2023/10/22 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、動物行動学者の「新宅広二(しんたく・こうじ)」さんです。
新宅さんは1968年生まれ。上智大学大学院、京都大学霊長類研究所を経て、上野動物園、多摩動物公園に勤務。その後、国内外のフィールドワークを含め、400種以上の野生動物の生態や飼育方法を修得。専門は動物行動学と教育工学。
そんなキャリアを活かし、国内外のネイチャー・ドキュメンタリーや科学番組、そしてきょう解説していただく動物フィギュア「アニア」などの監修も担当。さらに国内外の動物園や水族館、博物館のプロデュース、また、大学や専門学校で教鞭をとるほか、これまでに『しくじり動物大集合』や『危険生物最恐図鑑』など、生き物に関するユニークな本を数多く出されています。
そんな新宅さんの新しい本が『あなたにゴリラを処方します。悩みがちょっと軽くなる動物の読み薬』。
この本は、私たち人間が抱えているお悩みに対して、「ところで、動物たちはどうしているんだろう」という観点から、読者から寄せられたお悩みに、動物を処方するという設定で動物の生態や行動を紹介。くすっと笑えて、少し心が軽くなる、読むお薬になっているんです。
そこできょうは、私たち人間が抱えているお悩みを、動物行動学の視点で分析していただくほか、新宅さんが監修されている動物フィギュア「アニア」についても解説していただきます。
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寝相のお悩みにパンダ!?
●この本は7つのチャプターに分かれています。まずは、チャプター1「小さな悩み」から「寝相が悪いんですけど・・・」という33歳の女性のお悩みに、ジャイアントパンダが処方されています。 これはどういうことなんでしょうか?
「私の中でいちばん寝相の悪い動物は何かなって考えた時に、ジャイアントパンダだったんですね。 私は上野動物園にもいましたので、やっぱりあの寝相や寝姿がヴァリエーションが多くて、非常に面白いんですよね」
●どんな寝方をするんですか?
「普通の動物にとっては、お腹は骨がない部分で、いちばん急所なんですよね。寝るっていうことは、いちばん無用心になっちゃうので、お腹をさらすっていうことはないんですよね。いちばん大事な部分を下にして、丸くなって寝るのが大体の動物ですけど、パンダは文字通り、大の字になってグーグー寝ますから」
●お腹、全開!
「もうお腹を全開にしちゃって寝ますからね~。寝姿の悩みはパンダに聞いてもらったほうが・・・(笑)、パンダがなんと言っても、寝姿の最高の進化を遂げた動物なんですよね」
●すごいですね! 安全性は大丈夫なんですか?
「これは、実は生態とも関係しているんですね。パンダは(標高)4000メートル以上に棲む、すごく高山の動物なんですよね。だから天敵がいないので、用心する気持ちが、長い進化の過程でなくなっちゃったんです。なので、動物園で飼うようになっても不用心な姿で寝るようになっているんですよ。野生の緊張感の高い生態で暮らしているような動物たちは、なかなかお腹丸出しで寝るってことはないです」
●続きまして、チャプター2「容姿性格の悩み」から「ダイエットに失敗しました」という24歳の女性からのお悩みにクマが処方されていますけれども・・・。
「ダイエットとリバウンドの最強の動物と言えば、クマですね」
●痩せたり太ったりっていうことですか。
「動物の中でいちばんその差が大きいですよね。よくご存じかと思います。例年秋口に、冬眠に入る前なんかにクマのトラブルの問題が報じられますよね。あれは食い貯めをしとかなきゃいけないので、どんぐりとかいろんなものを食べ漁って、1日5000キロカロリーっていうとんでもないカロリーモンスターですから、それを取っていくんです。
一方、半年間1日5000キロカロリーも食べるような食生活をしたかと思うと、それ以降、半年間の冬眠では1滴も飲まず食わずの減量期間で、冬眠明けの春には激痩せして出てくるんですよね」
●え~〜、なんだか人間としては体に悪そうって思っちゃいますけど・・・。
「もうすごいですよね〜。ですから、その生理のメカニズムがまだ完全に解明しきれていなくて、医学的にも非常に注目されているんですよね。冬眠がどういうメカニズムになっているのかっていうのは、まだまだ謎が多くて面白いんですよね」
●そんなに体重が変化していても、健康状態は別に悪化したりっていうのはないんですよね?
「そうですね。飲まず食わずというだけじゃなくて、おしっこ、うんちもしないっていうところが面白いとこなんですよね。毒で体に貯めておくといけないものをエネルギーに変える能力が、実はクマにはあるんですよね」
●え~! すごいですね~!
仕事のお悩みにミツバチ!?
●では、チャプター3「仕事の悩み」から25歳の女性、「仕事が楽しくなくて」というお悩みに処方箋がミツバチ。で、次のページに37歳の男性からの「働かないとダメですか?」という悩みに対して、ミツバチのオスを処方されています。これはどうしてミツバチなんですか?
「ミツバチは面白いんですよね。無脊椎動物、どういう点を見るかにもよるんですけど、脊椎動物でかなり社会性が複雑になって頂点を極めているのは、ひとつは人間もあるかと思うんですけれども、その対極って言うんでしょうかね。無脊椎動物で非常に複雑な社会に進化させているものがミツバチなんですよね」
●ミツバチ!?
「特に分業で、仕事が割り当てられていて、それがいろいろ選べるって言いますかね」
●例えば、どんな分業がありますか?
「例えばですけど、ミツバチの働きバチ、“ワーカー”って言われているのは、みんな実はメスなんです。まだ羽化したばっかりの時は、いろんな経験を積んでいないので下手くそなんですよね。だからまず、お掃除係から訓練して・・・」
●へ~〜! 下積みみたいですね。
「下積み期間があって、そこでいろいろ学んでいくと、今度は育児、卵とか幼虫の世話をする仕事に昇格して、経験を積んでいくと、門番と言って、巣のところで見張りをしたりするんです。例えば、クマとかいろんな天敵が蜜を盗みに来たりして、そういうのから守るガードマン役をやったりするんですね。
だんだん配属を変えていきながら出勤して、OJT(*)みたいにやってですね。いちばん究極に難しいのは、餌を採ってくること。それまでは内勤の仕事なんですよね。これが外勤バチって言われるんですけど、外に出て花の蜜を探して採ってくる作業は、かなりの経験が必要で、仲間にそれを伝えなきゃいけないんですよね。
何キロも先の餌源(えさげん)がどっちにあって、それがどんな食べ物なのかっていうのを伝えて、みんなで採りに行くんですけど、いちばんベテランになると、そういうのができるようになってくるので、きっとそういう仕事の中で楽しみを選べるかもしれないですね(笑)」
(*On the Job Trainingの略 )
●なるほど! 確かにそうですね。ところでミツバチのオスっていうのは?
「一方で、面白いんですけど、オスがほとんどいないんです。ちょこっとはいるんですね。何千匹、何万匹いる中で、数匹いたりするんですけど、それの役割がよくわかっていないんですね。もちろん卵を産ませるっていう仕事はあるんですけど、それ以外は巣の中でうろちょろしているんです。別に餌を採りに行くわけでもなく、お掃除するわけでもなく、育児を助けるわけでもなく・・・」
●メスがこんなに忙しく働いているのに!
「(メスが)命がけでやっていても、(オスは)何にもしてなくて、ぼーっとしていて、うろうろしているだけで、時々蜜なんかをちょっとつまみ食いなんかしてっていうように、働かないバチなんですよね、オスっていうのはね。
だからすごく両極端で、でもそれが進化的に淘汰されてもいい、そういうものができるだけ存在しないような形にも進化的にできたでしょうが、なんとなくそういうものも生きていける余裕を残してくれている面白さっていうのが(ミツバチの)進化の中にありますよね」
●では、働かないとダメですか? っていうこの37歳男性のお悩みには・・・。
「まあ、ミツバチをお手本にしたらいいかもよ! っていうところですね(笑)」
ビーバーはマイホームパパ!?
●続いてチャプター4「家庭の悩み」から「マイホームを持つのが夢」という38歳男性からの悩みですね。悩みというか願望なんですけれども、処方箋がビーバーとなっています。これはどういうことでしょう?
「このマイホームパパを代表したような動物がビーバーなんですね。ビーバーはネズミの仲間で水辺、水性に適応して進化した動物なんです。木を切って川をせき止めてダムのようなものを作るのは、割とみなさんイメージとしてあるかと思うんですけど、(川の)真ん中のところに木を集めて巣を作るんですよね。
天敵の泳げない猫科の動物なんかは水を嫌ったりするので、水の中に行けないんです。生き残るために機能的な巣を作っているんですけども、実はそれだけじゃなくて、このビーバーのお父さんはメンテナンスもすごくこまめにやるんですね。自分で作ったお家が大好きで、枝の角度とかそういうのを、ちょっと気にいらないと直したりとか・・・」
●DIYみたい!
「DIY! ひとりでね! 子供とか呆れているかのように、またやっているよ! っていう感じで、お父さんがすごく一生懸命、家のメンテナンスを欠かせないんですよね。
私は動物園にいた時にビーバーに実験したことあるんですね。ダムが決壊したりした時に補修をするのもビーバーのお父さんの仕事なんです。すっ飛んで行って泳いで、枝とかをあてがって補修をするんですね。
水の流れる音を、おトイレのジャ〜って流す音を録音して、飼育しているビーバーに聴かせたら、ビーバーがものすごいダッシュで飛んできて、“どこですか? 壊れてるの! どこ?”って感じで、直す気満々で。それぐらい、なんて言うんでしょう、子供を守る以前に、マイホームのメンテナンスに命をかけているぐらいの面白い動物ですよね」
動く動物フィギュア「アニア」
※新宅さんは、タカラトミーの動物フィギュア「アニア」の監修もされています。この「アニア」、陸や海の動物をはじめ、鳥、昆虫、恐竜など、幅広いジャンルの生き物、およそ100種類ほどが販売されていて、子供はもちろん、大人にも大人気なんです。
●きょうはスタジオにたくさん持ってきていただきました。ありがとうございます。ゴリラとかキリンとか、サイとかパンダとか、いろいろな動物がいますけれども、よくできていますね~!
「このアニアは、動物フィギュアとしてもちょうど10周年になって、だいぶラインナップも揃ってきたんです」
●すごい! 質感もしっかりしているというか、合皮のような感じで・・・。
「そうですね。普通の動物フィギュア、いま世界中で割と大ブームになっているので、いろんな精工なものがありますけど、その多くが飾って楽しむようなものがほとんどなんですね。アニア はやっぱり玩具メーカーのものなので、遊んでもらうためのものっていうことで、いろいろ動く部分があります」
●首とか足が動いたり・・・これはハヤブサですね。羽も動くんですね!
「ぜひハヤブサを作って欲しいなと思って、開発チームの人にお願いして、特に400キロ出せる、飛ぶ時の姿を再現したくて・・・ハヤブサは最高速が出る時は、身体を畳んで弾丸のような形になって、“ストゥープ”っていう飛び方になるんですけど、それで400キロ出すんですよね」
●かっこいいですねー!
「かっこいいですよね!」
●リビングにオブジェとして飾っておきたくなるぐらい大人も楽しめますね!
「そうですね!(アニア)は子供向けとして作っているんですけど、割とそういうちょっと映える感じで遊びでやっているかた、多いみたいです」
●かっこいいです! ゴリラの親子も凛々しくて、かっこいい~。
「そうなんですよね。ゴリラは猿の中では(子育てに)唯一お父さんがいるんですよね。ハーレム型の社会構造なので、そういうメッセージを遊びながら(学べるように)・・・ほかの動物はお父さんがあまり存在しないんですよね。だからこのゴリラに関してはお父さんがけっこう赤ちゃんや子供を、ちょっとあやしたりなんかすることもあるので、そういうので遊んだらいいんじゃないかなと思って選んでいますね」
●特に人気のあるフィギュアって、どれになるんですか?
「そうですね・・・いろんなギミックが盛り込まれて、最近出ているのだと、カメレオンで舌が伸びるような・・・」
●ビヨ〜ンって伸びるんですね~、すごーい! 面白い!
「あと、アルマジロが丸くなるとかね」
●まん丸に! コロンコロンになるんですね!
「ただそれで遊ぶだけじゃなくて、ごっこ遊びみたいに、いろんな物語を作ったりとかしてやると、すごく楽しいものになるので、そういう遊びかたをしてくれたらいいなっていうのを想定して、動く部分だとか動物の種類を選んだりとか、そういうのを考えていますね」
●制作する時に心がけていることってありますか?
「私の専門が動物行動学なので、(アニアは)飾り用のフィギュアではなくて、ここの部分を使って遊んでほしいな! っていうのを盛り込みたいので、その動物の特徴的なところに稼働部分をつけたりとかしていますね」
●やはりリアリティーは大事にされているってことですね?
「そうですね。それで遊んでもらうっていうかな、動かしてみて、いろんな気付きとか発見とかもありますので・・・」
(編集部注:「アニア」の監修を担当されている新宅さんによれば、ひとつの動物の制作期間はだいたい1年ほど。中には構想から完成まで2〜3年かかるものもあるそうです。また、古生物に関しては、研究資料などで調べても、体の色まではわからないので、こんな色にしてみませんかという大胆な提案もされるとか。
ちなみにカバは、お風呂でも遊べるように浮くようになっているそうですよ。動物の生態をもとに、子供たちが遊べるように工夫されているんですね)
人間だけの特性「笑い」
※新宅さんは、これまで数多くの動物を調査・研究されてきました。そんななか、今回の新しい本もそうだと思うんですが、「人間」という動物を探究しているようにも感じます。そのあたりは、いかがですか?
「なんて言うんでしょう・・・一瞬忘れがちですけれども、ついつい自分とか、人間っていうものが動物であることをうっかり忘れちゃうというか・・・我々は違うって考えがちなんですけど、共通点とか違いっていうのを、動物を調べることで、見えてくるものもたくさんあるので、そういうところはいちばん興味ある部分ですね」
●先日、人類学者のかたに「人類学とは人間とは何かを問う学問だ」っていうふうに教えていただいたんですけれども、動物行動学的に見て人間っていうのはどういうものなんでしょうか?
「難しい質問ですけれども、どこが逆に人間が動物っぽい部分なのか、そして動物っぽくない部分ってなんなのかっていうのは、すごく整理していきたいなと思っています。そんな中で例えば、突出して面白いのは、いくつかあるんですけど、ひとつは、“笑い”・・・動物って笑えないんですよね。
笑うっていう表現はやっぱり人間の、動物の行動としてはかなり特殊なもので、面白いユニークなものですよね。笑いっていうのは面白いから笑うっていうだけではないですよね。
その場を取り繕ったりだとか、相手をリラックスさせるとか、一緒に笑うとか、敵意がないこと示すとか、いろんな要素をそこに組み込んで、言葉を使わずに、つまり人間の中でも言語を使わないで、敵意がないことを伝えたりとか、そういうことができるユニークなツールになっていますよね」
●確かにそうですね~。ということは、まさに人が人にしてあげられる処方箋といえば、笑いになるんですかね。
「そうですね。やっぱりそこも面白いんですけれども、人は、赤ちゃんで生まれてまだ歩けない、寝返りも打てないようなレベルで、最初に笑うんですよね」
●笑っていますね、確かに!
「“新生児微笑”って言って笑うんですよね。あれは別に赤ちゃん、おかしくて笑っているわけじゃないんですね。 おそらくそういうものが人間にとっていかに大事か、順番としても最初にそれをやらなきゃいけない、練習しなきゃいけないっていう順番が、歩くよりも先にそれをやる、何かそこに鍵があるような気がしているんですよね」
●ほかの動物にはない、人間ならではの特性ですね。面白い!
「いろんなこじれたこととか、ストレスとかそういうのも、笑いっていうのは自分に対しても向けられるので、悩みを笑い飛ばすとかね。そういうふうにできると少し(気持ちが)軽くなったりすることもありますよね」
●そうですね!
「笑いを上手に使いこなせるようになると、悩みとか、あと人との関係、ギクシャクしたり喧嘩してしまったものも、笑いとか冗談で、一転して仲良くなったりってことはありますからね。すごく大事にしたい行動ですよね」
☆この他の新宅広二さんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
『あなたにゴリラを処方します。悩みがちょっと軽くなる動物の読み薬』
新宅さんの新しい本、おすすめですよ! 人間のお悩みに対して、動物を処方する形式をとりながら、生き物の生態や行動をわかりやすく解説しています。ひとつの項目が見開き2ページで完結しているので、とても読みやすいです。イラストは以前番組に出てくださった「きのしたちひろ」さんです。ぜひイラストもチェックしてください。
エムディエヌコーポレーションから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎エムディエヌコーポレーションHP:https://books.mdn.co.jp/books/3222103055/
新宅さんの近況についてはぜひfacebookを見てください。
◎新宅広二さんfacebook:https://www.facebook.com/koji.shintaku.7/
新宅さんの本『あなたにゴリラを処方します。悩みがちょっと軽くなる動物の読み薬』と、タカラトミーの動物フィギュア「アニア」の「サバンナの人気動物セット」を合わせて、3名のかたにプレゼントいたします。 応募はメールでお願いします。
件名に「プレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
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