2021/11/7 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、新進気鋭の映像人類学者「太田光海(おおた・あきみ)」さんです。
太田さんは1989年、東京都生まれ。神戸大学卒業後、パリに渡り、人類学の修士号を取得。その後、英国マンチェスター大学・グラナダ映像人類学センターに在籍しているときにアマゾンの熱帯雨林の村に1年間滞在、その成果を映像作品にまとめ、博士号を取得されています。
太田さんの初監督作品、ドキュメンタリー映画『カナルタ〜螺旋状の夢』は、その斬新な手法と内容が高く評価され、海外の映画祭で数多くの賞を受賞!
ちなみに映像人類学とは太田さんによれば、自分の研究を社会に伝える方法が、映像だったり、写真だったり、音であったりとされていて、日本には専門の学校がなく、マンチェスター大学やハーバード大学などが有名だそうです。
きょうは日本でも公開中の同映画をクローズアップ! 太田さんの、アマゾンの森の先住民たちと暮らした日々と、映像に込めた思いに迫ります。
☆写真協力:太田光海
セバスティアンとの奇跡的な出会い
※まずは映画のタイトル「カナルタ」にはどんな意味があるのか、教えてください。
「”カナルタ”というのはシュアール語で”おやすみなさい”という意味がありますね。毎日、夜寝る前にみんなで言い合う言葉です。同時に”いい夢を見なさい”という意味や、”いいヴィジョンを見なさい”という意味も含まれているんですね。
寝るということはつまり夢を見ることと同じだし、その夢を見るということはビジョンを見る、自分自身が何者なのかを知るという意味も含まれているという、深い意味があるなと思いまして、それでこのタイトルを選びました」
●撮影場所は南米エクアドルということですけれども、どのあたりなんですか?
「エクアドルの若干東のほうに、アマゾンと呼ばれるいわゆる熱帯雨林が広がっていまして、その中のちょっと南のほうですね」
●シュアール族という先住民が暮らしている村っていうことですよね?
「シュアール族の村はたくさんあるんですけど、その中で集合的にその辺に住んでいると・・・」
●だいたい何人ぐらいの村になるんですか?
「僕がいた村は200人ぐらいですね。ただ子供の数がすごく多いので」
●そこに太田さんがおひとりで行ってたんですか?
「そうです。完全にひとりで行きました」
●ええ!? 怖いとかそういった気持ちはなかったですか?
「正直、最初はそういう不安とかもありますけど、アマゾンと呼ばれる地帯に入ってから、もう少し奥に行かないとその村に入れないので、その村に入る時点ではある程度、そういう怖さみたいなものに慣れていましたね」
●映画の主な登場人物が(シュワール族の)セバスティアンというかたでした。このかたとは、どのようにして出会ったんですか?
「偶然と言えば偶然です。なぜかと言いますと、彼らの村というのは基本的に地図に全く表示されないんです。住所という概念が存在しないので・・・僕のような外部の人間が行きたいと思っても、そもそもどこにあるのかも分からない、行きかたも全く調べようがない場所にあるので、人に連れて行ってもらうしか方法がないんですよ。
僕は一回、エクアドルの首都のキトという町に飛行機で着きまして、1〜2週間そこに滞在して、その間に知り合いのかた、友人を介して紹介してもらった現地のかたに何人か会って、その人たちに、アマゾンでこういう映画を撮りたくて研究もしたいんだけど、どうすればいいだろう? ということを聞くわけですね。
そうすると、彼らが、僕がアマゾンの人を直接知っているわけじゃないけど、僕の知り合いで、アマゾンの人を知ってそうな人がいるよということで、また紹介してくれたりするんですね。
そういうのを繰り返していくと、ある時から、シュアール族なんですけど、今はちょっと都市に住んでいるよっていう人もいるので、そういう人と繋がったりします。
その人に同じような内容、こういう映画が撮りたくて、こういうことに興味があるんだけどっていう話をした時に、その人が、そういうことならうってつけの人がいるから連れて行くよということで、連れて行かれたのが、そのセバスティアンの住む村でした」
注釈:セバスティアンは、年齢は50歳くらい。長い黒髪で火焼けして精悍。家族構成は奥さんのパストーラと5人の子供たち。森から調達した木で建てた家で生活。服装は民族衣装を着るときもあるようですが、Tシャツやズボンなど着用し、プラスチックの容器なども使用。村の仲間たちと助け合い、伝統を大切にしながら、現代文明の恩恵は受け入れるところは受け入れています。
太田さんがいうには、村にはゆったりとした時間が流れているとのことでした。ちなみに言葉はスペイン語とシュアール語で会話していたそうです。
出されたものは全部平らげた!?
※いきなり見ず知らずの人が村に行くと、警戒されたりすると思うんですけど、太田さんは、どうやって信頼関係を築いていったんですか?
「いろいろやりかたはあって、本当に些細なことの積み重ねなんですけど、ひとつ、すごく大きかったなと思うのは、僕が彼らが出してくれたご飯や飲み物を、もう全部、嫌な顔せずに平らげたというのが、多分彼らにとってはすごく大きかったかなと。
やっぱり人間誰しも、日本でもそうだと思うんですけど、自分たちがめちゃくちゃ美味しいと思っているものを外の人に、これすごくまずいよとか、これはよく分かんないから手を付けられないとかって言われたら、ちょっとショックというか、傷付くじゃないですか。
多分そういう感覚が彼らもあって、彼らの料理には口噛み酒っていう唾液の中の微生物で発酵させた、自家製のお酒みたいなのもあるんですけど、ああいうのってエクアドル国内の人でも、アマゾン出身じゃない人ってやっぱり手を付けにくかったりするんです。
彼らはそれを知っているので、僕が村を訪ねた時に、躊躇せずに全部飲んだんです。その時に彼らは、この人は何でも食べるし、飲んでくれるということになって、すごくみんながいろいろものをくれるようになって、そこから仲よくなったなと思いますね」
●実際そういった食事は、太田さんの中でちょっと美味しくないなっていう感じもありました?
「美味しくないって感じたことは正直ほとんどなくて、すごく本当に美味しいんですよ。というのも、彼らの食材って全部すごく新鮮で、何もしなくてもナチュラルに有機栽培なんですね。彼らは農薬とかわざわざ手に入れるために動くわけではないので、そのまま生えているわけですから、だから採れたてで有機栽培だと。
で、アマゾンの土地のエネルギーというか、栄養価もすごく高いので、単純に素材としてすごく美味しかったです。ただ、同じようなものをずっと食べているので、僕らにとっての白ご飯みたいなものかもしれないですけど、時々ちょっと違うものを食べたいなっていうのは正直思いましたけど(笑)、基本的にはすごく美味しいです」
少子化!? それでいいのか!?
※太田さんはシュアール族の村に1年滞在されましたが、撮り貯めた映像は35時間だったんですよね。映画を作るにしては、とても短い気がしたんですけど、撮影以外には何をしていたんですか?
「撮影以外には、本当に彼らと同じ生活をなるべくしようとしていました。彼らが森で作業する時は僕も映画にも出てくる鉈ですね、あれを持って、僕も自分用の鉈を手に入れて一緒に作業したり、魚を捕る時は一緒に川で魚を捕ったり、もう本当に彼らと同じようなことをできるだけやろうとしました。
あとはもうたくさん彼らと話しましたね。いろんな話を聞いて、研究者としてとかインタビューする人としてではなくて、ひとりの人間として、僕の人生についてもいろいろ話しましたし、そういう個人的な関係を作るようにしましたね」
●例えば、どんな話をされたんですか?
「僕の家族の話ですとか、彼は結構、興味津々なので・・・当時、僕はイギリスに住んでいたんですけど、マンチェスター大学にいたので、そのイギリスでの生活とかについて彼らに話すんですけど、彼らは僕らの生活がすごく不思議なんですよ。
例えば、僕は東京出身なんですけど、東京ではこういう家がたくさん建っていて、渋谷の話をすると、すごく高いビルがたくさん建って、電車が何本通っていて、人がめちゃくちゃたくさんいて、みんな会社とかに勤めている・・・日本では最近少子化というのがあって、みんななかなか子供を持ちにくいとか、そういう話をすると、何で!? ってなるんです。
何で子供がいなくて君たちはそれでいいの? みたいな感じなんですけど、そういう話、パソコンに向かうのはなぜ? って聞いてくるわけです。パソコンに向かって君たちは何しているの? みたいなこと言われるんですけど、そういう時に、確かになんでだろう? みたいなことを思うんです。そういう素朴な話とかをいろいろしました」
●太田さん自身の人生を振り返るいい機会にもなったような感じですね。
「そうですね」
●確かに村ではすごくお子さんも多いとおっしゃっていましたよね。
「やっぱり子供がたくさんいて、家族がみんな健康で幸せであるという、単純な話なんですけど、そこをすごく彼らは重視していますね」
鬱蒼とした熱帯雨林を歩く能力
※映画『カナルタ〜螺旋状の夢』を見ていると、主人公セバスティアンの存在感が際立ちます。彼は神話、薬草、歌に詳しい文化的なリーダーとして尊敬されていて、薬草を使って村人の治療もします。ちなみに村の政治的リーダーは奥さんなんです。
映画の中でセバスティアンと一緒に森を歩くシーンが多くありましたが、一緒に歩いていて、驚くことがたくさんあったんじゃないですか?
「ありましたね。驚きの連続過ぎて、何から話していいかちょっと分からないんですね。いちばん最初にやっぱり衝撃だったのは、彼らが森を歩く時のスピードというか、全てなんですけど、僕が急に森に入ってもそもそも歩けないんですよ。
障害物がまず多すぎる。日本で例えば登山やハイキングに行くと、確かに自然に溢れた場所に行けるんですけど、階段があったりとか、道がとりあえず舗装されていたりっていうのはある程度あると思うんですね。
そういうのがアマゾンはもう一切ない。木が倒れていたら、その木は倒れたままだし、そこを人間が行く時はそれを飛び越えていくわけですよね。その上にはたくさんの蔓性植物がとんでもない量で垂れ下がっているんですけど、そこに枝もあって、そういうのを全部避けながら進んでいくわけです。
しかもその地面は泥だらけだったり、どこに沼があるか分からない。急に足がズボって本当に1メートルぐらい中に入ってしまうってこともあります。その上、横から急に蛇が襲ってくる可能性もある。毒蛇に噛まれると結構、死に至る可能性もあるので、そういうのを全部気を付けながら前に進んでいくわけですよ。
僕は最初それはできなくて、ものすごく歩くスピードが遅かったんですけれども、彼らは僕が普通に街を歩くのと同じスピードで、そこを歩いていくんですね。その時に僕が目で1回確認して、大丈夫だなっていって進むみたいな、そういう感覚ではここでは生きていけないんだなってことは気づきました」
“似ている”から始まる薬草の見つけ方
※映画の中にセバスティアンが薬草を探すシーンが収められていました。彼はどうやって森の中で薬草を探し出すんですか?
「彼は、むやみやたらに自分の知らない薬草を食べているわけではないんですね。彼はもともと、先祖から受け継いできた薬草の知識を、ある程度は持った状態で独自の研究に進むわけですね。
彼が薬草を見つけるにはどうするかというと、”似ている”というところから始まるんですよ。この葉っぱやこの草は、僕が知っているこの病気に効くあの草にすごく形が似ているぞとか、匂いが似ているぞとか、そういうところから始まるんですよ。匂いが似ているってことは、同じような効果があるんじゃないかって考えるわけです。
もしくは、映画のシーンにも出てくるんですけれど、その植物の生き様のようなものを見るんですよ。例えば、形がまるで蛇のようだとか・・・僕がちょっと笑っちゃったのは彼が、髪の毛がすごくふさふさしているように見える草を見つけた時があって、一緒に僕がいた時に、彼は“この草はまるで髪の毛のように見える”、ということは、これで髪の毛を洗ったらいいんじゃないかみたいなことを言い出して・・・実際に効果があったのか分からないんですけれど、彼はそうやって植物自体が持っている姿とか、ある種、主張していることを、ひとりの人間と接するように見るわけです。
そこでこの植物にはこんな力があるんじゃないかって予測を立てていくわけですね。実際に食べたり試したりして、なんか効くなって思ったら、そこからだんだん調べていくと、そういうプロセスですね」
●へぇ〜それでどんどん知識が増えていくわけですよね。
「そうですね。増やせば増やすほど、もちろん比較出来るものがどんどん増えていくので、それでまた新しいものが分かってきたりとか。
面白いのは、薬草っていうと植物が思い浮かぶんですけど、彼らはアリもそうですし、ほかの動物も含めて、虫とかも含めて、身体にいいものは薬なんだっていう認識をしていて、そこはあまりほかの研究書を読んでも載っていなかったようなことなので、面白い発見でしたね」
自分の未来を見る儀式
※映画の中の印象的なシーンとして、薬草から作った飲み物を飲むことで「ヴィジョン」が見えてくるとセバスティアンは言ってました。これはシュアール族の、先祖から伝わる儀式のようなものなんですか?
「これは本当に、彼らの重要な部分ですね。劇中に出てくるのは“アヤワスカ”と呼ばれる覚醒植物の薬草なんですけど、あと“マイキュア”という別の薬草も出てきます。彼らにとってはすごく重要な植物で飲むと、ちょっと身体の感覚が変わって、夢を見るような状態になるんです。同時に吐いたりとかするんですけど、劇中で出てくるように・・・。
そこで見えたものを自分の中に落とし込んで考えることで、自分の未来を一部垣間みることが出来るっていう風に彼らは考えるんですね。常にそこから得たイメージと対話しながら人生を生きているというか、そういう世界ですね」
●映画の中でもセバスチャンが「森を破壊することは自分を破壊することだ」とおっしゃっていましたけれども、太田さんがこの映画を通して伝えたいことっていうのはこういったことにも繫がってくるのですか?
「間違いなく! 伝えたいことのひとつとして大きなものです。それは決して彼らだけではないと思うんですよね。彼らはもちろん、それが直接的に感じられる場所にいるので、そういう風にダイレクトに言葉が出てきますけれども、僕らも同じ世界に生きているわけで、巡り巡って本当はしわ寄せは来ているかも知れないし、今後来るかもしれないわけですよね。
だからそれを、なかなか僕らは日々のせわしない生活の中で感じることは難しいんですね。でもこの映画があることで、彼らはどういうプロセスと生活の中で、そういうことを言うに至っているのかということを、ちょっとでも垣間みることが出来たらいいなって思っています」
●映画の最後にセバスチャンが太田さんに、薬草で作った飲み物を手渡していましたけれども、あれは全て飲み干されたんですか?
「はい、飲み干しました! 」
●お〜! ヴィジョンは見えました?
「見えたと言えば見えたし、見えなかったとは言いたくないですね。見えたと言えば見えました。それを解釈するのは僕自身なので、今後の人生がどうなっていくのかっていうのは楽しみなところですね」
INFORMATION
『ドキュメンタリー映画『カナルタ〜螺旋状の夢』
太田さん渾身の一作、ドキュメンタリー映画『カナルタ〜螺旋状の夢』をぜひご覧ください。実は構想から完成までおよそ7年を要した力作です。海外の映画祭で数多くの賞を受賞しています。淡々と流れていく映像・・・2時間を超える作品ですが、釘付けになりますよ。
首都圏では現在、神奈川の横浜シネマリンで上映中。11月28日からは同じく神奈川のシネマアミーゴで上映される予定です。上映スケジュールなど、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎『カナルタ〜螺旋状の夢』オフィシャルサイト:https://akimiota.net/Kanarta-1
2021/10/31 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、イラストレーターでブッシュクラフターの「スズキサトル」さんです。
スズキさんは1973年、山形県生まれ。京都造形芸術大学を卒業。絵本制作とブッシュクラフトワークの活動をするために、東京から長野県・松本に移住。現在はイラストの制作ほか、ブッシュクラフトや野営のアドバイザーとしてワークショップを行なうなど幅広く活動中。絵本などの著作も多く、新刊としては先頃『森のブッシュクラフト図鑑』の新装改訂版を出されています。
この本は、野外でナイフなどの道具を使って必要なものを作る、その技術や知恵をイラストや写真でわかりやすく解説していて、とても好評なんです。
きょうはそんなスズキさんに究極のアウトドアスキルといわれる「ブッシュクラフト」の極意や、必要な道具についてお話しいただきます。
☆写真協力:スズキサトル
野営とキャンプ
※まず、ブッシュクラフトとは何かご説明しておきましょう。ブッシュは「やぶ」、クラフトは「工作」ですよね。でも、ふたつの言葉が合体すると、「生きる知恵」という意味合いになるそうです。
必要最小限の道具を持って、自然の中に出かけ、足りないものは自分で作ってキャンプをするなど、慣れれば、誰でも楽しくできる「自然遊び」と言っていいかも知れません。そんなブッシュクラフトは、自然の中で生きる知恵を身に付けられる、ということで、ここ数年、特にキャンプ好きに注目されています。
スズキさんは、新刊『森のブッシュクラフト図鑑』新装改訂版の第1章で、「野営とキャンプ」の違いについて書いていらっしゃいます。改めて説明していただけますか。
「キャンプは、要するにキャンプ場という場所がちゃんと提供されていて、車でそこまで行って、そこでテントを張って一夜を過ごすのがキャンプですけど、ブッシュクラフトはひとりでバックパックを背負って、その背負っている道具だけで山の中に入って、焚き火して野営して帰ってくるみたいな、そういう感じですね。
ただ、日本だとやっぱり土地の所有者の関係で、そういうことは難しいので、ある意味、ブッシュクラフト風キャンプみたいな感じだと思うんですよね。ソロキャンプに近いかもですね。みんなで大勢集まって、道具を持ち寄ってやるのも楽しいんですけど、ブッシュクラフトってひとりとか少人数で焚き火して、限られた道具で・・・だから誰でもできるんです。お金もかけようと思えば、すごくかけたりできますけど、お金をかけないようにしようと思えば、全然かけなくてもできるし、幅が広いですね」
●野営に必要な道具を自分で作るっていうのも醍醐味なんですか?
「そうです。例えば、売っている製品を使ってもいいですし、自分でナイフ1本でそれを作って代用するっていうのも、ブッシュクラフトの面白さですね」
●サバイバルに近いですよね?
「サバイバルは危機的状況、例えば自然の中で困難に陥った時にそこから脱出するのがサバイバルなんですよね。サバイバルの火起こしとか、野営する技術を使って。で、ブッシュクラフトは全く真逆で、自分から自然の中に入って、自然と共に時間を過ごして、楽しく帰ってくるアクテビティに近いかも・・・遊びに近いですよね(笑)。
そんなこと言っている僕も実はマンションに住んでいるんですね。だからずっと自然の中にいることって難しいんで、遊びっていう風に考えてもらえるといいかもですね。何がなんでもブッシュクラフトっていうんじゃなくって、例えばキャンプでブッシュクラフトの技を使ったりとか、そういう程度でいいんじゃないかなと思います」
●日常とはまた違った空間で過ごせそうですね。
「女の子も結構、最近そういうのを好きなかたがたくさんいらっしゃいますね。意外と女の子のほうが多いかもしれないですね。さばいどるの“かほなん”さんとか、あのかたがやっていることって、結構ブッシュクラフトに近いところがたくさんあるんですよね。お笑い芸人さんでいうと、ヒロシさんのキャンプもブッシュクラフトのそういう技をたくさん使っていますね。とても素晴らしいと思います」
ナイフ、ノコギリ、メタルマッチ
※ブッシュクラフトや野営に最低限、必要な道具を教えてください。
「まずナイフですね。これちょっと専門のナイフなんですけど、スカンジグラインドっていう刃が直刃になっているやつなんですけど、刃厚も4ミリくらい。これだと薪が割れるんで、このぐらいのナイフがあるといいですね、フルタング(*1)で。
あとノコギリ。僕がいつも持っていくノコギリは、枝挽ノコギリで(長さは)30センチくらい。この鞘は僕が作ったんですけど、丸太を伐ったりとかできるんで、とりあえずこのノコギリと、あとはメタルマッチ(*2)ですかね。これA&Fさんのメタルマッチなんですけども、こういうものが売られているんですね」
(*1 刃がハンドルの後ろまで貫通しているタイプ)
(*2 火を起こす道具。ロッドというマグネシウムなどの
金属の棒を、ステンレス鋼などのプレートで
削って火花を飛ばし、火を起こす)
●(メタルマッチで火花を飛ばす実演)
おお! 火が出ました!
「これでこのフェザースティックに火を付けると」
●木を細かくしておくと、すぐに着火がするっていうことなんですね。
「メタルマッチは水に濡れても使えますしね」
●カギかな? って、一瞬思ったくらい、それくらい小さいんですね。
「そうですね。特にA&Fさんのメタルマッチがいいのは、持ち手のところがオレンジになっていて、普通だいたい黒っぽいものなんですけど、それだと結構落としたりとかして外で失くすんですよね(笑)。落とした時に森の中だと落ち葉とかで隠れて、(持ち手が)黒や緑色だと見えなくなっちゃうので、このオレンジのほうがいいかもですね」
●なるほど〜!
「特に初めてのかたは失くしやすいんです。僕も何回も失くしているんで、(持ち手は)オレンジがいいと思いますね。
で、このナイフ、僕がデザインしたやつなんですけど、ちょっと高いんですね。こういうものじゃなくても、例えばモーラナイフっていうメーカーさんがすごくリーズナブルなお手頃価格のナイフを作っているんですよ。2000円くらいの、ロバストって種類なんですけども、これでもいいですね。
カスタムナイフは何万円もするんで、なかなかそれを買うのは難しいんで、こういうモーラナイフさんのロバストはおすすめですね。あとノコギリも先ほどのような長いものじゃなくて、(長さが)12センチくらいの、ホームセンターで売っているようなノコギリでも大丈夫ですね」
●折り畳みもできて、コンパクトになるんですね?
「このノコギリがいいのは、刃の背のところ、これも実はこういう・・・」
(火花を飛ばす実演)
●おお! また火花が出ました! (笑)
「これもストライカーみたいに(マグネシウムの金属棒を)削ることができるんで、こういう方法もできますね。だから道具は多ければ多いほどいいっていうものでもなくて、本当に必要なものだけ持っていくっていうのがいいのかもですね」
山で培われた日本のブッシュクラフト
※日本にはクマやシカなどの狩猟をなりわいにしている「マタギ」や、山で木を素材にお碗などを作る木地師(きじし)というかたがちが、いまは少なくなっていますがいらっしゃいます。そんなかたたちの技術や知識はブッシュクラフトに通じますよね?
「そうです、そうです! ブッシュクラフトは西洋のものなので、どうしても北欧や北米、イギリスやロシアとかのブッシュクラフトが今すごく人気で流行っているんですけど、僕たち日本人の、またはアジア人のブッシュクラフトも実はすごいんだぞ! っていうのを、僕はお知らせしたいなっていう感じなんです」
●何か大きな違いとかはありますか?
「そうですね。大きな違いはやっぱり、特に日本人は山岳民族だと思うんですよね。国土のほとんどは山、特に険しい山に囲まれて、僕が今生活している信州もそうですけど、山岳地帯が多いんですよね。だから傾斜が多い(場所で培われた)ブッシュクラフトなんですよね。
カナダやフィンランドなどの北欧は大雪原やツンドラ、あとはすごく背の高い木がたくさん生い茂っているところとか、高い山はそんなにはないんですよね。どっちかっていうと平原をスノーシューで渡って移動したりとか、犬ゾリとか、イヌイットもそうですけど、そういう文化。日本でいうと北海道に近いのかもしれないですけど、日本の場合はやっぱり山ありきなんで、山で移動するっていう、そういう野外技術が多いと思うんですよね」
羽根ペンで風景画
※スズキさんは絵をかくために山によく出かけるそうですが、山の絵を描いているときはどんな気持ちなんですか?
「山の絵は、僕は風景を描いているっていう感じじゃなくて、生き物を描いている感じですね。僕、山の絵を描く時はこの羽根ペン、これ“鳶(とび)”の羽根ですけど、この羽根ペンを使って絵を描いています」
●ハリーポッターに出てくるような(笑)
「そうそう、丸眼鏡でね!(笑)。笠かぶってね、そうハリーポッターみたいな・・・」
●へえ〜!
「やっぱり、画材も自分で作るのがブッシュクラフトなのかなと」
●いいですね!
「何かしら作るのが好きなんですね」
●山や森で野営をしていて、どんな瞬間がいちばんお好きですか?
「やっぱり自然、同じ山も何回も登りますし、毎回ちょっと自然って勉強させられることがたくさんあるっていうことですね。気付くというか気付かされるところがありますね。それが楽しいですね」
●例えば、どんなことを?
「ここにこんな虫がいたのか! とか、例えば写真で見るようなものとはまたちょっと違う、そういう面も見られるという感じですね。今はインターネットとかで検索すれば何でも知ることができるんですけど、例えば蜘蛛の裏側とか、そういうのってやっぱり見てみないと分からない。
あとキノコなんかもそうですね。実際見てみないと分からない。その状況によって違いますしね。そういうのもやっぱり自分の目で見て確かめたほうがいいというか、楽しいですよね! 」
●カメラがなかった時代は、全部絵に描いて残していたってことですよね?
「そうです! やっぱりそれは凄いなと思いますよ。昔の画家っていうか絵描きはみんなある意味アスリートというか、探検家と同じくらいのレベルだったのかなと思って、あんな画材を背負って探検家と一緒に冒険に行くって、凄いですよね!」
忘れ去られた技術にしたくない
※スズキさんの新しい本は、伝統的な道具や技術を、次の世代に伝えるという意味もあると思うんですけど、その辺は意識していらっしゃいますか?
「そうですね。やっぱり誰かがこういうのを書き残したりとかしないと・・・。僕がよく言ってるのは“ロストテクノロジー”と、もうひとつ“ロストカルチャー”。道具自体は残っていたりするんですけど、それの本当の使い方って実際にもう分からなくなってきてるんですね。日常で使うことがないんで、もう本当に博物館に飾っていたりとか、そういうレベルになっちゃうのがたくさんあるので。昔の人は当たり前にやっていた“火打石”とかもそうですね。ああいう方法なんかは、ほとんどみかんの皮を剥くみたいな感じでやっていたと思うんですよね。
今はほとんどそんなことをやる必要もないんで、もう多分忘れ去られた技術になってきちゃうのかなって。でも最近、ブッシュクラフトを通して結構できるかたが増えてきたんですよね。火打金で火起こしできるのが、それはすごくいいなと思いますね」
●人間が本来もっている本能みたいなものですよね。
「そうですね。そうするとまた今度、鍛冶屋さんで火打金を作ってみようかなっていうかたも現れてきますし、またそれで、ひとつの産業が増えるので、いいかなと思いますね」
●この本『森のブッシュクラフト図鑑』を通して、いちばん伝えたいことはどんなことですか?
「そんなに難しいことじゃないですね。みなさん、是非一度ブッシュクラフトをちょっとやってみよう! みたいな・・・まさに全然知らない、やったことない人がやってみるっていうのが僕、すごくいいことだと思うんですよね。
できる、できないは別にして、知るっていうのがすごく最初に必要かなと。こういうものがあるんだよっていうのをちょっと知ってもらいたいなと。分かりやすく、できれば絵でみなさんにお伝えできればいいなっていう意味で、今回また描いてみました。
ただ、前回の『森の生活図集』で載っていたものが、マニアック過ぎた部分がたくさんあって、それで今回、改訂版で普通のかたたちがキャンプでも使えるようなものに、別のクラフトにちょっと差し替えました。
だから例えば、タヌキの“尻皮(しりかわ)”っていうのがあるんですけど、猟師さんが腰に巻いているものとか、そういうのを知りたい人は、『森の生活図集』を是非購入していただいて、キャンプで椅子とかスプーンとか作ってみたいなというかたは『森のブッシュクラフト図鑑』のほうがいいかもですね」
INFORMATION
『新装改訂版『森のブッシュクラフト図鑑〜スズキサトルのクラフトワークブック』
この新装改訂版には道具の選び方や使い方、野営と焚き火のコツなど、ブッシュクラフトの基本となるような技術と知識を、イラストと写真でわかりやすく解説。スズキさんは本の中で「最新のものが最善とは限らない。古い道具や技術を見直してみよう」と書いています。その思いが込められたブッシュクラフトの入門書ともいえる一冊です。ぜひ読んでください。笠倉出版社から絶賛発売中です。
詳しくはスズキさんのオフィシャルサイト、または出版社のサイトをご覧ください。
◎「スズキサトル」オフィシャルサイト:https://suzuki-satoru.com/
◎笠倉出版社HP:https://www.kasakura.co.jp/esp.php?_page=detail&_category=general&idItem=4648
2021/10/24 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、太陽のお祭り男、シンガー・ソングライターの「ナオト ・インティライミ」さんです。
先月、デビュー10周年記念のベスト・アルバムをリリースし、現在ツアー! そんな忙しい合間をぬって、この番組に来てくださいました。ナオトさんといえば、旅好き、それも世界を66カ国も巡った旅人としても知られていますよね。
きょうはそんなナオトさんに旅への思いや、あのヒット曲に隠された切なく暖かいエピソードなどをたっぷり語っていただきます。
アフリカのディープな旅
※ナオトさんと言えばやっぱり旅! ということで、今回は旅にまつわるお話を色々とおうかがいしたいなと思うんですけれども、いちばん最近の旅というと、いつになるんですか?
「そうか、旅しばりね。最近はね、旅っていうよりは世界の活動をするために、LA、マイアミ、メキシコに行くことが多いんですよ。それは旅とは呼んでいないというか」
●活動というのはどういう?
「向こうでデビュー(*)をしまして、向こうで歌っているという、これは旅カウントじゃないので、旅でいくと2017年の19ヵ国、旅したやつでしょうかね」
(*2019年に世界三大レーベルのひとつ「ユニバーサルミュージック ラテン」から世界デビュー!)
●19ヵ国! 例えばどの辺りを旅されたんですか?
「モザンビーク、タンザニア、ジンバブエ、ボツアナ、ザンビア、マダガスカル、南アフリカ・・・西に飛び、ダカール、セネガル、カーボベルデ、ギニアビサウ、ガーナ、トーゴ、べナン、ルーマニア、スウェーデンを旅しましたね」
●すごい!
「今これ、手で地図を描きながら答えてるっていう(笑)」
●旅人っぽかったです! この旅はどんな思いで19ヵ国を周わられたんですか?
「これは本当に久しぶりの長旅で、1年半日本の活動を止めさせていただいて、もうスタッフと何度も話をしてそうなるんですけど、世界の挑戦も始めていきたい・・・ただその前に、もう1回最後の長旅に出たいということでしたね」
●原点に戻るための旅って感じですか?
「そうですね。本当にありがたく、デビューして6年間、2010年にデビューして2016年までの6年間、ファンのかたが応援してくださった、スタッフのかたが支えてくださったおかげで、色んな景色を見せてくださって。ただそこから、ちょっとアウトプットが増えていて、インプットすることが必要だろうと、そういうことでしたね」
●19ヵ国のインプット、すごかったんじゃないですか?
「すごかった! すごかったね〜。特にアフリカはかなりディープな旅になりましたね。しかも行く国も決めず、本当にその時その時の相変わらずの放浪っぷりで、ここで何か起きそうだから、もうちょっと長くいるとか、ここは何も感じないから次に行こうとかっていうのは、感じたままにやっていましたね」
●特に印象に残っている国ってありますか?
「そうだなぁ・・・タンザニアのザンジバル島っていう、アフリカなんだけど、イスラムとか東南アジアの影響や、インドの影響もすごく受けているような、クイーンのフレディ・マーキュリーが育ったと言われている島があるんだけど、そこで『サウティ・ザ・ブサラ』っていう、アフリカ中の200組以上のバンドやアーティストが参加するフェスが4日間行なわれて、あれはくらったな〜。何かもう色んなアフリカ(の音楽)がそこで奏でられていて、すごかったね〜、トランシーでしたね」
サッカーは100の情報を飛び越える!
※旅に出る前に、事前に現地でどこに行こうかなど、計画を立てていかないそうですね。それはどうしてなんですか?
「だって決めちゃうと、何かここから起こりそうなのにその場を立ち去らなきゃいけないわけじゃん」
●確かにそうですね。
「旅人としては何か起きそうだったら、それに従おうよ、直感にっていう」
●見知らぬ国で不安みたいなのはないんですか?
「あるさ〜! 相田みつを、人間だもの、あるけどね! もちろんだから身の危険とか、ここからこう行ったら、ちょっと危ないだろうなとか、崖の感じとか、自分の命に何か危険があるようなことは絶対しないし、そこのアンテナはすごく立てているよね。
人に対しては、これはちょっと難しくて、甘えちゃいけないんだけど、ちょっと飛び込んでみるっていうのが結構大事で・・・男性女性でまた危険な度合いが違うからおすすめってわけじゃなくて、僕の場合の話だけでいうと、例えば現地の人と仲良くなって何かに誘われたと、全部断っていたら面白くない、全部乗っかっていたら騙されると。
ここのさじ加減というか、警戒しながらちょっと乗っかっていって、そいつが本当にいいやつかどうかとか、“ん〜?”って思ったらすぐそこから立ち去るとか、常に危険察知をしながら。でも、その現地の文化を体感するためにはちょっと飛び込んでみるっていう・・・だからもう3秒とかで、いいやつか悪いやつかを見抜くスカウターが付いているんでしょうね(笑)」
●そうなんですね(笑)。そういった力がもう身に付いているんですね!
「だって生きなきゃ! 生きてこそ!」
●そうですよね。でも言葉はどうされているんですか?
「言葉は、できる限りやっぱり寄り添ったほうがいいんだわ。覚えたほうがより深く現地の人と話せるし、より深くその国やその町の文化や歴史に触れられるっていうのはあるから、頑張って覚える。頑張って覚えて、すぐ忘れるっていう。でもまた行くとスッと、次はリロードすればいいだけというか、もうインストールされているものをもう1回入れ直す作業というか・・・」
●へ〜! 先ほどもフェスっていうお話がありましたけれども、やっぱり音楽が言語の壁を壊してくれるみたいなのはあるんですか?
「これはあるね〜。音楽とスポーツ、これはやっぱり言葉のいらない2大コミュニケーション・ツールだなと思っていて、しかもスポーツの中でも世界中で人口が多かったりとか、すぐそこでやっているのってサッカーだよね。ここはやっぱり千葉・柏レイソル・ジュニアユース出身としては、こんな強い武器、ありがとうレイソル!(笑)。それだけでやっぱりすぐ打ち解ける、一緒にボールを蹴るだけで100の情報を飛び越えるね。
肌の色も宗教も、社長さんなのか平社員なのかどうでもいいと。そういうことじゃないっていう、100の情報を飛び越えられるのがサッカーだし、音楽も然りで、あっという間に心の距離が縮まる。その共通言語がふたつ、もうすでに備わった時点での旅だから、これはもうありがたいなって本当に素直に思います」
「今のキミを忘れない」に込められた思い
※ナオトさんは世界を巡る旅で、体験を通していろいろなものを吸収していると思うんですけど、曲作りをするうえで、旅はどんな影響を与えていますか?
「迫るねぇ〜! ティライミの奥のほうをくすぐるね! 旅と作り手としての関係性ね〜?」
●はい!
「これはですね、何か嬉しい〜、なかなか人にこういうことを話さないような、質問で奥の引き出しを開けてくれて、何か嬉しい! 喜びがすごいね。
あのね、ナオト・インティライミ、世界中を旅している割にめっちゃJポップじゃねぇ〜!? っていう(かたもいるんです)。別に僕は中傷とは思っていないですよ。それはそれでJポッパーとして嬉しいわけですよ、めっちゃJポップじゃねぇ〜!? って。でもちょっと悪口なんですよ。あんな旅しているのにめっちゃ普通のJポップじゃねぇ〜!? の言いかたなんです。
でも俺は嬉しいわけですよ。これは旅してきたことを、世界中の色んなジャンルやリズムが体内にはあるものの、ひけらかすつもりも別にないし・・・でもJポッパーとしてね、やっぱりそれはありがたく受け止めているんだけど。
でも自分の中のひとつ芯みたいなところでいうと、めっちゃJポップに昇華しているけど、その中に色んなエッセンスや色んなシーンが入っていて、例えばパッと今思い付くのが『今のキミを忘れない』っていう曲があって、”今キミを、今のキミを、いつまでも忘れないから”っていう歌詞がある・・・。
これも普通のJポップじゃねぇ〜!? なんだけど。でもこれって僕のシーンの中では、旅をしていて、例えば地球の裏側の南米で一緒にサッカーをして仲良くなった少年と、“ナオト、明日も来てね!”って、“来れたら来るぜ!”って。でも俺は明日違う町に行こうと思っていて、この子は名前は分かるけれど、住所は分からなくて、ラインやメールもつながっていないから、もう一生会わない可能性のほうが多いことを知っていると。だがら今[の]キミを、この[の]を入れたことにより、その瞬間を切り取ったんですよ。
この曲はもちろん恋人との別れの歌だったり、日本だったら卒業ソングとして使われたりとかもしてくださっている。でも何気ないことだけど、自分の中ではあの旅のあの瞬間を楽しんだけれども、二度と会えないかもしれないキミに捧げる歌でもあるというか・・・。
こういうところが実は色んな曲に散りばめられていて、そういう『今のキミを忘れない』だったりとか、だからその瞬間瞬間を、もう二度と会わないことを分かっている。だからこそ今[の]キミを、この時間を何気なくじゃなくて、本当に幸せな瞬間なんだっていうことを噛みしめたいっていうか・・・」
●グッと来ました。そういう背景があったんですね。
「そういう聴きかたで、もしかしてティライミ・ソングを今一度、10周年ベストを今の話を聞いたうえで聴いていくと、ただのJポップじゃねぇ〜!? でもちょっと違うかもねぇ〜!? っていう何か備考欄が付くのかなという・・・」
ザ・旅人ソング「Catch The Moment」
※ナオトさんは先月末にデビュー10周年記念のベスト・アルバム『The Best-10th Anniversary-』をリリースされました。このベストはCD2枚組で、DISC 1が「BEST」で20曲、DISC 2が「MUST」で22曲、全部で42曲! 新曲も収録された大ボリュームのアルバムになっていますが、ナオトさんご自身で曲を2枚にふり分けたんですか?
「これ、難しかったんですけど」
●ナオトさんが選曲されてるんですね?
「もう、大至急させていただきましたね」
●おお〜!
「ベストを出すと、色んなベストの形態がある中で、シングル曲をやっぱりベストで出すことが多いと思うんですよ。僕も5周年の時のアルバムはシングル集だったんです。
ただ、シングル曲はシングル曲で聴いて欲しいんだけど、それ以外のいわゆる”旅人ミュージック”だったりとか、色んなジャンルの音楽って、実はアルバムに入っていたりとかするので、そういったティライミの、誰も知らないようなアルバム収録曲やカップリング曲だけど、あるいは売れなかったけど、この曲は聴いて欲しいな〜の曲を『MUST』のほうで。他にもライヴでの定番曲とか、ファンのかたのアンケートをもとに選んだ曲とか。
ティライミのことを初めて知ってライヴに行きたいと思ったけど、コロナ禍で行けなくて、今度初めて行くよっていうかたもいらっしゃると思うんです。この『BEST』と『MUST』の42曲を聴いてくださると置いていかないよっていう、その予習にもなるというかね」
●へ〜〜いいですね!
「そんな2枚組になっておりますね」
●旅をイメージされたというのは例えば、どの曲になるんですか?
「そうだね・・・ちょこちょこ散りばめはられてはいるが、ザ・旅人ソングっていうのが1曲ありまして、こちらは、2枚目の『MUST』のほうの”Catch the Moment”という曲ですね!」
●世界中の言語が出てくるという曲ですね。
「そうなんです。”シェイシェイ、カムサハムニダ、コップンカップ、トゥリマカシー”みたいな、世界十数カ国の“ありがとう”がまず歌詞に入っていて、これもね、さっきの理論でいうと、『今のキミを忘れない』の話とつながるんですけど、サビで”シャララララ♫ シャララララ♫ ハロー、ナイス・トゥー・ミート・ユー、グッバイ、シー・ユー・アゲイン”っていう、ものすごく簡単な、中1で習うような英語が4つ並んでいるんです。これって旅人の中の、すごく切ない想いが詰まっていて、旅人ってやっぱり色んなかたに現地で会うでしょ?」
●ええ、そうですね。
「その時に、すれ違うだけの人もいるけど、その瞬間に目が合って”イェイ〜!”って。で、その人とはきっと二度と会わないんだけど、明らかに心が通じ合う瞬間があると。そのすれ違う3〜4秒の中に” ハロー、ナイス・トゥー・ミート・ユー、グッバイ、シー・ユー・アゲイン”っていうのが凝縮されているというか・・・それも全部出会いだなっていう。でも”シー・ユー・アゲイン”がないことも分かっているけど、そう呼ばせてっていうかね。なんか旅人のセンチな部分であり、でも”シャラララ♫”みんなで歌おうって。
『旅歌ダイアリー2』のドキュメンタリーにも収められているシーンなんだけど、線路沿いを歩いていたら、たまたま村にたどり着いて。線路沿いと言っても、日本では危ないですよ、みなさん。でもそのアフリカの、1日に1台(列車が)通るかわからないような、安全なというか、(そんな線路沿いを)気にしながら歩いていたら町に着いて、子供たちがぶわぁ〜っと30人くらい集まってきて取り囲まれて・・・日本人なんか来やしない、マダガスカルの奥地の村だから。
そこで、なんかわぁーっと囲まれて、じゃあ遊ぼうぜって。サッカーやったり、ギターを持ってるから、歌え歌えになるじゃない? じゃあ歌おう! って。どの曲を歌おうかなって、そんな時にこの曲は子供たちも歌えるんじゃないかと思って、”シャララララ♫”で一緒に歌ったんですね。
そのあと、またその村に戻った時に、その子供たちが覚えていてくれて、それを子供たちから歌ってくれるみたいな・・・自分にとってはやっぱこの”Catch The Moment”という曲は、旅人として一生歌い続けていくんだろうなという特別な曲です」
横一線で歩んで行く
※では最後に、デビュー10周年記念のベスト・アルバム『The Best-10th Anniversary-』を、どんな感じで聴いて欲しいですか?
「そうですね・・・あの〜CDは買わなくて大丈夫です。みなさん(笑)」
●あれ〜〜?(笑)
「CD高いですし・・・もちろん、家にCDプレイヤーがあるよと、CDが好きなのよというかたはぜひ! この時代だからこそ嬉しい形っていうのもありますから、お手に取っていただけたら嬉しいですし、CDがないよ! っていう家もございます。そして世代的にはもうサブスクで聴いているよっていう・・・いいんですよ! 逆にCD屋さんに行ってナオト・インティライミのCDを手に取って、家に帰って封を開けて聴く、それって結構好きじゃないと行なわない作業なんですよ。
でも、今だったら、この番組をたまたま、この夜に家族で、お父さんが運転していてね、ラジオでベイエフエムをかけて、ティライミが出てきて、こんな話を聞いたと。そしたらもう後ろの席で娘さん、あるいは息子さんは、サブスクでいいんですよ。アップル・ミュージックでもライン・ミュージックでもスポティファイでも何でもいいんですけど、ナオトで検索して、ベスト・アルバムに7秒後にはそこに辿り着けるという、これはこれでやっぱりありがたい時代なんですよ。今一度、これがきっかけになってナオト・インティライミの音楽に、改めて触れていただく機会にしていただけたらなと思います」
●コロナ禍はまだまだちょっと続きそうですけれども、ミュージシャンとして発信したいこととか、伝えたいことっていうのはありますか?
「そうだな〜、これは自分とファンの方の関係値もそうなんだけど、よっしゃ〜行くぞーっていう、先頭を切って、お前らついてこーい! みたいなリーダーではなくて、横一線になって、みんなで歩んで行くような感覚をずっとやっぱり思っていて・・・。
それはやっぱりコロナも、コロナじゃなくとも、生きていれば大変なこと、いいことばかりじゃない、むしろいいことじゃないほうが、嫌なことのほうが多いと思うんですよ。でも、あなたの人生に、どこかしらで、なにか一言でも、いちメロディでも、ナオト・インティライミの何かが横にいられたら、それは僕の作り手としての本望です」
INFORMATION
『The Best-10th Anniversary-』
(初回限定ファンクラブ盤:2CD+2DVD+BOOK)』
『The Best-10th Anniversary-』
(通常盤:2CD)』
先月末にリリースされたデビュー10周年記念のベスト・アルバム、CD2枚組の『The Best-10th Anniversary-』をぜひ聴いてください。ナオトさん自身が選曲したヒット曲や名曲が全部で42曲収録されています。
2017年の旅のドキュメンタリーはDVD『ナオト ・インティライミ冒険記:旅歌ダイアリー2』に納められています。
今月初めに千葉の松戸から始まった「10TH ANNIVERSARY LIVE TOUR 2021」。
11月11日は神奈川、11月20日は東京、12月2日は千葉の柏、そして最終は
12月10日の東京公演の予定となっています。ソールドアウトの公演も多くありますので詳しくは、ナオトさんのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「ナオト ・インティライミ」オフィシャルサイト:https://www.nananaoto.com
2021/10/17 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは先月、ニューヨークの国連本部で開幕した「第76回 国連総会」を特集! ゲストは、国連の活動全般に関する広報活動を行なっている国連広報センターの所長「根本かおる」さんです。
根本さんにご登場いただく前に、国連とSDGsのおさらいをしておきましょう。
国連は国際の平和と安全の維持、人権の擁護と推進、経済社会開発 の推進の三本柱に沿って、多岐にわたる活動を世界中で行なっています。そして国連総会は、すべての加盟国によって構成される国連の主要な機関のひとつで、現在の加盟国数は193カ国となっています。
国連サミットで2015年に採択されたのがSDGs。「SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」の頭文字を並べたもので、日本語では「持続可能な開発目標」。
私たちがこれからも地球で暮らしていくために、世界共通の目標を作って、将来世代のことも考えて、地球の資源を大切にしながら、すべての人にとって、よりよい社会を作っていこう、そのための約束と言えるのがSDGsなんですね。
設定されている目標=ゴールは全部で17。その範囲は飢餓や貧困、気候変動対策、経済成長、そしてジェンダーに関することまで、いろいろな課題が入っています。
SDGsの前身MDGs「ミレニアム開発目標」との大きな違いは、SDGsの場合、国や自治体に加え、民間企業や一般の人々も取り組むこと。そして開発途上国だけでなく、先進国の課題解決も含まれていることなんです。
そんなSDGsの17の目標は2030年までの達成を目指していますが、世界各国の状況は、果たしてどうなんでしょうね。きょうはおもにSDGsの動向、気候変動、そして食料問題について、根本さんに解説していただきます。
「警鐘を鳴らすためにここにいる」
※それでは根本さんにお話をうかがっていきましょう。今回、国連総会の一般討論の冒頭で、グテーレス事務総長がかなり強い口調でスピーチをされたと聞いたんですが、そうだったんですか?
「国連総会、第76回の会議は9月14日から始まりました。そしてその1週間後の21日からのおよそ1週間が、世界の首脳が国連に集結して演説合戦をするというハイレベル・ウィークだったんですね。日本の国会で言えば、所信表明演説があって、代表質問があってということになりますけれども、そういった国連外交の花形的な1週間でした。
その一般討論演説の冒頭、国連事務局のトップ、アントニオ・グテーレス国連事務総長が演説をしたんです。世界の動向について、”私は警鐘を鳴らすためにここにいるんだ。世界は目覚めなければいけない。世界は誤った方向にいっている”と言って、非常に強いメッセージを投げかけたんです。
その背景には、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行があって、物凄いスピードでワクチン開発があって、ワクチン接種が始まっていますけれども、蓋を開けてみるとそのほとんどが豊かな国、あるいはワクチンを製造・開発している国々での接種であって、途上国を中心とした低所得国に回っているワクチンの割合というのは、全体の0.3%にしか過ぎないという現状があるんですね。物凄い格差です。
また、貧富の格差も拡大しています。気候変動も人類存続の危機というレベルぐらいに脅威が高まっています。そして紛争も増えて長引いていると。そういう状況の中で、世界は目覚めなければいけないと警鐘を鳴らしたんですね」
●このままいくと、ますます誤った方向にいってしまうということですよね。
「千葉県も2年前に大きな台風被害がありましたよね。そして毎年のように、非常に大きな規模の風水害が日本でも起こっています。これは明らかに気候変動由来で、ここまで強くなって、そして頻度が上がっているわけなんですね。こういった大きな気候災害が起きると、それまで積み上げてきた、経済活動であったり、人の営みというものがいっぺんに吹き飛んでしまいます。
余裕のある人たちは、自分の足で立っていられますけれども、非常に弱い立場にあるギリギリの生活をしている人たちは、ひとたまりもありません。それからこういった風水害が起きた時にスラムなども直撃を受けます。そこに住んでいるのはやはり弱い立場の人たちです。そういったことは日本も他人ごとではない、まさに自分ごとだと捉えなければいけないと思いますね」
SDGs報告書が示す危機的状況
※先日、SDGsに関する国連の報告書が公開されました。17の目標ごとに進捗状況がイラストや図などをまじえ、表示されていますが、新型コロナウイルスの感染拡大が多くの目標に深刻な影響を与えていることがわかりました。根本さんはこの報告書をご覧になって、どう思われましたか?
「新型コロナウイルス感染症の大流行が始まる以前から、SDGsの2030年までの達成の目処というのは全く立っていなかったんですね。それが新型コロナウイルス感染症がここまで流行してしまって、さらに達成が遠のいてしまったという現状があります。
わかりやすい例が飢餓だと思います。世界の飢餓人口というのは2010年代に入って、ずっと減ってきたんですね。それが後半に入ってから、残念ながらまた増えてきています。
その背景には、紛争が長引いている。それから気候危機の影響で干ばつや洪水があって、その直撃を受けている。そういったことがあったんですが、新型コロナウイルス感染症が大流行して、人が思うように(畑を)耕せなくなった。あるいは、物が実ってもそれを収穫できない。あるいは物流という形で運べない。色々な要因があって、飢餓人口が2019年から20年にかけて1億人以上、一気に増えてしまったんです。
これで、世界で最大8億人を超える人たちが飢餓に直面しているという状況になりました。飢餓人口の増加率というのは1年間で20%も増えたんですね」
※この番組としてはやはり気候変動に関する目標が気になりました。SDGsの報告書に「気候変動は続いていて、ほとんど収まっていない」と書かれていたんですが、そうなんですか?
「8月に、”IPCC”という世界の第一線で活躍している気候科学者による、国連の気候変動に対する政府間パネルというネットワークが報告書を出しました。アントニオ・グテーレス事務総長に言わせると、人類に対しての赤信号だと称しているんですね。
パリ協定が最大限の努力目標としている(世界の平均気温上昇を)1.5℃上昇未満に抑えるということは、残念ながらできなくなっていると。どんなに頑張っても一度は1.5℃上昇を超えてしまうんですね。しかしながら、あらゆる国が温室効果ガス削減に取り組めば、この1.5℃上昇を超えた時期というのを短く抑えて、1.5℃上昇未満に抑えることができる。手をこまねいていれば、4度上昇まっしぐらと。
9月には、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局が、これまでに表明されている温室効果ガス削減目標を足しこんで、どれくらいに抑えることができるのかを割り出しました。残念ながら、本来減らなければいけない温室効果ガスが、2030年に今と比べて16%増えてしまうという状況となっています。このままでは2.7度上昇の道をまっしぐらに進んでいます。
これは個人的な努力を積み上げるだけではもう間に合いません。社会の仕組みを根本的に変える。エネルギー構成、それから建築物の建築方法、あるいはその食のあり方、交通手段、こういった社会の仕組みを根本から変えることをしなければ間に合いません」
COP26〜今こそアクション!
※今月末からイギリスのグラスゴーで気候変動に関する国際会議が開かれます。正式名称は「国連気候変動枠組条約締約国会議」通称COP(コップ)。26回目を迎える「COP 26」に根本さんが期待されていることはなんでしょうか。
「やはり危機感を持って、2050年の脱炭素(社会の実現)、そして2030年の(温室効果ガス)45%削減、それを確かなものにする。美辞麗句、そして美しい演説はいりません。欲しいのはアクションです。
そして、豊かな国は自国で対策を取ることができますけれども、温室効果ガスの排出にほとんど寄与していない小さな島国などは、地球温暖化で北極圏、南極圏の氷が大きく溶けて海面上昇が起こると、その影響をまず受けることになります。
温室効果ガスを排出している大国のしわ寄せを受けるのはこうした国々です。自分たちの国力だけで対策を取ることができない国々に対し、国際協力として、そして排出をしてきた大国の責務、責任として、気候変動対策への資金的な援助、それが必要とされています」
BTS、国連総会でスピーチ!
※今回、国連総会で「SDGモーメント」という会合がありました。根本さん、これはどんな会合だったんですか?
「SDGモーメントは国連総会のハイレベル・ウィークの期間中に、SDGsの推進の気運を高めようということで、SDGsに特化した会合です。
今年は韓国の人気アイドルグループのBTSが、若者代表としてスピーチをしました。
若い人たちが、新型コロナウイルス感染症の影響を非常に深刻に受けていると。学校に行きたくても行けない。健康な生活が送れない。メンタルへのダメージも受けてしまう。様々な打撃を受けているわけなんですけれども、決して若者たちは”ロスト・ジェネレーション”ではない。未来を切り開く可能性を持った”ウェルカム・ジェネレーション”なんだと。そういった若い人たちに向けた前向きなメッセージを(BTSのメンバーは)スピーチで伝えてくれました。
そして彼らの大ヒット曲で『Permission to Dance』という曲がありますけれども、これを国連本部の敷地内で撮影をし、披露してくれました」
●私もBTS大好きなんですけれども、若い方々がSDGsなどに興味を持ってくれる、いいきっかけになったんじゃないかなって思ったんです。
「そうですね。#国連総会、#SDGmoment、こういった言葉が、日本でもTwitter、それからYahooのトレンドワードに入ってました。こういったことは私の知っている限りありません。日頃、国際的な課題、あるいは国連に関心を持ってくれている人たちだけではなくて、そういったことに日頃は振り向いてくれなかった人たちも、BTSがきっかけになって関心を持ってくれたというところがあります」
●国連本部で撮影された「Permission to Dance」の動画も、少なくとも私5回は見たんですけれども、スーツ姿ですごくかっこよかったです。なかなか国連本部の中を見る機会もないですし、改めて日本でもこういった方々がいらっしゃると、もっと広まるかなと思うんですけれども・・・。
「ピコ太郎さん来ましたよ」
●あ〜! そうですね!
「ピコ太郎さんは“PPAP SDGバージョン”を国連で披露しました。それからハローキティも国連とSDGsを広めるキャンペーンに協力してくれていまして、国連でお披露目のパフォーマンスをしてくれましたよ」
(*ピコ太郎さんは2017年の国連総会に登場し、話題になりましたね)
人と地球の健康はひとつ!
※今回、国連総会で「食料システムサミット」がありました。これはどんな目的で開催されたんですか?
「食料というのは生産から、加工、流通、消費、廃棄と非常に裾野の広い産業ですよね。この裾野の広い”食”をテーマにして、すべてをシステムとして捉えて、これを見直す。SDGsの2030年までの達成に拍車をかけようと、そういう目的で開かれたサミットなんですね」
●フードロスの問題も絡んできますよね?
「もちろんです。それは消費のところですね。消費ももちろん大切なんですけれども、生産、加工、流通、消費、そして廃棄と全部を見る。そして気候変動にも非常に関わっているんです。
食は生産部門だけで、世界全体の温室効果ガス排出の4分の1を占めています。そして、川上から川下の全部を見ていくと、温室効果ガス排出の3分の1を占めています。食のシステムのあり方を変えるということは、気候変動対策にもなるわけです」
●どのように変えたらいいのでしょう?
「それはやはり環境負荷の少ない生産の仕方、加工の仕方、流通の仕方に変えていく。それから途上国などでは、生産してから流通に回るまでのところで、多くの食料が無駄になっているんですね。効果的な倉庫のシステムがないとか、そういったことも関係しているんですけれども、そこを改善していくと。
先ほど私は、饑餓人口が8億人を超えたと申し上げましたけれども、実をいうと、世界人口78億人の胃袋を満たすだけの食料はあるんです。あるんですが、豊かなところにいき過ぎて、必要としているところにはいっていない。無駄もたくさんある、ということで、饑餓人口が生まれてしまっているんですね。
それから、気候変動と食料不安というのは、負の循環でつながっています。気候変動があって干ばつがある、あるいは洪水がある、あるいは水不足がある。そうすると十分な収穫がない、それが人々をさらに貧困化させる、食料が手に入らない。そして食料がなくなると、食料価格が上がる、貧しいと買えない。ということで、負のスパイラルになるんです。
それをポジティブなスパイラルに変えていかなければいけないと。そのためには人の健康、地球の健康を別々に考えるのではなく、それは”ひとつの健康”なんだと。人と地球の健康をつなげて考えて、人と地球は一蓮托生だと考えて、両方の健康を考えていくことが必要なわけですね」
自分ごととして取り組む
※根本さんは日本国内でSDGsの普及活動を行なっていらっしゃいます。今はどんなことにいちばん力を入れてるんですか?
「SDGsの認知ですけれども、おかげさまで今、平均で半分以上の人たちが何らかの形でSDGsのことを聞いたことがある、そういう段階に達しました。また、小学校、中学校の学習指導要領にSDGsが盛り込まれています。それから大学などでも教えるようになっていると。そういったことを受けて、若い世代では認知度はもう7割を超えているんです。認知拡大のレベルは過ぎたと言えます。
これからは認知拡大ではなくて、アクション! アクションを加速、そして拡大していくと。そしてSDGsの実現に効果、インパクトの大きいアクションって何なのか。やはり社会の仕組みを根底から変えることで、達成につなげていくということが、今私たちのいちばんの課題ですね」
●SDGsの17の目標達成は2030年までですよね。
「あと9年しかないです」
●そうですよね。私たち一般市民が出来ること、やるべきことはどういったことですか?
「まずは知ることですよね。こうして番組で取り上げてくださること、大変ありがたいと思っています。知ったからにはアクションを起こし、そのアクションをもっと広げていく。そして、周りの人たちにも働きかけて、広げていく。ただ、個人で積み上げても、残念ながら限りがあります。
やはり社会の仕組みを変えられるように、選挙に行きましょう。それからエネルギーとか食のあり方とか、消費、廃棄の仕方、そういった影響の大きい分野に対して、“物を言いましょう! 働きかけましょう!”ということで、どうやったらその範囲を広げていけるのかを、地域の方々と一緒に考えてもらえればと思います」
●ベイエフエムは、千葉県のメディアとしては初めて「SDGメディア・コンパクト」に加盟しました。今後、SDGsの目標達成のために、根本さんがメディアに期待されることはどんなことですか?
「メディアとして、やはりSDGsを多くの人たちに知ってもらって、自分ごととして考えてアクションを起こしてもらう。これをひとつの幹として考えていただきたいんですね。どうしたら効果、そしてインパクトの大きな運動にしていくことができるのか。旗ふり役になれるのもメディアだと私は思うんですね」
●では、最後に改めてリスナーのみなさんに伝えたいことを教えてください。
「リスナーの方々は、環境というアングルからSDGsに関心を持ってくださった方が多いのかなと思うんですけれども、SDGsというのは環境、社会、そして経済、この3つの分野を統合的に捉えて、私たちの暮らし、そして権利をぐいぐい引っ張っていってくれる、2030年までに、より持続可能で、より平等な、包摂的な社会を一緒に目指そうという、大変野心的な世界目標です。
環境の入り口で関心を持っても、それは例えば格差であったり、あるいは人の権利であったり、ジェンダー平等であったり、子どもに対する暴力の課題であったり、そういった社会的な側面、それから貧困というような経済に関する側面につながっていきます。
環境を入口に、でもそこで止まらずに社会、及び経済まで考えながらSDGsを見守って、そして自分ごととして取り組んでいただければと思います」
INFORMATION
国連広報センターのオフィシャルサイトをぜひご覧ください。
SDGsの進捗状況に関する報告書は、どなたでも見られます。トップページのお知らせ欄に「持続可能な開発目標(SDGs)報告2021」という見出しがありますよ。日本語版でイラストや図も多くあって見やすくなっていますので、ぜひ確かめてください。
◎国連広報センター:https://www.unic.or.jp
◎持続可能な開発目標(SDGs)報告2021:https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_report/
2021/10/10 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、硯(すずり)の職人、製硯師(せいけんし)の「青栁貴史(あおやぎ・たかし)」さんです。
青栁さんは1979年、台東区浅草生まれ。浅草にある書道用具専門店「宝研堂(ほうけんどう)」の四代目。20代から中国の硯の作家との交流を経て、伝統的な硯を研究。その後、中国や日本の石材を使って硯を製作、また、文化財の修復や復刻も行なっていらっしゃいます。
青栁さんが創る硯は美しく芸術的で、月の石で硯を創るなど、若手のクリエイターとして注目されています。また、書道にも造詣が深く、大学の書道学科の講師も務めていらっしゃいます。そんな青栁さんが先頃『すずりくん〜書道具のおはなし』という絵本を出されました。
きょうは、宝物といわれる書道の道具、そして硯製作にかける思いなどうかがいます。
☆写真協力:青栁貴史
日本の石は寡黙!?
※2年ほど前に浅草の工房にお邪魔してお話をうかがったことがありますが、硯になる石って、どんな石がいいのか、興味ありますよね。まずは青栁さんに、改めて、硯に向いている石についてお話しいただきました。
「硯に向いている石、これはもう硯が何たるかっていうところから始まりますけれど、墨がよく擦れる石が硯に向いているんですね。この石は日本と中国ではもう採れているところが分かっているんです。毛筆文化圏では、この辺りは硯に向いている石が出るよって分かっている、そういった場所から採石しているんですね。
主に”堆積粘砂岩”(たいせきねんさがん)だったり、”粘板岩”(ねんばんがん)とか、そういったものが硯に向いている石になるわけですけれど、その中からひび割れが少なくてキメの細かい石を私たちは探してくるんですね」
●ちなみに日本だと、どの辺りになるんですか?
「日本では、有名なところだと宮城県の雄勝町(おがつちょう)の”玄昌石(げんしょうせき)“ですね。あとは山梨県に南巨摩郡(みなみこまぐん)っていうところがあるんですけれど、その辺りから採れている“雨畑真石(あまはたしんせき)”っていう石ですね。あと山口県に赤い石があるんですけれど、この”赤間石(あかまいし)“も非常に硯に向いている石ですね。この3種類は有名ですよね」
●本場は中国っていうことになるんですよね?
「そうですね。日本より中国のほうが大陸が大きいですから、採れる石材の種類も多いので、硬い、柔らかい、細かい、荒い、色んな模様が出るとか、すごく様々な表情の石が中国には眠っているんですね。日本の石は基本的には寡黙なものが多くて、静々と黒い、静々と赤い、そういう石ですね」
●中国の石となると具体的にどんな石になるんですか?
「中国の石は、みなさんがご存知なところだと大理石も硯の石に使われるんですね。あとは北方のほうから採れる石で、舐めるとしょっぱい石なんかもあるんですけれど、こういう石も硯として使われていたり・・・。
あとは”紅糸石(こうしせき)”っていう、これも中国の北方の石ですけれど、珍しい石で、紅い糸が走っているような模様から紅糸石っていうんですね。日本人にとっていちばん馴染みがあるのはコンビーフかもしれないですね(笑)。コンビーフを敷き詰めたような模様が出るような石とか、色んな石が中国では出ているんですね」
墨を擦ることを知らない子供たち
※青栁さんが先頃出された絵本『すずりくん〜書道具のおはなし』。ストーリーはもちろん青栁さんなんですが、絵は青栁さんがその作品を見て、惚れ込み、毛筆の手紙でラブコールを送って実現した、京都在住のお坊さんであり、イラストレーターの中川学(なかがわ・がく)さんが担当されています。
「硯」や「筆」などの書道の道具が擬人化され、平安時代の衣装を身にまとい、登場しているんですが、絵が可愛いくて、色使いが和風な感じでとても素敵なんです。実は、語り部として青栁さんも登場しています。
ところで、なぜこの絵本を出そうと思われたのか、お話しいただきました。
「本のことは3年半前から考えていたんです。僕が様々なメディアで硯の話とかをする時に、やはり毛筆文化では、毛筆は人の生活に密着していると必ずお話をするんです。
非常に考えさせられる出来事が小学生との間では多くて、小学校に硯の授業をしに来てくださいという特別授業のご依頼をいただいた時に、小学校に行ってみて、まずお兄さんは何を作っている人か分かりますか? って話をしてみるわけですね。
そして硯職人だよって話をした時に、硯っていう漢字を書いてみても、もちろん子供たちは分からないんですね。“しじみ?”とか言われますね(笑)。硯は書道の時に、習字の時に、字を書く時に使うでしょって話をすると、今の子供たちは硯は溶けるものだと思っている子が多いんですね。
墨汁を普段使っているじゃないですか。今の子供たちは墨を擦ることがスタンダードではないんです。僕たち子供の頃は擦ったと思うんですよ。今の子供たちはほとんどの子が墨液ですね。擦る固形木の墨は、(書道)セットの中に入っているんですけど、ほとんどの子が使っていないんですね。授業では墨汁を開けて、それをかき混ぜる棒になっているんですね。
プラスチックの硯、かき混ぜる墨という棒、墨汁っていう、本来の使いかたと違う方法で覚えてしまっている子供たちも多かったんですね。これは大人になってから違うんだよとお話をするんじゃないなと思って、僕、全国の小学校に教えに行きたいな、授業しに行きたいなっていう気持ちがその時ものすごく芽生えたんです。
(全国の小学校に行くのは)もう現実的じゃないですね。難しいですね。なので本をお作りして、学校で45分の授業で1回この絵本を読んでいただければと。
みんなが使っている今の書道セット、大筆が入って小筆が入って、プラスチックの硯が入って、そしてみんなが使っている硯のセットっていうものは、プラスチックの硯だけれど、元々はこういうもので出来ていて、こういう歴史があるんだよっていうことを知った上で、今のものを使ってもらい、今の道具は現代の硯セットなんだ、今私たちが使っているのは現代の便利な道具なんだっていうのを知って欲しかったんですね。
プラスチックの硯がダメって言っているわけではなくて、時代に合わせた道具、時代に求められた便利さを子供たちに知ってもらいたいっていう、自分の頭で考えられるそういうものになってほしいなって思っていますね」
書道具は宝〜文房四宝
※青栁さんの絵本には、紙、筆、墨、そして硯が、文房具の文房に、四つの宝と書いて「文房四宝(ぶんぼうしほう)」として登場しています。
文房具の中でも宝物される書道具は、考えてみれば全部、自然由来のものなんですよね?
「そうですね。全部自然から出来ているって、意外と知らないかたが多いんじゃないかなと思うんです。この本を見ていただくことで、硯(の石材)は山から出てくるんだな。筆はイタチとかウマとかヤギとか、そういった毛を束ねて作られているんだな。紙も山に自生している植物を使って、人が1枚1枚すいて作っているんだな。墨なんかも植物ですね。そういったことを伝えることも大事でしたね。
”文房四宝”っていうちょっと難しい言葉を使いましたけれど、元々、筆、墨、硯、紙、この4つをまとめて、我々の毛筆文化圏では文房四宝って呼んだんだよっていうことを、言葉を覚えてもらおうと思って、ちょっと難しいですけど使ったんですね」
●すごく勉強になりました! 改めてそれぞれ解説していただきたいんですけれども、まず紙から教えていただけますか?
「紙も面白いですよ〜。僕、実は10年以上前ですけれど、中国に長期滞在して紙の研究をしていたんです。硯を作っている人ですけれど、実は紙のコーディネートをずっとしていまして、色んな紙を作っていたんですね。中国の紙を主に作っていましたけれど、紙に関しては論文も書いたことがあるんですね(笑)。
そんな紙、僕が夢中になった紙、これどういったものなのかっていうと、石で出来た硯が出来上がる前から、紙はあったとされているんですね。今漫画で有名な『キングダム』、その中に登場している蒙恬将軍(もうてんしょうぐん)っていますけれど、彼が筆を作った人っていう風には言われているんです。史実とちょっと異なるところがありそうですけれど、その辺りから紙が開発され始めていたということが分かっているんですね。
2000年以上前にはなっていますけれど、実際に現存している紙なども1000年とか2000年、普通にもつ素材なんですね。紙は中国と日本ですきかたがちょっと違うところもあるんです。原料も違いますね。
主には日本だと“雁皮(がんぴ)”とか、お札の原料の“みつまた”とか、ちょっと郊外に行ってみると“楮(こうぞ)”なんかもありますね。あとは竹、ほかには木材パルプなんかも使いますね。カナダから輸入されている木材を溶かしたものですね。
そういったものを混ぜて、工程を話してしまうとめちゃめちゃ長いんで、そこは絵本を読んでいただく形になりますけれど、植物を紙の原料にするんですね」
●ひとくちに和紙といっても色んな種類がありますね。
「そうですね。民芸紙などもあれば、あとは書道用紙、あと障子紙みたいなものもありますし、様々ですね」
●国内だと和紙の生産地はどの辺りになるんですか?
「有名なものは甲州(こうしゅう)と因州(いんしゅう)、山梨、鳥取ですね。あとは四国なんかも有名ですね。それぞれに特徴がありますけれど、白さが際立っているとか、柔らかいとか、にじみがあるとか、それぞれの産地が特徴を持っているので、(和紙を)使われるかた、書道の先生だったり、水墨画のかた、絵手紙のかた、お手紙を書くかた、色んな人がいますけれど、あそこの産地の紙がいいんだよ〜っていう風に自分で選んでお使いいただけるわけですね」
墨の原料は自然だらけ!?
※絵本『すずりくん〜書道具のおはなし』に文房具の4つの宝「文房四宝(ぶんぼうしほう)」として登場する紙、筆、墨、そして硯、その4つが全部、自然由来のものということで解説していただいています。
ちなみに筆は、小筆はイタチやタヌキ、シカなどの毛、大筆はウマ、ヤギなどの毛を使って作るそうです。青栁さんは知り合いの筆職人さんに頼んで、毛を揃える作業をやらせてもらったそうですが、まったくうまくいかず、筆職人さんの技に改めて感心したとおっしゃっていました。
続いて、あの黒くて長方形の「墨」について解説していただきました。
「墨は主に今、奈良と三重の鈴鹿で作られているものがほとんどというか、それで全部だと思うんです。日本では(原料は)主には植物です。たとえば、菜種、ごま、椿。ほかにも重油なんかもありますけれど、タイヤの原料になっているものですね。真っ黒を求めた時に使われる煤(すす)は、そういった重油などですね。
昔の話をちょっとしちゃうと、面白い話があって、江戸時代はどんな墨だったのっていう話なんですけど、時代劇を観ていると、お侍さんが夜、和とじの本を読んでいるシーンありますよね。あの時に灯りを炊いていますね。あれが”菜種の油”だったらしいんですね」
●へぇ〜〜!
「菜種の油を炊いて、その時に出た煤を集めて作ったっていう話もあるんですね。なので、江戸時代の墨は、菜種の油を燃やして出た煤を集めて、そこに動物のタンパク質、要するに骨とか皮を煮て出来たコラーゲンです。それを混ぜて、それだけだと臭いものになってしまうので、墨って擦るといい香りするじゃないですか。そこで竜脳(りゅうのう)とか麝香(じゃこう)、麝香というとムスクですね。そういった香りを中に入れて練ることで、いい香りの墨が出来るわけですね。
植物の油、あとは動物の骨や皮、そして竜脳だったら植物の木ですけれど、麝香だったら動物のものなので、本当に(墨は)もう自然だらけで出来ているものですね」
「硯」は王様!
※絵本に登場する「文房四宝」の中で、王様と表現されている「硯」について。硯が王様と言われるのは、どうしてなんですか?
「これは、僕がひいきして付けたわけじゃないですよ(笑)、先に言っておきますけど。これは僕が生まれる前から言われていたことです。なんで王様って呼ばれ始めたの? っていう話なんですけど、ここから、王様になりましたっていう記述はないんです。なんとなくそう言われていったっていうのが答えなんですね。
じゃあどうしてなんだろう? っていうのを我々も含め、文房四宝全般を研究した人や、携わった人はそこを考えるんですね。その結果、今、行きついている説がありまして、この文房四宝の中で唯一、消耗しないもの、なんですね」
●ほ〜〜! 消耗しない。
「ほかは消耗品、使って朽ちていくものですね。なくなっていくもの、形を変えていくもの。硯だけは形を変えずに手元に残り続けるものなんです。そういう理由があることを踏まえて、過去を振り返ってみるんです。
そうすると、例えば、時の中国の皇帝なんかもそうですけれど、書斎が自分の象徴のようなものに使われていたんですね。私はこういう書斎に囲まれて生活している、私はこういったものを愛でていると。中国の歴代皇帝たちは、そういった文房を作ってきたわけなんです。そこの中心地に置いたものが硯なんです」
●へぇ〜〜!
「硯を中心に、ほかの調度品をどうしようかって考えたわけなんです。そういった記述があることから、中国では硯が文房四宝の王様的な位置づけにあったとされています。実際のところ、皇帝たちが使っていた硯は色々な美術館に入っていますけれど、一時オークションなどで、本当に何千万以上の値段が付いて流通したことがあったんですね」
地球最古の石「アカスタ片麻岩」!
※では最後に、今後この石で硯を創ってみたいというものはありますか?
「それも一択しかなくて、地球最古の石ですね」
●地球最古!?
「はい。これはカナダの北東、北側から出ているものなんですけど、”アカスタ片麻岩”(へんまがん)」と言います。地球がまだドロドロしていて、色んなものがぶつかって固まっては溶けて、固まっては溶けてを繰り返していた時期がありますね。その間が6億年あるんですね」
●6億年!
「6億年の間、そういった時期があって、ようやくひとつの岩盤が出来たんです。それがアカスタ片麻岩っていう40億年前の石。この石が今の地球の表面を突き破ってオーロラの下に出ている場所があるんですね。
実はこの石に関して僕、どんな石か分かっていて・・・国立極地研究所でその石を触らせてもらったことがあるんですけど、大きさとして、シーズーくらいの大きさです。マルチーズとか、5歳くらいのシーズーくらい(笑)」
●子犬とか、赤ちゃんのような!(笑)
「そうですね。10何キロありましたけれど、実際に抱っこさせてもらって、この重み、この質量感・・・実際に自分でその場所に行って、地球の中に手を差し込んで、その産声を聴きたいと思いましたね」
●そのアカスタ片麻岩はどんな色なんですか?
「これ複雑な色なんですよ、一言で何色って言えないような色で。僕がアカスタ片麻岩を抱っこさせていただいた時から、もう1年以上経ちますけれど、今、覚えている色はピンクですね。ピンクを帯びた青と灰色が混ざったような色ですね」
●へぇ〜〜!
「あちらこちらにピンクが点在していて、素石としては青、灰色、そういったものが中心になっていて。ただ、この石は硯には向かないです」
●あ、そうなんですか!?
「固すぎると思います。でもね、向く、向かないじゃないですね。僕たちが硯を創る時に、様々な石で硯を創ります。中国の石、日本の石、色んな石を使って創ってはいますけれど、”母なる石”はその石ですね。
いちばん最初に地球を作った石、地球の石のルーツがそこにありますね。やはり、2000年以上、我々の生活を支えてきてくれた、最古の筆記用具を創っている者として、そのルーツのいちばん最初の部分に触れてみたいんですね。だからコロナが少し落ち着いたら行って来ます!」
●楽しみです! またお話を聞かせてくださいね! では最後に、この絵本『すずりくん〜書道具のおはなし』を手にする子供たちに伝えたいことを改めて教えてください。
「そうですね。一言でまとめてしまうと・・・今はやはり文字に心を込めることが非常に少なくなっていますね。字を書くことが少なくなっています。入力するってことが多くなってしまっていますね。
この絵本を読んでいただいて、僕たちが”書く”っていうことは、こんなに昔から大事にされてきていて、色んなものが伝わるんだなって、本当はとっても便利な道具なんだなって、しかも愛せる道具なんだなっていうことに、触れてもらえるきっかけになるような本であってもらいたいなと思いますね。ぜひ読んでみてください」
INFORMATION
『すずりくん〜書道具のおはなし』
文房具の四つの宝といわれる紙、筆、墨、そして硯のルーツや歴史が分かります。擬人化された道具の絵が可愛いくて、和風な色使いが素敵です。青栁さんの書道具や毛筆文化に対する思いに溢れた絵本を、ぜひお子さんに読み聞かせてください。
「あかね書房」から絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧くださいね。
◎あかね書房HP:https://www.akaneshobo.co.jp/search/info.php?isbn=9784251099457
書道用具専門店「宝研堂」
青栁さんの書道用具専門店のサイトもぜひ見てください。コロナ禍のため、個展の開催が難しくなったということで、サイト上に「在宅美術館」を開設し、これまでに製作した代表作が掲載されています。
硯という字は「石」を「見る」と書きますが、青栁さんは製作するときに、とにかく「石の表情」にこだわって硯を創っているとおっしゃっていました。作品の精密な写真から、その表情を感じ取ることができます。何時間でも見ていられる、そんな魅力に溢れています。ぜひサイト内にある「在宅美術館」もご覧ください。
◎宝研堂HP:http://houkendo.co.jp
◎在宅美術館:https://home-museum.net
2021/10/3 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第5弾! 今回は「サステナブル ・ディベロップメント・ゴールズ」=「持続可能な開発目標」の17のゴール中から、ゴール15の「陸の豊かさも守ろう」ということで「生物多様性」について考えていきたいと思います。
ゲストは、いま大人気のいきものコレクションアプリ「バイオーム」の開発責任者「藤木庄五郎(ふじき・しょうごろう)」さんです。
藤木さんは1988年生まれ、大阪府出身。京都大学大学院を経て、2017年5月に大学院の仲間と株式会社バイオームを創業し、CEOに就任されています。在学中にボルネオ島で長期にわたり、キャンプ生活をしながら、熱帯雨林の、特に樹木を調べ、その調査結果をもとに、人工衛星の画像解析などをもちい、多様性を可視化する技術を開発されています。
人工知能AIが生き物の名前を判定してくれる「バイオーム」は、生き物好きなユーザーだけでなく、企業や自治体も注目しています。
きょうは藤木さんに「バイオーム」が持つ機能と、その可能性、そして制作の原点となったボルネオ島での体験についてうかがいます。
☆写真協力:株式会社バイオーム
ワクワクを伝えたい!
※それではまず、藤木さんに「バイオーム」の基礎知識として、どんなアプリなのか、お話しいただきました。
「生き物の名前を判定できるっていうのは、面白い機能かなと思うんですけど、生き物の写真を撮って、それをAIが判定してくれて、どんな生き物なのか名前が分かる機能があるんです。それだけじゃなくって、見つけて写真を撮った生き物をどんどん図鑑に登録していく、コレクションしていくことができるっていうような、そういうアプリになっています。
その際にどんどん投稿してもらうと、レベルが上がったりとか、ポイントが貰えてバッチが貰えるとか、ゲーム感覚で生き物を楽しみながら見つける、そういう体験を生み出したいっていう思いで作っています」
●確かに、私も使わせていただいたんですけれども、次のレベルまで何ポイントとか出ると、どんどん投稿したくなるような・・・ワクワクしますね!
「そうですね。そのワクワクを伝えたいなと。生き物好きな人って、こういうアプリがなくてもワクワクしながら、生き物を探して見つけることをやっているんですけど、それをみんなにも伝えていきたいなっていうことを考えています」
●ほかの人が投稿した写真も見ることができますよね。
「そうですね。みんなで共有していって、生物多様性、生き物の豊かさの情報をみんなで集めていこうっていうのが裏コンセプトになっています。そういう形でみんなの情報が、地図上や図鑑で見られたり、色んな形で見られるように工夫しています」
●綺麗なお花とか綺麗な蝶々とか、この生き物はこういう名前なんだ!とか、ほかの人の投稿を見て学ぶこともできるっていうのは面白いなと感じました。
「僕も(バイオームを)使っていると、何だこれ!? みたいなものが、いっぱい投稿されていてめちゃくちゃ面白いですね(笑)」
●ユーザーのかたがたが投稿した写真などのデータが、将来的には膨大な生物のデータベースになっていくっていうことなんですか?
「はい、おっしゃる通りです。このアプリでは写真を登録する時に位置情報を使ってまして、どこにどんな生き物がいるのかっていう基礎的な生物の情報を、どんどんみんなで集めていくっていうところで、そういうデータベースを作るのがひとつの目的になっています」
●いまユーザー数ってどのくらいいらっしゃるんですか?
「 ユーザー数でいうと、いま32万人ぐらいのかたが使ってくださっています」
●ということは、どんどんデータベースも増えていきますよね。
「そうですね。人数がとにかくいっぱいいるので、もう既に(バイオームを)リリースしてから2年ちょっとくらいですけど、200万個体ぐらいの登録はされている状況です」
●本当にゲーム的要素もたくさんあって、すごく楽しみながらできるなって感じるんですけれども、やはりゲーム的要素を取り入れようというのは心掛けているところなんですか?
「生物多様性のデータベースを作るぞって言って、それに賛同してくれてやってくれるかたって、もちろんいっぱいいると思うんですけど、そうじゃなくって、別にそこは興味ないけど楽しいからやるんだって言ってくれるような、そういう参加の仕方っていうのもあるんじゃないかなと思っています。楽しいからやってくれるようなアプリを目指すためにも、ゲーム要素、ゲーミフィケーションみたいなものが必要なんじゃないかっていうことは考えて作りました」
※バイオームの制作にあたっては、当初は創業メンバーだけで生物の情報を独学で打ち込んでいたそうですが、自分たちだけでは限界があると思い、大学の先生や研究機関に協力してもらい、作っていったそうです。
原点はボルネオ島!?
※藤木さんは京都大学在学中に、およそ2年半にわたって東南アジアのボルネオ島で植物の調査を行ない、それが「バイオーム」の開発につながったということなんですが、いったいなぜ、ボルネオ島だったのでしょうか。
「僕自身、元々そういう生態系とか生物多様性を保全していくことにめちゃくちゃ興味がありました。というか“やらなきゃヤバイな”っていう思いがありましたので、そういうことができる研究室で、そういう研究をしたいなっていう思いで大学に入ったんです。
その中で色々調べていくと、生物多様性がまだ残っていて、それがすごく急速に失われている場所が、ボルネオ島がトップ級に、世界でも有数の環境破壊の最前線みたいな場所だということを聞いて、是非とも行ってみたいということで、志願して行かせてもらった経緯があります」
●具体的に現地ではどんな研究調査をされていたんですか?
「すごく過酷な調査ではあったんですけど、リュックを背負ってキャンプをしながら毎日歩き続けて、熱帯雨林のジャングルの中の特に樹木ですね。木を1本1本調べて、どんな木が生えているのかを調査して、転々と色んな場所に移動することをずっと繰り返していました」
●過酷ですね!
「そうですね(笑)。すごく大変でしたね」
●アウトドアスキルも問われそうな感じですね。でも1本1本、樹木を調べるのはすごく時間もかかるようなことなんじゃないですか? 地道かつ過酷というイメージですけれども。
「はい、おっしゃる通りだと思います(笑)。ものすごく時間もかかりますし、なので2年半、向こうにいたんですね。本当に過酷で大変なので、現地のかたを雇って手伝ってもらってやっていたんです。最初は10人ぐらい雇って行くんですけど、過酷過ぎてみんな途中で逃げ出しちゃって、最後は半分以下になって、4人くらいで作業をやったりして大変でした(笑)」
●そんな過酷な日々の中で何が楽しみでした?
「どうですかね・・・あんまり楽しめていなかったんですけど、現地のかたの入れてくれるコーヒーがめちゃくちゃ楽しみでしたね。毎朝入れてくれるんですけど、あれだけが楽しみで(笑)」
●そんな過酷な中、大変な思いをしながら取った調査データは、どんな研究成果に結びつくんですか?
「僕の場合は樹木を通して、その森林の生物多様性を数字で評価することをテーマで研究しておりました。現地で集めた現場データみたいなものと、衛星から撮影された広い面積の森林画像データを組み合わせて、点で集めたデータをすごく広いエリアに面的に評価し直すことで、例えば、東京都1個分ぐらいの非常に広いエリアの森林の状態を、一斉に一気に調査というか観測する技術を開発して、生物多様性の状況をかなり広いエリアで知ることができるようになったっていうような、そういう成果を出すことができました」
スマホを生物の観測拠点に
※ボルネオ島での調査で生物多様性について、一定の成果を出すことができた藤木さんなんですが、そのまま研究者の道に進まず、アプリを作る会社を起業したのは、どうしてなんでしょうか。
「色んな理由があるんですけど、ひとつは生物多様性を守るっていうことをやろうと思った時に、どうやったら守れるのかなって、すごくずっと考えていたんですけど、やっぱり突き詰めていくと結局、経済の問題、お金の問題がやっぱり原因っていうかドライバーになっているんじゃないかなっていうことを感じるようになって、生物を守るっていうことは経済と切り離せないなっていう、そういう感触を強く持ちました。
こういう研究活動ももちろん大事なんですけど、そうじゃなくって、ちゃんと会社として経済の中で生物多様性を保全するっていう活動をしないと、この問題って解決に向かっていかないんじゃないかっていうことを考えるようになったんです。なので、研究をやめて、会社としてこの活動を継続していこうと決めたという経緯があります」
●確かに昔からエコロジーとエコノミーはどちらかを優先すれば、どちらかがダメになるって言われてきましたよね。でも藤木さんがやろうとしている生物多様性の保全と経済活動の両立っていうのは上手くいくものなんですか?
「上手くいかないと、どうにもならないのが環境問題だと思うので、なんとか達成したいなって思ってずっとやっています。最近は社会の流れもだいぶよくなってきたなっていうのを感じていまして、企業さんは環境保全に力を入れることが、最近は普通になってきたので、だいぶ状況はよくなってきたなという風には感じています」
●藤木さんが起業するにあたって、どうしてアプリだったんですか?
「僕自身ボルネオ島で、ずっと現場で自分の足を使って調査していたんですけど、自分だけで集められる現地のデータって本当に限りがあって、限界があるなっていうのを2年半続けて分かったっていうのがあります。なので、上手く現地のデータを収集していく、観測していく仕組みを作らないといけないなっていうことを考えるようになったんです。
その時に世界各地にちゃんと散らばっていて、使える電子媒体が絶対いるなっていうことを考えるようになったんですけど、それを考えている時に、ボルネオ島のジャングルの奥地の、現地住民のかたがたって、みんなスマホは持っているんですよね。
テレビもないし冷蔵庫もないし、電化製品とかほとんどないんですけど、スマホだけは持っていて、それをみんな楽しみながらSNSとかやって使っているんです。それを見て、スマホがさっき言っていた世界中に散らばっている電子媒体として、めちゃくちゃ有用なんじゃないかなっていうことを考えるようになりました。
このスマホを通して生物を観察する、スマホを生物の観測拠点にすることができるんじゃないかなっていうことを現地で考えるようになりまして、スマホを使うことで、アプリを作って、そこからデータを登録してもらえるような仕組みを作れば、世界中の生物のデータを集められるんじゃないかなと考えるようになったっていうのが、元々のきっかけになります」
アプリというよりプラットフォーム
※実はアプリ「バイオーム」は無料で利用できるんです。ではいったい、株式会社バイオームとして、会社を維持するためにどうやって収益をあげているんでしょうか。
「うちのアプリはおっしゃる通り完全に無料で、課金もなくて広告もつかないというなんか不思議なアプリなんです。アプリの中で色んなイベントを開催したりとかしていて、うちのアプリでは“クエスト”と呼んだりしているんですけど、ユーザーさんにミッションを出します。例えば、外来生物の”ヌートリア”っていうねずみの仲間がいるんですけど、ヌートリアを探してみよう、みたいなミッションを出して、ユーザーさんがそれに参加して、ヌートリアのデータが集まるみたいな仕組みを作っています。
その仕組みを色んな企業さんとか省庁さんとか、自治体さんみたいな行政さんに、実際に使っていただき、そこで費用をいただくっていう構図を作っています。なので、企業とか行政というところから費用をいただいて、運営できているのがこのアプリの特徴になりますね」
●どういった企業に、そういうデータを使ってもらうというか、必要になっていくのですか?
「本当に色々ありますね。例えば教育のことをされているような企業さんは、教育のためのイベントをしたいので、アプリを使いたいという話があったりしました。
ちょっと変わったところでいうと、鉄道会社さんが自分たちの管理している鉄道の沿線の、駅周辺の生物の状態を知って、この駅は生き物が豊かですごくいい場所だ、みたいなことをちゃんと知っておきたいという話があって、鉄道会社さんからご依頼を受けて、生物の観測イベントをやったりっていうような、色んなパターンがありますね」
●膨大なデータベースってそういうところにも役に立つんですね。
「そうですね。企業さんが何らかの保全の取り組みをしていくにあたって、使っていただけるようにっていうのはかなり意識していますね」
●本当に、アプリというよりプラットフォームという感じですよね。
「おっしゃる通り、そこを目指しています。市民のかたも使えるし、企業のかたも参加できて、行政のかたも入れる、そういうプラットフォームになって、“産・官・学・民”みんなで連携して、生物のデータを集めて保全していこうっていうのが目標になっています」
●先日まで行なわれていた環境省とのコラボ「気候変動いきもの大調査」、これもすごく反響があったんじゃないですか?
「そうですね。ものすごく反響がございまして、参加者も1万人以上、既に参加してもらっていますし、データもすごくいっぱい集まっています。先月まで”夏編”というのをやっていたんですけど、その前の年には”冬編”を実はやっていたんです。
そこで集まったデータは既に解析も済んでいて、温暖化の影響を受けて、色んな生物が北に移動しているっていうことが、その結果からだいぶ分かってきました。かなり意義のあるデータが集まって、いい結果が出ているというのが、いいというのは微妙かもしれないですけど、温暖化の影響が生物に表れているという結果が、明確に出てきているという状況になっています」
海外版バイオーム
※生物の多様性を守るためには、地球規模での展開が必要だと思うんですけど、「バイオーム」の海外版は考えていないんですか?
「海外に関しては、もうアプリを作り始めた時から、海外に行くぞー! ということで考えています。なので、開発を少しずつですけど進めているという状況で、近いうちに”バイオーム世界編”みたいな形で、世界で使えるようなアプリにしていきたいなと思っています」
●それこそ、世界中のデータが集まったらすごいことになりますね!
「そうですね。特にやっぱり僕が行っていたボルネオ島みたいな、そういう環境破壊の最前線みたいな場所で、ちゃんとデータを集める仕組みを作らないといけないと思うので、熱帯とか、そういうところを中心にデータを集められると、ものすごく役に立つデータになるだろうなと思っています」
●具体的に、世界のデータをこういう風に使いたいっていうのはあるんですか?
「そうですね。さっき出たような熱帯林の破壊の現状みたいなことですね。そこが実際どれくらい生物がいなくなっているのか、研究者の間でもよくわかっていない状況なので、そこをまずははっきりデータとして出していけるというような状態を作りたいなと思っています。
あとは結局、熱帯林とか自然環境を破壊しているのが、その国の現地の人じゃなくて、先進国の大企業だったりすることって多いと思うので、そういう企業さんに、ちゃんとそういうデータを開示するように、(こちら側から)データを出していくみたいなことをして、ちゃんと産業の中で、そういうデータが活用されるような仕組みに繋げていきたいなと思っています」
●今後100年で地球に生息する生物の半分が絶滅するとも言われていますけれども、改めてバイオームというアプリで、どんなことを伝えていきたいですか?
「伝えたいというか、狙い自体は大きくふたつあると思っています。ひとつは、ユーザーのかた、使っていただいているかたに、生き物が豊かだっていうことはとっても楽しくて、自分の人生を豊かにしてくれるようなものだっていうことを肌で感じてほしいなと。そのためにアプリを使って、自分の周りにどんな生き物がいて、その生き物たちがどんなに面白いのかっていうことを、アプリを通して知ってほしいっていうのがひとつになります。
もうひとつは、このアプリを通してユーザーさんが登録してくれた生物のデータを使って、すごく大量のビッグデータになると思うんですけど、そのデータを企業さん行政さん、あるいは市民団体さんとか大学さんみたいなところに、ちゃんと保全活動に使っていただけるように、データをどんどん提供していくことに繋げていくという、そのふたつを達成していきたいなと思っています」
INFORMATION
藤木さんたちが開発した「バイオーム」は生き物の写真を撮って投稿するだけ。
でもすぐになんという生き物か答えを教えるのではなく、ユーザーに考えさせるのがいいですね。そして投稿した生き物が珍しいとポイントが多くもらえるため、ゲーム感覚でどんどん投稿したくなりますよ。
また、生き物に関するコラムもよく考えられています。
このコラムは「まねて学ぶ」をコンセプトに作られ、生き物に興味をもってもらい、保全につながるアクションにつなげるのが狙いだそうです。
随所に工夫がちりばめられた優れたアプリ「バイオーム」をぜひ試してみてください。
詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎株式会社バイオーム :https://biome.co.jp/
◎いきものコレクションアプリ「バイオーム」:https://biome.co.jp/app-biome/
2021/9/26 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第4弾! 四国の小さな町が行なっている、ごみを大幅に減らす野心的な取り組みをご紹介します。
今回の舞台は、徳島県の山間(やまあい)にある上勝町(かみかつちょう)。全国に先駆け、2003年に町から出るごみをゼロにする「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表。現在はなんと、ごみと資源の分別は45品目! リサイクル率はおよそ80%を達成していて、国内外から注目されています。
お話をうかがうのは、去年5月に上勝町にオープンした複合型公共施設「ゼロ・ウェイストセンターWHY」を運営する会社の責任者「大塚桃奈(ももな)」さん。去年大学を卒業したばかりの期待のホープなんです。「大塚」さんの肩書はCEO、でも「最高経営責任者」ではなく、CEOの「E」は環境的という意味の「エンヴァイロメンタル」で「最高環境責任者」なんです。
さて、SDGsとは「サステナブル ・ディベロップメント・ゴールズ」の略。「持続可能な開発目標」ということで、17のゴールが設定されています。今回はゴール11の「住み続けられる まちづくりを」、そしてゴール12の「つくる責任 つかう責任」について考えていきたいと思います。
徳島県上勝町のごみをゼロにする野心的な取り組みをご紹介する前に、今回お話をうかがう「大塚桃奈」さんのプロフィールに触れておきましょう。
「大塚」さんは1997年生まれ、湘南育ち。子供の頃からファッション・デザイナーに憧れ、高校生の時にファッションの勉強のためにロンドンに留学。自分が学んだことをどうやって社会に活かすかを考えている時に、ある映画を見て、愕然とします。
その映画とはファスト・ファッションの裏側を捉えたドキュメンタリー『ザ・トゥルー・コスト』。劣悪な環境で働かぜるえない発展途上国の人々、環境汚染、そして大量に廃棄されるウエアの現状を知って、社会や環境に目を向けるようになったそうです。
そんな大塚さんが働く「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」はいったいどんな施設なんでしょうか。このあと、じっくりお話をうかがいます。
☆写真協力:大塚桃奈、上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY
ごみを見つめ直す
※まずは大塚さんに、上勝町の出会いについてお話しいただきました。
「大学生の時になるんですけれども、映画(『ザ・トゥルー・コスト』)を観て、服を取り巻くそういった社会問題に、どうやって自分なりに向き合っていこうか考えている中で、安い服が日本に入ってくることによって、日本の繊維産業が衰退していることが分かってきました。
繊維工場は地方に多くて、少子高齢化と結びついているということも、ひとつの要因としてある中で、ローカルの中でのものづくりとか、そこから派生して服だけではなくて、暮らしであったり、それを取り巻くコミュニティっていうところに興味を持ち始めたんです。
その時にたまたまこの上勝町に『RISE & WIN』というブルワリーが大学生の時にオープンしたんですけど、その建築に携わっている中村拓志さんがたまたま知り合いだったことをきっかけに、上勝町という町が徳島県にある、そして日本で初めて”ゼロ・ウェイスト”を宣言した町だということを知って、これは自分の目で見てみたいなということで、大学2年生の冬休みに初めて訪れたことがいちばん最初のきっかけでした」
●実際に大学生の時に上勝町に見学に行かれて、どんなことを感じましたか?
「いちばん最初に感じたのは、すごく緑で山の中にある町。私は徳島市内にある空港からバスを3つ乗り継いで上勝町までひとりで行ったんですけれども、半日かかってようやく上勝町に着いたという感じでした。山の中の道をくねくね辿っていって、やっと着いた町っていうのが最初の印象だったんです。
小さな町の中で、町のかたが共に支え合って暮らしているっていうことも感じましたね。農家民宿にその時は泊まって、色々町の中を案内してくださって、畑であったり町に住む人であったり、山犬嶽(やまいぬだけ)という苔がすごく綺麗な山があるんですけれども、そこに連れて行ってくださったりとか、すごく温かいおもてなしをしてくださったのを今でも覚えています。
上勝の町内に唯一あるごみステーションを見学させていただいて、すごくきっちりとごみを資源ごとに分けていることを目の当たりにした時に、自分が何気なくポイポイと捨てていたごみが、実は見えない部分に隠されているというか、見えなくても暮らしていたんだっていうことを改めて知ることになって、ごみを見つめ直すことが自分の生活を見つめ直すことにも繋がってくるんだっていうことを実感した経験でした」
※大塚さんは国際基督教大学・在学中に交換留学でスウェーデンの大学へ。滞在した「ベクショー」という町はヨーロッパいち環境に配慮したクリーンな町だそうで、たくさんのインスピレーションをもらったそうです。
実は大塚さん、スウェーデンに行く前に上勝町でインターンとして活動、また、スウェーデン留学中に、上勝町のスタッフに頼まれ、サーキュラー・エコノミーに取り組んでいるアムステルダム、ベルリン、ブリュッセルなどの視察をコーディネイト、一緒に見てまわり、とても貴重な経験になったそうですよ。
「?」の形の複合施設
※上勝町のスタッフに誘われて、大学卒業後、すぐにセンターで働くようになった大塚さんは、いまはもちろん上勝町で暮らしていらっしゃいます。山間(やまあい)の町、上勝町は人口が1500人ほどで、65歳以上のかたが半数を超えているそうですが、最近は20代のかたや海外からの移住者が徐々にふえているそうですよ。
それでは「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」とは、どんな施設なのか、うかがっていきましょう。
●大塚さんが責任者を務める「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」。オフィシャルサイトを見させていただいたんですけど、施設を上から撮っている写真が載っていました。上空から見ると「?」の形になっているんですね? すごい!
「はい、そうなんです(笑)。何故ごみを捨てるのか、という根本に迫るような問いを通じて、みんなと、何気なく捨てているごみから社会をよくするヒントを探っていきたいというような思いが込められています」
●具体的にどんな施設なのか教えていただけますか?
「上勝町ゼロ・ウェイストセンターは複合型の公共施設になっておりまして、?の上の丸い部分が上勝町の住民が利用する、町唯一のごみステーションになっています。そこから続けて、くるくるショップという町の中古品が集まってくるリユースショップと交流ホール。ここはイベントが開催できたりとか、キッチンも付いていて、レンタル貸しも行なっているスペースで、セミナーとかワークショップが行なわれる場所。常時は解放していて誰でも自由に憩うことができます。
で、コインランドリーと、あとラボラトリーというスペースはレンタルオフィスになっておりまして、上勝町をひとつの拠点として一緒にゼロ・ウェイストを考えてくださる企業様であったり、研究機関とか、リモートワークの場所として、ホテルと一緒にご利用いただけるようになっています。?の最後、丸い部分が体験宿泊施設ということで、HOTEL WHYという小さな宿になっています」
●この建物自体も廃材で作られているんですよね?
「そうなんですよ。例えばですね、この建物全体に色んな建具が使われていて、大小形も異なる建具は町の人から集めた540枚もの建具になんです。ごみって不要なものと思われがちですけれども、廃材とか地域の中で使われなくなった材料をまた建物に、デザインという命を吹き込んで使用しています。
ほかにもこの建物、木造建築なんですが、上勝町は元々林業で栄えていた町なので、地産地消ということもあって、上勝の杉の木材を活用しています。それもゼロ・ウェイストの考えに寄り添うような形で、建築家のチーム、NAP建築設計事務所がここも携わっているんですけれども、なるべく地域のものに価値をつけていこうということで活用されています。
なんと今年の春には日本建築学会賞を受賞しておりまして、この取り組みが少しずつ周りの方にも伝わっているんだなっていうのを実感しています」
ごみの行く末を日常から意識
※現在、上勝町では45分別をして、ごみゼロに取り組んでいますが、そこに至った背景として、大塚さんの説明によると、まず、ごみを「再生できるか、できないか」の視点で分けたそうです。
上勝町は小さな町なので、ごみ処理にコストをかけられない。一度、焼却炉を導入したそうですが、ダイオキシンに関する法律が施行され、たった2年で使えなくなったといいます。そこでごみを資源として分けて、生まれ変わらせるために、1997年に9つの分別からスタート、その後、徐々に増えて、現在の45分別になったそうですよ。 リユースにも積極的に取り組み、センター内ある「くるくるショップ」では住民のかたが持ち寄った衣類や食器類などを、自由に持ち帰ってもらったり。また、生ゴミは各家庭にコンポストを設置して、おうちで循環させています。
さて、気になる45分別、どれだけ細かいのか、大塚さんに説明していただきました。
「例えばですね、紙って燃えるごみとして回収されていると思うんですけれども、古紙とかは別にして、お菓子のパッケージとかトイレットペーパーの芯とか、燃えるごみとして回収されてしまいがちですが、それを上勝では9種類に分けています。この理由としては、紙ってきちんと分けたら再生紙になったりダンボールになったり、資源としてとっても価値があるものなので、それをお金をかけて焼却して消してしまうんではなくて、また分けて資源にしようと。
分けるとどんなメリットがあるかというと、資源になるだけではなくて、価値があるので、リサイクル業者さんがお金を払ってくれるんですね。1キロ数円でそれぞれ買い取ってくれるっていうこともあって、金銭的なメリットと環境的なメリットがあるということから9種類に分別しています。
例えば、紙パックが内側が白のものと銀のもので分かれていたりとか、あとは雑誌、雑紙、新聞、チラシ、ダンボール、シュレッダー屑、硬い紙芯、紙カップというように細かく分かれています」
●実際に大塚さんは上勝町に移住されて、45分別やるようになって、体験してみていかがでした?
「最初は戸惑うことも多くあったんですけれども、ゲーム感覚みたいな・・・このごみステーションの特徴として、それぞれがどこに行って何に生まれ変わるのか、そして1キロ当たりいくらの処理コストがかかっているのかということが記載されているので、捨てるのではなくて資源としてどこに行くのかっていうことを、日常の中から意識できるようなデザインがあるんだなという実感があります。
一方では、コツコツと分別することも大事ですけれども、やはり日々自分が使っているものをどう長く使えるようにするかとか、自分が作る側にどう携わって一緒に変えていけるのかを改めてじっくり考える機会をいただいているなと思っています」
●町全体でやるっていうことに意味がありますよね。
「そうですね。上勝町唯一のごみステーションなので、町の中にはごみ収集所もなければ、ごみ収集車も走っていないんですね。なので、町の人がみんなここに集まってくるっていうのは、コミュニティのホットスポットにもなっているなと思います」
ごみの分別を体験するホテル
※「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」にはホテルもあるということでしたが、どんなホテルなんですか?
「このホテルは”ゼロ・ウェイストアクション”をコンセプトにしたホテルになっていて、いわゆる一般的なホテルとはちょっとイメージが変わってきます。そもそもごみ集積所、ごみステーションと併設しているっていうところからユニークではあるんですけれども、チェックインの際には、例えば施設の中をご案内してスタディーツアーという形で、上勝のゼロ・ウェイストの歴史であったり取り組みを、ひとりひとりのご宿泊のお客様にご案内をさせていただいていたりします。
使い捨てアメニティをお部屋には一切置いていないので、よくある歯ブラシとかカミソリとかそういったものは置かずに、ご自身が普段使っているものを持ってきてもらうっていうところからスタートしています。ただ手を洗う石鹸と、あとお部屋でお飲みいただけるコーヒーやお茶はチェックインの時に量り分けでお渡しするっていうような、ちょっとずつコミュニケーションをとりながら考えるヒントをちりばめています。
そのスタディーツアー終わったあとに、チェックアウトまでに必要な分をコーヒー1杯からお豆を挽いて瓶に入れてお渡しします。お部屋には湯沸かし器とコーヒードリッパー、ステンレスフィルターのものを置いてあるので、ご自身で入れてお飲みいただくっていうスローな時間と、あと上勝は水源地でもあるので、この施設全体は山水が流れているんですね。なので、タップウォーターもそのまま美味しくお飲みいただけるので、そういったところも感じていただきながら、そのようなスタイルでやっています」
●宿泊することで色んな気付きがありそうですね。
「さらには、チェックアウトの時にごみの分別体験っていうのも行なっています。客室にごみバスケットが2つ設置されているんですけれども、そこで滞在中に出たレシートとか、色んなごみをまずは6分別に分けていただいて、翌日には町のかたも利用している中で一緒にごみステーションに行って、45個にまた分けるというような、ちょっと変わったホテルです(笑)」
ポジティヴな感情をみんなで!
※「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」がオープンして、1年半が過ぎました。いまはどんなことを感じていますか?
「そうですね、。少しずつこのゼロ・ウェイストセンターWHYを通じて仲間が増えてきていますし、これからどんどん増やしていきたいなとも思っています。例えばホテルはどなたでもご利用いただけるんですけれども、この施設の中にあるラボラトリーではレンタルオフィスとして今、年間契約という形で企業のかたがたにご利用いただけるようなプランを用意しております。
上勝町は2003年に日本で初めてゼロ・ウェイストを宣言して、2020年までにこの町から出る焼却埋め立てごみをゼロにしようという目標がある中で、住民のかたがコツコツと分別に取り組んできたりとか、量り売りを地域の商店が取り入れたりしてきたんですけれども、やはり日々使っているプロダクトが複合素材から出来ていて、分別が難しくて再生ができないようなデザインになってしまっているんですね。
どんどん過疎が進んでいる中では、この小さな町だけではもうゼロ・ウェイストの取り組み、そもそも暮らしの持続性が問われている中で、上勝町と関わりながら一緒にこの町のありかたをサステナブルにしていかなければならないっていうフェーズに入ってきています。 そんな中、例えばゴム製品である靴が焼却になっているっていう課題がある中で、靴のメーカーさんと一緒にディスカッションを重ねるようになったりとか、少しずつではあるんですけれども、仲間を増やしていきたいなと思っていて、可能性を感じています」
●改めて「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」の責任者として、どんなことを大塚さんは発信していきたいですか?
「ごみって聞いた時に、多分多くのかたは臭いとか汚いとかで、すごく見えないところに追いやってしまいがちだなと思っています。でもこのゼロ・ウェイストセンターはまずそもそも臭いがしないんですね。生ごみを集めていないということと、汚れているものを洗って乾かしてから町のかたが持ってきていて、すごく清潔になっています。
そういった中から、このセンターはごみと言われているものを角度を変えて、所々で活用しているんですけれども、この上勝町からすごくワクワクとするようなポジティヴな感情を一緒に作ることによって、みんなが見えていなかったごみに一緒に向き合いながら楽しく解決していけるようなカルチャーであったり、プラットフォームを作っていきたいなと思っています」
INFORMATION
上勝町はごみにしない! 資源にするということで45分別! リサイクル率はおよそ80%を達成。全国平均で20%ほどと言われているので驚異的な数字です。人口が1500人ほどの小さな町だからできることかもしれませんが、やればできるんですね。人の気持ち次第だと思いますね。また、ファッションの勉強もされていた「大塚」さんは、できる範囲内で衣服の「心のあるものづくり」にも携わっていきたいとおっしゃっていました
ぜひ「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」、そして大塚さんの活動にご注目ください。詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY:https://why-kamikatsu.jp/
2021/9/19 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、公益財団法人「日本財団(にっぽんざいだん)」の常務理事「海野光行(うんの・みつゆき)」さんです。
海野さんは藤枝市出身、1990年に日本財団に入り、海洋関係の事業を担当。そして2016年に美しく豊かな海を次の世代につないでいくために「海と日本プロジェクト」を創設。そこには子供たちや若い人たちに、もっと海に親しんでほしいという熱い思いがあるんです。現在は1万をこえる団体が協力する一大プロジェクトになっているそうです。そして、その功績により、先日、令和3年「海の日」海事関係功労者大臣表彰を受賞されています。
きょうはそんな海野さんに海洋ごみの現状や、減らすために取り組んでいる大きなプロジェクトのお話などうかがいます。
☆写真&ロゴ協力:日本財団
ペットボトル450年! 漁網600年!
※それでは海野さんにお話をうかがっていきましょう。この番組でも海洋ごみの問題は以前にも取り上げ、その厳しい現状をお伝えしてきましたが、世界の海には大量のごみが漂っているんですよね?
「はい、色んな調査、各国でなされているものはあるんですけれども、やっぱりプラスチック類が最も高い割合を占めているということが分かっています。世界では毎年少なくとも800万トンのプラスチックごみが海に流れ出ていると推計されています。東京スカイツリーの重さが約4万トンなので大体200本分、こういったものが出ているということなんです。日本からも毎年2万トン〜6万トンが流出していると言われています」
●膨大な量ですよね。北太平洋には太平洋ごみベルトと呼ばれる一帯もあるっていう風に聞いているんですけれども、これはどんなエリアなんですか?
「アメリカのカリフォルニア州からハワイ沖にかけての北太平洋上の海域なんですけれども、ここの大きな潮の流れに乗ってプラスチックごみが集まってくる。プラスチックごみだけではないんですけど、いわゆる海洋ごみが集まってくる海域があります。これが帯のように見えるようなことから太平洋ごみベルトという風に言われているところなんですね。
面積は大体160万平方キロメートルを超えると言われていまして、日本の面積の約4倍以上の大きさになってきます。ここに漂っているプラスチックのごみの総重量で言いますと、大体7万9000トンという数値も言われているところでありますね」
●色んな場所から漂って来ちゃうっていうことなんですか?
「そうですね。アジア諸国ですとか、北アメリカから流れ出てきたものがあると言われていますけれども、当然のことながら、この日本からのものも含まれていると言われています」
●以前、海洋研究開発機構 JAMSTECのかたに、深い海の底にプラスチックごみが沈んで分解されることなく、そのまま残っているんだっていうお話もうかがったんですね。さらに行方不明のプラスチックごみがまだまだ大量にあるんだっていうお話もうかがったんですけれども、このままですと世界の海がごみで埋まっちゃうんじゃないかっていう危惧もありますよね?
「まずプラスチックのごみが海に出ると、どういう風になるかっていうことがあるんですけれども、いずれにしても人工的に作られたプラスチックっていうのは、基本的には自然界で完全に分解されるということはありません。ですので長い年月、海を漂うことになります。例えば最近、有料化になったものとしてはレジ袋、これ海に流れ出ると何年ぐらい漂うと思います?」
●どうなんでしょう・・・かなりずっといそうな気もしますよね。
「ものにもよるんですが大体20年。その他にも私たちがよく使うペットボトル、これ450年ぐらいなんです。さらには、プラスチックごみの中の4割くらいを占めている、いわゆる漁具、漁網ですね、これに至っては600年って言われているんですね。そういったものが、形はある程度保ったまま浮遊していると・・・。
ですから、今私たちがごみを捨てて海に流れ出てしまうと、私たちの子供の世代、孫の世代、ひ孫、玄孫(やしゃご)、その先なんだろう、来孫(らいそん)とか、その世代まで影響を及ぼしてしまうという問題があるということなんですね。
現在、世界の海に流出している海洋ごみの量は、大体1億5000万トンという風に言われているんですけれども、このまま何もしなければ、2050年に重量ベースでいくと、魚よりもプラスチックごみの量のほうが多くなると発表している機関、あるいは学者さんもいるんです」
●そんな未来、いやです!
「一体どうなっちゃうんだろう!? って思いますね」
プラスチックに囲まれた生活
●海洋ごみの問題を解決するためには、家庭から出るごみを減らすために生活を見直すことも大事かなと思うんですけれども、なるべく家庭にプラスチックを持ち込まないようにしたいなと思っても、スーパーとかコンビニに並ぶ商品って、ほとんどプラスチックの容器とか袋に入っていると感じるんですが、どうしたらいいんでしょうか?
「どうしたらいいんでしょうね(笑)。自分も同じような疑問を持って一度試したことがあって。それは何かというと、朝起きてから寝るまでプラスチックに触れないで、自分は生活できるのかどうか、これやってみたんですね」
●どうでした?
「大失敗しましたね。朝起きる時、目覚ましを鳴らします。目覚ましが鳴って押した瞬間にその目覚まし時計がプラスチックで・・・」
●ああ〜!(笑)
「もう何もならない、そこでもうゲームは終わってしまうというところがあります。そういったところからすると、プラスチックに触れないで、今、現代人が生活できるかっていうと、これはほぼ無理なんだろうなと思いますね」
●(プラスチックは)至る所にありますよね。
「フランスのルモンド紙に載っていた写真を見たんですけど、愕然としたんですね。その家の中からプラスチック製品を全部出してみようと、庭に全部出していたんですよ。そしてその写真を見たら、家の中はもうほとんど何も残っていなかった。プールサイドに家財道具が全部並んでいたというぐらいなんですね。
そういったところからも、今の私たちの社会にとってプラスチックは欠かせないものになっているのかなと。今収録している部屋の中にも、どれだけプラスチックがあるかっていうようなことにもなってきますよね(笑)。
ただ、よく誤解されるところがあるんですけれども、たとえプラスチックをたくさん使っても、きちんと分別をするとか処理さえすれば、海洋ごみになることはないんですね。逆に、たとえプラスチックの使用を減らす、もしくは生産を減らしていったとしても、ポイ捨てしたり、あるいは我々がずさんな管理をしてしまえば、それは海洋ごみになってしまう可能性があるということなんです。
プラスチックが生活にこれだけ浸透しているのは、やっぱり便利で安くできるからというところだと思います。今のコロナ禍においては感染対策においても、改めて使い捨てのプラスチックの価値が見直されているというところも聞いていますので、プラスチック並に便利で、たとえ海に流れても分解されるような代替の素材が開発されるまで、まだまだ時間がかかりますので、それまではプラスチックの使用を中止するのは現実的ではないと思います。
プラスチック=悪と決め付けるのではなくて、例えばリサイクルをして再利用していく。そういったものをしっかりとシステムとして作り上げるとか、あるいは再利用できないものは、例えば日本でいうと燃やしてエネルギーにしていく。これはCO2の問題なんかもあるので、各国では問題になるんですけれども、こういった活用方法を賢く考えて使うということを、私たちは生活の中でも考える、もしくは政府の中、研究者の中でも考えていく必要はあるのかなと思っています」
※補足:ポイ捨てや、うっかりで出てしまったペットボトルやレジ袋など、ごみとなってしまったプラスチックは、河川や水路を通って海に流れ出しています。そんなプラスチックごみは海洋生物や海鳥などに影響を与えていることは以前番組でもお伝えしました。
また、5ミリ以下のマイクロプラスチックや、肉眼では見えないナノサイズのプラスチックが魚などから見つかっていますが、人体への影響については、まだはっきりしたことはわかっていないそうです。
たくさんの企業の技術を結集
※日本財団では海洋ごみの削減に向けた取り組みを行なっています。去年立ち上げた連携組織「アライアンス・フォー・ザ・ブルー」ではどんな活動をされているのか海野さんにお聞きしたら、まず、素敵なバッグを見せてくださいました。
「これが何からできているかってご存知ですか? 見た目で分かりますか?」
●見た目では全く、素敵な水色の、あと皮と、おしゃれなバッグです。
「何からできているかというと、実はこれ、魚を捕る網で出来ています。リサイクルなんですね。リサイクル商品としてはものすごくいい形で仕上がっていると思うんですね。海洋プラスチックの中でも重量ベースで最も多いのがいわゆる漁具、その中でもやっぱり悪さをするのは漁網って言われているんです。
これをたくさんの企業のお力をお借りして実現したのが、ひとつのものとして、これなんですね。実はこの取り組みの前に、日本最大の消費者団体であります生活協同組合のCO・OP(コープ)ってご存知ですよね? 彼らと一緒に消費者のプラスチックごみに対する声っていうものちょっと調べてみました。そうしたところですね、興味深い実態が浮き彫りになってきました。
挙げるとですね、3つほどあるんですけれども、ひとつは、消費者は企業が提供する選択肢が乏しいことに不満を持っている、これがまずひとつ。それともうひとつは、企業による新しい選択肢の提供を待っている。もっとたくさん(選択肢が)出てきたら私たち消費者は買いますよと思っているんですね。
さらに、環境に配慮した商品がたくさん出てくれば、それは一定のコスト負担、付加価値が付いたものがあれば、コストを負担してもそれを許容できますと、要は買いますよということを生活者の皆さんは思っているんですね。
この調査結果からも、何が言えるかというと、企業の協力、企業の貢献というのは、これはやっぱり欠かせないということを改めて感じたところです。もちろん一筋縄じゃいかないところもあるんですけれど、例えばプラスチック製品の商品企画から流通、製造、消費、処分、あるいはまたこれを再利用していくと、こういった一連の過程の中で色んな企業さんが関わってきます。ですので、ひとつの企業や業種で取り組むだけでは、限界が出てくるんですね。
なので、日本財団では石油化学ですとか、あるいは日用品、食料品、包装材のメーカーさん、小売さん、リサイクル企業さん、色んな企業のかたがたを集めて、本気度のある、ちゃんとした製品を作ろうじゃないかということで集まったのが、”アライアンス・フォー・ザ・ブルー ”というもので、2020年7月に立ち上げて、今、大体34社になっています。
自分たちが足りないもの、もしくは自分たちはこんないい技術を持っているっていうものを出し合って、ひとつのいい製品を作ろうと出来たのが、この漁網のバッグということです」
●リュックもトートバッグもショルダーバッグも、本当に生地もしっかりしていますし、見た目もお洒落ですね。
「そうなんです」
※補足:日本財団が立ち上げた連携組織「アライアンス・フォー・ザ・ブルー」にはセブン&アイ・フォールディングスや大日本印刷、三菱ケミカルなど、いろいろな業種の企業が34社参加しているとのことでした。
そして、漁網をリサイクルしたバッグは10月1日から「豊岡カバン」のオフィシャルショップやオンラインで販売される予定だそうです。ぜひネットでチェックしてください。
ごみは人の心から出てくる
※日本財団の取り組みとして、きのうから「秋の海ごみゼロウィーク」がスタートしました。海野さん、これはどんな活動なんですか?
「日本財団と環境省で共同開催しているものでございまして、全国一斉の清掃キャンペーンになります、要はゴミ拾いキャンペーンですね。で、この春の海ごみゼロウィークというものがあって、こちらは5月30日、ごみゼロの日から6月8日まで。6月8日っていうのは国連で定められた世界海洋デーなんです。
この期間を“春の海ごみゼロウィーク”ということで、一斉ゴミ拾いをやってもらったら、コロナ禍でもありますのでなかなか難しいということで、今回は秋にもこれを設置しようということで、9月の第3土曜日、これはワールドクリーンアップデーにもかかるんですけれども、この前後を踏まえて、1週間は“秋の海ごみゼロウィーク”と名付けて今、実施をしているところであります」
●これ、今からでも参加はできるんですか?
「もちろん参加できます。“海ごみゼロウィーク2021”のホームページがありますので、こちらの応募フォームから申し込んでいただければ、ごみ袋を無償で提供をさせていただきますので、ぜひ参加していただければと思っています」
●日本財団のご協力をいただいて、bayfmでは”LOVE OUR BAY! 海ごみゼロ!プロジェクト”を進めております。私も近所のごみ拾いをして、写真を撮ったりしているんですけれども、色々な企業や自治体などが連携していけば、どんどん大きな力になっていきますよね」
「おっしゃる通りだと思います。海ごみと聞くとあたかも誰かが海に行って、そこでごみを捨てているような感じに捉えられるかもしれませんが、先ほど申し上げた通り、もともとは陸から出たものなんですね。
海洋ごみは川から来ます。川のごみはどこから来るかというと町から来ます。町のごみはどこから出てくるかというと、やっぱりこれは人の心から出てくるというところはあると思います。海洋ごみ問題というのは全ての人に関わる問題ではあると思っています。
そういった意味ではプラスチックを製造販売している企業、そして処理関係の権限を持っている自治体さん、各地のNPO団体、スポーツ団体、あるいはマスメディアのかたがた、あらゆるステークホルダーと連携しながら、国民ひとりひとりがこれ以上ごみを海に出さないんだという強い意志を持って連帯していく、こういう気運作りというかムーブメント、こういったものを作っていければと思っています。解決のカギを握るのはやっぱり人の心だと思いますので」
※補足:2019年の「海ごみゼロウィーク」では全国1500カ所でおよそ40万人のかたが参加する一大イベントになったそうです。新型コロナの影響で、今年は開催規模は小さくなってしまっているそうですが、感染が落ち着いている地域で対策を万全にして実施しているところもあるとのことです。開催は9月26日まで。詳しくは「日本財団」のホームページでご確認ください。
◎日本財団「海ごみゼロウィーク2021」:https://uminohi.jp/umigomi/zeroweek/
「瀬戸内オーシャンズX」!
※それでは最後に、今後取り組んでいきたいこと、そして目標について海野さんにお話いただきました。
「”海と日本プロジェクト”、これは前からやっていたんですけど、この一部に”チェンジ・フォー・ザ・ブルー”という海洋ごみ対策のプロジェクトを2018年の11月から開始をいたしました。
チェンジ・フォー・ザ・ブルーのザ・ブルーというのは、青は海を象徴する色なので、海の豊かさを守るという意味。それとチェンジというのは、海にごみを出さない社会に変えていこうという理念のもと、チェンジ・フォー・ザ・ブルーって名付けたんですけれども、こういった中で産学官民が連携したオールジャパンの取り組みとして、海洋ごみの問題を解決するモデル事例を、とにかくたくさん作っていきたいという思いで今進めているというところではあります。
もちろん何をするにしても調査結果、いわゆる科学的なエビデンス・データっていうのは必要です。ですので、これを踏まえた上で何をすることが効果的なのかということを考えながら今、対策というか事業を進めているところであります。
チェンジ・フォー・ザ・ブルーを開始しまして、自治体とも連携してモデル作りを進めていくような中で色んな課題も見えてきました。そもそも海に流れ出たごみというのは県や市町村を越えて移動してしまうんですね。ごみに県境はないし、海も県境や市境はありませんので、そうなってくると誰がどのように回収するのか、あるいは役割分担や回収の責任の所在というのは結構曖昧になってくるんですね。
そうなると各地域で海洋ごみ対策というのが、地域の人たち、あるいは個人、個々の人の取り組みに任せられてというのがあるんですね。なので、ある意味放置されている状態であったというところはありました。
そこで、単一の自治体の枠を超えて、広域のエリアで海洋ごみ対策、これのモデルを構築しなければいけないのではないかということで、2020年の12月だったんですけれども、ターゲットは瀬戸内海、美しい海ですよね、美しい海にもごみってあるんですよね。このごみをなんとかゼロにしてきたいということで、新しいプロジェクトを開始しました。
それが”瀬戸内オーシャンズX”。何でXかというと、今回参加してくださっている自治体というのは香川県、愛媛県、岡山県、広島県、これは瀬戸内を巻き込んでいる自治体になっていますけれども、(地図で見ると)X型に連携をするというところで、このプロジェクトを進めました。
なんで瀬戸内海かというと、瀬戸内海ってやっぱり外海からごみが流れ込む確率は少ないんですね。そういった意味では我々、閉鎖性海域と言っているんです。瀬戸内にあるごみは逆に言い換えると、ほぼ自分たちの出したごみなんです。なので、ここで対策をすると何が起こるか可視化しやすいんですね。
要は対策をして、県民の皆さんがしっかりと取り組んでさえくれれば、瀬戸内のごみは限りなくゼロに近づくということが分かってきました。ですので、今、環境省さんが法律を変えるような形で進めているんですけれども、それと相まって私たちもこういうプロジェクトを進めていく中で、瀬戸内のごみをゼロにするということで、ごみを通じてちゃんと海のことを考えてもらう意図も踏まえて、この瀬戸内オーシャンズXを始めました。
大体5年間でゴミの流入を70%減らす。これは川のゴミを遮断すれば、ある程度できます。それと同時に回収ですね、海洋ごみの回収を10%増やす。これをすることによって理論上、ごみはゼロに近づいていくと。5年間でなんとかこの取り組みを成功に導きたいなと思っています。
当然のことながら調査研究をしながら、企業の皆さん、地域連携をやりながら、あとは教育と、市民の皆さんに対しての行動ですね。こういったことをしながら政策形成、自治体の皆さんに対して、私たちもごみに対するシンクタンクを持っているものですから、こういった政策形成の部分もサポートしながら、この4つの柱を掲げ、先駆的な様々な取り組みを進めていきたいなと思っておます。上手くいけば、この成功事例が海外にも持っていけるのかなと、日本発、瀬戸内発のモデルとして出ていけばいいなという風に思っています」
INFORMATION
日本財団が進めている海洋ごみ対策のプロジェクト「チェンジ・フォー・ザ・ブルー」そして連携組織「アライアンス・フォー・ザ・ブルー」に今後も番組として注目していきます。
海野さんが創設した「海と日本プロジェクト」は海洋ごみの削減だけでなく、子供たちや大人たちにも海に関心を持ってもらうための様々な取り組みを行なっています。詳しくはぜひ日本財団のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎日本財団 HP:https://uminohi.jp/
ベイエフエムでは日本財団の協力のもと、「LOVE OUR BAY! 海ごみゼロ!プロジェクト」を進めています。参加方法は簡単! ゴミを拾って、それを写真に撮って送るだけ。ぜひ一緒にチーバくんごみゼロMAPを完成させましょう。詳しくはベイエフエムのサイトを見てくださいね。
◎bayfm HP:https://www.bayfm.co.jp/info/umigomi0/
2021/9/12 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ゴミ清掃のお仕事もされているお笑いコンビ「マシンガンズ」の「滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)」さんです。
滝沢さんは清掃員の体験などをSNSで発信、また、ゴミに関する本も出され、ゴミ清掃芸人として大注目されています。去年10月には「環境省サステナビリティ広報大使」に就任されているんです。そんな滝沢さんをお迎えして、ゴミにまつわる、眼から鱗のお話満載でお送りします。
☆イラスト:本田しずまる
ゴミには人間性が出る!?
●きょうはゴミに関するお話を色々と聞かせてください。よろしくお願いいたします!
「よろしくお願いいたします〜!」
●滝沢さんの新しい本については後ほどお話をうかがいますが、その前に滝沢さんがSNSや本で発信されて話題になった言葉について、いくつかうかがっていきたいなと思います。
「はい、なんでも聞いてください」
●まずは「地域の品格はゴミ集積所で分かる」というお言葉ありましたけれども、これはどういうことですか?
「逆を言えば、一般的に治安のあまりよくないと言われる場所ってあるじゃないですか、 そういうところって必ず、集積所を見ると汚かったりとかするんですよね。だから言ってみたら汚くなっている状態でも誰も何も気にしないということで、それが何を意味しているかって言ったら、やっぱり近所の目がないっていうことなんですよね。だから綺麗なところっていうのはやっぱり目が行き届いているわけですね」
●引っ越しする時に治安がいいところに住みたいなと思ったら、ゴミ集積所を見に行けばいいかもしれないですね。
「見るといいと思いますし、あとは例えば不動産屋さんとかに、ちょっと集積所を見せてもらっていいですかとお願いして、見たほうがいいですね」
●なるほど!
「なんかそのアパートとかマンションにどういう人が住んでいるのかっていうのがやっぱり分かりますね。ゴミの出し方が汚いだけでは多分ないんですよ。ゴミの出し方も悪いし、例えば夜中に騒音を出すとか、やっぱり繋がっているんですよね、生活で。その人間性みたいなところを表しているのがゴミっていうことだったりするんですよね」
●本にもゴミは伝染するっていうことで、適当なゴミを見るとこのくらいの分別でいいのかなということで、悪い人の真似をしてしまうっていうのが人間であるっていう風に書かれていましたけれど。
「そうなんです。自分に置き換えると分かりますけど、例えばペットボトルのラベルを剥がしてペットボトルの日に出そうと思ったら、みんなラベルを剥がしていなかったら、剥がさなくっていいんだ! ってやっぱり思いますよね」
●確かに思っちゃいます。
「来週から剥がさなくていいや、そのまま出そうってなるんで、やっぱり自分の出したゴミって意外と人に影響を与えているんですよね。だから僕、ゴミ回収に色んな場所に行くじゃないですか。そうすると綺麗なところは本当に綺麗なんだけど、汚いところはどんどん汚くなっていくんですよね」
●そういうものなんですね。続いて「ゴミは生活の縮図で人格をも表現する」というお言葉、これもまさにそういうことですよね。
「そういうことですよね。やっぱりゴミって結局、嘘をつかないんですよね。人間って結構意外と色んな嘘とかついていたりするんですけど、ゴミ自体は嘘つくことがなかったりするので、意外とその人自身を表しているのかな〜なんて思ったりしますね。
例えば、色んなお金持ちの地域みたいな、高級住宅街みたいなところがあるじゃないですか。そういうところと一般的な住宅街っていうのは、出るゴミが違ったりとかするんですね」
●お金持ちのかたほどゴミのことを考えていらっしゃるっていうことですか?
「あ、小尾さんは勘がいいですね! お金持ちなんじゃないですか!?(笑)」
●いやいや、全然です!(笑)。でもどういうことですか? お金持ちのかたほどっていうのは・・・。
「買っている商品はもちろん違うみたいなこともあったりするんですけど、意外とね、一般的な住宅街のほうがゴミの量が多かったりするんですよ。一見、逆のようなイメージないですか? お金持ちの人がいっぱい買って、バンバン捨てているみたいなイメージですけど、実際は逆で、お金持ちのかたのほうがゴミがすごく少ないんですよ。極端に少ない。
でも一般的な住宅街のほうが結構ゴミが多いのは、意外と中身をバッと、見ようと思ってみるわけではないですよ、見てみると100円ショップのものとかで、そんなにまだ使っていないようなグラスみたいなものとかね、そういうものが結構出ていたりするんですよね。
あとはファストファッション的なこと、そんなに袖を通していない綺麗な洋服でも、結構、年末年始や引越しシーズンになると意外とバンバン捨てて、洋服の束が4袋とか5袋とか・・・出すかたが結構いるんですよ。やっぱりそういうのって普段の生活で適当に買っちゃう、でも100円だから捨てちゃおうみたいなのが、結構表れているのが一般的な住宅街のゴミだったりするんですね」
●へ〜〜、面白いですね! ゴミって(地域性が)出るんですね!
「そうなんですよ。逆に言えばお金持ちの地域のかたとかは、皮肉じゃないですけど、自分の好きなものをちゃんと買っているから、そんなに捨てることもあんまりなかったりするんですよね。そこに量の違いが出てくるのかなと思いましたね」
ゴミ清掃車1台で1日10〜12トン!
※滝沢さんがゴミ清掃のお仕事は始めたのは、36歳のとき。奥様から、妊娠したのでまとまったお金が必要よ、といわれ、友人の紹介でゴミ清掃のお仕事をやることになったそうです。お笑いだけで食べていきたいと思っていた滝沢さんは、最初は気が進まなかったそうですが、その後は本気で取り組むようになり、今年で丸9年に続けているんです。
滝沢さんはゴミ清掃員になった当初、とても驚いたことがあったそうです。いったいどんなことに驚いたんですか?
「こんなにゴミ出ているんだ! って、まず思いましたね。みなさん、自分のゴミしか見ていないじゃないですか。でもゴミ清掃員って当たり前なんですけど、みんなのゴミを回収するんですよ。例えばパッカー車って分かります? ゴミ清掃車。あれって最大2トンぐらい(のゴミを)回収するんですよね。小尾さんはあれをパンパンにしたら1日の仕事は終わりっていうイメージないですか?」
●あります、あります!
「あれね、実は1日6回やるんですよ。6台分」
●ええっ!?
「ゴミがパンパンになったらゴミ清掃工場に持って行って捨てて、またその続きからやるんですよ。それを1日6回。だからつまり1日10トンから12トンくらいのゴミを回収しているんですね。1台でですよ」
●すごいですね。そこまでくると想像がつかない量ですね。
「それがもう何十台とその自治体で(パッカー車が)出るじゃないですか。えっ! うちの自治体だけでこんなにゴミが出ているの!? って本当に思うんですよ。清掃工場とか見たことあります?」
●はい! あります!
「ゴミを溜めるところ見た?」
●溜めるところ?
「清掃車がゴミをバーって出して、大きな穴みたいのがあって、うちの自治体だと横30メートル、深さ20メートルくらいあるんだけど、それがね、年末年始になるとパンパンになるくらいすごい量のゴミになるんですよ。これを見ていると、本当にゴミで日本は埋まらないのかなって、当たり前のように思うようになるんですね。これが衝撃だったんですよ」
●ゴミが多い多いと言われていても、実際にそこまで!っていう感覚がないですよね、普通に生活をしていると。
「目の前からなくなると、もうゴミって消えてなくなっちゃったものだと思いません?」
●はい、思っています。
「意外とゴミってなくなることはなかったりするんですよね」
●(ゴミ清掃会社の)非常勤とはいえ、今でもゴミ清掃のお仕事を続けているのは、何か思いがあるってことですか? やりがいとか。
「やりがいがありますね。ありますし、もうゴミ清掃をやっているのが好きの領域に入ってきましたね! 本当はお笑いをやりたいからゴミ清掃なんかやりたくねーよなんて、思いながらやっていると意外とね、逆に辛いんですよね。
だから3年目くらいの時に、ゴミ清掃自体のことを好きになろうって思って仕事に取り組むと、色々やっぱり見えてきて面白かったんですよ。それこそ金持ちのゴミと一般的なゴミの違いをよく見て、焦点を当てると全然違うんだなとか思ったりして、面白い発見がいっぱいあったんですよね。やっぱり日々発見があるので今は楽しいですね」
※滝沢さんからこんなお話もありました。ゴミの袋を結ばずに出しているかたもいるので、ゴミを出すときはしっかり、出来れば二重に結んで出していただけるととても助かるとおっしゃっていました。
また、嬉しかったお話としては、竹串を空になったティッシュの箱に入れてくるんで、ゴミ袋から飛び出さないようにしてくださったかたもいたそうです。「プロの主婦」だと感じたそうですよ。ゴミ清掃員のかたがケガをしないようにという思いやりですよね。
ゴミか資源か、重要ポイント
※いまはゴミの分別は当たり前のことですが、分ける時に、これは燃える? 燃えない? どっちなんだろうと迷うことも多いですよね。地域によってルールが違うこともありますが、何かわかりやすい基準はあるんでしょうか?
「小尾さんはゴミって何種類あると思いますか?」
●燃える、燃えない、あと缶とかビンとか、そういったことですか? 粗大ゴミとか?
「6種類?」
●10未満!(笑)
「10未満(笑)、正解は2つです!」
●2つ!?
「実はゴミっていうのは燃えるゴミと燃えないゴミしかないんです。ビンとか缶とかペットボトルとか古紙とか、これはじゃあなんだ? ゴミじゃないのか? って言ったら実はゴミじゃないんですね。これは”資源”なんですよ。みなさん多分、資源って言っているはずなんですよ。中には資源ゴミって言っている人もいるんですね。僕らの世界で資源ゴミって言うと怒られるんですよ。何でかって言ったら、資源であってゴミじゃないだろって言われるんですね。
つまりゴミと資源の2種類なんです。だからゴミって何種類?って言ったら7〜8種類って大体答える人が多いんですけど、それは資源”ゴミ”として扱っているわけなんですね。なので、まずゴミというのは燃えるゴミと燃えないゴミ。例えば、燃えるゴミの中にまだまだ資源として活躍できるものがあるかどうかっていうのを考えるのが大切かなと思いますね。
結構みなさんが何気なく捨てているんですけれど、紙っていうのがありますね。燃えるゴミの中に結構、雑紙というものを捨てていらっしゃるんですよ。例えば小尾さんだったら台本の紙だとか、あとはメモ用紙だとか、あとティッシュの箱なんかもそうだったりするんですけど、こういうのって意外と可燃ゴミでみなさん捨てているんですよ。これを抜き取ると3分の1ぐらいゴミが減ったりするんですね」
●へぇ〜! 紙だけでも!?
「紙と、あとプラスチック! 容器包装プラスチックっていうのがあるんですけど、本当に可燃ゴミの中に大きな割合であるのがこの2つなんですよ。紙とプラスチック、これを抜くと3分の1くらいゴミが減るんで、これも可燃ゴミとして出す、資源として出す、って人の気持ち次第でどっちに出すかって変えられるじゃないですか。
可燃ゴミってさっきも言いましたけれど、清掃工場に持っていくんですね。これはもう燃やすしかないんですよ。燃やすと次は灰になるんですね。こうなったらただのゴミなんですよ。資源に回すとなると雑紙、これ古紙の日に、新聞とか雑誌とか段ボールの日に出すんですけど、雑紙として出せば、また紙として生まれ変わるんですよ」
●そうですね〜。
「灰になるか紙になるかで、やっぱり行き先が全然変わってくるんですね。だから基本的には、ゴミの中からまだまだ使える資源はないのかなって探すのが、いちばんいいかなと思いますね。
不燃ゴミも同じです。意外とビンや缶を不燃ゴミで捨てている人が結構いるんです。缶は缶で出したら資源として生まれ変わるということなんで、是非ここは結構、重要ポイントなんで、ゴミと資源ということをまずしっかり認識して、昔から混ぜればゴミ、分ければ資源みたいなことを言いますけれど、そこらへんは今すぐ明日にでも地球のためにできることだと思いますね」
※滝沢さんによると、清掃工場で燃やされたゴミは灰が残るので、その灰と、砕いた燃えないゴミは、最終処分場に運んで埋めるそうですが、東京都の場合はあと50年ほどでいっぱいになるとか。最終処分場の寿命は全国平均でいうと、あと20年くらいではないかということでした。ごみを減らさないと日本はゴミで埋まってしまうかも!?
市川市・24時間営業の生ゴミボックス
●滝沢さんが先ごろ出された新しい本『日本全国 ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話』を私も読ませていただきました。自治体の野心的な取り組みがたくさん紹介されていて、この町ではこういう工夫をしているんだっていうアイデアが豊富に載っていて、すごく勉強にもなりましたし、読んでいてすごく面白かったです。
「ありがとうございます。もう100点の答えですね!」
●ありがとうございます(笑)。その中からいくつか気になった取り組みについてうかがっていきたいなと思います。まずは千葉県市川市の事例を紹介しているページで、24時間営業の生ゴミボックスという見出しがありましたけれど、これはどういう取り組みなんでしょうか?
「これは本当にそのまんま、市川市は24時間生ゴミを捨てに行けるボックスみたいなものがあるんですね」
●まだ試作品ということですけど・・・。
「もちろん成功して全国に広がってほしいなと思うんですよね。これね・・・色々分別とかしていたりするじゃないですか。可燃ゴミの中から紙を抜き取ったり、プラスチックを抜き取ったりすると、3分の1くらいは減るんですよ。で、残りの3分の2で結構、大きな割合を占めているのが生ゴミなんですよ。
生ゴミはやっぱりゴミ清掃員にとっても意外と大敵で、生ゴミをぎゅっと絞るとかしないで、そのまま捨てるかたもいらっしゃいますね。各家庭の生ゴミの、絞っていない汁があるでしょ。あれって清掃車で圧縮しながら回収しているから、各家庭の生ゴミのあの匂いの汁がぎゅっと出てくるわけなんですよ。あれがかかるともう1日中臭いですし、町で回収しながら小学生とかに”臭えーよ!”みたいなことを言われるんですけど、あれが原因なんですよ。
なので、みんな本当に各家庭で絞ってほしいんですけれど、その生ゴミ自体がなくなれば意外とそんなに、可燃ゴミって臭くならないんですよね。他に臭いになる原因ってあんまりなくて、例えばオムツみたいなものは臭いの原因になったりするんですけれど、それ以外ってあんまり臭うってことはなかったりするんですよ。
しかも生ゴミって濡れているでしょ。焼却炉の敵なんですよね。水に濡れているから燃えにくいんですよ。燃えにくいってことはそこにエネルギーを足さなきゃいけないので、二酸化炭素とかもやっぱりより多く出るし、あとはこのエネルギーっていうのがみんなの税金なんですよ」
●そうですね・・・。
「なので、みんながぎゅっと生ゴミを絞れば、税金も節約できるんですよね」
●この市川市の(生ゴミボックス)は、いつ生ゴミを出しに行ってもいいってことですか?
「24時間いつ出してもいいし、だからみんなの生ゴミがなくなるんです。税金自体も安くなりますし、また、生ゴミをエネルギーに変えるらしいんですね。だからいいことしかないんですよ。本当にさっきも言いましたけれども、混ぜれば全部ゴミになるんですけど、こういう風に分別したら何かに利用できるんですよね」
●すごいですね〜!
「いい取り組みでしょ! これは全国に広がってほしいんですよ」
●続いて、新潟県南魚沼市の取り組みで、特産品のお米が指定ゴミ袋に! これはどんな取り組みなんですか?
「考えてみればゴミ袋って、世界で唯一ゴミになるために生まれてきているものなんですよね」
●そうですよね。ゴミ袋もゴミになっちゃうんですよね。
「ゴミになるんですよ。燃やすものなんですよ。なのでただ単純に新しく生み出すんじゃなくて、例えば魚沼はお米がとれるところであって、全部が売り物になるかって言ったらそうでもないお米もあったりするんですよ。(粒が)欠けているお米だとかそういうものを利用して袋を作っているわけなんですね。普通に作るよりも燃やした時に、言ってみたら二酸化炭素が新しく袋を作るよりも出ないっていうことなので、これもとてもサステナブルな取り組みですよね」
●ゴミとなったゴミ袋は袋だけで年間で28万トンと本に書かれていてびっくりしました!
「まとめるとそのくらいになるんですよね。だから塵も積もれば山となるって本当なんですよ。こういうところにも配慮するっていうのは素晴らしいですよね」
●その袋も当たり前のように燃やされていくわけですよね。
「自治体は横の繋がりってそんなになかったりすると思うんですよね。なのでこの本で、意外と隣の自治体はこんなことやっているんだっていう、みんな見て、お互いがお互いにいいところをパクるべきだと思うんですよね」
※新宿区の区役所には「入れ歯」の回収ボックスがあって、滝沢さんもそれを見つけたときは驚いたそうですよ。私たちが知らないだけで、こんなものまで! っていうものを回収しているかもしれませんので、お住まいの自治体のホームページなどをチェックされてみてはいかがでしょうか。
また、滝沢さんは「洋服はレンタルの時代だ!」と提案されていて、ご自分でも実践されています。衣類が増えなくて、自宅にスペースがあるのは気持ちいいとおっしゃっていましたよ。いまは洋服のレンタルサービスがいろいろありますので、これも調べてみるのもいいかも知れません。
4つ目のR=リスペクト
※ゴミを減らすために3R「リデュース、リユース、リサイクル」が大事だと言われますが、滝沢さんは4Rを提案されていますよね?
「僕は4R、4つ目のRを提案したいのは、”リスペクト”ということなんですね。リスペクトって尊敬するとか敬意を払うって意味じゃないですか。これってその気持ちがあれば、意外とゴミ問題って大概、解決するんじゃないのかななんて思ったりするんですね。
僕なんかゴミを回収していて、洋服とかも適当に買って適当にばーって捨てている姿を見ていると、やっぱりものを作った人もいたりするわけじゃないですか。それを作った、携わった人ってこういう風に新品のうちに捨てられているのを見たら、やっぱり心痛むと思うんですよね。
ゴミを回収していると、本当にまだまだ食べられる物もバンバン捨てられているんですよ。メロン丸ごと3つだとか、高級ゼリーのセットだとか、お歳暮やお中元シーズンにすごく捨てられるんですね。
それってなんかもう、人の顔があんまり見えていないから、能率を最優先しちゃうから、別にいらなきゃ捨てちゃおうっていうことなんですけど、例えば自分の子供が作ったものだったら、ちゃんと食べるじゃないですか。
顔の見えない社会って意外とそういう風にバンバン捨てられたりとかして、そこにやっぱり敬意を払う、リスペクトするという気持ちが欠けているような気がするんですよね。
僕はこのリスペクトという気持ちがみんなにちょっとずつあれば、意外とゴミ問題は解決するかななんて思ったりしますね」
●4つ目のR、リスペクト、大事ですね!
「ゴミを回収する人がどういう風に思うのかなっていうのを考えることも、リスペクトだと思うんですよね」
●そうですね。ゴミの出し方を変えますよね。
「そう、そこがやっぱり、僕がゴミ清掃員を9年間やっていて、日本人に欠けていることかなって思いますね」
●もうひとつ、「ラストロング」という言葉もお好きっていう風にうかがっていますけれども・・・。
「そうなんですよ。ラストロングっていう言葉はアメリカの、言ってみたらひとつの思想みたいなことなんですけれども、直訳すると長持ちだとか、持ちがいいみたいなことなんですけれど、それの真意っていうのは愛しているものならば命なくなるまで使うっていう思想なんですね。やっぱり最後まで使い切るっていうことが大事だなと思いますね。
意外とだから、日本でいうと、もったいないが近いんですけれど、もったいないって捨てる時にまだまだ使えるじゃないかっていう気持ちだったりとかするんですね。ただこのラストロングっていうのは、買う時にちゃんと愛せるかなとか、愛しているものであれば、買ったあとに命なくなるまで使えるかなっていう気持ちが、ラストロングっていう精神だと多分思うんですけれど。
そうなるとやっぱりものを買う時に、これはちゃんと使い切れるかなって考えたりする、買う時に捨てる時のことを考えるみたいなことで、これを本当に愛せなければ買わない、これが意外とリユースに繋がったりするんですよね。だからとても大切な言葉だなと思います。日本でも流行ったほうがいいなと思いますね」
●番組を聞いてくださっているリスナーのみなさんに、改めていちばん伝えたいことってなんでしょうか?
「やっぱり僕がやりたいのは『使えるゴミの日』があったらいいな、なんて思ったりするんですよね。バンバンみんな使えるものを捨てたりするんですけど、もう一度なんか、リユースじゃないんですけれども、フリマアプリで売れるかなだとか、誰か貰ってくれないかなとかって、やっぱり考えたりすることって、それだけでもゴミが減ることになると思うんですよね。あとは買う時にこれは本当に最後まで使えるかっていうことを、みなさんに考えていただけると嬉しいなと思いますね」
INFORMATION
『日本全国 ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話』
この本にはゴミ問題に対して斬新で野心的な取り組みをしている自治体が紹介されています。ゴミの収集や削減にかける各自治体の熱意を感じる一冊です。ぜひ読んでください。滝沢さんが言うように、各自治体がいいところはどんどん真似するようになればいいですね。主婦の友社から絶賛発売中です。詳しくは、出版社のサイトをご覧ください。
◎主婦の友社HP:http://shufunotomo.hondana.jp/book/b587092.html
滝沢さんのTwitterやYouTubeもぜひ見てくださいね。ゴミを減らすためのヒントがあると思いますよ。
◎滝沢さんYouTube:https://www.youtube.com/channel/UCyIxk4FS9xziPrnbxGQabEw
◎滝沢さんTwitter:https://twitter.com/takizawa0914
滝沢秀一さんの新しい本『日本全国 ゴミ清掃員とゴミのちょっといい話』をサイン入りで、抽選で3名のかたにプレゼントいたします。メールでご応募ください。件名に「本のプレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
flint@bayfm.co.jp
あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。応募の締め切りは9月17日(金)。当選発表は発送をもって代えさせていただきます。たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
2021/9/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、イラストレーターの「じゅえき太郎」さんです。
じゅえきさんは1988年、東京生まれ。子供の頃から絵をかく仕事を志し、会社員を経て、現在はフリーのイラストレーター、画家、漫画家として、おもに昆虫をモチーフにした作品を発表。2016年には、草むらと昆虫をえがいた5メートルの大作で「第19回 岡本太郎 現代芸術賞」に入選。ちなみに「岡本太郎」さんはじゅえきさん憧れの芸術家でペンネームにある「太郎」は「岡本太郎」さんから来ているんです。
2019年には『すごい虫ずかん』で絵本作家としてもデビュー。また、この夏に出版された最新刊『もしもカメと話せたら』ではイラストを担当されています。
そんなじゅえきさんはTwitterの「ゆるふわ昆虫図鑑」やYouTubeの動画でも注目されています。SNSの総フォロワー数はおよそ30万人だそうですよ。YouTubeには「君の名は。」のパロディで「セミの名は。」、そして大ヒット曲「香水」のパロディ「Gの香水」のアニメ動画を公開していて、絵はもちろんなんですが、歌や動画制作もじゅえきさんがやっているんです。
☆写真&イラスト協力:じゅえき太郎
パロディ「セミの名は。」!
※パロディの発想はどこからくるんですか?
「『香水』は瑛人さんの歌なんであれなんですけど(笑)、”夜中に〜”って最初に言うじゃないですか、”いきなりさ〜”って言ったところで、夜中にいきなりってゴキブリだよなと思って、そのまま全部作った感じですね。そういうワンフレーズだけを勝手にどんどん広げていくスタイルでやっていますね」
●「君の名は。」も「セミの名は。」で、ミンミンミンって面白かったです(笑)
「やっぱり『セミの名は』も『君の名は』から来ていますね。キミの名はを、セに変えただけでセミになるってなって、セミも結構外で恋愛していると思うと似てるなっていう感じがしませんか」
●面白いだけじゃなくて、ちゃんと生き物の生態を知ることができて、本当に学びにもなるというか。
「そうですね。学んでくだされば嬉しいですね。なんか笑っていたら分かっていたみたいな感じがいちばんベストですかね」
●まさにそうですよね。オリジナルソングもありますよね?
「『タマムシのうた』がありますね(笑)」
●あれも全部、演奏もじゅえきさん?
「一応そうですね。タマムシをたまたま見つけるっていうダジャレから思いついた歌ですね」
●歌とかギターは独学で学ばれていたんですか?
「そうですね。歌は小学校の時に合唱団に入っていたんですけど、その効果はあったのか、多分あったと信じております!」
●お上手です〜。本当に聴き入っちゃうくらい・・・。でもどうやって創り上げていくんですか?
「最初はさっきみたいに一言で、『夜に駆ける』のパロディで、『鳴く虫の夜に駆ける』とかもやったんですけど、あれも”騒がしい〜”っていう歌詞があって、騒がしいって言ったらクツワムシだなと思ったんです。そこから逆にずっと騒がしい虫を考えて、それに合わせて、最初に歌詞と歌を考えて、最後にアニメーションをどんどん付けていくっていう感じですかね」
※YouTubeで公開されているパロディ「セミの名は。」、そして「Gの香水」、ほんとによくできています。特に歌詞に注目ですよ。オリジナル・ソングのアニメ動画「タマムシのうた」もありますので、ぜひYouTubeをチェックしてみてくださいね。
夏休み、虫取り放題!
※じゅえきさんは、子供の頃から昆虫が好きだったんですか?
「そうですね。みんなそうかもしれないんですけど、やっぱり幼稚園の頃、ダンゴムシから入って、小学校1年生からもっとグンとハマっていったって感じですかね」
●何かきっかけはあったんですか?
「きっかけは小学校1年生の夏休みに、虫捕りをしていたんですけど、全然捕まらなくて。そうしたら現地の少年にたまたま会って、本当に絵本みたいな話なんですけど、水生昆虫っていう、タガメとかそういう虫がいるっていうことをまず教えてくれて。
一緒に虫捕りをしていたら、でっかいタガメがいっぱい捕れて、それがずっと楽しすぎて、もう毎年夏休みが楽しみな人生を送っていて、それが現在までまだ続いているっていう感じですかね」
●どこで虫捕りをされていたんですか?
「岩手県で虫捕りをしていました」
●どうして岩手で?
「母の実家が岩手で、おばあちゃん家の外がものすごい田んぼとかがあったんで、虫捕り放題の場所でした」
●今も昆虫を飼ったりとかはされているってことですか?
「もうたくさん飼っています」
●え! どれぐらい、何を飼ってらっしゃるんですか?
「クワガタ、カブトムシはいますし、タガメとかコオイムシ、水生昆虫もちょこちょこいたり、あとカエルがいて」
●へ〜! じゅえきさんは本当に昆虫と共に生きているっていう感じですね。
「そうですね。夜行性の虫が多いので、ヘラクレス(オオカブト)とか夜お腹が減ると部屋の中で飛びだすので、すごくガタガタっていって目が覚めたりしますね」
●そうなんですね〜! じゅえきさんが昆虫とか生き物のイラストを描くようになったのはいつ頃からなんですか?
「小学1年生の自由研究はカブトムシで、2年生はクワガタになって、カエルやって、カブトムシ、クワガタ、カエルみたいな連続だったのと、何を描くかって言われたら、虫以外あんまり想像つかなかったっていう感じですかね」
●虫を捕るだけじゃなくて、絵に描くっていうのもお好きだったっていうことなんですね?
「そうですね。これは僕の持論になっちゃうんですけど、ライオンとかを描いたらアフリカの人に勝てないんじゃないかっていう気持ちがちょっとあるんですよね。やっぱり日本を代表する日本の生き物で、日本人としてちょっと勝負したいってところがありまして。そうするとやっぱりカブトムシとかクワガタは日本にいる、側にいる虫なので、すごくやっぱり好きなんですよね」
顔が決め手!? リアル過ぎずに
※じゅえきさんの作品は、昆虫や生き物の特徴や生態を知ってないと、上手に描けないことも多いと思いますが、生態などは研究されているんですか?
「研究っていうか昔から部屋で飼っていたり、自分で虫を探したり、しょっちゅう家の周りとかでも虫探しはしている日常なんですね。勉強はそこまで得意じゃないんですけど、そうやって経験からなんとか得てきたもの、例えば(オンブ)バッタは下がメスだとか、意外とみんなデカいほうがオスっていう風に思っていたりすると思うんですけど、それをちゃんと勘違いせずに、リボンを下のほうに付けてメスだっていうことにしたり、色々キャラクター設定も変えています」
●擬人化した漫画チックというか、ゆるい作風っていうイメージがあるんですけれども、そういう風に擬人化してみようとか思われたのは何か理由があったんですか?
「それはもう小学校の時からずっと考えていて、なんか動物の擬人化は結構見るんですけど、昆虫の擬人化は図鑑とか見ていても、いいやつがいないっていうか・・・例えばミッキーとミニーがいるなら、カブトムシにもそういうキャラクターがいてもいいんじゃないかなって、小学校の時からずっと考えていたんですけど」
●へ〜〜!
「昆虫って顔がみんな違うんです。目の位置がすごく離れていたり、カブトムシだったらすごく近かったりするんですよ。しかも大体、うつ伏せ気味になっているので、どうしようかなーって悩み続けて、20代半ばで顔をはめ込もうって思いついたのが、今描いているゆるふわの顔で、顔は全員ここだっていう風に決めちゃったんですよね」
●じゅえきさんが昆虫の絵を描くときに何か心掛けていることとかってありますか?
「昆虫の絵を描くときに心掛けていることは、顔をはめ込んでいる以上、他の部分をある程度しっかり何の虫かって分かるように描こうっていうことと、あとやっぱり虫が苦手な方にも見てもらえるようにということで、あんまりリアル過ぎずに・・・結構(昆虫の)裏面が苦手って方が多いと思うんで」
●分かります!
「あ、そうなんですね(笑)。なんかそこはシンプルめに描こうかなと思ったりしていますね。あんまり毛とかを描くとね、皆、うわーっていう感じですよね。だからそういうのは省いて、徐々に慣れていってもらえたらなと思っていますね」
※じゅえきさんは昆虫を観察したりするために季節によって、いろいろなフィールドに行くそうですが、よく行くのが山梨で、とあるペンションでは夜に明かりをつけて虫をおびき寄せる「ライト・トラップ」を貸してくださるそうです。ここは虫好きには有名だとおっしゃっていましたよ。
シジミの顔、どうしよう〜
●じゅえきさんは先ごろ発売された本『もしもカメと話せたら』でイラストを担当されています。この本の設定が、浦島太郎の”竜宮城”ならぬ、優遇される”優遇城”で、カメに拾われてお城にやってきた人間の次郎くんが、水辺の生き物たちから周りとうまく生きるコツを学んでいくという内容です。
本にはカメやカエル、メダカやザリガニなど、水辺の生き物14種類の生態などが会話形式で面白おかしく紹介されています。特に私が気に入ったのがトンボの幼虫ヤゴで、嫌な環境バンバン避けようっていうことなんですよね(笑)。メスは秋に卵を産むけれど、卵のまま冬を越すんですよね。本にも、わざわざキンキンに冷えた環境に生まれる必要なくない? って書かれていて笑っちゃったんですけれども。
「無理する必要ないっていうことを教えてくれる虫なのかもしれないですね」
●都合のいい環境を選んで生まれてくるっていうことなんですか。
「素晴らしいことだと思います(笑)。そうじゃない虫ももちろんいると思うんですけれど、やっぱりそういう虫もいて、人間もあんまり無理しすぎないほうがいいっていうことを多分、文を書いたペズルさんは思っているんじゃないですかね」
●面白かったです〜。夏にヤゴからトンボになって、しばらくしたら山のほうへ行くっていうことで、これも暑いから涼しいところへ逃げるんだ、みたいな感じで書かれていました。
「僕らは冷房がありますけど、彼らにはないので、その辺は工夫して生きているんだなーっていう感じですよね」
●この本では、じゅえきさんのイラストがその面白さを倍増していると思うんですけれども、昆虫ではないので作画するにあたり難しかったこととかもあったんじゃないですか?
「シジミのキャラクターが出てくるんですけど、シジミってキャラクター化したことなくて、外側の貝の部分に目を付けるか、守られている中の部分に目を付けるかってなって。貝の部分に付けるとちょっとカエルっぽくなるのと、あとは貝の外壁の部分には目がないだろうと。なので内側の隙間に顔を全部(入れました)」
●確かに隙間からなんかほっこりした表情で笑ったりっていう・・・
「シジミは今まで描いたことが本当になかったんで、(最初は)結構シジミか〜とは思いましたね」
●この本『もしもカメと話せたら』を手にする方々に、ここを見て欲しい! っていうポイントってありますか?
「さっきもあったように、生き物の生態なんですけど、それを人間の考え方に置き換えているので、色んな考え方があるんですよ。さっきのヤゴとは逆にシジミは耐える型だったり、自分に合った生き物を見つけて共感してもらって、ちょっとストレスとかが減れば、いいんじゃないかな、嬉しいなと思いますね」
自分しか描けない昆虫の絵
※ところで、地球にいる全生物の6割が昆虫といわれています。ということは、地球は昆虫の星といってもいいかも知れませんね。
「そうなんです。それで例えば虫が苦手とか、嫌いっていう方はしょうがないですけど、でも地球の6割嫌いって思うと結構大変だなって思うんですよね」
●6割ってすごいですよね。
「すごいですね。もっといるかもしれないですよね」
●昆虫好きのじゅえきさんにとっては、どんなことを思われますか?
「まあたくさんいるな〜って思うのと(笑)、これからも新発見というか新種はバンバン出ると思うんです。やっぱりさっき言ったように苦手な人は辛いなと思うところもあって、それを例えば、僕のゆるふわの絵や漫画がちょっとでも好きとか触れるとか、それぐらいになったら、すごくなんか人の人生を変えられる、だって6割ですからね。外に行けばアリはいますし蝶々は飛んでいますから、好きになってくれた方が日常は華やかになるんじゃないかなと思いますけどね」
●これからじゅえきさんが描いてみたいっていう昆虫はいますか?
「描きたい昆虫はもう勝手にというか、毎日のように自分で描いているんですけど、今後描き方を考えたいっていう風に思っていて。リアルに描くだけじゃなくて、昔の江戸時代の絵師の人とかは、写真を見て描いていないじゃないですか。そういう絵を見ていると、なんか自分の思った空想の昆虫と合体していて、蝶々の柄とか正確じゃないんですけど、すごくいい感じなんですよ、自分の視点が入っていて。なので僕も写真に頼りすぎずに、自分がかっこいいなと思う、例えばカブトムシの角をちょっと大きくしてみるとか、そういう自分の考えを入れた昆虫を描いてそれを見てもらいたい、離れ過ぎずの昆虫なんですけどね」
●リアル過ぎないというか、ちょっとアレンジした昆虫ということなんですね。
「リアルは写真にお任せして、自分しか描けない昆虫っていうのをやりたいなと思っていますね」
●楽しみです! 改めて昆虫のイラストを通して、どんなことを皆さんに伝えていきたいですか?
「やっぱり虫はものすごく身近なので、キャーッて毎日なっていたら辛いだろうなと思うんで(笑)、怖くない虫は怖くないってちゃんと分かりつつ、だって圧倒的に人間のほうが強いですからね。スズメバチとかは別としても、こっちのほうが巨人みたいなものなので、そんなにビビらず仲良くしてもらえたらいいんじゃないかなと思います」
INFORMATION
『もしもカメと話せたら』
じゅえきさんがイラストを担当された新刊。カメやカエル、メダカなど水辺の生き物14種の生態などが、会話形式で面白可笑しく紹介。生き物たちから「周りとうまく生きるコツ」を学べますよ。じゅえきさんのイラストが面白さを倍増! ぜひ読んでみてください。
プレジデント社から絶賛発売中です。
◎プレジデント社HP:https://presidentstore.jp/category/BOOKS/002420.html
じゅえき太郎さんのTwitterの「ゆるふわ昆虫図鑑」、そしてYouTubeのアニメ動画もぜひ見てください。
◎ゆるふわ昆虫図鑑:https://twitter.com/64zukan
◎YouTubeのアニメ動画:https://www.youtube.com/channel/UCx352t4iA2OUvXCOM0p_lEw