2021/12/26 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1.THANK YOU / DIANA ROSS
M2. LIFE IS COOL / SWEET BOX
M3. ANIMAL / KE$HA
M4. VIVA LA VIDA / COLDPLAY
M5. Tomorrow Never Knows / Mr.Children
M6. A CHANGE IS GONNA COME / SEAL
M7. TALK TO ME / GEORGE
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2021/12/19 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、日本のヒップホップ界のリヴィング・レジェンド、ラッパーの「GAKU-MC」さんです。
GAKUさんは東京都出身。1994年に「EASTEND × YURI」として「DA.YO.NE」でヒップホップ初のミリオンセラーを記録、紅白歌合戦の出場を果たします。99年にソロ活動をスタート。その後、音楽を通しての復興支援のイベントほか、ミスター・チルドレンの桜井和寿さんとのユニット「ウカスカジー」など幅広い活動をされています。
また、キャンピングカーで、全国をまわるライヴ・ツアーに出たり、家族と国内だけでなく、海外を旅したり、すっかりキャンピングカーにハマっていらっしゃいます。そして先頃『人生にキャンピングカーを』という本を出されました。
きょうはそんなGAKUさんに、人生を豊かにしてくれるキャンピングカー・ライフについてお話いただきます。

めちゃくちゃ面白くて
※GAKUさんは以前、日本全国をキャンピングカーでまわるライヴ・ツアーを行なっていました。キャンピングカーを移動手段にしたのは、どうしてなんですか?
「長いこと音楽生活をしていまして、北海道から九州まで行ったことない都道府県はすでになくて、ただ、じゃあどこに行って、いつ(ライヴを)やったのか聞かれると、ちょっとあやふやな感じになっていると。
で、僕らミュージシャンだと公共交通機関で、飛行機で、新幹線で現場まで行って、駅から空港からライヴ会場に入って、ライヴ会場のステージと、打ち上げ会場とホテルっていう、その3点トライアングルしか知らないと。すげえもったいないなっていうのをある時思いまして、ちょっとキツくてもなるべく車で行こうっていう風に思った年がありました。
これは今から10年くらい前なんですけど、ハイエースに機材を全部詰め込んで、九州だろうが東北だろうが行ったろ! みたいな感じでやっていたんですけど、すごくよかったんですよ! それがまず、そもそもこれいいね! やっぱり日本って点と点でつながっているよね! みたいな。
これ、もしかして車に泊まっちゃったほうが経費的にも軽くなるんじゃないかなみたいなところから、キャンピングカーを借りてみた年があったんですよ、めちゃくちゃ面白くてそれが。全部機材を入れて、寝るのもそこ、着替えもそこ、料理もそこでやったらもう本当に楽しくて、これでしょ! みたいなことで始めたのがきっかけだと思います」
●でも飛行機とか新幹線に比べると、だいぶ時間はかかりますよね。
「まあそうなんですよね、時間は当然(かかります)。例えば福岡だったら、羽田空港からだったら1時間半くらいで行くので、大冒険しているって感じではないですけど、陸路で行くと、途中色んな街に寄ってライヴをしながら行くので、まあ1週間とか10日かけて行くことになるんですね。そうすると、やっぱり関門海峡を越えたぐらいで、うぉ〜九州入った〜! みたいな感じになるんですね。
そうすると、ステージ中のMCとかも、やっと着いたんだよ! みたいな感じになって、僕らも感動しながら音楽ができるっていう副産物もありました。当然、足だ腰だ首だは痛くなるんですけど、でもね、それも含めての旅なんで、今のところそれが楽しくてやっていますね」

●どんなことが特に楽しいんですか?
「ある程度大人になって、好きな音楽とはいえ、ある種、仕事じゃないですか。なので、その仕事が終わったらさっと帰って、各自の生活になるっていうスパンで僕ら生活していますけど、やっぱりその時だけは、なんかね、修学旅行みたいな気持ちになって、バンド・メンバーと和気あいあいとした旅になるんですね。バンド・メンバーも家族を持っているやつが多いですから、そのときはなんか突然、独身みたいな感じになって、みんなで旅を作り出していくっていうのがすごく心が踊りますかね」
(編集部注:メンバー4人によるキャンピングカーのライヴ・ツアーでは4人がそれぞれ、運転手やナビゲーターの役割ほか、料理を作ったり、グッズを売ったりと、ミュージシャン以外の仕事を分担していたそうです。そういうこともあって、メンバー同士の絆が深まったそうですよ。
また、キャンピングカーのツアーは、ファンのかたからの差し入れが、地元の食材や地酒などで基本的に食事は自炊だったので助かったということでした)
GAKU号はヒノキの香り!?
※ライヴ・ツアーで使ったキャンピングカーはどんなタイプだったんですか?
「5年前はレンタカーでやっておりました。その時はいわゆる、ザ・キャンピングカーみたいな、それも毎年変えているんですけど、メルセデスベンツがベースになった大きいものだったりする年もありましたし、普通にバンクベッドと言われていて、運転席の上にベッドが飛び出していたものもありますね。色々ある中で直近のツアーはGAKU号というのを、オリジナル・キャンピングカーを作っていただいて、それでやっていました」
●GAKU号!?
「それは、僕が5年間くらいキャンピングカー最高! って言っていたら、協会のかたに表彰していただきまして、その副賞として、オリジナル・キャンピングカーを製作、1年間使ってどうぞ! みたいなものがありました。それはトヨタのコースターという、幼稚園バスとかロケバスが普段使っているようなやつの中身を、キャンピングカーに改造したものでした」

●特別仕様ってことですよね?
「そうですね。仕様はどんなのがいいですか?って聞かれて、一から説明して作っていただいたので、それはもう本当に最高でしたね!」
●具体的にGAKU号のこだわりは、どんなところなんですか?
「こだわりは3点ありまして・・・まず就寝スペースを、シングルベッドを4つにしてくださいとお伝えしました。これはキャンピングカーって大体ベーシックとして、ダブルベッドが2つみたいなものが多いんですね。やっぱり家族向けに作っているものが多いので。 ダブルベッド2つでも当然、男4人が寝られるんですけど、同じベッドにバンド・メンバーと寝るのもですね、なんか朝起きた時にひげ面を見るのもなぁ〜みたいな感じになるじゃないですか(笑)。僕もそうだし、相手もね、きっとそうなんで、そこはちょっとすみませんけど、シングルベッド4つだと最高です〜っていう風に伝えました」

●あははは〜(笑)
「2点目は、楽器がとにかく、運搬物としていちばん大事であり、かつ大きかったりするので、ドラムセットが入るようなサイズのスペースを後ろに作ってくださいと。鍵盤も運ぶんで、ベッドの下に入れるようにとか・・・」
●ベッドの下に鍵盤!?
「そういうスペースを作っていただいたことで、非常にストレスなく移動が出来るってことになりました。あと、最後の1つは、自宅もそうなんですけど、ウッディな感じ、木の感じが好きなので、出来たら、移動中長いこと旅をするので、心地よい車内の空間だと嬉しいです! と伝えたところ、飛騨のヒノキの間伐材で内装を作っていただきました。だからいつも車の中がヒノキの香りで、すごくよかったです」
(編集部注:GAKUさんは2018年に「ジャパンキャンピングカー普及貢献賞」を受賞。また、2019年のカートラベル・イベント「カートラジャパン」でアンバサダーに選ばれ、その副賞としてGAKUさんのリクエストを受けて改造したGAKU号を活用することになったそうですよ)

キャンピングカー沼にハマった人たち
※先頃出版された本『人生にキャンピングカーを』には、GAKUさんのご自身の体験談も書かれていますが、キャンピングカーにハマってしまった方たちが21人、登場しています。改めて、どんな方たちなのか、教えていただけますか。
「自分の使いかたとしては音楽ツアーで移動手段、宿泊手段で、楽しむためにキャンピングカーを選んでいるんですけど、僕みたいな職業の人以外にももちろん楽しめる素晴らしいギアだと思っているので、色んな人が人生にキャンピングカーを取り入れてもらえるように、色んな職種の人、色んな立場の人、色んな考えを持った人に、どうしてキャンピングカーにハマったのかとか、キャンピングカーがあるとどういう生活になるのか、そういうのを聞きに行ったら面白いんじゃないかなということで、この本を書き始めました。
当然、僕より長く使っている人たちばっかりですし、まだ若い女性のかたもいたりとか、大ベテランで何十台もキャンピングカーを乗り継いできたような人もいたりして、もう本当に色んなバリエーションの人にお話を聞きましたね。
いいところばっかりではないじゃないですか。当然、大変なこともあったりするので、そういうところもざっくばらんに聞いてみたりして、なるべく魅力あるキャンピングカー沼を(笑)、皆さんに知っていただければなという思いで書きました」
●この番組に以前、SPiCYSOL(スパイシーソル)のKENNY(ケニー)さんが登場してくださったんですけれども。
「あ! KENNYね!」
●この本にも登場されていましたね!
「KENNYが、ふりきれたカッケー車に乗っていましてね〜、いいなぁと思いましたね」
●KENNYさんもバンドのツアーで使うということで、屋根にも登れるから、いつかこの上をステージにしてライヴをしたいということもおっしゃっていましたね。
「KENNY君はアメリカのスクールバス、いわゆる映画とかでよく見る、白とか黄色がベースになっているやつ、あれを日本で中古車で、名古屋のほうで見つけたって言っていたかな。見つけてから寝ても覚めても、そのことが頭から離れず、友達と一緒に車に乗って、買いに行ったみたいな話から、それを使って本当はフードトラックをやりたかった、みたいなことを言ってました。
ただ、フードトラックって法律的にも色んな規制があって無理だから、キャンピングカーにしよう! みたいな感じで・・・でもそのお陰で色んな旅したり、サーフィンに行ったり、音楽ツアーが出来たり、すごくいいです〜、ガソリンはめちゃめちゃ食いますけど〜って言ってましたけど」
●本に登場されているかたのインタビューは全員GAKUさんがされたんですよね?
「はいそうです」
●実際にインタビューされて、どんなことを感じられました?
「インタビューして思ったのは、本当にキャンピングカーって、ひとことで言い切れない多種多様なモデルがあると。同じモデルは2つとないと思ってくださってもいいというか、やっぱり同じ住居があんまりない、色んな種類がある、人の家も同じものがないっていうのと一緒で、車も実は全然違うんですね。
目的に合わせてサイズ、ベッドの数、キッチンの占める割合、トイレはあるのかないのかとか、色んな選択肢がある・・・もちろん僕も知っていましたけれども、やっぱりこういうところに行きたい、こういう使いかたをしたいから、こういうレイアウトなんだな、みたいなね、そういうのを改めて教えていただきましたね。
キャンピングカーをなんとなくいいな〜って思っているかたって、きっと潜在的にも多いと思うんですけど、この本を通して、改めて考えることによって、自分はこういう使い方をしたいから、キャンピングカーがあったほうがいいなとか、仕事も忙しいから、週末だけ借りるレンタカーからまずやってみたらいいなとか、将来は家を売っぱらって、でかいキャンピングカーに住めばいいじゃん! みたいなのとか、そういう想像ができて面白かったです」

家族とキャンピングカー 海外ツアー
※GAKUさんはプライベートでもご家族とキャンピングカーで旅をされたんですよね?
「GAKU号を借りている時は、使っていない時に家族みんな乗って、旅行に行ったりもしましたし、ちょっと前は、自分のうちだけでキャンピングカー1台を、乗用車とは別に所有すると、割とコストがかかったりするじゃないですか。だから5家族で1台のキャンピングカーを、シェアで持つっていうのをやっていたこともあります」
●それはお友達の家族で?
「そうですね。だから、今週うちが使いますんでとか、来週はうちが使いますんで、みたいな、そういうのをちゃんと皆で割り振ってやると。ネットで空いているスケジュールも見られたりして、そういうのでやっていたこともありますね」
●それはいいですね!
「これはまず、グンとコストを抑えられるっていうのと、やっぱり自分のうちだけで使うんじゃないから、すごく奇麗にしようっていう気持ちになるんですね。荷物も置きっぱなしにしておかないで、一回(使い)終わったらちゃんと出すっていう、あんまり入れっぱなしにしておくのも忘れるし、良くないなっていう風に思うので」
●キャンピングカーの旅は、子供たちにとっては冒険っていう感じですよね。
「秘密基地がそのまま車になって移動するみたいなことなんでね、すごくいいと思いました」

●そうですよね〜。海外はやっぱりキャンピングカーは多いんですか?
「本場はアメリカとか、ヨーロッパだと思うんですけど、昔からアメリカをキャンピングカーで旅するっていうのをちょっと憧れていた部分もありまして、もう4年前か5年前くらいになるんですけど、実は家族で世界一周したことがありました。その時のアメリカ、メキシコの旅を現地でレンタルして、キャンピングカーで行ったことがあります」
●海外をキャンピングカーってすごいことですよね!
「これね、ちょっと字面だけ聞いていると、すっげえ! ってなるんですけど、その時は子供が2人、今は3人なんですけど、子供が2人の時で、下がその時2歳だったのかな。小っちゃいと、飛行機の待ち時間が結構耐えられなくなるっていうか、荷物も多いし、すぐ寝るし、起きたら泣いていなくなるし、みたいな・・・。キャンピングカーにバンっと荷物も子供も放り投げておくと、旅としてはすごくカロリー低く行けますよね。
アメリカはレストランに行っても、すごく食事の量が多いじゃないですか。頼むと食べきれないし、残さなきゃいけないし、そういうのもなんかちょっとフラストレーションが溜まったりするんですけど、キャンピングカーだとママの料理で、ずっと必要な分だけ、日本食で食べられるものを選んでいけるので、そういう意味では、アメリカのキャンピングカー旅は本当に安全極まりなく快適でよかったですよ。
RVパークっていうキャンピングカー用の施設がすごく充実していて、どこの街に行ってもそれがちゃんとあって、停めて電気と排水をつないで、(パークの)真ん中に行くとプールがあってみたいな、そういう感じです」
移動中にウカスカジー の曲が出来た!
※近々、キャンピングカーで出かける予定はあるんですか?
「今、実はMr.Childrenの桜井とやっているウカスカジーのツアーが始まっておりまして、これは飛行機と新幹線を使って、ホテルに泊まるツアーなんですけど(笑)」
●キャンピングカーではないんですね?
「このツアーはキャンピングカーではないんですけど(笑)、実はこのウカスカジーのツアーで、桜井含めバンド・メンバーに、キャンピングカーすごくいいんだぜ!って言って、前回のツアーで1カ所、キャンピングカーを持っていって、みんなで乗って移動して、楽しんだっていうことがありまして、またツアーのどこかでやりたいなとは思っているんですよ。
ちなみに前回ウカスカジーがキャンピングカーで移動した時、車内で出来た曲(*)っていうのが、(ウカスカジーの)新しいアルバムに入っておりますので、機会があったら、聴いていただけると嬉しいなと思っています」
(編集部注:*曲名は「プリーズ・サマー・ブリーズ」。今月リリースされたウカスカジーのニュー・アルバム『どんなことでも起こりうる』に収録)
●やっぱり、キャンピングカーでの移動中に出来る曲ってあるんですね。
「あります! あります! ギターのやつが急に弾きだして、僕と桜井が鼻歌でふふ〜んって歌いながら、出来た〜! みたいなね、そんなんありましたからね」
●ええ〜っ、すごい!
「やっぱりそういう意味でも、長い移動、車の中だと寝ちゃうやつもいるんですけど、キャンピングカーってスイッチが入った時、みんなテンションが高く、話も盛り上がりながら進んで行くんでね、その時はすごく楽しかったです」
●本当にキャンピングカーって、人生とかライフスタイルを豊かにしてくれそうですね。
「はい! そうだと思います、ぜひ! まだ未体験の人は最初から購入を考えると、ちょっと二の足を踏むと思うので、今はレンタルのキャンピングカーはどこにでもありますし、まずそこからやってみるっていうのと、あとAirbnb(エアビーアンドビー)ってわかります? 誰かが家を貸すサービスみたいのあるじゃないですか?
あんな感じのサービスがキャンピングカー・バージョンであるので、普段、所有されているかたが使っていない時、どうぞ、みたいのも結構、今あって、そこで借りると、色んなこだわった車種とかもたくさんあるので、まずそういうのを試してみるといいかなと思いますね」
☆この他のGAKU-MCさんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
『人生にキャンピングカーを』
キャンピングカーライフをエンジョイされている方々、21名が登場。そのこだわりが美しい写真とともに紹介されていて、見ているだけでも夢が膨らみますよ。キャンピングカーが欲しくなること請け合いです! ぜひ読んでください。A-WORKSから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎A-WORKS:http://www.a-works.gr.jp
GAKUさんはミスター・チルドレンの桜井和寿さんとのユニット「ウカスカジー」で現在、全国ツアー中。1月30日の広島公演まで続きます。
また、来年2022年4月のソロ・ツアーが決定! 東京公演は4月22日(金)に渋谷プレジャー・プレジャーとなっています。
詳しくはGAKUさんのオフィシャルサイトを見てください。
◎GAKU-MC :http://www.gaku-mc.net
GAKU-MCさんの本『人生にキャンピングカーを』を直筆サイン入りで、抽選で3名のかたにプレゼントいたします。
応募はメールでお願いします。
件名に「本のプレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
flint@bayfm.co.jp
あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。応募の締め切りは12月24日(金)。当選発表は発送をもって代えさせていただきます。たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
2021/12/19 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. 昨日のNo, 明日のYes / GAKU-MC
M2. FUN DAY / STEVIE WONDER
M3. SLEEPING IN MY CAR / ROXETTE
M4. So What / SPiCYSOL
M5. Fly High / milet
M6. AROUND THE WORLD / BING CROSBY
M7. PLEASE SUMMER BREEZE / ウカスカジー
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2021/12/12 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、生き物が大好きなイラストレーター「一日一種(いちにちいっしゅ)」さんです。
一種さんは、環境アセスメントなどに関する、生き物や環境の調査を行なう会社に勤務後、独立。現在はフリーのイラストレーターとして「いきものデザイン研究所」というサイトを運営しているほか、生き物に関する本を数多く出版されています。
「いきものデザイン研究所」では、生き物の面白い生態を4コマ漫画でわかりやすく紹介、その可愛くて親しみやすい絵と、ユニークな世界観がSNSなどで話題になっています。そんな一種さんが先頃、初心者向けのバードウォッチングの本を出されました。
きょうは、バードウォッチングの初心者に向けてのアドバイス、そして、好奇心をくすぐる生き物たちの面白話をお届けします。
☆イラストレーション&漫画:一日一種
秋から冬がベスト・シーズン

※一種さんの新しい本『今日からはじめる ばーどらいふ!』。この本はひとりの男性がバードウォッチングにハマっていく様子を漫画やイラストで紹介していますが、これは一種さんの体験がもとになっているんですか?
「中身のところで、鳥の楽しさとか見つける喜びとか、あとは図鑑で調べる面白さ、そういうのはやっぱり実体験がベースにはなっていますね。ストーリーは全く体験は関係ないんですけど(笑)」
●この本は、まさにバードウォッチングの初心者の入門書みたいな感じですよね?
「意識的にはそういうものになればいいかなって。それよりも、バードウォッチングを始めようかなっていう人って正直そんな多くないかなって思ったので。ただ、バードウォッチングって何だろう?とか、興味があるっていう人は割といるかと思うんですよ。だから、始めようかなぐらいよりも、もっと手前の人も含めて、見てもらえるような本になればいいかなと思って、特に親しみやすさを含めて漫画にしました」

●とっても読みやすかったです! 一種さんはもともと、野鳥がお好きだったんですか?
「そうですね。私も環境コンサルタントの会社に勤めていた頃は、鳥を主に調査をしていたので、専門家っていうほどでは全然ないんですけれども、生き物の中ではいちばん鳥は接してきたグループではあります」
●私もこの番組でバードウォッチングの体験を海浜幕張でさせていただいたんですね。こんな都会に鳥っているんだなっていうのがすごく驚きで、カラスやハトしかいないんじゃないかっていう風に思っていたので、色んな鳥が実は身近にいるんだなということをすごく感じたんです。実際、この時期がちょうどバードウォッチングにいい季節なんですよね?
「秋の終わりぐらいから葉っぱが落ち始めて、冬ぐらいまでは特にいい時期とは言われますね。年間を通してそれぞれ(の季節)に見どころはあるんですね。やっぱり初心者のかたとか、ベテランのかたでもそうですけれども、冬がやりやすい、始める人には結構いいかなっていうのは言われていますし、僕もそう思います」
●それはどうしてですか?
「色々理由はあるんですけれども、主なところだとやっぱり、落葉樹の葉っぱが落ちて、鳥が見やすくなるっていうのがありますし、秋までに生まれた個体が加わって全体的に数が増えるとかですね。あとは混群(こんぐん)というのを作る、違う種類同士が集まって、一緒にグループになって見やすくなることがあったりとか、あと大きなところは渡り鳥がやってくることですね。
夏ぐらいまでは山の標高の高いところで繁殖していた、棲んでいた鳥たちが、冬になって食べるものがないとか寒いとかって理由で降りてくるんですよね。だから私たちの身近でも普通に見られるようになります。あと北国の鳥とかも渡ってきますし、全体的に種類が増えるし、数も増えるし、見やすくなるのでやっぱり冬が個人的にもおすすめです」
野鳥観察におすすめは公園
※この時期だと、どんな野鳥を見ることができますか?
「環境にもよるんですけれども、普通の雑木林とか緑地であれば、小鳥類のシジュウカラやコゲラ、あとメジロとか。冬っていうことを考えるとツグミ類、地上をトコトコ歩いている中型の鳥、あとはジョウビタキっていう(今回番組で)ご紹介いただく本にも出てくる、オスはお腹がオレンジ色の、結構可愛い鳥も見られますね」

●おすすめの観察場所はありますか?
「ピンポイントで特定の場所でなければ、やっぱりこれから(バードウォッチングを)やろうかな、やってみたいなっていう人におすすめなのは公園ですね。公園に行けば、水辺、池があったりして、そこで冬になってきてカモ類とかたくさん見られたり、広葉樹に小鳥類の群れが来ていたりしますね。
鳥も公園だと警戒心が薄いんですよね。大自然の中に行くと全然見られない、すぐ逃げていっちゃうような距離でも、公園だと鳥の警戒心が薄いので、とても近くて見やすいので、すごくおすすめです」
●確かに池とかそういった水辺がある場所と、雑木林がある場所では見られる野鳥の種類も違いますよね。
「そうですね。その点では公園はどちらもセットになっていたりして、水辺で色んなカモ類を見て、そのあと雑木林で小鳥類を見たりとか出来ますね。本当におっしゃる通り環境によって全然違います。林、水辺、ちょっと流れのある川、草地、それぞれでやっぱり見られる野鳥が結構違うので、色んな環境で見るといいかなと思います」
●公園で野鳥を見つけるコツってありますか? 観察のポイントとかあったら教えてください。
「公園に行って、水辺のカモ類は、特にコツとかあんまりなくて、すぐに見つけられると思うんですよ。ただ、昼ぐらいになるとカモ類って結構岸辺で休んでいたりするので、朝方は普通に見られたカモがいないなって思ったら、岸辺のほうを見ると見つけられたりとか、環境と環境の際辺りにいるようなことが多いと思いますね。
川でも、川のど真ん中よりも、ちょっと岸辺の辺りを目でなぞるように探していくと、割とセキレイ類を見つけられたりとか、ちょっと休んでいる水鳥を見つけられたりしますよ。
林を見ている時も、林全体を見ているとなかなか見つからないと思うんですけれども、林間というか、こずえの辺りを舐めるように見ていくと、上のほうに止まっている鳥を見つけられたりとかします。
もっと簡単なコツを言えば、やっぱり聴くことですかね。声を聴く、バードウォッチングですけれども、割とリスニングが大事だったりします。まず声を聴いて、どこにいるんだろうって探す、その順番で見つけられることが多いですね。まず耳を澄ますのは大事だと思います」

*編集部注:千葉でおすすめの観察場所として、一種さんがあげてくださったのは、習志野市の谷津干潟。自然観察センターには備え付けのフィールドスコープもあるし、野鳥観察のガイドさんもいるそうです。そしてもう1箇所が銚子漁港。何種類ものカモメが見られる、野鳥好きにはマニアックな場所だそうです。
バードウォッチングの初心者のかたは、「日本野鳥の会」が開催しているバードウォッチングのイベントに参加するのもおすすめと一種さんはおっしゃっていました。全国で開催しているので「日本野鳥の会」のホームページをチェックしてみてください。
◎日本野鳥の会:https://www.wbsj.org/
イライラの由来、二度寝するカエル!?
●一種さんが運営されているサイト「いきものデザイン研究所」には、生き物に関する4コマ漫画が掲載されています。その中から、私が特に気になった漫画を色々お聞きします。
まずは「由来が意外なあの言葉」という4コマ漫画がありまして、イラクサという多年草から”イライラ”という言葉だったり、”ひし形”というのは菱(ひし)という植物から来たんだよ! っていうことでしたが、それは本当なんですか?

「はい、語源の由来自体は、どんなものでも諸説があったりするので、絶対にこれが正しいっていうわけじゃないんですけども、一説としては言われていますね。意外と植物が先だったんだっていう、ちょっとびっくりする由来ですけれども」
●びっくりです!
「イラクサは、棘(トゲ)を全般的にイラって呼んだりして、その中でもイラクサっていう草はガラス状の棘で、刺さると簡単に砕けてしまって、しばらく取りづらいんですね。毒が入っている棘なので、結構痛痒いんですよ。ずーっとイラクサが刺さると痛痒い感じがして、まさにイライラするみたいな状態になるんですね(笑)。
”苛立つ(イラダツ)”から来るとも言われますね。棘(イラ)が立つ、刺さって立つことからイラダツ、イライラが苛立つから来たのかもしれないですけれども、そういうイラクサを含む、棘のある植物から来てるっていうことはどうやら確からしいです」
●へえ~〜〜!
「ひし形もそうですね。水草の菱を見ると、そこまでひし形でもないかなっていう気はするんですけど、ただ漢字もやっぱり同じ菱、水草の菱と同じで、ひし形の由来は、どうやらそこから来ているっていうのは読めますね。葉っぱも果実も、ややひし形っぽい形をしていて、どちらから来ているのかは確かじゃないんですけども、どうやら水草から来ているようです」
●面白いですね~。それから「早起きだが、二度寝するカエル」っていうのもありましたよね。アカガエルの産卵のお話でしたけれども・・・。

「そうですね。それを漫画にしたのは、やっぱり早起きするのがまずは面白くて、さらに産卵したあと二度寝しちゃうのが、ふたつ目の面白いところで、漫画にしてみたいなって思ったんですね。
カエル類は、冬眠して春に起きて産卵みたいなイメージが、どちらかというと強いかと思うんですけれども、アカガエル類はちょっと特殊な産卵方法です。戦略だと思うんですけど、天敵があんまりいないような、まだ寒い2月くらいに、まず起きて産卵をします。産卵をしたあとは、起きていればいいかなとも思うんですけど、やっぱり食べる物がないのか、ちょっと活動はしづらいみたいで、春が来て暖かくなるまで寝ちゃうっていう(笑)」
●二度寝しちゃうんですね?(笑)
「人間でいうところの二度寝、ちょっと真面目な二度寝ですけども」
変身するニホンウナギ
※一種さんが主宰されているサイト「いきものデザイン研究所」にアップされていた4コマ漫画の中からもうひとつ。「ニホンウナギの変態」という漫画がありましたよね?
「そうですね。あれは土用の丑の日に合わせて、何かしらウナギの面白い話をアップ出来ればなと思っていたんですね。今ウナギって絶滅危惧種なところにまず、すごく関心がいっているじゃないですか。それもすごく大事なテーマなんですけれども、それですごい乱獲がどうのこうのとか、ウナギを食べないようにしなきゃみたいなところに、みんな意識が集中しちゃっているかなと思ったので、それより以前に、別の視点でウナギってこんなところが、実はすごく面白い生き物なんだっていうのを知ってもらえればな~と思って、敢えて変態っていうテーマで書いたんですね。
食のウナギっていうよりも、生き物のウナギとしての見方でも、実はすごく魅力的な生き物なんですね。産卵場所をようやく特定できたことは、数年前にニュースになったりもしましたけれども、本当に謎だらけの、何かすごくダイナミックな生き方をしている面白い生き物です。そういう面も知ってもらえたら、食べ方とか、食としてのウナギのほうの接し方も変わるのかなと思って、そういう漫画を描きました。

変態は、蝶がやっぱり有名だと思いますけれど、イモムシからサナギになって成虫になるみたいな変態を、ウナギも何段階かの変態をします。最初は葉っぱ型のレプトケファルスっていう、海流に乗りやすい不思議な平べったい形をしているんですけれども、それが段々日本に近づいて来ると、細長いいわゆるウナギ型みたいな形になって、シラスウナギっていう状態になります。
それがどんどん成長していくと、お腹が黄色くなったり、黒くなったり、最後に銀ウナギっていうお腹が銀色のウナギになったりする、変身を何回も繰り返す、実は面白い魚なんですね。なので、”変態するウナギ”っていうテーマで、面白さを知ってもらえればなと思って、漫画を描きました」
漫画だけど、裏付けはちゃんと
※「いきものデザイン研究所」のサイトにあげている4コマ漫画のネタは、どうやって決めているんですか?
「生き物のネタ自体は世の中ありふれているので、僕は出来るだけ多くの人に興味を持ってもらえそうなものを決めて、それからどうやって漫画にしようとか、どうやったら面白く伝えられるかを考えて作りますね」
●でも、漫画を描くにもやっぱり生き物とか自然のことをよく分かっていないと描けないですよね。
「そうかもしれないですね。僕もそれなりに調査とか仕事でやっていても全然、今もそうですけれども、まだまだ知らないなと思うので、漫画にする前に間違いがないように、フィクションの部分はフィクションとしてちゃんと伝わるようにして、情報として伝える部分は間違いないように、ちゃんと調べたりしたりとかはしていますね。そこがいちばん正直、神経が擦り減る辛いところですね」
●漫画を描くこと以上に大変なことなんですね。
「そうですね。やっぱりこういうものをやっていると、どうしても漫画なので、誇張して伝わっちゃう部分もあるんですけれども、出来るだけ、おかしな伝わり方をしないように、こう見えても一応は気を使っているつもりです。はい!」
●改めて一種さんが漫画やイラストを通じて、どんなことを伝えたいですか?
「正直そんなすごい意識を持って欲しいわけじゃ全然ないんですよね。ただ単純に、生き物ってこういうところが面白いなとか、可愛いなとか、ちょっと見てみようかなぐらいな感じで、ちょっと入口になればいいかなくらいに思っています。
生き物が嫌いな人に無理やり勧めようとか、好きになってもらいたいなんて全然思っていなくて、本当に普通に暮らしている人が、ちょっと知って特になればくらいに思って漫画を描いています。基本的に漫画ってほんと娯楽なので、それぐらいですね」
*編集部注:一種さんがいま注目しているのが微生物、例えば身近な生き物として、苔などいるクマムシ、乾燥にも強いスーパー微生物ですよね。そんな微生物のミクロの世界を描いてみたいそうです。
INFORMATION
『今日からはじめる ばーどらいふ!』
初心者に向けて、バードウォッチングのポイントやノウハウ、そして面白さなどを漫画とイラストでわかりやすく解説、本当に楽しく読めますよ。これからやってみようと思っているかたに最適な入門書。ぜひ活用してください。文一総合出版から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎文一総合出版HP:
https://www.bun-ichi.co.jp/tabid/57/pdid/978-4-8299-7236-6/Default.aspx
一種さんが主宰しているサイト「いきものデザイン研究所」もぜひご覧くださいね。4コマ漫画、面白いですよ。
◎「いきものデザイン研究所」HP:http://wildlife-d.xsrv.jp
2021/12/12 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. CRANES IN THE SKY / SOLANGE
M2. WINTER WONDERLAND / TONY BENNETT
M3. LISTEN, LISTEN / SANDY DENNY
M4. SLEEPIN’ / DIANA ROSS
M5. 君に夢中 / 宇多田ヒカル
M6. BEAUTIFUL TRANSFORMATION / BROOKE HOGAN
M7. THAT’S ENTERTAINMENT / THE JAM
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2021/12/5 UP!
今年の嬉しい出来事のひとつとして、7月に奄美大島が沖縄ほかとともに世界自然遺産に登録されたことがあげられます。国内では白神山地、屋久島、知床、小笠原諸島についで5件目になります。
鹿児島県に属する奄美大島が選ばれた理由は、なんといっても生物多様性の高さで、固有種の多さは際立っています。奄美大島は日本の国土の0.2%にも満たないのに、国内全体の、生物の種類のおよそ13%が確認されているそうです。そんな生き物の楽園、奄美大島にご案内します。
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、生きものカメラマン「松橋利光(まつはし・としみつ)」さんです。
松橋さんは1969年、神奈川県出身。水族館に勤務後、フリーのカメラマンとしておもにカエルなどの水生生物をメインに、いろいろな生き物を撮影、これまでに児童向けの本や写真絵本を数多く出版。また、子供向けの生き物教室も開催されています。
そんな松橋さんの新しい絵本が『奄美の道で生きものみーつけた』。これまでに40回ほど通ったという奄美大島の生き物や自然について、きょうはたっぷりお話をうかがいます。
☆写真:松橋利光

道で出会える生き物たち
●本のタイトルに「奄美の道」と入れたのは、奄美大島では道でたくさんの生き物に出会えるからなんですか?
「そうですね。奄美大島は森の中にたくさん林道が走っていて、身近な生活道路だったりもするんですけど、生き物を探す時の基本として、そういう道で車をゆっくり走らせて、まずその状況を知るのが第一歩なんですね。そこで出会う生き物を集めてみました」

●奄美大島は道を歩いているだけで、こんなにたくさんの生き物に出会えるんですね。
「(生き物に出会えるのは)道だけじゃないですけど、生き物の数というか量は沖縄のやんばる以上だと思っています」
●以前よりも生き物は増えてきているんですか?
「”マングースバスターズ(*)”がすごく機能しているようです。外来のハブの退治のために導入されたマングーズが増えて、結構カエルとか食べちゃったりするんですけど、その駆除が世界でも珍しいぐらいうまくいっている島なんです。それだけじゃなく、ほかの保全活動とか色々相まって、この10年でかなり爆発的に生き物が増えていると思います」
●今年7月には沖縄本島などと共に世界自然遺産に登録されましたけれども、何度も通っている松橋さんとしてはどうですか? 決まった瞬間はどんなお気持ちでした?
「やっぱり世界遺産に向けて頑張っている人たちも見てきましたし、ものすごく嬉しい気持ちでいっぱいだったんですけど、自分はシンプルに自然を好きな人間として言ってしまえば、若干注目されて観光で人が増えると、また道で何かが起きてしまうんじゃないかみたいな、そういう弊害みたいなものに対しての心配も少しありました」
*ハブなどの駆除を目的に導入されたマングースがハブなどを食べずにアマミノクロウサギなどを捕食して、固有の生き物が減る一方でハブが増えてしまったそうです。そのため、環境省では2000年から本格的にマングースの駆除に着手、その事業のことを「奄美マングースバスターズ」と呼んでいます。その取り組みがうまくいき、奄美大島の生き物たちが増えているのではないかということなんですね。
環境省の奄美野生生物保護センターでは保護活動など、様々な取り組みを行なっています。ぜひオフィシャルサイトをご覧ください。
◎奄美野生生物保護センターHP:https://www.env.go.jp/nature/kisho/wildlifecenter/amami.html
日本一美しいアマミイシカワガエル
※改めて、奄美大島の気候や天候について教えていただけますか。
「亜熱帯なんですけれども、暑さは、最近関東の夏はすごい暑さですよね。ああいう暑さとはまた違っていて、しっかり雨も降りますし、夜は涼しくなりますから、それほど過ごしにくいというか過酷な状況ではなくて、かえって夏は奄美で過ごしたいぐらいに思う時がありますよ」

●そうですか! すごく高温多湿なイメージあるんですけれども、湿気とかも多いですよね?
「湿気はすごいです。湿気はすごいですけど、そのおかげで、雨が定期的に降ることで、カエルの撮影がしやすいので、かえってありがたいです(笑)」
●自然相手だと撮影もなかなか大変なんじゃないですか?
「今の時期は繁殖期だからと思って行っても大外しすることがありますし、ふいにチャンスが訪れる時もあるので、そこは努力してもしょうがないというか、なるべく回数を行ってチャンスを増やすっていうだけですかね」
●奄美大島は、そこにしかいない生き物もたくさんいるんですよね?

「そうですね。有名なところだとアマミノクロウサギとか、ルリカケス、あとはアマミイシカワガエルとか、アマミと名の付く生き物はとても多いですね。固有種と言われるものが脊椎動物だけでも何種類かいて、昆虫も含めるともう何百といるようなので、奄美でしか見られない生き物はたくさんいます」
●アマミイシカワガエルは写真絵本にも写真が載っていましたけれども、実際に見ると、どれほど美しいんですか?
「日本一美しいって言われていますね。沖縄に棲むイシカワガエルと元々同種とされていたんですけど、何年か前に種として別れたんです。明らかにアマミイシカワガエルのほうが、緑色が、何色かのグラデーションの中に金をまぶしたような縁取りができていたり、背中だけをアップで撮ったりすると何かの模様ですよね。すごく美しいですよ。
沖縄の種も含め本当に迷彩色なんですよ。緑色なので実は目立たないんですけど、でもよく見るとすごく複雑な色彩をしていて美しいです。実は結構大きいんですよ。本州で見られるようなカエルとは違っていて、子供の手のひらぐらいはあります。大きい種類だと大人の女性の手のひらぐらいはあるので、模様もはっきり見えますし、すごく綺麗ですよ」

五感を駆使して見つけ出す
※松橋さんが奄美大島で、撮影のためによく通っている場所はどの辺なんですか?
「空港から(車で)1時間ぐらい南下したところに、大和村っていう集落があるんですね。そこの森が林道に沿って渓流もかなり多くて、林道を走っているだけで繁殖期とかですとカエルの鳴き声が聴こえてくるんですよ。この下で産卵しているんじゃないかと思って、車を停めて沢を下りていくみたいな、割と気軽に観察ができる場所があるので、その大和村がいちばん通っていますかね」
●それで降りて行って、実際やっぱりカエルがいた! みたいな感じなんですか?
「そうです、そうです。カエルって鳴き声が全部違うので、この声はハナサキガエルだ! しかも数がいっぱい、ピヨピヨ鳴いているぞ! って思って降りていくと、産卵しやすい溜まりがあったりするんですよ。そこに何百と集まって産卵しているところに出会うんですね。(大和村は)川と生活が近いって言うんですかね。なので、耳や五感を駆使すれば、そういうシーンに出会うチャンスがたくさんあります」

●同じ場所でも季節によって出会える生き物は違いますよね?
「(生き物が)食べるもので出てくる場所も違いますし、繁殖期が近ければ、カエルなどは鳴き声が全然季節で違います。そういう季節の移り変わりで見られる生き物が違ったり、図鑑に書いてある通りに解釈していると全然繁殖期とか違ったりするので、とにかく(奄美大島に)行って、耳をすませて風を感じながら行動するしかないっていう感じですけどね」
●一日の撮影スケジュールはどういう感じなんですか?
「夜がメインなんですよ。朝は例えば鳥の渡りだとか面白いことがあれば、朝から鳥の撮影をして、昼間の生き物があまり動かない時間にちょっと仮眠をとって、夜森に入って、(カエルの)産卵に出会ってしまったりしたら、一応産卵が終わるまでか、もしくは明るくなるまで待って、朝帰って仮眠してみたいな感じなので、本当に寝るとか食事っていうのはいちばん後回しで、ほぼ森にいます」
繁殖期、必死なカエルと紳士的なカエル
※撮影のためのフィールドワーク中に、なかなか出会えない生き物と出会えた時って、やっぱりどきどきするんですか?
「生き物との出会いや、そのシーンの出会いは毎回嬉しいですし、ドキッとするんです。それを体の動きで(いきなり)近づくと、生き物がびっくりするっていうのは、みなさん分かると思うんですけど、こっちの、”わっ、いた!”って気持ちの高揚が生きものに伝わるんですよ。なのでとにかく“いたっ!”って思っても、“いたっ!” って思わないようにしていたり、冷静を装うというか、本当になるべく心静かにっていうのがいちばんですね。いくら出会って感動しても」
●いた〜! って声に出さなくても、そういったワクワク感っていうのは生き物に伝わっちゃうものなんですか?
「多分、そう感じています。もちろん、その時に無駄な動きが出ちゃっているのかもしれないんですけど、やっぱり“あっ!”って思った時は、パッとこっちを見られた気がすることもあるので、“あっ!”って思っても、とにかく、すっと心を落ち着けるように意識はしています」
●難しいですね〜(笑)。
「難しいですよ。もう長年やっているので、何とかなっていますけど」
●生き物の撮影をしていて、思わずクスッと笑ってしまうような瞬間はありますか?
「本当に、生き物ってドジなので、ちょっと食べ物を落としたりとか、そういう日常の、クスッと笑えるようなトラブルってよくあるんですけど、カエルは普段すごく警戒心が強いのに、繁殖期になると、わけがわからないくらい必死なんですよ」
●必死なんですか?
「アマミハナサキガエルは、沢でピヨピヨ鳴いて集まるカエルなんですけど、数百と集まるので、オスがメスを探すことに必死なんですね。そういう時に胴長を履いて沢に行って、川の水が濁らないように水の中に半分入って、石に座ってずーっと待つんですけど、そうすると、自分の膝が石だと思われて、膝に4匹も5匹もカエルが乗っかってきたり・・・」


●へぇ〜!(笑)
「水中カメラで近づいたら、メスだと思って人の手につかまってきたり、なかなかその必死さは面白いですよ(笑)」
●面白いですね(笑)。微笑ましいというかなんというか・・・。
「面白いです! とにかく、もう笑いながら撮っています」
●ほかのカエルで、なにか面白い生態があったら教えてください。
「日本一美しいと言われているアマミイシカワガエルですとか、オットンガエル、奄美固有のカエルがいるんですけど、その2種類は逆にとても紳士的で、目の前にメスが現れても抱きついたりしないんですよ」
●ええっ!
「イシカワガエルは岩の隙間というか、穴の中で産卵するんですけど、穴の入口で鳴いて、メスがこっちに来るまで誘導するようにして鳴き続けて、一緒に穴の中に消えていくっていう感じですね。

オットンガエルは産卵のための小さな巣を作るんです。砂利をどけたような水たまりを作るんですけど、そこでオスが鳴いてメスが来ると、まずオスは一度巣を出て、メスがそれを値踏みするようにぐるぐる動くんですね」
●へぇ〜〜!
「オスはまた戻って来て鳴いたりするんですけど、見ているとメスが姿勢を低くして、もう産卵してもいいよ!っていうような合図のようなものを出すんですよ。そうすると、(オスが)のそのそっと来て、背中に抱きついて産卵が始まったり、すごく紳士的なカエルがいて、面白いですよ」

大事なのは謙虚さ
※奄美大島が世界自然遺産に登録されたことで、現地に行って生き物の写真を撮ってみたいと思うかたも多いと思います。プロのカメラマンとして何かアドバイスがあれば、お願いします。
「自然保護という観点からも、あとは危険防止という観点からも、シンプルに自然の中にいることをすごく意識して、常に謙虚に行動していれば、生き物ってそんなに逃げないんですよ。なので、ちゃんとルールを守って、自分が撮るっていうよりは、(生き物と)会えた喜びを普通に分かち合うぐらいな、余裕を持って森に入ってもらえれば、あれだけ生き物が多くて、出会うチャンスが多いので、いい写真が撮れちゃったりするのかなって思います」
●謙虚さ、が大事なんですね。
「そうですね」
●では最後に、この写真絵本を通して、どんなことを伝えたいですか?
「奄美大島の素晴らしさを伝えるっていうことはもちろんなんですけど、やっぱり生き物が多くて、自然と人の生活が近いイメージなんですね。本当に集落の裏に珍しいカエルやネズミが普通に現れるので、ロードキルのような事故があったりすることをきちんと知ってもらって、自分がどう行動したらいいのかを少し考えるきっかけになればいいかな思って作りました」


☆この他の松橋利光さんのトークもご覧ください。
INFORMATION
『奄美の道で生きものみーつけた』
松橋さんの新しい絵本、お勧めです! 奄美の道で出会ったカエルやヘビ、ウサギや野鳥などの写真が満載。元環境省のアクティヴ・レンジャー木元侑菜(きもと・ゆうな)さんとの共著。松橋さんは木元さんから教えていただく現地の生き物情報に、とても助けられているとおっしゃっていました。奄美大島の美しくて可愛い生き物たちをぜひ感じてください。新日本出版社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
2021/12/5 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. ワダツミの木 / 元ちとせ
M2. FORCE OF NATURE / LENKA
M3. THE FROG PRINCE / KEANE
M4. ALL NIGHT LONG / PETER FRAMPTON
M5. 白い月 / 城 南海
M6. PEACE FROG / THE DOORS
M7. 花 / 中 孝介
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」
2021/11/28 UP!
◎田中康平(筑波大学の恐竜学者)
『恐竜の卵化石は時空を超えたミステリー!〜謎だらけの恐竜卵に挑む、若き恐竜学者〜』(2021.11.28)
◎吉田正仁(徒歩旅行家)
『リヤカーを引いて、世界5大陸単独踏破!〜小さな一歩を積み重ねて77500キロ!』(2021.11.21)
◎森沢明夫(小説家)
『散歩のすすめ〜日々ご機嫌でいるために』(2021.11.14)
◎太田光海(映像人類学者)
『「カナルタ〜螺旋状の夢」〜アマゾンの先住民、その叡智に今こそ学べ!』(2021.11.7)
2021/11/28 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、筑波大学の恐竜学者「田中康平(たなか・こうへい)」さんです。
田中さんは1985年、名古屋市生まれ。北海道大学卒業後、カナダのカリガリー大学に留学し、博士号を取得。現在は筑波大学・生命環境系の助教として、恐竜の繁殖行動や子育ての研究を中心に、恐竜の進化や生態の謎を解き明かそうとされています。
恐竜の研究者というと、おもに骨の化石を研究しているイメージがありますよね。でも田中さんは、恐竜の骨ではなく、卵の化石を専門に研究されているスペシャリストとして注目されています。
そんな「田中」さんの本『恐竜学者は止まらない!〜読み解け、卵化石ミステリー』が話題になっているということで、ゲストとしてお迎えいたしました。
きょうは大発見となったモンゴル・ゴビ砂漠の卵化石や、恐竜の繁殖行動、そして謎多き恐竜卵についてお話しいただきます。
☆写真協力:田中康平

ティラノサウルスは卵を温めていたのか!?
●『恐竜学者は止まらない!〜読み解け、卵化石ミステリー』という本を私も読ませていただきました。恐竜研究の本ですけれども、代表的なティラノサウルスやトリケラトプスはあまり出てこなくて、卵化石にここまで焦点を当てた本ってなかなかないですよね?
「そうですよね。結構マニアックなところですよね(笑)」
●すごく興味深かったですし、田中さんのワクワクさがすごく伝わってきました。
「よかったです。本を書いていて、研究の楽しさが伝わればいいかなと思っていまして、そう言っていただいて本当によかったです」

●田中さんが本当に恐竜がお好きなんだなーっていうのが伝わってきました! きょうは主に、田中さんのご専門である恐竜の繁殖行動についてうかがっていきたいと思うんです。
恐竜の研究は日進月歩ということで、以前私たちがよく目にしていた恐竜の絵は、肌が爬虫類のようで、色もどちらかというと地味で、大型のトカゲのようなイメージでしたけれども、今は羽毛が生えた恐竜の絵が一般的になっていますよね?
「そうですね。結構大人のかたのほうが驚かれるかたが多いですね」
●羽毛が生えていたという発見は、田中さんの研究でも大きなことだったんじゃないですか?
「羽毛恐竜は、1990年代に実は最初のが見つかり始めていて、かなり前なんですよね。僕が子供の頃にも既に羽毛恐竜が出始めていたので、僕は結構すんなり羽毛がある恐竜にはスッと入っていけたんですけども、やっぱり卵化石を研究していて、恐竜が鳥みたいに卵を温めていたっていう説を言う時、羽毛があるかないかって結構違うじゃないですか。羽毛恐竜が見つかったことで、より説が浸透したというか、より確からしく感じますよね」
●映画『ジュラシックパーク』とかも私好きでよく観るんですけれども、あのティラノサウルスが卵を温めていたっていうことですよね?
「恐竜の中でも、卵を温められたやつと、温めることができなかったやつがいると思うんですよ。ティラノサウルスは流石にちょっと身体が大きすぎて、温めようとすると多分、卵は割れたんじゃないかなと・・・」
●そうですよね! ちょっと想像がつかないなと思ったんですけど・・・恐竜によって色々違うんですね。
「恐竜は爬虫類から生まれてきて、最終的に鳥が恐竜の中から出現するんですけど、爬虫類と鳥だと全然子育てをする方法って違いますよね。恐竜はその中間にいるので、繁殖行動がどんな風に移り変わっていくかっていうのを研究するのには、すごくベストなグループなんですよね」
●恐竜卵の最大のものは、どれぐらいの大きさになるんですか?
「今見つかっている中でいちばん大きいのは、中国から見つかっているんですけれども、結構、細長い卵で、長さが50 センチ近くあって、幅が16〜17センチぐらいですかね。かなり細長くて、生きていた時は(重さが)6キロぐらいあったんじゃないかなって言われています」
●6キロ!? 形は細長いものが多いんですか?
「これも恐竜によって様々なんですけれども、鳥に近づくほど細長くなっていくことが分かっています」
●カメのようにピンポン球みたいな卵も中にはあるんですか?
「見つかっています。そういうのもいっぱいあります」
●すごいですね。色んなバリエーションがあるんですね。
「そうなんですよ! 世界中で恐竜の卵はいっぱい見つかっているんですけど、全然今まで研究する人がいなかったんですよね」
卵の殻から謎を読み解く
※恐竜の卵化石は、海外ではお話に出てきた中国のほか、モンゴル、カナダ、アメリカ、アルゼンチンなど、そして国内では兵庫や福井、岐阜や山口などでも見つかっているそうですよ。
そんな卵化石、田中さんはどこに着目して、どんな研究をされているんですか?
「顕微鏡で卵の細かな構造を調べたりとか、卵はどういうところに埋まっているかを調べたりとか、色んな情報を集めていくと、恐竜たちがどんな風に卵を産んで温めて孵化させていたのかが結構分かってくるものなんですよね」
●殻からも色々分かってくるんですよね?
「卵化石は、そもそも卵の殻しか化石には残っていないんですね。中の黄身とか白身ってなくなっちゃうので」

●そうですよね。でもその殻だけを見て何が分かるんですか? 殻ですよね!?
「そうなんですよ、証拠は本当にちょっとしかなくて。例えば卵の殻に小っちゃな穴がいっぱいあいているんですよ。ゆで卵を作るとプチプチと気泡みたいなのができますよね。中の赤ちゃんが息するための穴なんですけども、あれがたくさんあいていたら地面に埋めるタイプとか、穴が少なかったら鳥みたいに地上に巣を作って卵を産み落とすタイプっていうふうに、結構そういう形や構造に違いが出てくるんですね」
●すごい! 色んな研究があるんですね。野鳥は繁殖のために巣を作りますよね。 巣を作る材料も様々で、キツツキのように木に穴を開けて巣作りするものもあれば、コアジサシのように海岸の平坦な場所に、小石を敷き詰めて産卵するための場所を作る種もいますけど、恐竜の場合はどんな巣を作っていたんですか?
「これもまた恐竜によって色々あったという風に考えられています。先ほど出てきた鳥に近い羽毛恐竜は、本当に鳥みたいに地面に巣を作って、親が卵を温めていたというのが分かっていますし、それよりもうちょっと古い恐竜だと、ウミガメみたいに卵を地面の中に埋めて、周りの熱で卵を孵化させていたことが分かっていますね」
●きょうはスタジオに卵化石の模型とレプリカを持ってきていただいたんですけれども、このふたつ、全然違う形ですよね?
「まず大きさが違いますね」
●こちらが親指ぐらいの大きさというか、ウズラの卵をちょっと細長くしたような感じですよね。もうひとつのほうが?
「これはニワトリの卵をふたつ、くっ付けたくらいの長さですかね」
●そうですね〜。
「どちらも同じ、鳥に近い羽毛恐竜の卵なんですね。ただ身体の大きさが違うので、ちょっと大きいのと、ちょっと小っちゃいのっていう感じですね」

●卵の殻の素材というか・・・このウズラの卵をちょっと細長くしたような小さめの卵のほうはツルツルですけど、大きいほうはブツブツというか・・・。
「表面をよく見るとなんかブツブツがいっぱいありますよね? 恐竜によって表面の模様みたいなものに実は色んなパターンがあって、それによって分類することができるし、例えばどの恐竜が産んだ(卵)だろうっていうことが推測できるんですね」
●へ〜〜そうなんですね。この卵ですと・・・?
「ブツブツの模様が付いている卵は、オヴィラプトルの仲間にみられる特徴です。オヴィラプトルは、オウムみたいな顔にダチョウのような体つきをした、小型の恐竜なんですけども、彼らが特徴的な卵を産むんですね。だから破片が見つかれば、オヴィラプトルの卵だって分かるんですね」
●そうやって読み解いていくんですね。
「もう1個の小っちゃなほうは、実は兵庫県の丹波市で見つかった卵なんですけど、めちゃくちゃ小さいですよね? 本当にウズラの卵ぐらいですね。これ今のところ世界最小の恐竜卵とされています」
モンゴルで発見! 大規模な集団営巣
※本に書いてあった、モンゴル・ゴビ砂漠で発見した恐竜卵の話がとても興味深く、面白かったんですが、改めていつ頃、どんな発見があったのか、教えていただけますか。
「これは僕がまだ大学院生の時だったんです。一緒に研究をしている北海道大学の先生で有名な小林快次先生っていう恐竜研究の先生がいらっしゃるんですけど、その先生がモンゴルで調査を毎年ずっとやっていて、そこで恐竜の巣の化石がいくつか見つかったんですね。それで僕に連絡をくださって、一緒に調査しないかっていうことで、僕もモンゴルに行ったんです。

テニスコートぐらいのところに恐竜の巣の化石が、ぽこぽこぽこっていっぱいあったんですよ。同じ場所にたくさんあるのは集団営巣、”コロニー”って言って、ペンギンがよくテレビの映像で(同じ場所に)一緒に巣を作っていますよね。あんな感じのことを恐竜もしていたんじゃないかっていうことが分かってきたんですね」
●集団で巣を作っていたっていう発見は、恐竜研究の歴史に刻まれるすごいことですよね?
「集団で巣を作っていた痕跡は、実は今までにも結構見つかってはいたんですよ。ただ、今回のモンゴルの(発見)は結構大きな規模で、詳しく研究したら恐竜の面白い行動パターンが分かってきたので、僕たちは論文にしたんですけど、どういう行動をしていたと思います? なんで恐竜って群れていたんでしょうね? 群れることで実はいいことがあるんですけど・・・」
●何だろう???
「群れると敵が来た時にすぐに発見できるんですよね。みんなに知らせられるので、ひとりでいるよりもたくさんでいたほうが、たくさんの目で敵を見つけやすいというメリットがあるわけなんですね。多分そうしていたんじゃないかと思っています。そうすることで巣をみんなで守っているというか、親がたくさんいるから敵が来た時でもすぐ見つけられて、営巣地を守っていたんじゃないかっていう風に考えています」
●先ほど規模が大きかったっておっしゃっていましたけれど、どれくらいの規模だったんですか?
「少なくとも15個、巣の化石が見つかっています。本当に狭いエリアからですね」
●密集してみんなで群れていたんですね。この恐竜は自分たちで卵を温めていたタイプなんですか?
「この恐竜の面白いことに、自分たちで温めていないパターンの恐竜なんですよね。爬虫類みたいに卵を地面の中に埋めていたタイプなんですよ。なのに集団で巣を守っているっていうのは、爬虫類的でもあるし、鳥によく似ているし、本当にちょっとモザイク上というか、進化の途中だっていうのが分かりますよね」
●肉食獣、草食獣っていう風に考えると、どっちなんですか?
「これがまたややこしいんですけど、肉食から進化した植物食の恐竜なんですよ」
●ええ!? なんですかそれ!
「ちょっと不思議ですよね。鳥に近いんですけども、そこまでまだ近くはない、本当に中途半端というか変わった恐竜なんですよ。テリジノサウルス類っていう恐竜なんですけど、可愛いテディベアみたいな可愛い恐竜です」
●どんな特徴があるんですか?
「前足に長い爪を持っていまして、大きい種だと1メートル近い爪を持っています」
●すごいですね!
「でも植物食なので、二足歩行で爪を熊手みたいに使って、木の枝をかき集めて植物を食べていたんじゃないかって言われています」
●で、敵から守るためにみんなで集まっていたんですね。
「そうですね。強い恐竜ではなかったので、みんなで集まって巣を作って、卵を守っていたと思います」
●孵化したことは分かっているんですか?
「それも分かってきていて、孵化したのが化石を詳しく調べていくと分かりました」
●15個の中からどれくらい孵化していたんですか?
「15個巣があった内の9個の巣で孵化した形跡が見られたんですね。15個の内の9個っていうと、結構割合としては成功しているほうなんですね。60%の成功率なんですけど、この高い成功率は親が巣を守っている場合に見られる割合なんですね」
注:お話に出てきた北海道大学・総合博物館の教授「小林快次(こばやし・よしつぐ)」先生は恐竜ファンの間では「ダイナソー小林」として有名な、恐竜研究のエキスパートで、その先生との出会いが少年時代、自然や恐竜が大好きだった田中さんを本格的に恐竜学者への道にいざなったと言っても過言ではないでしょうね。

田中さんは留学していたカナダでも発掘調査を行なっていますが、今後、発掘調査に行きたい場所としてウズベキスタンをあげてくださいました。実はコロナ禍になる前にウズベキスタンに行ったことがあるそうです。まだまだ未開拓の地で、たくさんの恐竜卵の化石が埋まっているのではないかと田中さんは胸を膨らませています。
恐竜の子育てミステリー
※恐竜の種類にもよると思いますが、卵から孵化したあと、親は子供にどうやって食べさせていたんですか?
「小尾さん、どうやっていたと思います?」
●鳥は口移しとか、ですよね・・・。
「はいはいはい、ツバメみたいな感じで」
●そういうイメージがありますけど、恐竜もそうですか?
「えーっとですね、クイズにしましょうか! 1:ツバメみたいに親が直接餌を与えていた。2:親が餌を巣まで持ってきて、それを子供がパクパクと食べていた。3:餌はあげなかった」
●う〜ん、2番!
「2番、餌を持ってきて、巣の中でヒナが自分で食べていた。正解は、どれも分かりませんでした」
●え〜〜〜〜なんですか、それ!
「すみません。まだそこまで分かっていないんですよ」
●そうなんですか?
「生まれたあとの行動って化石には残らないので・・・。研究者によっては、親が餌を運んできただろうと言っている研究者もいるんですけども、なかなか確固たる証拠がないんですね。まだまだ謎に満ち溢れているという(笑)」
●そうなんですね。でもそういったことも今後分かってくるかもしれないってことですよね?
「そうです! アイデア次第でまだ気づいていないだけで、ヒントが隠されているかもしれないですよね」
●子育ての期間とかもまだ分かっていないっていう感じなんですか?
「分かっていないですね。ただ、卵が孵化するまでの期間は分かっているんですよ。何か月だと思います?」
●ちょっと見当もつかないです。どれくらいですか?
「例えば、体の大きなハドロサウルス類っていう恐竜がいるんですよ。体長が7〜8メートルくらいある恐竜で、直径20センチくらいの丸い卵を産むんですけど、何日くらいだと思います?」
●何日だろう? 時間がかかるのかな~?
「大きいからそれなりに時間はかかりそうですよね」
●正解は?
「正解は半年って言われているんです。長いですよね、半年! 」
●半年!
「僕はそんなに長くはないんじゃないかと思っているんですけど、そういう研究があります」
●野鳥の中ではカッコウのように、他の野鳥の巣に卵を産み付ける「托卵」という繁殖行動をとる種もいますけれども、恐竜でもあったと推測できるんですか?
「鋭い質問ですね~、それ(笑)。今のところ、托卵していた確かな証拠はないんですね。ただ、中国とかモンゴルとか、恐竜の卵化石がたくさん見つかる地域で、色んな博物館によって調べたりしているんですね。恐竜のきれいな巣の化石があって、卵がたくさん産んであるんですけども、明らかに種類が違う卵が混じっていたりすることがたまにあるんですよ」
●ほお~〜〜〜!
「もしかしたら、そういうのは托卵しているのかもしれないですね。ただ、まだ公表はされていないので、すごく興味ありますよね。今後、僕も詳しく調べてみたいなと思います」
恐竜の謎を一緒に解き明かそう!

※田中さんが調査や研究をしていく中で、いちばんワクワクするのはどんな時ですか?
「やっぱり研究のアイデアを思いついた時ですかね」
●アイデア!?
「砂漠で化石を発掘したり新種を見つけたりするのも、それはそれで楽しいと思うんですけども、卵が孵化するまでの日数をどうやって調べるかとか、恐竜は親が卵を温めていたのかっていうのは、アイデア勝負というか、いくつか限られた証拠から、仮説を立てて調べていくわけですね。そこで研究をこうやったら分かるんじゃないかっていう方法を思いついた時は、すごく嬉しいです」
●恐竜学者として心がけていることとか、大事にしていることはありますか?
「ちょっとした謎でも思いついたら、不思議だなって思ったことはメモしています。もしかしたら、それが次の研究に繫がるかもしれないですよね」
●子どもの時に感じていたような、何でなんだろう? っていう気持ちを大事にされているっていうことですか?
「本当にそれは重要だと思います。お子さんが質問してくることって大概、僕たち(研究者は)答えられないんです(笑)。本当にいいところを突いていて難しい質問が多いんですよね。でもそれは、逆を言えば今分かっていないから、大いに今後の研究のテーマになりうるってことですよね」
●なるほど〜。やりたいことがたくさんあると思うんですけれども、今後の大きな目標は何かありますか?
「そうですね。やっぱりまだみんなが思いつかないような、思いもしなかったような恐竜たちの行動とか暮らしぶりを明らかにしたいなって思いますよね」
●なにか具体的なことはありますか?
「やっぱり卵の研究をしているので、卵でもまだ分かっていないこと、ですね。さっきおっしゃったように、恐竜の親が赤ちゃんに餌を与えていたのか、何日くらいで巣立ったのか、そういうこともほとんど分かっていないんですよ。ぜひ何かしら、きっかけを見つけて謎を解き明かしたいなと思います」
●楽しみですね〜。夢が広がりますね! 恐竜が大好きな子供たちや、恐竜学者を目指そうとしている学生さんたちに、もし伝えたいことが何かありましたらお願いします。
「はい! 研究は大変ではあるんですけれども、とっても楽しいです。まだまだたくさんの謎があって、見つかっていない恐竜もたくさんまだ埋まっています。だからみんなが、お子さんたちが研究者になる頃には、謎がまだたくさんあふれているので、ぜひ一緒に恐竜の謎を解いていけたら嬉しいなって思っています」
INFORMATION
『恐竜学者は止まらない!〜読み解け、卵化石ミステリー』
カナダやモンゴル、中国などの発掘現場での奮闘の様子や、卵化石の研究成果、そしてなにより研究者として邁進していく姿に圧倒されると思います。恐竜卵の研究はまさに時空を超えてつながるミステリー。丸くて硬くて面白い、卵化石の世界にぜひ触れてみてください。創元社(そうげんしゃ)から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎創元社HP:https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=4275
2021/11/28 UP!
オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」
M1. WALK THE DINOSAUR / WAS (NOT WAS)
M2. I FOUND SOMEONE / MICHAEL BOLTON
M3. E.G.G. / CYMBALS
M4. BORN TO MAKE YOU HAPPY / BRITNEY SPEARS
M5. EGG / 木村カエラ
M6. LONG LONG TIME / LINDA RONSTADT
M7. MAGICAL MYSTERY TOUR / THE BEATLES
エンディング・テーマ曲「THE WHALE / ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA」