですね。
インドの現地に行って、僕がいつも通り、いろいろカブトムシについて魅力を、ここが素晴らしいんですよ! っていうのを伝えたんですけれども、彼らからすると、ほかの虫と変わらないというか、なんかまあ多くいると言ったらゴキブリとか、そういうのとカブトムシは一緒だよねという、そういう扱いなわけですよ。僕もそれを言われた時に、いやいやこれだけすごいし、ツノも生えているんだと! いうのを話すんですけど、”そんなの知らないぞ”って言われてしまうんですね。
なので、僕らとしては全世界に対して、カブトムシはこれだけ環境にも貢献できて、循環型で資源を循環させられる役割があると、これだけでもものすごく魅力があることだし、それにこれだけのツノがついて立派でしょ! っていうのを全世界に広めていきたいという根本の気持ちとしてはまずあるんですね。そのために、より実際に事業として全世界に向けて提供していきたいという思いがありますね」
日本の文化が作ってくれたビジネス・モデル
※国内での新たな展開はありますか?
「国内のところでいくと、やっぱり先端分野ではカブトムシの、それこそ幼虫の粉末にしたものを原料として、例えば水産飼料とか畜産飼料とか、外国からの輸入に頼っている部分を国産のカブトムシが担えないかというところで、実際に研究だったり実証実験というのが今進められていますね」
●このTOMUSHIのビジネス・モデルはもうオンリーワンですよね?
「そうですね。これもあんまり知られてないんですけど、我々がこうやって事業をやれているのは、本当に日本にこの文化があったおかげですね。
我々はほぼすべての、全世界のカブトムシ、クワガタを入手することができて、それで品種改良することができるんですね。これは、ほかの国にはない日本の文化が作ってくれた、本当に日本が誇るべき財産ですよね。これのおかげで日本から我々みたいなカブトムシ・ベンチャーが出ていますけれども、ほかの国でこれができるかっていうと難しいですね」
●大好きなカブトムシをビジネスにした今、どんなお気持ちでいらっしゃいますか?
「もともと僕は、朝起きるのがすごく苦手で目が覚めなかったんですけれども、今の事業をやるようになってからは、やっぱり好きなことなんで、なんていうんでしょう・・・ワクワクして目が覚めるという、これが個人的にいちばん大きな違いですね。
これは本当に一緒に働く仲間も近いと思うんですけれども、ただのビジネスではなくて、自分の好きなことであって、とにかく楽しく仕事ができるっていうのは、僕にとっては天職だと思いますね、これは!」
●すごくカブトムシへの愛が伝わってきました。では最後にカブトムシを見ていて、どんなことを感じますか?
「そうですね~”カブトムシの魅力はなんですか?”って、よく聞かれるんですけれども、分からないんですよ。逆に僕らからすると、生まれて物心ついた頃からずっと好きなので、なぜカブトムシがかっこよくて、なぜ魅力的なのかわからないんですよ。
逆にみんなそう思っているんじゃないの? と思っているんですけど(笑)、非常に表現が難しいですね。とにかく何か謎の魅力があるんですよ、カブトムシっていうのは・・・見ていてもずっと飽きないというか、フィギュアが動いているようなそんな感覚ですよね」
INFORMATION
TOMUSHIの事業にぜひご注目ください。プラントやペットしての販売、そして子供たち向けのイベントのほかに、昆虫専門の情報サイト「ムシペディア」なども運営。ECサイト「昆虫専門店ビーラボ」では、へラクレスオオカブトなど外国産のカブトムシを多く扱っています。事業内容や販売について、詳しくはTOMUSHIのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎TOMUSHI:https://tomushi.com
◎昆虫専門店ビーラボ:https://kabuto-mushi.com
2024/1/21 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第18弾! 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「住み続けられるまちづくりを」「質の高い教育をみんなに」「貧困をなくそう」そして「つくる責任 つかう責任」に関係する事例をご紹介します。
今回は業態の異なる、ふたつの会社の取り組みをクローズアップ! 前半はウエブメディアを運営するメディア・カンパニー「ハーチ株式会社」。そして後半は、アップサイクル・ブランドを展開する「ココロインターナショナル株式会社」の、それぞれの事業について、ご担当のかたにお話をうかがいながら、社会や環境に対する思いに迫ります。
まず、お話をうかがうのは、メディア・カンパニー「ハーチ」の「室井梨那(むろい・りな)」さんです。
2015年、創業の「ハーチ」はウエブメディア事業を展開している会社で、スローガンは「パブリッシング・ア・ベター・フューチャー」=「よりよい未来をみんなに届ける」、ということで、サステナビリティ、サーキュラー・エコノミー、教育など幅広い分野でウエブメディアを企画・運営しています。
社名の「ハーチ」は、「ハート」と「アーチ」を組み合わせた造語で、人の心と心をつなぐ 架け橋になりたいという思いが込められているそうです。
☆写真協力:ハーチ株式会社
サステナブルでユニーク!?
●「ハーチ」が運営しているウエブメディアの中から、まずは「IDEAS FOR GOOD」について。これはどんなコンセプトのメディアなんでしょうか?
「コンセプトとしては、社会をもっとよりよくするっていうのが、テーマになっています。例えば、気候変動ですとか海洋プラスチックの問題みたいな、総称して社会課題と呼ばれるようなものを解決するための、ユニークなアイデアを紹介するウエブマガジンになっています」
●拝見させていただいたんですけれども、アートとかファッションとかフード、建築とか、いろんなジャンルに分かれているんですね。具体的にどんな記事があるのか教えていただけますか?
「私たちは、ユニークに解決するアイデアっていうところをすごく大事にしているんですね。例えば、先ほど海洋プラスチックの問題に触れたんですけど、河川の汚れをきれいにしたいってなった時に、ただゴミを拾いましょう、ではなくて、オンラインゲームの仕組みと合わせて、遠隔で河川の汚れを掃除できるロボットをゲーム感覚で操作して、川をきれいにできるシステムとか。
使い捨てのビニール袋が有料になって、マイバッグを持ちましょうねって世界的になっていると思うんですけど、それもあえてお店で配るビニール袋をすごくダサいデザインにして、そうしたらみんな持ちたくないから、自分の家からかっこいい好きなマイバッグを持ってくるようになるんですよねっていう、ちょっとデザインと掛け合わせているとか、そういう形でワクワクだったりとか、楽しいって気持ちになるようなアイデアをいろいろ紹介しています」
●では、続いて「Livhub(リブハブ)」というものもありました。こちらもウエブマガジンですか?
「はい、“サステナブルな旅”をテーマに情報発信していて、“トラベル・ライフスタイル・マガジン”と呼んでいるんです。どうしたら自分の旅が、よりサステナブルになるかとか、あとそもそもサステナブルな旅ってなんだろう、みたいなものを問いかけて一緒に考えていくような、そういうメディアになっています」
●旅情報を発信するウエブマガジンっていうことになるんでしょうか?
「そうですね。大きく言うと旅情報の発信にはなるんですけれど、Livhubの編集部員は旅を通して、人と自然の関係とか、人同士の関係とか、自分と自分自身との関係、そういったいろんなものとの関係が、バラバラになってしまっているものがつなぎ直される、そういう力が旅にはあると信じて、ウエブメディアを運営しているメンバーなので、世界がよりそういう方向に向かっていくために、旅は何ができるかっていう、そういうことを発信しています」
●具体的にはどのような記事があるんですか?
「いちばんわかりやすいところで言うと、例えばホテルで、コンポストを導入しているホテルはこんなところがありますよっていう紹介とか、サステナブルに旅するためにどうしたらCO2をより少なくできるかとか、そういう具体的な方法を説明している記事もあります。
あと文化的なところに触れて、編集部員が世界各地を旅して、感じたこと、触れたことをコラム的にご紹介しているものとか、あとはサステナブルな活動をしている、例えばホテルとか、実際にサステナブル・トラベルを自分で体現しているかたに取材をして、インタビュー記事を載せたりとかもしています」
(編集部注:紹介する情報は、世界各地にいるスタッフが集めて、それを日本語に翻訳して発信しているそうです)
Circular Yokohama〜横浜を循環型に
※続いて、「Circular Yokohama」について教えてください。
「これは“サーキュラー”と“横浜”、ふたつの言葉がついている通りなんです。サーキュラーは日本語で言うと循環ですね。横浜は神奈川県横浜市の横浜で、横浜という町をより循環型にしていくためのプラットフォームになっています」
●室井さんはこの「Circular Yokohama」を担当されていらっしゃるんですよね。どんなプラットフォームなんですか?
「プラットホームっていうと、結構わかりづらいなと思っているんですけど、テーマが『プレイフル・サーキュラリティ、循環を遊ぼう』っていうふうに言っています。サーキュラーとか循環、最近だとサーキュラー・エコノミー、循環経済とかってニュースでよく聞くと思うんですね。
エコノミーって言葉を聞いた時に、みなさん何を思い浮かべますか? って言うと、どうしても固いイメージとかで、自分の生活に結びついている感覚があるかたは少ないと思うんですね。でも、循環とかサーキュラーって、本当はもっと楽しくかっこよく体験できるものなんだよ! っていうのを訴求したくて、このプラットホームを運営しています」
●どんなことに取り組んでいらっしゃるんですか?
「ウエブの会社なので、ウエブメディアは作っていて、先ほどご紹介したようなほかのメディアと同じように、インタビュー記事とか横浜市内のサーキュラーな情報発信ももちろんしているんですけど、会社の中ですごくユニークなのが、Circular Yokohamaは実際に活動拠点を横浜市内に持っているんですね。
なのでウエブ、いわゆるインターネット上の活動だけじゃなくて、実際に市民のかたがたにサーキュラーなものを見ていただいたり、触れていただいたり、そういう展示会をやったりとか、あとはものづくりするイベントを開催したりとか、顔の見える関係性を保って活動しています」
(編集部注:「Circular Yokohama」では「めぐる星天(ほしてん)」というイベントで、新しく英会話カフェが始まったそうです。興味のあるかたはぜひ、ハーチのサイトをご覧ください。https://circular.yokohama/2023/12/11/englishcafe_circularoctober/)
3つのP〜 PEOPLE. PLANET. PROSPERITY
※「ハーチ」はメディア・カンパニーとして大切にしているテーマがあるそうですね。
「私たち3つのPを大事にしています。それが「PEOPLE(ピープル)PLANET(プラネット)PROSPERITY(プロスペリティ)」の3つですね。日本語で言うと、「人・環境・繁栄」の3つを大事にしています」
●具体的にそれぞれ簡潔に教えていただけますか?
「はい、まずPEOPLE、人っていうのは、やっぱり人がつながり合うことで、個人としての幸せ、あとは組織社会全体としての幸せだったり、その幸せがあるから社会全体、地球全体が持続可能性になるよね、持続可能サステナブルだよねっていうところで、まず人を軸にすごく大事にしています。
その上でやっぱりPLANET、つまり環境とかこの地球上っていうもの・・・人間というと、どうしても人間と自然って別のものみたいに考えがちなんですけど、私たち人間もこの自然の循環の一部だよねっていうことです。
私たちが活動するってことは、まさに自然が循環していくってことなので、自分たちが活動することで生態系とか、地球の循環全体をプラスにしていきたいよねっていうような思いで、PLANETがふたつ目に置かれています。
最後にPROSPERITYってちょっと難しいんですけど、繁栄っていう意味で、人が幸せで、それによって地球も持続可能になって、そうすることで人と自然は分断を起こさずに、お互いがつながり合った状態で持続可能に繁栄できる、つながり合って栄えるよね! っていうことで、最後にPROSPERITYを大事にしています」
●番組としては「PLANET」に関して、どんな活動をされているかをお聞きしたいんですけれども、具体的にご説明いただけますか?
「メディアとしては情報発信を通して、今ご紹介したように、自然と人を切り離すんじゃなくて、あくまで人は自然の、生態系の一部だよねっていうところを軸にして情報発信をしているんですね。それによってどうしたらサステナブルになるかっていうのは、私たちのメディア全体としてのテーマにあります。
実際の行動として、私たち、どんなことしているんですか? っていうところに関しては、オフィスで出てしまうゴミを減らすために、コンポストをもちろん置いていますし、あと捨てるゴミも毎回計量しています。どのぐらいゴミが出てしまっているかを、重さを測って、みんなで改善できるところしていくっていうこともしています。
あと仕組みとして、私たちのメディアに訪れてくださったかたの人数、PVプレビューの数なんですけど、その数、人が訪れるごとに1円とカウントして、毎年訪れてくださったかたの人数分×1円を、社会とか環境に対して働きかける活動をしているかたがたに寄付をしたりとか、そういった形で実際に我々も何か行動を起こす、発信するだけじゃなくてっていうことを意識しています」
●そうなんですね! ゴミを計るっていうのもいいですね。
「実際にやってみると、思ったよりゴミが多かったりとか、あと(ゴミを)計るために一回全部、ゴミ箱に入ったものを出して広げたりするんですね。思いのほかプラスチックが多いねとか、逆にあれ? なんでこんなものが捨てられているんだろうってものが出てきたりだとか・・・ただ計るだけと思うんですけど、侮るなかれで、結構いろんな気づきがあります」
後半はアップサイクル ・ブランド「Coco&K.」を展開されている「ココロインターナショナル」の代表「井上伸子」さんにご登場いいただきます。
「Coco&K.」は、井上さんが2006年に立ち上げたブランドで、製造の拠点はフィリピンにあります。原材料は、捨てられたジュースのアルミパッケージで、それをアップサイクルして、カラフルで可愛いバッグやポーチ、財布などに生まれ変わらせています。井上さん曰く「作る人、使う人、そして子供たちに笑顔と幸せを運ぶ」ハッピーなプロジェクトのブランドだそうです。
☆写真協力:ココロインターナショナル
フィリピンで運命の出会い!?
※そもそもなんですが、フィリピンに行ったのは、どうしてなんですか?
「もともとアジアンテイストの雑貨が好きで、アジア版ソニープラザみたいなのをやりたいなっていう夢が漠然とありました。日本の展示会にも行っていたんですが、フィリピンでも面白い展示会があるよっていうことを聞いて行ったのが、運命の始まりでしたね」
●フィリピンのどのあたりに行かれたんですか?
「フィリピンのマニラの市内で展示会はあったんですね。マニラには初めて行ったんですが、マニラに着いた時、すごくショックを受けたんですね。道路を歩きますとボロボロの服だったり、靴を履いていない子供たち、あと物乞いをしている子供たち、そんな子にたくさん出会ったんですね。
私も当時同じぐらいの子供がいたので、ものすごくショックで、フィリピンっていう国のことは少しは想像していたんですけれども、本当に想像をはるかに超えていて、ショックで悲しくなってしまって・・・。
そんな気持ちのまま、翌日、展示会に行って、そこでこのカラフルなバッグと出会って、一目惚れして、話を聞いてみたら、これは廃材を使って作っている、あと女性の雇用、女性のためになるもの、あと子供たちのためになる活動をしている、そんな話を聞いて、すごく感動したんですね。その時にこれだ! これを日本に連れて帰りたい! って思ってしまったんです」
※井上さんがマニラの展示会で一目惚れしたカラフルなバッグは「キルス・ファウンデーション」という地元のNGOが作ったものだったんです。団体名にある「キルス」には、どんな意味があるんですか?
「キルスっていうのは、KILUSって書くんですが、これはフィリピンのタガログ語で、それぞれの頭文字の意味が込められていて、『愛国心・ひとりひとり・目的・発展・ふるさと』というタガログ語の頭文字を取って付けられているんですね。
自分たちの住む街を世界一美しく緑あふれる街にしようっていう、そんな合言葉で生まれたボランティア団体でした。当時は川の汚れで悪臭もひどくて、そんなことで地区長さんが立ち上げたのがこのボランティア団体だったんですね。
川のゴミを拾って街をきれいにしようということを呼びかけて、それと同時にやっぱり子供たちを学校に行かせる必要性があるよっていうことも呼びかけて、それだけじゃなくて、女性の収入になるためにっていうことで、自宅の脇に小さな工場を建てて、リサイクルバッグを作り始めたっていうのがジュースバッグの始まりでしたね」
(編集部注:マニラの展示会で一目惚れした井上さんは、その場で200個注文したそうなんですが、当時「キルス・ファウンデーション」は小さな団体で、連絡方法もファクスしかなく、注文したものが届かないとか、やっときた商品もサイズがバラバラで汚れていたりなど、日本の市場で販売できるような状態ではなかったそうです。
そこで井上さんは、現地の工場に何度も足を運んで、働いている女性たちにメジャーの使い方を教え、何度もやり直してもらって、やっと商品づくりと仕入れを軌道に乗せることができたそうです。
現在は、廃棄されたアルミのジュースパックの回収、洗浄など、生産工程がしっかり組まれているとのことですが、実は商品づくりは全部手作業なんです。工場では50人ほどが働き、自宅で作業する女性たちを含めるとトータルで200人くらいのかたがバッグやポーチなどを作る仕事についているとのこと。
また「キルス・ファウンデーション」の地道な活動が功を奏し、川も街もきれいになり、工場で働く女性の子供たちは学校に通えるようになっているそうです。「キルス・ファウンデーション」は未来のために子供の教育にも熱心に取り組んでいるとのことです)
丁寧に愛を込めて、使う人も幸せに
※井上さんが現地のスタッフのかたがたを見ていて、いちばん感じることはどんなことですか?
「みんな(私が)行くとすごく笑顔で迎えてくれて、お仕事も楽しそうにしていますね。この仕事にみんな誇りを感じているし、今ではもう私が及ばないぐらい上手に作ってくれる、みなさん素晴らしい技術者になっています。
丁寧に大切に愛を込めて作ってくれているのが感じられるので、だからこのバッグは、使う人も幸せにしてくれているなっていうことをすごく感じます。使っている人から、これを使うと本当に元気になれるよとか、明るい気持ちになるって言ってくださるんですよ。みんなにプレゼントしたくなるわって言って、プレゼントされた人がまた大好きになって、どんどんご縁がつながっていく感じが素晴らしいなって感じています」
●日本でもエシカルっていう考え方がどんどん広まってきていると思うんですけれども、今後特に取り組んでいきたいことってありますか?
「そうですね・・・エシカルとかサステナブルとか、難しいことはわからないですけれども、やっぱりこの活動を長く続けていくことがいちばん大切だなと・・・。一時の流行り廃りで終わらせたくないっていうことはずっと思っていて、長く続けることですね。
あと、若いかたの意識がエシカルとか、昔の私たちよりずっとずっと素晴らしくなっているので、逆に教えてもらいたいこともたくさんあります。このアップサイクルのバッグも、もっともっと可能性があると思っていて、若いかたの力を借りてデザインの面でも、デザインを勉強しているかたのアイデアをお借りしたり、もっともっと新しいものが作り出せたらいいなと思っています」
●最後に今いちばん伝えたいことを教えてください。
「今いちばんは、やはりこのCoco&K.のバッグを日本中のみなさんに使ってもらいたい、手に取ってほしいということですね。まずは可愛いと思ってもらって、それから作られている背景や、環境問題、雇用問題、教育問題にも貢献できるかな、なんてことにも目を向けてもらえたら嬉しいですね。
あとは最後に、私自身もこのバッグのおかげでたくさん素晴らしいご縁をいただいてきました。ハーチさん始め多くの人が支えてくださって、そして長く続けてくることができました。このバッグとこれを始めてくれた『キルス・ファウンデーション』のエルサさんと、キルスのメンバーのみんなに感謝の気持ちを伝えたいです」
INFORMATION
メディア・カンパニー「ハーチ」はきょうご紹介した以外にもユニークなメディアを展開しています。ぜひオフィシャルサイトにアクセスして、体感していただければと思います。
◎ハーチ :https://harch.jp
「ココロインターナショナル」のアップサイクル・ブランド「Coco&K.」では、カラフルで可愛いバッグやポーチなどを販売しています。ほんと気分が上がるし、オフィシャルサイトを見ていると、誰かにプレゼントしたくなるようなアイテムがたくさんあります。ぜひご覧ください。商品は、オンライン・ショップで購入できますよ。
◎Coco&K. :https://www.coco-k.jp
◎Coco&K. オンライン・ショップ:https://www.coco-k.jp/onlineshop/
2023/12/10 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第17弾!今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から、おもに「つくる責任 つかう責任」そして「産業と技術革新の基盤をつくろう」について考える事案をご紹介します。
お話をうかがうのは、100%食品廃棄物から作る新素材を開発し、注目を集めているベンチャー企業「fabula(ファーブラ)」株式会社の代表取締役CEO「町田紘太(まちだ・こうた)」さんです。
町田さんは、お父さんの仕事の関係で小学生の3年間をオランダで過ごし、学校の授業で地球温暖化を研究・発表することがあって、それがきっかけで、環境問題に興味を持つようになったそうです。趣味は海外旅行で、これまでに60カ国以上を訪れているほどの旅好き。
そして東京大学に進学し、卒業研究で食品廃棄物から新素材を作る技術を開発。2021年に幼馴染みの3人で「あらゆるゴミの価値化」を目指し、「fabula」株式会社を設立されています。
町田さんが開発した技術を使えば、捨てられてしまう食材がお皿などの小物から建築用の資材などに生まれ変わるんです。今回は、東京大学生産技術研究所・駒場リサーチキャンパスに町田さんを訪ね、お話をうかがってきました。今回は、食品廃棄物を原料に作る新素材の可能性に迫ります。
☆写真協力:fabula Inc.
fabulaはラテン語で「物語」
※「fabula」のオフィシャルサイトのトップに「ゴミから感動をつくる」というフレーズが載っています。改めて「fabula」ではどんな事業を行なっているのか、ご説明いただきました。
「ひとことでいうと、食品廃棄物から新しい素材だったり、製品を作っているような会社です。もともとは東大の研究室から生まれたというか、私が研究室にいた時に開発したその素材を、実装化するために作った会社で、技術のおおもとは大学で作られています」
●創業は2021年ということですけれども、社名になっている「fabula」には、どんな思いが込められているんですか?
「この言葉自体はラテン語なんですけど、日本語に訳すと、物語とかそんな感じの意味があります。食品廃棄物から、ゴミから、新しい製品とかプロダクトに変えるにあたって、普通の産業で行なわれているようなストーリー性があったりとか、背景に思いのある物作りをしたいなと思って、こういう社名にしています」
●改めて、この会社を起業されたのは、どうしてなんですか?
「シンプルにいうと、面白そうだったからというのがありますけど(笑)」
●面白そうだという理由で起業するって、すごいことですね。
「そうですね。普通にやってみようと思ったのと、ある意味、失敗してもいいんじゃないかなっていうような、わりかし楽観的な気持ちもあった気がしますね」
●そもそもすごくさかのぼって、この分野を研究しようと思ったきっかけは、何だったんですか?
「もともと(私が)いた研究室自体がコンクリートに関する研究室で、コンクリートってものすごく環境負荷が高い素材なんですけど、環境負荷の高いコンクリートをリサイクルしたりとか、コンクリートに代わる素材を作る、そういう研究室にいたんです。
で、そこに入った時に私の指導教官の酒井先生が、それにまつわる研究をずっとやっていて、その中で先生としては、食べられるコンクリートがあったら面白いんじゃないかって、ちょっとファンシーな思いがあったりとか・・・。
僕自身もともと環境問題を含め、社会課題に対してすぐ取り組める研究があったほうがいいなって思っていたのもあって、その辺が合わさって、食品から何か作ろうかなみたいな話になっています」
●この「fabula」は幼馴染みの3人で作られた会社ということですけれども、ほかのメンバーおふたりも同じ思いでいらっしゃるということですよね。
「だと信じていますけど(笑)」
●お誘いしたのは、やはり町田さんですか?
「そうですね、2年くらい前に・・・」
●おふたりも、やろうやろうっていう感じでしたか?
「そうですね。やっぱり素材自体に魅力を感じてくれて、ふたりが働いていたバックグラウンドだったりとか、興味があることとか、そういう中でもともと持っていた思いとかも合わさって、今一緒にやっているようなところです」
●町田さんが声をかけて、おふたりの思いはどんな感じだったんですか?
「松田と大石というふたりなんですけど、松田はもともとコーヒーを輸入する商社に勤めていたんですね。そういう中で、コーヒーってまさしく抽出かすだったりとか、いろんな廃棄物が出て、それは消費する日本でもそうですし、生産するブラジルとか中南米とか、そういうところでも実際にいろんな廃棄物が出ています。
そういうものに対しての課題感をずっと持っていて、そういう課題の解決にもつながるし、この素材の特徴も見て、これは何でもできるって、彼は言っていて、そこがたぶん思いとしてあったのかなと思うのと・・・。
大石はもともと感性工学と言って、音とか光とか、感性的な情報が人の行動にどういう影響を与えるかっていうような研究をしていました。そういう中でこういうちょっと香りがする素材で、人々の行動がどう変わるのかなとか、お皿に見えるけど、香りがしたりとかすることで違う影響とか、カレーの匂いを嗅いだらカレーを食べちゃう、みたいなことに近いかもしれないですけど、そういうようなことを素材を通じてやりたいというふうに言っています」
技術はシンプル、「たこ煎餅」と同じ!?
※ここからは「fabula」が作っている新素材について、具体的にお話をうかがっていきます。まずは、食品廃棄物を新素材にする技術について、なんですが、明かせる範囲内で構わないので、どんな技術なのか教えてください。
「技術自体はとってもシンプルです。例えば、白菜とか野菜のクズみたいなやつを乾燥させて粉末にして、それを熱圧縮成型というような方法で素材化します。乾燥と粉砕までは本当に野菜の粉を作るみたいな感覚に近いので、そこから熱圧縮成型っていう・・・漢字5文字が並ぶと怖いですけど(笑)、簡単にいうと熱と圧力でギュッと潰しているような技術ですね。江ノ島のたこ煎餅とか、ああいうものを工業的にやっているような感覚です」
●その技術ってどうやって開発されたんですか?
「熱圧縮成型っていう技術自体は、かなりトラディショナルなというか古典的な技術です。プラスチックでもずっと使われてきていたりとか、身近なものだとベニヤ板みたいな、ああいう木材の合板でも使われてきた技術で、それを食品のくずというか、こういうものに転用してみたっていうところが新しいポイントなのかなと思います」
●開発までの道のりって、どんな感じだったんですか?
「基本的には一個一個条件を潰していくというか、温度とか時間とか圧力とか、粉の状態とか、綺麗に作るための条件なんですけど、それをいろいろ、何度だったらいいかなとか、これぐらい圧力をかけたらいいかなっていうのを、トライ&エラーで繰り返していった感じです」
●新素材になるまで、どれぐらいの日数がかかるんですか?
「基本的にプレスをする時間は、数分とかそのレベルです。あとは乾燥で結構時間がかかるものなので、 1日かかるのか、機械によっても違いますけど、本当に早ければ、すぐできるくらいです」
脱脂粉乳!? コーヒーかす!?
※開発した技術で作った新素材をもとに、これまでにどんな製品を作ったんですか?
「当初はコースターとか、ちょっとした小物入れとか、雑貨類を作っていたりとか・・・。最近だとお香立てとかも、アーティストさんとコラボして作ったりとかしているんですけど、もともとコンクリートから出発しているのもあって、建材もちょこちょこやっています。
例えば、建築の展示会用に茶室を作る機会があったんですけど、その設計会社さんに、茶室なので、お茶でできた建材みたいなものを少し提供したりとか、今度の(大阪)万博でも使用していただく予定があったりとか、そういうような感じですね」
●今回、コースターと小皿、あと小物入れ、深いお皿も用意していただきました。これが本当に食品廃棄物だったんですね。
「そうですね、もともとは」
●ちょっと触ってみてもいいですか。ツルツルで、見た目もおしゃれですし、これが廃棄物だったとは全く思えないんですけど、え〜〜すごいですね! これはもともとなんだったんですか?
「このちょっと深いお皿は、脱脂粉乳ですね」
●それがこんな立派な小物入れ、深いお皿になるんですね。この緑色のようなカーキのようなコースターは?
「緑茶です」
●緑茶なんですね! 香りとかはしないですよね?
「そうですね。コーティングがしてあるので、たぶん香りが抑えられていると思います」
●なるほど、なるほど・・・。
「もう一個のほうは、香りで判断できる気がしますけど・・・」
●これは、茶色の・・・なんでしょう?
「それはコーヒーですね」
●あっ、コーヒー、確かに! コーヒーがこの平皿になるんですね〜、コーヒーのかすで・・・。
「コーヒーの抽出かすですね」
●確かに濃い茶色と黒色でシックなお皿になっていますけれども、コーヒーのかすからできているんですね〜。この新素材を作るにあたって、いちばん苦心されたのってどんなことですか?
「本当にいろんな条件をいじっていくっていう、数打っていくっていうところですかね、やっぱり」
コンクリートより優れた強度
※「fabula」で開発した新素材の主な特徴を改めてご説明いただけますか。
「今まさしく嗅いでいただいたように香りがあったりとか、色味とかもともとの原料のイメージが残っていたりとか・・・。いわゆる廃棄物から作ったっていうと、イメージだとちょっとグレーで茶色くてとか、もしかしたらそういう感覚で、ちょっと臭い匂いがするかもしれないとか、そういうイメージとは結構逆側の、原料の特徴を活かしながら物作りをしているのがひとつと・・・。
あとは強度がそこそこあるよっていうのがあります。コンクリートと比べても強いものだと4倍ぐらいの、“曲げ強度”って言って曲げる力に対する強度があったりします」
●かなり強いですね!
「そうですね。プラスチックほどではないですけど、まあまあ強いかもしれないです」
●一度作った新素材をまた作り直すっていうこともできるんですか?
「はい、それは可能です。こういうお皿とかを回収して、もう一回、粉々にして作り直すことはできます 」
●先ほどご紹介いただいたコースターやお皿は、原材料が緑茶とかコーヒーとかですけれども、食品廃棄物がなんでも原材料になるわけではないですよね?
「基本的になんでも使えます」
●なんでも大丈夫なんですか?
「例えば、コンビニの廃棄物、いわゆる生ゴミみたいな、ああいうものでも大丈夫です」
● これまでどんなものを原材料にされてきたんですか?
「だいたい80種類か90種類ぐらいやってきていて、食品なので無限にありますけど、カニの殻とかそういうのもやったりとか・・・。脱脂粉乳みたいなちょっと動物性のものとかもやっていますし、なんかいろいろ(使っています)」
●いくつか組み合わせても大丈夫なんですか?
「合わせても大丈夫です。バジルとトマトとパスタを混ぜて、ジェノベーゼとか言ってふざけて作っていたりしました(笑)」
●すごいですね~。そういった食品廃棄物はどこから手に入れているんですか?
「食品加工の工場だったりとか、あとは飲食店、例えばコーヒーチェーンみたいなそういうところだったりとかから買い取っていますね」
価値あるものへ変えていく文化
※「fabula」で開発した新素材は、将来的には食べることも考えているそうですね。どういうことなのか、教えてください。
「食べられなくはないよっていうのが、僕らの伝えていることというか・・・。思い返すと食品だけで、もともとは食べられるものだけで作っているので、食べてもいいかもしれないっていうところはあるんです。
例えば、規格外野菜みたいな、形が悪いだけで美味しいですよっていう、そういうものから作ると、本当に食品から作っていることに近いので、食べたりもできるだろうし・・・。
もっとリアルなところで言うと、本当に最悪の場合、交通が分断して物が届かなくなったりとか、もしくは離島とか砂漠の真ん中なのか宇宙空間なのか、なかなか物流が難しいようなところとかで、最後に生きるために食べても悪くはないかなっていうところですね」
●今後、建築用の資材を作る予定はあるんですか?
「そうですね。基本的に将来的には建材を目指しているので、万博での使用だったり、そういうのを通じて、性能とか強度もそうですし、実際に使っていく事例を増やしていくのが今後かなと思います」
●町田さんが開発した技術を、今後世界でどんどん展開していく予定もあるんですか?
「海外に出ていくってことも考えてはいますね」
●具体的にどこにとか、技術の公開も考えていらっしゃいますか?
「そうですね。まだまだ海外での事例自体はないんですけど、問い合わせベースだと、非常に多いのはヨーロッパからの問い合わせと、また東南アジアからも結構問い合わせが来るので、きっとここら辺の感度が高いだろうというところに対して、アプローチしていこうかなと思います。
例えばですけど、特許の出願をしているので、特許出願をすると必然的に(技術は)公開されるものになるんですね。そういうものはもちろんありますし、技術自体を自分だけのものにするっていうよりは文化として、食品に限らずゴミって呼ばれているものを、新しい価値あるものに変えていく文化を作っていくことが、とても大事かなとは思っています。そういう意味ではいろんな人と協業していくことはとっても大事かなと思います」
INFORMATION
「fabula」で制作している小皿やコースター、タイルなどの商品は、受注生産になりますが、ECサイトから購入できます。100%天然素材なので、風合いが微妙に違う、どれも一点ものです。どんな商品なのか、価格はいくらなのか、ぜひ「fabula」のECサイトをチェックしてください。
◎「fabula」ECサイト:https://store.fabulajp.shop
◎「fabula」:https://fabulajp.com
ちなみに、現在、国立科学博物館で開催されている特別展「和食〜日本の自然、人々の知恵」のショップでも販売しているそうです。
2023/12/3 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第16弾! 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「働きがいも経済成長も」、そして「つくる責任 つかう責任」に関係する事案をご紹介します。
お話をうかがうのは、慶應大学 環境情報学部の3年生で、合同会社「Uzuri(ウズリ)」を立ち上げた「山岸 成(やまぎし・なる)さんです。
山岸さんはお父さんの仕事の関係で、小学生の3年間をケニアの首都ナイロビで過ごしています。実はこの経験が山岸さんのその後を大きく左右するんです。
ナイロビは、山岸さんいわく、ビルが立ち並ぶ都会ではあるものの、一歩踏み出すと、すぐ隣りに国立公園やサバンナが広がっていて、先日訪れた時も改めて、とてもいい国だと感じたそうです。
そして現在は大学でビジネスに関することを学びながら、会社経営にチャレンジ、さらに陸上競技の選手としても活躍されています。
きょうは、子供の頃に暮らしていたケニアのために、アフリカの海岸や路上に捨てられたビーチサンダルを、スマートフォンケースにアップサイクルするプロジェクトを進めている山岸さんに、起業した思いや、「Uzuri」という会社で進めている事業についてお話をうかがいます。
☆写真協力:Uzuri
スワヒリ語で「Uzuri」とは・・・
※まずは、山岸さんが立ち上げた「Uzuri」という会社では、どんな事業を行なっているのか、教えてください。
「私たちは、途上国のブランドや企業さん、その中でも特に社会貢献性の強い事業を行なっているところと、パートナーシップを締結させていただいて、そのパートナーと共同で日本市場に適用した商品を開発して、それを日本で売ります。
その時にそのブランドとか企業の既存の商品も一緒に販売して、我々が作ったコラボ商品を主軸にしながら、いろんな商品を販売し、彼らが掲げているミッションであったりとか、ブランドストーリーを一緒に広げていくような形の事業です。彼らの雇用状況の改善だったりとか、雇用機会の拡大にもつなげていけたらなという事業内容になっております」
●「Uzuri」を立ち上げたのは、いつ頃なんですか?
「立ち上げたのは本当に最近ですね、8月末とかに・・・」
●今年の、ですか?
「今年の8月です」
●そうなんですね~。おひとりで立ち上げたんですか?
「大学の友人と一緒に立ち上げました」
●じゃあ、今おふたりで「Uzuri」をやっていらっしゃるんですね?
「そうです」
●「Uzuri」という社名ですけど、独特の響きがありますよね? これはどんな意味があるんです?
「これはスワヒリ語です。ケニアの公用語は英語なんですけれど、スワヒリ語も広く使われていて、 “ビューティー”っていう意味です。日本語訳すると“美しい”であったりとか、“華やか”とか“いいこと“みたいな意味合いを持つんです。
先ほど説明した事業内容のところで、パートナーの掲げている“いいこと”、もちろん美しい商品もそうですし、彼らの行なっている活動も美しい、そんなものを広げる会社でありたいなっていうところで、この『Uzuri』っていう名前にしました」
●素敵な名前ですね! 起業されようと思ったのは、何かきっかけがあったんですか?
「きっかけは、大学で経営とかビジネスに関することをたくさん学んでいく中で、なんか自分ができること、ビジネスの視点で何かできることがあるんじゃないかなって思った時に、やっぱりアフリカで、僕が何かする形で、彼らに貢献できるのであればいいなという思いから始まりました。
あと最近の社会貢献性みたいなことの強まりで・・・でも、ただいいことだけしていてもいけないよなっていうところで、社会貢献性と利益の追求の両立みたいなことにチャレンジしてみたいなっていう思いが、大学で学んでいく中で出てきて、やってみよう!と思って立ち上げました」
スマホケースにアップサイクル!
※山岸さんが、現在タッグを組んでいるのは、ケニアで海岸をきれいにする活動を行なっているNPO「Ocean Sole(オーシャン・ソール)」。廃棄されたビーチサンダルをアップサイクルして、ゾウやシマウマなどの動物のオブジェを作っている団体です。
山岸さんはこの団体を、ナイロビで暮らしていた頃から知っていたので、最初に手掛ける事業は「Ocean Sole」と一緒にやっていきたいという強い思いがあったそうです。そして、パートナーシップを結んで開発したのがスマートフォンのケースです。
●きょうはそのサンプルをスタジオにお持ちいただきました! とってもカラフルですね~。
「そうなんですよ(笑)。これ、染色とかも一切していなくて、サンダルそのものの色でできています」
●なんかケニアっぽいって言ったら、あれですけど、ほんとにカラフルで・・・蛍光ピンクとかオレンジとかイエローグリーンも・・・様々な色が溢れていて、いいですね~!
「今ケニアっぽいっておっしゃったかと思うんですけど、アフリカっぽさもありつつ・・・ただなんだろう・・・手に取りづらさみたいなのは、ないデザインかなと思っていて・・・」
●ないです! 可愛い~、老若男女みんなが持てるような感覚ですよね!
「現地のアーティストが全部デザインして制作しているので、そこでもきちんと雇用機会になっています」
●なるほど! これ、しかも裏はコルクになっているんですね!
「はい、裏はコルクで、Ocean Soleのミッション自体が海洋汚染の解決を掲げていますので、プラスチックを使わずに制作したいなという思いで、100%リサイクルのコルクを使用して作っております」
●へえ~、このスマホケースはオリジナル商品っていうことですよね?
「オリジナル商品というよりかは、UzuriとOcean Soleのコラボ商品で、これからはいろんなところとコラボする形でやっていけたらなと思って、その1個目の商品がこのスマホケースになります」
●ボーダーだったり、ドットだったり、四角だったりって、いろんな柄がありますけど、これって唯一無二っていうことなんですか?
「はい! そうなんです。その時にあったサンダルの形とか、削れ具合とかを考慮して、最適なデザインを現地のデザイナーさんがチョイスして制作しているので、同じものは一生作れない、あなただけの1点ものってことになります」
●すごい! そうなんですね~、世界でひとつだけの!
「そう、そうなんです」
●お洒落です! そもそもなぜスマホケースにしようと思われたんですか?
「それがですね・・・いろいろ僕も考えた結果、このスマホケースになっていまして、普段(Ocean Soleは)動物のオブジェを作っているところなんですけど・・・」
●動物のオブジェも持ってきていただきました。可愛いですね! こちらもカラフルです!
「可愛い動物たちなんですけど、これを日本に広めようと思った時に、なかなか難しいハードルもあるんじゃないかなと思っています。まずは、輸送でかさばってしまうものなんですね。
今回は手のひらぐらいのサイズのオブジェをお持ちしたんですけど、ほかにも(人の)身長ぐらいのサイズのもあったりとかします。そういった商品は持ってくるとやっぱり大変ですし、環境負荷もかかってしまうっていうところで、もっとコンパクトで、みんなに使ってもらえるようなものがないかなってすごく考えていました。
その時に思いついたのがiPhone用ケースです。日本はiPhoneのシェア率がめちゃめちゃ高いっていうのもあって、iPhoneなら、いろんな人が手に取ってくれて、いろんな人が手に取ってくれれば、日常生活でいろんな人がこのカラフルなのを見て、“それ、綺麗だね”とか言ってくれるんじゃないかなと思って・・・そんな形で広がってくれればいいなという思いを込めてiPhoneケースにしました」
●これは絶対、友達が使っていたら「何それ、可愛い!」って言うと思いますよ!
「僕も今サンプルを使っているんですけど、本当に知らない人から、“そのスマホケース、可愛いね”ってカフェで言われたりとかもあって、そんな形で広がってくれたら嬉しいなって思っています」
(編集部注:iPhone用のケース、カラフルでとっても可愛いんです。裏の素材はコルクなので軽いし、衝撃吸収性に優れているのも特徴です。また、職人さんがひとつひとつ手作りしているので同じものがほかにない、つまり一点ものなのも魅力ですね。
販売に関しては、年内から始まる予定。またイベントなどでの販売も検討しているそうです。販売価格も含め、詳しくは以下のサイトを見てください)
◎Uzuri 公式オンラインショップ: https://uzuri-japan.square.site
子供たちを学校に行かせたい
※今年、ケニアに行ってきたそうですね。どんなことをされてきたんですか?
「9月に行ったのはOcean Soleと、これからどういう形で進めていくかっていうのを詳細に話すのと、今回お持ちしたサンプルを作成するために行ってきました。
工場とオフィスのあとは、サンダルの回収現場にも行って参加してきて、働く人々とコミュニケーションをしっかりとるところまでやってきました」
●具体的にどんな話し合いが行なわれたんですか?
「オフィスのほうでは“こんなデザインがいいよ!”とか、“もうちょっとこうしたほうがいいんじゃない!?“みたいなディスカッションをさせていただきましたね。
工場ではどんな感じで作っているのかを、細かくヒアリングさせていただいたんです。いちばん印象的だったのが・・・(サンダルの)回収現場にも行って、ちょっと都心部から離れて、海岸沿いに行ってきたんです。
いわゆるサプライチェーンの上流、いちばん上で働く人たちともコミュニケーションをとりたいっていう思いと、その現状も見たいっていう思いもあって、行ってきたんですけど、 そこでの出来事がすごく僕の中で印象的でしたね。
働く人たちがすごく幸せそうに働くんですよ。ゴミを拾う作業なんですけど、すごく幸せそうに、みんな楽しそうに拾うんです。
その人たちが最後に僕たちにメッセージをくれて、『私たちの子供は学校に行けていない。だから私たちのこの活動を、君たちが日本にぜひ広げてください。そして私たちの現状を一緒に伝えてほしい。それが世界に広がって、私たちの子供たちが学校に行けるようになる。子供たちには未来があるから、私たちは(子供たちを)学校に行かせてあげたいから、ぜひ伝えてほしい』というメッセージをいただいたんです。
それが僕の中ですごく印象的でした。それこそUzuriが大切にしている、パートナーのミッションとか背景をきちんと、多くの人に伝えることが必要なんだなっていうのをすごく実感した場面でした。
最初(作業現場に)行った時は幸せそうに、すごく楽しそうにやっていたんで、意外と経済的なところもあまり彼らの中では、ネックになってないのかなとも一瞬思っちゃったんですけど、やっぱりそんなことはないんだなということで、我々のできることをやっていきたいなって強く思いました」
●「Ocean Sole」は現地生産ということで、雇用にもつながっていますよね?
「はい、ケニアは雇用機会が少ないのが結構深刻な問題になっていて、職業訓練校もいろんなNPOや NGOがやっているんですけど、そこを卒業しても雇用機会がなくて、職に就けない現状があるので、雇用機会を作るのは非常に重要なことなのかなと思っています」
(編集部注:ケニアで、捨てられたビーチサンダルが目立つは、まだまだ経済的には豊かではないので、価格的に安いサンダルの需要が高く、また壊れやすいこともあるそうです。山岸さんが今年9月に「Ocean Sole」の活動を視察したときも、回収したサンダルが山積みになっていて、その量に驚いたそうですよ)
次の一手! 新しいパートナー!?
※会社として「Uzuri」が大切にしていることはなんですか?
「まずは、社会貢献性っていうバックグラウンドに頼りすぎないっていうのを大切にしたいなと思っています。もちろん近年、社会貢献性が顧客にも浸透してきているのは感じてはいるんですけど、社会貢献性のデメリットとして価格が高くなってしまったりとか、あとは品質の部分がちょっと劣ってしまうみたいなことがあると思うんです。
そこを克服することが大事だなと思っていて、きちんと機能性であったりとか、このスマホケースに関してはデザイン性に注力していて、バックグラウンドを知らずとも手に取ってもらえるみたいなところは、大事にしていきたいなって思っています。
あともうふたつあるんですけど・・・ひとつが、しっかりパートナーのヒアリング・・・パートナーシップを結んだ企業とかブランドの現状とか、掲げているミッションや思いはきっちりヒアリングして、可能であれば現地に足を運んで、直接コミュニケーションをとったりとか、実際に現状を自分の目で見る、それを僕たちが伝えるっていうことは大切にしていきたいなと思っています。
最後は、公正公平な取引、いわゆるフェアトレードなんですけど、きちんとした価格で取引をして、現地にもきちんとお金を落として、働く人たちが満足できる、生活水準を上げていけるような形になればいいなと思っています」
●素晴らしいですね~。今後「Ocean sole」以外に提携していきたい団体はありますか?
「はい、今ちょうどふたつ目の企業さんとお話させていただいていて、まだ具体的なことは言えないんですけど・・・。
9月に(ナイロビに)行ってきた時に、たまたま街中を歩いていて、いいな! って思って、その店員さんに“これはどんな商品なの?”っていろいろ聞いて・・・今回詳しくはご説明できないんですけど、似た感じのアップサイクルの素材で素敵な商品を作っていたので、すぐ“社長の電話番号を教えて”って聞いて、次の日に工場まで行ってきました。
話を聞いて感銘を受けて、日本に帰ってきた時にあっちのかたも“これからコラボしていこう!”って毎日のように連絡くれて、もう嬉しい限りですね。ぜひ一緒にやりたいなと!」
「Uzuri」の未来予想図
●では最後に、未来予想図として、現在、山岸さんは21歳でいらっしゃいますから、29年後、たとえば山岸さんが50歳になった時に「Uzuri」はどんな会社になっていますか?
「そうですね・・・それこそ発展途上国のいろんなブランド、本当にたくさんのブランドとコラボレーションをして、我々とのコラボ商品をたくさん作って、Uzuriとコラボしているから、Uzuriとのコラボ商品がきっかけで、そのブランドを知って好きになりましたとか、Uzuriとコラボしているから、このブランドは信頼できるブランドだ!みたいになっていれば、嬉しいなと思っています。
やっぱり今どうしてもアフリカの商品って、若干の手を出しづらさみたいなところはあると思うんですけど、僕たちが今、最初に目指しているのは、手に取った商品が実はあとから知ったらアフリカ産だった!みたいなのができれば、嬉しいなと思っているんです。
本当に先の未来には、アフリカ産だから買いました!みたいな、日本製だから信頼ができて買いました!みたいなのと同じ感覚で、アフリカ産だから買いました! みたいな形ができれば、すごく嬉しいなと思っています」
INFORMATION
気になるiPhone用のケース、カラフルで本当に素敵です。職人さんがひとつひとつ手作りしたものなので一点ものです。販売に関しては、年内からオンラインサイトで始まる予定。またイベントなどでの販売も検討しているそうです。販売価格を含め、詳しくは以下のサイトをご覧ください。
◎Uzuri 公式オンラインショップ: https://uzuri-japan.square.site
「Ocean Sole」が制作している動物のオブジェはすでに販売されています。ゾウやキリン、シマウマ、ペンギンなどなど、カラフルでほんと可愛いんです。ぜひチェックしてください。
◎インスタグラム @uzuri_japan
https://instagram.com/uzuri_japan?igshid=NGVhN2U2NjQ0Yg%3D%3D&utm_source=qr
2023/11/19 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「SDGs QUEST みらい甲子園」の総合プロデューサー「水野雅弘(みずの・まさひろ)」さんです。
です。
水野さんは、持続可能な環境社会を実現するための事業などを行なう株式会社TREEの代表取締役、そしてSDGs.TVのプロデューサーでもいらっしゃいます。
SDGsはご存知の通り「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS」の頭文字を並べたもので、日本語にすると「持続可能な開発目標」。
これからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って資源を大切にしながら経済活動をしていく、そのための約束がSDGs。2015年の国連サミットで採択され、全部で17の目標=ゴールが設定されています。
当番組では17のゴールの中から、おもに自然や環境に関連するゴールを掲げ、定期的にシリーズ企画「SDGs〜私たちの未来」をお送りしていますが、今回は特別編! 高校生が考える社会課題解決のためのSDGsアクション・アイデアコンテスト
「SDGs QUESTみらい甲子園」をクローズアップします。
☆写真協力:みらい甲子園事務局
今回から千葉県大会を開催!
※まずは「SDGs QUESTみらい甲子園」の開催趣旨について教えていただけますか。
「本当に今、時代が大変革の時を迎えています。未来が予測困難な時代なんですけれども、そうした中においても、高校生が自ら未来をちゃんと考え向き合って、特に社会課題をどう解決していくかを起点にしながら探究し、そして、できれば主体的に行動力を高めるような、そんな機会を作ろうと思って始めたのが『SDGs QUESTみらい甲子園』です」
●今年で5回目の開催ということですけれども、開催エリアが年々増えているんですよね?
「そうですね。初年度は北海道と関西から始めまして、今年は19エリア32の都道府県で開催します」
●これまでどれぐらいの高校生たちが参加しているんですか?
「延べでいくと1万人を超えています。年々増えてきまして、昨年は5000人以上、チームでいうと1228チームがエントリーしてくれました」
●今年からは千葉県大会もあるんですよね。
「そうですね。去年までは首都圏大会という形で、千葉県も対象にしていたんですけれども、やはり千葉もたくさんの学校がありますので、千葉県大会をbayfmさんと一緒にやらせていただきます」
●千葉エリアならではのアイデアがどんどん出てくるといいですよね。
「そうですね。千葉は都会でありながらも、房総半島を考えますと本当に多様な社会課題に向き合っていますから、SDGsを起点にした素晴らしいアイデアを期待しています」
●この「SDGs QUESTみらい甲子園」の参加条件を教えてください。
「参加条件は、まずはチーム制です。高校1〜2年生を中心に、今年からリーダーでなければ、3年生も参加可能です。中高一貫校であれば、チームの中に中学生が入っても大丈夫です。2名〜6名で、部活で参加する場合は最大10名までは可能としています」
(編集部注:このコンテストは、競い合うというよりも、ほかの高校の生徒たちと交流してもらうことも目的としていて、応募する生徒たちも、それを楽しみにしているそうですよ。
今回は、各エリアから選ばれた最優秀賞の19チームが全国交流会に進み、最終的にグランプリチームが選ばれることになっています。グランプリチームは、北海道美幌町にある「ユース未来の森」に招待されるそうです)
高校生の柔軟な発想を期待!
※過去の応募作から、特に印象に残っているアイデアを教えてください。
「この番組に若干合わせて、環境的な視点から申し上げると、例えば静岡は卓球、静岡だけでピンポン玉を年間2.5トン廃棄するそうなんですね。それをリサイクルしてスマホケースを作るアイデアを考案した高校生がいたりとか・・・。
あとは滋賀県から琵琶湖、やっぱり琵琶湖を綺麗な淡水にしていきたいっていうことがあって、自分たちで天ぷら油を集めて、粉せっけんにして、そこに”草津あおばな”という地元で採れる植物を入れて液体化すると、すごく綺麗な色になるんですね。それを彼らは“琵琶湖ブルー”と言っています。天然の液体洗剤を通して琵琶湖を守っていく、普及啓発にしていく、そんなチームもありました。
あともうひとつお伝えすると、たぶん千葉でもたくさんの放置林があるんですね。竹です。日本は里山が竹によって、荒廃していく世界が多いんですけれど、その竹を使ったバイオ竹炭であるとか・・・竹問題っていうのは九州のほうが多かったです」
●大人では発想できない、高校生ならではの柔軟な発想だなという感じがありますよね。
「そうですね。高校生はある意味、グローバル意識はすごく高いんですけれども、社会課題となると、行動範囲が数十キロ圏内なので、地域に対する思いがありますね。地域の課題を環境だけではなくて、差別や相対的貧困やジェンダーの問題、様々なところから高校生らしい発想とアイデアが生まれてきています」
※「SDGs QUESTみらい甲子園」の発案は水野さんなんですよね?
「そうですね。ネーミングも含めて考えました」
●どうして始めようと思われたんですか? その辺りの思いをぜひ聞かせてください。
「僕は2007年から『GREEN TV』というイギリス・メディアの日本代表になって、環境に関わる様々な発信をしてきたんですね。2015年にSDGsが国連で採択された時に、これは共通言語になっていくし、それを起点に普及させることで、無関心のかたたちと語り合える、もう行動しなくちゃいけないなと思い立ち、翌年の2016年に『SDGs.TV』という映像メディアを立ち上げたんですね。その映像メディアを視聴しているのが学校の先生が多かったんです。
その学校の先生から、高校生たちが行動できるような発表の場をぜひ作ってくれないかっていう話をいただいて、大会というか野球の・・・全国それぞれの地域の課題や、世界の課題に向き合っていこうと思って組み立てたのが『SDGs QUESTみらい甲子園』です」
●中学生でもなく大学生でもなく、高校生を対象にしたのはどうしてなんですか?
「高校生になりますと、自分の進路をとても真剣に考え始めます。そういった意味では、キャリアとは言いませんけれども、進学や就職ということを考えた時に、社会課題に向き合っていく、いわゆる最初の芽が出る・・・。
小学生中学生ですと知識的なものが多いですね。高校生になると、もうひとつは経済的な視点も入ってくる。だから大人と子供のちょうど中間になった時に、自分の進路がまだ不透明な大学生も多いんですけれど、やはり高校生の時になるべく早く自分のヒントというか、自分のやりたいことのためには、やっぱり未来を見つめることが比較的重要だと思いまして、高校生に絞りました」
(編集部注:「SDGs QUESTみらい甲子園」は、コンテストではあるんですが、実は、応募してくれた高校生には、大学入試などのポートフォリオとして活用できる参加証明書を発行。また、先生にとっては、学習プログラムとして活用できる、そんな側面もあるんです)
自分の心と大地にタネを植える
※「SDGs QUESTみらい甲子園」のオフィシャルサイトに、グランプリチームが北海道の「ユース未来の森」で木を植えている動画がありました。この「ユース未来の森」について教えていただけますか。
「これは実は今、気候危機と呼ばれている中で、気候変動に対して高校生たちが、何か未来に向けて、活動のひとつとして、森を作っていこうっていうことを昨年度から始めました。全国の高校生がなかなか全員は来られないので、地元の高校生たちと一緒に木を植えていくという形で、気候変動行動のひとつとして、みんなで森作りを始めた次第です」
●水野さんも行かれたことはありますか?
「この10月に僕も参加しまして、汗だくになって植えてきました」
●あの動画を見ていて、生徒さんたちもそうなんですけど、参加されている先生たちが、すごく生き生きとされているなっていう印象があったんですけど・・・。
「そうですよね。道内だけではなくて、今回グランプリをとった鹿児島の種子島から来た先生も、本当に汗をいっぱいかいて、楽しそうに活動していましたね。あの映像も僕が植樹しながらiPhoneで撮影した映像です」
●そうだったんですね~。みなさん、本当に楽しそうなのが印象的でした! やはり植樹体験で気づくこともいろいろあるんでしょうね
「そうですね。彼らにインタビューをすると、やっぱり木を植えることは当然初めてなんですね。林業のかたたちがこうして木を育てていく・・・植えることも大変だし、1年2年ではなくて、20年50年100年と、すごく大変な仕事なんだってことがよくわかったと、生徒たちのコメントからは聞けました」
●やっぱり人ごとではなく、自分ごとになることが大事になってきますよね。
「そうですね。植林が大切とか、間伐が大切とか、いろいろ頭で学んでも、やっぱり自ら大地に立って苗を植えるっていうのは、すごく貴重な体験ではないかなと思います。 ほとんどの生徒が、自分が大人になったら20年後30年後には、ぜひ自分が植えた木を見に行きたい!と・・・ある意味、ちょっと大袈裟かもしれないんですけど、環境を含めた地球への何か・・・自分の心と大地にタネを植えるって感じなんでしょうね」
SDGs.TVの多様なコンテンツ
※水野さんの会社TREEのオフィシャルサイトを拝見すると、当初はマーケティングの事業を展開され、現在は持続可能な環境社会を実現するための事業を柱に据えて活動されています。事業内容を変革する、なにかきっかけがあったのでしょうか?
「大企業のマーケティング・アドバイザーのような形で、いろんなマーケティングに関わってきたんですけれど、今から20年ほど前に、やはり株主中心で、ある意味、行き過ぎた利益追求ということが多くなったことによって、ヒューマンエラーだとか、いろんな法的な事件、事故につながることが多かったんですね。
そうした点において、ガバナンスをしっかりするためには、やはり自分自身ももう少し環境や社会、いわゆる企業活動が与えていることを、しっかりとその企業にも提供すべきでしょうし、社会もそれに向かわなくちゃいけない、そういうことが舵を切ったきっかけですかね。
もうひとつきっかけとして、ちょっと長くなってしまうんですけど、2010年に『生物多様性条約会議COP10』っていうのが名古屋でありまして、それの開会式のプロデュースをしたんです。 その時に全世界で生物多様性の危機的な状況がありました。
これは生物多様性の危機的状況は気候変動もあるんですけど、私たちの消費生活、生産と消費にものすごく影響をもたらしているので、ここはやっぱり企業活動自身を、地球や社会のサステナブルのためにも取り組むべきだと考えました」
●今の主な事業としては「SDGsQUESTみらい甲子園」の学習プログラムにもなっているSDGs.TVというメディアになるんでしょうか?
「そうですね。メディア事業というよりも、これはひとつのプラットホームとしての教育ですね。これは小中高だけではなくて、企業の人材育成研修にも軸足を置いて、多くのかたたちがサステナブルな意識啓発になるようにと、研修事業を中心にしています」
●コンテンツはどんなものがあるんですか?
「SDGs.TVは本当に多様ですね。NGOのアクションから各国の政府の活動ですとか、もちろん国連や気象協会、様々な気候から生物多様性からLGBTQ、フェアトレードから途上国の話もあれば、日本国内のローカルな取り組みのものもあれば、課題から取り組みまで、様々なコンテンツを発信しています。
テキストで学ぶよりは、やっぱりエモーショナルですし、映像にはストーリーがありますよね。そういった意味では全く無関心だった子供たちを見ていると、先生から一方的に教えられるものだと下向いているんですけど、映像を見て心が動いて、これは大人もそうです。映像を見た時にやっぱり腹落ちするというか腑に落ちるというか・・・ですから、映像の力は人々の行動を促すには、とても大切かなと思います」
(編集部注:ちなみにSDGs.TVには500タイトル以上の映像があるそうです。どんな作品があるのか、ぜひオフィシャルサイトをご覧ください)
「気候行動探究ブック」を無料配布!
※学校の授業で地球温暖化や環境問題を学んでいる10代のみなさんは、私たち大人以上に危機意識を持っているように思います。その辺りは、いかがですか?
「この5〜6年、中学生高校生と出会っていると驚くのは、やっぱりエシカル意識がすごく高いです。 少し感度の高い子供たちはフェアトレードとかにも関心がありますね。
最近は本当に美容院を選ぶにしても、物を買うにしても、店を選ぶ中において・・・究極は就職、大学生も就職をしていく中において、SDGsにちゃんと取り組んでいるかとか、そういうことに目線がいく若い10代は、私たちの時代とは違って多いなと思います。
ただ気候変動で考えると、欧米と比べると日本人の10代は、まだそれだけの危機意識はちょっと弱いかなとは思います」
●「気候行動探究ブック」というものを全国の高校生に無料で配られたんですよね?
「そうですね。みらい甲子園はSDGsで申し上げると1番〜17番、それは社会課題は多様なもので構わないんですけど、やはり世界の気候変動教育ってすごく重要なんですね。イタリアやイギリスではもう国をあげて行なっているんですが、日本はまだまだ気候変動教育は進んでいませんので、行動を促すような教材を作りまして、全国およそ4300校に進呈しました」
●これはどんなブックになっているんですか?
「世界中の同じ世代の高校生たちの気候行動の情報ですとか、温暖化が与える影響、そして私たちがどういうことに取り組むべきかということをわかりやすく解説しています。
国立環境研究所のかたや国連のかた、スウェーデン・ストックホルムのレジリエンス・センターのかた、そんな専門家からの映像メッセージも入れて、多様な行動をみんなで考えるような探究ブックにしています」
●「SDGs QUESTみらい甲子園」 に応募してくる高校生たちには、どんなことを期待していらっしゃいますか?
「アンケートをとったんですけれど、みらい甲子園に参加してSDGsの意識が高まったっていうかたは大半ですし、行動意識が変わったっていう結果が最も多いんですね。 ですから、エントリーした高校生には未来を切り開く力、そして自分たちが変えるんだと主体的な考え方、そんなことを持っている、ひとりでも多くの次世代が育っていくことを期待しています」
●一方で番組を聴いてくださっている大人のみなさんに、何か伝えたいことがありましたら、ぜひお願いいたします。
「これは高校生から聞いたことなんですけど、自分たちのアイデアを自治体に持っていったら、”こんなこと、できないよ”とか、結構否定されることが多かったらしいんです。 そうではなくて、やっぱり常識が通用しない未来を考えますと、これだけ生成AIも出てきて、本当に新しい社会が今始まろうとしている。そんな時には大人も、高校生や中学生から学ぶことがたくさんありますし、一緒に共創していく思い、それを持って応援していただきたいなと思います」
INFORMATION
現在「SDGs QUESTみらい甲子園」千葉県大会では、高校生のみなさんのアイデアを募集しています。持続可能な社会を実現するために解決したい、あるいは、変えたいと考える「探究テーマ(課題)」をひとつ選び、その解決策となる具体的な「SDGsアクション」のアイデアをお送りください。
参加条件は、千葉県の高校に通う1年生・2年生、ふたりから6人で構成するチーム。高校3年生だけのエントリーはできませんが、チームに入ることはできます。
千葉県大会の応募の締め切りは、12月20日(水)午後1時。エントリー方法など、詳しくは「SDGs QUESTみらい甲子園」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎SDGs QUESTみらい甲子園 :https://sdgs.ac
水野さんが代表を務める株式会社TREEのサイトもぜひ見てください。
◎株式会社TREE :https://tree.vc
2023/11/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第15弾! お話をうかがうのは、水産資源を守り、環境に配慮した持続可能な漁業の普及活動を行なう、一般社団法人「MSCジャパン」の広報担当シニア・マネージャー「鈴木夕子(すずき・ゆうこ)」さんです。
今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「海の豊かさを守ろう」ということでサステナブル ・シーフードにフォーカス! 「MSCジャパン」が取り組んでいる持続可能な漁業のための認証制度やMSC「海のエコラベル」についてうかがいます。
☆写真協力:MSCジャパン
魚の獲りすぎで35,000人もの人たちが失業!?
※まずは「MSC」について教えてください。いつ、どんな目的で設立された団体なんですか?
「MSCは持続可能な漁業を普及する活動を行なっている国際的な非営利団体です。本部はロンドンにあって、1997年に設立されました。MSCが出来たきっかけは、1990年代初頭にカナダのグランドバンクというところで、マダラの漁業が崩壊してしまったということがあるんですね。
どういうことかと言いますと、それまで獲れるだけ獲っていったマダラ漁業なんですけれども、獲りすぎてしまって、全く獲れなくなってしまったということが起きたんですね。それでマダラの漁業が崩壊したことによって、漁業者さんもそうですし、そのマダラを加工して缶詰にしたりとか、そういった加工業者も潰れてしまって、35,000人の漁業者や工場で働く人たちが失業したということが起きました。
そこで魚の獲りすぎが環境や生態系だけではなくて、人の生活にもすごく影響を与えるということが浮き彫りになって、このままではいけないということで、持続可能な漁業に関する認証制度が必要だということになり、MSCの構想が練られ、1997年に設立したということです」
●鈴木さんが所属されている「MSCジャパン」はいつ開設されたんですか?
「それから10年たって2007年に設立されました。当初はまだ持続可能な漁業とかサステナブルといった言葉は、ほとんど聞かれていない時でしたので、日本事務所が設立されて、漁業者さんや企業さんに説明に行ったりしても、なかなか理解していただくことが難しくて、うちは必要ないですっていうような感じだったっていうのは、設立当初からいたメンバーに聞いております。
ただ、最近は魚が獲れなくなったとか、そういった水産資源の危機感が広がっていることですとか、あとは2015年に国連でSDGsが採択されたことですとか、リオデジャネイロ・オリンピックなどで認証の水産物が調達されて、それが東京オリンピックにも続いたりとか、そういったことがあって、設立から10年ぐらい経ってから急速に理解や認証水産物の商品が広がってきたということがあります」
(編集部注:「MSC」は現在、ヨーロッパや南北アメリカ、アジアを含め、世界20カ国に支部があるそうです。毎週のようにオンライン・ミーティングを行ない、世界の水産資源の状況や、漁業に関する最新情報を共有しているそうですよ)
3つの原則と、25の業績評価指標
※ここからは「MSC漁業認証」について、詳しくうかがっていきたいのですが、どんな認証制度なのか、具体的に教えていただけますか。
「MSC漁業認証というのは、持続可能な漁業に与えられる認証なんですね。審査は3つの原則に基づきます。それを漁業者さんが満たす必要があります。
原則のひとつ目が、自然の持続可能性に関するもの。例えば、その漁業者さんが漁獲の対象とする魚種の資源が十分な量があるのかどうか、持続可能なレベルにあるのかどうかというところがチェックされます。その資源が持続可能なレベルにないとなると、もうそこでダメということですね。
ふたつ目が、漁業が生態系に与える影響について。その漁業が対象としている魚以外の魚介類ですとか、あとはウミガメやウミドリとか、ほかの生き物、絶滅危惧種などが間違って網にかかるということがあるんですね。それを最小限に抑えているか。例えば、その網にかかるほかの生き物が多ければ多いほど、生態系に影響があるので、そういった影響を最小限に抑えられているかというところの確認が行なわれます。
3つ目が、漁業の管理システム。ここでチェックされるのが生産資源が豊富にあるか、原則1の生態系への影響ですね。そういった原則を満たすことができるように、きちんと国際ルールや国内法が整備されていて、それが守られているかどうか、この3つの原則のもとで審査されます。
この3つの原則の下に25の業績評価指標というのがあって、その項目に照らし合わせて審査されます。各項目で60点を下回るのがひとつでもあると認証されないということです。
また60点から80点未満の指標についてはOKではあるんですけれども、期限を定めて80点以上になるまで改善するといった条件がついての認証ということになります。なので、かなり厳しい審査が行なわれるということですね」
●たくさんの審査がありますけれども、その審査はどなたがされるんですか?
「審査はMSCがするのではなくて、独立した第三者の審査機関が行ないます。私たちの仕事というのは、その認証制度の規格を設定するんですね。その規格を作った団体が審査まですると、透明性とか公平性が保てないので、第三者がその規格に基づいて、その漁業がきちんと(基準を)満たしているかを審査するということになります」
MSC漁業認証のメリット
※漁業者は、その認証を取得することによって、どんなメリットがありますか?
「まず、サステナブルであるという付加価値をつけることで、ほかの水産物と差別化することもできますし、イメージを向上することができるということですね。あとは新しい市場とか販路の拡大ということもあります。特にMSC認証というのは海外で広がっているので、輸出を考えている漁業者さんにとってはすごく大きいですね。
特に欧米の消費者は、サステナブルな魚でないと買いたくないというかたも多くいらっしゃるので、そういう意味で既存の市場プラス新たな市場を開拓できるということ。
あとは持続可能な漁業を行なうことによって、長期的には漁獲量が増加するということで、自分たちの漁業も持続可能になるというところですね。次世代にも漁業を受け継いでもらえるような、そういったメリットがあります」
●認定されると、認証マークをつけることができるんですよね?
「そうですね。その(認証を受けた)漁業で獲られた水産物がサステナブル(シーフード)として消費者に届くまでに、ラベルを貼るので、消費者が認証を受けた漁業で獲られた水産物ということが分かるようになっています」
●海のエコラベル、ですね。
「はい、MSC『海のエコラベル』という名前です」
●このMSC漁業認証という制度を漁業関係者に広めて理解してもらうためには、大変なパワーがいると思うんですけれども、いかがですか?
「MSC漁業認証の取得は、漁業者さんの自発的な意思によるものなんですね。自分たちがちょっと挑戦してみようかなというふうに興味を持った漁業者さんから問い合わせをいただいて、そこでいろいろ説明をすることになります。
MSC漁業認証の審査がすごく厳しくて、審査項目も多岐に渡るということを、まず知っていただきます。その中でも例えば、漁業者さんが漁獲している以外の生き物とか、その周りの環境までが審査項目に入ったりするので、初めのうちは、なぜそこまで審査の対象になるのかという疑問を持たれることがよくあるんですね。そういった漁業者さんの通常の漁業の中では、あまり馴染みのない部分は丁寧に話すようにしています。
ただ、漁業認証を取得しようと考えている漁業者さんは魚がなくなってしまう、減ってしまうと、漁業そのものが成り立たなくなるという危機感をすでにお持ちです。次世代に水産資源を残したいという使命感も持っていらっしゃるので、こういった話をするとご納得いただいています」
(編集部注:MSC漁業認証を取得した漁業は現在、日本では18件、世界では539件あるそうです。最近では、SDGsの気運の高まりや、水産資源の減少傾向などもあり、MSC漁業認証の取得を目指す漁業関係者からの問い合わせが増えているとのこと。
この認証は、取得すれば、それで終わりではなく、5年ごとに更新の審査が行なわれ、改善の条件が付けられるので、認証を維持すればするほど、持続可能な漁業の質が高まっていく、そんな制度になっているそうです)
MSC漁業認証の質を守る、もうひとつの認証制度
※ここまでお話をうかがってきて、MSC漁業認証については、ある程度、理解できたんですが・・・ふと、素朴な疑問が浮かんできました。認証を取得した漁業の水産物と、そうじゃない水産物が混ざったりすることはないんですか?
「それはないですね。というのは、MSC認証にはふたつの認証があって、そのふたつの認証からなっているんですね。先ほどお話ししたMSC漁業認証と、あとMSC CoC(シー・オー・シー)認証というふたつがあります。この『CoC』っていうのは、英語ですと“Chain of Custody(チェイン・オブ・カストディー)”と言いまして、日本語にすると管理の連鎖、鎖という意味があります。
せっかく漁業者さんが漁業認証を取得しても、その魚が消費者の手元に届くまでに認証ではない水産物が混じってしまったら、全く意味がなくなってしまうので、漁業者さんが水揚げしたあとに卸売業者さんから水産物のパッケージを行なう最終の包装業者までの、サプライチェーン全体に対する認証がCoC認証というものになっています。
そのふたつがセットになって初めてラベルが付けられるということは、その漁業者さんが獲った、認証を取得した水産物が確実に自分たちのところに届いているんだなということの証明になります」
●なるほど。認証水産物が仲介業者とか加工業者にいっても、そこでも認証水産物ではないものと混ざるっていうことはないわけですね?
「そうですね。混ざるということはないです。入荷して加工・保管などすべての段階において認証の商品であるということが、識別できるような管理が求められたりとか、あとは製造ラインを分けるなどしても確実に分別することが求められています」
●漁業者から小売店までの流通ルートの中で、この認証に対する理解と認識がすごく大事になってくると思うんですけれども、その辺りはどうやって広めているんですか?
「MSCとしても、MSC認証制度の重要性を業界のかたがたに発信しているんですけれども、最近では魚が減ってきていることの危機意識ですとか、持続可能な水産資源を管理するという重要性がすごく高まってきているので、水産業界ではこうした取り組みを行なうということが、当たり前という風潮にはなってきているというのを感じています」
MSC「海のエコラベル」、500品目以上!
※私たちが、持続可能な漁業を応援するためにはMSC「海のエコラベル」がついた水産物を積極的に買うことだと思うんですけど、どこで販売していますか?
「よく聞かれる質問で、なかなか見たことがないと言われることがあるんですけれども、実は結構身近なところで手に入ります。
イオングループですとか、生協/コープ、セブン&アイグループ、ライフ、あとはマクドナルドとか、私たちにとって身近なスーパーとかレストランに置いてあったりします。あとはスーパーの店頭だけではなくて、航空会社の機内食とかホテルのレストラン、大学の学食などでもMSC『海のエコラベル』を表示したメニューが提供されています。
どういったものにMSCラベルが貼られているかと言いますと、魚の切り身とかそういった鮮魚だけではなくて、水産加工品、ちくわやカニカマ、からし明太子とか。あとは白身魚のフライなどの冷凍食品ですとか、缶詰めなどもあります。最近新しいところでは猫の餌、猫缶にもMSCラベルが付くようになりました」
●かなり身近にあるわけですね!
「そうなんです。ただ見たことがないという声も大きいのは、やはり日本ですとスーパーの種類がすごくいっぱいあるので、近所のスーパーでは扱ってなかったということもあるかと思います」
●意識してちゃんと見てみます!
「はい、ありがとうございます。意識しないと全然目に入ってこないんですけど、一度意識すると実は結構あるなっていうことに気付くかと思います 」
●では改めて、リスナーのみなさんに伝えたいことを教えてください。
「実はMSC『海のエコラベル』が付いている商品というのは、日本で500品目以上あって、たくさんの種類がいろいろなところで売られています。サステナブルな商品っていうと、ちょっと値段も高いんじゃないの? と思われるかもしれないんですけれども、実はそんなことはなくて、通常の商品とほとんど(値段は)変わらないですね。
なので、商品を選ぶ時にラベルが付いたものを選ぶようにすると、持続可能な漁業を目指す漁業者さんが増えていって、海の環境を守ることにもつながりますので、ぜひ見かけたら選ぶようにしてください。
また、近所のスーパーでもし売ってない場合は(お店のかたに)扱ったりしていますか? というふうに聞いていただくことも、スーパーのかたたちはお客様の声を聞くようにしていますので、それもすごく大きな力になると思いますので、ぜひよろしくお願いします」
INFORMATION
「MSCジャパン」では消費者に、MSC認証制度とMSC「海のエコラベル」をもっと広く知ってもらうために、年3回キャンペーンを行なっているそうです。先月は、この番組のホームページでもご紹介しましたが、「サステナブルシーフード・ウィーク」というキャンペーンが展開されていました。来年1月には「サステナブルなお魚レシピ」を公開するそうです。
ちなみにMSCアンバサダーは、海洋生物好きで知られているココリコの田中直樹さんですよ。MSC認証とMSC「海のエコラベル」、そして活動について詳しくはMSCジャパンのサイトをご覧ください。
◎MSCジャパン:https://www.msc.org/jp
2023/8/20 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」の広報担当「大西亜未(おおにし・あみ)」さんです。
SDGs「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)=持続可能な開発目標」の中から「つくる責任 つかう責任」、そして「海の豊かさを守ろう」ということで、NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」の活動をご紹介します。
2020年12月に発足した「クリーン オーシャン アンサンブル」は海洋ごみゼロの世界を目指し、香川県小豆島で、おもに海洋ごみ回収装置の開発を行なっています。
なぜ小豆島だったのか、回収装置とはどんなものなのか、広報担当、大西亜未さんにいろいろお話をうかがっていきます。
☆写真協力:NPO法人「クリーン オーシャン アンサンブル」
海洋ごみをなんとかしたい!
●「クリーン オーシャン アンサンブル」というネーミングには、どんな思いが込められているんでしょうか。
「クリーンはきれいな、オーシャンは海を、なんですけど、アンサンブル っていうのがフランス語で、『より多くの人と一緒に』っていう意味が込められています。代表の江川は英語とフランス語も喋れるので、英語とフランス語を掛け合わせた名前にしたと聞いています」
●代表理事の江川裕基(えがわ・ゆうき)さんは、以前はJICAの海外協力隊として活動されていたということですけれども、やはり海外での活動経験が「クリーン オーシャン アンサンブル」の原動力になっているんでしょうか?
「そうですね。代表の江川はアフリカのブルキナファソっていう国で、廃棄物を処理する仕事をしていたんですね。そこで、ごみをよく見ていたんですけど、本当にごみが道路に積み上がっているような状況をすごく目にしていたそうです。
もともとバックパッカーとして、いろんな国をまわっていて、“あれ? 世界ってごみだらけだな〜、ちょっと壊れてきているな”って思ったみたいで、これは早急に何とかしなきゃいけないと思って、それが原動力になって発足した団体です」
●大西さんは去年から「クリーン オーシャン アンサンブル」で活動されているそうですが、参加する前は何をされていたんですか?
「小豆島にADDress(アドレス)っていう多拠点生活サービスがあるんですけど、そこの旅人さんを受け入れるお仕事をしていて、小豆島の拠点の管理人をしていました。
小豆島に来てくれる人って、そもそも島の環境に興味がある人がすごく多くて、海洋ごみの話とかでも盛り上がるような方々で、そういう人をおつなぎするような感じで、『クリーン オーシャン アンサンブル』ともおつなぎしたりとか、そういうことを以前からしていたって感じですね」
●出身は小豆島なんですか?
「 私は横浜出身です」
●横浜からどうしてまた小豆島へ・・・?
「その時付き合っている、今も付き合っているパートナーがいるんですけど、一緒に移住先を探しておりまして、多拠点生活サービスADDressを利用して、小豆島に来たことがきっかけで移住を決めました」
●いろんな選択肢がある中で、どうして小豆島だったんですか?
「横浜の海がちょっと濁っている感じの海で、あまり海が好きじゃなかったんですね、正直。だけど、小豆島に来た時に臭いがしないっていうのと、こんなにも穏やかな海があることにすごく感動して、初めて海が好きだなって思ったんですね。
この海のそばに住みたいと思って、小豆島に移住を決めました。歩いて30秒で海なんですね。疲れた時は海を眺めたりとか、(海に)ちゃぽっと足をつけて入ったりとかして、ストレスの発散ができて、幸せな毎日を過ごせています」
●江川さんから何か影響を受けたことはありますか?
「(環境に)興味があるADDressの会員さんとおつなぎした時に、一緒にビーチクリーンをやったんですけど、そのビーチクリーンの内容が分別の徹底だったりとか、こんな行政の事情があってとか、最終処分場の事情があってとか・・・今までビーチクリーンやごみ拾いに参加させてもらったことが、ほかの県でもあったんですけど、ここまでガチな感じのビーチクリーンって初めてだったんですね。
しかも小豆島は観光地なんですけど、移住するきっかけがやっぱり観光がすごく素敵だったからとか、友達がもともと移住していたとか、そういうかたが多い中で、代表の江川だけが海洋ごみを何とかしたいから移住したっていう、そんな理由で移住する人いる!? みたいな、その本気度に影響を受けて、参加したいなって思いましたね」
地元の漁師さんとタッグを組む
※代表の江川裕基さんがおもな活動エリアを香川県小豆島にしたのは、何か理由があったんですか?
「香川県にまず江川は着目しました。なぜかというと、香川県は香川県方式っていうものを作っています。漁師さんがお魚を獲る時にごみが網の中に入ってしまうので、漁師さんたちは自腹で(ごみを)処理していたんですが、香川だけは自治体が無償で処理するようになったんです。そういう画期的なシステムを構築したということで、まずは香川県にしようっていうことになったらしいんですね。
小豆島っていう島は瀬戸内海にあって、ほかの県に囲まれた島なので、日本のごみだけが漂ってくることとか、波がすごく穏やかで、回収装置を作るにあたって壊れるリスクがすごく少ない、そんなことを掛け合わせて、小豆島がいいということになったと聞いています」
●「クリーン オーシャン アンサンブル」では海洋ごみの回収装置を作っていらっしゃいますよね。サイトに掲載されている写真を見ると、漁網のようにも見えるんですけれども、どんな装置なのか説明していただけますか。
「漁師さんが使う網をUの字に広げて(全長が)30メートル、下に垂れている部分が2〜3メートルになっています」
●網を沈めておくと、勝手にごみが入ってくる感じなんですか?
「そうですね。浮きで浮かせている部分と、重りで沈んでいる部分があって、その網はずっと固定されているんですね。その固定されている網に向かって潮が流れてくるので、波の影響を受けて、ごみが自動的にキャッチできるようになっています」
●その回収装置を仕掛けるには、やはり地元の漁師さんの協力も必要になってきますよね?
「そうですね。小豆島を拠点にするっていう時に、江川が片っ端から漁業組合さんに電話をかけたらしいんですけど、やっぱりお断りされたりしたそうです。唯一、小豆島に森組合長さんという方がいるんですけど、その人だけ全面的に協力したいって言ってくれて、ここだったらやりやすいなと思ったそうです。海を使わせていただくということは漁師さんの協力が必須になってくるので、森組合長とタッグを組むということで、小豆島にしたって言ってましたね」
香川大学と連携
●海洋ごみを回収すると言っても、海流とか波とか風とか、いろんな影響を受けて、そう簡単には回収できないようにも思うんですけれども、いかがですか、その辺りは?
「そうですね。ほんとうに波乱万丈な実験というか繰り返しだったんですけど、海洋ごみを回収する際に、どうやったら効率的に回収ができるかっていうことで、やっぱり潮の流れがキー・ポイントになってくるんですね。
なので、香川大学さんと連携させてもらって、今回はそんなに捕れませんでしたとか、今回はすごく捕れましたっていうデータをすべて提出して分析してもらました。その中でごみが流れやすい時期があることがわかったので、その時期に合わせて設置するところから始めていきましたね」
●その時期とはいつ頃なんですか?
「小豆島は夏と冬で、ごみが溜まるエリアが変わってくるのがわかったので、今回私たちが活動しているところは、夏のほうが集まるので、夏に設置するようにしました」
●トライアンドエラーを繰り返しながら改良していったという感じだったんですね。
「そうですね。やっぱり1号機から4号機まで、結構大変だったですけど、ほんとうにビニールのかけら3つとか、そんなレベルでしか捕れなかったんで、すごく大変でしたね」
●今ではどれぐらいの量のごみを回収できるんですか?
「4号機目で初めて1.5キロ回収ができたんですよ! もうみんなで歓喜しました」
海岸に「豆管」がコロコロ!?
※そもそもなんですけど、海洋ごみの回収装置を作ることにしたのは、どうしてなんですか?
「海洋ごみは海に漂っている間と、打ち上げられたごみを比べると、打ち上げられたごみはかなり風化してしまい、紫外線とかでボロボロに細かくなりやすいんですよね。それこそそれが(海に)戻って魚が食べちゃうとか、あとは細かくなりすぎて、風で雑木林まで飛んでいっちゃうとか・・・。そうすると人間が取りに行けなくなっちゃうんですよね、奥にまで行ってしまうと。なので、その前の段階、海の中に漂っている段階で回収したほうが、やっぱり効率がいいんじゃないかっていうことで回収装置を作ることになりました」
●ビーチクリーンの活動も行なっていらっしゃるんですよね?
「そうですね。毎月一般向けにイベントをやらせていただいています」
●どんな海洋ごみが目立ちますか?
「タバコとかペットボトルとか、そういうのはやっぱり当たり前にすごく多いんですけど、瀬戸内海には『豆菅(まめかん)』っていうのがあるんですけど、豆管ってご存知ですか?」
●なんでしょう?
「豆管っていう、お菓子のポテコみたいな、指にはめられるリングのようなもののプラスチックバージョンでありまして、その豆管が牡蠣の養殖でよく使われるんですね。それがコロコロと転がっているのがすごく目立ちますね」
●集めた海洋ごみをご覧になって、どんなことを感じますか?
「はい、やっぱり豆管とか細かいものはもちろんなんですけど、こないだ拾ったペットボトルが結構レトロなパッケージでして、いつのペットボトルか調べたら、なんと40年前のごみだったんですよ。40年前のごみが今漂っているってことは、40年間分のごみは絶対にあると・・・。海の中をずっと漂っているってことは、もっと前のもあるかもしれないし、ずっと蓄積しているんだなと思って、もっと問題視しなきゃいけないなって思いましたね」
(編集部注:先ほどお話に出てきた「豆管」、プラスチック製のパイプを、1.5センチくらいに切って、牡蠣を養殖する際に使うとのこと。嵐などで海が荒れると、たくさんの豆管が海岸に打ち上げられるそうです)
海洋ごみゼロに向けて
※「クリーン オーシャン アンサンブル」では、学校や企業に向けて、環境教育の活動も行なっているそうですが、環境教育はやはり大事なことですか?
「そうですね。最近知ったんですけど、歴史の勉強の時に旧石器時代とか、縄文時代って言うじゃないですか。今の時代って『大プラスチック時代』らしいんですよ。そんなレベルというか、多分きっと教科書に載るべきもの、そういう時代になってきているっていうことで、やっぱり自分たちのためでもあるし、将来の子供のためにも今のこの問題を勉強してもらって、意識を持ってもらうのはすごく大事なことなんじゃないかなと・・・。やっぱりひとりひとりの意識が変えられるような環境教育は大事なんじゃないかなって思っています」
●大西さんのお話を聞いて「クリーンオーシャンアンサンブル」の活動を応援したいと思った方は、どのようにしたらよろしいでしょうか?
「私、SNSの広報部長をやっておりまして、なので今instagramにすごく力を入れているんです。instagramをぜひぜひフォローしてもらいたいですね。それで『クリーン オーシャン アンサンブル』の活動をシェアしてもらいたいなって思っています」
●では今後の目標を教えてください。
「はい、海洋ごみの回収装置を1号機から4号機まで作ってきたんですけど、流木とか自然物もすごく多く回収されたりもしました。今度の5号機目は(自然物ではない)海洋ごみを優先的に拾えるように改良して頑張っていくことを目標にしています」
●「クリーン オーシャン アンサンブル」が掲げているビジョン、海洋ごみゼロの世界が実現したら、私たちの暮らしはどうなっているんでしょうね?
「今なかなか想像がつかないんですけど、やっぱり物だらけの現代っていうことで、プラスチックのものだらけのところから、必要なものを繰り返し使う暮らしだったりとか、減ってしまったお魚が戻って、美味しいお魚が食べられて、世界中にきれいな海が取り戻せる、そんな素敵な暮らしに戻るんじゃないかなって思っています」
☆この他の「SDGs〜私たちの未来」シリーズもご覧ください。
INFORMATION
海洋ごみの回収装置がどんなものなのか、ぜひ「クリーン オーシャン アンサンブル」のオフィシャルサイトを見てください。動画や写真が載っていますよ。
そして活動をサポートしてくださるかたや、寄付も募っています。活動内容も含めて、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「クリーン オーシャン アンサンブル」:https://cleanoceanensemble.com