2022/6/12 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、秘湯探検家の「渡辺裕美(わたなべ・ゆみ)」さんです。
渡辺さんは奈良県出身。会社勤めをしていた15年ほど前、仕事のストレスで心身のバランスを崩したときに、バックパックを背負い、東北の温泉を巡り、自然と触れ合ったことで、とても癒されたそうです。そしてすっかり秘湯にハマり、これまでに国内外を含め、およそ2500カ所以上の温泉を制覇。温泉ソムリエの資格も取得し、現在は秘湯の旅番組などで活躍されています。
そして先頃、アウトドア雑誌のネット版に連載していた温泉レポをまとめた本『絶景温泉ひとり旅〜そろそろソロ秘湯』を出されました。
きょうはそんな渡辺さんをお迎えし、標高1400メートルの絶景温泉や、山に分け入り、やっとたどりつく、神々しい滝の温泉など、秘湯の話題満載でお届けします。
☆写真協力:渡辺裕美

サバイバル感も楽しめる「野湯」
※「秘湯探検家」という肩書は探検するかのように秘湯を追い求める渡辺さんの活動にぴったりだと思ったんですが、ひとりで行くのは何か理由があるんでしょうか。
「そうですね。やっぱりあんまり大勢で行くと、結局普通のお風呂と同じになっちゃうじゃないですか。やっぱりひとりで行く醍醐味は、自然をまさに独り占めできること。鳥の声、川のせせらぎ、あと自然に湧き出ている温泉そのものだったり・・・それを自分ひとりで満喫できるのは、多分ソロで行く以外できないですよね。
そういう独り占め感と、あと道中なんですね。割と地図がない秘湯に行くことが多いので、何人かで行くとどうしても、おおよその場所が分かっていたり、ヒントを与えられてしまうんだけど、ひとりで行くとサバイバル感っていうか自分でその場所を探し当てるみたいな、そこがすごく楽しいところです」
●この本には、バックパックを背負って秘湯まで山の中を歩いたりっていう写真も載っていましたけど、怖くないですか?
「めっちゃ怖いですね。怖がりなので、人一倍、クマ除けスプレーだったり鈴だったり、例えば川が出てきたら、こう渡ろうとか、川の渡渉のスパッツを一応持って行ったりとかします。自然って何が起こるか分からないので、やりすぎるぐらいの準備をして挑むというのはあると思います。
正直、いちばん怖いのは人間なんですよ。クマさんよりも動物よりもやっぱり人間がいちばん怖いですね。でも自然の中に入ってしまうと、それほど(自然が)怖いっていう感じはあんまりないですね」
●日本には秘湯と言われる場所は、どれぐらいあるんですか?
「秘湯と言うと、割と宿も含んじゃうんで多くなるんですけど、野湯(のゆ)っていう山の中にポツンと湧いている、海岸にポツンと湧いている、そういう自然の温泉は300箇所以上あると思います」
●その中で何箇所ぐらいの秘湯を制覇されたんですか?
「200箇所は超えていると思いますね」
●すごいですね〜! 先ほども野湯のお話がありましたけど、秘湯と一口に言ってもいろいろあると思うんですが、いくつかタイプに分かれているっていうことなんですか?
「そうですね。秘湯って言っちゃうと割と広義な意味になって、秘湯の宿とか、宿も含んじゃうんですけど、野湯はその秘湯ジャンルの中でも、もっとニッチなところにあって、いわゆる未管理の、人間の手が加えられていない温泉です。
山の中とか川にポツンと湧いているような、営業とかもしてないし、ただ湧き出ている、そういう温泉を野湯って言うんです」
湯船の中でご来光!

※新刊『絶景温泉ひとり旅〜そろそろソロ秘湯』には66カ所の秘湯が掲載されています。その中から気になった温泉をうかがっていきます。まずは、表紙になっている、この写真の温泉はどこなんですか?
「これは岩手県の八幡平市にある、本当に八幡平の山頂付近にあるポツンと一軒宿なんですけど、”藤七温泉(とうしちおんせん) 彩雲荘(さいうんそう)”さんって言います。
なんで表紙になったかというと、綺麗なのもあるんですけど、私がすごく感動した、秘湯巡りを始めた初期に、初めて東北の温泉を周った時、この藤七温泉 彩雲荘さんに泊まって、あまりにも素晴らしい温泉でびっくりしたので、そういう印象的な思い出の温泉です」

●どう素晴らしいんですか?
「ほかの温泉と何が違うかっていうと、国立公園の中にいくつもの露天風呂がぽこぽこっていっぱいあるんですよ。それはもう本当に自然の中にただただ湧き出ている、まあ人工的に作ってはあるんですけど、でも本当に見た目は自然の中に湧き出ている、さっき言った野湯に近い形で、温泉も底からプクプクと気泡となって湧き出てくるんですね。
まさに自然のジャグジーみたいな感じで、気泡が背中にポロロンって湧き出た時に付くんですけど、あ、今湧き出た! みたいなのがすごく分かるし、音もぽこぽこっと鳴るんですよ。
これってもう究極の幸せで、温泉って本当に生まれたて、湧きたてがいちばん鮮度抜群なんで、その鮮度と自然の神秘を体感できるのが彩雲荘さんのすごいところです。
あと泥パックとかもできるんですよ。下に泥が溜まっているので、女性のかたはすごく必見というか、顔に塗りたくっているかたもいらっしゃいますね」

●写真を見ると、お湯が確かに白っぽいですけれども、これは泥なんですね。
「そうですね。ちょっとだけ茶色いっていうか薄いミルキーグレーみたいな色で、これがまさに泥と温泉が混ざった状態なんですよ」
●標高もかなり高い場所にあるっていうことですよね?
「標高は1400メートルぐらいですね」
●自然のジャグジー、いいですね!
「そうなんですよ。一回、小尾さんも泊まっていただきたいですけど、この温泉、すごいのが次の日、朝5時ぐらいに岩手山の方向を見るとご来光が出るんですよ。周りがオレンジ色に包まれて、そこにちょこんと露天風呂があるんですけど、その湯船の中でご来光を浴びる、これ最高です。
とにかく朝昼晩、自然の神秘に触れられるっていうのが彩雲荘さんのすごいところかなと思いました」
(編集部注:渡辺さんが野湯に出会ったのも、温泉巡りを始めた15年ほど前、東北の温泉を巡っていた時だったそうです)
神々しい滝の秘湯
※本に載っている秘湯のお話を続けましょう。栃木県の那須方面にある幻といわれる滝の秘湯、これにも驚きました。これはどんな場所にあるんですか?

「栃木県の那須郡にある「両部(りょうぶ)の滝」ですね。那須の茶臼岳の八合目付近に潜んでいる温泉の滝なんですよ。実はこれ全然知らなくて、情報を誰かから聞いたんです。こういうのがあるよ、みたいなのを・・・。
ただ地元の人も誰も知らないし、ガイドブックでも一切紹介されていなくて、地元の観光協会や山岳クラブみたいなところに電話したんですけど、いや知らない!の一辺倒。知っていたとしても、そこはもう言えません! みたいな感じで、すごく隠している、じゃないですけど、ほとんど知られていないのが8割で、一部は知っているけど、知らんふりみたいな感じでした。
いろんな情報を一生懸命探して、行ってみたんですよ。温泉の滝なんですけど、すごいのが温泉の滝にもうひとつ向かい合うように普通の沢水の滝があって、ふたつの滝が向かい合って落ちているんです。本当に神々しい、絶景を超えて神々しい雰囲気が漂っている場所なんですね。
温泉は100メートルくらい上流の岩場から湧き出ているんですけれども、滝に行き着くまでに、(温度が)40度くらいから30度弱くらいになるんですね。それでも外気温が結構冷たい時は、あたりに湯気がふわぁ〜っと舞って、本当に神々しいの一言ですね」

●ネットとか雑誌にも載っていないような場所なんですね。すごい! まさにパワースポットですね!
「そうなんですよ。本当にパワースポットでした!」
●知る人ぞ知るというか・・・。
「そうなんですよ。いろいろ歴史を調べていくと、もともと100メートル上流の源泉湧出地が、江戸時代からずっと山岳信仰の御神体みたいになっていたところで、結構、信仰者たちがそこをお参りするのがひとつの流れだったようです。それぐらい温泉と信仰が結びついていることにも、神秘的というかストーリーを感じました」
●そうですね〜。
「これはすごい滝でした。この滝は正直(温度が)30度もないので、温かいっていうわけではないんですけど、見るだけでも、さっきおっしゃったパワーをもらえるような、そういう場所ですね」
※続いて、私が特に気になった温泉が岩手県にある「国見(くにみ)温泉」、お湯がグリーンなんですよね?
「そうなんですよ。あそこは私も藤七温泉の次の日に行ったんですけど、本当に入浴剤みたいな色でびっくりしました!
面白いのが、すごくきつい炭みたいな、墨汁みたいな、よくアブラ臭とかって表現されるんですけど、独特な匂いもするんですよ。すごく成分が濃い温泉で、不思議な墨汁みたいな匂いがして、入ったら、服を着替えてもTシャツにずっと匂いが付いて、帰る新幹線まで匂っているみたいな感じです。
色も強烈、匂いも強烈な国見温泉はぜひ温泉、秘湯巡りを始めたいっていう人にまず足を運んでいただきたい場所です。岩手県の雫石っていうところにあります。一軒宿です」

ルールとマナーを守って楽しむ
※秘湯に行くときに心がけていることはありますか?
「野湯は調べていくと、結局あんまり責任者がいないんですよ。個人の敷地にあったら、その人のものだったりするんですけど、例えば国有林の中にあるような野湯は、森林管理者さんが森林を保全するために管理しているだけで、野湯は特に管理もされていないし、入浴を認めてくれているかっていうと、そうでもなかったりします。
その中でマナーが悪かったり、ちょっとした事故が起こったりすると閉鎖されたりとか、いろいろそういう事象があって・・・私たち野湯愛好家は、その土地にある自然公園法だとか、そういうルールを守って、環境保全に配慮しながら温泉を楽しまないと、いつかなくなっちゃうかもしれないような温泉なんですよ。
街のスーパー銭湯とかだったら、廃業しないかぎりは絶対に維持されていくじゃないですか。そこがすごく違うところですね。
結構、幻の野湯ってあるんですよ。あの時、何十年前はあったよね! みたいな。だから本当に個人のマナーとルールに任されているっていうか・・・なので、できるだけ温泉に着いたら、温泉そのものを楽しむけど、余計な手は加えない。人工物を置いたり、形を大きく変えたりとかしないで、そのままありがたく自然の恵みを楽しむ、みたいなことを私は結構心がけています」
ワクワク探検! サバイバル感!
※ネットで検索しても出てこないような秘湯の情報は、どうやって調べているんですか?
「結構難しいですね。例えばですけど、国土地理院の地図、温泉マークってあるんですよ。全然知らなかった温泉が湧出してたりとか。ぼこぼこって出てるんですけど、噴気のマークとかってあるんですよ。そういうところをたどったら、実は新しい野湯が出てましたとか。あと地元の林業関係者のおじさんにめっちゃ聞いたりします。
山を知っている人って、意外にそういう温泉も知っていたりするので、この辺にこういうのありますか? とか聞いたり、聞き込み調査! あとGoogleの航空写真! 上から見て、山肌に白いのが付着しているのが見えたりするんですよ。そういうところは、ピンを付けておいて、どういうふうにアプローチしたらいいのかを見て行ったりします」
●まさに探検ですね! ワクワクしますね〜。
「そう、むちゃくちゃワクワクしますね!(笑)。温泉にたどり着くよりもそこがメインになってきていて、去年も北海道なんですけど、往復11時間かけて、温泉は20分もなかったかな。 浸かったといっても本当に寝転がっただけで、冷たい20度の温泉が岩盤を這うように流れているだけのところなんですけど、そのためだけに往復11時間歩いて(笑)、それぐらい自然と一体化できる道中に、また最高のものがありますね! 癒されるというか」
●改めて、ソロで行く秘湯の魅力とはなんでしょうか?
「そうですね。やっぱりふたつ! 自然との一体化、サバイバル感、道中ですよね! あと温泉の独り占め感! このふたつに尽きると思います。
日本にはいろんな素晴らしい秘湯があって、実はガイドブックにも出ていない、実は地元の人も知らない、みたいなところが結構あるんですよ、探していくと。そういう自然の素晴らしさがやっぱり野湯にはあると思うので、これからも行きたいなと思っています」

INFORMATION
渡辺さんの新しい本をぜひお買い求めください。これまでに訪れた温泉の中から厳選した66ヶ所の秘湯を掲載。中にはここが温泉!?と、目を疑うような写真に驚きますよ。写真がたくさん載っているので、見ているだけでも楽しい! そしてお話の中にもありましたが、野湯を楽しむときのルールやマナー、注意事項についてもしっかり掲載されています。小学館から絶賛発売中です。
◎小学館HP:https://www.shogakukan.co.jp/books/09311507
◎渡辺裕美さんのブログ:http://shifukuonsen.blog94.fc2.com/
2022/6/5 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ドキュメンタリー映画
『杜人〜環境再生医 矢野智徳の挑戦』の監督「前田せつ子」さんです。
前田さんは1984年に現在のソニー・ミュージックエンタテインメントに入社、音楽雑誌などの編集者から、フリーランスとなり、雑誌「Lingkaran(リンカラン)」ほかの編集や執筆に携わります。
映画『杜人(もりびと)』は、孤高の造園家、矢野智徳(やの・とものり)さんに3年間密着したドキュメンタリーで、前田さんにとっては初の長編作品なんです。主人公の矢野さんは植物や自然の再生を、経験に裏打ちされた矢野理論ともいえる手法で取り組み、全国各地の庭園やお寺の植栽などを見事に蘇らせています。
この4月に公開された同作品は、公開直後から評判を呼び、続々と上映する映画館が決まり、全国でいま静かなブームとなっています。きょうはそんな『杜人』、そして矢野さんについて、監督の前田さんにじっくりお話をうかがっていきます。
☆写真協力:Lingkaran Films

「杜人」に込めた思い
※まずは映画のタイトル「杜人」、これは木編に土と書く、杜の人です。このタイトルした理由はなんでしょうか?
「木編に土と書く”杜”っていう字は、この場所を傷めず、けがさず、大事に使わせてくださいと、人が森の神に誓って紐を張った場、という古語だそうです。昔の民が使っていた言葉で、今、辞書を引いても出てこないんですね。
主人公の矢野智徳さんはこの言葉の意味を3日かけて、国会図書館に行って必死で探して、この言葉にたどり着いたそうなんです。
で、やっぱりそういう自然と人との関係が蘇りますようにという願いを込めて、木と土と人と書いて”杜人”というタイトルをつけました」
(編集部注:造園家の矢野智徳さんは1956年、北九州市生まれ。父親が私財を投じて造った花木植物園「四季の丘」で、子供の頃から植物の世話をしながら育ちます。そして、東京都立大学在学中に1年間、休学し、日本全国の自然環境を見て回ったあと、1984年、28歳のときに「矢野園芸」をスタートさせています。
前田さんと矢野さんとの出会いは2014年、前田さんが暮らす東京都国立市で街路樹の桜を一斉に伐採する計画が持ち上がったときだったそうです。住民から、本当に伐る必要があるのかを矢野さんにも見てもらいたいという要望を受け、桜を1本1本診断してもらった結果、ちゃんと手当てすれば、まだ大丈夫という矢野さんのアドバイスもあり、一斉伐採は見送られたそうです)

虫、草の視点
※矢野さんの活動を撮影し、映画にしようと思ったのは、どうしてなんですか?
「初めて矢野さんの言葉を聞いた時に衝撃を受けたんですね。衝撃っていうよりは、なんか救われるような気がしたんです。2014年の、桜を全部伐採するっていう計画は、矢野さんを始め、全国の心ある造園家のかたが駆けつけてくださって、市民と共に動いたことで、痛んだ桜だけを植え替えるっていうふうに、市は方針を変えてくれました。
その翌年、運動というか動いていたことがきっかけで、矢野さんの講座が国立市内で開かれて、私はその時は市議会議員ではなかったので、2日間その講座に参加しました。それで改めて矢野さんの自然を見る目に触れて、すごく驚いたんです。
例えば、植物に虫がつくと、ついつい人は殺虫剤を撒いたりしがちなんですけど、矢野さん曰く”葉が混み合っていて、風通しが悪いから虫がつく。虫たちは葉っぱを食べて、空気の通りをよくしてくれているんです”っていうことをおっしゃったんですね。
それは、世界が180度クルッと違って見えてくる気がして・・・あー虫たちって、ただ単に葉っぱが食べたくて食べているんじゃなくて、そうやって風通しをよくしてくれている、そんなふうに世界を見られたら、この世界はまた違って見えてくるし、人間はもっと豊かに生きられるなっていう感じがしたんです。
草も、生えてくるのがよくて、根こそぎ抜いたり、地ぎわから刈ったりするから反発して暴れる。でも風が揺らすところで刈ってやると、途端に大人しくなるっておっしゃるのを聞いて、なんか子育てと繋がっているような気もして、とっても肩の力が抜けるというか自分が楽になってくる気がしました。
大地が人間と同じように呼吸しているっていう言葉を聞いた時に、水のことは考えていても、空気のことは全然考えていなかったなって思って・・・。
そんな視点というか、自然と人との関係がとても新鮮だし、すごく嬉しかったんですね。講座が終わったあと、すぐに矢野さんのところへ行って、“本とかDVDとかなんかないですか?”って聞いたら、忙しくて何もないんですって言われて・・・あ〜なんてもったいないんだろうって思ったのと、もっと知りたいって思ったことが、最初の動機です」

風の草刈り
※映画には矢野さんの自然や植物、そして造園に対する考え方が随所に出てきます。その中から印象に残った言葉をいくつかお聞きしたいと思います。まずは結ぶと書く結(ゆい)、これはどんな意味なんですか?
「映画の中では矢野さんは、ほかの動物たちには動物たちなりの結(ゆい)があって、人社会には人が群れをなす時の大事な連携機能として、結のコミュニケーションがあるっておっしゃっています。
もともと結作業ってどんな集落にもあったもので、人間がまだ重機とかそういう動力を持たなかった時代には、人ひとりひとりがやるんじゃなくて、みんなが群れをなして、自然と向き合うことが必要とされていました。
その中で、大人も子供も歳を取ったかたも女性も男性も、みんなが群れをなしてひとつの目的に向かって、その集落が無事であるようにという祈りを込めて、結作業をやって、そこに教育もあれば、コミュニケーションがあって、自分の居場所があったっていうことなんです。
かつての結作業を、大地の再生講座をやる中で復活させたっていうのか、やっていたら、いやおうなくその結作業になっちゃったって、矢野さんはおっしゃっていました。
その結って、人と人との関係もそうですけど、人と自然もやっぱりその結のコミュニケーションがあって、言ってみれば、同じ目的に向かって同じ祈りを込めて共同作業をするっていうことなんですね。
それが今現代社会の中ではとっても失われているので、作業をされたかたの表情とかを見ていると、とても大変だけど、とっても清々しい楽しそうな顔をして作業されているのが、ずっと印象に残っています」
●そうなんですね。続いて「風の草刈り」と表現されて、草を刈っていらっしゃいましたけれども、この言葉の裏にはどんな意味があるんでしょうか?
「風の草刈りって、すごく詩的な表現だと思うんですね。まさに風がやるように草を刈る。文字通り、風に揺らしてみると、草がある一定の点で揺れる。そこを鋸鎌(のこがま)って言われる小さな手鎌で、ちょんちょんとはねてやると、草は風がやったと思い込んで、これ以上伸びてもまた風が吹いてきたら、ここを折られるからと思って、構造を変える。そこから枝分かれして、それと同時に地下の根っこを細根にして細い根をいっぱい生やして安定しようとする。
そうなると、細い根ができると地下に空気がたくさん通るようになるので、雨が降っても、ちゃんと雨も浸透するし、空気と水の循環がよくなって、すごく合理的で持続可能なやり方が、風の草刈りです」
●風で揺らぐ部分を切るってことですね。
「自分が風になったつもりっていうか、自分の鋸鎌が風になっているのを感じるくらいに一体となって、自然と一体、自分が風なんだっていう感じでやると、みんなが帯のようになって、風の草刈りをやっていたところに、本当に風がすーっと通るんですよね。その時、みんなが同じ感覚を味わって、“今(風が)通ったね〜”って、すごく嬉しそうな顔されるんです。
風の草刈りは、本当に根こそぎ刈っていくよりずっと楽しいし、見た目も綺麗だし、綺麗っていうよりは、遠くの山々と一体化した一枚の風景になって、草はとっても大事な風景の一部だなって思います」

水脈と点穴
※続いては、矢野さんの自然再生手法のポイントともいえる「水脈と点穴(てんあな)」について。どういうことのなのか、教えていただけますか。
「大地は人間と同じように呼吸しているって、矢野さんはおっしゃっています。水脈は人間の身体でいうと血管のようなもので、大地の中にも動脈から毛細血管まで様々な脈が流れて、空気や水を循環させているというのが、矢野さんのひとつの理論というか、植物の命と長く向き合ってきて、見えない空気が大切であることを発見されたんですね。
自然はもともと、ちゃんと脈が地面の下に、人間に脈があるのと同じように大地にも脈があって、それを塞いできてしまって、今の大地は息苦しくなっているから、そこに溝を掘ったり、その溝は流線型で掘っていくんですけど、その所々に点穴と呼ばれる穴を掘って、より一層脈が渦を巻くように作っていくのが水脈と点穴なんですね。
東洋医学でいうと、筋に当たるのが水脈で、ツボに当たるのが点穴みたいな感じです。そこを押してあげると、人間もちょっと体調がよくなったりするように、ペたーんとまっ平らにしてしまった地面に溝を掘って穴を開けてあげると、本当に地面が柔らかくなるし、立った時に空気が変わるんです。
(大地の)脈をすごく大事にされているので、地上と地下の脈を循環させる。そのいちばんの立役者が植物だってよく言われています」
大地の深呼吸
※映画の中では、ここ数年の自然災害で大変ご苦労をされたかたたちとの出会いや支援活動のシーンもありました。その中で矢野さんの「土砂崩れは大地の深呼吸」という表現も強く印象に残りました。このあたりのご説明もお願いできますか。

「2018年の5月から(矢野さんを)追いかけ始めたんですけど、その2ヶ月後に、矢野さんに初めてお会いした時からずっと警告されていた、そのうちひどい土砂災害が起きますよっておっしゃっていたことが現実になりました。西日本豪雨で広島や岡山、愛媛のほうも土砂災害が起きて、亡くなられたかたには本当に胸が詰まる思いです。
なぜ土砂崩れが起きるのか、ただ単に雨がたくさん降って大雨のせいで土砂崩れが起きるわけじゃなくて、やっぱりどこかしら人間が止めているから、その脈を取り戻そうとして、自然は土砂崩れを起こしているっていう見方を(矢野さんは)されていました。
私は正直、その土砂災害の現場に矢野さんが行くからついていくってことは、戸惑いもあったんです。被災地でみなさん本当に困ったり、またボランティアのかたが一生懸命、復旧作業をされている中にカメラを持っていくってことは、とても申し訳ないし、不躾な行為だと思ったんですね。でもやっぱり矢野さんが行くって言うんだったら、私も行こうと思って一緒に行きました。
崩れた現場にはU字溝っていう小さなU字型のコンクリートブロックが必ずあって、それがバンッて崩れていて、ちょっと山のほうを見ると砂防ダムって言われるコンクリートの塊がありました。
で、その先のほうに崩れている、岩がむき出しになった爪で引っ掻いたような跡があって、本当にコンクリートがせき止めていることで、この土砂崩れが起きて、土砂崩れは呼吸を取り戻すための最後の自然の抵抗なんだなっていうのを目の当たりにしたんですね。
そこには自然界が一晩で作ったS字のカーブの水脈ができていて、自然が作った点穴がありました。で、必ず痛んだ木が、その大地が詰まっていたんだってことを証明するかのように、葉が茶色くなった松がいて、幹がボロボロになった梅の木があって、植物が警告を発していたんだなっていうのが分かる光景がそこにありました」
同じ生き物同士と思える感覚
※最後に改めて、この映画でいちばん伝えたいことを教えてください。
「撮っている時に思ったのは、映画を見る前と後とで木の見え方が違ってくるっていうか、植物や自然の見え方がちょっと違って見えるような映画になるといいなっていうのをずっと思っていましたね。
今、街路樹が鳥の糞が落ちるからだとか、落ち葉が汚いからだとか、むげに伐られることも多いし、いろんなところで木が伐採されているんですけど、木がどれほどのことをやってくれているかっていうことを、もっと私たち人間が分かれば、そんなに簡単に伐れなくなると思っています。

植物のことを語る時の矢野さんって、すごく愛おしそうに語られるんですよね。
本当に植物みたいな人にはなれませんと・・・こんなに苦しめられても、何かちょっと手をかけてやると、すごい勢いで復活してくる健気な存在とおっしゃっている、そんな感じを映画をご覧になったかたが植物に対して、この自然界のあらゆる生き物に対して、持ってもらえるといいなって思っています。
今回映画を公開した時に、矢野さんに植物の声って聞こえているんですか? って、あえて舞台挨拶の時に質問したら、聞こえませんよって。聞こえる人もたまにいらっしゃるみたいだけど、僕には聞こえません。でも感じはするっておっしゃっていました。
ひとりで深夜までずっと作業していると、何かが背中を触って、あれ何かな? と思って振り返ると、それは動物じゃなくて、しだれ桜の枝が自分の背中をふっとさすった・・・それを見た時に、同じ生き物同士分かり合えるのかなって、感じたんですとおっしゃっていました。
同じ生き物同士っていうふうに、植物にも小さなアリやチョウやトンボにも、その同じ生き物同士って思える感覚が、人間にはまだまだ動物だった頃の記憶がちゃんとあると思うので、そういう気風が生まれてくるといいなって思っています」
INFORMATION
前田さんの初めての長編ドキュメンタリー作品をぜひご覧ください。
映像はもちろんなんですが、ぜひ音楽にもご注目を。
優れた音楽家のかたによるサウンドトラックに前田さんのこだわりを感じますよ。
今後、英語の字幕を入れたインターナショナル版と、
子供向けのチャイルド版を作ることにしているそうです。こちらも楽しみですね。
*上映情報
首都圏で現在上映されているのは千葉県柏の「キネマ旬報シアター」で6月10日まで、逗子の「シネマアミーゴ」で6月18日まで、
「あつぎのえいがかんkiki」で6月17日までとなっています。
ほかにも東京や栃木、埼玉や群馬など、続々と上映が決まっています。
詳しくは「杜人」のオフィシャルサイトでご確認ください。
◎「杜人」HP:https://lingkaranfilms.com/
2022/5/22 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、芸能界きってのアウトドアズマン、清水国明さんです。
清水さんは1950年、福井県生まれ。73年に原田伸郎(はらだ・のぶろう)さんとのユニット「あのねのね」でデビューし、「赤とんぼの唄」が大ヒット!90年代からは、アウトドア活動に夢中になり、2005年に河口湖に自然体験施設「森と湖の楽園」、その後、瀬戸内海の無人島に「ありが島」という名前をつけて、同じく自然体験施設を開設するなど、いろいろなプロジェクトを手がける実業家でもいらっしゃいます。
清水さんには、毎年この時期にご出演いただいて、そのとき、どんなことに夢中になっているのかをお聞きする定点観測をやらせていただいています。きょうはどんなお話が飛び出すのでしょうか。
☆写真協力:LIVER HOUSE

LIVER HOUSE TV、ベトナム編!?
●今週のゲストは、芸能界きってのアウトドアズマン、清水国明さんです。清水さんにお話しをうかがうのは1年ぶりとなります。きょうはよろしくお願いいたします!
「はい。よろしくお願いいたします。27年目になりますか?」
●そうですね。清水さんの定点観測、今回で27回目! いや〜本当に長いお付き合いありがとうございます!
「いや〜本当にありがとうございます! これはいわゆる研究素材になるんじゃないかなと思いますね」
●本当ですね!
「つまり、人間ってやつは1年経つと、どれだけ言うことが変わっていくというかね(笑)。俺、自分で去年言ったこと覚えていないから、つき合わせて調べていくと、とんでもなくいい加減な奴になると思いますけど(笑)」
●この番組も30周年なんです。
「すごいですね」
●はい、この4月から31年目に入りました〜。
「うわ〜おめでとうございます」
●きょうもいろいろとお話しをうかがっていきたいと思っています。
「はい、お願いいたします」

●まずはこの話題からいきましょう。LIVER HOUSE TV! これはYouTuberでもある清水さんが配信されている動画コンテンツですよね?
「そうですね。今やYouTuberというよりもLIVERですよね。生配信しながら、しかもそれによって投げ銭っていうんですか、スーパーチャットっていうんですか、そういうのもあると同時に、自分がおすすめする商品をECサイトにあげて、販売もしていくという・・・。
これからの物が売れるというプロセスは、誰かそれに関してだったら一晩中しゃべっていられますわ〜っていうような奴がいて、その人の熱意でファンの人が増えるとする、リスナーとかフォロワーっていうのかな。そういう人に対して、俺はこれがいいと思うんです! って言った時に、それは買うじゃないですか。
商品力だけではなくて、それに惚れ込んだ人のメッセージで物が売れていく、動く時代だと思うんですね。確かに欲しい物とか、いい物はいっぱいあるけれども、それを誰がすすめるかによって物の流れが変わってくる。つまりその人の信用力で物が売れる、信用がお金になるという時代だと・・・受け売りでーす(笑)」
●あはははは〜(笑)
「そう思いませんか?」
●そうですよね。LIVER HOUSE TVのコンテンツはいろいろありますけれども、ベトナム編がありましたよね?
「そうなんです。これね、グローバルっていうのかな、世界にどんどん広がっていって、この間、ベトナムに行ってきたんですけど、“ベトナムLIVER HOUSE”というスタジオが開局してですね。ベトナムも世界どこでもそうですけど、スマホをみんな持ち歩いて、それでいろんな情報を得てますよね。そこからデビューする人たちもいるし・・・。
そういう意味では、ベトナムのLIVER HOUSEはエンターテイナーとか、商品を売るようなスペシャリストを育てて、そこからベトナムだけではなくて、日本にも発信する。で、逆に日本の商品を、日本のエンターテイナーをベトナムに紹介する。まずはこの2国間で、直にやりとりしようと、スタートしたわけですね」
●ベトナムに行ったのは初めてですか?
「そうですね。なにしろね、余談ですけどね。私自慢じゃないけど、パクチーを食えないんです(苦笑)。あれはカメムシですよ! いや本当に! 化学的に成分を分析した人がいて、カメムシとパクチーの臭いはおんなじ成分なんだってね。
俺、小さい頃、桑の実、口がむゎーっと紫になるやつを、駄菓子がないド田舎だから、つまんで食べていたら、ちっこいカメムシの子が桑の実にくっ付いていて、それを知らずにガシッと噛んで、ぐわーって、ぺっぺっぺって、カメムシを何回か噛んだことがあるのよ。だからそれがあってパクチーは全然(食えないんだよね)。
ただね〜パクチーの花は好きなのよ。パクチーの種をもらってきて、ベランダで育てたら、綺麗な真っ白い花が咲いて、綺麗やな〜と思って顔を近づけるとパクチーの臭いがするんだよ! なんじゃこりゃ〜刈り取ったろうかーと思うくらい・・・(笑)。
ところが今回ベトナムに行って、8日間行きましたけれども、もしパクチーが食えなかったら、ベトナムの食事って食べるものないんですよ。ほんで俺はやっぱりね〜苦手を克服する人生だから、1日でパクチーを食えるようになりましたね。
そしたら、びっくりしたんだけど、周りの今まで俺に気を遣っていた人たちが大喜びしたんですよ。こいつパクチー食えないって言ってるけど、これから8日間、なに食わそうかと思っていた人が、やったー! とか言って大変喜んでもらって、私のパクチー克服でね。まあそんなことがあって、楽しく8日間過ごさせていただきました」
ネコニャンキャップ復刻!?
※パクチーを克服した清水さん、ベトナムではこんなビジネスも進めてきたそうですよ。
「ベトナムは、こっちのLIVER HOUSEで販売する商品、自社製品やね、そういう物を開発しようと。人様の物をお預かりして売るというのがLIVER HOUSEなんですよ。人とか物とか事を応援する会社なんで、そういう風にやっているんです。でもマージンが少なくてなかなか儲けにならないから、自社開発した物を売りたいなぁと。
それで考えてみたら、私は一から十までアウトドアの人間だから、テント! それを自社ブランドで、LIVER HOUSEというマークの付いたテントをどこか作ってくれないかなと言ったら、いいのがあるんだ〜。向こうの人の紹介で飛び込んでいったんですけど。
行ってみたら、日本で言う最高ブランドが使っているのと同じ材質で同じ縫製で、ここに(日本のブランドが)頼んでいるんちゃうかなと思うような工場を見つけて、それで一目で惚れてですね。そこにとりあえず500個テントを頼んできて、それだけではなくて、その会社の工場の株を出資してきましたですね。約半分くらいうちのグループの出資になって、ということは、ベトナムに我が社のテント製造工場ができたということです」
●すごーい! ベトナムに!
「すごいでしょ! で、そのほかにぬいぐるみ工場みたいのがあって、そこへ行ってどうしても今回、発注してきたいものがあったんですよ! 何かというと、お若いかただからご存じかもしれませんが、今TikTokで『ネコ、ニャンニャンニャン』(*)がバズっているんですって! この間、聞いたら、一億回再生されたというぐらい!

その『ネコ、ニャンニャンニャン』がむちゃくちゃバズっているというのを聞いて、さらにその時にむちゃくちゃ売れたのが『ネコニャンキャップ』というやつなんです! これ、私が考案したんですけど、バズっている間にベトナムで作ってきちゃろ! と思ってですね。これも500個限定で・・・だからみなさん、『ネコニャンキャップ』を家宝にしていただこうと思いますけれど(笑)」
(*編集部注:『ネコ、ニャンニャンニャン』はあのねのねの79年の大ヒット曲)
●ベトナムでの収穫はすごくたくさんあったんですね!
「そうですね。ほかにもベトナムのブレーンに頼まれて・・・ニャチャンというところがあるんですよ。これからはハワイじゃなくてベトナムのニャチャンだと、新婚旅行もね。そのくらい良い観光地なんですが、その村に日本人村を作るプロジェクトがあって、そのプロデューサーということで・・・いわゆるアウトドア系のグランピングとかコテージとか、いろんなものを作る、湖もあって、そういうところの要請があって行ったというのもひとつですね」
「森と湖の楽園」をリニューアル!
※河口湖にある「森と湖の楽園」をリニューアルしているそうですが、どんなところを変えているんでしょうか。
「まず第一のリニューアルは、私がリニューアルされてしまいましたね(笑)」
●清水さん自身が!?
「そうそう、私の名前入り、顔入り写真の看板が外されてしまいました(苦笑)」
●あははは〜(笑)
「これは、ビジネスや事業にとって絶対乗り越えないといけないことで、いつまでも清水国明の名前で事業するわけにもいかないし、中西という私の懐刀というか右腕というか、そいつがずーっとやっていて・・・それから田中とかね。そういう人にどんどん任している、人的なリニューアルが行なわれています。
私があの頃、一生懸命頑張ったデッキ作り! 広いデッキを作っていて、この間行ったら壊されていました(苦笑)。薪だらけになっていましたけど、それでいいんですよ。木も腐っちゃうからね。そういうのに若い連中がどんどん取り組んでくれているから、それはそれで嬉しいなと。
だからと言って、俺は老兵は去るのみではなくて、新しく千葉県の鴨川に、LIVER HOUSEキャンプ場というのを作りました。今、手賀沼というところにも、今度ツリーハウスキャンプ場を森の木の上に、今はとりあえず10棟作るんですけど、木の上でテントを張ったり、小屋を作ったりする、そういうウッディなキャンプ場をふたつ作ってます。さっきのベトナムを入れると3つ、それから山口県の“ありが島”も入れると4つ作ってますかね」

●「森と湖の楽園」は研修施設としても利用されているということなんですよね?
「そうなんですよ。キャンプ場をやってすごく苦労したのが、シーズナリティって言うらしんだけども、季節変動があるじゃないですか。いい季節、春から夏にかけてとか、まあ秋もしばらくはいいんだけど、寒くなるとぴたーっと(お客さんが来ない)。ただ従業員を養っているだけになってしまう・・・。
それを平均的に収入を得るにはどうしたらいいかというと、繁忙期、混んでる時じゃない時にお客さんが来るようなシステムというかニーズを開発しなきゃいかんということで、企業研修、内定者研修、幹部研修の野外版を考案しました。
野外で焚き火を囲んで、自分の夢とかモチベーションとか、それからチームビルドっていうのをやったら、バカ受けでね。160社くらいが毎年リピートしていただき、これはほんとに背水の陣で、もういかんなという時に思いついた、ひとつのビジネスモデルなんですよ。
これ、いろんな自然体験施設にもおすすめしていて、講師も要請していますので、これから役立っていくんじゃないかと思いますね」
(編集部注:お話にあった千葉県・鴨川のキャンプ場、そして手賀沼に作っているツリーハウスのキャンプ場は、LIVER HOUSEに登録すると利用できるそうです)
念願の漁師さんに!?
※YouTubeの「くにあきの自然暮らしチャンネル」の動画で、瀬戸内の漁業協同組合の正組合員になったと喜んでいらっしゃいました。これはプロの漁師さんになったということですか?
「これね、準組合員っていうのは、どこの漁業組合も年会費さえ出せば、組合員になれるんですよ。もう4年から5年くらい経つから漁業組合員長に、ねぇそろそろ正組合員にしてよ〜って、魚釣りの腕は認めてもらったからね。そうしたら、住民票もない奴を正組合にできないとおっしゃったんですよ。はっは〜そうくるかということで、俺はそれまで富士河口湖町の特別町民で、住民票を移せなかったんですね。東京にも暮らしていたんだけど・・・。
で、去年の暮れに山口県大島郡周防大島町というところに住民票を移したんです。そうしたら、その組合長が、正組合員にせざるを得ないじゃない!? 男の約束ですから、いやおうなしに正組合員にして、私の船に正組合員の証っていうのがぼーんと(貼られたんですよ)!
この喜びはうまくは言い表せないんだけど、漁師群がガーッと釣りしている時に、プレジャーボートでは入っていけない漁場があるんですよ。もちろんそこには普通のボートは行けないんだけど、準組合員の時にもちょっと後ろめたいわけね。ところが正組合員だと、おらーどけどけ〜、おらおら〜とか言って、もう完全に漁師はちまきしながら、釣りができるっていうこの喜びはたまりませんね(笑)」
(編集部注:清水さんは山口県の周防大島の廃校を利活用してワーケションヴィレッジを作る事業も手掛けていらっしゃいます。5Gのサブシックスという通信方法が導入されれば、大容量のデータをあっという間に送信できるということで、地方創生にもつながる事業として注目されているそうです)
友だち再確認ライヴ
※清水さんは、自然を体験できる施設を、河口湖の林の中や、瀬戸内海の無人島、そして千葉県の鴨川や手賀沼にも作っていらっしゃいます。やはりそこには、自然体験が「生きる力」をつけるという思いがあるからなんですか?
「そうですね。これ人類のって(笑)また大きな話になるけども、我々の最終的な着地すべきゴールというのは、森から出てきて、やっぱり森に還る、海に還るというようなところなので、そのゴールを手放さずにっていうか、見失わずにずっとそっちへ漕ぎ続けて行かなければいけないんですよ。
自然を遠ざけたり自然から離れようとする動きは、不自然なんですね。あんまり心地よい未来に到達しないと俺は思っているので、やっぱりなるべくみなさんを自然にいざないたいということとか、そういうところでの活動というのに、私は重きを置いているということでしょうかね」
●清水さんはいつもパワフルで、いつも何かに夢中になっているイメージがあるんですけれども、その原動力ってどこからくるんですか?
「う〜ん・・・これは、マイクの前では言えないようなこともあるんですけど(笑)、あのね、俺71歳になったんですけど、若い奴が、いやすげ〜なって・・・俺の想像の中では、71の爺さんが女の子を追いかけるのは一切なかったんですけどもね。ところが71になっても可愛い子がいたらね、声かけるしね。そういうことかな・・・急になんていうか歯切れが悪くなりましたですね(苦笑)」
●あははは。今後ライヴをされるっていうお話をうかがったんですが・・・?
「そうです。歌を忘れたおっさんみたいになってますが(笑)、6月12日! はい、メモしてください! 6月の12日に曙橋にある”Back in Town”というアコースティック専門のライブハウスがあってですね。すごく著名ないろんなアーティストが海外からも来ているところで、(キャパは)80人くらいなんですけど、そこで”ライバーハウス祭りNFT ”、” Non-Fungible Tomodachi”っていう、かけがえのない友だちというタイトルです。NFTでチケット販売するんですけれども、そのライヴをやります。
”清水国明 友だち再確認ライヴ”っていうんですけども、一回、友だち確認ライヴっていうのを横浜のほうでやったんですよ。その時に、いろんな友達とかアキラとか、いっぱい来ていただいたんですが、なんと! 原田伸郎が来なかったんですよ(笑)。なんでなんや、お前友だちじゃないのか!? ってことになって、もう一回リベンジで、友だち再確認ライヴというのを6月12日にやります。それに原田が来るかが勝負!(笑)まあそんなのやりますんでぜひぜひ! ヒマなかたはお越しいただけたらなと思います」
☆この他の清水国明さんの定点観測シリーズもご覧下さい。
INFORMATION
『ライバーハウス祭りNFT- Non-Fungible Tomodachi -清水国明 友だち再確認ライヴ』
◎開催日時:6月12日(日)夕方6時から
◎会場:曙橋のバック・イン・タウン。チケット代は4,500円。
果たして、あのねのねの相棒「原田伸郎」さんは来るのか!? Tik Tokでバズっている「ネコ ニャンニャンニャン」は聴けるのか!? ぜひあなたの目と耳でお確かめください。復刻した「ネコニャンキャップ」の販売もあるそうですよ。
LIVER HOUSEオリジナルのテント、鴨川の専用キャップ場のことなど、いずれも詳しくは「LIVER HOUSE」のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎「LIVER HOUSE」HP:https://liverhouse-xwin.com/
清水さんプロデュースの、河口湖にある自然体験施設「森と湖の楽園」、瀬戸内海の無人島「ありが島」についてはそれぞれのオフィシャルサイトを見てください。
◎森と湖の楽園HP:http://www.workshopresort.com
◎ありが島HP:http://arigatou-island.jp
2022/5/15 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、山岳収集家の「鈴木優香(すずき・ゆか)」さんです。
山岳収集家とは鈴木さんオリジナルの肩書で山に登って、写真を撮って、景色を集め、それをもとに物づくりや、文章を書いたりする人のことだそうです。
鈴木さんは2011年に、東京藝術大学大学院を修了後、アウトドアメーカーに入社、商品企画やデザインを担当。その後、独立し「マウンテン・コレクター」プロジェクトをスタート。現在は山と旅をライフワークに、写真、デザイン、執筆などを通して表現活動を行なっていらっしゃいます。
きょうはそんな鈴木さんに山の風景をハンカチに仕立てる「マウンテン・コレクター」プロジェクトや山への思いをうかがいます。
☆写真協力:鈴木優香

ハンカチ、こだわりは透け感!?
※鈴木さんが進めている「マウンテン・コレクター」プロジェクト、改めて、どんなプロジェクトなのか、教えてください。
「これは2016年から私が始めたプロジェクトなんですけども、山で見た景色をハンカチに仕立てていくプロジェクトです。具体的には、山に登ってそこで撮影した写真を布に落とし込んで、日記を書いていくようなイメージで、山の景色を表現しています」
●どうして始めようと思ったんですか?
「このプロジェクトを始めたきっかけは、ずっと山で撮りためてきた写真を何か手に取れる、形のあるものにして残していきたいと思ったからです」

●どうしてハンカチだったんですか?
「ハンカチにしたのは、もともと私は大学が美大に通っていたんですけれども、そこでずっと布を扱う作品を作っていたことと、あとは大学卒業したあとにアウトドアメーカーに勤めていました。
そこでも登山用のウェアなどを作っていて、ずっと布を扱う仕事をしてきたので、私が写真を落とし込むのであれば、やはり紙にプリントするのではなくて、布に載せるのがいいのではないかなと思ってハンカチになりました」
● Tシャツとかではなくハンカチなんですね。
「そうですね 。Tシャツなどにしてしまうと、やはりそのものに意味が生まれてきてしまうので、やっぱり山の美しい景色を純粋に表現するのであれば、ただの四角い布のほうがよかったんですね」
●鈴木さんのサイトで商品を見させていただいたんですけれども、ハンカチが透ける素材なんですね。
「そうですね、とても透け感があって、光が当たるとその柄が見えなくなってしまうくらいの透け感のある生地を使っています」

●透ける素材っていうのは、具体的にどういった素材なんでしょうか?
「このハンカチで使っている素材は綿の素材なんですけども、とっても軽やかで、私のイメージとしては山にいる時の澄んだ空気を思わせるような透き通った感じとか、あとは二度と出会うことはできない山の景色の、儚い感じを表したような薄い生地になっています」
●作品いろいろ見させていただきましたが、どの商品も本当に色も美しくて、その場の空気感が伝わってくるような、本当にもう何枚も集めたくなるような素敵なハンカチでした!
「ありがとうございます」
●最初は、ほかの素材とかでも試されていたんですか?
「もう最初からあの透ける素材のイメージが頭に浮かんでいて、もう絶対にこの生地がいいなということで、それで決めてしまいました」
(編集部注:鈴木さんが作るハンカチ、お話にあったように透け感のある生地が特徴なんですが、初めて試作品を見た時にご本人も感動し、そして自信も芽生えたそうです)
素敵!山の景色がポケットに
※鈴木さんは物づくりのポリシーとして、実体のあるものが重要だということで、デジタル・カメラではなくフィルム・カメラで撮影されています。フィルムは撮れる枚数が限られているので、1枚1枚を大切に撮っているそうです。
被写体は山の風景だけじゃないんですね?
「山全体が写っている写真ももちろん撮るんですけれども、もっと寄った被写体、例えば水面を撮ったものとか、あとは岩の色を撮ったものとか、そういうものも多いですね。あとは山小屋のご飯とか、ちょっと身近に感じられるようなものも撮っています」
●写真を撮りたくなる被写体は、どんなものなんですか?
「やっぱりその時々で自分の流行りがあって、最近は岩の色とか、あと木の幹の枝のラインとか、そういうものに注目して撮ることが多いですね」
●ハンカチにする写真は、どんな目安で選んでるんですか?
「やっぱりその山行の中で、いちばん印象に残った写真をハンカチにすることが多いですね。例えば、花がとっても美しい山だったら、花の写真になることもあるし、あとは眺めのいい山であれば、遠くの山を撮ったものとか、山によっていろいろな写真をハンカチにしています」
●鈴木さんの商品はすごく色合いも素敵だなって思ったんですけど、色に関してのこだわりはあるんですか?
「そうですね。色はほとんど加工などはしていなくて、撮ったものをそのまま使っている感じですね。やっぱり山の景色って本当に何もしなくても綺麗なので、撮ったそのままをなるべく活かしたいなと思って作っています」
●実際に購入されたかたがたの反応は、いかがでしたか?
「結構綺麗なのであんまり使いたくないというか(笑)、飾っておきたいというかたも多くて、お部屋に写真を飾るような感じで飾っていただいているかたも多いですね。
ただ私はやっぱりハンカチとして使っていただきたいなと思っていて、山の景色がポケットに入っているってすごく素敵だと思うので、そんな感じで山に出かける時とか、あとは旅行に行く時とか、日常でも使っていただけたらいいなと思っています」
(編集部注:鈴木さんは、ハンカチにする写真は、しばらく寝かせて・・・1ヶ月とか長い時には1〜2年おいて選ぶそうですよ。その理由として、山から戻ってすぐに選ぶと、どれもいい写真に見えて、たくさん選んでしまうからだそうです)
憧れのエベレスト街道
※鈴木さんが山登りを本格的に始めたのはアウトドアメーカーに入社した2011年から。コロナ禍になる前は月に2〜3回のペースで国内の山へ出かけていたそうです。
ところで鈴木さん、以前、ネパールに行ったそうですね?
「そうですね。2018年の秋に初めてネパールで山登りをしました」

●どうしてまたネパールを選ばれたんですか?
「やはり、世界最高峰のエベレストがあるということと、あとはエベレスト街道というエベレストに登る人たちが必ず通る登山道があるんですけど、そこに強い憧れがあったので、いつか行ってみたいなとずっと思っていたんですね。
で、ちょうどいいタイミングで友人に行ってみないかと誘ってもらったので、ちょっと勇気を出して行ってみました」
●実際に行かれていかがでした?
「山のスケールが日本と全然違うんですよね。標高が7000メートル、8000メートルを超えている山がほんとうにたくさんあって、見上げないと視界に入らないくらいの景色がずーっと続いているというような感じで、ほんとうに衝撃を受けるような、世界観が変わったと言ってもいいほどの景色でした」
●日本だと、どのあたりによく行かれるんですか?
「日本で好きな山は、立山ですね。富山県の立山です」

●どんなところが魅力なんですか?
「立山は、ロープウェイとかケーブルカーを乗り継いで、2400メートルくらいのところまで行けるんですけど、そこからわりと簡単に3000メートルの山頂に立てるというのもあって、よく足を運んでいます。
そこから見る景色が本当に、なんというか広大で壮大な素晴らしい景色なので、何度も足を運んでしまいます」
●鈴木さんが楽しみにしている、山での時間ってどんな時ですか?
「やはり稜線から見晴らしのいい景色を見ながら歩くことが、いちばんの楽しみですね」
1週間だけのオンライン販売
※「マウンテン・コレクター」プロジェクト、今後はどんな展開になりそうですか?
「マウンテン・コレクターのハンカチを、山に登ってハンカチを作るという活動はずーっと同じようにコンスタントに続けていって、私が山に登り続ける限り、続いていくというような感じですね。
あとはやっぱり今は行きにくくなってしまったんですけど、海外の山にまた登って、そこで写真を撮って作品にしていく活動もしたいなと思っています」
●ハンカチ以外での何か企画はあるんですか?
「以前、ハンカチ以外に、『トレッキングジャーナル』という冊子を作ったことがあって、山ごとに一冊ずつ作るような写真集と、それにエッセイを付け加えたものを作ったんですけども、そういうものもやっています」

●どんなことを伝えたいっていう思いがあるんですか?
「本当に私がやっている活動は、山を歩いた自分の記録としてやっているので、誰かに何かを伝えたいという気持ちが強くあるわけではないんですけど、やっぱり私の写真を見て、山ではこんな綺麗な景色が見られるんだなとか、あとは行ってみたいなという気持ちになってくれたら嬉しいなと思っています」
●鈴木さんの商品はどこで手に入るんでしょうか? リスナーさんが欲しいと思った場合はどうしたらいいのでしょうか?
「はい、通常はオンラインストアがメインで販売していて、ちょうどきょう5月15日から1週間、オンラインストアをオープンしているので、もしよろしければ、そこで見ていただけたらいいなと思います」
●販売期間が1週間ということですか?
「そうですね。基本的には月に1週間だけオープンして、それ以外はずーっと閉めています」
●どうして1週間だけの販売なんでしょうか?
「制作する時間をしっかり取りたいというのと、それと販売して発送するなどの時間と、あとは制作活動と・・・あとは山に行ってしまう時間が長くなったりとか、長期で遠方に取材に行ってしまったりすることもあるので、1週間と決めて、それ以外はほかのことをするというようにメリハリをつけています」
●そのメリハリがあるからこそ、あんな素敵な商品が生まれるんですね!
「はい、そうだといいですね」
●改めて、この「マウンテン・コレクター」を含め、活動を通してどんなことを伝えたいですか?
「先ほどお話ししたことと同じになってしまうのですが、私の作品を見て、山の綺麗な景色に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいなと思います」
INFORMATION

ぜひ鈴木さんが作っているハンカチをオフィシャルサイトで見てください。山の風景が透け感のある生地で表現されていて、とても素敵なんです。ハンカチを広げた状態でも、もちろん綺麗なんですが、畳んでも、なんともいえない美しさがあるんです。
5月15日から1週間、オンラインストアで販売されます。プレゼントにもおすすめです。ぜひポケットに山の風景を!
詳しくは鈴木さんのオフィシャルサイトをご覧ください。
◎オフィシャルサイト:https://www.mountaincollector.com/
◎オンラインストア:https://mountaincollector.stores.jp/
2022/5/8 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、東京大学大学院の教授「廣瀬 敬(ひろせ・けい)」さんです。
廣瀬さんは、地球の中がどうなっているのか、地球はどのように生まれ、進化してきたのかを調べている世界的な研究者でいらっしゃいます。
1968年、福島県生まれ。東京大学・理学部から大学院に進み、理学博士に。その後、東京工業大学、アメリカ・カーネギー地球物理学研究所などを経て、2017年から現職。専門は高圧地球科学、地球内部物質学。
そして先頃『地球の中身〜何があるのか、何が起きているのか』という本を出されました。この本は地球の内部を徹底的に解剖した、読み応えのある一冊です。
きょうはそんな廣瀬さんに、地球内部の構造や、中心部にあるコアの重要性、そして実験の成果についてうかがいます。

地球の中はドロドロ!?
※私たちの足もとにある地面の下がどうなっているのか、考えたことはありますか。土と岩石!? ドロドロの溶岩!?・・・果たしてどうなんでしょうね。
地球の内部はどうなっているのか教えてください。
「地球は、その中心まで地表から6400キロの深さがあります。それだけ掘っていかないと、地球の真ん中にはたどり着かないっていうことですね」
●その6400キロが、いろんな層に分かれているんですよね?
「そうですね。基本的には、まず我々の足もとは地表から2900キロまでが、石の塊でできています。そこを”地核”と言ったり”マントル”と言ったりするんですね。その下に金属の塊があって、その金属の塊は、実は大部分が溶けているんですね。だからそこはドロドロの金属なんです。
ところが、我々は金属のことをマグマとは言わないんです。マグマっていうのは、あくまで冷え固まると溶岩っていう石になるもの、それをマグマと言っているんです。金属がドロドロに溶けているものは、マグマとは言わないですね」

●本に”コア”っていうのも載っていましたけれども、このコアっていうのは何でしょう?
「コアが今言っているドロドロの金属です」
●では、地核があって、マントルがあって、そしてコアがあるということですか?
「その通りです!」

●どうして、それぞれ形状が違うんですか?
「まず、石はなかなか溶けないですね。なので個体というか、溶けていないということです。一方で鉄の塊の金属は、難しい話をすると、いろんな不純物が入っているんですね。鉄はなかなか溶けないんですけれども、不純物を入れると簡単に溶けるようになるんです。それでコアと呼ばれる鉄の塊は液体だということです」
●えっ! 液体!?
「ドロドロって言っているのは、液体だっていうことですよね。マグマも、イメージできないかもしれないけど、液体ですよね」
●金属っていうのがちょっとピンとこなかったです。
「我々の足もとには、深さ2900キロメートルまでは、石が続いていて、その下、地球の真ん中、6400キロの深さまでは、今度はドロドロに溶けた金属の塊があるっていうことですね。ただし、地球の真ん中のまでいくと、その金属も固体になるんです。それは溶けていない、固まっている、我々が知っている金属です。硬い鉄のことです」
(編集部注:地球はおよそ46億年前に誕生したとされていて、その時の地球はドロドロのマグマの状態で、その後、徐々に冷えて固まり、大気と海、マントル、そしてコアと、現在の姿に近づいていったそうです)
地球の深部は高圧高温
※地球の内部を調べるためには、素人考えでは、深い穴を掘って研究するのかなと思ったりするんですが・・・どんな方法で調べているんですか?
「地球の中の深いところの研究はいくつか手法があるんですけれども、私たちがやっているのは高圧実験といって、実験室で地球の深い部分を再現して、例えば石がどういう状態になっているかを調べています」
●実験室で地球の深いところがわかるんですね?
「そうですね。地球の深いところは、上からぎゅーって押されているので、高い圧力と、高い温度の環境なんですね。高圧高温の環境ってことです。そういう環境を実験室の中で作ってあげる。そうすると、例えば地表にある石が、全然違った石に変わるんです」
●どうなっちゃんですか?
「例えば、鉱物の色がどんどん変わっていったりとか、あまり電気を流さない鉱物が、すごく電気を流すようになるとか・・・非常によく知られた例だと、地球の深いところでできるダイヤモンドを地球の浅いところに持ってくると、本来はグラファイトといって鉛筆の芯になってしまうんです」
●え〜〜〜っ、ダイヤモンドが!?
「そうですね。逆にいうと鉛筆の芯を深さ150キロよりもっと深いところに持っていくと、ダイヤモンドに変わってくれます」
●え〜〜っ、全然違ったふたつに見えますけど・・・深さによって変わるんですね!
「そうです。もとの材料は同じなんだけれども、深いところに持っていくと全然違う物質に変わります。だから地球の深いところは、今我々が目にしている岩石とは全く違う岩石からできているんです」
(編集部注:廣瀬さんの研究室ではダイヤモンドを使った特殊な実験装置で地球内部の環境を作り出しているそうです)

大発見! ペラペラ剥がれる岩石!?
※廣瀬さんの研究室で以前、大発見があったそうですね。どんな発見をされたんですか?
「地球はまず表層に地核があって、その下にマントルという部分があると、先ほど申し上げましたね。両方とも岩石でできています。そのマントルの部分も、実はよく見るといくつかに分かれているんです。何が違うかっていうと、いちばんたくさん入っている鉱物の種類がどんどん変わっていく、そういうことになっているんですね。
私どもの研究室で発見したのは、そのマントルのいちばんたくさん入っている鉱物が、何回か姿を変えていくんですけれども、その最終形です。マントルのいちばん深いところで、どういう姿形になっているかを、その研究で明らかにしたっていうことですね。
論文が出たのが2004年のことなので、今からもう18年も前ですね。昔の話ですけど、当時はマントルの新しい部分、”マントル最下部層”っていうのが発見されたということで、かなり興奮したものですね」
●どうしてわかったんですか?
「実験室で高圧高温を作っていって、ある深さ、もしくはある圧力を超えたところで、急にその鉱物の姿形がガラッと変わったということですね。それがちょうどマントルの底の付近に対応していたということです」
●大興奮だったんじゃないですか? 廣瀬さん自身も!
「それは、もちろんそうですね。マントルのいちばん深いところ、たかだか深さ数百キロくらいの領域なんですけれども、そこの部分は、それまで知られていなかった岩石からなるってことが分かりましたから。またその岩石、もしくは鉱物の性質が、その上のほうにあるマントルとは全然違うものだったので、非常に面白かったですね」
●どう違うんですか?
「みなさん”雲母(うんも)”って、分かりますか? ペラペラ剥がれていくような鉱物があるんですね。雲母がなぜペラペラ剥がれるかっていうと、結晶が層状になっているんです。原子が層状に積み重なっているんですね。なので、層と層の間がペラって剥がれるんです。そういう層状の鉱物なんですね、”雲母”っていうのは。
実はグラファイトも層状の鉱物で、だから鉛筆の芯として書けるんですね。簡単に剥がれてくれるので、鉛筆の芯になってくれるっていうことですね。マントルの底も、実はそういう層状の鉱物からなっていることが、その時初めて分かったっていうことですね」
地球は磁場に守られている
※2003年に『ザ・コア』というアメリカ映画が公開され、話題になりました。この映画は地球のコアの回転が止まり、地球の磁場が不安定になって地上が大混乱になるというSFパニック映画なんですが・・・コアは回転しているんですか?
「コアは地球の真ん中にあって、そんなの我々に関係ないじゃないかって、普通は思うんですけれど、全くそうではなくて、地球全体が磁石なんですね。
最近は使わないけれども、コンパスの針は北を向きますよね。それは地球が磁石であることの証拠なんです。それで今、(針は)北を向くんですけれども、実は少なくとも77万年よりももっと前、かなり前の時代はコンパスの針は逆を向いていたはずなんですね」
●えーっ!? どうしてなんですか?
「それは、地球は磁石なんですけれども、電磁石と言って電気が流れている磁石なんですね。電気の向きを、プラスとマイナスを替えると、磁石のN極とS極が入れ替わる、そういうことが起きるんですね。地球はそういうことを何万年、何十万年かに1回繰り返しやっているんです。
そのN極とS極が入れ替わる時に数千年ぐらい、結構長い間、地球の磁石が弱くなってしまう。そうなると地球は宇宙とか太陽から来る有害な光、放射線というかなり有害なものがあるんですけれども、それを地球はまともに浴びてしまうんですね」

●え〜〜〜大変じゃないですか!
「そうですね。それで人類が絶滅するとか、そういうことは多分ないんです。どうしてかっていうと、人類が生まれてから数百万年経っていて、その間、N極とS極の入れ替わりは、数万年から数十万年に1回・・・要するに人類が誕生してから10回以上は経験しているので、人類が滅びちゃうとか、そういうことはないんだけれども、おそらく現代文明には非常に大きな影響があるだろうと考えられています」
●具体的にどんな影響が出てきてしまうんですか?
「よく言われているのは電子回路ですね。電気を使ういろんな装置がありますよね。例えばパソコンとかもそうなんですけれども、そういった電子回路が宇宙線の影響を受けて、駄目になっちゃうってことがよく指摘されています」
●磁場ってすごく影響しているんですね、私たちの生活に。
「そうです。もし空気がなくなったら、みんな死んじゃうんだけど、空気があって当たり前だと思っているから、そんなにありがたがらないのと同じで、磁場があるのが当たり前なんで、みんな、ありがたくもなんとも思ってないんですけれども、実はなくなるととっても困ります」
●守ってもらっているんですね。
「そうですね。例えば、火星の研究は、最近すごく進んできているんですけれども、実は火星は約40億年前に磁石ではなくなった、そうしたらその2億年後くらいに今度は海が蒸発しちゃったんですね。だから地球も、もし磁石じゃなくなると数億年後くらいに、海がなくなっちゃうかもしれないんです。
だから本当に地球が磁石であること、別の言葉でいうと地球に磁場があることは、我々の生活もしくは環境にとって、ものすごく大事なことなんですけども、普段はもちろんそんなことは意識していないですね」
(編集部注:廣瀬さんから、約77万年前に地球のN極とS極が入れ替わったというお話がありましたが、その痕跡が確認できる場所が千葉県市原市の養老川沿いで見つかった世界的にも重要な地層。2年前に「チバニアン」として正式に地質年代の名前として採用されたことは記憶に新しいですね)
コアは不純物がたっぷり
※今後の研究でどんなことを解き明かしたいと思っていますか?
「まだまだ地球の中ってわからないことがいっぱいあって、不思議だって言われていることがたくさんあるんですね。中でも先ほどからたくさん話に出ているコア、金属の塊なんですけども、たくさんの不純物が入っていると言われています。
ところがどういう不純物なのか、例えば、水素だったり酸素だったり炭素だったり、どういう元素がどのぐらい不純物として入っているかは、実はよくわかっていないんですね。
地球のコアは地球全体の重さ、質量の三分の一を占めているので、その三分の一のところに不純物がたっぷり入っているんだけど、その不純物が分からないので、地球全体の化学組成は、実はまだわかっていないんですね。
逆に言うと、それさえわかれば、地球を作った物質は一体何だったのか、地球はどうやってできたのか、そういう地球の起源、誕生の謎を飛躍的に解明できると思っています。今コアの化学組成、不純物の正体を明らかにしようと頑張っているところです」
INFORMATION
地球内部のことをもっと知りたいというかた、ぜひこの本を読んでください。私たちが暮らす地球がどんな星なのか、興味深い話が満載です。地球科学の入門書的な一冊、おすすめです。講談社のブルーバックス・シリーズの一冊として絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎講談社HP:https://gendai.ismedia.jp/list/books/bluebacks/9784065266601
廣瀬さんの研究室のサイトもぜひ見てください。
2022/5/1 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、世界を巡る定住旅行家のERIKOさんです。
ERIKOさんは鳥取県米子市出身。モデルの活動と並行して定住旅行家としても活躍、これまでに訪れた国は50か国以上。滞在したご家庭は100家族を超えているそうですよ。
この定住旅行家という肩書を初めて聞いたかたも多いと思います。定住旅行とは、ひとつの場所に滞在する旅行のスタイルというのはわかるんですが、普通の観光とはどう違うのか、そしてその魅力はどんなところにあるのか、きょうはERIKOさんにじっくりお話をうかがいます。
☆写真協力:ERIKO

優等生じゃ面白くない!?
※それでは早速、お話をうかがっていきましょう。定住旅行家とは旅先に定住しながら、その体験を書くお仕事ですか?
「はい。世界各地に出掛けて、そこで、普通であれば、みなさんホテルとか宿泊施設に滞在されると思うんですけども、私の場合は現地の家庭に、本当に一般家庭なんですけれども、そこに滞在をして、その旅の様子を、具体的には暮らしを伝えることをライフワークにしております」
●1ヶ所にどれくらいの期間、滞在されるんですか?
「国によって滞在期間が違うんですけども、最低でも1ヶ月以上は滞在をしています」
●えっ! 1ヶ月以上、一般のご家庭にお世話になるっていうことですか?
「そうです。はい(笑)」
●そもそもどうやって一般のご家庭を探すんですか?
「全部、段取りは日本でやっていくんです。行きたい国を最初に決めて、地域もそうなんですけれども、そこからそこに行ったことがある人とか、そこと関係のある人に声をかけて、誰か泊まらせてくれる家庭を知りませんか?とか、知っている人いませんか?っていうのを聞いて、そこから話を進めていきます」
●では、まったくの知らない人っていうよりは、知り合いの知り合いとか、友達の友達とか・・・。
「そうです、そうです」
●へえ〜。ERIKOさん、おひとりで行かれるんですよね?
「基本的にはひとりで行かないと、人と一緒に行ってしまうと、その人と話す時間とか、過ごす時間が多くなってしまって、現地の人と交流をしに行っているので、時間がちょっともったいないなっていうのもあります。
受け入れるほうもひとりを受け入れるのと、ふたりとか3人、複数人を受け入れるのは多分違うと思うので、基本的にひとりで行ってます。そもそも私、人と一緒に旅行に行くのが苦手で・・・(笑)。ひとりが楽ですね」

●お客さんとして招かれるわけでなく、一般のご家庭に入って家族になるために、ERIKOさんなりに何か工夫されていることってあるんですか?
「私は自然体でいるんですね。末長く、私はお付き合いしていきたいので、1回定住した先に何度も行くことも結構たくさんあります。なので、その時だけではない、長いお付き合いをしたいなって思っていて、そうなると、そこの家のルールみたいなものとか、あとは風習みたいなのがあるじゃないですか。そういうのにもちろん合わせることをするんですけど、優等生だとあんまりよくないっていうか(笑)、なんでもかんでも”この子、いい子ね”だけだと面白くないんですよ、向こうの受け入れる人も。
なので、私が意識しているのは、自分からも何か相手に与えるというか、個性を出すことを意識していますね。この子、面白いなって思ってもらえると、長続きというか、そのあとの関係性もすごく長く続いていったりするので、あまり優等生にならないようにはしています」
(編集部注: お世話になるご家庭に滞在費を払っているのか気になりますよね。 ERIKOさんにお尋ねしたところ、最初にお金を払ってしまうと、ゲストになってしまい、本来の目的である、現地の本当の生活が見えなくなってしまうため、最初にお金の話はしないそうです。
そしてそこのご家庭を離れるときに、現地の平均給与や物価を参考に決めた滞在費をお渡しするそうですが、これまで滞在した100家族を超えるご家庭で受け取ったところはほんの少しだったそうです。生活を共にし、すでに家族のような関係になっているんですね)
言葉の使い方の価値観
※そもそもなんですけど、定住する旅のスタイルにこだわるのは、どうしてなんですか?

「もともとそんなに旅が好きではないっていったらあれなんですけど(笑)、旅を目的としていなくて、現地の人がどういうふうに生活しているのか、生きているのかがすごく気になるんですね。旅行とか観光というより、やっぱりそこにちょっと住んで、現地の人の目線で物事が見たいなっていうので、そうするためにはやっぱりホームステイしかないかなと思っています。
ただそういうスタイルで旅をされている方って、いらっしゃるとは思うんですけど、あまり私は知らなくて、それで自分で『定住旅行家』と名前をつけて活動しております」
●言葉はどうされているのですか?
「私はもともと定住旅行家になる前に、言語がすごく好きで、色んなところに留学をしていたんですよ。なので一応6カ国語を話すんですけど、そこで対応できる国もあれば、できないところは行く前に準備段階で、そこの言語を勉強してから行くようにしています。
準備はだいたい半年くらいかかるんです。その間に(外国語の)レッスンに通ったりとか、読み書きはできるようにならないと、例えばローカルのバスに乗れなかったりするので、一応読み書きと、あとは日常会話でよく使うだろうと思われる言葉は覚えてから行きます」
●文化とか習慣の違いで戸惑ったことはありますか?
「そうですね・・・例えば、それぞれの国で言葉の使い方の価値観が違ったりするのは、結構大きいな〜って思っています。例えば、ネパールに行った時、ネパール人は“ありがとう”ってあまり言わないんですよ。インドでもそうなんですけど、相手が困っていたら助けるのが当たり前なので、それに対して、ありがとうっていうことがすごく不自然だったりするんですよね。
日本人の感覚だと何かしてもらったら、すぐ“ありがとう”って言ってしまって、それがちょっと向こうの人は変に感じるというか、そういうのがあるので、言語的に使うタイミングとか、全然違うなっていうのはよく感じますね」
ジョージアの文化と言葉
※ERIKOさんは先頃『ジョージア 旅暮らし 20景』という本を出されました。以前はグルジアと呼ばれていた東欧の国ジョージア。大相撲の力士「栃ノ心」のふるさととしても知られていますよね。この本ではそんなジョージアの一般家庭に滞在したときの体験が綴られています。

ジョージアは「ヨーロッパ最後の秘境」とも言われているそうですね。どんな国なのか、教えてください。
「国土は北海道よりも少し大きいくらいで、地形は山岳地帯で、カザフ山脈に面しているっていうのもあります。カスピ海とか黒海の近くは温暖な気候であったりするので、すごく多様性に富んだ自然環境がある国なんですね。
人口は370万人しかいないんですけども、コロナ禍の前は観光客が年間500万人訪れていたっていうことなので、ヨーロッパの人からすると、有名というか人気の観光地っていう印象がありますね」
●文化ですとか、伝統でいうとどんな感じなんですか?
「結構、古風な国だなと思っていて、ずっと戦いの歴史がある国なんです。その中でも、ジョージア語がすごく古くからあって、そこに詩とか文学のベースがあるんですけども、国民の人たちはすごくそれを誇りというか、アイデンティティになっていて、しっかり継承している印象もありますね。
あとはジョージアは、キリスト教が世界で2番目に国教になった国なんですね。すごく古い歴史があって、国民の人たちはもちろんキリスト教を信仰されているんです。信心深いかたが多くて、そういったことが国民の人たちのマインドのベースになっていると思います」
●ジョージア語は勉強されて行ったんですか? 6ヶ国語の中にジョージア語は入っているんですか?
「6カ国語の中には入っていないですね。事前に少し勉強してから行きました」
●例えば、ジョージア語で、こんにちは!とか、お元気ですか?はなんて言うんですか?
「こんにちはは、”ガマルジョバ”って言います」
●ガマルジョバ!?
「はい、ガマルジョバって言います。元気ですか?は”ロゴラ ハルト”って言うんです。ガマルジョバって”あなたに勝利を”っていう意味なんですね。ジョージア語は言語学者の中では有名な言語で、独立言語なんですね。どこの言語グループにも属していない特殊な言語で、すごく古くからの歴史があります。
海外に行かれる時に、挨拶のひとつだけでも覚えて意味を調べると、すごくその国の特徴っていうか歴史が分かったりします。日本語だと”こんにちは”っていうのは”今日様(こんにちさま)”という太陽に向かって言う言葉なので、やっぱり”天照(あまてらす)”とか、そういった神話の感性が日本人の中にあると思います」
ジョージア人は宴会好き!?
※ERIKOさんは、ジョージアでは3ヶ所のご家庭に滞在されたそうですよ。

「その中でもすごくジョージアの文化に触れさせてもらったのが、東部の”カヘティ地方”っていう場所がありまして、そこがすごく印象に残っていますね。そのカヘティ地方はすごく有名なワインの生産地で、ジョージアはワインの発祥地なんですよね。国民の70〜80パーセントくらい、ご家庭でみなさん、ワインを自分で作る習慣があるんです。もちろん毎日、ご飯を食べる時にワインが出てきて、私も楽しませてもらいました。

そこでこれこそジョージアだなって思ったのが、”スプラ”っていう宴会なんです。宴会自体が儀式になっていて、タマダと呼ばれる司会者が演説をしたり詩を詠んだりりして、時計回りにみなさんそれぞれ演説をしていく儀式的な宴会みたいなのがあります。これは多分、ジョージア人に招かれると、おもてなしとして受けることのひとつだと思います」
●家庭で宴会をやるっていうことですか?
「家庭でもありますし、友達同士で集まってやるパターンもあるんです。家庭でご飯を食べるときもちょっと演説みたいな、スプラが行なわれることも結構ありますね」

(編集部注:ジョージアの食べ物で有名なのは「マッツォーニ」と呼ばれるヨーグルト。ご家庭に自家製のヨーグルトがあって、毎日欠かさず食べるそうです。特徴は水分が多くて、最初、口に入れると酸味を感じ、そのあと甘みが出てくるそうですよ。口当たりはお豆腐に近いとERIKOさんはおっしゃっていました。食べてみたいですよね)
※ERIKOさん、ジョージアではトレッキングに出かけたそうですね。
「そうですね。コーカサス山脈の近くの、スバネティ地方っていう場所があるんですけど、そこに滞在した時にトレッキングをしました。私は山がすごく好きなので、いろいろ見て回ったんですけど、中でも”ウシュバ山”っていう山があるんですね。ピークがふたつある特徴的な山なんですけども、そこに行った時はすごく美しいなって、非常に印象に残っている場所ですね」

日本に対する思い
※今までたくさんの国を訪れ、滞在されて、改めて定住旅行の醍醐味はどんなところにあると感じてますか?
「観光だと、本当に分からない人の暮らしだったりとか、生き方に触れられることがいちばん醍醐味じゃないかなと思います」
●やっぱり実際に行ってみて体験することで分かることってたくさんありますよね。一方で日本に対する思いに変化があったりはしましたか?
「日本に対して・・・うーん、そうですね・・・やっぱりすごく日本は有名な国ですよね。人口がすごく多いし、それは国力にも繋がることだと思うので、そういったことが、ずっと日本にいたらあまり感じなかったことですけど、客観的に見えるようになったかなって思いますね。
あとは、本当に日本はガラパゴスみたいになっているなっていうふうに思っていますね。もちろんそれが個性だと思うんですけど、陸続きじゃないので、そこはやっぱり島国としての特性がすごくあるなって思いますね。今グローバル化がすごく進んできていて、これから日本はどういった立ち位置でいろんなことを繰り広げていくんだろうっていうのはすごく見ています」
●コロナ禍でなかなか思い通りに海外に行けなくなってしまいましたけれども、今後の定住旅の予定がありましたら、ぜひ教えてください。
「今年はポルトガルに行く予定にしていますね」
●ポルトガルは何度目か、なんですか?
「ポルトガルは初めて行く国ですね」
●そうなんですね。どんな旅にしたいですか?
「そうですね。ポルトガルは日本に初めて西洋を持ってきた国のひとつでもありますし、すごく日本とは関係が深いので、そういった文化面も含めて色んなところを見ていきたいなと思います。昔、大航海時代は世界を制していたような国ですけども、今人々はどういうふうな生活をしているのか、そういったところも見られたらなと思います」
☆この他のERIKOさんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
ERIKOさんの最新刊。一般家庭に入り、生活をともにすることで見えてきたジョージアの人たちの生きかたや暮らし、文化などが綴られています。定住旅行家としての視点を感じる一冊。ERIKOさんが撮った写真もたくさん掲載されていますよ。ぜひご覧ください。東海教育研究所から絶賛発売中です。
そして現在、本の発売を記念して、ジョージアゆかりのグルメがあたるキャンペーンを実施中!詳しくは出版社のサイトをご覧いただければと思います。
ERIKOさんのオフィシャルサイト、そしてYouTubeチャンネルもぜひ見てくださいね。
◎ERIKOさんオフィシャルサイト:http://chikyunokurashi.com/
◎YouTubeチャンネル:
https://www.youtube.com/channel/UCzbr3YbLejEbjq2LTb2O36g
2022/4/24 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、自然写真家「高砂淳二(たかさご・じゅんじ)」さんです。
高砂さんは1962年、宮城県石巻市生まれ。ダイビング専門誌のカメラマンを経て、1989年に独立。これまでに世界100カ国以上を訪れ、自然や生き物、星空や絶景などを捉えた、まさにミラクルな写真を発表、数多くの写真集も出されています。
そんな高砂さんの最新の写真集が『Aloha〜美しきハワイをめぐる旅』。ハワイの島々で撮った海や山のダイナミックで美しい風景、生き物や植物など、素晴らしい作品を掲載した集大成的な写真集なんです。
きょうはそんな高砂さんに、30年以上通い続けるハワイの自然や先住民のハワイアンから学んだ知恵のお話などうかがいます。
最新の写真集『Aloha〜美しきハワイをめぐる旅』を直筆サイン入りで3名のかたにプレゼントします。 応募方法はこちら!
☆写真協力:高砂淳二

大事な言葉、Aloha
※写真集のタイトル『Aloha〜美しきハワイをめぐる旅』にはどんな思いが込められているんですか?
「”アロハ”っていうのは、みんな聞いたことがある言葉だと思うんですけど、ハワイの人たちの間ではいちばん大事にしている言葉です。ひとことで言うと愛とか、慈悲だったり優しさだったり、色んな意味合いがありますね。ハワイアンはこれをいちばん大事にしています。
僕はハワイに長くずーっと通っている中で、先住民のハワイアンの、色んな人に色んなことを教えてもらっていて、ふたことめには、”アロハでいきなさい。アロハをシェアしなさい”って言われています。それで僕の中でもアロハがいちばん大事な言葉になったので、タイトルはこれだよね! と思って付けたんですね」
●そうなんですね。今回の写真集は、ハワイの魅力がぎゅっと詰まったような集大成的な作品集ですよね。
「そうですね。初めて行ったのは、1986年とか1987年とかそんなもんなんですよ」
●もう30年以上前ですね。
「そうですね。真剣にというか、通い始めたのは2001年からですから、いずれにしても長いですよね」
●写真集に掲載されている写真の中から、特に気になった作品についてうかがいたいと思います。まずは、この夕方の空の写真! これすごいですね〜。グラデーションになっていて、薄紫、青、黄色、オレンジ、赤・・・って、なかなか日本では見られない空の色ですよね。
「そうですね。日本でも出ないことはないと思うんですけども、なんだろうね・・・ハワイにいる時って割と気持ちもゆったりして、空を見上げたりする気持ちのゆとりがあるっていうのも、あるんだと思うんですよね」

●そうなんですか。私、ヤシの木が大好きなんですけど、下からヤシの木を撮っている写真がありましたよね。青い空に向かってヤシの木が伸びていて、すごく気持ちのいい写真だなって思ったんですが、これはどこで撮った写真ですか?
「これはカウアイ島のカパアっていう町の、ショッピングセンターから少し先に行った所って言いますか・・・割と人も住んでいるようなところなんですけどね。ヤシ林があって、そこに入り込んで真上を見たら、こんな感じでニョキニョキっと空に向かって、そびえ立っているみたいな感じでしたね」
●やっぱりハワイと言えば、ヤシの木っていうイメージもありますよね。
「そうですね。南国のイメージで、日本人もやっぱりヤシの木を見ると、憧れが
わき上がってくる感じですよね」
●私のひとり暮らしの家にも、ヤシの木の写真を飾ってあります(笑)。
「そうなんですか。僕も昔、大きいヤシの木を事務所に飾ったりしてましたね。でも実はハワイには昔、ヤシの木はなくて、ポリネシア人が持って入ったんですよ」
●そうなんですか。
「ヤシの木は、もちろん実も食べられるし、中のジュースも飲めるし、あとはココナッツの内側の繊維を使ったりとか、木の幹を使ったりとかね。全部が使える有用な木で(ポリネシアの島から)運んで、そこからなんですよね。ハワイの今のシンボルですけどね」
ドローン撮影の利点
※最新の写真集には、去年10月にハワイに行って、ドローンで撮影した写真も掲載されています。ドローン撮影の良さはどんなところにあるのか、お話いただきました。
「ヘリコプターとかセスナでも、もちろん空撮はできるんですけど、真下の写真を撮ることはちょっと無理なんですね。ヘリコプターでも斜め下くらいは撮れますけれどね。あとは細かいところに、あそこにピンポイントで行きたいとか、そういうことはなかなか(ヘリコプターは)難しいですけど、ドローンだと、許可されているエリアの話ですけど、例えば、あそこの崖っぷちに僕がいたら、こんな風景が見えるのにっていうような、イメージのまんま、要するに自分の目だけをそこに運んで撮れる感じなんですよね」

●例えばこの写真集では、どの写真をドローンで撮ったんですか?
「表紙の写真、これはビーチと海が写っていますよね。どこの海だろうって思うかもしれませんけど、日本人には有名なアラモアナ・ショッピングセンターの前のアラモアナ・ビーチなんですよ」
●へぇ〜! 真上から見ると、こうなっているんですね。
「そうなんですよ。しかも去年の10月はコロナで日本人は全然行っていないし、アメリカ人もやっと行き始めていた頃なので、水もすごく綺麗になっています」
●そうですね〜。エメラルド色というか、またこれもグラデーションになっていて綺麗ですね。
「上からよく見ると、ビーチサンダルが並べてあって、そこからみんな海に入った様子とか、細かく見ても結構楽しいですね(笑)」
●ドローンだと、こういう楽しみ方ができるんですね〜。
「そうですね。海に潜るとか、波の上でカヌーに乗りながら撮影したりすると、実際になんて言うかな・・・そこに棲んでいる生き物も、自分もそこにお邪魔して撮ることで、臨場感とか(生き物との)関係性を持って撮れたりしますね。波乗りしている人の写真だとしても、こっちも波に一緒に乗って撮ることで、波に乗っかっている感がやっぱり違うんですよね、陸から撮るのとは」
●確かに、今回の写真集は生き物の写真も多いですけれども、例えばイルカが高く飛んでいるような写真は、よし飛ぶなっていうのは、なんとなく分かるものなんですか?
「そうですね。イルカは一回(海面から)飛び出すと、上手くすればですけど、何か所かで何頭かがジャンプし始めたりするんですよ。一頭が飛ぶともう一回そのイルカが飛ぶ可能性も結構あって・・・だから一発飛んだの見つけたら、すぐにそこにカメラを向けてピントを合わせておいて、来い来いって(笑)、そうするとたまにビュンと飛んでくれるんですよね」
●すごく躍動感にあふれる写真でした!
「そうですね。なかなか簡単じゃないですけどね」

月の光で出現する夜の虹
●夜の虹の写真「ナイトレインボー」がとっても印象的でした! 夜に虹が出ることを私は知らなくて・・・この写真はどの島で撮ったんですか。
「マウイ島で、まさに(ハワイに)通い始めた2001年に見たんですよ! その時はちょうど先住民の人に出会って、不思議なハワイの、先住民の色んな知恵とか自然感みたいなものが面白くって、そういうのを聞いてハマり始めた時に、ナイトレインボーの話を聞いて、数日後のある夜に、バン! と出たんですね」

●へぇ〜〜! 夜の虹が出る条件っていうのは?
「基本的には、昼間に雨が降って太陽の光で虹が出ますけど、これが太陽の代わりに月なんですよ。ある程度、光が強くないといけないので、満月とかそういう時のほうが出やすいんですね。
太陽の昼間の虹の時も、朝とか夕に出ることが多いと思うんですけど、光源が高いと出ないんですね。なので、朝とか夕方の(光源が)低い時に出る。夜の虹も同じで、月が低い時に出ますね。でもなかなか条件って揃わないんですよ」
●そうですよね〜。
「昼間は割と、にわか雨的なものとか、通り雨とかありますけど、夜はあんまりそういうのは・・・大地が暖められて雲ができるっていうのがないので、結構珍しいですよね」
●初めてご覧になった時にいかがでした?
「いや〜もう震えましたよね。ちょうど3日前にそのナイトレインボーの話を聞いたばっかりだったんですね。そんなタイミングで見たもんだから、うわ〜やばい! (笑)って感じでしたね」
●本当に簡単には撮れないものだと思うんですけど、次からの撮影では、よし来るぞっていうのは、なんとなく予感があったりするんですか?
「いや〜全然ですね。もうそこから結局、ナイトレインボーにハマって、それを探す旅に何度も何度も行くことになって・・・でもなかなか見られないので、本当に苦労しましたね」
●ナイトレインボーは、今まで何回くらい撮影に成功されたんですか。
「そうですね・・・ハワイで10〜15回くらいでしょうかね。あと他の国でも、ニュージーランドとか、それからアフリカとか南米でも見ましたね」

ハワイアンの知恵に学ぶ
※先住民のハワイアンから生き方とか、自然との接し方のようなことを教えてもらったそうですが、どんなことを教わったんですか?
「そうですね。まず”アロハ”が大事だよということですね。アロハは、色んな人が色んな表現の仕方をするんですけど、僕が感じた言い方だと、基本的には”愛”なんですね。
この空間は、本当はそれで満たされていて、僕らの中もいつもアロハがいっぱいあるんだけど、それをちゃんとシェアしたり、アロハを与えようと、そういうふうな意識を持った時に、それがぐるぐる回り出して、自分の中を駆け巡るというのかな・・・外からどんどん入ってくるみたいな感じになるような気がするんですね。
だからそういうことをやればやるほど、なんか自分も元気になっていくっていうのかな・・・日本でいう”気”とか、色んなエネルギーみたいなのがありますけど、
そういうものの温かいバージョンというか、そういうものかも知れないですね。
そんな大切さを教わったことと、あとは”ホオポノポノ”っていうのを聞いたことが、もしかしたらあるかもしれませんけど、自分を取り巻く色んなものとの接し方をすごく大事にしていますね。
基本はアロハなんですけども、必ずなにか、例えば誰かと接するとか、それから動物もそうだし、自分と地球との関係もそうだし、そういう時にちゃんとアロハを持って接しようっていう気持ちを持つとかね。
それから尊重する。例え相手が人間であっても地球であっても生き物であっても、尊重することとか。それから物を食べたりする時も、何かをもらう時も感謝の気持ちを持つとか。いさかいになりそうな時には、許そうっていう気持ちを持つとかね。
そういうのをちゃんとやっていくことで、周りとの関係が構築できて、もっと言うと、ハワイアンの人たちは、自分の周りの環境は自分が作り出していて、自分を写している鏡みたいなものだって言うんですよ。
だから、そういうふうに接すれば、多分周りもそんなふうに返してくれるから、気づいた時にはそういうものが周りにあるっていう状況なんだと思うんですよ。だからすごくシンプルだけど、すごい知恵だなと思いますね」

※高砂さんは、カウアイ島のフラの指導者「クムフラ」のプナ・カラマ・ドーソンさんと一緒にいる時に、こんなことがあったそうですよ。
「ある時に、崖に行って海見ていたら、ウミガメが顔を出したんですよ。それを見たプナさん、”まあ〜私たちの兄弟のウミガメだわ〜”って。ホヌって言いますけど、ウミガメは。”ホヌだわ〜”って感動して。いつも見てるだろうって思うんですけど、感動して。なんていうのかな・・・兄弟姉妹に会ったみたいな感じで喜んで、アロハを示していましたね。やっぱり僕らみたいに都会に住んでいる人と、本当に感覚が違うんだなっていう気がしましたね。
あと、フラじゃないんですけど、カイポさんていう、いちばん最初に色んなことを教えてもらった人がいます。その人は男の人で、”ヘイアウ”っていう、ハワイの聖なる、神社みたいなところって言ったらいいのかな、そういう場所が(ハワイには)何か所もあるんですけども、そういうところにお供えを持って行って、お祈りしたりとかして、よく立ち会ったんですね。
自分でお供えものを作って、ここの神様はこういうものが好きだから、このプレゼントを用意してお供えして、それから歌って踊って捧げるんですね。
それがやっぱりプナさんと同じ。そこに神がいて、本当に(神に)語りかけている感じ、形でやっている感がまるでないんですよね。僕らの大地とか神との付き合い方も信じ方も、全然違うんだなっていう感じがしましたね。
多分本当にそこにはそれがあって、そういうのが大地を守って、そういうのに対してどんな気持ちかっていうのを、本当に心底、関係を作っているっていう感じがしましたね」
居心地、いいよね〜
※ハワイに行った時、やっぱりハワイはいいな〜と思うのはどんな時ですか?
「うーん、そうですね。ハワイって行くとなんか居心地がいいんですよね。それで空港に入った途端に係のおばちゃんとかが”アロハ〜”とか、おじちゃんが”アロハ〜”って言ってくれて、それでまず和むんですよ。
で、空港に降り立ってちょっと外に出るとプルメリアの香りとか、特にあの辺でレイをかけてくれている人たちがいるから、そういう花の匂いがぷ〜んとして、なんかもうウェルカムされちゃった! みたいな感じですよね。
やっぱりそういうのもハワイアンがいつも心がけているアロハが島に染み付いているというか、空気を作り出していると思うんですけど。それでもう居心地がいいなって、それに浸るとやっぱりいいよね〜って感じがします」
●いいですね〜。確かにひとりひとりがアロハを心がけることで、もう島全体が優しい温かい空気になりますよね。
「そうですね。本当なんです」
●今後もハワイには通い続けられますか?
「そうですね。自然との出会いって、頭で考えている以上のことが起こるのでね。最初にナイトレインボーと出会った時みたいに、全然そんな存在も知らなかったのに、ちょっとしたことで出会うことになって、そこからまたハマるとかってありますのでね。
また次なる段階の出会いがあるのかなと思って、まずは行って、それで自然に触れて溶け込んで、撮影し始めたら、またなにか起きるんじゃないかなと思って期待しています」
☆この他の高砂淳二さんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
ハワイで撮った作品の集大成的な写真集。ページをめくる度に、ハワイの日差しと風、そして匂いさえも感じられて、まさにハワイにいるような気分にさせてくれます。ドローンで撮った表紙の写真にも注目ですよ。ぜひご覧ください。パイインターナショナルから絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧いただければと思います。
◎PIE International :https://pie.co.jp/book/i/5617/
高砂さんのオフィシャルサイトも見てくださいね。
高砂さんの最新の写真集『Aloha〜美しきハワイをめぐる旅』を直筆サイン入りで、抽選で3名のかたにプレゼントいたします。
応募はメールでお願いします。
件名に「本のプレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
メールアドレスは flint@bayfm.co.jp
あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。
番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。
応募の締め切りは 4月29日(金)。
当選発表は発送をもって代えさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
2022/4/17 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、動物作家の「篠原かをり」さんです。
篠原さんは子供の頃、毎週のように動物園に連れて行ってもらったこともあって、生き物が大好きになり、図鑑を何度も見返すようなお子さんだったそうです。そして2015年に昆虫に関する本で作家デビュー。現在は慶應義塾大学SFC研究所の上席所員としても活動されています。
生き物が大好きな篠原さんは、世界の不思議を紹介するミステリーハンターとして、テレビ番組などでも活躍、動物や昆虫に関する幅広い知識には定評がありますよね。
きょうはそんな篠原さんの新しい本『よし、わかった! いきものミステリークイズ』をもとに、生き物に関する、知っていそうで意外に知らない生態をクイズで出題します。ぜひご参加ください。

馬の血液型、歌うゴリラ
●今週のゲストは動物作家の篠原かをりさんです。よろしくお願いいたします。
「よろしくお願いします」
●篠原さんの生き物に関する膨大な知識は、テレビ番組でもおなじみですけれども、そんな篠原さんの新しい本が『よし、わかった! いきものミステリークイズ』ということで、私も読ませていただきました。大人の私でも知らないことがたくさんあって、早く誰かに言いたいって思うものばかりで面白かったです!
「ありがとうございます。一応、子供向けの本にはなるんですけど、私自身が子供の時に新しく知ったことを結構、両親に教えたりとかしていたので、大人にとっては当たり前のことだとつまらない気持ちになってしまうだろうなと思って、子供があまり知らないような動物ではなくて、親子でその動物自体は知っているけれども、この生態は知らないとか、大人も一緒にびっくりできるようなことにはこだわって作成しました」
●まさに大人の私もびっくりしました。本当に面白かったです。きょうはこの本をもとにクイズ形式で進めていきたいと思います。ぜひリスナーのみなさんも一緒に考えてみてください。
まずは「動物園クイズ」からいきたいと思います。
では問題! 馬の血液型は何種類くらいあるでしょう?
① 300種類 ② 3万種類 ③ 3兆種類
どれも多いなという印象ですけれども、人間は A、B、O 、ABですよね?
「そうですね、組み合わせで言った時にAAとかAOとかあることを考えるともうちょっと多くはなるんですけど、まあA、B、Oの組み合わせによって生まれるものですね」
●そうですよね。さあどれくらいあるんでしょうか。
では、篠原さん答えをお願いします。
「正解は3兆種類です」
●すごいですよね。そんなに多いんですか!?
「もともとは8種類なんですけど、8種類を組み合わせた結果、3兆種類になるぐらい多様な血液型があります。ただ3兆あると、なかなか輸血が大変だろうなと思うんですけど、その中でも人間でいうO型のように、どの血液型にも輸血しやすい血液型の馬がいたりとか・・・3兆種類って言うよりは、組み合わせが3兆種類あるって感じですね」
●3兆ってすごい数ですよね。では続いての問題にいきましょう。
問題! ゴリラは美味しいご飯を食べると何をするでしょうか?
ヒントは人間も気分がいいと、やることもありますよね?
「そうですね。でも人間でやっている人がいたら、だいぶご機嫌な感じですよね」
●そうですよね(笑)。みなさん分かりますでしょうか。ゴリラは美味しいご飯を食べると何をするでしょうか。
では、篠原さん、答えをお願いします。
「正解は、鼻歌を歌う」
●これ面白いですよね。動物園でゴリラは鼻歌を歌っていますか?
「この鼻歌を歌うのは、野生の中で研究しているチームが発見したので、動物園のゴリラもするかはまだ分からないんですけど、普通のご飯より、さらに美味しいご飯を食べている時に歌の量が違ったりとか、より美味しいご飯で、その食事に満足する時には鼻歌を歌うようですね」
●ご機嫌でいいですね。可愛いですね。
(編集部注:ほかにも歌うとされている生き物として、南米のアンデス山脈に生息するネズミの仲間「デグー」がいると教えていただきました。群れの仲間たちといろいろな鳴き声を使ってコミュニケーションをとるそうで、まるで歌うように鳴くことから「アンデスの歌うネズミ」といわれているそうですよ)

アデリーペンギンのプロポーズ!?
※きょうは篠原さんの新しい本『よし、わかった! いきものミステリークイズ』をもとにお話をうかがっています。
●では、続いて「水族館クイズ」にいきたいと思います。
問題! アデリーペンギンのオスはプロポーズの時、何をプレゼントする?
食べるものとかですかね?
「プロポーズの時に物をプレゼントする婚姻贈呈っていう行為は、昆虫を含めいろんな動物に見られはするんです。アデリーペンギンは異質なんですが、人間からしたら結構、納得がいくかなっていう感じがしますね」
●人間がプロポーズの時にもらって嬉しいのは指輪とかですよね。
では、篠原さん答えをお願いします!
「正解は石です」
●石! ちょっとダイヤモンドに通ずるというか・・・。
「そうですよね。石の種類でいうと、本当に石ころっぽい見た目の石ではあるんです。鳥の中では巣を作って、その巣ごとプレゼントするというか、巣を作った状態でプロポーズするような鳥も多いんですね。このペンギンが石で巣を作るので、その巣の材料の一部ということで石なんじゃないかなと・・・」
●一緒にこの巣を守っていこうみたいな・・・?
「実際にその石の良し悪しで(婚姻が決まります)。このペンギンってすごく一夫一妻制が強いというか、つがいになる意識が強い鳥なので、何年にも渡って同じつがいで集合していたりとか、一生一緒にいるからこそ、その可能性が高いからこそ、えり好みじゃないですけど、相手を入念に選ぶ鳥ですね。その石を受け取ってくれたら婚姻成立、つがいになるっていうふうになっています」
●では、次は「おうちのいきものクイズ」から。
問題! 次のうち遺伝的に最もオオカミに近い犬の種類は何でしょう?
① 柴犬 ② シベリアンハスキー ③ ラブラドールレトリバー
オオカミに近い大きさとか見た目からいうと、シベリアンハスキーかな・・・。
「そうですね。かなりオオカミっぽい印象で、子供の時、私もシベリアンハスキーが散歩しているのを見て、オオカミを飼っている人がいるなと思ったんですけど」
●そうですよね。では、篠原さん答えをお願いします!
「正解は柴犬です」
●柴犬がオオカミに近いんですか?
「かなり近いですね。柴犬に限らず日本犬って意外とオオカミに近いですね」
●どのあたりが?
「遺伝的な部分ですね。どこから分岐したか、オオカミからいちばん近い親戚というか。犬の種類というか品種なんですけど、オオカミから距離感的に近いのが柴犬ですね。他にも近いものでいうとチャウチャウとか。シベリアンハスキーやレトリバーもそんなに遠いわけではないんですけど、意外とシーズーのような小っちゃい犬とかが近かったりとか。見た目ではなく、柴犬はかなり上位で、オオカミに近いとされていますね」

カモノハシに会いたい!
※今いちばん興味のある生き物はなんですか?
「ずっといちばん大好きなのはドブネズミ。やっぱり好きですね」
●ドブネズミのどのあたりがお好きなんですか?
「街にいるドブネズミは、可愛くても触ったりしては、さすがに衛生上よろしくないんですけど、子猫と子犬の中間のような性格と言われていて、非常に懐っこいんですよね。
ドイツの研究で、研究者たちとネズミがかくれんぼするっていう研究があって、かくれんぼのルールを覚えて、人に見つからないように隠れてたりとか、人を見つけると笑い声をあげたりとか、そういうお茶目なところがあって、一緒に暮らせば暮らすほど、愛おしくなってくる動物ですね」
●一緒に暮らしていたわけですよね。
「はい。またいつか一緒に暮らしたいなと思うんですけど、あまりにも可愛すぎて、あんな可愛い動物が、寿命2年でいいわけがないと思って、いつも納得できない気持ちになっちゃうんですよ」
●そうなんですね。篠原さんからすごく生き物愛が伝わってきます。コロナ禍ではありますけれども、自由に旅に行けるようになったら、今後どんな生き物を見たいですか?
「そうですね。私、東南アジアや南米にはよく行っていたんですけど、生き物を好きって言いながら、まだオーストラリアやニュージーランドには行ったことがなくて、有袋類の仲間をまとめて見たいなと思いますね。あとはいちばん見たいのはカモノハシですね」
●カモノハシ?
「有袋類でも、カンガルーやコアラは日本国内でも見ることができるんですけど、カモノハシは、あまりにも魅力的な存在でありながら、日本国内で見ることができません。現地に行かないと見ることができないので、現地に行かないと見られない生き物として、やっぱりいちばん見たいのが、今はカモノハシですかね」
●どんなところが魅力的なんですか?
「見た目のとっぴさというか、哺乳類なので、哺乳類のずんぐりした体と、くちばしと水掻きと、卵を産むっていう生態と、最近、紫外線ライトを当てると発光することが分かったりとか。
全体的に何ひとつ確かなキャラクターをつかめていない不思議なばかりの動物なので、実際会って見た時に私は好きになるなって確信はあるんですけど、より好きになるために会いに行きたいなと」
(編集部注:先ほどドブネズミが大好きというお話がありましたが、ペット用として品種改良されたネズミで、ファンシーラットとも呼ばれています。街中で見かけるドブネズミは感染症の危険がありますので、絶対に触らないでくださいね)
生き物から学んだこと
※篠原さんは慶應義塾大学SFC研究所の上席所員でいらっしゃいますが、どんな研究をされているんですか?
「慶応大学のSFC研究所の所員として携わった研究としては、餌のタンパク質の量がどんな影響を与えるのかっていう研究があって、その中で昨年、昆虫食の論文を出しました」
●私の立教大学のゼミの教授が昆虫食を研究していたんですけど、ゼミの最中に昆虫食を何度も食べさせられたんです(笑)。この番組にもゲストで出てもらったんですが、昆虫食のどんなところを研究されているんです。
「昆虫食の中でもいろんな昆虫がいる中で、私は蜂の子の粉末をマウスに与えて、その影響を見るっていうことをしていたんですね。論文としては、まず害がないこと、蜂の子が有害な作用をもたらさないことの確認と、あとは他のタンパク質にはない、いい部分がないかっていうのでは、筋肉を発達させる、活性化させる遺伝子が活発になっていることが確認できたという論文をあげていますね」
●改めて、生き物を見ていて、篠原さんはどんなことを感じますか?
「本当に色んな生き物がいすぎて、とにかくルールはないんだなとか。今残った生き物はいい部分があって、武器があるから残ってきたんだって思っていたんですけど、そうじゃなくて、結構ランダムに残るんだなっていうのを最近、学びを深める中で実感していますね。
そこから分かることって、どんなふうに生きてもいいし、必ずしも合理的なばかりが進化ではないし、自分も他人の生き方も必ずしも合理的な結果をもたらすわけではないから、あらゆることが、これだけ色んな生き物がいて、色んな結果になっているのは、自分の人生においても、何が起きても仕方ないなっていう諦めと安心感の中間のような気持ちを持ちましたね」
※この他の篠原かをりさんのトークもご覧下さい。
INFORMATION
篠原さんの新しい本をぜひチェックしてください。「動物園クイズ」「水族館クイズ」「昆虫館クイズ」そして「おうちのいきものクイズ」の4つのジャンルから、生き物の生態や不思議を学べる内容になっています。子供向けではありますが、大人が読んでも、知らないことがたくさんあって、楽しめました。おすすめです!
文藝春秋から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
2022/4/10 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、静岡大学大学院の教授で植物学者の「稲垣栄洋(いながき・ひでひろ)」さんです。
稲垣さんは1968年、静岡県生まれ。岡山大学大学院から農林水産省、そして静岡県農林技術研究所などを経て、現在は、植物学者として活躍されています。
そんな稲垣さんの新しい本が『花と草の物語手帳〜105の花言葉とエピソード』。この本には「野で見かける草花」「植栽で見かける木・花」そして「お店で見かける花」の3つの章があり、身近な花にまつわる、ほっこりするようなエピソードを、とても綺麗なイラストとともに紹介しています。その中からいくつか稲垣さんに解説していただきましょう。
☆イラストレーション:miltata(小林達也)
タンポポは体操する!?

※まずは「野で見かける草花」の章から、タンポポ。タンポポは体操すると書かれていますが、これはどういうことなんですか?
「もしかすると植物って動かないっていうイメージがあるかもしれないんですけど、意外と動いているんですよね。時期によって動いたりとか、あるいは昼と夜で結構、葉っぱの位置が違ったりとかよくあるんですけど、タンポポは体操をするというふうに言われています。
何かと言いますと、タンポポって花が咲く時は上のほうに茎を伸ばして咲いていますよね。で、花が咲き終わったあと、茎が一回地べたに寝転ぶんですね。そんな動きをするんですけども、そのあと花が咲き終わるとタネができますよね。タネができると、綿毛が付いていますので飛ばすんですけど、タンポポは綿毛を飛ばすためにもう一度茎が立ち上がるんですね。
その時には、花が咲いていた時よりもさらに茎を伸ばして、高いところで綿毛を飛ばそうとします。だから一回立ち上がって咲いていたやつが横に寝そべって、それからもう一回立ち上がるっていうことが見られるんですね。そういう動きが体操していると表現されています」
●なるほど〜!
「その辺でタンポポをよく見ると、ひとつのタンポポの中でも、咲いているやつは立ち上がっていたりとか、咲き終わったやつが寝転んでいるとか。それから綿毛を飛ばしていたり、そういう様子も見ることができますので、ぜひタンポポを見てもらえるといいかなって思います」

●続いて、シロツメクサですけれども、四つ葉のクローバーは幸運のシンボルと言われていますよね。で、四つ葉はよく踏まれるところにあると、本に書かれていましたけれども・・・。
「そうですね。小尾さんは四つ葉のクローバーを探したりしたことは?」
●はい、小さい頃よく見つけに行きました!
「探しますよね。これ、見つけやすいところがあると言われています。それがどういうところかというと、人がよく通って踏まれているような場所とか、あるいは車が通ったりするような、タイヤに踏まれているような場所で、四つ葉のクローバーは見つかりやすいって言われているんですね」
●逆に踏まれていないところにあるのかと思っていました(笑)。
「そうですよね。踏まれていないところのほうがシロツメクサが元気なような、踏まれているところは、踏まれるのに耐えながら生えているっていう感じなんですけど、実は踏まれるところで見つかりやすいと言われています。
どうしてかというと、葉っぱのもとになる”原基”っていうところがあるんですけども、そこが踏まれることによって傷付いてしまうんですね。傷付くことによって、ひとつだったところがふたつに分かれたりするようになるんですね。もともとシロツメクサは三つ葉なんですけど、そうやってふたつに分かれることによって、四つ葉になると言われています。
シロツメクサの四つ葉が発生する原因はいくつかあるんですけども、そのうちのひとつは、そういうふうに葉っぱのもとになるところが傷付くことによって、四つ葉になります。ですから、人がよく通るところ、あるいは車が通るようなところで四つ葉が生まれやすいって言われていますね」
●そういうことで四つ葉が生まれてくるんですね。
「四つ葉のクローバーは幸運のシンボルと言われていますけど、幸せっていうのは踏まれて育つというか、踏まれながら幸せは、もしかしたら育っていくのかもしれないっていうのを、クローバーは教えてくれているのかもしれないですね」
(編集部より:日本でいちばん長い植物の名前を知っていますか? その名前は「リュウグウノ オトヒメノ モトユイノ キリハズシ」。これは浅い海に生えるアマモの別名なんです。どうしてこういう別名になったのか、少し説明しておくと・・・「龍宮の乙姫」はわかりますよね。「元結(もとゆい)」とは髪を束ねる紐(ひも)のことで、乙姫さまの髪を結っていた紐が流れてきて、アマモになったという伝説からそう呼ばれるようになったとか。
ちなみに、いちばん短い植物の名前は「イ」。この一文字だとわかりづらいので、一般的には「イグサ」と呼ばれています。また、樹木では「エ」という名前がありますが、これだけだと不便なので「エノキ」と呼ぶようになったそうですよ)
アヤメ、カキツバタ、ハナショウブの見分け方

※続いて「植栽で見かける木・花」の章からお話をうかがいましょう。これから初夏にかけて見られる「アヤメ」、この「アヤメ」と「カキツバタ」そして「ハナショウブ」はよく似ていますよね。何か見分けるポイントはありますか?
「”いずれアヤメかカキツバタ“みたいな言葉もあるくらい、よく似ているものなんですけど、もともとは違う植物っていうか、生えている場所が違うんですね」
●生息地が違うんですね?
「カキツバタは水が溜まるところに生えているんですけど、ハナショウブは水が溜まるところよりは、少し湿った湿原のようなところに生えます。アヤメはむしろ水はけのいい場所、草原なんかに生えているのがアヤメなので、もともと生えている場所は全然違うんですよね。
菖蒲園なんかでは水が入っているほうが涼しげに見えるので、カキツバタもハナショウブもアヤメも、水を溜めたところに植えられているのが多いんですけど、もともと野生の生息地は違うんですね。
色んな品種がありますので、なかなか見分け方が難しいところではあるんですけども、下の花びらに注目をしてもらうと分かりやすいかなって思います。下の花びらに少し模様があるんですね。
何かというと、花は昆虫を呼び寄せるために咲きますよね。なので(花には)昆虫にここに蜜がありますよっていう目印があります。ネクターガイドって言うんですけど、虫たちへの看板っていうか合図ですね。そのネクターガイドの色が少し違うんですね。
カキツバタの場合は花びらの模様が白、ハナショウブは黄色、色が違いますね。それからアヤメの場合は網目のような模様になっていますので、下の花びらに注目してもらうと、カキツバタとハナショウブとアヤメを見分けやすいかなって思います」
赤いスイートピーは歌が先!?
※自然界には黄色や白い花が多いような気がしますが、どうしてなんですか?
「黄色とか白い花って多いですよね。特に春は黄色いタンポポとか菜の花とか、黄色が多いかなっていうイメージがありますけれども、植物の花の色には必ず意味があります。花は昆虫を呼び寄せるためのものですよね。で、黄色に好んで来る虫がいて、それがアブの仲間なんですね。花にやってくるアブの仲間なんですけど、それはすごく黄色を好んでいます。
これはどっちが先か分からなくて、黄色い花が多いからアブが黄色を好むようになったのか、アブがもともと黄色が好きだから、植物が黄色になったのかは分からないんですけど、とにかく黄色い花にアブがやってきやすいっていう特徴があります。
春は結構、気温が低い時がありますよね。本当はハチが花粉を運んでくれるのがいちばんいいんですけど、ハチはもう少し暖かくなってこないと、なかなか活動ができないですよね。
アブはすごく気温が低くても活動ができるので、春になってきたかなと思って、最初に活動を始めるのはアブですね。なので、アブが活動している春に黄色い花が多いっていう意味もあります。それから黄色い色素は、実は色んな役割を持っていたりするので、植物にとって使いやすいですね。
それから白。白の植物は実は色素がないんですよ。白い色素っていうのがないので、白い花は色素を全く持っていない。そうすると透明になっちゃうんじゃないのって思うかもしれないですけど、光は乱反射をするんですよね。牛乳なんかが白いのと同じ原理なんですけど、光が反射すると白く見えるので、色素が全くないと花は白くなるんです。
色素がない白が目立つのってどういう時かなっていうと、夏になってきてすごく緑が深くなってくると、白は目立ちやすいですよね、暗いところで。だからこれからだんだん夏になってきて緑が濃くなっていくと、白い花が増えてくるという特徴があります」
●色でいうと、「お店で見かける花」の章で「赤いスイートピーは歌が先」と書かれていました。「赤いスイートピー」ってあの松田聖子さんの歌ですよね?

「そうですね。『赤いスイートピー』っていう歌が昔、流行ったんですけども、実際には赤いスイートピーはなかったんですね。歌は赤いスイートピーというイメージで作られたと思うんですけれども、植物の花の色というのは黄色とか白とか紫、もちろん自然界では決まっているんです。人間はやっぱり色んな色があったほうが花屋さんなんかが華やかになるので、品種改良して色んな花を作っているんですよね。
スイートピーというのはもともと豆の仲間なんですね。スイートピーのピーは、あのグリーンピースのピーと同じなので、エンドウとは仲間が違うんですけど、同じ豆です。よく花が似ているっていうことで、スイートピーはグリンピースのピーと同じピーが付けられているんですけど、豆の仲間はレンゲソウとかもそうなんですけど、ちょっと紫色みたいなのがもともとの色なんですね。
それは何故かというと、ミツバチの仲間を呼び寄せるための色なんです。なのでスイートピーももともとの野生の色は紫ですね。そこからいろいろ品種改良していったんですけど、赤はなかったんですよ。
だけれども、松田聖子さんの歌があれだけ流行ると、スイートピーと言えば赤! みたいなイメージになりますよね。なので、研究者とか育種をする人が一生懸命、品種改良に品種改良を重ねて、何とか皆さんのイメージに合うような赤い品種を作っていたんですね。だから歌がいちばん最初で、それに合わせて、頑張って品種改良をしていったのがスイートピーですね」
(編集部より:来月5月8日は「母の日」。「母の日」の花といえば、カーネーションが有名ですが、その名前の由来をご存知ですか? 語源は諸説ありますが、ラテン語で「肉」を意味する「カーン」に由来するとも言われています。花の色が肉の色に似ているからだそうですよ。この「カーン」はカーニバル=謝肉祭の語源にもなったとか。
ちなみに、カーネーションはアメリカの花だというジョークもあります。カー・ネーション、つまり「車の国」だと・・・苦笑)
雑草は強くない!?
※稲垣さんは「みちくさ研究家」でもあるそうです。そう名乗るのは、道に生えている草が好きだからですか?

「私、植物の中では雑草というか道に生えている草が一番好きで、よく道草をそれこそ食いながら歩いているっていうのと、それから自分の人生を考えてみると決して真っ直ぐではなくて、あっち行ったりこっち行ったりしながら、歩いてきたなと思って、”みちくさ研究家”を自分で名乗っています」
●雑草ってすごくたくましいなっていうイメージもあるんですけれども、専門家の稲垣さんからみると、雑草ってどんなイメージですか? 強いイメージですか?
「そうですね。これは私が言っていることではなくて、植物学の教科書を見ると、雑草は強くないって書いてあるんですよ。むしろ雑草は弱い植物であると、植物学の教科書に書いてあるんですよ」
●あら! 真逆のイメージでした。
「そうですよね。雑草ってやっぱり強かったり、たくましいイメージがありますよね。それなのに雑草が弱いってどういうことかなって思うと、雑草は実は競争に弱いんですね。植物にとっては、やっぱり光を少しでも高いところまでいって浴びたりする、そういう競争がすごく大事なんですけど、実は雑草は競争には弱いんですね。
では、どうしているかというと、雑草というのはほかの植物が、つまり強い植物が生えることができないような場所に生えているわけです。ほかの強い植物が生えない場所ってどういうところかなっていうと、踏まれる場所とか草取りされる場所。そういうところには、強い大きな植物って生えることができないですよね。そういうところに競争から逃れて、生えているような植物が実は雑草なんですね。
ただし、何が強くて何が弱いのかなっていうことになると思うんですけど、やっぱり私たちの周りで見る雑草は強く見えますよね。で、何に強いかっていうと、雑草は環境の変化に対して強い、変化を乗り越える力がすごく強いと言われています。ですから、強い弱いって言うけど、実際には色んな強さがあったりして、変化を乗り越える強さで成功している植物が雑草っていうことになりますね」
ナンバーワンでオンリーワン
※稲垣さんは、あるインタビュー記事の中で「生物の世界ではナンバーワンにならないと生き残れない」とおっしゃっていました。これはどういうことなのか、教えていただけますか。
「これは本当に、高校の生物の教科書にも載っているようなことなんですけども、実は基本的に自然界はすごく競争が激しいんですよね。弱肉強食っていうか適者生存というか、強い者が生き残り、そして弱い者が滅んでいくっていう激しい生存競争が行なわれているんですね。どれぐらい激しいかというと、勝ったほうが生き残り、負けたほうが滅んでいく、しかもナンバーワンじゃないと生き残れないっていう世界なんですね」
●かなり厳しいですね。
「厳しいです。もう2位じゃだめなんです。2位じゃだめなんですかって言っていた人が昔いましたけれど(笑)、自然界では2位じゃだめなんです。人間の世界だったら2位でも銀メダルとか、十分讃えられるべきことだと思うんですけど、生物の世界では2位じゃだめで、ナンバーワンじゃないと生き残れないですね。すごく厳しいんです。
でも、そうすると世界でたった1個の1種類の生物しか生き残れないってことになりますよね。だけど、私たちの身の周りにはたくさんの生物がいて、たくさんの植物がいますよね。実はすべての生物がナンバーワンなんですね。すべての生物が競争を勝ち抜いたナンバーワン。
これどういうことかっていうと、実はナンバーワンになる方法ってたくさんあるんですよね。例えばこの環境とかこの季節とか、どんな形でもいいから、そこでナンバーワンになることが大事なんですね。
そのナンバーワンになる方法がたくさんあって、すべての生物がナンバーワンを分け合っているんです。分かりますか? つまりナンバーワンになれる場所はオンリーワンなんですね。そのオンリーワンの場所ではナンバーワン、隣の生物はまた別の環境、別の条件でナンバーワンっていう、すべての生物がナンバーワンになっているんですね」
●へぇ〜素晴らしいですね!
「そうやってナンバーワンを分け合うことによって、この多様性と呼ばれる世界が創られているってことになりますね」
●なんか人の生きかたににも通じる感じがしますね。
「そうですね。私たちは限られた条件で、例えば学校の成績が〜とか、売上が〜とか、数字の単純な物差しで順位を付けてしまうんですけど、実はナンバーワンになる方法はいっぱいあって、みんながナンバーワンになれる世界は創れるんだって、生物は教えてくれているのかなって思います」
雑草の生き方
※雑草が大好きだとおっしゃる稲垣さんは、こんな見方もされています。
「雑草はすごいなって思うことがひとつあって、それは雑草ってものすごく変化をするんですけど、変化しないものってあるんですよね。小尾さんは、雑草は踏まれても踏まれても立ち上がる、みたいなことを聞いたことはありますか?」
●はい、雑草魂! みたいな・・・。
「雑草魂! 踏まれても立ち上がるんだ!って、あれ結構、間違いです(笑)」
●そうなんですか!?
「雑草は踏まれるところで見てると、そんなに立ち上がらないんですよね。踏まれているところを見ていただければわかるんですけど・・・。じゃあなんで立ち上がれないのかな、なんか情けないなって思うかもしれないんですけど、そうじゃなくて、雑草にとっていちばん大事なことってなんですか? 雑草、植物にとっていちばん大事なことは、花を咲かせてタネを残すことじゃないですか。だから、踏まれても踏まれても立ち上がるって、結構ムダな努力なんですよね」
●確かにそうですね。
「それよりも、踏まれながらどうやって花を咲かせようか、踏まれながらどうやってタネを残そうかって考えるほうが正しいじゃないですか。なので、雑草は踏まれるところでは立ち上がる努力はしないで、踏まれながら花を咲かせることに力を注ぐんですよ。
雑草はすごく変化をするって言ったんですけど、実はタネを残すことが最優先っていうところは、絶対ぶれないっていうか、どんな雑草もそこは絶対大事にしている、最大限の力でタネを残すんですよね。
大切なことは見失わないっていうのは、実は雑草の生き方で、そういう雑草の生き方をみるとすごく楽しいなっていうふうに思いますね」
●春本番を迎えて、色んなお花が咲いてきていますけれども、こんな視点で花や植物を見るといいよ、面白いよっていうヒントがあれば教えてください。
「意外と身近なところに植物ってあると思いますので、身近な植物を探してほしいなって思います。東京とか大阪とか都会に住んでいるので、周りに緑はないです、雑草はないですっていうかたがいらっしゃるんですけど、よく探してみると必ず雑草があったり、植物が花を咲かせたりしますので、そういう自然が少ないところこそ、例えば自然の花を探してみると面白いなって思います。
お勧めなのが定点観測っていうんですけど、同じ場所を見るってことですね。例えば会社に行く通勤路の途中でもいいし、スーパーに買い物に行く途中でもいいんですけど、ここに花が咲いているな〜とか、ここに雑草が生えているな〜って見つけたら、同じ場所をずっと見ていくっていうのがお勧めですね。
そうすると季節によって変化していったりとか、あるいは同じ春でも、今年の春と来年の春では実は様子が変わっていくんですよね。それは、同じ場所をずっと見ているとすごく分かることなので、どっかお気に入りの場所を決めて、そこの植物を観察していくと面白いんじゃないかなと思います」
INFORMATION
この本には「野で見かける草花」「植栽で見かける木・花」そして「お店で見かける花」の3つの章があります。きょうご紹介できたのはほんの少しで、誰かに話したくなる花にまつわるエピソードが満載ですよ! とても綺麗なイラストを見ているだけでも心が和むと思います。ぜひご覧ください。大和書房から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
2022/4/3 UP!
1992年4月に始まったこの番組「ザ・フリントストーン」が丸30年を迎え、今回の放送から31年目に突入! そして、新年度に入った4月最初の放送ということで、改めて番組名についてご説明しましょう。
「フリントストーン」は「火打石」という意味がありますが、実は1960年代に日本のテレビでも放映されたアメリカのアニメーション「原始家族フリントストーン」(原題 THE FLINTSTONES)にもあやかっているんです。
原始時代は人間が自然を壊さず、ともに生きていた、いわば「共生」していた時代ということで、今もそうあって欲しい、という願いが込められています。そんな思いを多くのかたと共有できたらいいなと思っています。
今週は30周年記念!ということで、記念すべき第1回目のゲスト、冒険ライダー、そしてNPO法人「地球元気村」の大村長、風間深志さんをお迎えします。いつも元気でガハハハと笑う風間さんはこの番組のシンボル的な存在なんです。
風間さんは1950年生まれ、山梨市出身。1982年に日本人として初めて「パリ・ダカールラリー」に参戦、さらに、バイクによる史上初の北極点と南極点に到達など、数々の大冒険に挑戦されています。
そんな風間さんが1988年に仲間と設立したのが「地球元気村」で「人と自然が調和している社会」の実現を目指して作られたプロジェクトです。
「地球元気村」といっても特定の場所があるわけではなく、全国各地の、豊かな自然が残る市町村と連携し、いろいろな分野で活躍されているかたを講師に迎え、自然体験型のイベントを開催しています。
きょうは、人も地球も元気になる活動と、専用キャンプ場のお話などうかがいます。
☆写真協力:NPO法人 地球元気村

番組は30周年! 地球元気村は34年!
●今回は、この番組の記念すべき第1回目のゲスト、冒険ライダーそして地球元気村の大村長、風間深志さんをお迎えしています。よろしくお願いします。
「いい声だね〜、渚沙ちゃんは!」
●ありがとうございます!
「はい! よろしくお願いいたします。今、簡単に言ったけど、第1回って30年以上前なんだよ!」
●そうです! そうなんです! この番組が放送開始から30周年を迎えて、今回の放送から31年目に突入します。そして風間さんには毎年4月の第1週目にご出演いただいていて、30年以上のお付き合いということで、ありがとうございます!
「そうだね! そこを強く言ってもらわないとね!(笑)」
●そうですね。
「よく生きてたもんだよ、30年もね。普通は、お亡くなりになっているよ(笑)」
●いやぁ〜(苦笑)。風間さんが、仲間と共に創られたNPO法人「地球元気村」が1988年の創立ですから、今年で34年ですか?
「34年ね! 無駄に年が経過しましたけど、本当はもっともっと社会にお役に立ちたい活動でいるつもりだったんだけどね。とにかく実績は年だね」
●すごいことですよ〜。
「34年経ったことだけは、もう大きな足跡っていうかね」

●そうですね。やっぱり自然の中で遊んで学ぶことが、大事ってことですよね?
「そうだね。だって古来、人間っていうのは自然の中で育ち、自然に育まれ、その自然との対話が大事なのに、いまはあまりにも様々快適な空間を演出し、それを追い求めているから、自然体験がそもそも少なくなっちゃうんだよね。
子供は特に自然と触れ合うのが好きだし、都会の真っ只中に生まれて、何も知らない子供が山に行って川に行っても、虫とか動物とか鳥とか大好きなんだよね! なぜだと思う? 教えていないのに。
これはやっぱり人間本来のDNAがちゃんと備わっていて、自然の中でたくましく生きていくためには、そういう経験とか体験とかが必要だから、自然にそこを吸収しようって子供は思っているわけ。
だけど、見える景色が全部、高い高層ビルから街を見て、眺めて、その子はどうやって育っていくの? 難しいよね。だから自然体験はすごく僕は大事だと思って、みんなに伝えようとしているんだけど、なかなか成果があがらないね(苦笑)」
●そんな〜、だってもう34年ですから、見事なことですよ〜。
「もう何十万人ってかたが、元気村のワークショップなんかを経験して、それが社会に何気に役立っているかも知れない。それは思いながらも、僕が昔、思い描いた人間社会のライフスタイルがそんなに大きくは変わっていないところをみると、お前、何にも出来ていないな〜って、自戒の念に浸るんですよ」

自然との対話
※「地球元気村」はこれまで多くの都会生活者を自然のフィールドにいざなってきましたが、改めて、どんな思いがあったのかをお話しいただきました。
「人も自然も共に永遠な元気、健康であるために、私たちが自然っていうものを考えていくためのコミュニティ、村ってことはコミュニティ、社会を意味するんですよ。社会全体がそういった思考の方向性にいったら、もっと素晴らしくなるんじゃないかなって。
僕が”地球元気村”っていう呼び名を使って30何年間、この先何年あるかわからないけど、これが終わって50年経った先も、”地球元気村”っていう名前はないかも知れないけど、同じテーマを人間は持ち続けるんだと思うんだよね。
つまり普遍的に自然の中で、この宇宙の中で、営み続け生きていくんですね。それはやっぱり自然との対話なんだよね。人間は人間を食わしてくれない。人間は何か勇気を与えたり、お互い慰めあってスクラムを組んで頑張っていこうっていう、まあ運命共同体。その運命共同体が向き合っていくのは自然そのもののシステム。その中でどうやって生きていくのがいちばん最善なのか、最良なのかっていうことをやっぱり考えようよっていう(地球元気村の)活動なんだよね」
●今までで、全国何か所くらいで地球元気村を開催して来たんですか?
「大体110の市町村が、今まではやってくれました。元気村っていうイベントですね。そういったテーマを持ったイベントを開催してくれて、その土地や近隣の人たちが集まって、川に山に空に、あらゆる方法でそこに触れる。
それで本当の夜の闇とか、本当の冬の寒さとか、夏の水の素晴らしさとか、そういったものを体験して自然っていいなって感動して、それで自然ファンを作っているんだよね」
●具体的にどんなことをやっているんですか?
「いや〜ありすぎて・・・燻製を作ったり、釣りもするしね、絵も描くし、ハーモニカも吹くし、カヌーも乗るし、あるいは空も飛ぶし、自転車も乗るし、言ってみれば、いろんなアウトドア・アクティビティをやっているんだけれど、本当はそうばっかりじゃなくてね。
例えば、村祭りに行って奉納する神楽の舞を見たりとか、あるいは歴史や文化、そういう郷土芸能なんかにも触れるってことは、人間がどうやってその地域に密着して生きてきたか。その逞しい知恵とか、踊りから垣間見たり、あるいは絵画や彫刻から省みたり。文芸とかを学ぶことも地球元気村のカテゴリーだよね。
僕は今までアウトドアの普及係みたいだなって思ったぐらい、やっぱりみんなが好きなのは外で遊ぶことだったんだよね。もちろん遊びを通じて自然を知ろう、自然に親しみを感じようっていうテーマだったからいいんだけど、もう少し今言ったような、そういったことにも目を向けてもらいたい、そういうのがあるね」
地球元気村キャンプ場
※去年4月に番組に出ていただいた時に、「地球元気村」のキャンプ場を作るというお話をされていましたが・・・?
「よく覚えているねー」
●はい! あははは(笑)
「あのね、山中湖に村営キャンプ場っていう大きなキャンプ場があるんですよ。湖畔にね。それを地球元気村がその事業を受け継いで、キャンプ場経営をします。
経営っていうか、そこを我々のフィールドにして、色んなことを体験して学び、自然を詠おうよという。
まだ名前が・・・いま愛称を決めている最中で、元山中湖村営キャンプ場、これが地球元気村キャンプ場に生まれ変わります」

●どんなキャンプ場にしたいですか?
「やっぱりね〜そうだね〜、いいキャンプ場にしたいね(笑)。いいキャンプ場って何かっていうと、いま“グランピング”っていう言葉があるように、快適で自然が豊富でロケーションがいいとかって、そういうことになるけど。
もちろんそういうことは完全にひとつ基本をマスターした上で、広々としたキャンプサイト、自然がいっぱいあるキャンプサイト、それで素晴らしい眺望、景観が臨めるキャンプ場。それに、テーマを持って来るのが地球元気村だから(地球元気村のキャンプ場は)それだけじゃ駄目なんだ。
元気村だからこそ、お年寄りもここのキャンプ場に行ったら、例えばアンチエイジングについて学べたよとかね。体験が出来て、なんだか本当に元気になったみたいだなとかね。あるいは障害を持つ子供たちにも自然を体験してもらいたいってことで、そういった子供たちに対するキャンプ、野外体験のチャンス、こういったものを創出していきたい。福祉関係もそうだしね。例えばキャンプをやるってことは、焚き火を眺めながら、みんな何を思う?」
●うう〜ん。
「この火ってやっぱり人間本来のひとつの姿だよな〜。これがひとつの科学の始まりだったんだよな〜。そしてこうやって、いま自分たちは生きているけども、俺の人生って何だろうって、ちょっと物思いにふけったりするんですよ、キャンプっていうのは。
そういう日常を離れたところにぐっと日常を垣間見ることがよくできるのね。そういった意味では非常にカルチャーショック、一種のカルチャーショックに陥ったりする。その思考性をキャンプっていうのはすごく深めることが出来るんですよ。
自分の人生を客観視したり、家族をもう一回考えてみたり、職場を考えてみたりね。そういった良さがあるのがキャンプ場なんだね。
例えば、やっぱり元気村だから、文学について語ってみようじゃないかとかね(笑)。それを講師を招いてやってみたりとか。山中湖のキャンプ場、横に”三島由紀夫文学館”があって、”徳富蘇峰(とくとみ そほう)”って人の文学館なんかあるわけね。だから、文学をちょっと見てみたり、あるいは緑と自然の中で思いっきり深呼吸をして、酸素を入れて思考をクリーニングして、また明日に(日常に)戻っていくみたいな、なんかそういう色んなちょっと深みのあるキャンプ場にしていきたいと思っています。是非期待してもらいたいと思います」

(編集部注:実はキャンプ場はもう一箇所あります。山梨市にある「地球元気村」の「天空のはたけ」の一部に1日1グループのみ利用できるキャンプ・サイトがあるそうです。富士山が見える最高のロケーションだそうですよ)
C.W.ニコルさんとの出会い
※実はきょう4月3日は、作家で日本の自然保護にも尽力されたC.W.ニコルさんの命日なんです。この番組にも何度もご出演いただき、その存在と叡智に大きな影響を受けたと番組スタッフから聞いています。
●ニコルさんは地球元気村の特別講師としても活動されていたんですよね?
「最初っからやってもらって、肩の荷を一緒に背負ってよってことで、彼にもずーっとお世話になりました。彼という個性は北極探検の経験もあるし、アフリカのワイルドアニマルなんかのレンジャーとして従事したし、僕らの見識より広い広い見識を持って自然を眺めていたし。そんな中で人間はこうありたいとか、こうあったほうがいいんじゃないかっていうことを、よく知識として知っていたから、非常に色んなことを教わりました。僕は元気村をやるより以前に、彼と知り合ったんですよ」

●どこで知り合ったのですか?
「僕が北極に行ったのは1986年でした。(北極に行く前に)ラフォーレ原宿っていうビルでトークショーやったんです。トークショーの相手がC.W.ニコルだったわけ。
彼と対談して、彼は北極の経験がすでにあって、その北極に僕はバイクで乗り込んで極点まで行ってやろうなんてことを言って・・・その対談で、僕は北極へバイクで行きますっていう話をしたら、ニコルが”なんでバイクで行くんだ”って言うのね。”バイクじゃなくて、犬ぞりだろ!”。今だったらスノーモービルもあるし、バイクで行くことはないだろうっていう、単純にそういった疑問を僕に投げ掛けてくれました。
僕は”いや僕はバイクが好きなんだよ!“と。好きな物を眺めていると、それを使ってどこまでも行ってみたいという夢が広がっていくと。その夢の延長が北極点なんだ! だから(バイクで)行くんだ! って言ったら、普通の日本人は怒るんですよ、怒り出すんですよ。自分の許容範囲から外れるから、そんなのおかしいよって。理由として自然をけなしちゃいけないとか、知った風な口をだいたい叩くんだよ。ところがニコルはねそんなこと言わなかった。
自然が厳しい所に挑んでいくってことが、どれだけ勇猛果敢なトライであるかっていうことも知っているから、”よしそうか、おまえ頑張れよ”と彼は言ってくれたから、こいつはよく自然も知っているし、機械って物も知っているなと。だから最初から僕はいい人だなって懐きました。僕よりいくつか上でね。僕のほうがバイクが上手いけど、彼がすごいのは、僕よりたくさんビールが飲めるっていうことね(笑)」
●あははは(笑)。そんなニコルさんからどんな学びがありましたか?
「学びっていうか、いつもニュートラルで大らかですね。僕が地球元気村でなかなか苦戦しているのは知っていました。やっぱり自然の中では自然のことばっかり考えているわけじゃなくて、目先の利益を考えている人が多分に多いんですよね。そういった中でこういった思想を普及することは、ものすごく大変だってことはよく知っていて、”お前がやっていることは、お前に対する投資だよ”と。それはだから”当然苦しいだろうが頑張っているよ、お前は”と褒めてくれました。そういう意味では、褒めてもらったしね、色んな話で非常によく会ってはいましたね」
地球元気村をアジアへ
※いま「地球元気村」で進めているプロジェクトはありますか?

「まずね、畑(笑)。畑っていうのは、土そのものの環境を整えることによって、そこに種を蒔いたら、トマトにキュウリにナス、何でも上手く育つんだよね。土の環境をよくするってこと、つまり地球の環境を適正に持っていくってことが、良質な作物を生み出すってことになるわけだね。そういった観点で地球元気村は農業をやっています。
要するに土壌は生き物の塊、その生き物が存在し、土を作るってことが農業の始めだね。そういうことで農業体験もみんなに、命との触れ合いってことでやっているけどね。これから元気村をアジアに持って行きたいね。
これちょっと結構、前にも言っていたんですよ。そうやって大風呂敷広げてね。アジアにこの活動を持って行きたいって永遠のテーマですね。つまり日本人の、かつてのライフスタイルにもどんどん、むしろ追いついて、しかももう追い越してた国々もいっぱいあってね。アジアがやっぱりいちばん近い、近隣諸国の中でね。みんな人々が元気を求めながら生きているじゃない。そういったところにこういう永遠のテーマを持って行って、みんなで考えてみるのも面白いじゃないって思っています」
●では最後に風間さんにとって地球元気村とは?
「僕たちの笑顔と元気の源だね。要するに、地球元気村、これは地球を意味します。もう地球そのものだね。地球を愛し、また人も愛する人たちが住む星の、理想的コンテンツだね。地球元気村、これを眺めていれば元気になりますよ!」
※この他の風間深志さんのトークもご覧下さい。
INFORMATION

お話に出てきた山中湖キャンプ場のプレオープン記念イベントが決定!
開催は4月23日(土)。縄文大工の「雨宮国広」さんほかを迎えたトークショーや
ピアノ・ライヴも行なわれる予定です。
チケットの収益は全額、「雨宮」さんのプロジェクトの応援資金になります。
ぜひご参加ください。
「地球元気村」では随時村民を募集中です。
登録料はビジター村民で500円、個人村民で2,000円、家族村民6人までで3,000円。村民になると年4回、季刊誌「地球元気村」が届くほか、元気村イベントの参加費が割引になります。この機会に村民として登録しませんか。
◎地球元気村 HP:https://chikyugenkimura.jp