2020/11/8 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、苔をこよなく愛する俳優「石倉良信(いしくら・よしのぶ)」さんです。
石倉さんは1968年生まれ。東京都出身。舞台をメインに活躍されている石倉さんは、苔好きの役者、苔役者としても知られていて、ご自身のサイトやYouTubeで、苔の魅力を発信されています。きょうはそんな石倉さんに、苔に感じたシンパシーや萌えるポイント、そして都会の苔の楽しみ方などうかがいます。

☆写真協力:石倉良信
役者業とリンク!?
*石倉さんが苔に出会ったのは17年ほど前。盆栽に興味があって、ホームセンターに行って紅葉(もみじ)を購入。そして、プラスチックのパックに入った苔を見つけ、育て方もわからないまま、それも買って帰り、植木鉢に紅葉を植え、苔を根元にあしらったそうです。
ところが数日経って、苔がカラカラに乾いてしまい、慌てた石倉さんはネットで対処の仕方を調べたところ、あるサイトの説明に目がとまったそうです。なんと書いてあったのでしょうか。
「苔は死にません! って出たんですね」
●苔は死にません!?
「はい、それで、ええ!? と思って、そこをクリックして、苔は死にませんってどういうことだろう? って思ったら、苔って普通の植物と違って根っこから水を吸収するんじゃなくて、葉っぱ本体から水をもろに吸収して、乾燥したらそこから水がなくなるっていう生き方をしているんですね。すごく単純な構造をしているんですよ。
だから本当に乾燥すると体の中の水がなくなるからカラカラになるのは当然で、それを読んでいたら、そういう体の機能をしているから苔は諦めずに水をあげていれば、ちゃんと吸収したら綺麗な苔に戻りますよって書いてあったんです。
こんな苔がそんなに戻るもんなのかな? と思って、見様見真似で心配だから毎日水をあげていたんですね。そしたらもう2〜3日したらパーッと苔の葉っぱが開いて、本当に死なないじゃん! って思ったんですね!
その時に(僕は)舞台を中心で役者家業をやらせていただいている分、やっぱり舞台でもメインさんがいて、脇役とか、主役を引き立てる役とかが多かったりとか、端っこの役とか何番手の人とか、そういうポジションの役が多いんですね。
その時に主役の紅葉を輝かせている苔が死なないって、かっこいいな! って役者業とリンクしちゃって、こいつかっこいいなと思って(笑)、自分も死なないで頑張ろうみたいな感じで、苔にすごくリスペクトというか、シンパシーを感じたのが、単純に言うときっかけだったんですよ」
苔は都会にもたくさん!
※石倉さん、いまは何種類くらいの苔を育てているんですか?
「苔って世界中に20,000種類くらいいるんですよ」
●ええ〜〜!? そんなに!
「すごいでしょ? 日本には1,800種類くらいいると言われていまして、まだ実際にどのくらいいるかっていうのが、あまりにも小さい植物だからちゃんと解明されていないらしいんですよ。
日本にもそのくらいいる中で、いわゆる都会で生きていける苔とか、例えば苔テラリウムみたいな、ガラスのビンの容器の中でも生きていきやすい、種類が多い分、いろんな環境によって苔の生きやすい生態があるんですね。
そういう種類の中で言うと、今僕が家で育てているのは20種類もいないかな? 10種類くらいかな? っていう感じではありますね」


●へ〜! 私本当に苔初心者なので、何が違うのかとか全く分からないんですけれども。
「そうですよね。あのね、苔初心者というか、大体の普通の人はそうなんですよ(笑)。小尾さん、苔って見たことある?って聞かれたらどういう答えになります?」
●あるはずなんでしょうけど、でもじゃあ、どんなもの?って言われても具体的に言える自信ないです(笑)。
「そこなの! そうなんですよ! でも、絶対に苔って見ているはずなんですよね。ただ意識していないだけで。
例えば簡単に言うと、行ったことなくても屋久島とか、奥入瀬渓流みたいな、自然の、苔だけじゃなくて木とか生茂って、綺麗なところに苔がいるんだなぁ、苔むしているんだろなぁっていうのって、小尾さんもイメージとか、写真見たら、ああ〜!と思うじゃないですか。だけど苔って、都会の片隅とか、道端、簡単に言ったら自分の家の玄関を開けて、駅まで行く道に絶対にいるんですよね」
●そんな身近なものではあるんですね!
「そうなんです! ただ小尾さんが意識していないだけなんです! 」
一同(笑)
「でもそれは普通の人は全員そうなんですよね〜」
ナンバー1はギンゴケ!

※改めて石倉さんにうかがいましょう。苔の魅力はどんなところなんですか。
「生き方がかっこいいかな、佇まいが。先ほど言った役者業とのリンクっていうのもあるんですけれど、そこで生きてるの、お前!っていうね(笑)。だからもう道端を歩いていると大体下向いて歩いていますよね」
●なるほど、苔を探して!
「はい! 雨上がりなんて大体下向いて歩いています。スマホ片手に」
●あ、苔を見つけた場合はどうしたらいいんですか? スマホで写真を撮って観察したらいいですか?
「そうですね〜。僕の場合はスマホで写真を撮るんで、都会だと触らない方が、触っちゃうとばい菌とかもあったりするのもよくないので、触らないで写真だけ。観察会に行ったりするとルーペを持って、すごく拡大して見たりとか」
●私の知り合いにも苔好きの女性がいて、苔が可愛い可愛いって言ってるんですけど、どの辺が可愛いんですか?
「本当に都会とかの場合は、やっぱり地べたとかにいるやつはあんまり触らない方がいいって言いましたけど、実際触るとすっごくしっとりしていて、可愛いんですよ。もう本当にね、癒してくれます!
苔ってあんなに小っちゃいんだけど植物なんですね。だから、お水と、明かりが必要なんですけど、被子植物とかだと、やっぱりちゃんとした陽の当たるところじゃないとダメじゃないですか。だけど、苔の場合はLEDライトの光量だけで十分光合成ができるんですよ」
●強いですね〜。
「そうなんですよ! 強いの! かっこよくて可愛くて強いって、すごいですよね!」
●たくましいですね!
「僕が一番大好きなギンゴケっているんですけどね。葉先に葉緑体と言って、緑になる色素みたいなのがないから、先っぽがちょっと白っぽいんですけど、本当に街中で見る、一番都会で見る苔のナンバー1と言っていいくらいの、僕が大好きな苔のギンゴケってやつは、富士山の頂上から南極大陸までいますからね。だからどんな環境でも生き延びることができる種もいたりするんですよ」
●私たちの身の周りにもギンゴケはいますか?
「ギンゴケこそ都会の苔! って言われているくらいです」
●そうなんですね!
*「石倉」さんは苔を使ったオリジナルのグッズを作っていて、例えば、スマホケース。これは本物の木に苔を編み込んだもの。ほかにも苔を植えた指輪などもあります。



東京苔展at 渋谷
*現在「東京苔展〜あなたの傍にそっとコケ」が「渋谷区ふれあい植物センター」で開催されています。石倉さんのほかに、どんな方たちが協力されているんですか?
「苔クリエイターの石河さんにお声がかかって、僕とか苔アクセサリーを作っている吉田有沙さんとか、茨城県自然博物館の学員さんをやられている鵜沢さんとか、あと鎌倉の苔むすびという苔ショップのオーナーの園田さんとか、みんなで。
ほかにも苔仲間で岡山の方に、岡山コケの会という学会というか、そういう会があるんですね。そこの皆さんにもいろいろ苔の写真とかを提供してくださっていて、そういう形で、いわゆる都会の苔をみんなで注目していこう!みたいな、そういう企画展を今やっているんですよ」
●苔の写真がたくさん並んでいるっていうことですか?
「はい! それがまた街並みの苔に限定してみようみたいな、アスファルトの隙間じゃないですけど、そういうそっといる苔、森にいる苔じゃなくて。そういうのに注目していこうと、写真を飾ったり、あとテラリウムという形だったりして、生の苔を来てくださる方に見ていただいたり。
こういう環境ですけれども、ルーペで見られる、大きさとか、霧吹きをかけると葉が開くっていう状態も、コロナ禍対策をしながら消毒もして、ちゃんと皆さんに楽しんでもらえる環境を作ったりっていう、苔展ですね。
今回は渋谷区ふれあい植物センターさんの近くの街並みを、僕と鵜沢さんで、苔散歩を動画で撮りまして、こういう苔がこの街にはいっぱいいますよとか。そこでは鵜沢さんがちゃんと調べた中で、これは何苔ですってこともちゃんと提示してます。だから植物園を出たあとでも、渋谷区の、都会の周りを苔散歩できるというふうにしてますね」
●へ〜! 苔散歩!
「僕らが苔散歩した苔をちゃんと解説している苔図鑑も、来た方には無料でプレゼントしますので、それを片手に都会の苔に触れ合えるきっかけになってもらえたらなっていう感じで、みんなで盛り上がっています!」

苔が好きすぎてYouTuber!
*ほかにも石倉さんは、YouTubeで苔の魅力を発信する動画を配信されているんですよね?
「そうなんですよ! よくぞ聞いていただきました! これもやっぱりきっかけは新型コロナウイルスの影響かもしれないんですけど、いろんな方がYouTubeを始めている中で、僕も結構何年か前からよく居酒屋で苔のことを喋っていたんですね。ここがいいんだ!みたいな、きょう小尾さんに話しているみたいな感じで、熱量を持って喋っていたら、そういうのお前、配信したら? なんて言っていたんですけども。
じゃあやってみようかなと思って“苔道チャンネル”というYouTubeを始めちゃいまして、これがまた5分くらいだったり、対談では1時間くらい喋ったりするんですけれど、どなたでも見やすい、苔に興味がない人でも、こんな風に思っている人がいるんだな〜とか、っていうのが分かってもらえたら。
まぁニッチな世界ではあるんですけれど、こういうことで楽しんでいるとか。あとこういう時代になって、1人でも楽しめること、外に行かなくても楽しめること、外に行っても密にならなくても楽しめることを、なんか自分たちで探していかなきゃいけないのかなって思った時に、あ、俺元々やってたなっていうね(笑)。だったらその楽しさを配信して、じゃあこんな感じでやってみようかなみたいな」
*最後に苔を育てるときに、心がけて欲しいことをお話しいただきました。
「ギンゴケっていうのはね、なかなか苔テラリウムとかには向いていないんですよ、都会にいる苔って。だからくれぐれも地面にあったやつとか、他の方の敷地内のはもってのほかで、苔は採取はしないでほしいんですね。自分の家のお庭だったらいいと思います」
●じゃあホームセンターとかでちゃんと購入して育てるっていうのがいいってことですね?
「そう、ネットでも売っているし。自分の家の敷地内だったらいいんですけど、でも取るとしたら、例えば野球ボールくらいの群落があるとするじゃないですか。だけど、このくらいならいいかなって、ビンに入れようと思って、丸ごと取っちゃダメです」
●あ、ダメなんですか?
「野球ボールくらいの群落になるまで、何年かかっていると思うんですか? と思うわけ(笑)。だから本当に野球ボールくらいだったら、1センチぐらいちょっとだったらいいけど、もうごそっと取っちゃうと、せっかく作った群落の生態系がまたなくなっちゃうから。
苔はちょっとなくなっても、また自分たちで頑張って仲間というか群落を広げていくので、そういう意味で言ったら、購入しないで自分の敷地内から取るとしても、そんなにガサッと取らないで」

INFORMATION
「東京苔展〜あなたの傍にそっとコケ」
都会に生えている苔の写真や、苔の生態がわかるテラリウムの展示ほか、苔に触れる体験コーナー、そして苔散歩の動画の上映、さらに希望者には苔のミニ図鑑をプレゼント!
◎会場:渋谷区ふれあい植物センター。
◎開催:11月23日(月・祝)まで。
◎毎週月曜日は休園。入園料100円。
詳しくは、渋谷区ふれあい植物センターのサイトを見てください。
◎渋谷区ふれあい植物センターHP:https://www.botanical-fureai.com
YouTubeの「苔道チャンネル」、そして石倉さんのオフィシャルサイト「苔園」もぜひご覧ください。
◎苔道チャンネルHP:https://www.youtube.com/channel/UCHMWu4Zh_FqLSS2zE7aDc6g
◎苔園HP:https://kokeen.net