2021/9/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、イラストレーターの「じゅえき太郎」さんです。
じゅえきさんは1988年、東京生まれ。子供の頃から絵をかく仕事を志し、会社員を経て、現在はフリーのイラストレーター、画家、漫画家として、おもに昆虫をモチーフにした作品を発表。2016年には、草むらと昆虫をえがいた5メートルの大作で「第19回 岡本太郎 現代芸術賞」に入選。ちなみに「岡本太郎」さんはじゅえきさん憧れの芸術家でペンネームにある「太郎」は「岡本太郎」さんから来ているんです。
2019年には『すごい虫ずかん』で絵本作家としてもデビュー。また、この夏に出版された最新刊『もしもカメと話せたら』ではイラストを担当されています。
そんなじゅえきさんはTwitterの「ゆるふわ昆虫図鑑」やYouTubeの動画でも注目されています。SNSの総フォロワー数はおよそ30万人だそうですよ。YouTubeには「君の名は。」のパロディで「セミの名は。」、そして大ヒット曲「香水」のパロディ「Gの香水」のアニメ動画を公開していて、絵はもちろんなんですが、歌や動画制作もじゅえきさんがやっているんです。
☆写真&イラスト協力:じゅえき太郎
パロディ「セミの名は。」!
※パロディの発想はどこからくるんですか?
「『香水』は瑛人さんの歌なんであれなんですけど(笑)、”夜中に〜”って最初に言うじゃないですか、”いきなりさ〜”って言ったところで、夜中にいきなりってゴキブリだよなと思って、そのまま全部作った感じですね。そういうワンフレーズだけを勝手にどんどん広げていくスタイルでやっていますね」
●「君の名は。」も「セミの名は。」で、ミンミンミンって面白かったです(笑)
「やっぱり『セミの名は』も『君の名は』から来ていますね。キミの名はを、セに変えただけでセミになるってなって、セミも結構外で恋愛していると思うと似てるなっていう感じがしませんか」
●面白いだけじゃなくて、ちゃんと生き物の生態を知ることができて、本当に学びにもなるというか。
「そうですね。学んでくだされば嬉しいですね。なんか笑っていたら分かっていたみたいな感じがいちばんベストですかね」
●まさにそうですよね。オリジナルソングもありますよね?
「『タマムシのうた』がありますね(笑)」
●あれも全部、演奏もじゅえきさん?
「一応そうですね。タマムシをたまたま見つけるっていうダジャレから思いついた歌ですね」
●歌とかギターは独学で学ばれていたんですか?
「そうですね。歌は小学校の時に合唱団に入っていたんですけど、その効果はあったのか、多分あったと信じております!」
●お上手です〜。本当に聴き入っちゃうくらい・・・。でもどうやって創り上げていくんですか?
「最初はさっきみたいに一言で、『夜に駆ける』のパロディで、『鳴く虫の夜に駆ける』とかもやったんですけど、あれも”騒がしい〜”っていう歌詞があって、騒がしいって言ったらクツワムシだなと思ったんです。そこから逆にずっと騒がしい虫を考えて、それに合わせて、最初に歌詞と歌を考えて、最後にアニメーションをどんどん付けていくっていう感じですかね」
※YouTubeで公開されているパロディ「セミの名は。」、そして「Gの香水」、ほんとによくできています。特に歌詞に注目ですよ。オリジナル・ソングのアニメ動画「タマムシのうた」もありますので、ぜひYouTubeをチェックしてみてくださいね。
夏休み、虫取り放題!
※じゅえきさんは、子供の頃から昆虫が好きだったんですか?
「そうですね。みんなそうかもしれないんですけど、やっぱり幼稚園の頃、ダンゴムシから入って、小学校1年生からもっとグンとハマっていったって感じですかね」
●何かきっかけはあったんですか?
「きっかけは小学校1年生の夏休みに、虫捕りをしていたんですけど、全然捕まらなくて。そうしたら現地の少年にたまたま会って、本当に絵本みたいな話なんですけど、水生昆虫っていう、タガメとかそういう虫がいるっていうことをまず教えてくれて。
一緒に虫捕りをしていたら、でっかいタガメがいっぱい捕れて、それがずっと楽しすぎて、もう毎年夏休みが楽しみな人生を送っていて、それが現在までまだ続いているっていう感じですかね」
●どこで虫捕りをされていたんですか?
「岩手県で虫捕りをしていました」
●どうして岩手で?
「母の実家が岩手で、おばあちゃん家の外がものすごい田んぼとかがあったんで、虫捕り放題の場所でした」
●今も昆虫を飼ったりとかはされているってことですか?
「もうたくさん飼っています」
●え! どれぐらい、何を飼ってらっしゃるんですか?
「クワガタ、カブトムシはいますし、タガメとかコオイムシ、水生昆虫もちょこちょこいたり、あとカエルがいて」
●へ〜! じゅえきさんは本当に昆虫と共に生きているっていう感じですね。
「そうですね。夜行性の虫が多いので、ヘラクレス(オオカブト)とか夜お腹が減ると部屋の中で飛びだすので、すごくガタガタっていって目が覚めたりしますね」
●そうなんですね〜! じゅえきさんが昆虫とか生き物のイラストを描くようになったのはいつ頃からなんですか?
「小学1年生の自由研究はカブトムシで、2年生はクワガタになって、カエルやって、カブトムシ、クワガタ、カエルみたいな連続だったのと、何を描くかって言われたら、虫以外あんまり想像つかなかったっていう感じですかね」
●虫を捕るだけじゃなくて、絵に描くっていうのもお好きだったっていうことなんですね?
「そうですね。これは僕の持論になっちゃうんですけど、ライオンとかを描いたらアフリカの人に勝てないんじゃないかっていう気持ちがちょっとあるんですよね。やっぱり日本を代表する日本の生き物で、日本人としてちょっと勝負したいってところがありまして。そうするとやっぱりカブトムシとかクワガタは日本にいる、側にいる虫なので、すごくやっぱり好きなんですよね」
顔が決め手!? リアル過ぎずに
※じゅえきさんの作品は、昆虫や生き物の特徴や生態を知ってないと、上手に描けないことも多いと思いますが、生態などは研究されているんですか?
「研究っていうか昔から部屋で飼っていたり、自分で虫を探したり、しょっちゅう家の周りとかでも虫探しはしている日常なんですね。勉強はそこまで得意じゃないんですけど、そうやって経験からなんとか得てきたもの、例えば(オンブ)バッタは下がメスだとか、意外とみんなデカいほうがオスっていう風に思っていたりすると思うんですけど、それをちゃんと勘違いせずに、リボンを下のほうに付けてメスだっていうことにしたり、色々キャラクター設定も変えています」
●擬人化した漫画チックというか、ゆるい作風っていうイメージがあるんですけれども、そういう風に擬人化してみようとか思われたのは何か理由があったんですか?
「それはもう小学校の時からずっと考えていて、なんか動物の擬人化は結構見るんですけど、昆虫の擬人化は図鑑とか見ていても、いいやつがいないっていうか・・・例えばミッキーとミニーがいるなら、カブトムシにもそういうキャラクターがいてもいいんじゃないかなって、小学校の時からずっと考えていたんですけど」
●へ〜〜!
「昆虫って顔がみんな違うんです。目の位置がすごく離れていたり、カブトムシだったらすごく近かったりするんですよ。しかも大体、うつ伏せ気味になっているので、どうしようかなーって悩み続けて、20代半ばで顔をはめ込もうって思いついたのが、今描いているゆるふわの顔で、顔は全員ここだっていう風に決めちゃったんですよね」
●じゅえきさんが昆虫の絵を描くときに何か心掛けていることとかってありますか?
「昆虫の絵を描くときに心掛けていることは、顔をはめ込んでいる以上、他の部分をある程度しっかり何の虫かって分かるように描こうっていうことと、あとやっぱり虫が苦手な方にも見てもらえるようにということで、あんまりリアル過ぎずに・・・結構(昆虫の)裏面が苦手って方が多いと思うんで」
●分かります!
「あ、そうなんですね(笑)。なんかそこはシンプルめに描こうかなと思ったりしていますね。あんまり毛とかを描くとね、皆、うわーっていう感じですよね。だからそういうのは省いて、徐々に慣れていってもらえたらなと思っていますね」
※じゅえきさんは昆虫を観察したりするために季節によって、いろいろなフィールドに行くそうですが、よく行くのが山梨で、とあるペンションでは夜に明かりをつけて虫をおびき寄せる「ライト・トラップ」を貸してくださるそうです。ここは虫好きには有名だとおっしゃっていましたよ。
シジミの顔、どうしよう〜
●じゅえきさんは先ごろ発売された本『もしもカメと話せたら』でイラストを担当されています。この本の設定が、浦島太郎の”竜宮城”ならぬ、優遇される”優遇城”で、カメに拾われてお城にやってきた人間の次郎くんが、水辺の生き物たちから周りとうまく生きるコツを学んでいくという内容です。
本にはカメやカエル、メダカやザリガニなど、水辺の生き物14種類の生態などが会話形式で面白おかしく紹介されています。特に私が気に入ったのがトンボの幼虫ヤゴで、嫌な環境バンバン避けようっていうことなんですよね(笑)。メスは秋に卵を産むけれど、卵のまま冬を越すんですよね。本にも、わざわざキンキンに冷えた環境に生まれる必要なくない? って書かれていて笑っちゃったんですけれども。
「無理する必要ないっていうことを教えてくれる虫なのかもしれないですね」
●都合のいい環境を選んで生まれてくるっていうことなんですか。
「素晴らしいことだと思います(笑)。そうじゃない虫ももちろんいると思うんですけれど、やっぱりそういう虫もいて、人間もあんまり無理しすぎないほうがいいっていうことを多分、文を書いたペズルさんは思っているんじゃないですかね」
●面白かったです〜。夏にヤゴからトンボになって、しばらくしたら山のほうへ行くっていうことで、これも暑いから涼しいところへ逃げるんだ、みたいな感じで書かれていました。
「僕らは冷房がありますけど、彼らにはないので、その辺は工夫して生きているんだなーっていう感じですよね」
●この本では、じゅえきさんのイラストがその面白さを倍増していると思うんですけれども、昆虫ではないので作画するにあたり難しかったこととかもあったんじゃないですか?
「シジミのキャラクターが出てくるんですけど、シジミってキャラクター化したことなくて、外側の貝の部分に目を付けるか、守られている中の部分に目を付けるかってなって。貝の部分に付けるとちょっとカエルっぽくなるのと、あとは貝の外壁の部分には目がないだろうと。なので内側の隙間に顔を全部(入れました)」
●確かに隙間からなんかほっこりした表情で笑ったりっていう・・・
「シジミは今まで描いたことが本当になかったんで、(最初は)結構シジミか〜とは思いましたね」
●この本『もしもカメと話せたら』を手にする方々に、ここを見て欲しい! っていうポイントってありますか?
「さっきもあったように、生き物の生態なんですけど、それを人間の考え方に置き換えているので、色んな考え方があるんですよ。さっきのヤゴとは逆にシジミは耐える型だったり、自分に合った生き物を見つけて共感してもらって、ちょっとストレスとかが減れば、いいんじゃないかな、嬉しいなと思いますね」
自分しか描けない昆虫の絵
※ところで、地球にいる全生物の6割が昆虫といわれています。ということは、地球は昆虫の星といってもいいかも知れませんね。
「そうなんです。それで例えば虫が苦手とか、嫌いっていう方はしょうがないですけど、でも地球の6割嫌いって思うと結構大変だなって思うんですよね」
●6割ってすごいですよね。
「すごいですね。もっといるかもしれないですよね」
●昆虫好きのじゅえきさんにとっては、どんなことを思われますか?
「まあたくさんいるな〜って思うのと(笑)、これからも新発見というか新種はバンバン出ると思うんです。やっぱりさっき言ったように苦手な人は辛いなと思うところもあって、それを例えば、僕のゆるふわの絵や漫画がちょっとでも好きとか触れるとか、それぐらいになったら、すごくなんか人の人生を変えられる、だって6割ですからね。外に行けばアリはいますし蝶々は飛んでいますから、好きになってくれた方が日常は華やかになるんじゃないかなと思いますけどね」
●これからじゅえきさんが描いてみたいっていう昆虫はいますか?
「描きたい昆虫はもう勝手にというか、毎日のように自分で描いているんですけど、今後描き方を考えたいっていう風に思っていて。リアルに描くだけじゃなくて、昔の江戸時代の絵師の人とかは、写真を見て描いていないじゃないですか。そういう絵を見ていると、なんか自分の思った空想の昆虫と合体していて、蝶々の柄とか正確じゃないんですけど、すごくいい感じなんですよ、自分の視点が入っていて。なので僕も写真に頼りすぎずに、自分がかっこいいなと思う、例えばカブトムシの角をちょっと大きくしてみるとか、そういう自分の考えを入れた昆虫を描いてそれを見てもらいたい、離れ過ぎずの昆虫なんですけどね」
●リアル過ぎないというか、ちょっとアレンジした昆虫ということなんですね。
「リアルは写真にお任せして、自分しか描けない昆虫っていうのをやりたいなと思っていますね」
●楽しみです! 改めて昆虫のイラストを通して、どんなことを皆さんに伝えていきたいですか?
「やっぱり虫はものすごく身近なので、キャーッて毎日なっていたら辛いだろうなと思うんで(笑)、怖くない虫は怖くないってちゃんと分かりつつ、だって圧倒的に人間のほうが強いですからね。スズメバチとかは別としても、こっちのほうが巨人みたいなものなので、そんなにビビらず仲良くしてもらえたらいいんじゃないかなと思います」
INFORMATION
『もしもカメと話せたら』
じゅえきさんがイラストを担当された新刊。カメやカエル、メダカなど水辺の生き物14種の生態などが、会話形式で面白可笑しく紹介。生き物たちから「周りとうまく生きるコツ」を学べますよ。じゅえきさんのイラストが面白さを倍増! ぜひ読んでみてください。
プレジデント社から絶賛発売中です。
◎プレジデント社HP:https://presidentstore.jp/category/BOOKS/002420.html
じゅえき太郎さんのTwitterの「ゆるふわ昆虫図鑑」、そしてYouTubeのアニメ動画もぜひ見てください。
◎ゆるふわ昆虫図鑑:https://twitter.com/64zukan
◎YouTubeのアニメ動画:https://www.youtube.com/channel/UCx352t4iA2OUvXCOM0p_lEw
2021/8/29 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、アウトドアライフ・アドバイザーの「寒川 一(さんがわ・はじめ)」さんです。
寒川さんは1963年生まれ、香川県出身。アウトドアでのガイドや、災害時に役立つスキルを教える活動のほか、アウトドア・メーカーのアドバイザー、そして三浦半島の静かな浜で焚き火をしながら、ゆっくり過ごす「焚火カフェ」を主催するなど、幅広い分野で活躍されています。
そんな寒川さんが監修された本『キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術 〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!』がこの春に出版されました。この“新時代”というのがまさにコロナ禍の今だと思います。きょうは9月1日の「防災の日」を前に、寒川さんに防災力を身につけるための術や、実践的な具体例などうかがいます。
☆写真協力:寒川 一
新しい避難スタイル
●それでは早速、寒川さんにお話をうかがっていきましょう。この本の序章で「新しい避難スタイル」を提案されていますが、まずはそのあたりから、ご説明いただけますか。
「コロナ禍も、もう2年を迎えてしまいました。非常に厳しい状況が今も続いているんですけれども、この数ヶ月の間も大雨が降ったりとか、あと猛暑もひとつの災害と言えるんじゃないかなと思うんですよね。
そういう中で例えば、避難っていう指示が出た時に、今の状況を重ねてみると、共同で何かをする、もしくは共有するっていうのが非常に難しい時代になったのかなと思います。独立されたもののほうが好ましいかなというところで、キャンプというものを私は考えているわけですね」
●避難スタイルとしては、避難所に行ってもそこでキャンプするようにテントを張るっていうことですか?
「まあ、これはシチュエーションが色々考えられると思うんですね。例えば冬場で、非常に寒い中で、体育館の中っていうのは、今まで過去の映像なんかでもご覧になられた方がたくさんいらっしゃると思うんですよ。プライバシーがないっていうのと、あと寒いっていうことを、何か改善する方法としてテントを張るっていうことは、ひとつ大きな方法かなと思うんですね。
共同で皆さんが集まっているところで、キャンプをそこで展開するっていうのは、モラル的に難しいとか、そこを管理されている方の問題もあると思うんですよね。その辺がある程度クリアできてという条件の上で、キャンプをするっていうこと自体は非常に、先ほどの話じゃないですけれど、独立された形にできるっていうところが非常に有効かなという風には思います」
●この本には車で避難ということも書かれていましたけれども。
「そうですね。僕自身も車っていうのは、これも状況によりますけれども、非常に有効なシェルターだと思っているんですね。ひとつは、場合によったら家屋より非常に駆体がしっかりしている。エンジンがかけられれば、例えば空調、夏はエアコンが効いたり冬は暖房が出たり。あと最近ナビゲーションを備えている車が多いと思うんですけれども、そこから色々な情報を得ることも可能です。で、鍵がかけられたりとか、まあ何が何でも車がいいというわけではなくて、場合によっては車もシェルターとして考えておくっていうことはいいことかなと思いますね」
まずは水の備蓄、そしてローリングストック
※避難所に行かないという選択肢もありますか?
「そうですね。これも先ほどの件と同じでケースバイケースの判断が必要になると思うんですけれども、まずはやっぱり自宅が安全であるっていう大前提が必要ですよね。例えば家屋の倒壊の恐れがないですとか、あと環境的に、周りに大きな川があるとか、裏にすぐ隣接した山があるような状況じゃなくて、家が安全であるという状態であれば、かえって動くより自宅で待機する形は十分にありかなと思います」
●そうなると備えも本当に大切になってくると思うんですけれど、食料を含めた備蓄品というのはどのくらい備えておけばいいんですか?
「これもね、分量を例えば、このくらいですという風に言えれば、すごく簡単なんですけれども、これもやっぱりご家族の構成であったり、年齢であったりで用意するものも随分変わってくるとは思うんです。
実際、僕らがいちばん重要だなと思っているのはやっぱり水なんですよね。仮にライフライン、水道が止まってしまった際に、やはり通常アウトドアとかサバイバルの世界で言われているのが、水は3日以内に、飲料水を確保するというか飲まなければ、人間がやっぱり(健全な状態を)保っていられなくなるということを考えると、水の備蓄にまずは重点を置くべきかなと思います。
あとは食べ物自体は、その法則で言えば、しっかりお水さえ飲んでいれば、人は3週間から30日、生命を落とすことはないと言われているんですね。そのためにはしっかり体温を保つとか、ほかの条件もある程度必要になるんですけれども、食料品がまず第一にあるということではないということですよね。
お家の中に食べ物がまるっきりないっていう方も、なかなかいらっしゃらないとは思うんですけれども、ある程度、普段から缶詰であったりとかパスタみたいな保存食を備蓄しておく。賞味期限があるものもありますので、そういうのをなるべく賞味期限前に消費をして、またそこに買い足しておく。
これ”ローリングストック”って言うんですけれども、常に一定量の備蓄、食料の在庫が家にあって、期限が切れる前にそれを食べてしまうってことですよね。で、また買っておくと。それを繰り返していれば、ある日突然、災害が来ても一定量の食品がお家にあるということになるわけですよね」
*補足:お話に出てきたサバイバルの法則、これはアウトドア界では「サバイバルの3の法則」と呼ばれていて、いずれも「3」という数字に関連しています。
まず、体温は適切に維持できなければ、3時間しか生きられないそうで、季節に応じた防寒の備えが必要。続いて、水分を摂取できなければ、3日程度しか生存できない。つまり水が最も欠かせない備蓄品。そして最後は、食べるものがなければ、30日ほどしか生きられないそうです。「サバイバルの3の法則」を参考に備えるのもいいかも知れません。
優れものの浄水器
※避難せざる得ない時の、非常用の持ち出し品でキャンプをやっている人ならば、最低限どんなものを持ち出せばいいですか?
「今キャンプの人口が非常に増えていますけれども、持っているものって結構バラバラかなという気もするんですね(笑)。そんな中でも共通しているだろうと思えるものが、ヘッドライト。今、手もとに用意しましたけれども、頭に付けるライトですよね」
●あ、はいはい! 両手が空きますよね?
「そうですね。向く方向が照らされるっていう非常に合理性も高いですし、おっしゃる通りで手が空くっていうのは何よりもの恩恵だと思います。これは家族で1個ではなくて、ひとり1個、個人装備に当たるものなので、キャンプやっている人だったら大抵持っているんじゃないのかなと思いますね。まず、何はなくてもヘッドライトはお持ちいただきたいなと思います。あと、浄水器を今見せていますけれども・・・」
●えー!? そんなに小さな浄水器があるんですか?
「そうですね。これ、アウトドアの専門店で販売されています。これに例えば、ペットボトルを簡単にジョイントできるんで、汚れた水を入れたペットボトルを付けていただいて、ちょっと手で押してやれば、先端から浄水されたお水、そのまま飲めるお水が出ます。
このサイズで38万リットルの浄水力がある、38万リットルってちょっと想像できないと思いますけれども、1日10リットルぐらい浄水したとして100年以上もつっていう、言ってしまえば、一生使えるぐらいの能力を持っているものが、本当にこんな小っちゃなサイズで、数千円で手に入るんですね。こういうものがあるかないかで、さっきのお水をどれだけストックするかが変わってくるんですよね」
●確かにそうですね!
「お風呂の汲み置きなんかされるお家も結構ありますよね。いざという時のために。そのお風呂のお水をそのまま飲んでしまうと、当然そこの中には菌が入っているわけで、大腸菌とか見えない菌がたくさんあると思うんですけれども、お風呂の貯め置きの水だったら、これ一発でそのまま飲むことが可能です。
そういうようなアウトドアの用品で、割とコンパクトですぐ持ち出せるようなものを僕は非常持ち出し品として、枕より少し小っちゃいサイズの、手で簡単にさげられる防水のバックなんですけれども、この中に非常時のすぐ持ち出せるものは常に入れてあります。先ほどの浄水器だったり、ヘッドライトがこういう中に入っているって感じですね。
災害はどこで遭うか分からないっていうことがありますので、例えば自分の長くいる場所、自宅はもちろんのこと、会社であったり、出先でも長時間いるような場所に、ある程度のものは備えておきたいなと考えますね。
防災袋って、皆さんそれぞれそれなりには何かご用意されていると思うんですけれど、それをちゃんと手に入れられるかどうかは、すごく重要なことですよね。いくらお家の中に素晴らしいものがあっても、すごく離れた場所で災害に遭われたっていうこともありますので、僕は今の非常持ち出し用品と、あと一時避難用品、二次避難用品っていう三段階に分けて、ものは持つようにしているんですね」
*補足:寒川さんは非常用持ち出し品のほかに、一次持ち出し品として、1週間程度、外で過ごせるようにキャンプ道具を一通り、大きなザックに入れて用意。また、二次持ち出し品は1ヶ月程度の避難を想定して、日用品などもそろえ、大きなコンテナに保管して持ち出させるように準備されているそうです。どんなものを用意するのかは、寒川さん監修の本『新時代の防災術』をご覧ください。
自分なりの持ち出し品をデザイン
※寒川さんは、本の中で自分なりの持ち出し品をデザインしようと提案されています。そろえる時のポイントはありますか?
「僕の場合はやっぱりさっきの非常持ち出し袋の中に最低限のもの、どちらかというと生きるための道具に加えて、あとパーソナル品って言うんですかね、僕個人の必要な大切な物っていうのはやっぱり入れてあります。それは具体的に何かというと、ひとつはメガネが僕、重要なんですよね。もし災害時に何らかでメガネを失ってしまうと、場合によったらちょっと命取りな場面も、見えないっていうことで、そういう可能性もあるなと思って、スペアのメガネをまずは入れています。
それ以外にも例えば家族の写真ですね。家族の写真をなぜ入れてるかっていうと、東日本大震災の時にすごく大勢の方が、もう家財道具はなくなってもしょうがないけど、家族の写真だけは取り返したいんだっていう方が圧倒的に多かったんですよね。やっぱりそういう心情に絶対なるんだろうなと思って、まあ家族の受けもいいんでね、それ入れておくとね(笑)。
あとすぐに使えるような現金ですとか、保険証やパスポートのコピーとか控えみたいなものも中に入れて、そういう個人を表すものとか、個人的なものを非常時の持ち出し品の中に入れていますね」
●なるほど。今の時代、感染症対策もしなきゃいけないですよね。マスクだったり除菌スプレーだったりっていうものも必要ですね。
「そうですね。もちろんマスクも入っています」
“備える”より“備わる”
※この番組では以前にも寒川さんにご出演いただいて、アウトドアの道具がいざという時に役立つ、そんなお話をしていただきましたが、キャンプ用の道具を揃えただけでは、だめなんですよね?
「実際、道具を揃えるっていうこと自体は、まずはそこから始まるとは思うんですけれども、この今の時代は、ものを備えているっていうのはある意味当たり前で、どちらかというと、その備えた道具をどういう風に活用ができるかとか、使う技術ですね。それが”備える”という言い方をするんであれば、”備わる”という言い方に変えたいなと。
英語が分かりやすいんですよ。”Prepare (プリペア)”っていうのは、ものを用意するっていうことですよね。備わるっていうのは、僕らは”Install(インストール)”っていう言葉を使うんですけれど、自分の中にそういうものを使う能力をちゃんとインストールしないと、結局いくらいい道具とか、たくさんのものを備えていても、使いこなせないっていう可能性が出てくるということ。それぐらい今は現実的になってきたということですよね」
●この本にもキャンプは日常でできる避難訓練と表現されていますけれども、やはりキャンプをしていると知らず知らずうちに防災力は身に付いてくるものですか?
「キャンプ自体がライフラインの少ない場所で、衣食住を組み立てるって言えばいいんですかね。言い換えればキャンプなわけですけど、ライフラインの少ない場所で衣食住を組み立てるのは、本当に災害時そのものだと思うんですよ。なので知らず知らずというよりかは、もう本当にやることなすことが全て生きるに繋がっているという、災害防災に役立つというより、もうひとつ奥側なのかもしれないですね。人が生きていくっていう上で必要なことをしっかり身に付けるっていうことかなと思っています」
●小さい頃からキャンプの経験をしておくっていうのは、すごく大事なことかもしれませんね。
「そうですね。知識だけではなくセンスが身に付くっていうんですかね。生きた何か知恵みたいな形がやっぱり小さな子供の頃からやっていれば、頭に入っていくというよりか、体に染み込むんじゃないのかなと思いますけどね」
人そのものがライフラインになれる
※寒川さんは鎌倉で「スタディトレッキング」というワークショップを開催されていますが、どんなことをやっているんですか?
「スタディトレッキングは実際学びながら歩くっていう、ちょっと造語というか、そういうタイトルなんですけれども、鎌倉の近隣の山を、実際山歩きをしながら、その途中で燃料になるようなものを見つける、それとあと湧き水も探します。結構ほかの町でも応用の利くことではあるんですね。実際、自分で自然の中から集めた燃料と水を使って自分で火を起こして、それで自分でランチを作る、そういうツアーをやっています。もう4年ぐらいやっていますかね」
●どんな道具を持っていけばいいんですか?
「それは全部こちらでお貸し出しするんですが、先ほどの浄水器とか、あと拾った燃料でお湯が沸かせるヤカンがあるんですね。ちょっと特殊な形をしているんですけれども、ガスとか使わなくて、調達した燃料で沸かせるヤカンと、あと火が起こせるナイフ、それらをお貸しします。これ、どなたでも時間さえかければ(できます)。今までできなかったって人はいないですね」
●参加者の皆さん、どんな反応されていますか?
「やっぱり防災っていうものに対しての意識も変わると。いわゆる何を持っておくべきかっていう意識自体が変わるとおっしゃる方が多いですね。あと百聞は一体験にしかずというか、やっぱり体験しておくことがすごく大切なことだっていう風に皆さんおっしゃいますね」
●防災という観点から、キャンプの初心者の方にアドバイスするとしたら何かございますか?
「そうですね。せっかくキャンプを始めたということであれば、きょうお話ししたような、テントに泊まって美味しいご飯を食べてっていうのも、もちろんキャンプの楽しみ方だと思うんですけれども、自分の力で例えば、燃料を探してみるとか、浄水をしてみる、火起こしができるみたいな、これ逆に言えば、お家の中だとなかなか体験できないことなんですよね。
それを是非キャンプで、自分の力で生きる何か方法をしっかりと身に付けていただきたいなと思いますし、その分やっぱり自然を楽しんでいただきたいというか、自然から色んなものが得られるんだっていうことを知っていただきたいですね」
●改めてこの本『新時代の防災術』の読者の方に、いちばん伝えたいことは何ですか?
「きょう色々お話ししましたけれども、実際アウトドアを楽しむ、道具を使いこなすっていう話もしましたが、何より僕が今回の本でいちばんお伝えしたかったのは、技術と道具をさらに人の心がそれをうまく使いこなすんだよというマインドの部分ですね。
今、アウトドア人口って非常に増えていますから、そのアウトドアをやる人たちがそういうそのマインド、マインドっていうのはもっと分かりやすくいうと、災害時には人助けをしようっていうことですね。自分が持っている道具とか技術をちゃんと自分自身にもちろん使って、自分自身プラス人に使えるっていう、自助と共助っていう言葉になるんですかね。それが個人ができるっていうことです、アウトドアであれば。
それを多くの人が実際に実行できるようになったら、人間がライフラインになれるんじゃないのかなっていうことですね。ライフラインは外側からあるものですけれども、アウトドアをうまく活用すれば、人そのものがライフラインになれると僕は信じています。是非そういう方向に皆さん来ていただきたいなと思いますね」
INFORMATION
『キャンプ×防災のプロが教える 新時代の防災術
〜アウトドアのスキルと道具で家族と仲間を守る!』
寒川さんが監修されたこの本にはきょうご紹介できなかったお話で、例えば、避難を強いられた時に、温かいものを食べるとモチベーションにつながるとか、極力、水を使わずにジッパー付きの保存用ビニール袋でご飯を炊く方法など、緊急時に役立つアイデアやヒントが満載です。寒川さんが使っている非常用の持ち出し品なども写真入りで解説。どんなものを備えればいいのか、明確に見えてくると思います。もしものときの心強い味方になる一冊! ぜひ参考になさってください。学研プラスから絶賛発売中です。
また『焚き火の作法』という新刊が9月末に同じく学研プラスから発売予定です。
詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎学研プラスHP:https://hon.gakken.jp/book/2380158500
寒川さんのイベントや最新情報についてはFacebookをチェックしてください。
◎寒川 一さんfacebook:https://www.facebook.com/hajime.sangawa
2021/8/22 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、フリーエディターそしてライターの「棚沢永子(たなざわ・えいこ)」さんです。
東京都府中市在住の棚沢さんは、詩の雑誌の編集業を経て、現在はフリーランスのエディター、そしてライター、さらに福岡にある出版社「書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)」の東京スタッフとしても活動されています。
そんな棚沢さんが2017年に出された本『東京の森のカフェ』が好評で、新たなお店を追加するなどリニューアルを重ね、ロングセラーとなっています。
きょうは棚沢さんと、東京の森カフェめぐり。知る人ぞ知る素敵なカフェをご紹介します。
☆写真協力:棚沢永子
意外と緑が多い東京
●ご自身でどんな点がロングセラーにつながったと思いますか?
「こんなにたくさんの方に手に取っていただけるなんて思ってもみなかったので、自分がいちばんビックリしております。東京の人がいかに緑を求めているかっていうのを逆にこの本で知ったという感じでした。
表紙を緑でいっぱいにしようよとか、写真も大きめに入れたいねとか、章立てなんかも工夫したりとか、色々工夫はしましたけど、本はひとりで作るものではないので、編集者さんとかデザイナーの方、あと書店さん、掲載店の方とか読者の方もね、みんなで一緒に作って一緒に応援していただいた、それがやっぱりロングセラーにつながったんだなという風には思っています」
●東京の郊外、例えば奥多摩あたりですと、森に囲まれたカフェがあるっていうのはイメージできたんですけれども、この本を読んでいたら、都心にも森を感じるカフェっていうのがあるんですね!
「そうですね。東京って意外と緑が多くて、高層ビルとかごちゃっとした街並みのイメージが強いですけど、公園なんかもたくさん整備されていると思うんですよね。
東京に森とか自然を作ろうっていう風に意識的にそういうことをしてらっしゃる方たちも多分たくさんいて、例えば大手町の駅を出たところに突然のように森が出現したりとかね。東京駅の隣の”KITTE”っていうビルも屋上庭園みたいなものを作ったりとか、あるいは目黒の高速のジャンクションの上に天空庭園なんて作ったりなんかして、森が出来上がったりとか、そういう風に意識的に作っている人たちもいると思うんですね。デパートの屋上なんかでも割と最近では木をたくさん植えたりとか、緑をたくさん入れているような動きもあると思います」
●南麻布とか表参道とかにもこんなに緑豊かなお店があったんだ! っていう風に驚きました。この本に掲載するかどうかの基準っていうのはどうやって決めているんですか?
「基準っていうか自分にとって居心地がいい場所、気持ちのいいところ、面白いなと思えたところを入れるようにしました。ただ綺麗とか、お洒落とかだけじゃなくて、自分は面白好きなのかなって、やってみて思いましたけど(笑)、評判がよくても行ってみて、ピンと来なければ入れなかったかな。なんとなく緊張するなとか、静かにしてなくちゃいけないとか、椅子が硬くて腰が痛いとかね、ちょっと高いなとか、そういうところは外しました」
それぞれのストーリー
※本に掲載されているカフェは、どのお店にもストーリーを感じるんですが、その辺は意識して取材されたんですか?
「そうですね。結局取材を申し込んでお話を聞いているうちに、やっぱり皆さんすごく物語を持っているじゃないですか。それは聞いていくうちに分かってきたことなんですけどね、それを書きたくなった。逆にただのカフェ案内じゃなくて、そういうものを書きたくなって、ちょっと本の方針が見えたかなっていう、自分の中でもちょっとね、だんだん変わっていったというか、そんな感じで作ることになりました」
●単にカフェの紹介をされているだけではなく、温かみがすごく感じられました!
「店主の方、皆さん、すごくいい方が多くて、本当に何でも喋ってくださってね」
●お話を聞く中で、特に印象に残っているストーリーってございますか?
「はい、お客様で転勤になっちゃって、20年ぐらい(店に行くのに)間があいちゃった人がいるんですって。それでその人が昔、マンデリンをいつも頼んでいたので、扉が開いて顔を見た途端にパッてそれを思い出して、“きょうもマンデリンでよろしいですか?”って。本当にすごく久しぶりなのにそれが出来るってすごいですよね。やっぱり流石、お店をやっている方ってすごいなって、それを聞いた時に思ったんですけど、そうしたらそのお客様がね、”覚えていてくれたんですか!”って言って、そういうエピソードなんかもありました」
●そうですか・・・中には歴史を感じるような場所もありますよね?
「そうですね。すごく素敵な築350年の庄屋屋敷を移築してきたりとか、東京の西のほうってお蚕さんの産業が盛んでしたから、そのお蚕さんの製糸工場の女工さんたちの宿泊の施設を、そのまま和カフェに持ってきたところもあったりしました。
町田に白洲次郎記念館ってあるんですけど、そこにカフェが併設されていまして、白洲次郎さんっていうのは戦後処理で憲法作りに関わったりとか、当時日本でいちばんかっこいい男って言われた人らしいんですけど、そういうところを取材したりもしました」
本当は内緒よ
※森を感じるカフェは郊外になればなるほど、行くのに不便だったりすると思うんですが、それでもお客さんで賑わうのはどうしてなんでしょうね?
「不思議ですよね。私も不思議だと思いました。ただ、もちろんそれぞれ工夫もしてらっしゃると思うし、特色を出すような努力もされていると思うんですけれど、今SNSの時代ですから、発信力とか、そういうことも駆使して皆さんやってらっしゃるかなっていうのは思います。
でもやっぱり、カフェのポテンシャルっていうんですかね、魅力がないと続いていかないだろうなって。本当に行けば行くほど、リピーターの人が多いっていうのは感じましたね。ずっと何度も、毎回来る度に寄ってくれるみたいな人が多いみたいです」
●特に棚沢さんがおすすめのカフェをあげるとしたらどちらになりますか?
「どこも大好きなのでね、なかなかちょっと絞りきれない(笑)。日野に“クレア ホーム&ガーデン”っていうカフェがありまして、ちょっと広いお庭で、建物をご主人が自分で、チューダー調のイギリスのお屋敷みたいな建物を建てちゃったりとか、エキゾチックな東洋の雑貨がいっぱい置いてあったりとか、そういう雑貨なんかもすごいんですけど、ママさんのお人柄が地球規模の肝っ玉母さんって言うんですかね(笑)。
本当に考え方がとても素敵で、盲導犬リタイアの子を引き取って、その看板犬にしたりとか、あるいはWWOOF(ウーフ)と言って、外国から日本に旅行に来られる方に、無償で泊まらせてあげて、代わりにお店の手伝いとかね、パンを焼いたりとか農作業を一緒にしたり、そういうことをやってもらったりとかね。本当に小さい虫から動物も外国の人もみんな一緒に地球号に乗っている、みんな一緒だよって、そういう考え方はすごく素敵なのね。そういうところもありましたね。
あと“コンブリオ”っていう青梅の奥のほうにある喫茶店なんですけど、本当にお客さんファーストのこだわりの店で、最初マスコミNGだったんですね。すごく素敵で、CMとかドラマ(の撮影)とかでオファーがいっぱい来るんですけど、ひとつも今まで受けてこなかった。
私が申し込んだ時も最初ダメって、受けませんって言われたんですけれども、話をしているうちに受けてくださったんです。本当にお客さんのことを大事にしていて、夢のような調度品があって、なんか日常と切り離されたような場所ですね。本当は内緒です(笑)」
看板メニューは“おかかピラフ”!
※棚沢さんはご自身でもカフェをされていると聞いたんですが、そうなんですか?
「これも本当にたまたまなんですけどね、叔母のカフェ(*)をその(本の)中にひとつに入れたんですよ。多摩川が近くてね、そのカフェ自体は街中にあるんですけど、ちょっと歩くとすごく気持ちのいい自然がたくさんあるようなカフェなんですよ。
そこを去年、ちょっと体の具合があまりよくないので、そろそろリタイヤしようかっていう話が出ました。それで子供がいないので、私たちに相談が来まして、廃業の手伝いをしているうちに、あまりにやっぱり雰囲気がいいし、常連さんがたくさん付いているし、もったいないねって話になって、じゃあ思い切ってやっちゃおうかって言って、この4月の末から引き継いで、カフェの仕事もちょっとやるようになりました(笑)」
●実際に棚沢さんがコーヒーを入れたりとかもされるんですか?
「やりますよ。どっちかっていうと夫のほうがコーヒー担当で、私が料理担当なんですけど、お客さんがみえると、この本を持って来てくださったりなんかして、とても嬉しいですね。自分の本を見て来てくださるってね」
●看板メニューは何ですか?
「“おかかピラフ”という、醤油ベースのピラフに鰹節を乗せるんです。そうすると鰹節がふよふよ〜っと幸せな感じで湯気で踊るんです。それが割と評判がいいかな(笑)。それは元店主の直伝なんですけどね。評判がよかったので教えてもらってやるようになりました」
●ちゃんと引き継がれているわけですね。
「そうですね。本当に常連さんが多い店なので、その常連さんたちにも居心地がいいように、また、新しい人たちも楽しんでいただけるように、音楽と本と料理とコーヒーという、そういうお店を今頑張って作ってやっております」
(*)棚沢さんが引き継いだコーヒーハウス「ケトルドラム」は、京王線の聖蹟桜ヶ丘駅から徒歩3分ほどのところにありますよ。営業日など含め、詳しくはケトルドラムのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎ケトルドラム:https://kettledrum2021.wixsite.com/cafe
小さな旅の本
※今はテレワークということで、ご自宅で仕事をされているかたも多いと思います。リフレッシュのために散歩をされているかたもいらっしゃると思いますが、ご自宅の近くで、森を感じるカフェを探してみるのもいいと思うんです。棚沢さん、どうでしょうね?
「意外と近くにもあると思うし、カフェじゃなくても、なんか雑貨屋さんとかでもいいし、ちょっと扉を開けてみる。初めてのところって扉を開けるのに勇気がいるじゃないですか。でもちょっと気になればね、いい機会だからちょっと開けてみるといいんじゃないですかね」
●改めて、この『東京の森のカフェ』を読まれた方にどんなことを感じてほしいですか?
「この本はどちらかというと、カフェ案内というより、小さな旅の本だという風に私自身は思っています。東京はカフェにしても、何にしても、とてもバラエティに富んで面白い街ですね。
なかなか今、遠出するような旅はできないですけれど、だからこそ身近な自然にちょっと目を凝らしながらね、いろんな場所を訪ねて、色んな人とちょっと話をしたりしてね、自分の好きな場所を見つけていただければいいなと。この本が手がかりにちょっとでもなれば嬉しいなと思っています 」
INFORMATION
『東京の森のカフェ』
緑がいっぱいの表紙を見ているだけで癒されますよ。掲載されているカフェは36軒、それぞれにストーリーを感じるカフェばかりです。写真も素敵で、実際にお店の雰囲気や、コーヒーなどの名物メニューを確かめたくなります。棚沢さんが引き継いだコーヒーハウス「ケトルドラム」も掲載。この本を持って、カフェめぐりをするのもいいかも知れませんね。書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)から絶賛発売中です。詳しくは、出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
2021/8/15 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、お笑いタレントの「じゅんいちダビッドソン」さんです。
2015年に、サッカー選手「本田圭佑」さんのネタで「R-1ぐらんぷり」優勝! その後もテレビやラジオ、イベントなど、様々な分野で活躍されています。最近では、どハマりしている趣味のキャンプが高じて、YouTubeにキャンプ動画を配信。なかなかうまくならず、失敗ばかりすることから“へたキャン”と呼ばれるようになり、これが大好評! チャンネルの登録者は15万人を超えているんです。また、先頃『こまかいことを気にしない へたキャン入門』という本を出されました。
きょうはそんな「じゅんいちダビッドソン」さんに、じゅんいちさん流のキャンプの楽しみ方や、芸人仲間と行くちょっと変なキャンプのお話などうかがいます。
☆写真協力:主婦の友社
へたでも楽しいキャンプ
●今週のゲストは、今やキャンプ芸人として大人気のじゅんいちダビッドソンさんです。 きょうはよろしくお願いいたします。
「お願いします。この間も喋っていたんですけど、キャンプ芸人って言われるけど、キャンプ芸人ってなんやねん!?(笑)」
●(笑)でも、本当に空前のキャンプ・ブームですよね?
「そうですね。割とこの2年ぐらい前から、コロナもあってなかなか居酒屋さんとか行けないから、じゃあキャンプ場なら大丈夫だろうということで、結構始めた方が多いんじゃないですかね」
●芸能界でもやっぱりキャンプ好きな方は多いんじゃないですか?
「多いし、乗っかって増えていると言うか・・・僕もちょっとブームになる直前ぐらいから始めたんですけど、ヒロシさんとか、バイキングの西村君とかに誘われて始めて。焚火会というソロキャンプ好き芸人軍団でやっているんですけど、そうじゃない人も結構ちょこちょこ最近増えていますね」
●多いですよね。そんな中、じゅんいちダビッドソンさんは先頃、新しい本『こまかいことを気にしない へたキャン入門』という本を出されましたけれども、私も読ませていただきました。
「どうでした? 読んでみて」
●失敗談も多く載っていて、”あ、完璧じゃなくてもいいんだ!”っていう風に思えて、これなら私もできそうかも、やってみたいっていう風に思えました。すごく楽しく読めました!
「本を出す時なんとなく、芸人なんで、ルールとして嘘をつかんとこうと思って。だからキャンプのルーティーン編みたいなページがあるんですけど、一応嘘つきたくないから、本やからルーティンを載せているけど、“普段は毎回違いますよ”とか、ちゃんとコメントで入れてるんですよ」
●ありましたね、注釈が(笑)
「やっぱりよく言われるのが、へたキャンとかも誰かが言い出したことなんですけど・・・なんならうちの嫁に言われだしたんかな?」
●へたキャンは上手、下手の下手ですよね?
「そう、なんかね、失敗多いんですよ。うっかりなんか忘れたりとか、うっかりテントが風で飛んでいったりとか、そういうのが多くて、YouTubeでそういうのをディレクターが面白がって流していたら、それをテレビ番組が取り上げて、嫁がそれを見て、“あなた、すごいね”と、“へたキャンっていう新しいジャンルを築いたね”みたいなこと言われて。
それを僕がTwitterでこんなん言われたって書いたら、周りが“へたキャン、へたキャン”言い出して、なんか僕が出すコンテンツ、全部へたが付くんですよね。これも『へたキャン入門』でしょ? 1年前に出た本も『へたキャンご飯』でしょ? レギュラー番組も『下手なキャンプでごめんなさい』って言って、こっち望んでないんですけど、周りが勝手にへたありきでコンテンツを作るんで(笑)」
●失敗するキャンプだからこそ楽しいっていうことですか?
「いやいや! 失敗しないほうが楽しいですよ! ただ、失敗しても、例えばキャンプ行きましたと、こんな料理、カレーライス作ってみたいと、作りました。ちょっとまずかった、でもそれもいい思い出になりますよって、それもキャンプ。
家でまずかったら、ただまずいだけやけど、キャンプで焚き火して、みんなで作ったカレーがまずかったら、なんやねん! っていう思い出になるし、もちろん美味しいほうがいいんですけど、例え失敗しても怪我とかするような失敗じゃなければ、楽しめるっていう・・・」
●それも含めての思い出になりますよね。
「と、僕は思いますけどね」
●そもそもキャンプに目覚めたっていうのは、昔からってわけではないってことですか?
「でも小っちゃい頃、好きで、たまに父親に連れて行ってもらったりとかしていたんですよ。大人になってからは、どっちかというと魚釣りが趣味で、休みの日は釣りばっかり行ってたんですけど、ある時さっきも言いましたけど、ヒロシさんとバイキングの西村君に誘われて、キャンプに1回行って一瞬でハマって、そこからどっぷりですね」
●すぐに自分でグッズ買ってみようとか!?
「いや、もうなんなら、その日のキャンプ中にAmazonでテントを注文しました」
●ええ!?
「そう、家に帰ったらもう届いていて、そのテントを持ってもう1回キャンプに行きました(笑)」
僕らは“ソログル”キャンプ
※ところで、キャンプのノウハウは、誰かに教わったんですか?
「ノウハウは、僕もそうですけど、一緒に行く仲間に特に教えもしないし、教わりもしないし、なんならネットで調べたりする人が多いんですかね。僕の場合はもうやってみて、あかんかったらまた次、違うやり方してみたいな。で、なんとなく学んでくるというか、別に正しいやり方を知らなくても、僕、何百回もキャンプをやっていますけど、未だになんかロープの、ロープワークって言うんですけど、結び方とか1個も覚え切らなくて、ずっと我流ですよ。それでもなんとかやれているんで、別にそれでもいいかなと思っていますよ」
●初めてヒロシさんたちに連れていってもらって、何がそんなに楽しくてハマったんですか?
「もともとそのふたりとも仲良かったので、その仲の良い友人と、真っ暗闇の中で焚き火をぼーっと見ながら、特に大はしゃぎするわけでもなく、淡々とお酒を飲むっていう、この贅沢な雰囲気と空間というか、こんないい時間があるんやっていう風なハマり方ですよね」
●YouTubeの「ちゃんねるダビッドソン」にキャンプの動画もたくさんアップされていますけれども、芸人仲間の皆さんと行く時も、それぞれソロキャンプしているっていう感じなんですね。
「そうですね。だから本当にそのやり方も良くて、僕らの仕事って時間もバラバラじゃないですか。だから入る時間も帰らないといけない時間もバラバラなので、それぞれがソロキャンプっていうこのスタイルが良かったんですよね」
●好きな時に好きなものを食べるとか、本当に食事もバラバラですし・・・。
「バラバラですね。たまにちょっとお裾分けはしますけど、眠くなったら先輩後輩、関係なく寝ますし。だからそれこそ朝起きたら誰もいない時とかありますから」
●本当ですか?(笑)
「あります、あります! 朝起きたら誰もいない時もあるし、4〜5人残ってんのに自分ひとりだけ、朝4時に起きて撤収して帰らないといけない時とかもありましたね」
●基本的にはソロ・キャンプをされているってことですね?
「そうですね。だからその焚火会のメンバーで一緒に行って、誰かと何かを共同でやったことは1回もないですかね。なんとなくそれぞれやっていて、なんとなく誰かの焚き火の周りになんとなく集まってきて、なんとなく帰っていくみたいな、そういう集団というか、やり方というか・・・」
●みんなで同じテントにとかではなくて、やっぱりソロっていうことに意味があるということですか?
「そもそも、みんなまあまあおっさんなんで、おっさん同士みんなで同じテント(に寝るのは)イヤでしょ? だからソロで良かったなってすごく思いますね」
●ソロ・キャンプの良さって何なんですかね? やっぱり自分の空間があるとか!?
「そうですね。やっぱり自分のペースでやっているけど、でもその空間は友人と共有しているっていう、僕ら”ソログル”とかいう言葉で言っているんですよ。ソロ・グループ・キャンプみたいな。ひとりのペース、自分のペースは乱されないけれども、場所を共有している楽しさもあるみたいな。だからいいとこ取りっていうか、もちろんその分それぞれお金はかかるでしょうけど」
●程よい距離感で楽しめるんですね。
<焚火会、TAKIVILLAGE>
お話に出てきた、ソロキャンプ好きな芸人さんのグループ「焚火会」、メンバーはヒロシさん、バイキングの西村さん、うしろシティの阿諏訪さん、とろサーモンの村田さん、ベアーズの島田キャンプさん、ウエストランドの河本さん、スパローズの大和さん、インスタントジョンソンのスギ。さんで、現在は9人だそうです。
キャンプによく行くエリアは、都内から車で行ける場所ということで山梨、神奈川、群馬、千葉あたりが多いそうですが、千葉でおすすめのキャンプ場として、いすみ市のTAKIVILLAGE(タキビレッジ)をあげてくれました。ネットで調べたら、高台の開けた場所にあって周りは雑木林という絶好のロケーション、フリーサイトでかなり良さげな感じでしたよ。
◎TAKIVILLAGE HP:https://takivillage-camp.site/
山林を賃貸!? プライベート・キャンプ場
●奥様と一緒にキャンプに行かれた時も、ハンモックを張るのにかなり手間取っていた様子をYouTubeで見たんですけど(笑)
「僕、ハンモック苦手でね(笑)。だから諦めたんですけど、今までハンモックを張って、朝起きたら大体、下の地面に付いてることが多くて」
●下調べとかもせずに臨まれていた様子がYouTubeに載っていて、奥様からもかなりつっこまれていましたけど。
「うちの嫁が、僕のいじり方がすごい上手いみたいで、YouTubeの“ちゃんねるダビッドソン”にあげているんですよ。なんか一定数、うちの嫁ファンがいて、顔は出させていなくて、声だけなんですけど、最近“嫁ットソン”出ないんですね、とかコメントが来たりするんですよ。結構つっこまれましたね、あの時は(笑)」
●いや面白かったです! やっぱり我流っていうのがモットーなんですか?
「モットーってわけではないんですけど、めんどくさいから調べていないだけというか、あと、できると思っているんで。テントとかも初めて買ったテントを1回も開けずに現地に持っていって、それこそ軍が使っているテントを海外から個人輸入して。現地で開けたいんですよ、下調べとかせずに」
●なるほど!
「現地で開けたら、やっぱり海外からの中古品なんでね、ポールが入っていなくて、布しか入っていなくてっていうこともありましたね。だから現地でポールの代わりになりそうな枝を拾って(テントを)建てたんですけど。下調べして完璧にやっていくよりも、テンションでいきたいので、自ずとミスは増えてしまうのかなっていう自己分析はありますけど」
●それこそがもうへたキャンなんですね!(笑)
「まあそろそろ達人って呼ばれたいですけどね」
●最近キャンプするための山林を買われたそうですね?
「買ったんじゃなくて賃貸なんですよ」
●賃貸!? そういう手もあるんですか? どういう仕組みなんですか?
「そこの持ち主が、別に売るつもりも貸すつもりもなく大事にしていた山林で、たまたま僕が探しているって話を聞いて、僕のことを見ていてくれて、じゅんいちさんやったら賃貸とかでいいですよってやってくれたんで、変な話、特別扱いしてもらったんですけど。それで面白いですよ、本当に契約書を交わしてね。間に入ってもらって、アパートとかと一緒、2年契約の自動更新です(笑)」
●へ〜! そうなんですね! 山を!
「礼金とかないですけど、敷金もゼロでしたよ、そういえばね」
●言える範囲でいいんですけど、どの辺りに?
「県で言うと長野県です。都内から僕が行ける範囲で借りたかったんで、長野県ですね」
●YouTube(の動画)でもかなり広いなっていう印象がありました。
「広いですね結構。割となだらかで、傾斜地がそんなにないような林間ですね。だから山というよりは森というイメージですね」
●そこをマイ・キャンプ場として使っていくんですね?
「そう。おそらくこの放送が始まる頃にはもう終わっているんですけど、プライベート・キャンプ場としてオンラインサロン(※)のメンバーは使うことができるので、そのためにトイレを設置して、許可を取って林道に今、砂利を敷いてるんです。
で、砂利敷きが終わってトイレが使えるようになったらサロンのメンバーは、めちゃめちゃ安い料金で、500円ぐらいとかで使えるみたいなキャンプ場としてオープンするんですけど、今まだその作業が完璧に終わっていないんで、まだオープンはしていないっていう状態です」
●どんなキャンプ・サイトにしようって考えるのも楽しそうですね!
「そうですね。でもそこは最初、いろいろ、例えば井戸を掘って、小屋を作ってとか考えていたんですけど、森自体がすごく綺麗なんで、ここはあんまり人工的なことはせんとこって話になってね。もうトイレだけしか付けんでいいんじゃないか。あとは綺麗にしてくれているから、そのままの状態をなるべく残すようにしようみたいなことで、そこに関しては落ち着きました。実は明日、関西に土地を見に行くんですよね」
●関西ですか?
「関西にまた第2弾でキャンプ場を作ろうと」
●え〜!? すごいですね!
「関西にも結構メンバーがいるんで、長野県に来れないじゃないですか。だから各地にちょっと作りたいなと思って、何個か(キャンプ場を)」
●すごいじゃないですか!
「そういうのを今やっていますね」
(※)じゅんいちさんのプライベートキャンプ場は、会員制オンラインサロン「じゅんいちダビッドソンのキャンプ村」のメンバーになれば、利用できるとのことです。メンバーの募集は不定期なんですが、次回は9月3日(金)の午後6時から申し込み開始となっています。会員になりたい方はじゅんいちさんのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎じゅんいちダビッドソンのキャンプ村:http://jd-campmura.com/lp/onlinesalon-t/
嫁「なんでドラム缶!?」
※じゅんいちダビッドソンさんはキャンプ用の道具もいろいろ試されているようですが、アウトドアでお風呂に入ろうと、ドラム缶まで買っちゃったんですよね?
「そうですね。キャンプ場でも備え付けで置いているところはもちろんあるんですけど、どこでもできないじゃないですか。もちろん直火って言って地面の上で直接、焚き火を許してくれているところじゃないとできないんで、今ほとんど(直火が許されているキャンプ場は)ないんですけど、それでもやっぱり自由に持ち運びができるので、最初買ってやった時はやっぱり面白かったですね」
●どんな感覚なんですか?
「最初は”お、ほんまに入れるんや!”って感覚でしたね。焚くとね(お湯が)沸くのに結構時間はかかるんですよ、1時間ぐらいとか、下から火を焚いて。1回、番組ですけど、そのドラム缶風呂に満天の星空の下で入ったことがあって、それはもうめちゃめちゃ最高でしたね」
●いいですね〜。奥様の反応とかっていかがだったんですか?
「嫁はそのドラム缶風呂よりも、ドラム缶を買った時に、僕、嫁に言ってなかったんですよ。で、いわゆるインターネットで買ったんで、急にあれ(ドラム缶)が家に届いて、その時、嫁が受け取ったんですけど、何か分かってなくて、”なんかでかいの届いてんけど、何!?”って連絡がきて、”あ、ごめん言うの忘れてた! ドラム缶!” ”なんでドラム缶!?”みたいな、そっちのびっくりをしていました」
●ドラム缶、売っているんですねっていう感じですよ。すごいですよね(笑)
「ホームセンターに売っているんですけどね。今は家に届けてもらえるところで買えるんでね」
●キャンプするのにいちばん好きな季節ってありますか?
「4月から5月か、11月から冬にかけて、夏以外かな」
●あ、そうなんですね。冬でも?
「冬は冬で雪の中とかでやったことあるんですけど、なんかそれはそれで素敵なんですよね。あんまり味わえない空気というか、雪の中で焚き火して、クソ寒い中、焚き火して、暖かいキムチ鍋とか作って、熱燗を入れて飲んで、みたいなね」
●いいですね〜。それぞれの季節での良さがあるんですね。
「あります、あります。5月くらいが(キャンプを)やる人多いじゃないですか、やっぱり。あれはすごく気持ちいい季節だと思いますけどね」
●今まででいちばん印象に残っているキャンプってありますか?
「やっぱりみんなで、さっきの焚火会のメンバー6人ぐらいで行った、無人島でキャンプやったんですよ。いろいろ食料とか水とか買い込んで、無人島に3泊4日いたんですよ。あの時は何をするわけでもないし、何もしてないし、やることもなくなるのに、ずっとめっちゃ楽しかったですね。気の合う仲間と一緒やったっていうのはもちろんあるんですけど、あれがやっぱり今のところベスト・キャンプですかね、印象に残っているキャンプとして」
●その無人島でもソロ・キャンプの形態でやっていたんですか?
「そうです。無人島の海岸にテントが6つ並ぶ、等間隔で」
●なんかシュールですね(笑)
「シュールですね、今考えると(笑)。思い出に残っているキャンプはそれですかね」
部屋でドラム缶風呂、嫁激怒!?
※今はなかなか、キャンプにも行けない状況が続いていますが、日頃からキャンプ気分を味わうヒントがあれば、教えてください。
「LEDランタンとかね、部屋の中で暗くしてね。僕がよくやっていたのが家の中で小っちゃいテントを建てて、テレビのモニターに自分で撮ってきた焚き火の映像を映してね。
ランタンも僕はオイル・ランタンをつけてやっていたけど、危ないから、LEDランタンかなんか掛けて、ちょっと酒でも飲んだら、つまみもよくあるスキレットとかで作ったりすればね、ちょっとは味わえるけど、ただ正直2〜3回で飽きますけどね。
僕も実際やりましたから、2〜3回で飽きたから、最終的にだんだんハードルが自分の中で上がっていくじゃないですか。2〜3回でもう家キャンプに飽きて、最終的に家の中でドラム缶風呂やりましたから」
●それ、すごいですよね(笑)
「あの時もあがる時に結構お湯が溢れて、また嫁に怒られてね。大変だったけれどもYouTubeに(動画を)あげたんですよ。やっぱりテレビの人って結構見ているじゃないですか。あれうちの番組でやってくれません? っていうのが2回ぐらいあって、結局、俺トータル4回ぐらい家でドラム缶風呂やったんですよ」
●もう奥様が大変!
「そうそう(笑)」
●この新しい本『こまかいことを気にしない へたキャン入門』を、どんな方に読んでもらいたいっていうのはありますか?
「これ実は、入門する人に一個注意があって、この本をすべて鵜呑みにしてやったらミスるから、ここは取り入れる、ここは取り入れない、自分の判断力の問題があるんで、この本は実はキャンプの入門ではなくて、判断力を養うための本やと思っているんですね。
判断力を養いたい人に読んでもらいたいのと、逆にキャンプのベテランの人に読んでもらいたい! そしたらバラエティ本と捉えて読むんじゃないかなと、キャンプのベテランですごく詳しい人が読んだら、逆に面白い本だと思います。だからその2種類ですね。判断力を養いたい人とベテランのキャンパーさんに読んでいただきたいですね」
●これからキャンプを始めようっていう方はどうしたらいいですか?(笑)
「ヒロシさんの本を読めばいい!(笑)」
●ヒロシさんの本で勉強!?(笑)。では、改めてじゅんいちダビッドソンさんにとってキャンプとは?
「キャンプとは・・・でもまあ遊びですよね。キャンプとは人生ですとまではいかないですよね。人生の色んな要素のうちのひとつで、やっぱり遊びなんですよね。僕のいちばん好きな遊びですかね」
INFORMATION
『こまかいことを気にしない へたキャン入門』
本の前書きに「この本は入門という名のバラエティーブックです」と書かれている通り、見ているだけで楽しい本です。でも、ちゃんとどんな道具が必要なのかの準備編から、キャンプ場についたら何をしなくちゃいけないかなど、基本的なことはおさえてありますよ。愛用している道具や使い方の説明が、たくさん写真とともに解説してあるのでわかりやすく、失敗談も参考になりますよ。おすすめです! 主婦の友社から絶賛発売中!
◎主婦の友社HP:http://shufunotomo.hondana.jp/book/b581522.html
YouTubeの「ちゃんねるダビッドソン」もぜひ見てください。普段、どんなキャンプをやっているのか、よくわかりますよ。焚火会のメンバーも出てきたりと見所満載! 中でもおすすめは奥様が登場する回、絶妙なツッコミに笑いますよ。
◎じゅんいちダビッドソンさんHP:https://junichi-davidson.co.jp/
2021/8/8 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、イラストレーターの「中村みつを」さんです。
中村さんは1953年、東京生まれ。16歳から山登りを始め、その後、国内のみならず、ヒマラヤやヨーロッパアルプス、南米パタゴニアなどにも遠征。現在はフリーのイラストレーターとして自然や旅のイラストやエッセイを多く手掛けていらっしゃいます。また、2年前には「山の日アンバサダー」に就任されました。
そんな中村さんの新刊が『新装版 東京まちなか超低山〜50メートル以下、都会の名山100を登る』。3年前に出された本のリニューアル版になります。
「超低山」と呼び始めたのは中村さんで、その定義は本の副題にあるように、登山口から山頂までの高さが50メートル以下となっています。実は東京には、それも、23区内にはたくさん山があるんです。きょうは都内にある、とっても低い山「超低山」の話題をお届けします。
☆写真協力:中村みつを
自分の懐に収まる山
※では早速、中村さんにお話をうかがっていきましょう。都内の超低山に注目するようになったのは、なにかきっかけがあったんですか?
「都内で打ち合わせの帰り道に、まっすぐ帰るのも面白くないなーと思って、散歩がてら新橋の辺りを歩いていたんですね。そうしたら、こんもりとしたものが目の前に現れたんです。気が付いてみたら、そこは前から知っていたんですけど、その時に何故か山に見えたんですよ。それが虎ノ門にある標高26メートルの愛宕山(あたごやま)という、東京タワーの近くにあるんですね。多くの人が結構行かれるところなので、ご存知だと思うんですけど、出世の石段という急な階段があるんです。それが有名ですけど、そこを見た時に今までも来ていたはずなのになんで山に思えたのかな? って自分でちょっと向き合ってみたんですよね。
そうして、ちょっとぐるっと周りを歩いてみたんです。超低山のいいところは小さいんですよね。超低山って言うくらいで、あっという間に周れちゃうんです。これがなんとも小気味よくって、自分の懐にスッと収まる、山ってなかなかそんなこと、本来はできないですよね。富士山をくるっと周ろうなんてことももちろんできないし、それがあっという間にできちゃうミニチュアの面白さみたいな、そういう感覚がありました。
それで歩いてたらトンネルが現れたんですよね。車がそこを通っているんです。都心の真ん中に山があって、トンネルがあってっていうのはちょっと想像つきにくいっていうか、改めて見た時の発見と驚きみたいなのをその時に感じたんですよね。だから今までいかに僕たちは普段、生活の中で見ているようで見ていないんだなっていうことを改めて思ったんですよ。
それで改めて石段をトコトコ登って頂上に行って、今はもうビルに囲まれたりして江戸時代のように展望がいいわけではないんですけど、僕にはとてもそれは雄大な景色に見えたんです。かつてフェリーチェ・ベアトっていう明治時代に来た(イギリス人)写真家が当時の写真を残しているんですけど、それを見た時に、まさしく山だったんだなっていうのが、またさらに気付いていくことに面白さが出てきて、そこからスタートしたような感じですね。よくよく見れば、山ってちゃんと付いていますよね? 愛宕山・・・」
●あ〜、確かにそうですね!
「それは都内にもたくさんあるわけですよね。飛鳥山とか代官山とか、それこそ拾っていくとたくさんあるんですよ。何とか山とか、何とかヶ丘とか、丸っていうのもそうですよね、何とか台、そういうのは全部山なんですよね。だからそういう地形を表したことにだんだん興味が向いてくると、東京というのは山岳都市なんじゃないかって思えてきて、山があれば当然、谷もあるんで、渋谷は谷なんだとか、そういうことが見えてくるんですよね」
江戸時代、大名が山を造る!?
※ひとくちに超低山といっても、いくつかタイプがあるんですよね?
「はい、分かりやすく説明すると、人工の山、人の手で造った山っていうのは築山(つきやま)って言うんですけど、例えば築地ってありますよね、あの築と同じです。あれは造った土地なので築地って言うんですけど、それと同じで造った山を築山って言うんですよ。だから日本語っていうのはすごく分かりやすくできているんですね。その文字を紐解いていくとね。そういうのがひとつひとつまた面白いんですよ。
その人工の山っていうのは多くは大名庭園に造られていることが多いんですよね。大名庭園っていうのは江戸時代に造られるんですけど、徳川が幕府を開いて日本中の大名がそこに屋敷を持つわけですよね。時代は安定してきているので、それぞれが庭に凝るわけですよね。藩の力の大きさっていうのももちろんあるんですけど、徳川御三家なんかは広大なお屋敷を持っているんで当然お庭も広いんです。
そうするとまず池を掘って、池を掘った時に土をどうするかっていうと、それを山にするんですよね。掘った土を盛って山を造るんです。そういう手法をどこの庭園もやるわけですよね。松を植えたりとか、楓を植えたりとか、園路を造ったりとか、東屋を作ったりとか、色んな工夫をして、六義園とか、小石川後楽園とか、清澄庭園とか、浜離宮とかたくさんありますけど、みんなそれぞれ持ち味が違うんですよね。それは考え方の違いで、それぞれなんですけど、そういうところに築山を造るですよね。
その築山もほとんど、自分が生まれ育った場所を思い起こすようなものを造ったりとかって意外とあるんですよね。あとは富士山を模したものももちろん造られました。大体高さにすると5メートルぐらいなんですよね。元気な人は30秒ぐらいで登頂できちゃうんですけど、それを人工の山、築山っていう大名庭園にたくさん造られたっていうのがまずひとつですね」
●超低山を登ることは歴史を体感することにも繋がりそうですね。
「そうですね。だからさっきの大名屋敷の山、例えば浜離宮でもいいですけど、山に登ると時の将軍もそこに立ったんだなっていうことが分かるんですよね。だから今はもう、もちろん将軍さんはいないですけど、同じものがそこにあるんですよね。だから同じことを体験できるっていうか、それがなかなか面白いんですよ」
<超低山の種類>
超低山のタイプは、先ほど中村さんのご説明にあった、大名屋敷内の庭園に造られた人工の山「築山」のほかに、江戸時代の「富士信仰」の影響で街中にたくさん造られた「富士塚」、これは今も都内に50くらいは残っているそうですよ。
そしてもうひとつのタイプが「天然の山」。都内には、中村さんが超低山に注目するきっかけになった虎ノ門の「愛宕山」のほか、王子の「飛鳥山」、そして浅草の「待乳山(まつちやま)」があります。
まとめると超低山のタイプは「築山」「富士塚」そして「天然の山」の3つなんですが、その3つに収まらない山として、いわゆる、崖のような場所を「見立ての山」と中村さんは呼んでいます。実はこのタイプが都内にはいちばん多く、代官山や五反田、品川などにもあるそうですよ。探しに行くのも楽しそうですね。
おすすめの超低山
※お勧めの超低山を教えてください。
「これがね、いっぱいあって困っちゃうんですけど(笑)。季節に分けてもいいし、色々考え方はあるんですけど、まず理解しやすいところで言うと、さっきの3つ挙げた天然の山っていうのが分かりやすい山だと思うんですよね。行けばそこにそそり立っているんで。
今そそり立っているって言い方をしましたけど、これは大げさに表現することが大事なんですよ。だから登るところは登山口って言うようにしているんですよね。小さくてもそこは雄大な山として取り上げるような気持ちで登ってほしいと思うんです。じゃないとあっという間に終わっちゃうんで(笑)。僕はゆっくり愛でながら登ろうということで、さっきの飛鳥山、愛宕山、待乳山、これらは登っといた方がいいと思います。
あと可愛い山をひとつ紹介しておきたいんですけど、東京の小金井市に野川という清流が流れているんですね。野川公園っていうのが近くにあるんですけど、そこに”くじら山”という名の標高53メートルの山があるんですね。これは何がいいかって言うと、大名屋敷でもなんでもないんですけど、築山なんですね。雑木林が周りにあって公園の一角なんです。近くの小学校を改築する時に土が余って、それをそこに盛ったわけなんですよ。子供たちが遊んでいるうちにくじらの形になって山が残ったんですよね。
で、気が利いている大人たちがいたんですね。それをちゃんと大事にそのまま残したわけですよ。そこにシロツメクサとか全山を覆うように咲き誇るわけです。それがもう本当に可愛らしい山で、そこから見る西側の風景は雄大で、夕焼けを見るには本当にいいところです。本当にそこは、お殿様も誰もいない子供たちのパラダイスなんですけど、大人が行っても楽しいです」
浦安で富士巡り!?
※千葉にもお勧めの超低山はありますか?
「千葉だと例えば、浦安に3つの富士塚があるんですね。富士巡りができるんですけど、堀江富士っていうのがあるんですね。これは清瀧(せいりゅう)神社っていうところにあるんですけど、もうひとつは猫実(ねこざね)富士っていうのがあって、これは豊受(とようけ)神社っていうところにあるんですね。もうひとつが当代島富士っていうのがあって、これは当代島稲荷神社っていうところにあるんですけど、この3つは大体3〜7メートルほどのミニチュアの富士山があります。駅からも近いんでこれは楽しめると思います。
あとおすすめなのが、流山にある流山富士っていうのがあって、これ江戸川に沿ったところにあるんですけど、そこに浅間神社があって、浅間神社っていうのは富士信仰ですね、富士を祀ったところですけど、そこに高さ6メートルの立派な富士塚があります。ここも街歩きをしながら尋ねると楽しいと思います。
(超低山は)思い立ったときにふっと寄れるよさがあるので、そんなに大げさな格好はいらないんですけど、できたら手に(物を)持たない、要するにデイパックを背負うとか、手はブラブラさせておいたほうがいいと思います。というのは富士塚の中には岩登りに近いような感じで、結構手を使って登るところもあるんですよね。そういうところもあるんで、手が空いた方がいい。あとはこの時期だと暑いんで水分補給は欠かせないっていうこともありますよね。
いちばん重要なのは想像力ですね。その超低山を前にした時に、そこに行くまでのことを色々想像しながら気持ちを膨らませていく、そういうものがいちばん肝心かもしれないですね。山頂に立った時に見える風景を想像してみるのもすごく楽しいと思います」
気の向くまま、あえて迷ってみる!?
※去年から続くコロナ禍で遠出することが難しくなっていますよね。そんななか、近場に日帰りで行くような「マイクロツーリズム」という旅のスタイルが注目されています。超低山はマイクロツーリズムそのものですよね?
「そうですね。このマイクロツーリズムというのはこのコロナ禍で生まれてきたって言ってもいいと思うんですけど、それまであまり言われませんでしたよね? 遠くに行くのがひとつのステータスだったり、夢だったりというのがあったと思うんです。(以前は)今さらそんな家の近所を歩いてどうすんの!? みたいなことだったと思うんですよね。
でもこのコロナ禍でマイクロツーリズムがだいぶ言われるようになって、僕が書いたこの本もそういう意味では非常に喜んでもらえる本にはなったんですね。
自分の住んでいる街でもいいし、あと勤めている会社との距離でもいいし、その間に結構あるんですよね、今まで見落としていたこととか。そういうのをちょっと調べてみると山があったりするんで、そういうところに足を運んでみるといいかと思います」
●朝起きて、その日の天気を見て、ちょっと行ってみようかっていうその手軽さ、気軽さっていうのも超低山の魅力ですね?
「そうですね。寝坊しても行ける良さがあるんで非常にいいです(笑)。で、どこかでお昼を、江戸時代からやっているお蕎麦屋さんで食べようかとか、ここの団子屋さんに帰りは寄っていこうとかね、そういう気持ちを緩やかにする良さがある。緊張することのない山登りかもしれないです。
で、よく言われるんですけど、迷ったらどうするんですか? っていう人がいるんですよね。本当の山だったら大変ですよね。迷ったりすると帰って来られなかったりするわけですけど、この都内での山歩きですから、僕は迷うことはお勧めしているんですよね、どんどんと迷ってと。
丁寧なコースガイドがあったらいいのにっていう風に、今の人は捉えがちなんですよね。右に曲がったらこれがあって、左に曲がったらこれがあるっていう、もう道順のように行くのに慣れちゃっている部分もあると思うんですけど、そんなものはもうやめて、気の向くままに歩く。最終的に例えば、愛宕山だったら愛宕山にたどり着くまでを楽しんだ方がいいと思いますよね」
●中村さんのお話を聞いて超低山に行ってみようって思った方、たくさんいらっしゃると思うんですけれども、そんな方に何かアドバイスがあるとしたら。
「とにかく頭を柔らかくして、想像力を豊かに楽しむっていうことだと思います。疲れたら休めばいいし、雨が降ったらどこかに雨宿りすればいいし、そのぐらいの気持ちで行くといいと思います。あとは何とか山っていうのを、地図を広げた時に見つけたら、なんだろう? ってそういう不思議さを思うことも大事だと思います」
INFORMATION
『新装版 東京まちなか超低山〜50メートル以下、都会の名山100を登る』
都内にこんなにも「山」があるのかと驚きますよ。普段意識していないので「山」と認識していないだけ。思い立ったらすぐ行ける山や、山をめぐるコースも紹介。付録には「東京の超低山 百名山リスト」も掲載。ぜひ読んでください。ぺりかん社から絶賛発売中です。
詳しくは、ぺりかん社のサイトをご覧ください。
◎ぺりかん社HP:http://www.perikansha.co.jp/Search.cgi?mode=SHOW&code=1000001871
中村さんは今年12月に恵比寿の「ギャラリーまぁる」で個展を開催予定。山の世界を描いた作品を中心に展示するそうですよ。
◎ギャラリーまぁるHP:https://galeriemalle.jp
2021/8/1 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ガーデニング研究家の「はた あきひろ」さんです。
はたさんは1967年生まれ、兵庫県西宮市出身。大手住宅メーカーに勤務後、2014年に独立。現在は奈良市で、農地を借りて、家族5人分のお米と野菜を作りながら、ガーデニング研究家、そして樹木医として活躍されています。また、テレビ番組「ぐるっと関西おひるまえ」の講師として出演されていて、家庭菜園での野菜作りを分かりやすく親しみやすい語り口で解説されていて人気なんです。
そんなはたさんの新刊が『ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園』。
きょうはペットボトルや段ボールなど、家庭にあるものを使って始める水耕栽培やプランター菜園、そして農地を借りて取り組んでいる自給自足の生活についてもお話しいただきます。
☆写真協力:はたあきひろ
水耕栽培のすすめ
※家庭にあるもので野菜を育ててみよう、ということで、まずは水耕栽培についてうかがいます。はたさん、最初に何を用意すればいいですか?
「用意するものはですね、色々なやり方があるんですけども、いちばん手軽なやり方でいうと、スポンジ、食器とか洗う時にスポンジを使うじゃないですか、新しいスポンジでもいいんですけど、古いスポンジでも構わないので用意してください。
そのスポンジにカッターで深さ大体1センチぐらいの溝を作って、その溝の切れ込みの中に野菜のタネを入れて、そのスポンジを、豆腐が入ってるような(プラスチックの)ケースに水を入れて浸しておくとスポンジが水を吸いますよね。その水を吸ったスポンジからタネに水が移って、それで発芽します。タネぐらいは買わないといけないですけど、それ以外はそれで十分です。スプラウト(*)もできますし、ちょっと育てればベビーリーフもできますよ」
(*スプラウトとは、発芽直後の新芽のことで、発芽野菜とか新芽野菜といわれています)
●へぇ〜! 広いスペースが必要ってわけでもないですよね。
「そうなんですよ。ただ、ちょっと窓辺の、日の当たるところの方が成長が当然いいので、できるだけ窓辺に置いてもらって」
●水耕栽培の良さってどんなところですか?
「水耕栽培はですね、まず野菜を作るとなると、嫌がられるのが虫なんですよね。水耕栽培の場合は室内でできるっていうのと、土を使わないから、土の中に虫の幼虫がいたり卵があったりして、それが野菜に付く場合もあるんですよね。
水耕栽培は限りなく虫と出会う機会が少ないです。水は水道の水を使いますし、スポンジに虫がいるはずがないですし、タネそのものにも虫は付いていないですよね。”野菜作りはしたいんだけど、虫はね〜”って方にはぴったりだし、手軽に誰でもできるところがいいところだと思いますね。
あと栽培期間も短いですから。普通、例えば小松菜とかチンゲンサイを、売ってるような形に育てるのには大体2〜3ヶ月かかるんですよね。でもスプラウトとかベビーリーフだと、2〜3週間で採れちゃうので、非常に勝負が早いんです」
●お水は毎日変えればいいんですよね?
「そうです。水耕栽培の場合のポイントはやっぱり水。水耕と言われるぐらいだから水を清潔にしておくことが大切です。できるだけ水は毎日変えてあげることが重要です」
(補足:ペットボトルでも水耕栽培ができます。やり方は、はたさんの本にわかりやすく載っているのでご覧ください)
野菜を育てる秘訣
※水耕栽培の秘訣があったら、教えてください。
「秘訣はですね、僕いつも野菜を育てる時に言ってるのは、ノウハウより思いやりなんです」
●思いやり!?
「僕が、私が、育ててやろう! という風に思うんじゃなくて、この子が気持ちよく育つ環境を作ってあげようと。そうすると、水って毎日変えた方が気持ちいいですよね。
で、発芽する時って肥料いらないんですよ。何故かっていうとタネの中に発芽するエネルギーがあるから。でも発芽した時に”そろそろ、はたさん、肥料を頂戴〜!”っていう風な顔つきになってきた時に、液体肥料をあげると、”ありがとうね!”という感じになるんですけど、最初から肥料入りの水を入れると、”まだいらないのにな〜”っていう感じですよね。
ですので、あんまり自分が育てているっていうよりは、相手が気持ちよく育つことを(考える)。そしたら今何をしないといけないのかなっていうのが、水耕栽培でも、土を使うものでも、畑でする場合でも共通なんですよ」
●思いやり大切ですね! 部屋の中で育てるので日々成長を観察できるっていうのもいいですね。
「いいですね。最近だと写真を撮ってSNSにあげたりするのも、日々成長していくのがわかるし、あと外じゃないので、雨の影響とか天気の影響を受けないですよね。写真も定期的に撮りやすいし、寒い日でも室内が暖かければ育ちます」
●本当に初心者にはぴったりの水耕栽培ですね!
「そうなんです!」
100円ショップで園芸!?
※ここまでは水耕栽培についてうかがってきましたが、続いては、はたさんお勧めのプランター菜園について。家にあるもの、たとえば、台所にあるプラスチックの、ざるやボウルでもプランターの代用になるってことなんですよね?
「そうなんです。僕が100円ショップとかホームセンターに行くと、園芸コーナーだけじゃなくて色々なコーナーに行って、これって園芸に使えそうやな、っていうのを見つけるのがちょっと趣味なんです。ざるだけではちょっとしんどいんですけど、ざるとボウルがセットになって100円のものがあるんですよね。もう少し大きなものだと、ホームセンターに高いのもあるんですけど、それで十分育つんです。
特にプランターを選ぶ時の注意点なんですけど、鉢底がざる状になっているのがすごくよくて、プランターでも穴が少ないものは、あまり僕はお勧めできないんですよ。何故かというと、植物の根っこって、野菜も花もハーブもそうなんだけど、空気が大好きなんですよね。空気があると成長がものすごく促進されてよくなります。ですので、底がざるのようなプランターが最近はありますから、ないしは下の鉢底の穴が多いものを選んでもらったらいいですね。ざるでも当然いいですよ」
●でも、ざるとボウルに土を入れてってことですよね? それでちゃんと育つんですよね?すごいですね。
「ちゃんと育ちます」
●あと、卵パックで野菜作りとも(本には)書いてありましたけれども。
「卵パックってね、園芸的にいうと、ちょっと専門用語なんですけど、セルトレイっていうのがあって、小さな苗を作るキットみたいなのがありましてね。そのセルトレイに卵パックって似ているんですよ。小部屋がたくさんあって、その小部屋に土を入れて、タネをひとつずつ撒いて、(芽が出たら)取り出して植え付けるってやり方なんですけど、まさに卵パックってそんな感じで使えるのでちょうどいいんです」
●土はどんなものを選んで買えばいいですか?
「土はですね、ずばり25リッター入りで600円以上です!」
●25リッターっていうとどういうサイズですか?
「25リッターだとですね、ホームセンターとか園芸店で売っているいちばん大きいサイズの袋ですね。ちょっと女性ではしんどいかな、男性が両手で抱えて持てるぐらいの大きさなんです。これで600円以上がいいと僕は言っているんです。
僕は全国でセミナーをする時に現地で土は調達するんですけど、僕の経験上、25リッターで600円以上の土を使うとまず失敗したことがないです」
●この季節、プランター菜園でお勧めの野菜ってありますか?
「この季節は皆さんが分かるもので馴染みのあるものだと・・・バジルはいいな! あとクウシンサイって分かりますか? 中国料理で炒めもので出てくる空芯菜もいいですね。それからモロヘイヤ、ツルムラサキ。暑さに強い植物を今言ったんですけど、その4つがお勧めです!」
僕の野菜は自動運転!?
※はたさんは奈良市で自給自足の生活をされていますが、そのきっかけは、西宮の実家で阪神淡路大震災を経験したこと。ライフラインが止まる中、未来に命をつなぐ食べ物の大切さに改めて気づき、サラリーマン生活をしながら、自給自足を模索していったそうです。
ところで、現在はどれくらいを自給しているんですか?
「家族5人分のお米と野菜をほぼ自分で作っています」
●畑を借りてるんですか?
「そうです。農家さんから畑を400坪借りて。先ほど田んぼから帰ってきたんですけど、お米を作る面積が300坪で、野菜を作る面積が100坪です!」
●へぇ〜! 今はどんな野菜を育てているんですか?
「今はですね、夏野菜のキュウリ、トマト、ナス、オクラ、シソ、カボチャ、スイカ、サツマイモ・・・言い出したらきりがないですけど、いわゆる夏野菜と言われるものがざっと100坪の中にあります」
●え、何種類くらいになるんですか?
「品種も入れると毎回30〜40種類やと思います(笑)」
●すごい! 苗を植えて水や肥料を与えてとか、日々忙しいですよね?
「そう思われがちなんですけどね。当然、タネとか苗は植えないといけないんですけど、こうやって今ラジオでお話している間も、僕のサツマイモとかトマトは勝手に育っているでしょ。だからある種、自動運転なんですよね。400坪の中で今多分、自動で運転しているんですよ。僕が例えば、お米とか野菜を収穫するまでに、その野菜たちお米たちと関わる時間って全時間にしたらわずかなんですよね。当然(僕が)寝ている間も動いてるわけですよね。
そう考えると、そんなに皆さんが考えるほどでもないんですよ。僕も園芸研究家として働きながら自給自足しているわけで、仕事があるわけですよね。以前はサラリーマンをしながら自給自足をしていましたから。そんなに皆さんが考えているほど大変じゃないし、高いスキルではないですよね。そういった自給的なところって、何万年と人間がやってきたことだから、すごくベーシックなスキルだと思うんですよね」
ありのままに受け入れる
※はたさんは自給自足の生活を続けてきて、いま改めてこんなことを感じているそうです。
「これは僕が自給自足する時にあんまり思わなかったんだけど、食の自立をしたと同時に精神的な自立がなされていってるのかなという感じですね。だからものすごく僕、話し方がスローやと思うんですけど、気持ち的にもすごくスローな感じで、全てを受け入れる。
だから対人関係に関しても、自給自足する前より人の好き嫌いってほとんどなくなったんですよね。あらゆる現象をありのままに受け入れることを、畑は教えてくれるという風に思います」
●この番組を聴いて、自宅で野菜作りをしたいなって思った方にアドバイスをするとしたら。
「僕の本の中に色々アイデアがあって、それで、”えっ! こんな幼稚なことからやるの?”って言われるかも分からないんだけど、その小さなところでも芽が出て、双葉になって、本葉が出てっていう現象は、僕が大きくやっている畑でも同じなんだよね。
だからあんまりスケール感で、ものを判断するんじゃなくて、自分の身の丈に合ったものを、僕の本なり、違う人の本でもいいですよ、ないしはテレビ番組を見て、これいいなと思った、自分の身の丈に合ったものを選んで、まずスタートする。
スタートして失敗しても、それはすべてが失敗なんじゃなくて、自然現象として何か自分の思いとは違ったから失敗してるのであって、それをよく観察すれば、何か収穫できることがある。だから、やめて他の趣味にいっても構わないから、何かひとつ自分に合うものを見つけてやっていただいたらいいかなと思います」
INFORMATION
『ペットボトルからはじめる 水耕栽培とプランター菜園』
特にこれから野菜を自分で作ってみようと思っているかたにお勧めの本。イラストや写真を豊富に使って説明してあるからとても分かりやすいです。初心者にも手軽に作れる野菜も紹介しているので、ぜひこの機会にはたさんの本を参考に野菜作りにチャレンジしてみませんか。お子さんと一緒に夏休みの自由研究のテーマにもいかがでしょうか。内外出版社から絶賛発売中です。
◎内外出版社HP:https://www.naigai-p.co.jp/corporate/
YouTube「はたさんの野菜作りチャンネル」
はたさんはYouTubeで野菜作りの動画を公開中。1分ほどの動画でプランターや鉢などを使って行なう野菜作りを紹介しています。これもわかりやすくてお勧めですよ。
2021/7/25 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サーフィンが生活の一部になっているDef TechのMicroさんです。
Microさんは、1980年生まれ。東京都出身。ハワイ出身のshen(シェン)さんとDef Techを結成。名曲「My Way」を収録したファースト・アルバム『Def Tech』を2005年に発表、250万枚を超える大ヒットとなり、インディーズのセールス記録を塗り替えました。その後もコンスタントにアルバムを発表、去年、結成20周年を迎えています。
Microさんがサーフィンを始めたきっかけは、サーフィン好きなご両親の影響で、幼稚園の頃にはボディボードに立って乗っていたそうです。特にお母さんに見て欲しくて、がんばってサーフィンをやっている少年だったそうですよ。ミュージック・ビデオでも波乗りしているシーンがフィーチャーされていて、プロ級の腕前を披露されていますよね。きょうはそんなMicroさんにサーフィンや海への想いをうかがいます。
☆写真協力:Micro
サーフィンは宇宙旅行!?
※サーフィンのとりこになっているMicroさんにまず、サーフィンの魅力についてお話しいただきました。
「サーフィンの魅力は、こんなに気持ちいい疲れを感じられるスポーツは地球上にただひとつだけだと僕は確信しています! 日焼けもして、皮膚もパンパンに張って、腕とかもパンパンなんですけど、筋肉痛まではいかなくて。なんだけれども頭のてっぺんからつま先までが心地いい疲れで。
あともうひとつ、やっぱり板の上に立てるということはほぼ無重力というか、陸上の6分の1とか7分の1とか、本当に重力のかからないスポーツなので、たった1本のライディングで数秒しか乗ってないかもしれないですけれど、もしかすると宇宙飛行士と同じような体験、水の上に浮いている状態っていうのは宇宙旅行に似ているのかもしれませんね」
●へ〜〜そうなんですか。よく行くサーフスポットっていうのはどちらになるんですか?
「僕は2日以上空いたら伊豆の下田に行きます。で、1日のオフとかだと千葉、湘南、鎌倉方面に波をチェックして行きます」
●ちなみに千葉だと、どの辺りに行かれるんですか?
「まさにオリンピックの会場となっている一宮ですね」
●釣ヶ崎海岸とか?
「そうです! 九十九里からずっと細かくたくさんポイントがあるので、あとは風向きと波のうねりをチェックして・・・」
●どうですか? 千葉の海は。
「僕、母親が千葉で、父が東京なので、東京と千葉のハーフなんです。なので自分の第二の故郷は千葉っていう感じですね。何かほっとします」
●わ〜! 嬉しいです! Microさんはどんな波がお好みなんですか? 場所によって波は違うと思うんですけれど。
「(波が)でか過ぎちゃうと楽しさを超えて恐怖心も、趣味特技とはいえ、本当に怖いっていう思いもあるので、胸、肩、腰ぐらいでグラッシーな、ガラス細工のような、波の面が綺麗で、それでロングライドしていける波だとずっと楽しいなって感じですね。ファンウェーブかなと思います」
●海外も含めて特に気に入っている場所はどちらになりますか?
「僕はバリ、カリフォルニア、ハワイ、この3つですね」
●いいですね〜。どんなところがお好きなんですか?
「毎回なんですけど、ハワイは色んなものを吸収して帰ってきますね。サーフィンのみならず、ファッションもそうですし、情報も早いから、そういう意味では何か自分がすごくたくましくなって、必ず海外に行って帰ってくる時に自分が成長しているのが目に見えて分かるので。ハワイ、バリ、時間軸も変わるし、生活のリズムも逆に海外の方が整いますよね。東京にいるとやっぱり夜が長いですね」
夢と希望の「波乗りジャパン」!
※東京2020オリンピック競技大会の、サーフィン競技の会場が先ほど、Microさんもよく行くとおっしゃっていた千葉の一宮町釣ヶ崎海岸。実はMicroさんは、サーフィンの代表チーム「NAMINORI JAPAN(波乗りジャパン)」には人一倍、強い思い入れがあるんです。そんな波乗りジャパンに期待していることをお聞きしました。
「ここのポイントで育った大原洋人(おおはら・ひろと)選手もここが地元ですし、小っちゃい時からみんな慣れ親しんでというか、仲良くさせてもらっていて、なので嬉しいですよね。
自分がDef techとしてデビューしていて、当時、大原洋人くんは小学生で、最初に海で会った時に”あれっ!? お兄ちゃん、歌ってる人だよね?”とかって言われて、そうそう、そうだよ、洋人くんって返すと、”上手いよ! 歌、上手い、君! ”とかって言われて(笑)、君いくつ? って言ったら、”小5! 上手いよ、Def techいいよ!”とか言われちゃうくらい、そんな子がいま日本が世界に誇る代表なので、ひいきですけど、これは、身内びいきもありますけれど。
そしてやっぱり大野修聖(おおの・まさとし)コーチ、僕の同級生で、彼がこの波乗りジャパンを引っ張っていて、必ずメダルは取れると確信しています。彼とは小学校の時から一緒にサーフィンを続けてきているので、本当の親友が今コーチになったという・・・」
●家族ぐるみで、幼い頃からのお付き合いなんですよね?
「そうですね。僕たちが生まれる前から両親が仲良くて、交流があって。まーくん(大野修聖コーチ)のママも日本で初めてサーフィンした女性で、うちのパパも日本で初めてサーフィンをした、10人くらいいたクルーの中のひとりなんですよ。20歳ぐらいからずっとお互いの家族が仲良くてっていう、そんな親子二世代のサーフィンへのこの想い、夢、希望が詰まったオリンピックです!」
●すごいですね! そんな波乗りジャパンの公式応援ソングをDef techが担当されているんですよね。すごいことですよね!
「念願叶ってです! もう3〜4年前くらいからオリンピックがあるやなしやに関わらず、絶対にあると確信した上でこの曲の構成というか、もしオリンピック(の競技)にサーフィンが決まったら、こんな曲! っていう想いも詰めた曲ですね」
●曲名が「Surf Me To The Ocean」ということですけれども、改めてどんな想いを込めてこの曲をお作りになったんですか?
「やっぱり海に行く時の行き帰りのすごく大事な時間。皆さん車だったり、電車で行くサーファーの方もいらっしゃると思うんですけど、必ずそこには僕ら(サーファーには)音楽が必須で、特に行きの車の中はモチベーションが上がったりリラックスしたりしながらっていう、その海に入るまで、そして海に入ってファーストウェーブをキャッチするまでの気持ち、モチベーションが上がるようにあの曲を作りました。なので、選手ひとりひとりが試合前とかにヘッドホンして、ストレッチしながらとかヨガしながら、大会前に聴いてもらえたらなっていうそんな曲です」
ビーチクリーン&サンゴの移植活動
※海に行くと必ずビーチクリーンをやるそうですね?
「はい、父からも教わってきて、東京サーファーなので、自分たちのローカルポイントがないということもあって、ゴミ袋を車に積んでおいて、行って波乗りする前にビーチクリーンをして、入らせていただきますっていう、ビジターなので、どこでも初めましてという思いで。
で、海から上がったら片手が空いているので、板を持っている反対の手でワンハンド・ビーチクリーン、片手分だけはゴミ拾いをするように。これはプロサーファーの善家尚史(ぜんけ・なおふみ)さんの活動なんですけれども、もう何十年もそのワンハンド・ビーチクリーンを推進してきて、どこの海でも誰かが見てなくても、海上がりに片方の手にいつもゴミを持っていて、その姿に僕はグッと心を打たれて、見よう見まねで実践し続けています」
●海の環境が気になり始めたっていうのはいつ頃からですか?
「沖縄の海に潜って、僕、最初はスキューバのオープンウォーター(ライセンス)を取ったんですけれど、当時27歳、Def techのツアーで沖縄に行ったあとですね。長く沖縄に滞在して潜るようになってから、最初サーフィンしている時はビーチの浜のゴミだけが気になっていたんですけど、潜ってみた時にサンゴたちが死滅して、白化している真っ白なサンゴを見て、これこのまま進行していくとどうなっちゃうんだろうと、ぞっとした記憶が13年前ぐらいですね」
●沖縄でサンゴの養殖に成功した金城浩二さんの活動も、Microさんは応援されていますよね。
「金城博士! もう博士です! ドクター金城! 金城さんとの出会いによってこのサンゴの復活に希望が持てたというか・・いま温暖化で様々な気候変動とか、海面の水位が上がって、ハワイのノースショアとかも数十年後、もしかしたらオーシャンフロントの家とかなくなっちゃうんじゃないかってくらい、いま浜がなくなっているんですね。やっぱりこの10〜20年、海を見てきて、確実に鎌倉もそうですけど、どんどん海面が上がってきているなって実感してます。それに対して絶望だけじゃなくて、人間の力で本当にこの地球をより良くしていけるのかって思っていた時に、金城さんが僕にこの一縷の望みを、希望を与えてくださいましたね。
人間が育てて、人間の手で海に返していく。養殖したサンゴのほうが強くて、海水の温度が上昇しても、それに耐えられるだけのスーパーコーラルっていうめちゃくちゃ強いサンゴたちが金城さんの手によって作られて、いま海に返されている、それが現状、事実ですね」
●金城さんの活動を知って、初めはどんな思いでした?
「最初、話を聞いているだけでは“本当かよ!?”って思ったんですよ。こんな広大な海に5〜6センチぐらいのサンゴを養殖して、果たしてそれがどれだけの可能性があるんだろうと思っていて、ちょっと僕も斜め45度ぐらいから見ていたんですよ。
でも実際に僕も自分で養殖をして、自分の名前を付けたサンゴを植えて、数ヶ月後には大きくなっているんですね。そのサンゴが他の魚たちに食べられないように檻をかけてあげて、また数ヶ月するとサンゴたちがその檻よりもパンパンに大きくなっている・・・そうしたら、自分の育てたサンゴに小っちゃい子魚たちが誕生していたんですね。その時、僕はお金持ちじゃないのでマンションは建てられないけど、海の中に初めて大きなマンションを建てたような気分になったんですね」
●素敵ですね〜!
「そう、そこに本当に小っちゃな、見たことないぐらいの子魚たちが誕生して、親魚もみんなでそのサンゴの周りに生活をしているのを見て、初めて僕、人生でこの地球にいいことした! と思えた瞬間だったんです」
波ニケーション!?
※Microさんは、今年からサーフィン仲間で同級生の「Shu Doso(しゅう・どうそ)」さんと新しいプロジェクト「WST」としての活動も行なっています。「WST」は「ストレート・ストリート」の略だそうですが、このユニットを始めるきっかけは何かあったんですか?
「今までは必ず毎年ハワイやカリフォルニアとか、海外に行ってました。コロナ禍の2年目には(海外どころか)日本から出ることも県外に行くことも、みんなから良しとされない、東京から来ないでくださいって言われるこの2年間、何ができるだろうってことをやっぱり考えました。当たり前に過ぎていく時間、当たり前なんてなかったっていうことも皆さん気づいたと思いますし、僕自身もそうなんですけれど。
そういった時に幼馴染みのshuちゃんに、20〜30代はほとんど会っていなかったんですけれど、ここ5年くらいで急接近、グッと近くなって、人に会えない家族にも会えないっていう中で、ふたりっきりで海に行く機会が増えたんですよね。
去年は週4日ぐらい一緒に海に行き、お昼には帰ってきてお互い仕事をして、僕も制作に入ってとかっていう中で、Shuちゃんが言うんですよ。社会にメッセージを送る方法ってテレビやラジオあるんですけれど、あとは本と音楽ぐらいしかないっておっしゃっていて・・・。
そうかな? と思って、SNSもあるじゃんって言ったら、実際SNSも社会的メッセージを伝えられるんだけど、それは写真だったりするから、やはり言葉で伝えられるものは、音楽と活字にした本なんだって言ってたんですね。確かにいま必要なメッセージ、恋愛ソングもたくさんあるけれど、音楽に詰めるべきメッセージ、歌詞っていうのはあるなっていうそんな話を海の行き帰りで、僕は“波ニケーション”と呼んでいるんですけれど」
●波ニケーション!?
「はい、海に向かう1時間半、海の上で波待ちしている時間、ふたりで会話をし、万般にわたる話をお互いにしながら、やってみようか、1曲作ってみようって言って”Offshore”(1stデジタルシングル)ができたんですね」
●今年の1月から毎月1曲発表されていますよね? それって結構大変なことなんじゃないですか?
「かなり大変です!(笑)」
●ですよね! 曲のアイデアってふたりで持ち寄って作るっていう感じなんですか?
「そうですね。大体ふたりで話し合っています。どんなことをテーマにするか、どんなことをコンセプトに、っていうのは話し合って、WSTに関してはShuちゃんのペンが走るので、膨大な詩が出来上がっていく中で、そこにプロデューサーのNagachoと僕がメロディーを生み出していって。いい言葉にはもうすでにいいメロディーが乗っかっているんですよね。
彫刻じゃないんですけど、(素材の)木が最初からそういう形をしていないじゃないですか。ただでもその物質を見て、その字を見た時にその中にメロディーが眠っているので、あとは削る作業、彫刻の感じに似ていると思います」
●やっぱりサーフィンや海からヒントをもらうことはたくさんあるわけですよね。
「音楽の制作、歌とサーフィンはめちゃくちゃ似ていると思います」
●えっ!? どういうところが似ているんですか?
「波乗りって立っているだけじゃなくて、やっぱりアップス&ダウンという上下の運動と、シークエンスという流れなので、波に乗っていくっていうのは、人生もそうですけど、やっぱり辛い時もいい時もうまく乗りこなしていく。
歌でいうと、ギターの上に自分の歌をどう気持ちよくライディングさせていくか。途切れないで、最初だけじゃなく真ん中も終わりもきちっと、いくつビブラートがかかるのかとかも含めてですけど。それを頭でやっていると楽しくなくて(アイデアが)出てこないので、やっぱり心でキャッチしたものを表現していく。意外にメンタルスポーツですね、音楽もサーフィンもしかり。すごく似ていると思います」
海は僕のママ
※これからもずーっとサーフィンを続けていくと思うんですが、最後にMicroさんにとって「海」とは?
「海とはやっぱり怖いし楽しいし、海とは母親みたいなものですかね。教えてくれるものが大きいですし、そこからやっぱり生まれてきたんだなって思いますし、僕は陸上で生まれてきたなって本当思わなくて、カッパのようにシャワーもお風呂も水にずっと浸かっていたいなって(笑)。身体も楽ですし、陸上に上がってこなきゃよかったのにって思うぐらい、海に帰りたいっていう症状と本能がそう呼んでるなって思うんです。
海によって人間の世界の中で、この傲慢な自分も、人を見下したり見上げたり、本当は人間以上人間以下の人もいないのに、何かすごい人に出会うと、わーすごい。今度はそうじゃないなって思うと見下すような・・・そういうものってサーフィンと対峙していくと本当に自分があまりにも無力でちっぽけで、波がでかいとすぐにギブアップしちゃうし・・・。
そういう自分の傲慢さでサーフィンの怪我にも繋がるし、やっぱり謙虚でいることも海から教わりましたし、ちゃんと礼節を重んじながら、ふざけないで真剣に楽しむ、真剣に遊ぶっていうことも海から教わって。東京都心に帰ってきて自分の生活に戻ってもそれって活かされているので、人間の世界でも。なので本当に全て教えてくれているのは海、海は僕のママです」
INFORMATION
今年の1月から毎月リリースしている新プロジェクトWSTのデジタル・シングル、きょうは今月発表した「RUN」をお届けしましたが、ほかのシングルもぜひ聴いてくださいね。今年12月まで毎月1曲ずつリリースするということですから、今後のデジタル・シングルも楽しみです!
WST初の有観客ワンマンライヴ「WST Straight Street LIVE 2021」が8月21日(土)に、渋谷eplus LIVING ROOM CAFE & DININGで開催される予定なんですが、全席ソールドアウトだそうですよ。やはり人気がありますよね。
今後もDef Tech、そしてWSTの活動に目が離せません。
新作のリリースやライヴ情報についてはDef Tech、そしてWST、それぞれのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「Def Tech」HP:http://deftech.jp/
◎「WST」HP:https://www.wst-straight-street.com/
2021/7/18 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、沖縄大学の学長で、植物や生物などの精密なイラストでも知られる“ゲッチョ先生”こと「盛口 満(もりぐち・みつる)」さんです。
盛口さんは、1962年生まれ。大学卒業後、埼玉の中学・高校の教諭を経て、2000年に沖縄に移住、現在は沖縄大学の学長としての仕事のかたわら、フリーのライター、イラストレーターとしても活躍、自然や植物、生物などに関する本を数多く出版されています。盛口さんの出身地は実は、千葉県館山で、館山市から「館山ふるさと大使」に任命されています。
きょうはそんな「盛口」さんに館山や沖縄の自然、そして先頃出された本『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』のお話などうかがいます。
☆写真協力:盛口 満
原点は千葉県館山の貝殻
※盛口さんは、生まれも育ちも千葉県館山、高校卒業まで館山で暮らしていたそうです。いったいどんな少年だったんでしょうね。
「あんまり子供の時の記憶はないんですけども、やっぱり気が付いたら自然の中で、友達とじゃなくても、ひとりでも歩き回ったり、生き物を見ているのが好きだったような覚えがありますね。館山だと家のすぐそばから小っちゃな山はあるし、少し歩けば海もあるしで、今考えれば贅沢な環境だったなとは思いますけどね」
●どんなことにいちばん興味があったんですか?
「最初の記憶は覚えていないんですが、生き物に興味を持ったなと自覚したのは、多分小学校2年生くらいの時に海に行って貝殻を拾った、ある日突然、貝殻がたくさん落ちていることに気が付いたっていうことだと思います。で、むやみやたらに貝を拾って帰っては、そのうち親にねだって図鑑を買ってもらって名前を調べ始める、そういうことから生き物との繋がりがすごく濃くなっていった気がします」
●へ〜! 盛口さんの原点は貝殻だったんですね。千葉大学理学部の生物学科で学ばれていますけれども、ご専門は?
「私は大変うかつというか、あんまりきちんとものを考えられないのかもしれませんが、大学に入る時に生き物を勉強したいとは思ったんです。動物、小っちゃな生き物、虫とか貝とかがいいなと思って大学に行ったら、うちは植物しかないよって言われて、しょうがないなと思って、ただ野外で調べるほうが好きだったので、外で植物の生き様を調べる研究室に入れてくださいって言って、植物生態学っていう勉強をしたんですけど」
●どんな植物を研究されていたんですか?
「うちの先生が森の研究者ではあったんですが、調べる対象を自分で選んでいいよって言われたので、やっぱり地元の館山、沖ノ島っていう小っちゃな離れ小島があって、歩いて渡れるんですが、そこの森をひとりで全部、木の位置とか種類とか太さとかそういうのを測って、この森の中で木はお互いにどんな関係で生きているのかなっていうのを自分なりに考える、そういう研究をやっていました」
●盛口さんって”ゲッチョ先生”って呼ばれていますけれども、その愛称の由来っていうのは?
「はい(笑)、これもやっぱり生まれ故郷の館山なんですけれども、千葉大学で同じサークルに文学部の学生さんがいて、その友達が方言調査に館山に行くわけですよ。で、おじいさんに色んな生き物の絵を見せて“おじい、これ何て言うの?”っていう風に聞くわけですよね。そうすると、“これはカマゲッチョだっぺ”とかって、おじいが答えるわけじゃないですか。
カマキリの絵を見せた時にそのおじいさんが“カマゲッチョだっぺ”って答えて、また何枚か絵を見せているうちにトカゲを見せた時に、“カマゲッチョだっぺ”っておじいさんが言って、その友達が“おじいさん、さっきこっちもカマゲッチョって言ってたよ”って言ったら、おじいさんが“あ、それもそうだな〜”って言って、おじいさん全く気にしなかった(笑)。
実はカマキリとトカゲって面白い関係があって、地域によって名前が逆転したりよく似ていたり、館山はたまたま一緒の名前が付いていたんですね。僕もそれ知らなかったし、僕の世代になるとその言葉を知っているやつもいなかったんですけども、それがサークルで話題になって、お前の生まれた館山って変なところっていうので、カマゲッチョってあだ名を付けられてしまい・・・
で、僕が勤めた学校は先生をなんとか先生って堅苦しく呼ばないっていう学校だったんですね。でも子供たちに勝手にあだ名を付けさせると、とんでもないことになるので、僕は大学でカマゲッチョって呼ばれていたよって言ったら定着したんですが、長いので切られて下半分だけになりました」
●それでゲッチョ先生だったんですね(笑)。
「それが呼びやすいし、館山という自分の故郷も引きずっていていいなと思って未だに使っています」
●私も館山は大好きで、家族でよく夏は遊びに行くんですけれども、盛口さんから見て千葉県館山の魅力っていうのは何でしょうか?
「実は館山って黒潮の端っこなんですよ。そこからまた黒潮が伊豆諸島のほうに流れていくんですね。だから南から流れてきたものが色々館山に引っかかって、そこから先に行くと半島を回って九十九里とかに行くと、微かにまだ南のものは流れ着きますけれども、やっぱりそういう意味でいうと南の尻尾なんですね。で、僕は貝殻を拾っていて、南のもののこんなものまで拾えるんだっていうのが館山はあって、その憧れが今沖縄に住み着く原動力になっているのかなと思っています」
宮古島は不思議の島!?
※小さい頃から南への憧れがあって20年ほど前に沖縄に移住した盛口さん、沖縄の自然や文化に関する本も出していらっしゃいます。そんな盛口さんの新しい本が『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』。この本は沖縄に住んでいる親戚のおじさんを訪ねて、東京から高校生と中学生の姪っ子、甥っ子がやってきて、一緒に沖縄を巡りながら、沖縄の自然や生き物を学ぶという展開になっています。
●盛口さん、このストーリー展開にはどんな狙いがあったんですか?
「ひとつは僕が学校の教員を長くやっていたので、学生とか生徒ってそんな生き物に興味を持っていないんですけども、でも実際にこういうのがいるよって言うと面白がってくれる。だから本でも、そんなに生き物に興味がないんだけど、たまたま親戚のおじさんがいるから来たっていうシュチュエーションは、僕が普段接している学生たちとか生徒たちとの感覚とあんまり変わらないです。
ある種自分にとってはリアルな感覚で書けるなっていうのと、あともうひとつは沖縄は本当に生き物が多様なんで、僕もまだ全然全部見きれていないので、それを偉そうに全部書けないので、ある種切り取った形でリアルにするとしたら、誰かが来て案内するってシュチュエーションだったら、自分の知っているものをあんまり無理せずに出せるかなっていう風に思った次第です。
本に登場してくるのは一種の架空の子供たちなんですが、実際うちの姉に姪っ子甥っ子がいて、ある日会った時に“おじさんって仕事とかしているの?”っていう風に言われて、あ、そういう風に見られているんだって(笑)、このキャラクターはどこかで使おうとは思っていました。そういうのもあります」
●実体験のような話でもあるんですね(笑)。
「実際、子供たちと一緒じゃないですけど、本に出てくる行程は全部ひとりで実際に歩いて、そこで見た生き物を入れているので、そういう意味で言っても、なるべくリアルな感じにしようかなとは思っていました」
●宮古島も好きで何度か行ったんですけれども、こんな歴史があったんだとか、こういう生き物がいるんだっていう新しい発見があってすごく面白かったです! そもそも不思議の島っていう風に宮古島のことを紹介されていましたよね?
「僕自身もその沖縄に通うようになって、いちばん最初は西表っていうところだったんですけど、とにかくヤマネコもいるしジャングルが残っている大自然の島。その次に沖縄本島に住み着くようになって、やんばるもいいじゃんとか思ったんですけど、宮古島ってそういう意味で言うと平たくて森がないんですよね。海に潜る人は“宮古ブルー、最高”とか言って行くわけですけど、僕らからしたら、生き物はいないのかなと思っていたんですが、最近徐々に宮古島には宮古島にしかいない生き物が色々いるっていうのが分かってきました。
本の中にもミヤコカナヘビとかですね、ミヤコヒキガエルっていう宮古にしかいない独自の生き物っていう話を紹介していますけれど、本当にここ最近ですね、宮古で新種のゴキブリが見つかって、これが超珍しいので、すぐ“種の保存法”で即指定されて、誰も捕っちゃいけませんみたいな、そんなものまで新たに見つかるような不思議なところが宮古には残っているということですね」
沖縄本島って面白い!
※ひとくちに沖縄といっても、島によってそれぞれの特徴があると思うんですが、盛口さんが、特にこの島の自然は面白いと思ったのはどこですか?
「いちばん最初、僕が本土に住んでいた時は西表オンリーだったんですよ。もうとにかく暇があれば西表に行って西表すごい! って思っていたんだけれども、西表では流石に仕事がないので沖縄本島に移り住んで、それから20年経ちますけれど、だんだん沖縄本島って面白いなっていう感覚がアップしていますね。
本当は、色んな島に1年ずつくらい住みたいなって気持ちはあるんですけど、それは難しいし、でも沖縄本島ってこんなに人が住んでいるのにまだまだ自然がいっぱいあるし、分かっていないこともあるんで、沖縄本島だけでも見きれないっていうか、十分だなっていう感じですね」
●観光地というようなところもたくさんある中で、自然もまだまだ残っているってすごいですよね。沖縄でしか見ることができない固有種っていうのも多いと思うんですけれども、代表的な固有種を挙げるとしたら何かございますか?
「これ困ってしまうというか、あんまり意識してないというか(笑)。でも山に行くと沖縄本島だとヤンバルクイナの声が聴こえたりすると、やっぱりこれ沖縄だよなっていう思いをよくします。あとリュウキュウヤマガメっていう陸生のカメ、川じゃなくて山に住んでいるカメがいて、そんなに珍しいわけではないんですけど、見る度にやっぱりこういう風に山にカメがいるって、沖縄は面白いよな〜って思ったりするんですね。
ほかにも色々いて、それこそ自然探検の本に紹介させていただきましたけれど、本当にキリがないぐらい、虫とかでもまだまだ沖縄固有とか、固有ではないけど、沖縄に来ないといないとか見られない虫とかそういうのもたくさんいますね。この間もたまたま森で今まであんまり気にしていないハチがいるなと思って捕まえて、知り合いの先生に送ったら、まだこれ2匹目だよって言われて、そんな風に当たり前にそんなことがあるのはやっぱりすごいなと思ったりしました」
●新たな発見があるわけですね! それは何というハチだったんですか?
「名前は付いていないって言ってました」
●ええっ!? じゃあもうまさに新種なんですね!?
「前に見つかって誰かが標本を持っているんで、存在というのは知られていたんだけれども、きちんと研究が進むほど何匹も見つかっているものではないって言っていました」
●どんなハチなんですか?
「ハチはハチなんですけど、説明が難しいというか・・・まぁ尻尾が長くて、木が倒れたあとに色んな虫が住みつきますよね。その木の中で木材を食べている虫に寄生するために尻尾が長いオナガバチっていうハチの仲間なんですけど」
ワクワク ドキドキ 冬虫夏草
※ところで、盛口さんがよく行くフィールドはどこなんですか?
「私がやっぱりいちばん行くのは、やんばると言われている沖縄の北半分のほうですね、そこの森に行きます」
●やんばるの森っていうのはどんな森なんですか?
「そうですね。なかなか一言では言い難いところになるんですけど、ひとつは沖縄本島のやんばるの特徴は山のてっぺんだけが残っているって感じですよね。例えば奄美大島とか、ほかの南の島もありますけれど、もうちょっと平たいんですね。だから川が流れていて山の中でも平たい部分があってっていうのがあるんですが、沖縄本島はもうちょっと痩せている感じで、山のてっぺんだけちょっと海から出ている、だから割と険しいんです。
そういう意味で海岸線に沿ってしか集落がなくって、ちょっと入ると森になっちゃうと。で、歩けるところもそう多くないんです。歩こうと思えば歩けますけど、何せ斜面なんで道がなかったりするんですね。南の島なので冬でも葉っぱが落ちない。日本でいちばん大きなドングリを付けるオキナワウラジロガシという木も生えていたりします。
やんばるがもうひとつ面白いのは、沖縄の島々、いちばん北にあるのは屋久島のほうから、いちばん南のほうは与那国島っていうところまで点々と島があって、昔は陸地と繋がっていたから色んな動物が入ってきているんですけど、ちょうど沖縄本島は真ん中にあるんですね。
そうすると本土からも遠いし、台湾からも遠くて、歴史の中ではかなり昔に両方から切り離されてしまって、大昔に入ってきた生き物が細々と生き残っていたり、独自の進化を遂げていると。ちょっと西表とか屋久島に比べれば地味な感じもするんですが、実は結構タイムカプセルを掘り起こしている感じなんです。そういう意味で言ってヤンバルクイナにしろヤマガメにしろ固有の生き物が見られるっていう、そういう森なんですね」
●フィールドワークしていてどんな瞬間がワクワクしますか?
「沖縄は梅雨が終わってしまったんですけれども、春から梅雨にかけてがいちばんワクワクするシーズンで、梅雨が終わるとがっかりしてしまうという感じ、また1年お預けだなと思うんですけど、やっぱり湿気が多いほうが生き物はとても豊かなんですね。
いちばんは雨が多い時期に出てくる虫に取り付く冬虫夏草っていうキノコがあるんですが、これもまだまだ知られていなくて、毎年、これ初めて見るとかこれ名前ついているのかしら? っていうのが見つかったりして、そういうのを見るとひょっとしてこれは世界で初めて僕が見ている生き物ではないかと、ワクワクドキドキが止まらないですね」
●すごいことですよね〜! 今年も何かそういった新しい発見はあったんですか?
「はい。今年はその冬虫夏草の仲間で、セミの成虫からニョキニョキとキノコが生えているのを沖縄本島で初めて見て、西表では見つかったことはあるんですけれども、沖縄本島にあるかなと思っていたら、いくつか見つけることができて、ちょっと森の中でひとり走り回っておりました(笑)」
生き物の形、知らない世界
※新しい本でもそうなんですが、盛口さんが描くイラストは昆虫でも魚でも植物でも、とても精密で美しい仕上がりになっています。イラストは実物を見ながら描くんですか?
「基本的には見たまんまということなんですけど、できれば実物で、虫とかは実物を見て描いているんですが、カエルとかトカゲは逃げちゃうので、これは写真を撮って写真から描いています」
●細かくてびっくりしました。すごい! と思っちゃいました。イラストを描く時に心掛けていることはありますか?
「実は僕は芸術系は一切習ったことがないし、本当にそういう意味で言うと器用ではないのでヘタクソなんですけども」
●いやいやいや!
「いや、下手だから省略ができなくて、上手い人だともっとデフォルメしてすごく生き生きと描けるんですけど、僕は全部ちゃんと描かないとそれっぽく見えないので、すごく面倒臭いと思いながら、自分ではでもしょうがないですね(笑)。で、生き物の色んな形の面白さにやっぱり自分が惹かれているところがあるので、それが伝わればいいなっていうのと、もうひとつは今写真が発達していて僕も写真を撮りますけれども、絵も面白いんだよっていうのもどこかで伝えたいことではありますね」
●そもそもイラスト描いてみようって思われるようになったのは、何かきっかけがあったんですか?
「3つあるんですけど、ひとつは子供の時から生き物とは別に絵を描くのが好きでした、漫画の模写みたいなのですけど。もうひとつは昔はデジカメがなかったのでカメラが高くて、あと扱いがすごく面倒くさかったんですね。全然分からない、僕、機械音痴なので写真が撮れなかったっていうのがひとつ。
で、何とか自分で生き物のことを記録したいなとは思っていて、そうすると写真がダメだと絵を描かざるを得ない。たまたま好きだったからそれが全部絡まって生き物の絵を描くようになったっていうことではあります」
●写真でパッと撮るよりも絵で描くほうがすごく観察力が高まりそうですよね。
「やっぱり描くと、描いたものっていう漠然としたイメージで残っています。写真だとやっぱり写真を撮った! って安心してしまって覚えていなかったりするので」
●小さいお子さんとかも観察しながら描いてみるっていうのはいいかもしれませんね。
「そうですね。時々小学生の子からファンレターみたいなのをもらったりするんですけど、やっぱり好きな子は小学校2年生でもよく見て描いていたりしますもんね」
●最後にこの新しい本『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』を通して読者の皆さんにいちばん伝えたいことは何ですか?
「そうですね。沖縄っていうとたくさんの魅力があるし、皆さん色んな目的で来られていると思うんですが、その中に自然というものの素晴らしさもあるんだよっていうのを伝えたくて、自分の知らない見方とかですね、自分の知らない世界が、自分が出かける場所にもっとあるんだってことをまず知っていただけたら・・・皆さんが自然にどっぷり浸かっていただかなくてもいいとは思うんですが、そういう部分もあるんだよっていうのを伝えたくて書かせてもらったという本です」
INFORMATION
『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』
ゲッチョ先生の案内で自然豊かな、生き物の宝庫沖縄を探検しましょう。沖縄本島の北部にある「やんばるの森」や、街中で見られる生き物ほか、宮古島や石垣島、西表島や与那国島の、個性的な自然が精密で美しいイラストとともに紹介されています。岩波ジュニア新書シリーズの一冊として絶賛発売中です。詳しくは「岩波書店」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「岩波書店」のオフィシャルサイトHP:https://www.iwanami.co.jp/book/b583373.html
◎ゲッチョ先生の公式サイト:http://kamage.web.fc2.com/
◎ゲッチョのコラム:https://blog.goo.ne.jp/kamage-nomori
2021/7/11 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、公益財団法人「日本自然保護協会」NACS-J(ナックスジェー)の「志村智子(しむら・ともこ)」さんです。
1951年から日本の自然を守るための活動をしている、環境保護団体の草分け的な存在「日本自然保護協会」はこれまでにも重要な役割を果たしてきました。この団体がなければ、日本の自然はもっとひどい状態になっていたかもしれないと言われています。
そんな「日本自然保護協会」NACS-Jがいま力を入れているキャンペーンが、豊かな日本の砂浜を守るための「全国砂浜ムーブメント」。いったいどんな活動なのか、このあと志村さんにじっくりお話をうかがいます。
☆写真協力:日本自然保護協会
砂浜は危機的な状況!
※それでは早速、志村さんにお話をうかがっていきましょう。「日本自然保護協会」では現在「全国砂浜ムーブメント」というキャンペーンを行なっていますが、これはどんな活動なんですか?
「日本自然保護協会はその名前の通り、日本の自然を守る活動をやっているんですけど、ちなみに今年で70周年になるんです!」
●おお〜!
「今までは比較的、森とか山とか里山とか、陸上の活動が中心だったんですね。ただ本当に世界的に海の自然保護っていうのは遅れているので、NACS-Jも力を入れてやっていこうということで、砂浜ムーブメント自体は3年前から開始しました」
●砂浜ってそんなに危機的な状況なんですか?
「はい、そうなんです。海自体が本当に今、世界的に早く保護しなければいけない状況っていう風に言われているんです。その中でも砂浜は日本だけではなくて、世界的に危機だと言われている環境なんです」
●何がいちばん問題なんですか?
「最近、プラスチックゴミがたくさん漂着しているっていうお話は聞かれたことがあると思うんですけど。プラスチックはもちろんなんですけれど、実はもうひとつ、砂浜自体が小さくなっている、痩せていくっていうのが大きな問題になっています」
●海岸自体も減ってきてしまっているっていうこともあるんですよね?
「そうなんです。日本って海岸はすごく長くて、実は世界で6番目の長さがあるんですね。陸地はとっても狭いんですけれど、日本の海岸線はとっても長くて、その海岸線っていうのは、私は日本の財産だと思うんですね。実はそれを結構、改変してきてしまっています。日本全体では約半分は人工的な海岸になってしまっているっていう風に言われています」
●自然の海岸ではなくて、人工のコンクリートの海岸っていうことですか?
「そうですね。いちばん改変されているのが干潟とか砂浜なんですね。遠浅の干潟って埋め立てられてなくなったところがとても多いんです。砂浜も同じように遠浅なので色んな改変がしやすい。あとは波を被ってしまうので護岸工事をされて、陸と海の間にコンクリートの境界線ができてしまっているっていうところが増えています」
●どうしてどんどん自然の海岸って少なくなってしまうんですか?
「ひとつは陸地が狭かったので、遠浅のところは埋め立てやすいから、これは便利だって思って埋め立ててしまったっていうのもあるんですね。あとは砂浜は海のすぐ近くまで、例えば道路を作ったり、建物を作ったりすると、そこに波が被ったり削られたりすると大変なので、道路や町を守るために護岸を作って、砂浜のほうを潰してきたっていうことがあります。その結果、砂浜が減って波の力を弱める力が減ってしまったりして、さらに大きな堤防を作ったりっていうような悪循環になってしまっているというところが結構あるんですね」
全国砂浜ムーブメント、3つの取り組み
※「全国砂浜ムーブメント」の具体的な内容を教えてください。
「はい、砂浜って私たち、とても馴染みのある景色だと思うんですけれど、じゃあ実際にどんな生き物がいるんだろうとか、どんな仕組みを持っている自然なんだろうって、意外にご存知じゃない方が多くいらっしゃるんですね。
なので、1つは砂浜ノートっていうのを作りました。砂浜のことをもっと知ってもらおうということで、砂浜のことを紹介した冊子を作ったんですね。これをたくさんの子供たちに届けたいというのが1つ目のアクションです。
2つ目のアクションは、砂浜の生き物を調べようっていう取り組みなんですね。砂浜のアプリを使って、砂浜に行って生き物の写真を撮って送っていただくっていうものなんです。砂浜の自然のことはなかなか知られていないので、そうやって全国から砂浜の生き物の情報を集めていただくっていうのが、砂浜を守る第一歩としてとても重要なんですね。
3つ目のアクションが、砂浜に押し寄せてくる海ゴミを減らそうというものです。これもやはりアプリを使って、どこでゴミを拾ったよっていうのをご報告いただくっていう、その3つのアクションからなっています」
●アプリを使うっていうのはゲーム感覚で取り組めて、お子さんたちも楽しめそうですね!
「特に今コロナで、みんなで集まって、例えば砂浜の生き物を探そうとか、みんなでゴミを拾おうっていうのはなかなかやりづらいと思うんですね。なんですけど、活動がひとりじゃなくて全国みんなでやっているっていうのを、アプリを使って繋がるっていうのは、とっても今の時期にやりやすいものかなと思います」
●砂浜ノートは具体的にどんな内容になっているんですか?
「砂浜を楽しもう! っていうところから始まって、砂浜でこんなことをすると面白いよっていう、例えば砂でお城を作ってみようっていうのもあるし、砂に隠れてしまったカニを掘るにはどうしたらいい? なんていうものも紹介しています。あとは砂浜でビーチコーミングをしませんかっていうお誘いをしているんですね。ビーチコーミングっていうのは、ビーチは砂浜ですよね、コーミングっていうのはコーム、くしのことを言うんですけど、砂浜をくしですくように色んな探しものをする、砂浜の宝探しみたいなことを言います。
そうすると実は貝殻とか色んな面白い貝が落ちていたりとか、あとは人工物、例えばビーチグラスであったり陶器の欠片とか、そんな色んな面白い宝物も見つかりますよ、砂浜をそうやって歩きませんかっていうようなことも紹介しています。それ以外にも植物や貝殻のミニ図鑑、あとは砂つぶそのものを見てみようとか、砂浜をどうやったら楽しめるかっていうのをご紹介している冊子です」
●ここまで砂浜に焦点を当てたものってなかなかないですよね。
「砂浜を知ってほしい、砂浜を守りたいって言っても、相手を知らないと守れないじゃないですか。なんだけど、今例えば本屋さんに行っても、森の本とか雑木林の本とかお花の本とかはたくさんあると思うんですけれど、海のコーナーって結構ちょっとなんですね。
その中でさらに砂浜のことを紹介している本って、本当にごく僅かしかないんです。で、自然保護協会としては本を作ろうか、売ろうかって思ったんですけど、今の砂浜の現状を考えると、売っていたら間に合わない、お金を出してまで手に取ってみようかなって思う人に届けているのだと間に合わないので、自分たちで作ってしまおうってことで冊子を作ったんです。
最初の年、一昨年に作った5千部はほとんどあっという間になくなってしまって、昨年これをもっとたくさんの子供たち、5万人の子供に届けたいってことで、クラウドファンディングで皆さんに協力をお願いして、それが無事達成できたんです。それを今お配りしているところです」
*編集部注:「日本自然保護協会」は千葉県内のイオンモールともコラボして、幕張、木更津、銚子で、貝殻でリースを作るワークショップなどを開催、大変好評だったそうですよ。そしてお話にもあったアプリは「ピリカ」と「バイオーム」のふたつ。
「ピリカ」はゴミ拾いアプリで、一緒にやっている仲間と交流できたり、お互いに応援のメッセージを送れたりするそうです。そして「バイオーム」は生き物コレクションアプリで、砂浜で生き物を見つけたら、写真を撮って投稿すると、AIがどんな生き物か判定してくれるそうですよ。
詳しくは「全国砂浜ムーブメント2021」のサイトをチェック!
https://www.nacsj.or.jp/sunahama_movement/
九十九里浜の謎!?
※ところでそもそも砂浜って、どうやってできるんですか?
「面白いですよね。砂浜ってそこから砂が湧くわけでも、勝手に増えてくるわけでもないですよね。千葉県の九十九里浜にはとっても大きい砂浜がありますよね。あそこは結構、特徴的な砂浜のひとつなんですけれど、あまり大きな川が流れ込んでいないんですね。ほかの地域だと大きな川が山から砂を運んできているところっていうのが多いんです。
山の中から雨や風で削られた砂が川で運ばれてきて浜にやってくる。そこで砂浜ができるっていうのができ方のひとつなんですけれど、大きな川が流れ込んでいない、千葉県の九十九里浜は実は、北と南の崖を削った砂が溜まってできている砂浜なんです。そんな風に砂浜ってその浜ごとによって、どこから砂がやってきたかとかによって全然個性が違うんですね。だから砂の色がちょっと白っぽかったり黒っぽかったり、そういう個性があるのは砂の成り立ちに関係しています」
●いろいろ見比べてみるのもいいかもしれないですね。
「なんですけど、例えば九十九里浜は崖が砂浜を作っているっていうのは分かってはいたんですけれど、崖が削られてしまうとその上の住宅とか施設の、もしかしたら足元が崩れてしまうかもしれないっていうので、崖が削れないように、下に直接、波風が当たらないようにブロックを並べたんですね。そのおかげで崖が減るスピードっていうのは減ったんですけれど、そうしたら砂浜が痩せてきちゃったんですね。要するに砂の供給源が減ってしまったことで、波でさらわれていく需要と供給が合わなくなってしまって砂が減っている、そんなところもあります。
ほかの地域では山の上から運ばれてくる砂がダムで塞き止められたり、途中で砂を取られてしまったりいうので、海にやってくる砂が減ってしまったりっていうこともあります。あとは砂ってそこにずっと居続けるわけではなくて、波で沖に持っていかれたりしますよね。台風で一時的にさらわれていくっていうこともあるんですけれど、結構海の中にまだ残っていて、だんだん砂が戻ってくるっていうこともあるんですね。
それと同じように大きな砂浜だと海流に乗って、どんどんゆっくり運ばれてきて、隣の湾に運ばれたりとか、隣の浜に少しずつ運ばれていくっていう動きがあるんですけれど、その間に港を作ったり突堤を作ったりすると、隣の浜に砂が行かなくなったりとかっていうこともあるんですね。そんな風に砂がどこからやってきているのか、そういうことをだんだん私たちも分かってきて、これで砂浜が痩せてきてしまったんだなっていうのが分かるようになってきました。
そういうのは、最近はGoogleマップとかインターネットで地図や航空写真が簡単に見られるようになったので、そういうのを見ると、砂がどこで止まっているかなっていうのが結構簡単に分かるようになってきました。
実は砂浜のいちばんの大きな特徴は“動く自然”だっていうことなんですね。もちろん森とか草原とかも動きはあるんですけれど、砂浜ってとても動きの激しい自然なんですね。1日の間に干満もあるし、季節的な変動もあるしっていうので、常に動き続けているのが砂浜の自然なんですね。
なので、さっき自然の海岸っていうのお話があったんですけれど、コンクリートブロックを入れるっていうのが、人工物があるから自然じゃないっていう見方もあるんですけれど、その自然の動きが“どのくらい生きている自然なのか”っていうのが、ひとつ見るポイントなのかなっていう風に思います」
約20億本のペットボトルが行方不明!
※志村さんからプラスチック・ゴミが砂浜にたくさん流れ着いているというお話がありましたね。日本は家庭から出るゴミは回収して焼却などされて、ちゃんと処理されていると思うんですが、それでも海洋プラスチックゴミが増えているのは、どうしてなんでしょう?
「海のゴミはみんな海外から流れてきたものっていう風に思っていらっしゃる方も多いんですね。確かに外国のゴミっていうのも相当日本に流れ着いています。そうなんですけど、例えば千葉県っていうのは、太平洋側と東京湾側があるじゃないですか。東京湾みたいな深い湾の場合、湾の奥まで外洋のゴミが入ってくることってそんなにないんです。なんだけど、東京湾の奥のほうに行くとそれでもゴミがいっぱい溜まっているんですね。実は私たちの暮らしの中から海に流れ着いているゴミは相当数あるんです。
日本は容器包装プラスチック、色んな食べ物とか色んなものを買う時、大抵プラスチックに覆われているじゃないですか。ああいう容器包装プラスチックの、ひとり当たりの使用量がアメリカに次いで世界で2番目に多いんですね。とってもたくさんのプラスチックを日本人は使っているんです。でも一生懸命回収はしていますよね。日本は、ペットボトルの9割は回収してリサイクルしているんです。世界でトップレベルのすごく優秀な回収リサイクルの国なんです。
ただし、日本のペットボトルの使用量は年間で230億本って言われているんですね。その9割を回収しても、1割の行方不明があるとすると、それだけで20億本以上がどこかに行っているんですね。
自分はゴミ箱に入れたんだけれど風に飛ばされてとか、うっかりとか、私たちもそんなことはしないようにしようと思っても、ビニール袋が風で飛んで行っちゃったとか、ポケットに入れておいたはずなのになくなっているっていうことがあると思うんです。
最近はマスクも結構、道に落ちているのを見かけたりするんですけれど、そういうようなうっかりなものもたくさんあるんです。そういうものが回収しきれないで、私たちの手元から逃げ出しちゃっているゴミっていうのも相当数あるんです。なので、回収する、リサイクルする、拾うっていうのもとっても大事なんですけれど、元々の使う量をもうちょっと減らす、世界で2番目よりは、もうちょっと減らしたほうがいいんじゃないかなという風に思っています。
砂浜に流れ着いている海ゴミの量っていうのは、海ゴミ全体の中で1割、もしくは2割程度じゃないかっていう風に言われているんですね。それ以上の量が海の中や沿岸に流れ出してしまっているっていう風に言われています。海の中だけではなくて本当に今、色んなところの大気中からも、微小なプラスチックが見つかっているんですね。そういうことになってしまっているのは量がたくさんあるっていうのはもちろんなんですけれど、プラスチックって細かくなってもプラスチックなんですよ。
人工的に作られたとても安定した物質なので、細かくなってもなかなか分解されないんですね。私たちの周りにある落ち葉や木の枝とか、動物の死骸っていうのはだんだん細かくなって最終的には菌類が分解してくれて無機物になって、また次の生き物がそれを肥料にしたり栄養にしたりして循環しているんですけれど、プラスチックっていうのは生物が分解できない構造を持っているんですね。
バイオプラスチックの研究とかもまだ進んでいるんですけれど、私たちはこの半世紀くらいでプラスチックの使用量がものすごく増えたんですけれど、最後どういう風にしたら分解するとか、ちゃんと循環するかっていうことを知らないまま、実は使い続けているのが今の状況なんです」
砂浜ノートを持って海に行こう!
※最後に長年、自然保護の活動に携わってこられて、いまどんなことを感じていますか?
「海の自然保護ってすごく遅れているっていう風に申し上げたんですけれど、本当に陸の自然に比べて海の自然は、半世紀とか30年とかそのくらいは軽く遅れている感じがします。なんだけど、日本の自然って、日本地図を思い浮かべてくださいって言った時に、大抵の方は陸地しか多分思い浮かばないと思うんですね。
その周りに海があると思う方、海のことまで思い浮かべて日本地図を思い浮かべてくださる方って、なかなか少ないかなって思いますね。でも本当に海と一体になって日本の自然が成り立っているので、海も含めて陸の自然も思い浮かべてくれる人が増えていくといいなっていう風に思っています。
あと、どういう風に自然を見るかっていうのは、やっぱり時代によって私たちの色んな理解、科学技術も進んできて、理解がどんどん進んできていると思うんですね。壊すほうの技術と言ったら言い過ぎかもしれないですけれど、自然を利用する技術も進んでいるんですね。それと同じように守る技術も進んでいかないと、気が付いたらそのバランスが崩れていたっていうことになると思うんですね。
本当にこの20〜30年だけ見てみても、例えば白神山地は今世界遺産になっているじゃないですか。日本自然保護協会もブナの森を守るために取り組んでいたんですけれど、30年くらい前、世界遺産になる前は加工技術が発達していなかったので、ブナを伐ってスギに変えることがいいことだったんですね。
森そのものを守るべきものだっていう認識が最初はなかった。だけど今は森の中に色んな生き物がいて、そこにいると楽しいし、空気も美味しいし、きれいな水ももたらしてくれる場所だっていうイメージが、多分皆さんの頭の中に思い浮かべられるようになったんじゃないかなと思うんですね。そういうことが海に関しても是非、皆さんに感じてほしいなっていう風に思っています」
●「全国砂浜ムーブメント」、今年は12月31日まで続きますよね。番組を聴いてくださっているリスナーさんに、改めていちばん伝えたいことってどんなことですか?
「本当に千葉の皆さんは、太平洋側の海と東京湾側の海っていうとっても個性が違う2つの海を持っている、とってもいい県にお住まいだと思うんですね。なので、是非たまには海に行っていただきたいなっていうのが第一です。
やっぱり現場に行って砂浜に立って、見えてくるものっていうのがいっぱいあると思うので、是非一度砂浜にお出かけいただきたいなと思うし、その時には是非、砂浜ノートをお持ちいただければ、砂浜を見るヒントにもなるんじゃないかなという風に思っています」
INFORMATION
「全国砂浜ムーブメント」に家族やお友達と参加しませんか。「砂浜ノート」があれば、海や砂浜のことを楽しく学べますよ。子供たちの体験にお役立てください。日本自然保護協会のサイトからすぐ申し込めます。
また、ゴミ拾いアプリ「ピリカ」と、いきものコレクションアプリ「バイオーム」もぜひ活用してください。同じく協会のサイトからダウンロードできます。今年の「全国砂浜ムーブメント」は12月31日までです。
ほかにも日本自然保護協会では、あと20頭ほどになってしまった「四国のツキノワグマ」を救うための活動も行なっています。また、現在、会報誌「自然保護」の表紙を飾る「フォトコンテスト」の作品を募集中。応募の締め切りは9月30日です。
そして日本自然保護協会の活動は会費や寄付で支えられています。ぜひご支援いただければと思います。
いずれも詳しくは「日本自然保護協会」NACS-Jのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「日本自然保護協会」NACS-JのHP:https://www.nacsj.or.jp
2021/7/4 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、水中写真家の「鍵井靖章(かぎい・やすあき)」さんです。
鍵井さんは1971年、兵庫県生まれ。大学在学中の20歳のときに、ある写真家の水中写真展を見て感動し、写真家になることを決意。その後、伊豆やモルディブでダイビング・ガイドとして経験を積みながら、水中撮影のスキルを磨いて、28歳のときに独立。そしておよそ20数年にわたってフリーランスの写真家として第一線で活躍されています。現在は鎌倉に拠点を置き、葉山や岩手など国内の海はもちろん、コロナ禍の前は月2〜3回は海外の海に出かけていたそうです。
きょうはそんな鍵井さんに、世界の海に潜って感じた日本の海の素晴らしさや、写真展のお話などうかがいます。
☆写真協力:鍵井靖章
やっぱり感じる海の変化
※それでは鍵井さんにお話をうかがいましょう。国内外のいろいろな海に潜って写真を撮っていらっしゃいますが、特に印象の残っている海はどこですか?
「モルディブ好きですね。行ったことあります?」
●ないんです〜。行ってみたいです!
「インド洋に浮かぶ島々なんですよね。僕、25歳〜27歳まで住んでいたこともあるので、ちょっと故郷的な海でもあるんですけれど、やっぱりモルディブの魚影の濃さとか素晴らしい海なので大好きです」
●ほかの海とモルディブの海っていうのは具体的にどう違うんですか?
「やっぱり魚影の濃さですよね。色んなお魚がいて、あとジンベイザメとかマンタとか、ダイビングをする僕らにとっては、憧れの生き物との出会いを可能にしてくれる海なんですよ」
●長年、海に潜ってらっしゃいますけれども、いちばん感じる海の変化ってありますか?
「そういう質問されたらやっぱり、最近はよく海洋プラスチックや温暖化現象って言われるじゃないですか。でもそれは本当に感じますよ。多分前回、葉山の佐藤輝さんとの話でもあったかもしれないけど、海藻がなくなったりだとか、環境の変化はやっぱり感じますよね」
●やっぱり長年見てこられて、悪くなっているなという印象ですか?
「悪くなっているなっていうか、例えば、海外のリゾート地とかもっと昔はゴミが多かったって言うんですよね。でも観光地化されることによって、目に見えるゴミは減るわけじゃないですか、観光地として成立するから。
でもよく言われているように、実は目に見えないマイクロプラスチックとか、そういう問題があるわけじゃないですか。プラスチックの歴史が始まって、僕たちはそれの問題と向き合っていかなくちゃいけないっていうところに来ていると思うので、目に見えて綺麗になった場所っていうのももちろんあると思うんだけれど、実は目に見えていない部分で何かしら違う問題が進行していったりしているのではないかなっていう懸念はあります」
初の流氷ダイビング!
※コロナの影響でなかなか海外へは行けなくなりましたが、ここ1〜2年はやはり国内の海で撮影していることが多いのでしょうか?
「そうですね。正直言って海外に行きたい気持ちは全くなくて、今は国内の海を十二分に楽しむと言いますか、記録をしていて。
実は僕、ダイビングを始めて30年くらい経つんですけれど、北海道の流氷ダイビングとかしたことなかったんですよ、外国ばっかり行っていたから。で、今年初めてその流氷ダイビングをやったりして、やっとちゃんと日本人のダイバーっぽく活動しています(笑)」
●流氷ダイビング、いかがでした?
「実はすごく怖かったんですよ。水温がめっちゃ冷たいんじゃないの、とか思っていて、すごく怖かったんですが、意外と装備をしっかりすると全然ストレスなく、氷の下の世界を楽しむことができました」
●流氷ダイビングは初めてということですけれども、どんなものを撮影されたんですか?
「いちばんの目標は流氷の下から見上げるっていうことだったので、流氷が持っている造形とか、ちょっと流氷が薄いところから溢れてくる光だとか、まぁ氷の造形ですよね、それを楽しんだかな」
●どうなっているんですか? 流氷の下って。
「なんとなく想像がつく世界ですよ。氷の下でさ、あれ知ってますよね? 流氷の天使と言われる生き物な〜に?」
●流氷の天使?
「クリオネ」
●ああ! クリオネ!
「そうそう、クリオネとかハダカカメガイかな、貝の仲間なんですけれど。もうね、なんか両手じゃないんだけれど、一生懸命泳いでいるの、小っちゃくてすごく可愛かった。やっぱりテレビの映像とかで見るのとは全然違いますよね。寒さ忘れましたから」
●へぇ〜!
「流氷ダイビングで僕、今回すごくいいなと思ったのが、例えば寒くなったら寒いって一緒に潜っている人に言ったらすぐに上がってくれるんですよ。だから何となくイメージだったら、すごく寒いのを我慢していっぱい潜んなきゃいけないのかなと思ったんだけれど、ちょっともう寒いし、もういいかなと思ったら20分くらいで上がるって言ったら、すぐに上がってもらえるんで、無理なく潜れて、ストレスなく今回、氷の下を楽しむことができたので、それはすごくよかったですね。
で、結果僕は夢中になって50分くらい潜っていたんですけれどね。僕にとってはやっぱり思っていた以上に寒くなくて、思っていた以上に快適に氷の下の世界を楽しめたので、また来年の2月には行きたいなと思っています」
●初めてご覧になった氷の下の世界はいかがでした?
「もう一回撮りたいな〜! まだちゃんといいの撮れていないんで、もう一回撮りたい。でも素晴らしかったですよ。だからまた行きたいっていう気持ちにさせる・・・もちろん沖縄とか、ああいう海とは全く違う世界が広がっていたので、素晴らしい体験でしたね」
手付かずの海!?
※つい最近も国内の海で撮影されていたと聞いたんですけど、どこの海でどんな生き物を撮ってたんですか?
「つい先日までは愛媛県の愛南町って言って、まだダイビング・ポイントとして2年しか経っていない新しいエリアがあるんですけれど、そこで手付かずの海に潜ってみたり・・・手付かずってやっぱりいいですね。残念ながらたくさんダイバーが入ったりすると、そこはちょっとポイントとしては荒れちゃうと言いますか、生き物が少なくなったりもするんだけれど、その愛南町っていう町の海はほとんど誰も入ったことがない海だったので、日本の海って本来の姿はこうなんだ! って思える海がそこに残っていたので大変よかったですね。素晴らしかった」
●具体的に手付かずの海、そういった海っていうのはどんな状況になっているんですか?
「サンゴとか、ソフトコーラルと言われる海底に付着している生き物、ああいうのがすごくモサモサっと生えていて、すごく色彩も豊かで、魚たちもダイバーを見たことがない魚たちがほとんどなので、割と慌てて逃げ出すというか、それが逆に可愛かったですね(笑)」
●人に慣れていない!?(笑)
「そう、人に慣れていないからその反応がすごく可愛くて、慌てて逃げ出したりして、逃げられるのは嫌なんですけれど、でもそれはそれで可愛かった」
●日本の海の良さって改めて鍵井さんから見てどんなところにありますか?
「これ、どのカメラマンに聞いても同じだと思うんですけれど、黒潮とか親潮とか色んな海流が混ざり合っている場所なので、色んな海流の影響で生息している生き物も違うし、ほかの国では感じられないぐらいのバリエーションは日本の海にはありますよね。だって考えてもみてください。僕、今年3月に北海道の流氷ダイビングに行ったって言ったじゃないですか。その翌日には僕、沖縄に飛んでザトウクジラと一緒に泳いでいましたから、やばくないですか!?」
●ええ!? すごいですね!(笑)
「だから、日本すごいなと思って」
●また海の状況も全く違いますよね?
「ね! でも氷の下であれ、クジラであれ、計り知れない感動を与えていただけるので、ありがたいですね、ありがたい仕事!(笑)」
●鍵井さんにとって天職ですね!
「どうでしょう・・・まぁきっと適職ですね」
海は平等!
※海の中で撮影していて、いちばん嬉しい瞬間はどんな時ですか?
「嬉しい瞬間は・・・ちょっとカメラマンっぽいこと言っていいですか?」
●はい!
「僕、別に自分のために写真は撮っていないので、誰かに見ていただけるっていうことを前提に撮っているっていうか、このシーンを撮影したらどんな人に届くかなって思いながら撮影しているのですよ。だからやっぱりみんなの気持ちに届いてくれそうなシーンに出会ったり、そういうのが撮れたりした時はやっぱり嬉しいかな」
●ただ自然が相手ですから、相手は生き物ですし、なかなか思い通りにいかないことも多いんじゃないですか?
「そうですね。でも長年やっているから割と折り合いというか、会えなかったとしても、今僕は会えるタイミングじゃなかったんだ、まだその役割じゃなかったんだと思う時もあるし、かと思えば、とてもたくさん貴重な生き物に出会える時もあるし、色々、海は平等平等(笑)」
●ベスト・ショットを収める極意っていうのは?
「あんまり無理しないことじゃないですか。僕お魚が逃げてもあんまり追っかけないし、あんまりお魚にストレスを与える撮影はしたくないし。あとやっぱりちゃんと自分の命を守りながら撮影したらいいんじゃないかな、海から帰ってくることが大前提でね」
●生き物の生態とかもちゃんと勉強していないと、いい写真は撮れないのかなとも思うんですけれど・・・。
「僕あんまり詳しくないんですよ、生き物の生態」
●あれ? そうなんですか?
「もちろん一般の方よりは知っているけれど、僕どちらかというと海の中で、色とかデザインとか、そっち系で見ちゃっている人間なので・・・そうなんですよ、ちょっと厄介なんですよ(笑)」
●だから鍵井さんの写真はパーッと明るい色鮮やかな感じで、気持ちがいいんですね!
「なんかやっぱり僕の写真を知ってくれている人は、鍵井さんはそんなに生態に興味がないからこの写真が撮れるんですよ、っていう言い方をする人もいるし・・・“あ、はい”って思いながら聞いているんですけれどね(笑)」
●鍵井さんならではの、こだわりはどんなところなんですか?
「コロナになってみんな疲れているし、僕も疲れているし、それは気が付いていないような傷が付いているような・・・何かのタイミングで自分ってやっぱり疲れているんだなって思う時もあるし、今は何か日々のSNSの発信もそうかもしれないし・・・今度の写真展もそうかもしれないけれど、今日本に生きていて疲れを感じている人に自然の持っている癒しとか、写真という芸術、エンターテイメント、分からないけれど、そういうものが持っている力で皆さんに何か違う、もう少し優しい感情を持ってもらえればいいかなとか思ったりするかな」
心が優しくなれる写真展
※現在、外苑前の「Nine Gallery」で写真展を開催しているそうですが、どんな写真展ですか?
「ここの写真展のお話をいただいた時に、やりたいなって思ったのが疲れている人が逃げ込める都会のオアシスみたいな場所を作ってみたいと思って。自分の作品がすごいでしょ! 自然がすごいでしょ! っていうような写真展ではなくて、そこに来てくれた人がほんのひと時でも、別に全ての写真の前じゃなくて、ただ1枚の写真の前でもいいから、その前に来た瞬間にふと心が優しくなれるというか、ほどけるような気持ちになれる展示会を作りたいなと思ってやっているのが今のそれです」
●都会ど真ん中ですよね、外苑前は。そこにいながら自然を体感できるっていうのは素晴らしい機会だなと思うんですけれども、別の写真展ももうすぐ開催されるんですよね?
「そうなんですよ。銀座でもうひとつ『Blue+(ブルー・プラス)』っていう写真展をやるんですよ。写真を撮るダイバーさんってすごい多いんですよ。で、僕が先頭に立って、写真を撮るダイバーさんを100何名集めて、みんなで写真展しようって音頭を取ってやっている写真展を富士フォトギャラリー銀座で開催します」
●具体的にどんな写真になるんですか?
「今回で6回目か7回目なんですけれど、今回は趣向を変えて、1枚の写真を上下左右反転させて、ちょっと万華鏡のような世界を作って、100何点を会場にわーっと並べて、ちょっとおかしな写真展です」
●へぇ〜! 素敵ですね! 万華鏡、ちょっと想像つかない世界なので興味深いです! 改めて鍵井さんの海への想いを聞かせていただけますか?
「海への想いですか!?」
●ちょっと壮大になっちゃいますけど(笑)
「海、いいね! ダイビングって割と敷居が高いじゃないですか、ライセンスを取ったりしなくちゃいけないし・・・もちろんダイビングをされるのはいいと思うけれど、シュノーケリングとかあるじゃないですか、されますか?」
●はい! シュノーケリングはよくします!
「シュノーケリングも海の魅力を感じることが十二分にできるので、まぁ海水浴は海水浴でいいけれど、ちょっとマスクとフィンを付けて、お魚の姿を探してみたりするのはいいんじゃないかなと思います」
●潜りながら水中カメラとかで写真を撮っている方も多いと思うんですけれども、私たちが水中カメラで撮影する時のコツとかがあれば、是非教えてください。
「わーっと(海に)入っていっても魚は逃げていくから、ちょっと待っていたら、次は魚のほうから寄ってきてくれるので、自分の思いだけで写真は撮れないですよね、自然の中では。だから海の中に入っていって写真を撮ろうと思う前に、ちょっとだけそこに馴染んでいたら、次は魚のほうから挨拶してきてくれるので、そういうのがいいタイミングじゃないかなと思います」
●では最後に鍵井さんにとって海とは?
「仕事場かな(笑)・・・まだ分からない、あまりにも身近すぎて。僕がもう引退間近になったら何か違う感情になるかもしれないけれど、今は海にどっぷり浸かっているし、あるのが当然だし、まだ分からない。もちろん大切なものには変わりはないし、愛おしいものでもあるし、はい」
☆この他の鍵井靖章さんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
現在、鍵井さんの写真展が外苑前の「Nine Gallery」で開催されています。
「青い庭」と題されたこの写真展は、都会の中の癒しの空間をイメージし、
およそ25点の新作が展示されているそうですよ。開催は7月11日まで。
期間中は、毎日夜7時から鍵井さんのギャラリートークが予定されています。
詳しくは「Nine Gallery」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「Nine Gallery」のオフィシャルサイト:https://ninegallery.com/exhibition/1089
そして7月9日からは写真展「Blue+(ブルー・プラス)」が銀座の富士フォトギャラリーで開催される予定です。ダイバー100数名のかたが撮った、万華鏡のような作品が展示されるそうです。開催は7月15日まで。
詳しくは富士フォトギャラリーのサイトを見てください。
◎富士フォトギャラリーHP:http://www.prolab-create.jp/gallery/ginza/