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「エコロジカル チャイルド」〜沖縄の海からもらった恩恵を、沖縄の子供たちに還したい

2025/12/28 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、沖縄在住の水中写真家「石野昇太(いしの・しょうた)」さんです。

 石野さんは、ダイビングショップの経営者3人と立ち上げた一般社団法人「エコロジカル チャイルド」の代表理事でもいらっしゃいます。

 石野さんは東京生まれ、沖縄育ち。立教大学卒業。大学時代に先輩に地球の3分の2は海、その海の世界を見たくないかと誘われ、ダイビングサークルに入部し、スキューバダイビングのライセンスを取得。現在は水中写真家、そしてプロダイバーとしてダイビングツアーを企画するなど、ガイドとしても活躍されています。

 そして3年前に立ち上げたエコロジカル チャイルドは、地元沖縄の子供たちにシュノーケル体験を提供する活動からスタート。現在は一般社団法人として、活動の幅を広げていらっしゃいます。

 きょうはエコロジカル チャイルドで行なっている子供たちの海の体験イベントや、石野さんの海への思い、そして、今年出版した、『神秘的で美しい 海の生きもの図鑑』のことなどうかがいます。

☆写真協力:石野昇太

石野昇太さん
写真協力:石野昇太

海の美しさ、大切を子供たちに

※どんな思いで「エコロジカル チャイルド」を始めたのか、教えてください。

「私たちプロダイバーは、日頃から海に接して働いているという職業なので、もともと海への関心は高い部類にいるんですね。それは私たち自身が海の価値を身近に感じているからなんじゃないかな~と思っています。

 もともと沖縄に暮らす人々は、あまりマリンレジャーに関心がある人っていないんですけど、もっと地元の人に海の価値を知ってもらいたいというような思いから(エコロジカルチャイルドを)スタートしました。

 エコロジカルチャイルドの発想っていうのは、子供の頃から自然に触れていれば、自ずと自然を大切にする大人に育つよねっていう考えからスタートしています。

 私自身、弟と年の離れた妹がいるんですけど、子供の頃から弟と私は、沖縄に里帰りしていることが多かったんですね。そのせいというか、沖縄の文化に慣れ親しんでいる幼少期を過ごしたんです。今は弟も沖縄に移住してきていて・・・。

 一方で妹はけっこう年が離れていて、あまり里帰りしていないんですよね。なので、あまり沖縄には興味はなさそうなんですけど・・・。

 だから・・・何て言うんですかね・・・自由に暮らしている兄ふたりを見て、(妹は)堅実に成長したと言いますか・・・。
 要は子供の頃の体験は、将来の人格形成に影響するんだろうということから、自然に対するリスペクトを早めに育んでおけば、その子供たちが大人になった時に、考え方っていうのはどんどんつながっていくんじゃないかと思っていて、子供たちに海の美しさ、大切さを知ってもらおうという活動を始めたっていう感じです」

写真協力:石野昇太

(編集部注:エコロジカルチャイルドの現在のおもな活動は、地元沖縄の環境保護団体が開催するビーチクリーン・イベントに参加してくれた家族を対象にシュノーケル体験を無償で提供。また、水中で撮った写真や映像を子供たちに見せて、海の生き物について教える、環境教育的なことにも取り組んでいるそうです)

沖縄の子供たちのために

※キッズ・シュノーケルなどのイベントには、沖縄以外の子供たちも参加していますか?

「いや、実はですね、沖縄の子供たち限定でやっているものなんですよ。というのも、沖縄って子供の相対的貧困率が全国でワースト1位なんですね。あと、ひとり親世代の発生率も全国平均の約2倍ぐらいあって・・・。

 マリンレジャーの料金がコロナ禍以降、物価高の影響で、いろんな物価高がありますけど、それに合わせてマリンレジャーも料金が上がっています。そんな状況ですので、沖縄の子供たちにマリンレジャーに参加してほしいと思っても、あまりそういう活動に参加できる人っていないかなと思っていて・・・。

 なので、観光で沖縄に来られる人は、ちょっと言い方が悪いんですけれども、お金を払ってもらってレジャーに参加してもらう。そのお金を地元の人に還元する・・・。私たちプロダイバー、沖縄で働いているプロダイバーは、沖縄の海の資源をお借りして仕事をさせてもらっているので、地元の人に還元しようっていう思いがあって、沖縄の子供たちを限定にして活動をしています」

●なるほど。近くに海があるのに実際に遊べる子供たちは、意外と多くはないかもしれないってことなんですね。

「そうですね」

●イベントに参加した子供たちの反応はいかがですか?

「実際お子さんたちも、海を見たことがない子ってけっこう多いんですよ。なので、やっぱり楽しそうにしてくれますね。
 初めて海に潜るので、水に顔を付けるのも怖がっていたお子さんたちが、何回も参加してくださるうちに、もっと泳げるようになっているんですよ。それを見られるのはやっぱり嬉しいですし、できたら大人になったら(私と)同じようにダイバーになってくれたら、嬉しいな〜なんて思っているんですけどね」

写真協力:石野昇太

海を見て、知って、体験してもらう

※キッズ・シュノーケルなど、海でのアクティビティを子供たちと一緒にやる時に心がけていることは、どんなことですか?

「私たちは自然を守りたいっていう思いでやってはいるんですよ。それを子供たちに知ってほしいなと思っているんですけど、それを押し付けるつもりはなくて、ただ海のことを見て、知って、体験してもらうっていう、それだけが願いですね。

 やっぱり自分のテリトリーというか、例えば自分の家の庭にゴミが落ちていたら拾うでしょうし、ゴミを捨てようなんて考える人はまずいないと思うんですよ。ダイバーがゴミに対して関心が高いのは、たぶんそこにあって、やっぱり子供たちも実際に海に入って遊べば、そこは自分のテリトリーだという意識が自然に生まれるような気がするんですね。なので子供たちには、ただただ海で遊んでもらいたいっていうことだけを考えています」

●海で遊ぶ子供たちとか若い人が減っているなんていう話もありますけれども、やっぱり海に親しむことって大事ですよね。

「そうですね。海ってやっぱり風もあるし、波もあるし、人間の五感を研ぎ澄ませるには、とてもいい場所だとは思うんですよ。
 ただやっぱり海に入ると、ちょっと面倒くさいんですよね。潮があってベトベトするし、日焼けもするし、現代の人々にとってはちょっとマイナスなことって、けっこう多いかなとは思うんですけど、実際海に入るとやっぱり童心に返ると言いますか・・・やっぱりいいな! って思うと思うんですよ。

 やっぱり自然に触れればリラックスもするし・・・お客さんに多いのが、東京で仕事で忙しい思いをしている人たちが、海に入ってリラックスするっていうことは多々ありますので、なるべく海に入って、それでリラックスしてほしいなと思いますね」

図鑑らしくない図鑑!?

※水中写真家になろうと思ったのは、どうしてなんですか? 何かきっかけのようなものがあったんですか?

「僕は、実は大学を卒業した後に八丈島っていう東京の離島に5年ぐらい暮らしていたんです。そこでダイビング・インストラクターをしていたんですね。
  
 もともと写真家にはなりたいなとは思っていたんですけれども、どういう写真を撮るかって考えた時に、商業的な水中写真というよりは、ホームとなる目の前の海で毎日潜り込んで、生態というんですけど、生物たちの営みを記録していくことが大事じゃないかなと・・・そういうのを観察する上で撮影をして写真にするほうが、人の心を打つんじゃないかなと思ったんですね。

 それでしばらくダイビング・インストラクターをしていたんです。そうやってプロダイバーとしてお客様に生物の生態行動を通して、海の変化だとか海の魅力を伝えてはきたんですけれども、次の段階として海に潜らない人々に実際、海の中では何が起きているのかとか、海の中を見て感じてもらいたいなと思って、写真家としての活動をスタートしたっていう感じですね」

『神秘的で美しい海の生きもの図鑑』

●水中写真家として先頃出された新しい本『神秘的で美しい海の生き物図鑑』を私も拝見させていただきました。タイトルの通り本当に神秘的で美しいですね!

「ありがとうございます!」

●引き込まれました! 図鑑というよりも写真集のような印象だったんですけれども、この図鑑のいちばんのアピール・ポイントはどんなところでしょうか?

「今おっしゃってもらったように、図鑑らしくないところがいちばんのアピール・ポイントなんですよね。図鑑ってちょっと堅苦しいイメージがあるんじゃないかなと思うんですけど、この本は写真集的な見せ方をしていて、魚の背景がカラフルな写真が多いことが特徴です。魚も色鮮やかで可愛い種類を中心に選んでいて、ほかにも面白い顔だったり、不思議な形をしている生物を載せています。

写真協力:石野昇太
写真協力:石野昇太

 その上で長年、海を見続けてきた立場として、繁殖とか生態行動を紹介していて、小さいけど生態系にとっても重要なプランクトンの章もあったりするんですよ。普段、海とは遠い生活をしている人々にとって、海のことに少しでも思いを馳せながらリラックスしてほしいなと思って、この本が作られています」

●やはり沖縄の海で撮った写真が多いですか?

「実は・・・5年間暮らしていた八丈島の写真もけっこう載せてあって・・・あと日本だけじゃなく世界中、例えばオーストラリアとかモルジブ、パラオなんかで撮ってきた海(の生き物)なんかも入っています」

(編集部注:新しい本『神秘的で美しい海の生きもの図鑑』は、水中写真家の茂野優太(しげの・ゆうた)さんとの共著となっていて、掲載している写真は半分ずつくらいだそうです。監修は北里大学・名誉教授の井田 齋(いだ・ひとし)さんとなっています)

オスの求愛行動に感情移入!?

写真協力:石野昇太

※海の中で生き物たちを見ていて、どんなことを感じますか?

「魚たちは生き残るために、あるいは子孫を残すために巧妙な戦略を練っていて、生物の多様性に日々驚かされているっていう感じですね。あまり擬人化するのは好きじゃないんですけど、産卵のシーンとか求愛のシーンを見ている時はどうしても感情移入してしまいますね」

●それはどんなふうに感情移入されるんですか?

「キンチャクダイ科の魚を例にすると・・・春になると産卵が始まるんですけど、最初はオスもメスも産卵に慣れてないので、ちょっと下手くそなんですよ。なので、産卵に至るまでの求愛行動がけっこう長めに行なわれるんですね。

 見ているほうとしては、頑張れ! っていう気持ちになりますね。それが真夏になってくると上手になるので、ポンポンポンポン産卵しちゃうんですよ。だから観察している身としては物足りないと言いますか、もう終わっちゃったの? っていう感じになるんですね。

 夏も暮れてきて晩夏になってくると、メスはもう産卵する気がないんですけど、オスだけはまだバリバリやる気で、ずーっと求愛しているんですよ。男としてはそこはちょっと悲しいというか、これはたぶん男にしかわかんないかなと思うんですけどね(苦笑)。一生懸命、求愛しているんですけど、もうメスはやる気ない・・・。

 魚の世界は種類にもよるんですけど、基本的にメス主体で産卵が行なわれるので、メスの同意がなければ、絶対に産卵に至れないんです。そういうことを人間の世界に置き換えた時にちょっと悲しくなるというか、そういう感情移入の仕方をしますね」

●そうなんですね。この図鑑を手に取るかたに、どんなふうに楽しんでもらいたいですか?

「ダイビング・ガイドとして長年海に潜っていて、興味深いなと思ったことをなるべく詰め込みました。

写真協力:石野昇太

 卵から生まれて浮遊期間を経て成長して、また産卵するまで・・・そういう魚の一生を見ることができる本じゃないかなと思っているんですよ。なので、生きるために考え抜かれた戦略ですとか、どうしてそうなったんだろう? っていう不思議な形をした魚がいっぱいなんですね。

 そういう人の想像を超えてくる生物が、200種以上載っているので、ひとつひとつの生物と向き合いながら1年の流れを感じつつ、ゆっくり読んで欲しいなと思います」

(編集部注:石野さんは南の海だけじゃなく、北海道の海にも通っていて、知床では流氷ダイビングのガイドもやっているそうです。

 石野さんご自身は来年、琉球大学大学院に入り、海の生き物の研究者にもなるそうです。ダイビング・インストラクターの地位を高めたいという、そういう思いもあるとおっしゃっていました。)


INFORMATION

『神秘的で美しい海の生きもの図鑑』

『神秘的で美しい海の生きもの図鑑』

 水中写真家、石野さんと同じく茂野優太さんのふたりによる新しい本をぜひ見てください。石野さんもおっしゃっていましたが、いい意味で「図鑑らしくない図鑑」、とにかく写真がカラフルで綺麗なんです。海の生き物、およそ280種を紹介。神秘的で美しい生き物たちに癒されること、間違いなしです! 
ナツメ社から絶賛発売中! 詳しくは、出版社のサイトをご覧ください。

◎ナツメ社:https://www.natsume.co.jp/np/isbn/9784816377358/

 エコロジカル チャイルドとしては、来年6月に開催される「世界海洋デー」に向けて、チャリティ・イベントを予定。現在、その準備を行なっているそうです。また、雑誌を作る計画もあるとのこと。これは去年、高い海水温のため、沖縄のおよそ90%のサンゴが白化し、死滅したそうですが、その後の少しずつ回復している様子を写真に収めているので、それを見てもらうためだそうです。

写真協力:石野昇太

 エコロジカル チャイルドの活動については、オフィシャル・サイトを見てください。寄付という形で支援することもできます。

◎エコロジカル チャイルド:https://www.ecologicalchild.org

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