2025/5/25 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. TITANIUM / DAVID GUETTA FEAT. SIA
M2. WAITING ON THE WORLD TO CHANGE / JOHN MAYER
M3. POWER OF A WOMAN / ETERNAL
M4. ALL THE LOVE IN THE WORLD / THE CORRS
M5. Black and White / Da-iCE
M6. KEEPING YOUR HEAD UP / BIRDY
M7. DREAMS / VAN HALEN
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2025/5/18 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、動物言語学者、東京大学・准教授の「鈴木俊貴(すずき・としたか)」さんです。
鈴木さんは1983年、東京都生まれ。立教大学大学院の博士課程修了後、東京大学大学院や京都大学の助教を経て、現職の東京大学・先端科学技術研究センターの准教授として活躍。世界で初めて、鳥の言葉を解明した研究者として、国内外で大変注目されています。そして今年出した初めての本『僕には鳥の言葉がわかる』が10万部を超えるベストセラーとなっています。
この番組も、以前から大注目している研究者のおひとりで、念願かなって番組にお迎えすることができました。
もともと動物学者になりたかった鈴木さんが、なぜ鳥の言葉を研究するに至ったのか・・・それは、卒業研究のテーマを探していた大学3年生の時に、シジュウカラがほかの鳥と比べて、いろんな鳴き方をすることに気づいたそうです。
そしてシジュウカラをじっくり細かく観察し、状況によって鳴き声を使い分けていることに気づき、これはそれぞれの鳴き声にきっと意味がある。もしかしたら、言葉になっているのかも知れないと、ひらめいたそうです。
今回は鈴木さんが発見したシジュウカラの言葉と、それを理解するほかの鳥たちとの関係のほか、これも大発見! シジュウカラのジェスチャーについてもうかがいます。
☆写真提供:鈴木俊貴

シジュウカラ語「ジャージャージャー」の意味は?
※研究のメイン・フィールド、軽井沢の森にシジュウカラ用の巣箱を40個ほど設置して、繁殖と子育てを時間をかけて観察されたそうですが、そこで大発見につながる事件があったんですよね?
「そうですね。ありました! 覚えているんですけども、2008年の6月10日の午後1時24分、その時はマイクを持って、レコーダーを持って、鳥の声を録音していたんです。
ある巣箱の前に行った時、聴いたことのない声が聴こえてきたんですね。それが“ジャージャージャー”という声で、今でも鮮明に覚えています。これは何が起きているんだろうと思って・・・でも鳥の声だなと近づいて行ったら、やっぱりシジュウカラが鳴いていた」

(*放送では、ここでシジュウカラの鳴き声「ジャージャージャー」を聴いていただきました)
「でも、こんな声を聴いたことなかったんですね。よくよく観察すると巣箱の下に、アオダイショウっていうヘビが迫っていることにも気づいたんです。あっ! これ、ヘビが来ているから、”ジャージャー“って鳴いているんだって思ったんですね。それまで朝から夕方まで毎日、シジュウカラの声を録音していたのに、そんな声を聴いたことなかったから、これはひょっとしたら、ヘビっていう意味になっているんじゃないかなって思ったんです。
そこから、ひょっとして、これ、ヘビと、もし言っているんだったら、めちゃくちゃ実は大発見じゃないの? ってことにも気づいて、それを証明するに至ったんですよね。
というのも、動物の鳴き声って、これまでに学者はどう考えていたかというと、単なる感情の表れだって考えていたんですね。例えば、怒っているとか怖いとか嬉しいとか、そういった感情が表れているだけ。確かにそういう動物たくさんいるかもしれませんが、なんかシジュウカラの場合は違うように見えたんですね。
要するにヘビを見つけて怖くて、“ジャージャー”って鳴いているんじゃなさそうだと・・・。ヘビの時は“ジャージャー”だし、タカの時は“ヒヒヒ”だし、ネコやカラスの時は“ピーツピ”って警戒する。あっ!これ、ただ単に怖いとか、そういった気持ちが表れているんじゃないんじゃないのって思ったんですね。
それで、録音した声を聴かせてみるという実験をすると、どうなったかっていうと、あたかもヘビを探すかのように、“ジャージャージャー”って聴いたシジュウカラはまず地面を見たんです。でも地面にヘビなんて這ってない。僕がスピーカーから聴かせているだけだから。そうすると今度は、ヘビがいそうな藪の中を見に行ったりとか、もしくは巣箱の中にもう(ヘビが)入っちゃったんじゃないだろうかって、ビクビクしながら中を覗いたりする。
これは絶対ヘビと言っていて、“ジャージャー”って声を聴いたシジュウカラからは、おそらく頭にヘビを思い描いて探しているはずだって思った。もしそうだったとしたら・・・すごいですよね。
だって言葉って言えるじゃないですか。ただ感情が伝わるだけだったら、怖いって恐怖心が伝わるだけだったら、頭にヘビなんてイメージできないはずですよね。だけど、ちゃんとイメージしているようなふるまいをした。それをちゃんと確認するためにもうひとつ実験をしました。
どうするかというと、“ジャージャージャー”って声を聴かせた状態で、聴かせるとシジュウカラはヘビを探すような仕草をするんですけども、その仕草をしている時に落ちている20cmほどの木の枝に紐をつけて、ちょっと引っ張ってみた。そんな木の枝を普段は気にしないんですけれども、“ジャージャージャー”って聴かせた状態で、その枝を動かすと(シジュウカラが)確認しに近づくことがわかったんです」
●なるほど! ヘビかもしれないって思ったということですね?
「そうです! 人間の場合も言葉って意味を伝えるだけじゃなくて、見間違いを引き起こすような作用があって、例えば普通の写真でも、ここに顔があるよって言われると心霊写真に見えたりする。それは顔っていうのがちゃんと、目と鼻と口のある顔だっていうふうな視覚的なイメージを頭に思い描いて、それを当てはめて見間違えてしまう。
同じようなことがシジュウカラにもあることがわかって、ってことは、やっぱり“ジャージャージャー”って聴こえる声は、ヘビを示す単語だってことがようやくわかった。実はそれが人間以外の動物で初めて、概念につながった言葉があることを証明した研究になったんですね」

(編集部注:ここでシジュウカラがどんな野鳥なのか、ご説明しておくと・・・体の大きさは14.5センチほど、体重は15グラム前後の、いわゆる小鳥。見た目の特徴は、白いほっぺたに、胸もとに黒いネクタイのような模様。日本全国に分布していて、市街地や公園などでもよく見られます。
春先に「ツツピー・ツツピー」と、よく通る声で鳴くので、きっと耳にしたことがあると思います。食べるものは、草木のタネや昆虫などで雑食性。春からちょうどこの時期が繁殖のシーズンで、木の穴などに巣を作り、オスとメスが共同で8羽前後のヒナを育てるそうですよ)
シジュウカラ語には文法がある!?
※先ほどのお話でシジュウカラには言葉があることはわかりましたが、鈴木さんは、シジュウカラは鳴き声を組み合わせて文を作ることができると本に書いています。これはどういうことなんですか?

「これは実は観察を始めて2〜3年で、すぐ気づいたことなんですよね。当たり前のように彼らはやっているなと・・・。具体的には、例えば“ピーツピ・ヂヂヂ”って声があるんですけども、“ピーツピ”って単独でも使うことがあって、それはカラスとかネコとか何らかの危険な動物が近くにいた時とかに、“警戒しろ! 注意しろ!”みたいな意味で“ピーツピ”って鳴くんですよね。
“ヂヂヂ”って声は、餌を見つけた時に仲間を呼んだりするための“集まれ”という意味で、それを組み合わせることがあって“ピーツピ・ヂヂヂ”っていう決まった順番に組み合わせるんですね。
それをよくよく観察してみて、どういう時やるかというと、天敵を群れを成して追い払いにいくことがあるんですよ。よくやるのがモズっていう肉食性の鳥で、20cmぐらいの鳥なんですけれども、スズメとかシジュウカラとかを襲って食べちゃうんですよね。
でもシジュウカラって結構勇敢なので、モズを見つけると“ピーツピ・ヂヂヂ、警戒して集まれ!“って言って、仲間を呼び集めて、みんなで羽をパチパチしながらモズに襲いかかる。そうやって自分たちの棲んでいる森からモズを追い払おうとするんですよね。その時の号令が“ピーツピ・ヂヂヂ、警戒して集まれ!”っていう二語文だって気づいたんです」
(*放送ではここでシジュウカラの鳴き声「ピーツビ・ヂヂヂ」を聴いていただきました)
●例えば、“ヂヂヂ・ピ-ツピ”ってみたいに語順をひっくり返すと、どうなるんですか?
「そうなんですよ! それも実験してみたんです。語順をひっくり返してスピーカーから聴かせてみると、実はシジュウカラは意味がわからなくなっちゃうんです。
要するに“ピーツピ・ヂヂヂ”って正しい語順で聴こえると、シジュウカラは警戒して近づいて集まってきて、モズがいたら追い払うんだけれども、“ヂヂヂ・ピ-ツピ”って語順をひっくり返して聴かせてしまうと意味が伝わらないらしくって、追い払う行動にいかないんですよ、ってことは、彼らには文法があるんじゃないかってこともわかってきた」
●そういうことなんですね~。ちなみにシジュウカラは、ほかにもこういった文、ふたつの鳴き声を組み合わせることってあるんですか?
「はい、実はたくさんあります。たとえば“チッチ、ヂヂヂ”とか“ヒッヒッヒ、ヂヂ”とかいろんな組み合わせがあって、これまでに録音できている組み合わせの文章のパターンは200パターン以上あるんですよね」
●そんなにあるんですね~。
「そんなにあるんです。おそらく人間以外で、最もちゃんと組み合わせて文章を作っている動物が、今知られている中だとシジュウカラなんじゃないかなと思います」
お互いの言葉を理解する鳥たちの世界!

※シジュウカラやコガラ、ヒガラなどの野鳥が群れを作るというのを聞いたことがあります。それはどうしてなんですか?
「これはおもにふたつ理由があります。ひとつは、一緒に餌を探して見つけたら、みんなで共有するということをします。例えば、シジュウカラがいい餌を見つけると“ヂヂヂ”って鳴く。そうするとヤマガラ、コガラ、ヒガラなどが集まってきて、みんな近くで食べるんですよね。
ヒガラが気づかなかったような餌にも、シジュウカラが気づくかもしれないしっていうふうに、お互いちょっと目の付け所が違うから、餌を見つける効率がひとつ上がります。
それだけじゃなくて、最も大きな要因は、実は天敵に対する対策なんです。鳥たちは群れをなして生活するんですけれども、特に秋から冬にかけては、いろんな種類の鳥が集まって『混群』、混ざる群れと書いて、混群(こんぐん)と読むんですけれども、ひとつの群れを作って過ごす。それは何故かと言うと、シジュウカラもコガラもヤマガラも混群のメンバーみんなが、ハイタカやオオタカっていう猛禽類に食べられてしまうんです。
誰かがそれに気づけば、例えば、タカが来たという、シジュウカラだったら“ヒヒヒ”という警報を鳴らして、みんな一斉に藪に逃げて行ったりすることができる。つまり、群れで過ごしていたほうが誰かが天敵に気づきやすくなるし、誰も気づかなかったとしても、自分が襲われるリスクが確率的に減ります。だから鳥たちは一緒に過ごしているのです。
その中でいちばん大事なのは鳴き声の理解なんです。一緒に過ごしていてもお互いの言葉の意味が分からなければ、群れなすことってあんまり意味がないんですよね。効果が大きくなくて・・・。誰かが餌を見つけて鳴いたら、そこに集まろう。誰かがタカを見つけて鳴いたら、この声はタカだっていう意味だ! みんなで逃げなきゃいけないんですよね。
そのためには、ほかの種類の鳥の鳴き声の意味とかまでお互いにわからなきゃいけない。そういった世界もあることがわかってきて、実は鳥たちは種の壁を越えて、お互い会話ができるってこともわかってきたんです」
●へぇ~! つまりシジュウカラの“ヂヂヂ”というのが、“集まれ!”という意味であることがわかっているということですか? ほかの種の鳥も?
「そうです! だからシジュウカラが“ヂヂヂ”って鳴くと、シジュウカラが集まれって言っている。餌かなんかを見つけたのかな? って、ヤマガラやコガラとかほかの鳥も集まる。
コガラも集まれという声があって、それは“ディディディ”という声なんですよね。全然響きが違うんだけれども、シジュウカラもわかっていて、お互いに理解して、餌をみんなで見つけて、みんなで敵から身を守って暮らしている。それが本当に、ある意味、鳥たちの言葉の世界だったのですね」

羽をパタパタ、お先にどうぞ!?
※もうひとつ、本を読んで驚いたのが、シジュウカラのジェスチャーなんですが、これはどういうことなんでしょう?
「これまでは言葉を持つのは、人間だけだって考えられてきていて、実はジェスチャーも人間とか類人猿にしかないんじゃないの? っていうふうに研究者は考えていました。
というのも、赤ちゃんの発達を見てみると、小さい時にまずジェスチャー、指差しのジェスチャーとかが発達してきて、そこに言葉がくっついてくるという、そういった言葉の発達の仕方があるんですね。ジェスチャーっていうのは言葉の起源であって、チンパンジーとかボノボぐらいにまでにしかないんじゃないのってみんな考えていた。
それはなぜかと言うと、人間やチンパンジー、ボノボって二足で立つことができる動物ですよね。二足で立っている間、両手両腕が自由になる。その腕の動きを使って、手を振って“バイバイ”とか親指上げて“いいね!”とか、ジェスチャーするわけですね。
でも、鳥も枝に留まっている時、地面にいる時って、二足で立っていて翼が自由ですよね。私はシジュウカラの翼の動きに興味がいって、観察していて気づいたんです! 翼をパタパタって小刻みに震わせると、“お先にどうぞ!”という意味になっていると・・・」
●お先にどうぞ!? へぇ~、それっていつ(シジュウカラは)使うんですか?
「例えば、ちょうど今の時期、5月くらいはシジュウカラは子育てシーズンなんですね。シジュウカラがどういうところに巣を作るかというと、木の穴とか巣箱の中とか、ちょっとした空洞なんです。入り口が狭いんですよね。
オスとメス二羽でヒナに青虫を運んで子育てをするので、一緒に巣の前に来ちゃうと、どっちが先に入ろう!? っていう状況になるんですね。その時に片方がパタパタっとやると、もう片方が先に(巣に)入る。
人間の場合も“お先にどうぞ!”ってドアの前でやりますよね。手のひらを見せて“どうぞ!”って。そうしたら、どうぞ!ってやられたほうが先に入るんですけども、それと同じようなことをシジュウカラもやっていることがわかったんです。ジェスチャーの発見も実は世界で初めてです」
●そうだったんですね!
「そうなんです! 鳥類学者も翼は飛ぶためのものだよねって思い込んでいたので、まさか翼の動きでメッセージを伝えて、ジェスチャーになっている。そんなこと誰も考えていなかったんですよね。だからよくよく観察してみると、本当にいろいろな発見が次々にあって、まだそれが毎年毎年、新しい発見があるっていうのが、僕はずっと続いているんですけども・・・」
新しい学問「動物言語学」
※人間だけが言葉を持つ特別な存在というのは、間違いだったと言っていいんですよね?
「そうですね。人間だけが言葉を持っていて、動物の鳴き声は感情だというふたつの切り分け方は、僕は間違っていると思います。一方で、人間みたいに動物も喋っているんだっていう解釈も間違っていると思います。要するに童話とかにあるように、人間みたいに喋っているんだって擬人化して捉えてしまう。それも実は間違いです」
●それも間違いなんですね?
「はい、人間には人間の言葉があるように、シジュウカラにはシジュウカラの言葉があって、共通点もあれば、相違点違いもあるんですよね。そうやって、ひとつひとつ何が似ていて、何が違うのかっていうことをクリアにしていくことが、言葉ってどうやって生まれたんだろう。人間の言葉ってなんなんだろう。そういうことを考える上でも、とても大切なことだと思います。
でも実は研究者はずーっとそれやってこなかった。だから僕はそれを『動物言語学』という新しい学問として世界に広めていこうと頑張っているんです」
●動物言語学を牽引する立場として、今後どういった研究に力を入れていきたいですか?
「今やっていることは、研究室の学生と一緒にシジュウカラ以外の動物に対しての動物の言葉の研究をしています。例えば、モモンガとかネズミとか、あとツバメとかスズメとか、そういった哺乳類とか鳥類の言葉の研究を進めています。
自分としてはやっぱりシジュウカラとかその仲間、コガラやヤマガラの研究を続けているんですね。最近興味を持っているのは、海外にも実はシジュウカラの仲間がいて、外国のシジュウカラはどういう会話をしているんだろう・・・そういうことも実は、スウェーデンとかスペインの森の中に巣箱をたくさんかけて、それで向こうの研究者と一緒に彼らの言葉を調べて、国によってどう違うのかとかを解き明かしているところです」
●なるほど・・・。最後にもし鈴木さんがシジュウカラになれたら、何をしてみたいですか?
「シジュウカラにまず、なりたいんですけど、僕は本当に・・・!(笑) やっぱり研究していると、シジュウカラはこういう時にこう考えているなとか、わかってくる気がする。だけど、それってシジュウカラにならないと、わからないところとかあるんですよね。
人間もそうじゃないですか。あの人は僕のことをこう思っているに違いないと思っても、本当にそうなのかはわからない、その人にならないと・・・。まず、シジュウカラになりたい!
そして、シジュウカラになってやりたいことっていうのは、普通にシジュウカラの世界で暮らしてみたいっていうのもあるし、あとは誰かに実験されたいですね(笑)。僕がやっていた実験を、僕がシジュウカラになった状態で経験した時、例えば、本当に枝を見間違えてしまうとかね。“ジャージャー”って聴いたら、枝とヘビを見間違えて近づいちゃうみたいな! 語順をひっくり返した時にやっぱ変だな? と思うのかどうかとかね。
そういったところは、シジュウカラになんなきゃわからないところが実はあるんで、なってぜひ実験されたいです。いろいろ語順をひっくり返した声とかを聴いてみたいなと思います」
●鈴木さんが実験された鳥たちは多分幸せだったでしょうね。
「まあ幸せかわかんないんだけど(笑)、僕はできるだけそういった鳥たちに感謝したいなと思っていて、例えば、学会発表の謝辞とかに必ず“何羽の鳥に感謝します”っていうことを入れたりします」
INFORMATION
初めての著書は、鈴木さんが多くのかたと、シジュウカラの世界を共有したくて書いた本だそうです。シジュウカラの言葉などをどうやって調査・研究し、立証したのか、とても興味深い内容に溢れています。また、鈴木さんの人となりがわかるエピソードも満載です。
本の巻末には特別付録としてQRコードが載っていて、シジュウカラの鳴き声を聴けるようになっています。緑地や公園、街中で、賢くたくましく生きているシジュウカラに気づくと人生の楽しみになると、鈴木さんはおっしゃっていましたよ。
小学館から絶賛発売中! 詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎小学館:https://www.shogakukan.co.jp/books/09389184
◎小学館 特設サイト:https://www.shogakukan.co.jp/pr/bokutori/
鈴木さんが国際的な学会でも提案され、作った新しい学問「動物言語学」、2年前に、東京大学・先端科学技術研究センター内に「動物言語学分野・鈴木研究室」が開設されています。研究内容などはぜひオフィシャルサイトを見てください。
◎動物言語学分野・鈴木研究室:
https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/research/suzuki_lab.html
2025/5/18 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. WILD BIRD / GEORGE BAKER
M2. DANGEROUS / ROXETTE
M3. SONG BIRD / FLEETWOOD MAC
M4. TALKING BIRD / DEATH CAB FOR CUTIE
M5. GET TOGETHER / BIG MOUNTAIN
M6. I’M LIKE A BIRD / NELLY FURTADO
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2025/5/11 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、「都市森林株式会社」の代表取締役、そして一般社団法人「街の木ものづくりネットワーク」の代表理事「湧口善之(ゆぐち・よしゆき)」さんです。
東京生まれの湧口さんは、大学で西洋美術史を専攻。卒業後は建築設計事務所に勤務する傍ら、世界各地を訪れ、建築や都市を研究。その後、木造建築に取り組み、岐阜県高山に移住し、木工や林業を学び、東京に戻ってからは街の木に着目、都市林業に取り組んでいらっしゃいます。
そして先頃『都市林業で街づくり〜公園・街路樹・学校林を活かす、循環させる』という本を出されています。
きょうはそんな湧口さんに、都市林業の課題や可能性のほか、「街の木ものづくりネットワーク」の活動などうかがいます。
☆写真協力:都市森林株式会社


街の木を木材に
※まずは、本のタイトルにもなっている「都市林業」、初めて聞く言葉なんですが、これはどういうことなのか、教えてください。
「都市林業っていうのは、都市で林業をしようっていうことだと捉えられがちなんですけれども、山の林業とは全く違うというか・・・。
これまで街の木は、街路樹だったり庭木だったり、育てているんですけれども、伐ったら、ほとんどごみ同然というか、伐った瞬間、目の前からパッとなくなってくれたらいいのになっていうような感じだったんですよね。
植木屋さんや伐採屋さんとかも伐ると、それをお金を払って捨てに行くのが普通のことだったんですけれども、そういうものを木材として、あるいは他の資源としてでも、もっと活用することができないかなっていうのが、都市林業の簡単な説明になります」
●なるほど。湧口さんがこの都市林業に目を向けるようになったのは、何かきっかけがあったんでしょうか。
「もともと僕は建築をやっていて、そこで木造建築とかやっていたんです。そういう中で建築に関わっている人って、みんなそうだと思いますけど、ずっと壊されないで長く残って、ゆくゆくは文化財とか世界遺産とかになるようなものを作りたいなって、みんな思っていると思うんですね。それを言うか言わないかはちょっと別としても・・・だけど、なかなかそういうことが、今できていないなっていうのがあって・・・。
で、なんでだろうって、ずっと考えていた時に昔は、今ここにあるもので作るのが当たり前だったから、そこに木があったら木で作るし、石があったら石で作るし、草があれば草で作りますよね。もし水と氷しかなかったら、水と氷を工夫して、イグルーみたいなものを作ってみたりとか・・・。
ああいうのってその土地ならではの個性とか、そういうものが自ずと備わっていて、そしてそこの人たちにとっても、すごく大事なものだっていうか、アイデンティティの一部みたいになっていっていると思うんですけど、今の時代って素材生産の仕組みとか物流も変わっているし、そういうことがもうなくなっちゃっているんですよね。
だから、もしお庭に大きな木があっても、これを使ってテーブルを作ろうとか、お家を建て替えた時に柱にしようとか、そういうことをするのはすごく不合理なことになっちゃっているっていうか、めちゃくちゃお金がかかる話になっていたりとか・・・。で、そうやってできたものに、なかなか愛着も抱けなかったり・・・。
なので、かっこいい建築はいつも作られているんだけど、数十年経ったら壊されちゃうみたいなことが続いていて、そこをなんとかできないかなっていうところから素材への探究というか、そういうのが始まっています。
で、街の木は現状、木材にすることはやっぱり合理的ではなかったから、みんな使っていなかったんだけど、それを上手くいろんな工夫をして合理的にできたならば、面白いことになるんじゃないかなっていうのが、その発想のきっかけなんです」
(編集部注:湧口さんによると、家庭から出る、樹木を剪定した枝などは燃えるゴミとして処理されますが、業者が伐った公園の樹木や街路樹は、リサイクルすることになっていて、堆肥や製紙用のチップ、バイオマス用の燃料として活用されているそうです)
都市森林は多種多様!?

※これまで街路樹や公園の樹木が「木材」として活用されなかったのは、どうしてなんですか?
「それは木材用の原木として、良くないからなんですよね。この話をする時、いつもこの話をするんですけれども、山の木でもヒノキとかスギとか、あれは人工林で畑みたいなものだから、ちょっと違うんですけれども、広葉樹の場合はだいたい山で100本、木を伐ったら5本くらいしか木材にならないんですよ。そのくらいしか木材用の原木としていいものって山でもないと・・・。
街の木はどうかっていうと、山の木よりもっと悪いんですよね。やっぱり剪定をすごくしちゃっていたりするし、そうすると樹形も歪んでいるし、あとは木が弱っているから腐っていたりとか、いろいろと良くないことがあって・・・。
そういうものを木材にすること自体は、お金さえかければできるんだけど、そうやってお金をかけて材料を得ても、それで例えば木工とか大工さんとか工務店とか、そういう木を扱うところが仕事になるかっていうと、まあ普通はならないから・・・。
なので、特別に思い入れがある木です、思い出の木なんですとか、記念の木なんですとかっていうと、それにすごくお金をかけて、何かするっていうことはあったと思うんですけれども、なかなか普通には活用できないっていうのがあったわけです」
●山の林業はスギやヒノキ、カラマツなどの針葉樹で木の種類が少ないイメージがあります。一方で、都市の樹木は街路樹にしても公園の木にしてもたくさんの種類があるように思えるんですけれども、そのあたり種類についてはどうなんでしょうか?
「ここがすごく都市の森、私はそれを『都市森林』なんて呼んでいるんですけれども、都市のいろんな木々の面白いところで、ありとあらゆる樹種がありますね。
で、自然の、在来の木もありますし、その在来の木も例えば、東京なんかでも、本来はもっと南のほうに生えていた木をこっちに持ってきたものがあったりとか、園芸的に改良というか、桜もいろんな種類がありますけど、そういうものもあったり・・・。あるいは海外の木もすごくたくさん植えられているし、本当にいろんなものがあるなっていうのは、面白いところでもあります」
●そうすると都市林業では、そういった多種多様な樹木も活用していこうということなんですか?
「それはもうなんでも活用しますね。大きな木だけじゃなくて小っちゃな木とか、こんなものを木材にするって、そもそも思わないようなものまで、なんでもやってみます」
東本願寺、みんなの物語

※湧口さんは、研究のために国内外の建築を見てまわったそうですね。これまで見た中で、特に感銘を受けた建築物はありますか?
「印象に残った建物はいろいろあるんですけれども、ひとつ紹介すると、京都の東本願寺がとても印象に残っているというか感銘を受けたというか・・・。
どこがっていうのは、何もそういう話がなくても、とにかくすごい建物ではあるんですね。みなさん行かれるところだと思うんですけれども、ものすごく大きなケヤキの木を無数に使って作られています。
東本願寺は明治時代に再建しているんですけれども、再建した時に日本中から、それこそ東北からも四国からも、みんな村中総出とか町中総出で、ケヤキを伐り出して運び出して・・・。
運び出す時に使ったロープ、それも女性の長い髪の毛と麻の繊維を編み込んで、直径が30センチもある、ものすごいロープが展示されているのを見たことがあるんですけど、そういうものを作って、そしてみんなでその木を集めて、そして東本願寺に(日本中から木が)集まってきて作られたっていう、そこにはやっぱりみんなの物語が、ものすごく乗っかっているだろうなと思います。
都市林業でやりたいのは、そういうことなんだよねっていうのがありますね。みんなで木を育てて、それを活用することにも、みんなで関わって、そしてひとつの大事な建物ができあがったら、それはみんなにとって大事なものになるし、200年経っても絶対壊したくないよねってなるんじゃないかなっていう、そういうことなんですけど・・・」
街の木ものづくりネットワーク
※「都市森林株式会社」とは別に、一般社団法人「街の木ものづくりネットワーク」を設立したのは、どうしてなんですか?
「やっぱり街の木と言った時に、それに携わるのは仕事の文脈で携わる人ばっかりじゃないと思ったんですよね。やっぱり一般の人たちが・・・仕事でやっている人であっても、仕事の文脈ではお金がいただけないからできないこともあると思うんですよ。
だけど、これをやったらみんなすごく喜ぶんだけどな〜とか、そういうなかなかプロの仕事としては成立しづらいことを、非営利であればできることもあると思うし・・・。林業ができるとか木工ができるとか、そういうことじゃない普通の人たちは、それこそ小さな子供たちでも街の木に携わって何かできることがあるんじゃないの? って思って(一般社団法人を)作ってみました」
●具体的にはどういった活動をされているんですか?
「よくやっていたのは、なんでもいいんですけれども、収穫祭なんてことを毎年やっていましたね。街の木の食の恵みを活かそう! ということで、お庭の木でもいろいろ実がなったりとか、あるいはハーブとして使える木があったりとか、いろいろとあると思うんですけど、そういうものをみんなで持ち寄って、そして一緒に料理してパーティーしよう! みたいな、そういうイベントをよくやっていました」
●そのほかには、どういった活動がありますか?
「よくやったのは苗木を作るっていうことですね。それもタネを買って来たりして、苗木を作るんじゃなくて、工事現場、工事でこれから伐られちゃう木の子供を探して、それを救出するというか、そしてそれを鉢植えにしておいて、お家で育ててもらうとか、そういう活動もしていますね。それを工事が終わったら、そこに植えに行こうね! という形です」
●苗木を自分たちで育てて植樹をするということですけれども、一体どんな種類の木を植えているんですか?
「本当にいろんな種類があるんです。例えば、最近やっているのだと、団地から大きなマンションに建て替えるプロジェクトの現場では、その団地の樹木の子供たちを苗木にしています。
例えば、樹種で言うと、トウカエデとかケヤキ、アキニレ、ユズリハ、シラカシ、カツラ、ゲッケイジュ、ムクゲなど、まだまだあるんですけれども、その団地で目立っていた樹種のタネを取ったり、足元に生えている小さな苗木を救出して、そして新しいマンションになった時に植えようねっていうようなことで育てていたりします」

●苗木を育てて植樹をすると、自分が植えた木に愛着が湧いてきますよね?
「そうですね。実際に植えた木が成長していくのを見ていけますし、きっとそこを通りかかるのがいつも楽しみになると思います」
●そうですよね。実際に参加されたかたの反応はどうでしたか?
「これはもう本当に間違いないっていう手応えがあるというか、本当に子供たちも生き生きしています」

(編集部注:「街の木ものづくりネットワーク」の活動の、ひとつ事例として南町田グランベリーパークのリニューアルの際に、参加者のみなさんに工事中の公園に入ってもらい、苗木を救い、その苗木を各自自宅で育ててもらったあと、リニューアル後の公園に植樹することができたそうです)
みんなが喜ぶ都市林業に
※湧口さんによると、都市林業に取り組み始めた頃は、街の木を木材として活用する事例がなかったため、丸太を集めるために工事現場に足を運び、頼み込んでもらい受けていたそうです。その後、いろいろ事例を作って、ようやく自治体からも仕事として発注が来るようになったということです。
●伐採したあと、木材はどこで保管するんですか?
「倉庫をいくつか持っていて、そこで積み上げて保管するんですけど、そこがやっぱりいちばん大変なところではあります」

●大変なポイントというのはどこでしょうか?
「やっぱり土地のコストが高いっていうことだったり・・・うちも製材所っていうわけではないので・・・。製材所ではそれに特化した仕事をしているから、だから製材所に預かってもらうっていう手もひとつはあるんですけれども、都市林業の難しいところって特化していたらできないっていうところなんですよね。
なので、ありとあらゆる仕事があるので、伐採に先立っては木の診断をしなきゃいけないし、どの木が使えるのかなっていうところを診断できなきゃいけないし、設計もしなきゃいけないし、実際の物作りもしなきゃいけないし・・・。
作るものは小物雑貨から家具、建築まであるわけで本当に幅が広くて、街づくり的なお仕事もすごく大事になってくるし・・・。木材を製材して保管するっていう、そこに特化した仕事であれば、そこでコストダウンとか効率化もしやすいんでしょうけれども、なかなか難しい、そこは大変だなというところです」
●湧口さんが思う都市林業のいちばんの課題ってなんだと思いますか?
「これまでに木材にされてこなかった木々を木材にするっていうことは、お金さえかければできるんですよね。それはどんなごみからでも家具でも何でも作れるわけですよ、お金さえかければ・・・。
だけど、そこを真正面から本当にこれはお金がかかっても、活用してよかったなっていうのを作ろうとしているんですね。
そうじゃなくても、例えば何か環境にいいことをしているというような、プレゼンテーションがしやすい分野でもあるんです。今まで捨てられていた街の木を木材にしました! みたいなことで評価されてしまうこともあり得る界隈ではあるので、それでOKってなっちゃう事例はいっぱいあるんですよね。
そういうことだと、本当に誰が喜んでくれているの? って、何かいいことやってます感っていうのはあるんですけれども、本当は誰も喜んでないっていうようなこともすごくあると思うんです。そうじゃなくて、どうしたら本当にみんなが喜んでくれることをできるかっていうことに、ずっと食い下がって工夫をしていくっていうのが、都市林業の本来やるべきことだと思っているんです。
自然な形で街の木を木材にすることが成立しないといけないと思うんですよ。でもこれまでにされてこなかったということは、それだけ難しいということであって、とにかく僕のほうでは、これは本当に嘘がないことをやっているなっていう事例を、とにかく頑張って作るというのが大事だなと思っているんです」
本当のことをする
※湧口さんは、新しい本の中で都市林業をもっと進めるために、3つの提案をされています。そのうちのふたつ、「都市林業を街路樹で」と「都市緑地を小中学校の演習林に」について説明していただきました。
「まず『都市林業を街路樹でやりましょう』っていう、これがもともと都市林業のいちばんコアな部分です。今、街路樹は無数に木が植えられているわけですけれども、それらは大きくなるだけ大きくしちゃって、それから太い枝を切ったりして、木を痛めて樹形もゆがんで、そしていよいよダメとなってから伐採されて、そうなった時は中が腐っていたり虫が食っていたりで、樹形も悪いから木材にするのもすごく効率が悪いんですよね。
そういう木々で僕はこれまで物を作ってきたけれども、この状況が変われば劇的に状況はよくなると思うんですよ。
なので、街路樹の剪定をしたり、手入れをするコンセプトを変えましょうって、林業的に最初から木材として活用する、そういう手入れをしていけば、いい樹形にして健康な木を育てる、太い枝をいっぱい伐らなきゃいけないような段階まで育ったら、その時点で伐採して新しい木に更新する。
そういう山の林業で当たり前にやっていることを街でもやったほうがいいんじゃないですかって、そうするとすごく効率的になるんじゃないかっていう、そういう提案ですね。
『都市緑地を小中学校の演習林に』っていうのは、僕も今、中学校でそれに近いことを小さい規模ですけれども、やり始めているんです。学校の木々ももちろんそうなんですけど、そのへんの近くの公園もそうですし、せっかく木があるんだから、そこを学びの場にしましょうっていうそういう提案です。
そこの木を剪定したり伐採したり活用したりっていうことを、学校のプログラムとして少し取り入れてやっていけば、体験の機会が無限に生まれていくよと、そのことは学習と、ものすごく結びついていくよっていうところで、とてもこれは可能性があるんじゃないかと、すごく手応えを感じているところです」
(編集部注:もうひとつの提案「清掃工場をハブにしよう」についてはぜひ本を読んでいただければと思います)

※では最後に新しい本『都市林業で街づくり』に込めた思いをお聞かせいただけますか?
「とにかく本当のことをしようっていうことです。
木を活用するとかっていうことだと、とにかくそれだけで何かいいことをしている感が出ちゃうと思うんですけど、そういうことで満足せずに本当に誰かが喜んでくれることをずっと考えて、いろんなことを工夫して、逆に言うと、そうしないと今まで木材にされてこなかった木を木材にするっていう無理なことを、無理じゃなくするっていうことはできないし・・・。
そうやって本当のことをやっていれば、私たちの街でもずっとこれから残っていくような街の空間とか建物とか、そういうものも作っていけるんじゃないかなって、そういう思いを込めて書かせていただきました」
INFORMATION
『都市林業で街づくり〜公園・街路樹・学校林を活かす、循環させる』
湧口さんの新しい本には、前例がなかった都市林業を成立させるための取り組みや街の木を木材として活用するためのノウハウ、そして住民を巻き込んだプロジェクトなど、興味深い内容にあふれています。なにより、湧口さんの都市林業にかける熱い思いを感じる一冊、ぜひ読んでください。
築地書館から絶賛発売中! 詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎築地書館:https://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1679-2.html
「都市森林株式会社」と「街の木ものづくりネットワーク」の活動については、それぞれのサイトをぜひ見てください。
◎「都市森林株式会社」:https://www.toshiringyou.com
◎「街の木ものづくりネットワーク」:https://machimono.amebaownd.com
2025/5/11 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. WE BUILT THIS CITY / STARSHIP
M2. KNOCK ON WOOD / AMII STEWART
M3. THE STORY / TRISTAN PRETTYMAN
M4. NEXT 100 YEARS / BON JOVI
M5. 愛を込めて花束を / Superfly
M6. I CAN SEE CLEARLY NOW / JOHNNY NASH
M7. PARADISE CITY / SCUBBA
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2025/5/4 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、東北学院大学の准教授「目代邦康(もくだい・くにやす)」さんです。
目代さんは1971年、神奈川県生まれ。東京学芸大学・教育学部・在学中に、中学や高校の社会科の先生になろうと、科目として「自然地理」を選んだところ、その先生がとても面白い方だったということで、自然地理や地形学の道に進むことになったそうです。
そして、京都大学大学院・理学研究科の博士課程修了後、筑波大学の研究センターなどを経て、現職の東北学院大学・地域総合学部の准教授としてご活躍されています。ご専門は「地形学」や「自然地理学」で、その学問を一般の方向けにわかりやすく解説した本『地形のきほん』を先頃出されています。
きょうは目代さんに、地形が私たち人間や生き物に与える影響のほか、九十九里浜が出現した地形的な要因、そして、住んでいる地域の地形を知る必要性などうかがいます。
☆写真協力: 目代邦康

液状化は「砂粒」の性質が原因!?
※目代さんのご専門は、地形学や自然地理学ということですが、どんな学問なのか教えていただけますか?
「地理は小学校とか中学校で習うかと思いますけれども、その中で特に自然、地球の表面で起こっている、いろいろな自然現象について調べるというのが自然地理学です。
特にその中でも私、地形についていろいろ調べております。地球の表面がデコボコしていますけれども、そういった山とか海岸とか、そういう場所がどうやってできたのか、どういうような地層からできているのかとか、今後どうなるかとか、そういうようなことを考える研究分野です」
●研究のためには、実際にフィールドに行って調査するんですよね?
「実際に現場に行って、土地がどんな形をしているのかを計ったり、穴を掘って、そこにある土とかを持って帰ってきたり、あと石を叩いて、どんな地層があるか調べたりですね。それだけで終わらなくて、持って帰ってきたら、今度はそれを分析したりします。
最近は飛行機から撮った写真とか衛星から撮った写真とか、あるいは自分でドローンを飛ばして撮るとか、そういうのも含めて、分析するというようなことをやっています」
●いろんな方法があるんですね。メインのフィールドはどこになるんですか?
「いろいろなところをやっています。ここ1年間は、能登半島地震がありまして、そのあと被害を受けた場所の地形を調べているので、ここ1年間は金沢のほうに何回か行っていました」

●具体的には、どういった方法で何を調べるんでしょうか?
「今調べている、能登半島地震のあとの現象ですと、”液状化”です。地震の揺れで(地面が)液体のように変わってしまう、それで建物が曲がってしまうとか、そういう現象なんですね。
そこの形を調べていくのと同時に、何でそういった変化が起こるのかを、地層を掘って、砂からできているんですけども、砂粒の大きさとかを測るんですね。で、どういうような砂の性質なのかが、地面の形が変わってしまう原因になったりしますので、そういうのを分析したりしていますね」
日本列島の地形が多様な理由とは?

※ここからは目代さんが先頃出された本『地形のきほん』をもとにお話をうかがっていきます。本を読んでいて、改めて、地形は私たち人間の暮らしにいろんな影響を与えているんだな〜と思いました。地形の多様性が、自然や生き物の多様性を生み出していたんですね。
「いろいろな場所に地面があって、生き物は、鳥はちょっと飛んでいますけど・・・とはいえ、地面の上で生活するので、生き物の生活は切っても切り離せないですね。
切っても切り離せないんですけれども、いろいろな生き物がいる今の状況を考えると、場所がそれぞれ違うので、そこに合わせて生き物がそれぞれ進化してきています。やはり、地球の環境の基盤というか、ベースになるのが地形の違いというところになるんだと思います」
●日本列島の地図を思い浮かべると、山脈が連なっていて、川もたくさんあって、海岸線もすごく複雑で、ところどころに平野があってっていう感じで、地形的にかなり多様で複雑なイメージがあるんですけれども、その多様さを生んだ要因は何なんですか?
「いちばん大きいのは、地球の表面に10数枚のプレートというものが覆っているんですけども、それがお互いに動いておりまして、(日本列島があるのは)あまり動かないプレートと、よく動くプレートのちょうどそのぶつかり合うところなんですね。
あまり動かない大陸のプレートと、よく動く海のプレートがぶつかり合うことで、ギュッと押されて山はできますし、海のプレートが日本列島の下に沈み込むことで火山ができます。
で、さらに気候の条件として雨がよく降るので、削られた土砂が運ばれて、平らな土地が作られてと・・・条件からするとふたつですね。地球の上でよく動いている場所だということと、雨がたくさん降る場所だということかと思います」
●そういった要因があったんですね〜。日本列島の地形を大きく分けると、山と平野になるんですか?
「日本列島に限らず、高くて尖っているところが山で、低くて平らなところが平野で、地球上、分けると基本そのふたつなんですね。で、日本の場合だとその中間もあって、丘陵地って呼ばれる場所がその中間になるんですけども、基本的には高さと、丘か丘でないかというところで分ける、そういった分け方になります」
●この山と平野、だいたいどれくらいの割合になるんですか?
「だいたい日本列島は、ほぼほぼ山でして、7割以上が山地です。で、3分の1から4分の1ぐらいの狭いところが平野です。その平野に多くの人が住んでいるというのが日本の特徴です」
●日本で考えてみると、人口が集中しているのは首都圏だったり、関西圏だと大阪や名古屋あたりですけれども、平野ができるのはやっぱり川が影響しているんでしょうか?
「そうですね。平らな土地は何で平らかっていうと、川が運んできた土砂が、川が氾濫して土砂を溜めて、あるいは海からも土砂が入ってくることがあるんですが、そういう水の働きがあるから平らな土地ができるんですね。そういう意味では川の働きというのは重要です」
(編集部注:ちなみに「山脈」と「山地」の違いなんですが、その定義は、目代さんの本によると、日本列島の場合、規模がより大きなものが「山脈」、山脈より規模が小さいものが「山地」、山地よりもさらに規模が小さいものが「高地」になるとのこと。これはあくまで日本列島の区分だということです)
九十九里浜が長いのは、硬い岩盤があるから!?
※ベイエフエムがある千葉県には、九十九里浜という日本で2番目に長い砂浜があります。その長さはおよそ66キロもありますが、どうしてこんなに長い砂浜ができたのでしょうか?
「なかなか難しい質問ですね(苦笑)。砂浜のいちばん端っこに何があるかなんですね。ずーっと砂浜なんですけれども、いちばん端っこは硬い岩盤が出ているんですね。どこもそうなんですけれども、削られにくい硬い岩盤があるところがふたつあると、その間が砂浜になるんです。
で、九十九里浜ですと、北の銚子のところに少し古い硬い岩盤が出ていますね。一方で南のほう、房総半島の南のほうもちょっと山がちですけども、そこもまた岩盤が出ています。そのふたつの岩盤が離れているので、その間が砂で埋められて、非常に広い砂浜になっているということです」
●そうやってできるんですね〜。今、この日本で砂浜がどんどん減っているっていう話を聞いたことがあるんですけれども、原因は何なんでしょうか。
「根本的には、先ほど平野は川が運んできた土砂でできるということを言いましたけれども、川が土砂を運んでこなくなったんですね。
運んでこなくなった理由は何かというと、ひとつには山から崩れた土砂が川を経由して海まで来るんですけれども、その途中でダムがあったり、いろいろな人工構造物があって、せき止められて流れてこないというのがあります。
もうひとつの理由は、今はあまり掘ってないんですけども、昔はコンクリートに入れる砂を川から取っていたんですね。川底をどんどん掘って・・・。
やがて砂が流れてくるだろうと思っていたんですけど、全然流れてこなくて・・・で、川でたくさん取っちゃったので、最終的に海の近くの平野まで流れていかないので、砂浜の砂が供給されるほうが少なくなってしまったので、波でどんどん侵食されて減っている、そういうことになります」
●観光地としても知られる鳥取砂丘に、植物が生えて草原化しているっていうニュースが以前ありましたけれども、これはどうしてなんでしょうか?
「砂丘に限らずなんですけれども、日本の地形はどこもちょっとずつ動いているんですね。で、砂浜も山のほうから砂が運ばれて、海からちょっと削られて、そのバランスが取れているとあまり形が変わらず、山のほうから(砂が)運ばれてこないと、どんどん削られて減ってしまう・・・。
で、砂丘は砂浜にあるんですけれども、そこの砂丘にやはり同じように山のほうから土砂があまり流れてこなくて、海のほうから削られるのもあり・・・。さらに砂が減ると風が吹いた時に、動く砂の量が減っちゃうんですね。砂がたくさんあると動ける砂がたくさんあるんですけど、あまり動ける砂もなくなって・・・そうすると雨は降りますから、どんどん草が育って雑草が増えてしまうと、そういうような状況です」
地形が地名の由来に!?
※地形はお天気にも影響を与えていますよね。やはりその要因になっているのは山ですか?
「そうですね。冬の間、例えば関東地方ですと、乾燥して乾いた風が吹いてきますけど、同じタイミングで日本海側はたくさん雪が降っています。
大陸のほうから風が吹いて日本海側で湿った空気があって、その湿った空気を含んだ風が日本海側で雪をどんどん降らせちゃうんですけど、風はずっと吹いてくるので、その風が山に雪を降らせたあとに吹き上がって、山を越えてきた時にはもう乾燥しているので、湿った空気が乾いた風に変わるというのは、山を越えるということが大きいですね。冬場の関東地方の乾燥なんかは、基本的には日本列島の大きな山が影響しています」
●そういう関係性なんですね~。あと違った側面だと、地形は観光資源とも言われたりしますよね。景勝地には人が集まってきますが、そんな観光資源を守るための制度と言えば、日本ではどういった制度があげられますか?
「そうですね。観光地ですと美しい景色があるので、多くの人が訪れますけども、人がたくさん来るからいろいろな開発をしてしまおう、お金儲けに使おうっていう人もだんだん出てくるので、そういった利用を制限するような仕組みがいくつかあります。
いちばん大きいのが国立公園と呼ばれるものでして、レクリエーションなどで私たちが自然に親しむということと同時に、そこの場所を保護しましょうというようなことが、国立公園の中で法律として定められていて、適切な管理というのが行なわれています。
あとは、最近ですとジオパークですとか、湖ですとラムサール条約の登録湿地とか、そういう国際的な取り組みなんかも含めて、いろいろな場所で適正な管理、使い過ぎ、“オーバーユース”って言うんですけれども、そういったことはなるべくやめるようにして、そこの場所の自然環境が維持されるような取り組みが各地でされています」
●そうなんですね。話は変わりますが、地形の特徴がその場所の地名になっていたりもするんですか?
「そうですね、非常に多いですね。先ほど(話に)出た九十九里浜も、長いって話になりましたけれども、九十九里もないんですけれども、長いのが象徴で九十九里ですし、いろいろな場所の形の特徴で(地名を)付けていたりします。
ちょっと変わったものですと、岩場は山ですと“ゴーロ地形”、岩がゴロゴロしているから、“ゴーロ地形”と言うんですけれども、その“ゴーロ地形”がなまって、“ゴロウ”になりまして、北アルプスにある“野口五郎岳”や“黒部五郎岳”なんかは、その“ゴロウ”から来ています。岩がゴロゴロしているという地名です」
地形を知ると防災につながる!?
※改めてなんですが、地形を理解すると、どんなことが分かってきますか?
「自然の中で生きているということを、私たちはなかなか普段は、便利な生活、都会で暮らしていますので、認識することがないんですけれども、考えてみると住む場所に平らな場所があるとか、土地がちゃんとあるというのは、それも地形ですし、山のほうから水が流れてきて、その水を使って私たちは生活するための水を得ています。そういった自然がある、地形がちゃんとあることによって、生活基盤が支えられているんですね。
そういった自然がどういうふうにして、そこに存在しているのかが分かると、自分たちがどんな場所にそもそも暮らしているのかが分かります。さらにその自然、時々地形は変化するんです。
その変化した時に何が起こるのかというのは、どんな地形だったら、どんなことが起こるのかは大体予想がついているので、そこの場所が今後どんな自然災害が起こるのかというのが、おおよそ予想をつけることができます。それが分かるとそれに対して準備することができるんですね。
川の近くだったら、どういうふうに逃げなきゃいけないかをあらかじめ考えておくとか、地震の揺れがどうも強そうな場所だったら、家を建てる時に丈夫に作っておくとかですね。
そうすると私たちの生命や財産を守ることもできますので、自分たちがどんな場所に住んでいるのかを知ることは、よりよく快適に、さらに自分たちの生活や命を守る、そういったことにつながると言えます」
●地形を知ることは、防災にもつながるということですね!
「はい! そうですね」
●どうやって調べればいいんですか?
「(私の)本を読んでいただくのがいいんですが(苦笑)、自然現象なので地形に限らず、ほかのものもそうですけど、よく観察してもらうというのがいいかと思います。
同じように見えても実は小さい坂があったり、ちょっとした崖があったり、土地の高さが違ったり・・・あと川のところでは砂があったり石があったり、形の違いがあったり・・・そこにある物、土とか石とかそういったものに違いがありますので、その違いに気づいて、なんでそれが違うんだろうかって考えていくと、だんだんと地形が見えてくるかと思います」
●最後にこの本『地形のきほん』を読むかたが、どんなことを感じ取ってくれたら、目代さんとしてはうれしいですか?
「地形を自分が認識するようになって、考えていたこと、気になっていたことをなるべく盛り込むようにしました。
周りの景色の中に地形は溶け込んでいますので、意識しないとなかなか気づかないところがあるんですね。なので、そういった “あっ、周りに実は坂があるじゃん!”とか、“こんなふうにここの場所、土地の利用の仕方が違うけど、出来方が違うのかな?“とか、そういういろいろな、気づくきっかけになってくれると嬉しいですね。
景色は一様ではなくて多様性に富む自然の中に自分が住んでいるんだっていうのを、今回の本を読んで景色を見て、旅行をした時に周りを見ていただいて、いろいろ気づいてもらえると嬉しいと思います」
INFORMATION
目代さんの新しい本をぜひ読んでください! 地形を作り出す働きから、代表的な地形や暮らしとの関わり、さらには災害や歴史など、地形の基礎知識を豊富なイラストと共にわかりやすく紹介。ひとつの項目が見開き2ページで完結しているので、関心のあるところから読めますよ。地形を知るための入門書的な一冊、おすすめです!
誠文堂新光社から絶賛発売中! 詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎誠文堂新光社:https://www.seibundo-shinkosha.net/book/science/91487/
2025/5/4 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. MAPS / MAROON 5
M2. LIFE IS FOR LEARNING / ELA SOZA
M3. RIVER / WHITNEY WOERZ
M4. SEASIDE WEEK END / ANTENA
M5. ミモザ / 浜崎あゆみ
M6. BLUE RIDGE MOUNTAINS / LARKIN POE
M7. THE TOWER OF LEARNING / RUFUS WAINWRIGHT
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2025/4/27 UP!
◎やまとけいこ(山と旅のイラストレーター)
『水と命がキラキラ、黒部源流に魅せられて』(2025.4.27)
◎松下隼士(観測専門エンジニア)
『北極圏スバールバル諸島の観測拠点「ニーオルスン」〜小さなコミュニティに人類を救うヒントがある!?』(2025.4.20)
◎植田全紀(一般社団法人「日本フードリカバリー協会」の代表理事)
『シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第25弾! 食品ロス編〜日本フードリカバリー協会の取り組みに注目!』(2025.4.13)
◎風間深志(冒険ライダー/地球元気村の大村長)
『「ザ・フリントストーン」が放送34年目に突入! 番組のシンボル、風間深志さんに期待の新人、難波 遥が直撃インタビュー!』(2025.4.6)
2025/4/27 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、山と旅のイラストレーター「やまとけいこ」さんです。
やまとさんは愛知県生まれ。高校1年生の時に学校登山で、北アルプスの蝶ヶ岳(ちょうがたけ)に登り、頂上から見る穂高(ほたか)の山々、そして満天の星空に魅了され、山の虜に。武蔵野美術大学在学中はワンダーフォーゲル部に所属。
卒業後はイラストレーターや美術関連の仕事をしながら、2003年から黒部源流の薬師沢小屋などの山小屋で働き始め、シーズンオフは絵を描きながらの海外ひとり旅をスタート。
2020年には、通い慣れた富山県に移住。2021年からは、夏山シーズン中は薬師沢小屋の支配人、オフは街で絵を描くなどの仕事をされています。
そして先頃、その小屋の料理人時代のエピソードをまとめた本『黒部源流 山小屋料理人』を出されました。この本は、山岳雑誌「山と渓谷」に連載していた、薬師沢小屋の厨房での出来事を書いた人気エッセイを書籍化したものです。
きょうはそんな やまとさんに、山小屋ならではの料理人の仕事や、人気のメニューのほか、水と命にあふれる黒部源流の魅力などうかがいます。
☆写真&イラストレーション:やまとけいこ


薬師沢と黒部川の出合いに建つ
※まずは、この本の舞台になっている薬師沢小屋(やくしざわごや)はどのあたりにあるのか、教えてください。
「富山県を流れる黒部川という川があるんですけれども、その川のもっともっと上流のほうに、遡ったところにある山奥の小屋です」
●首都圏から行こうと思ったら、どういうルートで、どれくらい時間がかかりますか?
「今は新幹線が通じていますので、東京から富山まで行って、夏の間は折立(おりたて)登山口というところまでバスが通じています。その登山口までバスに乗って、そこから登山が始まります。
標高1350mの折立という登山口から約1000m登ると、太郎兵衛平という山小屋があるんですけども、そこまで登って、そこから少し下って谷底の1920mに薬師沢小屋があります。6時間から8時間ぐらい歩くと到着します」
●かなり歩くんですね! ちなみに薬師沢小屋は例年、いつ頃からいつまで営業しているんですか?
「例年、7月1日から10月1日頃までの営業になっています」
●最大で何人くらい宿泊できるんですか?
「現在は、ひとり一畳のスペースということで50人程度ですね。コロナ以前はほんとに人数制限がなくて、120〜130人くらいで、ひとつの布団をふたりで使うような状態でした(苦笑)」
●そんなに宿泊できるんですね! スタッフの数はどれくらいなんですか?
「シーズン通してだいたい3人で、お客さんが増えてくると4人、5人と増やして対応しています」
●薬師沢小屋は、どういったロケーションにある山小屋なんでしょうか?
「名前の通り、薬師沢という川とそれから黒部川の本流、その川と川がぶつかったところを“出合い”と言うんですけれども、薬師沢と黒部川の出合い、その三角形になったところに建っている山小屋です。川から大体5〜6mぐらいの高台に小屋は建っています」

山小屋料理人の仕事は「食料の管理」!?

※新しい本『黒部源流 山小屋料理人』には、登山客のために食事を作る料理人としての奮闘ぶりが載っています。本を読んでびっくりしたのが、食材の運搬はヘリコプターで行なうんですね?
「はい、ヘリコプターで食材だけでなく、燃料やみなさんが飲む飲み物とか、その他すべての物資をヘリコプターによって輸送しています」
●すごいですね~。ワンシーズンに何回ほど運んでもらうんですか?
「薬師沢小屋ではヘリコプターでワンシーズンに3回、だいたい月に1回の割合で物資を送っていただいています」
●1回で運ぶ量というのはどれくらいですか?
「ワンシーズン3回なんですけれども、やはり小屋を開けた1回目の物量が多くて、だいたい1回に2〜3トンぐらいが4〜5便来ます。2回目、3回目は1便とか2便とかで、主に食材や足りない飲み物とかそういったものになりますね」
●天候次第ではヘリコプターが飛ばないこともありますよね?
「もちろん自然の中のことなので、天気が悪い時が続いて、特に1回目のヘリなどは梅雨の期間になりますので、なかなかヘリが飛べない飛ばないというようなことは多々あります」

●そうすると、残りの食材が減っていったらハラハラしませんか?
「はい、まぁ〜ヘリが1週間ぐらい飛ばなくても大丈夫なぐらいの物を(小屋に)上げているんですけれども、それを過ぎて、いろんな都合で1週間飛ばない、2週間飛べない、そうなるとじゃんじゃん物が減っていって、最終的には下から背負って(食材などを)持って来てもらうこともあります」
●本を読んで感じたんですけど、山小屋料理人は食料の管理がとても大事な仕事なんですよね?
「月に1度のヘリコプターなので、とにかく生鮮食料品ですね。お野菜とかそういったものの管理などがとても大変です。
冷凍庫はあるんですけれども、発電機が朝と夕方に回している関係で、日中電気が通っていないので冷凍庫がないんですよ。冷蔵庫で野菜を保管することができなくて、できるだけ涼しい所に並べたりとか・・・でも動物が来て食べてしまうかも知れないから、箱の中にいれて様子を見ながら大切に使っています」

●動物に食べられてしまうこともあるんですね?
「そうですね。毎年のようにちょっと油断をすると、ダンボールの小さな隙間からもぐり込んで、中の物をかじってみたりということはあります。かじられないように蓋をきちんとして、上に重しを乗せたりとか、そういったことはいろいろやっているんですけれども、なかなかお互い知恵比べのようなところはあります」
●一体どんな動物に食べられちゃうんですか?
「主に小動物と言われる、山にいる小さいネズミとか、あとはヤマネと言って、森の木の洞(ほら)とかに本来棲んでいる生き物なんですけれども、山小屋は雨もしのげるし、人が来れば食料もあるので、うちの薬師沢小屋にはヤマネがたくさん棲み着いています。夜になると食べ物のところに行って、何か食べる物はないかな~という感じで(食料を)食べられてしまうことがあります」
定番は「豚の角煮」!
※一日、多い時で何人分の食事を用意するんですか?
「今はコロナ以降、完全予約制になったので50食ぐらいなんですけれども、以前は本当に込み合う週末の頃とかは120〜130人分ぐらいは作っていました」
●人気の定番メニューだったり、代々受け継がれているメニューってあるんですか?
「薬師沢小屋では、メイン・メニューが豚の角煮になっています。だいたい4時間ぐらい、コトコト煮たものをメインにしているんですね。あとは、薬師沢小屋はほかの稜線にある山小屋と違って、とても冷たいお水が豊富なので、夕食に冷たいお蕎麦を付けています」

●あ~食べたいですね~。そういったご飯を作る山小屋料理人の1日のスケジュールは、どんな感じなんですか?
「山小屋は、みなさん朝、出発されるのがとても早いです。お客様の朝食が5時なので、従業員は4時に仕事を始めて、お客様に召し上がっていただいて、そのあと片付けをして、従業員は朝食を取ります。
で、8時ぐらいにミーティングした後に掃除ですね。布団を畳んだり、ぞうきん掛けしたり、そういうようなことをして、9時半過ぎぐらいに終わって、少しお茶して、10時ぐらいになったら、今度は夕食の仕込みと昼食を食べたいというかたの対応をします。
従業員は昼食を12時頃に食べて、1時ぐらいには全員仕事を一旦終わりにして、厨房の人たちは1時から3時ぐらいまでは休憩時間です。
私は今支配人で、そのぐらいの時間から受付に座って、お客様の対応が始まります。3時ぐらいに厨房の子たちは夕食の準備を始めて、夕食が5時、バタバタと夕食が終わって片付けやなにやらをして、従業員ご飯が7時で、8時消灯です。健康的ですね(笑)」
(編集部注:山小屋のスタッフは、シーズン中は基本、お休みの日はないそうです。それでもお天気が悪くて、お客さんが少ない時は半日休みにするなど工夫して、休む時間を取ってもらっているとのこと。やまとさんは、今は支配人ですから、一緒に働くスタッフへの気配りも欠かせない立場なんですね)
黒部源流が世界でいちばん!
※山小屋の仕事があるとはいえ、黒部源流に毎年行きたくなるのは、どうしてなんですか?
「そうですね~、本当に、本当に! 素敵なところなんですよ! 私、世界のいろんな所に行ったけれど、やっぱりここがいちばん好きというぐらい・・・。
好きな理由は、とにかく綺麗な水が常にザーザーと目の前を流れていて、高い山に登ると植物はほとんど生えていないんですけれども、標高1920mのこの谷の底は植物だったり、あとは生き物の匂いがたくさんしたり・・・。
そして私はイワナ釣りが好きなんですけれども、大好きなイワナが川の中にたくさんたくさん泳いでいます。ここに来ると毎年、わぁ~嬉しい!って思います」
●素敵ですね~。人間は自然に育まれているな~と感じますか?
「山小屋で働いて、まあ忙しくはしていますが、外に出ると人工物がなくて、育まれているというか、自然の一部なんだな~という、そういった気持ちになります。私もこの中の断片のような、たくさんたくさんある命の中の一部だな〜と感じます」

アイスクリームとお寿司!?
※営業期間を終えて、山小屋を閉め下山し、街に戻るとどんな気持ちになるんですか?
「3か月ぐらいいると、そろそろ山を下りたいかな~というような気持ちになってきますね(笑)。寒くなってきて、雪もちらつき始めて、そろそろ小屋終いの頃だな~と思って、街に下りてくるというか下山すると、まず最初にアイスクリームを食べて、その日の夜は寿司屋さんに行ってお寿司を食べて(笑)、そうすると翌朝からはすっかり街の人間に戻っています。ちょうど旅をして帰ってきたような感じですね」
●(街には)また違った良さもあるんですかね?
「はい、そうですね。暮らすのは街が楽だと思います。蛇口からお湯が出てきたりとかウォッシュレットがあったりとか、わぁ~なんて快適なんだろうと思います」
●私たちの当たり前が素晴らしいことなんですね。
「本当に素晴らしいことです。ありがたいことです」
●やまとさんが今年、薬師沢小屋に入るのはいつ頃の予定なんですか?
「また6月の末に入って、7月1日の営業前に、小屋にお客様を泊められるように準備をします」
●やっぱり今は、早く行きたい! 待ち遠しいという気持ちですか?
「そうですね。意外と楽しみな反面(薬師沢小屋の)責任者なので、今年も上手くいくかな~とか、今年のスタッフはどんな人が来るかな~とか、ちょっと気の重い部分もありつつ、ただ小屋に実際入ってしまったら楽しい! というような感じです」
●楽しみですね~。そして今年も夏山シーズンがやってきますよね。薬師沢小屋の支配人として楽しみにしていること、伝えたいことがあればお願いします。
「山だけではなくて、自然の中に自分の身を置くと、先ほども言ったように自分も自然の一部なんだな~ということに気づくんですよ。
自然の風景って美しくて、ほんとうに命がキラキラキラキラしていて、美しい自然の一部、自分も本当にそういった存在なんだなって、自分のことも大好きになれると思うんです。

人間が本来持っている当たり前の活動をしたりとか、ご飯を食べたり寝たりとか、そういったことが本当に大切なんだなという、そんなことを持って街に帰って、仕事でストレスが溜まったり、いろいろ大変だけれども、そういった元気を、山とか自然の中に来て、持って帰って、また頑張ってもらえたらいいな~と思います。
たくさんの人が黒部の源流を、この本を読んで想像していただいたり、実際に来られる人は来ていただいたりして、たくさんの人から、こんな場所があるんだ! 本当に嬉しい場所があるんだな~っていうことを思ってもらえるだけで、ずっと黒部の源流が大切にされるんじゃないかなと思っています」
INFORMATION
やまとさんが先頃出された本をぜひ読んでください! 限られた食材をやりくりしながら、美味しい食事をお客さんに提供する山小屋料理人の奮闘ぶりが手に取るように分かります。ユーモアあふれるイラストがこれまた、いいです! 個性的なスタッフも登場しますよ。さらに食材に紐づくレシピも満載です。
山と渓谷社から絶賛発売中! 詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎山と渓谷社 :https://www.yamakei.co.jp/products/2824330840.html
本の発売を記念してイラストの原画展が開催されます。
モンベル御徒町店で5月25日から30日まで。原宿のfinetrack TOKYO BASE(ファイントラック・トーキョー・ベース)で6月1日から8日まで。いずれも初日にトークイベントとサイン会が予定されています。参加は無料、事前の予約も必要ありません。ぜひご参加ください。
詳しくは、山と渓谷オンラインのサイトを見てください。
◎山と渓谷オンライン :
https://www.yamakei-online.com/journal/detail.php?id=7930&pview=1
薬師沢小屋のサイトは以下になります。
2025/4/27 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. 晴れたらいいね / Dreams Come True
M2. RIVER DEEP, MOUNTAIN HIGH / CELINE DION
M3. MOVE ON UP / ANGÉLIQUE KIDJO AND JOHN LEGEND
M4. WORK TO DO / AVERAGE WHITE BAND
M5. ヒカリへ / miwa
M6. THE RIVER OF DREAMS / BILLY JOEL
M7. キラキラ / 小田和正
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」










