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「雑草」を知れば知るほど、「人生」は豊かになる!?

2023/10/1 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サイエンス・ジャーナリストでガーデナーの「森 昭彦(もり・あきひこ)」さんです。

 森さんは1969年生まれ。雑草との出会いは20代後半、生き方に悩んでいたときに、足もとに咲くオオイヌノフグリの小さな花の色に心を奪われ、それから図書館で植物の本を片っ端から読むようになったそうです。

 そして1999年、30歳の頃に自宅でガーデニングを始め、当初は西洋ハーブや野菜を栽培。その後、雑草や野草も育て、その数は1,000種以上になるとか。試験栽培などを通して、さらに植物に詳しくなった森さんに出版社から声がかかり、36 ,7歳の頃に初めて本を出すことになったそうです。

 ちなみに奥様は公園に勤めていたときのヘッドガーデナーで、森さん曰く、結婚というよりも、奥様に弟子入りしたようなものですと、笑いながらおっしゃっていました。

 そんな森さんの新しい本が『庭時間が愉しくなる雑草の事典』。ということで、きょうはガーデニングをやっている人には特に厄介者とされている「雑草」にフォーカス! 身近な植物「雑草」を知ることで人生が豊かになる、そのヒント満載でお送りします。

☆写真:森 昭彦

森 昭彦さん

「雑な草」とは?

※森さんは『庭時間が愉しくなる雑草の事典』のほかにも、これまでに雑草に関する本をたくさん出されています。雑草に着目されるようになったのは、なにかきっかけがあったんですか?

「自分が大事に育てている植物のまわりに、植えた覚えも見たこともないものが、ばーって生えてきて、すごく邪魔するってことがよくわかって、俺の大事な植物に何してくれているんだ! と思いましたね。こいつは名前が何で、一体ここで何をしているんだろう?というのを不思議に思ったのがきっかけです。ひとつひとつ見ていくと結構な種類があるんですよね。

 それまでは、ただの草むらとか雑草でおしまいだったんですけれども、細かく見ていくと、いろんな顔のいろんな子たちがいて、それぞれがやっていることが違うな、これ!と思ったんですね。

 結局、育てたい植物を育てたいがために、雑草を調べ始めたら、どっちかっていうと雑草のことが気になり始めて、栽培植物は奥さん任せで(笑)、私はガーデニングの最中に生えてきた植物をピックアップして、どんな植物がいつ生えてくるんだろうっていうのを調べ始めてしまったということなんです」

●どんどん雑草に興味がわいてきたっていう感じなんですね?

「本末転倒も大概にしろという感じですけど、そんな感じです」

●種類が多いっておっしゃっていましたけど、日本にはどれぐらいの種類の雑草があるんですか?

「そうですね・・・雑草というと、どんな植物をイメージされたりしますか?」

●種類というか、それこそいろんなところに生えているっていうか・・・。

「こんな葉っぱのとか、こんな葉っぱのとか!(笑)」

●たくましいイメージはありますけど・・・。

「そうなんです。実は雑草って人によって、それを雑草とするかどうかって、全然違っているんですね。植物の世界では、雑草は何種類というふうには考えておらず、自然界に勝手に生えている植物の数としましては、学者によって違うんですけども、日本中でだいたい2600種から7000種と、幅があるんですよ」

●でも多いですね。そんなにあるんですか?

「世界でもこんな国はなかなかないと思います」

●「雑な草」って書くじゃないですか。雑草ってどうしてこういう呼び方になったんですか?

「もともと雑草っていうと私たちは、こんにゃろめ! こんにゃろめ!という踏み付けたくなる、いや〜なイメージがありますよね。『雑』ってそんな感じのイメージがあるんですけれども、実は正月に食べるお雑煮も『雑煮(ざつに)』と書きます」

●お〜〜、そうですね!

「おめでたい時に、雑煮とは?と思って調べてみますと、雑という字は『いろんなもの』とか『たくさんの様々なもの』という意味が本来あるようです。
 雑草のほうも、名前とか種類とかよくわからないけれども、いろんなものが生えているように見えるということで、名前はわからない草ということで、雑草と呼ばれるようになったんではないかとも言われています」

(編集部注:雑草に定義があるのか、森さんにお聞きしたら、学者さんの間でも認識が違い、確定していないとのことでした。
 また、関東圏で特に目立つ雑草として、クズをあげてくださいました。クズ粉になるつる性の植物ですが、3年経った株が1年に伸ばす茎の総距離は、なんと! 1.5キロにもなるとか。確かに鉄塔などに絡みついているのを見たことがありますよね。
 ほかにもアレチウリという外来種が日本全国で猛威をふるっていて、庭や畑に見つけたら、すぐに駆除してくださいとおっしゃっていました)

タチツボスミレは、変幻自在!?

タチツボスミレ
タチツボスミレ

※ここからは、森さんの新しい本『庭時間が愉しくなる雑草の事典』をもとにお話をうかがっていきます。庭で植物を育てているかたにとって、雑草は厄介者だと思うんですけど、この本の視点は違いますよね?

「そうですね。どうしても付き合わざるを得ない子たちなんですけれども、付き合い方の考え方を変えると、あんまり汗水たらして駆除する必要もないのかなと、長年の経験でちょっと思った次第でして・・・」

●雑草の寄せ植えですとか、ブーケとしての活用も提案されていて、素敵だなと思ったんですけれども、この本には130種類ほどの可憐な花を咲かせる雑草が掲載されていて、ひとつの種が見開き2ページで紹介されています。写真も豊富でとっても読みやすくて、そしてどれも見出しが素晴らしいですよね!

「ありがとうございます(笑)。そんな言っていただいて」

●その中からいくつか気になった見出しをご紹介しながら、その雑草の特徴などを教えていただきたいと思います。

 まずは「春の青空は変幻自在」という見出しありましたよね。これは「タチツボスミレ」ですけれども、ご説明いただけますか? 

「スミレの中でも結構、住宅地とかに勝手にやってくるタイプ、なかなか大胆不敵な子なんですね。ちょっと日陰に咲きまして、花心も普通のスミレ、いわゆるニホンスミレと呼ばれているスミレよりも大振りなんですけれども、空色のような、春の青空のような色をたたえた、非常に可愛らしいスミレの種類になっています」

●変幻自在というのは、どういうことなんでしょうか?

「この子も追っかけていくと、本当にカオスでして、住んでいる地域とか標高ですとかによりまして、花とか葉っぱの形を変えたり、色も変えたりするんです。旅先で見るタチツボスミレと、ご自宅の近くで見るタチツボスミレはかなり違っていたりするんですよ」

●地域ごとによって違うんですね。

「そうなんです」

●え~〜不思議!

「これがわかってくると、ほんと旅も面白くなりますし、こんな些細な違いでこんなに雰囲気が変わるんだね、お前の面持ち!ってぐらい変わってくるんで楽しいです」

●ヴァリエーションに富んでいますよね〜。

「はい!」

愛おしい!? ナズナ

ナズナ
ナズナ

※それでは続いて、気になった見出しから「なでたくなるほど愛おしい」。これはナズナですが、そうなんですか?

「これは本当に素晴らしい植物です」

●どう素晴らしいんでしょう?

「とにかく最初は見た感じ、なんかぱっとしない、骨組みだけの、やさぐれって感じの草だな〜みたいに見えるんですけれども、民間薬として長く親しまれてきたものなんですね。例えば、庭仕事なんかやっていますと、(手を)怪我したり転んじゃったり、傷がつきやすいんですけれども、その時に身近にナズナがあったら、葉っぱを揉んで傷口につけるといいんだよ〜なんて、昔は言われてきたんですね。食べても美味しいです」

●春の七草のひとつっていう印象はありましたけれども、そんなに重宝されている重要なものなんですね。「野草世界の野菜です」というふうに本にも書かれていました。やはりそれだけ重宝されているんですね。

「そうなんですよ。ビタミンとミネラルも豊富で、しかも味わい深いのが好きな人はこの根っこが美味しくて、鍋物に入れると出汁が出るぐらい美味しいです」

(編集部注:春の七草のひとつ「ナズナ」はアブラナ科の植物で、別名ぺんぺん草。1月7日に七草粥として食される風習があることは知られるところです。尚、特定できない植物は口にしないでください)

カタバミは可愛いけど、頭にくる!?

カタバミ
カタバミ

●では続いて「小さな時間泥棒」という見出しで「カタバミ」。これはレモンイエローで可愛らしい小ちゃな花ですね。

「はいはい。あっ、ご存知ですか? カタバミ」

●いえ、本で知りました! 可愛い花ですね〜。

「可愛いんですよ〜、ほんとうに(笑)。ハート型の葉っぱを3枚ワンセットにして、小さくこんもり茂るので、本当に頭にくるんですけれども、本当に可愛いんです」

●頭にくるんですか?

「ものすごく頭にきます(苦笑)」

●どうしてですか? 

「そこに生えてもらうとすごく薄汚く見える、でも違うところに生えてくれるとすごく綺麗に見えるところで、いちばん嫌なところに(カタバミが)生えてくるんですよ!

 だから抜き始めると、あそこにも! あそこにも! 気づいたら、あっちこっちにあるので、いつまでたってもカタバミって終わんないと、多分ガーデニングをやられているかたは、みなさん思われていると思います」

●だから時間が奪われてしまうんですね!

「そうです! 普通、冬になったら、みなさん冬ごもりで、おとなしくされるかたもいらっしゃるんですけれども、雑草の中でもこの子たちは、冬も元気よく芽を出してきて、なんかここにいるとムズムズするって言って取り始めると、1日が暮れてしまう・・・」

●え~〜っ、可愛い花なのに〜。

「可愛いんです(笑)。ほんと可愛いです!」

●あと「果てしない地下の攻防」ということで、「ヨモギ」ですね。

「ヨモギは、最近女性の間ですごく人気なんです。美容ですとか薬用とかで・・・。実際ガーデナー的に見ると、もう地獄ですね!」

●地獄ですか(笑)。どのあたりが・・・?

「カタバミは表に出てくる部分がイライラしてむしって地獄なんですけれども、ヨモギは本領が地下にありまして、根っこを追いかけ回していると1日が暮れてしまうというぐらい四方八方に広がっているので、抜ききれないんですよ」

●果てしないんですね。

「果てしないです。しかも途中でぷつって切れるところを用意しているので、やられた〜って(苦笑)」

●厄介なんですね〜。

「厄介です!」

雑草はタネから育てる

※実際に雑草を自宅の庭や鉢植えで育ててみようと思ったら、どうすればいいですか?

「そうですね。大概みなさん根っこから掘り上げて、鉢植えにされるんですけれども、ほとんどのケースは長持ちせず消えていくことが多いです。私もかなりの雑草を鉢植えにしましたけれども、例のごとく、やっぱり不思議なことに枯れていくんですよ、バタバタ・・・。ですが、タネを撒くとかなりの率で発芽して定着します。

 ですので、直植えでパラパラっと(タネを)撒くと、あとで大変なことになりますので、プランターとか鉢植えにちょっとパラパラっと撒いていただいて、ほかの草花と寄せていただくのがいちばんいいかもしれないですね」

●そのタネは、どうやって採取したらいいんですか?

「はい、この時分になってきますと、だいたい植物の茎が枯れて、上のほうに小ちゃいタネがついてきます。それが茶色く変色したものを、小ちゃいポリ袋とかにちょっと入れて、家に帰ってからそのままパラパラ撒いていただければなと思います」

●この時期、どんな種類のタネが採れますか?

スベリヒユ
スベリヒユ

「例えば、美味しいものに興味があるかたには、本に載っているやつなんですけれども、『スベリヒユ』というものが今ちょうどタネが採れる時期になります。これもプランターかなんかに撒いていただくと、たいして水やりをせずとも、むくむくと育っていきます。

 あともうひとつ、愛らしいのでは、私は個人的に好きなんですけれども『ザクロソウ』。これは小さな植物なのでプランターとかで寄せ植えに使っていただいたりですとか、しばらくここは管理しないから、ほかの雑草が生えてもらうと困るなってとこにタネを撒いていただくと、そこを美しく飾ってくれるんで、この2種はちょっとおすすめしたいです」

ザクロソウ
ザクロソウ

足もとに広がる雑草の世界

※長年、雑草を見続けてきて、どんな思いがありますか?

「一歩外出るともうワクワクしかないんですよ。そこら辺の道端の用水路で、あっ!お前、きょうも元気で花咲いたなっていう感じで、いつまで咲くのかな、お前は!とか、びっくりすることは本当に日常茶飯事です。

 普通に暮らしていると、うわー! 面白い!ってことってあんまり多分ないと思うんですけど、結構私の場合は日がな一日、うわー! すごい!で、暮らしていけるので実にありがたいです」

●ワクワクしますね! いいですね~。厄介者と言われている雑草でもその植物をちゃんと知ると見方が変わって、世界が広がる感じがしますよね?

「そうなんです。だいたい植物に対する印象は、本でもそうですし、一般的にもそうなんですけれども、よくできた生き物、光合成とかすごいことできる。その光合成ひとつとっても、あいつら、調べるとほんと苦労しているんだなとかがわかって・・・見るからに見すぼらしいなっているやつも、いろいろ苦労しているんだな〜っていうのがわかってくると、面白くてしょうがないです(笑)」

●特に森さんが今気に入っている雑草はありますか?

「時々聞かれるんですけれども、結構満遍なく好きで・・・でもあえて言うなら今は、本当にみなさんの足もとに必ずいるやつなんですけれども、「スズメノカタビラ」という小さなイネ科の植物なんです。これが可愛いなって最近思うようにはなりました」

●どう可愛いんですか?

「畑とかお庭に必ずといっていいほど生えてきて、プランターにも生えてくる、小ちゃいイネ科の雑草なんですね。こんもりしてくるとなんともいじらしい、あの美しい姿で広がってくれるので、それがちょっと微笑ましいというか、華やかな花に飽きると、そういうのにいくのかなとちょっと思ったりもします」

●では最後に、森さんにとって雑草とは?

「雑草とは私にとっての、やはり人生を変えた導き、今もどこに向かっているのかさっぱりわかりませんけれども(笑)、このまま草に導いてもらって、人生を歩んでいけたらなと思っています」


INFORMATION

『庭時間が愉しくなる雑草の事典
~身近にあるとうれしい花、残しておくとヤバイ野草』

『庭時間が愉しくなる雑草の事典~身近にあるとうれしい花、残しておくとヤバイ野草』

 この本には、可憐な花を咲かせる130種ほどの雑草が掲載されています。ひとつの種が見開き2ページで紹介されていて、写真も豊富。何より見出しが素敵なんです。ぜひ読んでください。きっと雑草が好きになりますよ。ご自宅にお庭がなくても、一歩外に出て、あなただけの雑草の庭を探してみてください。
 SBクリエイティブから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎SBクリエイティブ :https://www.sbcr.jp/product/4815611644/

 森さんの近況については、facebookをご覧ください。

◎森 昭彦さんfacebook:https://www.facebook.com/akihiko.mori.750/?locale=ja_JP

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