2024/2/4 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、自然ガイドの「くますけ」さんです。
富士山麓にある自然学校の草分け「ホールアース自然学校」でガイドとしてのスキルを磨いた「くますけ」さんは、現在はフリーの自然ガイドとして活躍されています。そして先頃『エナガの重さはワンコイン〜身近な鳥の魅力発見事典』という本を出されました。
きょうはそんな「くますけ」さんに子供たち向けのガイドツアーで心がけていることや、ビギナー向け! 野鳥観察のノウハウ、そして鳥の面白い生態についてうかがいます。
☆写真&絵:くますけ
運命を変えた本『自然語で話そう』
※本名「くまつしんすけ」さんは、筑波山を眺めながら育った、自然遊びが大好きな少年だったそうです。20代最後の挑戦で、環境コンサルタントから「ホールアース自然学校」に転職し、1年間は研修生として、樹海を歩いたり、洞窟を探検するなど、ガイドの基本を徹底的に学んだそうです。その後、柏崎・夢の森公園での勤務を経て、独立。自然ガイド歴は15年ほど。
●大学生の時に、語学の勉強を理由にカナダに留学したそうですね。留学中の体験で、特に印象に残っていることはありますか?
「それこそ、カナダにスノーボードをしに行ったのに雪が降らなかったんですよ、その年、記録的な暖冬の年で・・・。そこで初めて地球温暖化とか気候変動っていうのを目の当たりにしたっていうか、やっと自分ごとになったみたいな感じがあって・・・。帰ってきてからは、それまではIT系の仕事とかしていたんですけれども、やっぱり環境だと思い始めて、そこから環境コンサルタントの仕事をするようになりましたね」
●環境コンサルタントとして気候変動問題に携わったと、ホームページにも書いてありましたけど、具体的にはどんなことをされていたんですか?
「排出量取引っていうのがあって、発生する二酸化炭素だとか温室効果ガスにお金の価値をつけて取引することで、地球全体でその発生量を抑えていこうっていう仕組みなんですけど、それの(二酸化炭素を)どれほど排出しているかを、日々ずっとパソコンを見ながら計算して、Excelとの闘いみたいなことをずっとやっていました。一日10時間以上、パソコンに向かっていたんじゃないかなと思います」
●そうなんですね。その後、富士山麓の富士宮にある「ホールアース自然学校」に転職されたということなんですよね?
「環境コンサルタント(の仕事)もすごく楽しかったんですね。直接、温室効果ガスを減らしているっていう実感もあったし、面白味があったけど・・・。
でも、環境問題を解決するには3つの方策が必要だと言われていて、ひとつが『法整備』、もうひとつが『技術革新』、そしてもうひとつが『教育』なんですね。環境コンサルの時は法整備と技術革新については、かなりできている実感があって、貢献できているっていう実感もあったんですけど、どうしても教育のところは携われなくて・・・。
でも、この教育がないと法整備とか技術革新も進んでいかないっていう、もどかしさをずっと感じていた時に広瀬敏道(ひろせとしみち)さんの『自然語で話そう』っていう本をうっかり見つけちゃったんですよ」
●その広瀬敏道さんは、ホールアース自然学校の創設者のかたですよね。この番組を長くやっているスタッフも「広瀬さんから番組自体もすごく影響を受けたんだよ」っていう話を聞いたんですが、すごいかたなんですね?
「そうですね。あの時代にそういった自然学校を作り上げたっていうパワーもそうですし、彼自身が紡いでいく言葉もすごく魅力的で、僕もその本を読んで、その日の夜は眠れないぐらい興奮しちゃって、あ〜日本にこんなことをやっている人がいるんだ、と思った記憶があります」
(編集部注:広瀬敏通さんの本『自然語で話そう〜ホールアース自然学校の12カ月』は1999年に小学館から出版)
雨の森の忘れられないシーン
※くますけさんは、幼児向けのガイド・ツアーがお得意ということで、保育園や保育士さんと連携して、近くの森でガイドすることが多いそうですね。特に子供たち向けのガイドで大切にしていることはありますか?
「それぐらいの子供たちなので、物の名前を覚えるとか、そういうところではなくて、もっと五感で触ってみるとか嗅いでみるとか、ちょっと味関係はいろいろ難しいのでやらないですけど、とにかく自分自身の体で感じてもらうことを大切にしていますね。
今はゲームとかがあって、(子どもたちは)詳しいんですよ。虫の名前だとかは詳しいんだけれども、本物を見ていない子はたくさんいるので、実際に本物を見てもらって触ってもらうとか・・・。トンボにしたってバタバタ動く感じとかを感じてもらうことのほうが、名前を知ることよりも、特にこの年齢は大切だと思うので、体験してもらう触ってもらう・・・で、いかに自然に触らせるか、みたいなところに工夫をしていますね」
●みんな、目をキラキラさせているんじゃないですか?
「そうですね。やっぱり(生き物が)好きな子たちは(目を)キラキラさせて楽しむし、怖がる子もたくさんいるから、その怖がっている子をいかにして、触りなさい! とかじゃなくて、自然に触っちゃうみたいな場作りっていうんですか、そういったところに気を付けていますね」
●子供たちの反応で、特に印象に残っていることはありますか?
「印象に残っているのは・・・僕は雨の森が大好きなんですけど、体験会が雨の日に重なるってなかなかなくて、あったとしても台風とかで逆に中止になっちゃう。だから、雨の日にみんなで一緒に森に行くタイミングって、年に一回あるかないかなんですけど・・・。
その時はカッパをかぶって、みんなで森に行って、葉っぱから水が滴ってくるところがあって、その下にカッパを着た子が行くと、シャワーみたいにザバザバザバ〜パタパタって音が出る、そのシャワーを楽しんでいる子の姿が、これだよな〜! とか思って・・・。
なんとも説明はできないんですけど、水が滴っているのを楽しんでいるのが見てわかる。この経験を積むと、彼は大きくなった時に自然のことがきっと好きだろうし、自然がどういうものかはもう体感でわかっているだろうから、これを守らなきゃいけないっていう時に、きっと心の底から大切にしたいっていう気持ちがわいてくるだろうなと思って、あの時の雨の森の、あの子の顔は忘れられないシーンだなと思います」
●やっぱり小さい頃に経験しておくのは、すごく大事ですよね。
「そう思います」
エナガは500円玉!?
※この本『エナガの重さはワンコイン〜身近な鳥の魅力発見事典』を出すにあたって、コンセプトというか、どんなところにポイントをおいて書いたんですか?
「とにかく野鳥の初心者のかた、これから知りたいな、気になっているけど、名前がわかんないなっていう人は、たぶん多いと思うんですね。そういった人たちに、初めから図鑑は結構ハードルが高いかなと思ったので、図鑑の一歩手前になるような、その入り口になるようなものになればいいなと思って作りました」
●このイラストは、全部くますけさんが描かれているんですよね?
「そうなんですよ、はい」
●とってもお上手ですね。
「ありがとうございます」
●絵を描き始めたのは2021年と本に書かれていましたが、最近というか、まだ3年ぐらいなんですね?
「そうなんですよ」
●この絵のクオリティ、すごいです!
「コロナになって家から出られなくなって、あまりにも暇すぎて、絵を描き始めたっていうのが本当の始めのきっかけで・・・」
●どなたかに教えてもらったりとかしたんですか?
「やっぱりコロナ禍なんで・・・誰かに教わるってことはできなかったから、基本はYouTubeですね。イラストの人たちがいるから、その人の(動画を)見たりとか、オンラインで学べるやつがあるんですけど、あれを見たりとかして、絵の基本みたいなのを勉強しましたけど、基本はオンラインで、自分で描いていたっていう感じですね」
●絵を描くようになって、気づいたことはあります?
「いっぱいあります。このエナガもそうですけど、普段から見ているし、よく知っている鳥だと思っていたんですけど、よく見たら、まつ毛があるんですよ、この鳥! 黄色いまつ毛があって、それは絵を描くまで気づかなくって、書き始めて、目はどうなってんのかなと思って、手元にあった写真をアップにしたら、まつ毛がある! って(笑)。それは絵を描かなきゃ気づかなかったところですね」
●じっくり観察するってことですよね! この本のタイトルに「エナガの重さはワンコイン」とありますけれども、鳥の体重について触れている解説もあって、すごく面白いなと思ったんです。そこに何か狙いがあるんですか?
「野鳥は基本的に持つことできない、獲ることは禁止されています。でも生き物だから、必ず重さってあるはずなんですよね。その重さを感じることで、より身近に感じたり、より愛おしく思えたりとかすると思うので、なんとかして感じてもらいたいなと思って・・・。
意外と僕らもフィールドでガイドツアーの時には、例えば、7グラムの鳥がいたら、1円玉を7枚束ねておいて、あの鳥はこれぐらいの重さなんだよ! って言って、渡したりとかするんですけど、1円玉だとちょっと芸がないなと思って、いろんなものに例えたら何になるんだろうっていうのを調べてみたら、エナガは500円玉だし、スズメは単三乾電池だしっていうのがわかってきて、これをきっかけに自分で調べてみたら、そんな例え方ができたんです」
ホオジロ、独身のオスは必死!?
●では、本に掲載されている鳥の中からいくつかピックアップさせていただきたいと思います。まず気になったのが「さえずり方で独身とわかってしまうホオジロ」ということで、これはどういうことですか?
「ホオジロっていうスズメに似た、でもスズメよりちょっと大きめの鳥がいます。結構その辺の公園だとか庭にいたりするんですけれども、独身の子はやっぱり頑張んなきゃいけないんで・・・さえずりって、そもそもラヴソング、お嫁さん探しのために歌っているものなので、必死なんですよね。
で、その必死さのあまりどんどん顔が上向きになっていき、叫ぶような感じでやっているんですけど、お嫁さんをもらった既婚者は余裕なんですかね〜。
さえずりにはふたつ意味があって、お嫁さん探しと、自分の縄張りだよっていうのを周りに伝えるためにやっているんです。既婚者はお嫁さん探しじゃなくて、縄張りだよっていうのを伝えるだけでいいから、結構正面を向いて、ひょろろろろ〜って鳴いているだけみたいな・・・」
●真上は向いていないんですね?
「そこまで向いていないです。如実にわかります」
●アピールしているんだな、独身なんだなっていうのは、真上を向いているかどうかでわかるんですか?
「鳴き方でわかってしまいます」
●面白いですね~。レパートリーも豊富なんですよね?
「そうですね」
●あと、よく食べると黄色が鮮やかになる「キビタキ」ということで、これはどういう鳥なんでしょうか?
「夏に日本にやってくる鳥なんですけど、お腹のところが真っ黄色で、本当に健康な男子は、なんだろう・・・ちょっと高級な卵の黄身はすごく黄色じゃないですか、オレンジがかった黄色・・・。それぐらい黄色い子がいて、やっぱり健康でいいもの食べているとか、自分でいい縄張りを持っていて、そこにたくさん餌があるやつらは黄色が濃くなっていくんです。ちょっと弱くて、そんないい縄張りが確保できなくて、餌も乏しいのは黄色味がくすんでいくんですよね」
●良質な餌が豊富にあるんだろうなっていうのが・・・
「お腹の黄色み具合でわかるんです」
カモはお尻に注目!?
※これから春にかけて、街中や公園などで観察しやすいおすすめの鳥はいますか?
「おすすめは・・・さっき(幕張公園内を)歩いてみたんですけど、この時期であれば、カモ! 特に体も大きいので肉眼でも観察しやすいですね。
すぐそこの池にいたのが、マガモっていう鳥で、冬にしか日本にはいなくて・・・。5月頃に親子連れで並んで、横断歩道を渡っていたりするのは、カルガモと言ってまた別の種類です。マガモは、おすすめはお尻を見てもらうと、くるんとカールした羽根があって、2本、寝ぐせみたいについているんですけど、それをぜひチェックしてもらいたいですね。カモを見たら、ぜひお尻をチェックして、丸まった寝ぐせを見つけてみてください」
●肉眼でも見えますか?
「見えます。特に都会のカモたちは人間慣れしているので見やすいと思います」
●野鳥観察の初心者に向けて、なにか見つけるコツはありますか?
「やっぱり近所とか公園とか、そういったところから始めるのが楽ちんでいいと思いますね」
●双眼鏡は持っていたほうがいいですか?
「はい、双眼鏡があると断然楽しくなりますけど、買おうと思うと結構コストもかかってくるんですね。今はフェスとか行く人も多いから、フェス用と兼用で(笑)鳥用の双眼鏡を買ってもいいかもしれないですけどね」
●見つけた鳥が何の鳥かってわからないじゃないですか。そういうのはどうやって調べたらいいんですか?
「写真が撮れたらGoogleで画像検索とかやると、かなり精度よく教えてくれますね。例えば、ハトとかカモとか、動きの鈍いやつだったら、スマホのカメラで撮れると思うので、撮ってみると名前がわかるかなと思います。
すばしっこいやつら、小っちゃいやつらはなかなか難しいと思うので、特徴を覚えておいて、何色とか羽根の色は黒とかオレンジとか、そういった特徴を覚えておいて、それもGoogle検索ですね。”ちっちゃい鳥 、オレンジ”とかやると、案外画像が出てきて、あっ、これこれこれ! みたいなのが見つかると思います」
●改めてガイドをするときに、いちばん大事にされていることはなんでしょうか?
「僕の場合は研究者ではなくて、自然と親しむ人をどれだけ増やせるかってところに重きを置いています。名前を覚えるとか詳しく調べるっていうよりかは、もっと楽しんで観察していきたいなと思っているんですね。
あと、なんでこの鳥がここにいるんだろうとか、その生き物の暮らしぶりだとか、生き方みたいなところにフォーカスして、こんな素晴らしい生き物が、ご近所にいたんだね、みたいなところで、豊かな自然の中で暮らせて幸せだなみたいに思ってもらえるような人を、ひとりでも増やしていきたいなと思って活動しています」
INFORMATION
くますけさんの新しい本をぜひご覧ください。これまでの鳥の解説本にはない、くますけさんだからこその視点で書いた鳥の面白い生態が満載です。「へえ〜〜! そうなんだ!」の連続ですよ。描き始めてまだ3年ほどという鳥の絵も絶品!
山と渓谷社から絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎山と渓谷社:https://www.yamakei.co.jp/products/2823230170.html
くますけさんのSNSもぜひ見てくださいね。ガイドツアーは決まり次第、情報が載ると思いますよ。
◎インスタグラム https://www.instagram.com/kumasuke902/
◎X(Twitter) https://twitter.com/kumasuke902
◎note https://note.com/kumasuke902
くますけさんの本を、抽選で2名のかたにプレゼントいたします。
応募はメールでお願いします。
件名に「プレゼント希望」と書いて、番組までお送りください。
メールアドレスはflint@bayfm.co.jp
flintのスペルは「エフ・エル・アイ・エヌ・ティー」
flint@bayfm.co.jp です。
あなたの住所、氏名、職業、電話番号を忘れずに。
番組を聴いての感想なども書いてくださると嬉しいです。
応募の締め切りは2月9日(金)。
当選発表は発送をもって代えさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしています。
応募は締め切られました。たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
2024/1/28 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、ハーブ研究家、そして日本メディカルハーブ協会のハーバルセラピスト「諏訪晴美(すわ・はるみ)」さんです。
東京・渋谷生まれの諏訪さんは、広告代理店そして出版社に勤務していた頃、多忙を極め、あまり健康的ではない生活を送っていたそうです。そして20年ほど前に食生活にハーブを取り入れるようになって、体調がどんどんよくなっていったそうです。そんなハーブの魅力を伝える仕事がしたいと思い、2007年に独立。その後「ハーブと私」を設立。ハーブ料理のレシピ開発や講座なども開催し、ハーブの魅力を伝えるために幅広い活動をされています。そして先頃『ハーブの癒し』という本を出されました。
きょうはそんな諏訪さんに「ハーブのある暮らし」をテーマに、この時期に飲みたいハーブティーや、ハーブを使ったおすすめレシピ、そして、ベランダでも育つお手軽ハーブのお話などうかがいます。
☆写真協力:ハーブと私
ハーブの力を人間に
※ハーブの勉強はどうやってされたんですか?
「最初は独学で、いろいろ(ハーブを)使っていたんですけど、やっぱりちゃんとした知識を学びたいと思って『日本メディカルハーブ協会』のメディカルハーブ検定っていうのがあって、最初それを勉強して、そこから検定とか資格とかを取っていくようになりました」
●スクールに通ったりとかされたんですか?
「そうですね。私は『生活の木』っていうハーブショップがやっているスクールに行ったんですね。日本メディカルハーブ協会が提携しているスクールのひとつで、面白かったです。なぜハーブが体にいいのか、植物が植物自身のために持っている力を人間が利用させてもらっているっていうことが、勉強していくとだんだんわかって、だからいいんだっていうのが納得できて、すごく面白かったです」
●ひとくちにハーブと言っても、選び方とか使い方に注意しなければいけないことがありますよね。具体的な例で何かございますか? 使い方によっては健康を害したりとか、個人差もありますよね?
「まず植物なので、例えばスギ花粉症の人ってスギ科のアレルギーだったりすると思うんですけど、ハーブも例えばキク科の植物とか、いろいろあるので、そのアレルギーを持っている人はまず控えたほうがいいっていうことと、それから書店で売っているいろんなハーブの辞典を見ると、例えば妊娠中の人は控えたほうがいいもの、授乳中の人が控えたほうがいいものとかが載っています。
それから薬の相互作用、飲み合わせですね。この薬を飲む時にはこのハーブは一緒に飲まないほうがいいですよっていうのが、ハーブの辞典にも書いてあります。見落としてしまう人いるかもしれないんですが、実は医薬品のほうにも必ず明記されているので、そのあたりをちゃんとチェックしていただければと思いますね」
(編集部注:諏訪さんの本『ハーブの癒し』にも、ハーブそれぞれの説明のところに、使用を控えたい人という注意事項などがあったりします。ぜひ参考にしてください)
喉のケアにはマロウブルー
●実は私もハーブに興味があって数年前に「ハーブティー・ソムリエ」っていう資格を取ったんですけど、きょうのテーマ「ハーブのある暮らし」はビギナーのかたがたには、ハーブティーから入るのもいいのかなって思ったんですけど、どうですか?
「いいと思います。ハーブティーはすごく手軽で誰でも作りやすいですし・・・。あとはお料理、ハーブティーのハーブショップに行かれたことがある人は多分ハーブティーが作りやすいかなと思うんですけど、お料理に使うハーブは、実はスーパーに普通に売っているので、お料理のほうが入りやすいかたと多分、両方いらっしゃるかなって思います」
●例えば、寒くて乾燥するこの時期におすすめのハーブティーって何かありますか?
「体が温まるハーブがたくさんあるんですけれども、私が好きなのはローズマリーですね。おうちでハーブを育てたことある人の中では、多分ローズマリーがいちばん多いのかなって思うんですけど、枝を5センチぐらい切って、冬だったら例えば柑橘系のものがたくさんあると思うので、柚子の皮とかレモンの輪切りでもいいですし、ミカンの皮とかを一緒に入れて、熱湯を注ぐだけでも美味しいハーブティーになります」
●想像しただけで、いい香りがしそうですね!
「ちょっと生姜のスライスとかも入れると、さらにポカポカしてきますね」
●温まりそうですね〜。
「温まりますね」
●花粉症のかたにおすすめのハーブティーってありますか? そろそろスギ花粉が気になる季節になってきましたけど・・・。
「花粉症は、もうなってしまった時は、例えばペパーミントみたいにスッとするものだと鼻が楽になるとか・・・。あとエルダーフラワーっていうハーブがあるんですけど、ちょっと症状を緩和するのにおすすめのハーブだったりするので、混ぜて使ってもいいです。
あとは、ハーブを勉強されているかたがよく使われるネトルっていうハーブもあるんですけど、本当はネトルは花粉症が始まる3か月ぐらい前から使うといいんですけどね。ちょっと間に合わないかもしれないんですが、徐々にやって・・・1年中使っていてもいいハーブなので、来年のためにも(笑)」
●予防のためにも。
「そうですね。使えるといいかなと」
●それらのハーブは、すべてハーブのショップで手に入りますか?
「そうですね。ハーブショップであれば、どこでも手に入るハーブです」
●私は声を出す仕事なので喉の状態もすごく気になるんですけど、喉のケアにいいハーブはありますか?
「マロウブルーって聞いたことあります? ウスベニアオイとも呼ばれるマロウブルーは、粘液質を持っていて喉の粘膜の保護になるのでおすすめですね。あまり味があるハーブじゃないので、自分の好きなハーブティーにちょっと混ぜて使ってもいいかなと思います」
●ブレンドするっていうことですね。見た目もすごく綺麗な青ですよね。
「そうですね」
●なるほど! 使い方としてはハーブティーとして、ですね。
「はい、喉のケアの場合はハーブティーがいいですね。水筒で、できればちょっとずつ飲むのがいいかなと・・・」
●持ち歩くっていうのもいいですね。
「あとは、例えばカモミールとか一緒にブレンドすると、ケアにとてもいいかなと思います」
●ブレンドする時、割合はどのようにしたらいいんですか?
「カモミールとマローブルーだったら、1対1とかでもいいかなと思います」
●やってみます。ありがとうございます!
(編集部注:先ほど、諏訪さんからもお話がありましたが、ハーブは体質や薬との飲み合わせによっては、影響が出てきたりすることもありますので、ハーブ辞典などを参考に体調に合わせて、安全に使っていただければと思います)
美味しい香りのローズマリー・チキン
※キッチンに備えておきたいハーブは、どんなものがおすすめですか?
「ローズマリーとそれからタイム。タイムを買うかたは普通のタイムなんですけど、育てるかたはレモンタイムっていう種類があって、それがすごく香りがいいので、育てやすくておすすめです。それからオレガノ、ローリエ、あとはイタリアンパセリ、この5つぐらいがあるといろいろ使い回せるかなって思います」
●どんなお料理にそれぞれ合わせるのがいいですか?
「お肉の下味とかお魚も漬け焼きにしておくのもいいですし、スープ、ハーブで出汁をとって、ブーケガルニって聞いたことがあるかたもいるかもしれないんですが、ハーブを束ねてポトフとかカレーとか作る時に一緒に煮出したりしても美味しいです」
●見た目もお洒落ですしね。いいですよね〜。諏訪さんの新しい本『ハーブの癒し』にはレシピもいろいろと載っていましたけれども、私が気になったのがやはり”食欲をそそるローズマリー”ということで、「美味しい香りのローズマリー・チキン」が写真付きで載っていて、これは絶対美味しいやつだ! って思いました!
「すごく簡単に作れます」
●これはどうやって作るんですか ?
「お肉にいつも通常通り、塩コショウして、ローズマリーだけでもいいですし、あとタイムとか一緒に寝かしてもいいんですけど、そこに例えばニンニクのスライスとか・・・。あとオリーブオイルで全体を馴染ませて、ジップロックとかに入れておいてもいいですね。
バットとかにとっておいて冷蔵庫で寝かして、本当はできたら買ってきてすぐやって、食べる日に取り出して焼くっていうのがいいかなと思います」
●放置しておけばいいって感じですね。楽ちんですよね〜。
「そうなんですよ。前の晩でもいいですし、時間がない時はすぐ焼いちゃっても香りは移るので・・・」
●パーティー・メニューにも使えそうですね。
「いいですよ! 私、バーベキューとかに持っていくの。お肉をつけてそのまま冷凍庫に、ジップロックに入れて冷凍して、凍ったままバーベキューに持っていくんですよ。(着く頃に)いい感じになっています」
●いいですね! ローズマリーがあるとないのでは全然違いますよね。
「そうなんですよね〜。子供たちにも大人気のメニューです」
お粥の出汁にハーブティー!?
※諏訪さんの本『ハーブの癒し』を見ていて、ほかにも特に気になったのが、ハーブティーの出汁で作るお粥なんですけど、ハーブティーを出汁にするんですね?
「これは私が考えた方法なんです。いろんなハーブで出汁を作ることができて、お粥とかお味噌汁とか、あとお茶漬けとかにしてもいいんですね。
この本には、風邪の予防にもなるようなレシピを載せたんですけど、エキナセアっていうメディカルハーブ、(ハーブを)ちょっと勉強したかたなら誰でも知っている、風邪の時に飲むハーブティーです。免疫力を高めたい時に使うハーブなんですけど、私はエキナセアにカレンデュラ、キク科のハーブなんですが、菊の花みたいな黄色い花びらを入れるんですね。抗菌とかにいいと言われているハーブです。
そのふたつを合わせると香りも良くなりますし、そこに鰹節の出汁を一緒にするんですね。これがすごく美味しくて・・・実はエキナセアってちょっと草っぽい香りっていうか味がするので、万人受けするハーブティーじゃないなとは思っています。
私は高校でも週に1回ハーブの授業を行なっているんですけども、熱いハーブティーはそんなに高校生に人気じゃないんですね。エキナセアもそんなに美味しいとは言わないんですが、ここに鰹節を入れて飲んでもらったら、全員美味しいって言ってくれて・・・」
●ハーブティーと鰹節って、なんか合いそうじゃない気がしますが、合うんですね?
「合うもの合わないものはあるんですけど(笑)。子供が風邪を引いた時とか、まだ小学生なんですけど、普通のお粥より食べやすいって言っていて、体にスーって入っていく感じがするんです」
●香りもいいですよね〜。
「そうなんですよね。なので、子供が風邪を引いた時にこのお粥を作ってあげるとすごく喜びますね。あとは消化にいい白いお野菜、カブとか大根とか、胃腸にいいものを一緒に入れて作るレシピになります」
(編集部注:ハーブティーをお粥の出汁にするというのはびっくりしましたが、鰹節を加えたりすると食べやすくなるということで、まさに和と洋のコラボレシピなんですね。
ハーブと聞くと、海外のものというイメージがあると思いますが、考えてみたら、日本人と、薬味や薬草は古くから深い関係があって、食卓を見ても、シソや山椒、柚子などがありますよね。まさに暮らしの中の、日本のハーブですね)
アロマでリラックス。濃度に注意!
※ハーブをアロマとして楽しんでいるかたも多いと思います。おすすめのアロマはありますか?
「アロマってなんなの? っていうかたも多いかなと思うんですね。植物の、ハーブティーにする成分は主に水溶性の成分がなんですけども、ハーブには脂溶性の成分もあって、それをぎゅーっと濃縮したものがアロマオイルとして売られているんですね。アロマオイルは香りの成分だったりとか、あとは虫よけに使われたりしますよね。あれは植物が虫の害に遭いづらくするための、忌避効果が強い成分を使っていたりします。
アロマオイルは気持ちを穏やかにしたり、虫よけだったり抗菌だったりっていうのがありますが、例えば小さなボールに熱湯を入れて、そこにアロマオイルを2〜3滴加えてお部屋に置いておいたりすると、お部屋全体が優しく香ってきてリラックスする時にもいいかなと思います。一般的には、ラベンダーとかがすごく人気かなって思うんですけどね 」
●いいですね。手軽にできますしね。
「そうですね。あとはローズゼラニウムも結構人気かなと思います」
●ローズゼラニウム? バラの香りがしますか?
「バラの香りに似ていますね。私は個人的に好きなのはジャスミンとかイランイラン、ああいうのが結構好きですね」
●どんな香りがしますか?
「なんかちょっと南国の香りなんですけど・・・。私は父がずっとインドネシアに住んでいて、懐かしい香りがするなと思って・・・日本ではなかなか育てられない植物なのでアロマでしか嗅げないんですけど、使ったりしています」
●アロマオイルを購入するときに、何か気をつけることとか、注意点ってありますか?
「ちゃんとしたアロマショップで売っているものであれば、大丈夫だと思うんですけど、時々ちょっと安めの、雑貨屋さんとかで売っているのは、芳香浴には大丈夫かもしれないんですが、肌につけたりとか入浴とかに使うのは、やめたほうがいいかなというのはあります。
あとは使う時の注意点としては濃度ですね。たくさん入れるといい香りがするんじゃないかなと思って、つい多めに入れちゃったりとかっていうのがすごくよくなくて、それぞれの適した濃度って、本だったりとかにいろいろ書いてあると思うんですが、それをしっかり守って使うことがとっても大事です」
ベランダのハーブを摘んでお料理に
※諏訪さんは、ご自宅でハーブを育てているそうですね。何種類くらい育てているんですか?
「あまり数えてないんですけど、20〜30種類は育てているかなと思います」
●すごいですね〜。普通のマンションのベランダとかでも育てられますか?
「渋谷区に住んでいてベランダがメインで育てているので、プランターで・・・」
●プランターで?
「はい、育てています。キッチンが2階にあるので、ちょうどベランダも2階にあって、お料理しながら摘みに行けるのがすごく使いやすくて・・・。(お料理の)途中で摘みに行く・・・だから塩コショウを取る感覚で摘みに行けるっていうのにしたくて、そうしているんですけど、プランターでいろんな種類を育てることができます」
●初心者にも育てやすくて、使いやすいハーブがあれば、教えていただきたいんですけど・・・。
「初心者は一年草のものが割と育てやすいので、イタリアンパセリとか・・・イタリアンパセリは、ごめんなさい二年草ですね。まあでも割と早く育つもの・・・チャービルとかお料理の飾りにも使えるので使いやすいかなと思います。
あと、樹木にはなるんですけど、ローズマリーとか、あと、そうですね・・・タイム、タイムも結構丈夫なので育てやすいかなと思いますね。そうだ! もうひとつおすすめのハーブ、育てやすいのがあって、さっき出てきたローズゼラニウムって緑色の手のひらみたいな葉っぱの形のハーブなんですけど、水やりが本当にいらなくて、これはすごく育てやすくて、いいですよ」
●楽ですね!
「楽です。そうそう!」
●ではこの放送を聞いて、私もハーブのある暮らしを送りたい! と思ったリスナーさんにぜひアドバイスをお願いします。
「はい、『ハーブのある暮らし』って本当に簡単に始められるんですよね。(ハーブを)育てたいって思ったら、最初に5種も6種類も育てないで、まずは ひとつ、ふたつ、3つぐらいでいいと思います。ローズマリーひとつでも使い方がたくさんあるので、それを楽しんでやると、ハーブのある暮らしに自然に入っていけるかなと思います。
あと、お子さんがいるかたとかも、うちの子も一緒にハーブを摘んできて、お風呂に入れたりとかっていうのをやったり、お料理に散らしたりとかして楽しんでるので、そういうのも(お子さんと)一緒にやると楽しいかなって思います」
INFORMATION
諏訪さんの新しい本では、衣食住にまつわるハーブのたくさんの使いかたを紹介。朝昼晩、春夏秋冬、それぞれのシーンにあわせた活用術がわかりやすく載っています。ハーブ選びや使いかたの注意も掲載。また、知って楽しむハーブとアロマ、全54種が繊細で美しい植物画とともに紹介されています。
翔泳社(しょうえいしゃ)の「暮らしの図鑑」シリーズの一冊として絶賛発売中です。詳しくは出版社のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎翔泳社 :https://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798178080
諏訪さんは、代々木上原のサロン「ハーブと私」で「ハーブクッキングレッスン」を3月から7月まで月一回開催する予定です。コース料理のようなメニューを考えているそうですよ。ほかにも植物画の教室などもあります。参加方法など、詳しくはオフィシャルサイトを見てください。
2024/1/21 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第18弾! 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「住み続けられるまちづくりを」「質の高い教育をみんなに」「貧困をなくそう」そして「つくる責任 つかう責任」に関係する事例をご紹介します。
今回は業態の異なる、ふたつの会社の取り組みをクローズアップ! 前半はウエブメディアを運営するメディア・カンパニー「ハーチ株式会社」。そして後半は、アップサイクル・ブランドを展開する「ココロインターナショナル株式会社」の、それぞれの事業について、ご担当のかたにお話をうかがいながら、社会や環境に対する思いに迫ります。
まず、お話をうかがうのは、メディア・カンパニー「ハーチ」の「室井梨那(むろい・りな)」さんです。
2015年、創業の「ハーチ」はウエブメディア事業を展開している会社で、スローガンは「パブリッシング・ア・ベター・フューチャー」=「よりよい未来をみんなに届ける」、ということで、サステナビリティ、サーキュラー・エコノミー、教育など幅広い分野でウエブメディアを企画・運営しています。
社名の「ハーチ」は、「ハート」と「アーチ」を組み合わせた造語で、人の心と心をつなぐ 架け橋になりたいという思いが込められているそうです。
☆写真協力:ハーチ株式会社
サステナブルでユニーク!?
●「ハーチ」が運営しているウエブメディアの中から、まずは「IDEAS FOR GOOD」について。これはどんなコンセプトのメディアなんでしょうか?
「コンセプトとしては、社会をもっとよりよくするっていうのが、テーマになっています。例えば、気候変動ですとか海洋プラスチックの問題みたいな、総称して社会課題と呼ばれるようなものを解決するための、ユニークなアイデアを紹介するウエブマガジンになっています」
●拝見させていただいたんですけれども、アートとかファッションとかフード、建築とか、いろんなジャンルに分かれているんですね。具体的にどんな記事があるのか教えていただけますか?
「私たちは、ユニークに解決するアイデアっていうところをすごく大事にしているんですね。例えば、先ほど海洋プラスチックの問題に触れたんですけど、河川の汚れをきれいにしたいってなった時に、ただゴミを拾いましょう、ではなくて、オンラインゲームの仕組みと合わせて、遠隔で河川の汚れを掃除できるロボットをゲーム感覚で操作して、川をきれいにできるシステムとか。
使い捨てのビニール袋が有料になって、マイバッグを持ちましょうねって世界的になっていると思うんですけど、それもあえてお店で配るビニール袋をすごくダサいデザインにして、そうしたらみんな持ちたくないから、自分の家からかっこいい好きなマイバッグを持ってくるようになるんですよねっていう、ちょっとデザインと掛け合わせているとか、そういう形でワクワクだったりとか、楽しいって気持ちになるようなアイデアをいろいろ紹介しています」
●では、続いて「Livhub(リブハブ)」というものもありました。こちらもウエブマガジンですか?
「はい、“サステナブルな旅”をテーマに情報発信していて、“トラベル・ライフスタイル・マガジン”と呼んでいるんです。どうしたら自分の旅が、よりサステナブルになるかとか、あとそもそもサステナブルな旅ってなんだろう、みたいなものを問いかけて一緒に考えていくような、そういうメディアになっています」
●旅情報を発信するウエブマガジンっていうことになるんでしょうか?
「そうですね。大きく言うと旅情報の発信にはなるんですけれど、Livhubの編集部員は旅を通して、人と自然の関係とか、人同士の関係とか、自分と自分自身との関係、そういったいろんなものとの関係が、バラバラになってしまっているものがつなぎ直される、そういう力が旅にはあると信じて、ウエブメディアを運営しているメンバーなので、世界がよりそういう方向に向かっていくために、旅は何ができるかっていう、そういうことを発信しています」
●具体的にはどのような記事があるんですか?
「いちばんわかりやすいところで言うと、例えばホテルで、コンポストを導入しているホテルはこんなところがありますよっていう紹介とか、サステナブルに旅するためにどうしたらCO2をより少なくできるかとか、そういう具体的な方法を説明している記事もあります。
あと文化的なところに触れて、編集部員が世界各地を旅して、感じたこと、触れたことをコラム的にご紹介しているものとか、あとはサステナブルな活動をしている、例えばホテルとか、実際にサステナブル・トラベルを自分で体現しているかたに取材をして、インタビュー記事を載せたりとかもしています」
(編集部注:紹介する情報は、世界各地にいるスタッフが集めて、それを日本語に翻訳して発信しているそうです)
Circular Yokohama〜横浜を循環型に
※続いて、「Circular Yokohama」について教えてください。
「これは“サーキュラー”と“横浜”、ふたつの言葉がついている通りなんです。サーキュラーは日本語で言うと循環ですね。横浜は神奈川県横浜市の横浜で、横浜という町をより循環型にしていくためのプラットフォームになっています」
●室井さんはこの「Circular Yokohama」を担当されていらっしゃるんですよね。どんなプラットフォームなんですか?
「プラットホームっていうと、結構わかりづらいなと思っているんですけど、テーマが『プレイフル・サーキュラリティ、循環を遊ぼう』っていうふうに言っています。サーキュラーとか循環、最近だとサーキュラー・エコノミー、循環経済とかってニュースでよく聞くと思うんですね。
エコノミーって言葉を聞いた時に、みなさん何を思い浮かべますか? って言うと、どうしても固いイメージとかで、自分の生活に結びついている感覚があるかたは少ないと思うんですね。でも、循環とかサーキュラーって、本当はもっと楽しくかっこよく体験できるものなんだよ! っていうのを訴求したくて、このプラットホームを運営しています」
●どんなことに取り組んでいらっしゃるんですか?
「ウエブの会社なので、ウエブメディアは作っていて、先ほどご紹介したようなほかのメディアと同じように、インタビュー記事とか横浜市内のサーキュラーな情報発信ももちろんしているんですけど、会社の中ですごくユニークなのが、Circular Yokohamaは実際に活動拠点を横浜市内に持っているんですね。
なのでウエブ、いわゆるインターネット上の活動だけじゃなくて、実際に市民のかたがたにサーキュラーなものを見ていただいたり、触れていただいたり、そういう展示会をやったりとか、あとはものづくりするイベントを開催したりとか、顔の見える関係性を保って活動しています」
(編集部注:「Circular Yokohama」では「めぐる星天(ほしてん)」というイベントで、新しく英会話カフェが始まったそうです。興味のあるかたはぜひ、ハーチのサイトをご覧ください。https://circular.yokohama/2023/12/11/englishcafe_circularoctober/)
3つのP〜 PEOPLE. PLANET. PROSPERITY
※「ハーチ」はメディア・カンパニーとして大切にしているテーマがあるそうですね。
「私たち3つのPを大事にしています。それが「PEOPLE(ピープル)PLANET(プラネット)PROSPERITY(プロスペリティ)」の3つですね。日本語で言うと、「人・環境・繁栄」の3つを大事にしています」
●具体的にそれぞれ簡潔に教えていただけますか?
「はい、まずPEOPLE、人っていうのは、やっぱり人がつながり合うことで、個人としての幸せ、あとは組織社会全体としての幸せだったり、その幸せがあるから社会全体、地球全体が持続可能性になるよね、持続可能サステナブルだよねっていうところで、まず人を軸にすごく大事にしています。
その上でやっぱりPLANET、つまり環境とかこの地球上っていうもの・・・人間というと、どうしても人間と自然って別のものみたいに考えがちなんですけど、私たち人間もこの自然の循環の一部だよねっていうことです。
私たちが活動するってことは、まさに自然が循環していくってことなので、自分たちが活動することで生態系とか、地球の循環全体をプラスにしていきたいよねっていうような思いで、PLANETがふたつ目に置かれています。
最後にPROSPERITYってちょっと難しいんですけど、繁栄っていう意味で、人が幸せで、それによって地球も持続可能になって、そうすることで人と自然は分断を起こさずに、お互いがつながり合った状態で持続可能に繁栄できる、つながり合って栄えるよね! っていうことで、最後にPROSPERITYを大事にしています」
●番組としては「PLANET」に関して、どんな活動をされているかをお聞きしたいんですけれども、具体的にご説明いただけますか?
「メディアとしては情報発信を通して、今ご紹介したように、自然と人を切り離すんじゃなくて、あくまで人は自然の、生態系の一部だよねっていうところを軸にして情報発信をしているんですね。それによってどうしたらサステナブルになるかっていうのは、私たちのメディア全体としてのテーマにあります。
実際の行動として、私たち、どんなことしているんですか? っていうところに関しては、オフィスで出てしまうゴミを減らすために、コンポストをもちろん置いていますし、あと捨てるゴミも毎回計量しています。どのぐらいゴミが出てしまっているかを、重さを測って、みんなで改善できるところしていくっていうこともしています。
あと仕組みとして、私たちのメディアに訪れてくださったかたの人数、PVプレビューの数なんですけど、その数、人が訪れるごとに1円とカウントして、毎年訪れてくださったかたの人数分×1円を、社会とか環境に対して働きかける活動をしているかたがたに寄付をしたりとか、そういった形で実際に我々も何か行動を起こす、発信するだけじゃなくてっていうことを意識しています」
●そうなんですね! ゴミを計るっていうのもいいですね。
「実際にやってみると、思ったよりゴミが多かったりとか、あと(ゴミを)計るために一回全部、ゴミ箱に入ったものを出して広げたりするんですね。思いのほかプラスチックが多いねとか、逆にあれ? なんでこんなものが捨てられているんだろうってものが出てきたりだとか・・・ただ計るだけと思うんですけど、侮るなかれで、結構いろんな気づきがあります」
後半はアップサイクル ・ブランド「Coco&K.」を展開されている「ココロインターナショナル」の代表「井上伸子」さんにご登場いいただきます。
「Coco&K.」は、井上さんが2006年に立ち上げたブランドで、製造の拠点はフィリピンにあります。原材料は、捨てられたジュースのアルミパッケージで、それをアップサイクルして、カラフルで可愛いバッグやポーチ、財布などに生まれ変わらせています。井上さん曰く「作る人、使う人、そして子供たちに笑顔と幸せを運ぶ」ハッピーなプロジェクトのブランドだそうです。
☆写真協力:ココロインターナショナル
フィリピンで運命の出会い!?
※そもそもなんですが、フィリピンに行ったのは、どうしてなんですか?
「もともとアジアンテイストの雑貨が好きで、アジア版ソニープラザみたいなのをやりたいなっていう夢が漠然とありました。日本の展示会にも行っていたんですが、フィリピンでも面白い展示会があるよっていうことを聞いて行ったのが、運命の始まりでしたね」
●フィリピンのどのあたりに行かれたんですか?
「フィリピンのマニラの市内で展示会はあったんですね。マニラには初めて行ったんですが、マニラに着いた時、すごくショックを受けたんですね。道路を歩きますとボロボロの服だったり、靴を履いていない子供たち、あと物乞いをしている子供たち、そんな子にたくさん出会ったんですね。
私も当時同じぐらいの子供がいたので、ものすごくショックで、フィリピンっていう国のことは少しは想像していたんですけれども、本当に想像をはるかに超えていて、ショックで悲しくなってしまって・・・。
そんな気持ちのまま、翌日、展示会に行って、そこでこのカラフルなバッグと出会って、一目惚れして、話を聞いてみたら、これは廃材を使って作っている、あと女性の雇用、女性のためになるもの、あと子供たちのためになる活動をしている、そんな話を聞いて、すごく感動したんですね。その時にこれだ! これを日本に連れて帰りたい! って思ってしまったんです」
※井上さんがマニラの展示会で一目惚れしたカラフルなバッグは「キルス・ファウンデーション」という地元のNGOが作ったものだったんです。団体名にある「キルス」には、どんな意味があるんですか?
「キルスっていうのは、KILUSって書くんですが、これはフィリピンのタガログ語で、それぞれの頭文字の意味が込められていて、『愛国心・ひとりひとり・目的・発展・ふるさと』というタガログ語の頭文字を取って付けられているんですね。
自分たちの住む街を世界一美しく緑あふれる街にしようっていう、そんな合言葉で生まれたボランティア団体でした。当時は川の汚れで悪臭もひどくて、そんなことで地区長さんが立ち上げたのがこのボランティア団体だったんですね。
川のゴミを拾って街をきれいにしようということを呼びかけて、それと同時にやっぱり子供たちを学校に行かせる必要性があるよっていうことも呼びかけて、それだけじゃなくて、女性の収入になるためにっていうことで、自宅の脇に小さな工場を建てて、リサイクルバッグを作り始めたっていうのがジュースバッグの始まりでしたね」
(編集部注:マニラの展示会で一目惚れした井上さんは、その場で200個注文したそうなんですが、当時「キルス・ファウンデーション」は小さな団体で、連絡方法もファクスしかなく、注文したものが届かないとか、やっときた商品もサイズがバラバラで汚れていたりなど、日本の市場で販売できるような状態ではなかったそうです。
そこで井上さんは、現地の工場に何度も足を運んで、働いている女性たちにメジャーの使い方を教え、何度もやり直してもらって、やっと商品づくりと仕入れを軌道に乗せることができたそうです。
現在は、廃棄されたアルミのジュースパックの回収、洗浄など、生産工程がしっかり組まれているとのことですが、実は商品づくりは全部手作業なんです。工場では50人ほどが働き、自宅で作業する女性たちを含めるとトータルで200人くらいのかたがバッグやポーチなどを作る仕事についているとのこと。
また「キルス・ファウンデーション」の地道な活動が功を奏し、川も街もきれいになり、工場で働く女性の子供たちは学校に通えるようになっているそうです。「キルス・ファウンデーション」は未来のために子供の教育にも熱心に取り組んでいるとのことです)
丁寧に愛を込めて、使う人も幸せに
※井上さんが現地のスタッフのかたがたを見ていて、いちばん感じることはどんなことですか?
「みんな(私が)行くとすごく笑顔で迎えてくれて、お仕事も楽しそうにしていますね。この仕事にみんな誇りを感じているし、今ではもう私が及ばないぐらい上手に作ってくれる、みなさん素晴らしい技術者になっています。
丁寧に大切に愛を込めて作ってくれているのが感じられるので、だからこのバッグは、使う人も幸せにしてくれているなっていうことをすごく感じます。使っている人から、これを使うと本当に元気になれるよとか、明るい気持ちになるって言ってくださるんですよ。みんなにプレゼントしたくなるわって言って、プレゼントされた人がまた大好きになって、どんどんご縁がつながっていく感じが素晴らしいなって感じています」
●日本でもエシカルっていう考え方がどんどん広まってきていると思うんですけれども、今後特に取り組んでいきたいことってありますか?
「そうですね・・・エシカルとかサステナブルとか、難しいことはわからないですけれども、やっぱりこの活動を長く続けていくことがいちばん大切だなと・・・。一時の流行り廃りで終わらせたくないっていうことはずっと思っていて、長く続けることですね。
あと、若いかたの意識がエシカルとか、昔の私たちよりずっとずっと素晴らしくなっているので、逆に教えてもらいたいこともたくさんあります。このアップサイクルのバッグも、もっともっと可能性があると思っていて、若いかたの力を借りてデザインの面でも、デザインを勉強しているかたのアイデアをお借りしたり、もっともっと新しいものが作り出せたらいいなと思っています」
●最後に今いちばん伝えたいことを教えてください。
「今いちばんは、やはりこのCoco&K.のバッグを日本中のみなさんに使ってもらいたい、手に取ってほしいということですね。まずは可愛いと思ってもらって、それから作られている背景や、環境問題、雇用問題、教育問題にも貢献できるかな、なんてことにも目を向けてもらえたら嬉しいですね。
あとは最後に、私自身もこのバッグのおかげでたくさん素晴らしいご縁をいただいてきました。ハーチさん始め多くの人が支えてくださって、そして長く続けてくることができました。このバッグとこれを始めてくれた『キルス・ファウンデーション』のエルサさんと、キルスのメンバーのみんなに感謝の気持ちを伝えたいです」
INFORMATION
メディア・カンパニー「ハーチ」はきょうご紹介した以外にもユニークなメディアを展開しています。ぜひオフィシャルサイトにアクセスして、体感していただければと思います。
◎ハーチ :https://harch.jp
「ココロインターナショナル」のアップサイクル・ブランド「Coco&K.」では、カラフルで可愛いバッグやポーチなどを販売しています。ほんと気分が上がるし、オフィシャルサイトを見ていると、誰かにプレゼントしたくなるようなアイテムがたくさんあります。ぜひご覧ください。商品は、オンライン・ショップで購入できますよ。
◎Coco&K. :https://www.coco-k.jp
◎Coco&K. オンライン・ショップ:https://www.coco-k.jp/onlineshop/
2024/1/14 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、風景写真家の「佐藤 尚(たかし)」さんです。
佐藤さんは1963年、福井県生まれ。1984年、東京写真専門学校を卒業後、山岳写真家・風見武秀(かざみ・たけひで)さんに師事。1990年からフリーランスとして活動。日本全国を車で旅しながら、農村や自然などを撮影し、作品を写真集などで発表する傍ら、地元埼玉県の見沼(みぬま)たんぼで写真ワークショップ「里ほっと」を主宰するなどの活動もされています。
きょうはそんな佐藤さんに、日本全国の里山・里海の魅力や、房総半島のお気に入りスポット、そして人と自然が織りなす風景についてお話をうかがいます。
☆写真:佐藤 尚
自分らしさが出る里の風景写真
※風景写真を撮るために、現在も日本全国、津々浦々を巡っているんですか?
「はい、47都道府県を巡るのを自分のライフスタイルにしているので、一箇所ばっかりに行くというんではなくて、旅をしたら、なるべく多くの都道府県を周れるようにしています。昨年に行ったところは今年は行かないとか、来年は今年行ってないところに行こうとか、そういうふうにリストアップをして47都道府県を周れるようにしています」
●佐藤さんの主な被写体は里山なんですよね。佐藤さんのお写真って、本当に見ていてホッとする感じがするんですけれども、風景写真として里山を撮るようになったのはどうしてなんですか?
「風景写真って、一般的に広い自然風景などを捉えるかたがいたり、観光地に行って目の前にある景色を捉えるかたが多いかと思うんですけれど、私自身はいつの日からか、そっちのほうよりも里のほうに(目が)いくようになりましたね。
その理由というのはふたつあるかと思うんです。ひとつが深い森だったり、険しい山だったり、神秘的な海だったり、そういう大自然よりも・・・なんか大自然って見本みたいなのがあって、そこに行ってそれを撮るみたいになってしまって、やっぱりパターンが似てきちゃうと思うんですよね。
それが里の風景だと(世の中に)出ている写真が少ないというのかな、自分の感覚で探せるっていうのかな、そこが好きで里のほうに行っているのがありますね。
で、もうひとつが、里のほうに行くと人の気配ってあるじゃないですか。人が暮らしていたり、人が漁をしていたり、人が農作業をしていたり、そのかたたちの近くに行って会話ができるのが好きだな〜。
会話は実は得意じゃないんですけれど、田舎の人ってすごく優しくって、会話は難しくないよって教えてくれて、挨拶すると向こうから、おまえさん、どっから来たんだって言われて、埼玉県からだって言うと、自分の息子が娘が甥っ子がとか、昔自分が埼玉で出稼ぎしていたとか、いろんな話が出てくるんですよね。土地の人の話をするのはすごく好きで、それで里のほうに行っているっていうのがありますね」
●やっぱり人の営みを感じられるような風景がいい、ということですよね。
「はい、要するに大自然はどなたでも、もしかして撮れるかもしれない。撮るのは大変だと思うんですけれど、でもそんな中で自分の個性、自分らしさが出るのが里の風景かなと思って里山、里海に向かうようになっています」
●だから佐藤さんの撮る写真には暖かさがあるんですね。
「嬉しいじゃないですか(笑)。ありがとうございます」
(編集部注:佐藤さんは47都道府県を、改良したワンボックスカーに寝泊りしながら巡っていて、一回の撮影旅は長くて1ヶ月くらい、短くても2週間ほどと、時間をかけて、じっくり、ゆっくり移動しながら撮影を続けています)
旅の最初に魚沼、旅から帰る時に魚沼
※これまでの撮影で、特に印象に残っている場所はありますか?
「新潟県の魚沼、魚沼コシヒカリの産地、日本有数の雪国、その魚沼が好きで長く行っているんですね。魚沼になんでそんなに行くかと言ったら、魚沼って風景もいいんですけど、人が暖かいんですよね。それで魚沼に通っているうちにいっぱい友達もできたし、だから魚沼に何かと寄る、旅の最初に魚沼、旅から帰る時には魚沼、寄ってから家に帰ってくるみたいな、そんな雰囲気で終わるのが大好きです」
●どんな出会いがあったんですか?
「やっぱりいろんな人に出会えるっていうのが、魚沼っていいなって思うんですよね。それは出会いだけではなくて、(宿で)お風呂に入っていてもその中で会話を聞くのもなんか楽しいし・・・。
そうそうあとやっぱり魚沼って、どういうところって教えてくれるんですよね。魚沼は雪深いところとか、山菜がおいしいところとか、そういうのをちょっと家に寄ってけって言われてご馳走になって体験したり・・・。または畑で採れたものをくれたりとかって、そういう本当のコミュニケーションをとれるのが、私にとってもすごく財産になっているなって思います」
房総半島のおすすめスポット
※千葉県・房総半島で、よく撮影されているエリアはありますか?
「房総半島、好きですよ! 暮れに千葉県に行きましたよ! どこに行ったかというと九十九里海岸と南房総、結構千葉県って大きいですね、縦長ですよね。あの距離、すごく移動は大変だった感じはしたんですけど・・・」
●千葉県も車中泊で行ったんですね?
「もちろんそうです。九十九里に行ったのは夕陽を撮るためでした。いちばん日が短い年末は、太陽がいちばん南に寄っていくので、太平洋に面している九十九里でも夕陽が撮れるんですね。普通太平洋に面していると、日の出だけと思われがちですが、夕陽も撮れるんですよ。
あと南房総に行くと、夕陽と絡めて富士山が撮れるというイメージを持っているので、房総半島の先端から富士山を、大波が来ているところをいつか撮ってみたいと思っているんだけど、なかなかうまくいきませんが、年末になると九十九里から房総半島を巡る旅を毎年のようにやっていますね」
●季節的には冬がいいですか?
「冬の千葉県の海、最高です!」
●そうなんですね。地形的に高い山がなくて、低い山を歩く低山ハイキングも盛んだったりしますけれども、そういった風景も撮ったりはされますか?
「山歩きはそれほどしないですけれど、内陸のほうに行くと千葉県って田んぼとかもあるし、里の風景がいっぱいあるなっては思っていますね。だから千葉県は海・山・里、本当にすべてが揃っているところだなって感じているので、なにかと来ます。冬の話を先ほどさせていただきましたが、5月の九十九里が超おすすめです!」
●どんなところがおすすめですか?
「ご存知かどうかわかりませんが、砂浜に植物がいっぱい育っているところがあって、その植物でコウボウムギというのがあります。麦みたいな形のちっちゃい植物なんですけど、そのコウボウムギが砂浜いっぱいに群生しているところが5月に見られるんですが、それがまた可愛いんだ! ぜひ見ていただきたい!」
●5月ですね。
「5月です。5月から6月、7月、いつまで咲いているかわかりませんが、私が見たのは4月末だったんで・・・すごくいい景色です! 可愛いですよ」
●5月頃にそこに行けば、いい景色が見られるということですね。
「そうですね。房総半島、九十九里、本当に海岸線の多様な風景があるので、ぜひぜひ地元のかた、いや遠くからでも、みなさん、行っていただけたらなってすごく思っています」
写真を楽しみましょう!
※佐藤さんは、一般のかたに風景写真の撮り方を教える撮影会やオンラインでの教室をやっていらっしゃいます。どんなことにポイントをおいて教えているんですか?
「写真を楽しみましょう! まずそれですね。もちろんみなさん、写真が上手になりたいとかコンテストでトップになりたいとか、また向上意欲があるかたもたくさんいるんですが、その前にカメラを持って散歩して、友達と和気あいあい、会話するのが楽しいぜ! っていうのを伝えたいと思っています」
●撮り方のコツっていうよりは、周りの人たちと喋りましょう、お話ししましょうみたいな感じですか?
「まさにその通り。やっぱり写真は撮って楽しい、プリントして楽しい、発表して楽しい、そして形にして楽しいとかっていろんな楽しみ方があると思うんですね。
最近、エンターテイメントとして人と通じ合えるところもすごく感じるので、そのようなことをやりながら、人たちの集まりを作っていけたら、写真に対しての恩返しではないんですけれども、そんなことをやっていきたいと思っています 」
●ビギナーのかたに最初に教えることは、どんなことになるんですか?
「写真を楽しみましょうとは言っても、何を撮っていいかわからないかたって結構いると思うんですよね。ですので、まず1枚撮ろう、そういうアドバイスだけ送っていますね。
だから何を撮ろうとかってわからなくても、まずカメラを出して撮るという行為をすることから、1枚目が始まるっていうふうに伝えているんですが、そうすると意外に1枚目って、シャッターを切れたりするんですよ。何を撮ろうって気張っちゃうから多分ダメで、まず1枚を撮っちゃえみたいな感じ、それで1枚を撮っていただく。
そしてそのあとは、歩く・動く・観察する! 体を動かすってこと、よく見るってこと。そして被写体の探し方としては色・形・線、これを気にしながら風景などを見ていると意外に、あそこに赤色があって、あそこに線があって、あそこに丸い形があったとか、なんか見えてきたりするので、そういうふうにして楽しく撮ってもらえるようにお話をしていますね」
●いい1枚を撮るには色・形・線が、どういう組み合わせだったらいいんですか?
「なるほど、じゃあお伝えしましょう! 色という部分で言いますと、例えば遠くのほうに赤い花があったとします。その赤い花の隣に赤いトラクターがあったとします。そうしたら、ふたつの赤と赤でまとめるだけで、写真にストーリーというか、赤色がふたつあるなっていうのが、撮った本人もわかっているけれど、それが人に伝わるようになっていくんですよ。
線で見ていった時に、縦の線ばっかりで整えていくと構図がすごく整ったりしますよね。それがごちゃごちゃしていると構図が甘くなるんですが、線ばっかりで整えると面白いし、またそこにイレギュラーな1本だけ違う線が入った時に、協調性っていうのかな、気持ちがそこに入っていくので、線、形もそうです。同じようにそれを色・形・線を混ぜ合わせていって、構図を作っていくと意外とできていきます。
でもこれは量が必要なんですよ。やっぱり数を撮ることが、いちばん成長するために必要なので量が必要だということ、それを伝えていますね。いっぱい撮りましょう、楽しく撮りましょうっていうふうに」
(編集部注:いまはスマートフォンで写真を撮るかたが多いと思いますが、佐藤さんは、できれば、レンズ交換ができるカメラを使うと、表現が変わっていくので、そんなカメラで写真の新しい世界に入ってきてくれたら、嬉しいとおっしゃっていましたよ)
写真展『僕の散歩みち』『nukumori』
※近々写真展を開催されるそうですね。どんな写真展なのか、教えてください。
「はい、東京とさいたま市の2カ所でやります。東京でやるのは青山にあります『ナインギャラリー』というところで、1月16日から21日にかけてやるんですけど、もうすぐです! ぜひみなさまに足を運んでいただけたら、とっても嬉しいです。
この写真展の内容はと言いますと、コロナ禍で私自身が苦しんで、もがいていた、その思いというものを脱ぎ捨てるような感じで発表させていただきたい。
やっぱり私は人が好き、風景が好き、暖かいものを感じ取って、その写真をみなさんにお届けするのがどうやら好きなので、このコロナ禍でやってきたことをしっかりとまとめあげて発表しようと思った写真展になっています。自然風景ばっかり、30点ほど展示します」
●すでに開催中の写真展もあるんですよね?
「そうですね。新年からやっている『僕の散歩みち』というのをカメラ屋さんでやっているんですけど、カメラの光盛堂Ⅱさんなんですが、コロナ禍でやっぱり苦労をしていて、その時に集客というか、店の整理をして人たちが集まれる場所として、ギャラリーを新しく作ったんですね。
そのギャラリーで私がコロナ禍で苦しんで撮っていた、散歩の中で撮っていた写真を今回、青山のナインギャラリーでの『nukumori』写真展に合わせて、同時開催をするっていうリバイバル展示になりますかね。
これは本当に気軽に撮ろう、まず1枚。歩く・動く・観察する、色・形・線の写真を10枚ほど並べております。同時に『里ほっと』の活動も展開しているので、それを楽しんでいただけるんじゃないかなというふうに思います」
INFORMATION
佐藤さんは、地元埼玉県の南部にある緑地「見沼たんぼ」で「里ほっと」という写真ワークショップを定期的に開催されています。ワークショップを始めた理由は、地元に飲み友達が欲しいということで、おしゃべりしている時間が多いとのことですが、みんなで写真を撮り、見沼たんぼにこだわった写真展をそれも、さいたま市で、これまでに3回開催されたそうです。「里ほっと」の活動について詳しくは、佐藤さんのオフィシャルサイトをご覧ください。
佐藤さんの写真展情報です。
現在、写真展「ぼくの散歩みち」がJR南浦和駅から徒歩4分の「カメラの高盛堂II(コウセイドウ・ツー)」の「つながるギャラリー」で開催中です。会期は今月27日まで。
◎写真展「ぼくの散歩みち」:http://www.satophoto.net/2023/12/12/
写真展「nukumori」があさって16日から21日まで、地下鉄・外苑前駅から徒歩3分の「ナインギャラリー」で開催されます。初日の16日には佐藤さんによるギャラリートークが予定されていますよ。
◎写真展「nukumori」:http://www.satophoto.net/nukumori/
ぜひお出かけください。
ほかにも佐藤さんは撮影会やオンラインサロンなども開催されています。いずれも詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
◎佐藤 尚オフィシャルサイト:http://www.satophoto.net
2024/1/7 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、サイエンスライターで気象予報士、そして、東京大学大学院の特任教授でもいらっしゃる「保坂直紀(ほさか・なおき)」さんです。
保坂さんは、東京大学大学院で海洋物理学を専攻。その後、読売新聞社に入社し、長年、科学報道に携わります。そして1994年、気象予報士の第1回目の試験に合格。これまでに海洋や大気、地球温暖化などに関する本を数多く出版、そして先頃『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』という本を出されています。
きょうは、そんな保坂さんに、去年と今年の気候についてうかがうほか、地球規模の大気の循環や、偏西風についてもお話しいただきます。
春と秋がなくなる!?
※保坂さんは先頃『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』という本を出されています。そのお話をうかがう前に2024年最初の放送ということで、やはり気になっているのが地球温暖化の影響とされる異常気象が、今年も多く発生するのかどうかなんですけれども、まずは去年の状況を振り返っておきたいと思います。
「去年はとにかく暑い夏でしたよね」
●でしたよね〜。
「いつまでも、いつまでも暑くて、ちょっと昔は、夜の気温が25度以下に下がらない熱帯夜が何日続いたなんていうのが、10年ぐらい前でしょうか、ニュースになったけど、今は当たり前になっちゃっているので、もうニュースにすらならなかったですよね。暑い夏でした」
●本当に暑かったです。2022年11月から2023年10月までの12カ月が観測史上最も暑かったという分析結果を、アメリカの研究機関が発表したんですよね?
「そうですね。アメリカの研究機関もそうですし、あと世界気象機関というところなども、使っている元データが違うので、数字は少し違うんですけれども、いずれも一昨年から去年にかけて、その辺りは過去最高の気温だったということですね。日本の気温も去年の夏の気温、6、7、8月の気温は非常に高かったっていうのを気象庁が発表していますよね」
●夏も暑かったですけれど、先月12月も20度前後まで気温が上がったりっていう日もありましたよね。それはやっぱり地球温暖化の影響なんですか?
「ありましたよね〜。我々、地球温暖化の影響でしょうか? って聞きたくなりますよね。ですがこの問いに科学者が答えられるようになったのは、比較的最近のことで、ここ10年ぐらいのことなんですよね。 それまではそうかもしれないし、そうでもないかもしれませんって曖昧な答えしかできなかったんです。
この本には書いたんですけれども、『イベント・アトリビューション』という新しい手法を使って、きちんと研究されているのは、例えば日本だと2018年の夏も暑かったんですよ。
その2018年の夏は、もしも地球温暖化がなければ、あんなに暑い夏はまず来なかった、確率ゼロだったはずである。でも地球温暖化していると、あのくらいの夏は発生確率が20%・・・20%っていうのは5分の1ぐらいの確率で、ああいう夏が来ることもあるんですね。
去年の暑い夏についてはまだはっきりしませんけれども、そもそもが5回に1回くらいは、5年おきというわけではないですけれども、5回に1回ぐらいの確率で、あのぐらい暑い夏が来る可能性があるということがわかってきています」
●もうそういう現状になっているっていうことなんですね。
「そうですね」
●気象予報士として、保坂さんが2023年の気象を振り返って、最も気になることってどんなことですか?
「やっぱり今お話しましたけれども、暑かった夏ですよね。 昔は暑い夏もあれば、冷夏もあるというふうに、たまたまなのかなと思ったけれども、今お話ししたように2018年の夏は暑かったですし、また去年もものすごく暑かったですよね。
こういうふうに立て続けに来ると、やっぱり地球の気候のシステムが変わってきているんじゃないか・・・昔は地球温暖化っていうと、みなさん気温が高いことだけを考えていたかもしれないけれども、最近日本でも豪雨による災害は、毎年のように日本のどこかで起きていて、やっぱりこれは変だぞ! っていうことを、だんだん強く印象づけられてきたような、去年はそういう1年だったなって思います」
●そうですよね。日本は春夏秋冬、四季があって季節の移ろいを感じていましたけど、去年は秋がなかった感じがします。
「そうですね。一瞬で通り過ぎましたよね。去年の夏はしばらく9月になっても、私たちの住んでいる関東の辺りは暑くて、暑い暑いと思ったら、本当に1週間くらいの間にストンと気温が下がったような印象がありますよね。 地球温暖化が進むと夏の気温も上がるし、それから冬の気温も少し上がっていくだろうと、平均的にはそういうふうに言われています」
●今後益々、春と秋が短くなっていくこともあり得ますか?
「そうですね。去年の夏みたいに暑い夏があって、冬は少し暖かくなるんだけど、これは平均の話で、冬の寒さは上空を流れているジェット気流だとか、その流れ方にもよるので、それによっては相変わらず、ものすごく寒くて大雪が降る冬もあるわけですよね。そういうところで、今度は一気に気温の高い夏にいくと、春は一瞬のうちに過ぎて、夏がやってきて、秋も一瞬のうちに過ぎて、冬になるということは、大いに可能性としてはあるんじゃないかと思います」
豪雨も増える可能性!?
※2024年の予測について、わかる範囲で構わないのですが、今年前半はどうなんでしょう?
「これは本当に気象って難しいんですよね。この先を予測するっていうのがね・・・。ちょっとした条件の変化が、その後に影響してくるという難しさがあるので、これはわからないんですけれども・・・。地球温暖化が進んできているということは確かなので、そうすると豪雨だとか、それから極端な暑さ、季節外れの暑さみたいなのが増えてくるっていう予測はあるんですね。やっぱりその方向で、今年の春あるいは夏がやってくるんじゃないかなと思いますけど・・・」
●今年の夏も異常に暑かったりっていう可能性はありますか?
「可能性はあります。今の地球温暖化の状況だと5分の1の確率で、ああいう夏がやってくるかもしれないですけど、あれほど暑いのはちょっとしんどいので、残り5分の4のほうをお願いしたいという感じはしますよね」
●『線状降水帯』という気象用語をよく聞くようになりましたけれども、今年2024年は発生する確率っていうのも増えそうですか?
「線状降水帯が(一般的に)使われるようになったのは、ごく最近の話で、実はまだ線状降水帯とは何かっていう定義もきちんと決まっていないんですよね。非常に激しい雨が降る地域が帯のように細長く、雨がしばらくの間降り続くものを線状降水帯って言うんですね。
ですから、今一生懸命、気象庁なんかでも、どういう時に線状降水帯が発生するのかを研究していますが、まだはっきりしてないんですね。
ただ注意しなきゃいけないのは、そもそも水蒸気の量が増えているので、ああいう豪雨は基本的に起きやすい状況にあるということ。それからもうひとつ注意しなきゃいけないのは、大雨が降って災害がもたらされるのは、線状降水帯だけではないということですね。
今申し上げたように、帯のように細長い地域に雨が降り続くのを線状降水帯というので、例えば丸っぽい形のスポット上に豪雨が降り続くものは、線状降水帯とは言わないんですが、これも大きな災害を、土砂災害なんかを引き起こすので、そういうところにも注意しなきゃいけないということですね。そもそも大雨が降りやすい状況になっているということです」
(編集部注:保坂さんによると、気温が1度上がると、大気中の水蒸気の量が7%増える。つまり、大気中に雨のもとになる水蒸気がたくさん含まれるので、それがなにかのきっかけで雨になると、これまで以上に大量の雨が降ることになるそうです)
地球は「風の惑星」
※ここからは、保坂さんが先頃出された本『地球規模の気象学〜大気の大循環から理解する新しい気象学』からお話をうかがっていきたいと思います。この本は、副題にもあるように「大気の大循環」という視点で気象を解説されています。この「大気の大循環」に目をつけたのは、どうしてなんですか?
「大循環っていうのは、地球を取り巻いている空気、大気は風として、規模の小さいものもあれば、大きいのもある、とにかく動いているわけです。その中で、例えば地球は、赤道の近くは暑くて、南極・北極は寒いですよね。なぜなんだろうと考えた時に、大規模な風の流れによって、そういうような地球上の気候が生まれてくるんですよ。
ですから、私たちに馴染みのある熱帯とか温帯とか、こういうような地球上の気候がどうして生まれてくるんだろうって考えた時に、地球を取り巻いて流れるような大規模な風、それをここでは大循環と言いますけれども、その大循環について説明してみようかなと思って書いたのがこの本です」
●前書きに地球は『風の惑星』であると書かれていました。風が吹くのは、やっぱりこの大気の大循環に関係しているんですよね?
「そうですね。いろいろな理由があって風っていうのは・・・私たち普通、風っていう時には身近な、規模の小さいものを指すことが多いですよね。大循環のようなものも大気の流れですから、風と言えば風なんですけれども、その風とイメージを区別するつもりで大循環っていう言い方をしているんですね。
それにしても地球の上に空気がある限り、小さな規模のものも大きな規模のものも流れる、そういう風が我々の生活に深く関係しているという意味でも、よく地球って『水の惑星』って言われますけれども、もうひとつ『風の惑星』でもあるんだよっていう気が私はします」
偏西風は、大気の循環そのもの
※初歩的な質問なんですが、なぜ大気は流れるのでしょうか?
「これはですね・・・もうひとつ地球上には流れるものがあって、海も『海流』は流れますよね。大気と海の共通点は流れる物体、空気が流れる、水が流れる・・・で、どんなものでもそうですけれども、何かが動く時は何かの力が加わっているんですよね。力が加わって、その大気なり、水の場合は流れて、いろんなところで形を、姿を変えながら流れていくというものですよね。だから何らかの力が加わっているから、大気も流れるわけです」
●何らかの力っていうのは・・・?
「これはざっくり言うと、太陽から来る熱なんですよね。いちばん最初の地球の大気を動かす、おおもとになるものは太陽からの熱です。 例えば、やかんの中に水を入れて、そのままほっとくと水は動かないんですけれども、キャンプに行って焚火を炊いて、上にやかんを乗せるとその中の水が動くんですよね。
下から熱せられて軽くなった水が上に行って、上の水が下のほうに回ってきて・・・こういう熱の伝わり方を対流って言いますけれども、これが現実に、地球でも熱帯のような熱いところでは、これと同じことが起きています」
●天気予報でもよく耳にする『偏西風』がありますけれども、これも大気の循環によるものですよね?
「よるものというか、その大気の循環そのものですよね。今申し上げたように熱帯の辺りでは、そのやかんの中でお湯が沸くような対流が、そういう熱の動き方をするんですけれども、私たちが住んでいる中緯度では、今度は地球の周りをぐるりと、例えば北緯40度なら北緯40度のところを、地球を一周するように西から東に向けて風が吹いていて、これを私たちは普通、偏西風と言うんですね。
ですから、熱帯の辺りではそういう対流のような動き方をして、それで中緯度では偏西風のような帯状に地球を一周するような流れになる、そういう特徴があって、それぞれのところで大気の動きって・・・なんて言うんでしょうね・・・別々のパーツでできているみたいな印象でしょうかね」
●ジェット気流も偏西風ですか?
「そうです。この偏西風は西から東に吹く風という意味ですけれども、その中で特に流れの強い部分をジェット気流と言いますね」
※天気予報でも「偏西風が蛇行したことが原因で〜」という解説を聞くことがあります。どうして蛇行するのでしょうか?
「それは本格的に説明するとなると結構難しくなります。ただ偏西風は、なぜああいうふうに地球をぐるりと一周して吹くかっていうと、詳しく細かい話はしませんけれども、ちょうど赤道側は暖かい空気、私たちが暮らす北半球で言えば、北極のほうは冷たい空気、その境目を流れているから西から東に一周するような流れになるんです。
で、その時に蛇行するわけなんですけれども、蛇行するのは結論から言うと、地球は自転していて、それから球ですよね、球状ですよね。この両方の条件が重なると蛇行が生まれることはわかっているわけで、それがどうしてですかっていうのはちょっと難しいと思います」
●蛇行すると、どうなるんですか?
「偏西風は、南側の暖かい空気と、北側の冷たい空気との境目を流れているので、例えば日本の辺りで、冬に南のほうに蛇行したとしますよね。そうすると北側が日本に近づいてくるわけです、冷たい空気が・・・。
そういう状態がそのまますぐに移動してくれればいいんだけれども、南への蛇行が日本の辺りで居座ったりすると、北側の冷たい空気が日本に近づいてきたのと同じことになるので、非常に冷たい寒い冬が続いたりすることになるわけです。
だから気温に対しては、どこでどのくらい蛇行するのかが非常に大きな影響を与えるわけです」
式よりも言葉で伝える
※保坂さんの新しい本から、大気の循環と偏西風に絞ってお話をうかがいましたが、最後にこの本で伝えたいことをお聞かせください。
「この本はとても気象が好きなかたで、どうしても理屈を知りたいというかたに向けて書いた本なんですよね。だから、このレベルの本だと式を使って説明するのが普通なんですけれども、これは式は使わずに、全部言葉で説明してあるんですよね。
日本の教育を考えると、私の周りの大人でも物理は大っ嫌い! いつも点が悪くて! っていう人がいるんだけれども、そういう人たちに話を聞くと結構物理的なものの考え方が得意な人っていっぱいいるんですよね。
ですから、ちょっと計算間違いしたから、×(ばつ)になってひどい点を取っちゃったみたいな、そういうのは日本特有で、アメリカやヨーロッパの物理の教科書は、言葉でなぜそうなのかっていうのを説明してあるものが多いんです。
ですから、私もそれに倣って、科学は細かいことは専門家に任せておけばいいので、我々としては要するにどういうことなのかを知れば、結構物理は面白いなって再認識してほしいなという思いも、この本の中には込めています」
INFORMATION
この本では「大気の大循環」を構成する偏西風、貿易風、ブロッキング高気圧ほか、大循環に大きな影響を与えている、地球の自転によって起こる力などを解説。気象学の基礎を学べます。特に気象に興味のあるかたにおすすめです。
講談社のブルーバックス・シリーズの一冊として絶賛発売中。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎講談社 :https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000371643
◎東京大学大学院 保坂直紀:
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/people/k0001_02740.html
2023/12/31 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、日本自然保護協会NACS-Jの「道家哲平(どうけ・てっぺい)」さんです。
実は今月12月で、日本で初めて世界遺産が登録されてから30年という節目を迎えました。1993年12月11日に「屋久島」と「白神山地」が世界自然遺産に、「法隆寺地域の仏教建造物」と「姫路城」が世界文化遺産に、それぞれ登録され、日本初の世界遺産が誕生しました。
それまでは、地元の自然や文化財だったものが「世界の宝」となり、一気に知名度が高まりましたが、世界遺産については意外に知らないことも多く、また30年経って、新たな課題も生まれてきているようです。そこで、番組的に今年を締めくくる意味でも世界遺産、とりわけ、世界自然遺産を深掘りしていきます。
世界遺産条約の生みの親でもあり、諮問機関である国際自然保護連合IUCN日本委員会・事務局長の道家さんに、改めて世界自然遺産の成り立ちやその意義、そして未来に残すための課題についてお話しいただきます。
☆写真協力:(公財)日本自然保護協会
「価値」と「完全性」
※世界自然遺産のお話をうかがう前に、世界遺産の成り立ちを振り返っておきましょう。1960年代にエジプトのナイル川流域のダム建設計画が持ち上がり、完成すると「アブ・シンベル神殿」が水没するという問題が起こりました。
そこで立ち上がったのがユネスコで、この歴史的に貴重な遺跡を、人類の遺産として残していこうと、世界各国に協力を呼びかけ、これがきっかけとなり、1972年に世界遺産条約が採択されました。その条約作りで、ユネスコとともに重要な役割を果たしたのが国際自然保護連合IUCNでした。
日本は1992年に世界遺産条約を批准、現在は195カ国が加盟、そのうち168カ国に世界遺産があるとのことです。ちなみに世界遺産には、自然遺産、文化遺産、そして複合遺産の3つのタイプがあります。番組的には世界自然遺産を深掘りしていきます。
●現在、世界では何カ所、自然遺産に登録されていますか?
「世界自然遺産は現在227地域というか、227件、世界各地から登録されています」
●第1号はどこだったんですか?
「第1号は1978年に、どれをひとつとは言えないんですけれども、エクアドルのガラパゴス諸島、アメリカのイエローストーン国立公園をはじめ4つが、第1号という形で登録されました」
●日本は何カ所、登録されていますか?
「現在、世界自然遺産は5カ所になります。順番でいうと『白神山地』と『屋久島』が登録され、その後、北海道の『知床半島』、その次に『小笠原諸島』が登録されました。
そして最新のものとして『奄美大島・徳之島・沖縄東北部および西表島』、ちょっと長いんですけど、これは全部ひとつのパッケージというか、ひとつの形で登録されました」
●世界自然遺産に認定するのは、どの機関なんですか?
「世界遺産条約に定められた『世界遺産委員会』という会合が、毎年開かれています。で、その世界遺産委員会で各国から提案されてきた候補リストを、遺産として相応しい、あるいは相応しくないとか、もう少し課題があるとか、そういったことを協議する形になっています」
●その委員会がその後も(世界自然遺産を)管轄していくっていうことですか?
「そうですね。地域地域を守っていくのは、当然それぞれの国になるんですけれども、ちゃんと守られているかどうかとか、国際社会が何か手助けをしなければいけないんじゃないか、そういった監視というかチェック、それについてはこの世界遺産委員会が会議の中で行なっていくということになっています」
※世界自然遺産の認定には、どんな条件が必要なんでしょうか?
「とてもシンプルに説明すると、大きくは遺産としての価値、それには10個の基準があります。文化遺産は6、自然遺産は4。まず価値があるかどうかというのがひとつの条件になります。
自然遺産でいうと、例えば絶滅危惧種が多いような地域で、ここを守ることで世界の多様性を守れるみたいな、生物多様性の基準であるとか、地球の自然の歴史、例えば古代の恐竜の化石が見つかるとか、地球の歴史が分かる地質地形学的に大事な場所など、自然に関しては4つの基準があります。そういった自然遺産としての価値があるかどうかがひとつ目の基準。
ふたつ目の基準はちょっと難しい言葉ですが、完全性って言うんですけれども、その素晴らしい自然だったり、あるいは文化的な建造物であったり、そういったものを国としてしっかり守っていく体制ができているかどうかですね。
例えば小笠原とか、当初は外来生物という自然保護上の問題があったりするんですけども、そういう課題にしっかり対処できるような組織とか、専門家委員会がありますかとか、守れる体制があるかどうか・・・。
価値と、ちゃんと守れるかどうかの視点、このふたつを大きな基準として認定をするということになっています」
「オンリーワン」かつ「ナンバーワン」
※先ほど、日本で現在、世界自然遺産に登録されているのは屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島、奄美大島や沖縄島北部などの島を含め、全部で5カ所あるというお話がありましたが、島が多く登録されていますよね。これは何か理由があるんでしょうか?
「それを言ったら、日本は島だといういうことで・・・(笑)」
●あ~そうか・・・、そうですね。
「とはいえ、やっぱり島々は開発の手も、いわゆる本土と比べると経済発展のための様々な開発というのは少なかったということもあって、自然が豊かに残されてきました。
その自然をうまく使っている人の文化が、暮らしもあったというところで、豊かな生態系が残されてきた、価値もありながら、守る体制も比較的作りやすいという部分がひとつポイントじゃないかなというふうには思います」
●日本には、こういう場所がありますよ! っていうような候補は、誰が出しているんですか?
「候補は国の中で、環境省とそれから文部科学省ですね。その両者から自然遺産に関しては、どんな地域を推薦することができるだろうか、そんな検討会が確か2003年に行なわれて、そしてその時の委員会で、その時は知床はまだだったんですが、知床と小笠原そして奄美・沖縄の4カ所、これは候補になるんじゃないかという形であがり、それが順次、やっと登録が終わったという状態です」
●毎年候補を出すとかではないってことですか?
「そうですね。世界遺産としての価値を丁寧に説明する、それから守っていける体制があることを丁寧に説明する、いろんな準備を考えると毎年毎年、推薦をするということではありません。世界遺産は比喩で言えば、オンリーワンかつナンバーワンって言うんでしょうか。最も素晴らしく世界にここにしかなく、そして世界基準というか世界標準・最高水準で守られている場所、この両者が必要ということで、候補としては絞られていく形になります」
富士山は世界文化遺産!?
※確か以前、富士山も世界自然遺産の候補にあがったと思いますが、登録されなかったんですよね。自然遺産に登録されなかったのは、なぜなんでしょう?
「2003年の世界遺産候補地検討会議でもあがりましたが、やはりかなり(標高の)高いところまで開発というか道路とか、観光用のいろんなインフラができてしまったっていうこともあり、自然遺産として提案するのにはちょっと厳しいのではないかということでした。
一方で、富士山をも含めた文化的な人々の営みということで、文化遺産としては登録を目指すことになったという形ですね」
●なるほど、自然遺産ではなく文化遺産ということだったんですね。世界自然遺産に登録されるっていうことは、そのエリアの自然を保護していく義務が生じてくるわけですよね?
「そうですね。世界遺産に登録する際には、例えばこの場所は国立公園ですよとか、そういうのはちゃんと国として法律上の網掛けって言うんですか、守る体制を敷かないと登録は目指せませんので、守ることが先で、守った先に登録があるっていうのが正しい順番なんですね。
国としてそのエリアの自然を、日本の宝じゃなくて『世界の宝』として守っていくっていう義務が生じることにはなります」
●登録された後にちゃんと自然が保護されているかどうか、定期的な調査が入ったりするんですか?
「はい、数年に一度評価というのを行なうことがあります。自然遺産に関しては登録の審査書を検討する段階から、国際自然保護連合 IUCNの専門家のチームが、それぞれの生態系ごとに専門家を集めます。そして登録に際して、あるいは登録された後に、守られているかどうかの評価をして、世界遺産委員会に今こんな状態ですよというのをご報告する、そういう仕事を自然遺産に関してIUCNが、文化遺産に関しては、ICOMOS(イコモス)という別の組織が行なっています」
●これまでに世界自然遺産の登録が取り消されたケースはあったんですか?
「残念ながら存在します」
●それは、どんな理由で取り消されてしまったんですか?
「世界遺産の登録が取り消された事例としては、今まで3件あります。ふたつは文化遺産になるんですけれども『ドレスデン・エルベ渓谷』というドイツにある渓谷、それからイギリスにある海商都市『リヴァプール』、自然遺産に関しては、アラビアオリックスという野生動物絶滅危惧種の、その保護区が取り消されることになりました。
アラビアオリックスの保護区は油田開発の事業で、油田のパイプラインを通さなきゃいけないということで、何回かの警告というか、このままでは世界遺産から外さなきゃいけなくなりますよと、いろいろ対話はしたんですけれども、開発事業のほうが優先されて、結果取り消されるということが起こりました」
IUCNの「世界遺産戦略」
※1951年に発足したNACS-Jは、日本の自然保護に関して、非常に重要な役割を果たしてきたNGOで、70年を超える活動の中で、世界遺産条約の批准を後押しするなど、NACS-Jなくして、日本に世界自然遺産は生まれなかったといっても過言ではありません。
道家さんはNACS-Jの活動のほかに、「国際自然保護連合IUCN日本委員会」の事務局長としても活躍されています。具体的には、どんなことをされているんですか?
「私自身は世界遺産条約ではなくて、生物多様性条約という別の国際条約の専門家として15年、国際会議に出続けたりとか・・・。またIUCNは、世界遺産に限らず絶滅の恐れのあるリスト、レッドリストを編纂して自然の危機的な状況をお伝えしたりしています。
で、私はIUCN日本委員会の事務局長として、世界の動きを日本に伝えていく、場合によっては日本の動きを世界に伝えていく、そういう翻訳者みたいな仕事をしています」
●IUCNが2023年9月に『世界遺産戦略』という文書を発表されたということですけれども、この発表した経緯とその内容を分かりやすく説明していただけますか?
「IUCNは世界遺産条約の設立50周年、今年は日本が自然遺産に登録されて30周年なんですけれども、条約そのものとしては昨年50周年を迎えました。IUCNはその50年、半世紀経って、この自然遺産を改めて見直した時に次の50年、自然遺産をどういうふうに私たち人類は守り、つなげていくべきか、そういったことを考えてこの『世界遺産戦略』というものを作りました。
その内容のポイントとしては、今までの世界遺産は比較的国が守る。線を引いて、そこは開発禁止ですよとか、場合によっては立ち入ってはいけませんよとか、そういうことをやってきたわけですけれども、これからの世界遺産はもっともっと共同で守っていく必要がある。
研究者とか地域の自治体の人とか、その地域の周辺で暮らしているかたがたとか、観光に関わる協会のかた、自然保護だけじゃなく、多くの人で共同で守っていく。そのためには何が必要か、どこに力を入れていくべきか、そういったことをひとつ戦略として打ち出しています。
また国際協力もとても大事な方向として打ち出しました。先ほど条約加盟国が195カ国あると・・・ただ世界遺産登録がされているのは168カ国と、ギャップがあるというお話をしました。途上国の中には、やはり専門家がいらっしゃらないとか、国際条約のプロセスに慣れていないとか、大事な自然を持っているにもかかわらず、守る術、守る能力、技術資金がないというところがあります。
世界の力を使って協力、力を合わせて、国を越えた協力・共同、そういったものを進めていくことも 次の50年の柱として大事じゃないか、そういったことを打ち出しました」
「地球の教科書作り」
※1993年に日本で初めて、世界自然遺産が登録されてから30年が経ちました。今後の課題として、どんなことがあげられますか?
「IUCNのかたといろいろと相談をしたことがあります。日本の世界自然遺産の管理の状況ですね。もちろん課題は外来種問題だとかオーヴァーツーリズム、たくさん観光客が来すぎてしまうというのをどううまく管理するかとか、課題はあるものの、比較的管理する体制はできていますねという評価にはなっています。
ただ大きい方向性として気候変動という影響ですね。日本の自然も少しずつ影響を受け始めているので、気候変動がもたらすような自然の危機、その対策がひとつと・・・・。
そして日本は高齢化社会でもありますので、自然を守る人々が今までは比較的ボランティアのかたの活躍によって守られたところもあるんですけれども、ある意味プロフェッショナルとして、高齢化という大変な状況ではありますけれども、自然を守る人材をどう育てていくか、あるいは守っている人に職業として、プロフェッショナルとして、どう守っていくか・・・。
この人の問題と気候変動という大きなふたつの課題は、日本としても常に長い目で見て、対処・対策していかなきゃいけないと思います」
●世界自然遺産は観光資源という側面もあると思うんですけど、私たち自身が観光で世界自然遺産のエリアに行く時に、どんなことを大事にしたらよろしいですか?
「世界遺産条約はある意味、人類や地球の教科書作りをしている条約と言えます。どんな歴史の中で、今のような自然が生まれたか、どんな人の歴史の中で素晴らしいものが生まれたか、ここにしかないもの、そういったものを学ぶということがあります。
ですので、ぜひ観光とか、そういう時であれば、ほかの地域がそうとは言わないんですけど、じっくり観光していただくと学びとか、質の良い観光で・・・その質の良さはもちろんガイドさんの質の良さというのもあるかも知れません。
また自分たちがその地域の中で落としたお金、それが自然保護にそのまま回っていくような、いわゆるエコツーリズムって言ったりしますけど、学びもしつつ、そこの地域でお土産を買うとか、ガイドさんにお金を払うとか、そういった形の経済が自然を守るほうにつながる、そういう良い質の観光を、特に世界自然遺産では体験していただきたいと思います。
1日だけの弾丸ツアーとかそういうことではなくて、ぜひぜひじっくり、宿泊をしたり、美味しいものを食べたり、いろいろしながら(旅や観光を)するという贅沢を、世界一の贅沢をじっくり味わうという思いで、観光していくのが大事なんじゃないかなと思います」
(編集部注:道家さんに今後、日本で自然遺産も含めて、世界遺産の候補になるようなエリアはあるのか、お聞きしたら、個人的には例えば、棚田のような人と自然のかかわりの中で生まれた場所など、もっともっとあるのではないかとおっしゃっていました)
INFORMATION
NACS-Jが世界自然遺産に果たしてきた役割など含め、日本の自然や生物を守るために、どんな活動をしているのか、ぜひオフィシャルサイトをご覧ください。
日本自然保護協会NACS-Jでは支援してくださる会員を随時募集しています。年会費は5,000円、会員になると年6回、会報誌「自然保護」が届くなどの特典もありますよ。詳しくはオフィシャルサイトを見てください。
◎日本自然保護協会NACS-J :https://www.nacsj.or.jp
国際自然保護連合IUCN日本委員会のサイトもぜひチェックしてくださいね。
◎国際自然保護連合IUCN :https://www.iucn.jp
2023/12/24 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンのゲストは、お花屋さん、そして漫画家としても活躍されている「花福こざる」さんです。
花福さんはご主人とふたりで、東京都太田区でお花屋さん「花福」を営みながら、漫画家としても活躍されています。
もともと会社員だった花福さんは、ご本人いわく、近所にお花屋さんができて、そこに通っているうちに結婚することに・・・。そして、なんとなく漫画家にもなったということですが・・・「花福日記」というブログを拝見すると、花や昆虫、鳥の話もよく出てくるので、もともと植物や生き物がお好きだったんだと思います。
また、お花のことも好きで調べていくうちに、お花屋さんとしての知識も身につけたそうです。そして先頃、新しい本『木を育ててみたいのですが。〜鉢植えで気軽にはじめられます』を出されました。
きょうはそんな花福さんに、クリスマスツリーの手入れ方法や、鉢植えで育てるおすすめの木のお話などうかがいます。
☆写真素材:PIXTA
「コニファー」は根気?
※きょうはクリスマス・イヴということで、お部屋にクリスマス・ツリーとして「*コニファー」と呼ばれる、小さめの常緑針葉樹を飾っているかたもいらっしゃると思います。この先もクリスマス・ツリーとして活用するために、お手入れとか、どうすればいいでしょうか。
(*コニファーとは、常緑針葉樹の総称)
「コニファーは、外に出しましょうっていうのが、いちばん大事ですね。寒いところの木なんで、外が好きなんですよ。で、蒸れやすいので、風通しのいいところになるべく置きましょう。あとは夏が苦手なんで、なるべく夏は涼しいところでって感じですかね。コニファーはちょっと難しいところもあるので頑張りましょう(笑)」
●じゃあ根気が必要ですね?
「まめに見てあげるって感じです」
●水やりとか、どんな世話をしたらよろしいですか?
「水やりは基本的に乾いたら、あげるって感じです。夏パリパリになりやすいんで、35度以上とかの時は朝と夕方にちょっと見て、2回(水を)あげたほうがいいかもしれないです。猛暑の時がいちばん枯れやすいですね」
●なるほど。ところで、生花を長持ちさせるコツがあったら、ぜひ教えていただきたいんですけど・・・。
「やっぱり水を毎日変えましょうっていうのと、あと花瓶を洗うのと、茎のヌルヌルしているところ、そこを洗ってほしいです」
●ヌルヌルを取る?
「ヌルヌルを取って、ちょっと切り戻す」
●斜めに切るんでしたよね?
「そうですね。よく水切りしましょうって、ものの本に書いてあるんですけど・・・」
●真似しながらやっています。
「割と空切りでも大丈夫(笑)。やる気があったら水切りがいいと思うんですけど、めんどくさかったら、そのまま切ってすぐ戻しとけば大丈夫ですね」
●そうなんですね! なるほど〜。
「それよりは、ちゃんと水を変えるっていうのが大事ですね」
●で、変えるだけじゃなくて、ちゃんと花瓶も・・・。
「花瓶も洗いましょう」
ベランダで「サクラ」!?
※木を育てると聞くと、どんどん大きくなってしまうんじゃないかと思ったんですが、そんなことはないですか?
「結構小っちゃい木もいっぱいあるので、探すと割と小型の、20センチ、30センチくらいのやつってあるので、いろいろ選べると思います」
●そうなんですね。初心者の私でもベランダで育てられる、できればそんなに手をかけなくても育つ木がいいんですけど、おすすめの木はありますか? 広いお庭とかじゃなくて、マンションのベランダでできるような、おすすめの木があれば、教えていただきたいんですけど・・・。
「逆にどれがいいな〜とかっていうのはありますか?」
●私は花福さんの本を読んでいて、ミモザとかサクラとかブルーベリーがいいな〜って、育ててみたいな〜って思ったんですけど・・・。
「ミモザは結構大きく、しかもかなり短期間に巨木になるので・・・」
●うちのベランダではちょっと無理かな〜(笑)。
「鉢植えでも大丈夫なんですけど、結構大きくなりますっていうのが・・・」
●パーっと黄色いお花が素敵なんですけどね〜。
「そうなんですよ。でもサクラのほうが鉢植えだったら育てやすいと思います」
●お花屋さんでもよく売っていますけど、実際におうちでも鉢植えで育てられるんですね。
「うちも(サクラを)育てていますけど、夏にちょっと弱いので、暑すぎる時は日陰に避難みたいな感じのほうがいいです」
●お世話はどんなふうにしたらいいですか?
「やっぱり基本的に乾いたら水をやるっていうのと、普段は日当たりのいいところで育てると花付きがいいんですけど、とにかく夏の西日は避けましょう。夏は東側とか午後から日陰に置いてあげたりとかして、なんとか涼しく過ごしてもらってって感じですね」
●場所を移動させながらっていうことですね。ブルーベリーはどうですか?
「ブルーベリーは2本ないと受粉しない、異品種の受粉なので、2本ないとダメだで場所を結構取るので・・・」
●1本だけだと実がならないってことですか?
「ならないんですよね。最近なるのもあるんですけど、やっぱり2種類あったほうが(実の)なりがいいので、そうするとやっぱり置く場所が2本分いりますね。あと結構広がる樹形なので、スペースを取りますけど、大丈夫ですか、みたいな・・・」
●じゃあ却下です〜。もうちょっと広いおうちに引っ越してから(笑)。
「サクラは盆栽とかもあるので、いいかもしれないですね」
●なるほど〜。
おすすめは「オタフクナンテン」
※ほかにおすすめの木はありますか?
「私的には『オタフクナンテン』とか、すごくおすすめなんですけど・・・」
●オタフクナンテン・・・?
「えっと、ナンテンの・・・ナンテンはわかります?」
●ナンテンって・・・?
「お正月とかに赤い実がなっているやつなんですけど、あれの仲間で、実はならなくて、ちっちゃいやつがあるんですよ、オタフクナンテンって」
●今(本に載っている)写真を見せていただいたんですけど、真っ赤に紅葉していて葉っぱが綺麗ですね〜。
「あまり巨大化しなくて、そんなに剪定しなくていいので、育てるのはすっごく楽なんですけど、花は小っちゃい地味なのしか咲かないんで、そこがつまんないかもしれないんですね。でも(育てる)楽さを取るなら、オタフクナンテンっていう感じですかね」
●しかもこんなに真っ赤に綺麗に色づくんですね! 冬場に!?
「なります! なります! 冬場に赤くなりますね」
●夏場とか、冬以外は緑なんですか?
「緑です! 年間を通して葉色の変化があるので、それを見て楽しむっていう感じです」
●色がどんどん変わるんですね。面白いですね〜。
「変わりますね〜。結構ビルの植栽とかに地味に植わっているんですよ」
●そうですか〜。
「見ているとあります」
●意外と近くにいるかもしれないですね。
「いるかもしれないです」
●育てやすいということですか?
「育てやすいです。あと花を見たい場合は『アザレア』とか・・・」
●アザレア!? 「アザレア、ツツジの園芸種なんですけど、花がすごく派手でふりふりしていてかわいいんですよ」
●本当ですね。華やかですね〜、ひらひら〜っとしていて華やか〜。
「あまり大きくないので育てやすいですね」
●これ、いいですね〜、とっても華やかですね。
「寒さにやや弱いんですけど、関東の東京とか千葉だったら全然問題ないので、まあ、冬は軒下に入れるぐらい・・・あとは普通に日当たりのいいところに置いとくと、よく咲きます。3月から5月くらいに咲きます」
●白、ピンク、赤といろんな色があるんですね?
「花色とか形もいろいろあるので、選ぶのが楽しいです」
●いいですね〜。
「コンシンネ」がピンチ!?
●私、家で「コンシンネ」って、ツンツンした葉っぱの、あの木を育てているんですけど、もう枯れていく一方なんです。どうしたらいいんでしょう?
「コンシンネは、葉がすっごく落ちやすいので・・・」
●落ちます・・・。
「落ちますよね〜」
●どんどん葉が落ちて、なんか薄くなってきて、どうしたらいいんでしょう?
「暗いと特に落ちやすいんで、まず明るいところに移動してほしいですね。どうですか?」
●日当たりが、いちばんいいところには置いていないです。
「日当たりのいいほうに寄せてあげるといいかもしれないです」
●水もすごくこまめにあげているんですけど・・・。
「水は室内のやつって、そんなにあげなくても大丈夫なんです」
●あっ!(水を)あげ過ぎているんですかね?
「多分週一ぐらいで大丈夫だと思うんです。真夏は3日に一回とかかな・・・これからの季節は週一回ぐらいでいいので、そんなにジャブジャブあげなくて大丈夫です」
●溢れるぐらいには、いつもあげるようにはしているんですけど・・・。
「溢れたら水は捨ててくださいね!」
●そうですね、そうですね。じゃあ場所か・・・。
「場所ですね」
●でも葉っぱは落ちるものなんですね、コンシンネは・・・。
「多分、小尾さんの家の環境に慣れようと、今頑張っていると思うんですね。だいたい3年くらいかかるので、場所に慣れるのに・・・」
●そうですか〜。まだちょうど1年くらいなので・・・。
「最初は 生産者のいいところにいるじゃないですか。日当たりが適度であったかくて、そこからお客さんの家に行くと環境がガラッと変わるんで、結構葉とか落ちやすいんですよね。だからちょっと様子を見てあげよう! みたいな・・・」
●これでおしまいじゃなくて、ここからまた生えてくるものですか?
「生えると思いますよ。ドラセナ系って全部(葉が)落ちても、春に芽が出てきたりするので、幹がしおしおになって、しわが寄ってなければ大丈夫です」
●わかりました! ちょっとチェックしてみます。
「ちゃんと固い幹だったら大丈夫です」
●やわらかい幹だったらどうしたらいいんですか? そこから固くなることはありますか?
「いやないです。なっちゃうとダメなんで、ちょっと触ってみて、しっかりしているかどうか見てみてください」
●わかりました。やわらかいかもな〜どうだろう・・・きょうすぐ確認します。
「でも切り戻すと下から出てきたりするんで、そんなに諦めなくても大丈夫です!」
●うちに来てほしい! 花福さん! やってもらいたい〜(笑)。
「コンシンネ、結構ね〜葉っぱは、落ちるって言われますよ」
毎日、何回も見てあげよう
※鉢植えの木と、上手に長く付き合うには、やはりどれだけ手をかけてあげられるかだと思うんですけど、最低限これだけやっておけばいい、ということはありますか?
「そもそもめんどくさいもんだっていうのは前提で、毎日、何回も見てあげるのがいちばん大事かな、そんな感じですね」
●植え替えとかは?
「植え替えはやっぱり時期があるので、基本的にこれから伸びるぞ〜っていう時期のほうがいいので、そういう時にやってほしいですね、って言いつつ・・・私は仕事柄1年中植え替えとかしていて、割と平気だったりするんですけど、オフィシャルでは春にしましょうみたいに言っています(笑)。意外と平気ですよ」
●水やりは大事だって聞きますけど、冬はそんなにやらなくも大丈夫ですか?
「ものにもよるんですけど、観葉植物はそんなにジャブジャブやんなくて大丈夫です。 ただ外出しのやつは乾燥するんで、その辺は塩梅を見てみたいな感じで・・・」
●なるほど〜。寒さ対策のコツとかってありますか?
「やっぱり家の中に入れて、家の中の、風通しが悪いと”ハダニ”とか、べたべたしたりとか、虫が付きやすいんで、風通しと、なるべく明るいところですね」
●日当たりのいい窓辺とか・・・?
「窓辺もよし悪しで、観葉(植物)だと、強い光が好きじゃないのもいるので、窓からちょっと離した明るいところみたいな・・・結構邪魔なんですけどね(笑)悩ましい問題なんです。場所はおうちのいろいろなところに置いてみて、調子が良さそうなところを探っていくっていうか、見つけていくといいと思います」
●部屋の中でいろんな場所に置いてみて、様子を見るということですね。
「うちも窓Aと窓Bがあって、Bに置くと絶対にダメっていうところがあるんですよ。置く場所がなくて、仕方なく置いていたりするんですけど、時々入れ替えたりとかしていて・・・」
●この放送を聴いて、鉢植えで木を育ててみたいって思ったリスナーさんにアドバイスがあれば、ぜひお願いします。
「ぜひチャレンジしてみてください。長い目で見てほしいです。3年ぐらいやってみると、だんだん付き合い方がわかってくるんで、最初の1〜2年は多分あんまりお互いによくわかんないと思うんで、長い意味で育ててほしいです」
INFORMATION
『木を育ててみたいのですが。〜鉢植えで気軽にはじめられます』
葉っぱを楽しむ木、お花を楽しむ木、そして実を楽しむ木と、3つのカテゴリーにわけて、漫画と写真で楽しく解説。お花屋さんが教えてくれるコツや技をぜひ参考になさって、鉢植えの木を育ててみませんか。家の光協会から絶賛発売中です。詳しくは出版社のサイトをご覧ください。
◎家の光協会 :https://www.ienohikari.net/book/9784259567712
4コマ漫画も楽しめるブログ「花福日記」
2023/12/17 UP!
今週の「ザ・フリントストーン」はスペシャル・ヴァージョン! 日曜朝の番組「サンデー・ステッパー」との特別コラボ企画をお届けします。
テーマは、キャンプ・ビギナーのための「お手軽! 日帰り! アーバンキャンプ&焚き火料理体験!」ということで、先日「サンデー・ステッパー」のパーソナリティ「菖蒲理乃(しょうぶ・あやの)」さんと一緒に取材に行ってきました。
私たちがロケ先に選んだのは、ベイエフエムのスタジオがある海浜幕張のすぐお隣り、イオンモール幕張新都心の目の前、豊砂公園内にある「BBQ&CAMP THE B’NC(ザ・バンク)」。その名の通り、バーベキューとキャンプ体験がお手軽にできる、まさに今回のテーマにぴったりの施設なんです。
そんな「BBQ&CAMP THE B’NC」で、アウトドアが大好きな菖蒲さんのアドバイスもいただきながら、楽しく美味しく、デイキャンプと焚き火料理を体験してきました。きょうは、その模様をたっぷりお届けします。
初心者でも簡単設営! ワンポール・テント
●きょうは「サンデー・ステッパー」との特別コラボ企画ということで、アクティヴなアウトドア・ガール、菖蒲理乃さんとお送りしていきます。菖蒲さん、よろしくお願いいたします!
菖蒲「はい、よろしくお願いいたします」
●ビギナーの私にいろいろ教えてください。
菖蒲「キャンプ・デビューということで、その魅力を味わっていただけたらなと思います」
●お願いします!私たちは今イオンモール幕張新都心「BBQ&CAMP THE B’NC」に来ています。幕張豊砂駅から徒歩5分、すぐそばには海浜幕張のビル群が見えるんですけれども、ここはすごく開放的な芝生の広場ですね。子供たちもすごく楽しそうに走り回っています。
そしてきょう、いろいろとご指導いただくかたをご紹介したいと思います。「BBQ&CAMP THE B’NC」を運営されています「SEASIDE CREATIONS」の「三浦菜々歌(みうら・ななか)」さんです。三浦さん、よろしくお願いいたします〜!
三浦「よろしくお願いいたします」
●きょうはこちらで、デイキャンプと焚き火ラウンジを体験させていただけるということなんですが、まずは何から始めましょうか?
三浦「そうですね。そうしたらキャンプということで、いちばん最初にテントを建てていきます。きょう使うテントは、今トレンドの『ワンポール・テント』になるんですけれども、ポイントとしては建てやすいところです。ひとりでも建てられますし、初心者のかたでも簡単に建てられるテントになっています」
●へ〜〜! 菖蒲さんは、ワンポール・テントを建てたことはありますか?
菖蒲「ワンポール・テントは一度使ったことがあるかな〜。でも自分が持っているテントは違うタイプなので、私も教わりながらになるかもしれない・・・(苦笑)。でも建った時の見た目が結構可愛いですよね」
三浦「そうですね。可愛いです」
●どうやって建てたらいいんでしょう?
三浦「私は、たまにサポートにも入らせていただくんですけれども、小尾さんと菖蒲さんメインでぜひ建てていただきたいと思います」
●あっ、マニュアルがあるんですね!
菖蒲「わかりやすい!」
三浦「はい、マニュアルをご用意しているので、建てている時にわからないことがあれば、QRコードから建てている動画を見たりもできます」
●へ〜〜すごい!このマニュアルにもちゃんと写真付きでわかりやすく載っていますけど、動画でも見られるっていうのはいいですね。では早速、建ててみましょうか。お願いします〜!
*「BBQ&CAMP THE B’NC」の三浦さんにアドバイスをいただきながら、菖蒲さんと一緒に建てることになった「ワンポール・テント」は六角形のテントで、大小2本のポールとロープ、そしてペグだけで建てられる優れもの。
テント本体を地面に広げ、対角線上にペグを打ち、固定したら、テント内に2メートルくらいの長さの、太めのポールを持ち込んで天井のトップに差し込むような感じで立てたら、ほぼ出来上がりだったんです。そして、仕上がり具合を三浦さんにチェックしていただきました。
大きいテントが簡単に、快適に
三浦「最後にこの入口から中を覗いてみて、ポールが斜めになっていないかも確認して・・・大丈夫そうなので、これで完成になります」
●おお〜っ! あっという間に完成です。
菖蒲「あっという間でしたね!」
●ワンポール・テント、建ちました! すごい〜!
菖蒲「どうでした? 思ったより・・・?」
●はい、こんなに簡単に、こんなに大きなテントが建っちゃうんですね。
菖蒲「本当に、あっという間でしたね」
●そうですね。15分くらいかな・・・あっという間に建ちました〜。
菖蒲「慣れたら、ひとりでも建てることはできますか?」
三浦「はい、ひとりでも十分、余裕で建てられると思います」
●かなり天井も高いですし、なんか秘密基地ができた感じがしてワクワクします! わーい、完成です!
三浦「中に入ってみますか?」
●入りましょうか。(中に入り)わ〜〜広いですね!
菖蒲「本当に広い! やっぱりロープをピーンと張ったから、快適ですよ」
●私、身長158センチですけど、ジャンプしても全然届かないくらい天井が高いです。すごい!
菖蒲「本当にさっきまで、何もなかった広場にぽつんとテントが建つだけで、全然快適さが違いますよね。風も凌げるし、暖かいですよね」
●はい〜! うわー楽しいです!
火花を散らして、火起こし体験!
●テントに続いて、焚き火ラウンジ体験ということですけれども、三浦さん、まず何から始めたらいいですか?
三浦「はい、最初に火起こしからやっていきます」
●火起こしってどうやってやるんですか?
「火起こしの方法はいろいろあるんですけれども、当店の焚き火ラウンジでは着火剤やチャッカマンを使わずに火起こしを行ないます」
菖蒲「え〜っ! 私はいつも使っちゃっていたので、なしでどうやってやるんでしょう?」
三浦「麻紐(あさひも)とかファイヤースターターっていうのを使って、火花を散らして火起こしをします」
●それって初心者でもできるんですか?
三浦「はい、お客様も初心者のかたがすごく多いので、簡単ではないんですけれども(苦笑)、初心者のかたでも挑戦していただいています」
菖蒲「小尾さん、火起こしも初めて?」
●初めてです!
菖蒲「焚き火も?」
●焚き火自体はあるんですけど・・・でも嬉しいです。こんな火起こしできる体験なんて、なかなかできないですよね。
三浦「(当店では)いろいろな体験があるんですけれども、焚き火ラウンジの中では、いちばん火起こしがお客様の満足度も高かったりとか、楽しんでいただけているコンテンツのひとつですね」
菖蒲「寒くなってきたこの季節、より焚き火ってありがたみが大きいですから、頑張って火起こししますか」
●しましょう! では三浦さん、まず何から始めたらいいでしょう?
三浦「はい、薪の種類がふたつありまして、この細いほうが針葉樹の薪になります。下にあるのが広葉樹の薪で、このラミネートに書いてある通りなんです」
●あっ、マニュアルが焚き火ラウンジにもあるんですね。
三浦「はい、この針葉樹のほうは中がスカスカで、持ってみるとわかるんですけれども、結構軽い薪になっています」
●本当ですね。すごく軽いです。
菖蒲「針葉樹ってスギとか?」
三浦「そうですね。スギとかヒノキとか、そういった木になります。で、反対に広葉樹のほうは木目が針葉樹に比べて詰まっています」
菖蒲「確かに、全然違いますね」
三浦「その分、持ってすごく重みのある薪ですね」
●本当だ。ずっしりしますね。
三浦「広葉樹のほうは火がつきにくく、その分、長い時間ゆっくり燃焼していくんですね。火がつきにくい特徴があるので、最初に火がつきやすい針葉樹に火をつけて、それを徐々に広葉樹に移していくっていう流れになります」
菖蒲「小さい火を段々と大きくしていくっていうようなイメージですよね」
三浦「そうです。この針葉樹でも、ご用意しているくらいのこの太さだと、なかなか火をつけにくいので、針葉樹をもっと細くして、フェザースティックっていうものを作ります」
●フェザースティックって何ですか?
三浦「ナイフを使って、薪を鳥の羽のように削っていく感じですね」
●細くしていくってことですね。ひらひらひら〜みたいな感じで・・・。
三浦「それで、そのまわりに解いた麻紐を巻き付けて、そこにファイヤースターターで火花を散らして着火します」
菖蒲「確かによく燃えそうですね」
三浦「よく燃えます」
菖蒲「やってみますか!」
*ナイフを使ってフェザースティックと、焚きつけように、割り箸ほどの細い薪を用意したあと、火口(ほくち)にするために,麻紐をほどいて毛玉を作り、フェザースティックに巻きつけました。そして、いよいよ着火の作業です。
やっと火がついたと思ったら・・・(汗)
三浦「このファイヤースターターは火花を散らすものなんですね。マグネシウムの塊が先に付いているので、これを削って・・・」
●なんか(見た目が)鍵みたいな感じですけど・・・。
菖蒲「あっ、カチッてなった!」
三浦「そうです。こうやると火花が散ります」
●擦るだけでこんなになるんですね。すごい!
菖蒲「ライターとかマッチとかで簡単に(火が)つくところを、あえてファイヤースターターで、っていうのが、より喜びも大きいですよね」
●そうですね〜。チャッカマンで簡単に、っていうんじゃなくてね。いいですね〜、こうやって一生懸命やるのは気持ちいいです。
菖蒲「キャンプってそういうところですよね。家だとガスコンロのボタンを押せば(火が)つくけど、手間をかけるからこそ、喜びがひとしお」
三浦「よいしょ・・・」
(*交代しながらファイアースターターで火花を散らす作業を続ける)
●火花は出るのに(火がつかないのは)何でだ〜?
菖蒲「ね〜、もどかしいですね。ついたら絶対、絶やしたくないですね」
●あ〜〜きた、きたー! ついたー!
菖蒲「きたー! すごーい!」
三浦「細い薪を(炎の)中心にお願いします! できるだけ動かさないように、どれかに燃え移るのを待ちます」
菖蒲「どうだ〜!? 繋がるか!?」
●この微かな火をどんどんつなげていくわけですね。頑張れ〜。
三浦「大きくなってきましたね」
菖蒲「なってきました! えーっ、すごい!」
●ついた!? どんどん広がっていきますよ! みんなで火起こしをするって、すごく絆が深まりそうですね。なんか一体感が出ますね。
菖蒲さ「そうですね(笑)」
●おお〜、どんどんいろんな針葉樹に火が移ってきました!
三浦「真ん中の火を絶やさないように!」
●真ん中が消えちゃったら、おしまいですよね。
三浦「そうですね。あっ、あれっ・・・!?」
●あれっ? 消えた!? なんで・・・? 消えちゃった〜!
菖蒲「こういうこともあるんですね(苦笑)」
三浦「そうなんです。こういうこともあるんです」
*やっと火がついたと思ったら、こんなことになって、がっかりしましたが、気を取り直し、ファイアースターターを使って、何度も何度も火花を飛ばし、火起こしに再チャレンジしました。
●あっ、火がだんだん大きくなってきましたよ!
菖蒲「なんか焚き火の匂いもしてきましたね」
●ね〜! 暖かくなってきました! あっ、火がだんだんいろんな針葉樹に広がってきました。
菖蒲「おお〜〜今回は、いけそう!」
●今回は、いけたんじゃないですか〜?
菖蒲「どうですか。三浦さん、まだ油断なりませんか?」
三浦「そうですね。さっき消えちゃったので、ちょっと心配ですね」
●これは次、どうしたらいいですか?
三浦「もう少ししっかり(火が)大きくなったら、広葉樹を少しずつ足していきます。この針葉樹はすぐ燃えてなくなってしまうので、広葉樹に火が移ってからが成功になります。(広葉樹を)一本入れていきましょう」
●今、針葉樹から広葉樹に火が移りました! おお〜っ、どんどん火が大きくなります!
菖蒲「感無量ですね」
●いや〜、本当に!
菖蒲「あれだけ苦労したからこその! あ〜〜すごく煙が・・・どんどん立ってきた〜」
●いや〜なんか感動しますね。うわ〜火だ〜! 嬉しい〜(笑)
三浦「一気に暖かいですね」
菖蒲「心も体も温まりますね。(火を)見ているだけで安心するわ」
●もうこれは完全に成功ですよね・・・。ここまで火が広がっていればね。
三浦「はい、大成功です!」
●うわ〜〜〜嬉しいやったー!
菖蒲「しっかり広葉樹にも(火が)移って、うわ〜綺麗ですね」
●みんなで頑張って起こした火ですよね、嬉しい〜!
三浦「あとはもう火が途絶えないように薪を足していくっていうところです。このあとは実際に今起こした焚き火を使ってフリータイム、炎を見て癒されながら、キャンプ飯にも挑戦していただきます」
菖蒲「おお〜っ!」
●やった〜!
三浦「きょうご用意しているメニューは、チーズタッカルビ、サーロインステーキ、焼き野菜、コムタンスープ、白ごはん、最後にマシュマロを焼いていただきます」
●豪華!(笑)
菖蒲「盛りだくさん!」
三浦「今回のテーマが韓国風キャンプ飯になっているので、ちょっと韓国料理をイメージしたキャンプ飯をご用意しています」
●楽しみ〜!
菖蒲「楽しみです!」
焚き火でチーズタッカルビ!
※菖蒲さんと一生懸命、火を起こしたあとは、お待ちかねの焚き火料理キャンプ飯! キャンプのお楽しみを知り尽くしたメニューになっています。
お肉やお野菜などの食材は全部、クーラーボックスに入っていて、調理用の道具も、お皿やお箸なども全部セット! あとはお客さんが自分たちで思い思いに調理をして食べるだけ。まさに手ぶらで楽しめる、至れり尽くせりのサービスになっているんです。
今回は特別に「BBQ&CAMP THE B’NC」の三浦奈々歌さんにも手伝っていただき、まずは、いまキャンプで大人気の鉄板「マルチグリドルパン」でサーロインステーキを焼きました。ジュージューと焼き上がっていくうちに、食欲をそそるお肉の匂いが〜〜〜、さっそく実食〜!
●さあ、サーロインステーキが焼きあがりました~。
菖蒲「めちゃくちゃいい匂いしますね! ソースかけちゃいます?」
●かけましょう、かけましょう!
菖蒲「うわ〜美味しそう!」
●自分たちで火を起こして、その火で焼いたお肉です! 嬉しい! 早速いただきましょう!
菖蒲「召し上がってください!」
●う~ん! 美味しい〜〜!
菖蒲「(笑)達成感もあって・・・私もいただきます!」
●はぁ~幸せです! 美味しい、肉々しくて! もうー最高ですね~。
菖蒲「美味しい~。やっぱり焚き火で焼くと香ばしさというか、より肉の旨みがダイレクトにきますよね!
●そうですね! 香りも普段よりいい気がします。
菖蒲「だって見渡してくださいよ! この屋外で!」
●気持ちいいですね!
三浦「もうチーズタッカルビにいっちゃって大丈夫ですか?」
菖蒲「はい!」
●はい!
菖蒲「お〜〜美味しそう!」
●さあ、チーズタッカルビができあがりました!
菖蒲「見た目も華やかですね!」
●ね~。これ、いいですね~!
菖蒲「真ん中にチーズがあって、フォンデュして食べるような感じですか?」
●そうですね。まわりにお肉と野菜があります。
菖蒲「チーズタッカルビ自体、私は初めて食べます」
●そうなんですね。じゃあぜひぜひ!
菖蒲「キャンプでこんなに手軽に作れるんだ〜」
●私もお店でしか食べたことないですけど・・・。
菖蒲「いいですか? いただきます!」
●もうしっかりと、あらかじめ味付けがされているので!
菖蒲「うわっ! こんなにチーズが伸びる! すごーい! これ楽しい!」
●トロトロですね~! いただきます~。
菖蒲「いただきます!」
●う〜ん、美味しい~(拍手)もう拍手が出ちゃった! 美味しい!
菖蒲「美味しい! めちゃくちゃ美味しい! このチーズがすごくクリーミー、めっちゃ美味しいですね!」
●トロトロですね~。いや〜美味しい!
菖蒲「キャベツも玉ねぎも、すごく濃厚な味付けがよくからまって、うわ~最高です!」
●やっぱり屋外で食べると、さらにおいしく感じますよね!
菖蒲「本当に!」
●さあ、どんどん食べましょう!
菖蒲「うん!」
デザートは焼きマシュマロ
菖蒲「今回は盛だくさんですね!」
●はい! サーロインステーキもチーズタッカルビも美味しかったですね~。
菖蒲「そして締めはマシュマロ! 焼いて食べましょうよ!」
●キャンプ飯と言えば、マシュマロを食べるイメージありますよね~。
菖蒲「なんかね~焚き火を眺めながらじっくり遠火で焼いて、こんがりふわふわのマシュマロは絶品ですから! 私も必ずキャンプではやります」
●そうなんですね。
菖蒲「今回この大きいマシュマロを用意してくださってね! 小っちゃいのが定番でよく売っているけど、この大きいのがやっぱりキャンプに合うんですよね。外側だけカリカリにして・・・」
●あ~いいですね~。
菖蒲「(マシュマロの)中はもうトロトロで、結構近づけると、ばーって一気に焦げちゃうから・・・」
●遠くがいいんですね?
菖蒲「ゆっくりぐるぐる回しながら、この待つ時間もやっぱりいいですよね」
●確かに。火を眺めていると、すごくリラックスできますよね~。
菖蒲「そう、なんでしょうね・・・人間の本能なのかな? 小尾さんは、お酒はビールのイメージありますけど」
●はい、ビール大好きです。
菖蒲「ほかも飲みます?」
●飲みますね~。ワインもハイボールも。
菖蒲「キャンプでこんなの飲んでみたいな、とかありますか?」
●外だと、ホットワインとか・・・。
菖蒲「わかる~! 私いつも赤ワインとマシュマロっていうのがもう締め!」
●素敵~いいですね~!
菖蒲「夜長、過ごすのにはばっちりで、今はワインなんか合いますよね、絶対ね!」
●あっ! こんがり焼けてきました。
菖蒲「めっちゃいい感じ! それ、もういいかもしれないですね」
●美味しそう!
菖蒲「食べてみます?(小尾さんは)初焼きマシュマロ?」
●本当にそうかもしれないです!
菖蒲「お~〜!」
●わ〜〜、いいただきます! う~ん! 本当だ! 外はカリッとしていて、中はじゅわっと!
菖蒲「このジャンボ・マシュマロがいいんですよね~」
●いい感じじゃないですか? 菖蒲さんのも・・・。
菖蒲「いい感じですね! あ〜美しい、このきつね色! いただきます!」
●召し上がってください!
菖蒲「カリ、ふわ~、美味しい!」
●本当に美味しい!
菖蒲「甘さが優しい・・・」
●ほっこりしますね~。
菖蒲「う~ん、本当!」
●いや~楽しかった~。ごちそうさまでした!
菖蒲「ごちそうさまでした!」
お気に入りは、湖畔のキャンプ場
※お腹がいっぱいになったところで、日頃から山登りにキャンプ、そして釣りにと、アウトドアを楽しんでいらっしゃる菖蒲理乃さんにお気に入りのキャンプ場を教えていただきました。
菖蒲「私、そうですね・・・いろいろ行きますけど、やっぱり好きなのは湖畔です」
●湖畔!
菖蒲「湖! そう、水の近くってなんか癒されて・・・。小尾さんは海が好きですよね?」
●はい、海は大好きです。
菖蒲「ですよね。なんかぼーっと眺めているだけでも一日中過ごせるので、湖畔のキャンプ場は好きですね。
身近に行けるところで言うと、神奈川の「みの石滝キャンプ場」っていう、相模湖のほうにあるんですね。電車でもアクセスできるんですけど、(キャンプ場へは)ボートに乗ってでしか行けないんですよ。対岸にあるから、ボートに荷物をまとめて向こう岸のキャンプ場に行くっていうので、陸続きじゃなくて水を渡っていくっていうのが、特別感があって「みの石滝キャンプ場」は本当にお気に入りです」
●そうなんですね。ウィンターキャンプの経験っていうのはありますか?
菖蒲「冬はやっぱり虫がいなかったり・・・、小尾さんもね?」
●はい、虫は苦手です(苦笑)
菖蒲「(虫)いやですよね。この時期は(虫がいないので)いいかなと思います。寒いので防寒対策は必須ですけどね」
●菖蒲さんなりの防寒対策ってありますか?
菖蒲「よく言われるのが3つの首っていうのがあって、まず首と、手首と足首。ここ暖めているだけで全然違うんですよね。プラスアルファ、やっぱり外で底冷えするので、私がいちばん力を入れているのは足。靴はスノーブーツだったりとかで、完全防備で行きます」
●なるほど~。私のようなキャンプ・ビギナーには、今回のような手軽でアーバンなデイキャンプから始めるってすごくいいかなって思ったんですけど、いかがですか?
菖蒲「本当、こうやって気軽にアクセスもできて、今回なんか手ぶらですからね!」
●本当にそうですよね~。
菖蒲「ここでテントだったりとか、いろんなアウトドアの用品や道具と触れ合って、ちょっとずつ買い足して行ったりだとか、ステップアップにはすごくいいなと思います」
●改めて菖蒲さんから見て、キャンプの魅力ってどんなところだと思いますか?
菖蒲「なんか本当に“衣・食・住”じゃないですか、やっていることって」
●確かに・・・。
菖蒲「日常で普通にやっていることを、自然に囲まれたりだとか違った場所で楽しめる。そうすることによって、いつも飲んでいるコーヒー1杯とっても、外で飲むと全然おいしさが違う。なんかそういうところで改めて、また日常に戻った時に、ありがたさがより感じられるみたいなところがいいのかなって、魅力かなって思います」
*続いて「BBQ&CAMP THE B’NC」を運営されているSEASIDE CREATIONSの「三浦奈々歌」さんに、施設の特徴やコンセプトについてうかがいました。
三浦「いろんなバーベキュー場やデイキャンプ場があると思うんですけど、当店は一度は行ってみたいお洒落なバーベキュー場ではなくて、何回でも来たくなるようなバーベキュー場、みんなが使える普通の用具や物を用意して、いつでも来たくなるようなバーベキュー場にしています」
●手ぶらで来られるっていうのも、いいですよね~。
三浦「そうですね。イオンモールさんが目の前にあるので、食材は買ってきて、あまり重たい荷物を運ぶ必要もないですし、休日のランチとかに手軽に来ていただいているお客様も多いです。あとは、家族だったり大切な人と、いいコミュニケーションを取れる場であってほしいと思っているので、そういった時に使っていただければいいかなと思っています」
●確かに室内で、いつものお店で食べるっていうのとまた違った空間で、いろんなお話ができそうですよね。
三浦「そうですね」
●この時期のおすすめって何かありますか?
三浦「これからの時期はやっぱりいちばん焚き火がおすすめで、キャンプ本番の季節だと思うんですね。空気の澄んだ今の時期だからこそ楽しめる特別な時間というか、特別な空間が味わえるかなと思っています」
気軽にふらっと、充実の一日
●三浦さん、きょうはテントも建てて、火起こしもして、美味しいキャンプ飯を食べて、最高の一日でした!
三浦「ありがとうございました」
菖蒲「ありがとうございました」
●楽しかったです!
菖蒲「こんなに気軽にふらっときて、これだけ充実した一日が過ごせるんですね~」
●本当に気持ちよかったです。自然に囲まれてリフレッシュできました~。この焚き火の後始末とか片付けってどうしたらいいんですか?
三浦「焚き火台はこのままで大丈夫なので、ゴミだけゴミ箱に捨てていただいて、あとはこのままお帰りいただけます」
●そうなんだ~、すごい! 何かルールとかってありますか?
三浦「特になくて、分別をしていただくっていうところだけですね」
●え~っ、なんか至れり尽くせりですね!
菖蒲「本当ですね! でも全部やってもらうんじゃなく、テントを自分たちで建てたりとか、火起こしだったりとか、自分たちでやった感!っていうのも、ちゃんと味わえましたね」
●ね~、家族みんなで楽しめますね!
菖蒲「本当に!」
●三浦さん、本当にきょうはありがとうございました!
菖蒲「ありがとうございました!」
三浦「ぜひまたいらしてください!」
●はい、楽しかったです!
三浦「ありがとうございます」
INFORMATION
今回お世話になった「BBQ&CAMP THE B’NC」は京葉線の幕張豊砂駅から徒歩5分。駅近に加え、手ぶらでお手軽にデイキャンプや焚き火料理が楽しめる施設です。道具や食材は全部完備。その一方、テントの設営や火起こしなどは、お客さんがマニュアルを見ながら、自ら動いて体験します。私たちは火起こしに一度失敗してしまったんですが、だからこそ、火がついて、焚き火が安定した時の喜びは、ひとしおでしたよ。
この時期のおすすめは私たちが体験した、来年2月までの週末限定「焚き火ラウンジ」! サーロインステーキやチーズタッカルビ、焼き野菜、コムタンスープに白ごはん、そしてマシュマロがついて、料金は大人おひとり5,000円。デイキャンプ体験ができる「プレミアム・キャンプ区画」の使用料は大人おひとり2,700円。もちろんバーベキューもおすすめです。
詳しくは「BBQ&CAMP THE B’NC」イオンモール幕張新都心のオフィシャルサイトをご覧ください。
◎BBQ&CAMP THE B’NC :https://seaside-creations.co.jp/shop-list/makuhari/
2023/12/10 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第17弾!今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から、おもに「つくる責任 つかう責任」そして「産業と技術革新の基盤をつくろう」について考える事案をご紹介します。
お話をうかがうのは、100%食品廃棄物から作る新素材を開発し、注目を集めているベンチャー企業「fabula(ファーブラ)」株式会社の代表取締役CEO「町田紘太(まちだ・こうた)」さんです。
町田さんは、お父さんの仕事の関係で小学生の3年間をオランダで過ごし、学校の授業で地球温暖化を研究・発表することがあって、それがきっかけで、環境問題に興味を持つようになったそうです。趣味は海外旅行で、これまでに60カ国以上を訪れているほどの旅好き。
そして東京大学に進学し、卒業研究で食品廃棄物から新素材を作る技術を開発。2021年に幼馴染みの3人で「あらゆるゴミの価値化」を目指し、「fabula」株式会社を設立されています。
町田さんが開発した技術を使えば、捨てられてしまう食材がお皿などの小物から建築用の資材などに生まれ変わるんです。今回は、東京大学生産技術研究所・駒場リサーチキャンパスに町田さんを訪ね、お話をうかがってきました。今回は、食品廃棄物を原料に作る新素材の可能性に迫ります。
☆写真協力:fabula Inc.
fabulaはラテン語で「物語」
※「fabula」のオフィシャルサイトのトップに「ゴミから感動をつくる」というフレーズが載っています。改めて「fabula」ではどんな事業を行なっているのか、ご説明いただきました。
「ひとことでいうと、食品廃棄物から新しい素材だったり、製品を作っているような会社です。もともとは東大の研究室から生まれたというか、私が研究室にいた時に開発したその素材を、実装化するために作った会社で、技術のおおもとは大学で作られています」
●創業は2021年ということですけれども、社名になっている「fabula」には、どんな思いが込められているんですか?
「この言葉自体はラテン語なんですけど、日本語に訳すと、物語とかそんな感じの意味があります。食品廃棄物から、ゴミから、新しい製品とかプロダクトに変えるにあたって、普通の産業で行なわれているようなストーリー性があったりとか、背景に思いのある物作りをしたいなと思って、こういう社名にしています」
●改めて、この会社を起業されたのは、どうしてなんですか?
「シンプルにいうと、面白そうだったからというのがありますけど(笑)」
●面白そうだという理由で起業するって、すごいことですね。
「そうですね。普通にやってみようと思ったのと、ある意味、失敗してもいいんじゃないかなっていうような、わりかし楽観的な気持ちもあった気がしますね」
●そもそもすごくさかのぼって、この分野を研究しようと思ったきっかけは、何だったんですか?
「もともと(私が)いた研究室自体がコンクリートに関する研究室で、コンクリートってものすごく環境負荷が高い素材なんですけど、環境負荷の高いコンクリートをリサイクルしたりとか、コンクリートに代わる素材を作る、そういう研究室にいたんです。
で、そこに入った時に私の指導教官の酒井先生が、それにまつわる研究をずっとやっていて、その中で先生としては、食べられるコンクリートがあったら面白いんじゃないかって、ちょっとファンシーな思いがあったりとか・・・。
僕自身もともと環境問題を含め、社会課題に対してすぐ取り組める研究があったほうがいいなって思っていたのもあって、その辺が合わさって、食品から何か作ろうかなみたいな話になっています」
●この「fabula」は幼馴染みの3人で作られた会社ということですけれども、ほかのメンバーおふたりも同じ思いでいらっしゃるということですよね。
「だと信じていますけど(笑)」
●お誘いしたのは、やはり町田さんですか?
「そうですね、2年くらい前に・・・」
●おふたりも、やろうやろうっていう感じでしたか?
「そうですね。やっぱり素材自体に魅力を感じてくれて、ふたりが働いていたバックグラウンドだったりとか、興味があることとか、そういう中でもともと持っていた思いとかも合わさって、今一緒にやっているようなところです」
●町田さんが声をかけて、おふたりの思いはどんな感じだったんですか?
「松田と大石というふたりなんですけど、松田はもともとコーヒーを輸入する商社に勤めていたんですね。そういう中で、コーヒーってまさしく抽出かすだったりとか、いろんな廃棄物が出て、それは消費する日本でもそうですし、生産するブラジルとか中南米とか、そういうところでも実際にいろんな廃棄物が出ています。
そういうものに対しての課題感をずっと持っていて、そういう課題の解決にもつながるし、この素材の特徴も見て、これは何でもできるって、彼は言っていて、そこがたぶん思いとしてあったのかなと思うのと・・・。
大石はもともと感性工学と言って、音とか光とか、感性的な情報が人の行動にどういう影響を与えるかっていうような研究をしていました。そういう中でこういうちょっと香りがする素材で、人々の行動がどう変わるのかなとか、お皿に見えるけど、香りがしたりとかすることで違う影響とか、カレーの匂いを嗅いだらカレーを食べちゃう、みたいなことに近いかもしれないですけど、そういうようなことを素材を通じてやりたいというふうに言っています」
技術はシンプル、「たこ煎餅」と同じ!?
※ここからは「fabula」が作っている新素材について、具体的にお話をうかがっていきます。まずは、食品廃棄物を新素材にする技術について、なんですが、明かせる範囲内で構わないので、どんな技術なのか教えてください。
「技術自体はとってもシンプルです。例えば、白菜とか野菜のクズみたいなやつを乾燥させて粉末にして、それを熱圧縮成型というような方法で素材化します。乾燥と粉砕までは本当に野菜の粉を作るみたいな感覚に近いので、そこから熱圧縮成型っていう・・・漢字5文字が並ぶと怖いですけど(笑)、簡単にいうと熱と圧力でギュッと潰しているような技術ですね。江ノ島のたこ煎餅とか、ああいうものを工業的にやっているような感覚です」
●その技術ってどうやって開発されたんですか?
「熱圧縮成型っていう技術自体は、かなりトラディショナルなというか古典的な技術です。プラスチックでもずっと使われてきていたりとか、身近なものだとベニヤ板みたいな、ああいう木材の合板でも使われてきた技術で、それを食品のくずというか、こういうものに転用してみたっていうところが新しいポイントなのかなと思います」
●開発までの道のりって、どんな感じだったんですか?
「基本的には一個一個条件を潰していくというか、温度とか時間とか圧力とか、粉の状態とか、綺麗に作るための条件なんですけど、それをいろいろ、何度だったらいいかなとか、これぐらい圧力をかけたらいいかなっていうのを、トライ&エラーで繰り返していった感じです」
●新素材になるまで、どれぐらいの日数がかかるんですか?
「基本的にプレスをする時間は、数分とかそのレベルです。あとは乾燥で結構時間がかかるものなので、 1日かかるのか、機械によっても違いますけど、本当に早ければ、すぐできるくらいです」
脱脂粉乳!? コーヒーかす!?
※開発した技術で作った新素材をもとに、これまでにどんな製品を作ったんですか?
「当初はコースターとか、ちょっとした小物入れとか、雑貨類を作っていたりとか・・・。最近だとお香立てとかも、アーティストさんとコラボして作ったりとかしているんですけど、もともとコンクリートから出発しているのもあって、建材もちょこちょこやっています。
例えば、建築の展示会用に茶室を作る機会があったんですけど、その設計会社さんに、茶室なので、お茶でできた建材みたいなものを少し提供したりとか、今度の(大阪)万博でも使用していただく予定があったりとか、そういうような感じですね」
●今回、コースターと小皿、あと小物入れ、深いお皿も用意していただきました。これが本当に食品廃棄物だったんですね。
「そうですね、もともとは」
●ちょっと触ってみてもいいですか。ツルツルで、見た目もおしゃれですし、これが廃棄物だったとは全く思えないんですけど、え〜〜すごいですね! これはもともとなんだったんですか?
「このちょっと深いお皿は、脱脂粉乳ですね」
●それがこんな立派な小物入れ、深いお皿になるんですね。この緑色のようなカーキのようなコースターは?
「緑茶です」
●緑茶なんですね! 香りとかはしないですよね?
「そうですね。コーティングがしてあるので、たぶん香りが抑えられていると思います」
●なるほど、なるほど・・・。
「もう一個のほうは、香りで判断できる気がしますけど・・・」
●これは、茶色の・・・なんでしょう?
「それはコーヒーですね」
●あっ、コーヒー、確かに! コーヒーがこの平皿になるんですね〜、コーヒーのかすで・・・。
「コーヒーの抽出かすですね」
●確かに濃い茶色と黒色でシックなお皿になっていますけれども、コーヒーのかすからできているんですね〜。この新素材を作るにあたって、いちばん苦心されたのってどんなことですか?
「本当にいろんな条件をいじっていくっていう、数打っていくっていうところですかね、やっぱり」
コンクリートより優れた強度
※「fabula」で開発した新素材の主な特徴を改めてご説明いただけますか。
「今まさしく嗅いでいただいたように香りがあったりとか、色味とかもともとの原料のイメージが残っていたりとか・・・。いわゆる廃棄物から作ったっていうと、イメージだとちょっとグレーで茶色くてとか、もしかしたらそういう感覚で、ちょっと臭い匂いがするかもしれないとか、そういうイメージとは結構逆側の、原料の特徴を活かしながら物作りをしているのがひとつと・・・。
あとは強度がそこそこあるよっていうのがあります。コンクリートと比べても強いものだと4倍ぐらいの、“曲げ強度”って言って曲げる力に対する強度があったりします」
●かなり強いですね!
「そうですね。プラスチックほどではないですけど、まあまあ強いかもしれないです」
●一度作った新素材をまた作り直すっていうこともできるんですか?
「はい、それは可能です。こういうお皿とかを回収して、もう一回、粉々にして作り直すことはできます 」
●先ほどご紹介いただいたコースターやお皿は、原材料が緑茶とかコーヒーとかですけれども、食品廃棄物がなんでも原材料になるわけではないですよね?
「基本的になんでも使えます」
●なんでも大丈夫なんですか?
「例えば、コンビニの廃棄物、いわゆる生ゴミみたいな、ああいうものでも大丈夫です」
● これまでどんなものを原材料にされてきたんですか?
「だいたい80種類か90種類ぐらいやってきていて、食品なので無限にありますけど、カニの殻とかそういうのもやったりとか・・・。脱脂粉乳みたいなちょっと動物性のものとかもやっていますし、なんかいろいろ(使っています)」
●いくつか組み合わせても大丈夫なんですか?
「合わせても大丈夫です。バジルとトマトとパスタを混ぜて、ジェノベーゼとか言ってふざけて作っていたりしました(笑)」
●すごいですね~。そういった食品廃棄物はどこから手に入れているんですか?
「食品加工の工場だったりとか、あとは飲食店、例えばコーヒーチェーンみたいなそういうところだったりとかから買い取っていますね」
価値あるものへ変えていく文化
※「fabula」で開発した新素材は、将来的には食べることも考えているそうですね。どういうことなのか、教えてください。
「食べられなくはないよっていうのが、僕らの伝えていることというか・・・。思い返すと食品だけで、もともとは食べられるものだけで作っているので、食べてもいいかもしれないっていうところはあるんです。
例えば、規格外野菜みたいな、形が悪いだけで美味しいですよっていう、そういうものから作ると、本当に食品から作っていることに近いので、食べたりもできるだろうし・・・。
もっとリアルなところで言うと、本当に最悪の場合、交通が分断して物が届かなくなったりとか、もしくは離島とか砂漠の真ん中なのか宇宙空間なのか、なかなか物流が難しいようなところとかで、最後に生きるために食べても悪くはないかなっていうところですね」
●今後、建築用の資材を作る予定はあるんですか?
「そうですね。基本的に将来的には建材を目指しているので、万博での使用だったり、そういうのを通じて、性能とか強度もそうですし、実際に使っていく事例を増やしていくのが今後かなと思います」
●町田さんが開発した技術を、今後世界でどんどん展開していく予定もあるんですか?
「海外に出ていくってことも考えてはいますね」
●具体的にどこにとか、技術の公開も考えていらっしゃいますか?
「そうですね。まだまだ海外での事例自体はないんですけど、問い合わせベースだと、非常に多いのはヨーロッパからの問い合わせと、また東南アジアからも結構問い合わせが来るので、きっとここら辺の感度が高いだろうというところに対して、アプローチしていこうかなと思います。
例えばですけど、特許の出願をしているので、特許出願をすると必然的に(技術は)公開されるものになるんですね。そういうものはもちろんありますし、技術自体を自分だけのものにするっていうよりは文化として、食品に限らずゴミって呼ばれているものを、新しい価値あるものに変えていく文化を作っていくことが、とても大事かなとは思っています。そういう意味ではいろんな人と協業していくことはとっても大事かなと思います」
INFORMATION
「fabula」で制作している小皿やコースター、タイルなどの商品は、受注生産になりますが、ECサイトから購入できます。100%天然素材なので、風合いが微妙に違う、どれも一点ものです。どんな商品なのか、価格はいくらなのか、ぜひ「fabula」のECサイトをチェックしてください。
◎「fabula」ECサイト:https://store.fabulajp.shop
◎「fabula」:https://fabulajp.com
ちなみに、現在、国立科学博物館で開催されている特別展「和食〜日本の自然、人々の知恵」のショップでも販売しているそうです。
2023/12/3 UP!
今週のベイエフエム / ザ・フリントストーンは、シリーズ「SDGs〜私たちの未来」の第16弾! 今回は「SDGs=持続可能な開発目標」の中から「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「働きがいも経済成長も」、そして「つくる責任 つかう責任」に関係する事案をご紹介します。
お話をうかがうのは、慶應大学 環境情報学部の3年生で、合同会社「Uzuri(ウズリ)」を立ち上げた「山岸 成(やまぎし・なる)さんです。
山岸さんはお父さんの仕事の関係で、小学生の3年間をケニアの首都ナイロビで過ごしています。実はこの経験が山岸さんのその後を大きく左右するんです。
ナイロビは、山岸さんいわく、ビルが立ち並ぶ都会ではあるものの、一歩踏み出すと、すぐ隣りに国立公園やサバンナが広がっていて、先日訪れた時も改めて、とてもいい国だと感じたそうです。
そして現在は大学でビジネスに関することを学びながら、会社経営にチャレンジ、さらに陸上競技の選手としても活躍されています。
きょうは、子供の頃に暮らしていたケニアのために、アフリカの海岸や路上に捨てられたビーチサンダルを、スマートフォンケースにアップサイクルするプロジェクトを進めている山岸さんに、起業した思いや、「Uzuri」という会社で進めている事業についてお話をうかがいます。
☆写真協力:Uzuri
スワヒリ語で「Uzuri」とは・・・
※まずは、山岸さんが立ち上げた「Uzuri」という会社では、どんな事業を行なっているのか、教えてください。
「私たちは、途上国のブランドや企業さん、その中でも特に社会貢献性の強い事業を行なっているところと、パートナーシップを締結させていただいて、そのパートナーと共同で日本市場に適用した商品を開発して、それを日本で売ります。
その時にそのブランドとか企業の既存の商品も一緒に販売して、我々が作ったコラボ商品を主軸にしながら、いろんな商品を販売し、彼らが掲げているミッションであったりとか、ブランドストーリーを一緒に広げていくような形の事業です。彼らの雇用状況の改善だったりとか、雇用機会の拡大にもつなげていけたらなという事業内容になっております」
●「Uzuri」を立ち上げたのは、いつ頃なんですか?
「立ち上げたのは本当に最近ですね、8月末とかに・・・」
●今年の、ですか?
「今年の8月です」
●そうなんですね~。おひとりで立ち上げたんですか?
「大学の友人と一緒に立ち上げました」
●じゃあ、今おふたりで「Uzuri」をやっていらっしゃるんですね?
「そうです」
●「Uzuri」という社名ですけど、独特の響きがありますよね? これはどんな意味があるんです?
「これはスワヒリ語です。ケニアの公用語は英語なんですけれど、スワヒリ語も広く使われていて、 “ビューティー”っていう意味です。日本語訳すると“美しい”であったりとか、“華やか”とか“いいこと“みたいな意味合いを持つんです。
先ほど説明した事業内容のところで、パートナーの掲げている“いいこと”、もちろん美しい商品もそうですし、彼らの行なっている活動も美しい、そんなものを広げる会社でありたいなっていうところで、この『Uzuri』っていう名前にしました」
●素敵な名前ですね! 起業されようと思ったのは、何かきっかけがあったんですか?
「きっかけは、大学で経営とかビジネスに関することをたくさん学んでいく中で、なんか自分ができること、ビジネスの視点で何かできることがあるんじゃないかなって思った時に、やっぱりアフリカで、僕が何かする形で、彼らに貢献できるのであればいいなという思いから始まりました。
あと最近の社会貢献性みたいなことの強まりで・・・でも、ただいいことだけしていてもいけないよなっていうところで、社会貢献性と利益の追求の両立みたいなことにチャレンジしてみたいなっていう思いが、大学で学んでいく中で出てきて、やってみよう!と思って立ち上げました」
スマホケースにアップサイクル!
※山岸さんが、現在タッグを組んでいるのは、ケニアで海岸をきれいにする活動を行なっているNPO「Ocean Sole(オーシャン・ソール)」。廃棄されたビーチサンダルをアップサイクルして、ゾウやシマウマなどの動物のオブジェを作っている団体です。
山岸さんはこの団体を、ナイロビで暮らしていた頃から知っていたので、最初に手掛ける事業は「Ocean Sole」と一緒にやっていきたいという強い思いがあったそうです。そして、パートナーシップを結んで開発したのがスマートフォンのケースです。
●きょうはそのサンプルをスタジオにお持ちいただきました! とってもカラフルですね~。
「そうなんですよ(笑)。これ、染色とかも一切していなくて、サンダルそのものの色でできています」
●なんかケニアっぽいって言ったら、あれですけど、ほんとにカラフルで・・・蛍光ピンクとかオレンジとかイエローグリーンも・・・様々な色が溢れていて、いいですね~!
「今ケニアっぽいっておっしゃったかと思うんですけど、アフリカっぽさもありつつ・・・ただなんだろう・・・手に取りづらさみたいなのは、ないデザインかなと思っていて・・・」
●ないです! 可愛い~、老若男女みんなが持てるような感覚ですよね!
「現地のアーティストが全部デザインして制作しているので、そこでもきちんと雇用機会になっています」
●なるほど! これ、しかも裏はコルクになっているんですね!
「はい、裏はコルクで、Ocean Soleのミッション自体が海洋汚染の解決を掲げていますので、プラスチックを使わずに制作したいなという思いで、100%リサイクルのコルクを使用して作っております」
●へえ~、このスマホケースはオリジナル商品っていうことですよね?
「オリジナル商品というよりかは、UzuriとOcean Soleのコラボ商品で、これからはいろんなところとコラボする形でやっていけたらなと思って、その1個目の商品がこのスマホケースになります」
●ボーダーだったり、ドットだったり、四角だったりって、いろんな柄がありますけど、これって唯一無二っていうことなんですか?
「はい! そうなんです。その時にあったサンダルの形とか、削れ具合とかを考慮して、最適なデザインを現地のデザイナーさんがチョイスして制作しているので、同じものは一生作れない、あなただけの1点ものってことになります」
●すごい! そうなんですね~、世界でひとつだけの!
「そう、そうなんです」
●お洒落です! そもそもなぜスマホケースにしようと思われたんですか?
「それがですね・・・いろいろ僕も考えた結果、このスマホケースになっていまして、普段(Ocean Soleは)動物のオブジェを作っているところなんですけど・・・」
●動物のオブジェも持ってきていただきました。可愛いですね! こちらもカラフルです!
「可愛い動物たちなんですけど、これを日本に広めようと思った時に、なかなか難しいハードルもあるんじゃないかなと思っています。まずは、輸送でかさばってしまうものなんですね。
今回は手のひらぐらいのサイズのオブジェをお持ちしたんですけど、ほかにも(人の)身長ぐらいのサイズのもあったりとかします。そういった商品は持ってくるとやっぱり大変ですし、環境負荷もかかってしまうっていうところで、もっとコンパクトで、みんなに使ってもらえるようなものがないかなってすごく考えていました。
その時に思いついたのがiPhone用ケースです。日本はiPhoneのシェア率がめちゃめちゃ高いっていうのもあって、iPhoneなら、いろんな人が手に取ってくれて、いろんな人が手に取ってくれれば、日常生活でいろんな人がこのカラフルなのを見て、“それ、綺麗だね”とか言ってくれるんじゃないかなと思って・・・そんな形で広がってくれればいいなという思いを込めてiPhoneケースにしました」
●これは絶対、友達が使っていたら「何それ、可愛い!」って言うと思いますよ!
「僕も今サンプルを使っているんですけど、本当に知らない人から、“そのスマホケース、可愛いね”ってカフェで言われたりとかもあって、そんな形で広がってくれたら嬉しいなって思っています」
(編集部注:iPhone用のケース、カラフルでとっても可愛いんです。裏の素材はコルクなので軽いし、衝撃吸収性に優れているのも特徴です。また、職人さんがひとつひとつ手作りしているので同じものがほかにない、つまり一点ものなのも魅力ですね。
販売に関しては、年内から始まる予定。またイベントなどでの販売も検討しているそうです。販売価格も含め、詳しくは以下のサイトを見てください)
◎Uzuri 公式オンラインショップ: https://uzuri-japan.square.site
子供たちを学校に行かせたい
※今年、ケニアに行ってきたそうですね。どんなことをされてきたんですか?
「9月に行ったのはOcean Soleと、これからどういう形で進めていくかっていうのを詳細に話すのと、今回お持ちしたサンプルを作成するために行ってきました。
工場とオフィスのあとは、サンダルの回収現場にも行って参加してきて、働く人々とコミュニケーションをしっかりとるところまでやってきました」
●具体的にどんな話し合いが行なわれたんですか?
「オフィスのほうでは“こんなデザインがいいよ!”とか、“もうちょっとこうしたほうがいいんじゃない!?“みたいなディスカッションをさせていただきましたね。
工場ではどんな感じで作っているのかを、細かくヒアリングさせていただいたんです。いちばん印象的だったのが・・・(サンダルの)回収現場にも行って、ちょっと都心部から離れて、海岸沿いに行ってきたんです。
いわゆるサプライチェーンの上流、いちばん上で働く人たちともコミュニケーションをとりたいっていう思いと、その現状も見たいっていう思いもあって、行ってきたんですけど、 そこでの出来事がすごく僕の中で印象的でしたね。
働く人たちがすごく幸せそうに働くんですよ。ゴミを拾う作業なんですけど、すごく幸せそうに、みんな楽しそうに拾うんです。
その人たちが最後に僕たちにメッセージをくれて、『私たちの子供は学校に行けていない。だから私たちのこの活動を、君たちが日本にぜひ広げてください。そして私たちの現状を一緒に伝えてほしい。それが世界に広がって、私たちの子供たちが学校に行けるようになる。子供たちには未来があるから、私たちは(子供たちを)学校に行かせてあげたいから、ぜひ伝えてほしい』というメッセージをいただいたんです。
それが僕の中ですごく印象的でした。それこそUzuriが大切にしている、パートナーのミッションとか背景をきちんと、多くの人に伝えることが必要なんだなっていうのをすごく実感した場面でした。
最初(作業現場に)行った時は幸せそうに、すごく楽しそうにやっていたんで、意外と経済的なところもあまり彼らの中では、ネックになってないのかなとも一瞬思っちゃったんですけど、やっぱりそんなことはないんだなということで、我々のできることをやっていきたいなって強く思いました」
●「Ocean Sole」は現地生産ということで、雇用にもつながっていますよね?
「はい、ケニアは雇用機会が少ないのが結構深刻な問題になっていて、職業訓練校もいろんなNPOや NGOがやっているんですけど、そこを卒業しても雇用機会がなくて、職に就けない現状があるので、雇用機会を作るのは非常に重要なことなのかなと思っています」
(編集部注:ケニアで、捨てられたビーチサンダルが目立つは、まだまだ経済的には豊かではないので、価格的に安いサンダルの需要が高く、また壊れやすいこともあるそうです。山岸さんが今年9月に「Ocean Sole」の活動を視察したときも、回収したサンダルが山積みになっていて、その量に驚いたそうですよ)
次の一手! 新しいパートナー!?
※会社として「Uzuri」が大切にしていることはなんですか?
「まずは、社会貢献性っていうバックグラウンドに頼りすぎないっていうのを大切にしたいなと思っています。もちろん近年、社会貢献性が顧客にも浸透してきているのは感じてはいるんですけど、社会貢献性のデメリットとして価格が高くなってしまったりとか、あとは品質の部分がちょっと劣ってしまうみたいなことがあると思うんです。
そこを克服することが大事だなと思っていて、きちんと機能性であったりとか、このスマホケースに関してはデザイン性に注力していて、バックグラウンドを知らずとも手に取ってもらえるみたいなところは、大事にしていきたいなって思っています。
あともうふたつあるんですけど・・・ひとつが、しっかりパートナーのヒアリング・・・パートナーシップを結んだ企業とかブランドの現状とか、掲げているミッションや思いはきっちりヒアリングして、可能であれば現地に足を運んで、直接コミュニケーションをとったりとか、実際に現状を自分の目で見る、それを僕たちが伝えるっていうことは大切にしていきたいなと思っています。
最後は、公正公平な取引、いわゆるフェアトレードなんですけど、きちんとした価格で取引をして、現地にもきちんとお金を落として、働く人たちが満足できる、生活水準を上げていけるような形になればいいなと思っています」
●素晴らしいですね~。今後「Ocean sole」以外に提携していきたい団体はありますか?
「はい、今ちょうどふたつ目の企業さんとお話させていただいていて、まだ具体的なことは言えないんですけど・・・。
9月に(ナイロビに)行ってきた時に、たまたま街中を歩いていて、いいな! って思って、その店員さんに“これはどんな商品なの?”っていろいろ聞いて・・・今回詳しくはご説明できないんですけど、似た感じのアップサイクルの素材で素敵な商品を作っていたので、すぐ“社長の電話番号を教えて”って聞いて、次の日に工場まで行ってきました。
話を聞いて感銘を受けて、日本に帰ってきた時にあっちのかたも“これからコラボしていこう!”って毎日のように連絡くれて、もう嬉しい限りですね。ぜひ一緒にやりたいなと!」
「Uzuri」の未来予想図
●では最後に、未来予想図として、現在、山岸さんは21歳でいらっしゃいますから、29年後、たとえば山岸さんが50歳になった時に「Uzuri」はどんな会社になっていますか?
「そうですね・・・それこそ発展途上国のいろんなブランド、本当にたくさんのブランドとコラボレーションをして、我々とのコラボ商品をたくさん作って、Uzuriとコラボしているから、Uzuriとのコラボ商品がきっかけで、そのブランドを知って好きになりましたとか、Uzuriとコラボしているから、このブランドは信頼できるブランドだ!みたいになっていれば、嬉しいなと思っています。
やっぱり今どうしてもアフリカの商品って、若干の手を出しづらさみたいなところはあると思うんですけど、僕たちが今、最初に目指しているのは、手に取った商品が実はあとから知ったらアフリカ産だった!みたいなのができれば、嬉しいなと思っているんです。
本当に先の未来には、アフリカ産だから買いました!みたいな、日本製だから信頼ができて買いました!みたいなのと同じ感覚で、アフリカ産だから買いました! みたいな形ができれば、すごく嬉しいなと思っています」
INFORMATION
気になるiPhone用のケース、カラフルで本当に素敵です。職人さんがひとつひとつ手作りしたものなので一点ものです。販売に関しては、年内からオンラインサイトで始まる予定。またイベントなどでの販売も検討しているそうです。販売価格を含め、詳しくは以下のサイトをご覧ください。
◎Uzuri 公式オンラインショップ: https://uzuri-japan.square.site
「Ocean Sole」が制作している動物のオブジェはすでに販売されています。ゾウやキリン、シマウマ、ペンギンなどなど、カラフルでほんと可愛いんです。ぜひチェックしてください。
◎インスタグラム @uzuri_japan
https://instagram.com/uzuri_japan?igshid=NGVhN2U2NjQ0Yg%3D%3D&utm_source=qr