毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
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生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
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Every Sun. 20:00~20:54

2026年1月のゲスト一覧

2026/1/25 UP!

◎『シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第27弾!〜「フードペーパー」と「芽が出る鉛筆」をクローズアップ!』(2026.1.25)

◎服部雄一郎(翻訳家/文筆家)
快適で楽しい「コンポスト生活」〜サステナブルな暮らしへ』(2026.1.18)

◎瀧本彩加(北海道大学大学院・文学研究院・准教授)
「馬が合う」馬たちは、古くから私たちの相棒 〜馬のコミュニケーション能力と特性に迫る!』(2026.1.11)

◎泉 貴人(福山大学講師/海洋生物学者)
Dr.クラゲさん「水族館は人生です。水族館愛をおすそ分け」!』(2026.1.04)

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第27弾!〜「フードペーパー」と「芽が出る鉛筆」をクローズアップ!

2026/1/25 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第27弾! 今回は、斬新なアイデアで生まれた「紙」と「鉛筆」をクローズアップします。

 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から、「質の高い教育をみんなに」 「つくる責任 つかう責任」そして「陸の豊かさも守ろう」。

 お迎えするのは、廃棄される野菜などを材料に「フードペーパー」を開発した
五十嵐製紙の伝統工芸士「五十嵐匡美(いがらし・まさみ)」さん、

 そして「芽が出る鉛筆」を輸入販売している「レトロバンク」の代表取締役「中村真衣子(まいこ)」さんです。

 サステナブルで環境教育にもつながる「紙」と「鉛筆」、いったいどんなプロダクツなのか、じっくりご紹介します。

「フードペーパー」の始まりは、夏休みの自由研究!?

☆写真協力:五十嵐製紙

写真協力:五十嵐製紙

※前半は、廃棄される野菜などを材料に製作した「フードペーパー」をご紹介します。

 開発したのは、福井県越前市にある「五十嵐製紙」の伝統工芸士「五十嵐匡美」さんです。1919年、大正8年創業の「五十嵐製紙」は、およそ1500年の歴史がある「越前和紙」の伝統を受け継ぐ工房です。

 越前和紙の原料はコウゾ、ミツマタ、ガンピといった木の皮ですが、特徴は、漉(す)けないものはないというほど、多種多様な技法があること。実はこの特徴こそ「フードペーパー」誕生の要因とも言えます。

 お話をうかがう五十嵐さんは「五十嵐製紙」の四代目。国家資格である「伝統工芸士」を取得したのは、多くのかたに和紙の素晴らしさを伝えると同時に次の世代を育てるためでもあったそうです。

●まずは「フードペーパー」とはどんな紙なのか、教えてください。

「このフードペーパーは廃棄されるはずのお野菜とか果物を、紙に漉(す)き込んだ和紙なんですけど、これを始めたきっかけが和紙の原材料不足です。

 コウゾ、ミツマタ、ガンピっていう木が年々減少してきているので、それをなんとかしたくて、廃棄されるはずのものを、足りない原料の代わりに入れ込んで、フードペーパーという名前で作らせてもらっています」

●どういう経緯でフードペーパーが誕生したんですか?

「実は、うちの息子、次男が夏休みの宿題の自由研究で、小学校4年生から中学校2年生まで、身近な食べ物とか植物から紙を作る研究をしたんです。それを私が整理してブランド化したのがこのフードペーパーです」

●息子さんは自分から進んで、その研究をされていたんですか?

「そうなんですよ。いきなり4年生の夏休みに“自由研究で紙を漉こうと思うから道具を貸して“って言われて・・・。どんな紙ができるかも私はイマイチよくわかってなくて、簡易的な紙漉きの、ちっちゃい道具のセットを渡して、やり方とかを軽く教えたら、うちの子はそのあたりの食べ物とかから紙を作り出して、そのまま研究をしていました(笑)」

写真協力:五十嵐製紙

●お母さんとしては、家業である紙に目を向けてくれたのは、すごく嬉しかったんじゃないですか?

「それはそうですね。やっぱり全然違うものよりかは、私たちがやっている仕事につながるようなものの、実験をしてきたっていうことでとても嬉しかったです」



●通常の和紙作りとの違いっていうと、どんなところなんですか?

「ほぼ変わりなく、紙漉きの工程も普段の紙の原料の代わりに廃棄されるはずのものを足すっていう感じで、すべてがほぼほぼ同じ工程で(フードペーパーは)作られていきます」


●最初からスムーズにいったんですか?

「そうなんです! それが意外とスムーズにいって・・・でもやっぱりそれは、うちの子の理科研究のノートっていうか、まとめたものがあったから、私はそれを教科書代わりにして(笑)、それを読み込んでフードペーパーを作ったので、スムーズにいきました」

写真協力:五十嵐製紙

息子には内緒でブランド化!?

※実際に製作する過程で、息子さんといろいろアイデアを出し合ったりしたんですか?

「実は、フードペーパーのブランドを立ち上げる時に、息子には一切お話ししてなかったんです。というのも高校受験の時で、余計な情報を入れないでおこうと思い、販売するまで息子には一切黙って進めていたので、理科研究のノートを教科書代わりにこっそり頑張っていました(笑)」



●そうだったんですね。息子さんにはいつの段階でお伝えしたんですか?

「合格が決まってすぐ伝えました。そしたらびっくりして、“ええぇ~”ってなって・・・でもすごく嬉しそうでした」



●フードペーパーとして完成するまでには、どれくらいの日数がかかったんですか?

「それが実は意外と早くて、発案してから発表するまで3~4ヶ月で、すぐ展示会に出しちゃいました」


●今はおもにどんなものを材料にフードペーパーを作っているんですか?

「今はおもに福井県内から出されるもので、一般的な玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、ごぼう、お茶とかそういったものを使っています」



●材料によってやっぱり風合いの違いとかもあるんですか?

「そうなんですよ。肌触りにしても、全然その食べ物の風合いがそのまま出ているので、じゃがいもでしたら、ふんわりと、まるで蒸かし芋のようにホクホクとした手触り、玉ねぎでしたら、ちょっとシャリッとした風合いになっていきます」

写真協力:五十嵐製紙

●面白いですね。フードペーパーは和紙ではなくて、新しいジャンルの紙っていう感じですよね?



「そうですね。ある意味、和紙と洋紙の間って言いますか、和紙ともちょっと違う、新たなジャンルの和紙だと自分では思っています」

(編集部注:紙文具ブランド「フードペーパー」のラインナップは、メッセージカード12枚入り540円や、ノート500円などの文具から、サコッシュやフードストッカーのほか、有名デザイナーとのコラボレーションで誕生したトレイやくず入れもあるそうです。サコッシュなどの販売価格については、「五十嵐製紙」のオンラインストアをご覧ください。
https://foodpaper.jp/

 ほかには現在、おしゃれなティッシュケースなどを製作中だとか。どんな仕上がりになるのか、楽しみですね)

写真協力:五十嵐製紙

※「フードペーパー」の今後の展開なんですけど、どんなことがあげられますか?

「いろんなフードロスももちろんなんですけど、最近はフードだけではなく、いろんなジャンルのものが(五十嵐製紙に)集まってまいります。

 例えばデニムの、はきつぶしたものであったり、会社の制服、ベストであるとかユニフォーム・・・そういったものは今までは完全に廃棄されていたはずなんですけど、それを弊社で引き取って、粉砕はしてもらっていたんですけど、粉砕したものをその会社の名刺であったり、ショップカードであったり、包装紙であったりっていうものに生まれ変わらせている実績もあります。

 最近は、フードペーパーとは言っているんですが、フードだけではなく洋服の繊維であったり、あとはハーブの抽出した絞りかすであったり、お花であったり、いろんな分野の廃棄されるはずのものから紙を作っています」

(編集部注:五十嵐製紙では現在、長男が和紙づくりの修行中。フードペーパーの発案者である次男は大学生活を満喫中だそうですが、大学が休みになると家業を手伝ってくれるそうですよ。

 五十嵐さんとしては、息子さんたちに家業を継いで欲しいと思っているそうですがあとは子供たちの気持ち次第かな~とおっしゃっていました)

和紙は生活の一部、もっと身近に

写真協力:五十嵐製紙

※「越前和紙」の可能性は、まだまだあると思いますか?

「まだまだあると思っています! やれることもたくさんあるし、いろんな場面にもいろんな紙が作れると思うし、やりたいことがまだまだあるので、楽しい展開が待っていると思います」



●和紙作りの伝統工芸士として、一般のかたに伝えたいことって、どんなことですか?

「みなさん多分、和紙って聞くだけで、高級なものとか高いものっていうイメージがあると思うんです。

 でも、昔から和紙って生活の一部として使われていたもので、家の中に障子があって、襖紙(ふすまがみ)があって、衝立(ついたて)があって・・・食事の時もお返しがあってとか、いろんな生活の場面で日常的に使われていたのが和紙なんですね。

 今も高級っていうよりかは、私は日常使いができる、毎日の生活の中で、すぐそこに和紙があるような生活にしていっていただけたらなと思っています。もっと身近に気軽に気楽に和紙を使ってほしいです」

「芽が出る鉛筆」「木になる鉛筆」

☆写真協力:レトロバンク

写真協力:レトロバンク

※後半は「芽が出る鉛筆」を輸入販売している「レトロバンク」の代表取締役「中村真衣子」さんにご登場いただきます。

 レトロバンクはおもにデンマークの文房具を扱っている会社で、代表的な商品は、70年以上の歴史がある「フローティングペン」。観光地などのショップでよく目にする、ペンを傾けると中の絵がゆっくり動く、あのフローティングペンを輸入販売。

 現在はその事業を承継し、日本で生産しているメーカーであり、同じくデンマークの「芽が出る鉛筆」の輸入総代理店でもあるんです。

写真協力:レトロバンク

●改めて「芽が出る鉛筆」とはどんな鉛筆なのか、ご説明いただけますか。

「通常は消しゴムが付いているような部分に、緑色のカプセルが付いておりまして、その中にタネと、おがくずが入っています。

 この鉛筆をどうやって使うかって言うと・・・普通、鉛筆って書いていくと、どんどん短くなってしまって、最終的には短くて書けないから捨ててしまうことにはなると思うんですね。

 それをただ捨てるだけではなくて、このまま鉛筆の緑色の部分を土に植えていただくと植物に生まれ変わる! っていう仕組みを備えている鉛筆なので、捨てるだけではなくて、何か新たな命を誕生させることができる付加価値を備えた鉛筆になっております」



●見た目は本当に鉛筆なんですけれども、鉛筆のお尻の部分を土に挿しておくと、芽が出るっていうことなんですよね?

「そうですね。構造としては、この緑のカプセルのところが植物性のセルロースでできているんですね。で、土に挿していただいてお水をかけると、お薬のカプセルみたいな形で、土の中でカプセルだけ溶けて、中にタネとおがくずが入っているので、それが土の中に放出されて芽が出てくる仕組みになっています」

写真協力:レトロバンク

●どんなタネが仕込まれているんですか?

「いろんな種類があるんですけれども、おもにハーブとお花とお野菜を日本では採用しています。
ホームページ上にも載っているんですけれども、ハーブだとバジルやセイジ、タイム、あとはコリアンダーですとか、そういう身近な家庭で使えるようなハーブがございます。


写真協力:レトロバンク

 ほかにはお花がございまして、ヒマワリだったり、カーネーション、デイジー、忘れな草など、楽しんでいただけるお花も入っております。

 あとは『木になる鉛筆』っていうのもあります。オウシュウトウヒっていう木があるんですけれども、そのトウヒのタネが入っている鉛筆です。トウヒって木ですから、鉛筆が木材からまた木材に生まれ変わるっていうことになりますね。

写真協力:レトロバンク

 ほかにはキュウリ、あとイタリアンパセリとルッコラ、こういう身近なお野菜のものもございます。最近はイチゴも入ってまいりました」

●いろんな種類があるんですね。鉛筆の材料にはどんなこだわりがあるんですか?



「この鉛筆の木材のところは、そのまま無垢な木材を使用しているんですね。木材の認証制度がありまして、木材を適切に管理して育てて、適切な量を伐採して使っていくっていう制度がございまして、そちらで認証された木材を使用しております。

 素材についてはいろんな木の種類、リンデンとかホワイトウッドとかバスウッドとか、いろいろあるんですけれども、その時に適切な木材を使用しているので、鉛筆によって色が違ったりとか節が出ていたりとか、そういう味のある木材を使用しています」

(編集部注:「芽が出る鉛筆」はいったい誰が思いついたのか、気になりますよね。

 考案したのは、アメリカの名門「マサチューセッツ工科大学」MITの学生さん3人。2012年に、授業の一環として「未来のオフィスに必要な筆記具」としてプラスティックを使っていない鉛筆に注目、ゴミにならず植物に生まれ変わる、植えられる鉛筆を発明したのが始まり。

 そのアイデアをデンマークにあるスプラウト社の創業者が気に入り、商品化。現在は80カ国以上で販売されているそうです)

芽が出ると新鮮な感動、子供たちの体験の材料に

※実は中村さんが「芽が出る鉛筆」を知ったのはコロナ禍の時で、デンマークの文房具を扱っていたことから、その存在を知り、早速、取り寄せたそうです。初めて手にした時、こんなことを感じたそうですよ。

「これは一体何だろう? と思いまして、で、どうやら芽が出るらしいと・・・コロナ禍っていうこともあって、おうち時間がすごく長かったじゃないですか。あの時、試しに自宅の庭で子供と一緒に植えてみたんですね。そしたら “おっ、なんか出たぞ!”みたいな感じで(笑)、“鉛筆を使ったら芽が出てきた!”みたいな、新鮮な感動を受けました。

写真協力:レトロバンク

 意外とこういうのがおうちにあったら、楽しいかもしれないっていうので、そのあとから植物に触れたりとか育てたりすることも、楽しいかもしれない! って、新たな気づきがあったりもしたんですね(笑)。そういうことで鉛筆を知って、これが日本にあったらいいんじゃないかなってことで輸入を決めました」

●初めて育てたのは、どんなタネだったんですか?



「初めては、いちばん簡単なバジルという種子で、子供うけは全くよくないですけれど(笑)、お母さんうけとか女性うけにはいいハーブで、すごく使いやすくて、やりやすいんですよね。

 バジルの(タネの)鉛筆を使ったあとに植えて、大体、芽は1週間ぐらいで出てくるんですよ。ちっちゃく可愛い芽がポンポンって出てきて、それがどんどん育って、1ヵ月ぐらいで15センチぐらいになって、“これは見たことがある葉っぱだぞ!“みたいな感じで育ってくるんですよね(笑)。


 それでお料理をしてみたら、”これはバジルだ!“みたいに食べられるものも楽しいんですけれど、ほかにヒマワリがすごく衝撃的だったんです。

写真協力:レトロバンク

 ヒマワリは直に地植えにすると、2メートル越えぐらいまで育つんですよ。子供たちもすごく喜ぶお花でタネを収穫ができるので、お花が咲いたあとにどんなふうにタネができていくのか、お花を収穫して“1本の鉛筆から何個タネが取れたね!“みたいな、そういうアプローチもできて、楽しみながらやることができました」



●「芽が出る鉛筆」ってエコロジーとかサステナブルな意識を育てる意味でも、教育の現場で使っていただきたいですよね?

「そうですね。実際、教育の現場でも結構採用されているところがあります。楽しみながらエコを学んだり、自分のことにできる体験の材料として採用されていることが多いです。


 エコだけじゃなくて、そのエコの先に植物が育っていく様子とか、そういうところにも注目してもらったり、エコと結びついた実際の体験とリンクして、子供たちにも、表面上だけじゃなくて、自分の体験にして吸収してもらいたいっていう思いが強いんじゃないかなと思います」

(編集部注:「芽が出る鉛筆」のラインナップをいくつかご紹介しておくと1本入りで430円、4本入りで1,560円。色鉛筆1本が入った3本入りのおめでとうセットは1200円、いずれもどのタネがいいか選べますよ。入学のお祝いにいかがでしょうか。

 お買い求めは「レトロバンク」のオンラインショップ
https://www.retrobank.co.jp/shop-sproutpencil
またはAmazonでも取り扱っています)

「芽が出る鉛筆」

※「芽が出る鉛筆」を手にするかたが、どんなことを感じ取ってくれたら嬉しいですか?

「単純に楽しんでいただきたいっていうのはもちろんなんですけれども、この鉛筆を使っていただくことで、エコとかサステナブルって、何をしていいのかわからないな~っていう、一歩踏み出せないところに、自分でも何かできるんじゃないかなみたいなことで、エコとかサステナブルを少し身近に考えていただいて・・・。

 その鉛筆で世界は救うことはできないんですけれども、この鉛筆が何かのきっかけになって、そういう意識とか気持ちの変化につながっていってくれたらいいなと思っています」


INFORMATION

 ぜひ「フードペーパー」と「芽が出る鉛筆」にご注目ください。できれば、実際に使っていただければと思います。いずれも子供たちの教育の現場で、環境や自然について考えるきっかけになるアイテムですし、企業や自治体のノベルティとして、キャンペーンやイベントなどでも使える、とてもいいプロダクツだと思います。ぜひぜひご検討ください。

 詳しくは「五十嵐製紙」、そして「レトロバンク」のオフィシャルサイトをご覧ください。サイトのショップからご購入できます。

◎「五十嵐製紙」:https://wagamiya.com
◎「五十嵐製紙」オンラインストア:https://wagamiya.com/shop/

◎「レトロバンク」:https://www.retrobank.co.jp
◎「レトロバンク」ウェブショップ:https://www.retrobank.co.jp/shop

オンエア・ソング 1月25日(日)

2026/1/25 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. HAVE IT ALL / JASON MRAZ
M2. BEAUTIFUL BOY (DARLING BOY) / JOHN LENNON
M3. DENIM JACKET / MAROON 5
M4. TREASURE / BRUNO MARS
M5. HEAL THE PAIN / GEORGE MICHAEL
M6. FRAGILE / STING

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

快適で楽しい「コンポスト生活」〜サステナブルな暮らしへ

2026/1/18 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、翻訳家そして文筆家の
「服部雄一郎(はっとり・ゆういちろう)」さんです。

 服部さんは1976年、神奈川県生まれ。東京・六本木で舞台制作の仕事をしていた服部さんは、子供が生まれたのを機に、自然豊かなところで子育てをしたいと思い、神奈川の葉山町に引っ越します。

 そして仕事と子育てを両立させるために自宅に近いという理由で、葉山町役場に転職。ゴミ担当職員となり、そこで初めてコンポストに出会います。

 住民からコンポストに関する質問を受けてもしっかり答えられるように自分でも使ってみようと一念発起! 町の補助金を活用して、緑色の釣鐘型のコンポストを購入。庭にコンポストを置いて、コンポスト生活がスタート!

 この時のコンポストとの出会いがその後のライフスタイルに大きな影響を与え、ついにはコンポスト関連の本まで出すことになりました。

 現在は高知県の里山にご家族と共に暮らしている服部さんは、なるべくサステナブルな暮らしを目指しています。そして先頃『がんばらないコンポスト生活』という本を出されています。

 きょうはそんな服部さんに、気軽に楽しく取り組めるコンポスト生活や、カリフォルニア大学での学び、そしてサステナブルな暮らしについてうかがいます。

☆写真協力:服部雄一郎

写真協力:服部雄一郎

生ごみが消える「消滅型」コンポスト!?

※コンポストには、どんなタイプがありますか?

「本当にいろんなタイプがあるんですね。大きく分けると、昔ながらの堆肥を作るタイプ・・・庭に置いて、生ごみと草木や土と一緒に堆肥作りをしていくタイプがすごく王道です。最近はマンションのかたでも使えるような『消滅型』と言って、生ごみを土の中に埋めていくと、どんどん消えていくタイプ。堆肥がどんどんできて、増えて困ったりしなくて済むという、そういったものも出てきていますね」

●消滅型っていうのがあるんですね。私、マンション住まいなんですけど・・・となると消滅型がおすすめですか?

「そうですね。マンションのかたで特に植物や花を育てる予定がないっていうかたにとっては、堆肥がどんどんできてしまうと困ると思うので、消滅型はすごく使いやすいかなと思います。

 ただマンションのかたでもベランダで、すごく上手に野菜や花を育てていらっしゃるかたもいるので、そういうかたであれば、逆に堆肥を上手に使って、ホームセンターで堆肥を買ってくる必要もなく、生ゴミからの循環で、うまくベランダで循環生活を送られているかたもいらっしゃいます」

●コンポストは、どこで売っているんですか?

「タイプによっていろいろ、メーカーさんから買ったり、最近は通販サイトでも販売していたりするので、いろんな形で買うことはできるんです。

 唯一『キエーロ』っていう消滅型のもの、広くおすすめできるかなと思うタイプがあるんですけれども、ここで買えるっていうのが見つかりにくくて、みなさん困ったり、DIYできるかたは自分で作ったりもするんですね。

 そんな中でひとつ、すごくおすすめかなと思うのは、東京に『コンポストフレンズ』(*)というお店があります。オンラインでも多分買えると思うんですけれども、そこは本当に世界でも珍しいコンポスト専門店です。

 店主のかたはすごくコンポストに詳しくて、いろいろ相談に乗ってもらいながら商品選びができて、実際にそこで見ることもできるというところがあります。そこでキエーロも売っています」
(*コンポストフレンズ:https://compostfriends.jp

●コンポスト生活って、お庭があるようなところじゃないとダメなのかなって思っていたんですけど、実際はお庭がある家じゃなくても可能ってことですよね?

「はい、可能です! 庭があったほうがやりやすいのは確かなんですけれども、庭がなくても使いやすいようなコンポストは、最近いろいろ増えてきているので、ぜひぜひたくさんのかたにコンポストの楽しさを味わっていただきたいなと思います」

写真協力:服部雄一郎

(編集部注: コンポストとは「生ゴミや落ち葉などの有機物を、微生物の力を借りて土に還すこと」。日本では、その容器をコンポストと呼んでいますが、英語の「COMPOST」は単に「堆肥」という名詞や「堆肥を作る」という動詞で、容器のことは「COMPOST BIN(コンポスト・ビン)」などと呼ぶことが多いそうです。

 コンポストを活用することは、ゴミを減らすことにもなりますし、家庭菜園用の堆肥もできるということで、環境への負荷を減らし、循環型の暮らしにもつながる取り組みですね)

ライフスタイルに合ったコンポストを選ぶ

※コンポスト初心者に、失敗しないコツを教えてください。

「使うタイプによってアドバイスしたいことは、いろいろ違ってきたりもするんですけれども、まずは使い方をしっかり読んでいただくのは、すごく大事かなと思うんですね。

 僕自身がコンポストを使い始めた時に、本当にいい加減に生ごみばっかり入れて、トラブルが起きたこともあるので、まずは使い方をしっかり見ていただくのが大事ですね。その前にご自身にあったタイプを選ぶというのが、すごく大事かなと思います。

 やっぱり庭があるなし・・・みなさん基本的に、庭がないと使えないものとか、そういう視点は持っているかと思うんですけども、やっぱり虫がどうしても嫌だとか、堆肥ができると逆に困るとか・・・あと生ごみがたくさん出る家と、割と少ししか出ない家によって、使いやすいコンポストの種類が違ってきたりするんですよね。

 なので、ご自身のライフスタイルにあったものを選べば、すごくうまくいきやすくなるので、選ぶ最初の段階でぜひ、ふさわしいものを選んでいただきたいなと思います。この『がんばらないコンポスト生活』には、(コンポストの)比較表を掲載しているので、ぜひそれも参考にしていただけたらなと思います」

『がんばらないコンポスト生活』

●虫が発生するのは、やっぱりちょっと怖いなっていう思いがあるんですけど(苦笑)、対処法はどうしたらいいんでしょうか?

「そうですよね。まずは虫が発生しにくいタイプのコンポストを、虫が苦手な方は使っていただきたいというのがあります。虫が発生しやすいものと、発生しにくいものがあるので、発生しにくいものを使っていただいた上で、虫がわくメカニズムを理解していただくとすごく防ぎやすくなるんですね。

 臭いが漏れないようにしっかり土に埋めてしまうであるとか、あと室内で使うタイプであれば、室内まで虫が飛んできて発生することは、とても可能性は低くなりますので、そういった点でほとんど防ぐことができると思います。そういう選び方、使い方をしていれば・・・。

 あとは、やっぱり生ごみの分解がスムーズであれば、虫だけじゃなく、臭いもほとんど防げるんですね。なので、生ごみが順調に分解していくようにするにはどうするかというと、生ごみをなるべく小さい状態で、そのままゴロゴロ入れてしまうとなかなか分解が進まなくなってしまうので、細かい生ごみにしておくと、スムーズに分解して、トラブルもほとんど減って、うまく使える可能性がすごく高まります」

●春夏秋冬、季節によって気温も湿度も変わりますが、気をつけることはありますか?

「冬は寒いですけれども、寒いと微生物の活動も低下してくるので、生ごみの分解が遅くなってしまうんですね。なので、どんどん入れても、なかなか分解しないっていう悩みがよく聞かれるので、そんな時には なるべくコンポストの中を温めるような工夫はすごく大事ですね。

 例えば、日当たりを良くしてみるとか、分解が促進されるようなちょっと油分とかそういうものを入れてみる・・・糠(ぬか)とかですね。(微生物の活動が)活発になってくることがあります。

 で、夏は逆に生ごみがどんどん分解するので、すごく使いやすいんですけれども、今度は逆に虫の発生の可能性が高まってくるので、虫が嫌なかたは虫を防ぐ注意が必要になってくるかなっていうのがあります」

生ごみを燃やす日本は特殊!?

※本のプロフィール欄に「カリフォルニア大学バークレー校の大学院」に家族で留学、と書いてありました。これはどういうことなんですか? 

「町役場で全然関心がなかったはずのごみのお仕事が、すごく楽しくなってしまって、それまで自分は環境問題のこととかあまり考えたことがなかったんですけれども、今すごく環境問題が深刻な時代にも来ていますので、そんな中で環境政策、ごみ政策の勉強をしてみたいと思って留学しました」

写真協力:服部雄一郎

●なぜカリフォルニア大学に留学されたんですか?

「いろんな理由がありました。環境政策の分野ですごく評判のいい大学院があったということに加えて、カリフォルニア州はごみ処理で、すごく先進的な取り組みをしていることで、世界的に知られているんですね。

 生ごみもカリフォルニアでは普通に自治体が全部、分別回収して、すべて堆肥化していて・・・というような、そういう実情もぜひ見てみたいと思ってカリフォルニアを選びました」

●何年くらいいたんですか?

「修士課程の2年間おりました」

●日本では(生ごみを)燃えるごみとして処理していますけれども、海外では国の政策もよりますけれども、どのように処理しているんですか?

「カリフォルニアでは『オーガニック』という分別区分があって、そこに生ごみとか、庭を持っているかたは雑草や草木とか、あと割箸とか紙皿とかもそこに入れてよかったんですよ。いわゆる有機物ですよね。堆肥化できるものっていう括りで、資源として回収されていたのがすごく新鮮でした。

 ほかの国でも結構そういう国は多くて、お隣の韓国でも生ごみは資源として、ごみとは別に分別して活かされているんですよね。もちろんそういう国が全部ではなくて、特に途上国を中心に単に一般ごみとして、全部埋め立てられている地域も多くはあるんですけれども・・・」

●日本はどうですか?

「日本は世界の中ではすごく特殊で、燃えるごみがごみの中心としてあるんですけれども、生ごみを含めた、ほとんどの資源物でないごみを燃やしてしまうっていう、これは結構、世界の中で珍しくて、世界の中では実はごみを燃やすのはそんなに一般的ではないんですね。

 ごみの焼却は、焼却炉の建設維持も結構お金がかかりますし・・・という意味で途上国にはとても難しいことがあったりします。
 あとは有害物質の排出を抑えるなどの高度なテクノロジーが必要になる、という意味でもハードルが高かったりすることもあります。世界では埋め立てるのが基本で、それを減らすためにどんどん資源化していくほうが主流です」

(編集部注:先ほど、カリフォルニア大学バークレー校の大学院で環境政策などを学んだというお話がありましたが、この話には続きがあって、服部さんはインターンとして環境保護団体の短期プロジェクトに参加することになり、以前から途上国に関心のあった服部さんは南インドを選んでチェンナイに赴任します。そこで途上国のごみの現状を目の当たりにし、衝撃を受けたそうです。

 そして、持続可能な暮らしを追求するコミュニティ、エコビレッジを訪ねた時に、エコロジカルでサステナブルな暮らしにインスピレーションをもらい、30代後半で地方へ移住することを決意したそうです)

写真協力:服部雄一郎

生ごみがありがたい存在に!?

※高知の里山に移住されて、何年ほど経ちましたか?

「なんともう10年以上経過して11年ですね」

●コンポスト生活がきっかけとなって、よりサステナブルな暮らしを目指されているということですよね?

「そうですね。本当にコンポストのおかげが大きいな~と実感しています。最初、コンポストをうまくちゃんと使わなくて、虫がわいたりしたことがあったんですね。トラブルって意味ではそうだったんですけども、生ごみをコンポストに入れたことで、ごみがなくなったっていう、そのことによる暮らしの変化の実感がすごく大きかったんですよね。

 ごみが家の中からなくなって、シンプルにものすごく快適だなと思って、こんなに簡単なことで暮らしって変わるんだっていう実感が、そのあとの自分を変えてくれたと思います」

写真協力:服部雄一郎

●コンポストで作った堆肥を使って、野菜作りもされているんですよね?

「はい、そうですね。野菜も高知に来てからすごく作るようになりました」

●どんな野菜を育てているんですか?

「種類で言ったら30種類以上とか作っているんです。自分は完璧を目指してやっているわけでもないので、出来は良かったり良くなかったりっていうのもあるんですけれども、いろんな野菜を育てられて、すごく嬉しいですね。

 今の季節だとグリーンピースとかスナップエンドウとか、サヤエンドウとかソラマメとかも蒔いたタネが芽を出しているところです。夏は普通にトマトやナスやピーマンっていう夏の野菜も採れますし・・・という感じで、すごく季節感のある野菜を食べられて楽しいです」

●やっぱり里山の暮らしは、自給自足に近いものがありますよね?

「はい、自給って完全に自給に近づけていくのは、すごくハードル高いんですけれども、一部の自給はすごくやりやすいですね。それがまたとっても楽しくて・・・やっぱりゼロかイチかの違いってすごく大きいので、少しできるとまたほかのこともやってみようかとか、そんな感じです。

 実情としては完全な自給自足には本当に程遠いんですけれども、できることとかがどんどん増えていてすごく楽しい日々です」

●ニワトリも飼っているんですよね?

「はい、今はたった一羽なんですけど、飼っています」

●卵をいただいてっていう感じですか?

「はい、卵を結構産んでくれますね。冬寒いと産まなくなるんです。それも飼い始めて初めて知ったことで、”ニワトリにも季節があるんだ!”ってびっくりしたんですよ。冬以外は本当にほぼ毎日のように産んでくれるので、それをいただきつつ暮らしております」

写真協力:服部雄一郎

●(ニワトリは)卵だけじゃなくて、ほかにもいいことがあるそうですね?

「はい、ニワトリには本当に学ばせてもらっています。卵を産んでくれるのはニワトリのごく一部であって、やっぱり糞が役に立つっていう、鶏の糞っていうのはいわゆる鶏糞なので、それが落ちると土にとっても良くて、野菜が育ちやすくなるっていうのもあります。

 あとはニワトリ自身が、どんどん虫をついばんで食べてくれるって意味でもありがたい存在だったり、地面を掘り起こして、そこがちょっと耕やされるような効果もあったりってことで、動物の生態系はいろいろうまく組み合わされるようにできているんだな~ということで、すごく感心したんですよね。

 ニワトリが生ごみを、しかも食べてくれるようになったので・・・今ももちろんコンポストは使っているんですけれども、コンポストで生ごみがなくなるように処理しなくても、ニワトリが食べる餌になる、それが卵になる・・・そんなすごい循環は都会にいた時には想像もしていなかったので、すごくびっくりしました。生ごみがニワトリの餌になると、今度は生ごみがありがたい存在になるんですよね。

 今までは(生ごみとして)出たものを何とか処理しなくちゃみたいな、言ってみれば、後ろ向きな感じだったのが、ニワトリが餌にする生ごみが足りなくて困るみたいな(笑)・・・そんな感じになってきたりして、ごみの捉え方も動物のお陰で違った見え方がしてきたりして、すごく面白いです」

オンライン・コミュニティ「コンポスト部」

※本の第2章「コンポストと暮らす人たち」に、コンポストのエキスパートが4人登場されます。コンポスト実践者のネットワークは、日本全国にあるんですか?

「全国的なこれ! っていうようなネットワークっていう意味では、コンポスト(を使っている人たち)が少し若返ってきている感じがありますね。10年20年前からコンポストの活動を頑張っていたかたが、全国大会みたいなものを開かれたりとかっていうのがあったんですけれども、今はそういったものの継続が難しいと思うので、それに代わる新しい存在として、最近SNSがすごいので、それを活用したオンラインのプラットフォームができていて、それはすごくおすすめです。

 僕自身入っている『コンポスト部』っていうオンライン・コミュニティがあります。そこは何百人も入っているんですけども、みんながコンポストを使っていたり・・・あと初心者の人もたくさんいて、“こんな疑問があるんですけど、どうしたらいいですか?”みたいな質問を気楽に投げかけて、わかる人が答えるみたいな、そういうシンプルなんですけど、ものすごく有益なプラットフォームがあるので、ひとりでコンポストやっていて、すごく不安っていうかたは入ってみるとすごく支えになると思います」

●では最後にコンポストにチャレンジしようと思っているかたにアドバイスをお願いします。

「はい、コンポストはすごく快適なので、ぜひうまく使っていただいて、コンポストで暮らしが楽しく変わる体験をしていただけたらなと思うんですね。
 コンポストはやっぱり電化製品とは違うので、スイッチを押したら、あとはお任せでうまくいくっていうのとは、ちょっと違うんですよね。

 そこが少し不便に感じたり、不安を覚えるのは無理はないと思うんですけども、自然に近い仕組みで動くものっていう、その不完全な部分を楽しむぐらいの気持ちを持っていただけると、逆に失敗が少なくなる・・・。

 失敗はないと思っていただいて、うまくいかないトラブルがあったら、必ず解決方法があるし、自然の仕組みの中でそれを軌道修正していけると、逆に自然の見方も変わってきたり、自分自身の見方や価値観が変わっていって、コンポスト生活がどんどん楽しくなるみたいな、そんな部分があるので、ぜひそのあたりを楽しんでいただけたらなというふうに思っています」

写真協力:服部雄一郎

(編集部注:服部さんのお話を聴いて、コンポストを使ってみたいと思ったかた、どれくらいの初期費用がかかるのか気になりますよね。自治体が補助金を出しているところもありますので、まずはそれを調べてみてください。補助金がない場合は、全額自己負担となります。

 番組スタッフが調べたところ、大きさや用途によっても千差万別。どんなコンポストを導入するのかにもよるので、一概にいくらとは言えませんが、2千円前後から数万円程度までいろいろ。ホームセンターなどに行ってバケツなどで手作りすれば、安価に始められるようです)


INFORMATION

『がんばらないコンポスト生活』

『がんばらないコンポスト生活』

 服部さんの新しい本にはコンポストのタイプや特徴などを細かく書いた「コンポスト比較表」が掲載されています。また、服部さんの体験談やアドバイスが満載です。この本を参考に、あなたもコンポスト生活を始めてみませんか。アノニマ・スタジオから「暮らしの縁側」シリーズの一冊として絶賛発売中! 詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎アノニマ・スタジオ:
https://www.anonima-studio.com/books/lifestyle/compost-engawa/

 服部さんは高知県の里山で一棟貸しの宿も運営されていますよ。詳しくは服部さんのオフィシャル・サイトやブログを見てください。

◎オフィシャル・サイト:https://sustainably.jp

◎ブログ:https://note.com/sustainably_jp/n/n81f2bae54ba6

オンエア・ソング 1月18日(日)

2026/1/18 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. THE 3 R’S / JACK JOHNSON
M2. ROOTS (BACK TO A WAY OF LIFE) / INCOGNITO
M3. Human Nature sings with 和田唱 / 土岐麻子
M4. CALIFORNIA SOUL / MARVIN GAYE & TAMMI TERRELL
M5. CHANGE IN MIND, CHANGE OF HEART / CAROLE KING
M6. CIRCLE OF LIFE / ELTON JOHN

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

「馬が合う」馬たちは、古くから私たちの相棒 〜馬のコミュニケーション能力と特性に迫る!

2026/1/11 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、馬のコミュニケーション能力に注目し、研究をされている北海道大学大学院・文学研究院・准教授の「瀧本彩加(たきもと・あやか)」さんです。

 瀧本さんは1984年、和歌山生まれ。京都大学大学院・修了。2015年から同大学院の准教授として活躍されています。

 ご専門は動物心理学、比較認知科学。これまでの研究から人以外の動物にも心があるとされていて、瀧本さんは特に馬のコミュニケーション能力を研究されています。そして先頃、新しい本『馬のこころ〜人の相棒になれた理由(わけ)』を出されました。

『馬のこころ〜人の相棒になれた理由(わけ)』

 ところで、なぜ馬を研究対象にしたのか、実は瀧本さんは京都大学時代は馬術部に所属。入部のきっかけは、入学前に先輩に誘われ、部活を見学。馬の説明をする先輩がまぶしく、また乗馬体験を通して、馬に魅力を感じて入部。

 大学時代は朝6時に集合し、餌やり、掃除、馬術を学ぶ日々。当時の馬術部には17頭の馬がいて部員の数よりも多く、ひとり2頭担当することもあったそうです。

 馬は体が大きいのでたくさん食べるため、年間の餌代が高級車を買えるほどの金額になるとかで、餌代を捻出するために、馬術部員が競馬場などでバイトしていたそうですよ。

 瀧本さん曰く、自分の部屋の掃除より、馬の部屋の掃除。自分の洋服より、馬に着せる布製の上着(馬着)などを買うことを優先。馬にすべてをかけていた大学時代だったそうです。

写真協力:瀧本彩加

 きょうはそんな瀧本さんに、馬どうしはもちろん、人とも絆を築ける馬の驚くべき能力や特性についてうかがいます。

☆写真協力:瀧本彩加

阿吽の呼吸、馬は相棒

※まずは、馬術部での経験が、滝本さんにもたらしたものは、何かお聞きしました。

「ペットも何も飼ったことがなかった私に、人以外の動物がこんなにも豊かな心を持っているっていう可能性を示してくれたのが、馬なんですね。

 馬が何を考えているのか、どうしたら調教中に指示がスムーズに伝わったり、馬に気持ちよく運動してもらえたりするのかを日々馬と向き合う中で考えていて、馬の心をもっとよく知りたい、動物の心理ってどんなものがあるんだろう? って、動物心理学に興味を持つ大きなきっかけを与えてくれたと思います」

(編集部注:人は古くから馬の力を借りてきた、そんな歴史がありますよね。人や荷物を運んだり、軍馬だったり、農作業などの労働力としても、私たちの生活を支えてくれていました)

写真協力:瀧本彩加

※馬が人にとって有益な存在になったのは、どうしてなんですか?

「これはちょっと話が長くなるんですけど、まず馬のもともと持っている習性が家畜化されるのに適していたということが前提としてあります。

餌の調達がしやすいとか繁殖させやすい、気性が荒くない、縄張りを持たずに順位のある群れを形成するので、馬が人も群れの一員、しかも馬にとって人は、馬よりも順位が高いものというふうに理解をすると、人の指示に従ってくれやすい、扱いやすいというようなことがあったと思うんですよね。

 それから馬が草食動物で襲われる側の動物だったので、臆病で周りをよく見聞きして、周りの環境にすごく敏感であったことも大事だったんじゃないかと思っています。そうした特性が、人が示す様々な合図だったり、仕草だったり、表情だったり、声色だったりというシグナルへの感受性を高めたんじゃないかなと思っています。

 そうしたシグナルの意味合いを学習する力が、馬はすごく高くて、その理解に基づいて自分の行動を調整する力に長けていて、どうすればスムーズに人とやり取りすることができるか、そのコツやルールを見い出して、それを実行したり記憶する力も備えていたからではないかと思っています。

 そうして(馬は)阿吽の呼吸で人の思いを汲み取って、相棒として人を支え、人に頼られる存在になってきたのではないかなと思っています」

写真協力:瀧本彩加

馬と人は「馬が合う」!?

※「馬が合う」という表現があります。馬と人は古くから「馬が合う」関係だったんですか?

「これは私の憶測になってしまうんですけど、最初は人が馬をよく見て、人のほうが馬に合わせて、人が馬にとってのリーダーになると馬は納得して、そのリーダーに従うっていう関係性を構築していく側面が強くあったと思うのですね。

 そのうちにいい関係性、馬が納得して人に従うことができるようになってくれば、馬のほうも人に合わせて、互いに歩み寄って『馬が合う』環境を作ってこられたんじゃないかなというふうに思っています」

●馬が人に合わせてくれていたんですね。馬は「人を見る」ということも聞いたことがあります。その人が馬を好きか、怖がっているかって、馬はわかるんですか?

「そうですね。わかると思います。馬の視力は、人の視力検査の0.8と言われています。猫や犬だと0.2とか0.3だと言われているので、猫や犬に比べると随分視力がいいんですよね。そして(馬は)目で見て些細な変化も見逃さない・・・。

 私たちの研究からも馬が人の表情や声色に敏感で、表情から声色を連想しつつ、人の感情を読み取っていることがわかってきています。馬はその人が馬を好きなのか怖がっているかというのは、馬を前にした人の緊張が、表情や姿勢のリラックス度合い、こわばり度合いから推察できると思います」

馬の目と口、耳を見よ!

※馬がいまどんな状態なのか、リラックスしているのか、怒っているのか、どこを見ればわかりますか?

「リラックスは目と口、怒りは耳を見るとわかりやすいかなと思います。リラックスしている時は、目がとろ~んとちょっと眠そうに見えたり、あと口の周りの筋肉も緩んで力が入っていない感じで、年を取った馬だと下唇がビローンとたるんで見えたりもします(笑)。

 マッサージしてもらって、“気持ちがいい~”っていうリラックスの感じだと、馬の鼻の下の、上唇のあたりがちょっと伸びた感じで、すごく気持ち良さそう~な顔をしていたりします(笑)。

 一方、怒っている時は、両耳が揃って後ろに深く伏せられて、時には歯を剥き出しにして威嚇してくるようなことがあるので、耳を後ろに伏せだしたら、ちょっと怒っているかもしれないということで、馬から距離を置いた方が安全ですね」

●馬の鳴き声にも意味はあるんですよね?

「そうですね。馬の鳴き声として、みなさんが一般にイメージするのは、“ヒヒーン”という嘶きだと思うんですけど、この嘶きには馬の感情が現れることがわかっています。
 例えば、馬は群れで生活する動物なので、ほかの仲間と引き離されると、ちょっと悲しい不安な状態になるんですね。そういう時は高くて長い嘶きを発すると言われていて、例えばこんな感じです。“ヒ~ヒヒヒヒヒヒ~ン”みたいな・・・」

●へえ~〜っ!

「で、逆に仲間と再会できて、ほっとした時には、短く低い嘶きを発することがわかっていて、こんな感じです。“ヒヒヒヒヒヒン”みたいな・・・(笑)」

●へえ~、面白い! 同じ“ヒヒーン”でも全然違うんですね?

「そうですね」

写真協力:瀧本彩加

喧嘩の仲裁をする馬!?

※馬は群れで暮らす動物ですから、「馬が合う」のは、馬どうしでもありますよね?

「そうですね。馬は『相互毛繕い』と言って、お互いに迎え合わせになって、首のあたりとかお尻のあたりを甘噛みして毛繕いをするんですね。

 この毛繕いは、自分では首を伸ばして口でかけないところ、見えないところを相手の馬にかいてもらうことになるので、相手を信頼していないと毛繕い相手としては認めないというか、誰とでも毛繕いができるわけではなくて、30頭ぐらいで暮らしていても、毛繕い相手は5、6頭だけみたいな、選りすぐりの相手がいるんですよね。

 私が観察してきた中では、10年ほど同じ毛繕い相手とずっと毛繕いしているペアがいたりするので、特定のお気に入りのお友達がいるというような感じです。

 あとは血縁度が高い、つまり血のつながりが強くあるほど、あとは群れの中の順位が似ているほど・・・私たちの研究では、年齢が近い子供だと誕生日が近いほど仲良くなりやすいってデータも出てきています」

●面白いデータですね。喧嘩する馬たちがいると、仲裁する馬も出てくるんですか?

「はい、それは私の静内(しずない)の研究牧場で観察したエピソードにはなってしまうんですけど、そういうこともあります。

 どういうことかと言うと、若いメス同士が蹴り合って悲鳴をあげながら大喧嘩をしていたんですね。そこに群れのナンバー2の長老メスが駆け寄っていって、“もういい加減、喧嘩をやめなさい!”とでも言うかのように、若いメスの片方のお尻をガブっと噛んで喧嘩を一旦やめさせました(笑)。

 それだけでは終わらなくて、まだ2頭が近くにいて、また喧嘩を再開させるような素振りがあったので、ほかのメスがやってきて、2頭のお尻をそれぞれ押して、馬と馬の距離を開けて、その仲裁に入ってきた馬の、仲のいいほうの若いメスを囲うようにして距離を開けさせるっていう、なんか連携して仲裁するみたいなことも見られたりしました(笑)」

写真協力:瀧本彩加

馬も嫉妬する!?

※人は、好きな異性がほかの人と一緒にいたりすると、嫉妬したりしますが、馬でもありますか?

「異性間の嫉妬もあるかもしれないんですけど、私はまだ見たことがないし、論文にもなってはいないんですよね。ただ論文で報告があるのはメスの同性間の嫉妬で、自分と仲のいい馬がほかの馬と毛繕いをして、仲良くしたりしているのを見ると、それを邪魔してやめさせるようなことがあります」

●馬の、人を巡る嫉妬っていうのもあるんですか?

「これは私が実験しようとして失敗してしまったものですが、実験の手続きを工夫すれば、うまく取り出せるんじゃないかなとは思っています。

 エピソードとしては、私が馬術部だった時に担当していた馬の一頭がものすごく美形で、女子にすごく人気があったんですよね。

 すごくチヤホヤされていてプリンスのように扱われてきていたので、担当者の私が(馬の)手入れをする時に何頭か隣に並ばせているんですけど、ほかの馬を可愛がったりしていると、自分のところに戻ってこいっていうことで、前足を掻き鳴らして、“早く戻って来い!”という要求行動というか、そういうことがあって、戻るとその要求行動はやむので、戻ってきて欲しかったのかなって思ったりしたことはあります」

写真協力:瀧本彩加

(編集部注:ここでちょっと「馬のミニ知識」。瀧本さんによると、野生の馬は世界中、どこにもいないとのこと。野生のように暮らしている馬はいますが、もともとは家畜化した馬。それが逃げ出したりしたもので、「再野生化した馬」と呼ぶそうです。

 日本の、再野生化した馬の代表が、宮崎県串間市(くしまし)の都井岬(といみさき)に生息する「御崎馬(みさきうま)」。そして日本の在来種は8品種で、全部で約1600頭。中でも北海道和種馬(わしゅば)「どさんこ」が1000頭以上いるとのこと。

 日本で飼育されている馬のうち、サラブレッドを含む、競走馬がおよそ7割で、サラブレッドの生産は98%が北海道で行なわれているそうです)

競走馬の「リ・トレーニング」

※乗馬クラブで飼育されている馬たちは、もともとは競走馬だったんですよね?

「日本の場合は、そうですね。乗馬クラブや大学馬術部に、もともと競争馬だったサラブレッドが多くいます。

 馬の寿命はだいたい25歳程度、長生きする馬は30歳とか35歳を超えることもあるんですけど、競争馬の引退は3歳から5歳がほとんどで、人の年齢に例えると15歳から21歳くらいで引退するということになります。

 つまり、その後の余生のほうが競争馬としての現役の時代よりも長くて、引退後のセカンド・キャリアをどう過ごせるかというのが大切になってきます」

●でも、そもそもその競争馬たちは速く走ることに特化していたわけですよね。いわゆるアスリートだと思うんですけれども、それを乗馬クラブ用の馬にするには、何か特別なトレーニングとかされるんですか?

「そうですね。もともとは競争馬として速く走って、ほかの馬と競って勝つ! というための調教をされていたんですけど、これをリセットして、大人しく従順に、ほかの馬を気にすることなく、乗っている人の指示に集中して運動することができるように、再調教『リ・トレーニング』をします。

 そのリ・トレーニングの中では、慌てずにゆっくり歩くこととか、しっかり止まることも教えられて、プロだけではなくて子供など初級者が乗った時に、馬が乗った人の先生になって振る舞えるように、指示が違うと動かず、言うことを聞かないで、“正しい扶助はそれじゃないよ、こうするんだよ!”って、騎乗者に教えられるくらいに調教が徐々に進められていくという感じになります」

●トレーニングで従順な馬になるんですね?

「そうですね。その過程で馬が“この人と一緒にいると安心できる”とか、“この人の言うことだったら聞きたい”って思えるような関係性を築きながら、調教することも大事なのかなとは思うんですね。

 従順に従うような馬に(していく)、競争馬時代もプロの言うことは聞いていたと思うんですけど、乗馬になると、より乗る人が多様になるので、その人に合わせて下手な人の指示にでも従えるように基礎を叩き込まれるというか、そんな感じですかね」

写真協力:瀧本彩加

温かくて大きな存在に安心感

※ホースセラピーを体験できる乗馬クラブも多くありますが、馬と接すると癒されるのは、どうしてなんでしょうね?

「これは私が思うには・・・馬は触れるとほんのり温かいんですよね。それもそのはずで、人よりも体温が1度高いんですよね。平熱が37度で38度を超えると熱があるっていう感じなんですね。

 そして(馬の)目を見ると、つぶらな大きな瞳が優しくこちらを見つめてきてくれると、温かくて大きな存在に受け入れられると特別に安心感があるっていうか・・・赤ちゃんがお母さんに抱っこされると安心するみたいな・・・そういうところがあるんじゃないかなと思って、そういう安心感が得られることが、癒されるということの正体ではないかな~と思っています。

 あとは、この人は安全で大丈夫な人だ!と馬が思うと、馬のほうから、あの大きな体で人に甘えてきたりするので、そういう可愛らしさもあるかなと思います」

●馬のどんなところにいちばん魅力を感じていますか?

「それは・・・大きくてかっこいい見た目なんだけれども、実は繊細で優しい一面もあるというギャップ! 怒ることもあるけど、懐いて甘えてきたり頼ってきたりして、母性本能をくすぐられるというか(笑)、そういうところがあるからというふうに思っています」

●馬の研究者として今後、解き明かしたいことがあればぜひ教えてください。

「まだちょっと具体的には考えきれてはいないんですけれども、馬の福祉向上というのを目指して、人馬における望ましい関係性、つまり互いに一緒にいると居心地がいいと思えるような関係性を築いて、それを維持するために人ができることは何だろうということを明らかにしていきたいと考えています」

写真協力:瀧本彩加

(編集部注:瀧本さんは、北海道大学の静内研究牧場で「どさんこ」の子育てを10年以上観察しているそうです。基本はお母さん一頭で育てるそうですが、ほかの個体が手伝ったりすることもあるので、その違いがどうして起こるのか、その性質を研究しているとおっしゃっていました)


INFORMATION

『馬のこころ〜人の相棒になれた理由(わけ)』

『馬のこころ〜人の相棒になれた理由(わけ)』

 瀧本さんのお話を聞いて、もっと馬のことを知りたいと思ったかたは、新しい本をぜひ読んでください。特に馬が持つコミュニケーション能力と、その最新の研究結果は必読です。「馬の心」に迫った、とても示唆に富んだ一冊です。

 岩波書店の岩波科学ライブラリー・シリーズの一冊として絶賛発売中! 詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎岩波書店:https://www.iwanami.co.jp/book/b10151778.html

 瀧本さんの研究室のサイトもぜひ見てください。

◎瀧本彩加研究室:https://www.let.hokudai.ac.jp/staff/takimoto-ayaka

オンエア・ソング 1月11日(日)

2026/1/11 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. A HORSE WITH NO NAME / AMERICA
M2. ALL THE KING’S HORSES / JOSS STONE
M3. RUNAWAY HORSES / BELINDA CARLISLE
M4. DON’T CHANGE HORSES / TOWER OF POWER
M5. ファンファーレ / 玉置浩二
M6. WILD HORSES / THE ROLLING STONES

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

Dr.クラゲさん「水族館は人生です。水族館愛をおすそ分け」!

2026/1/4 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、福山大学の講師で海洋生物学者の「泉 貴人(いずみ・たかと)」さんです。

 泉さんは1991年、船橋市生まれ。東京大学・理学部から大学院を経て、現職の福山大学・生命工学部・海洋生物科学科の講師。ご専門は分類学で、おもな研究対象がクラゲやイソギンチャク。子供の頃、最初に好きになった生き物もクラゲで、お父さんに船橋海浜公園や三番瀬によく連れて行ってもらったそうです。

 生き物好きが講じて、少年時代にはハゼやカニ、ヤドカリやイソギンチャクなどを飼育。また、葛西臨海水族園には中学生の時に月一回は行くほど通い、名物のクロマグロの大水槽に張り付いて見ていたとか。全国の水族館を巡り出したのは、中学2年生の頃からで、これまでになんと160館以上を制覇!

 そんな泉さんは「Dr.クラゲさん」として、YouTubeなどで大人気! また、日本全国の水族館を巡った「水族館マニア」としても知られています。そして先頃、新しい本『水族館のひみつ〜海洋生物学者が教える水族館のきらめき』を出されています。きょうはその本を参考にお話をうかがっていきます。

☆写真協力:泉 貴人

泉 貴人さん

野望を持って名付けた「水族館生物学」

※水族館のイメージは、一般のかたはレジャー施設か、子供たちの学びの場と捉えているかたが多いと思います。もともと水族館は博物館の施設として始まったということで、泉さんは水族館を学術施設として見ていて、「水族館生物学」という新しい学問を提唱されています。これはどんな学問なんですか?

「これは、広く言えば、水族館が必要な学者がタッグを組みながらやっていたんですけれども、私がいろんな学問が水族館とコラボしてできるっていうことを、マニアの目線から思いついて、それ自体をひとつの学問にしてしまおうと、私が野望を持って名付けた、そんな学問ですね」

●研究者が注目する生き物が、水族館にはたくさんいるっていうことですよね?

「そうなんですよ。例えば水族館に繁殖賞と言って、この生き物の繁殖に成功しましたとか、この生き物を子供から育てました、みたいなレリーフが飾ってあることがあるんですけれども、研究者のほうが、”え! こんなもん、成功してたの!?”って驚くようなものが結構あるんですよ。

 あとは、研究者が水槽で飼えないようなサイズの生き物も、水族館の水槽なら飼えるわけで、そんな面でそれこそ新種がいたりとか、いろんなポテンシャルが水族館は持っていて、何よりそれがあんまり世間に注目されてこなかったという、そういうところが私の研究前夜にはあったわけです」

●そもそも水族館は、展示する生き物をどうやって手に入れているんですか?

「本当に千差万別です。詳しくは私の本を読んでほしいんですが、それもしっかり書いてあるんですけども・・・例えば、飼育員さん自ら、その辺の海や川から網や釣り竿で獲ってくる、釣ってくる・・・。

 それから漁師さんが採取したものの中で、売り物にならないような種類が一緒に獲れることがあるんですけど、そういうレアなものをもらってきたりとか・・・あるいは水族館同士で手塩にかけて育てたものを、ポケモン交換じゃないですけど、物々交換して、お互いの水族館で展示しあったりとか、いろんなパターンがございます」

●自分たちで採取した、割と小さな海洋生物の中には名前がわからない生き物とかもいますよね? そういう場合は展示しないんですか?

「している場合もあります。水族館の水槽の上に魚の名前が書いた展示板が貼ってある時に、そういう生き物は何々の一種とか、名前がわかりませんとかって貼ってあったりするんですけれども・・・基本的にやっぱり名前がわかる生き物を展示するので、わからない生き物は水族館の裏側にある、バックヤードって言うんですけど、そこの水槽に入っていたりするものですね」

●バックヤードでしか見られない生き物もいるっていうことなんですか?

「そうですね。表の展示に出されていなければ、スタッフ・オンリーの場所がバックヤードなので、客は入れないですから、バックヤードに入る機会がある研究者とか、あるいはバックヤード・ツアーっていうお金を払って入る客とかが見ることができる生き物が実はいるんですよね。むしろバックヤードのほうが生き物は多いんですよ」

(編集部注:水族館のバックヤードには、展示前に健康状態を調べていたり、生まれたばかりの稚魚だったり、名前を調べている最中の生き物などが飼育されているそうです)

バックヤードで新種発見!

写真協力:泉 貴人

※泉さんは「沖縄美ら海水族館」の水槽から新種のイソギンチャクを発見されたんですよね。見てすぐに新種だとわかったんですか? 

「それこそ、さっき言ったバックヤードに、実は15年間も名前がわかんないイソギンチャクが、15年間ですよ! 飼われていたわけですよね。

 で、そこに大学院生時代の私が、そういうのがいるという情報を聞いて、沖縄美ら海水族館さんの飼育員さんと連絡を取って(バックヤードに)入って(それを)見て、一瞬で”あっ、これは論文を書いたら新種になる種類だな”という、そんなことが見てわかったんです。何よりほかの種より思いっきり大きかったんで・・・」

●根拠で言うと、大きさってことですか?

「大きさもそうですし、形も相当ほかの種類より、まがまがしい複雑な形をしていたんで、しかもそいつの仲間って世界で1種類しか、100年前に1種類しか発見されていなかったんで、その種類と違えば、絶対に新種だなって言えるわけです」

写真協力:泉 貴人

●結局それは何ていう名前だったんですか?

「新種だったんで、名前はなかったんですよ。沖縄美ら海水族館、並びに美しい海の美ら海の名前を借りて、『チュラウミカワリギンチャク』という名前をつけさせていただきました」

●ほかにも水族館との共同研究で発見した新種もいるんですか?

「沖縄美ら海さんからもう一種発見していまして、その時についでの如く渡された種類のほうも新種だったんです。で、沖縄の雰囲気にちなんで、そっちは『リュウグウノゴテン』という名前をつけました。竜宮の、赤瓦の沖縄の御殿みたいな色をしていたんで・・・あとほかにも何種類か新種の論文を書くときに水族館との共同研究になったものがおります」

●泉さんの新種発見の代表作と言えるのが「テンプライソギンチャク」ですよね。写真を見たんですけど、エビの天ぷらにそっくりですね!

写真協力:泉 貴人

「まあ自信のあるネーミングというか、これを生涯かけて越えられるかっていうネーミングができましたね(笑)」

●こんなイソギンチャクがいるんですね。どういう特徴があるんですか?

「まさに天ぷらみたいなイソギンチャクで、っていうのは見た目ではなくて・・・このイソギンチャク、中にそのイソギンチャクが入っているんですが、外側は別の生き物なんですよ。

 別の生き物に衣のように包まれているっていうんで、まさに天ぷらっぽいんですよね。サイズはYouTuberが試しても、たぶん絶対食べられないぐらい小さいんですよ。

 そのイソギンチャクと外側の別の生き物が、共生と言うんですが、非常に密接に関係を築きながら生きているという、小さいんですけど、非常に面白い生態を持っていますね」

●見た目だけじゃなくて、特徴としても天ぷらっぽいんですね!

「天ぷらに近いですね、はい」

●これまでに発見した新種は、すべてイソギンチャクですか?

「いや、実はクラゲも一種発見していて、このあと2種類目がたぶんその論文が認められることになるんですけれども、イソギンチャクとしては26種という新種を発見しております。で、自慢ですけど、これは亡くなったかたも含めて、日本人でぶっちぎりのトップです!」

葛西臨海水族園がいちばん好き

※水族館マニアとして、または研究者として、おすすめの水族館をいくつかあげるとしたら・・・首都圏では、どこの水族館がおすすめでしょう?

「これはひいき目なしに私、葛西臨海水族園をお勧めしますね、私が日本でいちばん好きな水族館があそこです」

●そうですか~!

写真協力:泉 貴人

「マグロの水槽、あれが日本でいちばん大きなドーナツ型という、マグロは一周泳がないんですけど、一周できる水槽なんです。それを除いても、例えば北極海の生き物がいるのは葛西臨海水族園さんだけだったりとか、7つの海の生き物がいて、東京の海の生き物がいてみたいな・・・。

 やっぱり生き物好きとして、人気の生き物だけじゃなく、いろんな生き物を見てもらいたいという時に葛西さんをお勧めするのが、いつも私の常套手段ですわ」

●2028年にリニューアルするんですよね?

「そうなんですよね、そこでどうなるかわかりませんが・・・。最近いろんな水族館で、それこそ“レジャー化したリニューアル”って私が呼んでいる、あんまり私が好きじゃないリニューアルもいろんなところで起きているんですけど、葛西さんに限って、それしないだろうなって、今のリニューアル構想図を見ていると思っています」

●千葉県で言うと、鴨川シーワールドはどうですか?

「鴨川シーワールド・・・あれは葛西さんと逆で、それこそイルカもいりゃアシカもアザラシも、そしてシャチもいるみたいな・・・人気の生き物が、いわゆる哺乳類と鳥類系がいっぱいいて、そっちもそっちで動物を見るのが好きな人には面白いと思います。

 あと、やっぱりパフォーマンスって言うんですか。最近はショーって言わずにパフォーマンスって言うんですけど、パフォーマンスも4種類あるので、それ見るだけで大体2時間ぐらい使うという、やっぱり時間をとって行ってもらいたい水族館ですね」

●私も去年、夏休みに鴨川シーワールドに行きましたけど、大人の私たちがすごくハマっちゃうほど、ダイナミックですよね。

「そうですね。鴨川シーワールドは、そういうところに注目されがちですけれども、実は魚とかクラゲとかの展示もしっかりしているので、ショーが終わって即帰らずに、そこもちょっと見てから帰っていただくっていうのが、私のマニアとしての目線です」

クラゲ飼育の四天王!?

※ご専門のクラゲの展示で、お勧めの水族館はどこでしょう?

「私はクラゲ飼育の四天王というのを勝手に認定しています。挙げていくなら、まずここは四天王どころかチャンピオン・クラスなんですけど、『鶴岡市立加茂水族館』、山形にある有名なクラゲの水族館で、80種近いクラゲが展示されているんですね。

写真協力:泉 貴人

 今後リニューアルで常時100種展示すると、館長がおっしゃっていたんで・・・あ、館長と知り合いで、飲み仲間なんですけど(笑)・・・今リニューアル中で、4月ぐらいにリニューアル・オープンしたら、私も真っ先に仕事で行こうと思いますが、みなさんも行って、見てほしいところです。

 関東で言えば、四天王のひとつが『新江ノ島水族館』、神奈川の江ノ島の近くにある水族館も、クラゲの展示はすごいですし、関西で言えば(大阪市の)『海遊館』はすべての魚の展示を抜けたあとに『海月銀河(くらげぎんが)』っていう、ものすごいクラゲ・コーナーが待っています。

 さらに佐世保にある『九十九島水族館 海きらら』ってところも、私も研究でお世話になっていますが、西のほうではクラゲ展示の、ほぼトップ・ワン・ツー・クラスの種数を誇る水族館ですね」

●クラゲの展示を見ると、割と狭い水槽で飼育されていて、水流で絶えず動いているように見えるんですけれども、それはどうしてなんですか?

写真協力:泉 貴人

「実はあの水槽って一周、水流を起こすようにしていて、クラゲが下に沈まないようになっているんですよ。クラゲって難儀な生き物で、海で生きているはずなのに水流がないと沈んで、自分の重さで潰れて死ぬことがあるんですよ。

 それを防ぐために、底のほうに落ちたクラゲを水流で上に持ってきてあげるみたいな感じの、そういう水槽で飼育しているんですね。なので、意外とあの水槽、周囲の部分を隠していることがあるんで、見た目よりも広いです」

●クラゲは飼育が難しい生き物なんですね?

「そうですね。知名度にしてはおそらく飼育は絶対的に難しくて、今の私の学生連中もなかなか飼育には、みんな苦労しながら勉強しているというそんな感じです」

(編集部注:泉さんによると、日本の水族館は世界的に評価が高く、先ほどクラゲの飼育ではチャンピオンだとおっしゃっていた山形県の「鶴岡市立加茂水族館」には、クラゲ飼育を学ぶために世界中から研修に来ているとのこと。日本の水族館は飼育技術や繁殖、そして新種の研究なども含め、世界から注目されているとのことです)

写真協力:泉 貴人

魚も人を見ている!?

※動物園だと、動物が来園した人たちを見て、なんとなく人間を認識しているように感じたりしますが、魚はそういうことはないですよね?

「いや、実は見てはいるんです。魚も(人を)見ている種類がいて、例えばちょっと前かな・・・去年の夏頃にニュースになっていたんですけど、『市立しものせき水族館・海響館』っていう山口県の下関にある水族館で、リニューアルで客を入れなくなったら、マンボウが元気がなくなったっていう話があって、どうもマンボウが客を認識しているらしくて、その後スタッフが服とかそれっぽいものを水槽のガラスに貼ったら元気になったそうです。

 意外とフグは人に慣れるんですけど、人を認識しているような魚もいるんですよね・・・さすがにクラゲは(人を)認識していませんが・・・だから餌を与えようとする飼育員さんの服の色を認識してるのか、飼育員さんの服を着た人が来ると、餌をもらえると思って、上に集まってきたりしますね」

●魚にも好奇心があるというか、すごいですね。人に馴れる魚がいるんですね。

「それどころか最近は減ってしまいましたけど、魚のショーがあって芸を覚えてくれるような魚もいるんですよ」

●飼育員さんたちが苦労されている姿をたくさんご覧になってきたと思うんですけれども、いちばん大変なことってどんなことですか?

「相手が生き物なので、あの人たちの勤務は24時間365日、交代があるとは言え、月月火水木金金ですから、常に働き者で動いているような感じです。

 (私が)これだけマニアなのになぜ水族館に勤めなかったかって、あの人たちの姿を見て、怠け者の私には絶対無理だと・・・だから、私は研究のほうで水族館に関わっていこうって思ったぐらい・・・生き物相手なので、どんなイレギュラーも起きるものですから、それくらい熱意を持って取り組まれているのが、まさにすごいところですね!」

水族館は、人生です。

※泉さんが水族館を作るとしたら、どんな水族館にしたいですか?

「経営はできないので、あくまでコンセプトで、という話ですけど、やはり日本に、たぶんその頃になったら(水族館が)だいぶ減っていると思いますんで、昔ながらの水族館を残すか・・・もしくは博物館と合体した学問的な水族館に仕上げるか、みたいなそんなイメージです。

 それこそ『水族館生物学』を体現する水族館みたいな、そんなようなものが作れたら、客が入るかは別にしても楽しいですね」

●面白そうですね~!

「どこかから声がかかったら、絶対YouTubeとかXとかで言っていると思いますんで、私が関わっていますと(笑)」

『水族館のひみつ〜海洋生物学者が教える水族館のきらめき』

●改めてになりますが、新しい本『水族館の秘密〜海洋生物学者が教える水族館のきらめき』は、筆者としてどんな思いを込めて作った本ですか?

「まずひとつ目は、私が20年、ひたすら行ってきた水族館の魅力を伝えるというのがポイントなんですが、この本は水族館側からと言いますと、業界人目線がメインなんですよ。

 なのでひとつとしては、水族館のありのままを伝えるということで、キラキラした部分だけではなくて、今の苦境とかそういったものをみなさまに知ってもらいたいというのと・・・。

 あとこの本はオールカラーの新書なんで、挿絵も写真もほぼ全部自分で描いて撮りました。私のそこがマニアとしての要素ですけれども、“水族館愛”をちょっとでもみなさまにおすそ分けできたらと思いまして、2冊目、3冊目と、二の矢、三の矢を予定していますんで、その口火としてぜひ見ていただければと思います」

●絵や写真も豊富ですけど、これすべて泉さんが・・・?

「提供のクレジットがなければ、全部私が描いて、そして水族館で撮った写真を利用したものです」

●そういう才能もあるんですね。器用ですね!

「まあ“武芸百般”ならの“手芸百般”と呼んでいますが、いろいろ小技があるので、そういったところも、割とベラベラ喋りますけど・・・この前も別のテレビに出ましたけど、そういうようなところで水族館の魅力をアピールしてみたりとか、そんな小技を活かした本にしてくれた編集者さんに感謝ですね」

●泉さんにとって水族館とは?

「まあ“人生です!”と言っておきましょうか。たぶん水族館生物学とクラゲ、イソギンチャク以外は人生でやらないでしょ。

 私はこれから水族館と研究しながら、200館300館と行ってこようと思います。千葉の水族館の開拓も、実は結構、噂があるところがまだなので、地元に帰省した時などにちょこちょこ行って、千葉にも何館あるのか、そんなところをやってみたいなと思います」

(編集部注:日本にはいくつ水族館があるのか、泉さんにお聞きしたら、地元の人向けの、知られていない水族館もあるので、正確な数字はわからないそうですが、先ほどおっしゃった200〜300館はあるでしょうとのことでした)


INFORMATION

『水族館のひみつ〜海洋生物学者が教える水族館のきらめき』

『水族館のひみつ〜海洋生物学者が教える水族館のきらめき』

 泉さんの新しい本をぜひ読んでください。タイトル通り、泉さんだから知り得た水族館の秘密が満載です。地域別のおすすめの水族館も載っていますよ。泉さんが発見した新種の「テンプライソギンチャク」や「チュラウミカワリギンチャク」の写真はもちろん、泉さんが描いたイラストにも注目です!

 中央公論新社の中公新書ラクレ・シリーズの一冊として絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎中央公論新社:https://www.chuko.co.jp/laclef/2025/08/150848.html

 「Dr.クラゲさん」のYouTubeもぜひ見てくださいね。東京大学時代に「落語研究会」で磨いた泉さんの話術も楽しめますよ。

https://www.youtube.com/@dr.kuragesan_lab

オンエア・ソング 1月4日(日)

2026/1/4 UP!

オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」

M1. MY UNIVERSE / COLDPLAY × BTS
M2. UNDERWATER (YOU AND ME) / CLAP YOUR HANDS SAY YEAH
M3. TOP OF THE WORLD / CARPENTER
M4. COUNT ON ME / BRUNO MARS
M5. 夢題 ~遠くへ~ / いきものがかり
M6. I’M LOOKING THROUGH YOU / THE BEATLES
M7. BY YOUR SIDE / SADE

エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」

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    2026/2/15
  • オンエア・ソング 2月15日(日)

    オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」 M1. KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR / BABYFACEM2. ……

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  • 今後の放送予定

    2月22日 ゲスト:北海道・遠軽町を拠点に活動する音楽ユニット「ホラネロ」の本田優一郎(ほんだ・ゆういちろう)さんと、谷藤万喜子(たにふじ・まきこ)さん  地元の自然や人、風土をモチ……

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  • イベント&ゲスト最新情報

    <加瀬里紗さん情報> 2026年2月15日放送  加瀬さんは、ぜひ羅臼に来て、昆布洗いを体験するなど、どんなふうに羅臼昆布を生産しているのか、漁師の生活も含めて見てもらい、その上で現地で……

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