2026/2/15 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、北海道・羅臼町(らうすちょう)で、羅臼昆布漁師のご主人と一緒に「加瀬漁業」を営んでいらっしゃる「加瀬里紗(かせ・りさ)」さんです。
加瀬さんは札幌のご出身で、青山学院大学を卒業されたあと、就職されたということなんですが、そんな加瀬さんが、なぜ羅臼で漁業に従事するようになったのか・・・。
きょうはそのあたりのいきさつや、加瀬さんが惚れ込んだ、旨みたっぷりの羅臼昆布の特徴のほか、地元の浜にオープンした一棟貸しの宿、そして知床・羅臼の海への思いなどうかがいます。
☆写真協力:KOBUSTAY合同会社

羅臼町の浜の活気
※加瀬さんが暮らしていらっしゃる羅臼町は、北海道の北東の端にある、世界有数の漁場を誇る人口4300人ほどの町です。長さがおよそ70キロの知床半島を、斜里町(しゃりちょう)と二分し、根室海峡の沖合、26キロほどの距離に北方領土の国後島(くなしりとう)が一望できる、そんなロケーションにあります。
ちなみに、知床半島は2004年に世界自然遺産に認定されています。
羅臼町は漁業の町で、羅臼昆布を始め、エゾバフンウニ、シャケ、スケトウダラ、ホッケなどは羅臼ブランドとして国内外で高く評価されています。
また、野生動物をベースにした観光業も盛んで、マッコウクジラやシャチなどを見るホエールウォッチングや、絶滅危惧種のオオワシやオジロワシも観察できる、貴重なエリアとして注目されています。

●大学を卒業後、就職するも1年ほどで退職されたそうですが、そのあと、どういう経緯で羅臼で漁業を営むことになったのか、教えていただけますか?
「私、生まれも育ちも北海道札幌市で、大学の時に東京に出て、そして初めての就職で大阪に出たんですけど、どんどん北海道から離れていくたびに、故郷の素晴らしさを改めて感じるようになって、いつかは自分の故郷である北海道に戻って、北海道を盛り上げる地域振興の仕事に就きたいなっていうのを、大阪にいた時に特に感じるようになりました。
町づくりとか地域振興の仕事は、どちらかというと民間ではなくて行政がやるんだろうなっていうのを当初思っていて、そんな中、今住んでいる羅臼町の観光協会事務局長の公募があったんですね。その公募を見て、年齢も不問、経験も不問っていう一般公募を見つけて、これがやりたい! と思って、応募したのがここに来たきっかけです」
●当時、おいくつだったんですか?
「当時25歳でした」
●ご主人の加瀬基敏さんとは、その観光協会のお仕事で知り合ったんですか?
「そうなんです。羅臼町は基幹産業が漁業の漁師町なんですが、私の観光協会での仕事が、基幹産業である漁業を軸とした滞在型の観光にシフトしていこうということでした。
そういったミッションの中で、まずは体中でこの見知らぬ土地の漁業を知らないと、滞在型の観光プログラムの開発ができなくて、まずは漁師さんの船に乗せていただいたり、浜を歩いたりして・・・っていった時に、何人か漁師さんのお友達ができました。その中のひとりだったっていうのが出会いのきっかけです」
●やっぱり漁師さんや漁業は、羅臼町の魅力ですよね。
「そうですね。この浜の活気に、自分がいちば感動したので、そういったことをここに来られるかたにも共有したいなっていう、それは20年経った今でも毎日思っているところです」
(編集部注:日本全国、漁師さんの高齢化や後継者不足が問題になっていますが、加瀬さんにそのことをお聞きしたら、羅臼には若い漁師さんも多く、移住してくるかたもいるので、まだまだ活気があるとのことでした)
天日干しの伝統製法、出汁は黄金色
※加瀬さんが惚れ込んだ「羅臼昆布」について教えてください。ほかの昆布にはない特徴はなんでしょうか?
「北海道には約7種類ほどの素晴らしい昆布があります。利尻昆布、日高昆布、真昆布、長昆布などなど、素晴らしい昆布がある中で、羅臼昆布の特徴をあげると、まずひとつが非常に生産工程のプロセスが多いことが挙げられます。
お店とか空港でよく見られる、袋に入ったようなパッケージになるまでに、20を超えるような工程を経て、あの形になっているんですね。なので、工程がほかの昆布よりも非常に多いのが、まず大きな特徴のひとつです。
もうひとつが熟成期間、熟成でうま味を引き出す工程があります。実際に出汁を取ると黄金かかった、ちょっと黄金色の黄色い出汁が取れます。味わいは非常にパンチのある濃い出汁で、それが羅臼昆布の特徴です」

●加瀬漁業では、採れた天然の羅臼昆布を天日干しにする伝統的な製法がこだわりなんですよね?
「はい、そうですね。まだ数軒ほどやっているかと思うんですが・・・130人の漁師の中で天日干しをしている漁師は、おそらく3〜5軒ぐらいに減ってしまっています。
私どもは二代目の漁業者なんですね。先代の夫のご両親が50年前に開業して、昔ながらの製法を守って、10年ほど前に二代目である私たちの経営になったんです。やはり先代の昔ながらの製法は変えてはいけないなっていうのはあって、なるべく昔ながらの製法で、たとえ一軒になっても残していきたいなって思っています」

●出荷できる羅臼昆布になるまでには、どれくらいの日数がかかりますか?
「まず採取する漁期は、7月中旬から8月いっぱいの、だいたい1ヶ月半ほどの短い漁期なんですね。そのあと、お土産屋さんに並んでいるような製品にするには、あと1ヶ月半ほどかかるので、トータルで毎年3ヶ月ほど、思いを込めて大切に昆布を生産しています」
昆布漁、竿と箱眼鏡
※羅臼昆布は浅い海の岩場で育つんですよね?
「そうですね。浅いところでは1メートル、いちばん深いところで10メートルほどの水深で、漁師さんは漁具を使って採集しております」
●いい昆布が育つ条件を教えていただけますか?
「とてもいい質問ですね。この羅臼昆布の美味しさは・・・まずひとつは流氷のお陰ですね。北半球で流氷が到達する最も南の地域がここ羅臼町、根室海峡なんですね。
その流氷が抱くプランクトンが春先に、流氷が溶け出すとともに爆発的に増殖します。そのプランクトンを食べる小魚が集まって、その小魚を食べる魚が集まって、それを食べる鯨類、大型のシャチやクジラなどが集まる、豊かな生態系を育む海なんです。
羅臼昆布にとっても非常にミネラル豊富な、流氷がもたらす栄養分豊富な海域であることが、羅臼昆布の旨みを引き出す環境なんじゃないかと言われております」

●1回の漁では、どれくらいの昆布が採れるんですか?
「そうですね・・・時期にもよるので、いろいろあるんですけれども、だいたい1000枚〜2000枚、1日に水揚げしています」
●どういう方法で採るんですか?
「ひとり乗りの、船外機と呼ばれるモーター付きの小さな船で出漁します。昆布漁師はここに130人ほどおります。

で、130隻の船が一斉に出漁して、先ほど水深が1メートルから10メートルで採れることもお伝えしたんですが、昆布を採る長いスティック状の竿という漁具を使って巻き取って採っていきます。
船の上から水深に合わせた長さの棒状の竿をさして、その竿の先は二股状になっているので、そこにスパゲッティを・・・そんなに簡単じゃないよって、夫によく怒られるんですけど(笑)・・・ぐるぐるとスパゲッティを絡めるように昆布をねじり上げて、船の上にあげるっていう漁法です」

●でも船は波で揺れていますから、揺れる船の上で昆布を採るのは大変な作業ですよね。
「そうなんです。そのほかにもひとつ大事な漁具があって、箱眼鏡と呼ばれる水中の昆布を探す眼鏡があるんですね。それを水面から覗いて・・・底はガラスが貼ってあるんですけれども、等級のいい昆布を探して、狙ったところに竿をさして、ねじり取るわけなんです。
その漁具も、やはり両手で竿を持たないといけないので、中にあるマウスピースを歯で噛んで箱眼鏡を固定して、波にも負けないように歯で食いしばって(昆布を)巻き取っていく、本当に体力のいる仕事かなと思います」

貸し切り宿「KOBUSTAY」、町のために
※加瀬さんは、去年2月に羅臼の浜に1日ひと組限定の素泊まり貸し切り宿「KOBUSTAY(コブステイ)」をオープンされました。
開業した理由をお聞きしたところ、10年前、先代から漁業権を引き継いだ頃は、3人の子供の子育てと家業を覚えるのに必死だったそうですが、少し余裕が出てきた5〜6年前に、時を同じくして、北海道・知床の海が温暖化の影響で海水温が上がり、冷たい海を好む昆布に、根腐れや生育が芳しくないなどの影響が出始めたそうです。
いつまで昆布漁など、海に依存する漁業を続けられるか、日に日に不安と心配が募った加瀬さんは発想を転換。採ってなんぼの漁業ではなく、新たな価値を生み出すために一大決心! ご主人を説得し、昆布倉庫をリノベーション。2階をキッチンやバスを完備した宿泊できる部屋に、1階を漁師の作業場所 兼 ワークショップのスペースに作り替え、「KOBUSTAY」という名前をつけてオープンされました。


開業して1年、当初、加瀬さんは国内から家族連れが多く滞在すると見込んでいたそうですが、蓋を開けてみるとなんと、7割近くが海外からのお客様で、連泊されるかたも多いとのこと。
●貸し切り宿「KOBUSTAY」は目の前が海という最高のロケーションに加え、加瀬さんが羅臼で採れる、いろんな食材を用意するという、心のこもったサービスをされているんですよね?
「素泊まりの宿なんですけれども、やはりここは漁師町なので、その時の旬の魚を切り身にして冷蔵庫に入れて、あとはお米とか卵も、旅先ですから、余って持って帰れないので、人数分の必要最低限のものを入れさせていただいます。
私だったら嬉しいなっていうことを常に思いながら、ゲストに合わせてご準備しています」

●例えば、おすすめのレシピとかってありますか?
「どのゲストにも、羅臼昆布をどうぞご自由に使ってくださいって、ぽんと置いてあるんですね。なので、普段の炊飯でも羅臼昆布をぽんと入れて、一緒に炊飯したりですとか、あとはお味噌汁ひとつでも羅臼昆布を使っていただいたりですとか・・・。
特に難しいことは、漁師飯ですから手を加えずに、魚は今だったらスケトウダラ・・・冬はスケトウダラの鍋に羅臼昆布を入れてもらったり、秋だったら鮭の切り身を入れてみたり、漁師飯は美味しいですから、シンプル・イズ・ザ・ベストで、羅臼昆布を軸に漁師飯を楽しんでもらいたいなと思っています」
●滞在中には、いろんな体験もできるんですよね?
「はい、最近、結構人気なのが、昆布の職人体験とか、昆布漁のレクチャーをしながら、実際の漁具に触れてもらいながらっていうような・・・本当に少人数の極上体験を提供しているんですね。

そのほかに昆布だけじゃなくて、羅臼町の魅力を発信していけるような拠点になりたくて、私が鮮魚市場にガイドとして付いて、毎日水揚げされるいろんな魚を近い距離感で、本物の競りような臨場感ある市場の見学もとても人気なので、食のみならず、町全体のなかなか入れないような領域にも、みなさんお連れしてご案内しています」
●改めてKOBUSTAYを、どんなふうに活用してもらえたら嬉しいですか?
「私も移住者なので、自分の感動がいらっしゃるかたの感動と重なる瞬間は、たまらなく面白いというか・・・なんて言うんですか・・・私の『いいね』をいいねしてもらえると、なんかすごく嬉しいっていう感覚なんですね。
ここのKOBUSTAYは、泊まれても1名から6名までの小さな宿泊施設なんです。来訪者にとってというよりは、地元のかたにとって、こういう宿があったらいいなっていう話をさせていただくとすると、やはり漁業者でも漁業をやりながらでも、こういったゲストハウスはできるので、できるってことを地元のかたにもっともっと広めたくて・・・。
採れなくなったから町を出なきゃならなくなったとかじゃなくて、こういう道もあるんだ、漁師でもこういうことができるんだっていうのを、ひとりでも多くの人と、得た知見をすべて共有したいと思っています。
みんなでやればいいなっていうのは思っているので・・・ただ説得力を増すためにちょっとまだ時間が必要ですけれども・・・そういうひとつの手本っていうか見本になれれば、もっともっと町は活気づくんじゃないかなって思っています」
羅臼の豊かな海に感謝
※羅臼に移住されて、どれくらい経ちましたか?
「ちょうど18年ですね。早いもので・・・」

●羅臼の海、そして自然にはどんな思いがありますか?
「そうですね・・・本当に365日、1日も同じ表情がなくて、猛吹雪の時は出られない日ももちろんあるんです。知床の厳しい環境を毎年感じるんですね。
吹雪で出られない日もあるんですけれども、次の日にはスカ〜ッと青空が広がって、国後島から陽が登って・・・っていうことで、やっぱり1泊では味わえない地域なんですね。
なので、2泊以上の連泊で、いろんな表情の羅臼を感じ取ってもらいたいのと、やはり私たちがこのように漁業をやらせてもらったり、貸し切り宿をさせてもらえてるのは間違いなく、自分たちがすごいんじゃなくって、羅臼の懐の深さがすごいのであって、羅臼の力を少しお借りして・・・。
変わらない景色っていうんですか・・・人口とかどんどん減ってきているんですけれども、知床の野生動物や、変わらない景観、暮らしに生かされているっていうことを忘れずに、この豊かな海の力を借りて開業しているっていう、本当に改めて感謝しているところです」
INFORMATION
加瀬さんは、ぜひ羅臼に来て、昆布洗いを体験するなど、どんなふうに羅臼昆布を生産しているのか、漁師の生活も含めて見てもらい、その上で現地で昆布を購入していただくと、きっと美味しさもひとしおになるでしょうとおっしゃっていましたよ。

加瀬さんが羅臼に開業した貸し切り宿「KOBUSTAY」は、目の前が根室海峡という素晴らしいロケーションにあります。どんな宿なのか、ぜひオフィシャルサイトを見てください。羅臼昆布を始め、加瀬さんおすすめの食材で「漁師飯」を作って、ぜひ味わっていただければと思います。
宿泊のご予約はオフィシャルサイトから、どうぞ。
◎KOBUSTAY:https://kobustay.com






