毎回スペシャルなゲストをお迎えし、
自然にまつわるトークや音楽をお送りする1時間。

生き物の不思議から、地球規模の環境問題まで
幅広く取り上げご紹介しています。

~2020年3月放送分までのサイトはこちら

Every Sun. 20:00~20:54

日本の心「茶道」 〜茶室で感じる季節の移り変わり〜

2020/7/11 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、エッセイストの「森下典子(もりした・のりこ)」さんです。

 森下さんは神奈川県生まれ。日本女子大学・文学部卒業。週刊誌の記事を書く仕事を経て、1987年に作家デビュー。2002年に出版した『日日是好日』が大ヒット! 2018年に映画化され、森下さんの役を黒木華さんが演じ、また、茶道教室の先生を演じた樹木希林さんの遺作となったことでも記憶に残る作品となりました。

『好日絵巻〜季節のめぐり、茶室のいろどり』より

 きょうはそんな森下さんに茶道と自然、そして茶室で感じる季節の移り変わりのお話などうかがいます。

イメージは絵巻物!?

※森下さんが『日日是好日』、その続編『好日日記』に続く、第3弾『好日絵巻〜季節のめぐり、茶室のいろどり』を出されました。前2作との違いは、どういうところなんでしょうか。

「視覚的にお茶の魅力をお伝えしたかったんですよ。本当にお茶室って美しいものがたくさんあるので、是非それを皆さんにお伝えしたいと思って。それと私、子供の時から絵を描くのがすごく好きだったので、それで絵を描いてみたかったんですね」

●ではやはり、タイトルが示すように“絵で読ませる”というのが特徴なんですか? 

「そうですね! 絵巻物を描きたいというのが最初のイメージだったんですね。それで、絵巻物をさーっと広げると、お正月から春になって、夏になって、秋になって、だんだんと季節が変化していく・・・お茶の花もそうなんですけど、お菓子とかお道具って、その季節によって色合いが変化していくんですね。その色合いの変化を絵巻物にしたら、1年の色の変化っていうのが見えてくるんじゃないかと思ったんです。でも流石に巻物だと本屋さんに置けないでしょ(笑)。だからそれで本にしたんです」

●まさに絵巻物のようでした。本当に美しくって! 先ほどお話にもありましたけれども、季節ごとに描かれていまして、春は光から始まる、夏は水の美しさ、秋は透き通った風を聴く、冬は火を見つめるということで、本当に茶室の中の移りゆく季節っていうのを感じることができました。

「ありがとうございます! 小尾さんはお茶をなさったことはあります?」

●高校の時に少しやっていました! こんなに季節を感じられる場所ってなかなかないですものね。

「そうなんですよ。お茶室っていうのは本当に広くても8畳、それから小さいところでしたら、4畳半くらいのお部屋だったり、中には2畳くらいのところもあるんです。とっても小さいお部屋なんですけれども、小さいからこそね、さっと小窓を開けた時とか、障子戸を開いた時とか、そこから見える、本当に切り取ったような茶庭の小さな景色の中に季節感が本当に見えるんですね」

茶道から学べること

※森下さんは20歳の時に、お母さんの勧めで茶道を始めました。最初は、気乗りはしなかったそうですが、お稽古に行ってみたら、こんな発見があったそうです。

「私はお茶っていうのは日本のとっても古臭い行儀作法なんだろうって想像していたんです。ところが行ってみたら、なんて言うのかな? そこに私の知らない日本があったというか、日本じゃなかったというかね、本当に知らない日本があったんですよ。知らない世界ばかりで、お道具もそうですし」

●やはり茶道で学べることってお作法だけではないですものね。

森下典子さん

「まさにそうで、私は茶道っていうのはそもそもお茶のたてかたを教えてもらう場所だと思っていたんですね。あと行儀作法とか、そういったものを教えてもらう場所だと思っていて。ところが実際習ってみたら、茶っていうのはそういうことじゃなくって、季節の移り変わりの中に身を置くっていうことの訓練。それから日常から自分を切り離して、今の瞬間を味わうという訓練。実はそういうことだった気がするんですね。

 あともうひとつね、ものを習うということはどういうことかっていうことをすごく最初に感じました。つまり学校で何か習う時の習いかたとは違う、分からないことがあったら質問しなさいって、私たちは教育されてきたわけですけど、そういうことじゃなくって、とにかく自分を相手に対してオープンに開いて、言われることを受け止めて、そして繰り返していくんですね。それがなぜそうするのかっていう質問はできないんですよ。しても答えが返ってきても分からないんですよ(笑)。長い間やっていくうちに、本当に長い時間をかけて、こういうことだったのか!ってことが分かってくるんですね。

 そうなって初めて、ものを習うって結局何も知らない自分を知ることなんだなと思って、それがとっても気持ちいいんですよ。大人になってこんなに何も知らない自分を恥ずかしげもなく人前にさらせますか? だって歩きかたから何もかも教えてもらって、左の足から入りますとかここで一礼しますとか、そこはお隣に先にお辞儀しなさいとか、もういちいち言われるんですよ(笑)」 

●そうですよね!(笑)茶道をやっている時って、本当に茶道以外のことは何も考えられないというか、悩みごとがもしあったとしても、その時は何も考えられないというような、夢中になれますよね。

「そうですね。他のことを考えられないように作られていると思います。何でこんなにまで細かい決まりがあるのかなと思うんですけど、それって結局、他のことに心がいかないようにわざわざ、がんじがらめにされているんじゃないかなと思うんですよ。

 そうすると何がいいかっていうと、私たちは生きている間にものすごくいろいろな、不安であるとか心配であるとか、そういうことで心が揺れますよね。何かに心を集中しようと思っても集中って難しいんですよね。だけどお茶をやっている時って、そういう細かい決まりがあまりにもたくさんあるので、集中せざるを得ないんですよ」

おぼんの上に天の川!

※新刊の『好日絵巻』には、森下さんが七夕というテーマで描いた「星のしずく」という、サイコロ型のとても可愛いお菓子の絵が載っています。その絵にまつわるエピソードを話してくださいました。

「その絵を描く時に、その“星のしずく”っていうね、銘もすごく可愛い銘なんですけど、小さいサイコロみたいな形でしょ。で、いろんな色が入っていて、ちょうど七夕の短冊の色みたいで本当にこの季節って薄ぼんやりと空が霞んでいて、その向こうに天の川が見えるでしょ。そこに星があって、らくがんで作ってあるんですけども、お菓子の淡い色合いがすごく綺麗だなと思うんです。

『好日絵巻〜季節のめぐり、茶室のいろどり』より

 実は私、色が綺麗に映えるようにと思って、黒いおぼんに絵を描いたんですけど、そのお菓子が出てきたおぼんが素晴らしかったわけ。黒い塗りもののおぼんの真ん中に金粉でふわーって天の川が!」

●えー! 素敵〜! 

「そうなんですよ〜! もうね、そういうところがね、お茶の素敵なところなんですよ」

●やはり季節感も和菓子から感じとれるっていうことですよね。

「そうなんです!」

●目で楽しめますね! 

「いちいちね、菓子器の蓋を開けた時とか、それからお茶をたてる時、なつめ(*)の蓋を取った時、それからお茶が出てきて、お茶をいただいて最後まで飲みきって前に置いた瞬間に、そのお茶を飲み終わったお茶碗の底に、例えば秋だったら落ち葉が一枚とかね、それから春だったら舞い散った桜の花びらが一枚とか描かれていたりするんですよ」
(*)抹茶を入れておく容器

●いや〜素敵ですよね、いいですね〜。

「そういうところがね、魅力なんです〜!」

匂いや音も楽しむ

※お茶室に入って、お茶をたてる一連の流れの中で、いちばん好きな瞬間はどんな時なのでしょうか。

「私すごく好きなのは、茶筌(ちゃせん)通しっていうところがあるんですね、お茶碗の中にお湯を少し注いで、その中に茶筌を浸して、中で茶筌を動かして。ひとつにはお茶碗を温めること、もうひとつは茶筌の穂先を柔らかくすること、そういう意味があると思うんですけども。

 茶筌通しをして、その茶筌をちょっとお茶碗からぐるーっと回しながら、穂先が折れていないかをチェックするんですけど、上に回してあげながら目の前まで持ってくるシーンがあるんですよ。茶筌って竹でできていて、私が習っている流派は黒竹でできているんですね。その黒竹の茶筌はお湯で湿っているでしょ。竹の匂いがするんです。その瞬間が何かすごく好きですね。

 あとね、ちゃんとお点前(おてまえ)できるかなーって思いながら(お稽古に)行って、座って最初に蓋置を置いて、それで柄杓(ひしゃく)を構えるんですよ。その竹の柄杓を置くときに、コトンって小さい音がするんですね。そのコトンって音がした時に、“大丈夫、ずっとやってきたじゃないか“って言われた感じがするんですよ。自分を信じなさい、みたいなね、そんな感じがするんですね。すごくその時が好きですね」

●茶道って本当に目でも耳でも、五感すべてを使っている感じがしますよね! 

「そうですね! 私たちも日常的にお湯を沸かしてお茶を入れてますけど、茶道は本当に火を起こすっていうところから始まって、お湯を沸かしてお茶をたてるわけです。いちいち火の起こり具合とか、茶碗の温まり具合とか、そういうことに五感を使って確かめながらやっていくんですね。今の現代人の日常生活の中ではそれもうないでしょ!? うちとかはIH(コンロ)なのでピピピってやって火加減とか(笑)。でも昔の人はそれを全部肌で感じながらやっていたんですよね。それをお茶をやることで、そういう人間の皮膚感覚で何かを確認しながら、お茶一杯でも入れていく、そういうことを取り戻せるような感じがしますね」

野の花一輪で部屋に季節が!

『好日絵巻〜季節のめぐり、茶室のいろどり』

※茶道を始めて、日々の暮らしの中で、いろんな変化があったのではないでしょうか。

「私がすごくそれを感じるのは、野の花をたくさん覚えたんですね、茶花っていうのは山野草なので。今まで私はお花はすごく好きでお花屋さんに行って、よくお花も買いましたし、知っているつもりだったんですよ! ところがね、お茶を始めて何も知らないっていうことが分かったの、もうね、全然違う花の世界なんですよ! 

 生け花とも違うんですね。生け花だと枝を溜めたりするでしょ。そういうことはなくて、本当にただ野に咲いているままに見えるように、採った花を花入れに入れる。本当にもう投げ入れたように入れるっていうのが茶花なんですね。

 それによって毎週、今まで知らなかった花の名前、そういえばこんな雑草が生えていたな〜みたいな感じの花まで全部名前を覚えたんですね。そしたら道を歩いていても、たくさんのいろんな花が目に飛び込んでくるんです! だから自分の足元の世界が変わりましたね。

 実は『好日絵巻』の中にヒルガオの絵があるんですけども、あれも実は籠(かご)は人に頂いた和菓子が入っていた籠なんですよ。その竹籠の中にヒルガオを採ってきて挿して、ツルをグルグルって巻いたんですけど、そのヒルガオなんて本当にどこにでもある花なんだけれども、それを花としてそこに入れてみると、部屋の中に季節が入ってくるんですよ。他に何もない部屋の中でも花が一輪あるだけで本当に季節が入ってくる」

●そうかもしれませんね!

「だから私、本当によくお勧めはありますかって言われるんですけど、お茶をやってみたいと思ってもなかなかお仕事が忙しかったり、すぐにお茶を始められない状況にあるってことあるでしょ? それだったら例えば、お茶を買って茶筌1本だけ用意して、後はカフェオレボールでもなんでもいいです。それでお湯を沸かしてお茶をたてて飲んでみてください。そこに是非! 野の花を一輪、それをテーブルの上に飾ってくださいってお話しているんですよ。それだけで季節が入ってくるし。
 で、和菓子ね、和菓子はまさに今の季節というものが描かれているわけなので、そうするとこの季節ってこんな綺麗なものがあったんだって思えるんですよね〜」

●日々ワクワクが増えそうですね。

「よく私たちは簡単に日本には四季があるからって決まり文句のように言いますでしょ? だけど“四季“じゃないんですよね、4つじゃないんですよ。本当にたくさんの季節があるんですね。季節に詳しくなるってことは日本に詳しくなるってことですよね」

●では最後に改めて、森下さんにとって“茶道”とはなんでしょうか? 

「自分に会いにいく時間みたいな感じ。お点前中にそっと何か自分に話しかけてくれる自分が寄ってきたりする時があるので、そういう自分と対話のできる時間を持つためにお茶にいくって感じですね」


INFORMATION

『好日絵巻〜季節のめぐり、茶室のいろどり』

好日絵巻〜季節のめぐり、茶室のいろどり



 『日日是好日』、その続編『好日日記』に続く、第3弾。視覚的にお茶の魅力を伝えたかったという森下さんご自身が描いた、茶室の中のお花、道具、お菓子など、73のイラストと心に染みる言葉がとても素敵です。ぜひ見て、そして読んでください。
パルコ出版から絶賛発売中です!

◎パルコ出版のHP:
https://publishing.parco.jp/books/detail/?id=325

ヒグマは豊かな自然の証 〜ヒグマを通して自然との付き合い方を考える〜

2020/7/4 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、北海道大学大学院・教授の「増田隆一(りゅういち)」さんです。

 増田さんは1960年、岐阜県生まれ。北海道大学大学院からアメリカ国立がん研究所を経て、現職の北海道大学大学院・理学研究院・教授としてご活躍中です。先頃出版された『ヒグマ学への招待〜自然と文化で考える』という本では全体の構成なども手掛けていらっしゃいます。

著書「ヒグマ学への招待」

 きょうはそんな増田さんに北海道に生息するヒグマの生態や森との関係性、そして私たち人間がヒグマを通して考えるべきことなどお話いただきます。

*写真協力:知床財団・山中正実、増田隆一

知床のヒグマ親子,11月。後ろ2頭は大きくなった満1歳の子グマ(知床財団 山中正実氏撮影)
知床のヒグマ親子、11月。
後ろ2頭は大きくなった満1歳の子グマ(知床財団 山中正実氏撮影)

隔離された島に数千頭!?

※ヒグマは北海道には何頭くらいいるのでしょうか?

「正確には推定できていません。しかし毎年、有害獣駆除、町の中に出てきて人に危害を加えるのではないかということでハンターによって捕獲されることもありますし、農作物の被害で駆除されることもありますし、狩猟獣ですのでハンティングされることもありますけれども、そういうものを含めると去年ですと900頭以上捕獲されています。実際にはその数倍以上は北海道に生息しているのではないか、という風に考えている研究者もいます。ですから数千頭ですね。

 北海道って言いますと北の大地ということで、日本では広大な地域だという風に思われていますけれども、世界地図を見てみますとヒグマは北半球に広く分布していまして、大陸から見ると狭い分布域なんですけれども、その中に、隔離された島の中に数千頭のヒグマがいるということは世界的に見ても非常に密度の高い地域になります」

●ヒグマって1年をどのように過ごすのですか? 

「夏の間は山を巡ってですね、しょっちゅう食べ物を食べています。だいたい冬の12月から3月ぐらいまで北海道は雪で覆われるんで、その間は餌を捕るのは非常に難しい時期になりまして、穴を掘ってヒグマは冬眠をします。他の動物は冬眠をしない動物もいるんですけれども、ヒグマは冬眠をするという、そういう道を選んだ動物です」

●繁殖行動は夏になるんですか? 

「そうですね。交尾をするわけですけれども、オスとメスは単独で生活しているんですが、オスはメスを求めて6月から7月くらいに交尾行動をとります。その後ですね、オスとメスは分かれて生活しまして、オスもメスも冬眠するんですけれども、この冬眠中の2月くらいにメスは穴の中で出産します。ですから完全に眠っているわけではなくて、穴の中では起きて出産と子育て、母乳を与えているので、冬眠というよりかは冬籠りという風に言ったほうが正確かもしれません」

ヒグマ頭骨標本。オス成獣(左)、メス成獣(右)
ヒグマ頭骨標本。オス成獣(左)、メス成獣(右)

ヒグマの食生活!?

※写真や映像でヒグマが川に入り、サケを捕まえているシーンを見たことありますよね? やはりヒグマの好物はサケなんでしょうか。

「そうですね。もちろんサケがいるところじゃないとサケを食べることはできないですけど(笑)。北海道でもサケとかマスが秋になると川を遡上してくるのは、北海道の東部に限られることが多いんですけれども、そういうところでは自然環境も保護されていますし、人もほとんど立ち入らないような、国立公園とかそういう地域では浅い川をサケが産卵のために遡上してきますので、それをヒグマが捕獲して食べるという、そういう光景があります。

 それはそういう地域で、かつ、夏の終わりから冬の初めにかけて、秋を中心とした時期ですけれども、それ以外の地域とかそれ以外の時期にはサケはいません。実はクマは肉食性の食肉類って分類されているんですけれども、肉だけではなくてアリとか、それから土の中にいる小さな昆虫を食べたり、それからドングリとか、それからふきですね。ふきのとうのふき、そういうものを食べたり、秋には山ぶどうとかありますので、そういう木の実を食べたりしています」

カラフトマスをとらえたヒグマ(知床財団 山中正実氏撮影)
カラフトマスをとらえたヒグマ(知床財団 山中正実氏撮影)

●そうなんですね! もうサケのイメージが強すぎて、(笑)そういったものも食べるんですか。

「だから平均的に見ると植物性のものを食べていることのほうが多いと思います」

●ヒグマが生活できているということは、そこの場所はすごく豊かな自然があるということなんですか?  

「まさにそうです。ヒグマが食べることのできる植物が多様に繁殖していたり、それから昆虫がたくさん見られるような環境、それからサケとかマスがたくさん遡上してくるような、そういう環境がないとヒグマも生活できないということです。

 ヒグマが生活できる環境があるってことは非常に自然豊かで、その下ではいろんな生物が多様に生活することができるということで、傘種。種っていうのは生物の種っていうことですけども、英語では傘のことはアンブレラ、種のことはスピーシーズって言いますので、アンブレラ・スピーシーズという風に生態学では呼ばれることがあります。

 それはヒグマに限ったことではなくて、この『ヒグマ学への招待〜自然と文化で考える』の中にも書かれていますけれども、北海道にシマフクロウという大型のフクロウがいるんですが、そのシマフクロウが生活できるような環境では、いろんな生物が生息できるっていうことで、シマフクロウもアンブレラ・スピーシーズという風に呼ばれています」

紅葉の知床半島とオホーツク海(知床財団 山中正実氏撮影)
紅葉の知床半島とオホーツク海(知床財団 山中正実氏撮影)

<世界のクマ>

 さて、日本にはヒグマとツキノワグマの2種が生息しています。ヒグマは北海道のほとんどの森林にいて、大人になると体長2メートル前後、体重は200キロ以上ということで、その巨体を維持するために、とにかくよく食べる! 冬眠前の秋には1日40キロも食べるそうです。

 一方、本州と四国に生息するのはツキノワグマ。かつては九州にもいましたが、絶滅した可能性が高いとされています。こちらは体長が1メートルちょっとで、平均的な体重はオスが80キロ、メスは50キロ程度です。毛の色はヒグマが茶色に対し、ツキノワグマは黒。胸に三日月のような白いマークがあるのが特徴です。主食はヒグマと同じく植物で、昆虫や蜂蜜、魚や動物の死骸も食べます。

 世界には、日本にいるヒグマとツキノワグマを含め、全部で8種類のクマが確認されています。最も大きいのは北極圏に生息する地上最大の肉食動物・ホッキョクグマで、次に大きいのがヒグマ、そして最も小さいのは東南アジアにいるマレーグマです。

 そして、忘れちゃいけないのがジャイアントパンダ、現在は中国南西部・四川省などの標高の高い地域に生息していますが、かつてはベトナムやミャンマーにもいたとされています。竹やタケノコばかり食べているイメージがありますが、野生では鳥や小型の哺乳類なども食べるんだそうです。

 このほかには、北米大陸のアメリカクロクマ、インド東部やスリランカに生息するナマケグマ、そして南米大陸にはメガネグマがいて、これら全て日本の動物園で見られます。「クマのいる動物園」をまとめたサイトもあるので、気になるクマがいたら、会いに行ってみてはいかがでしょうか?

ヒグマに遭遇したら・・・!

※北海道の知床半島では、ヒグマとの共存・共生がうまくいっているそうです。それはどうしてなんでしょうか。

「行政の環境省とか、それから知床には知床財団という財団がありまして、そこにクマの生態に詳しいスタッフがいます。一方で知床半島は観光地にもなっていまして、観光客も毎年大勢が訪れます。で、自然の中に入っていくわけですけれども、その時にクマに出会わない対策を事前にレクチャーして、それを学んだ後、自然の中に入っていくというエコツアーもあるんです。

 ただ単に自然の中に入っていくだけではなくて、事前に自分は自然の一部なんだっていうことを学んで、そして自然の中に入っていって、自然を観察すると、そういう学習がしっかりされているということで、ヒグマと出会っても事故が起こらないと」

●なるほど! 学んだ上で自然の中に入るんですね。ちなみにもしヒグマに遭遇したらどのようにしたらいいんですか? 

「私も遠くから見たことはあるんですけども、近くでは出会ったことないので、出会わないってことがいちばん大切です。そのためには鈴を鳴らしたり、時々大声を出したり、それからラジオを大きな音量でかけて、私がここにいるということをクマに知ってもらうために音を出して対応するということが重要であるっていう風に考えられています。

 で、もし出会った場合は慌てて走って逃げることは絶対しないという風に言われています。少しずつクマの目を見ながらクマからゆっくり離れるということが重要です。で、自分が思っているものを、例えばタオルとか帽子とかリュックサック、そういうものを自分の身から離して、タオルは置き去りになりますけれども、そのタオルにクマが気をとられている間に自分自身は少しずつクマから離れていくということが大切であるという風に言われています」

冬の知床連山(知床財団 山中正実氏撮影)
冬の知床連山(知床財団 山中正実氏撮影)

ヒグマとサケが森を育てる!?

※ヒグマがサケを食べることで森が育つという話を聞いたことがあるんですが、どういうことなんでしょうか。

「サケは元々は川で産卵して、その卵が孵化して海に戻っていって、数年かけて海で生活して成長してまた川に戻ってきます。だからサケは海の恵みを受けて成長するんですけれども、その成長したサケが川へ遡上してきた時に、今度はヒグマがサケを捕獲して食べることになります。

 そのサケの肉なり消化物が、クマによって山の中に運ばれて、それが排泄されると、その排泄されたものは山の中で分解されて、それが植物の栄養素になっていきます。それによって木とか草がまた成長していくということで、海の栄養素が山に移動するんです。

 それがサケとヒグマ、食べる食べられるの関係にありますけれども、それによって物質循環が海から陸地の山に循環していくということで、ヒグマの存在、それからサケの存在は非常に重要であるということになります」

●今後、私たちはヒグマとどのような付き合いかたをしていくべきでしょうか? 

「クマとの付き合いっていうのは自然との付き合いと言い換えることもできるんですけれども、ヒグマとはなにかっていうことを考えることが重要という風に思います。ヒグマだけではなくて自然とはなにかということを考えることによって、私たちが自然の中でいかに生きていくか、いかに共存していくかという道が開けてくると思います」


INFORMATION

増田隆一さん情報

著書「ヒグマ学への招待」の表紙
(著書「ヒグマ学への招待」の表紙)

厳冬のフィンランド・ハイルオト島(北緯65度)にて。
厳冬のフィンランド・ハイルオト島(北緯65度)にて。

ヒグマ学への招待〜自然と文化で考える



 増田さんが編集も手掛けた新刊『ヒグマ学への招待〜自然と文化で考える』は、ヒグマを学問ととらえ、動物や生物の視点だけではなく、歴史や文化などあらゆる側面からヒグマを探求していて、その道の専門家が原稿を寄せた、まさに「ヒグマ学」といえる充実した内容になっています。
 北海道大学出版会から絶賛発売中です! 詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。

◎北海道大学出版会のHP:
http://hup.gr.jp/modules/zox/index.php?main_page=product_book_info&products_id=992

海には不思議がいっぱい!〜極小生物の奇想天外な生態〜

2020/6/27 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、伊豆大島在住のネイチャーガイド「星野修(ほしの・おさむ)」さんです。

写真協力:星野 修

 星野さんは1966年、新潟生まれ。都内でデザイナーとして勤務後、93年にダイビング・インストラクターのトレーニングのため、通っていた伊豆大島へ移住。水中ガイドとして勤務したあと、2004年に独立し、現在はネイチャーガイドとして活躍中。毎日フィールドに行き、年間500本以上の潜水観察と撮影。これまでに2万本は潜っているそうです。ご本人曰く“ほとんど塩漬け状態”だそうです。

 そんな星野さんが先ごろ『海の極小!いきもの図鑑〜誰も知らない共生・寄生の不思議』を出されました。この図鑑には伊豆大島の海で撮影した、ほんとに小さな生き物たちの写真が満載です。
 きょうはそんな星野さんに、風変わりな生き物やとても不思議な生態を持つ海洋生物のお話などうかがいます。

*写真協力:星野 修

チヂミトサカ類
チヂミトサカ類

毎日が発見! だから楽しい!

※海の中で、小さな生き物の写真を撮るのは大変じゃないですか?

「そうですね。生物自体はそんなに珍しいものを撮っている訳ではないんですね。小さいのは3ミリとか3ミリを切るような生物たちが多いので、なかなかみなさん、目に入らないとは思うんですけども、普段目の前で生活している生物ばかりなので見つけること自体は全然大変じゃないんです。逆に撮影し始めると、ものすごくピントというかフォーカスが難しいんで、そこはきちんと撮らないと、と思っているんですけれども」

●これだけ多くの生き物たちを撮影するって結構時間もかかると思うんですけれども。

「けっして珍しい生物ではないので、ものすごくたくさんいる生物はもう数千匹はいます。見つけるのはそんなに難しくないんですけど、3〜4年くらいはかかったと思います」

●この図鑑には何種類、載っているんですか? 

「250種類くらい紹介しています」

●250種類を3〜4年かけて撮影された訳ですね! 

「それでも、大島には認識しているだけで1000種類以上の生物が見られるんですね。毎日潜っていますけれども、毎日新しい生物に出会っているって言ってもおかしくないぐらいで、まだまだ見てない生物のほうが多いので、そこはもう毎日が楽しくてしょうがないですね!」

●へー! 毎日が発見ですね! 

「そうですね」

●そもそもどうして、この小さな生き物たちにフォーカスするようになったんですか?

「海洋生物って1割くらいしか分類されていないっていう意見が多いんです。生物の9割以上は小さいって言われる生物なんですね。そう考えるとほとんど小さい生物って言ってもいいくらいだと思うんですよ。
 これは最近気づいたことですけど、大きい魚や綺麗な魚を見ているのも楽しいですけど、どんどん新しい生物に出会って、人間では考えられないような生態とかそういうのに出会うともっともっと知りたくなりますね」

海の中のお花畑

イバラカンザシ(ゴカイ類)
イバラカンザシ(ゴカイ類)

※続いて「星野」さんが先ごろ出された『海の極小!いきもの図鑑』に載っている海洋生物について。

●私がこの図鑑を見て気になったのは10ページにあります“岩壁を彩る生物”ということで、本当にカラフルなんですよね! サンゴにカラフルなゴカイの仲間が点在していて、お花が咲いているのかなーって思うようにぎっしりと埋め尽くされていて、これもすごく素敵でした。ポップで可愛らしいなと思ったんですけど。

「みなさんお花畑って言っていますよね。ただこれゴカイなんですよね(笑)。ゴカイって魚の釣りの餌にするゴカイと同じグループですけど、あんまりみなさん可愛らしい印象ないですよね」

●そうですよね! この赤とか黄色とか青とか本当にポップでカラフルな色なのがゴカイなんですか?  

「そうですね。あとはこのサンゴの中に巣を作って本体は中にいるので、一部分しか見えていないんですけれども、面白いのが赤とか黄色とか青とか、いろんなカラフルな色彩がありますけれども、同じ種類って言われているんですよね。それもまた不思議のひとつですよね」

●同じ種類なのに色がこんなに違うんですね! 

「カラーバリエーションだけ集めていっても尽きないというか、もう楽しさが倍増ですね」

●同じ種類なのにどうして色がこんなに違うんですか? 

「分からないです(笑)」

●謎が深いですね(笑)

「そうですね。本当に発見ばっかりなんですよ」

『海の極小!いきもの図鑑〜誰も知らない共生・寄生の不思議』

●それからこの156ページにあった“ライトに集まる甲殻類たち”という真っ暗な中で、小さな白い生物がぶわーっと無数に集まっている写真がありましたけれども、これはカイアシ類とクラゲノミ類という風に書かれていますが・・・。

「甲殻類はとても大きなグループなので説明が難しいんですけど。カイアシ類っていうのはなかなか聞かない言葉ですけれども、プランクトンってみなさんおっしゃる中のかなりの割合を占めるグループなんですね。小魚とかはカイアシ類を食べているって言ってもいいくらいです」

●へーーー! 

「そういった生物たちが水中に設置したライトの前に何百、何千、もうそれ以上集まってきたり。集まってくる生物だけではないので、もちろん光を嫌う生物たちもいるので、その辺は棲み分けていると思います」

カイアシ類とクラゲノミ類
カイアシ類とクラゲノミ類

<「海の昆虫!?」カイアシ類!>

 さて、星野修さんのお話にも出てきた「カイアシ類」は「極小のいきもの」の中でも特に小さな生き物なんです。

 エビやカニと同じ甲殻類(こうかくるい)の仲間で、大きさは1ミリから3ミリのものが多く、甲殻類なので体は殻(から)に覆われ、舟をこぐ「かい」のような脚(あし)をもつことからカイアシといい、専門的には「コペポーダ」と呼ばれています。『ケンミジンコ』や『ヒゲナガミジンコ』と言われることもあるので、ミジンコの形を想像していただければイメージしやすいかもしれませんね。

 「見たことも聞いたこともない」という方がほとんどだと思いますが、小さすぎて見えない、または意識して見ていないだけで、海や湖に普通に生息しているし、1万を軽く超える種類が確認され、今でも新種が発見されているそうです。

 海では動物プランクトンの中で最も量が多く、海水1リットルから100匹以上見つかることもあり、「海の昆虫」とも呼ばれているんだそうです。

 陸の昆虫と同様、食物連鎖のベースを支える存在で、イワシやサンマなど小型・中型魚のエサとなるほか、マグロなどの大きな魚も稚魚の頃はカイアシ類を食べて成長し、クジラや海鳥にも食べられています。つまり人間にとっても食文化を間接的に支えてくれている大切な存在なんです。

 「カイアシ類」は動物の中で最も広い生息域を誇るもののひとつで、世界中の海を漂い、水深1万メートルの深海や、標高5000メートルを超えるヒマラヤの氷河からも発見されていて、他の動物に寄生している種類もいます。

 日本では三陸沿岸で特に多種多様なカイアシ類が生息しているそうなので、訪れる機会があったら、じっくり観察してみたいですね。

摩訶不思議な生態

※伊豆大島の海に生息する生き物について、こんな興味深いお話をしてくださいました。

「例えば、水中の壁に向かって30センチ四方ぐらいで切り取って観察してみると、多いところでは多分そこに数百、もしくは千を超える生物たちがぎっしり付いているんですね。動かない生物たちももちろん多いですし、触手っていう花のようなものを広げてパクパクと、水中に漂っているものを食べている全く動かないような生物もいますけど、その上を3ミリくらいの甲殻類たちが動き回っていたり、ゴカイの仲間だったり、だから全部集めるとものすごい数になりますよね」

●へーー!

「それが結構、通常の世界っていうか、この部分だけが生物が多いとかじゃなくて、目の前にある壁って何もないように見えるんですけれども、実はものすごい数の生物がいて、それぞれがそれぞれの異なる生態を見せてくれるっていうか、そういうのが面白いですね」

●そういった小さな生き物たちっていうのは共に助け合いながらというか、共生とかをしながら生きているんですか? 

「そうですね。どういう状態を共生っていうかちょっと私にも理解が不足していますけど、そんな小さな世界で、例えば動かない生物の上にまた様々な生物が暮らしていたり、ひとつの生物の上にまた違う生物が住処を作っていたり、毒を持つ小さな生物に寄り添っていたり、いろんな方法をとって集団で過ごしていたほうが捕食されるリスクも少ないですしね。

 イノチズナアミヤドリっていう生物がいるんですけど、その生物は小さな海老ようなアミ類っていう甲殻類の背中に寄生するんです。寄生した時に最初は雌になって、その後に雄になる若い個体が近寄ってくるんです。
 で、その若い個体が雄になって今、雌と繁殖を行なう時に雌のお腹が糸のように伸びているんですけど、それを掴んだまま外出したりするんですね。だから、雌にぶら下がっていたりして離れることはないんです。全く雄と雌の形が違いますし、とても面白い生態を持っている生物なんですね」

●それは伊豆大島で見ることができるんですか? 

「そうです。伊豆大島で私が見つけた生物です」

イノチヅナアミアドリ
イノチヅナアミアドリ

●星野さんがいちばんお好きな生物ってなんですか? 

「ユニークな生物にウミクワガタっていう生物がいるんですけど、みなさんご存知のクワガタそのものの形と言っていいほど似ているんですね」

●え? あの形で海にいるんですか? 

「ただあの形で7ミリくらいしかないですけど(笑)」

●小さい(笑)

「細かいことを言えば異なる部分もあるんです。面白いのが親になるまでに3回脱皮をするんですけれども、各それぞれのステージの時にサメに寄生をして、吸血して離れて脱皮して、また取り付いて吸血して離れて脱皮して、っていうのを繰り返して、最後にみなさんご存知のクワガタの形になるんですね」

ムツボシウミクワガタ
ムツボシウミクワガタ

多彩な手段で生きている

※星野さんは伊豆大島の海に20数年、毎日のように潜っていらっしゃいますが、海の中の変化を感じることはあるのでしょうか。

「生物に関しては毎年特定の生物がものすごく増えたり、またいなくなったり、結構1年単位で海草ひとつにとっても違うんですね。(日々の変化は)正直あまり感じないんですけれども、1年1年違う海に変わっているっていうか、それがいいのか悪いのか分からないですね。もちろん見られなくなった生物たちも多いですし、新たに定着した生物たちもいますし、なかなか難しいんですね。

 水温に関して言うと高くなったっていうよりは安定しない。陸の天気と一緒ですよね。こんなに冷たいんだとか、こんなに水温が上がるの早いんだとか、年によってバラバラというか、1カ月の中でも結構上下が激しかったり、あんまり20年前の海ではそういったことを感じたことがなかったんですけれども、今はそう感じることが多いですね」

写真協力:星野 修

●撮影する上で何か気をつけている点はありますか? 

「ひとつの生物に時間をかけて撮ることが多いんですね。周りにもすごくたくさんの生物がいるので、ひとつ手を付いちゃうと、それだけダメージを与えているなって気持ちじゃないと、なかなか続けていけないっていうか、なるべくほかの生物にダメージを与えないようにその生物を撮影していくっていうのをいちばん気をつけていますね」

●星野さんが海から学んだことはなんでしょうか? 

「大したことは言えないんですけど、水中って人間が想像できないような形の生物ばっかりなんですね。で、それぞれがそれぞれの手段で捕食したり、繁殖していたりするんです。

 例えば自らの形を変えたり、繁殖する手段をいくつも持っていたり、産卵する生物もいれば、クローンを作ったり分裂できる生物もいるんですね。そういったことって人間できないじゃないですか(笑)。だからそういう小さい生物っていろんな手段を持って強く生きているんだなっていうのを見ると、とても感動します」

星野 修さん

INFORMATION

星野修さん情報

『海の極小!いきもの図鑑〜誰も知らない共生・寄生の不思議』

新刊『海の極小!いきもの図鑑〜誰も知らない共生・寄生の不思議



 星野修さんの新刊『海の極小!いきもの図鑑〜誰も知らない共生・寄生の不思議』には伊豆大島の海で撮影した小さな海洋生物が250種ほど掲載されています。見ているだけで楽しい図鑑です。ぜひお買い求めください。築地書館から絶賛発売中です!

◎築地書館のHP:http://www.tsukiji-shokan.co.jp

 星野さんがガイドするネイチャーツアーについては、ダイビングサービス「チャップ」のオフィシャルサイトをご覧ください。

◎ダイビングサービス「チャップ」のHP:http://www.chap.jp/diving2009/

 星野さんのフェイスブックとブログもぜひ見てください。

https://www.facebook.com/chap.dive

https://ameblo.jp/chappy-neko/

おうちで自然観察!? 〜教えて! ネイチャー先生!〜

2020/6/20 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、日本自然保護協会の「浅岡永理(あさおか えり)」さんです。

教えて!ネイチャー先生!

 日本自然保護協会とこの番組は1992年にブラジル・リオデジャネイロで開催された「地球サミット」以来のお付き合いなんです。日本自然保護協会、英語名は「THE NATURE CONSERVATION SOCIETY OF JAPAN」略してNACS-J(ナックス・ジェイ)の主な活動は「日本の絶滅危惧種を守る」「自然で地域を元気にする」「自然の守り手を増やす」そして「壊れそうな自然を守る」、この4つが活動の柱となっています。

 そんな日本自然保護協会が先頃「オンライン自然観察会」を実施、また、おうちでできる自然観察のノウハウなどを発信しています。オンラインで自然観察、いったいどんな感じなんでしょうね。後ほど、浅岡さんにいろいろお話をうかがいます。

☆写真協力:日本自然保護協会

夜の田んぼを生中継!

※まずは、先日開催した「教えて!ネイチャー先生!オンライン自然観察会」について。
浅岡さん、オンラインで自然観察会って、できるんですか?

日本自然保護協会 浅岡永理さん

「はい、そうなんです! 日本自然保護協会でやっているオンライン自然観察会では、ウェブ会議のソフトを使用して、参加者はチャットでやりとりをして、それにネイチャー先生が都度、答えるという風にしてやっています」

●秋山先生という方が初回は出られていましたけれども、先生はどんな方々がされていくんですか? 

「はい、今は相模原市立博物館の学芸員、秋山幸也(あきやまこうや)先生がされているんですけれど、今後も日本自然保護協会が認定した自然観察指導員の方々をネイチャー先生としてお呼びしてやっていきたいと思っています」

●実際に駐車場での植物を観察したりですとか、植物に関するクイズなどもあって、大人の私も考えながら楽しく学ばせていただきました! 

「ありがとうございます! 」

写真協力:日本自然保護協会
写真協力:日本自然保護協会

●対象は親子という感じなんでしょうか? 

「そうですね。始まりのきっかけが休校中になってしまって、子供たちが退屈して外にも出られずという状況の中で、自然と触れ合うことの楽しさや喜びを是非知ってもらいたいと思いまして、ネイチャー先生が野外に出て、身近な植物をこういう風に観察するといいよっていうのを伝えたり。ほかはおうちで出来る自然観察、野菜も自然なんだよということを伝えたり。

 3回目はネイチャー先生が外に出て夜の田んぼを生中継! ということもしました! 夜の7時から始めまして、カエルが鳴いている姿を見るってことあんまりないと思うんですね。それをネイチャー先生が野外に出て、だんだん薄暗くなってきているところから、カエルがどんな風に鳴いているのかをカメラで撮って、子供たちに“カエルってどんな風に鳴いているー?”とか、“鳴く時に膨らませているのは頬っぺたかな?”“どこを膨らませて鳴いているのかな?”っていうのをクイズにしながら楽しく生中継でお届けしました」

●へーー! すごいですね! リアルな夜の田んぼの風景が見られるっていうことですね。 

「そうなんです」

写真協力:日本自然保護協会
写真協力:日本自然保護協会

●反響はいかがでした? 

「参加された女性の方からは、自分の田舎ではカエルっていうのは当たり前だし、田んぼっていうのは当たり前だったけど、都市に住んでいる子供たちにとっては初めてで、田んぼっていうのをまず見たことがない、こんな風なんだ〜っていうのを知ったというのと、カエルが鳴いているところを初めて見たと、とっても感動して興奮していたという声を聞きました」

●オンライン自然観察会ってなかなかやる機会がなかったと思うんですけれども、いちばん気をつけてらっしゃることってどんなことですか? 

「いちばん気をつけているのは子供たちが自然に出てもやれること、というのを考えていたり、あとはありのままの姿を見せて伝えて、こんな風に見るといいよっていう気づきや発見、驚きっていうのを楽しく伝えられるようにというのを考えています」

ベランダで自然観察!?

※NACS-Jのホームページでは、ベランダや庭でも自然観察ができると、紹介しています。
何かコツがあれば教えてください。

「はい! 例えばですね、ベランダに植物を置いていた場合はその植物に意外と虫が来ていたりもするので、そういうところからこの虫ってなんだろう? とか、この植物はどうしてこういう形で生えているんだろう? など、そういった視点で見ると楽しく見つけられるかなと思います」

●なにか記録しておいたほうがいいんですか? スケッチですとか。

「そうですね。例えば写真などを撮ってもらったり、あとはスケッチをすると実際に、ただ目で見ていただけでは気づかなかったことにも気づくことが出来るのでとても面白いと思います!」

●ニンジンのへたを捨てるのはもったいない、育ててみよう! というような感じで、NACS-Jのホームページに野菜で自然観察のアイデアというのも載っていましたけれども、これはいいですね! すごく面白かったです! 

「ありがとうございます! お料理している時にニンジンのへたとか、大根の葉っぱのついている部分とか捨ててしまうと思うんですけれども、それも捨てずに(お皿に)お水をちょっと薄く張って、それを置いておくだけでどんどん上の葉っぱが伸びていくんですね。そういうのを見ていくとその植物がどうやって生えていくのかとか成長していく様子を見られるので、おうちでもそういった植物の生きていく、成長していく軌跡というのが見られるかなと思います」

写真協力:日本自然保護協会

●子供も、料理しているお母さんのお手伝いが楽しくなりそうですよね。

「一緒にやれるととても楽しいだろうなと思います」

●近くの公園ですとか、原っぱでも自然観察って出来ますよね? 

「そうですね。外に出た時に難しい植物を見つけようとかしなくても、ただ辺りを見回していくだけでも、よくよく見てみるとこの木ってどうしてここに生えているのかな? とか分かるので、例えば、外に出掛けた時に自分だけの自然の地図を作ってみるのも面白いですね。

 あとは写真を撮っていただいたりすると、その写真も記録になるのでとてもいいかなと。私たちの日本自然保護協会でもフォトコンテストというのをやっていまして、そのフォトコンテストのテーマとしては日本の自然や文化的な風景というものをテーマにしていますので、そういったものを撮っていただけたら嬉しいなと思います」

<アフターコロナ社会への7つの提案>

 さて、日本自然保護協会・NACS-Jが5月22日の「国際生物多様性の日」に「アフターコロナ社会への7つの提案」を発表しました。

 NACS-Jでは、新型コロナウィルスの発生と拡大の背景には気候変動や生物多様性の損失、大量生産・大量消費のライフスタイルなどが関係していると考え、感染収束後に構築すべき「アフターコロナ社会」の鍵は自然の中にあるとして、人と自然が共生する社会に向けた行動として、7つの提案をしています。その7つをご紹介しましょう。

「1.コロナ危機に立ち向かった人々を称え、市民社会の力を高めよう」

「2.コロナ危機の混乱を記録し、学び、次の社会に活かそう」

「3.今後の社会・経済の復興を、持続可能な社会の発展につなげよう」

 NACS-Jによる解説で少し補足しておくと、20世紀型の公共開発事業や、過剰な自然資源利用ではなく、生物多様性の保全や脱プラスチック・脱炭素社会につながる施策で社会と経済の再活性化を目指しましょうということです。

「4.新たに生まれたライフスタイルの可能性を育てよう」

 NACS-Jの解説によれば、オンラインでつながるコミュニケーションの推進、ということですから、まさに「オンライン自然観察会」もそのひとつではないでしょうか。

「5.エネルギー、食料、生活用品などを地域でまかなえる新たな社会を構築しよう」

「6.人と自然の新たな関係を構築しよう」

「7.未来のコロナ危機の発生と拡大の防止に世界全体で取り組もう」

 やはり解説によれば、新型コロナウィルスの発生の背景には、海外における野生動物の違法捕獲や不適切な利用、森林伐採による農地の拡大・利用などにより、人間と野生動物が接触する機会が増えてきたことが原因にあると考えられているそうです。

 人間と自然がともに健康になる新たな社会を築くために、できることから取り組んでいきたいと思います。

「アフターコロナ社会への7つの提案」について詳しくは、日本自然保護協会のオフィシャルサイトをご覧ください。https://www.nacsj.or.jp/media/2020/05/20395/

オンライン自然観察会の可能性

写真協力:日本自然保護協会
写真協力:日本自然保護協会

※それでは最後に、今後のオンライン自然観察会の展開について浅岡さんにお話いただきました。

「子供たちですとか、その保護者の方などにもとてもいろんないい反響をいただいているので、是非これからも、例えばオンラインでの自然観察会のやりかたを伝えるノウハウですとか、もっともっと拡大してやっていきたいなと思っています」

●どんどん可能性が広がりそうですね。

「そうですね、意外とオンラインでも自然観察ってできるんだっていうのを、私たちもひとつ知れました」

●具体的になにかやってみたいこととかってありますか?

「はい! 今はネイチャー先生がひとりで喋ってっていう風にやっているんですけど、例えば 一緒に子供たちの声を入れてみたりとか、もしくはそれが難しければ、リポーターのような感じで掛け合いをしてみたり、季節ごとの楽しい自然を届けられたらなと考えています!」


INFORMATION

日本自然保護協会 情報


 オンライン自然観察会は、これまでに3回、開催。その模様はオフィシャルサイトに動画が載っています。大人でも知らないことが多くて、勉強になると思いますよ。ぜひ見てください。
 そして、日本自然保護協会の活動は寄付によって支えられています。また企業向けの会員制度もあります。ぜひご支援ください。
 いずれも詳しくは日本自然保護協会のオフィシャルサイトをご覧ください。

●日本自然保護協会のHP:https://www.nacsj.or.jp

フォトコンテスト情報


 日本自然保護協会の会報誌「自然保護」の表紙を飾るコンテストです。現在、作品を募集中。テーマは日本の国内で撮影した野生の動植物、自然を感じる風景や暮らし、文化となっています。応募の締め切りは9月30日。

 応募方法など詳しくは日本自然保護協会のオフィシャルサイトにアクセスして、「第7回・会報『自然保護』表紙フォトコンテスト」のページをご覧ください。

●フォトコンテストのHP:https://www.nacsj.or.jp/2020/04/19786/

心で感じる日本のふるさと 〜能登を旅する〜

2020/6/13 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、写真家の「宮澤正明(みやざわ・まさあき)」さんです。

宮澤正明さん

<今週は貴重なフォトブックをプレゼント! 応募方法はこのページのいちばん下に>

 宮澤さんは1960年、東京生まれ。日本大学・芸術学部・写真学科卒業。85年に赤外線フィルムを使った処女作で賞を受賞。近年は、日本の神社仏閣を撮影。特に2005年からは伊勢神宮のオフィシャル・カメラマンとして、9年もの歳月をかけて行なわれた一大行事「式年遷宮」を記録し、6万点にも及ぶ作品を奉納、写真集も数多く出版されています。

 また、映像作家として、伊勢神宮の森をテーマにしたドキュメンタリー映画『うみやまあひだ』を初監督。2015年のマドリード国際映画祭の外国語ドキュメンタリー部門で最優秀作品賞を受賞しています。

 そんな宮澤さんが先頃、能登半島の自然景観や伝統的な行事を収めたフォトブック『能登日記』を発表されました。きょうは能登の、時空を超えたような旅や日本の神社仏閣の撮影を通して感じたことなどうかがいます。

☆写真提供:宮澤正明

心のふるさと

※まずは、フォトブック『能登日記』に掲載されている写真のお話から。

●まず開いてすぐ「アイ・ラブ・ノト」って書かれていて、写真は白米千枚田!

「はい、もうここは有名ですね」

●海に向かって急斜面に何段もの田んぼが広がっていて、本当に美しいですね。風にそよぐ緑の稲に感動しました! 

「これちょうど初夏の頃に行ったんですけども、だいぶ稲が育っていて、海風がすごく爽やかで。夕方になると緑の絨毯が(風に)なびいて、本当に美しい綺麗な風景でした」

●この写真からもすごく動きが見えてきそうな感じですよね。

「はい、ありがとうございます」

写真提供:宮澤正明

●このフォトブックに”能登は日本のふるさと”と書いてありましたけれども、やはりそういう場所なんでしょうか?  

「そうですね、どうなんでしょう。日本のふるさとっていうのは日本各地にいろいろと点在はしていると思うんですけども、ただ能登に関していうと、そういう日本のふるさとが凝縮しているっていうんですかね。今の日本で、かなり文明や文化が発達しちゃって、こういう素朴な土着的な風景ってなかなか見られないと思うんですよね。

 具体的にいうとすごく人情とか、心の温かさのような、やっぱり自然の厳しさの中で、自然と共に生きてきた方々が、人と土地とが一緒くたになっていて、なんかすごくそれがしみじみと伝わってくる。
  例えば、東京から行ったりするとすごく非日常的だと思うんですけども、我々日本人が持っている、例えば“心のふるさと”っていうDNA は多分みなさん持っていると思うんですよ。そういうものをちょっと思い出させるような、デジャブ的な風景にたくさん出会うことができるので、そういう部分では本当に今おっしゃられた通り、日本のふるさとっていっても本当に過言ではないかなと思います 」

神様をもてなす儀式

写真提供:宮澤正明

※宮澤さんは写真家として、能登のどんなところに魅力を感じているのでしょうか。

「人々の暮らしは、人間ってやっぱり太古の昔から衣食住みたいなのが必ず毎日のように、そして自然と共にあるわけじゃないですか。そういう四季折々を通じて自然との関わりというか、共存共栄をものすごく大切にしているのを、自然に見られるのが能登のいいところだなっていう風には感じましたね」

●いちばん印象に残っている場所を挙げるとしたらどこですか? 

「例えば、今いった暮らしの原点となる、”あえのこと”っていう古式と厳格さを留める奥能登の農耕儀式があるんですよ。1年に1回の収穫を感謝したり、五穀豊穣を祈る伝承行事で、これはユネスコ無形文化遺産にも登録されているんですけども、それはまたまたすごくてですね。

 各農家で代々伝わる方法であたかも神様が存在するかのように、まず稲刈りが終わった田んぼの真ん中に松の木を立てて、そこが神様の地であって、そこに神様をお迎えに行くんですよ。そして、榊を2本、男性と女性の榊を持って自分の家に招いて、まるで神様が実在するかのようにお風呂に入れたり、食事を出してもてなしをしたりっていう、要は1年の五穀豊穣を本当に感謝するっていうことを、農耕儀式っていうのかな、本当に古来からそういうのが伝わっているんですね。

写真提供:宮澤正明

 それを目の当たりした時にやっぱり、いろんな神事を僕は撮っていますけれども、すごく日本の神事の原点っていうんですかね。もちろん神社とか仏閣でものすごく雄大で壮大で格式高い儀式もたくさんありますけども、すごく分かりやすくほっとできる、ぼくらもそうだよね、いいことに恵まれたら感謝するよね、みたいなものがしみじみ出てくるような儀式でした。

 もちろん能登にはもっとたくさんお祭りだとか、いろんな食べ物も含めて、たくさん良い土地があるんですけども、なんか僕はこの”あえのこと”っていう農耕儀式に出会った時に、ものすごくこの能登の方々の生きている意味っていうのを感じられたので、そこがすごく自分の心に残っていますね」

<農耕儀式「あえのこと」>

 宮澤さんが取材で出会い、感銘を受けたという農耕儀礼「あえのこと」、これは奥能登の各農家に伝わる風習で、「あえ」はもてなし、「こと」は祭りを意味します。つまり「もてなしの祭り」なんですね。

 稲作を守る田の神様に1年の収穫を感謝し、五穀豊穣を祈るために行なわれる奥能登の代表的な民俗行事で、1976年に国指定重要無形民俗文化財に指定され、2009年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。

 年末の12月5日と、春の2月9日の2回行なわれるのが一般的で、年末の「あえのこと」では家の主人が田んぼに神様を迎えに行き、家に招き入れて、お風呂で背中を洗い流す所作をしたあと、奥座敷に案内して海の幸、山の幸のごちそうでもてなします。

 そして神様はそのまま家にとどまって年を越し、春の「あえのこと」で再びごちそうでもてなしたあと、神様を田んぼに送り、その年の豊作を祈るんです。

 代表的なお供え物は、コシヒカリの小豆ご飯と、たら汁、大根とたらの酢の物、鱈の子(たらのこ)をまぶしたお刺身などで、田の神様は夫婦とされているため、すべて2組ずつ用意するのが大切な決まりとなっています。

 各農家で代々受け継がれてきたため、それぞれの家で独自のしきたりが生まれ、ほかの家の人がそれを見ることはない、というくらい厳かな行事だったのですが、近年は行なわない家も多くなりました。

 一方でこの伝統を後世に伝えようと行事の様子をインターネットで発信したり、希望者が行事を見学できるようにするなど、様々な取り組みが行なわれています。機会があれば、ぜひ現地で見学してみたいですね。

お祭り半島!? 

写真提供:宮澤正明

※能登では7月から10月にかけて、毎週どこかでお祭りがあるそうなんですが、特に印象的だったお祭りについてお話しいただきました。

「昨年の夏に撮影した時に、石崎奉燈祭っていう七尾湾のところと、奥能登にある宝立七夕キリコまつり、そのふたつを撮影したんですよ。これはまた両方ともすごい!

 キリコ(*)って、すごく巨大な、大きいもので15メートル以上あるのかな。そんなキリコを男の人が運んでいくっていうお祭りなんですけども、それは勇ましいというか、海の男達とかね、自然と共に生きてきた人たちがそこで夏の祭りをするんですね。

 もちろん漁業中心でしたら大漁を祀ったり、農家が近かったら、さっきいったように五穀豊穣を祈ったり、そういうのが能登中にありまして、それがキリコ。縦状のすごく大きくて引くものなんですけどね、そういうものがあります」
 (*キリコ=灯籠)

●お祭り半島ともいわれているんですね。

「とにかくあちこちでお祭りがありますね」

●そうなんですねー、すごく迫力もありそうですしね! 

「ものすごく迫力ありますね。例えば宝立七夕キリコまつりは、海の中の火に向かってみんなで海に入っていくんですよ。その松明の周りをみんなで回るんです。陸から海に入っていって、さらに担いで回ったりとかね、そういうすごい光景がたくさん見られます!」

●伝統が継承されていくっていうのもいいですよね。

「そうですね。本当にそういう部分ではいろんな伝統と歴史と文化が凝縮していて、未だにそういうものが継承されていて、それが人々の心と心を繋いでいるっていうんですかね。だから必ずその石崎奉燈祭は日本国中に散らばった若者たちがその時は必ず集まって帰ってくる。そういう部分はものすごくいいですよね。なにかそこに求心力があるというんですか、必ず誰もが夏だけはあそこに帰るんだみたいな、ひとつの指針があるっていう部分では素晴らしいなと思います」

●まさにふるさとですね!

「はい、本当にそうですね」

心の拠り所

能登日記

※神様をまつる行事「神事」は、自然と密接につながっているのでしょうか。

「そうですね。先ほどの”あえのこと”でもそうですけども、伊勢神宮の祭りも、原型には衣食住を中心に、特に日本人の主食であるお米の収穫を感謝するということが、儀式の原点になっているんですよ。

 すごく日本人は自然との関係を特に大切に生きてきた民族で、日本の神事は自然への感謝と畏敬の念が生きている証っていうか、神様と人との契りっていうんですか、その中で生まれた祈りなんじゃないかなっていう風に思っていて。それは伊勢でも能登でも日本人全体が点と点で繋がるような感じなんじゃないですかね」

● そうですよね。私たち日本人は忙しい日々の中でも、神社やお寺に行くと心が落ち着くような感じもしますけれども、やっぱり心の拠り所としているのがそういった神社仏閣っていうところもあるんでしょうね。

「そうだと思いますね。日本中の神社仏閣って、その土地その土地の人々の拠り所とかね、あとは集いの場だったり出会いの場だったり、ひとつのコミューンを形成していると思うんですよ。だからそういった部分では、喜怒哀楽を共に感じて共感できる大切な場所だったし、その土地その土地で、人々がすごく大切だった存在が神社仏閣だったような気がするんですね。

 僕も能登のいろんな神社仏閣に行きましたけども、日本国中(の神社仏閣に)行っていますけども、いろんなところに行ってもやっぱり心の支えになったり癒しになったり、すごくそういう場所は多いですよね」

●パワーもらえますよね! 

「そうですね。まずはほっとできるし、日常の忙しい中からひとつ俯瞰して自分を見られるっていうのかな。冷静に自分を見られる場所になるっていうのは非常にいいなと思いますね」

●このフォトブック『能登日記』にもお寺や神社の写真がたくさん載っています。今は自由に旅ができない状況ですけれども、どんなことを感じ取ってもらいたいですか? 

「そうですね。やっぱり能登の時空を超えた美しい幻想的な風景や、厳かな静けさの中に佇む美しい神社仏閣、こういった感性とかですね。魂のレベルにおいて大切なのは、僕はあんまり距離じゃないと思うんですよ、距離感かなと思うんですよね。

 例えば今は自由に旅ができないじゃないですか。でもそういうのは多分、近所の森や自然、神社仏閣などから、日本人の心のふるさとっていう DNA さえあれば、その距離感で感じ取ることができる。そのために例えばこのフォトブックを見ていただいて、少しでもみなさんのイマジネーションにお役立てできればいいかなと思ってこのフォトブックを、まぁタイミングは非常に微妙なんですけども(苦笑)、すごくそういう部分ではいい部分もあったかなと思っています 」

☆過去の宮澤正明さんのトークはこちらをご覧下さい


INFORMATION

宮澤正明さん情報

能登日記〜写人 宮澤正明と旅人 立川直樹の能登紀行

フォトブック『能登日記〜写人 宮澤正明と旅人 立川直樹の能登紀行』


 フォトブック『能登日記』には海、田園、景勝地、お寺、お祭りなどの写真が掲載されていて、能登のディープな魅力を感じます。じっくり見ていると、能登の風が吹いて来るような錯覚を覚えますよ。また、音や匂いをも感じるような素晴らしい写真ばかりです。立川直樹さんの旅をしているようなエッセイも素敵です。

 『能登日記』は「ほっと石川旅ネット」にアクセスして、PDFで入手できるほか、道の駅や観光案内所ほか、石川県内の施設で手に入ります。

●ほっと石川旅ねっとのHP:https://www.hot-ishikawa.jp

●宮澤正明さんのHP:https://masaakimiyazawa.jp

<プレゼントの応募方法>

 今回、非売品の『能登日記』を特別に抽選で3名の方にプレゼントいたします。ご希望の方は「能登日記、希望」と書いて、メールでご応募ください。

メールアドレスは、flint(フリント)@bayfm.co.jp です。

あなたの住所、氏名、年齢、電話番号をお忘れなく。番組を聴いた感想なども書いてくださると嬉しいです。応募の締め切りは、6月17日到着分まで。当選者の発表は発送を持って替えさせていただきます。たくさんのご応募、お待ちしています。

このページの上部にある「メッセージを送る」からも応募できます。

応募は締め切られました。たくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。

ハワイの素顔

2020/6/6 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ハワイのスペシャリスト、そしてエッセイストの「近藤純夫」さんです。

近藤純夫さん

<今週は本のプレゼント! 応募方法はこのページのいちばん下に>

 近藤さんは1952年、札幌市生まれ。エッセイストのほかに、翻訳家、写真家、そして洞窟探検の専門家。1980年代からハワイに足繁く通い、ハワイ諸島の自然や文化に関する本や講演などを通して、ハワイ情報を発信。ハワイ火山国立公園アドバイザリー・スタッフとしての顔も持っていらっしゃいます。

 きょうは伝統的なフラや植物のこと、そして近藤さんおすすめの絶景スポットのお話などうかがいます。

☆写真提供:近藤純夫

90%以上は外来種!

※近藤さんは洞窟調査のためにハワイ島に行ったのをきっかけに、その後通うようになったそうですが、ハワイには洞窟がたくさんあるのでしょうか。

「火山洞窟がたくさんありまして、鍾乳洞というのはほとんどないんです」

●どうして、ハワイの洞窟だったんですか?

「はい、ふたつありまして、ひとつはハワイ諸島っていうのは火山の噴火でできた島なので、洞窟が多いから新しい発見があるんじゃないかな、というのがあるのと、それから規模の大きいのが既に見つかっているので世界クラスのが見つかるかな、というのがありました。それが一点。

 もう一点は僕がずっと勉強させていただいている先生がいらっしゃって、この先生の講演会を含む国際洞窟学会という、いろんな大学や研究所が集まる世界会議みたいのがハワイ島であったんです。(その会議に)行ったところ、お前は洞窟の調査をやっているなら、ここの地域が空いているからやってみないか? と言われたんですね。じゃあやらせてください! ということで始めたのが最初です」

●いちばん初めは洞窟というのがきっかけだったということですけれども、それから興味もいろんなところに広がっていったというような感じなんですか? 

「はい、そうです。そういう僕も最初はですね、洞窟に通っている時にお花を見たりとかはあったんですけど、あ、花か〜くらいで、それ以上に興味を持つこともなく、何年も過ぎてからちょっとしたきっかけがあって、花も面白そうだねっていうような感じになりました。

 女性もあるかもしれませんけど、男性って何か物を集めるのは結構好きだったりすると思うんです。僕の場合はそのお花の匂い、たまたま蜜の、すごく甘い香りを出していたんです。この花は何なんだろう? っていうのを気になって調べた時に、ほかの色もあるよとか書いてあって、それは全部見たいなとか、写真に収めたいなと思うのがきっかけだったんです」

●ハワイの花は色鮮やかな花も多いですものね〜

「でもね、その90%以上は外国の花なんです」

●そうなんですか!?

「これは知っているよってお花の名前を上げると、多分99%ぐらいまで跳ね上がって外来種です。外国のお花です」

●そうなんですか!? じゃあハワイそのもののお花というのはそんなに…

「見るチャンスは比較的意識しないとないと思います。例えばハイビスカスだとか、プルメリアだとかブーゲンビリアって名前は聞きますよね。これ全部外来種なんです」

●ハイビスカスはハワイそのもののイメージでした。

「ハワイのハイビスカスもあるんですけども、実は山の中にあって、観光で見る人たちのものっていうのはみんな園芸品種で、ほかのものなんですね」

ハワイの夕陽

写真提供:近藤純夫

※近藤さんはこの時期に新しい本を出すにあたって、何か意識したことはあったのでしょうか。

「そうですね、ちょうどタイミング的にもお家でおとなしくしてなくちゃいけないっていう時ですから、この本が窓のような役割をしてくれればいいなと思っていましたので、本を通じてちょっとハワイを感じてもらいたいというメッセージは込めました」

●ハワイの日々が1日1日記録されていますけれども、特にこの7月7日の”光の帯”っていうタイトルで、満天の星空に天の川がある写真にすごく感動しました。美しかったです! 

「これもね、ちょっとした事件というか、ありまして、僕はこの時、人を連れて夜に星を見せる予定だったんですね。ところが、これハワイ島なんですけれども、どこへ行っても曇りで、山の上も曇りで星がひとつもなかったんです」

●え?! そうなんですか! 

「ええ。で、この写真を撮ったのは、結構低い位置で標高800メートルぐらいしかないところなんです。そこの天気図を見たら、ちょっと雲の切れ間があるっていうのが分かって、行って到着して1時間くらい見たら、もう雲に覆われてしまったという、本当にピンポイントで見た時の(写真)ですね」

●そうなんですね! 

「逆にいうと、普通めぼしいところに行って、どこも雲だっていったら諦めますよね、日本だったら。ちょっと車で行くっていうようなレベルではないですよね、日本の場合は。でもね、ハワイというのは地域によって全く天候が違うので、これが可能なんですよ」

●そういったところもハワイの魅力のひとつですね。

「そうですね。だから気象とか気候というものも、ちょっと勉強しておくと、こういうことができちゃうというのはあります」

●この“黄色のサンセット”っていうのもすごく素敵でした! こんな綺麗な夕陽は見たことない! っていうような写真で、燃え立つような黄色とかオレンジ色の夕陽ですね。

「そうですね。本の構成上1枚しか載せていませんけども、別の日に行くとサーモンピンクになったり、別の日に行くと真っ赤になったりとか、黄色になったりとか、本当に色が変わるんですよ」

●夕陽の色が変わるんですか? 

「そうです、変わるんですよ。それがハワイのいいところ。多分人が周りにいないと、なんかその空に溶け込みそうな感覚ってのがあります」

●うわー素敵ですね〜! この“7月24日:黄色のサンセット”はどこで撮った写真ですか?

「これはね、カウアイ島のワイメアという町の海岸です」

●橋がありますね? 

「これはね、桟橋であまり使われてないんですけども、今はほとんど釣りをしたりとか、夕方の散歩に地元の人が訪れるだけですけど、ここね、ちょっとした“いわく”があるんです。なにかと言うと、ポリネシアの人以外で外国から初めて人が来た、つまりハワイを発見したのはキャプテン・クックって人なんですけども、クックが初めて上陸したハワイの場所ってここなんです!」

●そうなんですか!

「そうなんですよ。この町は小さいですけど、小さなクックの銅像も建っています」

<ハワイ諸島の特徴と成り立ち>

 私にとっても憧れのリゾート、常夏の楽園・ハワイ、改めてどんな所なのか、おさらいしてみましょう。

 ハワイは1959年にアメリカの50番目の州となった、最も新しい州ですが、それ以前にもネイティヴ・ハワイアンの十数世紀に渡る歴史があります。およそ1500年前、無人島だったハワイ島にポリネシア人が初めて到達し、その500年後にはタヒチから多くの移住者がやってきて、ハワイ文化の基礎を築きました。

 1778年にキャプテン・クックがカウアイ島に上陸して西洋との関わりが始まり、その後も様々な歴史を積み重ねて現在に至ります。

 ハワイ諸島は500万年前の海底噴火で隆起したあと、プレートの移動で北西にずれて島が次々に造られ、130以上の島や岩礁で形成されています。

 州都・ホノルルがありハワイ観光の拠点となっているオアフ島や、活発な噴火活動が続くキラウエア火山があるハワイ島、かつてカメハメハ大王が王朝の拠点を置いたマウイ島のほか、カウアイ島、モロカイ島、そしてラナイ島の合わせて6つの島が世界有数のリゾートアイランドとして知られています。

 年間を通して平均気温25度以上と、温暖な気候ですが、標高の高い地域では雪が降り、ハワイ島最高峰のマウナケアでは積もることもあるんだそうです。

 実はハワイ諸島、現在も太平洋プレートの移動とともに、年に6センチから9センチくらいずつ北西側に動いています。ハワイ諸島の北西には日本列島があり、直線距離で6000キロちょっとなので、単純計算で1億年後くらいには日本とハワイがくっつくかも…と思いきや、実際は、太平洋プレートは日本海溝で北米プレートの下に沈み込んでいるので、ハワイ諸島もいずれは、といっても地球規模の気の遠くなるような時を経て、日本海溝に沈んでしまうそうです。

フラは道!?

写真提供:近藤純夫

※近藤さんの新しい本にはフラダンスではなく「フラ」と書いてありました。フラとフラダンスは、同じと考えていいのでしょうか。

「うーん、イエスでもあるし、ノーでもあります。何故かというと、まずフラっていう言葉ってどうしてもダンスと結びつきやすいですよね。でもフラってダンスだけじゃないんです。

 例えばフラっていうのは、元々は神様に捧げるための、カフナと言うんですけども、日本でいうと住職さんだとか神主さんとかああいう人たちのことで、そういう人が神に祈りを捧げる時に、それを聞いている周りの人々に分かりやすくするために、祈りの内容をジェスチャーで教えた。そうするとただ声を聞いているよりも目に入ってきやすいんじゃないですか。それが元々のフラなんですよ」

●そうだったんですね。

「それをちゃんと守っている人たちは今もいて、名前は省略するにしても、伝統的なフラをやる人たちがいます。そのフラがダンスというか、踊りを通して何かを表現するっていうことになった時に、フラダンスって言葉も英語として出てきたんですけども、いまはふたつ(のフラが)あります。

 ひとつはさっき言ったように伝統的な踊りのフラを“フラカヒコ”、それからもうひとつは今風のドレスとか着てやる“アウワナ”という名前のフラがあって、このふたつをいう時にはフラダンスといってもそんなに違和感はないかもしれない。

 本当に古いものになると・・・楽器も、普通は楽器と言いますけども、(フラの)楽器は使ったことありますか?」

●使ったことはないです。

「ないですか、楽器を見たことはありますか?」

●あります! 

「それを先生は楽器と、もしかして言っているかもしれませんけども、本来それは楽器ではなくて神具、神様の道具なんです。だから勝手に触っちゃいけない、生徒が」

●へぇー! 

「という厳しいところもあれば、まあそんなに固くやらなくてもいいんじゃないのって、いうところもありますけども、いろんなところがあるんですよ。だから例えば日本の茶道だとか、そういう道と名前が付いて長い歴史を持っているものには、いろんな決まり事があるじゃないですか。フラもそれと同じようなもので、すごくいっぱいあるんですよ」

●ハワイの方々にとってフラっていうのはどんな存在なんですか。もうそれこそ神だったりとか?

「有名な言葉があって、”フラは人生だ”っていうのがある。フラ・イズ・ライフっていうのがありますね」

サンセットはシルエットで

新刊『ハワイごよみ365日〜季節ごとに楽しむ、島々の素顔』

※取材のためにハワイに、毎年のように通っていらっしゃる近藤さんが行くたびに必ず訪れる場所はどこなんでしょうか。

「訪れる場所ですね〜、行く島がどこかにもよるので、6つぐらいの島はどなたでも行けるんですけども、オアフ島だったらこことか、マウイ島だったらここっていうのはあります」

●いちばんのおすすめというのは? 

「そうですね。僕が最も多く行くのはハワイ島なので、ハワイ島では人には会う、久しぶりだねって言ってその町に住んでる人に会って、よもやま話をするっていうのはまず楽しみですよね。

それから食べるもの、ここに来たらこれ食べるしかないよねって食べ物もあるし、それも面白いのは、言い方は悪いけど、決して美味しいわけじゃないけども(苦笑)、でもハワイの味だよねっていうのがあって、それを食べて、あ、戻ってきたなって思ったりしますね」

●おすすめのハワイのソウルフードはなんですか? 

「そうですね、サイミン」

●サイミン? 

「サイミンっていうのはね、ラーメンみたいな麺なんです。ラーメンって言ったらちょっと違うよねって思うかもしれないんですけども、なんとも奇妙な味なんです。でもそれはハワイの完全に国民食と言うか、島民食なので、なんと!マクドナルドのメニューにもあります。そのぐらいスタンダードなんですよ。

 食べ方も地元の人の食べ方っていうのがあります。一応ラーメンみたいなもんだから蓮華が付いてくるんですけども、必ずマスタードも付いてくるんですよ」

●え?! 

「マスタードをどうするのかっていうと、それをすくってスープに入れるんじゃなくて、スープを飲む時に蓮華の下にちょんとマスタードを付けて、付けた状態でスープをすくうと、ほんのりとマスタードの香りがスープに溶け込むという、面白いでしょ」

●へ〜〜〜面白いですね。これから自由に海外に行けることになった時に、リスナーのみなさんがハワイに行った時にこういう風に楽しんでっていうのがあれば、是非教えてください!

「夕方になると、大体みなさんビーチにいることが多いと思うんです。例えばワイキキ・ビーチとか行った時に、海岸にたくさんの人が立ってサンセットを見たりしているんですけども、僕のおすすめはその砂浜から100メートルぐらい後ろに、陸地の方にちょっと後ずさりして戻ってもらう。ビルの後ろじゃなくて海が見えている状態で戻るんですけども、そうするとヤシの木だとか、ライフガードの建物だとか、点々とシルエットになる。その方がずーっと綺麗です。それを楽しんでいただくのは、どこでもできますから、是非一度やってみるといいなと思います。僕もそういう写真をこの本の中にいくつか入れています」

☆過去の近藤純夫さんのトークはこちらをご覧下さい


INFORMATION

近藤純夫さん情報

新刊『ハワイごよみ365日〜季節ごとに楽しむ、島々の素顔』

新刊『ハワイごよみ365日〜季節ごとに楽しむ、島々の素顔

 近藤さんがハワイの日々を記録し、暮らすような感覚で1年をつづってあります。1ページに一枚の写真と短いエッセイで構成されていて、ハワイの暮らしや街の風情、自然や絶景など、まさに「ハワイの素顔」を感じられる一冊です。

 『ハワイごよみ365日〜季節ごとに楽しむ、島々の素顔』は誠文堂新光社から絶賛発売中!

●誠文堂新光社のHP:https://www.seibundo-shinkosha.net

●近藤純夫さんのFacebook:https://www.facebook.com/kondo.sumio

●近藤純夫さんのハワイ塾:https://www.facebook.com/halenaauao/

●新刊『ハワイごよみ365日』:
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784416520369

<プレゼントの応募方法>

近藤さんの新刊『ハワイごよみ365日〜季節ごとに楽しむ、島々の素顔』を抽選で3名の方にプレゼントいたします。ご希望の方は「ハワイの本、希望」と書いて、メールでご応募ください。

メールアドレスは、flint@bayfm.co.jp です。

あなたの住所、氏名、年齢、電話番号をお忘れなく。番組を聴いた感想なども書いてくださると嬉しいです。応募の締め切りは、6月10日到着分まで。当選者の発表は本の発送を持って替えさせていただきます。たくさんのご応募、お待ちしています。

このページの上部にある「メッセージを送る」からも応募できます。

応募は締め切られました。たくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。

ゆるゆる、きょろきょろ、ゆる山歩き

2020/5/30 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、登山ガイドでフリーライターの「西野淑子(にしの・としこ)」さんです。

西野淑子さん

 西野さんは山口県生まれ、埼玉育ち。立教大学卒業後、旅行ガイドブックを多く手掛ける出版社で編集のアルバイトを経て、1999年からフリーライターそして編集者に。2017年に日本山岳ガイド協会認定の登山ガイドの資格を取得。現在はフリーランスとして原稿書きや編集のお仕事をしつつ、初心者向けハイキング講座の講師なども務めていらっしゃいます。

 また、東京新聞の首都圏版に、ゆる山歩きのコラムを連載中で先頃、その記事をまとめたシリーズ3作目となる本『もっともっとゆる山歩き〜まいにちが山日和』を出されました。

 きょうはそんな“ゆる山歩き”をテーマに、西野さん流の山の楽しみ方やチェックしておきたい、おすすめのコースなどうかがいます。

☆写真提供:西野淑子

街を歩く時の2倍ゆっくり

※西野さんは山岳会に所属され、日本アルプスを縦走したりと本格的な山登りもされています。そんな西野さんがゆる山歩きに目覚めたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

「やっぱり登山を始めると、初めはどんどん歩く距離を伸ばしたいとか、もっと高い山に行きたい、山の会に入ってもっと難しい登山がしたいという風にずっと思って、どんどん出ていたんです。

 『東京近郊ゆる登山』という、初心者で登山を始めたい方向けのガイドブックを作って、それがご縁で初心者の方と一緒に山を歩くようなお仕事を始める中で、結局そういう方とご一緒する時って本当にゆっくりと周りを見ながら歩くんですね。私自身もみなさんにこれが見えますよとか、これこれがありますよ、こんな景色が見えます、みたいにご案内をしながら歩くことで、ゆっくり歩いて、いろんなものを見る楽しさに目覚めたというか、知るというか。上をひたすら目指さなくても周りを見ることで、もっと山自体の良さを味わうようになったという感じですね。

 だから結局その知り合った初心者の方々、山に慣れていない方々が、私にゆる山歩きの楽しさを教えてくれて、目覚めるきっかけになったのかなって思っています」

鋸山山頂。地獄のぞきと絶景。
鋸山山頂。地獄のぞきと絶景。

●この本の中にも街を歩く時の2倍ゆっくりで歩くという風に書いてありましたけれども、かなりゆっくりというような感じなんですね? 

「そうですね。実際、山を歩き始めると、街で歩くのと同じように歩いてしまうと結局、山って多少傾斜があったりとか、あと歩きづらい不整地な面、ボコボコの面だったりするので、どうしても歩きにくくて、いつもの街歩きのペースで歩くと、ちょっと息が上がって疲れてしまったりするんですね。なので2倍ゆっくり歩くというのは、周りのものを見る余裕を楽しむというのも あるし、あと疲れないコツでも実はあるんですよね 」

急がず、自由に楽しむ

奥多摩・弁天山の山頂(最寄り駅から1時間弱で山頂に立てる山)。 ミツバツツジが緑に映えて美しい。
奥多摩・弁天山の山頂(最寄り駅から1時間弱で山頂に立てる山)。
ミツバツツジが緑に映えて美しい。

※続いて、西野さん流の山の楽しみ方についてうかがいました。

「多分私はそんなマニアックでもないですし、普通の人とあんまり変わらない楽しみ方をしているとは思うんです。とにかくきょろきょろしながら、ものを探しながら歩くのが好きなんですよね。

 例えば春先ですとお花を見るのが私とても好きで、もともと山でお花を見たくて山歩きを始めたようなところもあるので、とにかく歩くペースをゆっくりにして、ここにこんな花が咲いてそうとか、きょろきょろしながら、じわじわ歩くような感じですよね。秋になるとちっちゃくてよくわからないキノコがたくさん生えていたりするのを、これもまた探しながら、きょろきょろしながら歩いています。

山で見られるスミレ。
山で見られるスミレ。

 きょろきょろしていると、“あなたお財布落としたの?”みたくね、親切なおばさまから声かけられちゃったりするぐらい、きょろきょろしています。あとは眺めのいいところでは足を止めて“ほへ〜”とか休んでしまったり、見えている山が気になって、あれはなに山かしら? とかね、地図を取り出して山の方向を見て、あれはなに山かな? とか見たりするのも好きです。
 あとは大きな木を見つけると抱きかかえてしまう悪い癖があります(笑)」

●抱き抱える?(笑)

「なんですかね、木から気をもらうっていうんですかね。あと大木だとこれってどのくらい大きいんだろうって気になってしまって、例えばどなたかとお友達と歩いていると、何人でひと回りできるかっていう、みんなで手を繋いでぐるっと木の周りを囲んで、人3人分の太さ! とかそういうのをなんかね、遊んだりするのも好きですね。割となんか自由に遊んじゃっている感じですかね (笑)」

おすすめは高尾山と鋸山!

※西野さんの新刊『もっともっとゆる山歩き〜まいにちが山日和』では季節ごとにおすすめの山を紹介しています。夏から秋にかけてのおすすめはどこなんでしょうか。

「どうしても暑いんですけど、気持ちよく樹林の中を歩いて、暑さも楽しむということだと、そうですね、あまり山に慣れていない方でも行きやすい山で、私も講座の方とよく行ったりとか、プライベートでもちょこちょこと行くのは、やっぱり東京の高尾山ですかね。

 高尾山ですと途中までケーブルカーとか、リフトで行けるルートもありますし、いちばん有名なルートだとそれこそ歩くところ全部コンクリート舗装の道で山頂まで行けて、ケーブルカーを使うと乗り場から山頂まで、健康な普通の体力の方だと1時間くらいで歩けちゃいます。

高尾山山頂の大見晴らし園地から眺める富士山
高尾山山頂の大見晴らし園地から眺める富士山

 しかも山頂からの眺めも富士山がバン! と見えたりするので、もちろんお天気にもよりますけれど、眺めもいいですし、気持ちよく歩けて、さらに途中に薬王院さんというパワースポットもありますので、薬王院さんでパワーもいただいて木々の緑からパワーもいただいて、山頂で気持ちよく過ごせるということで、高尾山は私的にはちょっとおすすめだったりします」

●千葉の低い山で何かおすすめはございますか? 

「千葉の山といえば、私が大好きなのは鋸山という、房総半島の山がありまして、これもまた、ロープウェイで、ちゃらっと山頂近くまで行けてしまう、非常にいい山です。しかも海の眺めが本当によくて、ロープウェイでも、ちゃらっと行けてしまうんですけれども、 JR の駅の浜金谷駅から歩いていただくと、暖かい山地の木々の雰囲気が、私たちが普段歩いている東京の森とちょっと違う雰囲気の森で、さらに石切場の跡を見たりすることもできて山自体も非常に楽しめます。

鋸山・石切場跡(車力道を歩くと立ち寄れる)。
鋸山・石切場跡(車力道を歩くと立ち寄れる)。

 なおかつ、ものすごく悪い歩行困難な場所とかもないので、もちろん階段登りとかはあったりするので、疲れずに歩けますかといわれると、それなりにいい感じに疲れることができて、しかもその山頂から見るご褒美感がハンパない、すごくいい山なので、こちらもまた是非行ってみていただきたいなと思います 」

<鋸山の情報>

きょうのゲスト、西野淑子さんもおすすめの鋸山(のこぎりやま)は千葉県鋸南町(きょなんまち)にあり、標高は330メートル。
 室町時代から1982年まで建築(けんちく)石材(せきざい)の房州石(ぼうしゅういし)を切り出していたため、現在も切り立った石切り場の跡が残っていて、その名の通り鋸の歯のような険しい稜線(りょうせん)が特徴です。
 斜面には、およそ10万坪という広い境内を誇るお寺『日本寺(にほんじ)』があり、日本最大の、石で造られた大仏や、石切り場跡の石の壁に掘られた高さおよそ30メートルの『百尺(ひゃくしゃく)観音(かんのん)』、そして山頂展望台の絶景ポイント『地獄のぞき』などをハイキング感覚でめぐることができます。

 この地獄のぞき、房州石を切り出した跡の絶壁から景色を眺められますが、せり出した石の先端まで行けて、まさに地獄をのぞきこむようなスリルが味わえます。
 晴れていれば東京湾はもちろん、三浦半島や富士山、さらには伊豆大島まで見えるそうで、高所恐怖症でない方は行ってみる価値あり!
 このほか、名所をすべてまわるには丸2日かかると言われるくらい、見どころの多いお寺なんです。

 そんな鋸山は車やロープウェイで気軽に山頂まで行けますが、石切り場を間近で見たいなら、山頂まで徒歩で登るのがおすすめだそうです。
 最寄りのJR浜金谷(はまかなや)駅からいくつかのハイキングコースが設定されているので、 自由に山に行けるようになったら、鋸山にも行ってみたいと思います。

ちょっとの失敗は楽しい思い出

新刊『もっともっとゆる山歩き~まいにちが山日和』

※私のような初心者が山歩きをするときは、ガイドさんを頼むほうがいいのでしょうか。

「ガイドさんとまでいかなくても、ちょっと不安だなという方は登山の経験があるか、山を歩き慣れているお友達やご家族の方とご一緒されるだけでもいいかなと思うんですね。

 今は何気に山歩きが、ひと頃ブームがあって、だいぶ落ち着いてはきているんですけど、結構探すと私、山歩いたことがあるのよとか、山歩きが趣味なのよっていう方って、ちょっと探すと割といたりするので、そういう方に“今度、私でも歩けそうなところにちょっと連れて行ってくれない?”っていう風にお願いをすると、ちょっといい山にご案内してくれたりとかするかも、その声をかけた方に合った、体力とかに見合った山を一緒に歩いてくれたりとかすると思うのでいいかなと思うんです。

 実際になかなかそういう方が見つからないわよねという方は、私のゆる山歩きの本の、本当に歩く時間が1時間とか40分みたいな、探すとあります。あとほぼ平地で渓谷歩道みたいなものもあります。

 ひとりで行くとなにかあった時やっぱり心配ですので、あまり慣れていないお友達同士でとか、あるいはご家族とご一緒にとにかく気軽に歩いてみていただけると良いかなと思います。歩いてみてちょっと道が分かりづらかったわとか、なんかちょっと疲れちゃったわとかいう場合も、そういった多少失敗してもいいと思うんですよね。100%成功しなきゃ登山ダメとかではないと思っていますので、ちょっと失敗したぐらいの方がなんか楽しい思い出として残ったりとかします。

 なのであんまり失敗したらどうしようとかね、分からなかったらどうしようとか、怒られちゃうんじゃないかと思わずに、行ってみたいなと思ったところにちょっと行ってみていただけるといいかなと思います 」

☆過去の西野淑子さんのトークはこちらをご覧下さい


INFORMATION

西野淑子さん情報

新刊『もっともっとゆる山歩き~まいにちが山日和』

新刊『もっともっとゆる山歩き〜まいにちが山日和

 首都圏から行ける季節ごとのおすすめ、全50コースが掲載されています。
見ているだけで山を歩いている気分になれますよ。
自由に山に行けるようになったら、ぜひ「ゆる山歩き」に出掛けませんか。
東京新聞から絶賛発売中です。

●東京新聞のHP:https://www.tokyo-np.co.jp/article/3729

●西野淑子さんのHP:http://westfield.sakura.ne.jp

彩色写真の幻想的な世界 〜モノクロ写真に絵筆で想いをのせる〜

2020/5/23 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、写真をもとに斬新な作品を創っている新世代アーティスト! 彩色写真画家の「安斉紗織」さんです。

安斉紗織さん

 安斉さんは1983年、東京生まれ。子供の頃から絵を描くのが大好きで、女子美術大学に進学。学生時代に、ハワイ、沖縄、ニュージーランドなど島を巡り、撮影を行ない、卒業後に西表島に滞在し、作品づくり。2015年から彩色写真画家として活動を始め、先頃、代表作を集めた彩色写真画集を発表されました。

 きょうはそんな安斉さんに、彩色(さいしき)写真とはどんな手法なのか、自然の景観や花などを題材にした作品にどんな想いを込めているのか、などいろいろお話をうかがいます。

☆写真提供:安斉紗織

名嘉睦稔さんが命名!?

(C) SAORI ANZAI

※まずは彩色写真とは、どんな手法なのか、教えていただきました。

「ちょっと聞き慣れない言葉だと思うんですけど、モノクロの写真に手彩色で絵の具を塗る手法で制作している作品です。私は見たそのままの色を彩色するだけじゃなくて自分の想いをのせて彩色しています」

●写真なのか絵なのか分からないほど、幻想的だなっていう印象があったんですけれども・・・。

「みなさんそう言ってくださって嬉しいですね。元々この彩色写真画という言葉はオリジナルで、以前こちらの番組にも出演されている木版画家の名嘉睦稔さんを私は大尊敬していて、その方が”これは新しい手法だから何か名前を付けた方がいいんじゃないか”っていうことで、この呼び名を付けてくださいました」

●そうなんですか。このモノクロ写真の現像は安斉さんがされているんですか? 

「はい! モノクロ写真の現像も私がしています」

●で、そこに絵の具で色を付けているんですよね? 

「そうですね。絵の具はアクリル水彩と透明水彩を使って彩色しています」

(C) SAORI ANZAI

●へぇー! そもそもどうしてこのような手法で作品を作ろうと思われたんですか? 

「そうですね。先ほどもお話しした木版画家の名嘉睦稔さんの影響をいちばん受けているんですけど、(睦稔さんは)裏手彩色木版画という手法で作品を作られていて、モノクロの木版画に裏から色を付けるというやり方で作品を作っているんですね。そこからインスピレーションを得て自分はこのような形で作っていますね」

●作品自体ってどれくらいの大きさなんですか? 

「作品は小さいとハガキサイズからいちばん大きいと2 メートル くらいの大作になります!」

●すごいですね! ひとつの作品を仕上げるのにどれくらい時間ってかかるんですか? 

「ひとつの作品というと旅に出る前の準備から、出かけて撮影をして現像してプリントをして彩色するとなると、全部で半年くらいかかりますね 」

自然のパワーを作品に込めて

(C) SAORI ANZAI

※モノクロの写真に絵具で色を付ける彩色写真というお話でしたが、作品づくりは、まず何から始めるのでしょうか。

「まずは次に行きたい場所を決めまして、だいたい今まで旅して行ったことがある場所が多いんですけど、何かそこに呼ばれているなーっていうような気がして、それで出かけて撮影をしてから始まりますね」

●被写体は自然の景観ですとか、花とかが多いようなイメージがあったんですけれども・・・。

「やっぱり自然からパワーをいただいて、それを作品に込めていきたいなと思って作っているので、お花とか海とか山が多くなっていますね」

●まず写真撮影をして、現像して、その写真に絵の具で色を付けていくっていうことなんですか? 

「はい、そうですね。その時に見た気持ちとか感動した感情とか、いただいた命のパワーを込められたらいいなと思って彩色をしています」

●本当にモノクロ写真に色が付くと命が吹き込まれているような感じになりますよね! すごく感動しました。

「そう言っていただけると嬉しいですね。やっぱり世界にはすごくそういう幸せな美しい世界がいっぱいあるので、そういうものを伝えられたらいいなと思って作っています!」

●作品作りでいちばんこだわっている点ってどんなところですか?

「今と同じような話になるんですけど、見たそのままではなくてその場にいるような、その時のパワーが伝わればいいかなと思って作っています 」

きっかけはフラダンス!?

(C) SAORI ANZAI

※安斉さんの作品は自然の景観や花などを題材にしていますが、撮影する場所はどうやって決めているのでしょうか。

「撮影の場所は今まで旅で行ったところが多いんですけれど、やっぱりそこにまた行きたいなーって思える、なんか心の故郷みたいなところが出てくるんですね。そこにまた行って撮影することが多いですね」

●国内だけではないですよね? 

「はい、そうですね。元々海外が好きでハワイとかニュージーランドとか、島が多いんですけど」

●ハワイやニュージーランドに行かれたきっかけって何かあったんですか? 

「元々20年ぐらい前からフラダンスを習っていて、それからハワイに興味を持って、本場のハワイにフラダンスを習いに行ったのが最初のきっかけですね」

●私もフラダンスをやるので嬉しいです!(笑)。ハワイに習いに行かれたんですね。

「地元の先生から教えていただいて、フラダンス漬けの毎日を送っていました。それからポリネシアの文化にそのまま興味が移っていって、ニュージーランドのマオリ族もハワイと同じような文化を持っているので、マオリ族のお宅にホームステイをさせていただいて日々過ごしていた思い出があります」

●ホームステイもなさっていたんですか!

「はい。そこから島が大好きになりました !」

充分に幸せだと気づく

安斉紗織 彩色写真画集 2015-2020

※安斉さんは西表島で作品作りを行なっていました。どうして西表島だったのでしょうか。

「西表島と言いますと何もなさそうなジャングルのイメージなんですけれど、そちらに私の尊敬する染色家の石垣昭子さんという方が工房を開いていまして、その方の工房にお邪魔をして作品を作るということで、西表島にしばらく住んでいました」

●あ、住んでいらしたんですね? 

「はい! しばらくひとり暮らしをしているおばあちゃまのお家に間借りさせていただいて、工房に行きながら作品を作っていました」

●西表島での生活はいかがでした? 

「島では本当にもう目の前が海の生活をしていたので、幸せでしたね(笑)。疲れたらちょっと海に行って浸かったりとか、あと虫が遊んでいるとか動いているのを見たりとかしたり、島のお祭りで節祭(しち)という祭りがあるんですけれど、そちらにも参加させていただいたり、すごく楽しい思い出です」

●安斉さんの作品を見た方にどんなことを感じ取ってもらいたいですか? 

「作品を見ていただく方にこう思って欲しいっていうのはないんですけど。最近こういう状況なので特に思うのは、やっぱり不安になったり、落ち込んでしまったりとかってあるんですけれど、自然の中に行くと山とか海とか空気とか、自然からたくさん力をいただいて、幸せに満ちている気持ちになるんですね。充分に幸せなんだなっていうことに改めて気づくので、つい忘れてしまうんですけれど、そういうことを自分でも忘れないように作品に込めていきたいなと思って作っていますね」

●作品画集の中にあった桜の作品も今年はお花見が出来なかったので、すごくこの作品を見て癒されました。

「ありがとうございます! これは3年前に青森の弘前で撮影をした桜の作品なんです。青森ってやっぱり冬の間すごく寒くて、外にみなさん出られないんですけれど、桜が咲いた頃になると一気にお外に出られて、青森のみなさんの幸せそうな雰囲気、そういうものを感じながら撮影をしたので、それが伝わるといいなと思っています」

●今後こんな作品を作ってみたいっていうのは何かありますか?

「作品を作れるだけで幸せなんですけど、実はいちばんの夢というのがいつか宇宙に行って、宇宙から地球を眺め、写真を撮って、その時の気持ちを作品に込めたいなと。地球を撮った作品を作りたい! っていうのがいちばんの夢です 」


INFORMATION

安斉紗織さん情報

安斉紗織 彩色写真画集 2015-2020

『安斉紗織 彩色写真画集 2015-2020』

 これまでに発表した作品の中から、選りすぐりの54点を掲載したカタログブックともいえる画集をぜひご覧ください。安斉紗織さんの彩色写真画集は、アイランドギャラリーから絶賛発売中です。

●アイランドギャラリーのHP:https://islandgallery.jp

初心者でも手軽にキャンプ!  〜おうちでキャンプ気分!?

2020/5/16 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、アウトドア・プロデューサーの「長谷部雅一(はせべ・まさかず)」さんです。

写真提供:長谷部雅一

 長谷部さんは1977年、埼玉県生まれ。2000年から丸一年かけて世界一周の旅を行ない、今もロングトレイルや秘境を、ザックを背負って歩く旅人でもあるんです。自然の通訳「ネイチャー・インタープリター」やBE-NATURE SCHOOLの中心メンバーとしても活躍中。また、アウトドアの経験や自然遊びの知識を活かし、子供たちの自然体験活動もサポートされています。

 そんな長谷部さんが先頃、キャンプの入門書を出されたということで、きょうは初心者に向けて、キャンプの初歩的なお話や楽しくなるコツ、そして、おうちでキャンプ気分を味わえるヒントなどうかがいます。

☆写真提供:長谷部雅一

小さい頃からアウトドア

※まずは長谷部さんが、いつ頃からアウトドア派になったのか、お聞きしました。

「僕、アウトドアといっていいか分からないんですけれども、外で遊ぶっていうことでいうと、おおよそ年長さんぐらいの時になんか秘密基地で遊ぶとか、から始まっているんじゃないかなと思っています」

●秘密基地! では、キャンプはいつ頃になるんですか? 

「キャンプはですね、僕、ボーイスカウトを昔やっていてですね、その時に初めて経験をしたので、小学校2年生とか、多分それぐらいですかね」

●もう子どもの頃からやってらしたということなんですね。

「そうなんです」

●へー! では、もう楽しみ方の知恵みたいなものも身に付けていましたね、小さい頃からだったら。

「と、思います!(笑)」

●私は全く泊まりのキャンプをしたことがないんですけれども、私のようなキャンプの初心者はまず何から始めたらいいのでしょうか? 

「初めからテントを張ったり、タープを張ったりって自分でやるのはとっても大変なので、まずはログハウスとかコテージみたいなところに泊まるっていう、ちょっと日常に近くて、さらに旅館や民宿みたいに宿泊するっていう感覚で、気軽に自然の中で宿泊されるのがいちばんおすすめです」

●キャンプといってもいろいろなスタイルがありますよね?

「そうですね。必ず自分たちで持っているテントやタープを張って、椅子やテーブルを持っていって使わなければキャンプではない、ということではないので、ご自由な形で。さらに自分たちが疲れ過ぎずにちゃんと楽しめるっていうラインでやっていただくといいかと思います」

●本の中に「イエス・ノー・チャート」というのがあって、私もやってみたんですけれども、私は「まずはここから気軽なデー・キャンプ」ということで、日帰りキャンプという項目が出たんです。ほかにもいろんな項目があるんですよね。

「はい! たくさん用意させていただいています。これから始めてみてはいかがですか? っていうゴールのところで言いますと、そのほかにあと4つあります。例えばグランピング、もしくはロッジ、コテージに泊まってみるという方法でしたり、テントに泊まりたいけど、道具を買うまではちょっと……っていう方は、道具を全部レンタルしてみましょうってことでしたり、ファミリーでキャンプをしてみましょうっていう場合でしたり、たまにはちょっとひとりでっていう方用にソロキャンプ、ひとりでキャンプはいかがですか? というようなゴールを用意させていただいています」

どんどん手を抜きましょう!?

※初心者には、いったいどんなキャンプ道具からそろえればいいのか、気になりますよね。まずは、どんな道具を買えばいいのでしょうか。

「これがなかなか難しいところです。もしもデーキャンプも少しレベルを変えてみようかっていうことであれば、通常は明るい時間にデーキャンプをされると思うんですけれども、夜の時間も味わえるデーキャンプにしていただくとより面白いかな〜と思うんですね。そう考えるといわゆるランタンって言われている灯ですとか、個人それぞれがおでこのところにくっ付けられるヘッドライトみたいなものとか、夜を過ごすための道具から揃えてみるっていうのも面白いかもしれないですね」

●なるほど! 本当に楽しみ方がいっぱいあるということですね。

「そうですね。時間軸を変えるための道具っていうのが面白いかと思います」

●キャンプって意外に忙しいと聞いたことがあるんですけれども・・・。

「そうなんです。1泊2日で、ましてや例えば最近テントを買いました、タープを買いました、椅子を買いました、いろんな道具を買いました、これを持ってキャンプしに行こうとなると、まずはチェックインが午後からだとすると、行ったらまず全部、あーでもないこーでもないって言いながら設営。終わったら夕食を作って、気づいたらもう暗いから疲れて寝ることになる。翌朝になったらすぐ片付けろーなんてなるので、全部自前でやろうと思うと初めはとっても忙しいかもしれないですね」

●どうしたらよろしいんですか? 

「僕はどんどん手を抜きましょうっていう話をよくさせていただいています。例えば、それこそ小屋に泊まってみるですとか、キャンプ場さんの方でテントやタープも全部張っといてくれているキャンプ場もありますので、そこに体験だけをしに行くっていう方法もあります。で、だんだん自分たちの道具をちょっとずつ足して、それは立てる、それは使うっていう風にやっていくと、テクニックも手早くできるようになることを覚えていくので、いいんじゃないかなと思ってます。そうすると楽しむことをまず初めに体感できますから、じゃあ今度はテントを立ててみようって、少しずつステップアップしてみるのがいいんじゃないかなと思います 」

オススメはサンドイッチ!

写真提供:長谷部雅一

※キャンプの楽しみのひとつに、やっぱりご飯がありますよね。そこで長谷部さんおすすめの、手間のかからないレシピを教えていただきました。

「いちばん楽しくって簡単でわくわくするのは、多分、朝食やランチタイムなんかに向いているんですけれども、自分自身でサンドイッチを作ってみるっていうのがいいかなって思います」

●へー! 具材はどんなもので? 

「何でもいいんですけれども、例えば、卵をいっぱい、サラダ用にしといてもいいですし、アボカドを切って置いといてもいいですし、ハムをいっぱい置いておいてもいいです。とにかく具材をいっぱい並べて自分たちが食べたいものを、具材を囲みながら自分で挟んで食べるっていうような、手巻き寿司みたいな感覚で楽しむのがいいかなと思います 」

●いいですね。自然の中で好きなものを食べるって気持ち良さそうですね。

「気持ちいいですし、美味しいんですよ!」

●キャンプの醍醐味ですね!? 

「醍醐味です!」

●お子さんを連れてのキャンプですと、安全面も含めて、心がけておきたいことなど何かありましたら是非教えてください。

「はい、まずお子さんの変化を常に見ておくっていうことが大事になるんです。いつもと違うアウトドアでずっと過ごしていますから、やっぱりちょっと熱が出てしまったりですとか、熱中症になりかけているですとか、顔が疲れているですとかってあるんですけれども、そこをキャッチすることがいちばん大事ですね。そのためには、まずは自分自身がリラックスして疲れないような状況で楽しむっていうことが大事になってきます」

●長谷部さんはキャンプで何をしている時がいちばん楽しいですか? 

「僕はですね、もうキャンプは泊まるための手段になってきてますね。いつもは家族でSUPっていう立って手漕ぎで漕ぐサーフィンみたいなのがあるんですけど、あれで遊んだりですとか、ロッククライミングをしたりですとか、山登りをしたりですとか、そういうことをしてから寝る場所に、キャンプ地に戻ってくるので、もうキャンプの時間でいうと、夜みんなであれが楽しかったね、これが楽しかったねなんて言いながら、星を眺めながらダラダラ焚き火をして過ごすのが好きですね 」

●うわー、素敵ですね! なかなか普段話せないような話もそこではできそうですね。

「できます。もうアウトドアでの遊び自体も何故かいつもよりも感情がいっぱい出てくるので、そんな状況で帰ってきてからキャンプ地で話すと、もっともっと話が盛り上がりますね」

●キャンプのいちばんの魅力って何ですかね?

「やっぱり自然にいちばん近いところで過ごせるっていうことなんじゃないかなって思います。人も自然の一部ですから、やっぱりどこかのタイミングで自然と馴染む時間を持たないと、どうしてもバランスが崩れていってしまうと思いますね。そういった意味でやっぱり自由で自然な状態でいられるようになる、自然と一体化するっていうのが醍醐味なんじゃないかなと思います 」

空を見てキャンプ気分!?

いちばんやさしいキャンプ入門

※今、おうちでキャンプ気分を楽しんでいる人って多いのでしょうか? 

「今、結構いらっしゃいます」

●どういう風に楽しむんですか? 

「今は、キャンプのスタイルを可能な範囲で自宅に持ち込むという形が多くてですね。例えば、お部屋に小さなテントを張って過ごしてみたりですとか、外を感じるためにベランダで食事をしてみたりですとか、お庭がある方はバーベキューをして、そのまま夜テントを張って寝てみるということが多いみたいですね」

●おうちでキャンプ気分を楽しむコツがあれば、是非教えてください! 

「はい! みなさん住んでいらっしゃる環境が全然違うかと思いますので、いちばん身近なところでいうと、朝・昼・晩、ベランダから空を見てみるっていうのが、実は入りやすいんじゃないかなと思いますね」

●空ですか? 

「ドアを開けて誰でも感じられる自然のいちばん身近なものが空だと思いますので、空を見ながら過ごす機会がいっぱい増えると、ちょっとキャンプ気分に近くなるかなと思います」

●まさに長谷部さんの本は、本当に何から始めたらいいのか分からないっていう方には、たくさんのヒントが載っているので、参考にするっていうのがいいですね。

「この本にはただキャンプ場に行った時だけの楽しみ方が書いてあるのではなくて、キャンプに行く前の楽しみ方が書いてありますので、その部分だけでも、ご家族で挑戦してみるだけでも、充分キャンプ気分、もしくはキャンプの練習、いつかのキャンプのために、なんてワクワク感が感じられるんじゃないかなと思っています」

●そうですね。この期間はワクワク感を高めるには最適かもしれませんね! 

「最適だと思います! 我が家はいつも、キャンプに行ったらこれやりたいから、これをおうちで料理してみようみたいな形で、日々楽しく過ごしています」


INFORMATION

長谷部雅一さん情報

いちばんやさしいキャンプ入門

新刊『いちばんやさしいキャンプ入門

 長谷部雅一さんの新刊『いちばんやさしいキャンプ入門』は、キャンプを始めてみたいと思っている人にとっては、ほんとにわかりやすくて親切に書いてある本ですよ。新星出版社から絶賛発売中です。ぜひ読んでください。

●新星出版社のHP:http://www.shin-sei.co.jp/np/isbn/978-4-405-08226-7/

 長谷部さんのオフィシャル・サイトもご覧ください。

●長谷部雅一さんのHP:http://hasebemasakazu.com

歩く旅、心まで前向きに 〜シェルパ斉藤の遊歩見聞録〜

2020/5/9 UP!

 今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストはバックパッカー、そして紀行作家の「シェルパ斉藤」さんです。

写真協力:斉藤政善

 本名は斉藤政喜さん、1961年、長野県生まれ。学生時代に中国の大河、揚子江をゴムボートで下ったことがきっかけで、フリーランスの物書きに。そして、アウトドア雑誌BE-PALでバックパッキングや自転車、ヒッチハイク、犬連れなど、自由な旅の連載を、30年以上続けています。1995年に八ヶ岳山麓に移住。自分で建てたログハウスで田舎暮らし。踏破した国内外のトレイルは60本以上と、まさに歩く旅のスペシャリストでいらっしゃいます。

 そんな斉藤さんが作家デビュー30年を機に、BE-PALの連載記事から「歩く旅」を厳選し、先頃、一冊の本として出版されました。きょうは歩く旅の魅力や忘れられないエピソードなどうかがいます。

☆写真協力:斉藤政善

「歩き=生活」という感覚

※まずは、斉藤さんはいつ頃、歩く旅に目覚めたのか、お聞きしました。

写真協力:斉藤政善

「30年以上前になりますね、最初は歩く旅じゃなかったんですよ。オートバイをやって、で、オートバイだと物足りないからっていうのもあって、自力で行こうと思って自転車に移ったんですね。それで自転車でアジアをずっと旅をしている時に、パキスタンとかインドとかずっと回ってネパールに入ったんですよ。

 で、ネパールに入った時に外国人のバックパッカーたちが割と普通に“ヒマラヤにトレッキング行ってくるから〜”って言って気楽に出かけていたんですよね。これまでヒマラヤのトレッキングといったら本当にちゃんとした技術があったりとか、山専門の方の専門分野だと思っていたのが、意外にみんな旅人がふら〜っと行くもんだから、じゃあ自分も行ってみよう! と思って行ったらすごく楽しかったんですね。

 それは何が楽しかったっていうと、本当にね、みんな歩いているっていう感覚。例えば、日本だとモータリゼーションというか、車が当たり前なので、歩いてしか行けないところって、実はあんまりなかったりするんですけど、ネパールを旅した時にはそこに生活している人はみんな歩いている、その中に僕が歩いて入り込んでいくっていう、本当に“歩き=生活”だっていう感覚をその時に味わって、それからですね、歩く旅って面白いなって。

 それまでの僕はどっちかと言うと“遠くまで行かなければ! より遠くへ! ”って思いがあったんですけど、逆に歩くことで、遠くへ行かなくても楽しめることが分かった。しかも早く行く必要もないってこともその時に分かりましたね」

父と息子の男旅

※続いて、国内外の各地やトレイルを数多く歩いてこられた斉藤さんに特に思い出深い旅はどこだったのか、お聞きしました。

写真協力:斉藤政善

「実はまだ終わっていない旅なんですけれど、東日本大震災の被災地を一本の道で繋ぐ、みちのく潮風トレイルってあるんですよ。それを僕は(そのトレイルが)できる前からずっと関わっていたもんですから。距離が1000キロあるんですよ、それをずーっと小まめに歩いていまして。 
 歩き始めて7年経つんですが、未だに全然終わっていないんですよ(笑)。多分全体の2割もいっていないくらい。毎回行くことによってある意味、被災地に対する支援にもなっているかなって思いもありますし、それから子どもと歩いたりもしたんですよ、息子を連れて行ったりとか」

●父と息子の絆を深める「ザ・男旅」っていう、すごく、男同士の旅いいなー! って思いました! 

「本当に僕もすごく印象に残っています。滅多に一緒に歩くってことがないし、小っちゃい子と歩く、まあ小学生くらいと歩くならいろいろと、お父さんがお父さんが! とかって感じになるんだけど、もう大人になってからの息子と歩くっていうのは・・・。ほとんど喋らないんですよ、あいつ!」 

●そうなんですか〜(笑)

「僕もあえて喋らないし、黙ったまま。だからタイトルで“ザ・男旅”って付けたのも、喋らないんだなぁ。だけど、じゃあつまらないかっていったらそうでもなくて。その時うちの子が進路で悩んでいたんですよね。で、ああしろ! こうしろ! とは言わないけれども、父親としてアドバイスくらいはできるかなと。それを語る上で、家とは違って、歩いてからテントを張って、夜、焚き火を囲んで語り合うって、なんかいいんじゃないかな、っていう思いもあって連れて行ったんですけどね」

●なかなか普段だとそういった深い話とかもできないですもんね! 

「そういう意味では、うん、歩く旅よかったかも知れないですね」

<みちのく潮風トレイル>

 さて、きょうのゲスト「シェルパ斉藤」さんが特に思い出深い旅と話してくださった「みちのく潮風トレイル」。以前この番組でも私の名前、小尾渚沙にちなんで、東北の渚を歩くトレイルとして少しお話したことがありますが・・・改めてご紹介すると、『みちのく潮風トレイル』は青森県八戸(はちのへ)市から福島県相馬(そうま)市まで、東北4県・28市町村の太平洋沿岸をつなぐ総延長1000キロの自然歩道で、東日本大震災からの復興支援を目的に、環境省が中心となって整備しました。

 最大の魅力は、海の景観をダイナミックに感じられるスポットの豊富さで、日本一美しい断崖や、リアス式海岸ならではの風景、世界有数の豊かな漁場などを、のんびりと歩いてめぐることができます。自然が作り出した素晴らしい景色や、海の幸・山の幸など自然の恵みを楽しむことができる一方、津波の痕跡など、自然の厳しさを見せつけられる場所もあります。
 そしてそんな自然と向き合ってきた東北の人々の歴史や文化にも触れられます。

『みちのく潮風トレイル』を歩く上で必要な情報は公式サイトに詳しく掲載されていて、歩く距離やルート、立ち寄りスポットなどを分かりやすく説明したモデルコースもいくつか設定されています。

 また、宮城県名取市にある『名取トレイルセンター』ではハイカーや地域住民がくつろぎ、交流できる空間を提供しています。『みちのく潮風トレイル』の全線踏破を目指す方は、『名取トレイルセンター』のホームページをチェックしてみてください。全線踏破した方に証明書を発行したり、達成した人だけが購入できる記念品などが掲載されています。

◎みちのく潮風トレイル:http://tohoku.env.go.jp/mct/

◎名取トレイルセンター:https://www.mct-natori-tc.jp

歩くことで前向きに

※続いて、歩く旅のいちばんの魅力について、お話いただきました。

「なんかつらい時とかね、特に今は本当につらい状況がどこも続いていると思うんですけど、それでも前向きな感じになれるんですよね」

●前向き? 

写真協力:斉藤政善

「常に前に進んでいるからかも知れないんだけれども、割と肯定的に考えられるんですよ。
 僕の場合はひとり旅をしているからっていうのもあるんだけど、ひとりで歩いていて何が面白いんですか? って言われちゃうんだけど(笑)なんか歩けばね、答えが見つかる気がするんですよ。

 今じゃあ自分が何をすべきかとか、落ち込んだ時でも歩いていれば、なんかいいアイデアが浮かんだり。わずかながらでも進んでいる感じは“少しずつでも歩けば、必ず解決するんだ!”っていうポジティブ・シンキングになれるんですよね。自分の体力でここまで来たっていう自信というか、それもあるかもしれないし。それから、あまり人と会わないから、会う人に対して優しくなれるっていうか・・・。

 実は家からずっと2日間、犬と歩く旅ってやったんですよ。誰とも会わないんですよね。
 僕は今八ヶ岳の麓に25年間住んでいますが、歩いたことがない道があって、そこを歩くと、“あ、こんなところあったんだ!”っていう発見がありましたね。これがひとりで歩く旅の魅力かなと改めて思いました」

道草を喰いやすく

シェルパ斉藤の遊歩見聞録

※「歩く旅」にこだわってきた斉藤さん、年齢を重ね、旅を重ねて、自分の中に何か変化はあったのでしょうか。

「ありますね、歳を重ねていろんな経験を重ねてくるとですね、“ここはこんな風になっているのか。それはどういう意味なんだろう”っていうことが考えられる。だから割と思考回路が働きながら歩くっていうのもあるし。それと欲張らなくなってくるんですよね。より遠くまで行きたいとかが、ここでやめてもいいやっていう、ある意味開き直りじゃないけど(笑)。すぐ妥協しちゃうところが、まぁそれは道草を喰いやすくなっているっていうことかなぁ」

●今後行きたい旅先はどこですか? 

「矛盾しちゃうんだけど、要するにいろんなところに行けるって意味では、近くもいいけど遠くも単純に行きたいって思いもあって、フェロー諸島。デンマーク自治領か何かなんですけれども、そこは特異な景色が、すごい絶景があるらしくて。たまたま10年くらい前にオーストラリアのトレイルを歩いていた時に、そのフェローアイランドから来ている旅人と知り合って、“うち、いいからおいでよ!”って言われて、それからずーっと気になっているところです」

●へぇー! 

「そこは大して長い距離はないんだけど、島から島へ、ゆっくり絶景を見ながらのんびり歩きたいなと思っていますね」

☆過去のシェルパ斉藤さんのトークはこちらをご覧下さい


INFORMATION

シェルパ斉藤さん情報

シェルパ斉藤の遊歩見聞録

新刊『シェルパ斉藤の遊歩見聞

 シェルパ斉藤さんの新刊『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』は、アウトドア雑誌BE-PALに連載してきた紀行文の中からハイライトともいえる旅を選び、「山を歩く」「島を歩く」「犬連れで歩く」など7つの章に分け、書き下ろしも加え、「歩く旅」の魅力に迫っています。また、歩く旅に必要な装備や犬連れ旅のアドバイスなども載っていますよ。
 小学館から絶賛発売中です。ぜひ読んでください。

●小学館のHP:https://www.shogakukan.co.jp/books/09388766

 斉藤さんのオフィシャル・サイトもぜひご覧ください。

●シェルパ斉藤さんのHP:https://team-sherpa.wixsite.com/sherpa

1 22 23 24 25 26 27
サイトTOPへ戻る
WHAT’s NEW
  • 景色の中に溶け込んでいる「地形」を知ろう!

     今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、東北学院大学の准教授「目代邦康(もくだい・くにやす)」さんです。  目代さんは1971年、神奈川県生まれ。東京学芸大学・教育学部・在学……

    2025/5/4
  • オンエア・ソング 5月4日(日)

    オープニング・テーマ曲「KEEPERS OF THE FLAME / CRAIG CHAQUICO」 M1. MAPS / MAROON 5M2. LIFE IS FOR LEARNING ……

    2025/5/4
  • 今後の放送予定

    5月11日 ゲスト:「都市森林株式会社」と「街の木ものづくりネットワーク」の代表を務める「湧口善之(ゆぐち・よしゆき)」さん  公園の樹木や街路樹を木材として活用する「都市林業」をクロー……

    2025/5/4
  • イベント&ゲスト最新情報

    <目代邦康さん情報> 2025年5月4日放送 『地形のきほん』  目代さんの新しい本をぜひ読んでください! 地形を作り出す働きから、代表的な地形や暮らしとの関わり、さらには……

    2025/5/4