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地球一周の大冒険「Globe 40」! MILAIの激闘に迫る!

2023/6/25 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、セーリング・チーム「MILAI」のスキッパー「鈴木晶友(まさとも)」さんです。

 稲毛ヨットハーバーのジュニアヨット教室に参加したことがある鈴木さんは、ヨットで地球を一周したい、そんな夢を抱き、なんのツテもなく、単身フランスに渡り、地道な活動を経て、ついにはセーリング・チーム「MILAI」を結成します。

 このチームはスキッパーの鈴木さんのほかに、セーリング・パートナーとして「中川絋司(なかがわ・こうじ)」さん、そしてフランス人の女性ふたり「エステル」さんと「アン」さん、イタリア人の「アンドレア」さんの、5人から成る国際チームなんです。

写真協力:Team MILAI

 そんなセーリング・チーム「MILAI」が挑戦したのが、初開催となった「Globe 40(グローブ・フォーティー)」。全長12メートルのヨットにふたりで乗って、地球を一周する外洋ヨットレースなんです。

 2022年6月にモロッコのタンジェをスタート、途中7箇所の港に寄り、8つのレグ(区間)を、およそ9ヶ月かけて、ゴールのフランス・ロリアンに戻る大冒険です。総距離はおよそ55,000キロと想像を絶します。

 今週は、そんな壮大なレースに挑戦し、見事完走を果たしたセーリング・チーム「MILAI」のスキッパー、鈴木晶友さんをお迎えし、「Globe 40」の激闘に迫ります。

☆写真協力:Team MILAI

写真協力:Team MILAI

第1レグはトップ! 第2レグは嵐!?

前回のご出演がちょうど1年前の6月ということで、その時はリモートでお話をうかがったんですけれども、今回はこうしてスタジオにお越しいただきました。ありがとうございます!

「初めまして! 今さらになりますが、よろしくお願いします」

●いや〜やっとお会いできました! よろしくお願いいたします。帰国後、いろいろ報告会とかも開催されたそうですけれども、いかがでした?

「思っている以上にみなさんが歓迎してくださって、やっと帰ってきてくれたねって言っていただきました」

●私たちもですよ~。

「ありがとうございます。ベイエフエムのみなさんにも歓迎していただいて、嬉しいです。 本当に自分が帰ってこられたなっていうのを嬉しく思います」

鈴木晶友さん

●鈴木さんがチームを組んで挑戦された、地球を一周する外洋ヨットレース「Globe 40」を振り返っていきたいと思うんですけれども、結果としては当初の目標だった完走を見事果たして、総合3位でフィニッシュしました。本当にお疲れ様でした。

「ありがとうございました。思っていた以上に地球は大きかったですね(笑)。でも本当に3位でフィニッシュすることができて、ただただ嬉しいです。

 もちろんもっといい成績を狙えたかもしれないんですけれども、私たちは地球一周を達成するということが目標だったので、今回しっかりと、こうやってフィニッシュできて、みなさんにいい報告ができて、本当に嬉しいですね」

●第1レグ、これはモロッコのタンジェからアフリカのカーボベルまでの区間でしたけれども、トップでゴールされたんですよね!

「そうなんですよ」

●これは思い通りのレースでしたか?

「手応えよくて最初からよかったですね。カーボベルまではだいたい貿易風に乗るまでの海域になるので、基本的に追っ手の風で走っていけるんですね。距離も3,000キロなかったかな、2,500キロぐらいだったので、最初の第1レグとしては、慣らし運転ってわけじゃないですけど、無理しないで行こうと思っていたんです。すごくいい走りができたので、本当にいい第1レグを走ることができました」

●幸先のいいスタートでしたね。

「そうですね」

●続いて第2レグは、カーボベルデからモーリシャスまでのレースでした。ここが今回の大会でいちばん期間が長いんですよね?

「そうですね。全体で39日間かけて、アフリカ大陸をぐるっとまわって、モーリシャスまで行きました」

●1ヶ月以上ということですね。

「海の上で1ヶ月以上ですね」

●これはやっぱり難しいコースでもあったんですか?

「8月だったので、まだ南半球は真冬なんですよ。その真冬にアフリカ大陸の下をぐるっとまわるのは、結構大変なコースだったので、すごい嵐もありましたし、あと潮の流れも速くて、すごく難しくて、きついレグでしたね」

鈴木晶友さん

●で、この第2レグでトラブルに見舞われたんですよね。

「早速ね(苦笑)」

●何が起こってしまったんですか?

「南アフリカのケープターンをまわる直前に嵐にあいまして、その時に、ヨットの下にぶら下がっている、船のバランスを保つための、2トンの鉛が付いている『キール』っていう重りが、船の揺れでちょっと動き出してしまったので、急遽ケープタウンに入港して確認をすることを決めました」

●その「キール」が機能しないと、どうなるんですか?

「転覆しちゃうんですよ」

●えっ~~〜!

「キールが機能しないで、下手したら落ちてしまうと、もう船はバランスを失って
転覆してしまうので、いちばん大事なパーツなんですね」

●それで、どうやってリカバーしたんですか?

「最初にキールが動き出してしまって、ちょっと危ないなと・・・ただこのまま走ることもできるかもしれないってことだったんですけど、まだ地球一周、先が長いので・・・」

●そうですよね。

「とりあえずここで1回確認をしようということで、一時的に緊急入港して確認をして、応急処置をして、またスタートしたっていう感じですね。2日間ケープタウンにいました」

第6レグで、最大のアクシデント!?

*第2レグでアクシデントに見舞われたMILAIでしたが、レースに復帰後、本来の実力を発揮し、ニュージーランドのオークランドからタヒチのパペーテまでの第4レグと、パペーテからアルゼンチンのウシュアイアまでの第5レグは再びトップでゴールしたんです。

写真協力:Team MILAI

 これは、2年かけて、セーリング・パートナーたちとの練習や、船の整備も含めて、いい準備ができていたから、ということなんですが・・・

 今回の「Globe 40」で最大の危機がやってくる、ウシュアイアからブラジルのレシフェまでの第6レグです。今年1月にスタートして、アルゼンチン沖でまたもやアクシデントに見舞われてしまうんですよね?

「スタートして4日目にアルゼンチンの沖で、未確認浮遊物体に衝突しました。これは、本当に何にぶつかったかわからないです。 生き物なのか、コンテナなのか、木なのか、わからないですね。

 明け方に急に船が(何かと)衝突して、船が止まってしまいました。まずは船の状態を確認しようということで、全部確認をしたらかなりの損傷だったので、一度レースから離脱しようということを決めました」

●ケガとかは、なかったんですか?

「ケガは大丈夫でした。実は私は寝ていたんです。寝ていた時に急な衝撃で起きて、船の中はガラスファイバーが壊れる臭いというか・・・」

●じゃあ、また再び修理をしてっていうことですよね?

「そうです。いちばん近い岸がおよそ1,000キロの距離で、マル・デル・プラタ(*)という港があることがわかったので、4日間かけて、まずはマル・デル・プラタを目指すことにしました。とはいっても、船は結構損傷が激しかったんですね。4日間、船の修理をしながら陸に向かっていましたね」
(*アルゼンチンのブエノスアイレスにある港湾都市)

●壊れた状態で4日間過ごしていたんですね。

「そうなんです」

●不安もありましたよね?

「またもや、キールなんです」

●またですかー!?

「キールがぶつかってしまったので、船から取れて落ちる状態に近くなってしまったんですね。なので、船の中でできる補強をしながら、船のまわりにコンビニとかないから、船にあるものだけを使って修理をしながら岸を目指しました」

写真協力:Team MILAI

●修理をして、またレース続けようっていう決断をされたわけじゃないですか。そう簡単じゃないと思うんですけど・・・。

「まずは入港したマル・デル・プラタに、ヨット・レース用のヨットを修理する設備がなかったんですね。なので、その設備を作るところを探したり、船を乗せる台を作ったり、人を見つけたり・・・で、全部で1か月以上かけて船を直すことになったんです。

 自分が知らないところで、本当にここで船を直せるのかなっていう・・・直したあとに、またあと1万2000キロも走んなきゃいけないんですよ。 大丈夫かなっていう決断をするのは難しかったですね」

●もうやめようって思うことはなかったですか? 諦めちゃおうって・・・。

「100回ぐらい思ったかも(笑)」

●そうですよね~。

「やめて、それこそ貨物船に船を乗せて、フランスに帰るっていうことも、本当に何回も考えたんです。でもヨットの成績は置いといて、レースの成績は置いといて、自分たちの目標は世界一周を達成することなので、その可能性を探り続けて、これならしっかり船を直してフランスまで帰れるなっていうのを、自分で確認して修理することを決めました」

写真協力:Team MILAI

●そういう思いが支えになったわけですね。

「あとね、応援してくださる方々がたくさん、本当心配してくださって、エールだけでもなくて、いろいろアドバイスをくれたりとか、ここに聞いたらいいんじゃないかとか・・・やっぱり日本の方々からの、そういったサポートもすごく嬉しかったですね」

(編集部注:鈴木さんたちはおよそ1ヶ月かけて、船を修理したわけですが、当然その間もレースは続いていて、結果、鈴木さんたちは第6レグから第8レグまでは「リタイア扱い」になったんです。

 それでも完走し、総合3位になったのは、鈴木さんの説明によると、「Globe 40」は地球を一周するレースなので、設定したコースを通ってゴールのフランス・ロリアンに戻ってくれば、完走扱いになるとのこと。

 また、8つのレグのうち、第1レグから第5レグまでの間に3回トップになり、その時点で総合2位だった、つまり貯金があったので、後半3つのレグをリタイアしても、ロリアンに戻ってきたので、総合3位と認められたそうです)

楽しいセーリング、そして喜ぶ顔

※再スタートを切って、ロリアンまでの航海は、気持ち的にはどうでしたか? レースというよりは、外洋の航海を楽しむ感じになったんじゃないですか?

「途中で、それこそちょっとルアーを作って釣りをしてみたりとか・・・もちろんレースじゃないですか。今回はレースではあるけれども、ほかのレース艇はいなくて、無事にフランスに帰ることが大切なので、風がない時はそうやって少し、自分でルアーを作って(海に)流してみたりとか・・・釣れなかったですけどね(笑)」

●でもちょっと(航海を)楽しむ余裕みたいなものもありましたよね?

「初めて! 余裕を持ったセーリングができたっていうのは、本当に初めてでしたね。いつもやっぱりライバル艇と1分1秒を競って、少しでも早く走んなきゃいけないっていうのがあったんですけど、今回は無理せずに、無理しすぎずにフランスに帰ることが第一目的だったので、少し気持ち的な余裕もあって楽しかったですね」

●船の上で出会った、忘れられないシーンはありますか?

「いちばん印象に残っているのは・・・やっぱり生き物が世界一周、地球を一周してく上でたくさんいるんですよ。たとえば、鳥。僕はそんなに鳥に興味はなかったんです、正直に言うと・・・。

 でも地球を一周していく中で、鳥の種類、大きさ、色、性格が移動していくごとにどんどん変わっていくんですよ。きょうの鳥はちょっと色が変わったなとか、なんかきょうは種類が変わったなとか・・・それを地球の上を移動しながら、その変化を見てこられたのが、僕の中で、すごくいいもの見たなって思いましたね」

●ある意味忘れられないレースになりましたね。楽しめたレースというか・・・。

「はい、最後の大西洋、フランスまでは、本当に楽しいセーリングでした」

写真協力:Team MILAI

●最終的には当初の予定よりは1カ月遅れになりましたけれども、最終ゴールのフランス・ロリアンに無事に戻ってこられて、その時のお気持ちはどうでした?

「ただただ嬉しかったですよ。僕ら船の上で無線をいつもオンにしているんですね。船同士、走るための、話すための無線をオンにしているんですけれど、フランスに近づいてきて、久しぶりに無線からフランス語が聞こえてきた時に、あっ、帰ってきたんだなっていうのを感じましたね。

 やっぱり世界一周していると、その国の言語なんですよね、無線が。なので、久しぶりにフランス語を聞いて、あっ、本当に帰ってきたな、いよいよだなって思いましたし、フィニッシュ・ラインが見えた時に、お迎えの人たちがボートで来てくれて、すごく嬉しかったですね」

●奥様も喜ばれたんじゃないですか?

「ねっ! 本当にみんな喜んでくれて、なんだろう・・・僕以上に自分たち以上に家族だったりとか、あとはレースを応援してくれたフランスの方、日本の方、現地に来てくれた日本の方々がすごく喜んでくれたので、みなさんの喜んでくれる顔を見られて嬉しかったですね」

写真協力:Team MILAI

メンタルをポジティブに

※レース中は、睡眠はパートナーと2時間交代でとって、天候が荒れたら食事もとれないですよね。そんな中、毎日どんなことを考えていたんですか?

「もちろん船のセーリングを、しっかり安全なセーリングをしなきゃいけないので、船を走らせることをまずは考えるんですけども、それプラス、やっぱり(レグの)期間が長いじゃないですか、1ヶ月間かそれ以上・・・。

写真協力:Team MILAI

 船の中では、2〜3畳間くらいのスペースにふたりでずっといるので、メンタルをちゃんとキープしようと・・・。お互いの、ふたりの雰囲気もよくしないといけないし、自分自身の気持ちもよくしなきゃいけないので・・・いちばんメンタルをキープしやすいのが、あと何日でゴールできるかなっていうのを、僕はずっと頭の中で計算してましたね」

●カウントダウンということですね。 

「たとえば1ヶ月、30日間かかるレグだとしても、3日終われば、これで10分の1、終わったんだなとか。たとえば5日目とかになると、もう6分の1終わったんだなとか、ポジティブにポジティブに考えながら、日々過ごしていましたね」

(編集部注:ちなみに天候が安定しているときは、読書をしたり、映画を見ることもあったそうです。でも、気持ちはどこかオンのままだったとか)

自然のサインを読み取る!?

写真協力:Team MILAI

※ヨットレースは、刻々と変化する気象を読んで、いかに風をつかむかが大事だと思うんですけど、これは経験を積むとわかるようになるんですか?

「最初は、インターネットが海の上でも使えるんですよ。飛行機の機内wi-fiみたいな形でインターネットにつながるので、そこで天気のデータをダウンロードして、1週間2週間先までの自分たちの航海計画は毎日立てるんですね。

 ただやっぱり予報なので、海の上で天気がガラッと変わったりするんですね。その時はやっぱり勘かな、経験かな・・・雲を見たりとか、途中、たとえば湿気が多くなってきたなとか、匂いが少し違うなっていうのを・・・」

●匂いまで!?

「体で感じて、それで早めに、セイル(帆)を小さくしたり、大きくしたり、方向転換したり・・・予報が外れた場合は、自分の勘で(船を)走らせるっていう感じですね」

●そういったわずかな自然のサインをすべて感じ取るんですね。

「そこがすごく大切です。それをちゃんと感じないと、船が壊れちゃうかもしれないし、そうしたら自分の力でゴールできないかもしれないので、そこが大切なところですね」

もう1回、地球一周したい!

※今回初めて開催された外洋ヨットレース「Globe 40」に挑戦し、そして完走を果たした今、鈴木さんの中にどんな思いがありまますか?

「本当にありがたいことに、この「Globe40」を通じて、世界一周を体験することができたので、日本全国のヨットをやっている方、何かに挑戦したいなと思っている方に、この体験、経験をお話しさせていただきたいなと思っています。

 まずはこの1年、2年かけて、日本全国をまわって、世界一周の体験をいろんな人にお伝えしようと思っています。あとはこの世界一周の体験がすごく楽しかったし、自分自身も挑戦することが好きなので、まだ今は明確には決まってないですけど、次の挑戦を決めて、それに向けて活動したいなとも思っています」

●漠然と、なんとなくはあるんですか、次の目標が?

「ねえ~何かな・・・はっきりとは言えないけど、やっぱりセーリングが好きですし、地球一周もすごく楽しかったので、もう1回、地球一周したいなと!」

●またお話を聞かせてくださいね、その時に!

「ぜひ!」

●では鈴木さんにとって、ヨットとは?

「難しい質問ですね(笑)。ヨットとは・・・まぁ僕そのものかな。自然の力で自分の力で、大陸と大陸の間にある海を横断できる、地球の上を移動できる、それを叶えさせてくれるのがヨットであるし、それに乗れるのが自分であるので、これからもヨットに乗り続けていきたいなと思います」

鈴木晶友さん

INFORMATION

 セーリング・チーム「MILAI」や「Globe 40」の激闘の模様、そして近況についてはオフィシャルサイト、または「MILAI」のfacebookをご覧ください。

◎「MILAI」HP:https://milai-sailing.com

◎「MILAI」Facebook:https://www.facebook.com/milai.aroundtheworld/

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