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清水国明さんの定点観測28回目!〜「あのねのね」結成50周年全国ツアー

2023/6/18 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、芸能界きってのアウトドアズマン「清水国明」さんです。

 清水さんには毎年一回、この番組にご出演いただき、そのとき、どんなことに夢中になっているのかをお聞きする定点観測を続けさせていただいています。その定点観測、今年でなんと28回目! つまり28年以上前からこの番組にお付き合いいただいているんです。

 今回は、結成50周年を迎えた伝説のフォーク・デュオ「あのねのね」のツアー情報ほか、茨城県常総市に整備したキャンプ場「くにあきの森」や「笑顔食堂」プロジェクトのお話などうかがいます。

☆写真協力:kuniaki.plus

全国ツアーの前にリハビリ・ライヴ!?

●毎年この時期にご出演いただいて行なっている定点観測、今回で28回目となります。本当に長いお付き合いありがとうございます!

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

清水国明さん

●まずはなんといってもこの話題からです。伝説のフォークデュオ「あのねのね」が今年で結成50周年なんですよね。おめでとうございます!

「ありがとうございます! めでたいのかどうか、まあ50年も続けばね・・・昔、原田(伸郎)が言っていたけれど、中途半端に古いと値打ちはないけども、このくらい古くなると、骨董品としての値打ちが出てくるとか言うてましたね(笑)。
 自分で言うのもおかしいけど、レジェンドっていうようなことを各局で言われるようになってね。あ、俺レジェンドなんだとかって、思いますけれども、そのくらい(長く)やらさせていただいているということは、確かなことなのでありがたいです」

●その50周年を記念して全国ツアーを行なうんですよね?

「これはね、本番の50周年のコンサートがあるじゃないですか。それに向けてのリハビリ・ライヴということで・・・実は40周年をやりました。その頃の感を取り戻すために・・・この10年間やっていないようなものなんでね。
 生きてはいたんですけど、もちろん解散もしていないんですけれども、活動もしていなかったものですから、あのねのねとしてのトークであるとか、歌の間とか音程とか、そういったことをリハビリしないと、みっともないことになるぞということで、ライヴをやろうやないかという思いで、リハーサル代わりにやっているわけです」

写真協力:kuniaki.plus

●全国ツアーの前にリハビリ・ライヴってことですね。

「そうですね。だから何箇所かやってきたんですけれども、もちろんぐしゃぐしゃなんですよ。演奏して歌を忘れるし、音を外すしで、まあ本番で頑張ろうやとか言いながら・・・それをお金を出して見にきた人にはえらい災難ですけどね。まあそんなふうに全国でやらさせてもらっています。

 みなさんの評価は、すごく楽しかったとかっていうのと、それから元気になったとかも・・・それは確かにわかるんですよ。俺72歳だし、原田も71歳の爺さんふたりが、50年も前と同じような感じで、キャッキャ言いながらアホな歌を歌ったりしているわけだから・・・。同世代の人たちに見にきていただいたんですけれども、あ〜我々もまだできるなという、そういう励みにはなったかもわからないです」

あなたまかせのキャンプ場

写真協力:kuniaki.plus

※清水さんは先頃、茨城県常総市の「ふるさと大使」に就任されました。常総市のほうから、キャンプ場を作って欲しいという要請があり、それを受けて、「くにあきの森」というキャンプを整備、今月グランドオープンを迎えたそうです。どんなキャンプ場なんですか?

「あのね、水とトイレと電気、これはやっぱりいるなと思って・・・トイレも、僕はアウトドアズマンと言われていますが、ウォシュレットがないとだめなもんですからね(笑)。洗浄便器をくっつけたトイレはしっかりあるんです。あとは何にもなしのとりあえず森、雑木林ですね。

 何があるか、いるかというと、クワガタとカブトムシ。これは、そこを開発しようと思って、ユンボをガーーーっと・・・草ボーボーで薮とか竹とか茂っていて、ガガガガッと3〜4メートル入った瞬間に、カブトムシの幼虫が5〜6匹ポロポロって出て、いや〜すげー!って、もう一気にそこが気に入りましてね。

 それまでも隣の柏市で杉林を開発して(キャンプ場を)作っていたんですけど、その時はそういう昆虫はいなかった・・・ところが雑木林ってすごいね。入り口にそれだけいるってことは、奥のほうにはもうてんこ盛りにいるんじゃないかと思って勇んで行ったら、奥にはあんまりいなかった(笑)」

写真協力:kuniaki.plus

●あははは(笑)

「そういう虫がいっぱいいる場所で、クワガタ、カブトムシの森というのも施設として作ろうかなと思っています。で、自然が豊かなのと、それから自由が豊かっていうか、自由がいっぱいある、ほったらかしの・・・キャンプ場の前に“あなたまかせ”というフレーズをつけたんですよ。

 いろいろ設備だったり、グランピングとか、いろいろどうじゃーってなっているけど、あれは方向性として違うなと思っているんですよ。

 なんにもなしで、自ら然(しか)るって『自然』ってそういうことで、自分でやる、自分で決める、自分で楽しむっていうのが、キャンプであり自然だと思うから、ほったらかしです。 

 なんでも自由にしてください、自己責任ですよと。自他自由と言っているんですが、あなたも自由だけど、他人も自由だから、他人の自由を犯す自由はないよ、みたいな・・・それから自修自得って言っているんですが、自分で楽しめよと。

 なんやここなんにもないから、つまんないっていう人は自分で楽しんでないです。ここ何でもできるなって自分で喜びを作りだせる人は、これ以上のところはないと思います。もうほったらかしですからね。そういう自由がある自然な森をキャンプ場というふうに捉えていただければいいんじゃないかな」

●あなたまかせのキャンプ場、面白いですね!

「このあいだね、ホームページを作っているやつからね、“チェックイン、チェックアウトの時間はどうしたらいいですか”って質問がきたから、“あなたまかせ”って(笑)、好きな時に出てって好きな時に入ってちょうだいって(笑)」

●いいですね〜(笑)

写真協力:kuniaki.plus

笑顔食堂、あした笑顔になあ〜れ

※清水さんはほかにも「笑顔食堂」というプロジェクトを進めていらっしゃいます。これはどんなプロジェクトなんですか?

「これはですね・・・ご存知のように子供食堂っていっぱいあるじゃないですか。日本に7300ぐらいあるんですって」

●全国いろんなところにありますよね。

「それをやっている人は庄野真代さんとか、うちの会社グループもふたつぐらいやってるんですけど、いいことやってんなと思いながらも、あんまりそれに関心を示さなかったんです。

 私は毎日の食事を用意するっちゅうなことは、いちばん苦手なんです。ぽっと瞬間的にそういうことするのはできるんだけども・・・だから子供食堂はできないなと思っていたんですが、それっていわゆる社会が子供たちを育てるという形なんですね。自分の子供だけ育てればいいっていうわけじゃないなと思い始めたんですよ。

 72歳ということは、そろそろエンドがちらほらと見えてくるわけですよ、終活というかね。もうこの先、俺も72だからせいぜい生きて、あと60年ぐらいですか(笑)。だからそろそろ亡くなった後、あ〜、あの人、ひどいことしていたけど、こういうこともやってたんだっちゅうなこともやらないかんからね。

 それと、人さんのお子さんを育てるということは、今まで考えてなかった・・・自分の利益、自分の家族の幸せというものを中心に考えてきた・・・けど、今度うちのライヴでもやってくれる、ナオちゃんっていうハーモニカのミュージシャンがいるんですが、その人がね・・・“ナオちゃん、家族どうなってんの?”って、“今、里子(さとご)がいます”って言って里親になって、それも二組目なんですって! いや〜偉いねって・・・考えてみたら、俺そういうことしてこなかったなということで、無関心だった・・・。

 無関心ってのは、愛という言葉の裏返しが無関心だそうでね。これは愛のない日々を過ごしてたなということで、だから『笑顔食堂』・・・ちょっと話が長くなりましたけど、『笑顔食堂』というのは、自分ができることをやろうと思って、キャンプ場をいっぱい作ってますから、そこに来てもらって自由に遊んでもらう・・・それはもうただで来てください、中学生までですね。ただで遊んでもらって、お父さんお母さんも来てくださいよと・・・で、『笑顔食堂』の食事作りを手伝ってくれたら、大人は入場料半額ですよっていうことで、なるべくみなさんが来やすいようにね。

写真協力:kuniaki.plus

 つまり、子供の支援っていうか貧困というのは、経済的なものと時間的なものと、それから愛情の貧困って、いろいろあるらしいのね。そういう意味では、食べ物は我々もやりますけれども、子供食堂があるけれども、自然体験とか親子の触れ合う時間とか、自然の中でのびのび、というものを提供できる・・・そして子供たちが今苦しくても、あした笑顔になあ〜れって言ってるんですが、あした笑顔になれるような、そういう取り組みをやろうというふうに思いたったわけです」

(編集部注:「笑顔食堂」プロジェクトのキックオフ・イベントが10月5日に東京国際フォーラムのホールAで開催予定だそうです。清水さんは、みんなが楽しむためのフェスティバルにしたいと、いろいろ構想を練っているようですよ。もちろん「あのねのね」も出演するとのことです。楽しみですね)

遊びも仕事も、常に全力!

●河口湖にある自然体験施設「森と湖の楽園」、瀬戸内海の無人島リゾート「ありが島」、あとは3年ほど前に千葉県鴨川の杉林を開拓して作られた「かもがわ自然楽校」、そして今回の「くにあきの森」がありますが、ご自分で汗を流して切り開いて何かを作るっていうのは、アウトドアズマンである清水さんの得意とするところだと思うんですけど、改めてどうですか?

「あのね、この28年間で何回か言ったかもわかりませんが、ある人の評価で“清水さんの頭の中は、おもちゃ箱をひっくり返したようになってる”・・・それでよく言われるのは“どこまでが仕事で、どこまでが遊びか、そのメリハリがない”・・・ずっ〜と遊び、ずっ〜と仕事みたいな感じで、自分の人生を使い切って終われたら幸せやなと思ってるんですね」

●常に全力ですよね。全力で遊ぶ! 全力で仕事する! 

「多分ね、中途半端に何かをやった時、中途半端な感動しか得られないからね。思いっきり、おら〜って言った時は、おりゃーという喜びがあります。それはもう何回か繰り返してきてね。

 ”楽(らく)”と”楽しい”は違うって言いますよね。楽(らく)しちゃうと、本物の感動は得られないんじゃないかなと思って、わざわざしんどいほうを選ぶ・・・僕はリスクテイカーとも言ってるんですが、リスクのあるほうに飛び込んでしまう・・・体質がMなんでしょうね。これね〜、そういう生き方を貫いていると、ややかっこいいですけど、そんなことやってますね」

生きる力が退化!?

※清水さんが、自然体験のできる施設やキャンプ場を作っているのは、やはり多くのかたに「生きる力」を身につけて欲しい、そんな思いがあるからなんでしょうか。

「今の生活プラス生きる力というよりも、生きる力がものすごくなくなってきたような気がするんですよ、大人も子供も。つまりスマホで全部解決してしまうから、地図を覚えないしね。
 俺、東京のテレビ局とかラジオ局に行ってても、そこから帰る時、必ずナビ入れてしまうもんね。そんなもん、もう100回ぐらい通ってんやから、それなしでも帰れそうなのに、でもなぜかナビを入れてしまう・・・。

 それと漢字が書けなくなってきたんですよね。それとか、なんか調べ物するにしても、自分の頭の中にある記憶を取り出そうとせずに、ついスマホで調べてしまう・・・スマホ依存症ということらしいね。

 そのくらい、子供と大人も、やっぱり今の便利なものにどんどん飛びついて、そして生きる力っちゅうか、工夫する力、自分で考える、思い出すというようなところを手放してしまってる・・・人類ってどんどん成長してるように思うけど、実はどんどん退化してるんじゃないか・・・その退化しているのは何かというと、やっぱり何もないとこでも、生きていけるような生きる力というのがない。

 それを補填してくれるというか、読み出してもう1回リスタートしてくれる、そのスイッチを入れてくれるのは、自然の中の、これもずっと言い続けてると思うんですが、そういう中で得られる『熱い、寒い、臭い、痛い』みたいなものを得ることによって、むくむくっと出てくるんじゃないかなと・・・最後のリハビリというか立ち直るには、その環境が本当に外せないなと思うわけですね」

●今年の後半は「あのねのね」の50周年全国ツアーに全力投球だと思うんですけれども、その先はまた新しいことにチャレンジするとか考えていらっしゃるんですか?

「はっきり言えるのは、60周年はないということ! ってことは最後だと・・・この50周年のライヴがですね。だから生で『あのねのね』というものを・・・噂で聞くか、ちらっとお父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんが言ってたなみたいな『あのねのね』を、生で見られる最後のチャンスなんでね、ぜひ(ライヴに)来ていただいきたいなと思います」


INFORMATION

「あのねのね」結成50周年を記念したツアー情報

 リハビリ・ライヴを終えた「あのねのね」は6月24日・京都、11月5日・東京でコンサート。ほかにも7月23日・神戸、9月10日・福岡、10月15日・長野でライヴを行なうことになっています。ぜひ、生で「あのねのね」のライヴをお楽しみください。会場によっては、すでにソールドアウトになっているところもあるそうです。

 詳しくは「あのねのね」の公式Facebookでご確認ください。

https://www.facebook.com/profile.php?id=100089085037073

 茨城県常総市にある「くにあきの森」については、以下のサイトをご覧ください。

◎くにあきの森:https://www.kuniakinomori.com

 清水さんの近況はFacebookをご覧ください。

◎清水国明さんFacebook:https://www.facebook.com/kuniaki.shimizu2/?locale=ja_JP

自宅に「湿地帯ビオトープ」を作ろう!〜生物多様性につながる水辺づくり

2023/6/11 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、水生生物の研究者「中島淳(なかじま・じゅん)」さんです。

 中島さんは1977年、静岡県生まれ、東京育ち。幼少の頃から、生き物全般が好きで、特に淡水に棲む魚と昆虫に興味を持っていたそうです。

 その後、九州大学に進学し、大学院を経て、現在は、福岡県保健環境研究所の専門研究員でいらっしゃいます。専門は淡水魚と水生昆虫の、生態学と分類学。これまでに新種としてドジョウ類12種、そして水生昆虫4種に名前をつけたそうですよ。

 研究の傍ら、生き物の観察会や講演会の講師としても活動。また、ネット上では「オイカワ丸」という名前でも活動されていて、淡水魚が好きな人には、お馴染みのかたかも知れません。

 きょうはそんな中島さんが先頃出された本『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』をもとにいろいろお話をうかがっていきます。

☆写真協力:中島 淳

中島淳さん

湿地帯と生物多様性

※まずは「ビオトープ」とはなにか、改めてご説明しておきましょう。
 ビオトープはドイツ語なんですが、もともとはギリシャ語で「命のある場所」、つまり「生き物が生息している場所」のこと。森や川、海岸など、生き物が生息している場所はすべてビオトープになります。そういう意味では地球そのものも、巨大なビオトープと言えますね。

 中島さん曰く、湿地帯ビオトープには4つの大事なキーワードがあるそうです。その4つとは、湿地帯、生物多様性、外来種、そしてエコトーン。

 それではひとつずつ詳しくうかがっていきましょう。まずは湿地帯なんですが、水辺全般を湿地帯と呼んでもいいのでしょうか。

「そうですね。大きな意味では、海は除くんですけれども、だいたい水深6メートルより浅い沿岸域、だから潮の満ち引きの影響があるところ、そこから陸域にかけてですね。河川とか、ため池とか湖とか田んぼ、あと地下水、こういったものは湿地帯と定義されます」

●やっぱり、かなり重要な場所なんですよね?

「はい、そもそも人間は水、淡水を飲まないと生きられません。その淡水の主要な供給源がこの湿地帯になるわけです。また湿地帯で生きている生き物は、例えばアサリとかでもそうですけれども、食べ物として非常に重要ですね。本当に大事なビオトープ、生息場のひとつというのが湿地帯だと私は思っています」

●湿地帯ビオトープを作ると、それは生物多様性を守ることにつながっていくんですか?

「そうですね。森にも砂浜にもビオトープはあるんですね。それぞれ特有の生き物が暮らしているので、どこの環境も非常に貴重なんですけれども、特に日本では湿地帯、身近な水辺の環境がかなり破壊されています。

 そういうところに暮らす生き物の多くが絶滅したり、絶滅危惧種になってしまっているということで、そういった湿地帯を想定したビオトープ、生物の生息場所を増やしていくというのは、生物多様性に大きく(貢献し)、特に日本で広くつながると考えています」

●生物多様性が失われてしまうと、私たちの生活に具体的にはどんな影響が出てきてしまうんでしょうか?

「いちばんわかりやすいのは、握り寿司ですね。お寿司とか好きかなと思いますけれども、種類がいろいろあるのが、お寿司の楽しみのひとつだと思うんです。これがまさに生物多様性の恵みそのものですね。生物多様性が失われると、寿司ネタが一品ずつ減っていくというようなことになります」

『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』

外来種とエコトーン

※大事なキーワードの続き、外来種とエコトーンについて。湿地帯ビオトープを作るときに、もっとも注意しなければいけないのは、外来種を育ててしまうことなんですか?

「育てることが問題ということではないですね。どちらかというと、育てた外来種が野外に出て行って、それがそこに、もともといた生き物とか生態系に悪影響を与える、これが問題だということですね。

 外来種というのは、人が持ち込んだものという定義ですけれども、その定義で言えば、稲とかカボチャとか、野菜の多くは外来種ですね。それが問題だというわけではないということですね。それがコントロール不能になって野外に出て行って、生物多様性を破壊してしまうことがあるわけですね。そういうことにならないようにすることが重要だということです」

●エコトーンという言葉を、私は初めて知ったんですけれども、詳しく教えていただけますか。

「エコトーンは端的に言えば、異なるふたつの環境です。それが少しずつ変化しながら接する場所という意味で、水辺に関して言えば、陸と池・・・その陸と水の間、陸から徐々に水の中に入っていくような・・・一見、陸だと思って踏み込んだら、ズブズブと足が沈んでしまうような、そういった場所がエコトーンということになります」

●ちょうど狭間のようなものっていうことですね。エコトーンこそ湿地帯ビオトープの要と言えるんですか?

「そうですね。ビオトープという言葉は古くからある言葉ですけれども、あえてタイトルに“湿地帯”を付けたのも、そういった概念として、連続的に変化するような環境を含めて、ビオトープ化して楽しむことができないかなと思って付けたものです。
 そういう意味で湿地帯というのは、エコトーンを含むような意味合いとして、湿地帯ビオドープという一連の言葉は、これは造語だと思いますけれども、それで今回、本の名前として付けたものになります」

●エコトーンで暮らしている生き物って、どんな生き物がいるんですか?

「身近でよく知られているもので言えば、ドジョウという魚ですね。あるいはサンショウウオとかトノサマガエルみたいな両生類ですね。こういったものはエコトーンを重要な生息場にしている、田んぼとかでよく見られるような生き物ですね。

 こういったものは、完全に干上がらない川とかは好きじゃないんですけれども、陸もダメで、陸と水の間のときどき干上がったりはするけれども、割と常に水があるような環境、そういった場所じゃないとうまく繁殖できなかったり、生きられなかったりするような生き物になりますね」

写真協力:中島 淳

湿地帯ビオトープの作り方

※中島さんの本によると、実際に自宅に湿地帯ビオトープを作るには、水と陸、そしてその境であるエコトーンを作ることがポイント。用意するのは、水を貯めておくための防水シート、プラスチックのコンテナ、そして小型の睡蓮鉢など。小型のコンテナや睡蓮鉢は手軽なのでマンションのベランダでも活用できるそうです。容器に入れる土は、ホームセンターなどで売っている赤玉土など。

 湿地帯ビオトープの作り方について、詳しくは中島さんの本をご覧いただきたいのですが、小さなビオトープだったら、数時間で作れるそうですよ。

写真協力:中島 淳

 さあ、生き物たちが暮らせる場所が整ったところで、育てる水生生物や植物はどうすれば、いいのか、中島さんにお聞きしました。

「植物についても本の中でいくつか詳しいことを書きました。外来種の話を本の中でも解説しているんですけれども、ビオトープから外来種が出ていって、野外に行ってしまうという構造の場合は、やっぱり変な外来種の植物は入れないほうがいいわけですよね。

 ただそうじゃなくて(外に)出にくいような構造であれば、ある程度自由に、売られているものを入れてもいいかなと思いますが、真に生物の保全につなげるためには、できれば住んでいる家の、まずはビオトープを置く場所の、周囲の川から取ってきたものを中心に入れるのが、いちばんいいかなと思います。

 それから動物、魚なんかは、メダカであれば、買ってきて入れるということも、やむを得ない場合もあるかなと思いますが、そんな場合もメダカが逃げ出さないように、逃げ出すとそれが外来種になってしまいますので、そういった点には注意する必要があります。

 あとは水生の昆虫類なんかは、実はゲンゴロウとかトンボとか、いろんな種類が日夜、我々の頭上を飛び回っているんですね。なので、いい水辺があれば、棲みつくようになります。 いろんな昆虫が突然現れたりするので、それを楽しむというのがいちばんいいかなと思います」

写真協力:中島 淳

●本には何も入れない湿地帯ビオトープっていう説明もありましたけれども、何も入れなくても、いずれは生き物たちが暮らすビオトープになるっていうことなんですか?

「はい、実は水草というか水生植物の中でも、タネが空を飛んでいるような種類は結構多いんですね。タネがうまく発芽するようなエコトーン、これがあれば、実は何らかの植物は、意外と生えてくるものですね。場を作って粘り強く待つという楽しみ方もひとつあります」

●場所だけ作っておいて、何も入れなくても、生き物たちってやってくるものなんですね。

「そうですね。周辺の環境にもよりますけれども、粘れば何かしらくるのは、日本の場合は間違いないだろうと思います」

(編集部注:先ほど、近くの川から植物や生き物などを持ってくるというお話がありましたが、なんでも持ってきていいという話ではありません。中島さんによれば、魚などは各都道府県が定める規則に従わなくてはいけないとのこと。また、植物や土、石は河川法という法律によって、個人が自由に採取することは禁じられているそうです。

 とはいえ、採取する量が極めて少ない、または常識の範囲内であれば、問題にはならないそうですが、個人での判断が難しいときは行政の担当部署に問い合わせてくださいとのことです。詳しくは中島さんの本に載っていますので、ご確認いただけければと思います)

人間は自然を再生できる

写真協力:中島 淳

※中島さんのご自宅の庭には、10年ほど前に作った湿地帯ビオトープがあります。現在はメインのビオトープのほかに、埋めるタイプのコンテナ・ビオトープが5つ、睡蓮鉢ビオトープが2つ、それらを管理しているとのことです。

 勝手に飛んできたトンボ類やアメンボなどの水生昆虫がどんどん増えているそうですよ。どんな湿地帯ビオトープなのか、これも本に載っているので、ぜひご覧ください。

 お休みの日にご自宅の湿地帯ビオトープにいると、どんなことを感じますか?

「植えた植物もあるんですが、勝手に(池に)やってきた昆虫はやっぱり嬉しいですよね。場を作ってその生き物に選んでもらえたというところですね。この池がなければ、その虫はここで増えることはなかったわけですから、そういう意味では生物の保全にもつながる新しい場作りができたし、そういったのを呆然と眺めているのは楽しいですね」

写真協力:中島 淳

●首都圏でおすすめのビオトープってありますか?

「生息場として、いい湿地帯はたくさんあるんですけども、本でも紹介しましたが、エコトーンに注目するのであれば、やはり東京の井の頭池ですね。あそこはかなり意識的にエコトーンを再生するということをしています。

 エコトーンというものをこの本でちょっと読んで、どんなものかなと脳内にイメージを置いて、改めて井の頭池だけ見てみると、あ〜こういうことをしているのかというのがよくわかってきます。

 実際あそこは生き物も多いので、私も何度も行きましたが、そういう知識があると解像度が上がると言いますか、あ~なるほどというので全く見え方が違ってきて、面白いんじゃないかなと思いますね。町の真ん中にありますので、そういう中でもこういった場を作ると、これだけ生き物が棲めるようになるんだということがよくわかって、東京都周辺では井の頭池はおすすめポイントですね」

●では最後に、この本『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』 を通して、いちばん伝えたいことを教えてください。

「伝えたいことはたくさんあるんですけれども、そうですね・・・場を作ることですね。人間は自然を再生することができるっていうことに気付いてほしいなというところがあります。

 家にエコトーンを含む湿地帯を作ってみて、それを維持したり管理したり開発したりする、そういった経験を持った上で、今度は野外の池とか川とかを見て、その実態を見る、解像度というか見る目、それが上がっていく、そういった経験を楽しんでもらえるといいなと思います」

(編集部注:お話にあったおすすめの井の頭池は、都立井の頭恩賜公園の中にあります)


INFORMATION

『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』

『自宅で湿地帯ビオトープ! 生物多様性を守る水辺づくり』

 自宅の庭やベランダに湿地帯ビオトープを作るためのノウハウが、写真やイラストとともにわかりやすく解説。また、湿地帯ビオトープの生き物図鑑ほか、入れてはいけない外来種も写真入りで掲載されています。大和書房から絶賛発売中です。
 詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎大和書房HP:https://www.daiwashobo.co.jp/book/b618603.html

 中島さんのオフィシャルサイトもぜひ見てくださいね。

◎中島淳さんHP:http://kuromushiya.com/koushiki/top.html

<全国砂浜ムーブメント2023>

 以前番組でもご紹介しましたが、日本自然保護協会のキャンペーン「全国砂浜ムーブメント」が今年も始まりました。海や砂浜のことを楽しく学べる特製の「砂浜ノート」や専用のアプリを使って砂浜を守る3つのアクションにぜひご参加ください。砂浜にいる生き物調査や、ゴミ拾い活動を多くの人たちと共有します。
 詳しくは「日本自然保護協会」のホームページをご覧ください。

◎日本自然保護協会HP:https://www.nacsj.or.jp

<オンライン講座「身の回りのマイクロプラスチックと、私たちにできること」>

 現在、マイクロプラスチックがどのような問題を引き起こしているのか、環境ジャーナリストの「栗岡理子(くりおか・りこ)」さんが解説します。開催日時は6月29日(木)午後7時から8時10分まで。Zoomを使用、参加費は無料、定員は先着300名です。
 詳しくは「日本野鳥の会」のホームページのお知らせをチェックしてください。

◎日本野鳥の会HP:https://www.wbsj.org

<#リユースでラブアース>

 国際環境NGOグリーンピース・ジャパンのリユースを広めるSNS投稿キャンペーン。マイタンブラーやマイ容器の写真を、ハッシュタグ「#リユースでラブアース」をつけ、メッセージを添えて、インスタグラムに投稿してください。期間は6月30日まで。集まった画像はメッセージとともにカフェや企業に届けることになっています。
 詳しくはグリーンピース・ジャパンのホームページをご覧ください。

◎グリーンピース・ジャパンHP:https://www.greenpeace.org/japan/

若き古生物学者、ウンチ化石に挑む!?〜地層から読み解く化石の謎

2023/6/4 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、千葉大学准教授で古生物学者の「泉 賢太郎」さんです。

 泉さんは1987年、東京都生まれ。子供の頃から、地球や生き物に関心があり、ざっくりいうと「昔」が好きで、歴史本や図鑑、博物館に置いている石などに興味を抱く少年だったそうです。

 その後、東京大学大学院で地球惑星科学を専攻し、2015年に博士課程を修了。専門は、古生物の活動の痕跡である「生痕化石(せいこんかせき)」に記録された生き物の生態の研究など。

 泉さんは、チバニアンの研究チームで活躍するなど、その活動が注目されている若き古生物学者です。

 ちなみに古生物学とは、泉さんによると遥か昔、地球上に生息していた生き物の暮らしぶりなどを、化石や今生きている生き物の研究を通して推論する学問だそうです。

 そんな泉さんが先頃、『化石のきほん』という本を出されました。きょうはその本をもとに、ティラノサウルスのものと考えられている超巨大なウンチ化石や、チバニアン含め、地質や地層と化石の密な関係についてお話をうかがいます。

☆資料協力:『化石のきほん』泉 賢太郎 著、 菊谷 詩子 イラスト(誠文堂新光社)

資料協力:『化石のきほん』泉 賢太郎 著、 菊谷 詩子 イラスト(誠文堂新光社)

糞の化石を研究!?

※まずは、化石の基礎知識。
 化石は大きく2種類に区分されます。ひとつは、恐竜の骨や歯、アンモナイトなどの古生物そのものの痕跡で、「体の化石」と書いて「体化石(たいかせき)」。

 もうひとつは、足跡や巣穴、糞など、古生物の活動の痕跡である「生痕化石」。
1万年より古いものを化石と呼ぶことが多いそうです。

 泉さんは、化石の中でも「生痕化石」に着目されていて、中でも糞の化石、いわゆるウンチ化石を研究されています。

 もっとも化石にならないと思われる糞が、化石として残っているというお話に驚いたんですけど、この本『化石のきほん』に、ティラノサウルス類のウンチ化石と推定されるものが発見されたと書いてありました。どこで、どれくらいの大きさの化石が見つかったんですか?

「これは、数は少ないんですけど、カナダで見つかっています。大きさは、いちばん大きいやつで、長さが60センチぐらいで、幅というか太さが20センチですね」

●巨大ですよね〜。

「巨大ですよね。両手で持って、たぶん崇めるみたいな、そんなものだと思うんです。実は私も対面したことがなくて、そういう意味でも貴重な化石標本なんですけど・・・」

●でも、それがティラノサウルスのものだというのは、どうやってわかるんですか?

「そこがすごく個人的には興味持っているところです。論文もしっかり端から端まで読んでみると、だいたい3本の推論の柱みたいなのがありますね。

 イメージ的には事件現場に残されたあらゆる痕跡を頼りに、その容疑者が自分がやりましたって言わない限りは、厳密には証明できないので、同じようなジレンマを持っているんですけど、なんとか可能性の高い仮説を出したいというので、ひとつめの証拠がまずそのサイズですよ、でかい! 

 でかいだけだと、でかい動物だろうということにしか絞れないんですけど、次は中身ですね。でっかいウンチの一部を切り出して、プレパラートみたいなのを作って顕微鏡で見てみると、中に骨の断片とか(見つかると)肉食性のでかい動物だろうというところが第2段階ですね。

 第3段階が状況証拠・・・アリバイっていうんですかね。化石は、ウンチ化石でも骨の化石でも、必ず地層の中にもともとは埋まっているんですね。なので、登場人物を洗い出すっていうイメージで、その当時の同じ地層にどういう化石が見つかるか、いろいろ登場人物を洗い出すんですね。
 その中でこのふたつの特徴、大きいかつ肉食動物の化石の中で、いちばんでかいのはティラノサウルスだよねと! そんな感じで推論されています」

(編集部注:なぜ糞が化石になるのか、不思議ですよね。糞は、一般的には微生物などで分解されてしまうんですが、例えば、水中とか酸素が少ないところに落ちて、その後、なんらかの作用が働き、鉱物化してしまったのではないかということなんです。でも、実際のところはわかっていないそうですよ)

泉 賢太郎さん

化石と地層の密な関係!?

●泉さんの新しい本『化石のきほん』の最初のところに、地質年代表っていうのが掲載されていました。やはり化石と、地質や地層は非常に密な関係にあるということなんですね。

「そうなんです。おっしゃる通りです。この『化石のきほん』でひとつ重点的に意識したのが、”化石のきほん”というタイトルなんですね。
 その化石の文脈っていうんですかね・・・地層の中に埋まっているので、その化石からいろいろ読み解いていくためには、文脈ごとにやっぱり知る必要があるんです。化石と地層の関わりはすごく意識して書きました」

●化石の中にはいろんな情報が込められているんですね?

「そうなんです。ただ地層から取り出して、綺麗な化石だけの状態になってしまうと、見た目は美しくなるかもしれないんですけど、文脈が失われてしまうので、その途端に情報量が激減してしまうんですね。
 古生物の研究者は私も含めて、いろんな研究対象とかいろんな目的があるので、全員というわけじゃないんですけど、地層ごと化石の資料を取るということが多いんですね。

 そうすると、化石とまわりについている地層を同時に観察することができるんです。文字通り、本当に切っても切り離せないというか(情報が)埋まっているので、そこを化石だけ取り出すことができる場合もあるんですけれども、大半はこの本の表紙のようにまわりの地層ごと化石を取り出します。

 たとえば、アンモナイト化石が地層の岩石に埋まった状態のイラストが、表紙に載っているんですけど、これもこだわりのひとつです。ここに生物学を代表する有名化石のアンモナイトが、アンモナイトの化石単体じゃなくて、地層に泥岩に埋まっているこの状態を、やっぱり出したかったんですよね、表紙に」

●化石だけじゃなくて、地層ごと取る化石っていうことですね。

「まさにおっしゃる通りです。そこに地層をなくしちゃうと、化石から見ための情報は増えるかもしれないんですけど、どういう時代に生きていたのか、どういう環境にいたのかと、そういった背景にある文脈の情報が一気に失われてしまうんですね。
 目的次第なんですけれども、完全に化石のことを知るために、化石だけを見るっていうよりも、一般的には地層も含めて見たほうが、より広範囲にわかるかなと思います」

資料協力:『化石のきほん』泉 賢太郎 著、 菊谷 詩子 イラスト(誠文堂新光社)

「チバニアン」誕生に貢献

※3年ほど前に、地質年代にラテン語で「千葉の時代」を意味する「チバニアン」が誕生し、一大ニュースになりました。泉さんも協力されたということですが、どんなことをされたんですか?

「専門のひとつである生痕化石ですね。地層に生痕化石が何種類ぐらいいるんだろう、どんな種類がいるのかなというのを観察することで、その当時の生態系の様子を推定したりですとか・・・。生痕化石も、地層がどんな環境でできた地層なんだろうっていうのを推定するのに一役買っているんですね。

 見た目は本当に何の変哲もない川沿いの崖って感じで、調査に行ってみたら、その辺の崖って感じでしたね(笑)。その辺の崖と言っても、なかなか人によってイメージが違うかもしれないんですけどね。そんなところで、文字通り這いつくばるというか、壁にぺたっと(はりついて)生痕化石を探したんです。

 こういう種類とこういう種類がいるってことは、たとえば水深帯だったら、これぐらいでとか、こういう環境でできた地層じゃないかなと・・・そういったデータを出して、それが研究プロジェクトの中のひとつの立ち位置っていうんですかね。

 地層の成り立ちを、やっぱりその由来を知らないと、ここの地層がいいと言っても、どういう理由でいいのか、どんなことがわかっているのか、なにがわかっていないのかとか・・・。ほかと比較するとこの辺がやっぱり優れていると、一個一個証拠を出すということで、生痕化石の観察というところでは、うまくひとつデータを出せたかなと思っています」

●あの一大ニュースの裏には化石が活躍していたわけですね!

「ほかにも目に見えないぐらいちっちゃくて、顕微鏡じゃないと見えない、微笑の微に化石と書いて“微化石”って言って・・・」

●微化石!?

「それはそれで顕微鏡から広がる形も多様で、いろいろ見た目も綺麗なんですけれども、そういったちっちゃい、人知れず崖の中の泥とか砂粒の粒子と同じぐらいの大きさの、そういうのを一個一個取り出して調べて、どれぐらいの年代だったんだろうとか、あとどういう環境でできたりするのかなとか、そういうのを調べたんですね。ということで、千葉の名前が世界中に、地質学の中でもひとつ認知されたと・・・。

 たとえば有名な地質時代、ジュラ期っていうのがあると思うんですけど、『ジュラシックパーク』『ジュラシックワールド』のジュラシックが、”ジュラ期の”っていう意味なんです。あれも地名なんですよね。ジュラ山脈っていうヨーロッパの地名から来ているんですね。ジュラ期とかジュラシックが有名になりすぎて、地名に由来しているんだっていうこと自体が逆に(知られていないと・・・)。

 けっこう地名が由来となっている場合が多くて、ほかにもペンシルバニア期とか 、“ペンシルバニアン”って言いますし、意外と地名由来っていうところがあったりします」

(編集部注:泉さんによると、古生物学の研究が盛んなのは、太古の地質が残っているヨーロッパで、国でいうと、ドイツやイギリス、フランスなどだそうです。一方、恐竜の化石が多く見つかっているのは、アメリカやカナダ、中国あたりだそうですよ)

資料協力:『化石のきほん』泉 賢太郎 著、 菊谷 詩子 イラスト(誠文堂新光社)

化石は意外と日常に!?

※化石は意外と私たちの身近にあったりしますよね?

「“近すぎて見えない化石”と呼んでいるんですけど、たとえば珪藻土(けいそうど)、吸水性がいいので、よくバスマットとかに使われていますよね。あれも珪藻って植物プランクトン、目に見えないちっちゃいプランクトンがガラス質の殻を持っているんです。
 そのプランクトンの本体の、アメーバ状の部分は化石に残らないんですけど、そのまわりを覆っている殻が化石になって、たくさん集まっていると・・・化石の殻にいっぱい穴が開いているんですよね。吸水性がいいってのはスカスカなんですよね、珪藻土のマット自体。なので、水が効率的に染み込んでいくということなんです。

 本当に感動しますよね。足を乗っけてすぐ乾いている、みたいな! 緻密な岩石で、中にスカスカの空間がほとんどないやつだと、水がベチャってなったまんまっていうのがあると思うんですけど、珪藻はガラス質で穴がたくさんあるスカスカな化石がいっぱい詰まって、そのスカスカの部分がいっぱいあると水がすぐ浸透していくと、そういうことが起こります。
 あとはビルの石材とかですかね。デパートの白っぽい壁や床に大理石が使われたりとか。そういうところにアンモナイトの化石があったりすることもありますね。

 個人的には、お寺の石碑っていうんですかね。黒っぽい文字が刻まれたりしているんですけど、そこにむしろ生痕化石を見ちゃうと。文字は読めないけど、なんて書いてあるかわかんないけど、生痕化石はあるな! みたいな、そういう体験もします」

●素人の私たちが、なにか見つけるコツがあったりしますか?

「あると思います。一応こういうやつがいるかも知れないよみたいな、いくつかの鑑定ポイントみたいなのはありますね。ただ日常生活だとやらないぐらい(石碑に)近づかないと・・・。触れられないところでも見ることはできると思うので・・・生痕化石のひとつのいいところって、見て楽しめるっていうんですかね。採取禁止みたいなところでも、あ〜こういう生痕化石があったと・・・そこから僕も話が盛り上がっていきますよね」

(編集部注:お寺の石碑などに生痕化石が見つかることもあるということでしたが、見つけるコツはまわりと違う模様や構造を探すことだそうですよ。じっくり根気よく見るしかないですね。ちなみに泉さん自身は、化石探しはうまくないとおっしゃっていました)

泉 賢太郎さん

ワクワクする気持ちを大事に

※最後に、古生物学を勉強したいと思っている子供たちや、学生さんに向けて伝えたいことがあれば、ぜひお願いします。

「これはですね、いちばんここが本でもこだわったところで、ページ数としてはあまり割いていないんですけど、ぜひ興味を持ち続けて、それで目の前の勉強に一生懸命取り組んでくれればいいかなと思っています。

 というのも私自身も・・・ほとんど過去の自分に向けて言っているような感じになっていますけど、いわゆる同じぐらいの世代で、めちゃめちゃ詳しくて経験もあって、化石のこともよく知っていて発掘もしていてっていう人がいると、どうしても、比べたくなくても比べちゃって、こんな自分でもやっていけるのかなって思うかもしれない。

 研究はまた別の枠組みだなとすごく感じています。そこは過去の経験の差が生きることもあるかもしれないですけど、思っているほど関係ないのかなと・・・ちゃんと目の前の勉強を一生懸命するとか、目の前のことに取り組む。

 あと何よりも、古生物学の研究をやってみたいな、そういう研究者になってみたいなと思っているのであれば、その気持ちを持ち続けて欲しい。研究をやり始める前にやっぱり自分には無理だっていう子がすごく、もしかしたらいっぱいいるのかもしれない。それってすごくもったいないなと思うんですよね。

 経験がなくても好きだ、興味があるっていう気持ち自体が、ひとつ素晴らしいことかなと思います。化石発掘とかよく知らないからダメなんだじゃなくて、なんかよくわかんないけど、ワクワクするっていう気持ちがあったら、それは大事にしてほしいなって思いますね。
 ただそれだけでやっていけるわけでもないので、やっぱりちゃんとした学校の勉強とか、そこは本当に礎かなと思うのでしっかりと、まあ世代にもよるんですけど、勉強を頑張るといいかなと思います」


INFORMATION

『化石のきほん~最古の生命はいつ生まれた? 古生物はなぜ絶滅した? 進化を読み解く化石の話』

『化石のきほん~最古の生命はいつ生まれた? 古生物はなぜ絶滅した? 進化を読み解く化石の話』

 チャプター1の「ようこそ、化石の世界」からチャプター5の「めざせ、古生物学者」まで5つの章に分かれていて、全部で60項目ありますが、見開き2ページで完結しているので興味のあるところから読めますよ。イラストも豊富で楽しめます。化石の入門書的な一冊、ぜひチェックしてくださいね。
 誠文堂新光社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎誠文堂新光社HP:https://www.seibundo-shinkosha.net/book/science/78757/

 泉さんのオフィシャルサイトもぜひ見てください。

◎泉 賢太郎さんHP:https://www.cn.chiba-u.jp/researcher/izumi_kentaro/

家庭菜園は、自然と遊べるエンターテインメント!〜超初心者向け、野菜作り入門

2023/5/28 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、漫画家でイラストレーターの「荻野千佳(おぎの・ちか)」さんです。

 荻野さんは富山県出身、現在は東京の郊外にお住まいです。2016年から家庭菜園を始め、すっかりハマってしまい、ついには、日本家庭園芸普及協会認定のグリーンアドバイザーの資格を取得されています。

 そして先頃、『野菜づくり、はじめます!〜マンガと図解でわかる! 一番やさしい家庭菜園の本』を出されました。

 きょうはそんな荻野さんに、超初心者に向けて、おもにベランダ菜園で必要な道具、失敗しないコツ、そして、すぐ収穫できるおすすめの野菜のお話などうかがいます。

☆写真&イラストレーション:荻野千佳

荻野千佳さん

短期間で収穫できる野菜がおすすめ!

●荻野さんが先頃出された本を拝見いたしました。

「ありがとうございます!」

●可愛いイラストでわかりやすく、野菜の育て方が描かれていて、これなら私も始められるかもと思いました。読んでいて、すごくワクワクしました。

「ありがとうございます! 嬉しいです」

『野菜づくり、はじめます!〜マンガと図解でわかる! 一番やさしい家庭菜園の本』

●私は家庭菜園には興味はあるんですけど、実際に育てたことがあるのはミニトマトとか、あとは豆苗で再生栽培するぐらいで、本当に全くの初心者なんです。やはり野菜作りと聞くと作業が大変で、なんか難しいイメージがあるように思うんですけど、実際はいかがでしょうか?

「なんか大変そうっていうお気持ち、すごくわかります。外で一生懸命やるのかなって思われるかと思うんですけど、基本、誰でも簡単にできる、自然と遊べるエンターテイメントだと私は思っているんですね。

 私の場合ですと2016年から自宅の狭い庭で、夏野菜を育て始めたのがいちばん最初なんですけれども、素人ながら今年で8年目になるんですね。今は自宅の庭でプランター栽培をやっていまして、あとは農業体験農園っていう貸し農園のグループに参加して、そこで家庭菜園をやっています。

 経験上なんですけど、育てるのが難しい、失敗したって、なってしまう理由として、収穫までの時間が長くかかる野菜を選んでしまっているんじゃないかなと思うんですね。収穫まで時間がかかると、いろんな虫に食べられちゃったりとか、急に台風が来たりとかして・・・。

 例えばスイカは、タネから始めて収穫までに4ヶ月かかってしまうんです。その間に収穫直前に大雨が降って(スイカが)割れちゃったとか、そういうことがあるかもしれないなと・・・。なので、最初のうちは収穫までの時間が短い野菜を選ぶと、作業も簡単で心配いらずで、収穫までを楽しむことができるかなと思います」

写真:荻野千佳

道具はジョウロ、ハサミ、スコップ

※私はマンション住まいなんですけど、まず何から始めたらいいですか?

「ちなみに何の野菜を育てたいとかって、ご希望はあります? 例えば、できれば気軽に始めてみたいなっていう感じもあるかと思うんですけど・・・」

●それが最優先です!(笑)

「そうですよね! 先ほど小尾さんが、豆苗の再生栽培をなさったことがあるっておっしゃっていたんですけど、実はタネからも(栽培は)できるんです。
 たぶん再生栽培ってことは、買ってきたものをチョキンと切って、料理で使って、もう1回伸ばしたっていう形だと思うんですけど、豆苗はタネから発芽させて、いちばん最初の、売っている状態まで育てられるんです。

 それが私の中でいちばん簡単な家庭菜園かなと思っております。これだと100円ショップに水切りかごっていう、ちっちゃな二重に重なった、お皿なんかを入れて乾燥させるような、上部が網で下がかごになっているのがあるんですけど、それがあれば(豆苗の栽培は)できますね」

写真:荻野千佳

●道具は、ほかに何か必要なものはありますか?

「サラダに使いやすいような葉物、ベビーリーフなんかをもし気軽にやりたいなっていう場合ですと、3つの道具だけで始められるんですね。それはジョウロ、ハサミ、スコップ、この3つだけが、まずは道具としてはあれば十分です」

●土はどんなタイプのものを用意したらいいのでしょうか?

「土は、ホームセンターなんかでいっぱい並んでいると思うんです」

●いっぱいありますよねー。

「私も最初はどれがいいのか、わからなかったですね。腐葉土とか赤玉土とか鹿沼土とか、もっと細分作化された、なになに用の土とかって売っていると思うんですけども、プランターに使う土であれば、袋に培養土と書いてあるものがあれば、それには土の中に最初から肥料が含まれているのでベストだと思います。袋に野菜用の培養土と書いてあるものであれば、全然問題ないですね。

 また、培養土の重さに配慮した、軽い培養土もあるんですね。これは運ぶのは楽ちんですごく便利なんです。私も最初はそれをよく使っていたんですが、経験上、便利は便利なんですけれども、背が高くなる野菜、例えばミニトマトなんかを植える時に、プランターに軽い培養土を入れてしまうと、(プランターの)移動は楽なんですけれども、土台が不安定になってしまって、風で倒れちゃうっていうようなこともあったので、軽い土をお使いになる時はご自分の環境によって、プランターが倒れないように、ちょっと縛るなり、何か工夫をなさったらいいかなと思います」

写真:荻野千佳

おすすめはニラ!

※荻野さんおすすめの野菜はありますか?

「めちゃめちゃおすすめは、ニラなんです(笑)」

●ニラ! へぇ〜!

「これも繰り返し収穫できるんですね。収穫のやり方として、発芽して成長して収穫する時に、地ぎわから3センチぐらい残して、ちょきんと切って収穫します。そして「お礼肥(おれいごえ)」って言うんですけど、ある程度肥料を足したあとに、新しい芽が出てくるんです。それがまたもとの高さぐらいになって、また収穫するっていう、そういうのを3年ぐらいは繰り返せるんですよ。

 冬場はさすがにちょっと緑はないんですけれども、私は庭のプランターでいつもニラを育てているんですね。手軽にちょっと庭に出てチョキンと切ってスープに使うっていう感じです。切ったあとにニラ特有の匂いがして、なんか気分が良くなるというか、やってるわ〜みたいな感じで楽しいですね」

(編集部注:いつ植えるのがいいのか、初心者にはわからないことのひとつだと思いますが、野菜全般について言えるのは、春か秋に植えることが多いそうですよ)

イラストレーション:荻野千佳

水やりのコツを伝授

※水やりも初心者には難しいと、よく聞きますよね。基本的に地植えは、土が乾いていなければ、水やりの必要はなし。一方、プランターは水やりが大事になってくるそうです。何かコツのようなものはありますか?

「ポイントとしてジョウロで水やりをする場合は、ジョウロの先についている穴があると思うんですけれども、あれは取り外しできるんです。あの部分を『ハスクチ』って言うんですね。あれを下のほうに水が出るように180度逆にして付けて、葉の上からジャバジャバではなくて、植わっている土の辺りにかけるようなイメージで、水やりなさるといいかなと思います」

●なるほど。葉っぱ自体にはかけちゃいけないっていうことですか?

「そうですね。葉っぱにかけちゃうと泥はねとか、土の中にいる雑菌が野菜の葉っぱに付着しちゃって、病気の原因になるっていうことがありますので、上からじゃなく株もとにたっぷりやるのがコツとなりますね」

●わかりました。水やりは朝とか夕方とか決めておいたほうがいいんですか?

「タイミングと季節にもよるんですけれども、例えば春先にタネまきをして、その時、水やりをするとなると、まだ気温が低いので、午前中のちょっとポカポカした時に、水道水をそのままじゃっと出しちゃうと、水の温度も低いので、できればちょっと(水を)汲み置きして常温になっている水をあげるといいですね。

 野菜のタネって発芽温度っていうのがあるんです。だいたい25度前後なんですが、そこに冷たい水をかけちゃうと発芽率に関わってしまうので、できれば常温のお水をあげたほうがいいかなと思いますね。

 で、逆に6月以降の真夏のようなカンカン照りの時は、朝か夕方が最適ですね。
 朝と夕方、1日2回の水やりは、仕事が忙しくてできないっていう方で、1日1回ならなんとかっていう方には、夕方をおすすめします。
 というのも夕方ですとそのまま夜になりますので、水持ちしている時間が長いわけなんですね。朝(水を)やっちゃうとそのまま、がっと温度が上がって、すぐなくなっちゃうので、夜の間ですと、ゆっくりゆっくりなくなっていくようなイメージなので、夜がおすすめです。

 最後にこれ重要なんですけど、真夏のプランターの水やりは、真昼には絶対していただきたくないことなんですよ。真夏のお昼にプランターに(水を)やりますと、あっという間にプランターの中でお湯になってしまって、野菜が傷んでしまうんですね。なので、絶対に夜か夕方あたりにしていただけたらいいかなと思います」

(編集部注:真夏にプランターへの水やりは要注意というお話でしたが、直射日光が当たるようなベランダは、熱を和らげるためにウッドパネルや人工芝、よしずなどを設置して環境を整えてあげてくださいともおっしゃっていましたよ。

写真:荻野千佳

 また、肥料についてなんですが、最初に肥料を与える「元肥(もとごえ)」と、あとで追加する「追肥(ついひ)」というのがあるそうです。ちなみに、培養土には最初から有機物が入っているので、元肥の必要はないとのことでした)

自然からの贈り物

※野菜作りを始めて、8年ほどということなんですけど、荻野さんは、野菜と向き合っている時に、どんなことを感じますか?

「やはり自然からの贈り物としての野菜は、ありがたいなっていうことにつきますね。やっぱり人間ですから、食べないと生きていけないので、感謝しながら収穫しているっていうところですね。

 あと野菜は成長がすごく早いので、成長している姿に気づいた時・・・数日前は背が低かったのに、あれっ! こんなに伸びているってなった時に、ちょっと恥ずかしいんですけれども、”うわっ! 君は頑張っているね、ありがとう!“みたいなことを、本当に声に出して話しかけてしまうことも、ほかの方がいらっしゃらない時になんですけれども(笑)ありますね」

●もう我が子のような感じですよね〜。

「確かにそんな感じですね〜」

●これから収穫を迎える野菜っていうと、どんな野菜になるんですか?

「まさに今楽しくてしょうがない、収穫期を迎えたなって感じなんですけど、やっぱり夏野菜ですね。代表的なのはトマト、ナス、キュウリといったもので、みなさんも(家庭菜園を)やっていらっしゃる方はもうワクワクが止まらないと思うんですけれども・・・。
 あとは春にタネをまいて収穫が終わったような、春菊のような葉物はもう終わっちゃった頃なので、少し空いている土地があれば、9月までに収穫まで終われるような、新しい野菜を育ててもいいかなと思います」

写真:荻野千佳

家庭菜園は体力がつく!?

※ご自分で野菜を作るようになって、食に対する意識が変わったりしましたか?

「例えばスーパーマーケットで売られている野菜を見て、自分も育てているので、この野菜はアタリかハズレかっていうのが判断できるようになりましたね。

 例えば大根なんですけど、食べる白いところをよく見ると、ちっちゃいくぼみの穴みたいなものが、てんてんてんと並んでいると思うんですよ。あれが両サイドに2列並んでいるはずなんですね。
 その並び方がまっすぐであればあるほど、中の組織も揃っているって目安です。成長の段階で問題なくすくすく育った証なので、そのてんてんのくぼみがまっすぐ並んでいるものを選んでいただけたらと思います」

●覚えておきます(笑)。野菜作りの生活を続けていて、ご自身の中で心身の変化とかもありましたか?

「やっぱり自分で育てて収穫する分、野菜をめちゃくちゃ食べるようになりましたね。旬の野菜をその時期にたくさん収穫することができるので、育て方の勉強に加えて調理法も畑の仲間に聞いたりとかして詳しくなりましたね。

 あと圧倒的に体力がつきましたね。私の場合、畑にいると土を踏んで作業するので、自然に体幹が鍛えられるといいますか・・・。あと自動車を持っていなくて自転車で行きますので、収穫期には行ったり来たりしながら運ぶっていう、まあ楽しい作業の中で自然に体力がつくようなこともあるかなと思います」

荻野千佳さん

●そうなんですね。これから家庭菜園で野菜作り始めてみようと思っている方に、ぜひアドバイスをお願いします。

「自分で育てた野菜を収穫して食べる楽しみはもちろんなんですけれども、野菜を見ていて癒されるとか、仲間や家族で楽しむとか、育てるだけじゃない、いろんな楽しみ方があると思うんですね。遠出しなくてもできる、日常に寄り添ったアクティヴィティなんじゃないかと思っています。

 収穫したてのトウモロコシとか枝豆は、お子さんも好きだと思うんです。甘みが強くて非常に美味しいので、遊びながら食べるっていうような身近な楽しみ方のひとつかなと思うので、簡単ですのでぜひ始めてみていただけたらいいかなと思います」


INFORMATION

『野菜づくり、はじめます!〜マンガと図解でわかる! 一番やさしい家庭菜園の本』

『野菜づくり、はじめます!〜マンガと図解でわかる! 一番やさしい家庭菜園の本』

 野菜作りを始める前の荻野さんに、8年後の荻野さんが野菜作りのアドバイスをするというストーリー仕立てになっています。全編マンガなので、絵を見てすぐ理解できます。また、図解による野菜の育て方や、野菜のミニ知識も掲載。超初心者に向けた野菜づくりの入門書です。ぜひお買い求めください。
SBクリエイティブから絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎SBクリエイティブ:https://www.sbcr.jp/product/4815618438/

 荻野さんのオフィシャルサイトもぜひ見てくださいね。体験農園や、日々の野菜作りのレポートも載っていますよ。

◎荻野千佳さんのサイト:https://ogichika.com

デュエットするテナガザル、女性飼育員に恋するゴリラ、焚火にあたるニホンザル 〜霊長類専門の動物園「日本モンキーセンター」の愛すべきサルたち

2023/5/21 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、愛知県犬山市にある「日本モンキーセンター」の学芸員「綿貫宏史朗(わたぬき・こうしろう)」さんです。

 「日本モンキーセンター」は、公益財団法人が運営する霊長類専門の動物園で、先月末の時点で56種、およそ750頭のサルのなかまを飼育・展示していて、サルのなかまに特化した動物園としては世界最多を誇ります。

 そんな「日本モンキーセンター」の飼育員さんたちがイラストや解説文を手掛けた本『飼育員がつくったサルの図鑑〜かならず会いたくなっちゃう56のなかまたち』を出されたということで、きょうは解説文を担当された綿貫さんに、オスとメスでデュエットするテナガザルや、女性飼育員に恋するゴリラなど、飼育員さんだからこそ知っている、サルたちの興味深いお話をうかがいます。

☆写真&イラスト協力:公益財団法人「日本モンキーセンター」

『飼育員がつくったサルの図鑑〜かならず会いたくなっちゃう56のなかまたち』

サルたちを通して、地球と人を研究

※愛知県犬山市には、日本の霊長類学の研究をリードしてきた、現在は名称が変わっていますが、京都大学の霊長類研究所があります。そのお隣にある「日本モンキーセンター」は、実は霊長類研究所よりも早く、60数年前に開設され、飼育員のほかに調査・研究する学芸員がいる、日本の動物園としては珍しい施設です。

 そんな学芸員のひとり、綿貫さんは、1986年生まれ。ご本人曰く、熊本の山奥で育ち、子供の頃から動物好き。そして漫画「動物のお医者さん」に影響を受け、東京農工大学に進学、その後、獣医師の資格を取得。

 現在は「日本モンキーセンター」のほか、京都大学の研究員として「大型類人猿情報ネットワーク」プロジェクトに携わり、日本国内で飼育されているゴリラやチンパンジーなど、貴重な研究対象の情報を集める活動もされています。

 ちなみに綿貫さんは、日本の動物園水族館協会に加盟するおよそ90の動物園を数年前に制覇、海外の動物園にも出かけるほどの動物園マニアで、ご自分で「動物園学研究家」を名乗っていらっしゃいます。

綿貫宏史朗さん

●世界的にも珍しい霊長類専門の動物園「日本モンキーセンター」が目指していることって、どんなことですか?

「やはりサルのなかま、霊長類は、私たち自身もその一員であるということで、私たちにいちばん近い存在の動物たちなわけですよね。

 私たちにいちばん近い、いわゆる隣人というか、そういう動物たちを通して、地球環境ですとか、人がどういうふうに誕生して、どういうふうにこの地球上で生きているのか、そんなことをみなさんに知っていただくために研究をしていく、そういうような場所としてやっていきたいと、そんなことを目指しています」

愛のデュエットをするテナガザル

※先頃発売された『飼育員がつくったサルの図鑑〜かならず会いたくなっちゃう56のなかまたち』は、「日本モンキーセンター」の現役の飼育員さんがイラストを描き、綿貫さんが飼育員さんたちから集めた、とっておきのネタやサルの雑学を原稿化した本なんです。

写真&イラスト協力:公益財団法人「日本モンキーセンター」

 その中からいくつか気になったことをお聞きしていきたいと思います。シロテテナガザルは歌を歌うと書いてありますが、ほんとなんですか?

「はい、シロテテナガザルはテナガザルのなかま、私たち人に比較的近い類人猿と呼ばれる手の長いサルなんですけど、その手の甲の部分がどんな個体も真っ白なんですね。それでシロテテナガザル、白い手のテナガザルってそういう意味なんですけれど、歌を歌うんです。
 テナガザルのなかまはシロテテナガザルに限らず、歌を歌うんですね。オスとメスがペアになってデュエットで」

●へぇ〜〜!

「実はサルのなかまでもテナガザルはちょっと珍しくて、あまり大きな群れとか作らないんですね。オスとメスとその子供たちっていう、人間でいうところの核家族みたいな、そういう単位で暮らしているサルのなかまなんです。

写真&イラスト協力:公益財団法人「日本モンキーセンター」

 で、いわゆる夫婦、オスとメスのペアの絆を確認するためだとか、あるいは単位が非常に小さいので、ご近所関係はあまりよくないんですね。隣の家族にここは私たちがいるところだから、あまりこっち来ないでねって、アピールしているっていうふうにも言われているんです。
 そういうことで非常に大きな声で歌を歌って、オスとメスがそれぞれ違うパートを歌って、重ね合わせてデュエットするという、そういう特徴があるんですよね」

●大声ということは、かなり迫力がありそうですよね。

「はい、テナガザルの中でもいちばん大きなのがフクロテナガザルといって、全身は真っ黒なんですけれど、喉の下に自分の顔と同じぐらいの大きさの喉袋があって、そこを膨らませて声を共鳴させて大きい音を出す。それがサルのなかまでいちばん大きな声を出すと言われているんですね。だいたい4キロぐらい遠くまで聴こえると言われています。

 なので、日本モンキーセンターでもフクロテナガザルが、ちょうどこの収録の直前まで鳴いていたので、収録に影響が出ないかなって心配していたんです(笑)。犬山駅がちょっと離れたところにあるんですけど、その駅前でもたまに風向きによって、声が聴こえたりすることもある、すごく大きな声ですね」

●そうなんですね! 近くで聴いたら本当にものすごく大きな声なんでしょうね。

「そうなんです。園内でガイドしている時に、ちょうどそのデュエットが始まったりすると、私たちのガイドの声が来園者の人たちに聴こえないこともあったりします。そういう時は歌が止むのを待ってから、”これがお聴きいただきました通り、テナガザルの歌です”なんて、そんな話をしますよ」

女性飼育員に恋するゴリラ

●ほかに顔の色が派手なマンドリルというサルがいるんですよね。鼻筋が赤くて、その両脇が水色でとっても綺麗ですけれども、これは生まれた時から派手なんですか?

写真&イラスト協力:公益財団法人「日本モンキーセンター」

「実は、生まれた直後の赤ちゃんの顔は真っ白なんですね。成長と共にだんだん色がついていって、初めは真っ黒い感じの顔になって、それから成長とともに鼻筋がうっすら赤くなり、顔のこぶのところが青くなる感じです。

 大人のオスですと顔が非常によく目立つんですけれど、金色のヒゲが生えたりとか、あとお尻がピンクから紫にかけた、なんとも言えない絶妙なグラデーションの色になったりとか、非常にカラフルで目立つ 動物ですね」

●顔だけじゃなくてヒゲもお尻も派手なんですね。あと、ニシゴリラのタロウくんには、お気に入りの女性飼育員がいるということで、男性飼育員が一緒にいると怒るっていうふうに本に書いてありましたけど、本当なんですか?

「そうですね。やはりなんか嫉妬みたいなものがあるようなんですね。実はうちのタロウさん、先日4月20日にちょうど50歳になったところで、日本国内のオスのゴリラとしては最高齢なんですよ。

写真&イラスト協力:公益財団法人「日本モンキーセンター」

 非常に長寿のゴリラなんですけれど、実はドイツの動物園で生まれていて、16歳の時に日本に来ているんですね。
 お母さんが育てられなかったということで、50年も前のことなので確かな記録もないんですけれど、女性の飼育員の方が子供のタロウさんを育てたという逸話が口頭で残っています。それで女性の飼育員に特に愛着を持っているというふうに語り継がれています」

●そうなんですね〜。ちゃんとそういうふうに認識しているんですね。

「お気に入りの女性飼育員を取っていきそうな人が近くにいるのは、やっぱりちょっと不安になったりするのかもしれないですね」

焚火にあたるニホンザル

※「日本モンキーセンター」では屋久島に生息するニホンザル「ヤクシマザル」を130頭ほど飼育しているそうですが、その群れが、冬になると焚き火にあたるって、ほんとなんでしょうか?

写真&イラスト協力:公益財団法人「日本モンキーセンター」

「日本モンキーセンターの冬の風物詩ということで、『焚き火にあたるサル』っていうのを毎年開催しているんです。実は屋久島のニホンザル、ヤクシマザルなんですけれど、今飼育している個体はすべて、犬山市生まれなんですね。屋久島から来た世代から数えると、だいたい8世代ぐらいの子孫たちっていうことになるんです。

 かなり歴史を遡るんですが、大昔この辺に伊勢湾台風という大きな台風が来た時に、近くを流れている木曽川に大量の木材とかが流れ着いたりしたそうです。

 当時ヤクシマザルたちは、ここモンキーセンターの、今ある場所ではなくて、木曽川沿いにあった『野猿公苑』っていうところで飼育をしていたんですね。そこで台風の時の木材を焚き火として燃やしていたら、そこにサルたちがいつの間にか集まってきて、暖を取るようになってきたと・・・。

 火は、焚き火は、本来だったら動物は怖がるはずですけれども、怖いよりも多分暖かくて、いいものだっていう認識になったんでしょうね。それがいわゆる群れの文化っていう形で、親から子に焚き火はいいものなんだよ、みたいな・・・教えはしないですけど、そういうものが個体から個体にどんどん学習して伝わっていったと言われています」

5つの環境エンリッチメント

※「日本モンキーセンター」では飼育方法の工夫のひとつとして、「環境エンリッチメント」という手法を取り入れているそうですね。どんなことなのか、教えていただけますか。

「環境エンリッチメントっていうのは、平たくいうと飼育している動物たちの暮らしを豊かにして、できるだけ幸せになってもらいたい。そのために飼育担当者が行なう、あの手この手の工夫のことを環境エンリッチメントと言っています。

 環境を改変することで、間接的にその動物たちの行動が変わって、それで暮らしが豊かになるという、動物の行動に直接影響させるんではなくて、環境を変えようという、そういうのを環境エンリッチメントと呼んでいます」

●具体的にはどんなことがあるんですか?

「これは本当にいろんな種類があるんですけれども、私たちの動物園では分類をしていて、5つの種類があります。
 ひとつは採食と言って食べ物に関するものですね。どんな動物も基本的に食べ物に非常にモチベーションが湧きますから、例えば1日1回決まった量だけをどさっと与えるのと、何回かに分けて、しかもそれを頑張って探してっていうのでは、食べ物にかける時間が全然違ってきますよね。

 野生だとやっぱり動物は、食べ物を探すために森の中をウロウロするとか、いろんな行動をしているわけなんですけど、動物園だとどうしても上げ膳据え膳になってしまうのを、できるだけそうしないように、野生と同じように食べ物を探す行動をやってもらいたいということで、取り組んだりするんです。そういうのも『採食エンリッチメント』って言っていますね。

 ほかにも飼育している場所、それ自体をいろいろ改変する『空間エンリッチメント』ですとか・・・それから動物たちにはいろんな社会性があります。ひとりで暮らしたり群れで暮らしたり、テナガザルみたいにペアで暮らしたり・・・そういう動物にはその動物それぞれに適した社会的な刺激、ほかの動物と一緒に飼育する、同じ種類だったり別の種類だったり・・・そういう動物との社会的な刺激を作ってあげるという『社会エンリッチメント』ですね 。

 それから感覚、視覚とか聴覚とか嗅覚とか、そういうものを刺激するような機会を与える『感覚エンリッチメント』ですとか。あるいは認知。動物もやっぱり大かれ少なかれ、みんな自分で考えて行動しているわけです。その知能を使うような機会を発揮する『認知エンリッチメント』と、今ご紹介したような5つの種類に分けて実施することが多いですね。

 環境エンリッチメントは、日本の動物園の中ではメジャーな手法になっています。たいていどこの動物園でも飼育動物に対してはやっているという、そういう状況になっていますね」

●さまざまな工夫が施されているんですね。

「例えば、動物園に行ったりした時に、動物を展示しているエリアの中になんか見慣れない人工物みたいなものが入っているぞ、なんていう時は、実はよく観察しているとそれがエンリッチメントのための道具だったりすることがあります。

 動物がそれを使って、いろんな行動が引き出されて、いろんな行動を見せてくれたりするかもしれませんので、動物園に行った時にはただ漫然と動物を眺めるだけじゃなくて、そういう飼育上の工夫がどこかしらに隠されているんじゃないかなと思って見ていただけると、動物園の見方がより面白くなるんじゃないかなと思いますね」

写真&イラスト協力:公益財団法人「日本モンキーセンター」

(編集部注:飼育員さんたちの大事な仕事のひとつとして、サルたちの健康管理があるそうです。そのためには個体識別が重要で、一頭一頭、顔と名前を照らし合わせて、動きや餌の食べ具合などをチェックしているそうです。サルたちへの愛情がないと続かない仕事ですね)

便利な暮らしの裏側に

※気候変動や生息環境の減少などが野生動物にいろいろな影響を与えていると言われています。綿貫さんがいちばん気になっていることはなんですか?

「やはり人間の活動がサルたちが暮らす環境を脅かしているということで、サルは基本的に暖かい地方に棲んでいる動物なんですけれども、熱帯雨林とかっていう環境が今どんどん壊されているわけですね。
 そういう熱帯の森は、例えば先進国である私たちの普段の暮らしの中で使う、家を建てる木材だとか事務所で使うコピー用紙だとか、そういうものを作るために熱帯雨林の木々が伐採されていると・・・。

 伐採した後、裸になった地面にもう1回、森を育てるのではなくて、我々が普段の食生活の中で意識せずに口にしている植物性油脂、それを採るためのヤシ油のヤシの木を育てるプランテーションになっているんですね。
 私たちの見えないところで、サルたちの暮らしがどんどん脅かされているっていう現状があるわけですね。

 と言っても、今すぐにこの暮らしを全部変えるのは非常に難しいですけれども、どこか意識の片隅で、我々のこの便利な暮らしの裏側に、そういうことが起きているって意識して、日々できるところから、ちょっとずつ行動を変えていくことが重要になってくるのかなと思うんですね。
 そういう我々の活動が野生で暮らしているサルたちの環境を脅かしているのが、気になっているところですね」

●「日本モンキーセンター」のサルたちに会いに行こうと思っている方々に、綿貫さんからここを見てほしいっていうポイントがあれば、ぜひ教えてください。

写真&イラスト協力:公益財団法人「日本モンキーセンター」

「当園、非常にたくさんの種類のサルたちを飼っていて、みんなそれぞれちょっとずつ違うんですね。その違いをよく観察して、体の違い、行動の違いを見て、楽しんでいただきたいですし、できるだけサルたちが幸せに暮らせるようにと、私たちは常に配慮して飼育に取り組んでいますので、動物たちが快適に暮らしている様子を楽しんでいただきたいなと思います。

 そういう様子を含めて、サルたちと同じ時間を過ごしていただいて、彼らが野生で暮らしている環境に思いを馳せていただきたいと、そういうふうなことを願っています」

写真&イラスト協力:公益財団法人「日本モンキーセンター」

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『飼育員がつくったサルの図鑑〜かならず会いたくなっちゃう56のなかまたち』

『飼育員がつくったサルの図鑑〜かならず会いたくなっちゃう56のなかまたち』

 「日本モンキーセンター」の現役の飼育さんたちが作った本です。サルたちの特徴をよくとらえたイラストが素晴らしいです。飼育員さんだからこそ知っているサルの裏話や、綿貫さんによるサルの雑学は面白いですよ。ぜひお子さんと一緒に見ていただければと思います。
 くもん出版から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎くもん出版:https://shop.kumonshuppan.com/view/item/000000003396

 公益財団法人「日本モンキーセンター」のオフィシャルサイトもぜひ見てください。

◎日本モンキーセンター:https://www.j-monkey.jp

宇宙旅行の時代がやってきた!〜宇宙日帰りプラン!? 宇宙ホテルに宿泊!? 月面史跡巡りツアー!?

2023/5/14 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、宇宙開発や宇宙旅行に詳しいフリーエディターの「鈴木喜生(すずき・よしお)」さんです。

 出版社の編集長から、現在はフリーのライター、そしてエディターとして活躍する鈴木さんは、生まれた年の1968年にアポロ8号が史上初めて月の周りをまわり、翌年にはアポロ11号が月面に着陸する偉業を達成。また、小学生の頃に映画「スターウォーズ」や「エイリアン」、「宇宙戦艦やまと」や「銀河鉄道999」などに影響を受けて、宇宙や宇宙船に憧れる少年時代を過ごしていたそうです。

 そして現在は、宇宙に関連する本をたくさん出していらっしゃいますが、宇宙開発の情報を常にストックしておくために、アメリカのNASAや、日本のJAXA、そしてヨーロッパの宇宙機関ESA、さらには、民間の宇宙開発企業が発表するプレスリリースを日々、入念にチェックされているそうです。

 そんな鈴木さんが先頃出された『宇宙の歩き方〜太陽系TRAVEL BOOK』は、これまで人類が宇宙に放った無人探査機などから得られた貴重なデータをベースに書いてあるので、半分はフィクションでも、まったくあり得ない話ではないそうですよ。

 きょうは近未来の宇宙の旅ということで、宇宙旅行日帰りプランや宇宙ホテル滞在プラン、そして月面史跡めぐりツアーのお話などうかがいます。

『宇宙の歩き方〜太陽系TRAVEL BOOK』

無重力体験、ひとり45万ドル!

※本のチャプター1で「宇宙パッケージツアー」として「お手軽日帰りプラン」が3つ紹介されています。そのうち、2つは既に実施されているんですよね?

「この第1章だけは、いわゆるほんまもんと言いますか、ガチの宇宙旅行ガイドなんですね。以前、前澤(友作)さんが宇宙に旅行したじゃないですか。あれが2021年なんですけども、あの頃まではロシアのソユーズっていう宇宙船を使っていたんですよ。

 過去にだいたい延べ12人ぐらいが自己資金でISS国際宇宙ステーションに個人旅行しているんですけども、ご存知の通りロシアがウクライナに侵攻したことで、そのサービスが今止まっちゃっていると・・・。
 では、今どうしても宇宙に行きたい人はどうすればいいかというと、今言われたそのふたつのサービスがあって、ひとつは有名なリチャード・ブランソン氏が立ち上げたヴァージン・ギャラクティック社、ここの『スペースシップ2』という宇宙船があります。

 もうひとつは、みなさんご存知のアマゾンを立ち上げたジェフ・ベゾス氏、彼が立ち上げたブルーオリジン社の『ニューシェパード』というこのふたつが、今お金を出せば、宇宙に行けるツールであるということになっています」

●それぞれどんなツアーなんですか?

「地球のまわりをくるくる周回する、いわゆる地球周回軌道に乗るわけではなくて、例えばボールを空に投げると、そのまま放物線を描いて落ちてきますけども、それと同じ飛び方をするんですね。
 つまりはその宇宙船がいちばん高いところに行ったところが宇宙であると・・・。いちばん高いところで宇宙に到達するんですけど、だいたい4〜5分の間、無重力が体験できるという、弾道飛行って言うんですけども、そういう飛び方をします」

●体験してみたいです!

「非常に時間は短いんですけども、ヴァージン・ギャラクティック社の『スペースシップ2』が、ホームページ にちゃんとお値段が出ていて、(ひとり)45万ドル、1ドル130円で換算するとだいたい5800万〜5900万円ぐらいです。今都内のマンションの平均価格が6000万ちょっと超えているぐらいなんで、マンション1室を買うのは諦めれば、5分間の無重力体験ができるというそんな感じですよね」

写真協力:鈴木喜生
写真協力:鈴木喜生

巨大なバルーンで宇宙旅行!?

※本では「お手軽日帰りプラン」の3つめに、巨大なバルーンに乗って高度30キロから地球を見るツアーが紹介されていて、驚いたんですけど、こんなツアーがあるんですね?

「これ僕、いちばんおすすめです」

●巨大バルーンで・・・!?

「これ実は、高度30キロなんで宇宙には到達しない、つまりは成層圏を漂うんです。一般的に宇宙っていうと、だいたい高度100キロぐらいから上が宇宙とされているんですね。ただ30キロまで上がると、もう上を見ても空が青くなくて真っ暗なんですよ。星が見えるんですよ。で、その下を見れば、例えばISS国際宇宙ステーションから見た時みたいに地球が見えるっていう、その眺めが体験できます。

 もうひとつは、さっきお伝えした宇宙船は打ち上がる時と、降りてくる時にすごくGがかかるんですよ。重力がだいたいいちばん高いと6Gぐらい。つまり寝そべってその上に自分が6人乗るぐらいの重力がかかるんですけど、このバルーンの場合は1Gのまんま。つまりなんの負荷もかからないで2時間かけてゆっくり上がって、高度30キロのところに2時間留まって、また2時間かけて降りてくるんですよ。で、この機内に入るとまずバーカウンターがあって・・・」

●びっくりしました。本に載っていてびっくりです!

「ソファーがあって、普通のトイレがあって、機内は高速wi-fiが飛んでいます(笑)。(スペース・パースペクティブ社の)ホームページを読むと書いてあるんですけど、要するにドリンク、アルコールも飲めるし、軽食もサービスで付くと・・・この前報道されたんですけど、ベンチャー会社の勢いのある社長さんが、これを社員のためにひとつチャーターしたみたいです」

●実際、いつからツアーが始まるんですか?

「来年から本格スタートだったと思うんですけども・・・2024年下期ですね。(料金は)おひとり12万5000ドルなんで、まあ1500万円ちょいなのかな、こちらは。だから高い車1台買うのを我慢すれば6時間遊べるという、お手軽価格です」

ヒルトンが監修する宇宙ホテル!

※『宇宙の歩き方〜太陽系TRAVEL BOOK』には、国際宇宙ステーションISSに接続する、史上初の宇宙ホテルが紹介されています。ほかにも、ホテル大手のヒルトンが監修する宇宙ホテルが載っていました。これはどんなホテルなんですか?

「簡単に説明すると、今NASAはいわゆる国の組織なんで、税金で宇宙開発しているんですけども、徐々に民間に仕事を開放しているんですね。で、在米の企業に宇宙ホテルを作れる会社ありますかって募集をかけて、応募してきてくれた会社のプランを見て検査して、それで良さげなものには補助金を出して開発に当たらせるという・・・。

 今は3社が選ばれて、その3社に基礎設計の協力金を出しているっていう状態で、またその次のステップで審査があるんですけども・・・。だから今アメリカではISSに接続する宇宙ステーションと、あと3機、宇宙ステーションを開発しているということです。

 そのうちのひとつが、ヒルトンが提携しようとしている『スターラブ』っていう宇宙ステーションなんですね。このスターラブ、いちばん面白いのは1回の打ち上げで、もう完成しちゃうと・・・。つまりはモジュールをひとつ 打ち上げて、あとはそこに空気を送り込んで、風船みたいに膨らませるんですよ。で、そこが居住区画になって4人が滞在できるんです」

●定員4名ということなんですね。

「その内装のデザイン、管理をヒルトンと提携してヒルトンがやると・・・。だからこっちはもう本当にお客さん目当てというか、そういう演出が効いている宇宙ステーションということになりますよね」

月面史跡巡りツアー!?

※アメリカの起業家イーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業「スペースX」社は、全長120メートルの史上最大の宇宙船「スターシップ」で月のまわりを回るツアーを計画。また、NASAが中心となって進めている国際的な月面探査プロジェクト「アルテミス計画」も注目されています。月は地球人にとって、宇宙開発の象徴のような天体と言えるかも知れません。

 鈴木さんの本に「月面史跡巡りMAP」が載っていて、近い将来、史跡を巡るツアーが現実になるかも知れないと思ったんですけど、こんなツアーがあったら、面白いだろうな〜というのを紹介していただけますか。

「僕は宇宙、宇宙と言っても天文からロケットマニアからいろいろな(タイプがあって)要するに電車マニアもすごく細分化されているじゃないですか。それと同じように宇宙も、すごくここが好きっていうふうに分かれるんですけど、僕はどちらかというと、天体というよりはロケットとか宇宙船が好きなんですね。月に行っても多分、殺風景ですぐ飽きちゃうと思うんですよ。

 ですから、今までにアメリカとかロシアとかソビエトとか中国とかが(月に)いっぱい探査機を送り込んでいて、それが要するに風化しないもんですから、月面は風も吹かないし、空気もないから、その当時のまんまバッテリーが切れた状態でポツンとあるはずなんですよね。

 それを1個ずつ巡るとまあ面白いのかな・・・記念品でちょっと部品を持ってこようかなみたいな・・・要するにトレジャーハントだと思うんですけど、そういうのは面白いかもしれないですよね」

●月面から美しい地球を見たいなって思うんですけど、絶景ポイントってありますか?

「ご存知の通り月って、片面が常に地球に向いているじゃないですか。ずっと同じ面を向けて地球のまわりを回っているんで、そちら側にいると常に真っ青な地球が見られるんですよ。ただその裏側、月の裏側に行くと何が起こるかというと、真っ暗になるわけですね、基本的に。そうするとものすごく星が綺麗に見えるはずなんですよ」

●あ〜そうだ〜!

「それも見てみたいですよね」

火星旅行〜山と峡谷!?

※実はイーロン・マスク氏の「スペースX」社は火星に人を送るプランも進めているほか、NASAも有人の火星探査を計画しているそうです。

 近い将来、月まで行ったら、火星旅行もしたくなりますよね。火星で見逃せないポイントと言ったら、何がありますか?

「火星は見所がふたつあって、太陽系でいちばん高い『オリンポス山』、これがだいたい22キロぐらいの標高があるんですね。だからエベレストの3倍くらいはあるのかな。
 もうひとつは『マリネリス峡谷』、火星のよくある写真を見ると、左下に見えるんですけど、すごく深い亀裂みたいな、傷みたいなのがあるんですよ。そこがすごく深くて総距離が4000キロぐらいある峡谷なんですね」

●巨大な峡谷!?

「はい、今火星のまわりの周回軌道を無人探査機がくるくる、一生懸命いろいろ観察して、観測して調べているんですけども、それの電磁波もしくはレーザー照射で調べたところ、このマリネリス峡谷に水があるらしいということになってます」

(編集部注:火星に水があるかも知れないということですが、もしあれば、今後の宇宙開発にとって、重要な意味を持つそうです)

地球を大切にしましょう

※鈴木さんが宇宙旅行に行くとしたら、どの星に行ってみたいですか?

「僕はね、地球がいいですね!」

●えーっ!(笑)地球ですか!?

「宇宙に行くと現状、お酒を飲めないんですよ。多分、宇宙に行くと血が頭のほうに均等に上がってきちゃうんで、顔がパンパンになって、足は細くなるんですけど、おそらくその状態でアルコールを飲むと、すごく酔っ払うと思うんですね。 あとお風呂に入れないでしょ!」

●はい(笑)

「ただね、1個だけ(行ってみたいのは)木星の衛星で『ガニメデ』っていうのがあるんですね。その表面は、おそらく岩石と氷に覆われているんですけど、中に海があるんですよ。内部海って言うんですけど、ESA欧州宇宙機関がそこに向けて『ジュース』っていう無人探査機を打ち上げたばっかりなんです。

 それを周回軌道から観測して、もしかしたらその海に生命がいるかもしれないということを探索するんですけど、ちなみにそこに(ジュースが)到着するのが8年後なんですね。だから結果を僕が見られるかどうかはわかりませんね」

●いやいや、でもすごいですね。また新しい発見につながるかもしれないってことですね。鈴木さんは地球人として、地球という星にはどんな思いがありますか?

「太陽系のほとんどの惑星、衛星はかなり詳しく分かるようになってきたんですね。最近、写真も撮れているし、探査機も到達しているし・・・やっぱり地球ほどいい星はないんですよ。
 氷ばっかりだったりとか、木星とか土星はガスですからね。表面にほんのりアンモニアが乗っかっているわけですよ、多分行ったら臭いんだと思うんですけど・・・。だからそういうのと比べて考えると、地球みたいにいいところは、おそらくないので、みんな大切にしましょうね、地球を! っていう感じでしょうかね」


INFORMATION

『宇宙の歩き方〜太陽系TRAVEL BOOK』

『宇宙の歩き方〜太陽系TRAVEL BOOK』

 この本には、実際に行ける宇宙旅行パッケージツアーほか、月や火星エリア、水星や金星の岩石惑星エリアなどが豊富な写真やデータとともに紹介。
 QRコードが載っていて、スキャンするとYouTubeで貴重な動画も見られます。NASAが撮ったISSから見るオーロラや夜景、宇宙旅行日帰りプランでご紹介したバルーンから見る景観を動画で再現してあったりと、見所満載です。ぜひチェックしてください。
 G.B.から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎G.B.: https://gbeshop.thebase.in/items/69825180

『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』

『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』

 もう一冊、鈴木さん執筆の最新刊。軌道上の宇宙望遠鏡80機以上の詳細な解説と、最新画像を豊富に掲載した240ページにも及ぶ豪華本です。見たこともない壮大で神秘的な写真に圧倒されます。こちらもぜひ!
 朝日新聞出版から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎朝日新聞出版:https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=24201

雲博士に聞く、雲の不思議と珍しい雲

2023/5/7 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、気象予報士の「わぴちゃん」こと「岩槻秀明(いわつき・ひであき)」さんです。

 子供の頃から自然や気象のことが大好きだった岩槻さんは、小学校高学年の時にニュースで気象予報士という国家資格があることを知り、さっそく勉強を始めたそうです。そして絶対に合格するという強い意志のもと、高校2年生の時に、3回目のチャレンジで見事合格!

 そんな岩槻さん、現在は気象予報士、そして自然科学系ライター、さらに千葉県立関宿城博物館の調査協力員としても活躍されています。

 そして先頃、『空を見上げるのが楽しくなる! 雲の図鑑』を出されました。このムック本には、100種類以上の雲の写真が掲載されていますが、そのほとんどが岩槻さんの撮影なんです。

 きょうは雲博士、岩槻さんに雲の不思議や種類、そして珍しい雲のお話などうかがいます。

☆写真協力:岩槻秀明

気象予報士の「わぴちゃん」こと「岩槻秀明」さん

雲のメカニズム

※改めてなんですが、雲はどのようにしてできるのか、そのメカニズムをなるべくわかりやすく解説していただけますか?

「天気の現象で、雲はどうしてできるの?とか、雨はどうして降るの?とか、風はどうして吹くの?って、小っちゃな子供たちからも出てきそうな質問なんですけど、その仕組みを説明するとなると、すごく複雑なんですよね(笑)。なので、いつも大変苦労はしているんですけれども、雲ができるメカニズムはいくつかのポイントがあります。

 まずひとつは空気、その中に目に見えない水蒸気が含まれている。これがひとつポイントですね。空気の中にある水蒸気は空気の温度、気温が高くなるほど、水蒸気をいっぱい持つことができるんですよ。

 で、気温が下がって冷たい空気になると、あまり水蒸気を持つことができなくなるので、持ち切れなくなった水蒸気が追い出されて、小っちゃな水とか氷の粒になって出てくるんですね。ひとつはこれなんです。

 もうひとつは、空気がなんらかの理由で、下から上に持ち上げられると、ふわっと膨らむんですよね。下はすごく空気がいっぱいあって、ぎゅうぎゅうに押し込められた感じなんですけど、上のほうは空気が薄いので広がっていく。まわりから押さえつけられる力がなくなるので、わーっと広がる。で、広がる時にエネルギーを使うんですね」

●エネルギー!?

「はい、膨らむのにエネルギーを使うんですよ。熱のエネルギーを使ってしまうので、使ってしまった分、冷たくなるんです。

 だから今のふたつの前提がありまして、まず空気中に水蒸気を含んだ空気があって、それがなんらかの理由で持ち上げられると、もわっと膨らんで、その時に熱エネルギーを使うので冷やされる。冷えてしまうと、空気は水蒸気をあまり持てなくなるから、その持ち切れなくなった水蒸気が水の粒とか氷の粒になって漂う、それが雲です」

(編集部注:雲の正体は、とても簡単に言ってしまうと、水蒸気が冷やされてできた小さな水滴や、極めて小さな氷の結晶の集まりだそうです)

『空を見上げるのが楽しくなる! 雲の図鑑』

雲は何種類!?

※雲を分類するにあたって、何か基準になるものはあるんですか?

「雲の分類、昔の人はよくやりましたよね。昔、最初にやろうとした人の中には、そんな無駄なことはやめて、別のもっと役に立つことをやれって諌められたっていう話があるくらいで、よくやったなと思うんですけどね。とりあえず今は10種類に分けておりまして、その視点があるんですね。

 まずは浮かんでいる高さ。雲は地上から上空だいたい1万3千メートルくらい、対流圏っていうところで、できるんですけれども、それを3つに分けるんですね。5千から1万3千メートルくらいの間の対流圏上層、それからちょっと被っているんですけど、2千〜7千くらいの対流圏中層、あと2千メートルより低い下層、その3つに分けて、上層にできる雲か、中層にできる雲か、下層にできる雲かっていうのが、まずひとつの視点。

 もうひとつは雲の形というか性質というか、モクモクって上に向かって伸びる性質があるタイプなのか、横にベタ〜っと広がる性質がある雲なのか、あとは筋みたいにシュッシュッシュッてなるタイプなのかという3つ。あと雨を降らせるかどうか、これの組み合わせで10種類になっている感じですね」

羽根雲
羽根雲

●本の中で面白い説明が付いている雲を見つけました。「羽根雲(はねぐも)」って言われている雲がありましたよね。これはどんな雲なのか教えてください。

「文字通り、鳥の羽根みたいな形(笑)」

●それは普通に私たちも見ることができる雲ですか?

「時々出ていますね。筋みたいな『筋雲(すじぐも)』って呼ばれる雲がいっぱい広がっている時に注目して見ると時々できていますね。これがよく出やすいのが飛行機雲ができて、その飛行機雲が時間と共に変化するパターンですかね」

キャッツアイ/猫の目雲

●あと「キャッツアイ」っていう雲もありましたよね?

「ありますね。波頭雲(はとううん)という雲ですね」

●これはどんな雲なんですか?

「これまた、言葉で説明するのが難しい雲なんですけど(笑)」

●さきっぽがくるんって巻いてあるというか、波にようになっていますよね。

「はい、よく言われるのが日本画に出てくる波!」

キャッツアイ
キャッツアイ

●あ〜はいはいはい! まさに波打っている波っていう感じですよね。

「くるん!となった、鎌みたいなというか、それがいくつも並んだ状態で、正式には『ケルビンヘルムホルツ波』っていう舌を噛みそうな名前の風の波、それに雲が巻き込まれてできるものなんですけれども、ケルビンヘルムホルツ波が時間と共にくるっと巻いていますよね。先がどんどん巻いていくんですよ、くるくるくるって・・・。

 最終的には猫の目みたいな形になるので『キャッツアイ/猫の目雲』って言われるんですけれども、そこまでいくまでに崩れちゃうことが多いので、私は綺麗な形の猫の目は見ていないんですよね」

●先ほどもちょっとお話に出ました飛行機雲ですけど、何か定義はあるんですか?

「はい、すごくざっくり言っちゃうと、飛行機によってできる雲なんです。今回のこの雲の本でも使っている国際的な基準があるんですね。雲の分類の『国際雲図帳(こくさいうんずちょう)』っていう、全世界で使われている基準みたいなものがあります。度々改定が重ねられてきて、私が生まれてからつい最近まで、ずーっと同じのが使われていたんですけれど、それが2017年版で改定になったんですね。

 改定前までは飛行機雲って、すごく宙ぶらりんな位置付けだったんですよ。とにかくそれこそ飛行機によってできる雲くらいの位置付けしかなくて・・・今回2017年版できちんと明記されたというか、どうなったかって言いますと、やっぱり10種類のどれかに位置付けることになったんですね。

 氷の結晶でできて、シュッシュッてしているから『巻雲(けんうん)』、人工的なメカニズムでできた巻雲ということに位置づけられました。ただちょっと条件がついたんですよ。飛行機が通ってから10分以上雲として残り続けたら、人工的な巻雲、飛行機の巻雲として認めますよって・・・」

●確かに毎回、飛行機雲って出現するわけじゃないですよね?

「そうですね。空気が乾燥しているとすぐ消えちゃったりとかしますね」

(編集部注:岩槻さんの『雲の図鑑』には、出会える頻度「レア度」がAからDの4段階で表示されています。Aはよく見られる、Bは時々見られる、Cはたまに見られる、そしてDは極めて稀。お話にあった「キャッツアイ」はレア度はCでした)

滝のように溢れ出る雲

※5月から7月にかけて、よく見られる雲はありますか?

「意外に雲って例えば、モクモクした雲は夏の雲で、筋みたいな雲とか羊雲は秋の雲だとか、よくイメージはあるんですけれども、意外に季節的な傾向はありそうでなくてですね」

雄大雲
雄大雲

●そうなんですか?

「そうなんですよ。だから今この季節だから、この雲は出ないなんてことはなくて、多分1ヶ月毎日、丁寧に見ていれば、十種雲形の10種類はちゃんと揃えられると思います。これから夏休みの季節でも十種雲形を集めようと思えば、多分毎日ちゃんと見ていれば、集まると思います」

●自由研究とかいいですね?

「あっ、いいですよね。その中でも5月から7月って梅雨時なので、梅雨にまつわる雲が出やすいかもしれないですね」

●こういう雲が出てきたら雨が降るとか、そういう雲が出てくるってことですか?

「雨雲系ですからね。世間一般的にはあまり嬉しがられない、乱層雲みたいなしとしと雨を降らせるやつ・・・あとは5月くらいだと、まだ冬の名残りみたいな寒波が上空に流れ込んできたりすることがあるので、積乱雲が発達することがありまして、雷雲が見られます。

 5月6月って実は意外に雹(ひょう)が多い季節でもあって、雹の災害に気を付けなきゃいけないんですね。なので積乱雲とかそういった梅雨時の乱層雲とかが比較的よく見られる雲かもしれないですね」

●今まで岩槻さんが見てきた中で強く印象に残っているとか、珍しかったなって思う雲はありますか?

「実はもう数えきれないほどいっぱいありまして(笑)、どれを出そうかってすごく悩むんですけれども、やっぱりいちばん印象に残っているのは、とあるテレビのロケで行った滝雲(たきぐも)。

滝雲
滝雲

 秋の終わりぐらいの冷え込んだ朝に霧が出ることがあるんですけれども、その霧が山と山の窪みの盆地みたいなところに溜まるんですね。その霧がまるで盆地の入れ物から溢れるように、滝のように溢れ出るような感じで動く雲、それを滝雲って言うんですけど、それをテレビのロケで見に行ったんですね。それでロケ日にぴったりと、わーっとダイナミックな光景が見られたのですごかったです」

(編集部注:地形の影響で出現する滝雲、岩槻さんは新潟県の南魚沼で目撃したとのことですが、調べてみると魚沼市にある「枝折峠(しおりとうげ)」が滝雲の有名なスポットで、息を呑むほどの神秘的な光景を見られるそうですよ)

自然と触れ合う、雲をそのきっかけに

※雲は天気の変化や、季節の移り変わりを知らせてくれるメッセンジャーかも知れませんね。

「その通りですよね。まずその季節の変化も感じますし、昔の人はそれで天気の予報をしていましたしね。あとこれからの季節で、いわゆるゲリラ豪雨って呼ばれているような天気の急変、雷雲とか前兆となる雲があります。それを知っていれば、あの雲が出てきたから、ちょっと早めに撤収しようかって逃げることもできますし、まさにメッセンジャーですよね」

●岩槻さんは仕事柄いろんな雲をご覧になっていると思うんですけれども、純粋に雲を見てどんなこと感じますか?

「これは雲の種類とかにもよって変わりますけれども、綺麗な雲を見たら素直に綺麗ってなりますよ。 で、綺麗な雲を見つけた時って、滅多に見られない雲とか憧れの雲を見つけた時って、カメラを構えるんですけど、手が震えるんですよね。だから意外に、あれっ?あれっ? みたいな感じで撮れていないとかなっちゃうっていう、結構冷静なようで感情的に見ているなって・・・(笑)」

●でも、それだけ心揺さぶられるものがありますよね?

「揺さぶられますね〜」

●では最後にこの本『空を見上げるのが楽しくなる! 雲の図鑑』を通して、いちばん伝えたいことを教えてください。

「みなさん、外に出たら・・・なかなか今は、まわりを見渡すとスマートフォンの画面をご覧になっちゃっているかたのほうが多いんですね。それはそれでもいいんですけれども、ぜひ空を見たりとか、あと肌で空気を感じてみたりとかね。

 それから身のまわりの、雲の流れ、風の動き、自然の振る舞いとか、いろいろ感じてみるのもいいと思いますので、外に出た時は自然と触れ合える、雲はそのひとつのきっかけ、ひとつの要素として、ぜひ雲も取り入れてみていただけると嬉しいななんて思っていたりします。
 あと、第二第三の私みたいな雲の図鑑を作るような雲博士が登場して、どんどんこの業界を盛り上げてほしいななんて思っていたりもします」

朝焼け雲
朝焼け雲

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『空を見上げるのが楽しくなる! 雲の図鑑』

『空を見上げるのが楽しくなる! 雲の図鑑』

 岩槻さんが出されたムック本には、100種類以上の雲の特徴が網羅されています。ほかにも雲のメカニズムや眺めるときのポイントなどがわかりやすく解説、写真が大きいので雲の形がよくわかりますよ。マキノ出版から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎マキノ出版HP:https://www.makino-g.jp/book/b620661.html

◎岩槻秀明さんのオフィシャルサイト:http://wapichan.sakura.ne.jp

南極生活で培った暮らしの知恵〜南極地域観測隊・元調理隊員に学ぶ

2023/4/30 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、南極地域観測隊の元調理隊員「渡貫淳子(わたぬき・じゅんこ)」さんです。

 渡貫さんは第57次・観測隊の調理隊員として、2015年12月から2017年2月まで
およそ1年3ヶ月にわたって、南極の昭和基地に滞在、隊員30名の食事を毎日作るミッションを担っていらっしゃいました。

 そんな南極での活動をまとめた『南極の食卓〜女性料理人が極限の地で見つけた暮らしの知恵』という本を出されたということで、番組にお迎えすることになりました。

 きょうは、隊員たちの胃袋を満たす毎日の献立や、私たちの生活に通じる、ゴミを出さない調理の知恵などうかがいます。

☆写真協力:渡貫淳子

渡貫淳子さん

毎日30人分の食事を朝・昼・晩!

※渡貫さんは青森県八戸市(はちのへし)生まれ。料理の専門学校を卒業後、その学校に就職。結婚・出産のため、退職するも、家事や子育てをこなしながら、飲食業界で調理の仕事を続けていたそうです。

 そして30代後半に、南極に行ってみたいという夢を抱き、3度目のチャレンジでついに合格!ちなみに渡貫さんは、昭和基地史上ふたりめ、民間人としては初めての女性調理隊員だったそうですよ。

 正式に隊員になった渡貫さんの、最初の大きな仕事は、南極に持って行く食材の発注、仕入れ、そして船への積み込み。その量たるや、隊員ひとり1年間で1トン、それが30人分ですから、トータル30トン以上にもなるんです。

 調理隊員はふたり、ということで、相方さんと一緒に入念に準備、電卓をたたいて計算し、発注したあとも、これで足りるかな〜という不安が常にあったそうですよ。

 日本での準備が整った渡貫さんたち南極地域観測隊の隊員は、まず、飛行機でオーストラリアに入り、先に日本を発った「南極観測船しらせ」と合流し、いざ、南極へ。そして、およそ3週間の航海を経て、昭和基地に到着したそうです。

昭和基地
昭和基地

●これは何度も聞かれていることだと思うんですけど、南極にやっと着いた時、どんな気持ちでしたか?

「それがですね、意外とあっけないというか、一面の銀世界じゃないんですよ。南極に着く時はちょうど夏の時期にあたるので、意外と雪がなくて、岩が露出してゴロゴロしていて、茶色! って感じです」

●へ〜〜、想像とちょっと違うという感じだったんですか?

「はい、なんか岩山に来たぞ! みたいなそんな感じなので、イメージとしては何もない真っ白い世界と思っていたのがちょっと違うんです(笑)」

●いざ南極での生活が始まって、越冬隊員30人分の食事を調理担当のおふたりで作るわけですよね?

「そうですね。私たちが作るものしか逆に食べ物がないので・・・日本だったらちょっと缶コーヒーを買いにとか、コンビニに行ったりとかできると思うんですけど、もちろんそれはないので、とにかく食べるものを用意してあげないと、みなさん食べられない・・・ですから、常に作っているそんな日常ですね」

●私も去年結婚して、きょうの夜は何を作ろうって日々思っているんですけど、渡貫さんの場合はそれが朝・昼・晩ですし、しかも30人分ですよね。どうやってこなしていたんですか?

「それがですね・・・私の感覚からすると、そんなに大変じゃないと言ったら怒られそうですけど・・・例えば、おうちでご家族の食事を作っていらっしゃる方も同じだと思うんですよね。家族のために1日3食であったりお弁当であったり、あとおやつを作ったり、みなさんされていることだと思うんです。

 それが人数が少ないか、30人かっていうだけで、私としては普段から飲食業界で、すごく多い人数の食事を作っていたので、全然抵抗なくこなすことができたかと・・・。

 あとは主婦で毎日作り続けることには慣れていたので、ある意味、そこは主婦のスキルが活かせたんじゃないかなって思います」

●とはいえ、南極に持って来た食料の中からやりくりするっていうことですよね?

「まぁそれしかないので・・・(笑)。でも意外と諦めがつくというか、欲しいものがあっても届ける術もないですし、なのであるもので・・・ですから冷蔵庫の中を見てどうしようかなっていうそういう毎日ですかね」

●まず何から使っていくとか、そういったセオリーはあったんですか?

「実はセオリーはないんです。そもそも30〜40トンの食料を一気に運んでしまうと、とにかく段ボールの山なんですよ(笑)。なので正直どこに何があるかを探すのが大変。

 ですから最初のうちは手前にある段ボールを開けて、そこにある食材からとにかく作っていく。時間の経過とともにだいたい冷蔵庫の中身が把握できてくるので、そこからこの材料はちょっと多いから、ここから消費していこうかなみたいな感じで、本当に冷蔵庫の中と相談しながら献立を考えていくという形なので、メニューは考えていかないんですよ」

昭和基地内の厨房
昭和基地内の厨房

人気の献立は普通の定食!?

※朝・昼・晩の定番メニューみたいなものはあったんですか?

「基本的には朝ご飯は、食べる人、食べない人がいらっしゃるので、ビュッフェスタイルで、ご飯食もあり、パン食もあり、ビジネスホテルの朝食みたいな感じですね。

 お昼はやはりみなさん、仕事と仕事の合間に取る食事になるので、さっと食べてまたすぐ仕事に戻れる、もしくは少しでも休憩が取れるように、麺類とかどんぶりだったり、そういったものが多かったかなと・・・。夜は定食のようなご飯とお味噌汁に、メインと小鉢があってみたいな大体それが日常の食事ですね」

●なるほど。渡貫さんの得意料理はなんですか?

「なんですかね・・・実は私もともと和食が専門だったこともあって、そんなにカレーライスを作るほうではなかったんですけれども、 南極だと1週間に1回カレーライスなんですね。カレーライスの時にはやはりみなさんご飯の消費量もすごく多いので、逆に南極に行ってカレーを作るのが得意になったかなとは思います(笑)」

●そうなんですね(笑)。

「あと意外だったのは、やっぱり時々お誕生日とか、何か行事食っていうことで、パーティーのようなお料理を作ることもあるんですけれども、それ以上にきょうのご飯は良かった! とか、美味しかった! って言ってくださるのは、普通の焼き魚定食みたいなものだったり、本当に飾らない日常の食事のほうが反応はよかったなと思います」

昭和基地内の食堂
昭和基地内の食堂

リメイク料理「悪魔のおにぎり」!

※渡貫さんが先頃出された本に生ゴミを出さないための知恵として「リメイク料理」が載っていました。どんな料理なのか、教えてください。

「そもそもゴミを(南極から)日本に持って帰らなければいけないんです。 もちろん、生ごみを生ごみとして持って帰るわけではなくて、最終的にきちんと処理をした状態で、灰にして持って帰ってくるんですけれども、やはり持って帰る以上、ゴミの量を極力減らさなければいけない。そうすると日常で出てくる食事の残り物を減らさなきゃいけない。

 じゃあどうしようかなと思った時に、その日に出した料理をちょっと形を変えて別のものにしてあげて、次の料理につなげていく。そういったことが環境に負荷をかけないためにも必要だったっていう、そんなこともあって生まれた料理かなと思います。

 日本だったらシンクに流せる液体も、なかなか南極ではそのまま処分できないので、たとえば缶詰でしたら、缶詰の固形のところは料理に使う、液体のところはまた別の料理にしてあげるという形で、極力全部、余さず残さず作るような工夫が南極では必要でした」

●そのリメイク料理で有名になったのが「悪魔のおにぎり」ですよね。日本に帰ってこられて、某コンビニチェーンで商品化されましたけれども、考えたのは渡貫さんだったんですよね?

「考えたと言ってもね・・・材料は天かすと天丼のタレのようなものと、青さのりだけなので、そんなにたいそうなおにぎりではないんですが(笑)、私が夜食用に作っていたおにぎりがもとになりました」

悪魔のおにぎり

●本に載っていたレシピをメモらせていただきました(笑)。改めてどんなおにぎりか教えていただけますか?

「私はいつも厨房で、残った材料を使って、夜食のおにぎりを作っていたんですね。実はいろんな種類のおにぎりがあったんですが、唯一そのおにぎりだけ名前がつきました。

 お昼ご飯に天ぷらうどんを作った日だったんですけれども、その日は余った材料が天かすしかなかったんですよ。どうしようかな〜と思って、とりあえず白いご飯はあるので、そのご飯に天丼のタレのような、ちょっと甘じょっぱいタレで味をつけて、天むすのエビが入ってない感じっていうんですかね・・・そんなのを作ろうと思って天かすを入れて混ぜたんです。

 なんかちょっと物足りないんだよなと思って、厨房に余っていた青さのりを入れたんですけど、青さのりのおかげで、すごく香りがよくなって、なんでしょう・・・天かすが入っていて油っぽいのに食べやすい、食べ進むっていうことで、みなさん結構好んで食べてくださったんです。

 ただ問題は、このおにぎりを私が出す時間が22時とか23時なんですよ。夜の時間帯に食べるには、ちょっとこれ、夜に食べちゃいけないよね(笑)。ですけど、みなさん美味しさはわかっているので、どうしても負けてしまう、葛藤しながらも結局負けて食べてしまうので、悪魔的なおにぎりだということで、食べていた人が名前をつけてくださいました」

●それほど、食が進むってことですよね(笑)。

「ちょっと夜中には危険なおにぎりだったと思います」

(編集部注:渡貫さんの仕事は、朝昼晩の食事を作る以外に、日帰りで作業に出かける隊員のためにお弁当作りもありました。冷たくなると美味しくないので保温機能の付いたお弁当箱を持たせたそうですよ。

 忙しい日々を送っていた渡貫さんが、南極でいちばんの癒しスペースと表現している場所が昭和基地の中にあるんです。その場所とは「グリーンルーム」! 野菜を育てるための小さな部屋で、南極で緑が見られるのは、ここだけだそうです。

 実は南極には環境を守るための保護条約があって、土や植物のタネは持ち込めません。そのため、事前に環境省に申請し、許可されたタネを持っていき、水耕栽培で、トマトやキュウリ、モヤシや水菜などを育てたそうです。

 隊員たちにとって、新鮮な生野菜はいちばんのご馳走で、食卓に並ぶと、みんなテンションがあがっていたとおっしゃっていましたよ。

 渡貫さんの本『南極の食卓 女性料理人が極限の地で見つけた暮らしの知恵』には、グリーンルームや収穫した野菜の写真なども載っていますので、ぜひ見てください)

『南極の食卓〜女性料理人が極限の地で見つけた暮らしの知恵』

便利なこと=幸せなのか

※およそ1年3ヶ月にも及ぶ南極・昭和基地での活動を終えて、帰国されてから、なかなか普段の生活になじめなかったそうですね。

「見事に社会不適合になって帰ってきました」

●それはどんなことに違和感がありました?

「まず、いろんなものが溢れているんですよね。物もそうですし、食べ物もそうですし、あと情報も・・・交差点に立った時に、いろんな音が耳の中にうわーっと入ってきて、頭が整理できなくなって、(南極に行く)前は普通にできていた日常生活がこんなにストレスを感じるのかっていうのが実感でした」

●そうなんですね。当たり前すぎて、特に気にしたことはなかったです。

「それが普通の生活だと思っていたんですが、逆にいろんなものに制約があって、必要最低限のものだけで生活をしていた・・・そこから何不自由ない便利な生活に戻ったら、逆に便利なこと=幸せとはちょっと違うのかなって、私は思うようになってしまいました」

●一方で南極滞在中に身についた習慣で、今もやっているよっていうようなことはありますか?

「やっぱりゴミに対する躊躇する感覚は今も抜けないので、いかに自分の日常生活でゴミを減らせるか・・・あとは危険予知と言って、やはり何が起こるかわからない生活だったので、ひとつのことを行なうにしてもいくつかの方法を準備するんですね。

 日本に帰ってきても、たとえば電車が遅延した時にどの手段で目的地まで行くかっていうルートをいくつか用意したり、携帯電話の電源が切れてしまったら、できなくなることがいっぱいあるじゃないですか。なのでメモを取ったりですとか、ちょっとアナログな部分でも同時並行で必ずバックアップ体勢を作るように、これはもう無意識に身についた術なのかなと思います」

●南極での生活は、私たちの今の日常とつながっているんですね。

「多分みなさん、きっと別世界だと思っていらっしゃると思うんです」

●思っていました。

「実はすごく近いというか、逆に災害時の備えにつながったりとか、すごく日常生活に活かせることが多かったと思います」

●食品ロスについてもそうですよね。いろんな知恵がいっぱいありますよね。

「そうですね。みなさん食品ロス削減って言われると、すごく難しいテーマに捉えられがちなんですが、実は本当に日常のちょっとした工夫で減らせることって、いくらでもあるんじゃないかなとは思います 」

写真協力:渡貫淳子

南極での経験を活かして

※では最後に、南極生活から得た経験を今後、どう活かしていきたいか、教えてください。

「それだけのチャンスをいただいて、日本では得られない、ありがたい経験をさせていただいたなっていうのがまずひとつと、これをせっかくなので、日本の生活でも(活かして)、そのままもとに戻るのはもったいないなと思います。自分ひとりができることってたかが知れている小さなことだと思うんですけど、その小さな積み重ねがいつか大きな変化につながれば、そんな思いでこれからもいろんな活動ができたらなと思います」

写真協力:渡貫淳子

(編集部注:渡貫さんは、屋外でペンギンを観察したり、魚を釣ったりという活動もされていたそうです。渡貫さん曰く「ドアの向こうは、むき出しの自然」だったそうですよ。

 ちなみに渡貫さんたちの観測隊が、巨大な魚を釣りあげ、それがニュースになったことがあったそうです。その魚の名前は「ライギョダマシ」、全長はなんと157センチ! 観測隊史上最大の獲物だったということで、日本に持ち帰り、現在は葛西臨海水族園に展示されているとのことです)


INFORMATION

『南極の食卓~女性料理人が極限の地で見つけた暮らしの知恵』

『南極の食卓~女性料理人が極限の地で見つけた暮らしの知恵』

 南極での生活や奮闘ぶりを垣間見られるほか、南極大陸や昭和基地内の写真、そして献立の写真なども豊富に掲載。主婦でお子さんもいらっしゃる、ひとりの料理人の挑戦の記録とも言える一冊です。食品ロスを減らすヒントもありますよ。
 家の光協会から絶賛発売中です。ぜひ読んでください。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。この番組のホームページにリンクをはっておきます。

◎家の光協会HP:http://www.ienohikari.net

 渡貫さんは食品ロスや防災に関する講演活動なども行なっていらっしゃいます。ぜひネットで検索してみてください。

シリーズ「SDGs〜私たちの未来」第12弾〜お花のロスレスブーケ、カラーコスメをアップサイクルしたクレヨン〜

2023/4/23 UP!

 SDGsという言葉、ここ数年で随分浸透してきたように思いますが、いかがでしょうか。SDGsはご存知の通り「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」。

 これからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って資源を大切にしながら経済活動をしていく、そのための約束がSDGs。2015年の国連サミットで採択され、全部で17の目標=ゴールが設定されています。

 この番組、ベイエフエム / ザ・フリントストーンでは「SDGs〜私たちの未来」というシリーズ企画を立ち上げ、これまでにSDGsに取り組んでいる事例をいろいろご紹介してきました。

 今週は、そんなシリーズの第12弾! SDGsの17の目標=ゴールから「つくる責任 つかう責任」ということで、「ロスを減らす、なくす」をテーマにお花の「ロスレスブーケ」、そしてカラーコスメをアップサイクルしたクレヨン「ハロヨン」をクローズアップ! 

 今までにないシステムを作り、イノベーションを起こした、ふたりの女性起業家、「FLOWER」の小室美佳(こむろ・みか)さん、「COSME no IPPO」の大澤美保(おおさわ・みほ)さんにご登場いただきます。

そしてきょうは素敵なアイテム「ハロヨン」を抽選で3名のかたにプレゼント! 応募方法はこちらから!

☆写真協力:FLOWER、COSME no IPPO

可愛くてお得!

写真協力:FLOWER

※まず、ご紹介するのは「FLOWER」という会社が提供している「ロスレスブーケ」です。このサービスはいろんな種類のお花の、可愛くてヴォリュームのあるブーケがお手頃な価格で利用できる、とても優れたサービスです。

 それでは、このサービスを企画し、展開している「FLOWER」の小室美佳さんにお話をうかがっていきます。

 この「ロスレスブーケ」というネーミング、ポイントは「ロスレス」なんですよね。そのことも含め、どんなサービスなのか、ご説明いただけますか。

「ロスレスブーケは、私たちが作った新しいワードなんですけども、端的に言いますと、数量限定で売り切り販売をすることで、そもそも破棄とかロスになる花を生み出さずに販売するサービスです。なので、ロスゼロブーケでもいいんですけど、ゼロに近づける努力をするっていう意味でも、ロスレスブーケと名付けております。

 一般的にはお花屋さんは、やはり(お花は)生物ですし、仕入れた時に花の状態も個体差、人間と同じで生き物なので、個体差がありますし、すべてが売り切れる前提で販売はしていないのが当たり前の業界なんですね。

 いちばん(お花が)綺麗な状態でお客様に届けるって意味でも、仕入れたお花の中でも綺麗なものを選ぶし、かつ売り切れなかった場合に関しては、その分も考慮して売価にちょっと転換させて、お花を売るのが業界の、そういうものだよねっていう考え方があったんです。

 もっと手軽に、もっと新鮮に、もっと可愛いものを人に届けるにはどうしたらいいのかなっていうところを、私たち含めて改めて考えた時に、じゃあ仕入れた分を数量限定で売り切っちゃって販売をすることで、何か新しい仕組みにならないかなって考えた上で、このロスレスブーケが誕生しました」

●確かにサイトに載っている、ロスレスブーケのいろんな種類のお花を見ると、残りわずかっていう表示が出ていますよね。

「そうですね」

●いちばんのセールスポイントは、どんなところにあるんですか?

「いちばんのセールスポイントは、やはり可愛いっていうところなんですけど、もうひとつ・・・いちばんがふたつあるんですけど(笑)、お得っていうところです。可愛いブーケがお得に手に入るっていうのがセールスポイントです」

(編集部注:気になる販売価格は、10本前後のお花のブーケが送料込みで2,200円くらいから。ほかで購入すると3,500円から4,000円ほどのお値段になるブーケだそうです)

お得だけじゃダメ!?

写真協力:FLOWER

※もともとお花の業界とは無縁だった小室さんが、なぜこのサービスを始めるに至ったのか、それは以前、在籍していた会社の仕事が多忙を極め、深夜、家に帰って寝るだけという生活を送っていた頃、ある時、友人の結婚式でお花をいただき、持ち帰って部屋に飾ったところ、そのお花に癒され、「自分の時間」を取り戻すことにつながったそうです。

 そこで「小室」さんは、お花のある暮らしを多くのかたに、手軽にリーズナブルに提供できないかと考え、試行錯誤のすえ、1年半ほど前に「ロスレスブーケ」のサービスを始めたそうです。

●小室さんは、お花の仕入れにも関わっているんですか?

「はい、そうです。もともと定期便(*)も含めて、別の会社のフローリストさんにも入ってもらったりしたんですけど、今回のロスレスブーケってお得だけじゃダメなんですよね。やっぱり可愛くてお得! それを私がなんとなく抱いている、可愛いみたいなものを言語化して、実際に売るところを別の方にやってもらった時期もあったんです。

 でも、うまく伝わらなかったり、やっぱり(花は)生き物なので、実際に思うようにいかなかったりしたこともありましたね。
 私も割とぱっと行動しちゃいたい人間なので、私やってみるか、みたいな感じで・・・経験はなかったんですが、それまでもずっと毎日、花のことを考えているような人だったので、気づいたら知識とかも増えていたこともありまして(やるようになりました)。

 私が仕入れとあと、当日の撮影ですとか、実際に(お客様に)アプリを見てもらう時に、ブーケの(写真に添える)タイトルにも、とてもこだわっているんですけど、そういう編集まわりも含めてやっています」

(編集部注:小室さんの会社「FLOWER」では「ロスレスブーケ」のほかに「ポストに届く定期便」(*)というサービスも行なっています。「ロスレスブーケ」に関しては、毎週90種ほどの新作が登場しているそうですよ)

お花のある暮らし

「ロスレスブーケ」

※部屋にお花があるだけで、ぱ〜っと明るくなるというか気持ちまで晴れやかになりますよね。

「いちばん気軽に自分のテンションを高めてくれるというか、花が目に入った瞬間、風速早く、可愛い! ってなるのって、実は花しかないんじゃないかなと思っています。花か私だったら自分の子供か、みたいな・・・ケーキとかコスメとかも含めて、私のまわりは可愛いものに溢れているんですけど、手軽にかつ可愛いキュン! って思うものは、もしかすると花の力なのかなって最近思っています」

●リスナーさんたちがロスレスブーケが欲しいと思ったら、どのようにしたらよろしいですか?

「嬉しいお言葉です。その場合は、今『FLOWER』というアプリをiOSとandroidでダウンロードできるようになっていますので、検索していただいてアプリをダウンロードいただくか、あとは最近WEBでも注文ができるようになりましたので、まずはちょっとWEBからやってみようかなという、そういう方に関してはインターネットで検索していただいて、そこからご注文いただけます」

●ロスレスブーケのサービスを通して、いちばん伝えたいことを教えてください。

「いちばん伝えたいこと・・・いっぱいあるんですけど(苦笑)、やっぱり私、1ユーザーとして思うのは、花がきっかけで、花のある暮らしを続けることで、自分の時間が好きになるというか、今の私いいじゃん! じゃないですけど、自分の暮らしが好きになるなと思っています。

 それのいちばん手軽な存在で、かつロスレスブーケの場合はお得っていうところもあるので、ハードル低く、自分の理想的な状態を実現できる素敵なツールだと思っています。

 みなさんがなんとなく抱いているお花のある暮らしっていいよね! っていうものを続けることが、もし『FLOWER』で出来るのであれば、すごく素敵な時間を毎日生活の中で続けられるんじゃないかなって、今信じてやっているので、そういう時間がみなさんに増えたら嬉しいなと思っています」


<食品ロスの現状>

 私たちの生活を見てみると、「食品ロス」も大きな課題ですよね。農林水産省のホームページによると、日本では1年間におよそ612万トンもの食料が捨てられているそうです。これは東京ドーム5杯分とほぼ同じ量で、国民ひとりあたりに換算すると、毎日お茶碗一杯分の食料を捨てていることになるとか。

 一方、世界では、まだ食べられる食料が年間およそ13億トンも廃棄されているそうです。

 日本での食品ロスの原因は、大きく分けてふたつ。ひとつはスーパーマーケットやコンビニなど、小売店の売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外品などの事業系食品ロスが328万トン。

 もうひとつは、家での料理の作りすぎや、買ったのに使わずに捨ててしまうなど、家庭系食品ロスが284万トンとなっています。

 環境への影響や、世界的な人口の増加による食糧危機を考えると、食品ロスの削減は緊急な課題といっても過言ではありませんね。

 そんな中、日本でも自治体や企業での取り組みが広がりつつありますが、私たちにもすぐできることがあります。例えば、買い物に行く前に冷蔵庫の中やストックしている食材を確認し、無駄な買い物をしない。

 それから、お腹が空いている時やイライラしている時に買い物に行くと、買う予定になかったスイーツやお惣菜など、余分な物を買ってしまうので買い物に行くタイミングを見計らうのも大事かもしれません。

 ほかにもご家庭で、そしてひとりひとりが出来ること、たくさんありますよね。ひとりの小さなことでも、1000人が、10000人が続ければ、大きな削減につながるはずです。


カラーコスメをアップサイクル!

写真協力:COSME no IPPO

※ここからは、カラーコスメをアップサイクルしたクレヨン「ハロヨン」をご紹介します。この「ハロヨン」は、大澤美保さんが進めているプロジェクト「COSME no IPPO」から生まれたアイテムで、使われなくなったカラーコスメを回収し、クレヨンに生まれ変わらせた画期的な商品なんです。

 一箱に5色入っていて、持つと手に馴染む独特なフォルム、そして、箱ごとにクレヨンの色が違うのも特徴なんです。見た目も可愛いし、発色もいいし、中にはラメが入っているクレヨンもあるんです。さらに一般的なクレヨンは1本1本を紙で巻いていますが、「ハロヨン」は巻紙がないのでゴミにならないのもいいな〜と思いました。

大澤美保さん

 そんな「ハロヨン」を開発した大澤さんにお電話でお話をうかがいました。まずは「ハロヨン」というネーミングに、どんな思いが込められているのか、お聞きしました。

「大好きなコスメをアップサイクルして、クレヨンという新しい価値に変えていくっていうことで、その新しいクレヨンに、こんにちは、っていうような意味で、ハロー、それにクレヨンをくっつけた造語です」

●ハローとクレヨンで、ハロヨンなんですね〜。

「はい! そうなんです」

●改めてCOSME no IPPOとは、どんなプロジェクトなのか教えていただけますか?

「美容業界のゴミゼロを目指して活動しているんですけれども、具体的にはお役目を終えた、もう使わなくなったアイシャドウとかチークとか口紅などのカラーコスメを、クレヨンにアップサイクルしてお届けしているというプロジェクトになります」

ワクワクの循環

※カラーコスメをクレヨンにするという発想が素晴らしいなと思っているんですが、そのアイデアはどこからきたのか、お話しいただきました。

「私自身、すごくコスメが大好きなんですけども、やっぱりカラーコスメは何にワクワクするかっていうと、色や発色だったりすると思うので、それを捨ててしまって、さよなら! にしてしまうのではなくて、何かに活かしたいなと思ったんですね。

 (私には)娘がふたりいるんですけれども、娘たちが絵を描いていることとか、世の中を見渡してもアートという業界が盛り上がっていることなどもあって、絵を描くものに変えたいなと考えまして、そこからいろいろ試行錯誤した結果、あの形になっています」

●コスメは、例えばアイシャドウとか最後の最後まで使い切ることって、私自身はなかなかなくって、かといって捨てるのもっていう感じで、どんどん溜まっていってしまうんですけど、悩ましいですよね〜。

「そうなんです。ワクワクして買ったものをワクワクした形に変換するという『ワクワクの循環』というふうに呼んでいるんですけれども、喜んでくださるお客様も多くいらっしゃるので、まだまだもっと多くの方に知っていただきたいなと思って活動しているところです」

写真協力:COSME no IPPO

(編集部注: カラーコスメの回収方法なんですが、「COSME no IPPO」の公式インスタグラムからコンタクトしていただくか、百貨店のイベントでも回収しているそうです。

 「ハロヨン」はプレゼントとして、とても人気で、お子さんだけでなく、大人の女性も使っているそうですよ。大澤さんは今後「ハロヨン」で描いた絵の展覧会を開催したいとおっしゃっていました)

「ハロヨン」

INFORMATION

<「ロスレスブーケ」「ハロヨン」情報>

 「ロスレスブーケ」を取り寄せてみたいと思われたかたは専用のアプリ、またはサイトからご注文いただけます。お値段はブーケによって異なりますが、送料込みで2,200円ほどから購入できます。詳しくは「FLOWER」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎「FLOWER」:https://flowr.is

 「ハロヨン」は一箱5色入り、箱ごとにクレヨンの色が違うのでどんな色が入っているか、開けるときのワクワク感もあります。価格は一箱税込で1,980円。ご注文は「COSME no IPPO」のオフィシャルサイトから、どうぞ。

◎「COSME no IPPO」:https://cosmenoippo.official.ec

<「ハロヨン」プレゼントの応募方法>

「ハロヨン」
「ハロヨン」を抽選で3名のかたにプレゼントいたします。
応募はメールでお願いします。
件名に「プレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。

   メールアドレスはflint@bayfm.co.jp

あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。
番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。

応募の締め切りは4月28日(金)
当選発表は発送をもって代えさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。

生き物の世界は謎だらけ! だから面白い!〜研究&論文のエッセンスを楽しもう!

2023/4/16 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、おもにウミガメやクジラなどの海洋動物を研究されている「きのした・ちひろ」さんです。

 きのしたさんは岡山県生まれ。子供の頃から生き物が大好きで、虫や魚をつかまえて、おうちで飼ったり、動物園や水族館に行くのが大好きだったそうです。そして東京大学大学院から東京大学・大気海洋研究所を経て、2022年から名城大学に特別研究員として在籍されています。

 専門は、生き物の行動を、繁殖の視点で研究する「行動生態学」、そして水中に潜る動物の体内で、何が起こっているのかを明らかにする「潜水生理学」ということで、おもにウミガメや海鳥を研究。その一方でイラストレーターとしても活動されています。

 きょうはそんなきのしたさんに、生き物の不思議で面白い行動や生態についてうかがいます。

☆写真&イラストレーション協力:きのしたちひろ

きのしたちひろさん

「バイオロギング」という手法でウミガメを研究

※実はこの番組できのしたさんを知ったのは、葛西臨海水族園のイベント情報で、「ウミガメの研究者で、イラストレーター」と紹介されていて、ぜひお話をうかがいたいと思ったからなんです。

 きのしたさんのおもな研究対象がウミガメなんですよね。どんな研究をされているんですか?

「私は野生のウミガメの、海の中の行動や生態について8年間ほど研究しています。特にアカウミガメという種類のウミガメを対象としているんですけど、ウミガメはマッコウクジラなどと同じように肺呼吸動物であるにもかかわらず、数時間、息をこらえて潜ることができます。
 潜ってそこで何をしているのか、あるいは体の中はどうなっているのかっていうことについて興味を持って調べています」

●水族館では水槽の中を泳ぐウミガメを観察できますけれども、海を広く泳ぎ回って潜ったりするウミガメはどんな方法で研究するんですか?

「(海を)広く泳ぎ回るウミガメたちを、生身の人間が追うのは非常に難しいっていうか無理なので、私たちのチームはウミガメにできるだけ負担にならないような、小型の機械でカメラが付いた、深度とか泳ぐ速度が分かるような装置、データロガーって言われるものなんですけど、これを取り付けて、海の中の行動を追うバイオロギングと呼ばれる手法を使って研究をしています」

●バイオロギング!? その研究方法からどんなことが分かってきたんですか?

「本当にたくさんあるんですね。例えば、私たちはずっと岩手県でウミガメの研究をしているんですけど、そこに来るアカウミガメは結構広い範囲を泳ぐんです。日付変更線を越えるぐらいまで泳いで行ったりとか。

 あるいは、ウミガメは暖かいところにいるイメージがあると思うんですけど、移動経路を見てみると、北方領土の歯舞諸島とかあの辺まで泳いで行っている個体もいることが分かりました。今まで想像していたのより広いなっていうことが分かりましたね(笑)」

(編集部注:きのしたさんによれば、ウミガメは日本にはアカウミガメ、アオウミガメ、ヒメウミガメ、オサガメ、タイマイの5種とアオウミガメの亜種としてクロウミガメが生息しているそうです。ちなみに、千葉県はアカウミガメの産卵の北限にあたり、一宮あたりの砂浜で産卵することがあるそうですよ)

論文のエッセンスをイラストに

『生きもの「なんで?」行動ノート』<

 きのしたさんが先ごろ出された本『生き物「なんで?」行動ノート』を拝見させていただきました。論文で発表されているような内容が元ネタになっているんですね。本には昆虫、魚、鳥、哺乳類など生き物全般の、その行動の理由などがイラストと手書きの文字でとても分かりやすく載っていましたけれども、これだけ多くのネタを集めるのは、すごく大変だったんじゃないですか?

「全部で52個プラス、細々としたコラムが8〜9個くらいあるんですけど、ネタ集めに関しては、学会に参加してすごく面白いと思った話とか、あるいは専門書を読んだりとか、あとは学術雑誌のサイトがあるので、そういったものを行ったり来たりしている間に自然に集まったのかなという気がします(笑)」

●そもそもこの本を出そうと思ったきっかけは、何かあったんですか?

「生き物の不思議とか面白さを取り上げた本は結構あるんですけど、その生き物の不思議がどうやって明らかにされていくのかっていう、そのプロセスに注目した本があまりないなっていうか、多分当時ほとんどなかったと思うんです。

 そういったものを解説するのに、学術論文の流れというのが非常にいいのかなと思っていて、それらのエッセンスだけを抽出して、全部イラストにしてみたら、もしかしたら子供から大人まで楽しめるんじゃないかなっていうので、思い切ってやってみた感じです」

ザトウクジラの「トラップ・フィーディング」!?

※それでは、きのしたさんの本『生きもの「なんで?」行動ノート』から、面白い生き物の生態を、いくつか解説していただきましょう。

 まずは「あせった魚をだますザトウクジラ 」、これはザトウクジラのフィーディング、つまり、どうやって獲物をとって食事をするか、なんですが・・・説明していただけますか?

「ザトウクジラは世界中にいるクジラなんですけど、場所によって、いろんな餌の採り方をします。有名なのが『バブルネット・フィーディング』です。泡を出してカーテンみたいなものを作って、そこに小魚を閉じ込めて、下からまるのみして食べる、そういった食べ方が有名なんですね。

 それ以外にも海底を(あごで)ねこそぎスコップみたいな感じで掘り出して、海底の生き物を食べたりとか、魚が集まっているところに突っ込んで食べたりとか、結構多彩なことをしているんですけど、実はアクティヴに動かないやり方があって・・・(笑)。

 口をぼーっと開けているだけで、魚が口の中にピュンピュン入っていくみたいな・・・『トラップ・フィーディング』って言うんですけど、そういうフィーディング方法が報告されつつあります。

 口を開けると何が起こっているかっていうと・・・そのトラップ・フィーリングをしている場所は、海鳥に追い込まれているような魚たちが多いんです。クジラが影になってやることによって、ここだったら海鳥から襲われない避難所だと思って、魚が勝手に(開けている口に)入ってしまう、それをクジラが食べる、そういったトラップ・フィーディングというやり方が報告されていて、面白いなと思って取り上げました」

写真&イラストレーション協力:きのしたちひろ

●クジラと言えば、ヒソヒソ声で話すミナミセミクジラも本に載っていましたよね。

「そうですね。クジラは沖合にいるだけじゃなくて、割と浅瀬のほうにも寄ってくるんですね。親子で結構コミュニケーションをとっているのが、ミナミセミクジラと呼ばれるクジラなんです。コミュニケーションをとっているのは、それはそれでいいんですけど、その海域にはシャチもいて、シャチは天敵なんですよね。

 見つかると本当にやばいんで、声をできるだけ、親子間ぐらいで聞こえる範囲の、すごくヒソヒソした声で、シャチにギリギリ見つからないぐらいのコミュニケーションの取り方をしているのが、面白いなと思って紹介しました」

●あんなに大きなクジラが小さく囁いているんですね。

「水中はすごく音が通ってしまうので、本当に小っちゃい声だと思います」

フルーティーな匂いでメスを誘惑!?

※きのしたさんの本『生きもの「なんで?」行動ノート』から、続いては「ワオキツネザルの魅惑の体臭」。生き物にとって、匂いは大事なんですよね。

「そうですね。ワオキツネザルが面白い動きをしているのは、結構前から言われていたんですけど、尻尾を手でこすって何をしているんだろう? っていうのをしっかりと調べた研究がありました。

 手の付け根にフローラル・フルーティーの香りがする、臭腺(しゅうせん)みたいな匂いが出る腺があるんですけど、そこから匂いを出して尻尾にこすりつけて、尻尾をブンブン振ることによって、メスにアピールしているというような・・・香水をふるような感じですかね、人間で言うと・・・」

●人間の男性もアピールするためにコロンをつけたりとかしますけど、まさにそんなような感じですよね?

「はい、同じ感じだと思います。(フローラル・フルーティーは)結構いい匂いなのかな? 私も実際嗅いだことはないんですけど・・・」

写真&イラストレーション協力:きのしたちひろ

●へぇ〜、嗅いでみたいですね。ほかにも本にメスのライオンの狩りの話が載っていて、得意なポジションで集団ハンティングをするんですよね?

「これも非常に面白いというか、サッカーとかラグビーのポジションみたいなのが、実はメスのライオンが狩りをするときにはあって、センターとか左右のウイングに分かれているってことが報告されている論文なんです。

 獲物を追い立てる時にみんなが散りじりになるんじゃなくて、それぞれに馴染みのポジションがあって、そこにきちっとハマった時には、狩りの成功率がすごく高まることが分かったっていう研究です」

●本当にスポーツみたいですね。ポジショニングされているんですね!

「本当にそうですね。かっこいいです」

●あと本には、ぐるぐる回る海洋動物の謎というのもありましたね。海の生き物は観察が難しいと思うんですけど、どんな生き物がぐるぐる回ることがわかったんですか?

「ぐるぐる回っているのは本当に理由は謎なんです。機械みたいにぐるぐる回っている動物としては、アオウミガメ、キングペンギン、ナンキョクオットセイ、アカボウクジラ、ジンベイザメ、イタチザメっていうふうに、魚から哺乳類までバラバラで、いろいろと考察はされているんですけど、本当に謎の行動っていうことで紹介しています」

●なんで回るんですか?

「もう本当にこれは、なんで? っていうのはめちゃくちゃ難しいんですけど、(ぐるぐる回るのは)潜水艇とちょっと似ているかなと思っています。潜水艇が深海に潜っていく時に、どっちが北でどっちが南か、方位を定める時にぐるぐる回りながら補正をしていくという動きをします。

 結構それに似ていて、特にアオミガメは生まれた砂浜に卵を産みに行くんですけど、方向転換が必要な要所要所でぐるぐる回っていたので、もしかしたら方向を定めるようなナビゲーションに使っているのではないかと考えているんですね。でも明らかにするのはこれからで、分からないっていうのが今の段階です」

研究とは、研究者とは

※生き物の世界は謎だらけ、だと思うんですけど、だからこそ、面白いんでしょうね。

「そうですね。例えば、夕方になると公園とかにコウモリが飛んでいると思うんですけど、一晩のうちに1000匹近く蚊を食べていて、すごい頻度だと思うんですね。そんな身のまわりで繰り広げられている生き物のドラマ、そういった行動が分かるようになってくると、散歩するだけでも非常に幸せな気持ちになるというか・・・。

 あとは目の前の生き物はいろんな進化の過程があって、今ちょうどここにいるっていうわけなんですけど、例えばこれが少しでも過去のシナリオが違っていたら、全く別の状況になっていたことを妄想するだけでも、すごく楽しいし奇跡的だなと思ったりもします」

●今、研究者としていちばん明らかにしたい謎はありますか?

「動物たちは環境によって、体の中の状況をすごく柔軟に変えることが、クジラやウミガメ、そういったものを通してわかってきました。 例えば餌の少ない環境にいると、人間でもそうなんですけど、飢餓状態みたいになって、体を維持するためのカロリー量とかエネルギー量がどんどん少なくなって、調節されていくことが知られています。

 こんなふうに環境変動に対して、動物がどんなふうに体の中の状況を変えていって、地球温暖化や気候変動とかに対応できるのか、対応しているのか、そういうことを今後明らかにしていきたいなと思っています」

●では、最後にこの本『生き物「なんで?」行動ノート』を通して、どのようなことを伝えたいですか?

「この本では、おっしゃっていただいた通り、生き物の行動の面白い謎をたくさん紹介しているんですけど、それに加えて研究とは何かを本の中でアピールしています。

 研究者は最近、メディアとかにも出演されることが多いと思うんですけど、その研究者たちの普段の研究のプロセスとか、あとは研究者がどういう生活をしているのとか、どうやって研究者になるのとか、そういったものを良くも悪くも知ってほしいなと思って、本の中にコラムをたくさん入れています。

 例えば、お子さんが突然、”僕は生き物の研究者になりたい! 目指したい!”って言ったら、多分困惑される親御さんは多いと思うんですけど、そういった親御さんにも見ていただいて、あっ、こういうものなんだっていう現状を知ってもらいたいっていう、そういうメッセージがあります」

写真&イラストレーション協力:きのしたちひろ

INFORMATION

『生きもの「なんで?」行動ノート』

『生きもの「なんで?」行動ノート』

 この本では、小さなアリから大きなクジラまで、いろいろな生き物のユニークな行動や不思議な生態が、可愛いイラストと手書きの文字で紹介されています。とてもわかりやすいし、楽しめますよ。おすすめです! 
 SBクリエイティブから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。

◎SBクリエイティブHP:https://www.sbcr.jp/product/4815612382/

 きのしたさんのイラストレーターとしての活動などについては、オフィシャルサイトを見てくださいね。

◎きのしたちひろさんHP:https://lunlundi.com

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    2025/7/27
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    オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」 M1. MORE THAN A MEMORY / CARLY RAE JEPSENM2.……

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