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地域と人のストーリー「ジオミュージック」〜「心の糧」を作りたい

2026/2/22 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、北海道・北東部・オホーツクエリアにある遠軽町(えんがるちょう)を拠点に活動する、ギターとフルートの音楽ユニット「ホラネロ」の本田優一郎(ほんだ・ゆういちろう)さんと、谷藤万喜子(たにふじ・まきこ)さんです。

 おふたりはご夫婦で、ともに東京学芸大学を卒業後、東京で、ご主人の本田さんはギタリストとして、宇多田ヒカルやアルフィー、大黒摩季ほかの編曲、そしてライヴのメンバーとして活躍。

 奥様の谷藤さんは、東京藝術大学大学院を経て、将来を嘱望されるフルート奏者として、首都圏を中心にオーケストラやリサイタルなど、様々なステージで活躍されていました。

 きょうはそんなおふたりに、北海道に移り住んだ理由や、独自の音楽「ジオミュージック」、そしてヒグマの骨で作った笛のお話などうかがいます。

☆写真協力:オホーツク音楽工房

ギターとフルートの音楽ユニット「ホラネロ」の本田優一郎さんと、谷藤万喜子さん

遠軽町、黒曜石、四季折々の魅力

※ホラネロは、2012年に遠軽町に移住したタイミングで結成。ユニット名の由来は、東日本大震災のあと、福島県双葉町の避難所でチャリティーコンサートを行なった時に、谷藤さんが大好きな福島の子守唄「ホラねろ ねんねろ」を演奏したのがきっかけ。

 実はこの子守唄を、地元福島の人たちも、あまり知らないことがわかり、ならば、多くの人に知ってほしい、そして震災のことも忘れないでほしい、そんな思いがあったそうです。

 命名したのは、本田さんと親交があるシンガーソングライターの樋口了一さん。北海道の人気テレビ番組、大泉洋さん出演の「水曜どうでしょう」のエンディング・テーマ「1/6の夢旅人2002」を歌っているかたなんです。

●東京で活動されていたおふたりが、北海道に移住されたのは、どうしてなんですか?

谷藤さん「きっかけは夫の本さんなんですよ。当時子供が5歳と8歳で、まだやんちゃな盛りですけど、“自然の中で伸び伸び子育てしたいね!”ってなって、私の実家がある遠軽町に引っ越したんです。

 祖父母が住んでいた家を両親が心よく、“使っていいよ!”って言ってくれたのも背中を押してくれました。今は三世代で行き来も出きて、毎日楽しいです」

●本田さんご自身は東京のご出身ですよね?

本田さん「そうですね、はい」

●都会育ちですと北海道での生活は、がらっと変わって、最初は大変だったんじゃないですか?

本田さん「そうですね。移住したのがちょうど1月2日、お正月だったので、冬の真っ只中でした。

 (北海道の)雪景色は見たことがあるんですけれども、実際に(遠軽町の雪に)触ってみると、東京の雪とは全然違ってサラサラと手からこぼれ落ちて、その上を歩いてみると片栗粉を踏みしめたような音が鳴ってすごく新鮮でした。

 新しい土地での生活は戸惑うっていうよりも、わくわく感に満ちていました」

写真協力:オホーツク音楽工房

●そうだったんですね。現在暮らしていらっしゃる遠軽町は、どんな町なんですか?

谷藤さん「ここは出身の私からお話したいと思います。人口は1万8千人に満たないくらいの小さな町なんですけど、旅の拠点としては結構、面白い町です。

 2023年に、白滝という市街地から離れた小さなエリアがあるんですけど、そこから出た黒曜石の石器が日本最古の国宝として話題になったりですとか、あと秋には町民がみんなで手入れして作るコスモスの畑、1千万本咲いているんです」

●すごいですね!

谷藤さん「(コスモスの花を)数えたことはないですけど(笑)、そういうものが見られたり・・・あと、鉄道好きのかたでしたら、動態保存っていう実際に乗れる森林鉄道『雨宮21号』っていうのがあって、それに乗れたりですとか、JRの遠軽駅はスイッチバックでも有名なのでJRの旅もおすすめです」

●この時期は寒さが厳しいんじゃないですか?

「はい、もう流氷が来ています」

●そうですか。遠軽町を訪れるとしたら、いちばんのおすすめの季節はいつになりますか?

谷藤さん「あ~迷いますね・・・本さん、どうですか?」

本田さん「う~ん、北海道はすごく自然がいっぱいあるので、春来たら春の素晴らしい自然がありますし、夏は夏でまたキャンプなんかも楽しめますし、秋は先ほど言っていたコスモスが咲き乱れますし、冬はやっぱりスキーとかスノーボードとか、四季折々楽しめると思います」

●それぞれの良さがありますよね。

本田さん「そうですね」

写真協力:オホーツク音楽工房

●本田さんは、自然ガイドとしても活動されているんですよね?

本田さん「そうですね。遠軽町の『白滝ジオパーク』で、先ほど話題に出ていた、ホラネロの曲の題材にもなっている黒曜石、そのジオガイドとして活動しています」

●具体的には、どんなことをやっているんですか?

本田さん「普段は入れない国有林の山に黒曜石の露頭(ろとう)、いわゆる露出している所があるので、そこにバスでお客様をご案内して、黒曜石の成り立ちだったり、遠軽町のいいところをちょっとご紹介して、最後には僕らホラネロの、黒曜石を題材にした曲も聴いていただいたりもしています」

場所と人、出会いから生まれる「ジオミュージック」

※ホラネロのオフィシャルサイトを見ると、音楽のコンセプトとして「ジオミュージック」を掲げていらっしゃいます。この「ジオミュージック」とは、どんな音楽なんですか?

谷藤さん「私たちが自分たちで名付けた音楽のジャンルなんです。自然が豊かな場所に住んでいると見渡すだけで、いろんな魅力が目に飛び込んでくるんですね。暮らしている人も本当に素敵で、そういう場所とか人との出会いを音楽にしているのが『ジオミュージック』です。

 ここに住む子供たちにも、自分が暮らしている場所っていいところだな~って感じてもらえたら嬉しいですね。そういった身近な人に喜んでもらえる音楽を届けたいっていう気持ちもあります。

 この土地には農家さんですとか漁師さんのように、『命の糧』を作っている人がたくさんいますので、私たちはミュージシャンとして『心の糧』を作れたらいいなって、そういう音楽を『ジオミュージック』って呼んでいます」

●心の糧、素敵ですね!

谷藤さん「ありがとうございます」

●自然からのインスピレーションも大事にして、音楽を作られているっていうことですか?

本田さん「そうですね。自然音を曲にしていると、面白い音とか珍しい音を集めている人っていうふうに思われがちなんですけど、実はそうではないんですね。

 インスピレーションは自然からではなく、人との出会いから得ています。各々の土地に根ざした仕事とか文化、いわゆる風土に根差して暮らしている人たちのお話はとっても面白くて、それを音楽を通して発信しています」

●具体的にどんなことに感性を刺激されますか?

本田さん「そうですね・・・今お話ししたようにそれぞれの土地で頑張っている人たちの話を聞くと、やっぱりそれを誰かに伝えたい! って思うんですね。僕らは音楽を創れるので、その音楽を通して、その土地土地のストーリーだったり、その人たちの物語を音楽に乗せるという形を取っています」

●自然だけじゃなく、人との出会いも大切にされているんですね。

本田さん「そうですね。人と出会わないと曲は作れない。なので、そんなにたくさん曲が作れるわけではないんですけれども、今まで出した(アルバム)6枚はすべてに、北海道に移住してからの人との出会いが詰まっています」

ヒグマの骨笛、世界初の試み

※ホラネロのオフィシャルサイトに「音探し遠足」という企画がありました。これはどんな企画なんですか?

写真協力:オホーツク音楽工房

谷藤さん「例えば、私がヒグマの骨笛を吹く『ヒグマのうた』っていう曲があるんですけど、曲を作る時に知床ウトロ学校の小学生たちと森に入って、音探し遠足をしたんです。

 これは当時の校長先生の提案で授業としてやったんですね。ガイドさんに案内してもらって、クマの巣穴とか木に付いた爪痕なんかを見ながら、クマ追いの“ほいほ~い”っていう声を張り上げながら歩くんですよ。

 断崖の上ではオホーツクの波の音を聴いたり、トドが泳ぐのが見えたり、あと草原で大きなオスジカに会ったりもしました。

 時期が11月頃だったので、落ち葉を踏むとシャリシャリとした音とか、倒木を木琴みたいに叩く音を集めて、その場で本さんがすかさず録音するんです。木の実がいい音がするので、これもマラカスにしたりもして、そうやって集めた音で森の豊かさを曲にしました」

●先ほどもお話ありましたけど、ヒグマの骨、サイトにその骨笛の写真が載っていました。見た目はオカリナのような感じですよね?

写真協力:オホーツク音楽工房

谷藤さん「そうですね。みなさん、よくそうおっしゃいます」

●ヒグマのどの骨というか、どういった状態からオカリナのような形になるんですか?

谷藤さん「私が吹いている笛は、上腕骨の一部になります。切り出して作ったんですけど、尺八奏者の父が短い尺八の構造として作ってくれたんです」

●へぇ~っ! 尺八を私もちょっと趣味で吹くんですけど、穴は5つですね? で、その構造とオカリナの構造が似ているんですか?

谷藤さん「オカリナとは、実際の構造はちょっと違うんですけど、ヒグマの骨笛の場合は尺八より短いので、いちばん下の部分、音が下から抜けていくところがあるじゃないですか。あそこを手で塞いで(音を)出すと、それがオカリナの音により近くなるので、“まるでオカリナを聴いているみたいね”ってよく言われます」

(*ここで谷藤さんにヒグマの骨笛を吹いていただきました)

●わぁ~、すごくいい! 素敵なきれいな音色ですね。

谷藤さん「ありがとうございます」

●最初から、いい音って出たんですか?

谷藤さん「いえいえ! 猛練習しました!(苦笑)」

●(笛の)加工は尺八奏者のお父様がいろいろやってくださったんですか?

谷藤さん「そうですね、はい」

●練習に練習を重ねて、今のような音が出せるようになったという感じなんですね?

谷藤さん「はい。ドレミファソというか、音階を出せるように作ったわけではなくて、とりあえず作ってみようという世界初の試みですので、出来るまで本当に指使いもわからないし、“とりあえず吹いてみよう!”って言って、父とふたりで試行錯誤しました。父から預かって、しばらく私が練習していたら、“ドレミファソ”まで出たんですよ(笑)」

●すごい!

谷藤さん「なので、そのドレミファソでできる曲を作ろうということで、本さんと作り込んでいったのが『ヒグマのうた』です」

(編集部注:ヒグマの骨は、ご縁があった、知床財団の元事務局長で、ヒグマ研究の第一人者「山中正実(やまなか・まさみ)」さんから、ご好意でいただいたそうです。谷藤さんの、世界自然遺産の知床の森の豊かさを、ヒグマの骨を笛にして表現したいという思いに応えて、たまたま山中さんのご自宅にあった骨を1本、いただけることになったそうですよ。

写真協力:オホーツク音楽工房

 ほかにも「オオイタドリ」という植物の茎をもとに、谷藤さんご自身が作った笛も吹いていただきました。この音色も素敵でした。谷藤さんがおっしゃるには、材料はただで手に入るので、オオイタドリの笛を広めて流行らせたいとのことでした)

「アバリ」〜漁師の伝統・技術

※2024年に発表されたアルバム『ECHOES』には、ヴォーカル入りの曲が2曲収録されています。「アバリ」そして「北のひかり」という曲ですが、これはもともとはインストだったんですよね? 

本田さん「そうですね。いわゆる自然音とか漁船の音を取り入れたインスト曲でした」

●インストだったものに、なぜヴォーカルを入れようと思われたんですか?

本田さん「歌にすると間口が広くなって、いろいろなかたに届けやすいのではないかと思って、ヴォーカル入りの曲にしてみました」

●歌っていらっしゃるのは、どなたなんですか?

本田さん「KAZUMIさんというかたで、北海道の江差に住んでいらっしゃるかたなんですけども、江差追分(えさしおいわけ)のチャンピオンです。以前、僕は一緒にツアーでまわったことがありまして、それで知り合って、僕が北海道に移住してきたので、また連絡を取り合うというような仲になりました」

●曲名の「アバリ」というのは、どういった意味なんでしょうか?

谷藤さん「これは私も知らなかったんですけれども、“網の針”と書いて『アバリ』って読むんです。実は私、小さい頃、雄武(おうむ)という町で暮らしていたんですけど、鮭漁が盛んな町で、雄武漁協のみなさんに協力していただいて、定置網の手入れ作業や早朝の漁に同行させてもらいました。

 今は消耗品として買って済ませることもできる網なんですけど、雄武漁協では伝統技術を残すためにできるだけ手作業で加工して、あと直したりもしているんですね。

 私たちは漁師さんって荒波の中で豪快にっていうイメージがあったんですけど、最初の取材で、黙々とアバリ、針を手に持って動かして糸やロープを編む、すごく繊細な作業風景にびっくりしました。

 で、こういった大切な文化を受け継ぐ活動を知ってほしくて、タイトルを『アバリ』にしました」

●この曲はイントロがエンジン音から始まりますけれども、船のエンジンっていうことなんですよね。

谷藤さん「そうです。曲自体、港で船がエンジンをかける、その音から始まって、あと水揚げする時のクレーンの音、鎖の音、そんなものがリズムになっていきます。あと鐘の音が入っているんですけど、“号鐘(ごうしょう)”って聞いたことあります?」

●ごうしょう???

谷藤さん「号鐘、これは一部の漁船には付けなくちゃいけない決まりがあって、その鐘を鳴らすことで漁師さんの命を守るというか、危険を知らせたりする信号のようなものです。

 そういった音も入っていたり、あとベース音のように聴こえるのが、実は船のエンジン音という作りです。地域学習では子供たちもこの漁を体験しているって聞いたので、曲の中盤では子供の声も入っていて、なおかつ全体としては結構力強い曲に仕上がっていますね」

たくさんの出会いを求めて

※地域に根ざした音楽づくりに取り組んで、10数年が過ぎたと思います。今後も音楽家としてのスタンスは変わりませんか?

谷藤さん「そうですね。音楽家としてって言えるかは、ちょっとわからないんですけど、地域の魅力は意識して感じようとしないと、案外見えてこないと思うんですね。

 なので、やっぱりさっき言ったように日々の暮らしの中の出会いとか、小さな幸せとか風景とか、そういうのを全力で楽しもう! っていうふうに意識しながら暮らしていくことを続けていきたいですね」

●ジオミュージックの新しい展開というのはありそうですか?

谷藤さん「これも毎日の暮らしの中で、わ~っと感動する瞬間があれば、そこでまた新しいジオミュージックが生まれると思うので、たくさんの出会いを求めていきたいなと思います」

●では最後にホラネロの音楽を通して、どんなことを伝えていきたいですか?

谷藤さん「地域ならではの人の営みですとか、自然の豊かさとか、そういう魅力を音で伝えていきたいっていうのが、ホラネロのジオミュージックなんです。

 聴いてくれた地元のかたが故郷をもっと好きになってくれたり、ほかの地域のかたが行ってみたいな、暮らしてみたいなって思ってくれたりしたら、すごく嬉しいです」

●本田さんはいかがですか?

本田さん「地域の魅力、自分たちが今住んでいる場所の魅力っていうのは、自分たちがまず楽しんでいかなければ、次の世代には伝わらないと思うので、まず自分たちが楽しんで、そしてそれを子供たちに伝えるというよりは、僕らの姿を見て、自分たちが住んでいるところは、こんなに面白いことがあるんだとか、この人たちはそれを面白いと思っているんだって思ってもらって、それが彼らのアイデンティティを育むきっかけになればと思っています」


INFORMATION

アルバム『ECHOES』

 今回は、おもに2024年発表のアルバム『ECHOES』から楽曲をお届けしました。このアルバムには、日本の音楽史に残る坂本九さんの名曲「見上げてごらん夜の星を」と「上を向いて歩こう」のカヴァーが2曲、収録されています。どんなインストに仕上がっているのか、ぜひ聴いてみてください。

 ホラネロはこれまでに『ECHOES』を含め、アルバムを6作発表しています。CDはオフィシャルサイトのオンラインショップから購入できますよ。

 ライヴ情報としては、4月12日、北海道滝川市の「ホテルスエヒロ」での公演が予定されています。アルバムやライヴ情報など、ぜひオフィシャルサイトをご覧ください。

◎ホラネロ:https://www.horanero.com

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