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「森をつくる、暮らしをつくる」〜森林ディレクターの挑戦

2026/2/1 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、株式会社「やまとわ」の取締役で、森林ディレクターの「奥田悠史(おくだ・ゆうじ)」さんです。

 長野県伊那市、通称「伊那谷(いなだに)」に拠点を置く「やまとわ」は、森と暮らしをつなぐような、いろいろ事業を展開している会社で、奥田さんは創業メンバーのおひとりです。

 1988年、三重県生まれの奥田さんは子供の頃、長野の山の風景に圧倒され、いつかは長野に住みたいと思い、信州大学に進学。農学部・森林科学科で、年輪の研究を行ない、気候の変化が木の成長に影響を与え、年輪の幅が変わることに着目し、歴史上の出来事との関係性などを調べていたそうです。

 「やまとわ」の創業は2016年。創業メンバーは家具職人3人と奥田さんの、合わせて4人。現在は樹木医やクライマー、元林野庁や製材会社のスタッフなどなど多彩な顔ぶれ20数人が集う会社となっています。

 きょうはそんな奥田さんに「森をつくる、暮らしをつくる」をテーマにした、多岐にわたる活動や今の仕事につながるバックパッカー世界一周の旅で得た体験のほか、未来の森をデザインする大切さなどうかがいます。

☆写真協力:やまとわ

奥田悠史さん

森を作る暮らし

※なぜ会社をやろうと思ったんですか?

「森の課題と言いますか、日本の森が荒れているみたいなことに大変関心がありました。僕はその時、デザイン事務所をやっていたんですけど、デザイナー(の仕事)だけじゃなくて、森のことに直接触れていきたいなって思っていた時に、そういう思いを持った家具職人の中村さんと出会って、一緒にやっていこうというような感じで会社を立ち上げました」

●「やまとわ」の理念は、どういうものがあるんですか?

「『森をつくる 暮らしをつくる』というのが、僕らの理念なんですね。森と暮らしが離れてしまっている現在において、森が荒れているから手入れをしていこうよっていう話をしても、なかなか響かないと思うんです。

 森があるから嬉しい暮らしって、どんな暮らしなんだろうかっていうことを、改めて現代の中で問い直していくのがやりたいことというか、そうしないと森が良くなんないんじゃないかなって思って、森を作る暮らしを探求するようなことを理念にしています」

●具体的には、どんな事業を行なっていらっしゃるんですか?

「すごく多岐に渡っていまして、僕らの会社(の事業)はめちゃくちゃわかりづらいんです。夏は農業をして冬は林業をするっていう農林業のチームから、その地域の山の木を使った物づくりですとか、薪ストーブの販売みたいなこともやっています。

 ほかにも森の中で遊んだり学んだりするような企画ですとか、あとは行政のかたや、企業さんと一緒に森のデザインをし直すと言いますか、森がどうやったらよくなるのかなみたいなことを一緒に考えるような伴走事業みたいなこともやっていたりします」

●様々なことをやっていらっしゃるんですね。

「そうなんです。幅広にいろいろやらないと、森のことってわかんないなっていう中で、とりあえず思いつくことをいろいろやっているんですけど(笑)」

写真協力:やまとわ

「森林ディレクター」とは

※奥田さんが「森林ディレクター」という肩書きで仕事をするようになったのは、「やまとわ」を創業してからですか?

「そうです、そうです」

●自分で考えた肩書きなんですか?

「そうなんですよ。大学は林学と言いますか、森林科学を専攻していたんですけど、森のことが幅広すぎて、自分で何ができるかわかんないっていう状況の中で、一度その情報を伝えるっていうことで、編集者とかデザイナーになったんですね。

 そのあとに山に実際に関わるようになってきて・・・で、僕がやってきた編集とかデザインと、森林の管理とか、そういうものを組み合わせたことを仕事にできる、今ならできるかもしれないということで、アートディレクターっていう肩書きもあると思うんですけど、それの森林ヴァージョンみたいな形で、森林ディレクターと自分で名付けて活動しています」

●「やまとわ」が手がける事業のディレクションをするのが、まさに奥田さんの役割っていうことですか?

「そうですね。そんな感じです」

●ディレクションをする時に心掛けていることってありますか?

「やっぱりアート・ディレクターだと、クライアントさんがわかりやすく、企業さんだったりするんですけど、森林ディレクターの場合は、もちろん社会ですとか企業さん、暮らしている人たち、あと森林とか自然そのものもいい状態になるっていう、いろんな目線で関係性を見ながら、企画とか商品開発をしていくことが重要なのかなと思っているので、その辺をすごく大事にしていますね」

バックパッカー世界一周の旅で得た体験

※奥田さんは信州大学在学中に、バックパッカーとして世界一周の旅に出たそうですね。なぜ旅に出ようと思ったんですか?

「世界一周って行きたくないですか? っていう感じが、僕の中にあったんですけど(笑)、行けるなら行きたい、世界を巡るみたいなことがあって・・・で、大学生のうちにぜひ行きたいなっていうことを、入学と同時に決断しまして、世界一周の準備を大学に入ってから始めたみたいな感じなんです。世界中を訪ねて、いろんな景色を見たいっていうのは大きかったですね」

●休学して旅に出られたんですか?

「そうです、そうです」

●何か国、行ったんですか?

「30か国ぐらいです。世界を一周するいろんな人たちがいるので、あまり多くはないんですけど、1年だとそれぐらいなのかなっていう感じです」

●特に印象に残っている場所はありますか?

「ふたつ挙げると、ひとつはスイスのマッターホルンの雪山なんです。山岳文化みたいなものにとても感動して・・・自然を見て涙が出るような体験は、本当にそのスイスの山並みだったんですね。

 もうひとつはペルーのクスコです。そちらも山岳地域なんですが(苦笑)、その地域の土を使って家を建てることで風景が作られている。そこでインディヘナのお母さんたちの民族衣装が普段着のように使われていて、文化とかその土地の自然、インディヘナのかたの服も、その土地の草木染めをしてることが多くて、そこにいちばん感動したっていうのが僕の原体験ではすごくあります。

 やっぱりそういうものをこの日本でも、地域の資源を活かした感動を作りたいなっていう、体験としてはあります」

自然資本とデザイン

※奥田さんは先頃『自然資本とデザイン 〜地域の風景と生きていくための思考法』という本を出されました。短い時間では、とても本全体の内容をご紹介できませんので、奥田さんから、この本の特徴などをお話しいただきたいのですが・・・

 やはりタイトルの「自然資本とデザイン」に著者の想いが込められているんですよね?

『自然資本とデザイン 〜地域の風景と生きていくための思考法』

「そうですね。自然資本っていうのを・・・(タイトルに)“資本”って付いているのでちょっと固く感じるんですけど、どちらかというと生きていくための土台としてあるものが自然資本だと思っています。それをどのようにケアしながら共生、共存していくのかを考えたような内容になっています。

 そもそもやっぱり僕が大学時代に森林とか自然っていうものに対して、何か自分がアクションしたいって考えた時に、あまりにも大きすぎる世界っていうか、大きすぎる対象の中で、何をやっていくかわかんないな~みたいなことをすごく感じて・・・ある種の絶望みたいなものを感じたんですけど、それに対してわからない問題をどうやって紐解いていくのかみたいなことも、ひとつのテーマとして考えていました。

 小さなアクションでもすごく意味、意義があるんじゃないかってことと、それを紐解いていくためには課題を、力いっぱい引っ張るというよりは、どうやって緩めていくのかみたいなことをデザインの視点から考えているような本になりますね。

 いろんなことがあると思うんですけど、どんな状態になっていたらいいのかっていうことを改めて捉え直して、そこに向かうために何をすべきかっていうのを考える枠組みみたいなのが、デザインなのかなと僕は思っております」

●自然資本を活かしながらデザインしていくことで、いちばん心掛けていることってありますか?

「やっぱりその土地の良さとか面白さみたいなことは、自然由来なことがすごく多いと思うんですよね。自然と人の営みの接地面に文化が生まれるみたいなことで、例えば、静岡であればお茶の産地になっていたりとか、そういうような土地が持つ力と、そこで人が何かをやっているってことが合わさった時に、それが価値に変わるという気もするんですけどね。

 なので、その場所に何がどんな状態であるのかっていうことと、そこにどんな人たちがいるのかってことが、どちらも大事だと思っているんです。

 僕は長野県でやっていますけども、長野の伊那谷であれば、こういう自然資本、自然資源がいっぱいあって、そこにこういう人たちがいるんであれば、こんなつなぎ方・・・こんな状態になったら自然も活かされるし、自分たちの暮らしも豊かになるんじゃないか、みたいなことを考えながらデザインしているような、そんな流れになりますかね」

(編集部注:「やまとわ」が取り組んでいる、森と暮らしをつなぐような事業は、ひとつのモデルケースになるので、森林の事業などで課題に直面している地方自治体や地域のかたなどが、相談や見学にやって来ることも多いそうです。奥田さんがおっしゃるには、失敗も含めて包み隠さず伝え、共有してから、一緒に事業設計をすることもあるそうです)

写真協力:やまとわ

森にはヴィジョンが必要!?

※自分たちが住んでいる地域の森をどうしていきたいのか、いわゆるヴィジョンが必要だと思いますが、実際はそういうことを考える機会はないんでしょうか?

「僕らはちょこちょこやるんですけど、日本の森においてはヴジョンのある山は、実際ほとんどないです」

●それってすごくもったいないことですよね?

「そうですね。なので(山の)所有者さんに聞いても森林組合さんとか事業者さんに、“この森はどういうヴィジョンで管理をしていきますか”って聞いても、ほとんどないっていうのが現状です。それを作り直していくのも大事なのかなって思っていますね」

●「やまとわ」では「SATOYAMA CONCEPT MAPs」を作っています。これはどういうものなんでしょうか?

「これは普通の山の、例えばマップって考えると、現状どういう山かがマップに載っていると思うんですけど、SATOYAMA CONCEPT MAPsは、その山の15年とか20年後どうなっていてほしいかっていうことを、いろんなリサーチをした上で作っていくものなんですね。

 なので、50ヘクタールとか100ヘクタール、面積で言うとわかりづらいんですけど、それなりの規模の山を林業だけじゃなく、いろんな手法を用いて持続していくような山にするにはどうしたらいいんだろうっていうのを問いにしながら、この山のヴィジョンを作って、それをイラストにして関係者のかたがたと共有しながら、“ここにいくためには、こんなふうにステップを踏んでいかないといけませんね“みたいなことを話すためのマップを作るようなサービスとか仕事をしています」

●地域のかたがたが共有できるっていうことなんですね。

「そうですね。所有者さんもそうですし、地域のかたにももちろん共有していくっていうようなことをやっています」

●今後どういう森にしていきたいかっていうのを考える時にすごく参考になりそうですね。

「そうですね。ワクワクしてもらえるといいなと思うんですけど、確かにこうなったらいいよね! みたいなことが、いろんな人と話せると面白いのかと思ったりはしています」

里山は、日本の大きな可能性

※日々、森や樹木に向き合って、どんなことを感じますか?

「やっぱり僕、森はすごく大好きではあるんですけど、その森にいると心地よかったり、気持ちよかったりする山もたくさんある一方で、暗く不安になる山とか怖いなと思うことってたくさんあるんですよね。

 そういう率直な感覚はすごく大事なのかなと思っています。この山は不安だな~とか怖いな~みたいなことを思いながら、そこをより良い状態といいますか、心地いい状態とか、いい森にしていくことをしていきたいなって日々考えているんで、いろんな形で森の状態を肌で感じている、そんなところですかね」

●森で働いていって、どんな時にいちばん喜びを感じますか?

「森そのものが変化していくこともすごく嬉しいんですけど、例えば薄暗くなった森に陽の光が入って、そこに下層植生、次の世代の木々が生えてくるみたいな風景はすごく嬉しいですね。

 それだけじゃなくて、一緒に携わってくださっている山主さんですとか、関係者のかたがたが喜んでくださるような瞬間もやっぱり僕としては嬉しいですね。

 人と森の共存みたいなことを考えると、森が喜んでいるのを人が喜んでいるっていう状態が、簡単に作れるわけじゃないんですけど、作れそうだなとか、そういう風景がちょっと見えるなっていう時がいちばん僕がワクワクするので、やっぱり森も人もすごく大事だなと思います」

●では最後に森林ディレクターとして、未来に向けた日本の森のコンセプト・マップを作るとしたら、どんなデザインになりますか?

「日本は本当に面白いんですよね。生態系も自然も本当に豊かな国なんですけど、僕らがそれをすごく忘れがちになってしまう中で、特にSATOYAMA CONCEPT MAPsっていう名前つけていますけど、里山とか里が日本のすごく大きな可能性だなと思っています。

 人と自然の、それこそ共有とか響き合いみたいなことによって生まれている風景とか、そこから生まれた文化や価値みたいなものが、すごくたくさんあるんですけど、今それがすごくなくなってきているなっていう感覚を持っているので、改めて日本の里山っていうものを再提案・再定義しながら、林業の森と里的なものをちゃんと描き直していくことができたらいいなと思っています」


INFORMATION

『自然資本とデザイン 〜地域の風景と生きていくための思考法』

『自然資本とデザイン 〜地域の風景と生きていくための思考法』

 奥田さんの新しい本には、奥田さんが「やまとわ」で取り組んでいる、多岐にわたる事業や、その思いが綴られた一冊です。経営やビジネスのヒントにもなると思いますよ。宇宙飛行士・土井隆雄さんとの興味深い対談も掲載。ぜひ読んでください。

 築地書館から絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎築地書館:https://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1699-0.html

 株式会社「やまとわ」の事業について詳しくは、ぜひオフィシャルサイトを見てください。

◎やまとわ:https://yamatowa.co.jp

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