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写真展『Boundary|中心』〜世界の中心は一体どこにあるのか?

2025/12/7 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、世界を股にかける写真家「竹沢うるま」さんです。

 「大地」と「人間」をテーマに撮影を続ける竹沢さんの作品は、国内外で高い評価を得ていて、2014年には「日経ナショナルジオグラフィック」の写真賞を受賞。そして2015年にニューヨークで開催した個展は、多くのメディアで取り上げられるなど、大きな反響を呼びました。

 きょうは、そんな竹沢さんに100カ国以上を巡った旅の本質や、「大地」と「人間」の写真に込めた思い、そして、銀座のキャノンギャラリーで開催される写真展のことなどうかがいます。

☆写真:竹沢うるま

竹沢うるまさん

気がついたら3年、世界を放浪!?

 竹沢さんは1977年生まれ、大阪府出身。18歳の時に初めて行った沖縄の海に感動し、水中写真を撮るようになったそうです。そして同志社大学の3年生の時に、就職活動が嫌になって1年間アメリカに滞在。半年ほど西海岸で過ごし、LAの沖に浮かぶカタリナ・アイランドでよく写真を撮っていたとか。その後、アメリカを転々としながら、出会った写真家に撮り方を教わるなど、独学で写真を学んだとのこと。

 そして帰国後、仕事をするなら、やりたいことをやる、という思いで、ダイビング雑誌の出版社に写真や履歴書を送り、めでたく採用。社員カメラマンとして、おもに海外で撮影の仕事をこなし、2004年24歳の時に独立し、フリーランスに。

 ところが、食べていくために写真を撮る日々に疑問を感じ、このまま写真を仕事として続けるなら、自分の写真について考える時間が必要だと思い、思い切って仕事をストップ。1年ほど日本を離れて、海外へ。結果、2010年から2012年までのおよそ3年間、103カ国を巡る旅になったそうです。

※この3年にわたる旅では、どんな国々を巡ったんですか?

「1年くらい日本を離れて旅してみようかなと思って、で、考えていたのは南米に半年、アフリカにちょこっと、ユーラシア、それで1年。長くなったとしても1年半かなと思って日本を出ました。

 その時は海から離れて、いろんな伝統とか文化が色濃いところを訪ね歩いていってたんですけども、日本で考えていたよりも世界って広いんだなっていうのを、すごく実感して旅をしていましたね。

 で、ここいいな〜、あそこも行ってみたいな〜っていうのを追い求めてやっていると、気がついたら1年経った時点で、南米にまだいたんですよ。やばいな〜、アフリカに行かないと、と思って、そこから中東に行ってアフリカに行きました。

 全部陸路で、大陸を渡る時は飛行機ですけども、大陸の中では全部、バスとか鉄道だったんですね。で、アフリカを縦断して、アフリカは面白いな〜と思って、そのあとまた北のほうに上がって行って、気がついたらアフリカが終わった時点で2年経っていましたね。

 こうなったらもういいや、行くだけ行こうと思って、結局、最後はユーラシアも最西端のポルトガルのロカ岬から陸路でずっと日本まで帰ってきたと・・・それでさらにまた1年かかって結局3年弱ぐらい・・・別に望んでいたわけではないんですけど(笑)、結果そうなった感じですね」

写真:竹沢うるま

●バックパッカーみたいな旅だったんですか?

「そうですね。思いっきりバックパッカーですね。たぶん誰よりもバックパッカー的なバックパッカーだと思いますよ(笑)。バックパッカーの方法論はすべて実践してきた感じではありますけども、本当にいいスタイルだと思います。

 今でも時々バックパックを担いで旅をしますけれども、バックパッカーの自由さというか、縛りがない感じは自分を解き放つ感じがして、それを旅の世界で表現していくっていう感覚がありましたね。

 ある意味、バックパック・スタイルで旅をするっていうのは、自己表現なんだなっていうのもあったので、すごくいい旅をしていたんだなって今思いますけどね」

旅の本質は「移動」、「線」にある

※世界を巡る旅では、インフラが整っていない国や地域にも行ったんですよね?

「そういうところを中心に行ってましたね。そういったところのほうが、より人間の営みが濃いというか、大地の力強さがより強いとか、そういった感覚があったので、そういったところを好んで行ってたっていうのはありますね」

●目的地に着くまでも大変そうですけど・・・。

「まあ大変ですよ(笑)。大変だけど、目的地っていうのはただの目的地。旅の本質ってやっぱり移動にあるので、充実した移動であればあるほど・・・僕が言っている充実した移動というのは、効率的な移動ではなくて、自分の足で動いて行っている・・・きちんと途中の風景なり出会いというものを大切にして移動していく。

 そこが旅の本質だと思うので、目的地は単なる便宜的なゴールであって、そこに着いて何かを見るっていうよりかは、移動中にこそ旅の見るべきものがあるんじゃないかなという感覚がありましたね。でも大変っちゃ大変でしたね。バスに乗って24時間の移動とかは近いなって感じだから・・・」

●ええ〜っ!?

「アフリカでは、おんぼろバスに40時間乗り続けるってこともあったし、いちばん長い移動だったのは中国ですね。ウイグルから四川省まで列車で移動したんですけれども、国慶節にかぶっていて、すごく大混雑する時期だったんですよ。

 それで速い列車が取れなくて、しかも指定が取れなくて、席の奪い合いみたいなことをして、なんとか席を確保して、そこから80時間列車の中、乗りっぱなし・・・寝台でもなんでもない普通の列車に80時間乗りっぱなしとかもありましたけどね」

●80時間〜! でもその移動が竹沢さんにとっては、大事なポイントになるんですよね?

「そうですね。移動こそが、飛行機を使わなかったっていうのが、やっぱりそこなんですけども、点として旅を捉えるのではなくて、点と点がつながって線になっているっていう、線として自分の動いていった軌跡を残したいなっていうのもあって、線となったその旅の軌跡はやっぱり人それぞれ違うんですよ。どういう線になるのかっていうのは・・・。

 旅が終わって振り返った時にひとつの線になっているわけですよね。それってやっぱり自己表現なんじゃないかなって、その人がやってきた旅の個性なんじゃないかなと思っていて、だからこそ線が大切である。で、線はどういうことかって言うと移動、そこが最も本質的なところなんじゃないかなと思っていますね」

(編集部注:竹沢さんがこれまでに訪れた国は、なんと145から150カ国ほどだそうです。とはいえ、この5〜6年は日本で撮影していることが多く、最近では鹿児島県三島村の黒島・硫黄島・竹島、トカラ列島の悪石島などに行って写真を撮っていたそうですよ)

日本にいちばん違和感!?

※2010年から2012年までの世界を巡る、およそ3年間の旅は竹沢さんにとって、どのような意味がありましたか?

「あの旅に関してはWalkaboutってタイトルにつけているんですけども、ひとことで言えば、”通過儀礼”だったなと思いますね。そのWalkaboutって何かって言うと、オーストラリアの先住民アボリジニのかたがたは、ある一定の年齢に達するとひとりで旅に出るんですね。

 ひとりで旅に出て、半年から1年ぐらい何も持たずに、ずっと大地を旅するんですよ。その旅を終えて帰ってきた時にその村の一員として、大人として受け入れられるんですけども、その旅のことをWalkaboutって言うんですね。

 一種の通過儀礼、ひとりの人間として成立する上での通過儀礼、自分にとって、この3年間の旅は通過儀礼だったんじゃないかなというところで、Walkaboutというタイトルをつけているんですよ」

●旅をする中で、やっぱり自分は日本人だなって思う瞬間はありましたか?

「異文化の人たち、全く違う価値観の人たちと会うので、どんどん自分っていうのは、こういう人間なんだなっていうアイデンティティは明確化していくと思うんですよ。自分ってやっぱり、日本人だなとは思わないんですけども、彼らとは違うんだなっていうのはすごく思います。

 最終的に3年、旅して日本に帰ってきて、最後、韓国の釜山から船に乗って福岡にフェリーで帰ってきたんですね。
 ちょうどクリスマスのタイミングで夜着いて、福岡市の駅に着いた時にイルミネーションがすごくて、人が多くて、みんな綺麗な服を着ていて、すごく歩くのが早くて・・・その時に、3年ぶりに帰ってきた時に思ったのは、この旅で103か国をまわったけど、日本がいちばん違和感があるなっていう(笑)、なんかちょっと違うとこに来ちゃったなみたいな感覚がすごくありましたね。

 要は、もちろん旅をしている間に自分は、日本人っていうのを自覚することは多かったけれども、やっぱり会う人々、価値観、文化、伝統を出会うたびに自分の中に取り入れてきてたんだな、それが3年分集積されていて、自分を形成していたと・・・なので、3年ぶりに日本 帰ってくると、日本がすごく外国に見えたというか、そういう感じはありましたね」

人を撮る時、敬意を持って接する

※竹沢さんの撮影のテーマは「大地」、そして「人間」ということなんですが、特に人間を撮る時に心がけていることがあったら、教えてください。

「第一はやっぱり相手を尊重することかなと思いますね。相手の文化だったり価値観というものに、まずそこに対して敬意を持つこと。それプラス、写真を撮るっていう行為は結構、暴力的な行為なんですね。

 その人に属している時間を写真に撮ることによって、写真に落とし込んで、それをいわゆる写真家である僕で言うと、自分の作品として発表するわけですね。その人に属している時間だったりとか、というものを自分のところに引き寄せてしまうという行為でもあるんですね。

 非常に暴力的で、だからこそやっぱり相手に対しては、撮影する時は敬意を持って接する必要があるんだろうなと、そういうふうに考えていますよね」

●竹沢さんの作品を見ていると、人々の熱狂だったり祈りだったり、少女の笑顔があったり、その一方で厳しい自然の風景があったり、はたまたどういう状況の写真なのかなっていうのをすぐには掴めずに、じ~っと作品に見入ったりすることもあるという感じだったんですけれども、写真家として見る人に考えてもらうっていうことを意識されて作品を作られているんですか?

「いや、特に考えてもらうということはあまり意識してなくて、一時的には衝動的には撮っていますけども、僕としては見る側に、こうであってほしいなっていうのは、考えてもらうっていうよりかは、その写真がその人の中に深く長くとどまってくれるものであったら嬉しいかな~っていうのは、常々考えているとこではありますね」

写真:竹沢うるま

●シャッターを押す時って、構図を考えてじっくり待ってから押すんですか? それとも、これだ! と思って瞬間的に押すんですか?

「僕の場合は瞬間的に押す場合が多いですね。写真って考えたものがビジュアルに落とし込まれると、だいたい退屈なんですよ。人間の想像の枠の範囲内のものしか出てこないので・・・そういったものは、見る側も読み取れてしまうので、この人こうやって考えたって・・・要は感覚として伝わってこないんですね。

 表面的に、この人はこういうふうに考えたんだったなっていうのが先に伝わってしまうので、それよりかは何も考えずに衝動的に撮っていくほうが、よりその相手に何かしら伝えるものになっていくんじゃないかなとは思っていますね」

写真展「Boundary | 中心」〜世界の中心は?

※12月9日からキャノンギャラリー銀座で、写真展「Boundary | 中心」が開催されます。これはどんな写真展なんですか?

「この『Boundary(バウンダリー)』というシリーズは、これで2回目なんですけれども、1回目は『Boundary|境界』というテーマで、境界ってどういうことなんだろうかと・・・自分と相手を隔てる境界、もしくは国と国を隔てる境界、価値観と価値観を隔てる境界って何だろうか? そこを考えるシリーズだったんですね。

 今回の『Boundary|中心』は、世界の中心って一体どこにあるんだろうか? その問いを自分の中に持って世界各地を旅して、撮影したところはインドネシア、ベナン、モンゴル、ペルー、クック諸島、インド、日本ですね。

 世界のそういう国々の、いわゆる我々日本人から考えると、とても異質なもの、自分たちの価値観と遠く離れた価値観を持っている人たちを訪れて、果たして世界の中心ってどこにあるんだろうか? っていうのを写真で問いかける内容になっていますね」

●何点ぐらい展示されるんですか?

「展示は、60点ぐらいですね」

●写真展の開催に向けて、ここを見てほしいというようなポイントがあれば、ぜひ教えてください。

写真:竹沢うるま

「写真展で展示している写真には、こっちを見つめている人の写真が多くあると思うんですよね。彼らの目線を捉えた時に、自分の中でどういった問いかけが起こるのかっていうのをぜひ感じてもらいたいなと・・・。

 そういった写真の中で、彼らの目線から世界に中心ってどこにあるんだろうかっていう問いかけが来ると思いますので、それに対して自分はどういうふうに答えるんだろうかと、そういうふうに考えながら見てもらえると嬉しいかなと思いますね」

●これからの写真家人生のテーマも、変わらずに「人間」であり「大地」ですか?

「そうですね。これで一段落するわけですけど、次のテーマとしてやるとしたら・・・まあでも『人間』っていうのは変わらないかなと思います。やっぱり自分が旅を始めた頃に接した人たちは、今も変わらず、そこにいると思うんですよ。もう一回訪れてみたいなと思うんですよね。

 それは何でかって言うと、やっぱり自分の考え方が変わったから・・・世界の中心はどこにあるんだろうかとか、境界って何なんだろうかって、そうやってこの5年ぐらいで多く旅をしてきたからこそ、辿り着いたテーマではあるんですけれども、その上で自分なりに結論みたいなものを得たので、そういった自分の今の感覚を持って、もう一度、人間に会いに行きたいなっていうのはありますね」

●では最後に、竹沢さんにとって写真とは?

「自分にとって写真とは、“存在証明”かなと思っていますね。自分が確かにその場に立って、風景でも人間でもいいけれども、その前に立って自分の心の揺らぎというか、流れみたいなものを確かに感じていたと、それが写真としてビジュアル化されたもの、それが写真なんだと、自分にとっての写真なんだと・・・だから自分が確かにそこに存在していたっていう存在証明なのかなと思っています」

写真:竹沢うるま

INFORMATION

写真展「Boundary |中心」

写真展「Boundary |中心」

 12月9日から24日まで、キャノンギャラリー銀座で開催。
開館時間は午前10時30分から午後6時30分まで。入場は無料です。
見るものに問いかけるような竹沢さんの作品をぜひご覧いただき、
「世界の中心」はどこにあるのか、考えてみてはいかがしょうか。

 12月13日と20日のいずれも土曜日の午後2時から、
竹沢さんのギャラリートークが予定されています。

写真集『Boundary |中心』

 12月中旬に青幻舎から発売予定の写真集にもぜひご注目ください。
384ページにも及ぶ渾身の一冊で、
日本人には想像もつかないような世界の写真が掲載されているそうです。

写真展「On The Shore〜波の音が生まれる場所」

 竹沢さんは地元鎌倉でも、別のテーマで写真展を開催されます。
二拠点生活をしていた南太平洋のクック諸島と、鎌倉で撮った
およそ30点の写真を展示。

開催は12月15日から年明け1月18日まで。
会場は隣接するふたつの店舗「OFF SESSiON」と「海と本」のギャラリー。
入場は無料。

写真展や写真集について
詳しくは竹沢さんのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎竹沢うるま:https://uruma-photo.com

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