2023/2/26 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、自転車の旅人「坂本 達(さかもと・たつ)」さんです。
坂本さんは1968年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、ミキハウスに入社。95年から99年にかけて、4年3ヶ月かけて、自転車で世界一周、43カ国、55,000キロを走破。その後、出版した本の印税で、お世話になったギニアの村に診療所を建てたり、井戸を掘ったりと恩返し、そして国内で社会貢献活動にも積極的に取り組んでいらっしゃいます。
世界一周の旅については以前、この番組で詳しくお話をうかがったことがありますので、ぜひ番組ホームページのアーカイヴをご覧いただけたらと思います。
坂本さんは現在、会社員のかたわら、親子5人、自転車による「坂本家・世界6大陸大冒険」にチャレンジ中です。きょうはそんな大冒険から、四国のお遍路、そしてスペインの巡礼路の旅についてうかがいます。
☆写真協力:坂本達
四国のお遍路800キロ!
2015年に8年計画でスタートした坂本家「世界6大陸大冒険」は、およそ1ヶ月、長い時には3ヶ月ほどかけて、自転車で旅をするスタイルで、第1ステージのニュージーランド編に始まり、スペイン、ポルトガルほかのヨーロッパ編、続いてカナダ・アラスカの北米大陸編、そしてネパール、ブータンほかのアジア編などを経て、2022年の第8ステージまで終えています。
お子さんは男の子が3人。長男の健太郎くんが小学6年生で12歳、次男の康次郎くんが4年生で10歳、そして三男の大和(やまと)くんが3歳。上のふたりは、だんだん手がかからなくなり、だいぶ楽になってきたそうです。
※それではお話をかがっていきます。
「世界6大陸大冒険」のサイトを見たら、第8ステージまで完了していました。第7ステージは四国に行ったんですよね?
「そうなんです。この年もコロナで海外が全然無理だったので、このタイミングで日本の文化とか日本の土地をまわるのもいいなと思いました。距離的にも文化的にも四国を一周すると約1000キロ、四国は自転車のルートを整備していたりと、お遍路の文化があるので、このタイミングでちょうどいいんじゃないかなと思って、それで四国を選んだんです」
●2021年ですよね?
「はい、2021年ですね。夏休みです」
●期間はどれくらいだったんですか?
「1ヶ月ちょっとです。徳島からスタートして、高知をまわって愛媛、香川でぐるっと一周っていう感じですね」
●自転車で走った距離はどれくらいですか?
「だいたい800キロぐらいだったかなと思います。実はその夏は台風とか雨とかが四国のほうに来ていて、全く走れない日があったりとか、ビーチに行こうと思っても荒れていたり、楽しみにしていた四万十川も濁っていたりと、ずっ〜と走れない日が続いていました。
実は大和がまだ1歳半だったので、妻が大和を車に乗せて、サポートカーっていう形でまわったんですね。
僕と長男と次男は自転車で走って、朝、別々に出発して、途中何ヶ所かで合流してお昼を食べたりして、目的地を大体決めていましたね。ずっと一緒に走ると車のほうもストレスなので、途中途中で会って・・・大和もチャイルドシートでぎゃん泣きしたりしていたので(苦笑)、お兄ちゃんたちがあやしてくれたりとかしながら、時には車に乗って移動したりしていました。本当は1000キロぐらい走れるかなと思ったんですけども、800キロぐらいだったと思います」
●四国のお遍路にはお接待の文化があると思うんですけれど、やはりお世話になったんですか?
「なりました。コロナっていうこともあって、お遍路さんも少なくて・・・例年、特に外国人が多いそうなんですけど、2021年はぜんぜんっていう声をよく聞きましたね。
その分、お遍路宿に泊まっても、私たちしかいないということもあったりで、子供たちが泊まる料金をただにしてもらったりとか、草引きをお手伝いしたら、もう1泊してっていいよとか、ご飯を特別に出してもらったり、おにぎりを持たせてもらったり・・・そういった文化に触れることはすごく多かったです」
再びスペインへ、巡礼路の旅
※続いて、第8ステージについて。2022年7月から8月にかけて、再び、スペインに行っていたみたいですね?
「そうなんです。実は7年前にも同じ道を走っていたので、2回目になったんですけれども、やっぱり小さい子の安全面、交通事故に合わないようにって考えると、どうしても車が通らない道というのを選んで、なかなか海外では少なかったですね。
あと前回、子供たちが巡礼者や現地の人にとても励ましてもらって、走ることができた一体感みたいな・・・世界中の巡礼者が集まってきて、最後は家族みたいになって一緒にゴールするっていう1〜2ヶ月の、そういうルートをまたやりたいと思って、それでスペインの巡礼路に行ったんです」
●どれくらいの走行距離だったんですか?
「旅の期間がちょうど1ヶ月と限られていまして、1ヶ月の間に自転車を(日本から)運んで組み立てて、最後にバラして日本に送るところまでだったので、実質走行したのは3週間ぐらいかな・・・距離にして大体500キロぐらいです。巡礼路自体は1000キロ以上あったりするんですけども、私たちはピレネー山脈を超えた平原が広がるところ、そこの町からだと、だいたい500キロという感じでしたね」
●家族5人で?
「はい、そうです」
●大和くんは、当時は2歳くらい・・・?
「そうですね。2歳半です」
●奥様は不安も大きかったんじゃないですか?
「今回は私の後ろに大和を乗せる感じだったので、妻は自転車の荷物だけで、それほど不安はなかったかな・・・あっ! 暑かったですよね? 日本も。去年は熱波がヨーロッパにも来ていたので、それは大変でしたね」
(編集部注:ちなみに今回のスペインの旅では、自転車4台や装備、ウエアなど、荷物の総重量は130〜140キロほどになったということで、特に海外に行く場合は、大変だろうなと思ったんですが、坂本さん曰く、いろんな意味で覚悟はいるけれど、準備さえしっかりしていけば、海外でも助けてくれるかたはいるので大丈夫ですよと、経験豊富な坂本さんらしいお話がありました)
子供たちの成長
※スペインの旅は、先ほど熱波だったというお話がありましたが、旅の後半に奥様が体調を崩してしまうというアクシデントがあったそうです。そんな状況の中、健太郎くんと康次郎くんがお母さんの自転車を押したり、荷物を持つなど、いろいろ気遣っていたそうですよ。子供たちの成長を感じた旅でもあったんじゃないですか?
「そうですね。特に健太郎は、小学6年生っていうこともあって、体力がついてきましたね。康次郎が初めて自分で荷物を積んだので、その分、妻の荷物が少なくなったんですが、それでも上り坂(標高が)1300メーターぐらいの峠が2つぐらいありますので、健太郎がもっと荷物を持ってあげるって言って、まだまだ軽いから、まだまだ大丈夫とか言って・・・一回、健太郎の荷物を持ったら、むちゃくちゃ重たくて、えっ! こんなに重たいのを持っているの! みたいな・・・そんなふうに何も言わないのにやってくれたりとか・・・。
荷物も、毎日移動しますから、パッキングしたりとか、着いたらすぐに荷物を部屋に運び込んで、今まではこれやって、あれやってっていうのを、もう言わなくても全部自分たちで段取りをやってくれるようになりました。
空港についても自転車の大きい箱を載せたカートを押してくれたりとか、私たち夫婦がやっていたのを子供たちがだいぶ手伝ってくれるようになったので、その辺はすごく成長して本当に助かりました」
●どんどんたくましくなっていきますね! すごいですね!
「はい、ありがたいですね」
●家族5人で、しかも自転車で旅をされていると、いろんな方々から声をかけられたんじゃないですか?
「スペインは本当にいろんな人が当たり前に声をかけてきてくれて、子供たちはもうべらべら喋られるのが嫌だっていうぐらい声をかけられるみたいです。
一回、スーパーに買い物に行った時に、妻が子供たちとメロンを見ていたらしいんですね。そうしたら、おばちゃんがいたので(妻が)”ちょっとメロン高いわね”って話しかけたら、”子供を連れて自転車で冒険していたら、お金もかかって大変でしょう”って言って、子供たちに1ユーロずつ、お小遣いをあげてくれたりとか・・・。
あとは公園に行っても、子供たちに声をかけてきてくれたりとか、巡礼者同士もお互い励まし合って、特に小さい子がいるので、“チャンピオン、チャンピオン”って、”お前はチャンピオンだ、すごいな”って声かけてくれたりするので、むしろひとりにしてもらえないというぐらいな感じで(笑)、本当にスペインは暖かかったし、すごく励まされましたね」
坂本家の旅はまだまだ続く!?
※2015年に8年計画で始まった世界6大陸大冒険は、予定では今年で最終となるはずでしたよね?
「はずだったんですね。さすがに子供も6年生になったら、自分の時間、夏休みとか友達とも遊びに行きたいかなとも思っていたんですけれども、三男の大和が生まれて、年の離れた子がいることで、一緒に冒険にチャレンジしたいって言ってくれているんですね。今年の夏は、どうしようかっていうのも毎日のように話したりしています。
友達とは学校のあととか週末に遊びながら、冒険は冒険でもうしばらく続けようっていう感じで、父としては嬉しい限りですけどね(笑)」
●子供たちの意思を尊重して、続けるだけ続けていこうという感じですね?
「そうですね、はい。でもだんだん子供たちに体力がついていく一方で、私は体力の維持が大変なので・・・(笑)」
●そうですよね(笑)
「ほかにも時間を手に入れるのが私としてはいちばん難しいところ、大変なところですけど、それに向けていろんなことを調整するようにしています」
●それでもやっぱり旅を続けようって思われるのは、どうしてですか?
「なんでしょうね・・・まず私が純粋にやりたいっていうのもありますし、妻が自転車でなければ、出会えない人たちとの出会いが宝になって・・・例えば四国と北海道は妻が妊娠中だったり、大和がちっちゃくて、サポートカーだったんですけど、(妻が)やっぱり出会いがすごく少なかったと、車に乗っていると出会いが半分ぐらいになってしまうと言っていたんですね。
やっぱり旅先で出会った人たちとの出会いって、その後もずっと続いていて、普段の生活では出会えない人たちの出会いとか経験とか、そういうものが何事にも変え難いので、子供たちにとってもすごくいい経験になりますね。
ある意味、教育っていうには違うかもしれないんですけど、異文化を肌で感じて、予定通りにいかないこの自転車のプロセスを、どうやったら解決できるかっていう、答えのないことを家族で話し合いながら進める、そういうプロセスが私は好きですね。
子供たちもだんだん年を追うごとに自分で決められる、意思決定して距離とか泊まる場所とかを決められるようになったので、それを楽しく感じられる、それもあると思います」
旅以外の異文化交流
※坂本家のように家族で自転車旅をしてみたいと思った方にぜひアドバイスをお願いします。
「家族と自転車旅ですか・・・そうですね・・・(家族で自転車旅をしているかたは)いないことはなくて、海外のかたはそれこそ1年とか2年、子供を連れて走っていて、旅先で会うと、”あれ? 子供たちは学校どうしているの?”って聞いたら、オンラインでやってるとかホームスクーリングをやっているんだとか・・・。
現実的な仕事とか学校っていうのはあると思うんですけど、これしなきゃいけないというのも現実にはあるとは思うんですけど、本当にやりたいことが家族での自転車の旅だとしたら、それを中心に仕事もそれに向けて変えて、学校もそれに向けて変えたりとか、そのままで難しかったら、環境を大きく変えてしまうというのが、いちばん難しいんですけど、でもいちばん続けやすいとは思いますね。
ただそうは言ってもなかなか難しいとは思うんですね。コロナもあけてくると思いますし、海外からのサイクリストも日本に来始めていて、家のほうにも泊めてもらえないかっていう連絡が来たりしているので、そういう人たちを日本でおもてなししながら、一緒に家族同士、自転車で旅をしたりとか、家にホームステイして泊まってもらったりとか・・・。
自転車旅だけではないと思うんですけど、海外の人との交流って・・・自分たちが海外に行かなくても、週末だけ子供たちに”ちょっと部屋を貸してくれる?”って言って、海外からのお客さんに泊まってもらったり・・・。
子供たちに、トイレとかシャワーとかタオルとか、使い方を教えてあげないと(海外からの)お兄ちゃんたちが生活できないからって言うと、なんとか案内しながらコミュニケーションを取ってくれたりするんですね。
自転車に限らず、海外の人と交流したりすることは、だいぶできるようになると思うので、今までと違った環境とかホームステイとか、そういうのもいいんじゃないかなって思いますね」
INFORMATION
「坂本家・世界6大陸大冒険」の旅の模様は、オフィシャルサイトに写真とともに詳しく載っています。子供たちの頑張りや成長がよくわかりますよ。ぜひご覧ください。詳しくは、坂本達さんのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎http://www.mikihouse.co.jp/tatsu
坂本さんは、世界一周の旅の経験を子供達に伝える活動もされています。そのひとつがベネッセのオンライン対話型ライヴレッスン「未来キャンパス」、3月後半から4月に開催予定とのことです。詳しくは以下のサイトをご覧ください。